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2025-104801ゴム組成物、ゴム製品、および空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104801
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】ゴム組成物、ゴム製品、および空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20250703BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250703BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20250703BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20250703BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20250703BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/36
C08K3/04
C08K5/541
C08L33/04
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222877
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】吉満 隼人
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131BA05
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC15
3D131BC19
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002BB151
4J002BG042
4J002BG052
4J002BG062
4J002BG072
4J002BG082
4J002DA037
4J002DJ016
4J002EX038
4J002EX068
4J002EX078
4J002EX088
4J002FD016
4J002FD017
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】転がり抵抗が低いゴム製品が得られるゴム状組成物、当該ゴム組成物から得られるゴム製品、および当該ゴム製品としての空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム(A)、シリカ(B)、カーボンブラック(C)、シランカップリング剤(D)、および(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)を含有するゴム組成物であって、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)の一方の末端に、下記一般式(1)で表される基を有する、ゴム組成物を用いる。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム(A)、シリカ(B)、カーボンブラック(C)、シランカップリング剤(D)、および(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)を含有するゴム組成物であって、
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)の一方の末端に、下記一般式(1)で表される基を有する、ゴム組成物。
【化1】
(式(1)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~20のアリール基を表す。ただしRとRが同時に水素原子であることはない。Rは、水素原子、またはメチル基を表す。ただし前記アルキル基またはアリール基には、酸素原子、ハロゲン原子、NHR、およびNRからなる群から選択される1種以上で部分的に置換されている基も含まれる。ここでRおよびRは、同一または異なって、水素原子、または炭素数1~8のアルキル基、または炭素数6~11のアリール基を表す。Yは、炭素数1~18のアルキレン基、または単結合を表す。)
【請求項2】
ジエン系ゴム(A)100重量部に対して、シリカ(B)5~200重量部、カーボンブラック(C)0.5~50重量部、シランカップリング剤(D)0.5~20重量部、および前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)1~20重量部を含有する、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴム(A)が、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、およびブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載のゴム組成物から得られるゴム製品。
【請求項5】
請求項4に記載のゴム製品である、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、ゴム製品、および空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車業界においては、自動車の低燃費化の要請があり、転がり抵抗が低いタイヤを提供可能なトレッド用ゴム組成物が求められている。
【0003】
タイヤの転がり抵抗を低くするゴム組成物としては、例えば、ジエン系ゴムを含むゴム組成物において、ジエン系ゴムの加硫時に反応可能なアクリロイル基を分子片末端に有する(メタ)アクリル系重合体が配合されたゴム組成物が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-084363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者が検討したところ、特許文献1に開示されたゴム組成物を用いた場合、タイヤの転がり抵抗が低くなるものの、さらなる改善が求められる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、転がり抵抗が低いゴム製品が得られるゴム状組成物、当該ゴム組成物から得られるゴム製品、および当該ゴム製品としての空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、特許文献1に開示されたアクリロイル基を分子片末端に有する(メタ)アクリル系重合体の代わりに、特定の置換基を一方の末端に有する(メタ)アクリル系重合体を配合することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本開示の態様は、以下のゴム組成物、ゴム製品、および空気入りタイヤに関する。
【0009】
[1] ジエン系ゴム(A)、シリカ(B)、カーボンブラック(C)、シランカップリング剤(D)、および(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)を含有するゴム組成物であって、
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)の一方の末端に、下記一般式(1)で表される基を有する、ゴム組成物。
【化1】
(式(1)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~20のアリール基を表す。ただしRとRが同時に水素原子であることはない。Rは、水素原子、またはメチル基を表す。ただし前記アルキル基またはアリール基には、酸素原子、ハロゲン原子、NHR、およびNRからなる群から選択される1種以上で部分的に置換されている基も含まれる。ここでRおよびRは、同一または異なって、水素原子、または炭素数1~8のアルキル基、または炭素数6~11のアリール基を表す。Yは、炭素数1~18のアルキレン基、または単結合を表す。)
[2] ジエン系ゴム(A)100重量部に対して、シリカ(B)5~200重量部、カーボンブラック(C)0.5~50重量部、シランカップリング剤(D)0.5~20重量部、および前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)1~20重量部を含有する、[1]に記載のゴム組成物。
[3] 前記ジエン系ゴム(A)が、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、およびブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]または[2]に記載のゴム組成物。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載のゴム組成物から得られるゴム製品。
[5] [4]に記載のゴム製品である、空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、転がり抵抗が低いゴム製品が得られるゴム状組成物、当該ゴム組成物から得られるゴム製品、および当該ゴム製品としての空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪ゴム組成物≫
本実施形態のゴム組成物は、ジエン系ゴム(A)、シリカ(B)、カーボンブラック(C)、シランカップリング剤(D)、および後述する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)を含有する。
【0012】
本実施形態のゴム組成物によれば、後述する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)を含有することにより、転がり抵抗が低いゴム製品が得られる。
以下、ゴム組成物が含み得る、必須、又は任意の成分について説明する。
【0013】
<ジエン系ゴム(A)>
ジエン系ゴム(A)は、ジエン化合物を含むモノマーから得られるゴムであれば特に限定されない。ジエン系ゴム(A)としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム等が挙げられる。スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)は乳化重合法SBR、溶液重合法SBRのいずれであってもよい。また、ジエン系ゴム(A)は、変性ブタジエンゴムのように、官能基を導入したゴムであってもよい。ジエン系ゴム(A)としては、より好ましくは、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、ブタジエンゴム、又はこれらの2種以上のブレンドである。
【0014】
また、これらのジエン系ゴム(A)に、オレフィン系重合体ゴムを併用してもよい。オレフィン系重合体ゴムとしては、例えば、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム等が挙げられる。
【0015】
<シリカ(B)>
シリカ(B)は特に限定されず、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、粉砕シリカ等が挙げられる。これらのなかでは、耐摩耗性、機械特性に優れ、経済性にも優れている点で、湿式シリカが好ましい。
【0016】
シリカ(B)の含有量は、ジエン系ゴム(A)100重量部に対して、5~200重量部であることが好ましく、10~150重量部であることがより好ましく、20~100重量部であることがさらに好ましい。
【0017】
<カーボンブラック(C)>
カーボンブラック(C)は、一般的にゴム組成物に充填材として配合できるものであれば特に限定されない。カーボンブラック(C)としては、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFグレードのもの等が挙げられる。カーボンブラック(C)は、機械特性、耐摩耗性をより向上させる点で、HAF、ISAF、SAFグレードのものが好ましい。カーボンブラック(C)はそれぞれ単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
カーボンブラック(C)の含有量は、ジエン系ゴム(A)100重量部に対して、0.5~50重量部であることが好ましく、0.5~40重量部であることがより好ましく、1.0~20重量部であることがさらに好ましい。
【0019】
<シランカップリング剤(D)>
シランカップリング剤(D)としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0020】
これらの中でも、耐摩耗性により優れ、補強性改善の観点から、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、スチリルトリエトキシシランが好ましい。
【0021】
シランカップリング剤(D)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
シランカップリング剤(D)の含有量は、ジエン系ゴム(A)100重量部に対して、0.5~20重量部であることが好ましく、0.5~15重量部であることがより好ましく、1.0~10重量部であることがさらに好ましい。
【0023】
<(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)>
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の主鎖の一方の末端に、下記一般式(1)で表される基を有する。
【化2】
(式(1)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~20のアリール基を表す。ただしRとRが同時に水素原子であることはない。Rは、水素原子、またはメチル基を表す。ただし前記アルキル基またはアリール基には、酸素原子、ハロゲン原子、NHR、およびNRからなる群から選択される1種以上で部分的に置換されている基も含まれる。ここでRおよびRは、同一または異なって、水素原子、または炭素数1~8のアルキル基、または炭素数6~11のアリール基を表す。Yは、炭素数1~18のアルキレン基、または単結合を表す。)
【0024】
((メタ)アクリル酸エステル系重合体)
(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、該重合体に含まれる全構成単位100モル%中、(メタ)アクリル酸エステル系単量体に由来する構造単位を50モル%以上含み、(メタ)アクリル酸エステル系単量体以外の単量体に由来する構造単位を50モル%未満含む。
【0025】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3-トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸(3-ジメトキシメチルシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸(2-トリメトキシシリル)エチル、(メタ)アクリル酸(2-ジメトキシメチルシリル)エチル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルメチル、(メタ)アクリル酸(ジメトキシメチルシリル)メチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ビス(トリフルオロメチル)メチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチル-2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル等が挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを表す。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体以外の単量体(以下、「他の単量体」と称する場合がある。)は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体と共重合可能なビニル系単量体であれば特に限定されない。他の単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系単量体;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル系単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系単量体;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル系単量体;エチレン、プロピレン等のアルケニル系単量体;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらの他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
(式(1)で表される基)
およびRで表される炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基等が挙げられる。これらの中では、転がり抵抗が低いゴム製品が得られる観点から、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0028】
およびRで表される炭素数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、3-フェナントリル基、2-アントリル基等が挙げられる。これらの中では、転がり抵抗が低いゴム製品が得られる観点から、フェニル基、1-ナフチル基が好ましい。
【0029】
およびRで表される炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が挙げられる。
【0030】
およびRで表される炭素数6~11のアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0031】
Yで表される炭素原子数1~18のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基等が挙げられる。
【0032】
Yで表される炭素数1~18のアルキレン基と単結合の中では、転がり抵抗が低いゴム製品が得られる観点から、単結合が好ましい。
【0033】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)の数平均分子量は特に限定されず、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いたポリスチレン換算分子量で、1,000~50,000が好ましく、1,000~20,000がより好ましく、1,000~15,000がさらに好ましい。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)の分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されず、例えば、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.8以下がさらに好ましく、1.6以下がより更に好ましく、1.4以下が特に好ましい。下限は特に限定されないが、1以上であればよい。
【0035】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)の含有量は、ジエン系ゴム(A)100重量部に対して、1~20重量部であることが好ましく、1~15重量部であることがより好ましく、1~10重量部であることがさらに好ましい。
【0036】
((メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)の製造方法)
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)は、従来既知の重合法により得ることができる。中でも、モノマーの汎用性、末端への上記式(1)で表される基の導入が容易であるという観点から、ラジカル重合法またはアニオン重合法が好ましい。ラジカル重合法は、「連鎖移動剤法」と「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。
連鎖移動剤法としては、特開平9-104718号公報に記載されているように、カルボキシル基を有する連鎖移動剤存在下に前述の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、および必要に応じて前述の他の単量体を重合し、次いで後述する不飽和カルボン酸を反応させることにより、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の片末端に式(1)で表される基を導入させる方法が一般的である。
リビングラジカル重合法としては、たとえば、特開2005-232419号公報や、特開2006-291073号公報などに記載されているように、有機ハロゲン化物を開始剤とし、遷移金属錯体を重合触媒として用い、前述の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、および必要に応じて前述の他の単量体を重合し、末端ハロゲン官能基を式(1)で表される基に変換することができる。
【0037】
原子移動ラジカル重合について、以下に簡単に説明する。
【0038】
原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素-ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いることが好ましい。
【0039】
原子移動ラジカル重合において用いられる(メタ)アクリル酸エステル系単量体、および必要に応じて用いられる他の単量体としては特に制約はなく、例示した(メタ)アクリル酸エステル系単量体、および必要に応じて用いられる他の単量体をすべて好適に用いることができる。
【0040】
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、又は11族元素を中心金属とする金属錯体でありより好ましくは0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルを中心金属とする遷移金属錯体、特に好ましくは銅の錯体が挙げられる。銅の錯体を形成するために使用される1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′-ビピリジル若しくはその誘導体、1,10-フェナントロリン若しくはその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン若しくはヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミン等のポリアミン等が配位子として添加される。
【0041】
重合反応は、無溶媒でも可能であるが、各種の溶媒中で行うこともできる。溶媒の種類としては特に限定されず、特開2005-232419公報段落[0067]記載の溶剤が挙げられる。これらは、単独でもよく、2種以上を併用してもよい。また、エマルジョン系もしくは超臨界流体COを媒体とする系においても重合を行うことができる。
【0042】
重合温度は、限定はされないが、0~200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、室温~150℃の範囲である。
【0043】
上記式(1)で表される基を導入する方法としては、例えば、特開2004-203932公報の段落[0080]~[0091]記載の方法が挙げられる。これらの方法の中でも制御がより容易である点から、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の末端ハロゲン基を、上記式(1)で表される基を与える不飽和カルボン酸で置換することにより製造されたものであることが好ましい。
【0044】
末端ハロゲン基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、前述した有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒として重合する方法、あるいは、ハロゲン化合物を連鎖移動剤として重合する方法により製造されるが、好ましくは前者である。
【0045】
上記不飽和カルボン酸としては、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【化3】
(式(2)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~20のアリール基を表す。ただしRとRが同時に水素原子であることはない。Rは、水素原子、またはメチル基を表す。ただし前記アルキル基またはアリール基には、酸素原子、ハロゲン原子、NHR、およびNRからなる群から選択される1種以上で部分的に置換されている基も含まれる。ここでRおよびRは、同一または異なって、水素原子、または炭素数1~8のアルキル基、または炭素数6~11のアリール基を表す。Yは、炭素数1~18のアルキレン基、または単結合を表す。)
【0046】
式(2)において、RおよびRで表される炭素数1~20のアルキル基、RおよびRで表される炭素数6~20のアリール基、RおよびRで表される炭素数1~8のアルキル基、RおよびRで表される炭素数6~11のアリール基、Yで表される炭素原子数1~18のアルキレン基としては、前述の式(1)におけるRおよびRで表される炭素数1~20のアルキル基、RおよびRで表される炭素数6~20のアリール基、RおよびRで表される炭素数1~8のアルキル基、RおよびRで表される炭素数6~11のアリール基、Yで表される炭素原子数1~18のアルキレン基と同様の基が挙げられる。
【0047】
式(2)で表される化合物の中でも、桂皮酸、p-クマル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、クロトン酸、オレイン酸、trans-2-ペンテン酸、trans-2-ヘキセン酸等が好ましい。
【0048】
この反応に用いられる溶媒は特に限定されず、通常、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル等が用いられる。
【0049】
反応温度は特に限定されず、一般に0~150℃であり、室温~120℃が好ましい。
【0050】
(他の成分)
ゴム組成物は、本発明の効果を損なわない限り、前述したジエン系ゴム(A)、シリカ(B)、カーボンブラック(C)、シランカップリング剤(D)、および(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E)以外の成分(以下、「他の成分」ともいう。)を含有してもよい。他の成分としては、通常、ゴム業界で用いられている、充填剤、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤等の配合剤をその目的、用途に合わせ、適宜配合することができる。
【0051】
充填剤としては、前述のシリカ(B)、カーボンブラック(C)以外に、例えば、酸化アルミニウム、有機短繊維、(メタ)アクリル系樹脂微粒子、エポキシ樹脂微粒子、ガラス微粒子、ガラス繊維、フレークグラファイト等が挙げられる。
【0052】
可塑剤としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等の石油系プロセスオイル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジブチル等の二塩基酸ジアルキル、液状ポリブテン、液状ポリイソプレン等の低分子量液状ポリマー、オレンジオイル等の天然オイルが挙げられる。これらの中でも、ゴム成分との相溶性から、液状ポリブテン、液状ポリイソプレン、芳香族系プロセスオイルが好ましい。
【0053】
加硫剤としては、例えば、硫黄、フェノール樹脂、金属酸化物、過酸化物等が挙げられる。
【0054】
加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール(M)、2,2-ジチオビスベンゾチアゾール(DM)、メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(MZ)、メルカプトベンゾチアゾールシクロヘキシルアミン塩(M60)、2,4-ジニトロフェニルチオベンゾチアゾール(DBM)、N,N-ジエチルチオカルバモイルチオベンゾチアゾール(64)等のチアゾール系加硫促進剤、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾイルスルフェンアミド(CZ)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(NS)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾイルスルフェンアミド(NOBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾイルスルフェンアミド(DZ)、モルフォリノジチオベンゾチアゾール(MDB)等のスルフェンアミド系加硫促進剤、ヘキサメチレンテトラミン(H)等のアミン系加硫促進剤、ブチルアルデヒドアニリン(B)、ブチルアルデヒドモノブチルアミン(833)等のアルデヒドアンモニア系加硫促進剤、ジフェニルグアニジン(D)、ジ-o-トリルグアニジン(DT)、o-トリルグアニジン(BG)、ジカテコールホウ酸-ジ-o-トリルグアニジン塩(PR)等のグアニジン系、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TET)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBT)、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド(TRA)、テトラベンジルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤、が挙げられる。
【0055】
これらの他の成分は、通常、ジエン系ゴム(A)100重量部に対して、0.2~40重量部使用される。加硫促進剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
<ゴム組成物の製造方法>
ゴム組成物の製造方法は、従来ゴム業界で行われている方法を採用すれ特に限定されず、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等)を用いて、混練する方法等が挙げられる。
【0057】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を配合する場合、混練温度は、通常50~200℃であり、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分であり、好ましくは1分~30分である。
【0058】
加硫剤、加硫促進剤を配合する場合、混練温度は、通常100℃以下であり、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を配合した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理を行って用いられる。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0059】
<ゴム製品>
ゴム製品は、前述のゴム組成物から得られる。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階で成形した成形物を形成する。この未加硫成形物を加硫機中で加熱加圧して、ゴム製品を製造できる。
【0060】
ゴム製品としては、例えば、空気入りタイヤ、ケーブル被覆剤、ホース、トラスミッションベルト、コンベアベルト、ロールカバー、靴本体または靴底、シール用リング、防振ゴム等が挙げられる。
【0061】
<空気入りタイヤ>
空気入りタイヤは、前述のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して、本発明の空気入りタイヤを製造できる。
【0062】
空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ(重荷重用タイヤ)として好適に用いることができる。
【0063】
ゴム組成物を空気入りタイヤに用いたとき、そのタイヤの性能は以下の指標で推定される。
【0064】
転がり抵抗は60℃付近で10~100Hz前後の振動であるので、10Hzにおいて、40℃~70℃のtanδで表される。
【0065】
ウェットグリップ性は、タイヤの表面近傍の変形に依存していると考えられている。この表面近傍の変形は、非常に高い周波数の振動であることがわかっており、温度周波数換算を用いると、ウェットグリップ性は、10Hzにおいて、-20℃~0℃のtanδで表される。
【実施例0066】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0067】
[測定方法]
(1)分子量
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いた標準ポリスチレン換算法により、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。SECの仕様は下記の通りである。
・SECシステム:HLC-8320(東ソー株式会社)
・固定相:TSKgel SuperHM-N(東ソー株式会社)
・移動相:クロロホルム
(2)転がり抵抗
加硫したゴム硬化物から、長さ40mm、幅5mm、厚さ2mmの試験片を切り出し、動的粘弾性測定装置DVA-200(アイティー計測制御株式会社)を用いて60℃におけるtanδを測定した。この特性については、基準サンプル(後述の比較例1)を100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、転がり抵抗に優れる。測定条件は、下記の通りであった。
・測定温度:-20℃~80℃
・昇温速度:2℃/min
・初期歪み:10%
・振幅:±1%
・周波数:10Hz
(3)ウェットグリップ性
転がり抵抗と同様にして0℃におけるtanδを測定した。この特性については、基準サンプル(後述の比較例1)を100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、ウェットグリップ性に優れる。
【0068】
[材料]
実施例および比較例で使用した材料は、下記の通りである。
ジエン系ゴム(A):タフデン2000R(旭化成株式会社)
シリカ(B):ニップシールAQ(東ソー・シリカ株式会社)
カーボンブラック(C):ダイアブラックN339(三菱ケミカル株式会社)
シランカップリング剤(D):Si69(Evonik)
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(E):下記重合体1~6
・重合体1:製造例1で得たもの
・重合体2:製造例2で得たもの
・重合体3:製造例3で得たもの
・重合体4:製造例4で得たもの
・重合体5:製造例5で得たもの
・重合体6:製造例6で得たもの
【0069】
(他の成分)
・老化防止剤:ノクラック6C(大内新興化学工業株式会社)
・可塑剤:アロマックス3(ENEOS株式会社)
・加硫剤:硫黄(富士フイルム和光純薬株式会社)
・加硫促進剤:1,3-ジフェニルグアニジン(東京化成工業株式会社)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(富士フイルム和光純薬株式会社)
・加硫促進助剤:ステアリン酸(富士フイルム和光純薬株式会社)、酸化亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社)
【0070】
[製造例1:重合体1の製造]
アクリル酸ブチル440g(3.43mol)、メタノール220g、トリエチルアミン5.92g(58.5mmol)、および2-ブロモイソ酪酸エチル76g(0.39mol)を仕込み、これに、別途調製した銅錯体溶液(臭化銅(II)0.2178g(0.9753mmol)をメタノール22gに溶解させ、純度96%のトリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン0.2247g(0.9753mmol)を混合した溶液)を混合し、窒素バブリングを30分間行った後、40℃で撹拌した。アスコルビン酸0.3435g(1.951mmol)およびトリエチルアミン0.3947g(3.901mmol)を、あらかじめ30分間窒素バブリングしたメタノール68.00gに溶解し、このアスコルビン酸溶液を滴下して重合を開始した。アスコルビン酸溶液の滴下速度は、1時間あたり0.0281g(0.1597mmol)のアスコルビン酸が重合系に投入される速度とした。重合途中は随時重合溶液を抜き取り、アクリル酸ブチルの消費率をガスクロマトグラフィーにより測定した。アスコルビン酸溶液を滴下開始してから120分後には、アクリル酸ブチルの52.1%が消費されていることを確認した。そこに、あらかじめ30分間窒素バブリングしたアクリル酸ブチル660g(5.15mol)を120分かけて滴下した。アスコルビン酸溶液を滴下開始してから340分後に、アクリル酸ブチルの95.2%が消費されていることを確認し、アスコルビン酸溶液の滴下を停止した。当該時点におけるアクリル酸ブチルの重合体の数平均分子量は3,080、分子量分布は1.09であった。次に反応溶液を80℃で1時間減圧濃縮した。濃縮された反応溶液に酢酸ブチル1100g、キョーワード500SH(協和化学工業株式会社)11g、キョーワード700SEN-S(協和化学工業株式会社)11gを添加し、100℃で1時間撹拌した。次に、得られた反応溶液をろ過し、ろ液Aを得た。
220gのろ液Aに桂皮酸6.519g(0.04400mol)、炭酸カリウム3.547g(0.02567mol)、キョーワード700SEN-S(協和化学工業株式会社)0.44g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル0.011g、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム0.264gを仕込み、120℃で5時間撹拌した。得られた反応溶液をろ過し、さらに得られたろ液を120℃で3時間減圧濃縮することにより、重合体1を得た。得られた重合体1の1H NMR測定により、分子末端に桂皮酸に由来する基が重合体1分子あたり0.97個導入されたのを確認した。得られた重合体1の数平均分子量は3,180、分子量分布は1.10であった。
【0071】
[製造例2:重合体2の製造]
桂皮酸の代わりにクロトン酸3.788g(0.04400mol)を用いたこと以外は製造例1と同様に製造することで、重合体2を得た。得られた重合体2の1H NMR測定により、分子末端にクロトン酸に由来する基が重合体1分子あたり0.92個導入されたのを確認した。得られた重合体2の数平均分子量は2,970、分子量分布は1.13であった。
【0072】
[製造例3:重合体3の製造]
上記ろ液Aを120℃で3時間減圧濃縮することにより、重合体3を得た。得られた重合体3の数平均分子量は3,110、分子量分布は1.10であった。
【0073】
[製造例4:重合体4の製造]
桂皮酸および炭酸カリウムを使用せず、アクリル酸カリウム4.847g(0.04400mol)を用い、4時間加熱撹拌したこと以外は製造例1と同様に製造することで、重合体4を得た。得られた重合体4の1H NMR測定により、分子末端にアクリロイル基が重合体1分子あたり0.92個導入されたのを確認した。得られた重合体4の数平均分子量は3,150、分子量分布は1.11であった。
【0074】
[製造例5:重合体5の製造]
桂皮酸の代わりに4-ペンテン酸6.608g(0.06600mol)を用い、炭酸カリウムの使用量を5.068g(0.03667mol)とし、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの使用量を0.132gとし、3時間加熱撹拌したこと以外は製造例1と同様に製造することで、重合体5を得た。得られた重合体5の1H NMR測定により、分子末端に4-ペンテン酸に由来する基が重合体1分子あたり0.96個導入されたのを確認した。得られた重合体5の数平均分子量は3,250、分子量分布は1.10であった。
【0075】
[製造例6:重合体6の製造]
アクリル酸ブチル20.00g(0.1560mol)、トルエン12g、RAFT剤である2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボナート(CPDT)1.6231g(4.6963mmol)を仕込み、これに、別途調整したV-59溶液(0.1000g(0.5201mmol)のV-59をトルエン9.9000gに溶解させた溶液)を0.9604g加え、窒素バブリングを30分間行った後、70℃で撹拌して重合を開始した。重合途中は随時重合溶液を抜き取り、アクリル酸ブチルの消費率をガスクロマトグラフィーにより測定した。重合を開始してから8時間後には、アクリル酸ブチルの77.1%が消費されていることを確認し、加熱を止めた。次に反応溶液を105℃で1時間減圧濃縮することにより、重合体6を得た。得られた重合体6の吸光度測定により、分子末端にCPDTに由来する基が重合体1分子あたり0.95個導入されたのを確認した。得られた重合体6の数平均分子量は3,950、分子量分布は1.06であった。
【0076】
[実施例1~2、比較例1~5]
表1に記載の成分を用意した(単位:重量部)。加硫剤および加硫促進剤以外の成分を100℃に設定したラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所、型番「4C150」)を用いて15分間混練したのち、混合物を一旦取り出して冷却した。再び混合物をラボプラストミルに投入し、樹脂温度が90℃を超えないようにして、加硫剤および加硫促進剤を加えて、5分間混練しゴム組成物を得た。該ゴム組成物をプレス機(株式会社神藤金属工業所、型番「NSF-50」)を用いて170℃で30分間プレス成型し、厚さ2mmのシートを作製した。該シートから試験片を切り出し、動的粘弾性を測定して転がり抵抗、ウェットグリップ性を評価した。結果を表1に示す。
【0077】
表1から分かるように、実施例に係るゴム組成物から得られたシートは、比較例に係るゴム組成物から得られたシートと比較して、ウェットグリップ性はほぼ同等で、転がり抵抗が改善されている。
【0078】
【表1】