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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104813
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20250703BHJP
【FI】
B60C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222928
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】石崖 雄一
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC05
3D131BC22
3D131GA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タイヤ重量の増加を抑制しつつ、サイドウォール部の耐カット性能を向上することができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】本発明は、空気入りタイヤに関する。本発明の空気入りタイヤは、トレッド部と、第1サイドウォール部とを含む。第1サイドウォール部は、複数のプロテクタ10と、間隙部とを含む。プロテクタ10のそれぞれのタイヤ周方向の長さは、プロテクタ10のタイヤ周方向の一方側で隣接する間隙部のタイヤ周方向の長さよりも大きい。複数のプロテクタ10のそれぞれは、頂面14と側面15とを含む。第1サイドウォール部の正面視において、側面15の少なくとも一部は、頂面14の外縁14eよりも頂面14の中心側で基準面9に連なるアンダーカット面18を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、前記トレッド部からタイヤ半径方向内側に延びる第1サイドウォール部とを含み、
前記第1サイドウォール部は、基準面からタイヤ軸方向外側に隆起し、かつ、タイヤ周方向に並ぶ複数のプロテクタと、タイヤ周方向に隣接する前記プロテクタの間のそれぞれに形成された間隙部とを含み、
前記プロテクタのそれぞれのタイヤ周方向の長さは、前記プロテクタのタイヤ周方向の一方側で隣接する前記間隙部のタイヤ周方向の長さよりも大きく、
前記複数のプロテクタのそれぞれは、タイヤ軸方向外側を向く頂面と、前記頂面の外縁と前記基準面とを繋ぐ側面とを含み、
前記第1サイドウォール部の正面視において、前記側面の少なくとも一部は、前記頂面の外縁よりも前記頂面の中心側で前記基準面に連なるアンダーカット面を含む、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記側面は、タイヤ半径方向に延びる一対の第1側面を含み、
前記一対の第1側面の少なくとも一方は、前記アンダーカット面を含む、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記側面は、タイヤ周方向に延びる一対の第2側面を含み、
前記一対の第2側面の少なくとも一方は、前記アンダーカット面を含む、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記複数のプロテクタの少なくとも一つは、タイヤ半径方向に沿った横断面において、前記プロテクタの前記基準面におけるタイヤ半径方向の長さは、前記頂面のタイヤ半径方向の長さの85%~95%である、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記プロテクタの最大の隆起高さは、1.5~3.5mmである、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記トレッド部のタイヤ半径方向の外端から前記プロテクタのタイヤ半径方向の外端までのタイヤ半径方向の距離は、50~100mmである、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記プロテクタのそれぞれのタイヤ周方向の長さは、前記プロテクタに隣接する前記間隙部のタイヤ周方向の長さの2倍以上である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記アンダーカット面は、前記頂面の中心側に凹んだ湾曲面を含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、サイドウォール部にサイドプロテクタが形成された空気入りタイヤが提案されている。前記サイドプロテクタは、サイドウォール部の耐カット性能を高めるのに役立つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-003947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、上述の耐カット性能のさらなる向上が求められている。その方法として、上述のプロテクタを、タイヤ周方向に密に配置することが考えられる。しかしながら、このような方法は、タイヤ重量の増加を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、タイヤ重量の増加を抑制しつつ、サイドウォール部の耐カット性能を向上することができる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気入りタイヤであって、トレッド部と、前記トレッド部からタイヤ半径方向内側に延びる第1サイドウォール部とを含み、前記第1サイドウォール部は、基準面からタイヤ軸方向外側に隆起し、かつ、タイヤ周方向に並ぶ複数のプロテクタと、タイヤ周方向に隣接する前記プロテクタの間のそれぞれに形成された間隙部とを含み、前記プロテクタのそれぞれのタイヤ周方向の長さは、前記プロテクタのタイヤ周方向の一方側で隣接する前記間隙部のタイヤ周方向の長さよりも大きく、前記複数のプロテクタのそれぞれは、タイヤ軸方向外側を向く頂面と、前記頂面の外縁と前記基準面とを繋ぐ側面とを含み、前記第1サイドウォール部の正面視において、前記側面の少なくとも一部は、前記頂面の外縁よりも前記頂面の中心側で前記基準面に連なるアンダーカット面を含む、空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空気入りタイヤは、上記の構成を採用したことによって、タイヤ重量の増加を抑制しつつ、サイドウォール部の耐カット性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の空気入りタイヤの横断面図である。
図2】第1サイドウォール部の拡大斜視図である。
図3】プロテクタの正面図である。
図4図3のA-A線断面図である。
図5】非アンダーカット面の断面図である。
図6】別の実施形態におけるアンダーカット面の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図面は、本発明の特徴を内包して記載されているが、本発明の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれている場合がある。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。
【0010】
図1には、本発明の一実施形態を示す空気入りタイヤ1(以下、単に「タイヤ1」という場合がある。)の横断面図が示されている。図1は、正規状態におけるタイヤ1についての、タイヤ回転軸を含む子午線断面を示す図である。図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤである。本実施形態のタイヤ1は、舗装路のみならず、砂利や比較的大きな石を含んだガレキ路面等の不整地走行にも対応できる。このため、本実施形態のタイヤ1は、SUV用として好適に使用される。このようなタイヤ1は、サイドウォール部の耐カット性能が要求される。
【0011】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0012】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0013】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0014】
タイヤ1は、トレッド部2、第1サイドウォール部3A、第2サイドウォール部3B、第1ビード部4A及び第2ビード部4Bを含む。第1サイドウォール部3A及び第2サイドウォール部3Bは、トレッド部2からタイヤ半径方向内側に延びている。第1ビード部4Aは、第1サイドウォール部3Aのタイヤ半径方向内側に連なっている。第2ビード部4Bは、第2サイドウォール部3Bのタイヤ半径方向内側に連なっている。第2サイドウォール部3Bは、第1サイドウォール部3Aと実質的に同じ構成を備えている。第2ビード部4Bは、第1ビード部4Aと実質的に同じ構成を備えている。したがって、以下で説明される第1サイドウォール部3Aの構成は、第2サイドウォール部3Bに適用されても良い。
【0015】
また、タイヤ1は、カーカス6及びトレッド補強層7を含む。カーカス6は、第1ビード部4Aから、第1サイドウォール部3A、トレッド部2、第2サイドウォール部3Bを通って、第2ビード部4Bまで延びている。トレッド補強層7は、トレッド部2においてカーカス6のタイヤ半径方向外側に設けられている。カーカス6及びトレッド補強層7には、公知の構成が適用され、ここでの詳細な説明は省略される。
【0016】
トレッド部2は、2つのトレッド端Teを有する。トレッド端Teは、通常走行時におけるトレッド部2の接地面の端に相当する。トレッド端Teが、トレッド部2の接地面と第1サイドウォール部3Aの外面との境界となる。
【0017】
図2には、第1サイドウォール部3Aの一部を示す拡大斜視図が示されている。なお、図2で示される断面では、タイヤ内部材が省略されている。図2に示されるように、第1サイドウォール部3Aは、複数のプロテクタ10を含む。プロテクタ10は、第1サイドウォール部3Aの基準面9からタイヤ軸方向外側に隆起し、タイヤ周方向に並んでいる。望ましい態様として、本実施形態では、複数のプロテクタ10がタイヤ全周に亘って配置されている。また、第1サイドウォール部3Aの基準面9とは、カーカス6(図1に示す)に沿って延びることにより、第1サイドウォール部3Aの輪郭を構成する面であって、第1サイドウォール部3Aの外面における微細な凹凸を除外したものを意味する。
【0018】
図3には、プロテクタ10の正面図が示されている。図3に示されるように、第1サイドウォール部3Aは、タイヤ周方向に隣接するプロテクタ10の間のそれぞれに形成された間隙部11とを含む。本発明では、プロテクタ10のそれぞれのタイヤ周方向の長さL1は、プロテクタ10のタイヤ周方向の一方側で隣接する間隙部11のタイヤ周方向の長さL2よりも大きい。なお、前記長さL1は、後述するプロテクタ10の頂面14で測定したものであり、第1サイドウォール部3Aの正面視におけるプロテクタ10のタイヤ周方向の最大の長さを意味する。また、前記長さL2は、プロテクタ10の隆起高さと同じ位置で測定したものであり、前記正面視における間隙部11のタイヤ周方向の最大の長さを意味する。
【0019】
図4には、図3のA-A線断面図が示されている。なお、図4では、発明を理解し易いように、プロテクタ10に含まれる湾曲成分を除外して描画されている。図4に示されるように、複数のプロテクタ10のそれぞれは、タイヤ軸方向外側を向く頂面14と、頂面14の外縁14eと基準面9とを繋ぐ側面15とを含む。図3及び図4に示されるように、第1サイドウォール部3Aの正面視において、側面15の少なくとも一部は、頂面14の外縁よりも頂面14の中心側で基準面9に連なるアンダーカット面18を含む。なお、図3では、アンダーカット面18と基準面9とで形成される稜線が、破線で示されている。本発明のタイヤ1は、上述の特徴を備えることにより、タイヤ重量の増加を抑制しつつ、サイドウォール部の耐カット性能を向上することができる。その理由は、以下の通りである。
【0020】
図3に示されるように、本発明では、プロテクタ10の前記長さL1が間隙部11の前記長さL2より大きいため、複数のプロテクタ10がタイヤ周方向に密に配置される。これにより、第1サイドウォール部3Aの耐カット性能を向上させることができる。一方、図4に示されるように、本発明では、プロテクタ10の側面15がアンダーカット面18を含むため、側面が非アンダーカット面で構成された従来のプロテクタと比較して、プロテクタ10のゴムボリュームを減じることができ、ひいてはタイヤ重量の増加を抑制することができる(以下、この効果を「タイヤ重量抑制効果」という場合がある。)。
【0021】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0022】
図1に示されるように、プロテクタ10は、第1サイドウォール部3Aにおける損傷し易い位置に配置されるのが望ましい。この観点から、プロテクタ10は、タイヤ最大幅位置を含むように配置されているのが望ましい。また、トレッド部2のタイヤ半径方向の外端からプロテクタ10のタイヤ半径方向の外端までのタイヤ半径方向の距離L3は、例えば、50~100mmである。これにより、第1サイドウォール部3Aの耐カット性能がさらに向上する。
【0023】
なお、本明細書において各種のパラメータの数値範囲が説明されている場合、特に断りの無い限り、前記数値範囲は、当該パラメータの平均の値についての数値範囲を意味している。このため、例えば、前記距離L3は、トレッド部2のタイヤ半径方向の外端からプロテクタ10のタイヤ半径方向の外端までの距離について、タイヤ周方向の複数の位置で測定したものの平均の値を意味する。後述される他のパラメータも、同様である。
【0024】
図3に示されるように、本実施形態のプロテクタ10は、第1サイドウォール部3Aの正面視において、タイヤ半径方向に延びる短辺と、タイヤ周方向に延びる湾曲した長辺とを有する横長矩形状である。また、本実施形態では、実質的に同一の形状のプロテクタ10が、タイヤ全周に亘って配置されている。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0025】
タイヤ重量抑制効果と耐カット性能とをバランス良く発揮させる観点から、プロテクタ10のタイヤ半径方向の長さL4(頂面14で測定したものである。)は、例えば、15~35mmであり、望ましくは20~30mmである。同様の観点から、プロテクタ10のタイヤ周方向の長さL1は、例えば、50~150mmであり、望ましくは80mm~120mmである。また、前記長さL1は、前記長さL4の3.0~5.0倍であるのが望ましい。
【0026】
図4に示されるように、本実施形態では、プロテクタ10が実質的に一定の隆起高さを有している。プロテクタ10の最大の隆起高さh1は、例えば、1.5~3.5mmである。このようなプロテクタ10は、タイヤ重量の増加を抑制しつつ、効果的に第1サイドウォール部3Aを保護することができる。
【0027】
図3に示されるように、プロテクタ10の側面15は、タイヤ半径方向に延びる一対の第1側面16と、タイヤ周方向に延びる一対の第2側面17とを含む。第1側面16は、間隙部11の内壁を構成している。頂面14と第1側面16との間の外縁14eは、例えば、タイヤ半径方向に対して10°以下の角度で延びている。第2側面17は、タイヤ半径方向の内側又は外側を向いている。頂面14と第2側面17との間の外縁14eは、例えば、タイヤ周方向に対して10°以下の角度で延びている。
【0028】
アンダーカット面18は、側面15の一部に構成されても、タイヤ重量抑制効果を期待できる。但し、側面15の出来るだけ多くの範囲にアンダーカット面18が構成される方が、上述の効果をさらに高めることができる。この観点から、本実施形態では、一対の第1側面16の少なくとも一方、望ましくは両方が、アンダーカット面18を含む。同様に、一対の第2側面17の少なくとも一方、望ましくは両方が、アンダーカット面18を含む。また、より望ましい態様として、本実施形態の第1側面16及び第2側面17には、それぞれ、その全体に亘ってアンダーカット面18が構成されている。すなわち、本実施形態では、プロテクタ10の全周に亘って、側面15がアンダーカット面18として構成されている。これにより、タイヤ重量の増加を確実に抑制することができる。
【0029】
図5には、従来のプロテクタPの側面に採用される非アンダーカット面NCUの断面図が示されている。非アンダーカット面NCUが構成された領域は、その周辺で高い剛性を有し、プロテクタPが優れた保護性能を発揮できる。このため、別の実施形態では、図3で示されるプロテクタ10において、一対の第1側面16の両方が図5で示される非アンダーカット面NCUで構成され、一対の第2側面17の両方が既述のアンダーカット面18で構成されても良い。このような実施形態では、プロテクタ10のタイヤ周方向の剛性が向上する。したがって、このような実施形態は、タイヤ重量抑制効果を得つつ、舗装路面走行時において第1サイドウォール部3Aが縁石と接触したとき等、プロテクタ10にタイヤ周方向の応力が作用したときの耐久性を高めることができる。
【0030】
さらに別の実施形態では、図3で示されるプロテクタ10において、一対の第2側面17の両方が図5で示される非アンダーカット面NCUで構成され、一対の第1側面16の両方がアンダーカット面18で構成されても良い。このような実施形態では、プロテクタ10のタイヤ半径方向の剛性が向上する。したがって、このような実施形態は、タイヤ重量抑制効果を得つつ、ガレキ路面走行時において第1サイドウォール部3Aが石と接触したとき等、プロテクタ10にタイヤ半径方向の応力が作用したときの耐久性を高めることができる。
【0031】
図4に示されるように、複数のプロテクタ10の少なくとも一つは、タイヤ半径方向に沿った横断面において、プロテクタ10の基準面9におけるタイヤ半径方向の長さL5は、頂面14のタイヤ半径方向の長さL4の85%~95%である。これにより、加硫成形時の金型脱型性を高めつつ、上述の効果を得ることができる。
【0032】
本実施形態のアンダーカット面18は、一定の角度で傾斜した平面状で構成されている。但し、後述されるように、アンダーカット面18は、湾曲するものでも良い。基準面9とアンダーカット面18との間の角度θaは、例えば、40~70°である。このようなアンダーカット面18は、優れた金型脱型性を発揮しつつ、タイヤ重量抑制効果を得ることができる。
【0033】
前記角度θaを大きくすると、プロテクタ10の剛性を高く維持することができる。また、前記角度θaを小さくすると、タイヤ重量抑制効果を高めることができる。このため、図3に示されるように、第1側面16及び第2側面17の両方がアンダーカット面18を含む場合、所望する性能に応じ、上述の角度θaを各側面で相違させることが考えられる。このため、別の実施形態では、第1側面16における基準面9とアンダーカット面18との間の角度θa1(図示省略)が、第2側面17における基準面9とアンダーカット面18との間の角度θa2(図示省略)よりも大きいものでも良い。このような実施形態は、プロテクタ10のタイヤ周方向の剛性が相対的に向上し、プロテクタ10の耐久性を高めることができる。
【0034】
さらに別の実施形態では、前記角度θa2が、前記角度θa1よりも大きいものでも良い。このような実施形態は、ガレキ路面の走行時等、プロテクタ10にタイヤ半径方向の応力が作用し易い状況下での、プロテクタ10の耐久性を向上させる。
【0035】
図3に示されるように、間隙部11は、タイヤ周方向の長さがタイヤ半径方向外側に向かって僅かに拡大している。また、本実施形態では、実質的に同一の形状の間隙部11が、タイヤ全周に亘って配置されている。プロテクタ10のそれぞれのタイヤ周方向の長さL1は、プロテクタ10に隣接する間隙部11のタイヤ周方向の長さL2の2倍以上とされ、望ましくは4~10倍とされる。また、間隙部11が上記の通り規定されることにより、複数のプロテクタ10のタイヤ周方向の長さL1の合計ΣL1は、複数のプロテクタ10を通ってタイヤ全周に延びる仮想周長Rvの70%以上である。これにより、プロテクタ10によって十分な耐カット性能が発揮される。なお、前記合計ΣL1は、プロテクタ10のタイヤ周方向の最大の長さの合計を意味する。また、前記仮想周長Rvは、第1サイドウォール部3Aの正面視において、複数のプロテクタ10との重複長さが最も大きくなる仮想円についての円周の長さに相当する。
【0036】
図6には、別の実施形態におけるアンダーカット面18の拡大断面図が示されている。図6に示されるように、この実施形態のアンダーカット面18は、頂面14の中心側(図6の矢印A1側である。)に凹んだ湾曲面21を含む。このような実施形態では、金型脱型性をより一層高めることができる。
【0037】
この実施形態のプロテクタ10の隆起高さh1は、例えば、1.5~5.0mmとされる。また、このアンダーカット面18の最大凹み量d1(頂面14の外縁14eからの凹み量である)は、例えば、1.0mm以上であり、望ましくは1.0~3.0mmである。このようなプロテクタ10は、タイヤ重量抑制効果と金型脱型性とをバランス良く高めることができる。
【0038】
この湾曲面21は、頂面14の外縁14eから、隆起高さh1の10%~40%の距離L6を隔てているのが望ましい。また、湾曲面21は、外縁14eからプロテクタ10の高さ方向に延びる外面23に対して、2.0~5.0mmの曲率半径を有する逆R面を介して連なっているのが望ましい。また、この湾曲面21は、基準面9に対して滑らかに湾曲して連なっているのが望ましい。湾曲面21と基準面9との接続部24の曲率半径r1は、例えば、1.0mm以上であり、望ましくは1.0~2.0mmである。このような湾曲面21からなるアンダーカット面18により、金型脱型性をさらに高めることができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0040】
実施例として、図1の基本構造を有するサイズ235/65R16Cの空気入りタイヤが試作された。実施例のタイヤにおいて、プロテクタの側面の全周がアンダーカット面として構成されている。比較例1として、サイドウォール部にプロテクタが設けられていないタイヤが作成された。また、比較例2として、サイドウォール部にプロテクタが設けられているが、プロテクタの側面の全周が非アンダーカット面として構成されたタイヤが試作された。比較例1及び2は、上記の事項を除き、実施例のタイヤと実質的に同じである。また、比較例2及び各実施例は、プロテクタの頂面のタイヤ半径方向の長さが共通している。これらのテストタイヤについて、耐カット性能及びタイヤ重量抑制効果がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:16×7.0J
タイヤ内圧:240kPa
テスト車両:排気量2000cc、4輪駆動
【0041】
<耐カット性能>
テストタイヤが装着された上記テスト車両でガレキ路面を走行し、サイドウォール部の損傷度を評点化した。結果は、数値が大きい程、優れた耐カット性能を発揮していることを示す。
【0042】
<タイヤ重量抑制効果>
各テストタイヤの重量が測定され、プロテクタが設けられていない比較例1とタイヤ重量の比較が実施された。結果は、比較例1とのタイヤ重量の差分の逆数を指数化したものであり、数値が大きい程、タイヤ重量抑制効果が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示されるように、プロテクタを有していない比較例1は、耐カット性能が低い。これに対し、比較例2及び実施例1~5は、プロテクタを有しているため、耐カット性能が有意に向上している。一方、従来のプロテクタを有する比較例2は、タイヤ重量抑制効果が80ポイントと低いのに対し、実施例1~5は、タイヤ重量抑制効果が100~120ポイントである。すなわち、本発明のタイヤは、タイヤ重量の増加を抑制しつつ、サイドウォール部の耐カット性能を向上させていることが確認できた。
【0045】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0046】
[本発明1]
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、前記トレッド部からタイヤ半径方向内側に延びる第1サイドウォール部とを含み、
前記第1サイドウォール部は、基準面からタイヤ軸方向外側に隆起し、かつ、タイヤ周方向に並ぶ複数のプロテクタと、タイヤ周方向に隣接する前記プロテクタの間のそれぞれに形成された間隙部とを含み、
前記プロテクタのそれぞれのタイヤ周方向の長さは、前記プロテクタのタイヤ周方向の一方側で隣接する前記間隙部のタイヤ周方向の長さよりも大きく、
前記複数のプロテクタのそれぞれは、タイヤ軸方向外側を向く頂面と、前記頂面の外縁と前記基準面とを繋ぐ側面とを含み、
前記第1サイドウォール部の正面視において、前記側面の少なくとも一部は、前記頂面の外縁よりも前記頂面の中心側で前記基準面に連なるアンダーカット面を含む、
空気入りタイヤ。
[本発明2]
前記側面は、タイヤ半径方向に延びる一対の第1側面を含み、
前記一対の第1側面の少なくとも一方は、前記アンダーカット面を含む、本発明1に記載の空気入りタイヤ。
[本発明3]
前記側面は、タイヤ周方向に延びる一対の第2側面を含み、
前記一対の第2側面の少なくとも一方は、前記アンダーカット面を含む、本発明1又は2に記載の空気入りタイヤ。
[本発明4]
前記複数のプロテクタの少なくとも一つは、タイヤ半径方向に沿った横断面において、前記プロテクタの前記基準面におけるタイヤ半径方向の長さは、前記頂面のタイヤ半径方向の長さの85%~95%である、本発明1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
[本発明5]
前記プロテクタの最大の隆起高さは、1.5~3.5mmである、本発明1ないし4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本発明6]
前記トレッド部のタイヤ半径方向の外端から前記プロテクタのタイヤ半径方向の外端までのタイヤ半径方向の距離は、50~100mmである、本発明1ないし6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本発明7]
前記プロテクタのそれぞれのタイヤ周方向の長さは、前記プロテクタに隣接する前記間隙部のタイヤ周方向の長さの2倍以上である、本発明1ないし6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本発明8]
前記アンダーカット面は、前記頂面の中心側に凹んだ湾曲面を含む、本発明1ないし7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【符号の説明】
【0047】
2 トレッド部
3A 第1サイドウォール部
9 基準面
10 プロテクタ
11 間隙部
14 頂面
14e 外縁
15 側面
18 アンダーカット面
図1
図2
図3
図4
図5
図6