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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010491
(43)【公開日】2025-01-21
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20250110BHJP
   E02D 1/02 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02D1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024087998
(22)【出願日】2024-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2023112400
(32)【優先日】2023-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖本 翔
(72)【発明者】
【氏名】島津 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】小岩井 一茂
(72)【発明者】
【氏名】洪水 雅俊
【テーマコード(参考)】
2D015
2D043
【Fターム(参考)】
2D015HA03
2D015HB01
2D043AA01
2D043AB03
2D043AC01
2D043AC05
2D043BC05
(57)【要約】
【課題】地盤の硬さを高精度で推定可能な建設機械を提供する課題を解決する。
【解決手段】建設機械1は、機体1Sと、地盤を構成する土砂を掘削して保持するためのバケット23を有し、機体1Sに取付けられた状態でバケット23を介して地盤の掘削動作を実行可能な作業アタッチメント20と、バケット23に保持された土砂Eの重量を検出可能な重量検出部と、地盤の硬さを推定するための硬さ推定部とを備え、硬さ推定部は、地盤の硬さを推定する際には、作業アタッチメント20が掘削開始姿勢から掘削後の土砂Eを保持可能な掘削完了姿勢まで目標速度条件を満たしながら姿勢変化する所定掘削動作が実行された後に、重量検出部により検出される前記土砂Eの重量と、当該土砂Eの重量と前記地盤の硬さとを対応付けた硬さ対応データとを基に地盤の硬さを推定する推定処理を実行する。
【選択図】図4C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体に装着され、地盤を構成する土砂を掘削して保持可能なバケットを有するとともに当該バケットを介して前記地盤の掘削動作を実行可能な作業アタッチメントと、
前記バケットに保持された前記土砂の重量を検出可能な重量検出部と、
前記地盤の硬さを推定する硬さ推定部とを備え、
前記硬さ推定部は、前記作業アタッチメントが掘削開始姿勢から掘削後の土砂を保持可能な掘削完了姿勢まで目標速度条件を満たしながら姿勢変化する所定掘削動作が実行された後に、前記重量検出部により検出される前記土砂の重量と、前記地盤の硬さの違いによる当該土砂の重量の変化を規定した第1硬さ対応データとを基に前記地盤の硬さを推定する推定処理を実行するように構成されている、建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、
前記掘削動作中における前記作業アタッチメントの稼働状態に関連し且つ当該掘削動作の対象となる地盤の硬さと相関のある稼働データを取得する稼働データ取得部と、を備え、
前記硬さ推定部は、
前記推定処理を実行する際には、前記作業アタッチメントによる前記所定掘削動作の実行後に前記重量検出部により検出される前記土砂の重量と前記第1硬さ対応データとを基に当該土砂の重量に対応する地盤の硬さを第1硬さとして算出する第1算出処理と、
前記所定掘削動作中に前記稼働データ取得部が取得した前記稼働データと、前記地盤の硬さの違いによる前記稼働データの変化を規定した第2硬さ対応データとを基に、前記取得した前記稼働データに対応する前記地盤の硬さを第2硬さとして算出する第2算出処理とを実行し、前記第1算出処理で算出した前記第1硬さと、前記第2算出処理で算出した前記第2硬さとを基に前記地盤の硬さを推定するように構成されている、建設機械。
【請求項3】
請求項1又は2記載の建設機械において、
前記硬さ推定部は、前記作業アタッチメントによる前記所定掘削動作が実行された場合に、当該所定掘削動作が所定の軌道に沿って正しく実行されたか否かを判定する動作判定処理を実行し、正しく実行されていないと判定した場合には前記推定処理を実行しないように構成されている、建設機械。
【請求項4】
請求項2記載の建設機械において、
前記稼働データは、前記掘削動作中における前記作業アタッチメントの稼働状態に関連し且つ当該掘削動作の対象となる地盤の硬さと相関のある稼働パラメータに関する数値のデータであり、
前記稼働パラメータは、前記作業アタッチメントを駆動するシリンダの負荷、前記作業アタッチメントの重心速度、前記作業アタッチメントの重心加速度、及び前記作業アタッチメントに作用する掘削反力のうち少なくとも1つを含む、建設機械。
【請求項5】
請求項2記載の建設機械において、
前記稼働データは、前記掘削動作中における前記作業アタッチメントの稼働状態に関連し且つ当該掘削動作の対象となる地盤の硬さと相関のある少なくとも1つの稼働パラメータに関する数値のデータであり、
前記硬さ推定部は、前記推定処理の実行に際して、前記少なくとも1つの稼働パラメータに対応する少なくとも一つの前記第2硬さと、前記土砂の重量に対応する前記第1硬さとを算出し、該算出した少なくとも1つの第2硬さ及び前記第1硬さと、該各硬さのそれぞれに対して予め設定された重み係数とを基に前記地盤の硬さを推定するように構成されている、建設機械。
【請求項6】
請求項1又は2記載の建設機械において、
前記硬さ推定部は、前記所定掘削動作の実行毎に推定した前記地盤の硬さを記憶しておき、記憶した硬さの所定回数分の平均値を前記地盤の硬さとして出力するように構成されている、建設機械。
【請求項7】
請求項5記載の建設機械において、
前記硬さ推定部は、前記作業アタッチメントの前記所定掘削動作時における姿勢、又は、前記稼働データにおける前記数値の時系列変化に基づいて前記重み係数を変更するように構成されている、建設機械。
【請求項8】
請求項3記載の建設機械において、
前記掘削開始姿勢における作業アタッチメントの基端部から前記バケットの先端までの距離と、前記所定掘削動作の開始後における前記作業アタッチメントの操作入力情報とを基に前記動作判定処理を実行するように構成されている、建設機械。
【請求項9】
請求項1又は2記載の建設機械において、
前記目標速度条件を設定する速度条件設定部をさらに備え、
前記速度条件設定部は、前記作業アタッチメントが前記目標速度条件を満たしながら所定掘削動作を所定回数実行した後は、当該目標速度条件を再設定するように構成され、
前記速度条件設定部は、前記目標速度条件を再設定する際には、前記所定掘削動作が所定回数実行された時点で前記硬さ推定部によって推定される地盤の硬さを取得し、当該取得した硬さの地盤を前記作業アタッチメントの前記所定掘削動作により掘削した場合に、前記バケットにより掘削される前記土砂の掘削量が、当該バケットが保持可能な最大積載量に対応する量になるように設定される、建設機械。
【請求項10】
請求項1記載の建設機械において、
前記作業アタッチメントは、前記バケットを含む互いに相対移動可能な複数の部材を有し、
前記目標速度条件は、前記複数の部材のうちの1つであって前記バケットに連結されるアームの重心の速度又は当該複数の部材の合成重心の速度が一定であるとの条件からなる、建設機械。
【請求項11】
請求項1又は2記載の建設機械において、
前記所定掘削動作の実行中における前記作業アタッチメントの速度状態を検出し、検出した速度状態と前記目標速度条件との乖離度に係る情報を算出する乖離度算出部と、
前記乖離度算出部により算出された前記乖離度に係る情報を報知する報知部と、をさらに備えている、建設機械。
【請求項12】
請求項1又は2記載の建設機械において、
前記所定掘削動作の実行中における前記作業アタッチメントの速度状態を検出する速度状態検出部と、
前記作業アタッチメントを駆動するための駆動部と、
前記作業アタッチメントによる前記所定掘削動作の実行中は、前記速度状態検出部により検出された前記作業アタッチメントの速度状態と、前記目標速度条件との比較を基に、前記速度状態が前記目標速度条件を満たすように、前記駆動部への指令信号を決定し、当該決定した指令信号を前記駆動部に送信する制御を実行する制御部とを備えている、建設機械。
【請求項13】
請求項1又は2記載の建設機械において、
前記目標速度条件は、前記硬さ対応データに規定された地盤の硬さのうち軟らかい側の所定硬さの地盤を前記作業アタッチメントの前記所定掘削動作により掘削した場合に、前記バケットにより掘削される前記土砂の掘削量が、当該バケットが保持可能な最大積載量に対応する量になるように設定される、建設機械。
【請求項14】
請求項1又は2記載の建設機械において、
前記所定掘削動作に要した時間である掘削時間を検出する掘削時間検出部をさらに備え、
前記硬さ推定部は、前記作業アタッチメントにより前記所定掘削動作が実行された後に、前記重量検出部により検出された前記土砂の重量が所定重量以上であるか否かを判定し、該所定重量未満であると判定した場合に、前記重量検出部により検出される前記土砂の重量と前記硬さ対応データとを基に前記地盤の硬さを推定する前記推定処理を実行する一方、前記所定重量以上であると判定した場合には、前記掘削時間検出部により検出された掘削時間に基づいて前記地盤の硬さを推定する推定処理を実行するように構成されている、建設機械。
【請求項15】
請求項1又は2記載の建設機械において、
前記作業アタッチメントを駆動するための駆動部と、
前記作業アタッチメントに前記目標速度条件を満たす前記所定掘削動作を実行させるための指令信号を生成して、生成した指令信号を前記駆動部に入力する制御を実行可能な制御部とをさらに備えている、建設機械。
【請求項16】
請求項1又は2記載の建設機械において、
前記硬さ推定部により推定された前記地盤の硬さの情報を受け付けて、当該受け付けた硬さの情報を、前記建設機械から離れた場所に設けられた管理装置へ送信する通信部をさらに備えている、建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機体と該機体に起伏可能に支持された作業アタッチメントとを有していて地盤の硬さを推定可能に構成された建設機械が知られている。特許文献1には、このような建設機械の一例が開示されている。この建設機械は、作業アタッチメントに取付けられる歪みセンサ又は加速度センサを含むセンサと、当該センサの検出値により地盤の硬さを推定する硬さ推定部とを有している。
【0003】
前記硬さ推定部は、前記作業アタッチメントを所定速度及び所定角度で地面(地盤)に接触させる所定動作を行ったときの前記センサの検出値と、前記所定動作を行ったときの前記センサの検出値と前記地盤の硬さとが対応付けされたデータとに基づいて、前記地盤の硬さを推定するように構成されている。具体的には、硬さ推定部は、センサによる検出値の波形の特徴(例えば、大きい加速度を示した後に短時間で加速度が減少する波形であるか否か等の特徴)を判別して、判別した波形の特徴に応じて前記地盤の硬さを推定するように構成されている(特許文献1の段落[0054]-[0055]等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7073151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す建設機械では、硬さ推定部にて地盤の硬さを推定する際に、センサによる検出値の波形の特徴を判別するようにしているため、単に検出値の大小関係を判別する場合に比べて、演算処理が複雑になり誤判別のリスクが高くなる(結果として、地盤硬さの推定精度が低下する)という問題がある。
【0006】
また特許文献1に示す建設機械において、地盤の硬さを高い分解能で推定するためには、地盤の硬さに応じたセンサの検出値の波形の特徴を細かく分類して地盤の硬さと対応付けたデータを準備する必要があるが、波形の特徴を細かく分類すると硬さ推定部における波形の判別精度が低下し、延いては、硬さ推定部における地盤硬さの推定精度が低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、地盤の硬さを高精度で推定可能な建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により提供されるのは、機体と、前記機体に装着され、地盤を構成する土砂を掘削して保持可能なバケットを有するとともに当該バケットを介して前記地盤の掘削動作を実行可能な作業アタッチメントと、前記バケットに保持された前記土砂の重量を検出可能な重量検出部と、前記地盤の硬さを推定する硬さ推定部とを備え、前記硬さ推定部は、前記作業アタッチメントが掘削開始姿勢から掘削後の土砂を保持可能な掘削完了姿勢まで目標速度条件を満たしながら姿勢変化する所定掘削動作が実行された後に、前記重量検出部により検出される前記土砂の重量と、前記地盤の硬さの違いによる当該土砂の重量の変化を規定した第1硬さ対応データとを基に前記地盤の硬さを推定する推定処理を実行するように構成されている。
【0009】
本構成によれば、作業アタッチメントによる所定掘削動作によってバケットに保持された土砂の重量と硬さ対応データとを基に地盤の硬さを推定するようにしたことで、センサによる検出波形を判別するための複雑な演算処理を廃止して地盤硬さを容易に推定することができる。したがって、従来のように複雑な演算処理によってセンサの検出波形の特徴を判別する場合に比べて誤判別のリスクを低減して地盤硬さの推定精度を向上させることができる。また、従来の処理では、地盤硬さを推定する際の分解能(推定可能な地盤硬さのレベルの数)を増やそうとすると、センサによる検出波形を地盤硬さに応じて細かく分類する必要があるため、地盤硬さの推定に際して判別すべき検出波形の種類が増えてしまい、判別精度が低下する(延いては地盤硬さの推定精度が低下する)という問題がある。これに対して、本構成では、地盤硬さの推定をバケットに保持された土砂重量に基づいて行うようにしているため、地盤硬さの分解能を増やしたとしても判別対象が増える訳ではなく土砂の大小を判別するだけでよいので、地盤硬さの推定精度が低下することはない。
【0010】
しかも、本構成によれば、作業アタッチメントが行う通常の掘削作業の中に所定掘削動作を組み入れて硬さ推定部による地盤の硬さ推定を行うことができるので、地盤硬さを推定するためだけの専用動作が不要となり、作業アタッチメントによる掘削作業を効率良く行うことができる。
【0011】
前記建設機械は、前記掘削動作中における前記作業アタッチメントの稼働状態に関連し且つ当該掘削動作の対象となる地盤の硬さと相関のある稼働データを取得する稼働データ取得部とを備え、前記硬さ推定部は、前記推定処理を実行する際には、前記作業アタッチメントによる前記所定掘削動作の実行後に前記重量検出部により検出される前記土砂の重量と前記第1硬さ対応データとを基に当該土砂の重量に対応する地盤の硬さを第1硬さとして算出する第1算出処理と、前記所定掘削動作中に前記稼働データ取得部が取得した前記稼働データと、前記地盤の硬さの違いによる前記稼働データの変化を規定した第2硬さ対応データとを基に、前記取得した前記稼働データに対応する前記地盤の硬さを第2硬さとして算出する第2算出処理とを実行し、前記第1算出処理で算出した前記第1硬さと、前記第2算出処理で算出した前記第2硬さとを基に前記地盤の硬さを推定するように構成されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、所定掘削動作によりバケットに保持された土砂重量のみでなく、掘削動作中における作業アタッチメントの稼働データに基づいて地盤の硬さを推定するようにしたことで、当該地盤硬さの推定精度を向上させることができる。すなわち、所定掘削動作によってバケットに保持される土砂重量は、掘削動作中にバケットが異物と接触することによる当該バケットの軌道変化や地形の荒れ等に起因して容易に変化する。このため、バケットに保持される土砂重量のみに基づいて地盤硬さを推定するようにした場合には、バケットに保持される土砂重量のばらつきに起因して地盤の硬さ推定精度が低下する虞がある。これに対して、前記構成では、所定掘削動作後にバケットに保持された土砂重量に基づく第1硬さと、所定掘削動作中の作業アタッチメントの稼働パラメータに基づく第2硬さとを基に地盤硬さの推定処理を実行するようにしたことで、土砂重量のみに基づいて地盤硬さを推定する場合に比べてその推定精度を可及的に向上させることができる。
【0013】
前記硬さ推定部は、前記作業アタッチメントによる前記所定掘削動作が実行された場合に、当該所定掘削動作が所定の軌道に沿って正しく実行されたか否かを判定する動作判定処理を実行し、正しく実行されていないと判定した場合には前記推定処理を実行しないように構成されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、所定掘削動作が正しく実行されていない場合には、硬さ推定部による推定処理は実行されないので、硬さ推定部による地盤硬さの誤推定を防止することができる。ここで、正しく実行されていない場合とは、例えば、所定掘削動作を実行した際の作業アタッチメントの速度状態が目標速度条件を満たしていなかった場合であり、例えばバケットが空中で空回転したり、バケットを溝側面や地面に押し付けながら機体を旋回させることで行う押付け掘削動作を実行している場合等が挙げられる。なお、推定処理を実行しないとは、推定処理自体を実行しない場合及び推定処理を実行するもののその結果を出力しない場合の双方を含む。
【0015】
前記稼働データは、前記掘削動作中における前記作業アタッチメントの稼働状態に関連し且つ当該掘削動作の対象となる地盤の硬さと相関のある稼働パラメータに関する数値のデータであり、前記稼働パラメータは、前記作業アタッチメントを駆動するシリンダの負荷、前記作業アタッチメントの重心速度、前記作業アタッチメントの重心加速度、及び前記作業アタッチメントに作用する掘削反力のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0016】
このように、稼働パラメータとして地盤の硬さとの相関性が強いパラメータを設定することで硬さ推定部による地盤の硬さ推定精度を向上させることができる。すなわち、地盤の硬さが堅いほど作業アタッチメントの駆動シリンダの負荷は増加する。また、地盤の硬さが堅いほど前記掘削動作中の作業アタッチメントの振動も大きくなるので、当該作業アタッチメントの重心速度及び重心加速度も振動的に変化する。また、地盤の硬さが堅いほど、作業アタッチメントに作用する掘削反力も増加する。このように、前記4つのパラメータは、地盤の硬さとの相関関係が強いので、これらを稼働パラメータとして設定することで、当該稼働パラメータに基づく第2硬さと実際の地盤の硬さとの一致度が高まり、延いては、当該第2硬さと前記第1硬さとに基づく地盤硬さの推定精度を向上させることができる。
【0017】
前記稼働データは、前記掘削動作中における前記作業アタッチメントの稼働状態に関連し且つ当該掘削動作の対象となる地盤の硬さと相関のある少なくとも1つの稼働パラメータに関する数値のデータであり、前記硬さ推定部は、前記推定処理の実行に際して、前記少なくとも1つの稼働パラメータに対応する少なくとも一つの前記第2硬さと、前記土砂の重量に対応する前記第1硬さとを算出し、該算出した少なくとも1つの第2硬さ及び前記第1硬さと、該各硬さのそれぞれに対して予め設定された重み係数とを基に前記地盤の硬さを推定するように構成されていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、少なくとも1つの稼働パラメータの値に基づく少なくとも1つの第2硬さと、前記バケットに保持された土砂の重量に基づく前記第1硬さとのそれぞれに対し、地盤の硬さとの相関関係が強い指標については重み係数を高く設定し、相関関係が低い指標については重み係数を低く設定することで地盤硬さの推定精度を向上させることができる。
【0019】
前記硬さ推定部は、前記所定掘削動作の実行毎に推定した前記地盤の硬さを記憶しておき、記憶した硬さの所定回数分の平均値を前記地盤の硬さとして推定して出力するように構成されていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、硬さ推定部より出力される地盤硬さの推定値は所定回数分の平均値であるため、地盤硬さの推定値のばらつきが大きい場合であってもそれらの平均値をとることで地盤硬さの推定誤差を低減することができる。
【0021】
また、前記硬さ推定部は、前記作業アタッチメントの前記所定掘削動作時における姿勢、又は、前記稼働データにおける前記数値の時系列変化に基づいて前記重み係数を変更するように構成されていることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、作業アタッチメントの姿勢や稼動データにおける数値の時系列変化に基づいて重み係数を変更することで、作業アタッチメントによる掘削動作中の状況に応じて、地盤の硬さの推定精度に与える影響が大きい指標(土砂重量及び稼動パラメータ)の重み係数を相対的に大きく設定するなどして、硬さ推定部による地盤の推定精度を可及的に向上させることができる。
【0023】
前記硬さ推定部は、前記掘削開始姿勢における作業アタッチメントの基端部から前記バケットの先端までの距離と、前記所定掘削動作の開始後における前記作業アタッチメントの操作入力情報とを基に前記動作判定処理を実行するように構成されていることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、掘削開始姿勢における作業アタッチメントの基端部から前記バケットの先端までの距離を基に前記動作判定処理を実行するようにしたことで、機体の近くで作業アタッチメントが地均しをする状態等が前記所定掘削動作であると誤判定されるのを防止することができる。また、前記所定掘削動作の開始後における前記作業アタッチメントの操作入力情報を基に前記動作判定処理を実行するようにしたことで、バケットを溝側面や地面に押し付けながら機体を旋回させることで行う押付け掘削状態等が前記所定掘削動作であると誤判定されるのを防止することができる。
【0025】
前記建設機械は、前記目標速度条件を設定する速度条件設定部をさらに備え、前記速度条件設定部は、前記作業アタッチメントが前記目標速度条件を満たしながら所定掘削動作を所定回数実行した後は、当該目標速度条件を再設定するように構成され、前記速度条件設定部は、前記目標速度条件を再度設定する際には、前記所定掘削動作が所定回数実行された時点で前記硬さ推定部によって推定される地盤の硬さを取得し、当該取得した硬さの地盤を前記作業アタッチメントの前記所定掘削動作により掘削した場合に、前記バケットにより掘削される前記土砂の掘削量が、当該バケットが保持可能な最大積載量に対応する量になるように設定されることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、所定掘削動作による地盤の掘削が進むにしたがって地盤の硬さが、軟土から堅土に変化したり、堅土から軟土に変化した場合であっても、この変化した地盤の硬さに応じて目標速度条件が変更される。したがって、バケットによる土砂の掘削量を十分に確保することができる。すなわち、掘削対象となる地盤が堅土であるにも拘わらず軟土に対応する目標速度条件で作業アタッチメントが駆動されると、バケットによる土砂の掘削量を十分に確保することができず、地盤の硬さ推定精度が低下するばかりでなく本来の目的である作業アタッチメントによる地盤の掘削効率が低下する虞があるが、前記構成によれば、地盤の硬さに応じた目標速度条件が設定されるので、作業アタッチメントによる掘削効率が低下することもない。
【0027】
前記作業アタッチメントは、前記バケットを含む互いに相対移動可能な複数の部材を有し、前記目標速度条件は、前記複数の部材のうちの1つであって前記バケットに連結されるアームの重心の速度又は当該複数の部材の合成重心の速度が一定であるとの条件からなることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、作業アタッチメントに所定掘削動作を実行させる際のバケットによる掘削を安定して実行することができるとともに地盤硬さの違いによる掘削軌跡の差を明確に生じさせることができ、延いては地盤硬さの推定精度を向上させることができる。特に、複数の部材の合成重心の速度を一定にすることで、作業アタッチメント全体の動作を安定させることができる。すなわち、作業アタッチメントによる掘削動作は複数の部材(例えばブームとアームとバケット)の協働により行われるため、硬さ推定部による地盤硬さの推定に際しては、複数の部材の合成重心の速度が一定になるように作業アタッチメントに所定掘削動作を実行させることで、バケットによる地盤の掘削を安定して(むらなく)実行することができる。よって、所定掘削動作後にバケットに保持される土砂重量の再現性(換言すると、同じ硬さの地盤に対して同じ速度条件で掘削動作を実行した場合の土砂重量の再現性)が確保されるので、当該土砂の重量に基づく前記地盤硬さの推定精度を向上させることができる。
【0029】
前記建設機械は、前記所定掘削動作の実行中における前記作業アタッチメントの速度状態を検出し、検出した速度状態と前記目標速度条件との乖離度に係る情報を算出する乖離度算出部と、前記乖離度算出部により算出された前記乖離度に係る情報を報知する報知部と、をさらに備えていることが好ましい。
【0030】
この構成によれば、オペレータは、作業アタッチメントによる所定掘削動作の実行中に、報知部より報知される前記乖離度に係る情報を基に、作業アタッチメントの速度状態が前記目標速度条件と比べてどの程度乖離しているかを認識することができる。そして、オペレータは、当該認識に基づいて、作業アタッチメントの速度状態が前記目標速度条件を満たすように、自身が行う手動操作を補正することができる。したがって、オペレータの手動操作に起因して作業アタッチメントの合成重心の速度がばらつくのを防止することができる。延いては、所定掘削動作後にバケットに保持される土砂の重量の再現性を向上させて、硬さ推定部による地盤硬さの推定精度をより一層向上させることができる。
【0031】
前記建設機械は、前記所定掘削動作の実行中における前記作業アタッチメントの速度状態を検出する速度状態検出部と、前記作業アタッチメントを駆動するための駆動部と、前記作業アタッチメントによる前記所定掘削動作の実行中は、前記速度状態検出部により検出された前記作業アタッチメントの速度状態と、前記目標速度条件との比較を基に、前記速度状態が前記目標速度条件を満たすように、前記駆動部への指令信号を決定し、当該決定した指令信号を前記駆動部に送信する制御を実行する制御部とを備えていることが好ましい。
【0032】
この構成によれば、作業アタッチメントによる所定掘削動作の実行中は、作業アタッチメントの速度状態が目標速度条件を満たすように制御部から駆動部への指令信号が送信される(いわゆるフィードバック制御が実行される)。したがって、例えばオペレータの手動操作によって作業アタッチメントに所定掘削動作を実行させる場合に、オペレータの手動操作のばらつき等に起因して作業アタッチメントの合成重心の速度が目標速度条件から外れるのを防止することができる。なお、作業アタッチメントの所定掘削動作を手動操作によらず、例えばコントローラによる自動制御により実行してもよく、この場合においても同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
前記目標速度条件は、前記硬さ対応データに規定された地盤の硬さのうち軟らかい側の所定硬さの地盤を前記作業アタッチメントの前記所定掘削動作により掘削した場合に、前記バケットにより掘削される前記土砂の掘削量が、当該バケットが保持可能な最大積載量に対応する量になるように設定されることが好ましい。
【0034】
この構成によれば、硬さ推定部による地盤硬さの推定精度をより一層向上させることができる。すなわち、地盤の硬さが堅くなるにしたがってバケットによる土砂の掘削量も少なくなるので、軟らかい地盤を掘削した際の掘削量がそもそも少ないと、地盤の硬さが少し堅くなっただけでバケットによる土砂の掘削量が0になるので上述したバケットの土砂の重量に基づく地盤硬さの推定処理を実行することができない。一方、軟らかい地盤を掘削した際のバケットによる土砂の掘削量がバケットの最大積載量(それ以上積載すると土砂がバケットの外側にこぼれるような山積み状態の積載量)を超えるほど多いと、掘削した土砂の一部がバケットからこぼれ落ちるため、バケットに保持される土砂の量は地盤硬さが多少変化しても最大積載量のまま維持される。このため、地盤硬さの変化がバケットに保持される土砂重量に反映されず、地盤硬さを精度良く推定することができないという問題が生じる。そこで、本構成では、硬さ対応データにおける軟らかい側の所定硬さの地盤を掘削した場合のバケットによる土砂の掘削量が、バケットに保持可能な最大積載量に対応する量になるように前記所定掘削動作を実行する際の目標速度条件を設定するようにした。これにより、作業アタッチメントの所定掘削動作によりバケットに保持される土砂の重量を、地盤が軟土である場合と堅土である場合とで大きく異ならせることができ、延いては、硬さ推定部による地盤の硬さの推定精度を向上させることができる。
【0035】
前記建設機械は、前記所定掘削動作に要した時間である掘削時間を検出する掘削時間検出部をさらに備え、前記硬さ推定部は、前記作業アタッチメントにより前記所定掘削動作が実行された後に、前記重量検出部により検出された前記土砂の重量が所定重量以上であるか否かを判定し、該所定重量未満であると判定した場合に、前記重量検出部により検出される前記土砂の重量と前記硬さ対応データとを基に前記地盤の硬さを推定する前記推定処理を実行する一方、前記所定重量以上であると判定した場合には、前記掘削時間検出部により検出された掘削時間に基づいて前記地盤の硬さを推定する推定処理を実行するように構成されていることが好ましい。
【0036】
この構成によれば、地盤硬さが過度に軟らかい場合であっても、地盤硬さの推定精度を十分に確保することができる。すなわち、地盤硬さが過度に軟らかいと、バケットによる土砂の掘削量が、掘削完了姿勢でバケットに保持可能な最大積載量を超えるため、地盤硬さが変化したとしても、バケットに保持される土砂の重量は余剰分がこぼれ落ちるために一定のまま変化しない。このため、上述したバケットに保持された土砂重量に基づく推定処理では地盤硬さを精度良く推定することができない。そこで、本構成では、バケットに保持される土砂の重量が所定重量(例えば、バケットの最大積載量に対応する重量)を越える場合には(つまり、地盤の硬さが変化してもバケットに保持される土砂重量が変化しないほどに地盤の硬さが軟らかいと考えられる場合には)、所定掘削動作に要した時間を基に地盤硬さの推定処理を実行するようにした。所定掘削動作に要した掘削時間は、バケットに保持される土砂重量のように上限値が制限されることがなく、地盤硬さが軟らかいほど掘削時間は長くなる。したがって、地盤硬さが過度に軟らかい場合には、このように掘削時間を基に硬さ推定部による地盤硬さの推定処理を実行することでその推定精度を向上させることができる。
【0037】
前記建設機械は、前記作業アタッチメントを駆動するための駆動部と、前記作業アタッチメントに前記所定掘削動作を実行させるための指令信号を生成して、生成した指令信号を前記駆動部に入力する制御を実行可能な制御部とをさらに備えていてもよい。
【0038】
この構成によれば、制御部により前記制御を実行させることで、作業アタッチメントに所定掘削動作を実行させるための指令信号が駆動部に入力される。したがって、例えば作業アタッチメントに前記所定掘削動作を自動で行わせることが可能となる。このような自動制御を実施した場合には、作業者の操作に影響されることなく作業アタッチメントを動作させることができるので所定掘削動作を実行する際に目標速度条件を確実に満たすことができ、延いては、硬さ推定部による地盤硬さの推定精度を向上させることができる。
【0039】
前記建設機械は、前記硬さ推定部により推定された前記地盤の硬さの情報を受け付けて、当該受け付けた硬さの情報を、前記建設機械から離れた場所に設けられた管理装置へ送信する通信部をさらに備えていることが好ましい。
【0040】
この構成によれば、通信部より管理装置に送信された地盤の硬さの情報を、施工計画の見直しや施工履歴の管理等に活用することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、地盤の硬さを高精度で推定可能な建設機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】第1実施形態に係る建設機械を示す側面図である。
図2】建設機械の油圧制御回路を示す概略図である。
図3】建設機械の制御系の構成を示すブロック図である。
図4A】作業アタッチメントによる所定掘削動作を説明するための説明図であって作業アタッチメントが掘削開始姿勢にある状態を示す図である。
図4B】建設機械による所定掘削動作を説明するための説明図であって作業アタッチメントのバケットが地盤の土砂を掘削中の状態を示す図である。
図4C】建設機械による所定掘削動作を説明するための説明図であって作業アタッチメントが掘削完了姿勢にある状態を示す図である。
図5】バケットに保持された土砂の重量を重量検出部にて算出する際のモーメントの釣り合い式に用いる寸法情報を示す図である。
図6】作業アタッチメントの所定掘削動作によってバケットに保持される土砂の重量と地盤の硬さとを対応付けた硬さ対応データの一例を示す図である。
図7A】作業アタッチメントにより所定掘削動作を実行した際に、軟土と堅土とでバケットによる土砂の掘削量が異なることを説明するための説明図であって、軟土を掘削した際の掘削経路を破線で示す図である。
図7B】作業アタッチメントにより所定掘削動作を実行した際に、軟土と堅土とでバケットによる土砂の掘削量が異なることを説明するための説明図であって、堅土を掘削した際の掘削経路を破線で示す図である。
図8】作業アタッチメントにより所定掘削動作を実行する際の目標速度条件(本例では合成重心の目標速度)の決め方を説明するための説明図である。
図9】コントローラにより実行される硬さ推定処理の一例を示すフローチャートである。
図10】第1実施形態の変形例を示す図3相当図である。
図11】第1実施形態の変形例において、作業アタッチメントの速度状態と目標速度条件との乖離度を報知するための報知画面の一例を示す概略図である。
図12】第2実施形態を示す図3相当図である。
図13】作業アタッチメントにより所定掘削動作を実行した際のシリンダ負荷の時間変化を示す概略図である。
図14】第2実施形態を示す図9相当図である。
図15】第3実施形態を示す図3相当図である。
図16】稼働データ取得部により取得される稼働データの一例を示す図である。
図17】第3実施形態を示す図9相当図である。
図18A】第2硬さ対応データの一例を示すグラフである。
図18B】第2硬さ対応データの一例を示すグラフである。
図18C】第2硬さ対応データの一例を示すグラフである。
図19】各稼働状態対応硬さ(第2硬さ)に対応する重み係数を規定した重み係数データの一例を示す図である。
図20】稼働状況対応硬さの取得結果のデータの一例を示す図である。
図21】情報表示画面の一例を示す図である。
図22】他の変形実施形態を示す図6相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0044】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧ショベル1(建設機械)を示す側面図である。この油圧ショベル1は、走行面(地面Gであって地盤の上面)上を走行可能なクローラ式の下部走行体10と、前記走行面に対して垂直な旋回中心軸まわりに旋回可能となるように下部走行体10の上に搭載される上部旋回体12と、この上部旋回体12に起伏可能に搭載される作業アタッチメント20(作業装置)と、を備える。当該作業アタッチメント20は、前記上部旋回体12に起伏可能に支持されるブーム21と、当該ブーム21の先端に回動可能に連結されるアーム22と、当該アーム22の先端に回動可能に連結されるバケット23(先端部材)とを備える。バケット23は、側方から見てアーム22に連結される基端部23aと爪部が形成された先端部23bとを有している。また、上部旋回体12は、旋回フレーム121と、キャブ13とを有する。下部走行体10及び上部旋回体12が機体1Sを構成している。
【0045】
前記油圧ショベル1は、前記上部旋回体12に対して前記ブーム21を起伏動作させるように作動するブームシリンダ21Sと、当該ブーム21に対して前記アーム22を回動動作させるように作動するアームシリンダ22Sと、当該アーム22に対して前記バケット23を回動動作させるように作動するバケットシリンダ23Sと、を備える。各シリンダは、油圧ポンプから作動油を受け入れて伸縮するように作動する。
【0046】
図2は、建設機械の油圧制御回路を示す概略図である。また、図2において、g1はブーム21の重心、g2はアーム22の重心、g3はバケット23の重心、gは作業アタッチメント20の合成重心を示す。
【0047】
油圧ショベル1は、更に、エンジン100と、油圧式の第1ポンプ2A及び第2ポンプ2Bと、パイロット圧油用油圧ポンプ3と、操作部4と、電磁比例弁5と、コントロールバルブ7と、コントローラ50とを備える。
【0048】
エンジン100は、後記のECU32によって制御され、所定の噴射量の燃料を受け入れて回転する。第1ポンプ2A及び第2ポンプ2Bは、エンジン100の出力軸に接続され、エンジン100の駆動力を受けて回転する。各ポンプは、油圧式のポンプであり、ブームシリンダ21S、アームシリンダ22S及びバケットシリンダ23Sを作動させるための作動油を吐出する。
【0049】
前述のブームシリンダ21Sは、第1ポンプ2Aにより吐出される作動油の供給を受けることによりブーム21を起伏させる(動かす)ように伸縮する。本実施形態では、ブームシリンダ21Sは、シリンダ本体と、シリンダ本体をヘッド室とロッド室とに仕切るピストン部を含みシリンダ本体に対して相対移動可能なシリンダロッドとを有する。シリンダロッドの先端部は不図示のリンク機構を介してブーム21に接続されている。ブームシリンダ21Sは、第1ポンプ2Aにより吐出される作動油をコントロールバルブ7を介してヘッド室に受け入れロッド室から作動油を排出することでブーム21を起立させるように伸長する(ブーム上げ動作)ことが可能である一方、第1ポンプ2Aにより吐出される作動油をコントロールバルブ7を介してロッド室に受け入れヘッド室から作動油を排出することで、ブーム21を倒伏させるように収縮する(ブーム下げ動作)ことが可能である。なお、アームシリンダ22S、バケットシリンダ23Sも、ブームシリンダ21Sと同様の構造を有する。
【0050】
操作部4は、オペレータによって操作されるレバーを含み、作業アタッチメント20のブーム21、アーム22及びバケット23を動かすための手動操作を受け付ける。すなわち、操作部4は、ブーム操作部、アーム操作部、バケット操作部を含む。各手動操作は、操作方向及び操作量が可変とされている。なお、操作部4は、上部旋回体12の旋回動作、下部走行体10の走行動作に関する操作なども受け付ける。
【0051】
コントロールバルブ7は、各油圧ポンプとブームシリンダ21Sとの間に介在するように配置され、各油圧ポンプから当該ブームシリンダ21Sに供給される作動油の流量及び流路を変化させるように(制御するように)移動するスプールを有する。具体的に、コントロールバルブ7は、主に、ブーム21がブーム上げ動作及びブーム下げ動作を行う際に、ブームシリンダ21Sに油圧ポンプの作動油を供給するとともにブームシリンダ21Sから排出された作動油を不図示のタンクに排出するように作動する。コントロールバルブ7は、一対のパイロットポートを有するパイロット操作式の3位置方向切換弁からなる。
【0052】
コントロールバルブ7は、一対のパイロットポートの何れにもパイロット圧が入力されないときは中立位置に保たれ、前記油圧ポンプと前記ブームシリンダ21Sとの間を遮断する。
【0053】
コントロールバルブ7は、一のパイロットポートにブーム下げパイロット圧が入力されると、そのブーム下げパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置からブーム下げ位置に切り換えられる。これにより、コントロールバルブ7は、前記油圧ポンプから前記ブームシリンダ21Sのロッド室に前記ストロークに応じた流量で作動油が供給されることを許容するとともに、当該ブームシリンダ21Sのヘッド室から作動油が排出されることを許容するように、開弁する。これにより、前記ブームシリンダ21Sは前記ブーム下げパイロット圧に対応した速度で前記ブーム下げ方向に駆動される。
【0054】
コントロールバルブ7は、他のパイロットポートにブーム上げパイロット圧が入力されると、そのブーム上げパイロット圧の大きさに対応したストロークで前記中立位置からブーム上げ位置に切り換えられる。これにより、コントロールバルブ7は、前記油圧ポンプから前記ブームシリンダ21Sのヘッド室に前記ストロークに応じた流量で作動油が供給されることを許容するとともに、当該ブームシリンダ21Sのロッド室から作動油が排出されることを許容するように、開弁する。これにより、前記ブームシリンダ21Sは前記ブーム上げパイロット圧に対応した速度で前記ブーム上げ方向に駆動される。
【0055】
なお、前記と同様の動作を行うコントロールバルブ7が、各油圧ポンプと、アームシリンダ22S及びバケットシリンダ23Sとの間にそれぞれ配置されている。アームシリンダ22Sに対応するコントロールバルブ7は、アーム押し位置、中立位置、アーム引き位置に切り換え可能とされている。
【0056】
電磁比例弁5は、操作部4に入力される操作に対応するパイロット圧(二次圧)がパイロット圧油用油圧ポンプ3から供給されるパイロット油によってコントロールバルブ7の各パイロットポートに作用するように開弁する。電磁比例弁5の開度は、コントローラ50から入力される比例信号によって調整される。なお、他の実施形態において、操作部4のレバーの角度に応じて開弁する不図示のリモコン弁が二次圧としてコントロールバルブ7に圧力を伝えるものでもよい。この場合、前記レバーとコントロールバルブ7との間に比例弁が設けられ、前記二次圧がコントロールバルブ7に到達する前に前記比例弁によって調整されればよい。
【0057】
図2に示すように、ブームシリンダ21S、アームシリンダ22S及びバケットシリンダ23Sは、操作部4が受ける操作の大きさである操作量に応じてポンプ2A、2Bから作動油の供給を受けることで伸縮する。ブームシリンダ21S、アームシリンダ22S及びバケットシリンダ23Sには、供給油の方向を切り替えるコントロールバルブ7を通じてポンプ2A、2Bから作動油が供給される。なお、図2では、作業アタッチメント20を動かすための油圧回路及びエンジン100をまとめて駆動部30として定義している。コントローラ50は、前記操作量に応じて駆動部30に指令信号を入力する。コントローラ50は、図2に示す油圧系統を制御することにより作業アタッチメント20の駆動を制御する。駆動部30は、作業アタッチメント20を動かすために電磁比例弁5に入力される指令信号(比例信号)に応じた速度で、作業アタッチメント20の各部材を動かす機能を有している。
【0058】
本実施形態では、コントローラ50が、作業アタッチメント20を構成するブーム21、アーム22及びバケット23の合成重心の速度を測定もしくは算出し、当該速度が所定の目標値に追従するように(目標速度条件を満たすように)、駆動部30の一部である電磁比例弁5に対する指令信号をフィードバック制御を用いて決定(調整)する。
【0059】
図3は、前記油圧ショベル1の制御系の構成を示すブロック図である。本実施形態において、コントローラ50は、例えば、上部旋回体12上の運転室内に搭載されていて、油圧ショベル1の全体動作を制御する。コントローラ50は、コンピュータを備えており、当該コンピュータがプログラムを実行することによって、各機能が実施される。コンピュータは、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わないが、例えば半導体集積回路(IC)又はLSI(Large Scale Integration)を含む一つ又は複数の電子回路により構成されていてもよい。複数の電子回路は、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは一つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。コントローラ50によって実現される機能の詳細は後述する。
【0060】
前記コントローラ50には、前記操作部4と、入力部6と、姿勢検出部31と、ECU(Engine Control Unit)32と、IMU(慣性計測装置:inertial measurement unit)33と、表示部34と、前記電磁比例弁5とが信号の授受可能に接続されている。
【0061】
前記入力部6は、キャブ13内に設けられており、コントローラ50が実行する制御に必要な情報の入力を受け付ける。入力部6は、モード設定入力部6aを含んでいる。モード設定入力部6aは、オペレータが手動操作可能なスイッチ等を含んでいて、当該スイッチを操作により現時点の運転モードを、通常運転モードと地盤の硬さを推定するための硬さ推定モードとのいずれかに設定可能に構成されている。モード設定入力部6aは、設定されたモード情報をコントローラ50に送信する。
【0062】
姿勢検出部31は、作業アタッチメント20の姿勢に関する情報を検出する。詳しくは、姿勢検出部31は、上部旋回体12に対する作業アタッチメント20の相対的な姿勢情報を取得する。一例として、姿勢検出部31は、前述のブームシリンダ21S、アームシリンダ22S及びバケットシリンダ23Sにそれぞれ装着される3つのセンサを含み、各シリンダのストローク(伸長量、長さ)を検出する。各センサによって検出された各シリンダのストロークは、ブーム21、アーム22及びバケット23の位置や姿勢を演算するために使用され、更に、作業アタッチメント20の合成重心gの位置、速度Vg(図2参照)を算出するために用いられる。なお、ブーム21、アーム22及びバケット23の位置や姿勢を演算するために、シリンダストロークセンサに代えて、ブーム21、アーム22及びバケット23の回動角度をそれぞれ検出するアングルセンサが用いられても良い。
【0063】
ECU32は、コントローラ50から回転数指令信号を受け入れ当該回転数指令信号に応じた燃料噴射量でエンジン100を回転させるように、エンジン100を制御する。
【0064】
IMU33は、地面Gに対する上部旋回体12の姿勢に関する情報を検出する。すなわち、IMU33は、油圧ショベル1の機体1Sの姿勢角度(傾き)を検出する。一例として、IMU33は、キャブ13の上面部に装着されている。
【0065】
表示部34は、キャブ13内に設けられた液晶ディスプレイであり、油圧ショベル1の作動状態や硬さ推定モードにて推定された地盤の硬さ等の各種情報を表示してオペレータに報知する。
【0066】
前記コントローラ50は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。コントローラ50は、アタッチメント制御部501と、重量検出部502と、硬さ推定部503と、記憶部504と、通信部505とを有している。アタッチメント制御部501、重量検出部502及び硬さ推定部503は、CPUが前記制御プログラムを実行することにより実現される機能部であり、記憶部504は、例えばROMやハードディスク等の非一時的記録媒体により実現される機能部であり、通信部505は、例えば無線LANチップ等を有する無線通信装置によって実現される機能部である。コントローラ50のすべてまたは一部は、油圧ショベル1内に設けられるものに限定されず、油圧ショベル1がリモート制御される場合には、油圧ショベル1とは異なる位置に配置されても良い。また、前記制御プログラムは遠隔地のサーバ(後述するサーバ35であってもよい)やクラウドなどから油圧ショベル1内のコントローラ50に送信され実行されるものでもよいし、前記サーバやクラウド上で前記制御プログラムが実行され、生成された各種の指令信号が油圧ショベル1に送信されるものでもよい。
【0067】
アタッチメント制御部501は、オペレータが操作部4を操作して作業アタッチメント20に所定掘削動作を実行させる際に、姿勢検出部31からの情報を基に作業アタッチメント20の合成重心速度Vgを算出し、算出した合成重心速度Vgが目標重心速度rに追従する(近づく)ように、電磁比例弁5へのブーム入力を調整するフィードバック制御を実行する。アタッチメント制御部501は、本発明の速度状態検出部及び制御部として機能する。
【0068】
具体的に、図1図2に示すように、作業アタッチメント20のブーム21の回動基端部を原点0として、鉛直方向にY座標、水平方向にX座標をとり、ブーム21の質量をm1、ブーム21の重心g1の座標を(x1(t)、y1(t))、アーム22の質量をm2、アーム22の重心g2の座標を(x2(t)、y2(t))、バケット23の質量をm3、バケット23の重心g3の座標を(x3(t)、y3(t))と定義する。なお、各座標は、作業アタッチメント20が動作することに伴って変化するため、時間tの変数として表記している。この場合、作業アタッチメント20の合成重心gの座標(xg(t)、yg(t))は、以下の式1によって表すことができる。
【0069】
【数1】
【0070】
更に、式1を用いると、合成重心gの速度Vg(t)は、以下の式2によって表すことができる。
【0071】
【数2】
【0072】
アタッチメント制御部501は、この合成重心速度Vg(t)を目標重心速度r(t)に追従させるように、所定掘削動作時におけるブーム操作の入力u(t)を調整する。なお、入力u(t)は、電磁比例弁5に入力される比例信号に対応する。ここで、入力u(t)の調整則には、PID(Proportional Integral Differential)制御則を用いることができる。なお、uh(t)は、オペレータによるブーム操作量であり、uc(t)はコントローラ50のアタッチメント制御部501が設定するブーム操作量である。
【0073】
【数3】
【0074】
【数4】
【0075】
【数5】
【0076】
ここで、式4で示されるPID制御則では、Kp1は比例ゲイン、Ki1は積分ゲイン、Kd1は微分ゲインを示しており、制御偏差e(t)に応じて入力uc(t)すなわちブーム操作量が調整される。
【0077】
前記所定掘削動作とは、目標速度条件(本例では作業アタッチメント20の合成重心速度Vgが一定(=目標重心速度r)との条件)を満たすように作業アタッチメント20を予め定めた掘削開始姿勢から掘削完了姿勢まで姿勢変化させる掘削動作である。図4A図4Cは、この所定掘削動作を説明するための説明図であり、図4Aは、作業アタッチメント20が掘削開始姿勢にある状態を示し、図4Bは、作業アタッチメント20のバケット23が地盤の土砂を掘削中の状態を示し、図4Cは、作業アタッチメント20が掘削完了姿勢にある状態を示している。
【0078】
掘削開始姿勢は、例えばブーム21及びがアーム22の水平方向の長さが最も長くなる最大リーチ姿勢(ブームシリンダ21S及びアームシリンダ22Sが最も伸びた状態)で且つバケット23の対地角(バケット23の先端部23b(爪)と地面Gとのなす角度)が例えば70°~120°になるような姿勢とされている(図4A参照)。掘削開始姿勢から所定掘削動作が開始すると、ブーム21の傾動角が増加するとともにアーム22がブーム21に近づくように回転し、バケット23がその基端部23aを支点として図の反時計回り方向に回転する(図4B参照)。これにより、バケット23の先端部23bが地面に貫入(侵入)しながらバケット23全体が基端部23aを支点に回動し、バケット23の先端部23bにて掘削された地盤を構成する土砂がバケット23内に導かれる。このとき、作業アタッチメント20の合成重心gの速度Vgが目標重心速度rに維持されるようにブーム21の動作がコントローラ50により制御される(図4Bの黒矢印参照)。そして、バケット23が回転してその先端部23bが地面を抜け出た後は、掘削完了姿勢(図4C参照)に移行する。掘削完了姿勢では、バケット23の開口が上側を向いて、掘削後の土砂Eが当該バケット23に保持される。
【0079】
重量検出部502は、姿勢検出部31による検出情報を基にバケット23に保持された土砂の重量を検出(算出)する。この「重量」には、「質量」という意味と「荷重」という意味との双方を含み、いずれの意味であってもよい。すなわち、重量検出部502は、土砂の質量を検出するものであってもよいし、荷重を検出するものであってもよい。なお、本実施形態の後述の(式6)では一例として土砂の質量を算出している。
【0080】
重量検出部502は、予め記憶された作業アタッチメント20の寸法情報及び重量情報と、不図示のセンサ(例えばロードセルや圧力センサ)により測定されるブームシリンダ21Sの負荷と、姿勢検出部31により検出された作業アタッチメント20の姿勢とを基に、ブーム21の基端部の回転支点S回りのモーメントの釣り合い式から土砂の重量を算出する。図5は、このモーメントの釣り合い式に用いる寸法情報を示す図であり、掘削完了姿勢における作業アタッチメント20の合成重心gと回転支点Sとの水平距離をL1とし、土砂の重心位置(バケット23の前後の中央位置と仮定)と回転支点Sとの水平距離をL2とし、ブームシリンダ21Sの軸線と回転支点Sとの距離をL3として示している。ここで、ブームシリンダ21Sの推力をF1(N)とし、作業アタッチメント20(ここでは一例としてシリンダ重量等は無視し得るため含めない)の重量をF2(kg)とし、バケット23に保持された土砂Eの重量をX(kg)としたとき、モーメントの釣り合いを基に土砂の重量X(kg)は次の式6で表される。重量検出部502は、この式6を基に演算を行うことでバケット23に保持されている土砂の重量(この例では質量)を算出する。
【0081】
X=(F1*L3-F2*g*L1)/(g*L2)…………(式6)
なお、この式6に含まれる「g」は重力加速度であり上述の合成重心を意味するものではない。
【0082】
硬さ推定部503は、モード設定入力部6aにより硬さ推定モードが設定された場合には、作業アタッチメント20による上述の所定掘削動作が実行された後に、前記重量検出部502により検出されたバケット23上の土砂Eの重量と、当該土砂Eの重量と地盤の硬さとを対応付けた硬さ対応データD(後述する図6参照)とを基に地盤の硬さを推定する。
【0083】
記憶部504は、コントローラ50が実行する各種の処理において必要とされるパラメータや閾値を記憶する。また、記憶部504は、作業アタッチメント20による所定掘削動作の実行によって、バケット23により掘削されて保持された土砂Eの重量と地盤の硬さとを対応付けた硬さ対応データDを記憶する。
【0084】
図6は、硬さ対応データDの一例を示す図である。この硬さ対応データDでは、バケット23に保持される土砂Eの重量と地盤の硬さとの関係が線形な一次の近似直線Iで規定されている。本例では、硬さ対応データDは、横軸に、バケット23に保持された土砂Eの重量を取り、縦軸に地盤の硬さを取ったグラフデータとされているが、データの形式はこれに限ったものではなく、例えばテーブルデータであってもよい。硬さ対応データDは、地盤の硬さの違いによる前記土砂Eの重量の変化を規定するデータであるとも言える。
【0085】
縦軸の地盤の硬さは、例えばコーンペネトロメータを用いた貫入試験による貫入抵抗値や、サウンディングテストによって測定されるN値で表すことができるが、これに限ったものではなく、例えばせん断強度試験で得られるせん断強度で表してもよいし、後述の他の実施形態で説明するように段階的に区切られた硬さレベルで表してもよい。
【0086】
この硬さ対応データDは、例えば製造者が油圧ショベル1の市場出荷前に事前に行う掘削試験に基づいて作成される。この掘削試験では、例えば、硬さが異なる複数種類の地盤に対して作業アタッチメント20による上述の所定掘削動作を実行する。このとき、油圧ショベル1を配置する地面は傾きのない水平な地面であることが好ましい。作業アタッチメント20による所定掘削動作は、目標速度条件を満たすように(本例では作業アタッチメント20の合成重心速度Vgが一定(=目標重心速度r)になるように)、オペレータが操作部4を操作することで行う。このとき、上述したアタッチメント制御部501によるフィードバック制御機能(電磁比例弁5へのブーム入力の調整機能)をオン(有効化)にしておくことが好ましい。そうして、硬さが異なる複数種類(本例では図6の3つのデータポイントP1~P3に対応する3種類)の地盤に対して所定掘削動作を実行した場合に、バケット23にて掘削保持される土砂Eの重量を重量検出部502により検出する。そして、この検出した土砂Eの重量と地盤の硬さとを対応付けた複数のデータポイントP1~P3を座標平面上にプロットし、例えば最小二乗法等の近似手法を用いてこれら複数のデータポイントP1~3に最も適合する近似直線Iを算出することで図6に示す硬さ対応データDを得ることができる。なお、本例では、3つのデータポイントP1~P3を基にしているがその数は3つに限ったものではなく、2つ以上であればよい。また、データポイントの近似は必ずしも直線である必要はなく2次以上の近似曲線であってもよい。
【0087】
通信部505は、硬さ推定部503にて推定された前記地盤の硬さの情報を前記サーバ35(管理装置の一例)に送信する。サーバ35に送信された地盤の硬さの情報は、例えば、サーバ35と通信可能に構成された他の外部端末(例えば、パソコンやスマートフォン等)から閲覧可能とすることで、施工計画の見直しや施工履歴の管理等に活用される。
【0088】
ところで、上述した硬さ対応データD(図6参照)では、地盤の硬さが堅いと、バケット23により掘削保持される土砂Eの重量は少なくなり、地盤の硬さが軟らかいと、バケット23により掘削保持される土砂Eの重量は多くなる特性が示されているが、このような特性は発明等の鋭意研究により得た知見であり、以下、図7A及び図7Bを参照しながら、このような特性が得られる理由を説明する。
【0089】
図7A及び図7Bは、作業アタッチメント20により所定掘削動作を実行した際のバケット23の掘削経路を破線で示す模式図である。
【0090】
図7Bに示す堅土に対する所定掘削動作では、図7Aの軟土に対する所定掘削動作に比べて、バケット23による掘削経路(破線で示す経路)の地面からの深さAが浅いことが分かる。すなわち、本実施形態のように、地盤の硬さに拘わらず、作業アタッチメント20の合成重心速度Vgを一定に保って掘削を行う場合(目標速度条件を満たす所定掘削動作を実行する場合)、堅土では軟土に比べてバケット23に作用する掘削抵抗が高くなるためアーム22の速度が早期に低下する。このため、このアーム22の速度低下に起因する作業アタッチメント20の合成重心速度Vgの低下を補うために(当該合成重心速度Vgを目標重心速度rに追従させるために)、ブーム21を図の時計回り方向に回動させてブーム21の先端を上方に引き上げる(上述の図4Bの黒矢印参照)。これにより、バケット23に作用する掘削抵抗が低下して合成重心速度Vgが目標重心速度rに追従するが、このとき、バケット23の掘削軌跡が全体的に上方にシフトする。この結果、堅土では、軟土に比べてバケット23による掘削深さAが浅くなるとともに前後方向(図7A及び図7Bの左右方向)の掘削距離Bが短くなるので、バケット23に保持される土砂Eの重量も少なくなる(図7B参照)。
【0091】
本実施形態では、このように作業アタッチメント20の合成重心速度Vgを一定(=目標重心速度r)に維持するように所定掘削動作を行うことで、掘削動作完了後にバケット23に保持される土砂Eの重量が変化することに着目し、当該土砂Eの重量と地盤の硬さとを対応付けた上述の硬さ対応データDに基づいて地盤の硬さを推定するようにしている。そして、発明者等は、このようにバケット23に保持された土砂Eの重量に基づいて地盤の硬さを推定する場合、推定精度の向上を図る観点から、堅い地盤を掘削した場合と軟らかい地盤を掘削した場合とでバケット23に保持される土砂の重量が明確に異なっていることが好ましいとの考えに到達し、これを可能にするべく目標重心速度rの設定に工夫を凝らすようにしている。
【0092】
図8は、この目標重心速度rの設定手順を説明するための説明図である。目標重心速度rを設定する際には、例えば、硬さ対応データDに規定された硬さ範囲(図6のh1~h2の範囲)のうち最も軟らかい硬さh1(所定硬さの一例)に対応する地盤を準備し、当該地盤に対して、目標重心速度rを複数段階(図8の例では一例として高速、中速、低速の3段階)に変化させて、各目標重心速度ごとに、作業アタッチメント20による所定掘削動作を実行する。図8では、破線K1、K2、K3がそれぞれ、目標重心速度rが高速、中速、低速の場合のバケット23の掘削軌跡を示している。図8から分かるように、各目標重心速度rごとにバケット23による掘削軌跡が変化する。具体的に、図8の例では、目標重心速度rが高速に対応する掘削軌跡K1では、バケット23により掘削される土砂の掘削量がバケット23に保持可能な最大積載量を下回り、目標重心速度rが低速に対応する掘削軌跡K3では、バケット23により掘削される土砂の掘削量がバケット23の最大積載量を上回る(土砂の一部がバケット23からこぼれ落ちる)のに対し、目標重心速度rが中速に対応する掘削軌跡K2では、バケット23により掘削される土砂の掘削量がバケット23の最大積載量に対応する量になる。ここで、「最大積載量に対応する量」とは、土砂の掘削量が最大積載量と全く同じ値である場合に限らず上下に誤差を含んでいてもよい。本実施形態では、このように実際に掘削試験を行うことにより、バケット23により掘削される土砂の掘削量が、最大積載量に対応する量になるような目標重心速度rを見つけて、この目標重心速度rを硬さ推定モードの設定時における作業アタッチメント20の目標重心速度rとして設定している。そうして設定した目標重心速度rは、記憶部504に記憶されて、上述した作業アタッチメント20の目標重心速度rとして使用される。これによれば、作業アタッチメント20に所定掘削動作を実行させて軟土の地盤と堅土の地盤とをそれぞれ掘削した際に、バケット23に掘削保持される土砂Eの重量を軟土と堅土とで大きく異ならせることができる。よって、バケット23に掘削保持された土砂Eの重量を基にした本実施形態の硬さ推定処理を高精度で実行することができる。
【0093】
図9は、コントローラ50により実行される硬さ推定処理の内容を示すフローチャートである。
【0094】
ステップSA1では、モード設定入力部6aからのモード設定情報を基に、現時点における油圧ショベル1の運転モードとして硬さ推定モードが設定されているか否かを硬さ推定部503にて判定する。そして、硬さ推定部503にて硬さ推定モードが設定されていないと判定した場合には(ステップSA1でNO)リターンする一方、硬さ推定モードが設定されていると判定した場合には(ステップSA1でYES)、ステップSA2に進む。
【0095】
ステップSA2では、前記姿勢検出部31にて検出された作業アタッチメント20の姿勢情報を基に、作業アタッチメント20が前記掘削開始姿勢(図4A参照)にあるか否かを硬さ推定部503にて判定し、掘削開始姿勢にないと判定した場合には(ステップSA2でNO)、オペレータによる所定掘削動作のための操作が行われていないと推定されるためリターンする。一方、硬さ推定部503にて作業アタッチメント20が掘削開始姿勢にあると判定された場合には(ステップSA2でYES)、オペレータによる所定掘削動作のための操作が開始していると推定されるためステップSA3に進む。
【0096】
ステップSA3では、前記姿勢検出部31にて検出された作業アタッチメント20の姿勢情報を基に、作業アタッチメント20が前記掘削完了姿勢(図4C参照)にあるか否かを硬さ推定部503にて判定し、作業アタッチメント20の姿勢が掘削完了姿勢にないと判定した場合には(ステップSA3でNO)、作業アタッチメント20が前記所定掘削動作を実行途中の状態であると推定して、所定掘削動作が完了するまで本ステップSA3の判定処理を繰り返し実行する一方、作業アタッチメント20が掘削完了姿勢にあると判定した場合には(ステップSA3でYES)、前記所定掘削動作が完了したものと推定してステップSA4に進む。
【0097】
ステップSA4では、バケット23に保持されている土砂Eの重量を重量検出部502が検出する。
【0098】
ステップSA5では、作業アタッチメント20による所定掘削動作が正しく実行されたか否か硬さ推定部503が判定する。すなわち、例えば、オペレータの操作ミス等により、作業アタッチメント20が前記目標速度条件を満たさずに変位した場合、バケット23により掘削保持される土砂Eの重量(つまりステップSA4で検出された土砂Eの重量)が想定される土砂Eの重量範囲(例えば、硬さ対応データD(図6参照)の最小土砂重量w1~最大土砂重量w2の範囲)を満たさない場合があり、このような場合には、所定掘削動作が正しく実行されていないと判定する。所定掘削動作が正しくない例として、例えばバケット23が空中で回転するような空掘削状態等が挙げられる。なお、所定掘削動作が正しく行われたか否かの判定は、必ずしもバケット23に保持された土砂Eの重量を基に行う必要はなく、例えば、掘削動作開始後のシリンダ負荷(例えばバケットシリンダ23Sの負荷)の時間波形が、予め定めた基準波形と比べて所定以上ずれているか否かを基に判定するようにしてもよい。そして、本ステップSA5の判定処理で、作業アタッチメント20による所定掘削動作が正しく行われなかったと硬さ推定部503が判定した場合にはリターンする一方、所定掘削動作が正しく行われたと硬さ推定部503が判定した場合にはステップSA6に進む。
【0099】
ステップSA6では、ステップSA4にて重量検出部502により検出されたバケット23上の土砂Eの重量と、記憶部504に記憶された前記硬さ対応データD(図6参照)とを基に地盤の硬さを推定する。一例として、例えば重量検出部502により検出された土砂Eの重量がw3(図6参照)であった場合には、硬さ推定部503は、硬さ対応データDの前記近似直線Iを表す近似式に重量w3を代入して得られる硬さh3を地盤の硬さとして算出(推定)する。
【0100】
[第1実施形態の作用効果]
以上説明したように本実施形態では、油圧ショベル1は、バケット23に保持された土砂Eの重量を検出可能な重量検出部502と、地盤の硬さを推定するための硬さ推定部503とを備え、硬さ推定部503は、地盤の硬さを推定する際には、作業アタッチメント20が掘削開始姿勢から掘削後の土砂Eを保持可能な掘削完了姿勢まで目標速度条件を満たしながら姿勢変化する所定掘削動作が実行された後に、重量検出部502により検出される前記土砂Eの重量と、地盤の硬さの違いによる前記土砂Eの重量の変化を規定した硬さ対応データDとを基に前記地盤の硬さを推定するように構成されている。
【0101】
この構成によれば、従来のように複雑な演算処理によってセンサの検出波形の特徴を判別する場合に比べて、誤判別のリスクを低減して地盤の推定精度を向上させることができる。また、本構成によれば、硬さ対応データDに規定される土砂重量と地盤の硬さとを近似直線Iを用いて対応付けることで高い分解能で地盤の硬さを推定することができる。しかも、本構成によれば、作業アタッチメント20が行う通常の掘削作業の中に、前記所定掘削動作を組み入れて硬さ推定部503による地盤硬さの推定を行うことができるので、地盤硬さを推定するためだけの専用動作が不要となり、作業アタッチメント20による掘削作業を効率良く行うことができる。
【0102】
本実施形態では、前記作業アタッチメント20が所定掘削動作を実行する際の目標速度条件は、作業アタッチメント20を構成するブーム21とアーム22とバケット23との合成重心速度が一定(=目標重心速度)であるとの条件とされている。
【0103】
この構成では、作業アタッチメント20による掘削動作がブーム21とアーム22とバケット23との協働により行われることに着目し、硬さ推定部503による地盤の硬さ推定を行う際には、ブーム21とアーム22とバケット23との合成重心速度Vgが一定になるように作業アタッチメント20に所定掘削動作を実行させることで、バケット23による地盤の掘削を安定して(むらなく)実行することができる。よって、所定掘削動作後にバケット23に保持される土砂重量の再現性(同じ硬さの地盤に対して同じ速度条件で掘削動作を実行した場合の土砂重量の再現性)が確保されるので、硬さ推定部503による地盤硬さの推定精度を向上させることができる。
【0104】
本実施形態では、コントローラ50は、作業アタッチメント20による前記所定掘削動作の実行中は、作業アタッチメント20を構成するブーム21、アーム22及びバケット23の合成重心速度Vgを算出(検出)し、当該速度Vgが目標重心速度rに追従するように(目標速度条件を満たすように)、駆動部30(詳しくは駆動部30の電磁比例弁5)への指令信号を決定し、決定した指令信号を当該駆動部30に送信するように構成されている。
【0105】
この構成によれば、オペレータの手動操作のばらつき等に起因して作業アタッチメント20の合成重心速度Vgが目標重心速度rから離れるのを防止して作業アタッチメント20の動作を安定させることができる。
【0106】
本実施形態では、作業アタッチメント20の目標重心速度r(目標速度条件の一例)は、前記硬さ対応データDに規定された最も軟らかい地盤(所定硬さの一例)を前記作業アタッチメント20の前記所定掘削動作により掘削した場合に、前記バケット23により掘削される土砂の掘削量が、バケット23に保持可能な最大積載量に対応する量になるように設定される。
【0107】
この構成によれば、作業アタッチメント20の所定掘削動作によりバケット23に保持される土砂Eの重量を、地盤が軟土である場合と堅土である場合とで大きく異ならせることができ、延いては、硬さ推定部503による地盤硬さの推定精度を向上させることができる。
【0108】
また、本実施形態では、硬さ推定部503は、作業アタッチメント20による前記所定掘削動作が実行された場合には、当該所定掘削動作が正しく実行されたか否かを判定し、正しく実行されていないと判定した場合には地盤硬さの推定処理を実行しないように構成されている。
【0109】
この構成によれば、作業アタッチメント20による所定掘削動作が正しく実行されなかった場合には、硬さ推定部503による推定処理は実行されないので、該硬さ推定部503による地盤硬さの誤推定を防止することができる。
【0110】
また、本実施形態では、油圧ショベル1は通信部505を有し、通信部505は、硬さ推定部503により推定された地盤の硬さの情報を受け付けて、当該受け付けた硬さの情報を、前記油圧ショベル1から離れた場所に設けられたサーバ35へ送信するように構成されている。
【0111】
この構成によれば、通信部505よりサーバ35に送信された地盤の硬さの情報を、施工計画の見直しや施工履歴の管理等に活用することができる。
【0112】
(第1実施形態の変形例)
図10は、第1実施形態の変形例を示す図3相当図である。この変形例では、コントローラ50が乖離度算出部506をさらに有しており、乖離度算出部506により算出された作業アタッチメント20の合成重心速度Vgと目標重心速度rとの乖離度を表示部34に表示させる点で前記第1実施形態とは異なる。なお、以下の変形例及び実施形態において、前記第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0113】
前記乖離度算出部506は、作業アタッチメント20による所定掘削動作の実行中における作業アタッチメント20の合成重心速度Vgを算出し、算出した合成重心速度Vgと目標重心速度rとの乖離度を算出する。ここで、乖離度とは、例えば、合成重心速度Vgと目標重心速度rとの差分速度の値であってもよいし、目標重心速度を基準とする前記合成重心速度Vgの大小のレベル等であってもよい。本変形例では、乖離度算出部506は、後者を採用し、目標速度を基準とする合成重心速度の大小のレベルを前記乖離度として算出する。
【0114】
そして、乖離度算出部506は、算出した前記乖離度に係る情報を報知するための報知画面34aを表示部34に表示させることで、オペレータに対して視覚を通じて前記乖離度を報知する。表示部34は報知部として機能する。
【0115】
図11は、表示部34に表示される前記報知画面34aの一例を示す概略図である。この報知画面34aには、乖離度表示メータ34bと操作メッセージ領域34cとが表示されている。
【0116】
乖離度表示メータ34bは、上下方向に長い矩形状のレベルメータであって、目標重心速度に対応する基準ライン34dよりも上側の領域と下側の領域とに区切られている。乖離度表示メータ34bにおける基準ライン34dよりも上側の領域は、作業アタッチメント20の合成重心速度Vgが目標重心速度rよりも速いことを意味し、上側ほど合成重心速度Vgが速い(つまり目標重心速度rからの乖離度が大きい)ことを意味する。また、乖離度表示メータ34bにおける基準ライン34dよりも下側の領域は、作業アタッチメント20の合成重心速度Vgが目標重心速度rよりも遅いことを意味し、下側ほど合成重心速度Vgが遅い(つまり目標重心速度rからの乖離度が大きい)ことを意味する。
【0117】
乖離度表示メータ34bの右側には、三角形状の指示マーク34eが表示されており、この指示マーク34eの頂点によって現時点の合成重心速度Vgのレベルを指し示すことでオペレータに対して現時点の合成重心速度Vgと目標重心速度rとの乖離度が報知される。
【0118】
操作メッセージ領域34cは、作業アタッチメント20の合成重心速度Vgと目標重心速度rとの乖離度を低減するために(合成重心速度を目標重心速度に近づけるために)オペレータに求められる操作をメッセージ形式で報知するための領域である。
【0119】
具体的には、操作メッセージ領域34cには、「アームとバケットのみで掘削して下さい」という指示メッセージと、「ブームを上げて下さい」という指示メッセージとが上下2段に並んで表示されている。各メッセージの左側にはそれぞれチェックボックス34f,34gが表示されており、2つのチェックボックス34f,34gのうち、オペレータに求められる操作に対応するチェックボックスが黒丸で表示されるようになっている。
【0120】
図11の例では、指示マーク34eは乖離度表示メータ34bにおける基準ライン34dよりも下側の領域を指していることから、作業アタッチメント20の合成重心速度Vgは目標重心速度rを下回っていることが分かる。そして、このように合成重心速度Vgが目標重心速度rを下回る状況では、上述の図7A及び図7Bの説明で言及したようにブーム21を上げて(傾動角度を増加させて)合成重心速度Vgを目標重心速度rに近づける必要がある。そこで、報知画面34aの操作メッセージ領域34cでは、この「ブームを上げて下さい」との指示メッセージに対応するチェックボックス34gが黒丸で表示されている。したがって、オペレータは、このチェックボックス34gが黒丸で表示されている状態(チェックされている状態)を見て、ブーム21を上げるための操作が必要であると認識することができる。
【0121】
(第1実施形態の変形例の作用効果)
以上説明したように、本変形例では、油圧ショベル1は、作業アタッチメント20の所定掘削動作の実行中における合成重心速度Vg(速度状態の一例)を検出し、検出した合成重心速度Vgと前記目標重心速度rとの乖離度に係る情報を算出する乖離度算出部506と、乖離度算出部506により算出された前記乖離度に係る情報を表示する表示部34(報知部の一例)とを備えている。表示部34には、当該乖離度に係る情報を含む報知画面34aが表示される。
【0122】
この構成によれば、オペレータは、作業アタッチメント20による所定掘削動作の実行中に、表示部34に表示された報知画面34aを見て、作業アタッチメント20の合成重心速度Vgが目標重心速度rと比べてどの程度乖離しているかを認識することができる。そして、オペレータは、当該認識に基づいて、作業アタッチメント20の合成重心速度Vgが前記目標重心速度rになるように自身のマニュアル操作を補正することができる。したがって、オペレータの手動操作に起因して作業アタッチメント20の合成重心速度Vgがばらつくのを防止することができる。延いては、作業アタッチメント20による所定掘削動作によりバケット23に掘削保持される土砂Eの重量の再現性を向上させて、硬さ推定部503による地盤硬さの推定精度をより一層向上させることができる。
【0123】
なお、本変形例では、乖離度算出部506が、作業アタッチメント20の合成重心速度Vgを算出する処理を実行するように構成されているが、これに限ったものではなく、例えば、アタッチメント制御部501にて算出された作業アタッチメント20の合成重心速度の情報を受け取って、受け取った合成重心速度Vgと目標重心速度rとの乖離度を算出するように構成されていてもよい。この場合、アタッチメント制御部501が乖離度算出部506の一部の機能(合成重心速度の算出機能)を担うが、そのような実施形態であってもよい。
【0124】
また、本変形例では、報知部は、乖離度算出部506にて算出された乖離度に係る情報を視覚を通じて報知する表示部34により構成されているが、これに限ったものではなく、例えば、前記乖離度に係る情報をスピーカ等により聴覚を通じてオペレータに報知するように構成されていてもよい。
【0125】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態を示す図3相当図である。この実施形態では、コントローラ50が掘削時間検出部507をさらに有しており、重量検出部502により検出された土砂Eの重量に基づく地盤硬さの推定処理と、掘削時間検出部507により検出された掘削時間に基づく地盤硬さの推定処理とを併用する点で前記第1実施形態とは異なる。
【0126】
掘削時間検出部507は、前記作業アタッチメント20が前記所定掘削動作に要した時間(つまり前記掘削開始姿勢から掘削動作を開始後、掘削完了姿勢になるまでの時間)を検出する。掘削時間検出部507は、一例として、シリンダ負荷の時間変化を基に前記所定掘削動作に要した時間を検出する。このシリンダ負荷は、ブームシリンダ21Sの負荷、アームシリンダ22Sの負荷、及びバケットシリンダ23Sの負荷のいずれかを採用することができる。本実施形態では、シリンダ負荷として、例えばアームシリンダ22Sの負荷を検出する。
【0127】
図13は、作業アタッチメント20よる所定掘削動作の実行に伴うシリンダ負荷(本実施形態ではアームシリンダ22Sの負荷)の時間変化の一例を示すグラフである。
【0128】
時刻T1では、作業アタッチメント20が掘削開始姿勢を取るためにバケット23の先端部23bが地面Gに接触し、これにより、アームシリンダ22Sのシリンダ負荷がU1まで一気に上昇する。次いで、掘削開始姿勢から作業アタッチメント20が前記所定掘削動作を開始すると、バケット23が基端部23aを支点に回動するにしたがってバケット23に作用する掘削抵抗が次第に増加するので、シリンダ負荷がU1からU2まで次第に増加する。その後、バケット23全体が地面Gよりも上側に抜け出て作業アタッチメント20が掘削完了姿勢になると同時に、シリンダ負荷が一気にU3まで低下し、その後は、バケット23に保持された土砂Eの重量とバランスするシリンダ負荷で一定に維持される。
【0129】
掘削時間検出部507は、不図示のセンサ(例えばロードセルや圧力センサ)によりアーム22のシリンダ負荷を監視することで、上述した図13に示すシリンダ負荷の時間波形を取得する。そして、掘削時間検出部507は、取得したシリンダ負荷の時間波形を基に、前記時刻T1から前記時刻T2までの時間(=T2-T1)を作業アタッチメント20の所定掘削動作に要した時間である掘削時間として検出(算出)する。
【0130】
図14は、第2実施形態におけるコントローラ50により実行される硬さ推定処理の一例を示すフローチャートである。
【0131】
ステップSB1~ステップSB5までの処理は、第1実施形態におけるステップSA1~ステップSA5までの処理と同様であり、ステップSB6以降の処理が前記第1実施形態とは異なる。以下では、ステップSB6以降の処理についてのみ説明し、それ以前のステップSB1~SB5の説明は省略する。
【0132】
すなわち、ステップSB6では、ステップSB4の処理で重量検出部502により検出されたバケット23の土砂Eの重量が所定重量未満であるか否かを硬さ推定部503が判定する。ここで、所定重量とは、例えば、バケット23に対する土砂Eの最大積載量(それ以上積載すると土砂がバケット23の外にこぼれるような山積み状態)に対応する重量であって、本実施形態では、例えば、硬さ対応データDに規定される最大土砂重量w2に相当する。
【0133】
そして、重量検出部502により検出されたバケット23の土砂Eの重量が前記所定重量未満であると硬さ推定部503にて判定された場合には(ステップSB6でYESの場合)にステップSB7に進み、第1実施形態と同様に、硬さ推定部503が、重量検出部502にて検出された前記土砂Eの重量と前記硬さ対応データDとを基に地盤の硬さを推定し(ステップSB7)、しかる後にリターンする。
【0134】
一方、重量検出部502により検出されたバケット23の土砂Eの重量が前記所定重量以上であると硬さ推定部503にて判定された場合には(ステップSB6でNOの場合)、ステップSB8に進み、作業アタッチメント20よる所定掘削動作の実行に要した掘削時間を掘削時間検出部507が検出し、当該検出後は、ステップSB9に進み、掘削時間検出部507により検出された掘削時間を基に硬さ推定部503が地盤の硬さを推定する。
【0135】
このステップSB9の地盤の硬さ推定処理の一例を説明すると、例えば、所定掘削動作によりバケット23に掘削保持される土砂Eの重量が、前記最大積載量に対応する重量になるような地盤(本例では、図6の硬さ対応データDにて規定される最大土砂重量w2に対応する硬さh1の地盤)に対して所定掘削動作を実行した際の掘削時間をTmaxとし、前記掘削時間検出部507により検出された所定掘削動作の実行時間をTrealとしたとき、地盤硬さHは次の式7により推定することができる。
【0136】
H=h1*(Tmax/Treal)………(式7)
なお、前記Tmaxは、硬さ対応データDを作成する際の掘削試験の際に測定して記憶部504に記憶しておけばよい。
【0137】
(第2実施形態の作用効果)
本実施形態では、油圧ショベル1は、作業アタッチメント20の所定掘削動作に要した時間である掘削時間を検出する掘削時間検出部507をさらに備え、硬さ推定部503、地盤の硬さを推定する際には、作業アタッチメント20により前記所定掘削動作が実行された後に、重量検出部502により検出された土砂Eの重量が前記所定重量以上であるか否かを判定し、前記所定重量以上であると判定した場合には、掘削時間検出部507により検出された前記掘削時間に基づいて前記地盤の硬さを推定するように構成されている。
【0138】
この構成によれば、地盤の硬さが過度に軟らかい場合であっても、地盤硬さの推定精度を十分に確保することができる。すなわち、地盤硬さが過度に軟らかいと、バケット23により掘削される土砂の量が、掘削完了姿勢でバケット23に保持可能な最大積載量を超えるため、地盤硬さが変化したとしても、バケット23に保持される土砂Eの重量は余剰分がこぼれ落ちるために一定のまま変化せず、地盤硬さの推定精度を十分に確保することができない。これに対して前記構成では、バケット23に保持される土砂Eの重量が前記所定重量を越える場合(つまり、地盤の硬さが変化してもバケット23に保持される土砂重量が変化しないほどに地盤の硬さが軟らかいと考えられる場合)には、所定掘削動作に要した掘削時間を基に地盤硬さの推定処理を実行するようにした。この所定掘削動作に要した掘削時間は、バケット23に保持される土砂重量のように上限値が制限されることがなく、地盤の硬さが軟らかいほど掘削時間は長くなる。したがって、地盤の硬さが過度に軟らかい場合には、掘削時間を基に硬さ推定部503による地盤硬さの推定処理を実行することでその推定精度を向上させることができる。
【0139】
(第3実施形態)
図15は、第3実施形態を示す図3相当図である。この実施形態では、硬さ推定部503が、所定掘削動作によりバケット23に保持された土砂の重量と、稼働データ取得部508により取得された掘削動作中の作業アタッチメント20の稼働データJとに基づいて地盤の硬さを推定する点が前記実施形態1とは異なる。
【0140】
具体的には、コントローラ50は、稼働データ取得部508をさらに備えている。また、コントローラ50は、シリンダ負荷検出部36に信号の授受可能に接続されている。
【0141】
前記シリンダ負荷検出部36は、一例として、ブームシリンダ21Sに取付けられた差圧センサを含んでいる。差圧センサは、ブームシリンダ21Sにおけるロッド室内の圧力とシリンダ室内の圧力との差圧をシリンダ負荷として検出する。シリンダ負荷検出部36は、検出したシリンダ負荷の情報をコントローラ50に送信する。なお、シリンダ負荷は、ロッド室とシリンダ室との差圧に限ったものではなく、ロッド室の圧力であってもよいし、シリンダ室の圧力であってもよい。また、対象とするシリンダは、ブームシリンダ21Sに限ったものではなく、アームシリンダ22Sやバケットシリンダ23S等であってもよい。
【0142】
前記稼働データ取得部508は、作業アタッチメント20の稼働状態に関連し且つ当該掘削動作の対象となる地盤の硬さと相関のある稼働パラメータと、当該稼働パラメータに関する数値とを含む稼働データJを取得し、取得した稼働データJを記憶部504に記憶させる。
【0143】
図16は、稼働データ取得部508により取得される稼働データJの一例を示す図である。この図の例では、前記稼働パラメータの一例として、シリンダ負荷と、作業アタッチメント20の重心加速度と、作業アタッチメント20に作用する掘削反力とが例示されている。また、各稼働パラメータに関する数値として、シリンダ負荷の最大値と、作業アタッチメント20の重心加速度の分散値と、前記掘削反力の積分値とが例示されている。なお、ここで挙げた稼働パラメータはあくまでも一例であり、例えば、作業アタッチメント20の重心躍度(重心加速度の時間変化率)や、アーム22の重心加速度、アーム22の重心速度、アーム22の重心躍度等を含んでいてもよい。
【0144】
稼働データ取得部508は、前記シリンダ負荷の一例として、ブームシリンダ21Sのロッド室とシリンダ室との間の差圧を取得する。このシリンダ負荷は、シリンダ負荷検出部36により検出される。稼働データ取得部508は、作業アタッチメント20の掘削動作中は、シリンダ負荷検出部36により受信したブームシリンダ21Sの前記差圧の現時点までの最大値を保持し、当該差圧が現時点の最大値を超える度に当該最大値を更新する。そうして、稼働データ取得部508は、作業アタッチメント20の掘削動作中におけるシリンダ負荷の最大値を取得する。
【0145】
さらに稼働データ取得部508は、姿勢検出部31からの情報を基に、作業アタッチメント20の重心加速度を取得(算出)する。具体的には、稼働データ取得部508は、オペレータが操作部4を操作して作業アタッチメント20に所定掘削動作を実行させる際に、姿勢検出部31からの情報を基に作業アタッチメント20の合成重心速度Vgを算出するとともに、当該合成重心速度Vgの時間変化率を重心加速度として算出する。そして、稼働データ取得部508は、作業アタッチメント20の掘削動作中、現時点までの重心加速度の時間履歴を取得し、取得した時間履歴を基に前記重心加速度の分散値を算出する。そうして、稼働データ取得部508は、作業アタッチメント20の掘削動作中における作業アタッチメント20の重心加速度の分散値を取得する。
【0146】
さらに稼働データ取得部508は、作業アタッチメント20による所定掘削動作の実行中にバケット23に作用する掘削反力の積分値を取得(算出)する。ここで、掘削反力とは、掘削中にバケット23が地面から受ける反力である。具体的には、稼働データ取得部508は、シリンダ負荷検出部36によって検出される3つのシリンダ21S~23の負荷と、前記姿勢検出部31により検出される作業アタッチメント20の姿勢に関する情報とを基に各時刻における掘削反力を算出し、算出した掘削反力を前記所定掘削動作の開始時から終了時までの時間で積分した値を算出する。なお、前記掘削反力を取得するために、例えばバケット23に取付けたロードセル等の荷重検出センサを使用するようにしてもよい。
【0147】
硬さ推定部503は、掘削動作後にバケット23に保持されている土砂の重量に対応する土砂重量対応硬さH0(第1硬さに相当)を算出する第1算出処理と、掘削動作中に稼働データ取得部508が取得した稼働データJ中の前記3つの稼働パラメータの数値に対応する3つの稼働状況対応硬さH1,H2,H3(第2硬さに相当)を算出する第2算出処理とを実行する。そして、硬さ推定部503は、前記土砂重量対応硬さH0と、3つの稼働状況対応硬さH1,H2,H3とを基に前記地盤の硬さを推定する。
【0148】
硬さ推定部503は、推定した前記地盤の硬さを記憶しておき、推定した所定回数分の硬さの平均値を前記地盤の硬さとして出力し、前記表示部34に表示させる。
【0149】
次に、図17は、本実施形態の硬さ推定部503により実行される前記地盤硬さの推定処理の一例を示すフローチャートであって実施形態1の図9相当図である。尚、以下の説明において、実施形態1の図9と同様の処理内容については適宜説明を省略する。
【0150】
ステップSC1では、実施形態1のステップSA1と同様の処理を実行する。
【0151】
ステップSC2では、作業アタッチメント20が前記掘削開始姿勢(図4A)を取った状態から実際に掘削を開始したか否かを判定する。ここで、作業アタッチメント20が掘削開始姿勢にあるか否かは、ステップSA2と同様に前記姿勢検出部31にて検出された作業アタッチメント20の姿勢情報を基に推定し、作業アタッチメント20が前記掘削開始姿勢から実際に掘削を開始したか否かは、操作部4より入力される操作用レバー等の操作信号を基に推定すればよい。そして、本ステップSC2の判定がNOである場合(つまり、作業アタッチメント20が初期姿勢である前記掘削開始姿勢を取っているものの掘削が開始されない場合、又は、作業アタッチメント20による掘削は開始されたがその初期姿勢が前記掘削開始姿勢でなかった場合)にはリターンする一方、この判定がYESである場合にはステップSC3に進む。
【0152】
ステップSC3では、前記稼働データJの取得を開始する。具体的には、上述したシリンダ負荷の最大値、作業アタッチメント20の重心加速度の分散値、及び作業アタッチメント20に作用する掘削反力の積分値の取得を開始する。
【0153】
ステップSC4では、作業アタッチメント20による所定掘削動作が終了したか否かを判定し、この判定がNOである場合には、当該ステップSC4の処理を継続する。一方、この判定がYESである場合にはステップSC5に進む。
【0154】
ステップSC5では、前記稼働データJの取得を終了する。
【0155】
ステップSC6及びステップSC7では、実施形態1のステップSA4及びSA5と同様の処理を実行する。
【0156】
ステップSC8では、前記第1算出処理を実行することでバケット23に保持された土砂重量に対応する土砂重量対応硬さを算出する。この土砂重量対応硬さの算出は、実施形態1と同様に、重量検出部502により検出されたバケット23上の土砂Eの重量と、図6に示す硬さ対応データD(以下、第1硬さ対応データDという)とを基に算出する。
【0157】
ステップSC9では、前記第2算出処理を実行することで稼働状況対応硬さを算出する。この稼働状況対応硬さは、稼働データ取得部508が取得した稼働データJに含まれるシリンダ負荷の最大値、作業アタッチメント20の重心加速度の分散値、及び作業アタッチメント20の掘削反力の積分値と、予め記憶部504に記憶された第2硬さ対応データF1,F2,F3(図18A図18C参照)とを基に算出される。第2硬さ対応データF1,F2,F3は、前記3つの稼働パラメータに関する数値と、地盤硬さとを対応付けたデータであって予め実験等により取得されて記憶部504に記憶されている。第2硬さ対応データF1,F2,F3は、地盤の硬さの違いによる稼働データJの変化を規定するデータであるともいえる。図16に示すように、本例では、稼働データJに示されたシリンダ負荷の最大値はX1であり、作業アタッチメント20の重心加速度はX2であり、掘削反力の積分値はX3であるから、図18A図18Cに示す第2硬さ対応データF1~F3を基に、シリンダ負荷の最大値X1に対応する稼働状況対応硬さはH1として算出され、作業アタッチメント20の重心加速度はX2に対応する稼働状況対応硬さはH2として算出され、掘削反力X3に対応する稼働状況対応硬さはH3として算出される。図20はこの稼働状況対応硬さの取得結果を示すデータであり、当該データは記憶部504に記憶される。
【0158】
ステップSC10では、ステップSC8で算出した重量対応硬さH0と、ステップSC9で算出した各稼働パラメータに対応する3つの稼働状況対応硬さH1,H2,H3と、土砂重量及び各稼働パラメータのそれぞれに対して予め付与された重み係数W0,W1,W2,W3とを基に地盤の硬さを推定する。具体的には、地盤の推定硬さをIhとしたとき、Ih=H0*W0+H1*W1+H2*W2+H3*W3として算出される。図19は、前記重み係数W0,W1,W2,W3を規定した重み係数データMであって予め記憶部504に記憶されている。重み係数W0,W1,W2,W3は、地盤硬さの推定に際して影響が大きい稼働パラメータほど高く設定される。なお、W0+W1+W2+W3=1の関係を満たしている。そうして、本ステップSC10の処理が終了した後はステップSC11に進む。
【0159】
ステップSC11では、ステップSC3で取得した稼働データJを削除するとともに、ステップSC10で推定した地盤硬さh1の情報を表示部34に出力し、しかる後にステップSC1に戻る。そうして、ステップSC1~ステップSC11までの処理を繰り返す。
【0160】
硬さ推定部503は、前記所定掘削動作が実行される度に、前記推定した前記地盤硬さIhを前記表示部34に出力する。また、前記硬さ推定部503は、前記所定掘削動作が実行される度に、前記推定した前記地盤硬さIhを記憶しておき、記憶した地盤硬さIhが所定回数(所定回数は2以上)に達すると、当該記憶した地盤硬さIhの所定回数分の平均値Iaveを算出し、該算出した平均値Iaveを表示部34に出力する。
【0161】
表示部34は、硬さ推定部503により前記地盤硬さIhが推定される度に(つまり前記所定掘削動作が実行される度に)当該硬さ推定部503より受信した直近の地盤硬さIhを情報表示画面Qに表示する。また、表示部34は、前記硬さ推定部503にて前記平均値Iave(=ΣIh/n)が算出される度に(つまり前記所定掘削動作が前記所定回数実行される度に)当該硬さ推定部503より受信した直近の平均値Iaveを情報表示画面Qに表示する。
【0162】
図21は、表示部34に表示される情報表示画面Qの一例を示す図である。
【0163】
この情報表示画面Qは、運転モード表示領域q1と硬さ情報表示領域q2とを含んでいる。
【0164】
運転モード表示領域q1は、現時点において通常運転モードが設定されているか否か表示するモード表示部q11と、上述した掘削アシスト制御に関する情報を表示するアシスト情報表示部q12とからなる。モード表示部q11は、通常運転モードが設定されている場合には表示マークを白丸で表示し、硬さ推定モードが設定されている場合には表示マークを黒丸で表示する。アシスト情報表示部q12は、アシスト制御が有効化されている場合には、表示マークを黒丸で表示し、アシスト制御が無効化されている場合には、表示マークを白丸で表示する。
【0165】
硬さ情報表示領域q2は、硬さ推定部503が推定した上述の直近の地盤硬さIhを表示する表示部q21と、地盤硬さの平均値Iaveを表示する表示部q22とを有している。硬さ情報表示領域q2の右上には、硬さ推定部503にて算出された地盤硬さの平均化処理を実行する際のデータ数(前記所定回数)を入力するための入力ボックスq23が設けられ、その右側には、現時点における地盤硬さの取得回収(硬さ推定部503における推定回数)を表示する表示部q24が設けられている。
【0166】
(作用効果)
以上説明したように本実施形態では、硬さ推定部503は、前記地盤硬さの推定処理を実行する際には、作業アタッチメント20による前記所定掘削動作の実行後に重量検出部502により検出される前記土砂重量と第1硬さ対応データDとを基に当該土砂重量に対応する地盤の硬さを土砂重量対応硬さH0として算出する第1算出処理と、所定掘削動作中に稼働データ取得部508が取得した稼働データJと、地盤硬さの違いによる前記稼働データJの変化を規定した第2硬さ対応データF1,F2,F3とを基に、前記取得した前記稼働データJに対応する前記地盤の硬さを稼働状況対応硬さH1,H2,H3として算出する第2算出処理とを実行する。そして、硬さ推定部503は、前記第1算出処理で算出した前記土砂重量対応硬さH0と、前記第2算出処理で算出した前記第2硬さH1,H2,H3とを基に前記地盤の硬さを推定するように構成されている。
【0167】
この構成によれば、所定掘削動作によりバケット23に保持された土砂Eの重量のみでなく、掘削動作中における作業アタッチメント20の稼働データJに基づいて地盤の硬さを推定するようにしたことで、当該地盤硬さの推定精度を向上させることができる。すなわち、所定掘削動作によってバケット23に保持される土砂重量は、掘削動作中にバケット23が異物と接触することによる当該バケット23の軌道変化や地形の荒れ等に起因して容易に変化する。このため、バケット23に保持される土砂重量のみに基づいて地盤硬さを推定するようにした場合には、バケット23に保持される土砂重量のばらつきに起因して地盤の硬さ推定精度が低下する虞がある。これに対して、前記構成では、所定掘削動作後にバケット23に保持された土砂重量に基づく土砂重量対応硬さH0と、所定掘削動作中の作業アタッチメント20の稼働パラメータに基づく稼働状況対応硬さとを基に地盤硬さの推定処理を実行するようにしたことで、土砂重量のみに基づいて地盤硬さを推定する場合に比べてその推定精度を可及的に向上させることができる。
【0168】
前記稼働データJは、掘削動作中における作業アタッチメント20の稼働状態に関連し且つ当該掘削動作の対象となる地盤の硬さと相関のある稼働パラメータに関する数値を含むデータである。本実施形態では、一例として、前記稼働パラメータは、作業アタッチメント20のシリンダ負荷、作業アタッチメント20の重心加速度、及び作業アタッチメント20に作用する掘削反力との3つからなり、それぞれに関する数値として最大値、分散値、積分値を取得するようにしている。
【0169】
このように、稼働パラメータとして地盤の硬さとの相関性が強いパラメータを設定することで硬さ推定部503による地盤の硬さ推定精度を向上させることができる。すなわち、地盤の硬さが堅いほど作業アタッチメント20のシリンダ負荷は増加する。また、地盤の硬さが堅いほど前記掘削動作中の作業アタッチメント20の振動も大きくなるので、当該作業アタッチメント20の重心加速度も振動的に変化する。また、地盤の硬さが堅いほど、作業アタッチメント20に作用する掘削反力も増加する。このように、前記3つのパラメータは、地盤の硬さとの相関関係が強いので、これらを稼働パラメータとして設定することで、当該稼働パラメータに基づく稼動状況対応硬さと実際の地盤の硬さとの一致度が高まり、延いては、当該稼動状況対応硬さと前記重量対応硬さとに基づく地盤硬さの推定精度を向上させることができる。
【0170】
また本実施形態では、前記硬さ推定部503は、前記推定処理の実行に際して、シリンダ負荷と作業アタッチメント20の重心加速度と前記掘削反力との3つの稼動パラメータに対応する3つの稼動状態対応硬さH1,H2,H3と、前記土砂重量対応硬さH0とを取得し、該各硬さH0,H1,H2,H3のそれぞれに対して予め設定された重み係数W0,W1,W2,W3とを基に前記地盤の硬さを推定するように構成されている。
【0171】
この構成によれば、地盤の硬さとの相関関係が強い指標については重み係数を高く設定し、相関関係が低い指標については重み係数を低く設定することで地盤硬さの推定精度を向上させることができる。なお、重み係数W0,W1,W2,W3がいずれも同じ値であってもよく、この場合、推定硬さIh=(H1+H2+H3+H4)/4として算出することができる。
【0172】
また、本実施形態では、硬さ推定部503は、前記所定掘削動作が実行される度に、前記地盤の硬さを記憶しておき、記憶した地盤の硬さが所定回数(所定回数は2以上)に達すると、当該記憶した地盤硬さの所定回数分の平均値Iaveを算出し、算出した平均値の情報を表示部34に出力する。
【0173】
この構成によれば、硬さ推定部503より所定回数分の地盤硬さの平均値が地盤硬さの推定結果として出力される。これにより、硬さ推定部503により推定される地盤硬さのばらつきを平均化することができる。よって、作業者は、例えばこの平均化された地盤硬さを基に掘削作業を行うことで、地盤硬さに応じた適切な掘削作業を行うことができる。
【0174】
(第3実施形態の変形例1)
前記第3実施形態では、稼動パラメータの一例として、シリンダ負荷、作業アタッチメント20の重心加速度、及び作業アタッチメント20に作用する掘削反力を挙げるとともに、それらに関連する数値としてそれぞれ最大値、分散値及び積分値を挙げて説明したが、これに限ったものではない。
【0175】
すなわち、稼動パラメータは、例えば、シリンダ負荷、作業アタッチメント20の重心加速度、及び作業アタッチメント20のうちいずれか1つであってもよい。また、稼動パラメータは、作業アタッチメント20の重心速度を含んでいてもよい。すなわち、稼動パラメータは、前記掘削動作中における前記作業アタッチメント20の稼働状態に関連し且つ当該掘削動作の対象となる地盤の硬さと相関がありさえすれば如何なるパラメータであってもよく、その数も複数に限らず、1つであってもよい。
【0176】
また、前記実施形態では、前記3つの稼動パラメータ(指標)に関連する数値としてそれぞれ最大値、分散値及び積分値を挙げて説明したが、これに限ったものではなく、各稼動パラメータの数値そのものであってもよい。また、前記関連する数値は定数に限らず、時間履歴(つまり時間変化を示す波形データ)であってもよい。
【0177】
(第3実施形態の変形例2)
前記第3実施形態では、グラフ形式の第1硬さ対応データD及び第2硬さ対応データF1,F2,F3を用いて各指標に対応する硬さを算出し、各硬さに重み係数を乗算して地盤の硬さIhを推定するようにしているが、これに限ったものではなく、第1硬さ対応データD及び第2硬さ対応データF1,F2,F3として、後述する図22に示すようにレベル分けした硬さ対応データを使用するようにしてもよい。この場合、例えば、各指標に対応する硬さがどのレベルの硬さに属するかを判別し、最も多い硬さレベルを特定して当該特定した硬さを地盤の硬さであると推定するようにしてもよい。
【0178】
(第3実施形態の変形例3)
前記第3実施形態では、硬さ推定部503は、重み係数を予め定めた定数として設定しているが、これに限ったものではなく、作業アタッチメント20の所定掘削動作時における姿勢、又は、稼働データJにおける数値の時系列変化に基づいて重み係数を変更するように構成されていてもよい。この構成によれば、推定精度が落ちると予測される指標の重みを低くすることで、硬さ推定部503による地盤の硬さの推定精度を可及的に向上させることができる。
【0179】
例えば、前下がりの斜面や溝を掘削する際には、前記掘削開始姿勢におけるバケット23の位置は、油圧ショベル1が位置する地面よりも下方に位置することとなるが、このバケット23が地面から下方に位置するほど、平坦な地面を掘削する場合と比べて、掘削動作中にバケット23内に土砂が流入し易くなるので、地盤の硬さの違いによる土砂重量の差が表れにくくなる。そこで、硬さ推定部503は、例えば姿勢検出部31により検出される作業アタッチメント20の姿勢を基に、前下がりの斜面や溝を掘削中の状態にあると判定した場合には、前記砂重量対応硬さH0に対応する重み係数W0を相対的に小さく設定し、他の重み係数W1,W2,W3を相対的に大きく設定するように構成されていてもよい。これにより、硬さ推定部503による地盤の硬さ推定精度を可及的に向上させることができる。
【0180】
また他の例として、全体的には柔らかい地盤であっても局所的に存在する石等の剛体にバケット23の先端が引っ掛かる等した場合には、作業アタッチメント20の重心加速度が局所的に高くなる可能性がある。そこで、硬さ推定部503において、作業アタッチメント20の重心加速度の時間変化を示す波形データを取得し、当該波形データの中にこのようなバケット23と剛体との接触を示す特徴(例えば重心加速度が急激に垂直増加するような波形特徴)が存在するか否かを判定し、存在すると判定した場合には、当該指標(重心加速度)に対する重み係数を相対的に小さく設定し、他の重み係数を相対的に大きく設定するようにしてもよい。これにより、硬さ推定部503による地盤の硬さ推定精度を可及的に向上させることができる。
【0181】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態に係る建設機械の一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0182】
(1)前記各実施形態及び変形例では、アーム22及びバケット23を駆動するための指令信号は、操作部4の操作量に応じた指令信号であり、ブーム21を駆動するための指令信号は、操作部4の操作量に応じた指令信号とコントローラ50より電磁比例弁5に入力される調整用の指令信号とで構成されるが、これに限ったものではない。すなわち、油圧ショベル1は、前記作業アタッチメント20に前記所定掘削動作を実行させるための指令信号を生成して、生成した指令信号を前記駆動部に入力する制御を実行可能なコントローラ(制御部)を備えていてもよい。この構成によれば、例えば、自動運転スイッチを設けて、当該スイッチがオンされた場合に前記制御を実行することで、作業アタッチメント20に目標速度条件を満たす前記所定掘削動作を自動的に実行させることができる。これにより、オペレータの手動操作に起因する作業アタッチメント20の動作のばらつきを抑制することができ、延いては、硬さ推定部503による地盤硬さの推定精度を向上させることができる。
【0183】
(2)前記各実施形態及び変形例では、硬さ対応データDは、掘削試験により取得したバケット23の土砂重量と地盤硬さとを近似直線Iにより対応付けたグラフデータとされているが、これに限ったものではなく、例えば、地盤の硬さを土砂重量に応じて複数段階にレベル分けしたデータであってもよい。図22は、このレベル分けによる硬さ対応データの一例を示す図(前記第1実施形態の図6相当図)である。この図の例では、地盤の硬さを、堅土レベル、中間レベル、軟土レベルという3つのレベルに区分けし、各硬さレベルに対応する土砂の重量が横軸に示されている。この図の例では、堅土レベルと中間レベルとを区画する第1閾値と、軟土レベルと中間レベルとを区画する第2閾値とが設定されており、仮に所定掘削動作後にバケット23に保持された土砂重量が第1閾値未満である場合には、地盤硬さを堅土レベルと推定し、土砂重量が第1閾値~第2閾値の範囲内である場合には、地盤硬さを中間レベルと推定し、土砂重量が第2閾値を超える場合には、地盤硬さを軟土レベルと推定することができる。
【0184】
(3)前記各実施形態及び変形例では、作業アタッチメント20による所定掘削動作の実行時における目標速度条件として、作業アタッチメント20の合成重心速度Vgが一定(=目標重心速度r)であるとの条件を設定するようにしているが、これに限ったものではない。すなわち、先ず、目標速度条件にて規定される目標対象速度については、必ずしも前記各実施形態のように作業アタッチメント20の合成重心速度Vgである必要はなく、アーム22の重心の速度であってもよい。また、目標速度条件にて規定される目標速度(前記実施形態の例では目標重心速度r)についても、必ずしも前記各実施形態のように一定値である必要はなく、例えば、時間経過と共に直線的に増加するような速度プロフィールを目標としてもよいし、直線的に増加した後に一定値になるような速度プロフィールを目標としてもよい。なお、目標速度条件をどのように設定するかは限定されないが、硬さ対応データDを作成する際の、作業アタッチメント20の所定掘削動作の目標速度条件と、実際に地盤硬さを推定する際の、作業アタッチメント20の所定掘削動作の目標速度条件とは同じにしておく必要がある。
【0185】
(4)前記各実施形態及び各変形例では、ブーム21とアーム22とバケット23とはそれぞれ、操作部4の操作量に応じた回転角速度で動作するようになっているが、これに限ったものではなく、例えば、ブーム21とアーム22との相対角速度(ブーム21に対するアーム22の相対的な回転の角速度)を基準にバケット23の回転角速度を決定する制御(以下、掘削アシスト制御という)をコントローラ50により実行してもよい。これにより、作業アタッチメント20の動作が安定するので、バケット23による土砂の掘削量の再現性を向上させて、延いては、地盤硬さの推定精度を向上させることができる。ここで、掘削アシスト制御は前記硬さ推定モードにおいてのみ実行し、通常運転モードではその機能をオフにするようにしてもよい。また、コントローラ50は、硬さ推定部503における地盤硬さの推定結果を基に、掘削アシスト制御を実行する際の制御パラメータ(例えば回転角速度の変化度合等)を推定した地盤硬さに対応した値に変更する処理を実行してもよい。
【0186】
(5)前記各実施形態及び各変形例では、作業アタッチメント20による所定掘削動作の掘削開始姿勢は、バケット23の先端部23bが地面Gに接した状態とされているが、これに限らなく、例えば、バケット23の先端部23bが地面に貫入した状態であってもよい。バケット23の先端部23bを地面Gに貫入させるために、例えば、シリンダ負荷を監視し、シリンダ負荷(例えばブームシリンダ21Sの負荷)が所定負荷に達するまでブーム21を下降させて、シリンダ負荷が所定負荷に達すると同時にブーム21の下降を停止して、当該停止時の作業アタッチメント20の姿勢を掘削開始姿勢としてもよい。これにより、バケット23の先端部23bをしっかりと地面Gに食い込ませた状態から所定掘削動作を開始できるので、バケット23の空振りを防止し、バケット23にて土砂を確実に掘削することができる。よって、バケット23による土砂の掘削量を十分に確保し、延いては、硬さ推定部503による地盤硬さの推定処理を精度良く行うことができる。
【0187】
(6)前記各実施形態及び変形例では、重量検出部502は、ブーム21の基端部の回転支点S回りのモーメントの釣り合いを基にバケット23に保持された土砂Eの重量を検出するように構成されているが、これに限ったものではなく、例えば、バケット23の底面に配置した重量センサ(ロードセル等)により構成されていてもよい。
【0188】
(7)前記各実施形態及び変形例では、前記硬さ対応データDは、前記作業アタッチメント20に前記所定掘削動作を実際に実行させて行う掘削試験に基づいて作成されるが、これに限ったものではなく、例えば、作業アタッチメント20の所定掘削動作を模擬したコンピュータシミュレーションに基づいて作成するようにしてもよい。この場合、実際に掘削試験を行う場合に比べて安価に且つ短時間で硬さ対応データDを作成することができる。
【0189】
(8)前記各実施形態及び変形例では、作業アタッチメント20に所定掘削動作を実行させる際の掘削開始姿勢の一例として、最大リーチ姿勢で且つバケット23の対地角が70°~120°となるような姿勢(図4A参照)を挙げて説明したが、必ずしも最大リーチ姿勢である必要はなく、またバケット23の対地角も必ずしも70°~120°である必要はない。すなわち、掘削開始姿勢は、硬さ対応データDの作成時と当該硬さ対応データDに基づく実際の地盤硬さの推定時とで同様の姿勢であればよく、上述の図4Aに示す姿勢に限定されない。同様に、掘削完了姿勢についても、図4Cに示す姿勢に限定されず、硬さ対応データDの作成時と該硬さ対応データDに基づく実際の地盤硬さの推定時とで同様の姿勢であればよい。
【0190】
(9)前記各実施形態及び各変形例では、ステップSA5,SB5,SC7において、硬さ推定部503は、作業アタッチメント20による所定掘削動作が正しく行われたか否かの判定処理(動作判定処理)を、バケット23に保持された土砂重量が最小土砂重量w1~最大土砂重量w2の範囲にあるか否かに基づいて実行するようにしているが、これに限ったものではない。すなわち、硬さ推定部503は、前記掘削開始時における作業アタッチメント20の基端部から前記バケット23の先端までの距離と前記所定掘削動作の開始後における前記作業アタッチメント20の操作入力情報とを基に前記動作判定処理を実行するように構成されていてもよい。具体的には、硬さ推定部503は、所定掘削動作の開始時(掘削開始姿勢)におけるバケット23の先端からブーム21の基端までの距離であるブームフット間距離が所定閾値以上であり、且つ、前記作業アタッチメント20の前記所定掘削動作中における前記アーム22の引き操作入力が所定時間以上である場合に前記所定掘削動作が正しく実行されたと判定するように構成されていてもよい。これにより、機体1Sの周囲を地均しする作業等が所定掘削動作として誤判別されるのを防止することができる。作業アタッチメント20による所定掘削動作の実行中における旋回操作入力を判定条件に追加するようにしてもよい。これによれば、硬さ推定部503において、例えば溝側面や地面にバケット23を押し付けながら作業アタッチメント20を旋回させる押付け掘削動作を前記所定掘削動作であると誤判定するのを防止することができる。
【0191】
(10)前記各実施形態及び各変形例において、コントローラ50(速度条件設定部の一例)は、前記作業アタッチメント20が前記目標速度条件を満たしながら所定掘削動作を所定回数実行した後は、当該目標速度条件を再設定するように構成されていてもよい。この所定回数は、硬さ推定部503にて地盤の硬さの平均値を算出する際のサンプリング回数である前記所定回数と同じであってもよいし、異なっていてもよい。前記コントローラ50は、目標速度条件を設定する際には、前記所定掘削動作が所定回数実行された時点で硬さ推定部503によって推定される地盤の硬さを取得し、当該取得した硬さの地盤を前記作業アタッチメント20の前記所定掘削動作により掘削した場合に、前記バケット23により掘削される前記土砂Eの掘削量が、当該バケット23の保持可能な最大積載量に対応する量になるように前記目標速度条件を設定する。この目標速度条件の設定は、前記第1実施形態の図8で説明したのと同様の手法により設定される。前記取得した硬さと、前記バケット23の土砂が最大積載量に対応する量になるような目標速度条件との対応関係は予め実験等により取得して記憶部504に目標速度設定用データとして記憶しておけばよい。硬さ推定部503は、この目標速度設定用データと前記取得した硬さとを基に前記目標速度条件を設定することができる。
【0192】
この構成によれば、所定掘削動作による地盤の掘削が進むにしたがって地盤の硬さが、軟土から堅土に変化したり、堅土から軟土に変化したりした場合であっても、この変化した地盤の硬さに応じて目標速度条件が変更される。したがって、バケット23による土砂Eの掘削量を十分に確保することができる。すなわち、例えば掘削対象となる地盤が堅土であるにも拘わらず軟土に対応する目標速度条件で作業アタッチメント20が駆動されると、土砂Eの掘削量を十分に確保することができない。この結果、地盤の硬さ推定精度が低下するばかりでなく本来の目的である作業アタッチメント20による地盤の掘削効率が低下する虞がある。これに対して、前記構成によれば、地盤の硬さに応じた目標速度条件が設定されるので上述した掘削効率の低下の問題を回避することができる。
【0193】
(11)前記各実施形態及び変形例では、前記作業アタッチメント20を構成する複数の部材は、ブーム21とアーム22とバケット23との3つの部材より構成されるが、これに限ったものではなく、例えばバケット23を含む2つの部材で構成されていてもよいし、4つ以上の部材で構成されていてもよい。
【0194】
(12)前記各実施形態及び変形例では、建設機械の一例として、地面を走行可能な油圧ショベル1を挙げて説明したが、これに限ったものではなく、地面に固定された建設機械であってもよい。また、建設機械の駆動方式も油圧駆動式に限らず、例えば電動式であってもよい。
【0195】
(13)本発明は、前記各実施形態及び各変形例及び他の実施形態の任意の組み合わせを含む。
【符号の説明】
【0196】
D 硬さ対応データ
E バケットに保持された土砂
G 地面
Vg 合成重心速度
g 合成重心
r 目標重心速度
1 油圧ショベル(建設機械)
1S 機体
4 操作部
20 作業アタッチメント
21 ブーム(複数の部材)
22 アーム(複数の部材)
23 バケット(複数の部材)
30 駆動部
35 サーバ(管理装置)
50 コントローラ(制御部、速度条件設定部)
501 アタッチメント制御部(速度状態検出部、制御部)
502 重量検出部
503 推定部
504 記憶部
505 通信部
506 乖離度算出部
507 掘削時間検出部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
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図7A
図7B
図8
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