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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104925
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】移動シミュレーション装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20250703BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20250703BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G06T19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223113
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 剛央
(72)【発明者】
【氏名】松川 隆行
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 偉志
(72)【発明者】
【氏名】重松 絵里華
(72)【発明者】
【氏名】嘉本 海大
【テーマコード(参考)】
5B050
5H181
【Fターム(参考)】
5B050AA07
5B050BA07
5B050BA09
5B050BA17
5B050BA18
5B050BA20
5B050CA01
5B050EA19
5B050EA26
5B050FA02
5B050FA05
5H181AA24
5H181AA27
5H181BB03
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC04
5H181EE03
5H181EE06
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181MB06
5H181MB12
(57)【要約】
【課題】教師データとして用いる動画を様々なパターンで数多く効率的に作成できるシステムを提供する。
【解決手段】構造物モデルを取得する構造物モデル取得部と、人物モデルを取得する人物モデル取得部と、前記構造物モデル及び前記人物モデルに基づいて、前記構造物モデルでイベントが発生した際の前記人物モデルの動線を生成する動線生成部と、を有する移動シミュレーション装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物モデルを取得する構造物モデル取得部と、
人物モデルを取得する人物モデル取得部と、
前記構造物モデル及び前記人物モデルに基づいて、前記構造物モデルでイベントが発生した際の前記人物モデルの動線を生成する動線生成部と、
を有する移動シミュレーション装置。
【請求項2】
前記構造物モデルは鉄道車両モデルである、
請求項1に記載の移動シミュレーション装置。
【請求項3】
前記イベントは、前記鉄道車両モデル内で発生した異常であり、
前記動線生成部は、前記異常が発生した際の前記人物モデルの動線を生成する、
請求項2に記載の移動シミュレーション装置。
【請求項4】
特定の駅の異なる時刻に応じて設定された乗車人数又は降車人数を取得する乗降人数取得部を有し、
前記動線生成部は、前記乗車人数又は前記降車人数に基づいて前記鉄道車両モデルの乗降口と前記鉄道車両モデル内の所定の位置との間の前記人物モデルの動線を生成する、
請求項2又は3に記載の移動シミュレーション装置。
【請求項5】
前記鉄道車両モデルには座席領域と立席領域が定義されており、
前記動線生成部は、予め設定された着座率に基づいて、前記乗降口から前記座席領域又は前記立席領域までの動線を生成する、
請求項4に記載の移動シミュレーション装置。
【請求項6】
前記人物モデルには降車駅が定義されており、
前記動線生成部は、前記降車駅が前記特定の駅である前記人物モデルの現在位置から前記乗降口までの動線を生成する、
請求項4に記載の移動シミュレーション装置。
【請求項7】
前記人物モデル取得部は、設定された乗車人数又は乗車率に応じた数の人物モデルを取得する、
請求項3に記載の移動シミュレーション装置。
【請求項8】
前記動線生成部は、前記鉄道車両モデル内を所定の方向又は不特定な方向に向かうように動線を生成する、
請求項3又は7に記載の移動シミュレーション装置。
【請求項9】
前記人物モデルは異常者か一般者かに分類されており、
前記動線生成部は、前記異常者の現在位置に基づいて前記一般者の動線を生成する、
請求項3又は7に記載の移動シミュレーション装置。
【請求項10】
前記鉄道車両モデルは隣接車両への連絡口を有し、
前記動線生成部は、前記連絡口へ向かうように前記一般者の動線を生成する、
請求項9に記載の移動シミュレーション装置。
【請求項11】
前記一般者は、さらに前記異常者の周囲にいる救助者かその他の待機者かに分類されており、
前記動線生成部は、前記異常者へ向かうように前記救助者の動線を生成する、
請求項9に記載の移動シミュレーション装置。
【請求項12】
異常者が発生する確率である異常発生率を取得する取得部と、
前記異常発生率に基づいて前記人物モデルに異常者の属性を付与する付与部と、
を有する請求項9に記載の移動シミュレーション装置。
【請求項13】
請求項1,2、3又は7のいずれかに記載された移動シミュレーション装置から取得した前記動線に基づいて動画を作成する教師データ作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動シミュレーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
学習済みモデルを利用した推定技術は様々な分野で開発されている。例えば、映像に映し出された物や事象を推定する技術がある。
【0003】
機械学習はモデルに数多くの教師データを入力して行われる。例えば監視カメラに映し出された映像から異常が発生したことを推定するためのモデルの学習には、異常が映し出された映像を数多く集める必要がある。しかしながら、異常はいつどこで発生するか予測が困難でその発生頻度も低いため、異常が発生した場面を実際に撮影して教師データを数多く集めることは非常に困難である。
【0004】
教師データ用の映像や画像を効率的に集めるために、映像や画像を実際に撮影して集めるのではなく、コンピュータグラフィクス(CG)で作成して代用するデータ拡張技術が知られている(特許文献1)。データ拡張によれば、撮影が困難な映像や画像を様々なパターンで効率的に作成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-62225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CGによる動画作成には、背景、登場人物の外観、登場人物の動きやそのタイミング等様々なデータを入力する必要がある。教師データ用には様々なパターンで数多く動画を作成する必要があり、動画作成用データの準備や入力には多大なる労力が必要となる。
【0007】
本開示は、教師データとして用いる動画を数多く効率的に作成できるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る移動シミュレーション装置は、構造物モデルを取得する構造物モデル取得部と、人物モデルを取得する人物モデル取得部と、前記構造物モデル及び前記人物モデルに基づいて、前記構造物モデルでイベントが発生した際の前記人物モデルの動線を生成する動線生成部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る移動シミュレーション装置によれば、構造物での人物の動線を構造物で発生したイベントに応じて生成するので、発生する様々なイベントに応じて人物の動線を効率的に生成でき、生成された動線を構造物で人物が移動する動画の作成に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】教師データ作成システムの機能構成を示す図である。
図2】教師データ作成システムのシステム構成を示す図である。
図3】移動シミュレーション装置のハードウエア構成を示す図である。
図4】動画作成装置のハードウエア構成を示す図である。
図5】教師データ作成システムと異常検出システムのブロック図である。
図6】移動シミュレーション装置のブロック図である。
図7】動画作成装置のブロック図である。
図8】移動シミュレーション装置のフローチャートである。
図9】降車スレッドのフローチャートである。
図10】イベント行動スレッドのフローチャートである。
図11】動画作成装置のフローチャートである。
図12】車両モデルの例を示す図である。
図13】移動シミュレーション装置の入力画面の例を示す図である。
図14】時刻表の例を示す図である。
図15】シナリオの例を示す図である。
図16】人物モデルの属性の例を示す図である。
図17】座席位置の例を示す図である。
図18】乗車時の移動シミュレーションの例を示す図である。
図19】異常者登場時の移動シミュレーションの例を示す図である。
図20】転倒者発生時の移動シミュレーションの例を示す図である。
図21】動画作成装置の入力画面の例を示す図である。
図22】人物モデルのIDの例を示す図である。
図23】教師データ作成システムで表示される画像の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態に係る教師データ作成システムについて、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。さらに、各図において、実質的に同一の構成要素に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0012】
以下の実施の形態では、事象推定モデルの学習に用いる教師データをCGで作成する場合を例に本開示を説明する。この事象推定モデルは、所定の場所をカメラで撮影した映像に基づいて、その場所で発生した事象を推定する。
【0013】
図1は、本実施の形態による教師データ作成システム1の機能構成を示す図である。教師データ作成システム1は、移動シミュレーション装置10と動画作成装置20を有する。
【0014】
移動シミュレーション装置10の構造物モデル取得部12は、教師データとなる動画作成の対象となる構造物をモデル化した構造物モデルを取得する。構造物モデルは例えば鉄道車両、映画館、店舗、駅、地下街、道路等をモデル化したものであり、これらの構造物に含まれる例えば壁、柱、出入口、通路、障害物、座席、陳列棚等、人物モデルの動線を生成する際に必要な情報が含まれる。
【0015】
人物モデル取得部14は、動画に登場する人物をモデル化した人物モデルを取得する。人物モデルには例えば年齢、性別、身長、体重、現在位置等の属性が情報として含まれてもよい。また、例えば鉄道車両内で異常が発生した場面の動画を作成する場合には、人物モデルには例えば目的地(下車駅)、異常行動者、転倒者等の属性情報が含まれてもよい。取得する人物モデルの数は、作成する動画に応じて決定される。例えば朝夕の通勤電車内の動画であれば数を多く、昼間の電車内の動画であれば数が少ない等、所定の条件に基づいて自動的に又は作業者の入力により任意に設定される。また、人物モデル取得部14は人物モデルを時間の経過とともに順次取得してもよい。
【0016】
動線生成部16は、取得された構造物モデルと人物モデルに基づいて、構造物内での人物の動線を生成して出力する。動線生成部16は、構造物モデルと人物モデルに基づいてランダムに動線を生成することもできるし、所定の条件に従って生成することもできる。動線は、構造物モデルに含まれる壁、柱、出入口、通路、障害物、座席、陳列棚等に応じて、また他の人物モデルの位置に応じて、障害物を避けながら所定の速度で移動するように生成される。例えば鉄道車両に乗客が乗る場面では、動線は鉄道車両の出入口から空いている座席に向かって他の乗客や壁等にぶつからないように生成される。
【0017】
動画作成装置20の動線取得部24は、構造物内での人物の動線を移動シミュレーション装置10から取得する。動線取得部24は、移動シミュレーション装置10が動線を生成した時点で順次リアルタイムで取得してもよいし、移動シミュレーション装置10が所定期間に生成した動線をまとめて取得してもよい。また、生成した動線を都度、記憶装置に蓄積しておき、過去に生成した動線を記憶装置から読み出して取得してもよい。
【0018】
構造物モデル外観取得部26は、動画作成の場所となる構造物の外観を取得する。ここで、外観とは構造物の外部の他に内部の見た目も含む。すなわち、動画作成に必要な見た目が含まれる。例えば鉄道車両内であれば例えば壁、座席、出入口等を含む鉄道車両内の見た目が取得される。また、店舗内であれば例えば壁、陳列棚、通路、出入口等を含む店舗内の見た目が取得される。
【0019】
人物モデル外観取得部22は、動画に登場する人物の外観を取得する。人物の外観は、年齢、性別、身長、体重、服装等に応じてそれぞれ設定される。人物の外観は、人物モデル取得部14が取得した人物モデルの属性に基づいて設定されてもよいし、動画作成装置20において作業者が適宜設定してもよい。
【0020】
動画作成部28は、構造物の外観、人物の外観及び動線に基づいて人物が構造物内を動線に沿って移動する動画を作成する。動画は、構造物の所定箇所に設けられたカメラ(視点)からの映像としてレンダリングして作成されてもよい。
【0021】
以上のように、人物の動線を移動シミュレーション装置10により生成し、生成された動線を用いて動画作成装置20が動画を作成するので、作業者が動画作成装置20に入力する情報が少なくなり、動画の作成が効率的に行える。
【0022】
図2は、教師データ作成システム1のシステム構成の一例を示す図である。移動シミュレーション装置10と動画作成装置20はそれぞれ異なる装置(PC等)としてネットワーク等を介して両装置間で情報の授受を行うよう構成してもよいし、移動シミュレーション装置10と動画作成装置20の機能を一つの装置に持たせて構成してもよい。
【0023】
移動シミュレーション装置10と動画作成装置20を異なる装置として構成した場合には、移動シミュレーション装置から動画作成装置に情報を送るために両者をネットワークで接続してもよいし、記録媒体に情報を記録して受け渡してもよい。
【0024】
ネットワークで接続する場合には、LANのように限られた領域のネットワークでもよいし、インターネットのように遠隔地を結ぶものでもよい。記録媒体を用いる場合には、USBメモリやDVD-ROM等の記録媒体を用いることができる。
【0025】
図3は、移動シミュレーション装置10のハードウエア構成を示す図である。CPU30には、メモリ31、SSD等の記憶装置32、DVD-ROMドライブ33、ディスプレイ34、キーボード/マウス35、通信回路36等が接続されている。
【0026】
通信回路36は、インターネットやLANに接続するための回路である。記憶装置32には、オペレーティングシステム37、移動シミュレーションプログラム38、構造物モデルや人物モデル等のデータ39が記録されている。移動シミュレーションプログラム38は、オペレーティングシステム37と協働してその機能を発揮するものである。
【0027】
図4は、動画作成装置20のハードウエア構成を示す図である。CPU50には、メモリ51、SSD等の記憶装置52、DVD-ROMドライブ53、ディスプレイ54、キーボード/マウス55、通信回路56等が接続されている。
【0028】
通信回路56は、インターネットやLANに接続するための回路である。記憶装置52には、オペレーティングシステム57、動画作成プログラム58、構造物モデルや人物モデル等のデータ59が記録されている。動画作成プログラム58は、オペレーティングシステム57と協働してその機能を発揮するものである。
【0029】
以下、本実施の形態に係る教師データ作成システムを利用して、鉄道車両内の異常の発生を検出する異常検出システムを構築する場合を例に本開示を説明する。異常検出システムは、鉄道車両内に監視カメラを設け、映し出された映像に異常状態が含まれているかを推定する学習済みモデルを利用して構築される。
【0030】
学習済みモデルは、映し出された人物の動きが通常と異なるか否かを推定するモデルである。走行中の鉄道車両内では乗客はほとんど移動しないのが通常であるので、複数の人が一斉に動き出した場合には何らかの異常が発生したものと判断する。例えば、異常行動者(犯罪者)が登場した場合には周囲の人は一斉に逃げ出すことが考えられ、急病人が倒れた場合には周囲の人が救助のために駆け寄ることが考えられるので、複数の乗客が一斉に動き出したことが検出されたら異常が発生したと判断する。また、異常の発生を推定するモデルとして、車両内で不審な置去り物が認識されると、置去り物を避けるように乗客は迂回する回避行動をとる。この場合、置去り物と乗客の回避行動の頻度に基づいて異常が発生したと判断することができる。
【0031】
モデルの学習には、複数の人が一斉に動き出す(通常とは異なる動きをする)場面が映し出された動画を教師データとして用いる。動画は本実施の形態の教師データ作成システムを利用して様々なパターンの人の動きが映し出されたものを作成して準備される。
【0032】
なお、本実施の形態とは異なり、通常の場面のみが映し出された動画を教師データとして用いて、学習済みモデルを構築する場合、通常の場面に該当しないとする推定を行うことで、異常の発生を検出することができる。
【0033】
図5は、教師データ作成システム1とそれにより作成された動画を用いた異常検出システム300のブロック図である。移動シミュレーション装置10は構造物における人物の動きをシミュレートし、その結果を利用して動画作成装置20は構造物における人物の動きの動画を作成する。異常検出システム300は、動画作成装置20が作成した動画を教師データとしてモデルを学習させ、学習済みモデルによりカメラ304に映し出された異常を検知する。
【0034】
具体的には、異常検出システム300の動画取得部301は動画作成装置20が作成した動画を取得して動画データベース302に保存する。そして前処理部303が動画に必要な前処理を行ったうえで異常検知モデル学習部305はモデルに動画を入力して学習させる。
【0035】
実際に異常検知を行う場合には、異常検知モデル推論部306は構造物に設置されたカメラ304で撮影された映像を学習済みモデルに入力して異常の発生を検知する。異常が検知されたら警告通知部307は画面表示や警報音等により警告を発する。
【0036】
次に、図6に示す移動シミュレーション装置10の詳細なブロック図を参照しつつ、図8乃至10のフローチャートに沿って移動シミュレーション装置10の処理について説明する。移動シミュレーション装置10のCPU30(以下、「移動シミュレーション装置10」と省略する場合がある。)は、最初に車両モデルを取得する(ステップS1)。作業者は、キーボード/マウス35等を用いて移動シミュレーション装置10に車両の平面図や全長等のパラメータを入力することにより車両モデルを作成し、作成された車両モデルは車両情報データベース109に保存される。
【0037】
図12は、入力された車両モデルの例を示す図である。車両モデル60は、外壁61により車両内の空間が定義される。外壁61には側面に出入口62が定義される。出入口62の位置や数は、作成する車両モデルに応じて適宜設計される。外壁61の前後端には隣接する車両へ移動するための扉63が定義される。車両内には座席64が定義される。座席の位置や数は、作成する車両モデルに応じて適宜設計される。図示の例では、外壁61の内側に沿って設けられる6人掛けのロングシートとなっている。
【0038】
次に、作業者はシミュレーションの条件を入力する(ステップS2)。図13は、シミュレーション条件の入力及びシミュレーション結果を表示する入力画面80の一例を示す図である。シミュレーション領域81には、定義された車両モデルの平面図とその内部にいる人物の位置(黒丸)が示されている。なお、人物はシミュレーションのスタート時点ではまだ存在しない。
【0039】
条件入力領域82には、シミュレーションの各種条件を入力する領域が設定されている。作業者は、鉄道車両の時刻表、シナリオ、異常者発生率、転倒者発生率、座席着座率、男女比率をそれぞれ入力または選択する。
【0040】
図14は、時刻表の例を示す図である。時刻表には、駅名、到着時刻、当該駅で当該車両に乗車する人数が設定され、時刻表データベース101に保存されている。時刻表は、シミュレーションで想定されている路線に応じて、駅とその到着時刻が予め記憶されたデータから選択される。時刻表は、実在の路線の時刻表データでも架空の路線の時刻表データでも構わない。時刻表は、同一の駅において異なる時刻に異なる乗車人数となるように設定されてもよい。
【0041】
図15は、シナリオの例を示す図である。シナリオはシナリオ作成部102によって作成される。シナリオには異常の発生時刻、異常の種別、異常にかかわる人物の属性、異常発生時のそれぞれの人物の行動が設定され、シナリオデータベース103に保存されている。
【0042】
「異常行動」では、例えば「異常者」は現在位置から所定の方向へ移動すると設定され、「通常乗客」は「異常者」から逃げるように隣接車両へ移動すると設定される。
【0043】
「転倒」では、例えば「転倒」した人物の周囲(所定範囲)にいる「通常乗客」が「転倒」した人物の周辺に移動すると設定される。
【0044】
図13に戻って、条件入力領域82において、異常者発生率は、鉄道車両の走行中に異常者が発生する確率である。ここでは100%に設定されると、鉄道車両の走行中に必ず異常者が発生するものとしてシナリオ及び人物モデルの属性が設定される。
【0045】
転倒者発生率は、鉄道車両の走行中に転倒者が発生する確率である。ここでは100%に設定されると、鉄道車両の走行中に必ず転倒者が発生するものとしてシナリオ及び人物モデルの属性が設定される。
【0046】
座席着座率は、乗車してきた人物モデルが座席へ向かう確率である。ここでは100%に設定されると、空席がある限り全ての人物モデルが座席へ移動するものとする。
【0047】
男女比率は、人物モデルの性別を設定するための比率である。ここでは100%に設定されると、全ての人物モデルが男と設定される。
【0048】
経過表示領域83には、シミュレーションにおける時刻とその時刻における到着駅が表示される。
【0049】
開始時刻設定領域84及び終了時刻設定領域85には、シミュレーションの開始時刻及び終了時刻を入力できる。
【0050】
各種条件の入力をしたら、実行ボタン86を操作することにより、シミュレーションが開始される。
【0051】
図8に戻って、シミュレーション処理が開始されると(ステップS3)、移動シミュレーション装置10のイベント発生部104は時間の経過に応じてイベントの発生を認識する(ステップS4)。イベントは時刻表及びシナリオに従って、駅への到着、不審人物(異常者)の登場、転倒者の発生のいずれかがそれぞれ定められた時刻に発生する。
【0052】
次に、移動シミュレーション装置10は発生したイベントが駅への到着かそれ以外かを判断する(ステップS5)。Yesの場合、駅に到着した際の乗客の移動をシミュレートして乗降客の動線を算出する。
【0053】
移動シミュレーション装置10の位置決定部108は、車両内の人物に関する処理を開始し(ステップS6)、到着した駅で下車する乗客の動線を求める。車両内に位置する乗客について、後述する属性情報に基づいて当該駅で下車するか否かを判断する(ステップS7)。ステップS7がYesの場合には降車スレッドを起動して実行する(ステップS8)。ステップS7がNoの場合には、当該人物モデルは移動しないものとする。こうした判定を繰り返し、車両内の人物に関する処理を終了する(ステップS9)。
【0054】
図9は、降車スレッドの処理を示す図である。移動シミュレーション装置10の位置決定部108は、当該人物モデルが出入口へ移動すべく動線を決定する(ステップS31)。出入口へ到達したら、当該人物モデルは下車したものとしてデータを削除する(ステップS32、33)。
【0055】
次に、到着した駅での乗車人数だけ新たに人物モデルを作成して乗車の処理を開始する(ステップS10)。まず、移動シミュレーション装置10の属性作成部105は新たに作成した人物モデルの属性を設定して乗客情報データベース110に保存する(ステップS11)。
【0056】
図16は、人物モデルに設定される属性の例を示す図である。各人物モデルには、ID番号、性別、年齢、体格、種別、車両内での位置、目的駅、状態が設定される。このうち種別とは、不審人物(異常者)かその他の一般の乗客(通常乗客)かを示す。人の位置は、車両モデル内での位置を示す。目的駅は、到着したら出入口に向かう駅を示す。状態は、直立しているか(乗車したら座席以外の位置にいるか)、着座しているか(乗車したら座席のある位置に向かうか)、転倒したか、救援するか(転倒者の元へ向かうか)を示す。
【0057】
図8に戻って、乗車処理で新たに作成された人物モデルの位置は出入口に設定される。また、座席着座率に基づいて人物モデルの状態は「着座」か「直立」とする属性が設定される(ステップS11)。そして、移動シミュレーション装置10の座席選択部106は、座席情報データベース107の座席情報に基づいては車両内に空席があるかを判断する(ステップS12)。
【0058】
空席があり、人物モデルの状態が「着座」ならば(ステップS13がYes)移動シミュレーション装置10の座席選択部106は座席を選択し(ステップS14)、人物モデルを座席で待機させ(ステップS15)、出入口から当該座席までの当該人物モデルの動線を決定する。
【0059】
図17は、座席情報の一例を示す図である。座席情報はID、座席位置、空席か否かの組み合わせの情報として鉄道車両モデルの一部として設定され、記憶装置32に記憶される。
【0060】
一方、人物モデルの状態が「直立」ならば(ステップS13がNo)移動シミュレーション装置10の位置決定部108は座席以外の場所を立つ位置、すなわち、任意位置への移動と決定し(ステップS16)、人物モデルを任意位置で待機させ(ステップS17)、出入口から当該位置までの当該人物モデルの動線を決定する。
【0061】
なお、ステップS12がNoの場合、移動シミュレーション装置10の位置決定部108は当該人物モデルの状態が「着座」であるか「直立」であるかにかかわらず車両内の座席以外の位置に立つものとして任意位置への移動と決定し(ステップS16)、人物モデルを任意位置で待機させ(ステップS17)、出入口から当該位置までの当該人物モデルの動線を決定する。
【0062】
ステップS11からステップS17までを乗車する人物モデルの数だけ繰り返し実行することで、乗車人数分の処理を終了する(ステップS18)。
【0063】
図18は、車両モデル60において、駅へ停車して人物モデル66、67が出入口62から乗り込む際のシミュレーションの概略を示す図である。状態が「着座」である人物モデル66については車両内に空席があるので、移動シミュレーション装置10は乗車した人物モデル66が当該空席に向かって移動するように動線を決定する。一方、状態が「立席」である人物モデル67については、移動シミュレーション装置10は人物モデル67が車両内の座席以外の領域に移動するように動線を決定する。既に乗っている人物モデルは移動しない。
【0064】
図8に戻って、ステップS5がNoの場合、移動シミュレーション装置10は駅到着以外のイベントとして車両内の人物に関する処理を開始し(ステップS19)、具体的には異常者の登場又は転倒者の発生についてのシミュレーションを行う。
【0065】
異常者が登場する場合には、移動シミュレーション装置10は人物モデルのうち一部を「異常者」、残りを「通常乗客」として設定する。設定は、人物モデルを作成するときにされてもよいし、イベントが発生した際にされてもよい。
【0066】
転倒者が発生する場合には、移動シミュレーション装置10は人物モデルのうち一部を「転倒者」、その他の人物モデルのうち「転倒者」から所定の距離以内にいる人物モデルを「救援」と設定する。設定は、人物モデルを作成するときにされてもよいし、イベントが発生した際にされてもよい。
【0067】
イベントが発生すると、移動シミュレーション装置10の位置決定部108は各人物モデルがイベントの対象者か否かを判断する。イベントの対象者の場合には(ステップS20がYes)移動シミュレーション装置10イベント行動スレッドを起動し(ステップS21)、イベントの対象者でなければ(ステップS20がNo)、ここで車両内の人物に関する処理を終了し(ステップS22)、次の人物モデルについて処理する。
【0068】
図10は、イベント行動スレッドの処理を示す図である。移動シミュレーション装置10の位置決定部108は人物モデルが発生したイベントと自らに定められた属性に従って行動するように、人物モデルの動線を決定する(ステップS34)。このとき、座席に座っていた(状態が「着座」)人物モデルが移動した場合には、当該人物モデルが位置していた座席は空席になったものとして情報が更新される(ステップS35)。
【0069】
「異常者」は、現在の位置から歩いてランダムな方向へ移動するものと設定される。「通常乗客」は、現在の位置から隣接車両への扉63(連絡通路)へ向かって走って移動するものと設定される。
【0070】
図19は、異常者68が登場した際の異常者68及び通常乗客の移動の概略を示す図である。通常乗客は全員異常者68から離れるように隣接する車両への扉63へ向かって高速で移動する。ここで、高速とは走って逃げることが想定される。異常者68は低速で移動する。ここで、低速とは歩いて移動することが想定される。
【0071】
「転倒者」はその場で動かないものと設定され、「救援」は「転倒者」の近くまで移動するものと設定される。
【0072】
図20は、転倒者69が発生した際の周囲の乗客の移動の概略を示す図である。転倒者69から所定の距離以内に位置する乗客71は転倒者へ駆け寄るようにその周辺に移動する。転倒者から所定の距離以上離れている乗客72は傍観者として移動しない。
【0073】
上記の各ステップで決定された動線は、リアルタイムで又は一定時間分まとめて動画作成装置20へ送られる(ステップS23)。
【0074】
こうして、図8のシミュレーション処理開始(ステップS3)からシミュレーション処理終了(ステップS24)までを、シミュレーションの終了時刻になるまで継続する。
【0075】
次に、図7に示す動画作成装置20の詳細なブロック図を参照しつつ、図11のフローチャートに沿って動画作成装置20の処理について説明する。初めに、動画作成装置20のCPU50(以下、「動画作成装置20」と省略する場合がある。)は動画を作成する場面となる車両モデルの外観を含む車両モデルの情報を読み込んで取得する(ステップS41)。車両モデルの情報は移動シミュレーション装置10に入力した車両モデルの情報を利用してもよいし、動画作成装置20に直接入力してもよい。車両モデルの情報は車両情報データベース207に保存される。
【0076】
車両モデルの取得ができたら動画作成処理を開始する(ステップS42)。
【0077】
図21は、動画作成装置20の操作画面90の一例を示す図である。「カメラ設定」は作成する動画の視点となる位置、方向、視野範囲等を設定するものであり、動画は鉄道車両内に設けられたカメラから鉄道車両内を撮影した視点で作成される。カメラは、予め用意されたカメラを選択できるよう構成してもよいし、任意に設定できるよう構成してもよい。
【0078】
「照明設定」は鉄道車両内の照明を設定するものであり、動画は設定された照明から光が当たったとして陰影が生成される。照明は、予め用意された照明を選択できるよう構成してもよいし、任意に設定できるよう構成してもよい。具体的には、照明を設ける位置、明るさ、照射方向等を設定する。
【0079】
動画の作成処理は、移動シミュレーション装置10の動線生成処理と並行して行われる「リアルタイム処理」と、移動シミュレーション装置10の動線生成処理の終了後に動線を受け取って行われる「オフライン処理」を選択できる。リアルタイム処理では、移動シミュレーション装置10が生成した動線を順次受け取ってリアルタイムで動画を作成する。オフライン処理では、移動シミュレーション装置10が生成した所定期間の動線をまとめて受け取ってオフラインで動画を作成する。
【0080】
全体表示領域91には、鉄道車両とその内部の人物を俯瞰的に見た画像が表示される。全体表示領域には「カメラ設定」で設定したカメラと「照明設定」で設定した照明も表示される。カメラ追加ボタン、照明追加ボタンの操作に連動して、カメラ、照明を追加し、全体表示領域91でカメラや照明を選択して設定の変更(削除)を行えるようにしてもよい。
【0081】
レンダリング表示領域92には、設定されたカメラで鉄道車両内や人物を撮影したものとしてレンダリングされた動画が表示される。レンダリング表示領域92を見ながらカメラ設定や照明設定を変更することにより、カメラや照明の設定を任意に調整しながら動画を作成できるようにしてもよい。
【0082】
「開始時刻」及び「終了時刻」は、移動シミュレーション装置10から取得した動線に基づいて作成する動画の作成対象となる期間を設定する。「開始時刻」及び「終了時刻」は、未入力の場合には全期間(車両の運行時間)を対象として動画を作成するようにしてもよい。
【0083】
各種設定の入力が終了したら、「CG動画作成実行」ボタンをクリックすることにより動画作成処理を実行する。
【0084】
図11に戻って、動画作成装置20の人モデル配置/削除部201はステップS43でリアルタイム処理か否かを判断する。Yesの場合にはリアルタイムで移動シミュレーション装置10から人物の動線を含む乗客情報を受信(取得)する(ステップS44)。Noの場合には移動シミュレーション装置10が生成した動線を含む乗客情報をまとめて読み込んで取得する(ステップS45)。
【0085】
次に、乗客となる人物モデルごとの処理を開始する(ステップS46)。ID管理部202は、取得した乗客情報のIDを既に登場している人物モデルとして人情報データベース203に記憶しているIDリスト(図22参照。)の探索処理(照合処理)を開始し、その結果により、既に登場している人物モデルか未登場の新規の人物モデルかを判断する(ステップS47、S48)。新規の人物モデルの場合(ステップS48がYesの場合)には人モデル配置/削除部201は新たに人物モデルを作成し、車両内に人物モデルを配置する(ステップS49)。そして外観反映部204は人物モデルの属性情報に基づいて、人モデルデータベース205から体格や服の色等の外観の情報を取得して人物モデルの外観を反映させる(ステップS50)。
【0086】
一方、ステップS48がNoの場合、当該人物モデルが既に下車したか(旧乗客情報か)否かを判断する(ステップS51)。Yesならば当該人物モデルを削除し(ステップS52)、IDリストの探索処理を終了する(ステップS53)。Noならば当該IDについての処理は終了する。
【0087】
次に、人物モデルの配置及び外観の反映が終了したら、人モデルの位置反映部206は車両情報データベース207に保存されている車両モデル内に当該人物モデルを配置する(ステップS54)。人モデルのアニメーション適用部208が人物モデルを配置した車両モデルの情報と動線の情報をアニメーション制御部209へ送ると、アニメーション制御部209はアニメーションデータベース210から適切なアニメーションを選択して人物モデルが移動するアニメーションを適用(作成)する(ステップS55)。このようにして、ステップS47乃至S55を全ての人物モデルについて実行し、乗客となる人物モデルごとの処理を終了する(ステップS56)。
【0088】
次に、カメラ配置部211はカメラパラメータデータベース212に保存されている情報に基づいて鉄道車両内に動画の視点となるカメラを配置する(ステップS57)。また、照明配置部213は照明パラメータ214に保存されている情報に基づいて陰影の生成に必要な照明の配置を行う(ステップS58)。そして、動画作成装置20のレンダリング部215はカメラの配置に基づいてレンダリングを行うことにより動画を作成し、(ステップS59)、動画作成処理を終了する(ステップS60)。
【0089】
図23は、移動シミュレーション装置10で作成された移動シミュレーション、動画作成装置20で作成された全体表示およびレンダリングされた動画を示す図である。移動シミュレーション装置10では鉄道車両内での人物モデルの動線が時系列に沿って生成される。
【0090】
動画作成装置20では移動シミュレーション装置10が生成した動線に基づいて、さらに鉄道車両の内観や各人物モデルの外観に基づいて動画が作成される。作成された動画に対して所定の位置に設置されたカメラで撮影される映像をレンダリングして動画が作成される。
【0091】
本開示の教師データ作成システムによれば、移動シミュレーション装置により人物の動線を生成し、この動線に基づいて動画作成装置で動画を作成するので、動画を効率的に作成できる。また、構造物モデルにおいて各種イベントが発生した場合の動画を数多く効率的に作成できる。作成された動画を教師データとしてモデルを学習させることにより、異常が発生したことを推定できる学習済み異常発生推定モデルを効率的に作成できる。
【0092】
上記の実施の形態は一例である。構造物モデルは鉄道車両以外にも店舗、映画館、地下街、道路等様々なものに適用できる。発生するイベントは対象となる場所に応じて設定され、その際の人物モデルの動きも任意に設定できる。
【0093】
本開示には、以下の態様が含まれる。
【0094】
(1)人物モデルの動線を生成する移動シミュレーション装置と、前記人物モデルの動画を作成する動画作成装置と、を有する教師データ作成システムであって、前記移動シミュレーション装置は、構造物モデルを取得する構造物モデル取得部と、人物モデルを取得する人物モデル取得部と、前記人物モデルの動線を前記構造物モデルに基づいて生成する動線生成部と、を有し、前記動画作成装置は、前記移動シミュレーション装置から前記動線を取得する動線取得部と、前記構造物モデルの外観を取得する構造物モデル外観取得部と、前記人物モデルの外観を取得する人物モデル外観取得部と、前記構造物モデルの外観、前記人物モデルの外観及び前記動線に基づいて動画を作成する動画作成部と、を有する教師データ作成システム。
【0095】
上記の構成によれば、構造物内での人物の動線を移動シミュレーション装置により生成し、その動線を用いて動画作成装置で動画を作成するので、動画作成装置に入力する人物の動線を効率的に生成でき、構造物内で人物が移動する動画を効率的に作成できる。
【0096】
(2)上記(1)の教師データ作成システムにおいて、前記移動シミュレーション装置は、前記構造物モデル内で発生するイベントに関するイベント情報を取得するイベント情報取得部をさらに有し、前記動線生成部は、前記イベント情報に基づいて前記人物モデルの動線を生成する教師データ作成システム。
【0097】
上記の構成によれば、構造物内で発生するイベントに応じて人物の動線を生成するので、種々のイベントの発生に応じて人物が移動する動画を効率的に作成できる。
【0098】
(3)上記(2)の教師データ作成システムにおいて、前記イベントは、異常発生又は鉄道車両の駅停車である教師データ作成システム。
【0099】
上記の構成によれば、異常発生や駅停車に応じて人物の動線を生成するので、具体的なイベントの発生に応じて人物が移動する動画を効率的に作成できる。
【0100】
(4)上記(1)の教師データ作成システムにおいて、前記動線生成部は、前記構造物モデル内を所定の方向又は不特定な方向に向かうように動線を生成する教師データ作成システム。
【0101】
上記の構成によれば、構造物内での人物の動線を所定の方向又は不特定な方向に向かうように生成するので、人物が様々な方向に移動する動画を効率的に作成できる。
【0102】
(5)上記(1)の教師データ作成システムにおいて、前記人物モデルは異常者か一般者かに分類されており、前記動線生成部は、前記異常者の現在位置に基づいて前記一般者の動線を生成する教師データ作成システム。
【0103】
上記の構成によれば、構造物内での人物の動線を異常者の現在位置に基づいて生成するので、例えば異常者から離れる方向に周囲の人物が逃げる動画を効率的に作成できる。
【0104】
また、本開示には、以下の態様が含まれる。
【0105】
(6)構造物モデルを取得する構造物モデル取得部と、人物モデルを取得する人物モデル取得部と、前記構造物モデル及び前記人物モデルに基づいて、前記構造物モデルでイベントが発生した際の前記人物モデルの動線を生成する動線生成部と、を有する移動シミュレーション装置。
【0106】
上記の構成によれば、構造物で発生するイベントに基づいて人物モデルの動線を決定するので、様々なイベントに応じた人物モデルの動線を効率的に生成できる。
【0107】
(7)上記(6)の移動シミュレーション装置において、前記構造物モデルは鉄道車両モデルである移動シミュレーション装置。
【0108】
上記の構成によれば、鉄道車両内で発生する様々なイベントに応じた人物モデルの動線を効率的に生成できる。
【0109】
(8)上記(7)の移動シミュレーション装置において、前記イベントは、前記鉄道車両モデル内で発生した異常であり、前記動線生成部は、前記異常が発生した際の前記人物モデルの動線を生成する移動シミュレーション装置。
【0110】
上記の構成によれば、異常が発生した際の人物モデルの動線を効率的に生成できる。
【0111】
(9)上記(7)又は(8)の移動シミュレーション装置において、特定の駅の異なる時刻に応じて設定された乗車人数又は降車人数を取得する乗降人数取得部を有し、前記動線生成部は、前記乗車人数又は前記降車人数に基づいて前記鉄道車両モデルの乗降口と前記鉄道車両モデル内の所定の位置との間の動線を生成する移動シミュレーション装置。
【0112】
上記の構成によれば、特定の駅に時間帯によって異なる乗降人数を設定するので、実際の乗降人数に応じた乗降時の人物モデルの動線を効率的に生成できる。
【0113】
(10)上記(9)の移動シミュレーション装置において、前記鉄道車両モデルには座席領域と立席領域が定義されており、前記動線生成部は、予め設定された着座率に基づいて、前記乗降口から前記座席領域又は前記立席領域までの動線を生成する移動シミュレーション装置。
【0114】
上記の構成によれば、着座率に応じて乗車時に着席する人と立つ人を様々な割合に設定して人物モデルの動線を効率的に生成できる。
【0115】
(11)上記(9)の移動シミュレーション装置において、前記人物モデルには降車駅が定義されており、前記動線生成部は、前記降車駅が前記特定の駅である前記人物モデルの現在位置から前記乗降口までの動線を生成する移動シミュレーション装置。
【0116】
上記の構成によれば、駅到着時に降車する人物モデルの動線を効率的に生成できる。
【0117】
(12)上記(8)の移動シミュレーション装置において、前記人物モデル取得部は、設定された乗車人数又は乗車率に応じた数の人物モデルを取得する移動シミュレーション装置。
【0118】
上記の構成によれば、乗車人数又は乗車率が異なる様々な場合に異常が発生した際の人物モデルの動線を効率的に生成できる。
【0119】
(13)上記(8)又は(12)の移動シミュレーション装置において、前記動線生成部は、前記鉄道車両内を所定の方向又は不特定な方向に向かうように動線を生成する移動シミュレーション装置。
【0120】
上記の構成によれば、人物モデルの向かう方向を様々な場合について人物モデルの動線を効率的に生成できる。
【0121】
(14)上記(8)又は(12)の移動シミュレーション装置において、前記人物モデルは異常者か一般者かに分類されており、前記動線生成部は、前記異常者の現在位置に基づいて前記一般者の動線を生成する移動シミュレーション装置。
【0122】
上記の構成によれば、異常者を基準として一般者の動線を効率的に生成できる。
【0123】
(15)上記(14)の移動シミュレーション装置において、前記鉄道車両モデルは隣接車両への連絡口を有し、前記動線生成部は、前記連絡口へ向かうように前記一般者の動線を生成する移動シミュレーション装置。
【0124】
上記の構成によれば、異常行動者が登場した場合に一般者が異常行動者から逃げるように移動する場合の動線を効率的に生成できる。
【0125】
(16)上記(14)の移動シミュレーション装置において、前記一般者は、さらに前記異常者の周囲にいる救助者かその他の待機者かに分類されており、前記動線生成部は、前記異常者へ向かうように前記救助者の動線を生成する移動シミュレーション装置。
【0126】
上記の構成によれば、異常があった人を周囲の人が救助する場合の人物モデルの動線を効率的に生成できる。
【0127】
(17)上記(14)の移動シミュレーション装置において、異常者が発生する確率である異常発生率を取得する取得部と、前記異常発生率に基づいて前記人物モデルに異常者の属性を付与する付与部と、を有する移動シミュレーション装置。
【0128】
上記の構成によれば、異常発生率を様々に設定して人物モデルの動線を効率的に生成できる。
【0129】
(18)上記(6)、(7)、(8)又は(12)の移動シミュレーション装置において、上記移動シミュレーション装置から取得した前記動線に基づいて動画を作成する教師データ作成装置。
【0130】
上記の構成によれば、機械学習用の教師データを様々な場合を想定して効率的に作成できる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
数多くの動画を作成する場合に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0132】
10 移動シミュレーション装置
20 動画作成装置
60 車両モデル
80 入力画面
90 操作画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23