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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104928
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20250703BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 501
B41J2/18
B41J2/14 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223116
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末益 智志
(72)【発明者】
【氏名】中谷 修平
(72)【発明者】
【氏名】豊福 洋介
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056FA04
2C056FA13
2C056HA05
2C056KB16
2C057AF40
2C057AG30
2C057AG32
2C057AG52
2C057AG72
2C057AG75
2C057AN05
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】クロストークによる吐出異常を抑制するとともに、吐出される液体の小滴化を実現できる液体吐出ヘッドおよび印刷装置を提供する。
【解決手段】本開示の液体吐出ヘッドは、液体を吐出するノズルに接続されている圧力室と、前記圧力室に前記液体を供給する共通流路と、前記圧力室と前記共通流路との間に配置されており、前記圧力室および前記共通流路とそれぞれ絞り流路によって接続されている中間室と、を備え、前記中間室の容積は、前記圧力室の容積よりも大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルに接続されている圧力室と、
前記圧力室に前記液体を供給する共通流路と、
前記圧力室と前記共通流路との間に配置されており、前記圧力室および前記共通流路とそれぞれ絞り流路によって接続されている中間室と、
を備え、
前記中間室の容積は、前記圧力室の容積よりも大きい、
液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記中間室の容積は、前記圧力室の2倍以上である、
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記中間室は、第1ダンパーを有しており、
前記第1ダンパーの厚さは、5μm以下であり、
前記中間室の長手方向に沿った前記第1ダンパーの長さは、200μm以上である、
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1ダンパーは、前記圧力室の容積を変化させる受圧部に接続されている前記圧力室の第1壁体と一体に形成されている、
請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記絞り流路は、前記圧力室と前記中間室とを接続する第1絞り流路と、前記中間室と前記共通流路とを接続する第2絞り流路とを有しており、
前記第1絞り流路の流体抵抗は、前記第2絞り流路の流体抵抗よりも大きい、
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1ダンパーと前記第1壁体との間に、前記圧力室と前記中間室とを隔てる第1隔壁と対向して突出する凸部が設けられている、
請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記中間室は、前記第1ダンパーと対向する位置に第2ダンパーを有しており、
前記第2ダンパーは、前記第1ダンパーと異なる固有振動数を有する、
請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記共通流路は、第3ダンパーを有しており、
前記第3ダンパーの厚さは、前記第1ダンパーより大きく、
前記第3ダンパーの長手方向に沿った長さは、前記第1ダンパーの長手方向に沿った長さの5倍以上である、
請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記ノズルの最小径は15μm以上であり、前記ノズルから吐出される液滴の体積は2.5pL以下である、
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記ノズルの最小径は12μm以上であり、前記ノズルから吐出される液滴の体積は1.5pL以下である、
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記共通流路、前記絞り流路、および前記中間室は、前記圧力室から見て前記液体の流れ方向における上流側および下流側に1つずつ設けられている、
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記中間室の容積は、前記上流側と前記下流側とで互いに異なる、
請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記中間室は、前記上流側と前記下流側とで前記流れ方向に沿った長さが互いに異なる第1ダンパーをそれぞれ有している、
請求項11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記流れ方向における前記ノズルの位置は、前記液体の流れ方向における前記圧力室の中心部から前記上流側または前記下流側にずれて配置されており、
前記流れ方向において前記ノズルに近い前記第1ダンパーの長さは、前記ノズルから遠い前記第1ダンパーの長さより短い、
請求項13に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに対して被印刷物を相対的に移動させる移動機構と、
前記液体吐出ヘッドおよび前記移動機構を制御する制御部と、
を備える、印刷装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクなどの液体を吐出して印刷を行う液体吐出ヘッドおよび当該液体吐出ヘッドを有する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
必要なときに必要な量のインクを吐出するドロップオンデマンド型のインクジェットヘッド知られている。ドロップオンデマンド型のインクジェットヘッドの例として、圧電方式のインクジェットヘッドがある。圧電方式のインクジェットヘッドは、インク供給流路と、ノズルおよびインク供給流路に接続されている複数の圧力室と、圧力室内に充填されたインクに圧力を加える圧電素子と、を有する。
【0003】
圧電方式のインクジェットヘッドにおいて、予めインクのメニスカスを振動させておき、共振周期の位相に合わせて圧力室を収縮させることにより、インクを効率的に吐出する制御方法が知られている(例えば、特許文献1)。メニスカス振動の周期は、圧力室の形状や容量、圧力室に接続される絞り流路の抵抗などによって定まる。
【0004】
高精細な印刷のために、ノズルから吐出されるインクの小滴化が要望されている。インクを小滴化するためには、吐出速度を小さくする、ノズルの断面積を小さくする、または共振周期を短くする、の少なくともいずれかが効果的である。
【0005】
吐出速度を小さくすると、気流の影響を受けやすくなり、インクの着弾精度が乱れたり、ミストが増加したり、インクの液滴がまっすぐに飛びにくくなったりする。ノズルの断面積を小さくすると、ノズル先端部でインクが乾燥して詰まったりインクの吐出角度が変化したりすることがある。また、共振周期を短くするためには、圧力室の容積を小さくしたり絞り流路の断面積を大きくしたりする方法があるが、このような方法を採用した場合、副作用として、メニスカス振動の圧力波が共通流路を通じて隣接するノズルまで伝わり、隣接ノズルの動作に悪影響が生じることがある。このような隣接ノズルへの悪影響はクロストークなどと呼ばれる。
【0006】
ノズル断面積を不必要に小さくせず、共振周期を小さくすることでインクを小滴化するインクジェットヘッドであって、共振周期を小さくしたことによるクロストークの悪化を抑制することができるインクジェットヘッドが、特許文献2に開示されている。
【0007】
特許文献2のインクジェットヘッドは、圧力室と共通流路との間に中間室と2つの絞り流路とを設けることにより、圧力室内のインクの圧力変動の影響が共通流路まで伝わりにくくなるため、吐出インクの小滴化とクロストークの抑制とを両立することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/146945号
【特許文献2】特許第6990877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に開示された技術をより発展させ、クロストークによる吐出異常をさらに抑制するとともに、吐出される液体の小滴化を実現させることが要望されている。
【0010】
本開示は、吐出される液体の小滴化と、クロストークの抑制とを両立させることができる液体吐出ヘッドおよび印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様に係る液体吐出ヘッドは、液体を吐出するノズルに接続されている圧力室と、前記圧力室に前記液体を供給する共通流路と、前記圧力室と前記共通流路との間に配置されており、前記圧力室および前記共通流路とそれぞれ絞り流路によって接続されている中間室と、を備え、前記中間室の容積は、前記圧力室の容積よりも大きい。
【0012】
本開示の一態様に係る印刷装置は、上記の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに対して被印刷物を相対的に移動させる移動機構と、前記液体吐出ヘッドおよび前記移動機構を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吐出される液体の小滴化と、クロストークの抑制とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の実施の形態に係る印刷装置の構成の一例を説明するための図
図2】液体吐出ヘッドの分解斜視図
図3】液体吐出ヘッドの内部構成を示す断面図
図4】ノズルプレートの平面図
図5】流路プレートを構成する複数の積層体の平面図
図6】振動プレートの平面図
図7】液体吐出ヘッドにおけるノズルの直径、液体吐出ヘッド全体の共振周期、および液滴体積の関係を示す図
図8】圧電素子の加圧により液体の共振により液体を吐出させる際の液体表面の変位量の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明、例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明などは省略する場合がある。
【0016】
[印刷装置200]
図1は、印刷装置200の上面図である。なお、本実施の形態では、直交座標系(X,Y,Z)を使用して説明する。以下において、X軸、Y軸およびZ軸に沿う方向を、それぞれ「X軸方向」、「Y軸方向」および「Z軸方向」と称する。図1に示す例では、印刷装置200の設置面がXY平面、設置面に垂直な方向がZ軸方向である。図1において、例えばX軸およびY軸は水平面に含まれており、Z軸は鉛直方向に沿って設定されている。ただし、本開示では、印刷装置は必ずしも水平面に設置される必要はなく、微小な傾きは許容されてもよい。
【0017】
印刷装置200は、基台1、ガイド2、搬送テーブル3、ガントリー4、液体吐出ヘッド10、駆動部7を備えている。
【0018】
基台1は、印刷装置200の各構成を指示する台部材である。
【0019】
ガントリー4は、液体吐出ヘッド10を支持している。
【0020】
ガイド2は、基台1の長手方向すなわちX軸方向に沿って、基台1の上面に固定されている。ガイド2は、搬送テーブル3の移動を案内する。
【0021】
搬送テーブル3は、基板などの印刷対象物6が保持する。搬送テーブル3は、駆動部7により、ガイド2に沿って印刷対象物6とともに移動する。印刷対象物6の移動に合わせて液体吐出ヘッド10がインクなどの液体を吐出することにより、印刷対象物6の印刷が行われる。
【0022】
図1に示す例では、X軸方向に沿ってガントリー4の両側に2つの液体吐出ヘッド10がそれぞれ配置されているが、液体吐出ヘッド5は、ガントリー4の片側のみに配置されていてもよい。また、ガントリー4が複数設けられてもよい。
【0023】
[液体吐出ヘッド10]
液体吐出ヘッド10は、インク循環型のインクジェットヘッドの一例である。図2は、液体吐出ヘッド10の分解斜視図である。図2において、Z軸の負方向が液体吐出ヘッド10におけるインクの吐出方向、Y軸に沿う方向がノズル101の配列方向、X軸に沿う方向が圧力室103に対するインクの流動方向である。
【0024】
液体吐出ヘッド10は、ノズルプレート11、流路プレート12、振動プレート13、ハウジング14、および圧力変動部15により構成される。
【0025】
ノズルプレート11は、板面がZ軸に直交するように配置される。ノズルプレート11は、例えば、エッチングやプレス加工によって成型されたステンレス(SUS)材、シリコン材、またはガラス材などで形成される。ノズルプレート11の厚さは、ステンレス板で形成される場合、例えば100μmである。ノズルプレート11には、複数のノズル101がY軸に沿って穿設されている。図1では、Y軸方向に沿ったノズル101の配列がX軸方向に沿って2列設けられている例が示されているが、本開示においてノズルの配列が1列設けられてもよいし、3列以上設けられてもよい。
【0026】
流路プレート12は、直方体形状であり、Z軸方向においてノズルプレート11の正側に、板面がZ軸と直交するように配置される。流路プレート12は、振動プレート13およびノズルプレート11によって挟持される。流路プレート12は、例えば、エッチングやプレス加工によって成型された複数のステンレス板の積層体である。それぞれのステンレス板の厚さは、例えば、10μm以上100μm以下であり、積層数は、例えば、3層以上10層以下である。
【0027】
振動プレート13は、Z軸方向において流路プレート12の正側に、板面がZ軸と直交するように配置される。振動プレート13は、ハウジング14および流路プレート12によって挟持される。振動プレート13は、例えば、厚さが5μm以上50μm以下の薄膜であり、例えば、ポリイミド(Pi)、SUS、または電鋳工法で形成されるニッケル(Ni)により形成される。
【0028】
また、振動プレート13は、圧電素子112からの圧力を受ける受圧部113を有する。受圧部113は、複数の圧力室103のそれぞれに対応して設けられる。受圧部113は、例えば、圧力室103のZ軸方向における正側の壁体である第1壁体114から、Z軸方向における正側に突出して形成される。
【0029】
ハウジング14は、直方体形状を有し、振動プレート13のZ軸方向正側に配置される。Z軸方向に沿ったハウジング14の厚さは、例えば、1cmである。ハウジング14は、例えば、ステンレス鋼などの合金鋼を切削加工することにより形成される。
【0030】
圧力変動部15は、ハウジング14の一部(収容室)に配置されており、圧力室103に貯留されているインクに加圧して圧力変動を発生させる。圧力変動部15は、圧電素子112を有する。圧電素子112の動作は、例えば、制御ICが実装されたフレキシブルプリント基板などの制御基板により制御される。制御ICは、複数の圧電素子112への印加電圧を個別に制御する。
【0031】
ノズルプレート11と流路プレート12、流路プレート12と振動プレート13、振動プレート13とハウジング14、および振動プレート13と圧力変動部15は、それぞれ、接着剤により接着固定される。接着剤には、例えば、熱硬化特性を有するエポキシ系接着剤が用いられる。なお、それぞれの構成要素を接着する接着剤は、同一の接着剤であってもよいし、異なる接着剤であってもよい。例えば、ゴム系の接着剤とエポキシ系の接着剤を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
ノズルプレート11、流路プレート12、振動プレート13、ハウジング14および圧力変動部15の内部に、またはこれらが結合されることにより、液体吐出ヘッド10の各要素が形成される。
【0033】
図3は、液体吐出ヘッド10の内部構成を示す断面図である。図3には、液体吐出ヘッド10における1つのノズル101の液体流路が模式的に示されている。
【0034】
液体吐出ヘッド10は、ノズル101、サイロ102、圧力室103、第1絞り流路104、中間室105、第1ダンパー106、第2ダンパー107、第2絞り流路108、共通流路109、第3ダンパー110、フィルター111、圧電素子112、および凸部115を有している。なお、本明細書では、第1絞り流路104と第2絞り流路108とをまとめて、単に絞り流路116と記載することがある。なお、本明細書において絞り流路とは、液体の流れ方向において、周囲の構造よりも断面積が小さく形成された流路を意味している。本実施の形態において、絞り流路116は、断面が四角形状となるように形成されており、当該四角形状の最短辺はZ軸方向であることが望ましく、当該最短辺の長さは30μm以下、望ましくは20μm以下であることが望ましい。
【0035】
液体吐出ヘッド10は、圧力室103内の液体を圧電素子112により加圧することにより、ノズル101から液体を吐出させる。
【0036】
ノズル101は、ノズルプレート11をZ軸方向に貫通するように穿たれた穴である。
【0037】
ノズル101の径は、液体に含まれうるパーティクルによる詰まり、ノズル101の先端部から外部に露出する液体の液面が乾燥することによって生じうる詰まりなどを防止しやすい大きさに設定される。また、ノズル101の径は、吐出する液体の滴(液滴)が大きくなりすぎたり、液滴の吐出後にノズル101内に残る液体の残留振動が収まりにくかったりする不具合を防止しやすい大きさに設定される。
【0038】
一例として、ノズル101の直径(最小径)は、5μm以上50μmである。好ましくは、ノズル101の直径は、12μm以上である。さらに好ましくは、ノズル101の直径は、15μm以上20μm以下である。ノズル101の断面形状は、図3に示されるようにテーパー形状であってもよいし、長方形の形状であってもよい。また、ノズル101の壁面は断面が直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。
【0039】
図1などに示すように、ノズル101はY軸方向に沿って複数個配列されており、図3ではそのうちの1つのノズル101の断面が示されている。
【0040】
ノズル101の配列がX軸方向に沿って複数列設けられる場合、サイロ102、圧力室103、第1絞り流路104、中間室105、第1ダンパー106、第2ダンパー107、および第2絞り流路108が、それぞれのノズル101の配列に対応して、複数列形成される。共通流路109および第3ダンパー110は、それぞれ、ノズル101の配列毎に設けられてもよいし、複数のノズル101の配列によって共用されてもよい。
【0041】
圧力室103およびサイロ102は、複数個のノズル101のそれぞれに対して設けられる。圧力室103は、サイロ102を介してノズル101と接続されている。ノズル101およびサイロ102を介して、圧力室103内の液体が外部に吐出される。
【0042】
圧力室103は、流路プレート12および振動プレート13によって形成される液体貯留空間である。圧力室103は、サイロ102を介して、液体を吐出するノズル101に接続されている。本実施の形態では、圧力室103は、流路プレート12に形成された凹部が振動プレート13によって閉塞されることにより、形成されている。圧力室103は、例えば、X軸に沿って延びる直方体形状を有する。圧力室103の内面には、段差が形成されていてもよい。ただし、本開示において、圧力室の形状はどのようなものであってもよい。
【0043】
圧力室103のZ軸方向における正側の壁体である第1壁体114には、圧電素子112からの圧力を圧力室103内に伝達する受圧部113が設けられている。圧電素子112の動作により第1壁体114が撓むと、圧力室103の容積が減少して圧力室103内の液体の圧力が上昇するため、サイロ102およびノズル101を介して液体が外部に吐出される。
【0044】
サイロ102は、Z軸方向に沿って形成され、圧力室103とノズル101とを接続する。サイロ102は、圧力室103ととともに液体貯留空間を形成する。サイロ102は、例えば、円柱形状または四角柱形状を有している。なお、本開示において、圧力室とサイロとを接続するサイロは形成されていなくてもよく、例えば圧力室の壁体の一部にノズルが直接形成されてもよい。
【0045】
本実施の形態では、1つのノズル101、サイロ102、圧力室103、および圧電素子112に対して、X軸方向における両側に第1絞り流路104、中間室105、第1ダンパー106、第2ダンパー107、第2絞り流路108、共通流路109、第3ダンパー110、フィルター111、および凸部115が設けられている。本実施の形態では、ノズル101から液体を吐出していないとき、圧力室103よりX軸方向における正側の共通流路109を流れる液体が、圧力室103よりX軸方向における正側に設けられている第2絞り流路108、中間室105、および第2絞り流路108を介して圧力室103に供給され、圧力室103よりX軸方向における負側の第1絞り流路104、中間室105、および第2絞り流路108を介して圧力室103よりX軸方向における負側の共通流路109に流れ出る。図3には、本実施の形態における液体吐出ヘッド10の内部を流れる液体の流れ方向が破線矢印で示されている。
【0046】
本開示において、液体の流れ方向は、図3に示される例には限られない。例えば、図3に示される例とは反対方向に液体が流れてもよい。また、本開示の液体吐出ヘッドがノズルの配列を複数列有している場合、それぞれの配列における液体の流れ方向は同じ方向でなくてもよい。また、フィルター111は、上流側にのみ配置されてもよく、この場合、下流側には単なる開口部が設けられてもよい。
【0047】
第1絞り流路104は、圧力室103と中間室105を接続する流路である。
【0048】
第1絞り流路104のZ軸方向に沿った厚さは、例えば、20μm以下である。第1絞り流路104のY軸方向に沿った幅は、例えば、50μm以上700μm以下である。第1絞り流路104のX軸方向に沿った長さは50μm以上500μm以下である。
【0049】
図3に示される例では、圧力室103よりX軸方向における正側の第1絞り流路104の長さと、圧力室103よりX軸方向における負側の第1絞り流路104の長さとを、互いに異なる長さとしている。具体的には、X軸方向における負側の第1絞り流路104の長さを、X軸方向における正側の第1絞り流路104の長さの方よりも短くしている。また、X軸方向におけるノズル101の位置を、圧力室103のX軸方向における中心位置よりも負側にずらして配置している。
【0050】
これにより、ノズル101から液体が吐出されて圧力室103内の液体の圧力が低下したとき、ノズル101が中心位置から負側に寄っていることにより、圧力室103内部の第1絞り流路104近傍における液体の圧力は、ノズル101が寄っている負側の方が、ノズル101が寄っていない正側より小さくなる。液体の圧力が小さくなる負側の第1絞り流路104の長さを、正側の第1絞り流路104の長さの方よりも短くすることにより、正負両側の第1絞り流路104近傍における液体の圧力を均等に維持しやすくなる。
【0051】
中間室105は、圧力室103と共通流路109との間に配置されており、圧力室103および共通流路109と絞り流路116(第1絞り流路104および第2絞り流路108)によって接続されている。中間室105は、共通流路109または圧力室103から流入した液体を一時的に貯留する液体貯留部である。中間室105において液体を貯留することにより、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系で液体の共振を生じさせることができる。これにより、比較的短い共振周期を実現するとともに、圧力室103において圧電素子112から液体に加えられた圧力が、隣接したノズル101に伝わるのを抑制する効果が得られる。
【0052】
本実施の形態において、中間室105の容積は、圧力室103の容積よりも大きい。好ましくは、中間室105の容積は、圧力室103の容積の2倍以上である。このような構成により、本実施の形態の液体吐出ヘッド10は、共振周期を比較的短くすることでノズル101から吐出される液体を小滴化できるとともに、クロストークによる吐出異常の発生を抑制できる。中間室105の容積を圧力室103の容積よりも大きくすることで、共振周期を比較的短くすることで吐出液滴を小滴化できるとともにクロストークによる吐出異常の発生を抑制できるメカニズムについては、後段で詳細に説明する。
【0053】
なお、図3に示される例では、X軸方向における長さとZ軸方向における長さの両方において、圧力室103よりも中間室105の方が大きく形成されることで、中間室105の容積が圧力室103の容積よりも大きくなっている。液体吐出ヘッド10の小型化のために、中間室105をX軸方向に沿って拡張するよりも、Z軸方向に沿って拡張しても良い。
【0054】
中間室105は、第1ダンパー106、および、第1ダンパー106と対向する位置に第2ダンパー107を有している。第1ダンパー106は、中間室105のZ軸方向における正側に設けられている。第2ダンパー107は、中間室105のZ軸方向における負側に設けられている。第2ダンパー107よりZ軸方向における負側には、圧力を逃がすための空間が設けられている。
【0055】
第1ダンパー106と第2ダンパー107とは、互いに異なる厚さに形成されている。また、第1ダンパー106と第2ダンパー107とは、互いに異なる固有振動数を有している。
【0056】
第1ダンパー106の厚さは、例えば、5μm以下である。第2ダンパーの厚さは、例えば、20μm以下である。中間室105の長手方向、すなわちX軸方向に沿った第1ダンパー106および第2ダンパー107の長さは、200μm以上である。なお、第1ダンパー106の長さと第2ダンパー107の長さとが互いに異なってもよい。また、第1ダンパー106と第2ダンパー107は、それぞれ、Y軸方向に分割されていてもよい。この場合、分割された第1ダンパーまたは第2ダンパーが、それぞれ異なる固有振動数を有していてもよい。
【0057】
第2絞り流路108は、中間室105と共通流路109とを接続する流路である。第2絞り流路108は、第1絞り流路104と同軸上、またはX軸方向において平行に設けられている。
【0058】
第2絞り流路108のZ軸方向に沿った厚さは、例えば、20μm以下である。第2絞り流路108のY軸方向に沿った幅は、例えば、50μm以上300μm以下である。第2絞り流路108のX軸方向に沿った長さは、例えば、50μm以上300μm以下である。
【0059】
本実施の形態において、第1絞り流路104の流体抵抗は、第2絞り流路108の流体抵抗よりも大きく形成されている。なお、流体抵抗とは、流体の粘度および流速が一定の条件において、ある流路を流れる流体に掛かる抵抗の大きさを意味する。また、本実施の形態において、第2絞り流路108の長さは、第1絞り流路104の長さよりも短く形成されている。その理由は、以下のとおりである。
【0060】
第1絞り流路104と第2絞り流路108を含む絞り流路116は、圧力室103における液体吐出のための圧力変動が、隣接したノズル101に伝わるのを抑制する効果がある。上述したように、中間室105において液体を貯留することで、同様の効果が得られる。
【0061】
ここで、液体吐出ヘッド10の小型化のためには、中間室105と絞り流路116のX軸方向に沿った長さの合計を短くすることが望ましい。このとき、第1絞り流路104の長さと、ノズル101から吐出される液滴の体積と、の間には強い関連性がある。このため、液体吐出ヘッド10の設計時において、第1絞り流路104の長さは、製造したい液体吐出ヘッド10の液滴体積に基づいて決定される。一方で、液体吐出ヘッド10小型化のためには、第2絞り流路108を長くするよりも中間室105の容量を拡張する方が、圧力室103における圧力変動を減衰させる効果が大きいことが実験などから分かっている。このため、第2絞り流路106を短くしても十分に圧力変動を減衰させる効果が発揮されることが期待できる。なお、第2絞り流路106を設けない場合、中間室105による圧力変動減衰の効果が得られないため、第2絞り流路106は短くても配置することが非常に有効である。以上のことから、第2絞り流路106の長さは、第1絞り流路104の長さよりも短く、例えば、50μm以上300μm以下とすることが望ましい。
【0062】
このように、第2絞り流路108の長さを第1絞り流路104の長さより短くすることにより、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系において液体の共振を生じさせて比較的短い共振周期を実現できるとともに、圧電素子112から圧力室103内の液体に加えられた圧力が隣接したノズル101に伝搬するのを防止する効果と、液体吐出ヘッド10の小型化とを両立させることができる。
【0063】
また、上述したように、圧電素子112を駆動させず、ノズル101から液体が吐出されていない状態において、液体は上流側の共通流路109から下流側の共通流路109に流れ続けることにより循環する。このとき、上流側の共通流路109から下流側の共通流路109までの流路全体において液体に掛かる流路抵抗は、第1絞り流路104の流路抵抗と第2絞り流路108の流路抵抗とを直列的に加算したものと見なすことができる。液体吐出ヘッド10において液体を循環させる観点からすると、流路全体の流路抵抗が小さいほど循環する液体の流量を制御しやすいため、第1絞り流路104の流路抵抗と第2絞り流路108の流路抵抗とはそれぞれ小さい方がよい。上述したように、第1絞り流路104の長さは要求される液滴体積によって決まるので、流路全体の流路抵抗を小さくするためには、第2絞り流路108の長さを、第1絞り流路104の長さよりも短くすることが望ましい。
【0064】
共通流路109は、ノズル101に供給する液体をY軸方向に沿って流通させる流路である。共通流路109には、フィルター111を介して、図2に示すハウジング14に設けられた全体流路と接続される。全体流路は、図1に示す液体タンク210と接続されており、液体を液体タンク210から液体吐出ヘッド10に供給する。
【0065】
共通流路109は、第3ダンパー110を有している。中間室105および第2絞り流路108に加えて、第3ダンパー110を設けたことにより、圧力室103内の液体に加えられた圧力が隣接するノズル101に伝搬する事態をより効果的に防止することができる。第3ダンパー110は、共通流路109において、フィルター111と対向する位置に設けられている。第3ダンパー110よりZ軸方向における負側には、第3ダンパー110が圧力を逃がすための空間が設けられている。
【0066】
図3に示される例では、1つのノズル101および圧力室103に対し、液体の流れ方向における上流側と下流側、すなわち、X軸方向における正負両側には、それぞれ第1絞り流路104、中間室105、第2絞り流路108、および共通流路109が配置されている。ここで、第1絞り流路104、中間室105、第2絞り流路108、および共通流路109の形状は、例えば上流側と下流側とで互いに異なってもよい。具体的には、第1絞り流路104および第2絞り流路108は、上流側と下流側とで液体の流れ方向(X軸方向)に沿った長さが互いに異なってもよい。中間室105は、上流側と下流側とで容積が異なってもよい。中間室105に設けられる第1ダンパー106および第2ダンパー107の流れ方向に沿った長さは、上流側と下流側とで互いに異なってもよい。この場合、流れ方向においてノズル101から近い方の第1ダンパー106および第2ダンパー107の方が、ノズル101から遠い方の第1ダンパー106および第2ダンパー107よりも短く形成されていればよい。
【0067】
また、本開示は、1つのノズル101および圧力室103に対し、液体の流れ方向における上流側と下流側に、第1絞り流路104、中間室105、第2絞り流路108、および共通流路109がそれぞれ配置されている構成に限られず、例えば1つのノズルおよび圧力室に対し、1つの第1絞り流路、中間室、第2絞り流路、および共通流路のみが配置されてもよい。
【0068】
フィルター111は、共通流路109のZ軸方向における正側を覆う部材である。フィルター111は、複数の貫通孔を有している。複数の貫通孔の径は、液体を通過させ、かつ、ノズル101が詰まる原因となり得るパーティクルを通過させない値に設定される。フィルター111が有する貫通孔は、ノズル101よりも小さい開口とするのが望ましく、当該貫通孔の直径は、例えば、3μm以上20μm以下に設定されればよい。
【0069】
圧電素子112は、圧力室103内の液体に圧力を加える圧力源である。圧電素子112は、受圧部113と接着剤を介して接触している。圧電素子112は、図1に示す制御部230などの制御に基づき電圧が印加されることによって、例えば、Z軸方向に伸縮するように変形する。圧電素子112には、例えば、D33モードの積層型ピエゾアクチュエーターが用いられる。
【0070】
次に、図4から図6を参照して、液体吐出ヘッド10の積層構造の一例について説明する。図4は、ノズルプレート11の平面図である。図5は、流路プレート12を構成する複数の積層体の平面図である。図6は、振動プレート13の平面図である。図4から図6では、Z軸方向の正側から平面視した各積層構造が示されている。
【0071】
ノズルプレート11は、例えばSUS(Steel Use Stainless)を延伸した材料で構成される。ノズルプレート11には、複数のノズル101がY軸方向に沿って形成されている。ノズル101の加工方法としては、レーザー加工、パンチング加工、エッチング加工などが適宜採用されればよい。なお、図4には、ノズル101の配列がノズルプレート11に1列形成された例が示されている。ノズル101の配列を複数とする場合には、ノズルプレート11上にX軸方向に沿ってノズル101の配列が形成されればよい。
【0072】
流路プレート12は、第1積層体121、第2積層体122、第3積層体123、第4積層体124、第5積層体125、第6積層体126、および第7積層体127が、Z軸方向の負側から正側に向かって順に積層されて構成される。図5Aは、第1積層体121の平面図である。図5Bは、第2積層体122の平面図である。図5Cは、第3積層体123の平面図である。図5Dは、第4積層体124の平面図である。図5Eは、第5積層体125の平面図である。図5Fは、第6積層体126の平面図である。図5Gは、第7積層体127の平面図である。
【0073】
第1積層体121、第2積層体122、第3積層体123、第4積層体124、第5積層体125、第6積層体126、および第7積層体127は、例えばSUSを延伸した材料で構成される。積層体同士は、接着剤などにより接着されてもよいし、熱拡散接合などにより接合されてもよい。
【0074】
第1積層体121から第7積層体127のそれぞれには、Z軸方向に貫通する開口部が形成されている。図5には、それぞれの開口部に対応する液体吐出ヘッド10の構成の符号を示している。
【0075】
第1積層体121は、サイロ102に対応する開口、ならびに、第2ダンパー107および第3ダンパー110が圧力を逃がすための空間に対応する開口を有する。第1積層体121の厚さは、例えば30μm以上100μm以下である。
【0076】
第2積層体122は、サイロ102に対応する開口を有する。図5Bでは、第1積層体112における第1ダンパーおよび第3ダンパー110に対応する位置が破線で示されている。実際には、第2積層体122の破線の位置は単なる平面である。第2積層体122の厚さは、例えば10μm以上25μm以下である。
【0077】
第3積層体123および第4積層体は、サイロ102、中間室105、および共通流路109に対応する開口を有する。第3積層体123および第4積層体の厚さは、例えば20μm以上100μm以下である。
【0078】
第5積層体125は、圧力室103、中間室105、および共通流路109に対応する開口を有する。第5積層体125の厚さは、例えば20μm以上100μm以下である。
【0079】
第6積層体126は、圧力室103、第1絞り流路104、中間室105、第2絞り流路108、および共通流路109に対応する開口を有する。第6積層体126が有する開口には、圧力室103、第1絞り流路104、中間室105、第2絞り流路108、および共通流路109のそれぞれの間に境界は形成されていないが、図5Fでは、境界に対応する位置を破線で示している。このように、第1絞り流路104と、第2絞り流路108とは、流路プレート12のZ軸方向における同じ位置に形成されている。第6積層体126の厚さは、例えば10μm以上30μm以下である。
【0080】
第7積層体127は、圧力室103、中間室105、および共通流路109に対応する開口を有する。第7積層体127の厚さは、例えば30μm以上100μm以下である。
【0081】
図5Dから図5Fに示されるように、第4積層体124、第5積層体125、および第6積層体126には、Y軸方向に沿って仕切り118が設けられている。図5Cおよび図5Gに示されるように、共通流路109のうち、Z軸方向における最も正側の領域と、最も負側の領域には、仕切り118は設けられていない。この仕切り118は、例えば流路プレート12の強度向上のために設けられている。ただし、本開示の液体吐出ヘッドにおいて、仕切りは設けられなくてもよい。
【0082】
第1積層体121から第3積層体123が積層されることにより、第2ダンパー107および第3ダンパー110が構成される。また、第1積層体121から第4積層体124が積層されることにより、サイロ102が構成される。
【0083】
第3積層体123から第7積層体127が積層されることにより、圧力室103、中間室105、および共通流路109が構成される。第5積層体125から第7積層体127が積層されることにより、第1絞り流路104および第2絞り流路108が構成される。なお、本開示において、第1絞り流路および第2絞り流路は、例えば第3積層体から第5積層体など、別の積層体によって形成されてもよい。
【0084】
振動プレート13は、フィルター111に対応する領域と、第1ダンパー106および第1壁体114に対応する薄肉部117と、受圧部113および凸部115と、を有する。振動プレート13の厚さは、例えば10μm以上30μm以下である。振動プレート13は、例えばポリイミド(Pi)、SUS、または電鋳工法で形成されるニッケル(Ni)などで構成される。なお、本開示において、フィルター111は設けられなくてもよく、フィルターの代わりに単なる開口部が形成されてもよい。また、液体の流れ方向における上流側の共通流路においてはフィルターを設け、下流側の共通流路においてはフィルターを設けずに開口部としてもよい。
【0085】
凸部115は、第1ダンパー106と第1壁体114との間に、圧力室103と中間室105とを隔てる第1隔壁118と対向して突出する突起である。凸部115のX軸方向における長さは、第1隔壁118のX軸方向における長さと同じかそれより短い長さに形成される。
【0086】
液体吐出ヘッド10の製造時において、受圧部113、第1壁体114、凸部115、および第1ダンパー106などを含む振動プレート13を流路プレート12に接合する際に、Z軸方向における正側から凸部115を物理的に押すことで、振動プレート13を流路プレート12に強固に接合することができる。
【0087】
薄肉部117は、周囲よりも薄く形成された領域である。薄肉部117の厚さは、例えば2μm以上10μm以下である。受圧部113および凸部115は、薄肉部117の領域内部に形成されている。
【0088】
このように、第1ダンパー106と、圧力室103の壁体の一部である第1壁体114とは、薄肉部117によって一体に形成されている。これにより、薄肉部117を構成する材料を有効活用でき、製造コストを低減できる。また、別部材を第1ダンパー106と第1壁体114とを別個に形成するためのコストが不要となるため、液体吐出ヘッド10全体を小型化および低コスト化することができる。
【0089】
第1積層体121から第7積層体127が積層されて構成された流路プレート12のZ軸方向における負側にノズルプレート11が接合される。これにより、サイロ102のZ軸方向における負側にノズル101が配置される。
【0090】
また、流路プレート12のZ軸方向における正側に振動プレート13が接合される。上述したように、この際、Z軸方向における正側から凸部115を物理的に押すことで、振動プレート13が流路プレート12に強固に接合される。これにより、流路プレート12のうち第3積層体123から第7積層体127に設けられた開口が振動プレート13によって覆われ、圧力室103、中間室105、および共通流路109が構成される。
【0091】
[液体吐出ヘッド10により得られる効果]
以下では、上述した構成を有する液体吐出ヘッド10により得られる効果とその原理について詳細に説明する。
【0092】
一般的に、高精細な印刷を行うため、液体吐出ヘッドが吐出する液滴を小さくしたいという要望がある。一般的に、圧電方式の液体吐出ヘッドにおいて、吐出液滴の体積Vと、ノズルの断面積Sと、吐出速度vと、液体吐出ヘッドにおける流体系の共振周波数(ヘルムホルツ周波数)fとの間には、概ね以下の式(1)の関係があることが知られている。なお、式(1)では、印加電圧波形、および、液体の粘度等により定まるリガメント長などにより与えられる影響は考慮されていないが、吐出液滴の体積Vと、ノズルの断面積Sと、吐出速度vと、共振周波数fとの関係性を把握することは十分に可能である。
V=(S×v)/(2×f) (1)
【0093】
上述したように、ノズルにおける液体の詰まりを防止するためには、ノズルの断面積Sは不必要に小さくしないことが望ましい。また、液体の吐出速度vを遅くすると、吐出の不安定性が増大したり、ロバスト性が悪化したりといった不具合が生じうるため、吐出速度vは不必要に遅くしないことが望ましい。
【0094】
式(1)によれば、ノズル断面積Sを不必要に小さくせず、吐出速度vを不必要に遅くせずに、吐出液滴の体積Vを小さくするためには、共振周波数fを大きく、言い換えると共振周期を短くすればよい。共振周期を短くする方法として、圧力室の容積を小さくする、または絞り流路の抵抗を小さくする方法などがある。
【0095】
しかしながら、圧力室の容積を小さく、または絞り流路の抵抗を小さくすることで共振周期を短くした場合、圧力室における液体の圧力変動が絞り流路および共通流路を介して隣接する他のノズルに伝わりやすくなる。この場合、液体の圧力変動が隣接ノズルにおける液体の吐出に悪影響を及ぼすクロストークが生じる。
【0096】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10は、圧力室103の容積を小さくするとともにノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系における液体の共振周期を利用して小滴なインクを吐出させることで、ノズル断面積をできるだけ大きく、吐出速度vをできるだけ速くした上で、共振周期を短くして吐出液滴の体積Vを小さくすることができるとともに、クロストークの悪化を防止できる。
【0097】
なお、共振周期を短くするために圧力室103の容積を小さくしたり流路抵抗を小さくしたりするだけでは、圧力室103における液体の圧力変動が隣接ノズルに伝わりやすくなり、クロストークが発生してしまう。これを抑制するため、本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10では、圧力室103と共通流路109との間に、中間室105と、第1絞り流路104および第2絞り流路108の2つの絞り流路と、を設け、さらに中間室105の容積を圧力室103の容積より大きくしている。
【0098】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10では、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系において生じる液体の共振を利用して、ノズル101から液体を吐出させる。ここで、圧力室103から見て中間室105よりも外側の第2絞り流路108および共通流路109は、液体吐出のための液体の共振に影響を及ぼしにくいようになっている。その理由については後述する。
【0099】
そして、中間室105の容積を圧力室103の容積より大きくしたことにより、圧力室103から第1絞り流路104を介して中間室105に到達した液体の体積は膨張する。これにより、圧力室103において生じる、液体を吐出させるための圧力変動が、中間室105において液体が膨張することで十分に減衰される。
【0100】
なお、本実施の形態の液体吐出ヘッド10では、上述したように、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系において生じる液体の共振を利用して液滴を吐出する。ここで、中間室105が圧力室103に対して十分に大きくない場合、圧力室103で生じる液体の圧力変動が十分に減衰されずに第2絞り流路108を介して共通流路109まで伝わるため、圧力室103と中間室105との間で共振が完結しない(完結する成分が少なくなる)。この場合、液体吐出ヘッド10において、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105に加えて第2絞り流路108、共通流路109も含めた系において生じる共振が、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系において生じる共振に対して影響を与え、その結果として液体吐出ヘッド10における共振周期が長くなる。その結果、吐出液滴の小滴化を実現するためにはノズル径を小さくするなどの別の方策を採用する必要が生じる。したがって、本実施の形態の液体吐出ヘッド10では、圧力室103の容積を小さくすること、および第1絞り流路104の流路抵抗を小さくすることに加えて、中間室105の容積を圧力室103に対して十分に大きくすることにより、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系において生じる液体の共振を利用して、共振周期を十分に短くする効果を得ることができる。
【0101】
このような構成により、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系において生じる液体の共振を利用して共振周期を十分に短くする効果を得るとともに、液体吐出のために圧力室103において生じる液体の圧力変動は、中間室105および第2絞り流路108によって十分に減衰されて、共通流路109まで伝わりにくくなる。このため、流路系全体の共振周期を短くできるとともに、効果的にクロストークを抑制できる。
【0102】
さらに、本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10では、中間室105が第1ダンパー106を有することにより、圧力室103から伝搬された圧力変動を吸収する効果を大幅に高めることができる。これにより、液体流路内の各所でそれぞれ生じる複数の共振のうち、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系における共振の強度を相対的に強くすることができる。すなわち、比較的短い共振周期で小液滴を吐出できるとともに、第1絞り流路104を通じて中間室105に流入した液体の圧力変動のうち、第2絞り流路108に直接流入する成分を大幅に少なくすることができる。すなわち、吐出液滴を小滴化するために共振周期を短くする効果と、クロストークを低減させる効果とをいずれも高めることができる。さらに、中間室105が第1ダンパー106および第2ダンパー107を有することで、中間室105における残留振動を効果的に減衰させることができる。これにより、クロストークをさらに効果的に抑制できる効果と、液体を高周波数で吐出した際の残留振動の影響を抑制する効果とを得ることができる。ここで、固有振動数の異なる第1ダンパー106および第2ダンパー107を中間室105内に配置することで、ダンパー自体の残留振動も早期に抑制できる。
【0103】
さらに、共通流路109が第3ダンパー110を有することにより、液体吐出のための圧力変動が共通流路109まで伝わったとしても、共通流路109においてその圧力変動を減衰させることができ、クロストークをさらに効果的に抑制できる。
【0104】
なお、中間室105ならびに中間室105に設けられた第1ダンパー106および第2ダンパー107により、液体吐出のためにノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105を含む流体系で生じる共振とは別に、第1ダンパー106および第2ダンパー107それぞれの固有振動に起因して圧力室103内に圧力変動が生じることがある。ここで、一般的に、液体吐出ヘッドでは、吐出された液滴はリガメント(飛翔する液滴に追随する液体の残滓)を伴って吐出されるが、高精細な印刷のためには、着弾する前に液滴とリガメントとが一体化して着弾することが望ましい。
【0105】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10では、液体がノズル101から吐出された後に、第1ダンパー106によって中間室105及び圧力室103内に生じさせる圧力変動によって、リガメントを吐出済みの液滴に押し込む方向の力を与えることができる。これにより、液滴とリガメントとを一体化させやすくなり、高精細な印刷を行うことができる。
【0106】
図7は、液体吐出ヘッド10におけるノズル101の直径、液体吐出ヘッド10における液体吐出のための共振周期、および液滴体積の関係の一例を示す図である。図7では、液体の吐出速度は6m/sとしている。図7のグラフに示される各直線は、ノズル101の直径を12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μmとしたときの、液滴体積と共振周期との関係を表している。なお、液体吐出のための共振周期とは、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系において生じる液体の共振周期である。
【0107】
本実施の形態の液体吐出ヘッド10では、上述したように、ノズル101の直径は、好ましくは、12μm以上であり、さらに好ましくは、15μm以上20μm以下である。これは、一般的にノズルの直径を12μm未満とした場合、ノズル先端から露出する液体表面が乾燥してノズル先端付近に固まりが生じることで、被印刷物の量産性が悪化するからである。
【0108】
図7によれば、例えばノズル101の直径を15μmに設定し、共振周期を約3.8μsに設定して、液体吐出ヘッド10を設計した場合、ノズル101から吐出される液滴を2pLの小液滴とすることができる。また、液滴体積を1pLとしたい場合には、例えばノズル101の直径が13μm、共振周期が約2.5μsとなるように、液体吐出ヘッド10を設計すればよい。なお、液体吐出ヘッド10の設計には、ノズル101の直径、圧力室103の容積と中間室105の容積との関係、および、第1絞り流路104および第2絞り流路108の流路断面積などの構造設計および流体共振周期に合わせて液滴を吐出する波形等のプロセス設計が含まれる。
【0109】
このように、本実施の形態では、望ましいノズル101の直径と液滴体積とに基づいて、液体吐出のための共振周期(すなわち、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104および中間室105により構成される流路系の共振周期)を適宜の値に設定し、それに合わせて液体吐出ヘッド10を設計することで、所望の液滴体積を吐出できる液体吐出ヘッド10が得られる。ここで、本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10では、ノズル101の直径を加工しやすく詰まりが生じにくい12μm以上とした場合でも、クロストーク等の流体特性を悪化させずに、共振周期を比較的短くすることで1pLや2pLといった小液滴を吐出できる。特に、高精細なディスプレイパネルにパターンを印刷する場合などには、1pLや2pLといった小液滴が要望されるが、本実施の形態の液体吐出ヘッド10によればこのような要望に十分応えることができる。
【0110】
なお、液体吐出のための共振周期は、圧力室103および中間室105の容積、ならびに第1絞り流路104を流れる液体に生じる抵抗の大きさなどによって決まる。実際には、液体吐出のための共振周期は、圧力室103および中間室105の容積、第1絞り流路104および第2絞り流路108の流路断面積、ならびに液体の特性(粘度など)などをパラメータとして流体シミュレーションを行うことで推定できる。実用上は、液体吐出のための共振周期は、下記に示すような実験的手法によって導出および設定されればよい。
【0111】
なお、共振周期は、圧電素子112が圧力室103内の液体に圧力を与え、ノズル101先端におけるメニスカス(液体表面)が、Z軸方向の正側(または負側)に移動してからZ軸方向における負側(または正側)に移動した後、元の液面位置に戻るまでの時間である。共振周波数は共振周期の逆数である。液体吐出ヘッド10の共振周期を設定するための実験手法としては、共振周期を段階的に変えた波形と吐出速度などの関係性を実験的に導出し、最も速度が速い(最も吐出効率が良い)周期を抽出する、一般的なシミュレーション手法が用いられればよい。
【0112】
図8は、圧電素子112に印加される印加波形の一例を示す図である。図8の縦軸は例えば印加電圧である。図8の横軸は時間である。液体吐出ヘッド10の設計時においては、上述のシミュレーションにより導出した共振周期に基づいて、図8に示す共振周期を取るように液体吐出ヘッドの波形設定を行えばよい。
【0113】
以上説明したように、本実施の形態の液体吐出ヘッド10は、第1の効果と第2の効果とを同時に奏することができる。なお、第1の効果とは、液体の吐出に関する共振周期を比較的短くしたことによる、ノズル101の大径化と吐出液滴の小滴化とを両立させる効果である。また、第2の効果とは、1つのノズル101における液体吐出時の圧力が隣接するノズルに伝搬することによる悪影響(クロストーク)を効果的に低減できる効果である。すなわち、本実施の形態の液体吐出ヘッド10は、ノズル101断面積をできるだけ大きくしたうえで、吐出液滴の小滴化とクロストークの抑制とを両立させることができる。
【0114】
(その他の効果)
本実施の形態の液体吐出ヘッド10は、上述した第1の効果および第2の効果以外にも、以下のような種々の効果を奏する。
【0115】
<作用、効果>
以上説明したように、本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10は、液体を吐出するノズル101に接続されている圧力室103と、圧力室103に液体を供給する共通流路109と、圧力室103と共通流路109との間に配置されており、圧力室103および共通流路109と絞り流路116によって接続されている中間室105と、を備え、中間室105の容積は、圧力室103の容積よりも大きい。
【0116】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10では、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系において生じる液体の共振を利用して、ノズル101から液体を吐出させる。ここで、圧力室103から見て中間室105よりも外側の第2絞り流路108および共通流路109は、液体吐出のための液体の共振に影響を及ぼしにくいようになっている。
【0117】
そして、液体吐出のための圧力変動が生じる圧力室103と共通流路109との間に、圧力室103よりも容積が大きい中間室105と、絞り流路116(第1絞り流路104および第2絞り流路108)と、を設けたことにより、液体吐出のために圧力室103において生じた圧力変動が、中間室105および絞り流路116によって減衰され、共通流路109まで伝わりにくくなっている。中間室105の容積を圧力室103の容積より大きくしたことにより、圧力室103から第1絞り流路104を介して中間室105に到達した液体の体積が膨張するため、圧力室103において生じる、液体を吐出させるための圧力変動が、中間室105において十分に減衰される。
【0118】
また、中間室105の容積を圧力室103の容積より大きくしたことにより、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系に生じる共振によって圧力室103内の液体をノズル101から吐出させることができ、第2絞り流路108、共通流路109を含む系における比較的長い共振周期が液体の吐出に与える影響を最小限に抑えることができる。このように、中間室105の容積を圧力室103の容積より大きくしたことにより、本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10における共振周期を短くすることができるので、ひいては吐出液滴の小滴化と、クロストークの抑制とを両立させることができる。
【0119】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、中間室105の容積は、圧力室103の2倍以上である。このような構成により、液体の粘度または流量などに対するロバスト性を向上させることができる。そのため、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系において生じる液体の共振を利用して、ノズル101から液体を吐出させる効果を、例えば粘度等の特性の異なるインクに対しても発揮しやすくなる。すなわち、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系において生じる液体の共振の強度を、インク流路内の各所で生じる振動成分に対して相対的に高めることができる。よって、短い共振周期を利用して小滴な液滴を吐出させることができるとともに、クロストークをさらに抑制できる効果を向上させることができる。
【0120】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、中間室105は、第1ダンパー106を有する。このような構成により、液体吐出時に圧力室103内の液体に加えられた圧力を中間室105において効果的に減衰させることができる。また、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系において生じる液体の共振を利用して、ノズル101から液体を吐出させる効果を発揮しやすくなる。すなわち、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105により構成される流体系において生じる液体の共振の強度を、インク流路内の各所で生じる振動成分に対して相対的に高めることができる。よって、中間室105にて圧力を吸収する機能を強化することができ、短い共振周期を利用して小滴な液滴を吐出させることができるとともに、クロストークをさらに抑制できる効果を向上させることができる。
【0121】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、第1ダンパー106は、圧力室103の容積を変化させる受圧部113に接続されている圧力室103の第1壁体114と一体に形成されている。このような構成により、第1壁体114と第1ダンパー106とを別体に形成する場合と比較して、液体吐出ヘッド10の製造工程を少なくすることができるので、製造コストを低減できるとともに、薄肉部117を構成する材料を有効に活用することができる
【0122】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、絞り流路116は、圧力室103と中間室105とを接続する第1絞り流路104と、中間室105と共通流路109とを接続する第2絞り流路108とを有しており、第1絞り流路104を通過する液体に掛かる抵抗は、第2絞り流路108を通過する液体に掛かる抵抗よりも大きい。
【0123】
このような構成により、第2絞り流路108の長さを第1絞り流路104より短くすることができ、ひいては液体吐出ヘッド10を小型化できる。また、液体吐出ヘッド10の流路全体における液体の循環に対する流路抵抗を低減することができ、液体の循環流量を安定して増やすことができる。
【0124】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、第1ダンパー106と第1壁体114との間に、圧力室103と中間室105とを隔てる第1隔壁118と対向して突出する凸部115が設けられている。
【0125】
このような構成により、液体吐出ヘッド10の製造時において振動プレート13を流路プレート12に接合する際に、Z軸方向における正側から凸部115を物理的に押すことで、振動プレート13を流路プレート12に強固に接合することができる
【0126】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、第1ダンパー106の厚さは、5μm以下であり、中間室105の長手方向に沿った第1ダンパー106の長さは、200μm以上である。また、本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、中間室105は、第1ダンパー106と対向する位置に第2ダンパー107を有する。また、本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、第2ダンパー107は、第1ダンパー106と異なる固有振動数を有する。
【0127】
このような構成により、ノズル101、圧力室103、第1絞り流路104、および中間室105の系で液体の共振を生じさせて比較的短い共振周期を実現するとともに、液体吐出時に圧力室103内の液体に加えられた圧力を中間室105においてより効果的に減衰させることができる。このような構成により、液体の粘度または流量などに対するロバスト性を向上させることができるので、例えば高粘度等のインクに対しても、短い共振周期を利用して小滴な液滴を吐出させることができるとともに、クロストークをさらに抑制できる効果を向上させることができる。
【0128】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、共通流路は、第3ダンパー110を有する。このような構成により、第2絞り流路108までで減衰しきれなかった圧力を共通流路109において効果的に減衰させることができる。
【0129】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、第3ダンパーの厚さは、第1ダンパーより大きく、第3ダンパーの長手方向に沿った長さは、第1ダンパーの長手方向に沿った長さの5倍以上である。このような構成により、第2絞り流路108までで減衰しきれなかった圧力を共通流路109においてより効果的に減衰させることができる。
【0130】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、ノズルの最小径は15μm以上であり、ノズルから吐出される液滴の体積は2.5pL以下である。または、本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、ノズルの最小径は12μm以上であり、ノズルから吐出される液滴の体積は1.5pL以下である。このように、液体吐出ヘッド10は、ノズル101の大径化と吐出液滴の小滴化とを両立させることができる。
【0131】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、共通流路109、絞り流路116、および中間室105は、圧力室103から見て液体の流れ方向における上流側および下流側に1つずつ設けられている。このような構成により、液体を循環させて利用する印刷装置に適用することができる。
【0132】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、中間室105の容積は、液体の流れ方向における上流側と下流側とで互いに異なる。このような構成により、上流側と下流側それぞれにおける、中間室105、第2絞り流路108、および共通流路109の間の系に生じうるヘルムホルツ共振の周期をずらすことができ、当該系に生じる共振により生じうるクロストークを低減することができる。なお、共振の周期をずらすために、中間室105の容積ではなく、第2絞り流路108の容積が上流側と下流側とで異なるように構成してもよい。
【0133】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、中間室105は、上流側と下流側とで流れ方向に沿った長さが互いに異なる第1ダンパー106をそれぞれ有している。このような構成により、上流側と下流側とで第1ダンパー106の振動周期をずらすことができる。例えば液体を高周波数で吐出する場合などには、第1ダンパー106自体の振動と吐出タイミングとが互いに重なることで、吐出状態が変動することがあるが、上流側と下流側それぞれにおいて第1ダンパー106の振動周期をずらすことにより、第1ダンパー106自体により生じる吐出への影響を抑制することができる。
【0134】
本開示の実施の形態に係る液体吐出ヘッド10によれば、流れ方向におけるノズル101の位置は、液体の流れ方向における圧力室103の中心部から上流側または下流側にずれて配置されており、流れ方向においてノズル101に近い第1ダンパー106の長さは、ノズル101から遠い第1ダンパー106の長さより短い。ノズル101に近い第1ダンパー106は、サイロ102で液体の圧力が吸収される分、圧力室103内の圧力変動が中間室105まで伝わりにくい。このため、ノズル101に近い第1ダンパー106は、必要とされる圧力吸収量が小さくなるので、遠い側の第1ダンパー106よりも短くすることにより、上流側および下流側のそれぞれにおいて必要最小限のダンパーを配置することができ、液体吐出ヘッド10の小型化の効果を得ることができる。
【0135】
本開示の実施の形態に係る印刷装置200は、以上説明した液体吐出ヘッド10と、液体吐出ヘッド10に対して被印刷物300を相対的に移動させるステージ220(移動機構)と、液体吐出ヘッド10およびステージ220を制御する制御部230と、を備える。
【0136】
このような構成により、ノズル101をできるだけ大径化し、吐出速度をできるだけ早くした上で、吐出液滴の小滴化とクロストークの抑制とを両立することができる液体吐出ヘッド10を用いた印刷装置200を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本開示は、高精細な印刷のための液体吐出ヘッドに有用である。
【符号の説明】
【0138】
10 液体吐出ヘッド
101 ノズル
102 サイロ
103 圧力室
104 第1絞り流路
105 中間室
106 第1ダンパー
107 第2ダンパー
108 第2絞り流路
109 共通流路
110 第3ダンパー
111 フィルター
112 圧電素子
113 受圧部
114 第1壁体
115 凸部
116 絞り流路
117 薄肉部
118 第1隔壁
11 ノズルプレート
12 流路プレート
121 第1積層体
122 第2積層体
123 第3積層体
124 第4積層体
125 第5積層体
126 第6積層体
127 第7積層体
13 振動プレート
14 ハウジング
15 圧力変動部
200 印刷装置
210 液体タンク
220 ステージ(移動機構)
230 制御部
300 被印刷物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8