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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025104969
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】アモルファス変圧器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/26 20060101AFI20250703BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20250703BHJP
   H01F 30/12 20060101ALI20250703BHJP
   H01F 27/25 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
H01F27/26 130S
H01F30/10 A
H01F30/10 T
H01F30/12 A
H01F27/26 130B
H01F27/25
H01F27/26 160
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223185
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 直希
(72)【発明者】
【氏名】山岸 明
(72)【発明者】
【氏名】真島 康
(72)【発明者】
【氏名】多田 周二
(57)【要約】
【課題】巻鉄心を自立させて固定するアモルファス変圧器において、自立させる巻鉄心間に介在させる絶縁材の改良を図る。
【解決手段】積層方向及び並列方向に並べて配置される巻鉄心21~24の対向する面の間に、非磁性体の絶縁材を介在させる。絶縁材は、耐熱温度が異なる上側絶縁材30と下側絶縁材40、上側絶縁材60と下側絶縁材70にそれぞれに分けて形成し、それらはFRPの平板を用いてT字または十字に形成する。高い温度になりやすい上側絶縁材30、60は、下側絶縁材40、60より耐熱性が高い材料にて製造する。下側絶縁材40、70は、巻鉄心21~24を載せる鋼材べース50、80に固定されるので、巻鉄心21~24が良好に支持される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向及び並列方向に並べて配置されるアモルファス製の複数の巻鉄心と、前記巻鉄心を自立させる支持部材と、前記複数の巻鉄心のいずれかの脚部を跨ぐように巻回されて形成されるコイルと、前記巻鉄心を固定する上締金具と下締金具を備えたアモルファス変圧器であって、
積層方向に隣接する前記巻鉄心の脚部の端面の間が一定間隔にて保持されるようにし、並列方向に隣接する前記巻鉄心の脚部の側面の間が一定間隔にて保持されるようにするための絶縁材を設け、
前記絶縁材として、前記支持部材に固定される下側絶縁材と、前記下側絶縁材と耐熱温度が異なる上側絶縁材にて分割して形成したことを特徴とするアモルファス変圧器。
【請求項2】
前記絶縁材は樹脂製又は強化繊維を含む樹脂製であって、
前記上側絶縁材は、前記下側絶縁材とは隙間を隔てるようにして前記上締金具によって固定され、
前記上側絶縁材の耐熱温度が、前記下側絶縁材の耐熱温度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のアモルファス変圧器。
【請求項3】
前記上側絶縁材と前記下側絶縁材は、強化繊維プラスチック製の平板を、上面視でT字状または十字状に形成したものであって、
前記コイルを貫通する磁脚に接する前記上側絶縁材と前記下側絶縁材は十字状の形状とされ、
前記コイルを貫通しない磁脚に接する前記上側絶縁材と前記下側絶縁材はT字状の形状とされることを特徴とする請求項2に記載のアモルファス変圧器。
【請求項4】
十字状の前記下側絶縁材の上端位置と、T字状の前記下側絶縁材の上端位置は、前記巻鉄心の上下方向にみた重心位置よりも上側に位置することを特徴とする請求項3に記載のアモルファス変圧器。
【請求項5】
十字状の前記上側絶縁材と十字状の前記下側絶縁材は、縦方向の長方形板材の一方の短辺の中心位置から縦方向に延びるスリットを形成したものを2枚準備して、それらを交差させた状態で2つの前記長方形板材のスリットが嵌合して十字状になるように組まれることを特徴とする請求項4に記載のアモルファス変圧器。
【請求項6】
T字状の前記上側絶縁材と十字状の前記下側絶縁材は、それぞれ2枚の板材を接着にて接合させることを特徴とする請求項5に記載のアモルファス変圧器。
【請求項7】
前記上側絶縁材は、耐熱温度が105℃以上の繊維強化プラスチックであることを特徴とする請求項6に記載のアモルファス変圧器。
【請求項8】
積層方向及び/又は並列方向に並べて配置されるアモルファス製の複数の巻鉄心と、前記巻鉄心を自立させる支持部材と、隣接する前記巻鉄心の磁脚部を跨ぐように巻回されて形成されるコイルと、前記巻鉄心の上側と下側を固定する上締金具と下締金具を備えたアモルファス変圧器であって、
前記コイルに巻回される複数の前記巻鉄心の隣接する面が一定の間隔にて保持されるように、板状の第1絶縁部材を対向する鉛直面に介在させ、
前記第1絶縁部材は強化繊維プラスチック製であって、前記巻鉄心の上側と接する第1上側絶縁材と、前記巻鉄心の下側と接する第1下側絶縁材にて分割して形成され、
前記分割する位置を前記巻鉄心の重心位置よりも上側になるように設定すると共に、前記第1上側絶縁材の耐熱温度が前記第1下側絶縁材の耐熱温度よりも高くなるようにしたことを特徴とするアモルファス変圧器。
【請求項9】
前記第1上側絶縁材は上締金具によって固定され、前記第1下側絶縁材は前記支持部材によって固定されることを特徴とする請求項8に記載のアモルファス変圧器。
【請求項10】
前記巻鉄心が積層方向及び並列方向に隣接するように配置されている磁脚部において、
前記コイルにて巻回される前記巻鉄心の磁脚部間にそれぞれ設けられる前記第1上側絶縁材が十字状に交差するように配置され、
前記コイルにて巻回される前記巻鉄心の磁脚部間にそれぞれ設けられる前記第1下側絶縁材が十字状に交差するように配置されることを特徴とする請求項9に記載のアモルファス変圧器。
【請求項11】
前記コイルにて巻回されず、かつ、並列方向に前記巻鉄心が隣接されていない磁脚部の積層方向側の鉛直面に板状の第2絶縁部材を設け、
前記第2絶縁部材は前記第1絶縁部材と同じ厚さにて形成され、前記コイルには貫通されない状態にて前記支持部材に固定されることを特徴とする請求項10に記載のアモルファス変圧器。
【請求項12】
前記第2絶縁部材は強化繊維プラスチック製であって、前記巻鉄心の上側と接する第2上側絶縁材と、前記巻鉄心の下側と接する第2下側絶縁材にて分割して形成され、
前記分割する位置を前記巻鉄心の重心位置よりも上側になるように設定すると共に、前記第2上側絶縁材の耐熱温度が前記第2下側絶縁材の耐熱温度よりも高くなるようにしたことを特徴とする請求項11に記載のアモルファス変圧器。
【請求項13】
並列方向に前記巻鉄心が隣接されていない磁脚部の鉛直する側面に、絶縁性の側面板を設け、
前記側面板は前記支持部材に固定されることを特徴とする請求項12に記載のアモルファス変圧器。
【請求項14】
前記側面板は、前記巻鉄心の上側と接する上側側面板と、前記巻鉄心の下側と接する下側側面板にて分割して形成されることを特徴とする請求項13に記載のアモルファス変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファス変圧器を提供する技術に関し、特にアモルファス鉄心を自立させて組み立てるときの支持部材の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、変圧器において、非結晶磁性合金、アモルファス材を用いたものが開発されている。変圧器鉄心にアモルファス材を採用すると鉄心を自立するように組み立てるために、各鉄心に支持部材が必要になる。このような支持部材として特許文献1では、自立させたときの各鉄心のコーナ部の垂れ下がりを改善し、鉄心とコイルの組立をスムーズに行うためにコーナ部支持部材と、コーナ部支持部材に固定される板状の鉄心支持部材を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-243401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、鉄心支持部材の材料については開示されていない。発明者らの検討によると、アモルファス鉄心を自立させる支持部材の材料の選定については以下の課題を有することが判明した。鉄心支持部材は鉄心を自立させるため強度が必要であり、鋼材の採用が考えられる。しかしながら、鉄心支持部材に鋼材(磁性体)を採用すると、コイルに発生した磁束により、渦電流が発生することで、局部加熱を起こし、可燃性ガスが発生し、変圧器が異常をきたす恐れがある。また、鉄心支持部材に採用する材料として、樹脂材が考えられるが、耐熱性の高い樹脂材は鋼材に比べ強度が低く、全体的に変圧器が大型化しコストが増加する恐れがある。
【0005】
近年の変圧器では大容量化が図られる一方で、据付スペース上の制約から変圧器の大型化を避けて、コンパクトに構成することも重要になる。鉄心の体積が大きくなると、鉄心自重が増大すると共に、コイル寸法及び重量が増加するため、鉄心にコイルを挿入する組立作業が困難になると予想される。また、組立作業時及び組み立て作業後に、鉄心を自立したまま良好に保持させる工夫が必要になる。
【0006】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、複数の鉄心を、自立状態で適切な間隔を隔てながら良好に保持できるようにしたアモルファス変圧器を実現することにある。
本発明の他の目的は、複数の鉄心間の間に介在される絶縁板を上下分割して形成することで、鉄心とコイルの組立をスムーズに行うことができるようにしたアモルファス変圧器を実現することにある。
本発明の更に他の目的は、上下分割した絶縁板のうち温度が上昇しやすい側の絶縁板を、耐熱温度のより高い材料にて構成したアモルファス変圧器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するためになされたもので、代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。
本発明の一つの特徴によれば、積層方向及び並列方向に並べて配置されるアモルファス製の複数の巻鉄心と、巻鉄心を自立させる支持部材と、複数の巻鉄心のいずれかの脚部を跨ぐように巻回されて形成されるコイルと、巻鉄心を固定する上締金具と下締金具を備えたアモルファス変圧器であって、積層方向に隣接する巻鉄心の脚部の端面の間が一定間隔にて保持されるようにし、並列方向に隣接する巻鉄心の脚部の側面の間が一定間隔にて保持されるようにするための絶縁材を設けた。この絶縁材は、支持部材に固定される下側絶縁材と、下側絶縁材とは耐熱温度が異なる上側絶縁材にて分割して形成する。絶縁材は樹脂製又は強化繊維を含む樹脂製であって、上側絶縁材の耐熱温度が、下側絶縁材の耐熱温度よりも高いように形成する。上側絶縁材は下側絶縁材とは隙間を隔てる位置において、2つの巻鉄心に挟まれるようにして上締金具にて固定される。
【0008】
本発明の他の特徴によれば、上側絶縁材と下側絶縁材は、FRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)製の平板であって、コイルを貫通する磁脚に接する上側絶縁材と下側絶縁材は十字状の形状とされ、コイルを貫通しない磁脚に接する上側絶縁材と下側絶縁材はT字状の形状とされる。十字状の下側絶縁材と、T字状の下側絶縁材の上端位置は、巻鉄心の上下方向にみた重心位置よりもそれぞれ上側に位置するようにすると良い。十字状の上側絶縁材と十字状の下側絶縁材は、縦方向の長方形板材の一方の短辺の中心位置から縦方向に延びるスリットを形成したものを2枚準備して、それらを交差させた状態で2つの長方形板材のスリットが嵌合して十字状になるように組み立てる。一方、T字状の上側絶縁材と十字状の下側絶縁材は、それぞれ2枚の板材を接着にて接合させるか、スリットにて嵌合させるようにして組み立てる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アモルファスの巻鉄心を自立させることが可能となり、上側絶縁材と下側絶縁材を併用することで、自立した状態にて複数の巻鉄心を所定の間隔にて保持することができる。また、支持部材に巻鉄心の下側部分と下側絶縁材を固定した状態にて、コイルの挿入と、巻鉄心のラップ部の接合を行うことができるので、鉄心にコイルを挿入する組立作業が容易になる。さらに、絶縁板に耐熱材を用いることで、変圧器冷却媒体(油)の温度上昇の制約を減らし、大容量変圧器においても冷却器低減によりコンパクト化を図ることが可能となった。特に、絶縁板を上下に分割して形成することで、変圧器運用時の温度分布に適した性質の材料を採用でき、製造コストを抑えることができる。これらにより、変圧器が大容量化しても、変圧器の特性を良好に維持することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係るアモルファス変圧器1の斜視図である。
図2図1のアモルファス変圧器1の断面斜視図である。
図3図3A図2の絶縁材30、40と鋼材ベース50の斜視図であり、図3Bは絶縁材60、70と鋼材ベース80の斜視図である。
図4図4図3Aで示した下側絶縁材40の展開図である。
図5図5Aは下側絶縁材40と鋼材ベース50の取り付け構造を示す展開図であり、図5Bは下側絶縁材70と鋼材ベース80の取り付け構造を示す展開図である。
図6】上側絶縁材30、60と下側絶縁材40、70の材質の組み合わせ例を示す表である。
図7】本発明の第2の実施例に係るアモルファス変圧器101の斜視図である。
図8】本発明の第3の実施例に係るアモルファス変圧器201の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。また、巻鉄心21~24の整列において、積層方向と並列方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【実施例0012】
図1は本発明の実施例に係るアモルファス変圧器1の全体を示す斜視図である。図1に示すアモルファス変圧器1は単相外鉄形であって、コイル10と、アモルファス製の鉄心2(巻鉄心21、23等)により主に構成される。以降、本明細書では複数の巻鉄心21~24の全体を指す場合は単に「鉄心2」と称し、鉄心2の個々の部分を指す場合は、21~24のように符号に分けると共に「巻鉄心21~24」として示すことにする。巻鉄心21~24(符号22、23は後述の図2を参照)は環状に形成され、非結晶磁性合金製、例えば鉄を主成分とするアモルファス金属製である。アモルファス金属は通常の金属と材質内部の原子の並び方が異なる。熱した金属は冷えていく過程で結晶を形成する。しかし結晶が生成する間がないほど急速に冷やすと、結晶構造を持たないアモルファス金属になる。巻鉄心21~24(22と24は後述の図2参照)は閉じた磁路を形成するものであり、公知のアモルファスコア製造工程を用いて製造される。積層方向に隣接する鉄心2の間には、絶縁材30、40(図2参照)、60、70が介在され、鉄心2を構成する巻鉄心22~24間がわずかな隙間を有する状態に維持される。
【0013】
コイル10は、図1のような鉄心2の隣接する磁脚部を囲うように配置される。鉄心2は、巻鉄心を積層方向に2つ、並列方向に2つ並べた状態で鋼材製の支持部材(鋼材ベース80等)の上に位置づけられ、上締金具15と下締金具16によって鉄心2の上側部分と下側部分が固定される。
【0014】
図2はアモルファス変圧器1の鉄心2とコイル11付近の断面斜視図である。図2図1の状態から上締金具15と下締金具16と、巻鉄心23を取り外し、さらに、一部を断面にて示した図である。図示されていない巻鉄心23(図1参照)の形状は、他の巻鉄心21、22、24と同一であり、これらは共通部品として形成できる。尚、巻鉄心21~24は、コイルの挿入のために分割形式に形成され、コイル10の巻鉄心21~24の磁脚部への挿入後に、分割された巻鉄心21~24の取り外し部(ラップ部)がそれぞれ接合されるが、図2では接合箇所や接合構造の図示をしていない。
【0015】
鉄心2は、2つの巻鉄心21、22を積層方向(図1では前後方向)に並べ、それら巻鉄心21、22に並列方向(図2では左右方向)に隣接するように巻鉄心23、24を配置する。コイル10は、4つの巻鉄心21~24の一方の磁脚部の周囲を巻回するように配置される。巻鉄心21の後側端面と巻鉄心22の前側端面がわずかな距離を隔てて対面するように配置され、巻鉄心23(図示せず)の後側端面と巻鉄心24の前側端面がわずかな距離を隔てて対面するように配置される。これら距離を隔てて配置される巻鉄心21~24の間には、非磁性体による絶縁部材(上側絶縁材30、下側絶縁材40)が介在される。また、巻鉄心21と巻鉄心22のうち、コイル10が巻かれていない側の鉛直方向に延在する磁脚部(巻鉄心のうち上下方向に延在する部分)の隙間部分にも絶縁部材(上側絶縁材60と下側絶縁材70)が設けられる。同様に、図示が省略されている巻鉄心23と巻鉄心24のうち、コイル10が巻かれていない側の鉛直方向に延在する磁脚部の隙間部分にも絶縁部材(上側絶縁材60と下側絶縁材70)が設けられる。上側絶縁材30と下側絶縁材40は非接触状態にあり、上下方向に距離Sだけ隔てて配置される。同様に、上側絶縁材60と下側絶縁材70は非接触状態にあり、上下方向に距離Sだけ隔てて配置される。
【0016】
巻鉄心21~24の下側の角部分には、巻鉄心21~24を縦方向に自立させるために1つの鋼材ベース50と、2つの鋼材ベース80が設けられる。本明細書では、アモルファス変圧器1の鋼材ベース50、80を床面等に載置した場合に、鋼材ベース50、80の位置する側を下側と呼び、鋼材ベース50、80から遠い側を上側と呼ぶことにする。鋼材ベース50、80は巻鉄心21~24の下側の円弧状に形成された角部の形状に沿った輪郭を持つ複数のプレート(図3A図3Bにて後述)により形成されている。
【0017】
コイル10は、巻鉄心21、22の鉛直方向に延在する右側の磁脚部と巻鉄心23、24の鉛直方向に延在する左側の磁脚部を囲むように形成される。図2のコイル10はエナメル線を巻いて形成されるものであって、外側輪郭を概略的に図示しただけである。コイル10には一次コイルと二次コイルが含まれ、それらの具体的な巻き方や配置の図示は省略している。コイル10の巻き方は、公知の方法を採用すればよく、重ね巻、分割巻き、バイファイラ巻、サンドイッチ巻等のいずれかを採用できる。
【0018】
巻鉄心21、22のうちコイル10が巻かれていない方の磁脚部の側面と、巻鉄心23、24のうちコイル10が巻かれていない方の磁脚部の側面は、側面板(絶縁板66、76)にて覆われる。ここで絶縁板66、76は、製造上の容易さから、上側絶縁材60と下側絶縁材70のうちの他の部位と同じ絶縁材(図3Bで後述する絶縁板61、71)にて製造され、上面視でT字状に形成される。下側絶縁材70は鋼材ベース80のスリット部分に嵌合され、固定手段(例えばボルトとナット)を用いて固定される。上側絶縁材60と下側絶縁材70は、矢印で示すような所定の隙間69を隔てるように非接触状態にて下側絶縁材70の上側に位置している。絶縁材30、40は上面視で十字形であって、それぞれが、コイル10の内部空間内で、上下方向に見て部分的に重複する範囲に配置される。一方、絶縁材60、70は、コイル10の外側に配置される。
【0019】
下側絶縁材40は4個ある巻鉄心21~24の中央に位置し、それぞれの巻鉄心21~24に接している。下側絶縁材40は巻鉄心21~24を自立させて保持する機能を果たすため、巻鉄心21~24の個々の重心位置、及び、鉄心全体の重心位置よりも高い位置に、下側絶縁材40の上端が位置するような大きさに形成される。図1の例では、巻鉄心21~24の上端の高さをHとすると、下側絶縁材40の上端の高さH(符号は図3A参照)は、H>H>H/2の関係を満たすように構成される。また、この高さHは、コイル10の上端位置の高さHよりも低くすると、上側絶縁材30の高さ方向を十分確保できる。
【0020】
上側絶縁材30は、下側絶縁材40の上側に配置される。上側絶縁材30と下側絶縁材40の間には所定の隙間Sが形成される。上面視における上側絶縁材30と下側絶縁材40の形状は同一であって、隣接する4つの巻鉄心21~24の隙間に挟まれるように固定される。上側絶縁材30は、巻鉄心21と22が所定の隙間を維持して安定的に保持されるようにし、巻鉄心23(図1参照)と24が所定の隙間を維持して安定的に保持されるようにし、さらに、巻鉄心21と23、及び、巻鉄心22と24が所定の隙間を維持して安定的に保持されるようにするもので、いわばスペーサとしての機能も奏する。
【0021】
巻鉄心21~24の磁脚部のうち、コイルが巻かれていない側の磁脚部の側面(外周面のうち鉛直の部分)には、上側絶縁材60と下側絶縁材70が配置される。巻鉄心21、22の積層方向の端面と並列方向の側面に接するように設けられる上側絶縁材60と下側絶縁材70は、巻鉄心23、24の積層方向の端面と並列方向の側面に接するように設けられる上側絶縁材60と下側絶縁材70と同一形状であり、共通の部品が用いられる。尚、巻鉄心23、24に接する上側絶縁材60の点線で示す一部は図示を省略しているので、その形状は後述する図3を参照されたい。鋼材ベース50、80は、巻鉄心21~24を自立させた状態で保持するもので、曲面に加工された複数のプレートに、巻鉄心21~24の外周面が沿うことで、外周面のコーナ部分の自重によって垂れることを防止する。また、中実構造でなくて複数のプレートにて製造することで、従来よりも鋼材ベース50、80の製造コストを低減できる。さらに、鋼材ベース50、80は下側絶縁材40、70の自立を支えるための基台としても機能する。
【0022】
図3Aは、コイル10に貫通するように配置される絶縁材30、40と、巻鉄心21~24と絶縁材40を支持する鋼材ベース50の斜視図である。コイル10に貫通するように配置される絶縁部材は、上側絶縁材30と下側絶縁材40に2分割された状態で形成される。上側絶縁材30は2枚の平らな絶縁板31と36を組み合わせて形成され、これらが十字状に交差するように配置される。同様に下側絶縁材40は2枚の絶縁板41と46を組み合わせて製造され、これらが十字状に交差するように配置される。絶縁板31(31a、31b)と絶縁板41は、隣接する鉄心のうち端面間、即ち、巻鉄心21と22の間、及び、巻鉄心23と24の間に配置される。
【0023】
ここで、図4を用いて下側絶縁材40の製造方法を説明する。図4において、下側絶縁材40は、ガラスエポキシ系FRP製の長方形の薄い絶縁板41と46を準備する。絶縁板41には、上側短辺42aの中央から下方向に延在するスリット43を形成する。同様に、絶縁板46は、下側短辺47bの中央から上方向に延在するスリット48を形成する。スリット43、48の上下方向の長さは、絶縁板41と絶縁板46の高さHの半分の長さとする。そして、絶縁板41と絶縁板46を図3に示すように直交するように位置付け、スリット43とスリット48が係合する位置にして矢印49a、49bに示す方向に絶縁板41と46を相対移動させる。接合させた後の形状は、図3Aのような上面視で十字状の形状となる。絶縁板41と絶縁板46は接着等の何らかの固定手段で相互に固定しても良いし、固定しない状態のままでも良い。さらに、絶縁板41を鋼材ベース50に固定することにより絶縁板41が絶縁板46から外れないような構成としても良い。
【0024】
再び図3Aに戻る。上側絶縁材30も下側絶縁材40と同様にFRP製であり、相互の板材にスリットを設けるようにして組み立てることができる。しかしながら、十字にクロスする板材をどのように組み合わせて十字にするかは任意である。図3Aで上側絶縁材30は、下側絶縁材40とは別の製造方法を使用する例を示している。即ち、1枚のFRP製の長方形状の絶縁板36の中央部分両側に、絶縁板36の半分の大きさの絶縁板31aと31bを左右方向から接着剤によって接合する。このように、いずれか任意の固定方法を用いて上面視で十字状の上側絶縁材30を形成する。
【0025】
上側絶縁材30の絶縁板31のうち、左半分31aは巻鉄心21と22の端面によって挟まれるように保持され、右半分31bは巻鉄心23と24の端面によって挟まれるように保持される。一方、絶縁板36のうちの前側半分36aは、巻鉄心21と23の側面によって挟まれるように保持され、後側半分36bは、巻鉄心22と24の側面によって挟まれるように保持される。上側絶縁材30は上締金具15(図1参照)に対して非固定状態で良く、隣接する巻鉄心21と22、23と24に挟まれることで上締金具15(図1参照)にて間接的に固定される。尚、ねじやボルト、その他の固定手段を用いて上側絶縁材30を上締金具15(図1参照)に固定しても良い。
【0026】
鋼材ベース50は、中実の部材にて形成するのではなく、合計12枚の小さな鋼鉄製のプレート51a~56a、51b~56b(図示されていない符号は、後述の図5Aを参照)を組み合わせて構成する。鋼材ベース50を用いることで、巻鉄心21、22の角部が自重によって垂れることを防止できる上に、組立工程においてコイル10の装着時の鉄心2の保持部材として利用できる。
【0027】
図3Bは、コイル10に貫通されない側の磁脚部に配置される絶縁材60、70と、巻鉄心21~24と絶縁材70を支持する鋼材ベース80の斜視図である。絶縁材60、70は、巻鉄心21~24のうち、コイル10が巻かれていない磁脚部の側面(巻鉄心が隣接しない解放する側面)に配置されるもので、上面視が十字状でなくT字状に形成される。上側絶縁材60を巻鉄心23、24(図1図2参照)の右側に配置する場合は、絶縁板61は巻鉄心23と24の隣接する端面間に配置される。また、絶縁板66は、露出する巻鉄心23、24の側面を覆うように設けられる側面板、又は、カバー材として機能する。下側絶縁材70も同様であり、巻鉄心23、24(図1図2参照)の積層方向に隣接する端面間に配置される絶縁板71と、巻鉄心23、24の側面を覆うように設けられる側面板(絶縁板76)により形成される。ここで、絶縁板66、76は、隣接する鉄心との隙間に設けられるものではないため、設置を省略することも可能である。また、外側に位置しているため、絶縁板66、76とは別材質にて製造しても良い。しかしながら、本実施例では絶縁板61と66、71と76を固定する理由からと、製造上の容易さから、耐熱性の要求から、絶縁板61、71と同一部材にて絶縁板66、76を製造した。
【0028】
下側絶縁材70は、鋼材ベース80によって自立するように固定される。鋼材ベース80は、L字状の基台87に6枚のプレート81~86を直交するように接続して構成する。鋼材ベース80を用いることにより、巻鉄心23、24(図1図2参照)の角部を良好に固定することができる。
【0029】
図5A図3Aで示した下側絶縁材40と鋼材ベース50の展開図である。下側絶縁材40は、絶縁板41と46が十字状に組み立てられた後に、鋼材ベース50に対して矢印59の方向に挿入され、図示しないボルトにて固定される。鋼材ベース50は、四角形の厚い平板による基板57の上に、直交方向に延在するようにプレート51a~56aと、51b~56bを固定したものである。基板57、プレート51a~56aと、51b~56bはいずれも鋼材が用いられ、それらは溶接にて接続される。
【0030】
プレート51a~56a、51b~56bの形状はおおよそ直角三角形であって、斜辺部分が直線でなく、巻鉄心21~24の下側角部の輪郭に沿って緩やかな曲面となるように形成される。プレート51a~56a、51b~56bは同一形状であるので、単一の部品を多数準備すれば良い。プレート51aと51bは、積層方向に対して絶縁板46の板厚に対応する隙間51cが形成されるように溶接される。同様にして残りのプレート52a~56aと52b~56bのそれぞれの配置後に、絶縁板46の板厚に対応する隙間52c~56cが形成される。隙間52c~56cの大きさは、絶縁板46を矢印59の方向に差し込むことができて、差し込んだ後にがたつきが生じない程度に設定される。
【0031】
プレート53aと54aは積層方向に絶縁板41の板厚分の隙間58aを有するように形成され、プレート53bと54bは積層方向に絶縁板41の板厚分の隙間58bを有するように形成される。これら隙間58aと隙間58bは、絶縁板41を矢印59の方向に差し込むことができて、差し込んだ後にがたつきが生じない程度に設定される。プレート53b、54bには、ボルト穴53d、54d(54dは図5Aでは見えない)が形成され、図示しないボルトをボルト穴53d、54dとボルト穴44を貫通させて、図示しないナットにて固定される。
【0032】
プレート51a~53aは積層方向に等間隔にて平行に並べられ、51b~53bは積層方向に等間隔にて平行に並べられる。同様に、プレート54a~56aは積層方向に等間隔にて平行に並べられ、54b~56bは積層方向に等間隔にて平行に並べられる。以上のように、鋼材ベース50は、1つの巻鉄心(例えば巻鉄心21)の一つの角部を保持するのに、3枚のプレート(巻鉄心21にはプレート51a~53a)を使用するだけで良いので、鋼材ベース50を中実の鋼材にて製造する方法に比べて、鋼材ベース50を軽量に形成できる。また、基台57に12枚のプレート51a~56a、51b~26bを溶接するので、鉄心2用の強固な自立用固定部材を容易に実現できる。
【0033】
図5B図3で示した下側絶縁材70と鋼材ベース80の展開図である。下側絶縁材70の絶縁板71の上部付近には、点線にて示すように絶縁板76の板厚に相当する分の突起部73が形成され、絶縁板76の上辺中央から下方向に形成されるスリット78と部分的に係合される。このように絶縁板71の一部(突起部73)と絶縁板の一部(スリット78)を嵌合させることによって、絶縁板71を鋼材ベース80にボルトねじ止めした際に、絶縁板76の上下方向の動きの制限をより確実に行うことができる。
【0034】
鋼材ベース80は、鋼材ベース50を並列方向に半分に切断した形状とほぼ同じ形状である。鋼材ベース50を半分に切断した形状との唯一の違いは、基台87が基板57を半分にしたような平板状ではなく、水平板87aと、鉛直方向に延在する鉛直板87bにて前方又は後方から見た形状がL字状に形成されることである。プレート81~86の鉛直方向に延びる辺(細長い面)と鉛直板87bの間には、絶縁板76の板厚分の隙間81a~86aが確保される。プレート81~83は積層方向に等間隔にて平行に並べられ、プレート84~86は積層方向に等間隔にて平行に並べられる。また、プレート83と84は積層方向に絶縁板71の板厚分だけ隔てて平行に並べられる。プレート83と84の隙間88には絶縁板71を矢印89の方向に差し込むことができ、プレート81~86と鉛直板87bとの間の隙間81a~86aには絶縁板76を矢印89の方向に差し込むことができる。プレート83、84には、ボルト穴83c、84c(84cは図5Bでは見えない)が形成され、図示しないボルトをボルト穴83c、84cとボルト穴74を貫通させて、図示しないナットにて固定することで、下側絶縁材70と鋼材ベース80が固定される。
【0035】
プレート81~86の鉛直する辺と鉛直板87bの間には、絶縁板76の板厚分の隙間81a~86aが形成される。これら隙間の間に絶縁板76を矢印89の方向に挿入することにより絶縁板76が鋼材ベース80にて保持される。このように、鋼材ベース80は巻鉄心23、24(又は21、22)を固定するのに用いられるが、下側絶縁材70の固定用部材としても用いることが可能となる。
【0036】
図6は上側絶縁材30、60と下側絶縁材40、70の材質の組み合わせ例を示す表である。図6において例1は図2図5にて示した実施例1とは異なる材質であり、上側絶縁材30、60として耐熱温度220℃の耐熱プレスボードを用い、下側絶縁材40、70として耐熱温度180℃のガラスエポキシ系FRPによる絶縁材を使用する。それぞれの板厚は、高さHが1~2m程度のアモルファス変圧器1の場合、例えば1cm程度である。本発明では例1の材質だけに限定されずに、絶縁板を他の不導材料で製造しても良い。例2では、上側絶縁材30、60として耐熱温度が非常に高い(例えば200℃を大きく超える)セラミック製とし、下側絶縁材40、70として耐熱温度180度のガラス基材エポキシ系FRPを用いるようにした。例2では、巻鉄心21~24の上部の温度上昇が特に激しい場合に有効である。尚、セラミックであっても、所定以上の強度を有することが重要であり、電路の開閉時にアモルファス変圧器1に強い衝撃を受けたような場合に、絶縁板が割れるようなことがないように十分考慮することが重要である。
【0037】
例3は、上側絶縁材30、60として耐熱温度B種(130℃)の合成樹脂とし、下側絶縁材40、70として耐熱温度E種(120度)の合成樹脂を用いるものである。アモルファス変圧器は、形状や、流れる電流量によって、巻鉄心の温度上昇が穏やかなものもある。その場合は、例3よりも耐熱温度がさらに低い合成樹脂(例えば耐熱クラスA種の許容最高温度105℃以上)を用いるようにしても良い。
【0038】
図6では3つの材料例を示したが、例示以外の耐熱温度の絶縁材、例示以外の他の材料による絶縁材の組み合わせとすることも可能である。例えば、ガラスフェノール系FRPを用いて絶縁材を形成することも可能である。尚、上側絶縁材30と下側絶縁材40の大部分は、コイル10の内側に配置されることになるので、所定の絶縁性と、所定の耐熱温度を満たすだけでなく、比誘電率が2.5~8程度の材料によって製造するようにすると一層好ましい。
【実施例0039】
次に、図7を用いて本発明の第2の実施例に係るアモルファス変圧器101を説明する。図7に示すアモルファス変圧器101は3相外鉄形である。ここでは、U相、V相、W相用の3つのコイル11~13が用いられる。コイル11~13を巻回するために、図7に示すような合計8つのアモルファス製の巻鉄心21~28を用いる。巻鉄心21と22、23と24、25と26、27と28は積層方向に端面が隣接するようにそれぞれ配置される。また、巻鉄心21、23、25、27は、並列方向に側面が所定の間隔にてそれぞれ隣接するように配置され、巻鉄心22、24、26、28は並列方向に側面が所定の間隔にてそれぞれ隣接するように配置される。尚、図7では図1の上締金具15と下締金具16に相当する締金具の図示は省略している。
【0040】
コイル11の内側には、4つの巻鉄心21~24の一方の磁脚部が配置され、それら磁脚部の間には上側絶縁材30と下側絶縁材40が配置される。下側絶縁材40は鋼材ベース50に固定される。同様にして、2つの巻鉄心23、24の他方の磁脚部と2つの巻鉄心25、26の一方の磁脚部がコイル12の内側に配置される。それら磁脚部の間には上側絶縁材30と下側絶縁材40が配置される。この下側絶縁材40は鋼材ベース50に固定される。さらに同様にして、2つの巻鉄心25、26の他方の磁脚部と2つの巻鉄心27、28の一方の磁脚部がコイル13の内側に配置される。それら磁脚部の間には上側絶縁材30と下側絶縁材40が配置される。この下側絶縁材40は鋼材ベース50に固定される。コイル11、12、13の内部に配置される上側絶縁材30と、下側絶縁材40は、図2図5で示したものと同一のものである。
【0041】
巻鉄心21、22のうちコイル11の外側に配置される2つの磁脚部間には、上側絶縁材60の絶縁板61と下側絶縁材71の絶縁板71(図7では見えない)が設けられる。下側絶縁材70は鋼材ベース80に固定される。同様に、巻鉄心27、28のうちコイル11の外側に配置される磁脚部間には、上側絶縁材60の絶縁板61と下側絶縁材70の絶縁板71が設けられる。下側絶縁材70は鋼材ベース80に固定される。
【0042】
以上のように構成することで、単相外鉄形のアモルファス変圧器1を製造するのに用いる共通部品、即ち、アモルファス製の鉄心と、絶縁材(30、40、60、70)、鋼材ベース(50、80)を用いて三相外鉄形のアモルファス変圧器101を製造することが可能となる。同様に単相外鉄形の変圧器1を製造するのに用いる共通部品を用いて、二相外鉄形のアモルファス変圧器を製造することも可能である。
【実施例0043】
図8は本発明の第3の実施例に係るアモルファス変圧器201の斜視図である。上側絶縁板260、261を除いて、その他の部分は図1図2で示したアモルファス変圧器1と同じ構成であり、同じ番号の符号を付している。即ち、図2にて示した上側絶縁材30の代わりに、上側絶縁板260、261を用いるようにした。上側絶縁板260は、巻鉄心21と22の端面によって挟まれるように保持され、上側絶縁板261は、巻鉄心23と24の端面によって挟まれるように保持される。第3の実施例では、隣接する巻鉄心21と23の上側部分の側面間、巻鉄心22と24の上側部分の側面間には絶縁板が設けられていない。しかしながら、図2の絶縁板36に相当する絶縁板を設けるように構成しても良い。
【0044】
上側絶縁板260、261は前方又は後方から見た側面視においてコの字形に形成される。このように上側絶縁板260、261を1枚の板で製作する場合は、巻鉄心21~24の図示しないラップ部の保護を兼ねることができるという効果が得られる。上側絶縁板260、261と下側絶縁材40、70の間にはそれぞれ距離Sの隙間が形成され、非接触状態に維持される。また、上側絶縁板260、261は非接触とされ、それらの間には、距離Sの隙間が形成される。尚、上側絶縁板260、261を連続する1枚の板にて一体で形成するように構成しても良い。このように上側絶縁板260、261と下側絶縁材40、70を別の材料にて製造することにより、それぞれの絶縁板に要求される耐熱温度を容易に満たすことが可能となる。
【0045】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上側絶縁材(30、60、260、261)の下端と下側絶縁材(40、70)の上端を非接触状態でなくて、接触状態にて構成するようにしても良い。また、絶縁部材(30と40、60と70)を、上側と下側の2分割でなくて、上下方向に3分割以上に形成して、それらの耐熱温度がそれぞれ異なるように絶縁材を選定しても良い。
【符号の説明】
【0046】
1 アモルファス変圧器
2 鉄心
10~13 コイル
15 上締金具
16 下締金具
21~28 巻鉄心
30 上側絶縁材
31、36 絶縁板
40 下側絶縁材
41、46 絶縁板
43、48 スリット
44 ボルト穴
50 鋼材ベース
51a~56a プレート
51b~56b プレート
51c~56c 隙間
53d ボルト穴
57 基板
58a、58b 隙間
60 (第2)上側絶縁材
61、66 絶縁板
69 隙間
70 (第2)下側絶縁材
71、76 絶縁板
73 突起
74 ボルト穴
78 スリット
80 鋼材ベース
81~86 プレート
81a~86a 隙間
83c、84c ボルト穴
87 基台
87a 水平板
87b 鉛直板
88 隙間
101、201 アモルファス変圧器
260、261 上側絶縁板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8