(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105009
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】車両、および、変速機用の誤り判定方法
(51)【国際特許分類】
B60W 20/50 20160101AFI20250703BHJP
F16H 61/12 20100101ALI20250703BHJP
F16H 63/50 20060101ALI20250703BHJP
F16H 59/44 20060101ALI20250703BHJP
F16H 59/74 20060101ALI20250703BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20250703BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20250703BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20250703BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20250703BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20250703BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20250703BHJP
【FI】
B60W20/50
F16H61/12
F16H63/50
F16H59/44
F16H59/74
B60K6/48 ZHV
B60K6/547
B60W10/08 900
B60W10/02 900
B60L15/20 K
B60L50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223256
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺井 昭平
(72)【発明者】
【氏名】佐野 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 克也
【テーマコード(参考)】
3D202
3J552
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB05
3D202BB08
3D202BB12
3D202BB16
3D202BB37
3D202BB64
3D202BB65
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3D202CC83
3D202CC87
3D202DD01
3D202DD18
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3D202DD39
3D202DD41
3D202EE26
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3D202FF13
3J552MA13
3J552NA08
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3J552NB05
3J552NB08
3J552PA18
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3J552RB02
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3J552TB02
3J552UA08
3J552VA32W
3J552VA76W
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BE05
5H125CA02
5H125DD05
5H125EE09
(57)【要約】
【課題】車両に搭載される部品点数を抑える。
【解決手段】一態様に係る車両は、走行駆動源である内燃エンジンおよび電動モータと、駆動輪と、変速機と、変速機状態検出器と、回転情報検出器と、処理回路を備えるコントローラと、を備え、処理回路は、変速機状態検出器から受信した状態情報が、入力軸と出力軸との間の動力伝達を遮断する変速機のニュートラル状態を示すニュートラル情報か否かを判定し、状態情報がニュートラル情報であると判定した後に、所定の判定用トルクを発生するように電動モータを制御し、回転情報検出器から受信した回転情報に基づき、ニュートラル情報に誤りがあるか否か判定し、ニュートラル情報に誤りがないと判定した場合、電動モータからの動力を内燃エンジンに伝達して内燃エンジンを始動させるエンジン始動制御を許可し、ニュートラル情報に誤りがあると判定した場合、エンジン始動制御を制限する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行駆動源である内燃エンジンおよび電動モータと、
駆動輪と、
前記内燃エンジンおよび前記電動モータからの動力が入力される入力軸、および、前記駆動輪に動力を出力する出力軸を有する変速機と、
前記変速機の状態に関連する状態情報を検出する変速機状態検出器と、
前記変速機状態検出器とは別に、前記入力軸と前記出力軸との相対回転に関連する回転情報を検出する回転情報検出器と、
処理回路を備えるコントローラと、を備え、
前記処理回路は、
前記変速機状態検出器から受信した前記状態情報が、前記入力軸と前記出力軸との間の動力伝達を遮断する前記変速機のニュートラル状態を示すニュートラル情報か否かを判定し、
前記状態情報が前記ニュートラル情報であると判定した後に、所定の判定用トルクを発生するように前記電動モータを制御し、
前記回転情報検出器から受信した前記回転情報に基づき、前記ニュートラル情報に誤りがあるか否か判定し、
前記ニュートラル情報に誤りがないと判定した場合、前記電動モータからの動力を前記内燃エンジンに伝達して前記内燃エンジンを始動させるエンジン始動制御を許可し、
前記ニュートラル情報に誤りがあると判定した場合、前記エンジン始動制御を制限するように構成されている、車両。
【請求項2】
前記エンジン始動制御は、所定の始動用トルクを発生するように前記電動モータを制御することを含み、
前記判定用トルクは、前記始動用トルクより小さい値に設定されている、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記処理回路は、前記判定用トルクを発生させる前記電動モータの制御を、前記電動モータから前記内燃エンジンへの動力伝達を遮断した状態で実行するように構成されている、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記処理回路は、前記車両が停車した状態で前記判定用トルクを発生するように前記電動モータを制御し、
前記回転情報は、前記入力軸の回転に関連する入力回転情報と、前記出力軸の回転に関連する出力回転情報とを含み、
前記処理回路は、前記誤りがあるか否か判定する際に、
前記出力回転情報に基づき前記出力軸が回転を開始したと判定した場合に、前記ニュートラル情報に誤りがあると判定し、
前記出力回転情報に基づき前記出力軸が回転を開始していないと判定し、且つ、前記入力回転情報に基づき前記入力軸が回転を開始したと判定した場合に、前記ニュートラル情報に誤りがないと判定するように構成されている、請求項1または2に記載の車両。
【請求項5】
前記回転情報は、前記入力軸の回転に関連する入力回転情報を含み、
前記処理回路は、前記誤りがあるか否か判定する際に、
前記判定用トルクを発生させる前記電動モータの制御を開始させた後の経過時間をカウントし、
前記入力回転情報に基づき前記入力軸が回転を開始したか否かを判定し、
前記入力軸が回転を開始したと判定されない状態で前記経過時間が所定の時間に到達した場合に、前記ニュートラル情報に誤りがあると判定するように構成されている、請求項1または2に記載の車両。
【請求項6】
前記処理回路は、前記誤りがあると判定した場合、前記電動モータによる前記判定用トルクの発生を停止させることにより前記エンジン始動制御を制限するように構成されている、請求項1または2に記載の車両。
【請求項7】
前記処理回路は、
前記内燃エンジンに対する始動要求を取得した場合に、前記状態情報が前記ニュートラル情報であるか否かを判定し、
前記誤りがないと判定した場合、前記エンジン始動制御を開始し、前記電動モータの発生トルクを、前記判定用トルクから所定の始動用トルクに上昇させるよう前記電動モータを制御するように構成されている、請求項1または2に記載の車両。
【請求項8】
前記車両は、前記内燃エンジンと前記入力軸との間の動力伝達経路を接続する接続状態と、前記動力伝達経路を切断する切断状態との間で切り替え可能なメインクラッチを備え、
前記処理回路は、
前記メインクラッチが前記接続状態にあるか前記切断状態にあるかを判定し、
前記メインクラッチが前記切断状態にあると判定し、且つ、前記状態情報が前記ニュートラル情報であると判定した場合、前記判定用トルクを発生するように前記電動モータを制御するように構成されている、請求項1または2に記載の車両。
【請求項9】
駆動源からの動力が入力される入力軸、および、駆動輪に動力を出力する出力軸を有する変速機用の誤り判定方法であって、処理回路によって、
前記変速機の状態を示す状態情報を取得し、
前記状態情報が、前記入力軸と前記駆動輪との間の動力伝達を遮断する前記変速機のニュートラル状態を示すニュートラル情報であるか否か判定し、
前記状態情報が前記ニュートラル情報であると判定した場合に、前記入力軸または前記出力軸に付与されるトルクによる前記入力軸と前記出力軸との相対回転に関連する回転情報を取得し、
前記回転情報に基づき、前記状態情報および前記回転情報のいずれかに誤りがあるか否か判定する、変速機用の誤り判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両、および、変速機用の誤り判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行駆動源として内燃エンジンおよび電動モータと、ギヤ変速機とを備えたハイブリッド車両が開示されている。内燃エンジンは、ISG(インテグレーテッド・スタータ・ジェネレータ)によって始動制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイブリッド車両などの各種車両において、部品点数は少ないことが望ましい。例えば特許文献1に開示のハイブリッド車両では、駆動用の電動モータとは別にエンジン始動用のモータが必要であったり、エンジン始動のためのセンサが必要であったりする。また、ハイブリッド車両に限らず各種車両において、搭載するセンサの数もできるだけ少なくすることが望ましい。
【0005】
そこで、本開示は、車両に搭載される部品点数を抑えることができる車両、および、変速機用の誤り判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両は、走行駆動源である内燃エンジンおよび電動モータと、駆動輪と、前記内燃エンジンおよび前記電動モータからの動力が入力される入力軸、および、前記駆動輪に動力を出力する出力軸を有する変速機と、前記変速機の状態に関連する状態情報を検出する変速機状態検出器と、前記変速機状態検出器とは別に、前記入力軸と前記出力軸との相対回転に関連する回転情報を検出する回転情報検出器と、処理回路を備えるコントローラと、を備え、前記処理回路は、前記変速機状態検出器から受信した前記状態情報が、前記入力軸と前記出力軸との間の動力伝達を遮断する前記変速機のニュートラル状態を示すニュートラル情報か否かを判定し、前記状態情報が前記ニュートラル情報であると判定した後に、所定の判定用トルクを発生するように前記電動モータを制御し、前記回転情報検出器から受信した前記回転情報に基づき、前記ニュートラル情報に誤りがあるか否か判定し、前記ニュートラル情報に誤りがないと判定した場合、前記電動モータからの動力を前記内燃エンジンに伝達して前記内燃エンジンを始動させるエンジン始動制御を許可し、前記ニュートラル情報に誤りがあると判定した場合、前記エンジン始動制御を制限するように構成されている。
【0007】
本開示の一態様に係る変速機用の誤り判定方法は、駆動源からの動力が入力される入力軸、および、駆動輪に動力を出力する出力軸を有する変速機用の誤り判定方法であって、処理回路によって、前記変速機の状態を示す状態情報を取得し、前記状態情報が、前記入力軸と前記駆動輪との間の動力伝達を遮断する前記変速機のニュートラル状態を示すニュートラル情報であるか否か判定し、前記状態情報が前記ニュートラル情報であると判定した場合に、前記入力軸または前記出力軸に付与されるトルクによる前記入力軸と前記出力軸との相対回転に関連する回転情報を取得し、前記回転情報に基づき、前記状態情報および前記回転情報のいずれかに誤りがあるか否か判定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車両に搭載される部品点数を抑えることができる車両、および、変速機用の誤り判定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】エンジン始動関連制御の流れを示すフローチャートである。
【
図3】エンジン始動関連制御の一部である誤検出判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】エンジン始動関連制御の一部であるエンジン始動制御の流れを示すフローチャートである。
【
図5】エンジン始動関連制御時の各種値の時間的推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。
【0011】
<車両の構成>
図1は、一実施の形態に係る車両1の模式図である。本実施の形態において、車両1は、駆動輪9である後輪と従動輪である前輪とを備えた自動二輪車である。なお、車両1は、三輪車でも四輪車であってもよい。
【0012】
本実施形態で説明される車両1は、ハイブリッド車両である。車両1は、駆動輪9を駆動させるためのトルクを発生させる2つの走行駆動源として、内燃エンジン(以下、単に「エンジン」と称する。)2と電動モータ3とを備える。本実施形態では、車両1は、3つの異なる走行モードに切り替え可能に構成される。具体的には、車両1は、エンジン2のみで駆動輪9を回転させるEGモード、電動モータ3のみで駆動輪9を回転させるEVモード、エンジン2および電動モータ3の両方で駆動輪9を回転させるHEVモードに選択的に切り替え可能に構成される。
【0013】
車両1は、変速機4を備える。変速機4は、走行駆動源から出力された回転動力を変速する。本実施形態では、変速機4は、複数の変速比を選択可能に構成される。本実施形態では、変速機4は、常時噛合い式の変速機が用いられる。変速機4は、入力軸5、出力軸6、変速比の異なる複数組の変速ギヤ対7を有する。入力軸5および出力軸6は、互いに平行である。入力軸5には、エンジン2および電動モータ3から動力が入力される。出力軸6は、出力伝達機構8を介して駆動輪9に動力を伝達する。例えば出力伝達機構8は、ドライブチェーン、ドライブベルト、ドライブシャフト等である。
【0014】
変速機4は、ドッグクラッチ式のギヤ変速機である。各変速ギヤ対7は、入力軸5に支持されたギヤ7aと、出力軸6に支持されたギヤ7bとを含む。本実施形態では、各変速ギヤ対7の2つのギヤ7a,7bは、互いに常時噛み合っている。入力軸5と同軸のギヤ7aは、入力軸5と共回転するように入力軸5に嵌合されている。出力軸6に同軸のギヤ7bは、出力軸6に対して空回りするように回転自在に出力軸6に挿入されている。出力軸6には、複数のドッグリング11が出力軸6と共回転するとともに、軸方向に移動可能に出力軸6に嵌合している。
【0015】
各ドッグリング11は、シフトフォーク12によりシフトドラム13に接続されている。変速機4は、シフトドラム13の回転によりシフトフォーク12が出力軸6に沿って移動することで、複数のギヤ7bのうちの1つのギヤ7bがドッグリング11と係合可能に構成されている。具体的には、ドッグリング11における出力軸6の延在方向に突出するドッグが、ギヤ7bの係合孔に入り込む。こうしてドッグリング11と係合したギヤ7bは、出力軸6と共回転するようになり、当該ギヤ7bを含む変速ギヤ対7が動力伝達経路として選択される。
【0016】
また各ドッグリング11は、シフトドラム13の回転によりシフトフォーク12が出力軸6に沿って移動することで、すべてのギヤ7bから離隔するニュートラル位置をとることが可能である(
図1参照)。このように変速機4は、すべてのドッグリング11がニュートラル位置にそれぞれ達することで、ニュートラル状態となる。つまり、すべてのドッグリング11のドッグがギヤ7bとの係合が解除されることによって変速機4は、入力軸5と出力軸6との間の動力の伝達が遮断された状態となる。ニュートラル状態は、複数組の変速ギヤ対7のいずれも選択されていない状態である。言い換えればニュートラル状態は、いずれのドッグもギヤと係合していない状態である。ドッグリング11は、後述のシフトアクチュエータ36により発生するトルクによって出力軸6に沿って移動する。
【0017】
エンジン2と変速機4との間には、メインクラッチ21が配置されている。メインクラッチ21は、エンジン2と変速機4の入力軸5との間の動力伝達経路を接続する接続状態と、当該動力伝達経路を切断する切断状態との間で切り替え可能である。メインクラッチ21は、例えば多板クラッチなどの摩擦クラッチである。メインクラッチ21は、クラッチアクチュエータ22によって動作する。
【0018】
クラッチ21は、走行モードを切り替えるモード切替装置として機能する。具体的には、クラッチ21が切断状態で、電動モータ3を駆動させることでEVモードでの走行が可能となる。またクラッチ21が接続状態で、エンジン2を駆動させ且つ電動モータ3を停止すると、EGモードとなる。またクラッチ21が接続状態で、エンジン2を駆動させ且つ電動モータ3を駆動すると、HEVモードとなる。
【0019】
またエンジン停止状態でクラッチ21を接続状態とすることで、電動モータ3からの回転動力を、クランクシャフト2aに伝達することができる。これによって電動モータ3によってクランクシャフト2aを回転させて、エンジン始動を実現することができる。したがって本実施形態では、車両1には、駆動用の電動モータ3とは別に、始動専用のスタータモータまたは始動および充電専用のスタータジェネレータモータは搭載されていない。
【0020】
車両1は、コントローラ30を備える。コントローラ30は、1つの制御ユニットであってもよいし、複数の制御ユニットに分散されたものであってもよい。コントローラ30は、ハードウェア面においては、少なくとも1つのCPU30a、少なくとも1つのメモリ30bおよびI/Oインターフェース等を有する。少なくとも1つのメモリ30bは、揮発性メモリ、不揮発性メモリを含む。CPU30aおよびメモリ30bは、処理回路の一例である。
【0021】
コントローラ30には、変速機状態検出器31、回転情報検出器33、クラッチ状態検出器34、操作検出器35が電気的に接続されている。
【0022】
変速機状態検出器31は、変速機4の状態に関連する状態情報を検出する。より詳細には、変速機状態検出器31は、変速機4の状態と相関性がある情報であって、変速機4の状態推定に利用できる情報を検出する。具体的には、変速機状態検出器31は、複数組の変速ギヤ対7の選択状態を示す状態情報を検出する。言い換えれば、変速機状態検出器31は、複数の変速段の中からいずれの変速段が選択された状態かを検出する。
【0023】
複数の変速段は、ニュートラル段および複数の走行用変速段を含む。ニュートラル段が選択された状態は、前述のニュートラル状態である。走行用変速段が選択された状態は、複数組の変速ギヤ対7の中から走行用変速段に対応する変速ギヤ対7が動力伝達経路として選択された状態である。本実施形態では、複数の走行用変速段は、1速から6速までの変速段を含むが、変速段数は6未満でもよいし、6より多くてもよい。
【0024】
変速機状態検出器31は、入力軸5および出力軸6の回転状態とは異なるパラメータを検出する。変速機状態検出器31は、少なくとも1つのセンサを含んでもよい。本実施形態では、変速機状態検出器31は、シフトドラム13の回転角度を検出するギヤポジションセンサである。ギヤポジションセンサは、ロータリエンコーダやホールICセンサを用いた角度センサによって実現されてもよい。シフトドラム13の回転角度と変速段とが互いに対応しているため、シフトドラム13の回転角度から、複数の変速段のいずれが選択されているかが特定可能である。変速機4の状態に関連する状態情報は、回転情報検出器33により検出される後述の回転情報とは異なる情報であって、且つ、ニュートラル状態であるかどうかを判別可能にする情報を含んでいればよい。
【0025】
変速に関連する変速機4、変速機状態検出器31およびシフトアクチュエータ36を備える変速システムが構成されている。
【0026】
回転情報検出器33は、変速機4の入力軸5と出力軸6との相対回転に関連する回転情報を検出する。より詳細には、回転情報検出器33は、前記相対回転と相関性がある情報であって、相対回転の推定、すなわち入力軸5および出力軸6の一方に対して他方が回転しているかの推定に利用できる情報を検出する。例えば、入力軸5と出力軸6との一方の軸の回転が停止している場合は、他方の軸の回転に関する情報を取得してもよい。
【0027】
回転情報検出器33は、少なくとも1つのセンサを含んでもよい。本実施形態では、回転情報検出器33は、入力軸5の回転に関連する入力回転情報を検出する入力回転センサ32aと、出力軸6の回転に関連する出力回転情報を検出する出力回転センサ32bとを含む。つまり、本実施形態では、回転情報は、入力回転情報と出力回転情報とを含む。入力回転情報は、少なくとも入力軸5が回転しているか否かを示す情報を含んでいればよい。出力回転情報は、少なくとも出力軸6が回転しているか否かを示す情報を含んでいればよい。
【0028】
本実施形態では、入力回転センサ32aは、入力軸5の回転速度または入力軸5と連動して回転する回転体の回転速度を入力回転情報として検出する。例えば入力回転センサ32aは、入力軸5の回転にチェーンなどを介して連動して回転する電動モータ3の回転数を検出するモータ回転数センサである。例えば入力回転センサ32aは、電動モータ3のハウジング内に配置される。ただし、入力回転センサ32aは、モータ回転数センサに限定されず、入力軸5の回転と相関性がある情報を取得するセンサであればよい。例えば入力軸5の回転数を直接検出するものであってもよい。
【0029】
本実施形態では、出力回転センサ32bは、出力軸6の回転速度または出力軸6と連動して回転する回転体の回転速度を出力回転情報として検出する。例えば出力回転センサ32bは、出力軸6の回転に出力伝達機構8を介して連動して回転する駆動輪9の回転速度を検出する車輪回転速度センサである。ただし、出力回転センサ32bは、車輪回転速度センサに限定されず、出力軸の回転と相関性がある情報を取得するセンサであればよい。例えば出力軸6の回転(例えば回転速度)を直接検出するものであってもよい。また例えば車両位置の移動、走行速度、走行加速度を推測するGPSセンサやジャイロセンサ等であってもよい。
【0030】
クラッチ状態検出器34は、メインクラッチ21の状態を検出する。例えばクラッチ状態検出器34は、メインクラッチ21が接続状態であるか切断状態であるかを示すクラッチ情報を検出する。クラッチ状態検出器34は、少なくとも1つのセンサを含んでもよい。クラッチ状態検出器34は、クラッチアクチュエータ22の油圧室の圧力を検出する圧力センサによって実現される。本実施形態では、圧力が付与されていない自然状態であると、切断状態であると判断する。言い換えると、クラッチ状態検出器34は、クラッチ油圧室の圧力が、スプリング圧よりも低い値となる場合に、切断状態であると判断する。
【0031】
操作検出器35は、運転者によって操作される操作子の動作を検出する。操作検出器35は、少なくとも1つの操作子センサを含む。操作子センサは、運転者の操作するアクセル操作子の操作量を検出するアクセルセンサ、運転者の操作するブレーキ操作子の操作量を検出するブレーキセンサ、変速操作子に対する運転者の変速操作を検出するシフトセンサ、モード切替操作子に対する運転者の走行モード切替操作を検出するモード切替センサなどによって実現される。そのほか、操作子センサは、スタンド操作を検出するスタンドセンサなど、他の既存の操作子の操作量を検出するセンサであってもよい。
【0032】
コントローラ30には、エンジン2(より詳しくは、スロットル装置、点火プラグ、燃料噴射装置)、電動モータ3、クラッチアクチュエータ22、シフトアクチュエータ36、報知器37が電気的に接続されている。コントローラ30のCPU30aは、変速機状態検出器31、回転情報検出器33、クラッチ状態検出器34、操作検出器35などの各種検出器から受信した情報に基づいて、エンジン2、電動モータ3、クラッチアクチュエータ22、シフトアクチュエータ36、報知器37を制御する。
【0033】
例えばCPU30aは、車両1の走行モードに応じて、エンジン2、電動モータ3、クラッチアクチュエータ22およびシフトアクチュエータ36を制御する。例えばCPU30aは、運転者の走行モード切替操作を検出する前述のモード切替センサから受信した情報に基づいて、車両1の走行モードを、EVモードとHEVモードとEGモードとの間で切り替える。例えばCPU30aは、運転者の走行モード切替操作がない場合でも、車両1が備える各種センサから受信した情報に基づいて、車両1の走行モードを切り替えることがある。
【0034】
クラッチアクチュエータ22は、コントローラ30により制御されて、メインクラッチ21を動作させる。例えば、メインクラッチ21を動作させる。すなわち、具体的には、クラッチアクチュエータ22は、メインクラッチ21を接続状態にしたり、切断状態にしたりする。
【0035】
クラッチアクチュエータ22は、例えば油圧アクチュエータであり、油(クラッチオイルとも称し得る)を収容する油圧室と、当該油圧室の油圧によって駆動するピストンと、当該油圧室の油圧を調整するソレノイドバルブとを含む。
【0036】
本実施形態では、油圧を調整してクラッチ21の摩擦力を調整することで、動力伝達トルクを可変とすることができる。クラッチアクチュエータ22の油圧を段階的に増加または減少させることで、動力伝達トルクを段階的に変化できる。本実施形態では、油圧が与えられていない自然状態では、スプリングによって、クラッチ21が含む互いに隣接する摩擦板が離隔されて、エンジン2から入力軸5への動力伝達が阻止される。コントローラ30によって、油圧が徐々に増加することで、スプリングに抗して隣接する摩擦板同士が押し付けられることで、エンジン2側の回転部材と、入力軸5との間で伝達可能なトルクが増加する。
【0037】
シフトアクチュエータ36は、コントローラ30により制御されて、シフトドラム13を回転駆動させてドッグリング11を移動させる。シフトアクチュエータ36は、例えば電動モータである。
【0038】
シフトアクチュエータ36は、運転者の変速操作に応じて、シフトドラム13を回転駆動させて、変速機4の状態を変更する。具体的には、操作検出器35が含むシフトセンサが、変速操作子に対する運転者の変速操作を検出する。コントローラ30は、シフトセンサから送られた検出情報に基づき、シフトアクチュエータ36を制御し、変速機4の状態を変更する。
【0039】
例えば運転者が所望の変速段(すなわち変速比)を選択する変速操作を行うと、その変速段に対応するシフトセンサの検出情報がコントローラ30に送られ、コントローラ30は、当該検出情報が示す変速段が選択されるようシフトアクチュエータ36を制御する。
【0040】
例えば運転者がニュートラル段を選択する変速操作を行うと、ニュートラル段に対応するシフトセンサの検出情報がコントローラ30に送られ、コントローラ30は、変速機4がニュートラル状態になるようシフトアクチュエータ36を制御する。コントローラ30は、所定の条件が満たされた場合、運転者の変速操作がなくても変速機4がニュートラル状態となるようにシフトアクチュエータ36を制御することがある。
【0041】
例えば運転者がニュートラル段を選択する変速操作を行うと、ニュートラル段に対応するシフトセンサの検出情報がコントローラ30に送られ、コントローラ30は、変速機4がニュートラル状態になるようシフトアクチュエータ36を制御する。コントローラ30は、所定の条件が満たされた場合、運転者の変速操作がなくても変速機4がニュートラル状態となるようにシフトアクチュエータ36を制御することがある。
【0042】
報知器37は、後述のエンジン始動制御が開始されないことを運転者に報知する機器である。具体的には、報知器37は、エンジン始動制御が開始されないことを示すエンジン始動エラー情報を出力するように構成されている。報知器37は、車両1の計器盤の一部であり得る。本実施形態では、報知器37は、画像情報としてのエンジン始動エラー情報が表示されるディスプレイである。
【0043】
<車両停車時のエンジン始動関連制御>
図2は、処理回路によるエンジン始動関連制御の流れを示すフローチャートである。エンジン始動関連制御は、車両1が停車状態にあるときにエンジン2を始動させるための制御である。
図3は、エンジン始動関連制御の一部である誤検出判定処理の流れを示すフローチャートである。
図4は、エンジン始動関連制御の一部であるエンジン始動制御の流れを示すフローチャートである。エンジン始動関連制御は、メモリ30bに記憶されたエンジン始動関連プログラムをCPU30aが実行することによって行われる。エンジン始動関連プログラムには、誤検出判定処理を実行するための誤検出判定プログラムおよびエンジン始動制御を実行するためのエンジン始動制御プログラムが含まれる。
【0044】
図5は、エンジン始動関連制御時の各種値の時間的推移を示すグラフである。
図5には、電動モータの発生トルクであるモータトルクを示すグラフ、入力軸5の回転速度を示すグラフ、出力軸6の回転速度を示すグラフ、メインクラッチ21の締結度であるクラッチ締結度を示すグラフ、および、クランクシャフト2aの回転速度を示すグラフが、上から順に示されている。
【0045】
入力軸5、出力軸6、クランクシャフト2aの各軸の回転速度は、単位時間に対する物体が回転する速さである。例えば回転速度は、単位時間に進む角度(すなわち角速度)で表されてもよいし、単位時間に回転する回数で表されてもよい。
【0046】
また、
図5のグラフにおいて、メインクラッチ21の締結度は、エンジン2と変速機4との間の動力の伝達度合いに対応するパラメータである。本実施形態では、クラッチアクチュエータ22は、油圧アクチュエータであるため、メインクラッチ21の締結度は、油圧室の油圧に対応し得る。例えば油圧が予め設定された最小圧(以下、「開放相当圧力」と称する)のとき、メインクラッチ21の締結度が0%であり、エンジン2のクランクシャフト2aと入力軸5の一方から他方に動力は伝達されないメインクラッチ21の切断状態である。そして、油圧が開放相当圧力から上昇するにしたがってクラッチ締結度も上昇する。油圧が予め設定された最大圧(以下、「締結相当圧力」と称する)であるとき、または、当該締結相当圧力以上であるとき、メインクラッチ21の締結度が100%であり、エンジン2のクランクシャフト2aと入力軸5の一方から他方に動力が完全に伝達されるメインクラッチ21の締結状態である。
【0047】
以下、
図2に示すエンジン始動関連制御の流れを、
図3,4,5を適宜参照しながら説明する。
【0048】
CPU30aは、予め定められたエンジン始動条件が満たされたと判定した場合に、
図2のエンジン始動関連制御を開始する。例えば、エンジン始動条件は、運転者の操作または車両の走行状態によって、走行モードとして、HEVモードまたはEGモードが選択されたという条件を含んでもよい。また、例えばエンジン始動条件は、車両1の状態が、電動モータ3に供給する電力を蓄えるバッテリの残量が所定値以下に減少するなど、EVモードの継続が困難な状態となったという条件であってもよい。
【0049】
CPU30aは、エンジン始動条件が満たされたと判定すると、エンジン始動関連制御を開始する。エンジン始動関連制御では、出力回転センサ32bから受信した出力回転情報に基づいて、車両1が停車状態であるか否かを判定する(ステップS1)。
【0050】
CPU30aは、車両1が停車状態でないと判定した場合(ステップS1:No)、CPU30aは、車両状態がエンジン始動を許可できない状態にあると判定し、後述のステップS7のエンジン始動エラーの表示に移行する。
【0051】
CPU30aは、車両1が停車状態であると判定した場合(ステップS1:Yes)、CPU30aは、クラッチ状態検出器34から受信したクラッチ情報に基づいて、メインクラッチ21が切断状態であるか否かを判定する(ステップS2)。なお、CPU30aは、コントローラ30からクラッチアクチュエータ22に対して、メインクラッチ21を切断状態にするための指令を送った場合、当該指令によりメインクラッチ21が切断状態にあると推定してもよい。
【0052】
CPU30aは、メインクラッチ21が切断状態でないと判定した場合(ステップS2:No)、CPU30aは、車両状態がエンジン始動を許可できない状態にあると判定し、後述のステップS7のエンジン始動エラーの表示に移行する。なお、CPU30aは、メインクラッチ21が切断状態でないと判定した場合に、メインクラッチ21を切断状態に移行するようクラッチアクチュエータ22を制御してもよい。メインクラッチ21を切断状態に移行できた場合には、ステップS3に移行してもよい。メインクラッチ21を切断状態に移行することができない、または、メインクラッチ21を切断状態に移行する制御を許可できない場合に、ステップS7に移行してもよい。
【0053】
CPU30aは、メインクラッチ21が切断状態であると判定した場合(ステップS2:Yes)、CPU30aは、変速機4がニュートラル状態か否かを判定する。具体的には、CPU30aは、変速機状態検出器31から受信した状態情報がニュートラル情報か否かを判定する(ステップS3)。
【0054】
状態情報がニュートラル情報でないと判定した場合(ステップS3:No)、CPU30aは、車両状態がエンジン始動を許可できない状態にあると判定し、後述のステップS7のエンジン始動エラーの表示に移行する。なお、CPU30aは、状態情報がニュートラル情報でないと判定した場合に、変速機4をニュートラル状態にするようシフトアクチュエータ36を制御してもよい。シフトアクチュエータ36に変速機4をニュートラル状態にするための指令値を送った場合、または、当該指令値を送った後に変速機状態検出器31からニュートラル情報を受信した場合には、ステップS4に移行してもよい。変速機4をニュートラル状態にできない、または、変速機4をニュートラル状態にする制御を許可できない場合に、ステップS7に移行してもよい。
【0055】
状態情報がニュートラル情報であると判定した場合(ステップS3:Yes)、CPU30aは、誤検出判定処理を実行する(ステップS4)。誤検出判定処理は、回転情報検出器33から受信した回転情報に基づき、変速機状態検出器31または回転情報検出器33から受信した情報に誤りがあるか否か判定するための処理である。より詳しくは、誤検出判定処理は、変速機状態検出器31の検出結果とは別に、変速機4がニュートラル状態であるか否かの判定を行う処理である。
【0056】
図3に示すように、誤検出判定処理では、まずCPU30aは、所定の判定用トルクT1を発生するように電動モータ3を制御する(ステップS11)。判定用トルクT1は、仮に変速機4がニュートラル状態にない場合、つまりステップS3で取得したニュートラル情報に誤りがあった場合でも、運転者へ極力影響を与えないよう微小なトルクに設定されている。
【0057】
図5のモータトルクのグラフに示すように、状態情報がニュートラル情報であると判定された誤検出判定処理の開始時(t=t1)に、モータトルクは判定用トルクT1となる。
図5の入力軸回転速度のグラフに示すように、変速機4がニュートラル状態にある場合、誤検出判定処理の開始時点(t=t1)から終了時点(t=t2)までの間、電動モータ3で発生する判定用トルクT1によって、変速機4の入力軸5の回転速度が上昇する。
【0058】
判定用トルクT1は、後述の始動用トルクT2より小さい値に設定されている。本実施形態では、メインクラッチ21が切断状態にあることを前提とした制御であり、判定用トルクT1によってエンジン2のクランクシャフト2aを回転させる必要はない。このため、判定用トルクT1は、エンジン停止状態のクランクシャフト2aを回転させるために必要なトルクよりも低い値に設定されていることが好ましい。
【0059】
また判定用トルクT1は、変速機4がニュートラル状態である場合には、電動モータ3から入力軸5までの動力伝達経路における歯車対の伝達抵抗力や慣性力に抗して入力軸5を回転させることができる大きさのトルクに設定される。また判定用トルクT1は、変速機4が非ニュートラル状態であれば、変速機4や駆動輪9の伝達抵抗力で入力軸5の回転が阻止される大きさのトルクに設定されてもよい。また判定用トルクT1は、運転者がブレーキ操作子を操作することに起因する制動トルクよりも小さいトルクに設定されてもよい。例えば判定用トルクT1は、入力軸5に与えられる値に換算して20Nm以下、好ましくは10Nm以下に設定されてもよい。判定用トルクT1は、時間経過に伴い変動してもよい。また判定用トルクT1は、クラッチ内に供給されるクラッチオイルの温度に応じて異なるように設定されてもよい。具体的には、クラッチ状態検出器34は、クラッチオイルの温度を検出する温度センサを含んでもよく、CPU30aは、温度センサに検出されたクラッチオイルの温度に基づいて、判定用トルクT1を設定してもよい。この場合、クラッチオイルの温度が低いほど大きくなるよう判定用トルクT1を設定してもよい。
【0060】
また判定用トルクT1の付与期間(以下、トルク付与期間と称する)が予め定められていてもよい。この場合、トルク付与期間は、仮に変速機4がニュートラル状態にない場合であっても車両への影響が少ない期間に設定されてもよい。例えばトルク付与期間は、判定用トルクT1の付与によって入力軸5が一回転よりも少ない回転角度を回転するような期間に設定されてもよい。言い換えると、トルク付与期間は、仮にメインクラッチ21が接続状態で判定用トルクT1の付与によって入力軸5が回転した場合に、クランクシャフト2aが一回転よりも少ない回転角度を回転するような期間に設定されてもよい。またトルク付与期間は、仮に変速機4がニュートラル状態にないときに判定用トルクT1の付与によって入力軸5が回転した場合に、入力回転センサ32aや出力回転センサ32bが検出可能な最小角度範囲を超えて角変位するような期間に設定されてもよい。例えばトルク付与期間は、入力軸5の角速度が10.5rad/sになるまでの時間に設定されてもよい。入力軸5の回転数が100rpmに達するまで判定用トルクT1を付与してもよい。またトルク付与期間は、入力軸5の角速度が10.5rad/sに達するであろう時間、たとえば50ミリ秒以下に設定されてもよい。
【0061】
同様に、判定用トルクT1が付与されることで入力軸5が回転する角速度や角加速度は、仮に変速機4がニュートラル状態にない場合であっても影響が少ない条件に設定されてもよい。判定用トルクT1の付与によって入力軸5が回転する角速度や角加速度は、後述の始動用トルクT2の付与によって入力軸5が回転する角速度や角加速度より小さい値に設定されている。
【0062】
図3に戻って、CPU30aは、回転情報検出器33から受信した出力回転情報に基づいて、出力軸6が回転を開始したか、すなわち出力軸6に連動して回転する駆動輪9が回転を開始したか否かを判定する(ステップS12)。駆動輪9が回転を開始したか否かは、出力回転センサ32bの検出値が、所定の出力判定用閾値R1を超えたか否かを判定することにより実行されてもよい(
図5の出力軸回転速度のグラフの二点鎖線参照)。例えばCPU30aは、駆動輪9が所定角度以上回転したかを判定してもよいし、駆動輪9が所定角速度または所定角加速度以上で回転したかを判定してもよい。
【0063】
例えば、上述する所定角度は、90度以下、より好ましくは30度、更に好ましくは15度以下に設定されることが好ましい。これによって誤判定処理における車体の移動を抑制することができる。前記所定角度は、出力回転センサ32bの検出可能な最小角度範囲を超えた角度に設定されてもよい。例えば前記所定角度は、出力回転センサ32bの検出可能な最小角度範囲の2倍以上に設定されてもよい。これによって車両に跨る運転者の姿勢変化に起因する誤検出を防ぐことができる。
【0064】
CPU30aは、判定用トルクT1を発生させる電動モータ3の制御を開始させた後の経過時間をカウントしている。CPU30aは、駆動輪9が回転を開始していないと判定した場合(ステップS12:No)、当該経過時間が所定の時間に到達したか否か判定する(ステップS13)。経過時間は、判定用トルクT1を発生させる制御の開始時点からの経過時間であってもよいし、当該開始時点より後の所定の時点からの経過時間でもよい。
【0065】
所定の時間は、上述するトルク付与期間が予め設定されている場合、トルク付与期間と同じ期間に設定されてもよいし、トルク付与期間よりも長い期間に設定されていてもよい。所定の時間は、電動モータ3の回転が阻止されたとしても電動モータ3の損傷を防ぐ時間に設定されることが好ましい。具体的には、電動モータ3に過電流が流れることによる損傷を防ぐ時間に設定されてもよい。
【0066】
また、CPU30aは、入力回転情報に基づき入力軸5が回転状態か否か判定する(ステップS14)。入力軸5が回転状態か否かは、入力回転センサ32aの検出値が、所定の入力判定用閾値R2以上であるか否かを判定することにより実行されてもよい(
図5の入力軸回転速度のグラフ参照)。具体的には、CPU30aは、入力軸5の回転速度が、所定の入力判定用閾値R2以上であるか否か判定する。入力判定用閾値R2は、電動モータ3から伝達される判定用トルクT1により超え得る入力軸5の回転速度に設定されている。入力判定用閾値R2は、入力軸5の角速度で設定されていてもよいし、回転数で設定されていてもよい。ステップS14では入力軸5が回転状態か否かを判定できればよいので、入力判定用閾値R2は、0を超える値であればよく、好ましくは入力回転センサ32aが検出可能な最小角度範囲の2倍以上に設定されてもよい。これによって車両に跨る運転者の姿勢変化に起因する誤検出を防ぐことができる。
【0067】
経過時間が所定の時間に到達する前に(ステップS13:No)、入力軸5の回転速度が所定の入力判定用閾値R2に到達していない場合(ステップS14:No)、CPU30aは、ステップS12の駆動輪9の回転状態の監視、および、ステップS14の入力軸5の回転状態の監視を継続する。例えばステップS13に設定される所定の時間は、2000ミリ秒に設定される。また例えば、ステップS14では、変速機4において入力軸5が、例えば駆動輪に対するブレーキなどにより回転不能状態にある出力軸6と接続されていることによって、入力軸5が回転することを妨げられた状態にあるか否かを判別できればよい。このため、入力判定用閾値R2は、比較的小さい値に設定される。具体的には、入力判定用閾値R2は、入力軸5の角速度が10.5rad/s、言い換えると入力軸5の回転数が100rpm以下に設定される。
【0068】
入力軸5の回転速度が所定の入力判定用閾値R2以上であると判定した場合(ステップS14:Yes)、CPU30aは、ニュートラル情報に誤りがないと判定し(ステップS15)、誤検出判定処理を終了する。
【0069】
CPU30aは、駆動輪9が回転を開始したと判定した場合(ステップS12:Yes)、または、入力軸5の回転速度が入力判定用閾値R2に到達することなく、経過時間が所定の時間に到達したと判定した場合(ステップS13:Yes)、CPU30aは、ニュートラル情報に誤りがあると判定し(ステップS16)、電動モータ3による判定用トルクT1の発生を停止させ(ステップS17、
図5のモータトルクのグラフの二点鎖線参照)、誤検出判定処理を終了する。
【0070】
ステップS17で駆動輪9が回転を開始したと判定した場合に電動モータ3による判定用トルクT1の発生を停止させることにより、判定用トルクT1の発生によって車両1が過剰に移動することを防ぐことができる。例えば、トルク付与期間が予め設定されている場合、判定用トルクT1の付与する期間が予め設定されたトルク付与期間に到達する前に駆動輪9の回転を開始したと判定すると、電動モータ3を停止させる。これによって車両の移動を速やかに抑えることができる。
【0071】
またステップS17で駆動輪9の回転の開始を判定した場合、CPU30aは、電動モータ3やブレーキ装置を用いて制動トルクを発生させてもよい。これによって車両の慣性移動を抑制して、車両の移動をさらに抑えることができる。
【0072】
ステップS13でYesとなるケースとしては、例えば、変速機4がニュートラル状態にない状態で、運転者のブレーキ操作子に対する操作によって駆動輪9にブレーキがかかっており、そのブレーキ力が出力軸6から入力軸5に作用しているケースが例示される。
【0073】
図2に戻って、ステップS4の誤検出判定処理の結果、ニュートラル情報に誤りがないと判定されると(ステップS5:Yes)、CPU30aは、電動モータ3からの動力をエンジン2に伝達してエンジン2を始動させるエンジン始動制御を許可し開始する(ステップS6)。
【0074】
ステップS4の誤検出判定処理の結果、ニュートラル情報に誤りがあると判定されると(ステップS5:No)、CPU30aは、報知器37を用いてエンジン始動エラー情報を出力する(ステップS7)。具体的には、CPU30aは、報知器37であるディスプレイに、エンジン始動エンジン始動エラー情報を表示する。ステップS7の後、エンジン始動制御に移行することなく、エンジン始動関連制御を終了する。この場合、CPU30aは、エンジン始動関連制御を終了した後、運転者からの発進指令があった場合には、電動モータ3を用いたEVモードで車両を発進させる。
【0075】
図4は、
図2のステップS6で示すエンジン始動制御の流れを示すフローチャートである。エンジン始動制御は、上述したように変速機4がニュートラル状態であることを、変速機状態検出器31から受信したニュートラル情報と、回転情報検出器33から受信した回転情報に基づく誤検出判定の結果とを用いて、変速機4のニュートラル状態を2重に判定した後に開始する。
【0076】
具体的には、変速機がニュートラル状態に維持したうえで、エンジン始動制御を開始する。CPU30aは、電動モータ3の発生トルクを、判定用トルクT1から上昇させるよう電動モータ3を制御する(ステップS21)。エンジン2の始動のために必要な始動用トルクT2が、判定用トルクT1より大きいためである。始動用トルクT2は、エンジン2の始動のために必要な回転数まで上昇させるためのトルクである。上述するように始動用トルクT2は、エンジン2の回転部品の慣性モーメント、圧縮抵抗、回転抵抗に抗してクランクシャフト2aを回転可能なトルクに設定される。CPU30aは、所定の始動用トルクを発生するように電動モータ3を制御する。本実施形態では、CPU30aは、エンジン始動に適した所定の始動回転数となるように、始動用トルクT2を発生するように電動モータ3を制御する。
【0077】
CPU30aは、電動モータ3の発生トルクを上昇させる間、入力回転情報に基づき、入力軸5の回転速度が始動用閾値に到達したか否かを判定する(ステップS22)。始動用閾値は、入力判定用閾値R2以上に設定されている。始動用閾値は、エンジン2のアイドル回転速度Riに換算した入力軸5の回転速度よりも高い回転速度に設定されてもよい。
【0078】
CPU30aは、入力軸5の回転速度が始動用閾値に到達したと判定した場合(ステップS22:Yes)、メインクラッチ21が切断状態から接続状態に切り替わるようクラッチアクチュエータ22を制御する(ステップS23)。
【0079】
本実施形態では、始動用閾値は、入力判定用閾値R2に一致するように設定されているため、エンジン始動制御の開始時点(t=t2)で、入力軸5の回転速度が始動用閾値に到達している。このため、本実施形態では、
図5に示すように、エンジン始動制御の開始時点(t=t2)から、ステップS23のクラッチアクチュエータ22の制御は開始する。この場合、ステップS22は省略されてもよい。また、始動用閾値が入力判定用閾値R2に一致するように設定されていない場合でも、ステップS22は省略されてもよい。始動用閾値は設定されていなくてもよい。
【0080】
図5に示すように、ステップS23のクラッチアクチュエータ22の制御では、CPU30aは、徐々にクラッチ締結度が上昇するよう、クラッチアクチュエータ22を制御することが好ましい。これに伴い、メインクラッチ21を介して変速機4の入力軸5からクランクシャフト2aに伝達される動力が大きくなり、入力軸5の回転速度は上昇していく(
図5の各グラフの時点t=t2から時点t=t3の間を参照)。
【0081】
こうして、電動モータ3の発生トルクがメインクラッチ21を介してエンジン2のクランクシャフト2aに伝達され、クランクシャフト2aが回転する。その後、CPU30aは、エンジン2の点火プラグによる点火とエンジン2の燃料噴射装置による燃料の供給を開始させ、エンジン2始動させる(ステップS24)。すなわち、CPU30aは、エンジン2による燃料燃焼に起因する回転動力を発生させる。言い換えると、エンジン2は、燃料の燃焼によって、クランクシャフト2aを回転させる動力を発生させる。なお、
図5では、図の簡略化のため、クラッチ締結度が100%になった時点(t=t3)で、エンジン2における燃料が燃焼して、入力軸5の回転速度が急上昇する状況を示したが、エンジン2における燃料の燃焼は、クラッチ締結度が100%に到達する前であってもよいし、クラッチ締結度が100%に到達した後であってもよい。
【0082】
CPU30aは、エンジン2が始動した後、言い換えればエンジン2による燃料燃焼が開始した後に、メインクラッチ21が接続状態から切断状態に切り替わるようクラッチアクチュエータ22を制御する(ステップS25)。
【0083】
また、CPU30aは、入力軸5の回転を止めるよう電動モータ3を制御する(ステップS26)。これにより、入力軸5の不所望な回転を防ぐことができる。ステップS26では、具体的には、CPU30aは、電動モータ3を停止するようにしてもよい。つまり、CPU30aは、電動モータ3への電流の供給を停止させて、電動モータ3での発生トルクをゼロにしてもよい。代わりに、ステップS26で、CPU30aは、入力軸5が回転する方向とは反対方向のトルクである負トルクを発生させる電動モータ3を制御してもよい。これにより、入力軸5の回転を積極的に低減してもよい。
【0084】
図5では、ステップS25のクラッチアクチュエータ22の制御と、ステップS26の電動モータ3の制御とを同時に行われているように示したが(
図5の時点t=t4参照)、メインクラッチ21が接続状態から切断状態に切り替わった後に、ステップS26の電動モータ3の制御を行ってもよい。
【0085】
このようにしてエンジン始動したうえで入力軸5の回転を停止させると、エンジン始動制御を終了する。CPU30aは、エンジンの始動が実現されると、運転者の発進操作などに応じて、エンジン2、クラッチアクチュエータ22、シフトアクチュエータ36を制御することで、エンジン動力を用いて車両を発進させることができる。
【0086】
以上に説明したように、本実施形態によれば、誤検出判定処理により、回転情報に基づいて、ニュートラル情報に誤りがあるか否かを判定する。ニュートラル情報に誤りがないと判定した場合にエンジン始動制御を許可する。このため、非ニュートラル状態でエンジン始動動作が開始されることを防いで、走行駆用電動モータ3の動力を利用してエンジン2の始動を実現することができる。これによってエンジン始動専用のモータを省略することができ、部品点数を削減できる。またエンジン始動で発生する動力が、駆動輪に伝達されることを防ぐことができる。
【0087】
また、本実施形態では、誤検出判定処理により、変速機状態検出器31とは別の検出器である回転情報検出器33を用いて、変速機4がニュートラル状態であるか否かが判定される。このように、エンジン始動制御に移行する前に、二重にニュートラル状態の判定を行うため、単一の検出器を用いてニュートラル状態を判定する場合に比べて、エンジン始動のために電動モータ3に発生させる始動用トルクが、駆動輪9に伝達されることを確実に防止できる。
【0088】
また、本実施形態では、変速機状態検出器31により検出されたニュートラル情報に誤りがあるか否かを、回転情報検出器33の検出結果を用いて判断する。車両は、車両の走行制御のために回転数に関連するセンサを備えていることが多いため、新たな部品を追加することなく、ギヤポジションセンサとは別に、変速機4がニュートラル状態かどうかを判定できる。従って、変速機状態検出器31の誤検出を調べるための専用のセンサを省略することができ、部品点数を削減できる。
【0089】
また、本実施形態では、判定用トルクT1は始動用トルクT2より小さい値に設定されているため、ニュートラル情報に誤りがある場合でも、電動モータ3に判定用トルクT1を発生させたことによる車体挙動の変化を抑えることができる。
【0090】
また、本実施形態では、車両1が停車した状態で誤検出判定処理を行う。すなわち、出力軸6の回転が停止した状態で電動モータ3に判定用トルクT1を発生させるため、例えば車両1が移動している状態、具体的には車両1が人力によって移動されている状態で判定用トルクを発生させる場合と比べて、判定用トルクの発生に起因する車両1の挙動変化を判断しやすく、ニュートラル情報に誤りがあるか否かの判定精度を向上できる。
【0091】
また、本実施形態では、ニュートラル情報に誤りがあると判定された場合、電動モータ3による判定用トルクT1の発生を停止させる。例えば、電動モータ3に判定用トルクT1を発生させる制御の経過時間が所定時間やトルク付与期間に到達する前でも、駆動輪9の回転開始を判断すると電動モータ3を停止させる。このため、変速機4がニュートラルでない状態で入力軸5に判定用トルクが付与され続けることを防いで、車体挙動の変化を抑えることができる。
【0092】
また、本実施形態では、エンジン始動制御を開始して、電動モータ3の発生トルクを、判定用トルクT1からエンジン始動のための始動用トルクT2に上昇させる。このため、判定用トルクT1のエネルギーをエンジン2の始動に利用できる。入力軸5が停止した状態からエンジン始動制御を実行する場合に比べて、エンジン始動のためのエネルギーを有効利用したり、エンジン2の始動時点までの時間を短縮したりしやすい。
【0093】
<その他の実施形態>
本開示は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。
【0094】
車両が自動二輪車の場合には、シートの両側に足置きが配置されるスポーツ型の鞍乗車両でもよいし、シートの前側に足置きが配置されるスクータ型の鞍乗車両であってもよい。
【0095】
例えば上記実施形態で説明された車両は、2つの走行駆動源を備えるハイブリッド車両であったが、車両はこれに限定されない。例えば車両は、走行駆動源を1つだけ備えてもよいし、3つ以上の走行駆動源を備えてもよい。例えば車両は、走行駆動源として内燃エンジンのみを備えるものであってもよい。このような車両であっても、ニュートラル状態の誤判定を防いで、出力軸への動力伝達を抑えたエンジン始動を実現することができる。例えば変速機のニュートラル状態を判定して、エンジン始動動作を実施することで、メインクラッチの有無、メインクラッチが切断状態か接続状態かに関わらずに、エンジン始動で発生する動力が、駆動輪に伝達されることを防ぐことができる。
【0096】
なお、上記実施形態では、車両は、エンジンから出力される回転動力を直接駆動輪に伝達して走行が可能なシリーズ型ハイブリッド車両として説明されたがこれに限らない。例えば車両は、エンジンの始動専用のスタータモータや、発電機能も有するISGモータが、入力軸に動力を伝達して入力軸を回転駆動するように構成された車両でもよい。例えば車両は、モータが、加速時などの特定の状況において、トルクを付与するよう、モータの出力が抑えられている、いわゆるマイルドハイブリッド車両であってもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、誤検出判定処理が、エンジン始動のために実行されたが、エンジン始動以外の目的で、誤検出判定処理が実行されてもよい。この場合でも、変速機状態検出器の誤検出を調べるための専用のセンサを省略することができ、部品点数を削減できるという効果が得られる。また変速機状態検出の誤検出を防ぐことができる。
【0098】
また本実施形態では、判定用トルクは、始動トルクに比べて小さいトルクに設定されていたが、判定用トルクは、始動トルク以上であってもよい。この場合であっても、判定用トルクT1の付与期間または入力軸の角速度が、始動用トルクの付与時に比べて小さく設定されることが好ましい。
【0099】
誤検出判定処理中に、運転者の操作による始動要求の解除指令が生成されるなどの解除条件が満たされた場合には、誤検出判定処理は途中で終了してもよい。例えば、前記解除指令は、メインクラッチの接続指令、変速機の状態をニュートラル以外の状態への移行するための変速指令、アクセル操作指令などであり得る。いずれかの解除指令があると、誤検出判定処理を終了して、電動モータ3による発進処理を実行してもよい。これによって運転者の意図に沿った車両制御を実現できる。解除条件は、サイドスタンドを立てることや、ブレーキが解除されることなどであってもよい。
【0100】
エンジン同様の動作が実施されればステップの順番が異なってもよい。例えば、車両1が停止状態にあるか否かを判定するステップS1と、メインクラッチ21の切断状態か否かを判定するステップS2と、ニュートラル情報を取得したか否かを判定するステップS3とは、任意の順番でまたは同時に実行されてもよい。また、ステップS1,S2,S3の1以上のステップが実行されなくてもよい。駆動輪9の回転開始を判定するステップS4と、所定時間経過したか否かを判定するステップS5と、入力軸5の回転状態か否かを判定するステップS6とについても、任意の順番でまたは同時に実行されてもよい。また、ステップS4,S5,S6の1以上のステップが実行されなくてもよい。
【0101】
駆動輪の回転開始と、入力軸の回転状態とを別々に行ったが、入力軸の角速度と駆動輪の角速度との比が、非ニュートラル状態に対応する値であるか否かを判断してもよい。具体的には、ステップS12とステップS14とを合わせて、入力軸が、変速機および変速機下流の動力伝達機構に定められる所定の変速比に関わらず、回転する状態であるかどうかを判定してもよい。この場合、所定の変速比に関わらず、入力軸が回転しない状態であれば、ニュートラル情報に誤りがあると判断してもよい。また所定の変速比に関わらず、入力軸が回転する状態であれば、ニュートラル情報に誤りがないと判断してもよい。
【0102】
誤検出判定処理では、変速機状態検出器31から受信する情報ではなく、回転情報検出器33から受信する情報に誤りがある可能性もあるため、ニュートラル情報または回転情報のいずれかに誤りがあると判定してもよい。
【0103】
変速機は、上記実施形態で説明されたものに限定されない。変速機は、ドッグリングがアクチュエータで軸方向に移動されたがこれに限らない。例えば、変速機は、ドッグギヤがシフトアクチュエータで軸方向に移動されてもよい。変速機は、ドッグリングまたはドッグギヤで実現されて軸方向に移動可能なドッグ体は、出力軸ではなく、入力軸に嵌合する構造でもよい。また複数のドッグ体のうち一部が出力軸に嵌合して、他の一部が入力軸に嵌合する構造であってもよい。
【0104】
シフトドラムに代えて直動式のシフトフォークアクチュエータでもよい。変速機状態検出器は、シフトドラムの回転角度以外を検出してもよい。例えばシフトフォークやドッグ体の軸方向位置を検出してもよい。またシフトアクチュエータが油圧駆動されて油圧によってドッグの位置が切り替わる場合には、シフトアクチュエータに関する油圧状態を検出して、変速機状態を検出してもよい。
【0105】
変速機は、入力軸に与えられた動力が、駆動輪への伝達が阻止されるニュートラル状態をとることができる変速機であればよい。例えば変速機は、変速比を切り替える変速機本体とは別に、出力軸と駆動輪との間で、動力伝達の接続状態と遮断状態とを切り替えるサブクラッチを備えてもよい。この場合、変速機状態検出器は、前記入力軸と前記駆動輪との間の動力伝達を遮断するニュートラル状態であることを示すニュートラル情報をCPUに送信する。
【0106】
上記実施形態では、変速機4は、運転者の変速操作に電気的に連動して変速段を選択するように構成されていたが、運転者の変速操作に機械的に連動して変速段を選択するように構成されていてもよい。例えば変速機4は、運転者による変速操作子の操作に機械的に連動して複数組の変速ギヤ対7から1組が選択されてもよい。例えば変速機は、運転者の変速操作に応じて、シフトアクチュエータでシフトドラムを回転させる構成としてもよいしシフトアクチュエータの動力に代えて、変速操作が運転者から伝達される手動の動力によってシフトドラムを回転させる構成としてもよい。この場合には、誤検出判定処理を開始するために、ディスプレイや計器盤などである報知器に、ニュートラル状態に移行するための操作を運転者に促す指示が表示されてもよい。
【0107】
同様に、例えばクラッチは、運転者のクラッチ操作に応じて、クラッチアクチュエータでメインクラッチの状態や締結度が変更される構成としてもよいし、クラッチアクチュエータの動力に代えて、クラッチ操作が運転者から伝達される手動の動力によってメインクラッチの状態や締結度が変更される構成としてもよい。この場合には、誤検出判定処理を開始するために、ディスプレイや計器盤などである報知器に、メインクラッチを切断状態に移行するための操作を運転者に促す指示が表示されてもよい。
【0108】
変速機状態検出器は、上記実施形態で説明された構成に限定されない。ニュートラル状態か否かを示す状態情報を検出できればよい。変速機状態検出器は、変速機状態検出器は、複数の変速段の中からいずれの変速段が選択された状態かを検出したが、変速機状態検出器は、ニュートラル段かそれ以外の変速段かを検出してもよい。変速機状態検出器は、シフトドラム13のうちのニュートラル段のみの回転角を検出する接触/非接触センサであってもよい。
【0109】
回転情報検出器は、上記実施形態で説明された構成に限定されない。回転情報検出器は、入力軸と出力軸との相対回転を検出できればよく、入力回転センサ32aと出力回転センサ32bのうちの一方のみを備えてもよい。例えば車両停止状態であるなど、一方の回転軸の状態が把握可能であれば、他方の回転軸の状態を検出して、相対回転に関する情報を推測してもよい。例えばいずれか一方が回転を停止していることが明らかであれば、いずれ片方の回転を検出することで、所定の変速比範囲でないことを判断して、ニュートラル情報出歩かないかを判定してもよい。また例えば処理回路は、出力回転センサから受信した情報のみで、ニュートラル情報に誤りがあるか否か判定してもよい。つまり、前述のステップS6を省略してもよい。
【0110】
クラッチ状態検出器は、上記実施形態で説明された構成に限定されない。クラッチ状態検出器は、メインクラッチの締結量に対応する物理量を検出するセンサでもよい。例えばクラッチ状態検出器は、クラッチアクチュエータのソレノイドに流れる電流値を検出する電流センサでもよいし、クラッチアクチュエータの油圧を検出する油圧センサであってもよいし、メインクラッチにおける互いに当接する部材同士の変位を検出する変位センサであってもよい。
【0111】
上記実施形態では、クラッチアクチュエータとして、油圧アクチュエータが説明されたが、クラッチアクチュエータはこれに限られない。クラッチアクチュエータは、電動モータなどの別の種類のアクチュエータであってもよい。またメインクラッチは、本実施例では、油圧による圧力を付与していない自然状態で、切断状態としたが、これに限らない。具体的には、圧力を付与していない自然状態で、接続状態とし、圧力を付与することで切断状態となるように設定される場合でもあってもよい。
【0112】
上記実施形態では、CPU30aは、ニュートラル情報に誤りがないと判定すると、エンジン始動制御を自動的に開始したが、ニュートラル情報に誤りがないと判定した後、エンジン始動制御の許可状態にできればよく、判定後に即座にエンジン始動制御に移行しなくてもよい。この場合、車両に備え付けられたユーザインターフェースなどに対するユーザ操作に応じて、エンジン始動制御の許可状態であることを条件として、エンジン始動制御が開始されてもよい。
【0113】
処理回路は、ニュートラル情報に誤りがあると判定した場合に、エンジン始動制御を制限できればよい。すなわち、上記実施形態では、CPU30aは、ニュートラル情報に誤りがあると判定した場合、エンジン始動制御に移行することなく制御を終了したが、ニュートラル情報に誤りがあると判定した場合でも、エンジン始動制御が禁止される必要はない。例えば変速機状態検出器31ではなく、回転情報検出器33が誤検出している場合が想定される。この場合、情報に誤りがあると判定した場合には、エンジン始動動作可能な状況が制限されてもよい。例えばエンジン始動時に車両が移動しても影響の少ない条件を満足した場合のみ、エンジン始動を許可してもよい。また例えばエンジン始動を実行するものの、情報に誤りがないと判定する場合に比べて、エンジン始動の初期段階において、トルクの大きさを小さくすることで制限してもよい。これによってエンジン始動の初期段階で、車両の移動を判定すると、車両の移動を阻止しやすくすることができる。また情報に誤りがあるとして判定された場合には、誤りがないと判定された場合に比べて、エンジン始動後においてもエンジンの出力を抑制するいわゆるリンプホーム状態でのエンジン出力制御を実行してもよい。
【0114】
変速機用の誤り判定方法としては、誤検出判定タイミングは、車両停止状態に限らず、車両移動状態であってよい。例えば変速機状態検出器31によってニュートラル状態を判断した場合にあったとしても、入力軸と駆動輪との回転数比が、変速機や動力伝達機構で設定される変速比に維持されていると判断される場合には、状態情報および前記回転情報のいずれかに誤りがあるか否か判定してもよい。
【0115】
例えば車両走行中において、入力軸に判定用として駆動トルクまたは制動トルクのいずれかを付与したり、出力軸に判定用として制動トルクを付与したりしてもよい。このようにして入力軸と駆動輪(出力軸)との相対回転に関連する回転情報を取得してもよい。例えば、変速機状態検出器31からニュートラル情報を取得していたとしても、入力軸または出力軸のいずれか一方にトルクを加えることで、入力軸と出力軸との回転数比が、所定の変速比に維持される場合には、状態情報または回転情報のいずれかが誤りであると判定してもよい。入力軸に加えるトルクは、エンジン、モータ、クラッチのいずれかで付与してもよい。また出力軸に加えるトルクは、路面からの走行反力、ブレーキ制御装置で付与してもよい。例えば車両移動状態であっても、ニュートラル状態への切替が可能な状況であれば、上述する誤検出判定処理やエンジン始動処理を実行してもよい。例えば車両移動中でのニュートラル状態への切り替えが可能な状態として、走行フィーリングへの影響が小さい状況が想定される。このような状況の具体例として、惰性走行状態や低速域での一定走行状態などが挙げられる。
【0116】
上記実施形態では、報知器は、画像情報としてのエンジン始動エラー情報が表示されるディスプレイであったが、報知器は、エンジン始動エラー情報を音情報として出力するためのスピーカやブザーなどであってもよいし、エンジン始動エラー情報を光情報として出力するための光学素子などであってもよい。
【0117】
状態情報は、コントローラ30の処理回路が外部から受信する情報に限られず、コントローラ30の処理回路自体が生成する情報であってもよい。例えば処理回路が変速機の状態を示す状態情報を取得することは、処理回路が、変速機の状態を変更するためにシフトアクチュエータに送るための指令値を生成することであってもよい。例えば、上記実施形態において、コントローラ30のCPU30aが、シフトアクチュエータ36に送るための指令値として、変速機4をニュートラル状態にするための指令値を生成した場合、
図2のステップS3で、コントローラ30のCPU30aは、当該指令値から、変速機のニュートラル状態であると判定してもよい。
【0118】
本実施形態では、エンジン2の始動制御の直前に、誤検出判定処理が実行されたが、誤検出判定処理は、エンジン始動制御の直前に実行されなくてもよく、エンジン始動制御より前の所定のタイミングで実行されてもよい。この場合、エンジン始動制御を実行する際に、エンジン2の始動制御より前に行われた誤検出判定処理でニュートラル情報に誤りがないと判定されていることを条件に、エンジン始動制御を許可してもよい。これによってニュートラル情報に誤りがある状態で、エンジン始動制御が実行されることを防ぐことができる。例えばCPUへの電力供給が開始されたタイミングや、車体に搭載される電装部品の動作チェックタイミングに合わせて誤検出判定処理を実行してもよい。この場合、CPUは、ニュートラル情報に誤りがあるかどうかの判定結果をメモリに記憶することで、その後のエンジン始動制御の許可判断に利用することができる。
【0119】
好ましくは、エンジン始動条件として、運転者が車両に跨っている状態が条件に含まれていてもよい。例えばスタンドスイッチの検出情報として、スタンドがあげられている状態を検出する条件が含まれていてもよい。これによって、運転者が車両に跨っていない状態で、エンジン始動関連制御が実行されることを防ぐことができる。
【0120】
また電動モータで判定用トルクを発生させるステップにおいて、ブレーキセンサからの情報に基づいて、運転者によるブレーキ操作されている間において判定用トルクを発生させるように制御してもよい。これによって判定用トルクの付与によって、車両が移動することを防ぎやすくすることができる。
【0121】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成または方法を他の実施形態に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。フローチャートにおいて順番に示されている2つのブロックは、場合によって、同時に実行されることもでき、または逆順に実行されることもできる。
【0122】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、または、それらの任意の組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアまたはプロセッサの構成に使用される。
【0123】
[開示態様]
以下の態様のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0124】
[態様1]
走行駆動源である内燃エンジンおよび電動モータと、
駆動輪と、
前記内燃エンジンおよび前記電動モータからの動力が入力される入力軸、および、前記駆動輪に動力を出力する出力軸を有する変速機と、
前記変速機の状態に関連する状態情報を検出する変速機状態検出器と、
前記変速機状態検出器とは別に、前記入力軸と前記出力軸との相対回転に関連する回転情報を検出する回転情報検出器と、
処理回路を備えるコントローラと、を備え、
前記処理回路は、
前記変速機状態検出器から受信した前記状態情報が、前記入力軸と前記出力軸との間の動力伝達を遮断する前記変速機のニュートラル状態を示すニュートラル情報か否かを判定し、
前記状態情報が前記ニュートラル情報であると判定した後に、所定の判定用トルクを発生するように前記電動モータを制御し、
前記回転情報検出器から受信した前記回転情報に基づき、前記ニュートラル情報に誤りがあるか否か判定し、
前記ニュートラル情報に誤りがないと判定した場合、前記電動モータからの動力を前記内燃エンジンに伝達して前記内燃エンジンを始動させるエンジン始動制御を許可し、
前記ニュートラル情報に誤りがあると判定した場合、前記エンジン始動制御を制
限するように構成されている、車両。
【0125】
前記構成によれば、回転情報に基づいて、ニュートラル情報に誤りがあるか否かを判定し、ニュートラル情報に誤りがないと判定した場合にエンジン始動制御を許可する。このため、走行駆用電動モータの動力を利用して内燃エンジンの始動を実現することができるため、内燃エンジン始動専用のモータを省略することができ、部品点数を削減できる。また変速機状態検出器により検出されたニュートラル情報に誤りがあるか否かを、回転情報検出器の検出結果を用いて判断するため、変速機状態検出器の誤検出を調べるための専用のセンサを省略することができ、部品点数を削減できる。
【0126】
[態様2]
前記エンジン始動制御は、所定の始動用トルクを発生するように前記電動モータを制御することを含み、
前記判定用トルクは、前記始動用トルクより小さい値に設定されている、態様1に記載の車両。
【0127】
ニュートラル情報に誤りがある場合でも、電動モータに判定用トルクを発生させたことによる車体挙動の変化を抑えることができる。
【0128】
[態様3]
前記処理回路は、前記判定用トルクを発生させる前記電動モータの制御を、前記電動モータから前記内燃エンジンへの動力伝達を遮断した状態で実行するように構成されている、態様1または2に記載の車両。
【0129】
前記構成によれば、電動モータから内燃エンジンへの動力伝達を遮断した状態で電動モータにトルクを発生させるため、判定用トルクを低く設定できる。
【0130】
[態様4]
前記処理回路は、前記車両が停車した状態で前記判定用トルクを発生するように前記電動モータを制御し、
前記回転情報は、前記入力軸の回転に関連する入力回転情報と、前記出力軸の回転に関連する出力回転情報とを含み、
前記処理回路は、前記ニュートラル情報に誤りがあるか否か判定する際に、前記出力回転情報に基づき前記出力軸が回転を開始したと判定した場合に、前記ニュートラル情報に誤りがあると判定し、前記出力回転情報に基づき前記出力軸が回転を開始していないと判定し、且つ、前記入力回転情報に基づき前記入力軸が回転を開始したと判定した場合に、前記ニュートラル情報に誤りがないと判定するように構成されている、態様1乃至3のいずれかに記載の車両。
【0131】
前記構成によれば、車両が停車した状態で判定用トルクを発生するように電動モータを制御する。すなわち、出力軸の回転が停止した状態で電動モータに判定用トルクを発生させるため、例えば車両が移動している状態、具体的には車両が手で押されて移動している状態で判定用トルクを発生させる場合と比べて、判定用トルクの発生に起因する車両の挙動変化を判断しやすく、ニュートラル情報に誤りがあるか否かの判定精度を向上できる。
【0132】
[態様5]
前記回転情報は、前記入力軸の回転速度に関連する入力回転情報を含み、
前記処理回路は、前記誤りがあるか否か判定する際に、
前記判定用トルクを発生させる前記電動モータの制御を開始させた後の経過時間をカウントし、
前記入力回転情報に基づき前記入力軸が回転を開始したか否かを判定し、
前記入力軸が回転を開始したと判定されない状態で前記経過時間が所定の時間に到達した場合に、前記ニュートラル情報に誤りがあると判定するように構成されている、態様1乃至4のいずれかに記載の車両。
【0133】
[態様6]
前記処理回路は、前記誤りがあると判定した場合、前記電動モータによる前記判定用トルクの発生を停止させることにより前記エンジン始動制御を制限するように構成されている、態様1乃至5のいずれかに記載の車両。
【0134】
前記構成によれば、変速機がニュートラルでない状態で入力軸にトルクが付与され続けることを防ぐことができる。
【0135】
[態様7]
前記処理回路は、
前記内燃エンジンに対する始動要求を取得した場合に、前記状態情報が前記ニュートラル情報であるか否かを判定し、
前記誤りがないと判定した場合、前記エンジン始動制御を開始し、前記電動モータの発生トルクを、前記判定用トルクから所定の始動用トルクに上昇させるよう前記電動モータを制御するように構成されている、態様1乃至6のいずれかに記載の車両。
【0136】
前記構成によれば、電動モータにより発生した判定用トルクを内燃エンジンの始動に利用しやすく、内燃エンジンの始動要求の取得時点から内燃エンジンの始動時点までの時間を短縮しやすい。
【0137】
[態様8]
前記車両は、前記内燃エンジンと前記入力軸との間の動力伝達経路を接続する接続状態と、前記動力伝達経路を切断する切断状態との間で切り替え可能なメインクラッチを備え、
前記処理回路は、
前記メインクラッチが前記接続状態にあるか前記切断状態にあるかを判定し、
前記メインクラッチが前記切断状態にあると判定し、且つ、前記状態情報が前記ニュートラル情報であると判定した場合、前記判定用トルクを発生するように前記電動モータを制御するように構成されている、態様1乃至7のいずれかに記載の車両。
【0138】
前記構成によれば、メインクラッチを切断状態にした状態で電動モータに判定用トルクを発生させるため、判定用トルクを低く設定できるとともに、エンジンが抵抗となって入力軸が回転しにくくなるのを防ぐことができる。
【0139】
[態様9]
駆動源からの動力が入力される入力軸、および、駆動輪に動力を出力する出力軸を有する変速機用の誤り判定方法であって、処理回路によって、
前記変速機の状態を示す状態情報を取得し、
前記状態情報が、前記入力軸と前記駆動輪との間の動力伝達を遮断する前記変速機のニュートラル状態を示すニュートラル情報であるか否か判定し、
前記状態情報が前記ニュートラル情報であると判定した場合に、前記入力軸または前記出力軸に付与されるトルクによる前記入力軸と前記出力軸との相対回転に関連する回転情報を取得し、
前記回転情報に基づき、前記状態情報および前記回転情報のいずれかに誤りがあるか否か判定する、変速機用の誤り判定方法。
【0140】
前記方法によれば、取得したニュートラル情報に誤りがあるか否かを、入力軸と出力軸との相対回転に関連する回転情報を用いて判断するため、変速機状態検出器の誤検出を調べるための専用のセンサを省略することができ、部品点数を削減できる。
【0141】
また、以下の態様も好適である。
【0142】
[態様10]
前記車両は、前記内燃エンジンと前記入力軸との間の動力伝達経路を接続する接続状態と、前記動力伝達経路を切断する切断状態との間で切り替え可能なメインクラッチと、前記メインクラッチを動作させるクラッチアクチュエータと、を備え、
前記エンジン始動制御は、
発生するトルクを前記始動トルクまで上昇させるように前記電動モータを制御すること、
前記入力回転情報に基づき、前記入力軸の回転速度が始動用閾値以上であるか否かを判定すること、
前記入力軸の回転速度が前記始動用閾値以上であると判定した場合、前記メインクラッチが前記切断状態から前記接続状態に切り替わるよう前記クラッチアクチュエータを制御することを含む、態様1乃至8のいずれかに記載の車両。
前記構成によれば、メインクラッチを接続状態にした状態で電動モータに判定用トルクを発生させる場合と比べて、入力軸の回転数を高めやすい。
【0143】
[態様11]
また、上記態様1乃至8及び態様10の車両に関して、
前記車両は、前記内燃エンジンと前記入力軸との間の動力伝達経路を接続する接続状態と、前記動力伝達経路を切断する切断状態との間で切り替え可能なメインクラッチと、前記メインクラッチを動作させるクラッチアクチュエータと、を備え、
前記処理回路は、前記エンジン始動制御により前記内燃エンジンが始動した後に、前記メインクラッチが前記接続状態から前記切断状態に切り替わるよう前記クラッチアクチュエータを制御し、前記メインクラッチが前記接続状態から前記切断状態に切り替わった後に、前記入力軸の回転を止めるよう前記電動モータを制御するように構成されている、態様1乃至8及び態様10のいずれかに記載の車両。
前記構成によれば、入力軸の不所望な回転を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0144】
1 :車両
2 :内燃エンジン
3 :電動モータ
4 :変速機
5 :入力軸
6 :出力軸
7 :変速ギヤ対
9 :駆動輪
21 :メインクラッチ
22 :クラッチアクチュエータ
30 :コントローラ
30a :CPU
31 :変速機状態検出器
33 :回転情報検出器
32a :入力回転速度センサ
32b :出力回転速度センサ
33 :クラッチ状態検出器