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特開2025-105013焦点検出装置及び方法、撮像装置、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105013
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】焦点検出装置及び方法、撮像装置、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/28 20210101AFI20250703BHJP
   G02B 7/36 20210101ALI20250703BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20250703BHJP
【FI】
G02B7/28 N
G02B7/36
G03B13/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223261
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高尾 麻衣子
【テーマコード(参考)】
2H011
2H151
【Fターム(参考)】
2H011AA01
2H011BA23
2H011BB04
2H011CA16
2H151AA06
2H151BA06
2H151BA14
2H151CA03
2H151CB09
2H151CB22
2H151CB26
2H151CE24
2H151CE32
2H151CE33
2H151DA15
(57)【要約】
【課題】 被写体の一時的な状態変化があった場合でも、優先度の高い部位にピントを合わせ続けること。
【解決手段】 撮像装置から繰り返し出力される画像信号の画像から被写体と、被写体に含まれる特徴領域と、を検出し、検出された被写体および特徴領域に、予め決められた大きさの複数の焦点検出領域を設定する。また、画像信号に基づいて、設定された前記複数の焦点検出領域それぞれにおける焦点状態を検出し、複数の焦点検出領域のうち、予め決められた条件を満たす第1の領域と、特徴領域を含む第2の領域と、を選択する。焦点状態に基づく、第1の領域の焦点状態の第1の履歴と、第1の領域の焦点状態と第2の領域の焦点状態との差の第2の履歴とから、任意の時間における第2の領域の焦点状態を予測し、第2の領域の焦点状態に基づいて、第2の領域に合焦させるための、焦点調節手段の駆動量を求める。
【選択図】 図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置から繰り返し出力される画像信号の画像から被写体と、前記被写体に含まれる特徴領域と、を検出する被写体検出手段と、
前記被写体検出手段により検出された前記被写体および前記特徴領域に、予め決められた大きさの複数の焦点検出領域を設定する設定手段と、
前記画像信号に基づいて、前記設定手段により設定された前記複数の焦点検出領域それぞれにおける焦点状態を検出する検出手段と、
前記複数の焦点検出領域のうち、予め決められた条件を満たす第1の領域と、前記特徴領域を含む第2の領域と、を選択する選択手段と、
前記検出手段により検出された焦点状態に基づく、前記第1の領域の焦点状態の第1の履歴と、前記第1の領域の焦点状態と前記第2の領域の焦点状態との差の第2の履歴とから、任意の時間における前記第2の領域の焦点状態を予測する予測手段と、
前記予測手段により予測された前記第2の領域の焦点状態に基づいて、前記第2の領域に合焦させるための、焦点調節手段の駆動量を求める取得手段と
を有することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項2】
前記予測手段は、前記第1の履歴に基づいて、前記任意の時間における前記第1の領域の焦点状態を予測し、前記第2の履歴に基づいて、前記任意の時間における前記差を予測することを特徴とする請求項1に記載の焦点検出装置。
【請求項3】
前記予測手段は、前記第1の履歴および前記第2の履歴に基づいて、一括最小二乗法または逐次最小二乗法により、前記任意の時間における前記第1の領域の焦点状態および前記差を予測することを特徴とする請求項2に記載の焦点検出装置。
【請求項4】
前記被写体の深度幅を推定する推定手段を更に有し、
前記予測手段は、当該深度幅と前記差との比を、一括最小二乗法または逐次最小二乗法によって予測することによって、前記任意の時間における前記差を予測することを特徴とする請求項2に記載の焦点検出装置。
【請求項5】
前記被写体の深度幅を推定する推定手段を更に有し、
前記予測手段は、前記被写体の深度幅を振幅とした単振動モデルに近似することで、前記任意の時間における前記差を予測することを特徴とする請求項2に記載の焦点検出装置。
【請求項6】
前記予測手段は、前記任意の時間における、予測した前記第1の領域の焦点状態と前記差とを加算することにより、前記任意の時間における前記第2の領域の焦点状態を予測することを特徴とする請求項2に記載の焦点検出装置。
【請求項7】
前記推定手段は、前記複数の焦点検出領域の焦点状態に基づいて、前記複数の焦点検出領域を予め決められた深度幅の複数の深度に分類し、前記複数の焦点検出領域を含む深度をまとめた深度幅を、前記被写体の深度幅として推定することを特徴とする請求項4に記載の焦点検出装置。
【請求項8】
前記推定手段は、被写体の種別、撮影距離、画像情報に基づいて、被写体の深度幅を推定するための学習を行い、前記被写体の深度幅を推定することを特徴とする請求項4に記載の焦点検出装置。
【請求項9】
前記推定手段は、前記複数の焦点検出領域の焦点状態に基づいて、前記複数の焦点検出領域を予め決められた深度幅の複数の深度に分類し、前記複数の焦点検出領域を含む深度をまとめた深度幅を、前記被写体の深度幅として推定することを特徴とする請求項5に記載の焦点検出装置。
【請求項10】
前記推定手段は、被写体の種別、撮影距離、画像情報に基づいて、被写体の深度幅を推定するための学習を行い、前記被写体の深度幅を推定することを特徴とする請求項5に記載の焦点検出装置。
【請求項11】
前記第2の履歴が無い場合に、前記予測手段は、前記任意の時間における前記特徴領域の相対位置を0として予測することを特徴とする請求項1に記載の焦点検出装置。
【請求項12】
前記選択手段は、前記複数の焦点検出領域が予め決められた第1の閾値以上の場合に、前記複数の焦点検出領域の焦点状態に基づいて、前記複数の焦点検出領域を予め決められた深度幅の複数の深度に分類し、分類した結果に基づいて前記第1の領域を選択することを特徴とする請求項1に記載の焦点検出装置。
【請求項13】
前記選択手段は、前記複数の深度のうち、前記焦点検出領域が最も多く分類された深度における前記焦点検出領域の割合が、予め決められた第2の閾値以上の場合に、当該深度に分類された前記焦点検出領域のうち、前記複数の焦点検出領域の中心に最も近い焦点検出領域を前記第1の領域として選択することを特徴とする請求項12に記載の焦点検出装置。
【請求項14】
前記選択手段は、前記複数の焦点検出領域が予め決められた第1の閾値より少ない場合、及び、前記複数の深度のうち、前記焦点検出領域が最も多く分類された深度における前記焦点検出領域の割合が、前記第2の閾値より小さい場合に、前記複数の焦点検出領域の中心に最も近い焦点検出領域が予め決められた深度の深度幅に含まれる場合、当該焦点検出領域を前記第1の領域として選択することを特徴とする請求項13に記載の焦点検出装置。
【請求項15】
前記選択手段は、前記複数の焦点検出領域が予め決められた第1の閾値より少ない場合、及び、前記複数の深度のうち、前記焦点検出領域が最も多く分類された深度における前記焦点検出領域の割合が、前記第2の閾値より小さい場合に、前記複数の焦点検出領域の中心に最も近い焦点検出領域が予め決められた深度の深度幅に含まれない場合、予め決められた深度の深度幅において、焦点状態が最も至近を示す焦点検出領域を前記第1の領域として選択することを特徴とする請求項13に記載の焦点検出装置。
【請求項16】
前記被写体が人物である場合に、前記特徴領域は人物の瞳であることを特徴とする請求項1に記載の焦点検出装置。
【請求項17】
前記焦点状態は、像面位置を含むことを特徴とする請求項1に記載の焦点検出装置。
【請求項18】
前記焦点状態は、デフォーカス量を含むことを特徴とする請求項1に記載の焦点検出装置。
【請求項19】
撮像手段と、
請求項1乃至18のいずれか1項に記載の焦点検出装置と
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項20】
前記焦点調節手段と、
前記任意の時間において、前記取得手段により求められた前記駆動量により、前記焦点調節手段を駆動する駆動手段と
を更に有することを特徴とする請求項19に記載の撮像装置。
【請求項21】
撮像装置から繰り返し出力される画像信号の画像から被写体と、前記被写体に含まれる特徴領域と、を検出する被写体検出工程と、
前記被写体検出工程で検出された前記被写体および前記特徴領域に、予め決められた大きさの複数の焦点検出領域を設定する設定工程と、
前記画像信号に基づいて、前記設定工程で設定された前記複数の焦点検出領域それぞれにおける焦点状態を検出する検出工程と、
前記複数の焦点検出領域のうち、予め決められた条件を満たす第1の領域と、前記特徴領域を含む第2の領域と、を選択する選択工程と、
前記検出工程で検出された焦点状態に基づく、前記第1の領域の焦点状態の第1の履歴と、前記第1の領域の焦点状態と前記第2の領域の焦点状態との差の第2の履歴とから、任意の時間における前記第2の領域の焦点状態を予測する予測工程と、
前記予測工程で予測された前記第2の領域の焦点状態に基づいて、前記第2の領域に合焦させるための、焦点調節手段の駆動量を求める取得工程と
を有することを特徴とする焦点検出方法。
【請求項22】
コンピュータを、請求項1乃至18のいずれか1項に記載の焦点検出装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項23】
請求項22に記載のプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点検出装置及び方法、撮像装置、プログラム及び記憶媒体に関し、特に被写体検出情報を活用した焦点調節技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮影レンズの焦点位置を自動調節する焦点調節機能(以下、「AF」と呼ぶ。)を備えたカメラが普及している。その焦点調節を行う手段として、撮像素子を用いた撮像面位相差AF方式やコントラストAF方式等、様々なAF方式が実用化されている。
【0003】
さらに、様々なAF方式において、主被写体の領域を特定して合焦させる技術がある。特許文献1では、検出された被写体のうち、焦点検出が困難な領域を回避しつつ、優先すべき部位にピントを合わせる制御手法が開示されている。
【0004】
またその多くは、静止する被写体のみならず、移動する被写体に焦点が合うようにフォーカスレンズを駆動させるサーボ撮影モードを備えている。サーボ撮影モードは、過去の移動履歴から被写体がどのように動いているのかを予測する機能を持つ。特許文献2では、検出された被写体の部位ごとに焦点検出履歴を保持し、条件に応じて予測に使用する履歴を切り替える制御手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-173803号公報
【特許文献2】特許第7066388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2においては、被写体の姿勢や光の当たり方といった一時的な状態変化があった場合、優先度の高い検出部位の被写体検出ができない、焦点検出ができない、といった問題が発生し、優先度の高い検出部位にピントを合わせられなくなるという問題がある。
【0007】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、被写体の一時的な状態変化があった場合でも、優先度の高い部位にピントを合わせ続けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の焦点検出装置は、撮像装置から繰り返し出力される画像信号の画像から被写体と、前記被写体に含まれる特徴領域と、を検出する被写体検出手段と、前記被写体検出手段により検出された前記被写体および前記特徴領域に、予め決められた大きさの複数の焦点検出領域を設定する設定手段と、前記画像信号に基づいて、前記設定手段により設定された前記複数の焦点検出領域それぞれにおける焦点状態を検出する検出手段と、前記複数の焦点検出領域のうち、予め決められた条件を満たす第1の領域と、前記特徴領域を含む第2の領域と、を選択する選択手段と、前記検出手段により検出された焦点状態に基づく、前記第1の領域の焦点状態の第1の履歴と、前記第1の領域の焦点状態と前記第2の領域の焦点状態との差の第2の履歴とから、任意の時間における前記第2の領域の焦点状態を予測する予測手段と、前記予測手段により予測された前記第2の領域の焦点状態に基づいて、前記第2の領域に合焦させるための、焦点調節手段の駆動量を求める取得手段とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被写体の一時的な状態変化があった場合でも、優先度の高い部位にピントを合わせ続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態における撮像装置の構成を示すブロック図。
図2】実施形態における撮像装置による撮影動作のフローチャート。
図3】実施形態におけるAF枠設定処理を説明するフローチャート。
図4】実施形態における検出された主要領域が1つである場合のAF枠の概念を説明する図。
図5】実施形態における検出された主要領域が複数ある場合のAF枠の概念を説明する図。
図6】実施形態におけるAF動作の全体の流れを示すフローチャート。
図7】実施形態における焦点検出処理を示すフローチャート。
図8】実施形態における主枠選択処理を示すフローチャート。
図9】実施形態における第2の選択方法による主枠選択を説明するフローチャート。
図10】実施形態における第1の状態における主枠選択を説明するフローチャート。
図11】実施形態における第2の状態における主枠選択を説明するフローチャート。
図12】実施形態における特徴部位代表枠の選択処理を説明するフローチャート。
図13】実施形態におけるレンズ駆動量算出処理のフローチャート。
図14】実施形態における予測処理のフローチャート。
図15】実施形態における被写体全体の予測曲線の一例を示す図。
図16】実施形態における特徴部位の相対位置の予測曲線の一例を示す図。
図17】実施形態における特徴部位の予測処理の概念を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
●撮像装置の構成
図1は、本発明の実施形態における撮像装置として、レンズ交換式カメラ(以下、単に「カメラ」と呼ぶ。)の構成を示すブロック図である。本実施形態に係るカメラは、本発明を適用した焦点調節装置を搭載した撮像装置の例であり、被写体像を撮像する撮像素子からの出力信号を用いた撮像面位相差検出方式による焦点調節を行う。なお、本発明は、例えば、レンズ一体型のデジタルカメラや、ビデオカメラに対しても適用可能である。また、カメラを備えた任意の電子機器、例えば携帯電話機、パーソナルコンピュータ(ラップトップ、タブレット、デスクトップ型等)、ゲーム機等で実施することもできる。
【0013】
図1に示すように、カメラは、レンズ装置(交換レンズ)100と、カメラ本体200とにより構成される。レンズ装置100が電気接点ユニット106を有するマウント部を介してカメラ本体200に装着されると、レンズ装置100の動作を統括制御するレンズコントローラ105とカメラ全体の動作を統括制御するシステム制御部209とが相互に通信可能となる。
【0014】
まず、レンズ装置100の構成について説明する。レンズ装置100は、ズーム機構を含む撮影レンズ101、光量を制御する絞り及びシャッター102、後述する撮像素子201上に焦点をあわせるためのフォーカスレンズ103、フォーカスレンズを駆動するモータ104、レンズコントローラ105を備える。
【0015】
次に、カメラ本体200の構成について説明する。カメラ本体200は、レンズ装置100の撮影光学系を通過した光束から画像信号を取得できるように構成される。カメラ本体200において、撮像素子201はCCDやCMOSセンサにより構成され、被写体からの反射光を受光して、フォトダイオードによって入射光量に応じた信号電荷に変換し、蓄積する。各フォトダイオードに蓄積された信号電荷は、システム制御部209の指令に従ってタイミングジェネレータ208から与えられる駆動パルスに基づいて信号電荷に応じた電圧信号(画像信号)として、撮像素子201から順次読み出される。
【0016】
A/D変換部202は、撮像素子201から出力される電圧信号をA/D変換する。A/D変換部202は、撮像素子201の出力ノイズを除去するCDS回路や、A/D変換前に行う非線形増幅回路を備える。
【0017】
更にカメラ本体200は、画像処理部203、AF信号処理部204、フォーマット変換部205、(例えば、ランダムアクセスメモリ等の高速な内蔵メモリ(以下「DRAM」と記す。)206を備える。DRAM206は、一時的に画像を記憶するための高速バッファとして、あるいは画像の圧縮伸張における作業用メモリ等として使用される。画像記録部207は、メモリーカード等の挿抜可能な記録媒体とそのインターフェースとからなる。
【0018】
システム制御部209は、タイミングジェネレータ208、撮影シーケンス等、カメラ全体を制御する。更にデジタルカメラ本体200は、カメラ本体200とレンズ装置100との通信を行うレンズ通信部210、被写体検出部211、被写体移動予測部219、画像表示用メモリ212(以下、「VRAM」と記す。)を備える。画像表示部213は、撮影した画像を表示する他、操作補助のための表示やカメラ状態の表示、撮影時には撮影画面と、焦点検出領域を表示する。
【0019】
また、カメラ本体200は、ユーザーがカメラを操作するための各種操作部材を有する。操作部214は、例えば、カメラの撮影機能や画像再生時の設定等の各種設定を行うメニュースイッチ、撮影モードと再生モードの動作モード切換えスイッチ等を含む。撮影モードスイッチ215は、マクロモード、スポーツモード等の撮影モードを選択するためのスイッチ、メインスイッチ216は、カメラの電源を投入するためのスイッチである。また、AFやAE等の撮影スタンバイ動作を行うためのスイッチ(以下「SW1」と記す。)217、SW1の操作後、撮影を行う撮影スイッチ(以下「SW2」と記す。)218を備える。
【0020】
●撮像素子の構成
撮像素子201は、CCDやCMOSセンサにより構成される。本実施形態で用いられる撮像素子201の各画素は、2つ(一対)のフォトダイオードA、Bと、これら一対のフォトダイオードA、Bに対して設けられた1つのマイクロレンズとにより構成される。各画素では、入射する光をマイクロレンズを介して一対のフォトダイオードA、B上に一対の光学像が形成され、一対のフォトダイオードA、Bから後述するAF用信号に用いられる一対の画素信号(A信号及びB信号)を出力する。また、一対のフォトダイオードA、Bの出力を加算することで、撮像用信号(A+B信号)を得ることができる。
【0021】
複数の画素から出力された複数のA信号と複数のB信号をそれぞれまとめることで、撮像面位相差検出方式によるAFに用いられるAF用信号(焦点検出用信号)として、一対の像信号(A像信号、B像信号)が得られる。AF信号処理部204は、A像信号及びB像信号に対して相関演算を行い、A像信号とB像信号のずれ量である位相差(以下、「像ずれ量」と呼ぶ。)を算出し、さらに算出した像ずれ量から、撮影光学系のデフォーカス量、デフォーカス方向、及び信頼度(以下、まとめて「焦点検出情報」と呼ぶ。)を求める。なお、本実施形態においては、AF信号処理部204は、後述するようにして設定されたAF枠内の領域それぞれについて、焦点検出情報を求める。
【0022】
●撮像装置の動作
次に、本実施形態のカメラにおける撮影動作について、図2を用いて説明する。
図2は、ライブビュー画像を表示する状態から静止画撮影を行う場合の撮影動作の流れを示している。なお、このフローチャートにおける各処理は、不図示の不揮発性メモリに格納された制御プログラムを、システム制御部209が実行することにより行われる。
【0023】
まず、S201において、SW1(217)の状態を調べ、ONとなるとS202へ進む。S202では、システム制御部209にて後述するAF枠設定処理を行って、AF信号処理部204に対してAF枠を設定し、S203へと進む。S203では、S202で設定された各AF枠の領域について後述するAF動作を行い、S204へ進む。S204では、SW1(217)の状態を調べ、ONであればS205へ進み、そうでなければS201へ戻る。SW1(217)がONとなるとS205に進み、SW2(218)の状態を調べ、ONであればS206へ進み、そうでなければS201へ戻る。S206では、撮影を行い、撮影を終えた後、S201へ戻る。
【0024】
●AF枠設定処理
図3は、図2のS202で行われるAF枠設定処理を説明するフローチャートである。
【0025】
まず、S301では、被写体検出部211から被写体検出情報を取得する。なお、以下の説明において、本実施形態の被写体は人物とし、人物(被写体内)における主要領域を検出するものとする。ここで主要領域とは、人物における瞳、顔、体のそれぞれの領域とする。ただし、被写体は人物に限られるものではなく、例えば、動物や車両、電車等であっても良く、主要領域は、被写体の特徴に基づいて決めればよい。
被写体及び主要領域の検出方法としては、公知の機械学習による学習手法や、画像処理による認識処理等を用いることができる。
【0026】
例えば、機械学習の種類としては、以下のものがある。
【0027】
(1)サポートベクターマシーン(Support Vector Machine)
(2)畳み込みニューラルネットワーク(Covolutional Neural Network)
(3)再起型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network)
【0028】
また、認識処理の例としては、画像データで表される各画素の階調色から肌色領域を抽出し、予め用意する顔の輪郭プレートとのマッチング度で顔を検出する方法が知られている。また、周知のパターン認識技術を用いて、目、鼻、口等の顔の特徴点を抽出することで顔検出を行う方法等も周知である。
なお、本発明に適用可能な主要領域の検出手法については、これらの手法に限るものではなく、他の手法を用いてもよい。
【0029】
S302では、被写体検出部211から得られた被写体検出情報に基づいて、被写体が検出できたか、また、検出できていれば、複数の主要領域が検出されたかどうかを判定する。複数の主要領域が検出されていればS303へ、検出できた主要領域が1つであればS304へ、また、被写体が検出できていなければS308へ進む。
【0030】
ここで、検出された主要領域が1つの場合と複数の場合におけるAF枠の概念を、図4及び図5を用いて説明する。図4(a)は、顔領域401のみ検出されている状態、図5(a)は、瞳領域501、顔領域502、体領域503が検出されている状態を示している。なお、被写体検出部211は、人物や動物といった被写体の種別と、それぞれ検出された主要領域における中心座標と、水平サイズ及び垂直サイズとを取得できるものとし、これらの情報を被写体検出情報として出力する。
【0031】
S303では、検出された複数の主要領域のうち、最小の主要領域を選択し、その主要領域の水平サイズ及び垂直サイズのうち、小さい方の値をMinAとする。つまり、図5(a)の例では、瞳領域501の水平サイズと垂直サイズのうち、小さいほうの値をMinAとする。そして、この値MinAを1つのAF枠504の一辺の長さ(AF枠サイズ)とする。
【0032】
S305では、検出された複数の主要領域の水平座標と水平サイズとから、図5(b)に示すように、全主要領域を包含する領域の水平サイズHを求め、求めた水平サイズHをAF枠サイズMinAで除算することにより、水平AF枠数を決定する。続いて、S307では、検出された複数の主要領域の垂直座標と垂直サイズとから、図5(b)に示すように、全主要領域を包含する領域の垂直サイズVを求め、求めた垂直サイズVをAF枠サイズMinAで除算することにより、垂直AF枠数を決定し、AF枠設定処理を終了する。なお、S305の処理とS307の処理の順番は、逆であっても良いし、平行して行っても良い。
【0033】
なお、本実施形態では、最小の主要領域の短い方の辺の長さを使用した正方形のAF枠としたが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、AF枠の水平サイズと垂直サイズを異ならせてもよいし、全主要領域を包含する領域のサイズと、システム制御部209で演算可能なAF枠の数に基づいて、AF枠のサイズを設定してもよい。
【0034】
一方、検出された主要領域が複数ではない場合、S304において、検出された顔に対して所定サイズXのAF枠を設定する。所定サイズXとしては、顔から推定される瞳サイズとしてもよいし、低照度環境時を考慮してS/Nが確保でき、十分に合焦性能がでるようなサイズを設定してもよい。本実施形態では、推定瞳サイズで所定サイズXを設定するものとする。そして、S306において、図4(b)に示すように、顔領域401を包含し、顔が動いた場合にも対応できるような、サイズXのAF枠によるAF枠数を設定する。
【0035】
また、被写体が検出されていない場合には、S308において、公知の方法によりAF枠のサイズ、設定位置、設定数を決定する。公知の方法としては、例えば、中央に予め決められたサイズのAF枠を1つ設定する方法や、任意の複数の位置に予め決められたサイズのAF枠を設定する方法、また、画面を複数の領域に分割し、各領域をAF枠とする方法等がある。他にも、ユーザーが操作部214を用いて設定する等、様々な方法があり、本発明にはこれらの方法に限られるものではない。
【0036】
なお、図4及び図5で示す例では、複数のAF枠が主要領域を含むように設定されているが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、主要領域内に複数のAF枠を離散的に設定しても良い。
上記処理によりAF枠を設定すると、図2のS203の処理に進む。
【0037】
なお、上述したAF枠設定処理は、画像が入力される毎に行わなくても良く、複数回、画像が入力される毎に一回行うようにしても良い。その場合、AF枠設定処理を行わないときには、設定したAF枠をDRAM206に記憶しておき、時間的に最も近いタイミングで記憶されたAF枠を読み出して使用すればよい。
【0038】
●AF動作
図6は、S203で行われるAF動作の全体の流れを説明するフローチャートである。
まず、S401において焦点検出処理を行い、デフォーカス量を検出してS402へ進む。なお、焦点検出処理については後述する。
S402では、S301で得られた被写体検出情報を用いて後述する主枠選択処理を行い、S403へ進む。S403では、S402で得られた主枠選択結果を用いて、後述するフォーカスレンズの駆動量算出を行い、S404へ進む。S404では、S403で得られたフォーカスレンズ駆動量をレンズ通信部210へ伝達し、フォーカスレンズ103を駆動させて、AF動作を終了する。
【0039】
◆焦点検出処理
次に、S401で行われる焦点検出処理について、図7を用いて説明する。
まず、S501では、撮像素子201から出力された画像データから、S202で設定されたAF枠のうち、1つの未処理のAF枠の領域を焦点検出領域として設定し、S502へ進む。S502では、S501で設定した焦点検出領域に対応する撮像素子201の領域の画素から、焦点検出用信号である一対の像信号(A像信号、B像信号)を取得して、S503へ進む。S503では、S502で取得した一対の像信号を垂直方向に行加算平均処理を行った後、S504へ進む。この処理によって、像信号のノイズの影響を軽減することができる。
【0040】
S504では、S503で垂直行加算平均した信号から所定の周波数帯域の信号成分を取り出すフィルタ処理を行い、S505へ進む。S505では、S504でフィルタ処理した信号から相関量を算出して、S506へ進む。S506では、S505で算出した相関量から相関変化量を算出して、S507へ進む。S507では、S506で算出した相関変化量から像ずれ量を算出して、S508へ進む。S508では、S507で算出した像ずれ量がどれだけ信頼できるのかを表す信頼度を算出して、S509へ進む。S509では像ずれ量をデフォーカス量に変換する。
【0041】
S510において、S202で設定されたAF枠のうち、未処理のAF枠があるかどうかを判断する。未処理のAF枠がある場合にはS501に戻って次の未処理のAF枠について上記処理を繰り返し、設定されたすべてのAF枠について処理を終えていれば、焦点検出処理を終了する。
【0042】
◆主枠選択処理
図8は、S402で行われる主枠選択処理を説明するフローチャートである。
まず、S601において、被写体検出部211にて被写体が検出されているかどうかを判定する。検出されていなければS602へ進み、被写体の検出情報を用いない第1の選択方法により主枠を選択し、主枠選択処理を終了する。第1の選択方法としては、例えば、S308で設定されたAF枠のうち、画面内の所定領域(例えば中央位置を含む領域)を主枠として選択する等の方法が考えられるが、これに限られるものではなく、公知の技術を用いても良い。
【0043】
一方、被写体が検出されていればS603へ進み、焦点検出したAF枠の中から主枠を選択する第2の選択方法により主枠を選択し、S604へ進む。
【0044】
ここで、S603で行われる第2の選択方法による主枠の選択処理の詳細について、図9及び図12のフローチャートを参照して説明する。
まず、図9のS701において、被写体検出部211により被写体の瞳が検出されているかどうかを判定する。瞳が検出されていればS702へ進み、瞳が検出されていなければS703へ進む。S702では、主枠選択領域として瞳領域を追加し、S703へ進む。
【0045】
S703では、被写体検出部211により被写体の顔が検出されているかどうかを判定する。顔が検出されていればS704へ進み、顔が検出されていなければS705へ進む。S704では、主枠選択領域として顔領域を追加し、S705へ進む。
【0046】
S705では、被写体検出部211により被写体の胴体(体)が検出されているかどうかを判定する。胴体が検出されていればS706へ進み、胴体が検出されていなければS707へ進む。S706では、主枠選択領域として体領域を追加し、S707へ進む。
【0047】
S707では、主枠選択領域を含むAF枠の数が、予め決められた第1の閾値以上であるかどうかを判定する。なお、ここでは、主枠選択領域を含むAF枠は、AF枠の中心が、主枠選択領域に含まれるAF枠とするが、これに限られるものではない。例えば、主枠選択領域の少なくとも一部を含むAF枠であってもよいし、AF枠の予め決められた割合以上の領域が主枠選択領域にかかるAF枠としてもよい。主枠選択領域に第1の閾値以上のAF枠が含まれる場合、S708へ進み、第1の閾値以上のAF枠が含まれていなければ、S711に進む。
【0048】
S708では、主枠選択領域を含むAF枠毎に算出されたデフォーカス量を予め決められた深度毎に分類して、ヒストグラムを作成する。そして、S709において、S708にて作成したヒストグラムのピーク値が、予め決められた第2の閾値以上であるかどうかを判定する。なお、本実施形態では、ヒストグラムの最大AF枠数を全AF枠数で正規化して、割合へ変換したものをピーク値として使用する。ピーク値が第2の閾値以上であればS710へ進み、第2の閾値未満であればS711に進む。
【0049】
S710では、主枠選択領域内に第1の閾値以上のAF枠が存在し、且つ、ある1つの深度(ピーク値のビン)内に、全体の第2の閾値以上の割合のAF枠のデフォーカス量が存在する状態(以下、「第1の状態」と呼ぶ。)となっている。そこで、第1の状態に応じた主枠選択処理を行う。
【0050】
一方、S711では、主枠選択領域内に含まれるAF枠が第1の閾値未満か、または、第1の閾値以上であっても、AF枠のデフォーカス量が複数の深度に散在している状態(以下、「第2の状態」と呼ぶ。)となっている。そこで、第2の状態に応じた主枠選択処理を行う。
【0051】
本実施形態では、上述した異なる状態において、互いに異なる方法により主枠を選択する。
【0052】
図10は、S710で行われる第1の状態における主枠選択処理を示すフローチャートである。
まず、S801において、主枠選択領域の中から主枠を選択するために主枠選択領域を含む全AF枠分のループ処理を開始する。S802では、処理中のAF枠が、ヒストグラムのピーク値を示すビンに含まれるAF枠かどうかを判定する。そうであればS803へ進み、そうでなければ他のAF枠についてループ処理を繰り返す。S803では、処理中のAF枠が、現在選択されている主枠よりも、主枠選択領域の中心に近い位置にあるかどうかを判断し、近ければS804に進んで主枠を更新し、そうでなければ他のAF枠についてループ処理を繰り返す。主枠選択領域の中心としては、例えば、主枠選択領域の水平、垂直方向それぞれの最大幅の中心としてもよいし、主枠選択領域の重心としてもよい。
【0053】
S801のループが終わると、第1の状態における主枠選択処理を終了する。上記処理により、ピーク値を示すビンに含まれるAF枠のうち、主枠選択領域の中心に最も近い位置にあるAF枠が主枠として選択される。
【0054】
図11は、S711で行われる第2の状態における主枠選択処理を示すフローチャートである。
S901において、主枠選択領域の中心が、予め決められた深度内にあるかどうかを判定し、予め決められた深度内にあればS902へ進み、主枠選択領域の中心を含むAF枠を主枠として設定する。一方、主枠選択領域の中心が予め決められた深度内になければS903へ進む。
【0055】
S903では、設定した主枠選択領域を含むAF枠の中から、主枠を選択するために全枠分のループ処理を行う。主枠の初期値は、主枠が選択されていないことが判断できる情報(全枠数+1等)をすでに設定しておくものとし、図は省略する。S904では、処理中のAF枠のデフォーカス量が所定深度内にあり、且つ、現在選択している主枠のデフォーカス量よりも至近側にあるかどうかを判定し、条件を満たしている場合、S905において主枠を更新する。
【0056】
S906では、S903のループによって主枠が選択できたかどうかを判定し、選択できていない場合には、S907において、主枠選択領域の中心を含むAF枠を主枠に設定する。
上記処理を終えると、図8のS603に戻る。
【0057】
上記処理により、S603において第2の選択方法により主枠を選択すると、S604において、被写体検出部211にて被写体の瞳が検出されているかどうかを判定する。瞳が検出されていればS605へ進み、検出されていなければ主枠選択処理を終了する。
S605では、瞳等の特徴部位(特徴領域)を代表するAF枠を選択する処理を行う。
【0058】
図12は、S605で行われる特徴部位代表枠選択処理を説明するフローチャート図である。
まず、S1001において、特徴部位領域を瞳領域に設定し、S1002へ進む。なお、本実施形態では、被写体として人物を想定しているため、瞳を特徴部位として、特徴部位領域を瞳領域に設定するが、本発明はこれに限られるものではなく、任意の部位を特徴部位として設定することができる。
【0059】
S1002では、特徴部位代表枠を選択するために、設定した特徴部位領域を含む全AF枠分のループ処理を行う。特徴部位代表枠の初期値は特徴部位代表枠が選択されていないことが判断できる情報(全枠数+1等)をすでに設定しておくものとし、図は省略する。S1003では、処理中のAF枠のデフォーカス量が所定深度内であって、且つ、選択している特徴部位代表枠よりも至近側にあるかどうかを判定し、条件を満たしていれば、S1004において特徴部位代表枠を更新する。S1005では、S1002のループによって特徴部位代表枠が選択できたかどうかを判定し、選択できていない場合には、S1006において特徴部位領域の中心を含むAF枠を、特徴部位代表枠として設定する。
以上により、主枠選択処理を終了し、図6のS402に戻る。
【0060】
◆レンズ駆動量算出処理
図13は、S403におけるレンズ駆動量算出処理を説明するフローチャートである。
【0061】
まず、S1301において、S402で選択した主枠の焦点検出結果を記録し、S1302へ進む。主枠の焦点検出結果は焦点検出のたびに記録されるため、過去の焦点検出結果の履歴を遡ることができる。
【0062】
S1302では、特徴部位代表枠が選択されているかどうかを判定し、選択されていればS1303へ、選択されていなければS1304へ進む。
S1303では、S603で選択された主枠と、S605で選択された特徴部位代表枠との焦点検出結果から、求めた特徴部位の像面位置の相対位置を記録する。特徴部位の相対位置は、特徴部位代表枠の像面位置から、主枠の像面位置を減算することによって求められ、主枠の像面位置に対する、特徴部位代表枠の像面位置の相対的な位置を示す。特徴部位の相対位置は焦点検出を行って特徴部位代表枠が選択されるたびに記録されるため、過去の相対位置の履歴を遡ることができる。特徴部位の相対位置の記録が完了すると、S1304へ進む。
S1304では、被写体移動予測部219にて、焦点検出結果の履歴を用いて像面位置を予測する予測処理を行い、S1305へ進む。なお、予測処理の詳細については後述する。
【0063】
S1305ではフォーカスレンズの駆動目標を予測した像面位置に設定し、レンズ駆動算出処理を終了する。
【0064】
図14は、S1304で行われる予測処理を説明するフローチャートである。
まず、S1401では、S1301で記録した主枠の焦点検出結果を用いて被写体全体の予測処理を行う。
【0065】
被写体全体の予測処理では、過去の焦点検出履歴から予測曲線を引くことで、被写体全体の予測位置を求める。図15の1501は予測曲線の一例を示しており、縦軸は像面位置を、横軸は時間を示す。縦軸の像面位置が大きいほど距離が遠いことを示しており、図15に示す履歴は、撮影者(カメラ)に近付く被写体を追従している様子を示している。前述した通り、S203におけるAF動作は、サーボ撮影モードでは周期的に実施されており、T1~T5は各々、S203で行われるAF動作の実施時刻を表している。
【0066】
予測先像面位置は、例えば過去の像面位置とそれぞれの焦点検出時刻とを用いて一括最小二乗法によって予測曲線を導出し、この曲線をもとに予測先時刻での像面位置を算出することで得られる。予測先時刻は、SW2がONであれば撮影時の時刻を、そうでなければ今回の焦点検出時刻を示す。また、予測手法は一括最小二乗法に限らず、例えば逐次最小二乗法を使用する場合は過去の焦点検出履歴を複数保存しておく必要はなく、前回のAF動作時に算出したパラメータを記録しておくことにより過去の焦点検出履歴の代替とできる。被写体全体の予測処理が終了すると、S1402へ進む。
【0067】
S1402では、S1303で記録した特徴部位の相対位置の履歴を用いて、特徴部位の相対位置の予測を行う。
【0068】
特徴部位の相対位置の予測では、過去の相対位置の履歴から予測曲線を引くことで予測変化量を求める。図16の1601は予測曲線の一例を示しており、縦軸は相対位置を、横軸は時間を示し、縦軸の相対位置が大きいほど、特徴部位が被写体全体からより離れていることを示しており、図16に示す履歴は、例えば飛行中の鳥のように撮影者(カメラ)側に飛び出た特徴部位を持つ被写体が撮影者に近づくところを追従している様子を示している。前述した通り、S203におけるAF動作は、サーボ撮影モードでは周期的に実施されており、T1~T5は各々、S203で行われるAF動作の実施時刻を表している。
【0069】
予測先相対位置は、例えば過去の像面位置とそれぞれの焦点検出時刻を用いた一括最小二乗法によって予測曲線を導出し、この曲線をもとに予測先時刻での像面位置を算出することで得られる。予測先時刻は、SW2がONであれば撮影時の時刻を、そうでなければ今回の焦点検出時刻を示す。また、予測手法は一括最小二乗法に限らず、例えば逐次最小二乗法を使用する場合は過去の焦点検出履歴を複数保存しておく必要はなく、前回のAF動作時に算出したパラメータを記録しておくことにより過去の焦点検出履歴の代替とできる。
【0070】
また、予め焦点検出時に被写体の深度幅を推定しておき、被写体の深度幅を用いて特徴部位の相対位置を表現してもよい。例えば、被写体の深度幅と特徴部位の相対位置との比を一括最小二乗法や逐次最小二乗法によって予測することによって、特徴部位の相対位置を予測してもよい。もしくは、被写体の深度幅を振幅とした単振動モデルに近似して表現してもよい。被写体の深度幅の推定としては、例えば、被写体全体の主枠選択時に作成したヒストグラムを用いて、主枠選択領域を含むAF枠を含むすべてのビンの深度幅をまとめた深度幅を、被写体の深度幅としてもよい。また検出した被写体の種別、撮影距離、画像情報を用いて予め被写体の深度幅を推定できるよう学習させておき、これによって推定した被写体の深度幅を用いてもよい。なお、特徴部位が過去に検出された記録がない場合、特徴部位の相対位置は0とする。特徴部位の相対位置の予測処理が終了すると、S1403へ進む。
【0071】
S1403では、S1401で求めた被写体全体の予測結果と、S1402で求めた特徴部位の相対位置の予測結果とを用いて、特徴部位の予測処理を行う。
【0072】
被写体全体の予測式を時刻tの関数L(t)、特徴部位の相対位置の予測式をl(t)とすると、特徴部位の予測式L′(t)は、以下の式(1)で表現することができる。
L'(t) = L(t) + l(t) …(1)
【0073】
図17は、被写体全体の予測曲線が図15、特徴部位の相対位置の予測曲線1701が図16である場合の、特徴部位の予測曲線1702を図示している。特徴部位の予測処理が完了すると、S1404へ進む。
S1404では、S1403で求めた特徴部位の予測結果を予測像面位置として設定し、予測処理を終了する。
なお、S1403に示す特徴部位の相対位置の予測は、特徴部位が検出されていない時であっても、過去に一度でも特徴部位が検出された履歴があれば計算される。予測曲線のモデルを、時系列データを長く使用する、曲率が低くなるようにする、といった対応により予め安定し易くしておけば、部分的に特徴部位の情報が欠落していた場合でも、過去の履歴を用いて特徴部位の相対位置を推定し、特徴部位があると推測される位置を追従し続けることができる。
【0074】
また、特徴部位が過去に検出された記録がない場合、特徴部位の相対位置を0とすることにより、特徴部位の予測式L′(t)は、以下の式(2)
L'(t) = L(t) …(2)
で表されるようになり、主枠の焦点検出結果が特徴部位の予測結果となる。
【0075】
上記の通り本実施形態によれば、同一被写体内に含まれる複数の焦点検出領域の過去の焦点検出履歴を用いることで、被写体の一時的な状態変化があった場合でも、優先度の高い検出部位にピントを合わせ続けることができる。
【0076】
なお、上述した説明では、デフォーカス量を用いて処理を行うものとして説明したが、デフォーカス量以外でも、焦点状態を示す情報であれば、当該情報を用いて、上述した処理を行うことが可能である。
【0077】
また、上述した説明では、像面位置に基づいて予測処理を行うものとして説明したが、これに限られるものでは無く、例えばデフォーカス量や合焦距離といった、焦点状態を表す情報を用いて、予測することも可能である。なお、像面位置も広義の意味で、焦点状態に含まれる。
【0078】
<他の実施形態>
なお、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0079】
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0080】
<まとめ>
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
【0081】
(項目1)
撮像装置から繰り返し出力される画像信号の画像から被写体と、前記被写体に含まれる特徴領域と、を検出する被写体検出手段と、
前記被写体検出手段により検出された前記被写体および前記特徴領域に、予め決められた大きさの複数の焦点検出領域を設定する設定手段と、
前記画像信号に基づいて、前記設定手段により設定された前記複数の焦点検出領域それぞれにおける焦点状態を検出する検出手段と、
前記複数の焦点検出領域のうち、予め決められた条件を満たす第1の領域と、前記特徴領域を含む第2の領域と、を選択する選択手段と、
前記検出手段により検出された焦点状態に基づく、前記第1の領域の焦点状態の第1の履歴と、前記第1の領域の焦点状態と前記第2の領域の焦点状態との差の第2の履歴とから、任意の時間における前記第2の領域の焦点状態を予測する予測手段と、
前記予測手段により予測された前記第2の領域の焦点状態に基づいて、前記第2の領域に合焦させるための、焦点調節手段の駆動量を求める取得手段と
を有することを特徴とする焦点検出装置。
(項目2)
前記予測手段は、前記第1の履歴に基づいて、前記任意の時間における前記第1の領域の焦点状態を予測し、前記第2の履歴に基づいて、前記任意の時間における前記差を予測することを特徴とする項目1に記載の焦点検出装置。
(項目3)
前記予測手段は、前記第1の履歴および前記第2の履歴に基づいて、一括最小二乗法または逐次最小二乗法により、前記任意の時間における前記第1の領域の焦点状態および前記差を予測することを特徴とする項目2に記載の焦点検出装置。
(項目4)
前記被写体の深度幅を推定する推定手段を更に有し、
前記予測手段は、当該深度幅と前記差との比を、一括最小二乗法または逐次最小二乗法によって予測することによって、前記任意の時間における前記差を予測することを特徴とする項目2に記載の焦点検出装置。
(項目5)
前記被写体の深度幅を推定する推定手段を更に有し、
前記予測手段は、前記被写体の深度幅を振幅とした単振動モデルに近似することで、前記任意の時間における前記差を予測することを特徴とする項目2に記載の焦点検出装置。
(項目6)
前記予測手段は、前記任意の時間における、予測した前記第1の領域の焦点状態と前記差とを加算することにより、前記任意の時間における前記第2の領域の焦点状態を予測することを特徴とする項目2乃至5のいずれか1項目に記載の焦点検出装置。
(項目7)
前記推定手段は、前記複数の焦点検出領域の焦点状態に基づいて、前記複数の焦点検出領域を予め決められた深度幅の複数の深度に分類し、前記複数の焦点検出領域を含む深度をまとめた深度幅を、前記被写体の深度幅として推定することを特徴とする項目4または5に記載の焦点検出装置。
(項目8)
前記推定手段は、被写体の種別、撮影距離、画像情報に基づいて、被写体の深度幅を推定するための学習を行い、前記被写体の深度幅を推定することを特徴とする項目4または5に記載の焦点検出装置。
(項目9)
前記第2の履歴が無い場合に、前記予測手段は、前記任意の時間における前記特徴領域の相対位置を0として予測することを特徴とする項目1乃至8のいずれか1項目に記載の焦点検出装置。
(項目10)
前記選択手段は、前記複数の焦点検出領域が予め決められた第1の閾値以上の場合に、前記複数の焦点検出領域の焦点状態に基づいて、前記複数の焦点検出領域を予め決められた深度幅の複数の深度に分類し、分類した結果に基づいて前記第1の領域を選択することを特徴とする項目1乃至9のいずれか1項目に記載の焦点検出装置。
(項目11)
前記選択手段は、前記複数の深度のうち、前記焦点検出領域が最も多く分類された深度における前記焦点検出領域の割合が、予め決められた第2の閾値以上の場合に、当該深度に分類された前記焦点検出領域のうち、前記複数の焦点検出領域の中心に最も近い焦点検出領域を前記第1の領域として選択することを特徴とする項目10に記載の焦点検出装置。
(項目12)
前記選択手段は、前記複数の焦点検出領域が予め決められた第1の閾値より少ない場合、及び、前記複数の深度のうち、前記焦点検出領域が最も多く分類された深度における前記焦点検出領域の割合が、前記第2の閾値より小さい場合に、前記複数の焦点検出領域の中心に最も近い焦点検出領域が予め決められた深度の深度幅に含まれる場合、当該焦点検出領域を前記第1の領域として選択することを特徴とする項目11に記載の焦点検出装置。
(項目13)
前記選択手段は、前記複数の焦点検出領域が予め決められた第1の閾値より少ない場合、及び、前記複数の深度のうち、前記焦点検出領域が最も多く分類された深度における前記焦点検出領域の割合が、前記第2の閾値より小さい場合に、前記複数の焦点検出領域の中心に最も近い焦点検出領域が予め決められた深度の深度幅に含まれない場合、予め決められた深度の深度幅において、焦点状態が最も至近を示す焦点検出領域を前記第1の領域として選択することを特徴とする項目11または12に記載の焦点検出装置。
(項目14)
前記被写体が人物である場合に、前記特徴領域は人物の瞳であることを特徴とする項目1乃至13のいずれか1項目に記載の焦点検出装置。
(項目15)
前記焦点状態は、像面位置を含むことを特徴とする項目1乃至14のいずれか1項目に記載の焦点検出装置。
(項目16)
前記焦点状態は、デフォーカス量を含むことを特徴とする項目1乃至14のいずれか1項目に記載の焦点検出装置。
(項目17)
撮像手段と、
項目1乃至16のいずれか1項目に記載の焦点検出装置と
を有することを特徴とする撮像装置。
(項目18)
前記焦点調節手段と、
前記任意の時間において、前記取得手段により求められた前記駆動量により、前記焦点調節手段を駆動する駆動手段と
を更に有することを特徴とする項目17に記載の撮像装置。
(項目19)
撮像装置から繰り返し出力される画像信号の画像から被写体と、前記被写体に含まれる特徴領域と、を検出する被写体検出工程と、
前記被写体検出工程で検出された前記被写体および前記特徴領域に、予め決められた大きさの複数の焦点検出領域を設定する設定工程と、
前記画像信号に基づいて、前記設定工程で設定された前記複数の焦点検出領域それぞれにおける焦点状態を検出する検出工程と、
前記複数の焦点検出領域のうち、予め決められた条件を満たす第1の領域と、前記特徴領域を含む第2の領域と、を選択する選択工程と、
前記検出工程で検出された焦点状態に基づく、前記第1の領域の焦点状態の第1の履歴と、前記第1の領域の焦点状態と前記第2の領域の焦点状態との差の第2の履歴とから、任意の時間における前記第2の領域の焦点状態を予測する予測工程と、
前記予測工程で予測された前記第2の領域の焦点状態に基づいて、前記第2の領域に合焦させるための、焦点調節手段の駆動量を求める取得工程と
を有することを特徴とする焦点検出方法。
(項目20)
コンピュータを、項目1乃至16のいずれか1項目に記載の焦点検出装置の各手段として機能させるためのプログラム。
(項目21)
項目20に記載のプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【0082】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0083】
100:レンズ装置、103:フォーカスレンズ、105:レンズコントローラ、200:カメラ本体、201:撮像素子、204:AF信号処理部、209:システム制御部、210:レンズ通信部、211:被写体検出部、219:被写体移動予測部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17