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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105021
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】風力発電の監視装置、再学習方法
(51)【国際特許分類】
   G06V 20/52 20220101AFI20250703BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20250703BHJP
   G06V 10/82 20220101ALI20250703BHJP
   G06V 10/774 20220101ALI20250703BHJP
   G06V 10/98 20220101ALI20250703BHJP
【FI】
G06V20/52
G06T7/00 640
G06T7/00 350C
G06V10/82
G06V10/774
G06V10/98
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223275
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】517332845
【氏名又は名称】Arithmer株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517356058
【氏名又は名称】株式会社ユーラステクニカルサービス
(72)【発明者】
【氏名】村上 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】林 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 文也
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096BA02
5L096DA03
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】監視負担を軽減する風力発電の監視装置を提供する。
【解決手段】監視装置20は、画像取得部24Aと、記憶部21と、判定部24Bと、入出力部22と、を備える。画像取得部24Aは、監視対象の画像を定期的に取得する。記憶部21は、所定のネットワーク構造と正常画像データとを用いて構築され、入力された画像が正常でない場合に異常と判定する「異常判定モデル」を実行するための情報を記憶する。判定部24Bは、異常判定モデル用いて、定期的に取得した監視対象の画像が異常であるか否かを判定する。入出力部22は、判定部24により異常であると判定された場合に注意信号を出力する。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の画像を定期的に取得する画像取得部と、
所定のネットワーク構造と正常画像データとを用いて構築され、入力された画像が正常でない場合に異常と判定する異常判定モデルを実行するための情報を記憶する記憶部と、
前記異常判定モデル用いて、定期的に取得した監視対象の画像が異常であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により異常であると判定された場合に注意信号を出力する出力部と、
前記正常画像データを用いて前記異常判定モデルを構築する学習部と、
を備える、風力発電の監視装置。
【請求項2】
前記学習部による処理が実行されているときに、前記判定部による処理が実行される、請求項1に記載の風力発電の監視装置。
【請求項3】
画像データを表示し、正常であるか否かの設定の入力を受け付ける入出力部をさらに備える、
請求項1に記載の風力発電の監視装置。
【請求項4】
前記注意信号が所定期間に所定回数出力された場合、前記異常判定モデルの再学習を実行する、
請求項1に記載の風力発電の監視装置。
【請求項5】
前記異常判定モデルは、正常画像データを用いて前記ネットワーク構造を学習することにより構築される、
請求項1に記載の風力発電の監視装置。
【請求項6】
前記異常判定モデルは、前記ネットワーク構造を用いて正常画像データから所定の統計量を算出することで構築される、
請求項1に記載の風力発電の監視装置。
【請求項7】
請求項1に記載の風力発電の監視装置に用いられる、前記異常判定モデルを再学習する再学習方法であって、
再学習モードがオンのときに、第1枚数が蓄積されるまで第1時間間隔で画像データを蓄積し、
蓄積された画像データと前記ネットワーク構造とを用いて、入力された画像が正常であるか否かを判定する第1判定モデルを構築し、
前記第1判定モデルが正常と判定した第1判定後画像データを第2時間間隔で蓄積し、前記第1判定後画像データを表示し、正常であるか否かの設定を受け付け、
正常であると設定された第1判定後画像データが第2枚数分蓄積された場合、当該第1判定後画像データと前記ネットワーク構造とを用いて、入力された画像が正常であるか否かを判定する第2判定モデルを構築し、
前記第2判定モデルを新たな異常判定モデルとして設定する、再学習方法。
【請求項8】
前記第2判定モデルが正常と判定した第2判定後画像データを第3時間間隔で蓄積し、前記第1判定後画像データ及び/又は前記第2判定後画像データを表示し、正常であるか否かの設定を受け付け、
第3枚数分蓄積されるまでの間、正常であると設定された第2判定後画像データが第4枚数分蓄積される毎に前記第2判定モデルを再構築し、
再構築が所定回数実行された後の前記第2判定モデルを新たな異常判定モデルとして設定する、
請求項7に記載の再学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風力発電の監視装置及び再学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電設備等の遠隔監視が行われている。例えば、特許文献1(特開2014-0 20250号公報)には、発電装置における主軸受、増速機および発電機を格納する筐体の内部の検査における作業負担を軽減する監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-020250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の発電装置用監視装置では、施設の内部の画像を取得し、その画像により施設の内部の状態を目視確認できるようにしている。
【0005】
しかしながら、発電設備等の異常は比較的長期間の変化から判断されることが多く、必ずしも常時監視する必要があるわけではない。むしろ、監視頻度が多いと監視負担が増大することがある。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、監視負担を軽減し得る監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点に係る風力発電の監視装置は、画像取得部と、記憶部と、判定部と、出力部と、を備える。画像取得部は、監視対象の画像を定期的に取得する。記憶部は、所定のネットワーク構造と正常画像データとを用いて構築され、入力された画像が正常でない場合に異常と判定する異常判定モデルを実行するための情報を記憶する。判定部は、異常判定モデル用いて、定期的に取得した監視対象の画像が異常であるか否かを判定する。出力部は、判定部により異常であると判定された場合に注意信号を出力する。
【0007】
したがって、第1観点に係る風力発電の監視装置は、異常判定モデル用いて、定期的に取得した監視対象の画像が異常であるか否かを判定し、判定部により異常であると判定された場合に注意信号を出力するので、監視者は常時目視で監視する必要がなく、その監視負担を軽減することができる。
【0008】
さらに、正常画像データを用いて異常判定モデルを構築する学習部を備えるので、異常判定モデルの構築とその異常判定モデルを用いた処理とを単一の装置で実行できる。
【0009】
第2観点に係る風力発電の監視装置は、第1観点に係る監視装置であって、学習部による処理が実行されているときに、判定部による処理が実行されるものである。第2観点に係る監視装置であれば、学習が完了する前から異常判定が行われるので未監視時間を短くすることができる。
【0010】
第3観点に係る風力発電の監視装置は、第1観点に係る監視装置であって、画像データを表示し、正常であるか否かの設定の入力を受け付ける入出力部をさらに備えるので、監視者による正常及び異常の基準を反映させた異常判定モデルを構築することができる。
【0011】
第4観点に係る風力発電の監視装置は、注意信号が所定期間に所定回数出力された場合、異常判定モデルの再学習を実行する。補足すると、対象物を遠隔監視するために用いる異常判定モデルでは、固定位置に設置されたカメラで撮影された画像が定期的に入力され、定期的に異常発生の有無が判定される。しかし、カメラを一定期間使用すると、カメラの位置が緩やかに変化することがあり、異常判定モデルの信頼性が低下することがある。そこで、異常判定モデルの信頼性が低下した場合、当該モデルを再構築する必要が生じる。第5観点に係る監視装置は、上記構成により、適切なタイミングで異常判定モデルの再構築を実行できる。
【0012】
第5観点に係る風力発電の監視装置は、異常判定モデルが、正常画像データを用いてネットワーク構造を学習することにより構築されるものである。第5観点に係る監視装置では、正常画像データ以外の画像データを収集する必要がないので異常判定モデルを容易に構築できる。
【0013】
第6観点に係る風力発電の監視装置は、異常判定モデルが、ネットワーク構造を用いて正常画像データから所定の統計量を算出することで構築されるものである。第6観点に係る監視装置では、正常画像データ以外の画像データを収集する必要がないので異常判定モデルを容易に構築できる。
【0014】
第7観点に係る再学習方法は、第1観点に係る風力発電の監視装置に用いられる、異常判定モデルを再学習する方法である。この方法では、再学習モードがオンのときに、第1枚数が蓄積されるまで第1時間間隔で画像データを蓄積する。次に、蓄積された画像データとネットワーク構造とを用いて、入力された画像が正常であるか否かを判定する第1判定モデルを構築する。そして、第1判定モデルが正常と判定した第1判定後画像データを第2時間間隔で蓄積する。次に、第1判定後画像データを表示し、正常であるか否かの設定を受け付ける。そして、正常であると設定された第1判定後画像データが第2枚数分蓄積された場合、当該第1判定後画像データとネットワーク構造とを用いて、入力された画像が正常であるか否かを判定する第2判定モデルを構築する。そして、第2判定モデルを新たな異常判定モデルとして設定する。
【0015】
ここで、異常判定モデルを再学習するためには、多数の画像データを収集する必要がある。そのため、再学習に用いる画像データを収集する時間を比較的長く設定する必要がある。第7観点に係る方法によれば、第1判定モデルを利用して第2判定モデルを段階的に構築するので、信頼性の高い異常判定モデルを素早く構築することができる。
【0016】
第8観点に係る方法では、第7観点に係る再学習方法であって、さらに、第2判定モデルが正常と判定した第2判定後画像データを第3時間間隔で蓄積する。そして、第1判定後画像データ及び/又は第2判定後画像データを表示し、正常であるか否かの設定を受け付ける。次に、第3枚数分蓄積されるまでの間、正常であると設定された第2判定後画像データが第4枚数分蓄積される毎に第2判定モデルを再構築する。そして、再構築が所定回数実行された後の第2判定モデルを新たな異常判定モデルとして設定する。
第8観点に係る方法によれば、所定回数、第2判定モデルを再構築するので、信頼性の高い異常判定モデルを提供することができる。
【0017】
<用語>
本開示において「学習」という用語は、学習データに基づいて機械学習モデルの条件を構築する任意の態様を意味する。したがって、本発明において「再学習」とは、所定のネットワーク構造のパラメータの値を機械学習により設定し直す意味だけでなく、機械学習モデルに関連する任意の条件を再構築して設定する意味を含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る監視装置20の構成を示す模式図である。
図2】同実施形態に係る画面G1を説明するための模式図である。
図3】同実施形態に係る監視対象の画像の一例を示す模式図である。
図4】同実施形態に係る監視装置20の「推論モード」の動作を説明するためのフローチャートである。
図5】同実施形態に係る監視対象の画像を説明するための模式図である。
図6】同実施形態に係る画面G2を説明するための模式図である。
図7】同実施形態に係る画面G3を説明するための模式図である。
図8】同実施形態に係る監視装置20の「自動再学習モード」の動作を説明するためのフローチャートである。
図9】同実施形態に係る画面G4を説明するための模式図である。
図10】同実施形態に係る画面G5を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)風力発電の監視装置の構成
【0020】
図1は本実施形態に係る監視装置20の構成を示す模式図である。便宜上、以下の説明において、監視対象は風力発電設備であるとする。さらに具体的には、風力発電設備における制御室の内部にカメラ15を設置し、制御室の内部を監視対象とする。ただし、本実施形態に係る監視装置20の監視対象はこれに限定されるものではなく、任意の対象物であってよい。
【0021】
監視装置20は、カメラ15を介して監視対象の画像を定期的に取得し、その画像から監視対象に異常が生じているか否かを定期的に監視する。また、監視装置20は監視結果を監視者が操作するユーザ端末装置30に送信する。このような監視装置20は任意のコンピュータにより実現することができる。ここでは、監視装置20は、記憶部21、入出力部22、通信部23、処理部24を備える。なお、監視装置20は、LSI(Large Sc ale Integration),ASIC(Application Specific Integrated Circuit),FPGA(Field-Programmable Gate Array)などを用いてハードウェアとして実現されるものでもよい。
【0022】
記憶部21は、各種情報を記憶するものであり、メモリ及びハードディスク等の任意の記憶装置により実現される。具体的に、記憶部21は、異常判定モデルを実行するための情報を記憶する。「異常判定モデル」は、所定のネットワーク構造と正常画像データとを用いて構築され、入力された画像が正常でない場合に異常と判定する。ここでは、異常判定モデルは、所定のネットワーク構造を用いて正常画像データから所定の統計量を算出することで構築される。例えば、異常判定モデルは、Wide-ResNet等のネットワーク構造を用いてPaDiMなどのフレームワークにより構築することができる。
【0023】
入出力部22は、キーボード、マウス、タッチパネル等により実現され、コンピュータに各種情報を入力したり、コンピュータから各種情報を出力したりするものである。ここでは、入出力部22は、図2に示すような画面G1をディスプレイに表示する。また、入出力部22は、この画面G1を介してユーザからの各種設定情報の入力を受け付ける。例えば、画面G1を介して、後述する推論モードのオンオフ、自動再学習モードのオンオフを設定することができる。ここでは、画面G1は、画像表示部d1、管理情報表示部d2、設定受付部d3、モード設定部d4を含んでいる。画像表示部d1には監視対象の画像が表示されており、例えば制御室内の構造物の画像が表示される。管理情報表示部d2は監視者向けの情報が表示されており、異常判定に用いる「現在のしきい値」などの情報が表示される。設定受付部d3は、監視者からの各種設定情報の入力を受け付ける部分である。モード設定部d4は、「推論モード」「自動再学習モード」のオンオフの設定を受け付ける部分である。
【0024】
また、入出力部22は、監視対象に異常があると判定された場合、その異常箇所を認識可能な態様で画像を出力する。例えば、入出力部22は、監視対象の画像に異常が生じた場合、異常度合いが反映されたヒートマップを出力する。より具体的には、各領域の異常度に応じて色分けされたヒートマップHが出力される(図3参照)。
【0025】
通信部23は、任意のネットワークカード等により実現され、有線又は無線によりネットワーク上の通信機器との通信を可能にするものである。通信部23は、監視対象の画像に異常が生じた場合、ユーザ端末装置30などに「注意情報」を送信する。
【0026】
処理部24は、各種情報処理を実行するものであり、CPUやGPUといったプロセッサ及びメモリにより実現される。ここでは、コンピュータのCPU,GPU等に記憶部2 1に記憶されたプログラムが読み込まれることにより、処理部24が、画像取得部24A、判定部24B、学習部24Cとして機能する。
画像取得部24Aは、カメラ15などを介して監視対象の画像を取得し、取得した画像を記憶部21に随時蓄積する。
【0027】
判定部24Bは、異常判定モデルを用いて、定期的に取得した監視対象の画像が異常であるか否かを判定する。具体的に、判定部24Bは、「推論モード」がオンの状態に設定されているときには、後述する判定処理を実行する。
【0028】
学習部24Cは、異常判定モデルを構築するものである。具体的に、学習部24Cは、学習用の正解画像データを用いて異常判定モデルを構築する。また学習部24Cは、「自動再学習モード」がオンの状態に設定されているときには、後述する再学習処理を実行する。
【0029】
(2)風力発電の監視装置の動作
(2-1)推論モード
図4は本実施形態に係る監視装置20の「推論モード」の動作を説明するためのフローチャートである。
まず、監視装置20において、「推論モード」のオンオフの設定が行われる。監視装置 20は、「推論モード」がオンの状態に設定されているときには、画像データを定期的に取得する(R1,R2)。推論モードのオンオフの切り替えは、例えば図2に示すボタン b1をクリックする等により入出力部22を介して行われる。
【0030】
続いて、監視装置20は、取得した画像データから所定の大きさの領域に分割された特徴量マップを生成する。具体的には、所定のネットワーク構造に、取得した画像データを入力し、ネットワーク構造から抽出される特徴量に基づいて特徴量マップを生成する。例えば、監視装置20は、取得した画像が224×224ピクセルである場合、縦横を8分の1に圧縮し、28×28ピクセルの特徴量マップを生成する。換言すると、監視装置2 0は、取得された画像の縦横を28分割したときに形成される領域(図5の破線参照)毎に特徴量を有する特徴量マップを生成する(R3)。なお、ネットワーク構造としてはWi de-ResNet等を使用することができる。
【0031】
次に、監視装置20は分割された領域毎の異常度を算出する(R4)。異常度の算出に際しては、N枚(Nは任意の自然数)の正常画像データから、分割された各領域に対応する特徴量の平均値及び共分散行列を求めておく。そして、正常画像データから得られる分割された各領域の特徴量のN次元正規分布と、取得した画像データから得られる分割された各領域の特徴量とを比較することで異常度が算出される。また、監視装置20は、各領域の異常度に応じて、ヒートマップを作成する。
【0032】
監視装置20は、分割された各領域における異常度がしきい値より大きい場合、異常が生じていると判定し、注意信号を出力する(R5-Yes,R6)。監視装置20は、注意信号の出力に応じて、異常が生じている旨が記載された電子メールなどを監視者のユーザ端末装置30に送信する。
【0033】
一方、監視装置20は、分割された各領域における異常度がしきい値以下の場合、異常が生じていない旨を時刻に関連付けて記録し、推論モードがオフになるまで一定時間経過する度にステップR1~R5の処理を繰り返す(R5-No,R1-No)。
【0034】
なお、上述したしきい値は監視者により適時変更することができる。具体的には、図2に示す画面G1において、「しきい値の設定」欄c1をクリックすると、図6に示すような画面G2が表示され、しきい値を変更することができる。
【0035】
また、監視者は画像データの各領域に対する、しきい値の設定を変えることもできる。具体的には、図2に示す画面G1において、「注視領域の設定」欄c2をクリックすると、図7に示すような監視対象の画像G3が表示される。ここで、図7に示す画像G3は縦横に28個に区切られた領域に分割されており、ポインタ等で画像をクリックすると、そのポインタが配置された領域の色が変わる。そして、色が変わった領域に対して、他の領域とは異なるしきい値を個別に設定することができる。
【0036】
(2-2)自動再学習モード
図8は本実施形態に係る監視装置20の「自動再学習モード」の動作を説明するためのフローチャートである。
撮影領域が固定された画像を用いて対象物を監視している場合、画像上には異常が見当たらないのに、異常と判定されることがある。これは、カメラが固定位置から移動したり、向きが変わったりするなどの原因で生じる。カメラの位置が変化した場合、その変化した位置におけるカメラで撮影した画像データを用いて異常判定モデルを再構築しないと、その後も異常が生じていないのに注意信号が出力され続けることになる。
【0037】
そこで、監視装置20は、注意信号が所定期間に複数回生じている場合は、異常判定モデルを自動で再構築する自動再学習モードの実行を促す。具体的には、自動再学習モードの実行を促す旨が記載された電子メールが監視者のユーザ端末装置30に送信される。そして、監視者が「自動再学習モード」をオンにすると再学習処理が実行される(S1)。再学習モードのオンオフの切り替えは、例えば図2に示すボタンb2をクリックする等により入出力部22を介して行われる。
【0038】
監視装置20は「自動再学習モード」がオンの状態になると、「推論モード」をオフの状態にする(S2)。そして、監視装置20は、監視対象の画像データが50枚(第1枚数)蓄積されるまで、定期的に(第1時間間隔で)画像データを取得する(S3~S5)。ここでは、例えば3時間毎に画像データが取得される。
【0039】
次に、監視装置20は、蓄積された50枚の画像データに基づいて、入力された画像データが正常であるか否かを示す「第1判定モデル」を構築する。この際、蓄積された50枚の画像データを、全て正常画像データであるとみなす。そして、蓄積された50枚の画像データと、異常判定モデルを構築するためのネットワーク構造(例えばWide-ResNet)とにより第1判定モデルが構築される。
【0040】
続いて、監視装置20は、監視対象の画像データが100枚(第2枚数)蓄積されるまで、定期的に(第2時間間隔で)画像データを取得する(S7~S9)。この際、第1判定モデルを用いて異常画像データを除去するので効率良く画像データを取得できる。
【0041】
また、ステップS7~S9の任意のタイミングで、監視者は、これまで蓄積した画像データを確認し、正常であるか異常であるかのラベルを修正することができる(S8)。具体的には、図2に示す画面G1で、「外れ値除去」欄c3を押下すると、これまでに蓄積された画像が表示される画面G4に遷移する。画面G4は、図9に示すように、「正常」又は「異常」を択一的に選択可能なラジオボックスr1,r2とともに対応する画像データを表示する。これにより、ステップS3~S5で正常画像データとみなした画像データの中に異常画像データが含まれていたとしても、そのような異常画像データを除去することができ、異常判定モデルの信頼性を高めることができる。例えば、監視対象の制御室に作業員が存在して画像に映り込んでいる等の場合には、その部分の異常度が大きく算出されることになる。そこで、監視装置20では、そのような外れ値を生じさせる画像を除外できるようにしている。
【0042】
また、図2に示す画面G1で「誤判定の修正」欄c4を押下すると、これまでに異常であると判定した画像が表示される画面G5に遷移する。画面G5は、図10に示すように、「正常」と「異常」を択一的に選択可能なラジオボックスr3,r4とともに対応する画像データを表示する。これにより、ステップS7で第1判定モデルにより異常と判定された画像データの中に正常画像データが含まれていた場合、そのような誤判定された正常画像データを学習用画像に追加することができる。結果として、異常判定モデルの信頼性を改善することができる。なお、正常画像データとして修正される画像データは1枚ではなく複数枚にコピーして学習用画像として追加することもできる。
【0043】
次に、監視装置20は、蓄積された100枚(第2枚数)の画像データに基づいて、入力された画像データが正常であるか否かを示す「第2判定モデル」を構築する(S10)。第2判定モデルは異常判定モデルを構築するためのネットワーク構造(例えばWide-Res Net)と蓄積された100枚の画像データとを用いて構築される。
また、監視装置20は、第2判定モデルが構築されると、推論モードをオンの状態にする(S11)。これにより、対象物の監視を素早く復旧する。
【0044】
続いて、監視装置20は、監視対象の画像データが1000枚(第3枚数分)蓄積されるまで、定期的に(第3時間間隔で)画像データを取得する(S12~S16)。この際、第2判定モデルを用いることで異常画像データを除去するので、効率良く画像データを取得できる。また、ステップS12~S14の任意のタイミングで、これまで蓄積した画像データを確認し、正常であるか異常であるかのラベルを修正することができる(S13)。ステップS13における処理はステップS8と同様である。
【0045】
また、監視装置20では、ステップS12~S16の処理が行われる間、画像データが 100枚(第4枚数)蓄積される度、蓄積されたデータを用いて第2判定モデルが再構築される(ステップS14-Yes,S15,S16-No)。これにより、第2判定モデルの信頼性を高めていくことができる。
【0046】
そして、監視装置20は、監視対象の画像データが1000枚蓄積されると、自動再学習モードを終了し、その時点での第2判定モデルを「新たな異常判定モデル」として設定する(S16-Yes,S17)。
【0047】
なお、上記説明において、監視対象の画像データの蓄積枚数を1000枚としたが、この数値は説明の便宜上、設定したにすぎないものである。すなわち、監視対象の画像データの蓄積枚数は、「新たな異常判定モデル」を構築するのに必要十分な枚数が適宜設定される。
【0048】
また、上記説明において、第2判定モデルを再構築する処理を数回実行しているが必ずしもこのような処理を実行する必要はなく、ステップS12~S16は適宜省略してもよいものである。ステップS12~S16を実行しない場合、ステップS10で構築された第2判定モデルが「新たな異常判定モデル」として設定される。
【0049】
(3)風力発電の監視装置の特徴
以上説明したように、本実施形態に係る監視装置20は、異常判定モデル用いて、定期的に取得した監視対象の画像が異常であるか否かを判定し、判定部24Bにより異常であると判定された場合に注意信号を出力するので、監視者は常時目視で対象物を監視する必要がなく、監視負担を軽減することができる。
【0050】
特に、監視装置20は、遠隔地に設けられる発電設備などを監視するのに好適である。例えば、揺れや動きの激しい風力発電機のナセル内機器や、風力発電機のブレード等に適用したこの監視装置20は、画像を収集して異常判定モデルを自動的に再構築するので、カメラの画角などが変化した場合であっても、カメラの位置を修正する等のメンテナンス作業を必要としないという顕著な特徴を有している。
【0051】
また、監視装置20は、注意信号が所定期間に所定回数出力された場合、異常判定モデルの再構築を実行するので、適切なタイミングで異常判定モデルの再構築をできる。
【0052】
また、監視装置20において、所定のネットワーク構造を用いて正常画像データから所定の統計量を算出することで構築される異常判定モデルが用いられる。正常画像データ以外の画像データを収集する必要がないので、異常判定モデルを容易に構築することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る監視装置20では、異常判定モデルが自動的に再構築される。ここで、異常判定モデルを再構築するためには、多数の画像データを収集する必要がある。学習に要する画像データを収集する間は、異常判定モデルを使用することができなくなるので、その間は監視対象の異常判定を実行することができなくなる。これに対し、上述した自動再学習モードにより実行される方法によれば、第1判定モデル及び第2判定モデルを段階的に構築し、異常判定モデルの再構築が完了するのを待たずに推論モードをオンにするので、判定処理を素早く復旧することができる。
【0054】
また、上述した自動再学習モードにより実行される方法によれば、所定回数、第2判定モデルを再構築するので、信頼性の高い異常判定モデルを提供することができる。
【0055】
また、監視装置20は、蓄積した画像データを表示し、正常であるか否かの設定を受け付ける。これにより、自動で画像データを収集して異常判定モデルを構築した場合であっても、信頼性の高い異常判定モデルを提供することができる。要するに、本実施形態に係る再学習方法では、信頼性に僅かな改善の余地を残す代わりに早期に異常判定モデルを構築し、後から信頼性を高くできるようにしている。特に、経時的変化の少ない監視対象の場合、取得される画像データが正常であることが多いので、このような再学習方法を好適に用いることができる。
【0056】
(4)変形例
上記説明において、異常判定モデルは、所定のネットワーク構造を用いて正常画像データから所定の統計量を算出することで構築されるとしたが、異常判定モデルはこれに限定されるものではない。例えば、異常判定モデルとして、ネットワーク構造を、正常画像データを用いて学習することにより構築されるものを採用してもよい。このような異常判定モデルはAuto EncoderやGANなどで構築することができる。この場合も、正常画像データだけを収集すればよいので異常判定モデルを容易に構築できる。
【0057】
また、上記説明において、ユーザ端末装置30と監視装置20とを別の装置として説明したが、これらは一体的に構成されていてもよいものである。さらに、監視装置20は、任意の構成のシステムとして構築されてもよいものである。例えば、監視装置20は、制御室の内部に設けられてもよいし、制御室の内部に設けられた通信装置を介して通信可能なクラウド上に設けられてもよい。また、監視装置20は学習部以外を制御室の内部に設け、学習部だけをクラウド上に設けるなどの態様であってもよいものである。
【0058】
<他の実施形態>
本開示は、上記各実施形態そのままに限定されるものではない。本開示は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。また、本開示は、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の開示を形成できるものである。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素は削除してもよいものである。さらに、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよいものである。
【符号の説明】
【0059】
10 制御室(対象物)
15 カメラ
20 監視装置
21 記憶部
22 入出力部
23 通信部
24 処理部
24A 画像取得部
24B 判定部
24C 学習部
図1
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図10