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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010503
(43)【公開日】2025-01-21
(54)【発明の名称】試験室及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20250110BHJP
   F25B 5/02 20060101ALI20250110BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20250110BHJP
   F25B 1/10 20060101ALI20250110BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
F25B49/02 A
F25B5/02 Z
F25B1/00 101E
F25B1/00 101F
F25B1/10 Z
F25B1/00 361A
F25B1/10 R
F25B1/00 331E
F25B1/00 396D
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024104570
(22)【出願日】2024-06-28
(31)【優先権主張番号】23184052.1
(32)【優先日】2023-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】517381603
【氏名又は名称】バイス テヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツァート ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】ハック クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】タイヒマン ヨハネス
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050EA01
2G050EA02
2G050EC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、試験材料を収容するための試験室、特に人工気候室の試験空間の空気を調和させるための試験室及び方法に関する。
【解決手段】試験空間は、周囲の環境から密閉され、かつ断熱されるように構成され、試験室の温度制御装置の冷却装置10は、冷媒として二酸化炭素を用いる冷却回路11と、試験空間内の熱交換器12と、低圧コンプレッサー13と、高圧コンプレッサー14と、ガス冷却器15と、冷媒の流れ方向における、低圧コンプレッサーの下流の膨張弁16とを備え、試験室内に-20℃-+180℃の温度範囲内の温度を実現するために用いられ、試験室の制御装置は、試験空間の温度及び/又は相対湿度を制御するために用いられる。冷却回路の除湿バイパス20は、第2膨張弁21と第2熱交換器22とを備え、試験空間の空気を除湿するために用いられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験材料を収容するための、試験室、特に人工気候室の試験空間における空気を調和させる方法であって、
前記試験空間は、周囲の環境から密閉され、かつ断熱されるように構成され、
前記試験室の温度制御装置の冷却装置(10,30,34,41,46)は、
冷媒として二酸化炭素(CO)を用いる冷却回路(11,31,35,42,47)と、前記試験空間にある熱交換器(12)と、低圧コンプレッサー(13)と、高圧コンプレッサー(14)と、ガス冷却器(15,33,43)と、前記冷媒の流れ方向における、前記低圧コンプレッサーの下流の膨張弁(16)とを備え、
前記試験空間の中に、-20℃から+180℃の温度範囲内の温度を実現するために用いられ、
前記試験室の制御装置は、前記試験空間の温度及び/又は相対湿度を制御するために用いられ、
前記冷却回路の除湿バイパス(20,36)は、
前記試験空間に、第2膨張弁(21,37)と、第2熱交換器(22,38)とを備え、
前記試験空間の中の空気を除湿するために用いられる、
方法。
【請求項2】
前記除湿バイパス(20,36)は、前記ガス冷却器(15,33,43)の下流かつ前記膨張弁(16)の上流において、前記冷却回路(11,31,35,42,47)の高圧側(19,49)に接続され、前記熱交換器(12)の下流かつ前記低圧コンプレッサー(13)の上流において、前記冷却回路の低圧側(17,40)に接続され、
前記冷媒は、前記第2熱交換器(22,38)が冷却されるように、前記高圧側から前記低圧側に、前記第2膨張弁(21,37)を経由して計量されて供給される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記冷却回路(11,31,35,42,47)には、少なくとも第3膨張弁(27)を持つ第2バイパス(26)が形成され、
前記第2バイパスは、前記ガス冷却器(15,33,43)の下流かつ前記膨張弁(16)の上流において、前記冷却回路の高圧側(19,49)に接続され、前記熱交換器(12)の下流かつ前記低圧コンプレッサー(13)の上流において、前記冷却回路の低圧側(17,40)に接続され、
前記冷媒を、前記低圧側に、前記第3膨張弁を経由して計量して供給することによって、前記低圧コンプレッサーの上流の前記冷却回路の前記低圧側にある前記冷媒の吸込ガスの温度及び/又は吸込ガスの圧力が制御される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記冷却回路(11,31,35,42,47)には、少なくとも1つの他の弁(29)を有する他のバイパス(28)が形成され、
前記他のバイパスは、前記高圧コンプレッサー(14)の下流かつ前記ガス冷却器(15)の上流において、前記冷却回路の高圧側(19,49)に接続され、前記熱交換器(12)の下流かつ前記低圧コンプレッサー(13)の上流において、前記冷却回路の低圧側(17,40)に接続され、
前記冷媒を、前記低圧側に、前記他の弁を経由して計量して供給することによって、
前記低圧コンプレッサーの上流の前記冷却回路の前記低圧側にある前記冷媒の吸込ガスの温度及び/又は吸込ガスの圧力が制御される、及び/又は、
前記冷却回路の前記高圧側と前記低圧側との間の圧力の差が均一にされる、
請求項1-3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記高圧コンプレッサー(14)及び/又は前記低圧コンプレッサー(13)の回転速度が制御される、
請求項1-4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記試験空間の中の前記温度が上昇させられている、又は一定に保たれている間に、前記冷却回路(11,31,35,42,47)の低圧側(17,40)における吸込ガスの圧力が減少させられ、
前記第2熱交換器(22,38)と前記試験空間との間の温度差が増加させられる、
請求項1-5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記試験空間の中の空気が除湿されるように、前記熱交換器(12)と前記試験空間との間の温度差が増加させられる、
請求項1-6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記試験空間の中の前記温度が下げられている間に、前記冷却回路(11,31,35,42,47)の低圧側(17,40)における吸込ガスの圧力が上昇されられて、
前記第2熱交換器(22,38)と前記試験空間との間の温度差が減少させられる、
請求項1-5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記冷却回路(47)は、前記ガス冷却器(43)の下流かつ前記膨張弁(16)の上流において、前記冷却回路の高圧側(49)に接続され、前記高圧コンプレッサー(14)の上流かつ前記低圧コンプレッサー(13)の下流において、前記冷却回路の中圧側(50)に接続されている中圧バイパス(48)を有し、
前記冷媒は、前記高圧側から前記中圧側に、他の膨張弁(51)を経由して計量されて供給される、
請求項1-8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記冷却回路(11)は、前記ガス冷却器(15)の下流かつ前記膨張弁(16)の上流において、前記冷却回路の高圧側(19)に接続されている内部熱交換器(23)を有し、
前記内部熱交換器は、前記冷却回路の中圧バイパス(24)に結合され、
前記中圧バイパスは、前記内部熱交換器又は前記ガス冷却器の下流かつ前記膨張弁の上流において、前記高圧側に接続され、前記高圧コンプレッサー(14)の上流かつ前記低圧コンプレッサー(13)の下流において、前記冷却回路の中圧側(18)に接続され、
前記冷媒は、他の膨張弁(25)によって、前記高圧側から、前記内部熱交換器を経由して、前記中圧側に計量されて供給される、
請求項1-8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記冷却回路(31,35)の中圧側(32)は、前記高圧コンプレッサー(14)の上流かつ前記低圧コンプレッサー(13)の下流において、前記ガス冷却器(33)に接続され、
前記冷媒は、前記低圧コンプレッサーから前記高圧コンプレッサーに、前記ガス冷却器を経由して供給される、
請求項1-8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記冷却回路(42)の中圧側(44)は、前記高圧コンプレッサー(14)の上流かつ前記低圧コンプレッサー(13)の下流において、中圧の冷却器(45)に接続され、
前記冷媒は、前記低圧コンプレッサーから前記高圧コンプレッサーに、前記中圧の冷却器を経由して供給される、
請求項1-8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記冷却回路(11,31,35,42,47)は、熱力学的に亜臨界又は超臨界の動作状態において動作させられる、
請求項1-12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
純粋な二酸化炭素(CO)が、前記冷媒として使用される、
請求項1-13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記温度制御装置は、前記試験空間の中に、-40℃から+180℃、好ましくは-50℃から+180℃の温度範囲内の温度を実現するために用いられる、
請求項1-14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記温度制御装置は、前記試験空間の中に、+10℃から+90℃、好ましく+5℃から+98℃の温度範囲内の温度において、10%から95%、好ましくは5%から99%の範囲内の相対湿度を実現するために用いられる、
請求項1-15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
空気を調和させるための、試験室、特に人工気候室であって、
前記試験室は、
試験材料を収容するための試験空間であって、
前記試験空間は、周囲の環境から密閉され、かつ断熱されるように構成された、
試験空間と、
前記試験空間の温度を制御するための温度制御装置であって、
前記温度制御装置は、前記試験空間の中に、-20℃から+180℃の温度範囲内の温度を実現するように構成された、
温度制御装置と、を備え、
前記温度制御装置は、冷媒として二酸化炭素を用いる冷却回路(11,31,35,42,47)を持つ冷却装置(10,30,34,41,46)と、前記試験空間にある熱交換器(12)と、低圧コンプレッサー(13)と、高圧コンプレッサー(14)と、ガス冷却器(15,33,43)と、前記冷媒の流れ方向における、前記低圧コンプレッサーの下流の膨張弁(16)とを備え、
前記試験室は、前記試験空間の中の温度及び/又は相対湿度を制御するための制御装置を備え、
前記冷却回路は、前記試験空間の中の空気を除湿するために、前記試験空間の中に、第2膨張弁(21,37)と第2熱交換器(22,38)とを有する除湿バイパス(20,36)を備える、
試験室。
【請求項18】
前記第2熱交換器(38)の下流の前記除湿バイパス(36)には、逆止弁(39)が配置されている、
請求項17に記載の試験室。
【請求項19】
前記高圧コンプレッサー(14)と前記低圧コンプレッサー(13)とが、コンプレッサーハウジングを共有している、
請求項17又は18に記載の試験室。
【請求項20】
前記熱交換器(12)と前記第2熱交換器(22,38)とは、別個の交換器本体を有する、又は交換器本体を共有する、
請求項17-19のいずれか1項に記載の試験室。
【請求項21】
前記温度制御装置は、前記試験空間に、ヒーターと加熱用熱交換器とを有する加熱装置を備える、
請求項17-20のいずれか1項に記載の試験室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を調和させるための試験室、特に人工気候室と、試験材料を収容するための試験室、特に人工気候室の試験空間における空気を調和させる方法とに関し、試験空間は、周囲の環境から密閉され、かつ断熱されるように構成されており、試験室の温度制御装置の冷却装置は、冷媒として二酸化炭素を用いる冷却回路と、試験空間内の熱交換器と、低圧コンプレッサーと、高圧コンプレッサーと、ガス冷却器と、冷媒の流れ方向における、低圧コンプレッサーの下流の膨張弁とを備え、試験室内に-20℃から+180℃の温度範囲内の温度を実現するために用いられ、試験室の制御装置は、試験空間の温度及び/又は相対湿度を制御するために用いられる。
【背景技術】
【0002】
この種の試験室は、通常は、対象物、特にデバイスの物理的及び/又は科学的特性を試験するために使用される。例えば、-70℃から+180℃の範囲内に温度が設定され得る、温度試験キャビネット又は気候試験キャビネットが知られている。気候試験キャビネットの場合には、所望の気候条件が追加的に設定され得て、デバイス又は試験材料は、その後、規定された期間にわたって所望の気候条件に曝される。試験材料を収容している試験空間の温度は、通常は、試験空間内の空気循環ダクトを用いて制御される。空気循環ダクトは試験空間内に空気処理空間を形成し、空気循環ダクト又は試験空間を流れる空気を加熱又は冷却するための熱交換器が、空気処理空間に配置される。ファン又は換気装置が、試験空間内から空気を吸い出し、それを、空気循環ダクトを通して、それぞれの熱交換器に誘導する。試験材料は、このように温度制御されるか、又は規定された温度の変化に曝され得る。試験期間中に、温度は、例えば試験室の最高温度と最低温度との間で変化し得る。この種の試験室は、例えばEP 0 344 397 A2から知られている。
【0003】
冷却回路に使用される冷媒は、放出時の冷媒による環境への間接的な損害を避けるために、比較的に少ない二酸化炭素換算量を有するべきである、つまり相対的な地球温暖化係数(GWP)は、可能な限り小さくするべきである。したがって、二酸化炭素(CO)が純物質の冷媒として使用されることも知られている。二酸化炭素は、低コストで入手可能であり、不燃性であり、GWPが1であり実質的に環境的に中立である。二酸化炭素は、-56.6℃の凝固点温度、つまり三重点を有しており、これにより、二酸化炭素のみでより低い温度を達成することは不可能である。
【0004】
さらに、ブースターシステムと呼ばれるものとして構成された冷却装置が知られている。この冷却装置の冷却回路において、高圧コンプレッサーは、常に低圧コンプレッサーの下流に直列に接続されているので、冷媒は、低圧コンプレッサーで、その後に高圧コンプレッサーで段階的に圧縮される。試験空間の温度範囲内における温度制御に対する高い要求により、負荷要件は、試験室の動作中に頻繁に変動する。したがって、コンプレッサーと膨張弁とによって実現する冷却能力は、無限に変化しなければならない。それにもかかわらず、コンプレッサーの耐用年数を延ばすために、コンプレッサーは頻繁にオンとオフとを切り替えられないことが望ましい。
【0005】
冷媒としての二酸化炭素は、非常に高い体積冷却能力を有するので、非常に小さいストローク容積の流量を持つコンプレッサーを使用するときでさえ、非常に高い冷却能力が、冷却回路によって提供される。加えて、冷媒として二酸化炭素を用いる冷却回路の圧力範囲は、超臨界動作において非常に高く(最大120bar)、このため、冷却回路を形成するために要求される構成部品は、比較的に高価である。さらに、この種の冷却回路は、複雑な構成を有しており、大きい設置スペースを必要とする。これまでは、冷媒として二酸化炭素を用いるこの種の冷却回路を使用することは、それ相応に高い冷却能力を持ち、その結果、比較的に大きい試験空間又は大きい装置の寸法を持つ、システム又は試験室にしか適していなかった。例えば25リットルしかないような、小さい試験空間の容積を持つ、比較的に小さいシステム又は試験室における経済的な使用は、いまだ不可能である。
【0006】
非常に高い冷却能力のために、気候試験が、限られた範囲でしか実行され得ないという問題もある。規定された相対湿度及び温度が、試験空間において実現されなければならない。特に、例えば、もし試験空間内の空気が試験サイクルの間に冷却されるなら、このことは、試験空間内の空気の除湿も必要とする。空気が冷却されたときに、特に、高い冷却能力に起因して、熱交換器での結露は制御が困難であり、このことは、試験空間における空気の不要な除湿につながるおそれがある。さらに、もし、例えば非常に遅い、規定された温度変化しか、試験サイクルの一部として意図されないなら、除湿力も低すぎることがある。したがって、気候試験サイクルは、この種の冷却装置を用いて、十分な正確さで、常に実行できるとは限らない。試験空間から隔てられた空気を調和させるための特徴、例えば、試験空間内での空気交換を必要とするシステムは、コストが高く、エネルギー集約的であり、かつ試験室を極めて大きくする。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、試験室の試験空間の空気を調和させる方法と、比較的に小型で技術的に簡易な試験室の構成で実施される気候試験を可能にする試験室とを提案することである。
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法及び請求項17の特徴を有する試験室によって達成される。
【0009】
試験材料を収容するための、試験室、特に人工気候室の試験空間における空気を調和させる本発明に係る方法において、試験空間は、周囲の環境から密閉され、かつ断熱されるように構成され、試験室の温度制御装置の冷却回路は、冷媒として二酸化炭素を用いる冷却回路と、試験空間にある熱交換器と、低圧コンプレッサーと、高圧コンプレッサーと、ガス冷却器と、冷媒の流れ方向における、低圧コンプレッサーの下流の膨張弁とを備え、試験空間の中に、-20℃から+180℃の温度範囲内の温度を実現するために用いられ、試験室の制御装置は、試験空間の温度及び/又は相対湿度を制御するために用いられ、冷却回路の除湿バイパスは、試験空間に、第2膨張弁と、第2熱交換器とを備え、試験空間の中の空気を除湿するために用いられる。
【0010】
本発明に係る方法において、試験空間の周囲の環境との熱交換は、側壁、床壁、及び天井壁を断熱することによって大部分は避けられる。冷却回路を循環する冷媒が熱交換器を流れるように、熱交換器は、冷却回路に接続されるか、又はそれに統合される。冷却回路の熱交換器は、試験空間に、又は試験空間の空気処理空間に配置されるので、試験空間内の空気は、熱交換器によって調和させられるか、又は温度制御される。ガス冷却器も冷却回路に統合され、熱交換器によって形成される。ガス冷却器は、冷却回路における高圧コンプレッサーの下流に配置されており、圧縮された冷媒は、加圧後の高圧力下にあり、かつ実質的に気体、又は蒸気の状態、つまり湿り蒸気であり、ガス冷却器又は凝縮器において凝縮し得て、その後、実質的に凝集という液体状態になる。気体冷媒は、ガス冷却器において凝縮せず、実質的に気体の状態でガス冷却器を出ることもあり得る。当該のガス冷却器又は熱交換器は、例えば空気又は水で、冷媒を冷却するための手段を備え得る。特に、ガス冷却器は、水冷式又は空冷式のフィンが設けられたチューブ式熱交換器であり得る。この場合、ガス冷却器は、特に小型であり得る。冷媒は、ガス冷却器から膨張弁を経由して流れ、膨張弁を通ると、圧力低下による膨張によって、再び気体又は蒸気の状態になる。この過程において、冷媒は、熱交換器を流れて、それは結果として冷却される。その後、気体冷媒は、低圧コンプレッサー及び高圧コンプレッサーによって、再び吸い出されて圧縮される。
【0011】
本発明によれば、冷却回路の除湿バイパスは、試験空間の空気を除湿するように構成されている。この除湿は、試験サイクルの間のある時点で、特に試験空間の温度が0から100℃までの温度範囲内であるときにはいつでも行われ得る。もし試験空間内の温度が、この範囲よりも低い又は高いなら、水が液相で第2熱交換器上に凝結することはなく、除湿バイパスはこの範囲内では機能しない。したがって、試験サイクルの間、試験空間の中に-20℃から+180℃の温度が実現され得るように、冷却装置の冷却回路は設計されており、除湿バイパスによる空気の除湿は、この温度範囲の部分的な範囲内でしか行われない。冷媒を、冷却回路の高圧側から冷却回路の低圧側へ、第2膨張弁を経由して計量して供給することによって、除湿は行われる。このことは、冷媒の流れ方向における、除湿バイパスの第2膨張弁の下流に配置されている第2熱交換器の冷却をもたらす。制御装置は、それから、試験空間の空気の温度と、第2熱交換器の温度との間の所望の温度差が達成されるように、第2膨張弁を経由して冷媒を計量して供給し得る。この温度差は、試験空間の空気からの水が第2熱交換器において凝縮するように選択され得る。これにより、試験空間に実現された温度とは実質的に独立した状態で、目標を設定して試験空間の空気を除湿することが可能になる。膨張弁と第2膨張弁とは、制御装置を用いて互いに独立して、このように制御され得る。試験空間の温度の低下は、さらに、例えば多かれ少なかれ除湿を伴うことがあり、それによって、相対湿度は、より正確に設定され、又は制御され得る。全体的に、気候試験サイクルは、小型の試験室内のわずかな構成要素でより正確に行われ得る。
【0012】
除湿バイパスは、ガス冷却器の下流かつ膨張弁の上流において、冷却回路の高圧側に接続され、熱交換器の下流かつ低圧コンプレッサーの上流において、冷却回路の低圧側に接続され得て、第2熱交換器が冷却されるように、冷媒は、高圧側から低圧側へ、第2膨張弁を経由して計量されて供給され得る。第2膨張弁は、電子膨張弁、例えば、キャピラリーチューブやノズルなどによって下流の絞りを持つ電磁弁、又は温度自動膨張弁であり得る。オプションとして、除湿バイパスは、ガス冷却器の下流の任意の内部熱交換器の下流に接続されてもよい。除湿バイパスは、したがって、膨張弁及び熱交換器と平行に、冷却回路に接続されている。このようにして、除湿バイパスは、特に簡単な設計となり得る。
【0013】
冷却回路には、少なくとも第3膨張弁を持つ第2バイパスが形成され得て、第2バイパスは、ガス冷却器の下流かつ膨張弁の上流において、冷却回路の高圧側に接続され、熱交換器の下流かつ低圧コンプレッサーの上流において、冷却回路の低圧側に接続され得て、冷媒を、低圧側に、第3膨張弁を経由して計量して供給することによって、低圧コンプレッサーの上流の冷却回路の低圧側にある冷媒の吸込ガスの温度及び/又は吸込ガスの圧力が制御され得る。オプションとして、第2バイパスは、冷却回路内の内部熱交換器の下流かつガス冷却器の下流において、高圧側に接続されてもよい。低圧コンプレッサーの最終的な圧縮温度が、低圧コンプレッサーについて意図された動作範囲内であるように、第3膨張弁は、低圧コンプレッサーの上流における、吸込ガスの温度及び/又は吸込ガスの圧力に影響を与えるために用いられ得る。例えば、もし試験空間の温度が、例えば180℃からより低い温度に下げられたなら、低圧コンプレッサーの吸込ガスの温度は、特に急激に上昇し得る。熱交換器は試験空間に配置されているので、+180℃という試験空間内の特に高い温度における冷媒は、例えば、この温度において熱交換器から低圧コンプレッサーに流れ得る。大幅に過熱された冷媒が、低圧コンプレッサーに供給される前に、それは、第3膨張弁を経由して計量されて供給される冷媒によって冷却され得る。
【0014】
冷却回路には、少なくとも1つの他の弁を有するもう1つのバイパスが形成されてもよく、そのバイパスは、高圧コンプレッサーの下流かつガス冷却器の上流において、冷却回路の高圧側に接続され、熱交換器の下流かつ低圧コンプレッサーの上流において、冷却回路の低圧側に接続されてもよく、冷媒を、低圧側に、他の弁を経由して計量して供給することによって、低圧コンプレッサーの上流の冷却回路の低圧側にある冷媒の吸込ガスの温度及び/又は吸込ガスの圧力が制御され得て、及び/又は、冷却回路の高圧側と低圧側との間の圧力の差が均一にされ得る。したがって、冷媒が、高圧側から低圧側に、他の弁を経由して供給され得るように、他のバイパスは構成されている。この冷媒は、過熱状態又は気体状態であり得る。もし冷却回路が、部分負荷運転の状態で動作させられているなら、過熱状態の冷媒を、高圧側から低圧側へ、他のバイパスによって戻すことは、特に有利である。この場合に、膨張弁は、少ししか開けられないか、又は頻繁には開けられないので、低圧コンプレッサーの上流の吸込圧力が低下しすぎるリスクが存在する。冷媒として二酸化炭素を使用するときに、ドライアイスが5.16bar絶対圧以下の圧力において発生し、それは、冷却回路の安全な動作を妨げるかもしれず、低圧コンプレッサーを損傷する可能性がある。大幅に過熱された冷媒は、高圧コンプレッサーの下流から、低圧コンプレッサーの上流の地点に、他のバイパスを経由して直接的に供給され得るので、ドライアイスの生成は、効果的に防がれ得る。加えて、例えば、冷却装置が動作中ではなく、冷媒が、周囲の環境との温度の均一化の結果として加熱され、望ましくない高圧力が、冷却回路内に蓄積されるリスクが存在するときに、冷却回路の高圧側と低圧側との間の圧力の差を、他のバイパスによって均一にすることも可能である。
【0015】
高圧コンプレッサー及び/又は低圧コンプレッサーの回転速度が制御され得る。高圧コンプレッサー及び/又は低圧コンプレッサーには、コンプレッサーの回転速度が調節されることを可能にする周波数変換器が、それぞれ備えられ得る。回転速度を低下させることによって、冷媒の質量流量は、冷却回路の部分負荷運転の状態において、さらに減少させられ得て、これにより、この動作状態における冷却装置の効率がさらに向上する。さらに、冷却回路の低圧側の吸込ガスの圧力が、所望の方法により変更され、その結果、調節され得るように、低圧コンプレッサーの回転速度の制御は、低圧コンプレッサーの回転速度が、制御装置によって上昇させられる又は低下させられることを可能にする。
【0016】
試験空間の中の温度が上昇させられている、又は一定に保たれているとき、冷却回路の低圧側における吸込ガスの圧力が減少させられて、第2熱交換器と試験空間との間の温度差が増加させられることを可能にする。例えば、低圧側における吸込ガスの圧力は、もし冷却装置が、冷却回路の第2バイパス、冷却回路の他のバイパス及び/又は低圧コンプレッサーの制御可能な回転速度をもつなら、対応する方法により実現され得る。特に、冷媒の沸点が低圧側における吸込ガスの圧力に依存しているという事実によって、第2熱交換器と試験空間との間の温度差は、ここで増加させられる。したがって、吸込ガスの圧力の減少は、第2熱交換器と試験空間の温度との間の温度差を増加させることにつながる。このことは、目標を設定して試験空間の空気を除湿することが、例えば、試験空間の温度を一定にした状態で行われるときに、特に有利である。全体的に、除湿バイパス又は第2熱交換器の冷却能力は、このように向上させられ得る。
【0017】
さらに、試験空間の空気が除湿され得るように、熱交換器と試験空間との間の温度差が増加させられ得る。第2熱交換器又は除湿バイパスに加えて、熱交換器が、試験空間の空気を除湿するためにも使用され得る。除湿のために使用され得る冷却能力は、複雑な追加の構成要素を必要とせずに、このように最大化され得る。
【0018】
試験空間の温度を下げながら、冷却回路の低圧側における吸込ガスの圧力が上昇させられ得て、第2熱交換器と試験空間との間の温度差が減少させられ得る。このようにして、特に、低い冷却負荷の要件の場合には、吸込ガスの圧力は大幅に上昇させられ得る。このとき、低圧コンプレッサーは、通常は、動作温度において吸込ガスの圧力を可能な限り低く維持する。これは、例えば、第2バイパスによって、又は低圧コンプレッサーの回転速度を制御することによって行われ得る。そして、吸い込みガスの圧力が、できる限り最小限に抑えられた除湿を可能にする程度まで、吸い込みガスの圧力は上昇させられ得る。結果として、第2熱交換器は、吸込ガスの温度が0℃以下の状態で凍結しづらくなり、それによって、第2熱交換器上の氷の断熱層の形成は、完全に防がれ得るか、又は低減され得る。同様のことが熱交換器にも当てはまり、さらに、これも、吸込ガスの温度の上昇により凍結しづらくなる。熱交換器又は第2熱交換器の、熱交換器の有効表面積を増大させることによって、試験空間における熱交換器と第2熱交換器との間の温度差を減少させることもできる。しかし、もし高い除湿能力、又は試験空間の空気の急速な除湿が要求されるなら、これは不利である。
【0019】
冷却回路は中圧バイパスを有し得て、中圧バイパスは、ガス冷却器の下流かつ膨張弁の上流において、冷却回路の高圧側に接続され、高圧コンプレッサーの上流かつ低圧コンプレッサーの下流において、冷却回路の中圧側に接続され、その場合に、冷媒は、高圧側から中圧側に、他の膨張弁によって計量されて供給され得る。それから、中圧バイパスは、低圧コンプレッサーを高圧コンプレッサーに接続するライン又は中圧側への、いわゆる冷媒の中圧注入を行うために用いられ得る。中圧バイパスを経由して供給される冷媒は、それから、この場所で冷却回路を循環する冷媒と混合され得る。
【0020】
冷却回路は内部熱交換器を有し得て、内部熱交換器は、ガス冷却器の下流かつ膨張弁の上流において、冷却回路の高圧側に接続され、内部熱交換器は、冷却回路の中圧バイパスに結合され得て、中圧バイパスは、ガス冷却器の上流の内部熱交換器の下流かつ膨張弁の上流において、高圧側に接続され得て、高圧コンプレッサーの上流かつ低圧コンプレッサーの下流において、冷却回路の中圧側に接続され得て、冷媒は、他の膨張弁によって、高圧側から、内部熱交換器を経由して、中圧側に計量されて供給され得る。内部熱交換器のすぐ下流かつ膨張弁の上流において、他の膨張弁を持つ中圧バイパスは、結果として回路に接続され得る。すでに内部熱交換器を通過した冷媒も、それから、他の膨張弁を経由して供給され、膨張させられ得る。内部熱交換器は、他の膨張弁の下流の中圧バイパスにおいて接続されてもよい。他の膨張弁において膨張させられた冷媒は、内部熱交換器を流れて、結果的に冷却される。したがって、中圧側において内部熱交換器は冷却されて、その結果、内部熱交換器の高圧側の冷媒は冷却される。しかし、原理的には、冷媒が、それから、さらなる膨張弁と内部熱交換器とを経由して流れるように、中圧バイパスは、ガス冷却器の下流かつ内部熱交換器の上流において、冷却回路に接続されてもよい。内部熱交換器の下流において、中圧バイパスを経由して送られた冷媒が、この場所で冷却回路を循環する冷媒と混合され得るように、中圧バイパスは、低圧コンプレッサーと高圧コンプレッサーとの間に接続され得る。内部熱交換器を持つ中圧バイパスを使用することによって、制御装置の冷却負荷の要件に応じて、より少ない冷媒しか膨張弁を経由して流れないように、中圧バイパスを経由して冷媒を迂回させることもできる。同時に、中圧バイパスを経由して流れる冷媒は、内部熱交換器によって、高圧側の冷媒の温度を制御するために使用され得る。試験空間において、より低い冷却能力しか必要とされないときに、二酸化炭素の非常に高い体積冷却能力は、このように熱交換器の上流で迂回させられて、高圧側の冷媒を冷却するために使用される。これは、試験空間がより小型化すること、及び二酸化炭素で動作させられる冷却回路が、より小型の試験室に使用されることも可能にする。
【0021】
冷却回路の中圧側は、高圧コンプレッサーの上流かつ低圧コンプレッサーの下流においてガス冷却器に接続され得て、冷媒は、低圧コンプレッサーから高圧コンプレッサーへ、ガス冷却器を経由して送られ得る。これは、冷媒が高圧コンプレッサーに到達する前に、低圧コンプレッサーによって圧縮されて、加熱された冷媒を、ガス冷却器によって冷却することを可能にする。ガス冷却器は、冷媒を冷却するために使用され得るので、追加の熱交換器は必要とされない。
【0022】
代替的に、冷却回路の中圧側は、高圧コンプレッサーの上流かつコンプレッサーの下流において、中圧の冷却器に接続され得て、冷媒は、低圧コンプレッサーから高圧コンプレッサーに、中圧の冷却器を経由して送られ得る。そして、冷媒が高圧コンプレッサーに到達する前に、中圧の冷却器は、低圧コンプレッサーによって圧縮されて、加熱された冷媒を冷却するために特に使用され得る。
【0023】
ガス冷却器及び/又は中圧の冷却器は、空冷式又は水冷式として設計され得る。代替的に、外部冷却装置は、ガス冷却器及び/又は中圧の冷却器を冷却するために使用されてもよい。
【0024】
冷却回路は、熱力学的に亜臨界又は超臨界の動作状態において動作させられ得る。試験空間内の冷却負荷の要件に依存して、動作状態は、制御装置を使用することによって、それに応じて変更され得る。冷却回路の亜臨界の動作において、冷媒は、冷媒の臨界点以下で、ガス冷却器において液化され、膨張弁において膨張させられて、気相又は湿り蒸気に変換される。高圧コンプレッサー及び低圧コンプレッサーは、少なくとも亜臨界の動作状態において動作させられ得る。冷却回路の亜臨界の動作状態は、部分負荷運転に相当する。超臨界の動作状態において、冷媒は、実質的に気体状態で冷却回路を循環する。これは、冷媒がガス冷却器において液化されない程度まで、温度差が減少させられることを意味する。また、超臨界の動作状態において、冷媒の臨界点以上の圧力が、ガス冷却器で達せられる。もし冷却負荷要件が高いなら、又は+180℃から-20℃までの冷却が必要とされるなら、例えば、冷却回路は、超臨界で動作させられ得る。もし試験空間内の冷却負荷要件が低いなら、例えば、もし温度が一定に保たれるべきなら、又はもし周囲の温度が低いなら、冷却回路は亜臨界で動作させられ得る。このことは、超臨界の動作状態だけの場合とは対照的に、特に低い冷却負荷の要件の場合に、効率の上昇が達成されることを可能にする。亜臨界の動作状態と超臨界の動作状態との変更は、特に中圧バイパスと内部熱交換器とによって可能になる。
【0025】
好適には、純粋な二酸化炭素が、冷媒として使用され得る。純粋な二酸化炭素は、GWPが1であり、不燃性であり、無害であり、低コストで利用可能である。加えて、二酸化炭素は、純物質又は共沸性であり、これは、そもそも、方法の有利な実施と、その変形例とを可能にするものである。一方で、非共沸の性質を持つ冷媒ならば、非常に小さい温度差において、十分な量の気体冷媒を供給することは、ほとんどできず、その結果、高圧コンプレッサーの動作の制御は、ほとんどできないだろう。
【0026】
温度制御装置は、試験空間の中に、-40℃から+180℃、好ましくは-50℃から+180℃、特に好ましくは-55℃から+180℃の温度範囲内の温度を実現するために用いられ得る。
【0027】
温度制御装置は、試験空間の中に、+10℃から+90℃、好ましくは+5℃から+98℃の温度範囲内の温度において、10%から95%、好ましくは5%から99%の範囲内の相対湿度を実現するために用いられ得る。
【0028】
空気を調和させるための、本発明に係る試験室、特に人工気候室は、試験材料を収容するための試験空間と、試験空間の温度を制御するための温度制御装置とを備え、試験空間は、周囲の環境から密閉され、かつ断熱されるように構成され、温度制御装置は、試験空間の中に、-20℃から180℃の温度範囲内の温度を実現するように構成され、温度制御装置は、冷媒として二酸化炭素を用いる冷却回路を持つ冷却装置と、試験空間にある熱交換器と、低圧コンプレッサーと、高圧コンプレッサーと、ガス冷却器と、冷媒の流れ方向における、低圧コンプレッサーの下流の膨張弁とを備え、試験室は、試験空間の中の温度及び/又は相対湿度を制御するための制御装置を備え、冷却回路は、試験空間の中の空気を除湿するために、試験空間の中に、第2膨張弁と第2熱交換器とを有する除湿バイパスを備える。本発明に係る試験室の利点に関して、本発明に係る方法の利点の記述が参照されたい。
【0029】
冷媒としての二酸化炭素で動作させられる類似の冷却回路において、規定の温度範囲において冷却装置を動作させることを可能にするために、膨張弁と平行に、絞り要素を含む追加のバルブが必要とされる。除湿バイパスを使用することによって、冷却回路のこのバルブ又は対応するパイプ部分は、省略され得るので、冷却回路は製造が簡単になる。温度制御装置が空気調和モードにあるときに、熱交換器の有効表面積の大部分は、試験空間の空気を冷却するためにも使用され得るので、この場合に、試験空間の空気を冷却するための熱交換器の有効表面積は増大させられる。同等の冷却能力を達成するためには、熱交換器の有効表面積を大きくするなら、熱交換器の温度と試験空間の空気の温度との間の温度差はより小さくてもよい。冷却能力(W)は、熱交換器の表面積(m)と、熱伝達係数(W/mK)と、温度の差(K)との積から得られる。熱交換器の有効表面積が大きい場合に温度差が小さくなると、温度が露点温度以下に下がったときに、例えば熱交換器の冷たい表面上での結露による不要な除湿が減少するので、制御の精度が向上させられ得るという効果がある。除湿バイパスにおいて、第2熱交換器の下流には、逆止弁が配置され得る。逆止弁は、第2膨張弁が閉じているときに、冷媒が流れ方向とは反対方向に、第2熱交換器に移動することを防ぐために使用され得る。
【0030】
高圧コンプレッサーと低圧コンプレッサーとは、コンプレッサーハウジングを共有し得る。原理的には、高圧コンプレッサーと低圧コンプレッサーとは、2つの別個のコンプレッサーハウジングを有してもよい。共有されたコンプレッサーハウジング内で低圧コンプレッサー及び高圧コンプレッサーを使用することは、コンプレッサーのために必要とされる設置スペースを著しく減少させる。このコンプレッサーは、ローリングピストンコンプレッサー、又はカプセル型の完全に密閉した往復ピストンコンプレッサーとして設計され得る。さらに、高圧コンプレッサーの下流の冷却回路において、オイルセパレーターが取り付けられ得る。試験空間において、温度は最高で180℃に達することがあるので、この温度は、それから、熱交換器によって、そこに含まれる冷媒にも伝達される。これが原因で、冷却回路のオイルの劣化が進むおそれがあり、その結果、コンプレッサーに損傷をきたすおそれがある。少量のオイルしか非常に高い温度に曝されないように、オイルセパレーターによって、熱交換器の内部のオイルの量は可能な限り少なく保たれ得る。このことは、コンプレッサーの耐用年数をさらに延ばし得る。
【0031】
熱交換器と第2熱交換器とは、別個の熱交換器本体を有するか、又は熱交換器本体を共有し得る。この意味で、熱交換器本体は、例えば、そこを冷媒が流れる、1つ以上の部品で構成され得る本体であるとここでは理解される。これは、より優れた熱伝達のためのフィンが設けられたライン配置も含む。フィンは、それから、ライン配置(群)とともに熱交換器本体を形成する。交換器本体は、それから熱伝達のための有効表面積を有する。
【0032】
温度制御装置は、試験空間に、ヒーターと加熱用熱交換器とを持つ加熱装置を有し得る。例えば、加熱用熱交換器によって試験空間の温度の上昇が可能になるように、加熱装置は、加熱用熱交換器を加熱する電気抵抗ヒーターであり得る。もし熱交換器及び加熱用熱交換器が、試験空間を循環する空気を冷却又は加熱するように、制御装置によって目標を設定して制御され得るなら、上述の温度範囲内にある温度が、温度制御装置によって試験空間内で実現できる。
【0033】
試験室の他の実施形態は、方法の請求項1に従属する請求項の特徴の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
以下、本発明の好ましい実施形態が、添付図面を参照してより詳細に説明される。
図1図1は、冷却装置の第1実施形態の概略図である。
図2図2は、冷却装置の第2実施形態の概略図である。
図3図3は、冷却装置の第3実施形態の概略図である。
図4図4は、冷却装置の第4実施形態の概略図である。
図5図5は、冷却装置の第5実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、試験室(不図示)の冷却装置10の可能な実施形態を示す。冷却装置10は、冷媒として二酸化炭素(CO)を用いる冷却回路11と、熱交換器12と、低圧コンプレッサー13と、高圧コンプレッサー14と、ガス冷却器15と、膨張弁16とを備える。この場合には、ガス冷却器15は、熱交換器又は凝縮器のように構成され、空気又は水のような伝熱媒体によって冷却される。空気処理ダクトによって循環させられる試験空間内の空気が、熱交換器12によって冷却され得るように、熱交換器12は、試験室の試験空間の空気処理ダクト(不図示)に配置されている。さらに、冷却回路11は、低圧側17、中圧側18、及び高圧側19を有する。低圧側17において、冷媒の圧力は、中圧側18の冷媒の圧力よりも比較的に低い。中圧側18において、冷媒の圧力は、高圧側19の冷媒の圧力よりも比較的に低い。
【0036】
さらに、第2膨張弁21と第2熱交換器22とを持つ除湿バイパス20は、試験空間にも配置されており、冷却回路11に配置されている。試験空間内の空気は、第2熱交換器22、つまり除湿バイパス20によって除湿され得る。この目的のために、試験室は、試験空間内の温度及び/又は相対湿度が制御され得る制御装置(不図示)を有する。この目的を達成するために、制御装置は、特に、膨張弁16と、第2膨張弁21とを作動させ得る。これにより、試験空間内の温度が一定の、又は降下している状態でさえ、試験空間内の除湿又は相対湿度が非常に正確に実現され得る気候試験を行うために、冷却装置10が使用されることが可能になる。
【0037】
冷却回路11は、冷媒の流れ方向における下流に内部熱交換器23を、膨張弁16の上流に中圧バイパス24を、さらに有し、中圧バイパス24は、低圧コンプレッサー13の下流、かつ高圧コンプレッサー14の上流で終わっている。他の膨張弁25は、中圧バイパス24に配置されている。他の膨張弁25は、内部熱交換器23の上流に接続されている。実質的に、液体冷媒は、今度はガス冷却器15から内部熱交換器23の高圧側19を通って供給され、もし必要ならば、内部熱交換器23の中圧側18に、他の膨張弁25を経由して計量されて供給される。この過程において、膨張弁16又は熱交換器12において、さらに低い温度が実現され得る程度まで、高圧側19の冷媒は過冷却される。同時に、中圧バイパス24を経由して流れる冷媒は、高圧コンプレッサー14の吸込ガスの温度を比較的に低く保つために用いられ得る。
【0038】
加えて、冷却回路11は、第3膨張弁27を持つ第2バイパス26を備える。冷媒の流れ方向における、内部熱交換器23の下流かつ膨張弁16の上流と、熱交換器12の下流かつ低圧コンプレッサー13の上流とにおいて、第2バイパス26は冷却回路11に接続されている。第3膨張弁27によって、液体冷媒は、膨張弁16と熱交換器12とを通過して、低圧側17に供給され得る。これにより、低圧コンプレッサー13の上流の低圧側17において、吸込ガスの温度、及び/又は吸込ガスの圧力を制御することが可能になる。
【0039】
さらに、冷却回路11は、他の弁29を持つ他のバイパス28を備え、冷媒の流れ方向における、高圧コンプレッサー14の下流かつガス冷却器15の上流と、熱交換器12の下流かつ低圧コンプレッサー13の上流とにおいて、他のバイパス28は冷却回路11に接続されている。他のバイパス28、つまり他の弁29によって、冷却回路11の動作状態に応じて、冷媒、特に過熱状態の冷媒又は気体状態の冷媒は、低圧コンプレッサー13の上流に、高圧側19から低圧側17に供給され得る。これにより、低圧コンプレッサー13の上流において、低圧側17の吸込ガスの温度及び/又は吸込ガスの圧力を制御することも可能になる。この制御は、試験室の制御装置(不図示)と、冷却回路11に配置されたセンサー、特に圧力及び温度センサーによって行われ得る。
【0040】
図2は、冷却回路31を持つ冷却装置30を示し、これは、冷却回路31の中圧側32は、高圧コンプレッサー14の上流かつ低圧コンプレッサー13の下流において、ガス冷却器33に接続されているという点において、図1の冷却回路とは異なる。このようにして、冷媒は、低圧コンプレッサー13から高圧コンプレッサー14に、ガス冷却器33を経由して供給され、そこで冷却され得る。したがって、冷却回路31は内部熱交換器を有しない。
【0041】
図3は、冷却回路35を持つ冷却装置34を示し、これは、第2膨張弁37、第2熱交換器38、及び逆止弁39を持つ除湿バイパス36が形成されているという点において、図2の冷却回路とは異なる。逆止弁39は、冷媒の流れ方向における、除湿バイパス36における第2熱交換器38の下流に配置されている。このことは、除湿バイパス36の隣の冷却回路31の低圧側40の冷媒が、通常の流れ方向と反対方向に流入し、第2熱交換器28に移動することを防ぐ。
【0042】
図4は、冷却回路42を持つ冷却装置41を示し、これは、水冷式のガス冷却器43が用いられるという点において、図3の冷却回路とは異なる。ここで、中圧側44には、中圧の冷却器45が形成されており、これも水冷式である。中圧の冷却器45は冷媒を冷却するために用いられ、この冷媒は、低圧コンプレッサー13から高圧コンプレッサー14に、中圧側44を経由して流れる。
【0043】
図5は、冷却回路47を持つ冷却装置46を示し、冷却回路47は、中圧バイパス48を有するという点において、図4の冷却回路とは異なる。中圧バイパス48は、冷媒の流れ方向における、ガス冷却器43の下流かつ膨張弁16の上流において、冷却回路47の高圧側49に接続され、高圧コンプレッサー14の上流かつ低圧コンプレッサー13の下流において、冷却回路47の中圧側50に接続されている。他の膨張弁51によって、冷媒は、高圧側49から中圧側50へ、計量されて供給され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】