IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社Polyuseの特許一覧

<>
  • 特開-造形物の製造方法 図1
  • 特開-造形物の製造方法 図2
  • 特開-造形物の製造方法 図3
  • 特開-造形物の製造方法 図4
  • 特開-造形物の製造方法 図5
  • 特開-造形物の製造方法 図6
  • 特開-造形物の製造方法 図7
  • 特開-造形物の製造方法 図8
  • 特開-造形物の製造方法 図9
  • 特開-造形物の製造方法 図10
  • 特開-造形物の製造方法 図11
  • 特開-造形物の製造方法 図12
  • 特開-造形物の製造方法 図13
  • 特開-造形物の製造方法 図14
  • 特開-造形物の製造方法 図15
  • 特開-造形物の製造方法 図16
  • 特開-造形物の製造方法 図17
  • 特開-造形物の製造方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010505
(43)【公開日】2025-01-21
(54)【発明の名称】造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20250110BHJP
   B28B 11/12 20060101ALI20250110BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20250110BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20250110BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20250110BHJP
   E03F 5/04 20060101ALI20250110BHJP
   E01C 11/22 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B28B1/30
B28B11/12
B29C64/106
B29C64/40
B33Y10/00
E03F5/04 Z
E01C11/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107090
(22)【出願日】2024-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2023111900
(32)【優先日】2023-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520332793
【氏名又は名称】株式会社Polyuse
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 太陽
(72)【発明者】
【氏名】富田 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】九冨 恵一
(72)【発明者】
【氏名】小池 一樹
(72)【発明者】
【氏名】岩本 卓也
【テーマコード(参考)】
2D051
2D063
4F213
4G052
4G055
【Fターム(参考)】
2D051AC06
2D051AF03
2D051AH01
2D063CA41
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL22
4F213WL24
4F213WL32
4F213WL62
4F213WL74
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
4G055AA01
4G055AB00
4G055AC09
4G055BA62
(57)【要約】
【課題】硬化前の積層体の座屈及び/又は倒壊を抑制できる造形物の製造方法等を提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、造形物の製造方法であって、水和反応、重合反応又は焼成を経由して鉱物化する、粉体又はペースト材料である造形材料の3Dプリンタからの吐出及び積層によって、造形物本体と、造形物本体の外壁から突出するように配置されるインフィルとを形成する形成工程と、インフィルを造形物本体から切り離す切離工程と、を備える、造形物の製造方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形物の製造方法であって、
水和反応、重合反応又は焼成を経由して鉱物化する、粉体又はペースト材料である造形材料の3Dプリンタからの吐出及び積層によって、造形物本体と、前記造形物本体の外壁から突出するように配置されるインフィルとを形成する形成工程と、
前記インフィルを前記造形物本体から切り離す切離工程と、
を備える、造形物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の造形物の製造方法において、
前記造形物本体は、下方に空間が存在するオーバーハングを有し、
前記インフィルは、前記オーバーハングに連結される、造形物の製造方法。
【請求項3】
造形物の製造方法であって、
水和反応、重合反応又は焼成を経由して鉱物化する、粉体又はペースト材料である造形材料の3Dプリンタからの吐出及び積層によって、造形物本体と、硬化前の前記造形物本体の座屈及び/又は倒壊を防ぐインフィルとを形成する形成工程を備え、
前記造形物本体は、下方に空間が存在するオーバーハングを有し、
前記インフィルは、前記オーバーハングの前記空間に面する側の表面とは反対側の表面に連結される、
造形物の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項3に記載の造形物の製造方法において、
前記インフィルは、前記造形物本体の第1外壁と、前記第1外壁と対向する第2外壁とに連結される、造形物の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項3に記載の造形物の製造方法において、
前記3Dプリンタを制御するコードを設計するコード設計工程をさらに備え、
前記コードは、前記造形物本体と前記インフィルとに跨った吐出経路を含む、造形物の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の造形物の製造方法において、
前記吐出経路は、前記インフィルのうち、前記造形物本体との連結部分に折り返しを有する、造形物の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は請求項3に記載の造形物の製造方法において、
前記造形材料の硬化時間は、1.0時間以上である、造形物の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項3に記載の造形物の製造方法において、
前記造形材料の比重は、1.2t/m以上である、造形物の製造方法。
【請求項9】
請求項1又は請求項3に記載の造形物の製造方法において、
前記形成工程において、前記造形物本体の周囲に流体又は粒体を充填する、造形物の製造方法。
【請求項10】
請求項1又は請求項3に記載の造形物の製造方法において、
前記造形物は、土木構造物である、造形物の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の造形物の製造方法において、
前記形成工程では、前記土木構造物の構築場所で前記造形材料の吐出及び積層を行う、造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、3Dプリンタによってコンクリート又はモルタルを吐出及び積層することで、一定の高さを有する部材を造形する方法が周知である。また、造形中に補強部を形成する工法(特許文献2及び特許文献3)や、治具を使う工法も知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-68666号公報
【特許文献2】特開2020-26099号公報
【特許文献3】特表2022-551175号公報
【特許文献4】特開2023-151847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の造形方法では、造形材料の積層後、造形材料が硬化するまでの間に、積層体が自重によって座屈又は倒壊するおそれがある。これに対し、特許文献2又は特許文献3に開示されるように、2つの壁の間で延伸する補強部を設けることで、座屈又は倒壊が抑制されうるが、これらの工法では造形物のデザインに制限が発生する。また、特許文献4に開示されるように、治具を用いて造形物を支持する場合は、工数の増加が避けられない。
【0005】
本発明では上記事情に鑑み、硬化前の積層体の座屈及び/又は倒壊を抑制できる造形物の製造方法等を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、造形物の製造方法であって、水和反応、重合反応又は焼成を経由して鉱物化する、粉体又はペースト材料である造形材料の3Dプリンタからの吐出及び積層によって、造形物本体と、造形物本体の外壁から突出するように配置されるインフィルとを形成する形成工程と、インフィルを造形物本体から切り離す切離工程と、を備える、造形物の製造方法が提供される。
【0007】
このような態様によれば、造形物本体とともにインフィルを形成することで、硬化前の積層体が自重で座屈又は倒壊することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本態様の造形物の製造方法によって得られる造形物101の模式的な平面図である。
図2図1の造形物101の模式的な側面図である。
図3】第1実施形態の造形物の製造方法のフロー図である。
図4図1の造形物101の吐出経路Rの一例を示す模式図である。
図5】3Dプリンタによる造形を示す模式図である。
図6】本態様の造形物の製造方法によって得られる造形物201の模式的な平面図である。
図7図6の造形物201のVII-VII線における模式的な断面図である。
図8図6の造形物201の吐出経路Rの一例を示す図である。
図9図7とは異なる形状の造形物201の模式的な断面図である。
図10】本態様の造形物の製造方法によって得られる造形物301の模式的な平面図である。
図11図10の造形物301の模式的な側面図である。
図12】第3実施形態の造形物の製造方法のフロー図である。
図13図10の造形物301の吐出経路Rの一例を示す図である。
図14】任意の実施形態に適用可能な造形物本体の形状例を示す模式的な側面図である。
図15】任意の実施形態に適用可能な造形物本体の別の形状例を示す模式的な平面図である。
図16】凹部と凸部とが上下方向及び水平方向の双方において交互に配置されたパターンが形成された壁の一例を示す図である。
図17】実施例における3Dプリンタを制御するコードの吐出経路Rの一例である。
図18】貫入抵抗の時間変化を示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
<第1実施形態の造形物101>
図1は、本態様の造形物の製造方法によって得られる造形物101の模式的な平面図である。図2は、図1の造形物101の模式的な側面図である。造形物101は、土木構造物又は建築構造物である。造形物101としては、例えば、側溝、ブロック、壁、建物等が挙げられる。造形物101は、コンクリート、モルタル又はセラミックス系材料で構成されている。造形物101は、3Dプリンタから吐出された材料によって形成される(3Dプリンタによって印刷される)多層構造を有する。
【0011】
造形物101は、土木構造物であるとよい。土木構造物は、建築構造物よりも構築される場所の環境が厳しいことが多い。つまり、土木構造物では、構築される場所が整地されていないなど、現場環境に合わせた造形のニーズが大きい。そのため、当該製造方法によって、現場での打設や特注品製造等に伴う工数を低減しつつ、造形途中で座屈及び/又は倒壊しない土木構造物を構築することができる。
【0012】
造形物101は、造形物本体102と、複数のインフィル103と、土台104とを有する。造形物本体102は、土木構造物又は建築構造物の骨格部分である。造形物本体102は、互いに離れて配置された第1外壁102Aと第2外壁102Bとを有する。第2外壁102Bは、第1外壁102Aと対向している。
【0013】
図2に示すように、第1外壁102Aは、鉛直方向に対して傾斜するように延伸している。具体的には、第1外壁102Aの内面は、上方に向かうに連れて内側に向かう(第2外壁102Bに近づく)ように傾斜している。そのため、第1外壁102Aの内側の部分は、下方に空間が存在するオーバーハング102Cを構成している。
【0014】
インフィル103は、造形物本体102の第1外壁102Aと、第2外壁102Bとに連結されている。これにより、第1外壁102A及び第2外壁102Bが、造形中に座屈及び/又は倒壊することを抑制できる。また、インフィル103を介して、第1外壁102Aと第2外壁102Bとが互いに支え合うため、造形中の造形物本体102の座屈及び/又は倒壊の抑制効果が促進される。
【0015】
また、インフィル103は、オーバーハング102Cに連結されている。これにより、特に崩壊し易いオーバーハング102Cがインフィル103によって支持されるため、造形中の造形物本体102の座屈及び/又は倒壊の抑制効果が促進される。
【0016】
インフィル103は、第1外壁102Aの下端から第1外壁102Aの上端までの範囲に連結されている。つまり、インフィル103は、オーバーハング102Cの表面SF(第1外壁102Aの内面)に対し、上下方向全体に渡って連結されている。なお、オーバーハング102Cの表面SFは、平坦面であってもよいし、湾曲面であってもよいし、屈曲面であってもよいし、これらが組み合わせられた複合面であってもよい。
【0017】
図1に示すように、造形物101には、複数のインフィル103が設けられている。インフィル103の形状及び数は、造形物101の鉛直方向と垂直な断面(つまり水平方向断面)における断面二次半径モーメントを大きくするように設計される。なお、インフィル103の形状は特に限定されず、また、インフィル103の数は1つであってもよい。
【0018】
具体的には、造形物101が自重により座屈及び/又は倒壊する場合の限界高さHcは、造形物101が数学的に解析可能な単純形状と仮定した場合、造形物101のヤング率Eと断面二次半径iとに比例し、比重ρに反比例する。そのため、座屈に対する抵抗を高めるためには、ヤング率Eを高める、断面二次半径iを大きくする、及び比重ρを小さくする、のいずれかが有効となる。
【0019】
断面二次半径iは、水平方向断面における最小断面二次モーメントIminと水平方向断面の断面積Aとにより定まり、i=(Imin/A)1/2の関係がある。そのため、最小断面二次モーメントIminを最大化することで、造形中の造形物本体102の崩壊を抑制することができる。なお、最小断面二次モーメントとは、水平方向断面において、X軸方向の断面二次モーメント及びY軸方向の断面二次モーメントのうち、最小となるものを指す。
【0020】
土台104は、造形物本体102及びインフィル103を積層するための基部である。換言すれば、土台104は、造形物本体102の下端部と、インフィル103の下端部とを連結している。
【0021】
<第1実施形態の製造方法>
図3は、第1実施形態の造形物の製造方法のフロー図である。当該製造方法は、コンクリート、モルタル又はセラミックス系材料で構成される造形物101を製造するための方法である。
【0022】
当該製造方法は、形状設計工程S110と、コード設計工程S120と、形成工程S130と、仕上げ工程S140とを備える。
【0023】
<形状設計工程>
形状設計工程S110は、造形物101の全体形状を設計する。具体的には、求められる構造の形状に基づいて造形物本体102の形状を設計するとともに、硬化前の造形物本体102の座屈及び/又は倒壊を防ぐためのインフィル103の形状を設計する。
【0024】
上述したように、インフィル103は、造形物本体102のオーバーハング102Cが座屈及び/又は倒壊しないように、造形物101の鉛直方向と垂直な断面(つまり水平方向断面)における断面二次モーメントを小さくするように設計される。例えば、造形物101の水平方向断面において、オーバーハング102Cと連結される複数のインフィル103が密に配置されるように設計される。典型的には、オーバーハング102Cは、製造後の造形物101に求められる構造強度を満たす水準よりも密に配置される。
【0025】
<コード設計工程>
コード設計工程S120では、形状設計工程S110で設計した造形物101を造形するために、3Dプリンタを制御するコードを設計する。
【0026】
コードの形式としては、例えば、STL、Gコード、OBJ、3MF等が例示される。本工程で設計されるコードは、造形物本体102とインフィル103とに跨った、連続した吐出経路を含む。これにより、インフィル103が造形物本体102と同時に形成されていくため、造形中の造形物本体102の座屈及び/又は倒壊の抑制効果が促進される。
【0027】
図4は、図1の造形物101の吐出経路Rの一例を示す模式図である。図5は、3Dプリンタによる造形を示す模式図である。図4に示すように、吐出経路Rは、平面上で連続した一本の経路であり、吐出経路Rに沿って造形材料が吐出される。吐出経路Rを往復又は循環するように3Dプリンタの吐出ノズルNが移動することで、造形材料CMの積層体が形成される。
【0028】
吐出経路Rは、インフィル103のうち、造形物本体102との連結部分103Aに折り返しを有する。具体的には、吐出経路Rは、第2外壁102Bから第1外壁102Aに向かう往路R1と、インフィル103と第1外壁102Aとの連結部分103Aから第2外壁102Bに向かう復路R2と、連結部分103Aにおいて往路R1と復路R2とを連結する折返し路R3とを含む。往路R1及び復路R2における造形材料の積層によって、第1外壁102Aから延伸するインフィル103が形成される。また、折返し路R3における造形材料の積層によって、インフィル103と第1外壁102Aとが接続される。
【0029】
これにより、吐出経路Rの折返し箇所が造形物本体102の内側に配置されるため、造形物本体102の寸法精度が高められる。また、折返し部分が外側に配置されることによる耐浸水性等の機能低下も抑制される。
【0030】
3Dプリンタによる造形では、造形物101の表面には造形材料の積層に伴う凹凸が生じうる。そのため、造形物101の外面に対しては、左官による平坦化、又は他の部材との接合時における接着材料(コンクリート、モルタル又はセラミックス系材料)の充填による平滑化が行われる。そこで、形状設計工程S110及び/又はコード設計工程S120では、このような平滑化による寸法変化を考慮して造形物101の形状又はコードを設計する。
【0031】
なお、造形現場の環境又は条件に合わせて、コードの追加、コードの編集等を後工程で行うことができる。また、形成工程S130において、造形時にリアルタイムでコード(例えば経路以外の造形速度等の入力情報)の調整が行われてもよい。
【0032】
<形成工程>
形成工程S130では、水和反応、重合反応又は焼成を経由して鉱物化する、粉体又はペースト材料である造形材料CMの3Dプリンタからの吐出及び積層によって、造形物本体102と、硬化前の造形物本体102の座屈及び/又は倒壊を防ぐインフィル103とを形成する。ここで、「鉱物化」とは、主成分(質量ベースで最も多く含有される成分)が無機材である硬化物に変化することを意味する。典型的には、造形物本体102は、コンクリート、モルタル又はセラミックスで構成される。
【0033】
具体的には、コード設計工程S120で設計したコードを3Dプリンタに入力し、造形物101を形成させる。図5Aに示すように、吐出経路Rに沿って移動する3Dプリンタの吐出ノズルNから造形材料CMが吐出され、造形物本体102及びインフィル103が同時に形成されていく。
【0034】
造形材料CMの硬化時間としては、1.0時間以上が好ましく、1.5時間以上がより好ましく、2.0時間以上がさらに好ましい。なお、「硬化時間」は、JIS-A-1147に規定されるコンクリートの凝結時間試験に準拠して、造形材料CMの原料に練り混ぜ水を加えた直後から始発強度(貫入抵抗値で3.5N/mm)に到達するまでの時間である。これにより、硬化する前の造形物本体102の座屈及び/又は倒壊を防ぎつつ、比較的低い硬化速度で硬化させることによって、高い強度を有する造形物101を製造することができる。
【0035】
また、造形材料CMの硬化時間としては、例えば、8時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましく、4時間以下がさらに好ましい。これにより、造形中の座屈発生のリスクを低減できる。
【0036】
造形材料CMの比重としては、1.2t/m以上が好ましく、1.4t/m以上がより好ましく、1.6t/m以上がさらに好ましい。これにより、硬化する前の造形物本体102の座屈及び/又は倒壊を防ぎつつ、高い比重に起因して高い強度を有する造形物101を製造することができる。
【0037】
また、造形材料CMの比重としては、例えば、3.0t/m以下が好ましく、2.5t/m以下がより好ましい。これにより、造形中の座屈発生のリスクを低減できる。
【0038】
造形物101が土木構造物である場合、形成工程S130では、土木構造物の構築場所Pで造形材料CMの吐出及び積層を行うとよい。これにより、造形中の座屈及び/又は倒壊を防ぎつつ、構築場所Pに直接土木構造物を造形できるため、現場環境に合わせて土木構造物を構築しつつ、その構築工数を低減できる。
【0039】
また、図5Bに示すように、形成工程S130において、造形物本体102の周囲に流体F又は粒体を充填してもよい。これにより、流体F又は粒体によって造形物本体102がサポートされるため、インフィル103との相乗効果によって、造形中の造形物本体102の座屈及び/又は倒壊の抑制効果が促進される。
【0040】
例えば、容器Cの中で造形物101の造形を行い、造形材料CMの吐出と同時に流体F又は粒体を容器Cの中に供給することで、造形物本体102の周囲に流体F又は流体を充填することができる。流体F又は粒体は、充填高さが造形材料CMの積層高さを追従するように連続的に供給される。
【0041】
流体Fとしては、例えば、水、一定の粘性を有する液体、粘土質材料等が挙げられる。また、粘性の高い流体の場合は、造形材料CMと同時に別の3Dプリンタによって流体Fを吐出及び積層してもよい。これにより、造形物本体102の周囲のみに流体Fを充填できる。
【0042】
粒体としては、砂、土、高分子樹脂球等が挙げられる。粒体として疎水性の高分子樹脂を用いることで、造形中の造形物本体102の表面からの水分の散逸を抑制できる。また、粒体として水分を含んだ高吸水性の高分子樹脂を添加した粘土質材料を用いることで、造形中の造形物本体102に対する保水又は保湿の養生効果が得られる。
【0043】
さらに、粒体として、乾燥によって固化するサポート材を用いてもよい。このようなサポート材を用いることで、造形物本体102を造形後まで養生できる。また、養生後にサポート材を水等によって洗い流すことで、サポート材を容易に除去できる。さらに、洗い流しによって回収されたスラリーを乾燥させることで、サポート材を再利用することができる。
【0044】
<仕上げ工程>
仕上げ工程S140では、形成工程S130で造形された造形物101の外観部分の加工により、仕上げを行う。加工には、不要部分の切削、外面の平滑化等が含まれる。
【0045】
<第2実施形態の造形物201>
図6は、本態様の造形物の製造方法によって得られる造形物201の模式的な平面図である。図7は、図6の造形物201のVII-VII線における模式的な断面図である。造形物201は、図1の造形物101と同様の土木構造物又は建築構造物である。造形物201は、コンクリート、モルタル又はセラミックス系材料で構成されている。造形物201は、3Dプリンタから吐出された材料によって形成される(3Dプリンタによって印刷される)多層構造を有する。
【0046】
造形物201は、土木構造物であるとよい。これにより、当該製造方法によって、現場での打設や特注品製造等に伴う工数を低減しつつ、造形途中で座屈及び/又は倒壊しない土木構造物を構築することができる。
【0047】
造形物201は、造形物本体202と、インフィル203と、土台204とを有する。造形物本体202は、土木構造物又は建築構造物の骨格部分である。造形物本体202は、少なくとも1つの外壁202Aを有する。
【0048】
図7に示すように、外壁202Aは、鉛直方向に対して傾斜するように延伸している。具体的には、外壁202Aの外面及び内面のうち少なくとも外面(図7の例では、外面及び内面の双方)は、上方に向かうに連れて外側に向かう(造形物本体202の中心から離れる)ように傾斜している。そのため、外壁202Aは、下方に空間が存在するオーバーハングを構成している。つまり、造形物本体202は、下方に空間が存在するオーバーハング(外壁202A)を有する。
【0049】
インフィル203は、造形物本体202の外壁202Aの内面に連結されている。つまり、インフィル203は、オーバーハングの下方の空間に面する側の表面(つまり外面)とは反対側の表面(つまり内面)に連結されている。これにより、外壁202Aがインフィル203によって内側に引っ張られるため、造形物本体202の造形中の座屈及び/又は倒壊を抑制できる。また、インフィル203が造形物本体202の内部に設けられるため、造形物本体202の座屈及び/又は倒壊を抑制しつつ、造形物本体202を任意の外形形状(意匠形状)にて造形することができる。
【0050】
インフィル203は、外壁202Aの内面の下端から、当該内面の上端までの範囲に連結されている。つまり、インフィル203は、オーバーハングの表面SF(外壁202Aの内面)に対し、上下方向全体に渡って連結されている。なお、オーバーハングの表面SFは、平坦面であってもよいし、湾曲面であってもよいし、屈曲面であってもよいし、これらが組み合わせられた複合面であってもよい。なお、図6では図示されていないが、造形物201には、複数のインフィル203が設けられててもよい。また、1つの外壁202A(オーバーハング)に対し、複数のインフィル203が連結されてもよい。
【0051】
インフィル203は、造形物本体202において互いに対抗する2つの外壁に連結されてもよい。これにより、2つの外壁が造形中に座屈及び/又は倒壊することを抑制できる。また、インフィル203を介して、2つの外壁が互いに支え合うため、造形中の造形物本体202の座屈及び/又は倒壊の抑制効果が促進される。
【0052】
土台204は、造形物本体202及びインフィル203を積層するための基部である。換言すれば、土台204は、造形物本体202の下端部と、インフィル203の下端部とを連結している。
【0053】
図6の造形物201の製造方法は、図1の造形物101の製造方法と同様である。つまり、図6の造形物201の製造方法は、図3に示される、形状設計工程S110と、コード設計工程S120と、形成工程S130と、仕上げ工程S140とを備える。
【0054】
<形状設計工程>
形状設計工程S110では、造形物201の全体形状を設計する。形状設計工程S110の詳細は、図1の造形物101の製造方法と共通である。
【0055】
<コード設計工程>
コード設計工程S120では、形状設計工程S110で設計した造形物201を造形するために、3Dプリンタを制御するコードを設計する。コードは、造形物本体202とインフィル203とに跨った、連続した吐出経路を含む。これにより、インフィル203が造形物本体202と同時に形成されていくため、造形中の造形物本体202の座屈及び/又は倒壊の抑制効果が促進される。コード設計工程S120の詳細は、図1の造形物101の製造方法と共通である。
【0056】
図8は、図6の造形物201の吐出経路Rの一例を示す図である。図8に示されるように、吐出経路Rは、平面上で連続した一本の経路である。吐出経路Rは、インフィル203のうち、造形物本体202(外壁202A)との連結部分から最も離れた部位(先端部)に折り返しを有する。具体的には、吐出経路Rは、外壁202Aからインフィル203の先端部に向かう往路R1と、インフィル203の先端部から外壁202Aに向かう復路R2と、インフィル203の先端部において往路R1と復路R2とを連結する折返し路R3とを含む。
【0057】
これにより、吐出経路Rの折返し箇所が造形物本体202の内側に配置されるため、造形物本体202の寸法精度が高められる。また、折返し部分が外側に配置されることによる耐浸水性等の機能低下も抑制される。
【0058】
<形成工程>
形成工程S130では、水和反応、重合反応又は焼成を経由して鉱物化する、粉体又はペースト材料である造形材料CMの3Dプリンタからの吐出及び積層によって、造形物本体202と、硬化前の造形物本体202の座屈及び/又は倒壊を防ぐインフィル203とを形成する。
【0059】
造形物201が土木構造物である場合、形成工程S130では、土木構造物の構築場所で造形材料の吐出及び積層を行うとよい。これにより、造形中の座屈及び/又は倒壊を防ぎつつ、構築場所に直接土木構造物を造形できるため、現場環境に合わせて土木構造物を構築しつつ、その構築工数を低減できる。
【0060】
形成工程S130において、造形物本体202の周囲に流体F又は粒体を充填してもよい。これにより、流体F又は粒体によって造形物本体202がサポートされるため、インフィル203との相乗効果によって、造形中の造形物本体202の座屈及び/又は倒壊の抑制効果が促進される。その他の形成工程S130の詳細は、図1の造形物101の製造方法と共通である。
【0061】
<仕上げ工程>
仕上げ工程S140では、形成工程S130で造形された造形物201の外観部分の加工により、仕上げを行う。仕上げ工程S140の詳細は、図1の造形物101の製造方法と共通である。
【0062】
<第2実施形態の変形例>
図9は、図7とは異なる形状の造形物201の模式的な断面図である。図9の例のように、造形物201のオーバーハング(外壁202A)は、少なくとも外面が上方に向かうに連れて外側に向かう(造形物本体202の中心から離れる)ように傾斜している下部オーバーハング202Bと、少なくとも外面が上方に向かうに連れて内側に向かう(造形物本体202の中心に近づく)ように傾斜している上部オーバーハング202Cとを有してもよい。上部オーバーハング202Cは、下部オーバーハング202Bよりも上方に位置し、典型的には、下部オーバーハング202Bの上端部から上方に延伸している。
【0063】
図9の例では、インフィル203は、少なくとも下部オーバーハング202Bの内面に連結され、必要に応じて上部オーバーハング202Cの内面(オーバーハングの下方の空間に面する側の表面)にも連結されるとよい。
【0064】
<第3実施形態の造形物301>
図10は、本態様の造形物の製造方法によって得られる造形物301の模式的な平面図である。図11は、図10の造形物301の模式的な側面図である。造形物301は、図1の造形物101及び図6の造形物201と同様の土木構造物又は建築構造物である。造形物301は、コンクリート、モルタル又はセラミックス系材料で構成されている。造形物301は、3Dプリンタから吐出された材料によって形成される(3Dプリンタによって印刷される)多層構造を有する。造形物301は、土木構造物であるとよい。
【0065】
造形物301は、造形物本体302と、複数のインフィル303と、土台304とを有する。造形物本体302は、土木構造物又は建築構造物の骨格部分である。造形物本体302は、複数の外壁302Aを有する。
【0066】
図11に示すように、外壁302Aは、鉛直方向に対して傾斜するように延伸している。具体的には、外壁302Aの少なくとも外面は、上方に向かうに連れて外側に向かう(造形物本体302の中心から離れる)ように傾斜している。そのため、外壁302Aは、下方に空間が存在するオーバーハングを構成している。つまり、造形物本体302は、下方に空間が存在するオーバーハング(外壁302A)を有する。
【0067】
複数のインフィル303は、それぞれ、造形物本体302の外壁302Aの外面に連結されている。つまり、インフィル303は、オーバーハングの下方の空間に面する側の表面(つまり外面)に連結されている。これにより、外壁302Aが、造形中に座屈及び/又は倒壊することを抑制できる。
【0068】
インフィル303は、外壁302Aから突出するように形成されている。図10に示されるように、インフィル303は、補助壁303Aと、複数の連結部303Bとを有する。補助壁303Aは、外壁302Aの外側に、外壁302Aと対向するように配置される部位である。連結部303Bは、補助壁303Aと、外壁302Aの外面とを連結する部位である。図10の例では、3つの連結部303Bが設けられているが、連結部303Bの数はこれに限定されず、任意に設定可能である。
【0069】
インフィル303(具体的には、連結部303B)は、外壁302Aの内面の下端から、当該内面の上端までの範囲に連結されている。つまり、インフィル303は、オーバーハングの表面SF(外壁302Aの内面)に対し、上下方向全体に渡って連結されている。なお、オーバーハングの表面SFは、平坦面であってもよいし、湾曲面であってもよいし、屈曲面であってもよいし、これらが組み合わせられた複合面であってもよい。
【0070】
土台304は、造形物本体302及びインフィル303を積層するための基部である。換言すれば、土台304は、造形物本体302の下端部と、インフィル303の下端部とを連結している。
【0071】
図12は、第3実施形態の造形物の製造方法のフロー図である。当該製造方法は、コンクリート、モルタル又はセラミックス系材料で構成される造形物301を製造するための方法である。
【0072】
当該製造方法は、形状設計工程S110と、コード設計工程S120と、形成工程S130と、切離工程S150と、仕上げ工程S160とを備える。
【0073】
<形状設計工程>
形状設計工程S110は、造形物301の全体形状を設計する。形状設計工程S110の詳細は、図1の造形物101の製造方法と共通である。
【0074】
<コード設計工程>
コード設計工程S120では、形状設計工程S110で設計した造形物301を造形するために、3Dプリンタを制御するコードを設計する。コードは、造形物本体302とインフィル303とに跨った、連続した吐出経路を含む。これにより、インフィル303が造形物本体302と同時に形成されていくため、造形中の造形物本体302の座屈及び/又は倒壊の抑制効果が促進される。コード設計工程S120の詳細は、図1の造形物101の製造方法と共通である。
【0075】
図13は、図10の造形物301の吐出経路Rの一例を示す図である。図13に示されるように、吐出経路Rは、平面上で連続した一本の経路である。吐出経路Rは、インフィル303のうち、造形物本体302(外壁302A)と連結されている連結部303Bにおいて折り返しを有する。すなわち、吐出経路Rは、インフィル303のうち、造形物本体302との連結部分に折り返しを有する。具体的には、吐出経路Rは、インフィル303の補助壁303Aから外壁302Aに向かう往路R1と、外壁302Aからインフィル303の補助壁303Aに向かう復路R2と、インフィル303の連結部303Bにおいて往路R1と復路R2とを連結する折返し路R3とを含む。
【0076】
これにより、吐出経路Rの折返し箇所が、造形物本体302とインフィル303との連結部分に包含されるため、造形物本体302の寸法精度が高められる。また、折返し部分が造形物本体302に設けられることによる耐浸水性等の機能低下も抑制される。
【0077】
<形成工程>
形成工程S130では、水和反応、重合反応又は焼成を経由して鉱物化する、粉体又はペースト材料である造形材料CMの3Dプリンタからの吐出及び積層によって、造形物本体302と、造形物本体302の外壁302Aから突出するように配置されるインフィルと303とを形成する。
【0078】
造形物301が土木構造物である場合、形成工程S130では、土木構造物の構築場所で造形材料の吐出及び積層を行うとよい。これにより、造形中の座屈及び/又は倒壊を防ぎつつ、構築場所に直接土木構造物を造形できるため、現場環境に合わせて土木構造物を構築しつつ、その構築工数を低減できる。
【0079】
形成工程S130において、造形物本体302の周囲に流体F又は粒体を充填してもよい。これにより、流体F又は粒体によって造形物本体302がサポートされるため、インフィル303との相乗効果によって、造形中の造形物本体302の座屈及び/又は倒壊の抑制効果が促進される。その他の形成工程S130の詳細は、図1の造形物101の製造方法と共通である。
【0080】
<切離工程>
切離工程S150では、形成工程S130で造形された、造形物本体302の外側に設けられたインフィル303を造形物本体302から切り離す。これにより、造形物本体302の造形時における座屈及び/又は倒壊をインフィル303によって抑制しつつ、造形物本体302を任意の外形形状(意匠形状)にて造形することができる。
【0081】
図10の例では、破線で示される、外壁302Aとインフィル303の連結部303Bとの境界(つまり、図11に示される、オーバーハングの表面SF)において切離が行われる。切離されたインフィル303は、造形物301から除去される。すなわち、本製造方法において製造される造形物301は、インフィル303を含まない。なお、インフィル303の切離は、例えば、造形物本体302の硬化前に行われるとよい。
【0082】
<仕上げ工程>
仕上げ工程S160では、インフィル303が切離された造形物301の外観部分の加工により、仕上げを行う。加工には、インフィル303以外の不要部分の切削、外面(特にインフィル303の切離面)の平滑化等が含まれる。
【0083】
4.作用
本実施形態の作用をまとめると、次の通りとなる。すなわち、造形物本体102とともにインフィル103を形成することで、硬化前の積層体が自重で座屈又は倒壊することを抑制できる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0085】
5.その他
上述した造形物101、201、301の形状は一例である。図14は、任意の実施形態に適用可能な造形物本体の形状例を示す模式的な側面図である。図14に示される造形物本体402は、少なくとも外面が上方に向かうに連れて内側に向かう(造形物本体402の中心に近づく)ように傾斜する第1外壁402Aと、少なくとも外面が上方に向かうに連れて外側に向かう(造形物本体402の中心から離れる)ように傾斜する第2外壁402Bと、第1外壁402Aと第2外壁402Bとを連結する第3外壁402Cとを有する。第3外壁402Cの上縁は、第1外壁402Aの上端から、第2外壁402Bに向かって位置が上昇する(高さが増加する)ように傾斜している第1部位402Dと、第2外壁402Bの上端から、第1外壁402Aに向かって位置が上昇するように傾斜している第2部位402Eとを有する。すなわち、第3外壁402Cの上縁は、上に向かって凸となるように屈曲している。第3外壁402Cの上縁をこのような形状とすることで、当該上縁によってそれぞれオーバーハングを有する第1外壁402Aと第2外壁402Bとを引っ張り合わせることができる。その結果、造形物本体402の造形中の座屈及び/又は倒壊の抑制効果を高められる。
【0086】
図15は、任意の実施形態に適用可能な造形物本体の別の形状例を示す模式的な平面図である。図15に示される造形物本体502は、対向するように配置された第1外壁502A及び第2外壁502Bを有する。第1外壁502A及び第2外壁502Bは、それぞれ、平面視で外側に凸となるように湾曲している。また、第2外壁502Bは、第1外壁502Aの内側に配置されている。さらに、第1外壁502Aと第2外壁502Bとの間には、複数のインフィル503が平面視でトラス状に配置されている。インフィル503は、第1外壁502Aの内面と第2外壁502Bの外面とに連結されている。このような構造により、第1外壁402A及び/又は第2外壁402Bがオーバーハングを有する場合に、インフィル503によって造形物本体502の造形中の座屈及び/又は倒壊を抑制できる。
【0087】
本発明は、水和反応、重合反応又は焼成を経由して鉱物化する、粉体又はペースト材料である造形材料の3Dプリンタからの吐出及び積層によって、凹部と凸部とが上下方向及び水平方向の双方において交互に配置されたパターンが形成された壁を有する造形物本体を形成する形成工程を備える、造形物の製造方法を含んでもよい。このような製造方法によれば、壁の凹凸パターンによって造形物本体の造形中の座屈及び/又は倒壊を抑制できる。
【0088】
図16は、凹部と凸部とが上下方向及び水平方向の双方において交互に配置されたパターンが形成された壁の一例を示す図である。図16Aに示される壁602Aは、オーバーハングを有し、壁602Aの外面の全体には、矩形状の凹凸パターンが形成されている。また、壁602Aの内面(凹凸パターンが形成された表面とは反対側の表面)には、少なくとも1つのインフィル603が連結されている。図16Aの壁602Aの例では、図16Bに示されるように、壁602Aの凹凸パターンに沿った経路と、壁602Aの内部を充填する経路と、インフィル603を形成する経路とを含む吐出経路Rが設計される。
【0089】
また、本発明は、形成工程において、インフィル103を形成することなく、造形物本体102の周囲に流体又は粒体を充填することで、積層体の座屈及び/又は倒壊を抑制してもよい。
【0090】
6.実施例
図17は、実施例における3Dプリンタを制御するコードの吐出経路Rの一例である。図17Aでは、1つの層の吐出経路Rが平面視で示され、図17Bでは、全体の層の吐出経路Rを重ね合わせたものが平面視で示されている。また、図17Cには、側方から見た吐出経路Rが示されている。
【0091】
この吐出経路Rに沿って、3Dプリンタにて以下の手順で得た造形材料(モルタル)を吐出した。まず、各種原料を以下に示す処方で配合し、各成分をホバート型ミキサーによって5分間混合し、粉体状の組成物を得た。この組成物に、結合材と細骨材との総質量に対して15質量%の水道水を加えたものを混練することで、モルタル材料を得た。
・ポルトランドセメント:70質量部
・高炉スラグ微粉末:20質量部
・シリカヒューム:8.5質量部
・無機系膨張剤:1.5質量部
・細骨材:結合材全体の容量に対して100容量%
・レオロジー改質剤:結合材全体の質量に対して0.160質量%
・短繊維:結合材と細骨材との総容量に対して0.2容量%
・増粘剤:結合材と細骨材との総質量に対して0.070質量%
【0092】
得られたモルタル材料に対し、JIS-A-1147に規定されるコンクリートの凝結時間試験に準拠して、貫入抵抗を測定した。図18は、貫入抵抗の時間変化を示すグラフの一例である。図18に示すように、モルタル材料の硬化時間(貫入抵抗値3.5N/mmに到達するまでの時間)は、1時間以上であった。また、モルタル材料の比重は、2.09~2.1t/mであった。
【0093】
得られたモルタル材料を図17の吐出経路Rに沿って吐出及び積層したところ、40層(0.4m)の高さまで座屈及び倒壊することなく造形することができた。
【0094】
次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0095】
(1)造形物の製造方法であって、水和反応、重合反応又は焼成を経由して鉱物化する、粉体又はペースト材料である造形材料の3Dプリンタからの吐出及び積層によって、造形物本体と、前記造形物本体の外壁から突出するように配置されるインフィルとを形成する形成工程と、前記インフィルを前記造形物本体から切り離す切離工程と、を備える、造形物の製造方法。
【0096】
(2)上記(1)に記載の造形物の製造方法において、前記造形物本体は、下方に空間が存在するオーバーハングを有し、前記インフィルは、前記オーバーハングに連結される、造形物の製造方法。
【0097】
(3)造形物の製造方法であって、水和反応、重合反応又は焼成を経由して鉱物化する、粉体又はペースト材料である造形材料の3Dプリンタからの吐出及び積層によって、造形物本体と、硬化前の前記造形物本体の座屈及び/又は倒壊を防ぐインフィルとを形成する形成工程を備え、前記造形物本体は、下方に空間が存在するオーバーハングを有し、前記インフィルは、前記オーバーハングの前記空間に面する側の表面とは反対側の表面に連結される、造形物の製造方法。
【0098】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の造形物の製造方法において、前記インフィルは、前記造形物本体の第1外壁と、前記第1外壁と対向する第2外壁とに連結される、造形物の製造方法。
【0099】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の造形物の製造方法において、前記3Dプリンタを制御するコードを設計するコード設計工程をさらに備え、前記コードは、前記造形物本体と前記インフィルとに跨った吐出経路を含む、造形物の製造方法。
【0100】
(6)上記(5)に記載の造形物の製造方法において、前記吐出経路は、前記インフィルのうち、前記造形物本体との連結部分に折り返しを有する、造形物の製造方法。
【0101】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の造形物の製造方法において、前記造形材料の硬化時間は、1.0時間以上である、造形物の製造方法。
【0102】
(8)上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の造形物の製造方法において、前記造形材料の比重は、1.2t/m以上である、造形物の製造方法。
【0103】
(9)上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の造形物の製造方法において、前記形成工程において、前記造形物本体の周囲に流体又は粒体を充填する、造形物の製造方法。
【0104】
(10)上記(1)から(9)のいずれか1つに記載の造形物の製造方法において、前記造形物は、土木構造物である、造形物の製造方法。
【0105】
(11)上記(10)に記載の造形物の製造方法において、前記形成工程では、前記土木構造物の構築場所で前記造形材料の吐出及び積層を行う、造形物の製造方法。
もちろん、この限りではない。
【0106】
最後に、本開示に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0107】
101 :造形物
102 :造形物本体
102A :第1外壁
102B :第2外壁
102C :オーバーハング
103 :インフィル
103A :連結部分
104 :土台
201 :造形物
202 :造形物本体
202A :外壁
202B :下部オーバーハング
202C :上部オーバーハング
203 :インフィル
204 :土台
301 :造形物
302 :造形物本体
302A :外壁
303 :インフィル
303A :補助壁
303B :連結部
304 :土台
402 :造形物本体
402A :第1外壁
402B :第2外壁
402C :第3外壁
402D :第1部位
402E :第2部位
502 :造形物本体
502A :第1外壁
502B :第2外壁
503 :インフィル
602A :壁
603 :インフィル
C :容器
CM :造形材料
F :流体
N :吐出ノズル
P :構築場所
R :吐出経路
R1 :往路
R2 :復路
R3 :折返し路
SF :表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18