(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105082
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】減衰性ゴム組成物および粘弾性ダンパ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20250703BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20250703BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20250703BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20250703BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20250703BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20250703BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L101/00
C08K3/04
C08K3/36
C08K3/06
C08K5/00
C08L93/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223380
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 信
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC03X
4J002AC06W
4J002AF02Z
4J002BA01Y
4J002BC04Y
4J002BK00Y
4J002DA036
4J002DA048
4J002DJ017
4J002EV169
4J002EV279
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD148
4J002FD159
4J002FD34Y
4J002FD34Z
4J002GM00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加工性が良好であり、風揺れのような低歪域での減衰性に優れ、且つ低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さい減衰性部材を形成できる減衰性ゴム組成物の提供。
【解決手段】減衰性ゴム組成物は、基材ゴム、粘着付与剤、カーボンブラック、シリカ、加硫剤および加硫促進剤を含有する。基材ゴムが、ポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムを含有し、基材ゴム中のポリブタジエン系ゴムの含有率が、20以上60質量%以下であり、粘着付与剤が、石油系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂およびスチレン系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種であり、粘着付与剤の含有量が、基材ゴム100質量部に対して、60以上100質量部以下であり、カーボンブラックの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、100以上160質量部以下であり、シリカの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、5以上60質量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ゴム、粘着付与剤、カーボンブラック、シリカ、加硫剤および加硫促進剤を含有する減衰性ゴム組成物であって、
前記基材ゴムが、ポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムを含有し、
前記基材ゴム中のポリブタジエン系ゴムの含有率が、20質量%以上、60質量%以下であり、
前記粘着付与剤が、石油系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂およびスチレン系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記粘着付与剤の含有量が、基材ゴム100質量部に対して、60質量部以上、100質量部以下であり、
前記カーボンブラックの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、100質量部以上、160質量部以下であり、
前記シリカの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上、60質量部以下であることを特徴とする減衰性ゴム組成物。
【請求項2】
前記粘着付与剤が、ガラス転移温度(Tg)が40℃~50℃の粘着付与剤(a)と、ガラス転移温度(Tg)が60℃~70℃の粘着付与剤(b)と、ガラス転移温度(Tg)が粘着付与剤(a)および(b)と異なる粘着付与剤(c)とを含有する請求項1に記載の減衰性ゴム組成物。
【請求項3】
前記粘着付与剤(a)の含有量が、基材ゴム100質量部に対して、20質量部以上、50質量部以下であり、前記粘着付与剤(b)の含有量が、基材ゴム100質量部に対して、3質量部以上、15質量部以下である請求項2に記載の減衰性ゴム組成物。
【請求項4】
さらに、ロジン系粘着付与剤を含有する請求項1に記載の減衰性ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の減衰性ゴム組成物を硬化してなる減衰性ゴム。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の減衰性ゴム組成物を硬化してなる減衰性部材を備える粘弾性ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰性ゴム組成物およびこれを用いた減衰性部材を備える粘弾性ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅、ビル等の建築物、橋梁等において、地震、交通振動、風揺れ等で生じる振動エネルギーを吸収する手段が設置されている。その中、風揺れのような低歪域の揺れを抑える手段として、チューンドマスダンパー(TMD)が知られている。しかし、TMDは大型でかつ導入時およびメンテナンスの費用が高価である。一方、減衰性部材(粘弾性体)を備える粘弾性ダンパは、比較的安価で、大地震のような強烈な振動に対して優れた振動減衰性能を有しながら、風揺れのような微小振動に対しても振動抑制効果を発揮できることから、免震・制震・制振・防振などの付与手段として広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムを含有するゴムに対して、カーボンブラック、シリカ、およびロジン変性フェノールおよび/またはロジンエステルを含有する高減衰ゴム組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、少なくとも、ゴム成分と、ロジン酸金属塩とを含む高減衰ゴム組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、主鎖にC-C結合を有する基材ゴム100重量部に対してシリカを30~200重量部添加し、そのシリカに対して特定のシラン化合物を5~50重量%配合し混練したシリカ配合高減衰ゴム組成物が開示されている。
【0006】
特許文献4には、(A)ブチル系ゴム、(B)スチレン-イソブチレンブロック共重合体(SIB)およびスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)の少なくとも一方、(C)非極性の脂環族飽和炭化水素樹脂、および(D)硫黄を含有する高減衰ゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-003014号公報
【特許文献2】特開2007-063425号公報
【特許文献3】特開平07-041603号公報
【特許文献4】特開2011-190397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
風揺れのような低歪域(例えば、2%程度)の揺れを抑えるための減衰性部材は、低歪域において優れた減衰性が求められるほかに、環境条件を考慮して常温付近(例えば、10℃~30℃)における低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さいことも求められている。
【0009】
なお、良好な加工性は、生産性を向上し、生産に要するエネルギー消耗を軽減し、生産コストの削減につながるため、常に求められている。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、加工性が良好であり、風揺れのような低歪域での減衰性に優れ、且つ低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さい減衰性部材を形成する減衰性ゴム組成物を提供することを目的とする。本発明は、前記減衰性ゴム組成物を硬化してなる減衰性部材を備える粘弾性ダンパを提供することをさらなる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決することができた本発明の減衰性ゴム組成物は、基材ゴム、粘着付与剤、カーボンブラック、シリカ、加硫剤および加硫促進剤を含有する減衰性ゴム組成物であって、前記基材ゴムが、ポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムを含有し、前記基材ゴム中のポリブタジエン系ゴムの含有率が、20質量%以上、60質量%以下であり、前記粘着付与剤が、石油系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂およびスチレン系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種であり、前記粘着付与剤の含有量が、基材ゴム100質量部に対して、60質量部以上、100質量部以下であり、前記カーボンブラックの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、100質量部以上、160質量部以下であり、前記シリカの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上、60質量部以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加工性が良好であり、風揺れのような低歪域での減衰性に優れ、且つ低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さい減衰性部材を形成する減衰性ゴム組成物が得られる。本発明によれば、風揺れのような低歪域での減衰性に優れ、且つ低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さい粘弾性ダンパが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例、比較例のゴム組成物を用いた減衰性部材の減衰性能等を評価するために作製する、前記減衰性部材のモデルとしての試験体を分解して示す分解斜視図。
【
図2】前記試験体を変位させて変位量と荷重との関係を求めるための試験機の概略を説明する図。
【
図3】前記試験機を用いて試験体を変位させて求められる、変位量と荷重との関係を示すヒステリシスループの一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<減衰性ゴム組成物>
本発明の減衰性ゴム組成物は、基材ゴム、粘着付与剤、カーボンブラック、シリカ、加硫剤および加硫促進剤を含有する減衰性ゴム組成物であって、前記基材ゴムが、ポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムを含有し、前記基材ゴム中のポリブタジエン系ゴムの含有率が、20質量%以上、60質量%以下であり、前記粘着付与剤が、石油系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂およびスチレン系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種であり、前記粘着付与剤の含有量が、基材ゴム100質量部に対して、60質量部以上、100質量部以下であり、前記カーボンブラックの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、100質量部以上、160質量部以下であり、前記シリカの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上、60質量部以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、ポリイソプレン系ゴム、ポリブタジエン系ゴム、粘着付与剤、カーボンブラック、シリカが相互作用することによって、得られる減衰性部材は低歪域においてヒステリシスロスが発生する。低歪域においてヒステリシスロスが発生する減衰性部材は、低歪域での減衰性能が向上する。ポリブタジエン系ゴムはポリイソプレン系ゴムよりも柔軟性に優れるため、ポリブタジエン系ゴムを配合することで、減衰性部材の温度(特に低温下)による物性(剛性等)の変動を小さくすることができる。また、特定種類の粘着付与剤を配合することで、減衰性部材の減衰性を大きくすることができる。特定量のポリブタジエン系ゴム、および、特定量と特定種類の粘着付与剤を配合することで、低歪域での減衰性を維持しつつ、低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性を小さくすることができる。さらに、無機充填剤であるカーボンブラックおよびシリカは、温度依存性がなく、かつ減衰性や成形性の向上に寄与できるものである。特に、シリカは、カーボンブラックに比べて、フィラー同士の相互作用が高いため、減衰性への向上効果が高い。カーボンブラックとシリカを併用することで、ゴム組成物の加工性を良好に保ちながら、減衰性部材の低歪域での減衰性、並び、低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性を向上させることができる。
【0016】
以下、本発明の減衰性ゴム組成物に含まれうる各成分について説明する。
(基材ゴム)
本発明の減衰性ゴム組成物に含まれる基材ゴムは、ポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムを含有する。
【0017】
前記ポリイソプレン系ゴムとは、イソプレンに由来する構成単位を有するゴム(好ましくは、イソプレンに由来する構成単位を主に有するゴム)であれば特に限定されない。前記ポリイソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)および合成ゴムが挙げられる。天然ゴムは、ゴム含有植物に由来し、純粋なシス-1,4-ポリイソプレンを含むものである。合成ポリイソプレン系ゴムは、イソプレンを含む単量体(好ましくは、イソプレンを主成分とする単量体)を重合することにより合成したものである。なお、前記天然ゴムおよび合成ポリイソプレン系ゴムは、変性された変性ゴムであってもよい。これらのポリイソプレン系ゴムは、単独で使用してもよく、2種を併用してもよい。
【0018】
前記天然ゴムとしては、例えば、SMR(Standard Malaysian Rubber)-CV60等の各種グレードの天然ゴムや、各種の脱蛋白天然ゴム等が挙げられる。
【0019】
前記合成ポリイソプレン系ゴムとしては、例えば、ポリイソプレンゴム(IR)、イソプレンとその他の単量体成分との共重合体ゴムが挙げられる。
【0020】
前記合成ポリイソプレン系ゴムを構成し得る他の単量体成分としては、例えば、ブタジエン、スチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、クロロプレン等が挙げられる。これらの他の単量体成分は、単独で使用してもよく、2種を併用してもよい。
【0021】
前記合成ポリイソプレン系ゴムは、イソプレンに由来する構成単位を50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましく、90質量%以上含有することが特に好ましい。なお、前記イソプレンに由来する構成単位の上限は、100質量%である。
【0022】
前記合成ポリイソプレン系ゴムのうち、ポリイソプレンゴム(IR)が好ましく、シス-1,4-結合を90質量%以上(好ましくは95質量%以上)含む高シス-1,4-ポリイソプレンゴムがより好ましい。高シス-1,4-ポリイソプレンゴムを用いることで、低歪域での減衰性がより良好となる。
【0023】
前記合成ポリイソプレン系ゴムの具体例としては、例えば、日本ゼオン社製のNipol(登録商標)IRシリーズ(例えば、IR2200)等の市販品が挙げられる。
【0024】
前記ポリイソプレン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4(100℃)は、40以上であることが好ましく、より好ましくは45以上、さらに好ましくは50以上であり、120以下が好ましく、より好ましくは110以下、さらに好ましくは100以下である。ポリイソプレン系ゴムのムーニー粘度が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。なお、本発明でいうムーニー粘度(ML1+4(100℃))とは、JIS K6300に準じて、Lローターを使用し、予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間、100℃の条件下にて測定した値である。
【0025】
基材ゴム中のポリイソプレン系ゴムの含有率は、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。ポリイソプレン系ゴムの含有率が40質量%以上であれば、低歪域での減衰性がより良好となり、80質量%以下であれば、低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性がより向上する。
【0026】
前記ポリブタジエン系ゴムとは、ブタジエンに由来する構成単位を有するゴム(好ましくは、ブタジエンに由来する構成単位を主に有するゴム)であれば特に限定されない。前記ポリブタジエン系ゴムとしては、例えば、ブタジエンを含む単量体(好ましくは、ブタジエンを主成分とする単量体)を重合することにより合成したものが挙げられる。なお、前記ポリブタジエン系ゴムは、変性された変性ゴムであってもよい。前記ポリブタジエン系ゴムは、単独で使用してもよく、2種を併用してもよい。
【0027】
前記ポリブタジエン系ゴムとしては、例えば、ポリブタジエンゴム(BR)、ブタジエンとその他の単量体成分との共重合体ゴムが挙げられる。
【0028】
前記ポリブタジエン系ゴムを構成し得る他の単量体成分としては、例えば、イソプレン、スチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、クロロプレン等が挙げられる。これらの他の単量体成分は、単独で使用してもよく、2種を併用してもよい。
【0029】
前記ポリブタジエン系ゴムは、ブタジエンに由来する構成単位を50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましく、90質量%以上含有することが特に好ましい。なお、前記ブタジエンに由来する構成単位の上限は、100質量%である。
【0030】
前記ポリブタジエン系ゴムのうち、ポリブタジエンゴム(BR)が好ましく、シス-1,4-結合を90質量%以上(好ましくは95質量%以上)含む高シス-1,4-ポリブタジエンゴムがより好ましい。高シス-1,4-ポリブタジエンゴムは、温度(特に低温下)による物性の変動がより小さい。高シス-1,4-ポリブタジエンゴムを用いることで、減衰性部材の低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性を一層小さくすることができる。
【0031】
前記ポリブタジエン系ゴムの具体例としては、例えば、宇部興産社製のUBEPOL(登録商標)BRシリーズ(例えば、BR130B、BR360B、BR150B 、BR150L.BR360L)、日本ゼオン社製のNipol(登録商標)SBRシリーズ(例えば、SBR1502、SBR1723)等の市販品が挙げられる。
【0032】
前記ポリブタジエン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4(100℃)は、15以上であることが好ましく、より好ましくは20以上、さらに好ましくは25以上であり、80以下が好ましく、より好ましくは70以下、さらに好ましくは60以下である。ポリブタジエン系ゴムのムーニー粘度が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。
【0033】
基材ゴム中のポリブタジエン系ゴムの含有率は、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。ポリブタジエン系ゴムの含有率が20質量%以上であれば、低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が向上し、60質量%以下であれば、低歪域での減衰性が向上する。
【0034】
前記基材ゴムは、上記したポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムに加えて、その他のゴム成分を含有してもよい。前記他のゴム成分としては、例えば、ブチルゴム、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム等、及びそれらの変性ゴムが挙げられる。これらの他のゴム成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
基材ゴム中のポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムの合計含有率は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。なお、前記合計含有率の上限は、100質量%である。ポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムの合計含有率が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。
【0036】
ポリイソプレン系ゴムとポリブタジエン系ゴムとの質量比(ポリイソプレン系ゴム/ポリブタジエン系ゴム)は、0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましく、4.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。質量比(ポリイソプレン系ゴム/ポリブタジエン系ゴム)が前記範囲内であれば、低歪域での減衰性、並びに、低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性がより向上する。
【0037】
なお、本発明の減衰性ゴム組成物に含まれる各ゴム成分(ポリイソプレン系ゴム、ポリブタジエン系ゴム、その他のゴム成分)は、伸展油を加えた油展タイプのものおよび伸展油を加えない非油展タイプのもののいずれでもよい。油展タイプのものを使用する場合、前記ゴム含有率および質量比は、伸展油を除くゴム分に基づいて計算される値である。
【0038】
本発明の減衰性ゴム組成物に含まれる各ゴム成分は、25℃で固形状を呈することが好ましい。即ち、本発明の基材ゴムには、通常軟化剤として使用される25℃で液状を呈する液状ゴムは含まれないことが好ましい。
【0039】
(粘着付与剤)
本発明の減衰性ゴム組成物に含まれる粘着付与剤は、石油系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂およびスチレン系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である。これらの粘着付与剤は、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記石油系樹脂としては、石油ナフサの熱分解によって得られる脂肪(環)族ジオレフィン系不飽和炭化水素留分(C5留分)や芳香族オレフィン系不飽和炭化水素留分(C9留分)を原料として重合した樹脂であり、例えば、前記C5留分(またはC5留分から抽出された高純度の成分)を(共)重合して得られる脂肪(環)族系石油樹脂、前記C9留分(またはC9留分から抽出された高純度の成分)を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂、前記C5留分とC9留分(またはこれらの留分から抽出された高純度の成分)を共重合して得られる脂肪(環)族-芳香族系石油樹脂、これらの水素添加物等が挙げられる。これらの石油系樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記石油系樹脂の具体例としては、例えば、日本ゼオン社製のクイントン(登録商標)1000シリーズ(例えば、クイントン1920、クイントン2940)や100シリーズ(例えば、クイントンE200SN)、東ソー社製のペトコール(登録商標)シリーズ(例えば、ペトコール120、ペトコール130、ペトコールLX)やペトロタック(登録商標)シリーズ(例えば、ペトロタック60、ペトロタック70)、ストラクトール社製のストラクトール(登録商標)シリーズ(例えば、ストラクトール40MS、ストラクトール60NS)、丸善石油化学社製のマルカレッツ(登録商標)Mシリーズ(例えば、マルカレッツM-890A)等の市販品が挙げられる。
【0042】
前記テルペン系樹脂としては、主にテルペン化合物に由来する構成単位を有する樹脂であり、例えば、テルペン化合物を(共)重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物を共重合して得られるテルペン-芳香族系樹脂、ポリテルペン樹脂を芳香族化合物で変性した芳香族変性ポリテルペン樹脂、これらの水素添加物等が挙げられる。これらのテルペン系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。これらのテルペン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記芳香族化合物としては、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体などが挙げられる。これらの芳香族化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記テルペン系樹脂の具体例としては、例えば、クレイトン社製のSylvatraxx(登録商標)シリーズ(例えば、Sylvatraxx4150、Sylvatraxx4125)、Sylvares(登録商標)シリーズ(例えば、SylvaresTR B115、SylvaresTR M1115)等の市販品が挙げられる。
【0046】
前記クマロン系樹脂としては、主にクマロンに由来する構成単位を有する樹脂であり、例えば、クマロン樹脂、クマロン-インデン樹脂、クマロンとインデンとスチレンを主成分とする共重合樹脂などが挙げられる。これらのクマロン系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記クマロン系樹脂の具体例としては、例えば、日塗化学社製のニットレジン(登録商標)クマロンシリーズ(例えば、ニットレジンクマロンG-90、ニットレジンクマロンL-5、ニットレジンクマロンL-20)等の市販品が挙げられる。
【0048】
前記スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして含むポリマーであり、例えば、スチレン系単量体1種を単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体との共重合体も挙げられる。
【0049】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、スチレン、α-メチルスチレンがより好ましい。
【0050】
効果をより良好に得るため、スチレン系樹脂は、α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレン単独重合体、スチレンとα-メチルスチレンとの共重合体等)が好ましく、スチレンα-メチルスチレン樹脂(スチレンとα-メチルスチレンとの共重合体))がより好ましい。
【0051】
前記粘着付与剤としては、ガラス転移温度(Tg)が40℃~50℃の粘着付与剤(a)、ガラス転移温度(Tg)が60℃~70℃の粘着付与剤(b)、および、後記するガラス転移温度(Tg)がこれらの粘着付与剤(a)および(b)と異なる粘着付与剤(c)が挙げられる。本発明では、前記粘着付与剤は、粘着付与剤(a)を含有することが好ましく、粘着付与剤(a)と粘着付与剤(b)を含有することがより好ましく、粘着付与剤(a)と粘着付与剤(b)と粘着付与剤(c)を含有することがさらに好ましい。なお、前記ガラス転移温度(Tg)は、例えば、DSC(示差走査熱量分析)により測定することができる。
【0052】
前記粘着付与剤(a)のガラス転移温度(Tg)は、40℃以上であることが好ましく、41℃以上であることがより好ましく、42℃以上であることがさらに好ましく、50℃以下であることが好ましく、48℃以下であることがより好ましく、45℃以下であることがさらに好ましい。粘着付与剤(a)のガラス転移温度(Tg)が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。
【0053】
前記粘着付与剤(a)の具体例としては、例えば、日塗化学社製のニットレジンクマロンG-90等の市販品が挙げられる。
【0054】
前記粘着付与剤(a)の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、20質量部以上であることが好ましく、25質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、50質量部以下であることが好ましく、48質量部以下であることがより好ましく、45質量部以下であることがさらに好ましい。粘着付与剤(a)の含有量が20質量部以上であれば、低歪域での減衰性がより向上し、50質量部以下であれば、低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性がより向上する。
【0055】
前記粘着付与剤(b)のガラス転移温度(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、62℃以上であることがより好ましく、64℃以上であることがさらに好ましく、70℃以下であることが好ましく、68℃以下であることがより好ましく、66℃以下であることがさらに好ましい。粘着付与剤(b)のガラス転移温度(Tg)が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。
【0056】
前記粘着付与剤(b)の具体例としては、例えば、クレイトン社製のSylvatraxx4150、日本ゼオン社製のクイントン1920等の市販品が挙げられる。
【0057】
前記粘着付与剤(b)の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、7.5質量部以上であることがさらに好ましく、15質量部以下であることが好ましく、13質量部以下であることがより好ましく、12.5質量部以下であることがさらに好ましい。粘着付与剤(b)の含有量が3質量部以上であれば、低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性がより向上し、15質量部以下であれば、低歪域での減衰性がより向上する。
【0058】
前記粘着付与剤(a)と粘着付与剤(b)との質量比((a)/(b))は、1.5以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましく、16以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。質量比((a)/(b))が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。
【0059】
前記粘着付与剤(a)のガラス転移温度(Tga)と粘着付与剤(b)のガラス転移温度(Tgb)との差(Tgb-Tga)は、10℃以上であることが好ましく、12℃以上であることがより好ましく、15℃以上であることがさらに好ましく、30℃以下であることが好ましく、28℃以下であることがより好ましく、25℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移温度の差(Tgb-Tga)が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。
【0060】
前記粘着付与剤(c)としては、石油系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂、スチレン系樹脂よりなる群から選択される1種であって、ガラス転移温度が40℃未満のもの、または、ガラス転移温度が50℃超、60℃未満のもの、あるいは、ガラス転移温度が70℃超のものを挙げることができる。これらの中でも、特にガラス転移温度が40℃未満のものを使用することが好ましい。
【0061】
前記粘着付与剤(c)の具体例としては、例えば、東ソー社製のペトコール130、ストラクトール社製のストラクトール40MS、三井化学社製のFTR8100、FTR6100等の市販品が挙げられる。
【0062】
前記粘着付与剤(c)の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、50質量部以下であることが好ましく、45質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましい。粘着付与剤(c)の含有量が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。
【0063】
前記粘着付与剤(c)を含有する場合、前記粘着付与剤((a)+(b)+(c))中の粘着付与剤(a)と(b)の合計含有率は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。粘着付与剤(a)と(b)の合計含有率が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。
【0064】
前記粘着付与剤((a)+(b)+(c))の総量は、基材ゴム100質量部に対して、60質量部以上であることが好ましく、62質量部以上であることがより好ましく、65質量部以上であることがさらに好ましく、100質量部以下であることが好ましく、95質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることがさらに好ましい。粘着付与剤の合計含有量が60質量部以上であれば、低歪域での減衰性が向上し、100質量部以下であれば、低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が向上し、また加工性が良好となる。なお、粘着付与剤(b)および(c)を含有しない場合は、前記粘着付与剤の総量は、粘着付与剤(a)の含有量である。
【0065】
(カーボンブラック)
本発明の減衰性ゴム組成物に含まれるカーボンブラックは、例えば、石油系または石炭系の油や天然ガスなどの炭化水素を原料として熱分解や不完全燃焼させることで製造されるものが挙げられる。前記カーボンブラックとしては、製造方法によって分類されるファーネスカーボンブラック、サーマルカーボンブラック、チャンネルカーボンブラック、アセチレンブラックのいずれを使用してもよい。
【0066】
前記カーボンブラックとしては、SAF(Super Abrasion Furnace Black)、ISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace Black)、IISAF(Intermediate ISAF)、HAF(High Abrasion Furnace Black)、MAF(Medium Abrasion Furnace Black)、FEF(Fast Extruding Furnace Black)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace Black)、GPF(General Purpose Furnace Black)、FF(Fine Furnace Black)、CF(Conductive Furnace Black)などのファーネスカーボンブラック;FT(Fine Thermal black)、MT(Medium Thermal Black)などのサーマルカーボンブラック;EPC(Easy Processing Channel Black)、MPC(Medium Processing Channel Black)などのチャンネルカーボンブラック;アセチレンブラックが挙げられる。前記カーボンブラックは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
前記カーボンブラックの具体例としては、例えば、東海カーボン社製のシーストシリーズ(例えば、シースト3)などの市販品が挙げられる。
【0068】
前記カーボンブラックの算術平均粒子径(1次粒子径)は、15nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、25nm以上であることがさらに好ましく、100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、60nm以下であることがさらに好ましい。カーボンブラックの算術平均粒子径が前記範囲内であれば、加工性および低歪域での減衰性能がより良好となる。なお、前記算術平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡写真によりカーボンブラック各粒子の直径を測定し、それらの算術平均値を算出することで求めることができる。
【0069】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、30m2/g以上であることが好ましく、50m2/g以上であることがより好ましく、70m2/g以上であることがさらに好ましく、150m2/g以下であることが好ましく、130m2/g以下であることがより好ましく、110m2/g以下であることがさらに好ましい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積が前記範囲内であれば、加工性および低歪域での減衰性能がより良好となる。なお、前記窒素吸着比表面積は、例えば、吸着気体として窒素ガスを用いる気相吸着法で測定することができる。
【0070】
前記カーボンブラックのヨウ素吸着量は、30mg/g以上であることが好ましく、50mg/g以上であることがより好ましく、70mg/g以上であることがさらに好ましく、150mg/g以下であることが好ましく、130mg/g以下であることがより好ましく、110mg/g以下であることがさらに好ましい。カーボンブラックのヨウ素吸着量が前記範囲内であれば、加工性および低歪域での減衰性能がより良好となる。なお、前記ヨウ素吸着量は、例えば、JIS K6217-1に準拠して測定することができる。
【0071】
前記カーボンブラックのDBP(フタル酸ジブチル)吸収量は、40cm3/100g以上であることが好ましく、60cm3/100g以上であることがより好ましく、80cm3/100g以上であることがさらに好ましく、150cm3/100g以下であることが好ましく、140cm3/100g以下であることがより好ましく、130cm3/100g以下であることがさらに好ましい。カーボンブラックのDBP吸収量が前記範囲内であれば、加工性および低歪域での減衰性能がより良好となる。なお、前記DBP吸収量は、例えば、JIS K6217-4の吸油量A法に準拠して測定することができる。
【0072】
前記カーボンブラックの含有量は、基材ゴム100質量部に対して、100質量部以上であることが好ましく、110質量部以上であることがより好ましく、120質量部以上であることがさらに好ましく、160質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましく、140質量部以下であることがさらに好ましい。カーボンブラックの含有量が100質量部以上であれば、混錬後のゴム組成物の排出がより容易となると共に、減衰性部材の低歪域での減衰性が向上し、160質量部以下であれば、ゴム組成物の混練が容易となり、加工性が良好となる。
【0073】
(シリカ)
本発明の減衰性ゴム組成物に含まれるシリカは、例えば、主として珪砂を原料として化学的に反応させて、多孔質構造を持つ合成シリカが挙げられる。
【0074】
前記シリカは、製造方法によって分類される湿式法シリカ、乾式法シリカのいずれを使用してもよい。また、湿式法シリカは反応条件の違いにより沈澱法シリカとゲル法シリカがある。これらの沈澱法シリカまたはゲル法シリカのいずれを用いてもよい。これらの中でも、特に比較的一次粒子が大きく、柔らかい凝集構造を持つ沈澱法シリカを用いることが好ましい。
【0075】
前記シリカの具体例としては、例えば、東ソー・シリカ社製のNipsil(登録商標)シリーズ(例えば、NipsilVN3)等の市販品が挙げられる。
【0076】
前記シリカのBET比表面積は、130m2/g以上であることが好ましく、150m2/g以上であることがより好ましく、170m2/g以上であることがさらに好ましく、300m2/g以下であることが好ましく、290m2/g以下であることがより好ましく、280m2/g以下であることがさらに好ましい。シリカのBET比表面積が前記範囲内であれば、加工性および低歪域での減衰性能がより良好となる。なお、BET比表面積は、吸着気体として窒素ガスを用いる気相吸着法で測定される値である。
【0077】
前記シリカの含有量は、基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましい。シリカの含有量が5質量部以上であれば、シリカによる低歪域での減衰性の向上効果が発揮され、60質量部以下であれば、ゴム組成物の混練が容易となり、加工性が良好となる。
【0078】
前記カーボンブラックとシリカとの質量比(カーボンブラック/シリカ)は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましく、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましい。質量比(カーボンブラック/シリカ)が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。
【0079】
前記カーボンブラックとシリカの合計含有量は、基材ゴム100質量部に対して、110質量部以上であることが好ましく、120質量部以上であることがより好ましく、130質量部以上であることがさらに好ましく、200質量部以下であることが好ましく、190質量部以下であることがより好ましく、180質量部以下であることがさらに好ましい。カーボンブラックとシリカの合計含有量が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。
【0080】
(加硫剤)
本発明の減衰性ゴム組成物は、さらに、加硫剤を含有することが好ましい。
【0081】
前記加硫剤としては、硫黄系加硫剤を用いることが好ましい。前記硫黄系加硫剤としては、例えば、粉末硫黄、オイル処理粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、分散性硫黄等が挙げられる。これらの硫黄系加硫剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
前記加硫剤の具体例としては、例えば、鶴見化学工業社製の5%オイル処理粉末硫黄などの市販品が挙げられる。
【0083】
前記加硫剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、0.8質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることがさらに好ましく、3.0質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以下であることがさらに好ましい。加硫剤の含有量が前記範囲内であれば、加硫性が良好でありながら、ブルームの発生を抑制することができる。なお、前記加硫剤として、例えばオイル処理粉末硫黄や分散性硫黄等を使用する場合、前記含有量は、それぞれの中に含まれる有効成分としての硫黄自体の含有量とする。
【0084】
(加硫促進剤)
本発明の減衰性ゴム組成物は、さらに、加硫促進剤を含有することが好ましい。
【0085】
前記加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)等のチアゾール系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnMDC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEDC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)等のジチオカルバミン酸塩系促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(OBS)、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
前記加硫促進剤の具体例としては、例えば、川口化学工業社製のアクセル(登録商標)シリーズ(例えば、アクセルCZ、アクセルTET)、大内新興化学社製のノクセラー(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0087】
前記加硫促進剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.3質量部以上であることが好ましく、0.4質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましく、2.0質量部以下であることが好ましく、1.8質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以下であることがさらに好ましい。加硫促進剤の含有量が前記範囲内であれば、加硫促進性が良好でありながら、ブルームの発生を抑制することができる。
【0088】
(その他の成分)
本発明の減衰性ゴム組成物は、上記の各成分に加えて、さらに、可塑剤、加硫助剤、老化防止剤、前記粘着付与剤(a)、(b)、(c)以外の粘着付与剤、前記カーボンブラックおよびシリカ以外の充填剤、軟化剤等の、減衰性ゴム組成物に使用されうる種々の添加剤を、本発明の目的を損害しない範囲内で適宜選択して含有してもよい。
【0089】
[可塑剤]
前記可塑剤としては、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリブチルホスフェート(TBP)、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)などの正リン酸エステル系可塑剤;ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート(DOP)等のフタル酸エステル系可塑剤;ジブチルアジペート(DBA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート(DOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)、ビス〔2-(2-ブトキシエトキシ)エチル〕アジペート(BXA-N)、ビス〔2-(2-ブトキシエトキシ)エチル〕アジペート(BXA-R)等のアジピン酸エステル系可塑剤;ジブチルセバケート(DBS)、ビス(2-エチルヘキシル)セバケート(DOS)等のセバシン酸エステル系可塑剤;メチルアセチルリシノレート(MAR-N)等のリシノール酸エステル系可塑剤が挙げられる。これらの可塑剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
前記可塑剤の具体例としては、例えば、大八化学工業社製の各種ゴム用途の可塑剤が挙げられる。
【0091】
前記可塑剤の粘度(25℃)は、5mPa・s以上であることが好ましく、8mPa・s以上であることがより好ましく、10mPa・s以上であることがさらに好ましく、25mPa・s以下であることが好ましく、22mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下であることがさらに好ましい。可塑剤の粘度が前記範囲内であれば、ゴム組成物の加工性がより良好となる。なお、前記可塑剤の粘度は、例えば、25℃で、JIS K2283:2000に規定される「動粘度試験方法」により測定することができる。
【0092】
前記可塑剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上であることが好ましく、18質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、35質量部以下であることが好ましく、32質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。可塑剤の含有量が15質量部以上であれば、ゴム組成物の混練がより容易となり、35質量部以下であれば、混練後のゴム組成物の排出がより容易となる。
【0093】
[加硫助剤]
前記加硫助剤としては、酸化亜鉛等の金属化合物や、ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸が挙げられる。これらの加硫助剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
前記加硫助剤の具体例としては、例えば、三井金属鉱業社製の酸化亜鉛2種、日油社製のつばきなどの市販品が挙げられる。
【0095】
前記加硫助剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以下であることが好ましく、9質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることがさらに好ましい。加硫助剤の含有量が前記範囲内であれば、ゴム組成物の加硫性がより良好となる。
【0096】
また、加硫助剤として金属化合物と脂肪酸を併用することも好ましい。この場合、金属化合物と脂肪酸の質量比(金属化合物/脂肪酸)は、0.5以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましく、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。金属化合物と脂肪酸の質量比が前記範囲内であれば、ゴム組成物の加硫性が一層良好となる。
【0097】
[老化防止剤]
前記老化防止剤としては、ベンズイミダゾール系、キノン系、ポリフェノール系、アミン系等の各種老化防止剤が挙げられる。これらの老化防止剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、ベンズイミダゾール系老化防止剤、キノン系老化防止剤が好ましく、ベンズイミダゾール系老化防止剤とキノン系老化防止剤を併用することがより好ましい。
【0098】
前記ベンズイミダゾール系老化防止剤の具体例としては、例えば、大内新興化学工業社製のノクラック(登録商標)シリーズ(例えば、ノクラックMB)等の市販品が挙げられる。前記キノン系老化防止剤の具体例としては、例えば、丸石化学品社製のアンチゲンFR〔芳香族ケトン-アミン縮合物〕等が挙げられる。
【0099】
前記老化防止剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましく、8質量部以下であることが好ましく、6質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。老化防止剤の含有量が前記範囲内であれば、ゴム組成物の老化防止効果が良好になる。
【0100】
また、前記老化防止剤としてベンズイミダゾール系老化防止剤とキノン系老化防止剤を併用する場合、これらの質量比(ベンズイミダゾール系/キノン系)は、0.2以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましく、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましい。質量比(ベンズイミダゾール系/キノン系)が前記範囲内であれば、ゴム組成物の老化防止効果がより良好になる。
【0101】
[他の粘着付与剤]
本発明の減衰性ゴム組成物は、前記粘着付与剤(a)、(b)、(c)に加えて、さらに、その他の粘着付与剤(d)を含有してもよい。
【0102】
前記粘着付与剤(d)は、石油系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂およびスチレン系樹脂よりなる群から選択される1種の粘着付与剤((a),(b),(c))とは異なるものであれば特に限定されない。前記粘着付与剤(d)としては、ロジン系粘着付与剤が好ましい。前記ロジン系粘着付与剤としては、ロジンエステル、水添ロジンエステル、不均化ロジンエステル、重合ロジンエステルなどのロジン系樹脂が挙げられる。これらの粘着付与剤(d)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
前記ロジン系樹脂の具体例としては、例えば、荒川化学工業社製のパインクリスタル(登録商標)シリーズ(例えば、パインクリスタルKR-85)などの市販品が挙げられる。
【0104】
前記粘着付与剤(d)の軟化点(環球法)は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましく、120℃以下であることが好ましく、110℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。粘着付与剤(d)の軟化点が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。なお、前記粘着付与剤の軟化点は、例えば、JIS K-2207(1996年)(環球法)に準拠して測定することができる。
【0105】
前記粘着付与剤(d)の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、6質量部以上であることがより好ましく、8質量部以上であることがさらに好ましく、25質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。粘着付与剤(d)の含有量が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。
【0106】
上記した粘着付与剤((a)+(b)+(c))と、前記粘着付与剤(d)との質量比(((a)+(b)+(c))/(d))は、4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、6以上であることがさらに好ましく、15以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。質量比(((a)+(b)+(c))/(d))が前記範囲内であれば、本発明の効果がより良好に得られる。
【0107】
[カーボンブラックおよびシリカ以外の充填剤]
前記カーボンブラックおよびシリカ以外の充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、クレーなどの無機充填剤が挙げられる。これらの充填剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
本発明の減衰性ゴム組成物は、例えば、基材ゴム、粘着付与剤、カーボンブラック、シリカ、加硫剤、加硫促進剤、および必要に応じて添加するその他の成分を混練することにより調製することができる。混練の方法は、特に限定されず、例えば、密閉式混練機、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの公知の混練機を用いて行えばよい。
【0109】
<減衰性ゴム>
本発明には、本発明の減衰性ゴム組成物を硬化してなる減衰性ゴムが含まれる。本発明の減衰性ゴムは、例えば、混練後の減衰性ゴム組成物を130℃~170℃、20分間~10時間の条件でプレスして、成形と加硫を同時に行うことにより得ることができる。
【0110】
本発明の減衰性ゴムは、風揺れのような低歪域での減衰性に優れ、且つ該低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さいものである。例えば、風揺れのような低歪域の揺れを吸収するための防振材料として好適に用いることができる。
【0111】
本発明の減衰性ゴムは、温度23℃、歪2%の条件で測定した等価減衰定数heq(23℃)が、0.25以上であることが好ましく、0.28以上であることがより好ましく、0.30以上であることがさらに好ましい。等価減衰定数heq(23℃)が0.25以上であれば、減衰性ゴムの減衰性が良好となる。
【0112】
本発明の減衰性ゴムは、温度30℃、歪2%の条件で測定した等価減衰定数heq(30℃)に対する、温度10℃、歪2%の条件で測定した等価減衰定数heq(10℃)の比(heq(10℃)/heq(30℃))が、1.60以下であることが好ましく、1.40以下であることがより好ましく、1.20以下であることがさらに好ましい。前記比(heq(10℃)/heq(30℃))が1.60以下であれば、減衰性ゴムの減衰性の低温依存性が良好となる。なお、前記比(heq(10℃)/heq(30℃))の下限は、特に限定されないが、0.80であることが好ましく、0.90であることがより好ましく、0.95であることがさらに好ましい。
【0113】
本発明の減衰性ゴムは、温度30℃、歪2%の条件で測定した等価せん断弾性率Geq(30℃)に対する、温度10℃、歪2%の条件で測定した等価せん断弾性率Geq(10℃)の比(Geq(10℃)/Geq(30℃))が、1.60以下であることが好ましく、1.50以下であることがより好ましく、1.40以下であることがさらに好ましい。前記比(Geq(10℃)/Geq(30℃))が1.60以下であれば、減衰性ゴムのせん断弾性率の低温依存性が良好となる。なお、前記比(Geq(10℃)/Geq(30℃))の下限は、特に限定されないが、0.80であることが好ましく、0.90であることがより好ましく、0.95であることがさらに好ましい。
【0114】
<粘弾性ダンパ>
本発明には、本発明の減衰性ゴムを減衰性部材として備える粘弾性ダンパが含まれる。本発明の粘弾性ダンパは、風揺れのような低歪域での減衰性に優れ、且つ低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さいものである。例えば、風揺れのような低歪域の揺れを吸収するための粘弾性ダンパ(特に建築物に設置される粘弾性ダンパ)として好適に用いることができる。
【実施例0115】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0116】
[評価方法]
<加工性試験>
密閉式混練機でゴム組成物の各成分を混練し、混練から排出まで問題なくスムーズにできるものを「○」、少し困難であるが可能であるものを「△」、できないものを「×」として、加工性を評価した。「○」または「△」と評価されるものを合格とした。
【0117】
<変位試験>
(試験体の作製)
各ゴム組成物をシート状に押出成形したのち打ち抜いて、
図1に示すように平面形状が矩形の平板1(厚み8mm×縦40mm×横40mm)を形成した。次いで、この平板1の表裏両面にそれぞれ加硫接着剤を介して厚み6mm×縦44mm×横44mmの矩形平板状の鋼板2を重ねて積層体とした。そして、上記の積層体を積層方向に加圧しながら140℃に加熱して、平板1を形成するゴム組成物を架橋させるとともに、平板1を2枚の鋼板2と加硫接着させて、減衰性部材のモデルとしての試験体3を作製した。
【0118】
(23℃、10℃、30℃における変位試験)
上記試験体3を
図2(a)に示すように2個用意し、この2個の試験体3をそれぞれ一方の鋼板2を介して1枚の中央固定治具4にボルトで固定するとともに、両試験体3の他方の鋼板2にそれぞれ1枚ずつの左右固定治具5をボルトで固定した。次いで、中央固定治具4を、図示しない試験機の上側の固定アーム6にジョイント7を介してボルトで固定し、かつ2枚の左右固定治具5を、上記試験機の下側の可動盤8にジョイント9を介してボルトで固定した。なお、両試験体3は、それぞれ平板1の互いに平行な2辺を下記の変位方向と平行に揃えた状態で、上記のように固定した。次いで、下記(I)(II)の操作を1サイクルとして、平板1を繰り返し歪み変形、すなわち振動させた際の、平板1の厚み方向と直交方向の変位量(mm)と、荷重(N)との関係を示すヒステリシスループH(
図3参照)を求めた。
(I):可動盤8を、
図2(a)中に白抜きの矢印で示すように固定アーム6の方向に押し上げるように変位させて、平板1を、
図2(b)に示すように厚み方向と直交方向に歪み変形させた状態とする。
(II):上記の状態から、可動盤8を、今度は
図2(b)中に白抜きの矢印で示すように固定アーム6の方向と反対方向に引き下げるように変位させて、
図2(a)に示す状態に戻す。
【0119】
測定は、それぞれ、温度23℃、10℃、30℃の環境下、上記(I)(II)の操作を3サイクル実施して3サイクル目の値を求めた。各サイクルにおける最大変位量は、いずれも平板1を挟む2枚の鋼板2の、当該平板1の厚み方向と直交方向のずれ量が平板1の厚みの2%となるように設定した。
【0120】
測定によって求めた
図3のヒステリシスループHから、下記式(1)によって等価せん断弾性率Geq(N/mm
2)を求めた。
【0121】
【0122】
式中、Keq(N/mm)は、ヒステリシスループHの最大変位点と最小変位点とを結ぶ、
図3中に太線の実線で示す直線L
1の傾きであり、T(mm)は平板1の厚みであり、A(mm
2)は平板1の断面積である。
【0123】
また、
図3のヒステリシスループHから、下記式(2)によって等価減衰定数heqを求めた。
【0124】
【0125】
式中、ΔWは、
図3中に斜線を付して示した、ヒステリシスループHの全表面積で表される吸収エネルギー量であり、Wは、同図中に網線を付して示した、直線L
1と、グラフの横軸と、直線L
1とヒステリシスループHとの交点から上記グラフの横軸におろした垂線L
2とで囲まれた三角形の領域の表面積で表される弾性歪みエネルギーである。
【0126】
(減衰性)
温度23℃の環境下で測定した等価減衰定数heq(23℃)を減衰性の指標とした。かかる等価減衰定数heq(23℃)が大きいほど、減衰性に優れることを示す。等価減衰定数heq(23℃)は、比較例1のheq(23℃)を1.00とする相対値で示した。相対値が0.70以上を「〇」(合格)、0.70未満を「×」(不合格)とした。
【0127】
(減衰性の温度依存性)
温度30℃の環境下で測定した等価減衰定数heq(30℃)に対する温度10℃の環境下で測定した等価減衰定数heq(10℃)の比、即ちheq(10℃)/heq(30℃)を減衰性の温度依存性の指標とした。かかる比が1に近いほど、減衰性の温度依存性が小さいことを示す。減衰性の温度依存性(heq(10℃)/heq(30℃))は、比較例1の(heq(10℃)/heq(30℃))を1.00とする相対値で示した。相対値が1.10以下を「〇」(合格)、1.10より大きいものを「×」(不合格)とした。
【0128】
(せん断弾性率の温度依存性)
温度30℃の環境下で測定した等価せん断弾性率Geq(30℃)に対する温度10℃の環境下で測定した等価せん断弾性率Geq(10℃)の比、即ちGeq(10℃)/Geq(30℃)をせん断弾性率の温度依存性の指標とした。かかる比が1に近いほど、せん断弾性率の温度依存性が小さいことを示す。せん断弾性率の温度依存性(Geq(10℃)/Geq(30℃))は、比較例1の(Geq(10℃)/Geq(30℃))を1.00とする相対値で示した。相対値が0.95以下を「〇」(合格)、0.95より大きいものを「×」(不合格)とした。
【0129】
<総合評価>
加工性、減衰性、並びに減衰性およびせん断弾性率の温度依存性の評価結果がすべて「合格」の場合には、総合評価を「〇」とし、加工性、減衰性、並びに減衰性およびせん断弾性率の温度依存性の評価結果のいずれか一つが「不合格」の場合には、総合評価を「×」とした。
【0130】
表1、2に示す配合の各成分を、密閉式混練機を用いて混練することでゴム組成物を作製した。
【0131】
【0132】
【0133】
表1、2中の各成分は下記のとおりである。
IR2200:日本ゼオン社製のポリイソプレンゴム(商品名:Nipol IR2200、ムーニー粘度(ML1+4(100℃)):82)
BR130B:宇部興産社製のポリブタジエンゴム(商品名:UBEPOL BR130B、ムーニー粘度(ML1+4(100℃)):26)
クマロン系樹脂:日塗化学社製のクマロン-インデン-スチレン共重合樹脂(商品名:ニットレジンクマロンG-90、Tg:43℃)
テルペン系樹脂:クレイトン社製のポリテルペン樹脂(商品名:Sylvatraxx4150、Tg:65℃)
石油系樹脂:東ソー社製のC9系(芳香族系)石油樹脂(商品名:ペトコール130、Tg:74℃)
スチレン系樹脂:三井化学社製のスチレン系単量体単独重合樹脂(商品名:FTR8100、Tg:35℃)
カーボンブラック:東海カーボン社製(商品名:シースト3、算術平均粒子径:28nm、窒素吸着比表面積:79m2/g、ヨウ素吸着量:80mg/g、DBP吸収量:101cm3/100g)ル)ホスフェート、粘度(25℃):12mPa・s)
シリカ:東ソー・シリカ社製(商品名:Nipsil VN3、沈澱法シリカ)
加硫剤:鶴見化学工業社製の5%オイル処理粉末硫黄
アクセルCZ:川口化学工業社製のスルフェンアミド系加硫促進剤
アクセルTET:川口化学工業社製のチウラム系加硫促進剤
可塑剤:大八化学工業社製の正リン酸エステル(商品名:TOP、化学名:トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート)
ロジン系粘着剤:荒川化学工業社製の超淡色ロジン(商品名:パインクリスタルKR-85、軟化点(環球法):80~87℃)
ノクラックMB:大内新興化学工業社製のベンズイミダゾール系老化防止剤
アンチゲンFR:丸石化学品社製のキノン系老化防止剤
酸化亜鉛:三井金属鉱業社製の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油社製のつばき
【0134】
表1、2の結果から明らかなように、基材ゴム、粘着付与剤、カーボンブラック、シリカ、加硫剤および加硫促進剤を含有する減衰性ゴム組成物であって、前記基材ゴムが、ポリイソプレン系ゴムおよびポリブタジエン系ゴムを含有し、前記基材ゴム中のポリブタジエン系ゴムの含有率が、20質量%以上、60質量%以下であり、前記粘着付与剤が、石油系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂およびスチレン系樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種であり、前記粘着付与剤の含有量が、基材ゴム100質量部に対して、60質量部以上、100質量部以下であり、前記カーボンブラックの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、100質量部以上、160質量部以下であり、前記シリカの含有量が、基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上、60質量部以下である本発明の減衰性ゴム組成物は、加工性が良好であり、風揺れのような低歪域での減衰性に優れ、且つ低歪域での減衰性およびせん断弾性率の温度依存性が小さい減衰性部材を形成できる。
本発明の好ましい態様(2)は、前記粘着付与剤が、ガラス転移温度(Tg)が40℃~50℃の粘着付与剤(a)と、ガラス転移温度(Tg)が60℃~70℃の粘着付与剤(b)と、ガラス転移温度(Tg)が粘着付与剤(a)および(b)と異なる粘着付与剤(c)とを含有する前記態様(1)に記載の減衰性ゴム組成物である。
本発明の好ましい態様(3)は、前記粘着付与剤(a)の含有量が、基材ゴム100質量部に対して、20質量部以上、50質量部以下であり、前記粘着付与剤(b)の含有量が、基材ゴム100質量部に対して、3質量部以上、15質量部以下である前記態様(2)に記載の減衰性ゴム組成物である。