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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105083
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】医療用ゴム物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20250703BHJP
   C08L 23/28 20250101ALI20250703BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20250703BHJP
   A61J 1/06 20060101ALI20250703BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20250703BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
C08J7/00 304
C08J7/00 CER
C08J7/00 CES
C08L23/28
C08L23/06
A61J1/06 H
A61M5/315 512
A61M5/32 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223381
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】紀田 擁軍
(72)【発明者】
【氏名】田島 啓
(72)【発明者】
【氏名】野尻 和紀
【テーマコード(参考)】
4C047
4C066
4F073
4J002
【Fターム(参考)】
4C047AA05
4C047BB12
4C047BB25
4C047BB26
4C047BB28
4C047BB36
4C047DD02
4C047DD08
4C066HH14
4C066NN01
4C066PP04
4F073AA07
4F073BA07
4F073BA12
4F073BB05
4F073BB08
4F073CA46
4F073HA11
4J002BB002
4J002BB032
4J002BB052
4J002BB122
4J002BB142
4J002BB152
4J002BB172
4J002BB241
4J002GB01
(57)【要約】
【課題】表面の摩擦係数および粘着性が低減された医療用ゴム物品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の医療用ゴム組成物の製造方法は、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと(b)粒子状のポリオレフィン系樹脂とを含有する医療用ゴム組成物の硬化物に紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと、(b)粒子状のポリオレフィン系樹脂とを含有する医療用ゴム組成物の硬化物に、紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする医療用ゴム物品の製造方法。
【請求項2】
前記ハロゲン化ブチルゴムは、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、イソブチレンとp-メチルスチレンの共重合体の臭素化物よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の医療用ゴム物品の製造方法。
【請求項3】
(a)前記ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーは、ハロゲン化ブチルゴムのみからなる請求項1に記載の医療用ゴム物品の製造方法。
【請求項4】
(b)前記粒子状のポリオレフィン系樹脂の含有量は、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマー100質量部に対して、5質量部以上、100質量部以下である請求項1に記載の医療用ゴム物品の製造方法。
【請求項5】
(b)前記粒子状のポリオレフィン系樹脂の体積平均粒子径は、200μm以下である請求項1に記載の医療用ゴム物品の製造方法。
【請求項6】
(b)前記粒子状のポリオレフィン系樹脂は、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の医療用ゴム物品の製造方法。
【請求項7】
前記紫外線の波長は、160nm~380nmである請求項1に記載の医療用ゴム物品の製造方法。
【請求項8】
前記医療用ゴム組成物の硬化物への積算照度は、1000mJ/cm以上である請求項1に記載の医療用ゴム物品の製造方法。
【請求項9】
前記医療用ゴム物品は、バイアル瓶のゴム栓、シリンジ用のキャップ、プランジャストッパー、または、真空採血管用ゴム栓である請求項1~8のいずれか一項に記載の医療用ゴム物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ゴム物品の製造方法に関するものであり、より詳しくは、医療用ゴム物品表面の摩擦係数および粘着性を低減させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用ゴム物品には、ガスバリア性に優れるハロゲン化ブチルゴムが使用されている。ハロゲン化ブチルゴムは、加硫出来る二重結合量が僅かなので、加硫後のゴム物品表面には粘着性がある(タック値が高い)。そのために摺動性が悪く、更に長期間保管するとゴム部品同士がくっ付いてしまうという問題がある。高摺動性を付与し、摩擦抵抗を低くする目的で、加硫後のゴム物品表面にシリコーンオイルを塗布し、または、フッ素樹脂系フィルムでラミネートすることが行われている。
【0003】
一方、ポリマー材料表面の性質を向上させるために、ポリマー材料に紫外線を照射する表面改質方法がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、側鎖または主鎖に-CH-結合を有するポリマーからなる素材に、不活性雰囲気中で、波長が160~310nmである紫外線を照射した後、酸化性雰囲気中で、前記素材に、波長が200nm以下である紫外線を照射することにより、素材表面の濡れ性を均一にする素材の表面改質方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、ポリマー材料基材(ただし、布帛基材を除く。)の表面に、一般式(1)R-CH=CH(式中、Rは炭素数6以上のアルキル基を示す。)で表されるビニル化合物を接触させ、紫外線を照射することにより、前記ポリマー材料基材の表面に撥水性を付与するポリマー材料基材の表面処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平03-128941号公報
【特許文献2】特開2023-053773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
摺動性を改善するために医療用ゴム物品の表面にシリコーンオイルを塗布したり、フッ素樹脂系フィルムでラミネートすることが行われている。しかしながら、シリコーンオイルを塗布した医療用ゴム物品が、バイオ薬品に接触すると、シリコーン粒子によるタンパク質の凝集が起こる恐れがある。そのため、バイオ薬品を使用する医療用品には、シリコーンオイル塗布した医療用ゴム物品は使えない。特に、プレフィルドシリンジのプランジャストッパーでは、シリコーンオイルフリー(SOF)のニーズが高くなっている。
【0008】
また、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムなどのフッ素樹脂系フィルムをラミネートしたラミネート医療用ゴム物品は、PTFEフィルムの弾性率がゴムより100倍高く、プレフィルドシリンジのプランジャストッパーとしてシール性が低下する傾向がある。さらに、PTFEフィルムは分解しないので、環境および人間の健康への潜在的なリスクがあり、将来的にPFAS(ペルフルオロアルキル化合物またはポリフルオロアルキル化合物)規制対応として、PTFEフィルムが使用できなくなる可能性がある。
【0009】
以上の通り、SOFおよびPFAS規制対応として、シリコーンオイルやフッ素樹脂系フィルムを使わず、医療用ゴム物品表面の摩擦係数および粘着性を低減させる方法が求められている。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表面の摩擦係数および粘着性が低減される新規な医療用ゴム物品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の医療用ゴム物品の製造方法は、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと、(b)粒子状のポリオレフィン系樹脂とを含有する医療用ゴム組成物の硬化物に、紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする。本発明者は、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと(b)粒子状のポリオレフィン系樹脂とを含有する医療用ゴム組成物の硬化物に紫外線を照射することにより、硬化物表面が低摩擦係数および低粘着性(タック値がほぼゼロ)に大きく改質されることを見い出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0012】
本発明の医療用ゴム物品の製造方法を用いれば、表面の摩擦係数および粘着性が低減された医療用ゴム物品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の医療用ゴム物品の一実施形態(プランジャストッパー)の説明図。
図2】本発明の医療用ゴム物品の一実施形態(ゴム栓)の説明図。
図3】本発明の医療用ゴム物品の一実施形態(バイアル瓶用ゴム栓)の説明図。
図4】本発明の医療用ゴム物品の一実施形態(ノズルキャップ)の説明図。
図5】本発明の医療用ゴム物品の一実施形態(真空採血管用ゴム栓)の説明図。
図6】医療用ゴム物品の摩擦係数の測定方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の医療用ゴム物品の製造方法は、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと、(b)粒子状のポリオレフィン系樹脂とを含有する医療用ゴム組成物の硬化物に、紫外線を照射する工程(以下、単に「紫外線照射工程」ということがある。)を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の製造方法で使用する医療用ゴム組成物の硬化物は、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと、(b)粒子状のポリオレフィン系樹脂とを含有する医療用ゴム組成物を加硫することにより得られる。まず、医療用ゴム組成物について説明する。
【0016】
<医療用ゴム組成物>
[(a)基材ポリマー]
(a)前記基材ポリマーは、ハロゲン化ブチルゴムを含有する。ハロゲン化ブチルゴムは、紫外線照射工程において架橋反応が起こり、ゴム表面において(a)基材ポリマー全体の弾性率が上がり、変形しにくくなる。その結果、本発明の製造方法により得られた医療用ゴム物品は、他の物品との接触面において真な接触面積が低下し、摩擦係数が小さくなる。
【0017】
(a)前記基材ポリマーに含まれるハロゲン化ブチルゴムとしては、例えば、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、および、イソブチレンとp-メチルスチレンの共重合体の臭素化物などが挙げられる。これらのハロゲン化ブチルゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記ハロゲン化ブチルゴムとしては、塩素化ブチルゴムまたは臭素化ブチルゴムが好ましい。前記塩素化ブチルゴムまたは臭素化ブチルゴムは、例えば、ブチルゴム中のイソプレン構造部分、具体的には二重結合および/または二重結合に隣接する炭素原子に塩素または臭素を付加または置換反応させたものである。なお、ブチルゴムは、イソブチレンと少量のイソプレンとを重合して得られる共重合体である。なお、前記ハロゲン化ブチルゴムは、常温(23℃)で固体であることが好ましい。
【0018】
ハロゲン化ブチルゴム中のハロゲン含有率は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上が好ましく、1.2質量%以上がさらに好ましく、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
【0019】
(a)前記基材ポリマーが、ハロゲン化ブチルゴムとして、塩素化ブチルゴムまたは臭素化ブチルゴムを含有する場合、紫外線照射工程において、塩素化または臭素化されたイソプレン部分で架橋反応が起こる。
(a)前記基材ポリマーが、ハロゲン化ブチルゴムとして、臭素化イソブチレンーパラメチルスチレン共重合体ゴム(BIMS)を含有する場合、紫外線照射工程において、臭素化されたパラメチルスチレン部位のところで架橋反応が起こる。
【0020】
前記塩素化ブチルゴムの具体例としては、例えば、エクソンモービル社製のExxon(登録商標)Chlorobutyl 1066〔ハロゲン含量率:1.25wt%、ムーニー粘度:38ML1+8(125℃)、比重:0.92〕、Exxon Chlorobutyl 5066〔ハロゲン含量率:1.50wt%、ムーニー粘度:40ML1+8(125℃)、比重:0.92〕;LANXESS社製のLANXESS X_BUTYL(登録商標)CB1240等の少なくとも1種が挙げられる。
【0021】
前記臭素化ブチルゴムの具体例としては、例えば、エクソンモービル社製のExxon Bromobutyl 2211〔ハロゲン含量率:2.0wt%、ムーニー粘度:32ML1+8(125℃)、比重:0.93〕、Exxon Bromobutyl 2222〔ハロゲン含量率:2.0wt%、ムーニー粘度:32ML1+8(125℃)、比重:0.93〕、Exxon Bromobutyl 2235〔ハロゲン含量率:2.1wt%、ムーニー粘度:39ML1+8(125℃)、比重:0.93〕、Exxon Bromobutyl 2244〔ハロゲン含量率:2.0wt%、ムーニー粘度:46ML1+8(125℃)、比重:0.93〕、Exxon Bromobutyl 2255〔ハロゲン含量率:2.1wt%、ムーニー粘度:46ML1+8(125℃)、比重:0.93〕、Exxon Bromobutyl 6222〔ハロゲン含量率:2.4wt%、ムーニー粘度:32ML1+8(125℃)、比重:0.93〕、Exxon Bromobutyl 7211〔ハロゲン含量率:2.0wt%、ムーニー粘度:32ML1+8(125℃)、比重:0.93〕、Exxon Bromobutyl 7244〔ハロゲン含量率:2.1wt%、ムーニー粘度:46ML1+8(125℃)、比重:0.93〕;LANXESS社製のLANXESS X_BUTYL BBX2等の少なくとも1種が挙げられる。
【0022】
(a)前記基材ポリマーは、ハロゲン化ブチルゴム以外のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分としては、例えば、ブチル系ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムなどのニトリル系ゴム、水素化ニトリル系ゴム、ノルボルネンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、アクリルゴム、エチレン・アクリレートゴム、フッ素ゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、フォスファンゼンゴムまたは1,2-ポリブタジエン等が挙げられる。これらは1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて用いてよい。
【0023】
他のゴム成分を使用する場合、(a)基材ポリマー中のハロゲン化ブチルゴムの含有率は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましい。また、(a)基材ポリマーがハロゲン化ブチルゴムのみからなることも好ましい態様である。
【0024】
[(b)粒子状のポリオレフィン系樹脂]
(b)前記粒子状のポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂から構成される樹脂粒子である。
【0025】
(b)前記粒子状のポリオレフィン系樹脂は、紫外線(特に波長が160nm以上の紫外線)をほぼ吸収しないため、紫外線照射工程において反応せず、医療用ゴム組成物の硬化物の表面に露出する。その結果、本発明の製造方法により得られた医療用ゴム物品は、他の部品との接触面において真な接触面積がさらに低下するため、ゴム部品表面の摩擦係数を一層低減することを実現できる。
【0026】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、エチレンとα-オレフィン(例えば、炭素数3~8のα-オレフィン)との共重合体等のポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン(PP)、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレンとα-オレフィン(例えば、炭素数4~8のα-オレフィン)との共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ポリブテン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン等のオレフィン(例えば、炭素数4~8のオレフィン)の単独又は共重合体等が挙げられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、ポリエチレン系樹脂とは、樹脂中のエチレンに由来する繰り返し単位の質量割合が50質量%超(好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上)である樹脂をいい、ポリプロピレン系樹脂とは、樹脂中のプロピレンに由来する繰り返し単位の質量割合が50質量%超(好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上)である樹脂をいう。これらの中でも、本発明の効果を一層良好に得られる点から、ポリエチレン系樹脂が好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)がより好ましく、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)がさらに好ましい。
【0027】
高密度ポリエチレンの密度(kg/m)は、930kg/m~960kg/mが好ましく、930kg/m~950kg/mがより好ましい。低密度ポリエチレンの密度(kg/m)は、特に限定されないが、910kg/m~925kg/mが好ましく、910kg/m~920kg/mがより好ましい。
【0028】
(b)前記粒子状のポリオレフィン系樹脂の体積平均粒子径は、200μm以下であることが好ましく、160μm以下であることがより好ましく、120μm以下であることがさらに好ましい。また、(b)前記粒子状のポリオレフィン系樹脂の体積平均粒子径は、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。前記範囲内であると、ポリマー内に均一的に混入及び分散がしやすくなるからである。なお、(b)前記粒子状のポリオレフィン系樹脂の体積平均粒子径は、例えば、Coulter-Counter法により測定することができる。
【0029】
本発明では、(b)前記粒子状のポリオレフィン系樹脂として、特に超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を用いることが好ましい。超高分子量ポリエチレンは、一般に平均分子量が50万以上であるポリエチレンである。
【0030】
前記超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の粘度平均分子量は、特に限定されないが、50万以上であることが好ましく、100万以上であることがより好ましく、150万以上であることがさらに好ましく、800万以下であることが好ましく、700万以下であることがより好ましく、600万以下であることがさらに好ましい。
【0031】
前記超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の粘度平均分子量は、135℃のデカリン溶媒における極限粘度[η]を測定し、式:Mν=k[η]α(Mνは粘度平均分子量、kとαは常数)に基づいて算出される値を示す。極限粘度は、JIS K7367-3(1999年)に準拠した方法により測定される。
【0032】
前記超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の密度は、特に限定されないが、930kg/m以上であることが好ましく、932kg/m以上であることがより好ましく、934kg/m以上であることがさらに好ましく、945kg/m以下であることが好ましく943kg/m以下であることがより好ましく、940kg/m以下であることがさらに好ましい。
【0033】
前記超高分子量ポリエチレンの融点は、120℃以上であることが好ましく、125℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましい。前記超高分子量ポリエチレンの融点は、ATSM-D3418に準じて測定する。
【0034】
前記超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の具体例としては、例えば、三井化学社製のミぺロン(登録商標)PM-200〔粘度平均分子量:180万、体積平均粒子径(Coulter-Counter法):10μm、密度:938kg/m〕、XM-220〔粘度平均分子量:200万、体積平均粒子径(Coulter-Counter法):30μm、密度:937kg/m〕、XM-221U〔粘度平均分子量:200万、体積平均粒子径(Coulter-Counter法):25μm、密度:937kg/m〕、XM-330〔粘度平均分子量:200万、体積平均粒子径(Coulter-Counter法):65μm、密度:937kg/m〕などが挙げられる。
【0035】
(b)前記粒子状のポリオレフィン系樹脂の含有量は、(a)基材ポリマー成分100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、70質量部以下であることがさらに好ましい。(b)粒子状のポリオレフィン系樹脂の含有量が5質量部以上であれば、(b)粒子状のポリオレフィン系樹脂による摩擦係数低減効果がより向上し、100質量部以下であれば、ポリマー内に均一的に混入及び分散がしやすくなるからである。
【0036】
[その他の成分]
前記医療用ゴム組成物は、(c)架橋剤を含有することが好ましい。(c)架橋剤は、(a)基材ポリマーが含有するハロゲン化ブチルゴム成分を架橋させるために配合される。(c)前記架橋剤としては、ハロゲン化ブチルゴムを架橋させることが可能な架橋剤であれば特に限定されない。(c)前記架橋剤としては、例えば、硫黄、金属酸化物、樹脂架橋剤、有機過酸化物、トリアジン誘導体などを挙げることができ、これらは単独で、あるいは2種以上併用して用いることができる。
【0037】
架橋剤として使用される硫黄としては、例えば、不溶性硫黄、粉末硫黄、微粉硫黄、沈降性硫黄、コロイド硫黄、塩化硫黄などを挙げることができる。
【0038】
架橋剤として使用される金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などを挙げることができる。
【0039】
樹脂架橋剤としては、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、熱反応性フェノール樹脂、フェノールジアルコール系樹脂、ビスフェノール樹脂、熱反応性ブロモメチルアルキル化フェノール樹脂などのアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂類を挙げることができる。
【0040】
前記有機過酸化物は、具体的には、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルペルオキシ、ジ-t-ヘキシルペルオキシ、ジ-t-ブチルペルオキシ、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3などが挙げられる。パーオキシエステルとしては、例えば、t-ブチルペルオキシマレエート、t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサノエート、t-ブチルペルオキシラウレート、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエートなどが挙げられる。パーオキシケタールとしては、例えば、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)バレレート、2,2-ジ(4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパンなどが挙げられる。ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
架橋剤として使用されるトリアジン誘導体としては、例えば一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
【化1】
【0043】
[式中、Rは、-SH、-OR、-SR、-NHRまたは-NR(R、R、R、RおよびRは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基またはシクロアルキル基を示す。RおよびRは、同一であっても異なっていてもよい。)である。MおよびMは、H、Na、Li、K、1/2Mg、1/2Ba、1/2Ca、脂肪族1級アミン、2級アミンもしくは3級アミン、第4級アンモニウム塩またはホスホニウム塩である。MおよびMは、同一または異なってもよい。]
【0044】
一般式(1)において、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、1,1-ジメチルプロピル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、またはドデシル基等の炭素数1~12のアルキル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、または2-ペンテニル基等の炭素数1~12のアルケニル基が挙げられる。アリール基としては、単環式または縮合多環式芳香族炭化水素基が挙げられ、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基またはアセナフチレニル基等の炭素数6~14のアリール基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、2,2-ジフェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、5-フェニルペンチル基、2-ビフェニリルメチル基、3-ビフェニリルメチル基または4-ビフェニリルメチル基等の炭素数7~19のアラルキル基が挙げられる。アルキルアリール基としては、例えばトリル基、キシル基またはオクチルフェニル基等の炭素数7~19のアルキルアリール基が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基またはシクロノニル基等の炭素数3~9のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0045】
一般式(1)で表されるトリアジン誘導体の具体例としては、例えば2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-メチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-(n-ブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-オクチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-プロピルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジアリルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジメチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジ(iso-ブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジプロピルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジ(2-エチルヘキシル)アミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジオレイルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ラウリルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンもしくは2-アニリノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、またはこれらのナトリウム塩もしくはジナトリウム塩が挙げられる。
【0046】
これらのなかでも、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-ジアルキルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-アニリノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンが好ましく、入手の容易さから2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンが特に好ましい。
【0047】
また、トリアジン誘導体としては、例えば、6-[ビス(2-エチルへキシル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジイソブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウム、6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール等の1種または2種以上が挙げられる。
【0048】
本発明で使用する医療用ゴム組成物において、トリアジン誘導体としては1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
前記塩素化ブチルゴムおよび臭素化ブチルゴムは、それぞれ架橋のメカニズムが異なるため、架橋に最適な架橋成分を選択して使用するのが好ましい。前記医療用ゴム組成物が、ハロゲン化ブチルゴムとして塩素化ブチルゴムを含む場合は、(c)架橋剤としてトリアジン誘導体を含有することが好ましい。また、前記医療用ゴム組成物が、ハロゲン化ブチルゴムとして臭素化ブチルゴムを含む場合は、(c)架橋剤として、金属酸化物を含有することが好ましい。
【0050】
前記医療用ゴム組成物中の(c)前記架橋剤の含有量は、(a)基材ポリマー成分100質量部に対して、0.2質量部以上であることが好ましく、0.4質量部以上であることがより好ましく、0.6質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。(c)架橋剤の含有量が前記範囲内であれば、良好なゴム物性(硬度、引張、Cset)と加工性(ヤケの少ない)の良いゴムを得ることができるからである。
【0051】
ハロゲン化ブチルゴムとして、塩素化ブチルゴムを使用し、(c)架橋剤としてトリアジン誘導体を使用する場合、医療用ゴム組成物中の(c)前記架橋剤の含有量は、(a)基材ポリマー成分100質量部に対して、0.2質量部以上であることが好ましく、0.4質量部以上であることがより好ましく、0.6質量部以上であることがさらに好ましく、4質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることがさらに好ましい。(c)架橋剤の含有量が前記範囲内であれば、良好なゴム物性(硬度、引張、Cset)と加工性(ヤケの少ない)の良いゴムを得ることができるからである。
【0052】
ハロゲン化ブチルゴムとして、臭素化ブチルゴムを使用し、(c)架橋剤として、金属酸化物を使用する場合、医療用ゴム組成物中の(c)前記架橋剤の含有量は、(a)基材ポリマー成分100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。(c)架橋剤の含有量が前記範囲内であれば、良好なゴム物性(硬度、引張、Cset)と加工性(ヤケの少ない)の良いゴムを得ることができるからである。
【0053】
前記医療用ゴム組成物は、加硫促進剤を含まないことが好ましい。最終製品のゴム製品中に加硫促進剤が残存して、シリンジなど中の薬液へ溶出する場合があるからである。前記加硫促進剤としては、例えば、グアニジン系促進剤(例:ジフェニルグアニジン)、チウラム系促進剤(例:テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド)、ジチオカルバミン酸塩系促進剤(例:ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛)、チアゾール系促進剤(例:2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド)、スルフェンアミド系促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド)が挙げられる。
【0054】
前記医療用ゴム組成物は、さらに(d)受酸剤を含有してもよい。(d)受酸剤は、ハロゲン化ブチルゴムの架橋時に発生する塩素系ガスや臭素系ガスを吸収して、これらのガスによる架橋阻害等の発生を防止するために機能する。また、(d)受酸剤は、ハロゲン化ブチルゴムの架橋時にスコーチ防止剤として、また、医療用ゴム部品の圧縮永久ひずみが大きくなるのを防止するためにも機能する。
【0055】
(d)前記受酸剤としては、例えば、ハイドロタルサイト、金属酸化物、金属水酸化物などが挙げられる。ハイドロタルサイトとしては、例えば、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.5Al(OH)13CO、MgAl(OH)12CO・3.5HO、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)14CO・4HO、MgAl(OH)10CO・1.7HO等のMg-Al系ハイドロタルサイト等が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらの受酸剤は、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なお、先述した架橋剤として使用される金属酸化物も受酸剤として機能しうる。
【0056】
(d)前記受酸剤の含有量は、(a)基材ポリマー成分100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。受酸剤の含有量が前記範囲内であれば、金型等への錆発生を抑制し、原料自体が白点異物となる不具合を減らすことができるからである。
【0057】
前記医療用ゴム組成物には、さらに充填剤を配合してもよい。前記充填剤としては、例えば、クレー、タルクなどの無機充填剤が挙げられる。これらの中でも、前記充填剤としては、無機充填剤が好ましく、クレーまたはタルクがさらに好ましい。前記充填剤は、医療用ゴム部品のゴム硬さを調整するために機能するとともに、増量材として医療用ゴム部品の生産コストを低減させるためにも機能する。
【0058】
前記クレーとしては、焼成クレーやカオリンクレーを挙げることができる。前記クレーの具体例としては、例えばHOFFMANN MINERAL(ホフマンミネラル)社製のSILLITIN(登録商標)Z、ENGELHARD(エンゲルハード)社製のSATINTONE(登録商標)W、土屋カオリン工業社製のNNカオリンクレー、イメリス・スペシャリティーズ・ジャパン社製のPoleStar200Rなどが挙げられる。
【0059】
前記タルクの具体例としては、例えば竹原化学工業社製のハイトロンA、日本タルク社製のMICRO ACE(登録商標)K-1、イメリス・スペシャリティーズ・ジャパン社製のミストロン(登録商標)ベーパー等が挙げられる。
【0060】
前記医療用ゴム組成物中の充填剤の含有量は、目的とする医療用ゴム物品のゴム硬さ等に応じて適宜設定することが好ましい。前記医療用ゴム組成物中の充填剤の含有量は、例えば、(a)基材ポリマー成分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましく、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましい。
【0061】
前記医療用ゴム組成物には、さらに、酸化チタンやカーボンブラックなどの着色剤、ステアリン酸などの滑剤、加工助剤や、架橋活性剤としてのポリエチレングリコール、プロセスオイル等を適宜の割合で配合してもよい。
【0062】
[医療用ゴム組成物の調製]
前記医療用ゴム組成物は、(a)基材ポリマーと(b)粒子状のポリオレフィン系樹脂と、その他、必要に応じて加える配合材料とを混練することにより得られる。混練は、例えば、オープンロール、密閉式ニーダーなどを用いて行うことができる。混練物は、リボン状、シート状、ペレット状などに成形することが好ましく、シート状に成形することがより好ましい。
【0063】
(a)基材ポリマーと(b)粒子状のポリオレフィン系樹脂との混錬は、(b)粒状のポリオレフィン系樹脂の融点以下の温度で行うことが好ましい。
【0064】
<医療用ゴム組成物の硬化物>
本発明の医療用ゴム組成物の硬化物は、前記医療用ゴム組成物を加硫(架橋)してなるものである。リボン状、シート状、ペレット状の混練物をプレス成型することにより、所望形状の医療用ゴム組成物の硬化物が得られる。プレス時に医療用ゴム組成物の架橋反応が進行する。成形温度は、例えば、130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、200℃以下が好ましく、190℃以下がより好ましい。成形時間は、2分間以上が好ましく、3分間以上がより好ましく、60分間以下が好ましく、30分間以下がより好ましい。成形圧力は、0.1MPa以上が好ましく、0.2MPa以上がより好ましく、10MPa以下が好ましく、8MPa以下がより好ましい。
【0065】
<紫外線照射工程>
本発明の医療用ゴム物品の製造方法は、前記医療用ゴム組成物の硬化物に、紫外線を照射する工程(紫外線照射工程)を含む。紫外線を照射する医療用ゴム組成物の硬化物は、最終的な医療用ゴム物品の形状に成形されたものであってもよいし、最終的な医療用ゴム物品の形状に成形される前の予備成形体であってもよい。
【0066】
医療用ゴム組成物の硬化物に紫外線を照射する方法は、特に限定されないが、例えば、紫外線を発する光源を用いて、医療用ゴム組成物の硬化物の表面に照射することが挙げられる。
【0067】
前記紫外線の波長は、160nm以上であることが好ましく、165nm以上であることがより好ましく、170nm以上であることがさらに好ましい。紫外線の波長が160nm以上であれば、(b)粒子状のポリオレフィン系樹脂は、この波長の紫外線をほぼ吸収しないため、紫外線を照射されても反応せず、医療用ゴム組成物の硬化物の表面において点在する。また、前記紫外線の波長の上限は、特に限定されないが、380nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。紫外線の波長が380nm以下であれば、紫外線のエネルギーが高くなり、ハロゲン化ブチルゴムの架橋効率が高くなり、変形しにくくなる。また、高エネルギーの紫外線によって医療用ゴム組成物の硬化物の表面粘着性へ貢献する低分子成分が分解して蒸発し、低粘着性を実現することができる。さらに、前記低分子成分の蒸発により、硬化物の表面に(b)粒子状のポリオレフィン系樹脂が露出して、硬化物の表面が粗くなるため、摩擦係数を一層低下することができる。これらの中でも、本発明の効果を一層良好に得られる点から、波長が200nm以下の真空紫外線が特に好ましい。
【0068】
前記紫外線を発する光源としては、前記波長範囲の紫外線を発することができるものであれば、特に限定されない。例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、エキシマランプなどが用いられる。特にエキシマランプは、エネルギーが強く、比較的短時間で表面の改質が行われる点から好ましい。前記エキシマランプは、用いる放電ガスの種類によって異なる波長の紫外線を発する。例えば、キセノン(Xe)を用いると172nm、塩化キセノン(XeCl)を用いると308nm、臭化キセノン(XeBr)を用いると283nm、ヨウ化キセノン(XeI)を用いると253nm、フッ化アルゴン(ArF)を用いると193nm、臭化アルゴン(ArBr)を用いると165nm、塩化クリプトン(KrCl)を用いると222nm、臭化クリプトン(KrBr)を用いると207nmの中心波長を有する紫外線(「エキシマUV光」とも呼ばれる)を発する。本発明では、中心波長が200nm以下の真空紫外線を発するエキシマランプが好ましく、キセノンを用いたエキシマランプ(中心波長:172nm)が特に好ましい。
【0069】
前記紫外線照射工程では、医療用ゴム組成物の硬化物への積算照度は、1000mJ/cm以上であることが好ましく、3000mJ/cm以上であることがより好ましく、5000mJ/cm以上であることがさらに好ましい。医療用ゴム組成物の硬化物への積算照度が1000mJ/cm以上であれば、ハロゲン化ブチルゴムの架橋が十分に行われるとともに、医療用ゴム組成物の硬化物の表面粘着性へ貢献する低分子成分がより分解しやすくなる。また、医療用ゴム組成物の硬化物への積算照度の上限は、特に限定されないが、50000mJ/cm以下であることが好ましく、45000mJ/cm以下であることがより好ましく、40000mJ/cm以下であることがさらに好ましい。医療用ゴム組成物の硬化物への積算照度が50000mJ/cm以下であれば、照射設備の寿命、表面改質の効率性のバランスがとれるためであるからである。なお、前記医療用ゴム組成物の硬化物への積算照度とは、医療用ゴム組成物の硬化物の表面に到達する紫外線の合計照度(到達照度)であって、医療用ゴム組成物の硬化物の表面に到達する紫外線の強度(到達強度)に紫外線の照射時間を乗じることで算出することができる。
【0070】
前記紫外線の到達強度および照射時間は、上記した範囲の積算照度となるように適当に調整すればよいが、通常、前記紫外線の到達強度は、10mW/cm/sec~100mW/cm/sec、照射時間は、10秒~5000秒とすることが好ましい。紫外線の到達強度および照射時間をこれらの範囲とすることで、上記した範囲の積算照度となりやすいからである。
【0071】
医療用ゴム組成物の硬化物の表面と紫外線を発する光源(ランプ)との距離は、特に限定されないが、紫外線照射の均一性を高める点から、1mm~20mmとすることが好ましい。
【0072】
本発明では、医療用ゴム組成物の硬化物に紫外線を照射することにより、硬化物表面を低摩擦係数および低粘着性に大きく改質することができる。
【0073】
本発明の医療用ゴム物品の製造方法は、医療用ゴム組成物の硬化物を所定の形状に加工する工程、洗浄する工程、滅菌する工程、乾燥する工程を含んでもよい。例えば、紫外線照射後の医療用ゴム組成物の硬化物から、不要部分を切除、除去して所定の形状にし、さらに洗浄、減菌、乾燥、および、包装して、医療用ゴム物品が製造される。なお、不要部分を切除、除去して所定の形状にすることは、医療用ゴム組成物の硬化物に紫外線を照射する前に行ってもよい。
【0074】
本発明の製造方法により得られる医療用ゴム物品は、シリコーンオイルや、フッ素フィルムなどの樹脂フィルムを使わなくても、低摩擦係数および低粘着性を実現することができる。よって、本発明の医療用ゴム物品は、SOFおよびPFAS規制に対応できながら、低摩擦係数および低粘着性が求められる医療用ゴム物品として好適に使用できる。
【0075】
本発明の製造方法により得られる医療用ゴム物品は、SOF対応の点から、シリコーンオイルが塗布されないことが好ましい。前記シリコーンオイルとしては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンおよびこれらの変性体等が挙げられる。また、本発明の医療用ゴム物品は、PFAS規制対応の点から、フッ素含有樹脂フィルムが積層されないことが好ましい。前記フッ素含有樹脂フィルムとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)およびこれらの変性体等からなるフィルムが挙げられる。
【0076】
本発明の製造方法により得られる医療用ゴム物品としては、例えば、液剤、粉末製剤、凍結乾燥製剤等の各種薬剤用の容器のゴム栓やシール部材、真空採血管用ゴム栓、プレフィルドシリンジ用のプランジャストッパー(ガスケット)、あるいはノズルキャップなどの摺動もしくはシール部品等が挙げられる。これらの中でも、低摩擦係数や低粘着性が求められる医療用ゴム部品(例えば、ゴム栓やプランジャストッパー)が好ましく、優れた摺動性が求められるプランジャストッパーが特に好ましい。
【0077】
このうちバイアル用や輸液製剤容器用を含むゴム栓やシール部材は、ゴム硬さが日本工業規格JIS K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」所載の測定方法に則って測定されるデュロメータタイプA硬さ(ショアA硬さ)で表して35以上であるのが好ましく、60以下であるのが好ましい。
【0078】
またプレフィルドシリンジ用のガスケットやノズルキャップの摺動もしくはシール部品は、上記ショアA硬さが40以上であるのが好ましく、70以下であるのが好ましい。
【0079】
医療用ゴム物品のゴム硬さは、各原料の配合割合を変更することで調整可能である。
【0080】
図1は、本発明の医療用ゴム物品が使用される医療用注射器、いわゆるプレフィラブル注射器と呼ばれる注射器を分解状態で示す図である。図1において、シリンジ11およびプランジャストッパー13は、半分が断面で表わされている。プレフィラブル注射器10は、円筒形状のシリンジ11と、シリンジ11と組み合わされ、シリンジ11内を往復移動し得るプランジャ12と、プランジャ12の先端に装着されるプランジャストッパー13とを含んでいる。プランジャストッパー13は、本発明の表面改質硬化物からなる。
【0081】
プランジャ12は、例えば横断面が十文字状の樹脂製板片で構成され、その先端部にはプランジャストッパー13が取り付けられるヘッド部18が備えられている。ヘッド部18は、プランジャ12と一体に形成された樹脂製で、雄ねじ形状に加工されている。プランジャストッパー13は、短軸の略円柱形状で、その先端面は、例えば軸中心部が突出する鈍角の山形形状をしている。そして後端面から軸方向に彫り込まれた雌ねじ形状の嵌合凹部15が形成されている。プランジャ12のヘッド部18が、プランジャストッパー13の嵌合凹部15にねじ込まれることにより、プランジャ12の先端にプランジャストッパー13が装着される。
【0082】
図2は、医療用ゴム物品として、医療用ゴム栓20の一具体例の概略断面図である。図3は、医薬品を充填した容器24の開口部24bを医療用ゴム栓20で封止した状態を示している。
【0083】
医療用ゴム栓20は、天板21と栓脚22とを備えて構成される。天板21は、注射器の注射針を穿刺可能とする穿刺部23と医療用容器24の容器口の上縁面24aに接するフランジ部21bとを有する。栓脚22は、天板21の下面に突出し、医療用容器口内に嵌入される。また、栓脚22は略円筒状形状を有し、切り欠き27が設けられている。医療用ゴム栓20の天板21の天面部にはナイロンフィルム層26が設けられている。医療用ゴム栓20の天面部にナイロンフィルム層26を設けることで、医薬品製造時の機械的搬送性を担保できる。また、医療用ゴム栓20の天面部にナイロンフィルム層26を設けることで天面部の表面滑性度を上昇させることができ、注射針の穿刺時に針刺フラグメントの発生を防止できる。
【0084】
図3に示した態様では、容器24として、凍結乾燥製剤を保存するバイアルを使用している。容器24内に収容する液体医薬品が注射用薬液の場合には、天板21の穿刺部23に注射器の注射針を刺し、医療用ゴム栓20を開けずに注射器に注射用薬液を吸入するようにしている。このように、医療用ゴム栓20を開けないのは、容器24内の注射用薬液に異物が混入するのを避けるためである。
【0085】
天板21の上には、容器24の開口部24bと医療用ゴム栓20とを覆うことができる金属製または樹脂性のキャップ25が設けられている。医療用ゴム栓20を、開口部24bを含んでキャップ25で密閉するのは、注射器の注射針を刺す場所の穿刺部23に黴菌が付着して注射針から黴菌が注射用薬液に混入するのを防止するためである。キャップ25の種類として、フリップオフキャップやプルトップキャップやクリーンキャップなどを使用することができる。病院のように注射用薬液を多量に使用する場合には、片手で開封できしかも操作が容易なクリーンキャップを用いることが好適である。
【0086】
図4(a)は、医療用シリンジのノズルキャップの一例と、それを被せる注射筒のノズルを示す断面図である。図4(b)は、ノズルキャップをノズルに被せた状態を示す断面図である。この例のノズルキャップ41はあらかじめ注射筒42のノズル43に針44が埋め込まれた針付きシリンジ45用のものである。ノズルキャップは、本発明の表面改質硬化物から一体に形成されている。ノズルキャップは、内径D1がノズル43の外径D2よりわずかに小さい筒状部46と、当該筒状部46の一端側(図では上端側)に連成された針刺部47とを備えている。針刺部47は、筒状部46と連続した外面を有する柱状に形成されている。筒状部46の他端側(図では下端側)にはノズル43を筒状部46に挿入してノズルキャップ41を上記ノズル43に被せるための開口48が設けられている。
【0087】
図5は、真空採血管の一例を示す説明図である。真空採血管50は、有底管51と有底管51の開口を封止するゴム栓53とからなる。斯かるゴム栓53が、本発明の表面改質硬化物からなる。採血管内を減圧にすることにより自動的に血液を採取できるように設計されている。
【実施例0088】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0089】
[医療用ゴム物品の作製]
表1に示した材料を、オープンロールを用いて60℃で20分間混練して、医療用ゴム組成物を調製した。得られた医療用ゴム組成物を170℃、15分間の成形条件で架橋させた後、直径28mm、厚み2mmの円形スラブに打抜き、紫外線照射用試験片(医療用ゴム組成物の硬化物)とした。前記紫外線照射用試験片に真空紫外線(波長:172nm)を表1に示した積算照度となるように照射した。
紫外線の照射条件
・照射装置:無電極エキシマ172nm照射装置(株式会社エム・ディ・コム製)
・硬化物の表面とランプとの距離:7mm
・紫外線の到達強度:57.9mW/cm/sec
【0090】
【表1】
【0091】
使用した配合材料の詳細は以下の通りである。
塩素化ブチルゴム:エクソンモービル社製 Exxon(登録商標)Chlorobutyl 1066(塩素含量率:1.25wt%)
汎用ブチルゴム:エクソンモービル社製 Exxon(登録商標)Butyl 268(不飽和度:2.30モル%)
超高分子量ポリエチレン:三井化学社製 ミペロン(登録商標)XM-220(体積平均粒子径:30μm、粘度平均分子量:200万)
トリアジン誘導体:三協化成社製 ジスネットDB
硫黄:日本乾溜工業社製 不溶性硫黄(セイミOT)
酸化亜鉛:正同化学工業社製 活性亜鉛華AZO
酸化マグネシウム:協和化学工業社製 マグサラット150s
ジチオカルバミン酸塩:大内新興化学工業社製 ノクセラー(登録商標)ZTC
【0092】
[評価方法]
(1)摩擦係数
<静摩擦係数、動摩擦係数の測定>
図6は、上記で作製した医療用ゴム物品(紫外線照射後の厚み2mm、直径28mmの円形スラブ)について、静動摩擦係数測定機TL201(TAILAB社製)を用いた摩擦係数の測定方法を示す説明図である。測定サンプル63を下側のステージ64に固定し、直径10mmのSUS球62を取り付けた専用プローブに10gの分銅61を載せて測定サンプル63の表面とSUS球62を接触させる。その後ステージ64を20mmの距離を10mm/秒の速度で矢印の方向に移動させる。その際に発生する摩擦力Fを荷重(垂直抗力)Nで割った値を摩擦係数μとした。(μ=F/N)
なお、移動距離20mmの平均垂直抗力N1で割った係数を動摩擦係数とし、移動距離20mmの最大平均垂直抗力N2で割った係数を静摩擦係数とした。
<静摩擦係数の評価>
下記の評価基準により静摩擦係数を評価した。
○:静摩擦係数が1.50未満である。
×:静摩擦係数が1.50以上である。
<動摩擦係数の評価>
下記の評価基準により動摩擦係数を評価した。
○:動摩擦係数が1.30未満である。
×:動摩擦係数が1.30以上である。
【0093】
(2)粘着性試験
<タック値の測定>
上記で作製した医療用ゴム物品(紫外線照射後の厚み2mm、直径28mmの円形スラブ)について、試験機EZ-SX(島津製作所製)を用いて、医療用ゴム物品を下側の専用治具に固定し、上の金属Φ10mmSUSプローブを医療用ゴム物品の表面に押し付け、設定した圧力(10N)に到達後、10秒間保持し、10mm/秒の速度で上に上昇させ、プローブとゴム組成物の硬化物の間に発生した密着力のピーク値をタック値と定義し、n=5を測定し、maxとminを除いたn=3の平均値をタック値とした。
<粘着性の評価>
下記の評価基準により粘着性を評価した。
〇:タック値が0.5N以下である。
×:タック値が0.5N超である。
【0094】
(3)総合評価
〇:摩擦係数の評価結果および粘着性の評価結果は、いずれも〇である。
×:摩擦係数の評価結果と粘着性の評価結果のどちらに、×がある。
【0095】
摩擦係数、粘着性の測定結果および評価結果を表1に示した。
【0096】
表1より、本発明の製造方法により得られた医療用ゴム物品は、表面の摩擦係数および粘着性が低減されたものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の表面改質方法は、表面の摩擦係数および粘着性が低減された医療用ゴム部品を与えることができる。本発明の医療用ゴム部品は、低摩擦係数や低粘着性(特に良好な摺動性)が求められる医療用ゴム部品として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0098】
10:注射器、11:シリンジ、12:プランジャ、13:ガスケット、18:ヘッド部、20:医療用ゴム栓、21:天板、22:栓脚、23:穿刺部、24:医療容器、26:ナイロンフィルム層、25:キャップ、41:ノズルキャップ、42:注射筒、43:ノズル、44:針、45:針付きシリンジ
【0099】
本発明の好ましい態様(1)は、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと、(b)粒子状のポリオレフィン系樹脂とを含有する医療用ゴム組成物の硬化物に、紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする医療用ゴム物品の製造方法である。
【0100】
本発明の好ましい態様(2)は、前記ハロゲン化ブチルゴムは、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、イソブチレンとp-メチルスチレンの共重合体の臭素化物よりなる群から選択される少なくとも1種である態様(1)の医療用ゴム物品の製造方法である。
【0101】
本発明の好ましい態様(3)は、(a)前記ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーは、ハロゲン化ブチルゴムのみからなる態様(1)または(2)の医療用ゴム物品の製造方法である。
【0102】
本発明の好ましい態様(4)は、(b)前記粒子状のポリオレフィン系樹脂の含有量は、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマー100質量部に対して、5質量部以上、100質量部以下である態様(1)~(3)のいずれか一つの医療用ゴム物品の製造方法である。
【0103】
本発明の好ましい態様(5)は、(b)前記粒子状のポリオレフィン系樹脂の体積平均粒子径は、200μm以下である態様(1)~(4)のいずれか一つの医療用ゴム物品の製造方法である。
【0104】
本発明の好ましい態様(6)は、(b)前記粒子状のポリオレフィン系樹脂は、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンよりなる群から選択される少なくとも1種である態様(1)~(5)のいずれか一つの医療用ゴム物品の製造方法である。
【0105】
本発明の好ましい態様(7)は、前記紫外線の波長は、160nm~380nmである態様(1)~(6)のいずれか一つの医療用ゴム物品の製造方法である。
【0106】
本発明の好ましい態様(8)は、前記医療用ゴム組成物の硬化物への積算照度は、1000mJ/cm以上である態様(1)~(7)のいずれか一つの医療用ゴム物品の製造方法である。
【0107】
本発明の好ましい態様(9)は、前記医療用ゴム物品は、バイアル瓶のゴム栓、シリンジ用のキャップ、プランジャストッパー、または、真空採血管用ゴム栓である態様(1)~(8)のいずれか一つの医療用ゴム物品の製造方法である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6