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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105086
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】シリンジ用ガスケット
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20250703BHJP
   C08L 23/28 20250101ALI20250703BHJP
   C08L 23/02 20250101ALI20250703BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20250703BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20250703BHJP
   F16J 15/12 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
A61M5/315 512
C08L23/28
C08L23/02
C08J7/00 304
C08J7/00 CES
C09K3/10 J
F16J15/12 M
F16J15/12 N
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223384
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄己
(72)【発明者】
【氏名】紀田 擁軍
(72)【発明者】
【氏名】石田 聖
【テーマコード(参考)】
3J040
4C066
4F073
4H017
4J002
【Fターム(参考)】
3J040FA06
3J040FA20
3J040HA30
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066FF05
4C066HH14
4C066PP02
4F073AA07
4F073AA10
4F073BA10
4F073BA48
4F073BB03
4F073BB05
4F073CA45
4F073HA11
4F073HA12
4H017AA03
4H017AA04
4H017AB07
4H017AD01
4J002BB032
4J002BB181
4J002BB241
4J002GJ02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】表面の摩擦係数および粘着性が低減されたシリンジ用ガスケットおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のシリンジ用ガスケット40は、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと(b)樹脂粒子とを含有するゴム組成物から形成され、表面の少なくとも一部が、レーザー顕微鏡で表面粗さを測定したときに得られる画像解析結果について、コア部と突出山部とを分離する負荷面積率を40%とした突出山部の体積Vmp(mL/m)と、前記ゴム組成物中の(a)基材ポリマーの含有率をV(質量%)とが、P=(Vmp/V)≧0.25を満足することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと(b)樹脂粒子とを含有するゴム組成物から形成されたシリンジ用ガスケットであって、
前記シリンジ用ガスケットの表面の少なくとも一部が、レーザー顕微鏡で表面粗さを測定したときに得られる画像解析結果について、コア部と突出山部とを分離する負荷面積率を40%とした突出山部の体積Vmp(mL/m)と、前記ゴム組成物中の(a)基材ポリマーの含有率V(質量%)とが、P=(Vmp/V)≧0.25を満足することを特徴とするシリンジ用ガスケット。
【請求項2】
前記シリンジ用ガスケットは、シリンジバレルに挿入したときに、薬液に接する天面部と、シリンジバレルの内面と対向する摺動面部とを有し、前記摺動面部の少なくとも一部が、P=(Vmp/V)≧0.25を満足する請求項1に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項3】
前記天面部の少なくとも一部が不活性樹脂層で被覆されている請求項2に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項4】
前記不活性樹脂層が、フッ素樹脂からなる層である請求項3に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項5】
前記不活性樹脂層が、非フッ素樹脂からなる層である請求項3に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項6】
(b)前記樹脂粒子の体積平均粒子径は、200μm以下である請求項1に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項7】
(b)前記樹脂粒子の含有量は、(a)基材ポリマー100質量部に対して、5質量部以上、100質量部以下である請求項1に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項8】
前記ハロゲン化ブチルゴムは、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、イソブチレンとp-メチルスチレンの共重合体の臭素化物よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項9】
(b)前記樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂粒子である請求項1に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項10】
前記ポリオレフィン系樹脂粒子は、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項9に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項11】
(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと、(b)樹脂粒子とを含有するゴム組成物をシリンジ用ガスケットに成形する工程と
前記シリンジ用ガスケットの表面の少なくとも一部に、紫外線を照射する工程を含むことを特徴とするシリンジ用ガスケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ用ガスケットに関するものであり、より詳しくは、シリンジ用ガスケットの摺動性の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬剤取り違え、院内感染防止、廃棄性、病院業務の効率などの理由から薬剤を予め充填したプレフィルドシリンジが使用されている。プレフィルドシリンジに拘わらずシリンジは、一般に、バレルと、バレル内を気密的・液密的に摺動し得るガスケットと、このガスケットを移動操作するプランジャーとで構成されている。シリンジに使用されるガスケットは、密封性(気密性、液密性)のみならず、薬剤を円滑に投与するために、高摺動性(例えば、低初期摺動抵抗や低経時摺動抵抗)を有することも求められている。
【0003】
特許文献1には、先端にノズル部と基端に開口部を有する外筒と、当該外筒内を摺動するガスケットと、当該開口部を通り当該ガスケットに接続された押子と、当該外筒内に当該ガスケットにより密封されて収納されている薬液とからなるプレフィルドシリンジにおいて、当該開口部の周縁には当該外筒の外方向に延びるフランジを有し、当該フランジには移動可能なストッパーが設けられており、当該押子の当該開口部から当該外筒の外に延びている部分には係止部が設けられているものであって、当該押子を介して当該ガスケットを先端方向に移動させ、当該ノズルから当該薬液中に存在する気泡および前記薬液の余剰量が排出された位置で当該係止部が当該ストッパーに係止されることで当該ガスケットが停止することを特徴とするプレフィルドシリンジが開示されている。
【0004】
特許文献2には、シリンジの外筒内を液密に摺動可能に接触するよう形成されたガスケットであって、該ガスケットは、弾性体からなるガスケット本体と、少なくとも前記シリンジと接触する部分に設けられた被覆層とを備え、該被覆層は、末端シラノール基を有する反応性シリコーンの縮合物からなり前記シラノール基に由来するシロキサン結合を有するシリコーン系樹脂を含有する組成物からなるとともに固体微粒子を含まないことを特徴とするシリンジ用ガスケットが開示されている。
【0005】
特許文献3には、注射器のピストン用ゴムとして好適に使用されるゴム製品であって、ブチル系ゴム100重量部に対し、平均粒径が1~5μmのフッ素樹脂微粉末を10~80重量部含有したゴム組成物を構成部品とし、キャスティング法により成形したフッ素樹脂フィルムを表面にラミネートした高浸透性液体密封用ゴム製品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-014619号公報
【特許文献2】再表2009-084646号公報
【特許文献3】特開2007-054621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
摺動性を改善するためにシリンジ用ガスケットの表面にシリコーンオイルを塗布することが行われている。しかしながら、シリコーンオイルを塗布したシリンジ用ガスケットが、バイオ薬品に接触すると、シリコーン粒子によるタンパク質の凝集が起こる恐れがある。そのため、バイオ薬品を使用する医療用品には、シリコーンオイル塗布したシリンジ用ガスケットは使えない。特に、プレフィルドシリンジのシリンジ用ガスケットでは、シリコーンオイルフリー(SOF)のニーズが高くなっている。
【0008】
また、シリンジ用ガスケットを構成する成分が、シリンジバレル内の薬液に混入し、薬液を汚染または変質させることを防ぐために、シリンジ用ガスケットをフッ素樹脂系フィルムでラミネートすることが行われている。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムなどのフッ素樹脂系フィルムをラミネートしたシリンジ用ガスケットは、PTFEフィルムの弾性率がゴムより100倍高く、シール性が低下する傾向がある。
【0009】
このような状況の下、シリコーンオイルフリー(SOF)規制対応として、シリコーンオイルを使わず、シリンジ用ガスケットの摩擦係数および粘着性を低減させる方法が求められている。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、表面の摩擦係数および粘着性が低減された新規なシリンジ用ガスケットおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のシリンジ用ガスケットは、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと(b)樹脂粒子とを含有するゴム組成物から形成されたシリンジ用ガスケットであって、前記シリンジ用ガスケットの表面の少なくとも一部が、レーザー顕微鏡で表面粗さを測定したときに得られる画像解析結果について、コア部と突出山部とを分離する負荷面積率を40%とした突出山部の体積Vmp(mL/m)と、前記ゴム組成物中の(a)基材ポリマーの含有率V(質量%)とが、P=(Vmp/V)≧0.25を満足することを特徴とする。
【0012】
前記突出山部の体積Vmpは、ガスケット表面において突出している凸部の体積を指標するものである。また、Vは、ゴム組成物中の(a)基材ポリマーの含有率(質量%)である。(a)前記基材ポリマーは、ガスケット本体を構成する主たる成分である。したがって、P=(Vmp/V)は、単位基材ポリマーあたりの表面における突出している凸部の体積を指標する。前記Pが大きいほど、単位基材ポリマーあたりの突出している凸部の体積が大きくなるから、シリンジ用ガスケットの表面が粗くなり、シリンジ用ガスケットとシリンジバレルとの接触面積が低下する。その結果、摩擦係数が小さくなり、摺動性が向上する。
【0013】
本発明のシリンジ用ガスケットの製造方法は、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと、(b)樹脂粒子とを含有するゴム組成物をシリンジ用ガスケットに成形する工程と、前記シリンジ用ガスケットの表面の少なくとも一部に、紫外線を照射する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の製造方法によれば、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと、(b)樹脂粒子とを含有するゴム組成物を成形してなるシリンジ用ガスケットの表面に紫外線を照射することにより、シリンジ用ガスケットの表面の粘着性の原因となる低分子成分が分解して蒸発し、低粘着性を実現することができる。さらに、前記低分子成分の蒸発により、シリンジ用ガスケットの表面に(b)樹脂粒子が露出して、表面が粗くなるため、摩擦係数を一層低下することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表面の摩擦係数および粘着性が低減されたシリンジ用ガスケットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】シリンジ用ガスケットの表面をレーザー顕微鏡で測定した画像解析結果のグラフの説明図。
図2】プレフィラブルシリンジの説明図。
図3】シリンジ用ガスケットの説明図。
図4】医療用ゴム物品の摩擦係数の測定方法の説明図。
図5】ゴム組成物No.1の硬化物をレーザー顕微鏡で観察した図面代用写真。
図6】ゴム組成物No.2の硬化物をレーザー顕微鏡で観察した図面代用写真。
図7】ゴム組成物No.3の硬化物をレーザー顕微鏡で観察した図面代用写真。
図8】ゴム組成物No.5の硬化物をレーザー顕微鏡で観察した図面代用写真。
図9】ゴム組成物No.6の硬化物をレーザー顕微鏡で観察した図面代用写真。
図10】ゴム組成物No.7の硬化物をレーザー顕微鏡で観察した図面代用写真。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のシリンジ用ガスケットは、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと(b)樹脂粒子とを含有するゴム組成物から形成されたシリンジ用ガスケットであって、前記シリンジ用ガスケットの表面の少なくとも一部が、レーザー顕微鏡で表面粗さを測定したときに得られる画像解析結果について、コア部と突出山部とを分離する負荷面積率を40%とした突出山部の体積Vmp(mL/m)と、前記ゴム組成物中の(a)基材ポリマーの含有率V(質量%)とが、P=(Vmp/V)≧0.25を満足することを特徴とする。
【0018】
本発明のシリンジ用ガスケットは、ガスケットの表面の少なくとも一部が、レーザー顕微鏡で表面粗さを測定したときに得られる画像解析結果について、コア部と突出山部とを分離する負荷面積率を40%とした突出山部の体積Vmp(mL/m)と、前記ゴム組成物中の(a)基材ポリマーの含有率V(質量%)とが、P=(Vmp/V)≧0.25を満足する。
【0019】
シリンジ用ガスケットの表面粗さの測定は、株式会社キーエンス社製のレーザー顕微鏡VK-X3000を用いて、スキャンモード:レーザーコンフォーカル、対物レンズ倍率50倍で行う。
【0020】
レーザー顕微鏡で観察して得られた画像について、VK-X3000マルチファイル解析アプリケーションを用いて、画像処理を行う(基準面設定→面状補正(うねり除去:強さ5))を行う。この画像処理により、例えば、図1に示したようなグラフが得られる。図1は、横軸は、負荷面積率を表し、縦軸は、高さを表す。図1中、Vmpは突出山部の体積、Vmcはコア部の体積、Vvcはコア部の空間の容積である。
【0021】
本発明では、画像解析のパラメータとして、コア部と突出山部とを分離する負荷面積率を40%とする。
【0022】
本発明では、突出山部の体積Vmp(mL/m)とゴム組成物中のゴム成分の含有率V(質量%)が、P=(Vmp/V)≧0.25を満足する。前記Pは、0.28以上であることがより好ましく、0.30以上であることがさらに好ましく、5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることがさらに好ましい。前記Pが上述した範囲であれば、摺動特性と気密特性の両立が可能となるからである。
【0023】
本発明のシリンジ用ガスケットは、略円柱状であることが好ましい。前記シリンジ用ガスケットは、シリンジバレルに挿入する先端側とプランジャーに接続される後端側とを有している。なお、先端側を遠位端側、後端側を近位端側という場合がある。シリンジ用ガスケットは、シリンジバレルに挿入したときに、薬液に接する天面部と、シリンジバレルの内面と対向する摺動面部を有する。
【0024】
本発明のシリンジ用ガスケットは、摺動面部に1個以上の環状リブを有することが好ましく、複数の環状リブを有することがより好ましい。前記環状リブは、シリンジバレルの内面と摺接する。複数の環状リブは、シリンジ用ガスケットの先端面(天面部)から後端面に向かって、シリンジ用ガスケットの軸方向に配列されている。環状リブの個数は、1以上であれば、特に限定されないが、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、6以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明のシリンジ用ガスケットは、天面部の少なくとも一部が不活性樹脂層で被覆されていることが好ましく、天面部の全面が不活性樹脂層で被覆されていることがより好ましい。天面部が不活性樹脂層で被覆されることにより、シリンジ用ガスケットを構成する成分が、シリンジバレル内の薬剤に混入し、薬液を汚染または変質させることを防ぐことができる。
【0026】
本発明のシリンジ用ガスケットは、シリンジバレルに挿入したときに、薬液に接する天面部と、シリンジバレルの内面と対向する摺動面部とを有し、前記摺動面部の少なくとも一部が、P=(Vmp/V)≧0.25を満足することが好ましく、摺動面部の全面が、P=(Vmp/V)≧0.25を満足することがより好ましい。摺動面部の少なくとも一部が、P=(Vmp/V)≧0.25を満足することにより、シリンジ用ガスケットが良好な摺動性を示す。
【0027】
本発明の好ましい態様では、シリンジ用ガスケットの天面部の一部が不活性樹脂層で被覆され、摺動面部の少なくとも一部が、P=(Vmp/V)≧0.25を満足する。本発明のより好ましい態様では、シリンジ用ガスケットの天面部のみが不活性樹脂層で被覆され、摺動面部の全面が、P=(Vmp/V)≧0.25を満足する。この態様では、不活性樹脂層が良好な耐薬品性を発現するとともに、摺動面部が優れた摺動性を発現する。
【0028】
前記不活性樹脂層としては、フッ素樹脂からなる層、または、非フッ素樹脂からなる層を挙げることができる。
【0029】
以下、本発明のシリンジ用ガスケットの材料について説明する。本発明のシリンジ用ガスケットは、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと(b)樹脂粒子とを含有するゴム組成物から成形される。
【0030】
(a)前記基材ポリマーは、ゴム成分として、ハロゲン化ブチルゴムを含有する。ハロゲン化ブチルゴムは、ガスバリア性に優れる。
【0031】
(a)前記基材ポリマーに含まれるハロゲン化ブチルゴムとしては、例えば、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、および、イソブチレンとp-メチルスチレンの共重合体の臭素化物などが挙げられる。これらのハロゲン化ブチルゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記ハロゲン化ブチルゴムとしては、塩素化ブチルゴムまたは臭素化ブチルゴムが好ましい。前記塩素化ブチルゴムまたは臭素化ブチルゴムは、例えば、ブチルゴム中のイソプレン構造部分、具体的には二重結合および/または二重結合に隣接する炭素原子に塩素または臭素を付加または置換反応させたものである。なお、ブチルゴムは、イソブチレンと少量のイソプレンとを重合して得られる共重合体である。なお、前記ハロゲン化ブチルゴムは、常温(23℃)で固体であることが好ましい。
【0032】
ハロゲン化ブチルゴム中のハロゲン含有率は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上が好ましく、1.2質量%以上がさらに好ましく、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
【0033】
前記塩素化ブチルゴムの具体例としては、例えば、エクソンモービル社製のExxon(登録商標)Chlorobutyl 1066〔ハロゲン含量率:1.25wt%、ムーニー粘度:38ML1+8(125℃)、比重:0.92〕、Exxon Chlorobutyl 5066〔ハロゲン含量率:1.50wt%、ムーニー粘度:40ML1+8(125℃)、比重:0.92〕;LANXESS社製のLANXESS X_BUTYL(登録商標)CB1240等の少なくとも1種が挙げられる。
【0034】
前記臭素化ブチルゴムの具体例としては、例えば、エクソンモービル社製のExxon Bromobutyl 2211〔ハロゲン含量率:2.0wt%、ムーニー粘度:32ML1+8(125℃)、比重:0.93〕、Exxon Bromobutyl 2222〔ハロゲン含量率:2.0wt%、ムーニー粘度:32ML1+8(125℃)、比重:0.93〕、Exxon Bromobutyl 2235〔ハロゲン含量率:2.1wt%、ムーニー粘度:39ML1+8(125℃)、比重:0.93〕、Exxon Bromobutyl 2244〔ハロゲン含量率:2.0wt%、ムーニー粘度:46ML1+8(125℃)、比重:0.93〕、Exxon Bromobutyl 2255〔ハロゲン含量率:2.1wt%、ムーニー粘度:46ML1+8(125℃)、比重:0.93〕、Exxon Bromobutyl 6222〔ハロゲン含量率:2.4wt%、ムーニー粘度:32ML1+8(125℃)、比重:0.93〕、Exxon Bromobutyl 7211〔ハロゲン含量率:2.0wt%、ムーニー粘度:32ML1+8(125℃)、比重:0.93〕、Exxon Bromobutyl 7244〔ハロゲン含量率:2.1wt%、ムーニー粘度:46ML1+8(125℃)、比重:0.93〕;LANXESS社製のLANXESS X_BUTYL BBX2等の少なくとも1種が挙げられる。
【0035】
ハロゲン化ブチルゴムは、後述する紫外線照射工程において架橋反応が起こり、ゴム表面において(a)基材ポリマー全体の弾性率が上がり、変形しにくくなる。その結果、本発明の製造方法により得られたシリンジ用ガスケットは、他の物品との接触面において真な接触面積が低下し、摩擦係数が小さくなる。
【0036】
(a)前記基材ポリマーが、ハロゲン化ブチルゴムとして、塩素化ブチルゴムまたは臭素化ブチルゴムを含有する場合、後述する紫外線照射工程において、塩素化または臭素化されたイソプレン部分で架橋反応が起こる。(a)前記基材ポリマーが、ハロゲン化ブチルゴムとして、臭素化イソブチレンーパラメチルスチレン共重合体ゴム(BIMS)を含有する場合、後述する紫外線照射工程において、臭素化されたパラメチルスチレン部位のところで架橋反応が起こる。
【0037】
(a)前記基材ポリマーは、ハロゲン化ブチルゴム以外のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分としては、例えば、ブチル系ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムなどのニトリル系ゴム、水素化ニトリル系ゴム、ノルボルネンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、アクリルゴム、エチレン・アクリレートゴム、フッ素ゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、フォスファンゼンゴムまたは1,2-ポリブタジエン等が挙げられる。これらは1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて用いてよい。
【0038】
他のゴム成分を使用する場合、(a)基材ポリマー中のハロゲン化ブチルゴムの含有率は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましい。また、(a)基材ポリマーがハロゲン化ブチルゴムのみからなることも好ましい態様である。
【0039】
[(b)樹脂粒子]
本発明で使用する(b)前記樹脂粒子の体積平均粒子径は、200μm以下であることが好ましく、160μm以下であることがより好ましく、120μm以下であることがさらに好ましい。また、(b)前記樹脂粒子の体積平均粒子径は、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。前記範囲内であると、基材ポリマー内に均一的に混入及び分散がしやすくなるからである。なお、(b)前記樹脂粒子の体積平均粒子径は、例えば、Coulter-Counter法により測定することができる。
【0040】
(b)樹脂粒子を構成する樹脂成分としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;(メタ)アクリル樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂);エポキシ樹脂;ポリアミド(PA);ポリウレタン(PU);ポリイミド(PI);ポリフェニレンエーテル(PPE);ポリサルホン(PSF);ポリエーテルサルホン(PES);ポリフェニレンサルファイド(PPS);ポリアリレート(PAR);ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルイミド(PEI);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ポリアミノビスマレイミド(PABM);ポリビスアミドトリアゾール;ポリフェニレンオキサイド(PPO);ポリアセタール;ポリカーボネート(PC)などが挙げられる。
【0041】
本発明で使用する(b)樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂粒子(ポリオレフィン系樹脂から構成される樹脂粒子)であることが好ましい。
【0042】
前記ポリオレフィン系樹脂粒子は、紫外線(特に波長が160nm以上の紫外線)をほぼ吸収しないため、紫外線照射工程において反応せず、シリンジ用ガスケットを構成するゴムの表面に露出する。その結果、本発明のシリンジ用ガスケットは、他の部品との接触面において真な接触面積がさらに低下するため、摩擦係数が小さくなる。
【0043】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、エチレンとα-オレフィン(例えば、炭素数3~8のα-オレフィン)との共重合体等のポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン(PP)、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレンとα-オレフィン(例えば、炭素数4~8のα-オレフィン)との共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ポリブテン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン等のオレフィン(例えば、炭素数4~8のオレフィン)の単独又は共重合体等が挙げられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、ポリエチレン系樹脂とは、樹脂中のエチレンに由来する繰り返し単位の質量割合が50質量%超(好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上)である樹脂をいい、ポリプロピレン系樹脂とは、樹脂中のプロピレンに由来する繰り返し単位の質量割合が50質量%超(好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上)である樹脂をいう。これらの中でも、本発明の効果を一層良好に得られる点から、ポリエチレン系樹脂が好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)がより好ましく、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)がさらに好ましい。
【0044】
高密度ポリエチレンの密度(kg/m)は、930kg/m~960kg/mが好ましく、930kg/m~950kg/mがより好ましい。低密度ポリエチレンの密度(kg/m)は、特に限定されないが、910kg/m~925kg/mが好ましく、910kg/m~920kg/mがより好ましい。
【0045】
本発明では、ポリオレフィン系樹脂粒子として、特に超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)からなる粒子を用いることが好ましい。超高分子量ポリエチレンは、一般に平均分子量が50万以上であるポリエチレンである。
【0046】
前記超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の粘度平均分子量は、特に限定されないが、50万以上であることが好ましく、100万以上であることがより好ましく、150万以上であることがさらに好ましく、800万以下であることが好ましく、700万以下であることがより好ましく、600万以下であることがさらに好ましい。
【0047】
前記超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の粘度平均分子量は、135℃のデカリン溶媒における極限粘度[η]を測定し、式:Mν=k[η]α(Mνは粘度平均分子量、kとαは常数)に基づいて算出される値を示す。極限粘度は、JIS K7367-3(1999年)に準拠した方法により測定される。
【0048】
前記超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の密度は、特に限定されないが、930kg/m以上であることが好ましく、932kg/m以上であることがより好ましく、934kg/m以上であることがさらに好ましく、945kg/m以下であることが好ましく943kg/m以下であることがより好ましく、940kg/m以下であることがさらに好ましい。
【0049】
前記超高分子量ポリエチレンの融点は、120℃以上であることが好ましく、125℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましい。前記超高分子量ポリエチレンの融点は、ATSM-D3418に準じて測定する。
【0050】
前記超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)からなる粒子の具体例としては、例えば、三井化学社製のミぺロン(登録商標)PM-200〔粘度平均分子量:180万、体積平均粒子径(Coulter-Counter法):10μm、密度:938kg/m〕、XM-220〔粘度平均分子量:200万、体積平均粒子径(Coulter-Counter法):30μm、密度:937kg/m〕、XM-221U〔粘度平均分子量:200万、体積平均粒子径(Coulter-Counter法):25μm、密度:937kg/m〕、XM-330〔粘度平均分子量:200万、体積平均粒子径(Coulter-Counter法):65μm、密度:937kg/m〕などが挙げられる。
【0051】
(b)前記樹脂粒子の含有量は、(a)基材ポリマー成分100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、70質量部以下であることがさらに好ましい。(b)樹脂粒子の含有量が5質量部以上であれば、(b)樹脂粒子による摩擦係数低減効果がより向上し、100質量部以下であれば、基材ポリマー内に均一的に混入及び分散がしやすくなるからである。
【0052】
[その他の成分]
前記ゴム組成物は、(c)架橋剤を含有することが好ましい。(c)架橋剤は、(a)基材ポリマーが含有するゴム成分を架橋させるために配合される。(c)前記架橋剤としては、ゴム成分を架橋させることが可能な架橋剤であれば特に限定されない。(c)前記架橋剤としては、例えば、硫黄、金属酸化物、樹脂架橋剤、有機過酸化物、トリアジン誘導体などを挙げることができ、これらは単独で、あるいは2種以上併用して用いることができる。
【0053】
架橋剤として使用される硫黄としては、例えば、不溶性硫黄、粉末硫黄、微粉硫黄、沈降性硫黄、コロイド硫黄、塩化硫黄などを挙げることができる。
【0054】
架橋剤として使用される金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などを挙げることができる。
【0055】
樹脂架橋剤としては、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、熱反応性フェノール樹脂、フェノールジアルコール系樹脂、ビスフェノール樹脂、熱反応性ブロモメチルアルキル化フェノール樹脂などのアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂類を挙げることができる。
【0056】
前記有機過酸化物は、具体的には、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルペルオキシ、ジ-t-ヘキシルペルオキシ、ジ-t-ブチルペルオキシ、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3などが挙げられる。パーオキシエステルとしては、例えば、t-ブチルペルオキシマレエート、t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサノエート、t-ブチルペルオキシラウレート、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエートなどが挙げられる。パーオキシケタールとしては、例えば、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)バレレート、2,2-ジ(4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパンなどが挙げられる。ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
架橋剤として使用されるトリアジン誘導体としては、例えば一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0058】
【化1】
【0059】
[式中、Rは、-SH、-OR、-SR、-NHRまたは-NR(R、R、R、RおよびRは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基またはシクロアルキル基を示す。RおよびRは、同一であっても異なっていてもよい。)である。MおよびMは、H、Na、Li、K、1/2Mg、1/2Ba、1/2Ca、脂肪族1級アミン、2級アミンもしくは3級アミン、第4級アンモニウム塩またはホスホニウム塩である。MおよびMは、同一または異なってもよい。]
【0060】
一般式(1)において、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、1,1-ジメチルプロピル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、またはドデシル基等の炭素数1~12のアルキル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、または2-ペンテニル基等の炭素数1~12のアルケニル基が挙げられる。アリール基としては、単環式または縮合多環式芳香族炭化水素基が挙げられ、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基またはアセナフチレニル基等の炭素数6~14のアリール基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、2,2-ジフェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、5-フェニルペンチル基、2-ビフェニリルメチル基、3-ビフェニリルメチル基または4-ビフェニリルメチル基等の炭素数7~19のアラルキル基が挙げられる。アルキルアリール基としては、例えばトリル基、キシル基またはオクチルフェニル基等の炭素数7~19のアルキルアリール基が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基またはシクロノニル基等の炭素数3~9のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0061】
一般式(1)で表されるトリアジン誘導体の具体例としては、例えば2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-メチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-(n-ブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-オクチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-プロピルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジアリルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジメチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジ(iso-ブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジプロピルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジ(2-エチルヘキシル)アミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ジオレイルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-ラウリルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンもしくは2-アニリノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、またはこれらのナトリウム塩もしくはジナトリウム塩が挙げられる。
【0062】
これらのなかでも、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-ジアルキルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、2-アニリノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンが好ましく、入手の容易さから2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンが特に好ましい。
【0063】
また、トリアジン誘導体としては、例えば、6-[ビス(2-エチルへキシル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジイソブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール・モノナトリウム、6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール等の1種または2種以上が挙げられる。
【0064】
本発明で使用するゴム組成物において、トリアジン誘導体としては1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
ゴム成分として、塩素化ブチルゴムおよび臭素化ブチルゴムを用いる場合、前記塩素化ブチルゴムおよび臭素化ブチルゴムは、それぞれ架橋のメカニズムが異なるため、架橋に最適な架橋成分を選択して使用するのが好ましい。前記ゴム組成物が、ハロゲン化ブチルゴムとして塩素化ブチルゴムを含む場合は、(c)架橋剤としてトリアジン誘導体を含有することが好ましい。また、前記ゴム組成物が、ハロゲン化ブチルゴムとして臭素化ブチルゴムを含む場合は、(c)架橋剤として、金属酸化物を含有することが好ましい。
【0066】
前記ゴム組成物中の(c)前記架橋剤の含有量は、(a)基材ポリマー成分100質量部に対して、0.2質量部以上であることが好ましく、0.4質量部以上であることがより好ましく、0.6質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。(c)架橋剤の含有量が前記範囲内であれば、良好なゴム物性(硬度、引張、Cset)と加工性(ヤケの少ない)の良いゴムを得ることができるからである。
【0067】
ハロゲン化ブチルゴムとして、塩素化ブチルゴムを使用し、(c)架橋剤としてトリアジン誘導体を使用する場合、ゴム組成物中の(c)前記架橋剤の含有量は、(a)基材ポリマー成分100質量部に対して、0.2質量部以上であることが好ましく、0.4質量部以上であることがより好ましく、0.6質量部以上であることがさらに好ましく、4質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることがさらに好ましい。(c)架橋剤の含有量が前記範囲内であれば、良好なゴム物性(硬度、引張、Cset)と加工性(ヤケの少ない)の良いゴムを得ることができるからである。
【0068】
ハロゲン化ブチルゴムとして、臭素化ブチルゴムを使用し、(c)架橋剤として、金属酸化物を使用する場合、ゴム組成物中の(c)前記架橋剤の含有量は、(a)基材ポリマー成分100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。(c)架橋剤の含有量が前記範囲内であれば、良好なゴム物性(硬度、引張、Cset)と加工性(ヤケの少ない)の良いゴムを得ることができるからである。
【0069】
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含まないことが好ましい。最終製品のゴム製品中に加硫促進剤が残存して、シリンジなど中の薬液へ溶出する場合があるからである。前記加硫促進剤としては、例えば、グアニジン系促進剤(例:ジフェニルグアニジン)、チウラム系促進剤(例:テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド)、ジチオカルバミン酸塩系促進剤(例:ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛)、チアゾール系促進剤(例:2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド)、スルフェンアミド系促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド)が挙げられる。
【0070】
前記ゴム組成物は、さらに(d)受酸剤を含有してもよい。(d)受酸剤は、ハロゲン化ブチルゴムの架橋時に発生する塩素系ガスや臭素系ガスを吸収して、これらのガスによる架橋阻害等の発生を防止するために機能する。また、(d)受酸剤は、ハロゲン化ブチルゴムの架橋時にスコーチ防止剤として、また、シリンジ用ガスケットの圧縮永久ひずみが大きくなるのを防止するためにも機能する。
【0071】
(d)前記受酸剤としては、例えば、ハイドロタルサイト、金属酸化物、金属水酸化物などが挙げられる。
【0072】
ハイドロタルサイトとしては、例えば、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.5Al(OH)13CO、MgAl(OH)12CO・3.5HO、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)14CO・4HO、MgAl(OH)10CO・1.7HO等のMg-Al系ハイドロタルサイト等が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらの受酸剤は、1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なお、先述した架橋剤として使用される金属酸化物も受酸剤として機能しうる。
【0073】
(d)前記受酸剤の含有量は、(a)基材ポリマー成分100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。受酸剤の含有量が前記範囲内であれば、金型等への錆発生を抑制し、原料自体が白点異物となる不具合を減らすことができるからである。
【0074】
前記ゴム組成物には、さらに充填剤を配合してもよい。前記充填剤としては、例えば、クレー、タルクなどの無機充填剤が挙げられる。これらの中でも、前記充填剤としては、無機充填剤が好ましく、クレーまたはタルクがさらに好ましい。前記充填剤は、シリンジ用ガスケットのゴム硬さを調整するために機能するとともに、増量材としてシリンジ用ガスケットの生産コストを低減させるためにも機能する。
【0075】
前記クレーとしては、焼成クレーやカオリンクレーを挙げることができる。前記クレーの具体例としては、例えばHOFFMANN MINERAL(ホフマンミネラル)社製のSILLITIN(登録商標)Z、ENGELHARD(エンゲルハード)社製のSATINTONE(登録商標)W、土屋カオリン工業社製のNNカオリンクレー、イメリス・スペシャリティーズ・ジャパン社製のPoleStar200Rなどが挙げられる。
【0076】
前記タルクの具体例としては、例えば竹原化学工業社製のハイトロンA、日本タルク社製のMICRO ACE(登録商標)K-1、イメリス・スペシャリティーズ・ジャパン社製のミストロン(登録商標)ベーパー等が挙げられる。
【0077】
前記ゴム組成物中の充填剤の含有量は、目的とするシリジンジ用ガスケットのゴム硬さ等に応じて適宜設定することが好ましい。前記ゴム組成物中の充填剤の含有量は、例えば、(a)基材ポリマー成分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましく、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましい。
【0078】
前記ゴム組成物には、さらに、酸化チタンやカーボンブラックなどの着色剤、ステアリン酸などの滑剤、加工助剤や、架橋活性剤としてのポリエチレングリコール、プロセスオイル等を適宜の割合で配合してもよい。
【0079】
本発明のシリンジ用ガスケットは、その表面の少なくとも一部が、不活性樹脂層で被覆されていてもよい。
【0080】
不活性樹脂層を構成する樹脂としては特に限定されないが、良好な耐薬品性が得られるという点から、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロテトラフルオロエチレン(PCTFE)からなる群より選択される少なくとも1種のフッ素樹脂、または、非フッ素樹脂を挙げることができる。
【0081】
テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)とは、エチレンとテトラフルオロエチレンを30/70~70/30のモル比で共重合したものであり、改質目的でさらに他の成分を共重合した変性ETFEがある。他の成分としては、フッ素含有オレフィンや炭化水素系オレフィンが挙げられる。具体的には、プロピレン、ブテンなどのα-オレフィン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、パーフルオロブチルエチレン、トリフルオロクロロエチレンなどの含フッ素オレフィン、エチレンビニルエーテル、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、含フッ素アクリレート類などがあり、2~10モル%程度共重合されて、ETFEを改質する。
【0082】
変性ETFEとしては、接着性を付与する官能基を有するETFEを好適に使用することができ、該官能基としては、カルボキシル基、無水カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、イソシアネート基、エステル基、アミド基、アルデヒド基、アミノ基、シアノ基、炭素-炭素二重結合、スルホン酸基、エーテル基などが挙げられる。また、変性ETFEの市販品としては、旭硝子(株)製のフルオンAH-2000などが挙げられる。
【0083】
非フッ素樹脂としては、オレフィン系樹脂を挙げることができる。前記オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、塩素化ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、塩素化ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィンの共重合体等が挙げられ、ポリエチレン(特に超高分子量ポリエチレン(UHMWPE))が好ましい。また、オレフィン系樹脂は、フッ素を含んでいてもよい。
【0084】
[シリンジ用ガスケットの製造方法]
本発明には、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと、(b)樹脂粒子とを含有するゴム組成物をシリンジ用ガスケットに成形する工程と、前記シリンジ用ガスケットの表面の少なくとも一部に、紫外線を照射する工程を含むことを特徴とするシリンジ用ガスケットの製造方法が含まれる。
【0085】
本発明の製造方法において、(a)ゴム成分としてハロゲン化ブチルを含有する基材ポリマーと、(b)樹脂粒子を含有するゴム組成物を成形してなるシリンジ用ガスケットの表面に紫外線を照射することにより、紫外線照射後のシリンジ用ガスケットの表面が、前記P=(Vmp/V)≧0.25を満足する。
【0086】
[シリンジ用ガスケットの成形]
本発明で使用するゴム組成物は、(a)基材ポリマーと(b)樹脂粒子と、その他、必要に応じて加える配合材料とを混練することにより得られる。混練は、例えば、オープンロール、密閉式ニーダーなどを用いて行うことができる。混練物は、リボン状、シート状、ペレット状などに成形することが好ましく、シート状に成形することがより好ましい。
【0087】
(a)基材ポリマーと(b)樹脂粒子との混錬は、(b)樹脂粒子の融点以下の温度で行うことが好ましい。
【0088】
次に、得られた混錬物をシリンジ用ガスケットに成形する。リボン状、シート状、ペレット状の混練物を、所望の形状にプレス成型する。プレス時にゴム組成物の加硫(架橋反応)が進行する。成形温度は、例えば、130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、200℃以下が好ましく、190℃以下がより好ましい。成形時間は、2分間以上が好ましく、3分間以上がより好ましく、60分間以下が好ましく、30分間以下がより好ましい。成形圧力は、0.1MPa以上が好ましく、0.2MPa以上がより好ましく、10MPa以下が好ましく、8MPa以下がより好ましい。
【0089】
本発明のシリンジ用ガスケットの表面の少なくとも一部が、不活性樹脂層で被覆されている場合、ゴム組成物から構成されるシートに不活性樹脂フィルムを重ねた状態で、プレス成形することにより、シリンジ用ガスケットの表面の少なくとも一部が不活性樹脂層で被覆される。
【0090】
使用する不活性樹脂フィルムの厚みは、シリンジ用ガスケットの形状やサイズに合わせて適宜調整すればよいが、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましく、150μm以下が好ましく、130μm以下がより好ましく、110μm以下がさらに好ましい。不活性樹脂フィルムの厚みが前記範囲内であれば、製品成形時のフィルム破り、成形後製品表面のフィルムに皺や浮き不良等が発生せず、成形加工性と製品特性の両立ができることとなるからである。
【0091】
不活性樹脂フィルムの算術平均粗さRaは、キャスティング法フィルムや、押出しフィルムの0.01~0.03μmのものから、スカイビングフィルムの0.10μmのものでも、金型の表面粗さを0.03μm以下にすることで、液密着性、気密性に優れた医療用ゴム物品が得られる。不活性フィルム自体のRaの下限は特に限定されない。
【0092】
不活性樹脂フィルムは、ゴム等との接着性を高める処理を行うことが好ましい。接着性を高める処理としては、化学処理法、フィルムの表面を粗面化する処理や、これらを組み合わせたものが挙げられ、具体例としては、ナトリウム処理、グロー放電処理、大気圧下又は真空下でのプラズマ処理(放電処理)、エキシマレーザー処理(放電処理)、イオンビーム処理が挙げられる。
【0093】
<紫外線照射工程>
本発明の医療用ゴム物品の製造方法は、前記シリンジ用ガスケットの表面の少なくとも一部に、紫外線を照射する工程を含む。紫外線を照射するシリンジ用ガスケットは、最終的なシリンジ用ガスケットの形状に成形されたものであってもよいし、最終的なシリンジ用ガスケットの形状に成形される前の予備成形体であってもよい。
【0094】
シリンジ用ガスケットに紫外線を照射する方法は、特に限定されないが、例えば、紫外線を発する光源を用いて、シリンジ用ガスケットの表面に照射することが挙げられる。
【0095】
前記紫外線の波長は、160nm以上であることが好ましく、165nm以上であることがより好ましく、170nm以上であることがさらに好ましい。紫外線の波長が160nm以上であれば、(b)ポリオレフィン系樹脂粒子は、この波長の紫外線をほぼ吸収しないため、紫外線を照射されても反応せず、ガスケット表面において点在する。また、前記紫外線の波長の上限は、特に限定されないが、380nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。紫外線の波長が380nm以下であれば、紫外線のエネルギーが高くなり、ハロゲン化ブチルゴムの架橋効率が高くなり、変形しにくくなる。また、高エネルギーの紫外線によってガスケット表面の粘着性の原因となる低分子成分が分解して蒸発し、低粘着性を実現することができる。さらに、前記低分子成分の蒸発により、シリンジ用ガスケットの表面に(b)ポリオレフィン系樹脂粒子が露出する。その結果、紫外線照射後のシリンジ用ガスケットの表面には、(b)ポリオレフィン系樹脂粒子が露出してなる島部と、ゴムからなる海部とを有する海島構造が形成されている。本発明の製造方法によれば、紫外線照射により、シリンジ用ガスケットの表面が粗くなり、紫外線照射後のガスケット表面が前記P=(Vmp/V)≧0.25を満足する。
【0096】
これらの中でも、本発明の効果を一層良好に得られる点から、波長が200nm以下の真空紫外線が特に好ましい。
【0097】
前記紫外線を発する光源としては、前記波長範囲の紫外線を発することができるものであれば、特に限定されない。例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、エキシマランプなどが用いられる。特にエキシマランプは、エネルギーが強く、比較的短時間で表面の改質が行われる点から好ましい。前記エキシマランプは、用いる放電ガスの種類によって異なる波長の紫外線を発する。例えば、キセノン(Xe)を用いると172nm、塩化キセノン(XeCl)を用いると308nm、臭化キセノン(XeBr)を用いると283nm、ヨウ化キセノン(XeI)を用いると253nm、フッ化アルゴン(ArF)を用いると193nm、臭化アルゴン(ArBr)を用いると165nm、塩化クリプトン(KrCl)を用いると222nm、臭化クリプトン(KrBr)を用いると207nmの中心波長を有する紫外線(「エキシマUV光」とも呼ばれる)を発する。本発明では、中心波長が200nm以下の真空紫外線を発するエキシマランプが好ましく、キセノンを用いたエキシマランプ(中心波長:172nm)が特に好ましい。
【0098】
前記紫外線照射工程では、シリンジ用ガスケット表面への積算照度は、1000mJ/cm以上であることが好ましく、3000mJ/cm以上であることがより好ましく、5000mJ/cm以上であることがさらに好ましい。シリンジ用ガスケット表面への積算照度が1000mJ/cm以上であれば、ハロゲン化ブチルゴムの架橋が十分に行われるとともに、ガスケット表面の粘着性の原因となる低分子成分がより分解しやすくなる。また、ガスケット表面への積算照度の上限は、特に限定されないが、50000mJ/cm以下であることが好ましく、45000mJ/cm以下であることがより好ましく、40000mJ/cm以下であることがさらに好ましい。シリンジ用ガスケット表面への積算照度が50000mJ/cm以下であれば、照射設備の寿命、表面改質の効率性のバランスがとれるためであるからである。なお、前記シリンジ用ガスケット表面への積算照度とは、シリンジ用ガスケットの表面に到達する紫外線の合計照度(到達照度)であって、シリンジ用ガスケットの表面に到達する紫外線の強度(到達強度)に紫外線の照射時間を乗じることで算出することができる。
【0099】
前記紫外線の到達強度および照射時間は、上記した範囲の積算照度となるように適当に調整すればよいが、通常、前記紫外線の到達強度は、10mW/cm/sec~100mW/cm/sec、照射時間は、10秒~5000秒とすることが好ましい。紫外線の到達強度および照射時間をこれらの範囲とすることで、上記した範囲の積算照度となりやすいからである。
【0100】
シリンジ用ガスケットの表面と紫外線を発する光源(ランプ)との距離は、特に限定されないが、紫外線照射の均一性を高める点から、1mm~20mmとすることが好ましい。
【0101】
本発明では、シリンジ用ガスケットの表面の少なくとも一部に紫外線を照射することにより、ガスケット表面を低摩擦係数および低粘着性に大きく改質することができる。
【0102】
本発明の製造方法において、シリンジ用ガスケットの表面の少なくとも一部が、不活性樹脂層で被覆されている場合、不活性樹脂層を含むシリンジ用ガスケットの全体に紫外線を照射してもよいし、不活性樹脂層で被覆されておらず、露出しているゴム表面に紫外線を照射してもよい。露出しているゴム表面に紫外線を照射する場合、露出しているゴム表面の一部にのみ紫外線を照射してもよいし、露出しているゴム表面の全面に紫外線を照射するようにしてもよい。
【0103】
例えば、シリンジ用ガスケットの天面部のみが、不活性樹脂層で被覆されている場合、摺動面部のみに紫外線を照射することが好ましい。
【0104】
本発明のシリンジ用ガスケットの製造方法は、ゴム組成物の硬化物を所定の形状に加工する工程、洗浄する工程、滅菌する工程、乾燥する工程を含んでもよい。例えば、紫外線照射後のゴム組成物の硬化物から、不要部分を切除、除去して所定の形状にし、さらに洗浄、減菌、乾燥、および、包装して、シリンジ用ガスケットが製造される。なお、不要部分を切除、除去して所定の形状にすることは、ゴム組成物の硬化物に紫外線を照射する前に行ってもよい。
【0105】
本発明のシリンジ用ガスケットは、SOF規制の観点から、シリコーンオイルが塗布されないことが好ましい。前記シリコーンオイルとしては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンおよびこれらの変性体等が挙げられる。本発明のシリンジ用ガスケットは、シリコーンオイルを使わなくても、低摩擦係数および低粘着性を実現することができる。
【0106】
以下、図面を参照しながら、本発明を詳細に説明するが、本発明は図面に示された態様に限定されない。
【0107】
図2は、本発明のシリンジ用ガスケットが使用される医療用注射器、いわゆるプレフィラブルシリンジ30と呼ばれる注射器を分解状態で示す図である。図2において、シリンジバレル31およびシリンジ用ガスケット33は、半分が断面で表わされている。プレフィラブルシリンジ30は、円筒形状のシリンジバレル31と、シリンジバレル31と組み合わされ、シリンジバレル31内を往復移動し得るプランジャ32と、プランジャ32の先端に装着されるシリンジ用ガスケット33とを含んでいる。
【0108】
プランジャ32は、たとえば横断面が十文字状の樹脂製板片で構成され、その先端部にはシリンジ用ガスケット33が取り付けられるヘッド部38が備えられている。ヘッド部38は、プランジャ32と一体に形成された樹脂製で、雄ねじ形状に加工されている。シリンジ用ガスケット33は、短軸の略円柱形状で、その先端面は、たとえば軸中心部が突出する鈍角の山形形状をしている。そして後端面から軸方向に彫り込まれた雌ねじ形状の嵌合凹部35が形成されている。プランジャ32のヘッド部38が、シリンジ用ガスケット33の嵌合凹部35にねじ込まれることにより、プランジャ32の先端にシリンジ用ガスケット33が装着される。
【0109】
図3は、シリンジ用ガスケットの一例の半断面正面図である。シリンジ用ガスケット40は、ゴム組成物の硬化物で構成される本体41と、この本体の表面の一部を被覆する不活性樹脂層42とを含む。シリンジ用ガスケット40は、薬液に接する天面部47とシリンジバレルの内面に対向する摺動面部46とを有する。
【0110】
図3に示した態様では、シリンジ用ガスケット40をシリンジバレル内に挿入したときに、薬液と接する山形形状の天面部47のみに不活性樹脂層42が被覆されている。不活性樹脂層42としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルムが好ましい。
【0111】
シリンジ用ガスケット40がシリンジバレルの内面と接触する摺動面部(外側周面)46は、不活性樹脂層42が設けられておらず、紫外線照射が行われている。摺動面部(外側周面)46は、高い摺動性を有する。
【0112】
前記シリンジ用ガスケット40は、短い円柱形状であり、前記円柱形状の摺動面部(外側周面)46に環状リブ43,44,45を複数有する。前記環状リブは、シリンジバレルの内周面と摺接する。複数の環状リブは、シリンジ用ガスケットの先端面(天面部)47から後端面48に向かって、軸方向に配列されている。環状リブの個数は、1以上であれば、特に限定されないが、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、6以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。
【0113】
図3のシリンジ用ガスケット40は、先端側から第1環状リブ43、第2環状リブ44、第3環状リブ45を有する。先端の第1環状リブ43は、径方向の圧縮率が1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、3%以上であることがさらに好ましく、10%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましく、8%以下であることがさらに好ましい。圧縮率は、非圧縮状態の環状リブの外径D1と、シリンジバレルの内径Rとから、次式により算出される。圧縮率(%)=100×(D1-R)/D1
【0114】
先端の環状リブ43の摺接部直線長さH1(前記軸方向長さ)は、前記円柱形状の摺動面部(外側周面)の直線長さ(外側周面の前記軸方向長さ)Hoに対して、1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、6%以上であることがさらに好ましく、25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。
【0115】
第2環状リブ44の摺接部直線長さH2(前記軸方向長さ)および第3環状リブ45の摺接部直線長さH3(前記軸方向長さ)は、前記円柱形状の外側周面の直線長さHo(外側周面の前記軸方向長さ)に対して、それぞれ、1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、3%以上であることがさらに好ましく、15%以下であることが好ましく、14%以下であることがより好ましく、13%以下であることがさらに好ましい。
【0116】
なお、シリンジ用ガスケットは、ストッパー、あるいは、プランジャストッパーと言われる場合がある。
【実施例0117】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0118】
[ゴム組成物の調製および紫外線照射]
表1に示した材料を、オープンロールを用いて60℃で20分間混練して、ゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物を170℃、15分間の成形条件で架橋させた後、直径28mm、厚み2mmの円形スラブに打抜き、紫外線照射用試験片(ゴム組成物の硬化物)とした。前記紫外線照射用試験片に真空紫外線(波長:172nm)を表1に示した積算照度となるように照射した。
紫外線の照射条件
・照射装置:無電極エキシマ172nm照射装置(株式会社エム・ディ・コム製)
・硬化物の表面とランプとの距離:7mm
・紫外線の到達強度:57.9mW/cm/sec
【0119】
【表1】
【0120】
使用した配合材料の詳細は以下の通りである。
塩素化ブチルゴム:エクソンモービル社製 Exxon(登録商標)Chlorobutyl 1066(塩素含量率:1.25wt%)
汎用ブチルゴム:エクソンモービル社製 Exxon(登録商標)Butyl 268(不飽和度:2.30モル%)
超高分子量ポリエチレン:三井化学社製 ミペロン(登録商標)XM-220(体積平均粒子径:30μm、粘度平均分子量:200万、融点136℃)
トリアジン誘導体:三協化成社製 ジスネットDB
硫黄:日本乾溜工業社製 不溶性硫黄(セイミOT)
酸化亜鉛:正同化学工業社製 活性亜鉛華AZO
酸化マグネシウム:協和化学工業社製 マグサラット150s
ジチオカルバミン酸塩:大内新興化学工業社製 ノクセラー(登録商標)ZTC
【0121】
[評価方法]
(1)表面粗さの解析
測定装置:株式会社キーエンス社製のレーザー顕微鏡VK-X3000
スキャンモード:レーザーコンフォーカル
対物レンズ倍率:50倍
画像解析ソフト:VK-X3000マルチファイル解析アプリケーション、
画像処理:基準面設定→面状補正(うねり除去:強さ5)
負荷面積率:40%
【0122】
(2)摩擦係数
<静摩擦係数、動摩擦係数の測定>
図4は、測定サンプル(紫外線照射後の厚み2mm、直径28mmの円形スラブ)について、静動摩擦係数測定機TL201(TAILAB社製)を用いた摩擦係数の測定方法を示す説明図である。測定サンプル63を下側のステージ64に固定し、直径10mmのSUS球62を取り付けた専用プローブに10gの分銅61を載せて測定サンプル63の表面とSUS球62を接触させる。その後ステージ64を20mmの距離を10mm/秒の速度で矢印の方向に移動させる。その際に発生する摩擦力Fを荷重(垂直抗力)Nで割った値を摩擦係数μとした。(μ=F/N)
なお、移動距離20mmの平均垂直抗力N1で割った係数を動摩擦係数とし、移動距離20mmの最大平均垂直抗力N2で割った係数を静摩擦係数とした。
<静摩擦係数の評価>
下記の評価基準により静摩擦係数を評価した。
○:静摩擦係数が1.50未満である。
×:静摩擦係数が1.50以上である。
<動摩擦係数の評価>
下記の評価基準により動摩擦係数を評価した。
○:動摩擦係数が1.30未満である。
×:動摩擦係数が1.30以上である。
【0123】
(3)粘着性試験
<タック値の測定>
試験機EZ-SX(島津製作所製)を用いて、上記で作製した測定サンプル(紫外線照射後の厚み2mm、直径28mmの円形スラブ)を下側の専用治具に固定し、上の金属Φ10mmSUSプローブを測定サンプルの表面に押し付け、設定した圧力(10N)に到達後、10秒間保持し、10mm/秒の速度で上に上昇させ、プローブと測定サンプルの間に発生した密着力のピーク値をタック値と定義し、n=5を測定し、maxとminを除いたn=3の平均値をタック値とした。
<粘着性の評価>
下記の評価基準により粘着性を評価した。
〇:タック値(N)が0.50N以下である。
×:タック値(N)が0.50N超である。
【0124】
(4)総合評価
〇:摩擦係数の評価結果および粘着性の評価結果は、いずれも〇である。
×:摩擦係数の評価結果と粘着性の評価結果のどちらに、×がある。
【0125】
摩擦係数、粘着性の測定結果および評価結果を表1に示した。表1より、本発明のシリンジ用ガスケットは、表面の摩擦係数および粘着性が低減されたものであることが分かる。
【0126】
図5図8は、(a)ゴム成分を含有する基材ポリマーと(b)樹脂粒子とを含有するゴム組成物から成形されたゴム組成物No.1~No.3、No.5の硬化物に紫外線を照射した表面をレーザー顕微鏡で観察した図面代用写真である。ゴム硬化物の表面には、(b)樹脂粒子が露出してなる島部と、ゴムからなる海部とを有する海島構造が形成されていることが分かる。
【0127】
図9は、(a)ゴム成分を含有する基材ポリマーを含有するが、(b)樹脂粒子を含有しないゴム組成物から成形されたゴム組成物No.6の硬化物に紫外線を照射した表面をレーザー顕微鏡で観察した図面代用写真である。紫外線照射後のゴム硬化物の表面には、微小な凹凸形状が形成されていることが分かる。これは紫外線照射によって、低分子成分が分解・蒸発すると同時に、形成された架橋部分が残存して、表面に微小な凹凸形状が形成されたものと考えられる。
【0128】
図10は、(a)ゴム成分を含有する基材ポリマーと(b)樹脂粒子とを含有するゴム組成物No.7から成形されたゴム組成物の硬化物の表面(紫外線照射なし)をレーザー顕微鏡で観察した図面代用写真である。図5図8と比較すると、ゴム硬化物の表面に(b)樹脂粒子が露出していないことが分かる。また、紫外線照射がなされていないので、ゴム硬化物の表面は、滑らかである。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明によれば、表面の摩擦係数および粘着性が低減されたシリンジ用ガスケットを提供できる。
【符号の説明】
【0130】
30:プレフィラブルシリンジ、31:シリンジバレル、33:シリンジ用ガスケット、40:シリンジ用ガスケット、43,44,45:環状リブ、47:天面部、46:摺動面部46
【0131】
本発明の好ましい態様(1)は、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと(b)樹脂粒子とを含有するゴム組成物から形成されたシリンジ用ガスケットであって、前記シリンジ用ガスケットの表面の少なくとも一部が、レーザー顕微鏡で表面粗さを測定したときに得られる画像解析結果について、コア部と突出山部とを分離する負荷面積率を40%とした突出山部の体積Vmp(mL/m)と、前記ゴム組成物中の(a)基材ポリマーの含有率V(質量%)とが、P=(Vmp/V)≧0.25を満足することを特徴とするシリンジ用ガスケットである。
【0132】
本発明の好ましい態様(2)は、前記シリンジ用ガスケットは、シリンジバレルに挿入したときに、薬液に接する天面部と、シリンジバレルの内面と対向する摺動面部とを有し、前記摺動面部の少なくとも一部が、P=(Vmp/V)≧0.25を満足する態様(1)のシリンジ用ガスケットである。
【0133】
本発明の好ましい態様(3)は、前記天面部の少なくとも一部が不活性樹脂層で被覆されている態様(1)又は(2)のシリンジ用ガスケットである。
【0134】
本発明の好ましい態様(4)は、前記不活性樹脂層が、フッ素樹脂からなる層である態様(3)のシリンジ用ガスケットである。
【0135】
本発明の好ましい態様(5)は、前記不活性樹脂層が、非フッ素樹脂からなる層である態様(3)のシリンジ用ガスケットである。
【0136】
本発明の好ましい態様(6)は、(b)前記樹脂粒子の体積平均粒子径は、200μm以下である態様(1)~(5)のいずれか一つのシリンジ用ガスケットである。
【0137】
本発明の好ましい態様(7)は、(b)前記樹脂粒子の含有量は、(a)基材ポリマー100質量部に対して、5質量部以上、100質量部以下である態様(1)~(6)のいずれか一つのシリンジ用ガスケットである。
【0138】
本発明の好ましい態様(8)は、前記ハロゲン化ブチルゴムは、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、イソブチレンとp-メチルスチレンの共重合体の臭素化物よりなる群から選択される少なくとも1種である態様(1)~(7)のいずれか一つのシリンジ用ガスケットである。
【0139】
本発明の好ましい態様(9)は、(b)前記樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂粒子である態様(1)~(8)のいずれか一つのシリンジ用ガスケットである。
【0140】
本発明の好ましい態様(10)は、前記ポリオレフィン系樹脂粒子は、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンよりなる群から選択される少なくとも1種である態様(9)のシリンジ用ガスケットである。
【0141】
本発明の好ましい態様(11)は、(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと、(b)樹脂粒子とを含有するゴム組成物をシリンジ用ガスケットに成形する工程と
前記シリンジ用ガスケットの表面の少なくとも一部に、紫外線を照射する工程を含むことを特徴とするシリンジ用ガスケットの製造方法である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2025-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ハロゲン化ブチルゴムを含有する基材ポリマーと(b)樹脂粒子とを含有するゴム組成物から形成されたシリンジ用ガスケットであって、
前記シリンジ用ガスケットの表面の少なくとも一部が、レーザー顕微鏡で表面粗さを測定したときに得られる画像解析結果について、コア部と突出山部とを分離する負荷面積率を40%とした突出山部の体積Vmp(mL/m)と、前記ゴム組成物中の(a)基材ポリマーの含有率V(質量%)とが、P=(Vmp/V)≧0.25を満足することを特徴とするシリンジ用ガスケット。
【請求項2】
前記シリンジ用ガスケットは、シリンジバレルに挿入したときに、薬液に接する天面部と、シリンジバレルの内面と対向する摺動面部とを有し、前記摺動面部の少なくとも一部が、P=(Vmp/V)≧0.25を満足する請求項1に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項3】
前記天面部の少なくとも一部が不活性樹脂層で被覆されている請求項2に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項4】
前記不活性樹脂層が、フッ素樹脂からなる層である請求項3に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項5】
前記不活性樹脂層が、非フッ素樹脂からなる層である請求項3に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項6】
(b)前記樹脂粒子の体積平均粒子径は、200μm以下である請求項1に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項7】
(b)前記樹脂粒子の含有量は、(a)基材ポリマー100質量部に対して、5質量部以上、100質量部以下である請求項1に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項8】
前記ハロゲン化ブチルゴムは、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、イソブチレンとp-メチルスチレンの共重合体の臭素化物よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項9】
(b)前記樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂粒子である請求項1に記載のシリンジ用ガスケット。
【請求項10】
前記ポリオレフィン系樹脂粒子は、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項9に記載のシリンジ用ガスケット。