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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105115
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】品質管理システムおよび品質管理方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 61/00 20060101AFI20250703BHJP
【FI】
B65G61/00 524
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223429
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】影山 光宏
(72)【発明者】
【氏名】松本 徳昭
(72)【発明者】
【氏名】久山 正洋
(72)【発明者】
【氏名】安東 ゆり
(72)【発明者】
【氏名】樋口 裕信
(57)【要約】
【課題】貨物のにおいに基づいて貨物の品質を管理する。
【解決手段】品質管理システムは、貨物が格納されたコンテナ内のにおいに基づいて貨物の品質を管理する品質管理システムであって、コンテナ内のにおいを測定してにおいデータを生成するにおいセンサを少なくとも含み、コンテナ内の状態を測定して測定データを生成する複数のセンサと、においデータに基づいて貨物の状態を分析する計算装置と、貨物の状態の分析結果に対応するアラームレベルに基づいて、貨物の状態を通知するアラーム動作を実行するか否かを判定し、アラーム動作を実行した場合に、測定データと測定データに対応する規定の閾値とに基づいて異常要因を分析し、アラームレベルと異常要因とに基づいて規定のアクションを実行する監視装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物が格納されたコンテナ内のにおいに基づいて前記貨物の品質を管理する品質管理システムであって、
前記コンテナ内のにおいを測定してにおいデータを生成するにおいセンサを少なくとも含み、前記コンテナ内の状態を測定して測定データを生成する複数のセンサと、
前記においデータに基づいて前記貨物の状態を分析する計算装置と、
前記貨物の状態の分析結果に対応するアラームレベルに基づいて、前記貨物の状態を通知するアラーム動作を実行するか否かを判定し、前記アラーム動作を実行した場合に、前記測定データと前記測定データに対応する閾値とに基づいて異常要因を分析し、前記アラームレベルと前記異常要因とに基づいてアクションを実行する監視装置と、を備える、
品質管理システム。
【請求項2】
前記においセンサに空気を送り込むポンプを更に備え、
前記ポンプは、前記コンテナ内の空気と新鮮空気とを規定の時間間隔で交互に前記においセンサに送り、
前記においセンサは、前記貨物のにおいと前記新鮮空気のにおいとを前記規定の時間間隔で交互に測定する、
請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項3】
前記監視装置は、第1貨物の第1輸送先への到着予定日時に基づいて、当該到着予定日時における前記第1貨物の状態を予測し、当該予測結果と前記貨物の輸送先毎に規定された前記貨物の状態の許容範囲とに基づいて、前記第1貨物の前記第1輸送先への輸送可否を判定する、
請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項4】
前記監視装置は、前記第1貨物を前記第1輸送先へ輸送できないと判定した場合、前記第1貨物の輸送先の変更または再発注を実行する、
請求項3に記載の品質管理システム。
【請求項5】
前記監視装置は、前記第1貨物の輸送先を変更する場合、
前記輸送先の候補を第2輸送先として選定し、前記第1貨物を前記第2輸送先に輸送した場合の到着予定日時を予測し、
当該到着予定日時における前記第1貨物の状態を予測し、
当該予測結果と前記許容範囲とに基づいて、前記第1貨物を前記第2輸送先に輸送可能であると判定し、かつ、
前記第2輸送先に輸送予定の第2貨物を前記第1輸送先へ輸送した場合の到着予定日時を予測し、
当該到着予定日時における前記第2貨物の状態を予測し、
当該予測結果と前記許容範囲とに基づいて、前記第2貨物を前記第1輸送先に輸送可能であると判定した場合、
前記第1貨物の前記第1輸送先と前記第2貨物の前記第2輸送先とを入れ替える、
請求項4に記載の品質管理システム。
【請求項6】
前記監視装置は、前記輸送先の候補を複数箇所選定し、複数の前記候補それぞれに輸送予定の貨物を前記第1輸送先へ輸送した場合のそれぞれの到着予定日時を予測し、複数の前記候補のうち予測された到着予定日時が最も早い候補を、前記第1輸送先と入れ替える、
請求項4に記載の品質管理システム。
【請求項7】
前記第2貨物の品目および積載量は、前記第1貨物の品目および積載量とそれぞれ同一である、
請求項5に記載の品質管理システム。
【請求項8】
前記アクションは、前記貨物の輸送先の変更を含む、
請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項9】
前記アクションは、前記貨物の再発注を含む、
請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項10】
前記アクションは、前記異常要因の通知を含む、
請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項11】
前記複数のセンサは、湿度センサ、温度センサ、加速度センサ、照度センサおよびGPSセンサを含み、
前記測定データは、前記コンテナ内の湿度データ、温度データおよび照度データと、前記コンテナの加速度データおよび位置情報とを含む、
請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項12】
前記監視装置は、前記アラーム動作を実行した時刻に基づいて、特定の期間における前記測定データを取得する、
請求項1に記載の品質管理システム。
【請求項13】
貨物が格納されたコンテナ内のにおいに基づいて前記貨物の品質を管理する品質管理方法であって、
前記コンテナ内のにおいを測定してにおいデータを生成し、
前記コンテナ内の状態を測定して測定データを生成し、
前記においデータに基づいて前記貨物の状態を分析し、
前記貨物の状態の分析結果に対応するアラームレベルに基づいて、前記貨物の状態を通知するアラーム動作を実行するか否かを判定し、前記アラーム動作を実行した場合に、前記測定データと前記測定データに対応する閾値とに基づいて異常要因を分析し、前記アラームレベルと前記異常要因とに基づいてアクションを実行する、
品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、品質管理システムおよび品質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輸送中の物品の品質トラブルの予防および対策のために、輸送中の物品の品質管理が求められている。例えば、特許文献1には、輸送途上にある物品が受けるストレスを把握して、ストレスを管理する輸送品質管理システムが開示されている。この輸送品質管理システムは、実梱包体で梱包されて輸送される物品が受けるストレスを検出するストレスセンサとストレスセンサが検出したデータを微弱電波で送信する送信部を有するセンサモジュールと、梱包体中の物品の一部又は全部をセンサモジュールで置き換えてなるダミー梱包体と、を備える。輸送品質管理システムは、更に、トラックに装置されて、センサモジュールから送信されたデータを受信する受信モジュールと、受信モジュールに接続されるともに、通信回線を介して輸送管理センタと接続される外部通信モジュールとを備える。そして、輸送品質管理システムは、輸送される物品に加わるストレスを輸送管理センタでモニタする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-94616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、輸送中の貨物の品質管理のために、例えば貨物の温度を管理しながら輸送したり、貨物が荷崩れしないような梱包をして輸送したり、様々な対策が検討されている。しかし、輸送中の貨物の品質トラブルを完全に無くすことは困難である。輸送中の貨物に品質トラブルの恐れがあることが判明した場合、貨物の具体的な状態を確認するために、貨物を格納しているコンテナを開梱することが考えられる。しかしながら、輸送の途中でコンテナを開梱した場合、開梱したことが貨物の品質劣化の原因となり得る。また、コンテナを開梱して貨物の状態を確認することは、確認の対象となるコンテナの数が多く現実的ではない場合がある。
【0005】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、貨物のにおいに基づいて貨物の品質を管理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、貨物が格納されたコンテナ内のにおいに基づいて前記貨物の品質を管理する品質管理システムであって、前記コンテナ内のにおいを測定してにおいデータを生成するにおいセンサを少なくとも含み、前記コンテナ内の状態を測定して測定データを生成する複数のセンサと、前記においデータに基づいて前記貨物の状態を分析する計算装置と、前記貨物の状態の分析結果に対応するアラームレベルに基づいて、前記貨物の状態を通知するアラーム動作を実行するか否かを判定し、前記アラーム動作を実行した場合に、前記測定データと前記測定データに対応する閾値とに基づいて異常要因を分析し、前記アラームレベルと前記異常要因とに基づいてアクションを実行する監視装置と、を備える、品質管理システム。品質管理システムを提供する。
【0007】
また、本開示は、貨物が格納されたコンテナ内のにおいに基づいて前記貨物の品質を管理する品質管理方法であって、前記コンテナ内のにおいを測定してにおいデータを生成し、前記コンテナ内の状態を測定して測定データを生成し、前記においデータに基づいて前記貨物の状態を分析し、前記貨物の状態の分析結果に対応するアラームレベルに基づいて、前記貨物の状態を通知するアラーム動作を実行するか否かを判定し、前記アラーム動作を実行した場合に、前記測定データと前記測定データに対応する閾値とに基づいて異常要因を分析し、前記アラームレベルと前記異常要因とに基づいてアクションを実行する、品質管理方法を提供する。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本開示の表現を方法、装置、システム、記憶媒体、コンピュータプログラム等の間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、貨物のにおいに基づいて貨物の品質を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る品質管理システムの構成例を示すブロック図
図2】バナナの成熟に伴う色の変化を説明するための概略図
図3】実施の形態1に係るにおいセンサに付着したにおいのクリーニングを説明するためのグラフ図
図4】実施の形態1に係る計算装置の処理のフローチャート
図5】実施の形態1に係るにおいデータの例を説明するための概略図
図6】実施の形態1に係る計算装置によるにおいの分析結果の例を説明するためのテーブル図
図7】実施の形態1に係るにおい分析電文の例を説明するための概略図
図8】実施の形態1に係るバナナに対応するアラームレベル管理テーブルを説明するためのテーブル図
図9】実施の形態1に係る貨物管理表を説明するためのテーブル図
図10】実施の形態1に係る監視装置の処理のフローチャート
図11】実施の形態1に係る監視装置の処理のフローチャート
図12】実施の形態1に係るアラーム電文の例を説明するための概略図
図13】実施の形態1に係る測定データの例を説明するためのテーブル図
図14】実施の形態1に係るセンシングテーブルの例を説明するためのテーブル図
図15】実施の形態1に係る監視装置の処理のフローチャート
図16】実施の形態1に係る要因電文の例を説明するための概略図
図17】実施の形態1に係る貨物輸送先管理テーブルの例を説明するためのテーブル図
図18】実施の形態1に係る輸送先別許容レベル管理テーブルの例を説明するためのテーブル図
図19】実施の形態1に係る輸送拠点管理テーブルの例を説明するためのテーブル図
図20】実施の形態1に係る監視装置の処理のフローチャート
図21】実施の形態1に係る監視装置の処理のフローチャート
図22】実施の形態1に係る監視装置の処理のフローチャート
図23】実施の形態1に係る輸送先の入れ替えの例を説明するための概略図
図24】実施の形態1の変形例に係るオイルに対応するアラームレベル管理テーブルを説明するためのテーブル図
図25】実施の形態1の変形例に係る輸送先別許容レベル管理テーブルの例を説明するためのテーブル図
図26】実施の形態1の変形例に係るアラーム動作と異常発生との時系列を説明するための概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る品質管理システムおよび品質管理方法を具体的に開示した実施の形態について、詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
(実施の形態1)
[システム構成]
図1は、実施の形態1に係る品質管理システム1の構成例を示すブロック図である。品質管理システム1は、貨物6が格納されたコンテナ10内のにおいに基づいて貨物6の品質を管理するシステムである。貨物6が陸送される場合、コンテナ10は、例えば、トレーラ17に積載される。なお、トレーラ17は、トラックと読み替えられてもよい。貨物6が海上輸送される場合、コンテナ10は、例えば、コンテナ船18に積載される。なお、本明細書において、「貨物」とは、物品、商品、資材、部品、またはそれらの組み合わせを含む。
【0013】
品質管理システム1は、センサモジュール2と、ポンプ3と、電源装置4と、通信装置5と、計算装置8と、監視装置9と、を備える。
【0014】
センサモジュール2、ポンプ3、電源装置4および通信装置5は、コンテナ10に設置される。コンテナ10には、電源が供給可能である。コンテナ10は、例えば、リーファーコンテナであってよい。また、図1には示していないが、コンテナ10内には、エアーコンディショナが設置されている。
【0015】
センサモジュール2は、コンテナ10内の状態等を測定して測定データを生成する複数のセンサから構成される。センサモジュール2は、においセンサ11と、温度センサ12と、湿度センサ13と、加速度センサ14と、照度センサ15と、Global Positioning System(以下、「GPS」と称する)センサ16と、を含む。
【0016】
においセンサ11は、コンテナ10内のにおいを測定して、測定データとしてにおいデータを生成する。より正確には、においセンサ11は、ポンプ3から送り込まれた空気のにおいを測定する。温度センサ12は、コンテナ10内の温度を測定して、測定データとして温度データを生成する。湿度センサ13は、コンテナ10内の湿度を測定して、測定データとして湿度データを生成する。加速度センサ14は、コンテナ10の加速度を測定して、測定データとして加速度データを生成する。照度センサ15は、コンテナ10内の照度を測定して、測定データとして照度データを生成する。GPSセンサ16は、コンテナ10の位置を測定して、測定データとしてコンテナ10の位置情報を生成する。においデータについては、図6を参照して後述する。温度データ、湿度データ、加速度データ、照度データおよび位置情報については、図13を参照して後述する。
【0017】
ポンプ3は、においセンサ11に空気を送り込む。ポンプ3は、コンテナ10内の空気、言い換えると貨物6のにおいを含んだ空気と、新鮮空気とを規定の時間間隔で交互ににおいセンサ11に送り込む。ここで、新鮮空気とは、においを含まない気体を指し、貨物6のにおいを含んだ空気と区別するための用語である。新鮮空気の例としては、コンテナ10外の空気、言い換えると外気が挙げられる。図1の例では、ポンプ3はコンテナ10の外から新鮮空気を取り込んでいるが、例えば、無臭の空気が貯蔵された容器が予めコンテナ10内に設置されていてもよい。そして、ポンプ3は、当該容器に貯蔵された空気を新鮮空気としてにおいセンサ11に送り込んでもよい。
【0018】
電源装置4は、センサモジュール2に含まれる各センサ、ポンプ3および通信装置5に電力を供給する。コンテナ10がトレーラ17に積載される場合、例えば、トレーラ17またはトレーラ17を牽引するトラクタに設置された電源設備から電源装置4へと電力が供給されてよい。また、コンテナ10がコンテナ船18に積載される場合、例えば、コンテナ船18に設置された電源設備から電源装置4へと電力が供給されてよい。
【0019】
通信装置5は、センサモジュール2に含まれる各センサによる測定データを取得して、ネットワーク7を介して計算装置8へと送信する。ネットワーク7は特に限定されず、通信装置5は、例えば、衛星通信により計算装置8と通信を行ってもよいし、トレーラ17またはコンテナ船18が備える無線通信機能を利用して計算装置8と通信を行ってもよい。通信装置5は、取得した測定データをリアルタイムで計算装置8へと送信することが望ましい。しかし、例えば、貨物6がコンテナ船18によって海上輸送されている場合等、計算装置8との通信を行えない場合がある。このような場合、通信装置5は、計算装置8と通信可能となるまで、取得した測定データを保持しておき、計算装置8と通信可能となったタイミングで、保持した測定データを纏めて計算装置8へと送信してよい。
【0020】
計算装置8は、例えば、パーソナルコンピュータまたはサーバコンピュータ等によって構成される。詳細は後述するが、計算装置8は、機械学習が実行可能であることが好ましい。計算装置8は、センサモジュール2に含まれる各センサによる測定データを取得する。計算装置8は、取得したにおいデータに基づいて貨物6の状態を分析する。詳細は、図4図5図6および図7を参照して後述する。計算装置8は、貨物6の状態の分析結果を監視装置9に送信する。また、計算装置8は、温度データおよび湿度データ等の各測定データを、監視装置9に送信する。なお、図1には示していないが、計算装置8の機能は、計算装置8が備えるプロセッサとメモリとが協働することにより実現される。また、計算装置8は、通信装置5および監視装置9等と通信するためのインタフェースを備えていてよい。また、図1の例では、計算装置8は1つのコンテナ10に関する測定データを取得するが、計算装置8は、複数のコンテナに関する測定データを取得可能であってよい。
【0021】
監視装置9は、例えば、パーソナルコンピュータまたはサーバコンピュータ等によって構成される。監視装置9は、貨物6の品質を監視する。具体的には、監視装置9は、計算装置8による貨物6の状態の分析結果を取得する。詳細は後述するが、監視装置9は、貨物6の状態の分析結果に基づいて、アラーム動作を実行するか否かを判定する。アラーム動作とは、例えば、貨物6の輸送の責任者または貨物6の荷主等のユーザへの貨物6の状態の通知等である。監視装置9によるアラーム動作が実行される場合、貨物6の品質に何らかの異常が発生していることが考えられる。監視装置9は、アラーム動作を実行した場合に、温度データおよび湿度データ等の測定データに基づいて、貨物6の品質の異常の要因分析を実行する。監視装置9は、更に、貨物6の配送キャンセル等のアクションを実行する。なお、図1には示していないが、監視装置9の機能は、監視装置9が備えるプロセッサとメモリとが協働することにより実現される。また、監視装置9は、計算装置8等と通信するためのインタフェースを備えていてよい。また、図1の例では、監視装置9は1つのコンテナ10に格納されている貨物6の品質を監視するが、監視装置9は、複数のコンテナに格納されている貨物を監視可能であってよい。
【0022】
このように、品質管理システム1は、貨物6のにおいをセンシングすることで貨物6の状態を分析する。そして、品質管理システム1は、分析した貨物6の状態に基づいて、貨物6の品質に異常が発生しているか否かを判定し、異常が発生している場合、異常の要因分析と何らかのアクションとを実行する。したがって、コンテナ10に格納されて輸送される貨物6は、においを発する貨物であることが前提となる。貨物6の例として、果物等の生鮮食品またはにおいを有する液体等が挙げられる。以下、説明の便宜上、貨物6はバナナであるとする。
【0023】
バナナのにおいは、バナナの成熟に伴い変化する。バナナの皮の色もまた、バナナの成熟に伴い変化する。以下、バナナの皮の色のことを、単にバナナの色と称することがある。図2は、バナナの成熟に伴う色の変化を説明するための概略図である。図2に示すように、バナナは日数が経過するにつれて成熟度が高くなっていく。バナナの色は、最も成熟度が低い時期ではオールグリーンである。そして、バナナの色は、成熟度が高くなるにつれてオールグリーンからライトグリーン、ライトグリーンからハーフグリーン、ハーフグリーンからハーフイエロー、ハーフイエローからグリーンチップ、グリーンチップからフルイエロー、フルイエローからスター、スターからダップルへと変化する。バナナのにおいは、バナナの色が上記の8種類の色のいずれかであるそれぞれの時期毎に異なる。つまり、バナナのにおいに基づいて、バナナの色が上記の8種類のうちいずれの色であるかが判明する。更に、バナナのにおいの変化に基づいて、バナナの色の変化、すなわちバナナの成熟の進行が判明する。品質管理システム1は、バナナのにおいをセンシングして状態を分析することで、もしバナナの成熟が進んでいる場合、その成熟度の変化を検知する。このように、品質管理システム1は、バナナの品質を監視することができる。
【0024】
バナナのにおいは、においセンサ11によって測定される。においセンサ11は、異なるにおい成分、より正確には、特定のにおい分子に反応する分子認識材料を複数種類備える。各分子認識材料の電気特性は、におい分子を吸着した場合に変化する。簡単に言うと、各分子認識材料がにおい成分に反応することで電流が生じる。発生した電流は、各分子認識材料に対応するプローブによって検出される。においセンサ11は、バナナのにおいを測定するために、少なくとも8種類の分子認識材料を備える。においセンサ11は、バナナのにおいをより精度良く測定するために、例えば、16種類の分子認識材料を備えていてもよい。
【0025】
においセンサ11が備える分子認識材料が連続してにおい分子を吸着し続けた場合、におい分子が分子認識材料に付着して、においの測定の精度が悪くなる可能性がある。そこで、図1の説明で述べたように、ポンプ3が、新鮮空気と、バナナのにおいを含んだ空気とを規定の時間間隔で交互ににおいセンサ11に送り込む。これにより、においセンサ11がバナナのにおいを測定する際に分子認識材料に付着したにおい分子が、新鮮空気によって分子認識材料から取り除かれる。つまり、においセンサ11に付着したにおいのクリーニングが行われる。図3は、実施の形態1に係るにおいセンサに付着したにおいのクリーニングを説明するためのグラフ図である。
【0026】
図3に示すグラフ図において、縦軸は電流値を示し、横軸は時間を示す。特性20、特性21および特性22は、それぞれ、においセンサ11の異なる3種類の分子認識材料がにおい分子を吸着した際の電流値の変化を示す。説明の便宜上、3つの特性20、特性21および特性22しか示していないが、例えばにおいセンサ11が16種類の分子認識材料を備えている場合、電流値の変化を示す特性もまた、16パターン生じる。
【0027】
特性20、特性21および特性22が示すように、においセンサ11によるにおいの測定において、期間T1と期間T2とが交互に繰り返される。においセンサ11は、期間T1においては、新鮮空気のにおいを測定する。このとき、電流値はほとんど変化しない。これは、新鮮空気が無臭であるためである。言い換えると、においセンサ11が備える分子認識材料に反応するにおい分子を新鮮空気が含まないためである。においセンサ11は、期間T2においては、コンテナ10内の空気、すなわちバナナのにおいを測定する。このとき、電流値が増加する。期間T1における測定と期間T2における測定とが繰り返されることで、においセンサ11は、におい測定の精度を保つことができる。なお、期間T1および期間T2のそれぞれの長さは、例えば、ユーザによって予め設定されていてよい。
【0028】
[においの分析]
次に、計算装置8による、においデータに基づいたバナナの状態の分析の処理について説明する。計算装置8は、貨物6の種類毎の学習データに基づく学習済みモデルを用いて、貨物6の状態を分析する。貨物6の種類とは、例えば、バナナ、リンゴ、魚等である。実施の形態1において、計算装置8は、学習済みモデルを用いてバナナの状態を分析する。
【0029】
計算装置8は、学習済みモデルを予め生成していてよい。学習済みモデルは、計算装置8以外のコンピュータによって生成されてもよい。学習済みモデルは、バナナのにおいデータに基づいて、分析の対象のバナナのにおいが、図2に示すバナナの8つの状態のうちいずれの状態のバナナのにおいであるかを分析する。つまり、学習済みモデルは、分析対象のバナナ、すなわちにおいデータの元となったバナナの状態が、オールグリーン、ライトグリーン、ハーフグリーン、ハーフイエロー、フルイエロー、スターおよびダップルの8つの状態のうちいずれの状態であるかを分析する。分析結果の例は、図6を参照して後述する。
【0030】
学習済みモデルは、においの特徴量データに基づいて、においデータの分析を行う。特徴量データとは、においデータが持つ特徴を表す。特徴量データは、バナナの状態によって異なる。例えば、バナナの状態がオールグリーンの場合のバナナのにおいデータから抽出される特徴量データと、バナナの状態がダップルの場合のバナナのにおいデータから抽出される特徴量データとは異なる。
【0031】
計算装置8のにおい分析の一連の処理の説明に入る前に、学習済みモデルの生成について、簡単に説明する。説明の便宜上、学習済みモデルの生成は計算装置8により行われるものとする。計算装置8は、例えば、色、言い換えると成熟度がオールグリーンの状態のバナナのにおいデータを取得する。計算装置8は、においデータから特徴量データを抽出する。例えば、においセンサ11が16種類の分子認識材料をそれぞれ1つずつ備えている場合、計算装置8は、図3に示したような、時間経過に伴う電流値の変化を示す特性を16種類得る。この場合、計算装置8は、例えば16種類の特性のそれぞれから、ある時間からある時間までの電流値のうち特定の値を特徴量データとして抽出する。特定の値とは、例えば、電流の最大値等である。これにより、計算装置8は、バナナの状態がオールグリーンの場合の特徴量データを取得する。計算装置8は、バナナの状態がオールグリーンの場合だけでなく、バナナが各状態である場合の特徴量データを取得する。
【0032】
計算装置8は、例えばオールグリーン等の状態を表すラベルと共に保存されたにおいデータを学習データとする。計算装置8は、学習データ、特徴量データおよび任意のアルゴリズムを用いて、モデルの学習を行う。モデルは、においデータの特徴量に基づいた各状態の分類を学習する。これにより、学習済みモデルが生成される。学習済みモデルの生成のために使用されるアルゴリズムは特に限定されず、例えば、ロジスティック回帰、決定木、ランダムフォレスト等が用いられてよい。
【0033】
計算装置8は、生成した学習済みモデルを用いて、図4に示すフローチャートの各処理を実行する。なお、学習済みモデルは計算装置8のメモリに格納されてもよいし、計算装置8と通信可能な外部装置等に格納されてもよい。図4は、実施の形態1に係る計算装置8の処理のフローチャートである。
【0034】
計算装置8は、においセンサ11により生成された、バナナのにおいデータを取得する(ステップSt30)。においデータの例については、図5を参照して説明する。
【0035】
図5は、実施の形態1に係るにおいデータ40の例を説明するための概略図である。においデータ40は、デバイスID41と、ターゲット品目データ42と、日付データ43と、においデータ本体44とを含む。デバイスID41は、においセンサ11を識別するためのIDである。ターゲット品目データ42は、においデータの元となったターゲット品目、すなわち貨物6を示すデータであり、においセンサ11に予め登録されている。図5の例では、ターゲット品目データ42は、ターゲット品目がバナナであることを示す。日付データ43は、においデータ40が生成され始めた、言い換えるとにおいの測定が開始された年月日時分秒を示すデータである。図5の例では、日付データ43は、2023年9月23日9時0分0秒からにおいの測定が開始されたことを示す。においデータ本体44は、測定されたにおいの数値化されたデータである。例えば、においデータ本体44には、においセンサ11が16種類の分子認識材料をそれぞれ1つずつ備えている場合、各分子認識材料に対応するプローブによって検出された電流値が含まれる。においの数値化されたデータは、例えば、規定の時間間隔でにおいデータ本体44として記録される。具体的には、においセンサ11は、100分の1秒毎に、においが数値化されたデータ、例えば電流値をにおいデータ本体44として記録してよい。これにより、例えばにおいの測定が2023年9月23日9時0分0秒に開始された場合、2023年9月23日9時0分0秒から100分の1秒毎に、においデータ本体44に測定結果が記録されていく。
【0036】
次に、図4のフローチャートの説明に戻る。計算装置8は、においデータに含まれるにおいデータ本体のうち、基準となる時間から規定の期間のにおいデータ本体を切り出し、取得する(ステップSt31)。基準となる時間とは、においデータに含まれる日付データが示す年月日時分秒である。規定の期間のにおいデータ本体を切り出すとは、例えば、2023年9月23日9時0分0秒から2023年9月23日10時0分0秒までの1時間分のにおいデータ本体を切り出す、等である。これは、においデータに含まれるにおいデータ本体のデータ量が膨大な場合があるためである。規定の期間は、例えば、ユーザにより予め設定されていてよい。
【0037】
計算装置8は、においデータ本体を切り出せなかった場合(ステップSt32;NO)、処理フローを終了する。計算装置8がにおいデータ本体を切り出せない場合とは、ステップSt31の処理が繰り返されることにより、においデータに含まれる全てのにおいデータ本体が既に切り出されている場合である。したがって、この場合、計算装置8は処理フローを終了する。
【0038】
計算装置8は、においデータ本体を切り出せた場合(ステップSt32;YES)、学習済みモデルにステップSt30で取得したにおいデータを入力し、バナナの状態を分析させる(ステップSt33)。より正確には、計算装置8は、においデータから特徴量データを抽出し、特徴量データに基づいて学習済みモデルにバナナの状態を分析させる。
【0039】
計算装置8は、学習済みモデルによる分析結果を取得する(ステップSt34)。分析結果の例については、図6を参照して説明する。
【0040】
図6は、実施の形態1に係る計算装置8によるにおいの分析結果の例を説明するためのテーブル図である。学習済みモデルは、バナナの各状態に対するマッチ率を出力する。マッチ率とは、バナナがある状態である確率を示す。図6の例では、分析されたにおいデータの元となったバナナの状態は、オールグリーンである確率が30%である。また、バナナの状態は、ライトグリーンである確率が63%、ハーフグリーンである確率が5%、ハーフイエローである確率が2%、グリーンチップである確率が0%、フルイエローである確率が0%、スターである確率が0%、ダップルである確率が0%である。
【0041】
次に、図4のフローチャートの説明に戻る。計算装置8は、ステップSt30にて取得したにおいデータと、ステップSt34にて取得した分析結果とに基づいて、におい分析電文を作成する(ステップSt35)。におい分析電文の例については、図7を参照して後述する。
【0042】
計算装置8は、基準となる時間を更新し(ステップSt36)、ステップSt31に戻り、処理を繰り返す。例えば、基準となる時間、すなわちにおいの測定が開始された年月日時分秒が2023年9月23日9時0分0秒であり、においデータ本体を切り出すための規定の期間が30分である場合、基準となる時間を2023年9月23日9時30分0秒に更新する。また、図7を参照して後述するが、ステップSt35の処理が繰り返されることで、におい分析電文に分析結果要素が追加されていく。
【0043】
図7は、実施の形態1に係るにおい分析電文50の例を説明するための概略図である。におい分析電文50は、日付データ51と、分析結果要素として少なくとも分析結果要素52と、分析結果要素53とを含む。日付データ51は、においデータに含まれる日付データと同様のデータであり、においの測定が開始された年月日時分秒を示す。図7の例では、日付データ51は、2023年9月23日9時0分0秒からにおいの測定が開始されたことを示す。分析結果要素は、においデータに含まれるデバイスIDと、ターゲット品目データと、規定の期間における分析結果とを含む。分析結果要素52は、2023年9月23日9時0分0秒から2023年9月23日9時30分0秒までの期間におけるバナナの各状態に対するマッチ率を示す。分析結果要素53は、2023年9月23日9時30分0秒から2023年9月23日10時0分0秒までの期間におけるバナナの各状態に対するマッチ率を示す。図7の例では、図4に示すフローチャートのステップSt31にて、基準となる時間から30分分のにおいデータ本体が切り出されている。分析結果要素は、図4に示すフローチャートのステップSt35の処理が1度行われると、におい分析電文に1つ追加される。
【0044】
[アラーム動作]
次に、計算装置8からにおい分析電文を受信した監視装置9が、におい分析電文等に基づいて実行するアラーム動作について説明する。監視装置9は、におい分析電文の他、図8に示すアラームレベル管理テーブルと図9に示す貨物管理表とを参照して、必要な場合にアラーム動作を実行する。
【0045】
図8は、実施の形態1に係るバナナに対応するアラームレベル管理テーブルを説明するためのテーブル図である。アラームレベル管理テーブルは、例えば、監視装置9のメモリに格納されてよい。アラームレベル管理テーブルは、貨物6の各状態に対応するアラームレベルを示す。図8に示すバナナに対応するアラームレベル管理テーブルの例では、バナナの各状態に対応するアラームレベルが示されている。バナナの成熟度レベルは、バナナの成熟度を表し、バナナの色がオールグリーンの場合に1であり、色がオールグリーンからダップルへと変化するにつれて1ずつ上がっていく。バナナの色がダップルの場合、成熟度レベルは8となる。アラームレベルは、貨物6の品質に関する警告の強さを表し、レベルが高いほど、警告も強くなる。バナナの例では、バナナの色がオールグリーンで成熟度レベルが1の場合、アラームレベルは0である。バナナの成熟が進み、バナナの色がライトグリーンからハーフグリーンになり、成熟度レベルが3になると、アラームレベルは2となる。更にバナナの成熟が進み、バナナの成熟度レベルが4以上になると、アラームレベルは3となる。なお、アラームレベルは「1」、「2」および「3」で表されているが、これに限定されず、例えばアラームレベルは文字列等で表されてもよい。
【0046】
図9は、実施の形態1に係る貨物管理表を説明するためのテーブル図である。貨物管理表は、例えば、監視装置9のメモリに格納されてよい。貨物管理表は、項目として、コンテナ10を識別するためのコンテナID、当該コンテナIDが付与されたコンテナ10の積載容量(例えば、33.1m)、コンテナ10の種別、コンテナ10を所有する会社名、貨物6の品目、貨物6の積載量(例えば、1000個)、コンテナ10に設置されたにおいセンサ11を識別するためのデバイスIDおよび貨物6のアラームレベルを少なくとも含む。貨物管理表は、上記の項目以外の項目を更に含んでもよい。
【0047】
次に、監視装置9の処理について説明する。図10および図11は、実施の形態1に係る監視装置9の処理のフローチャートである。図10および図11のそれぞれのフローチャートに示す「A」、「B」および「C」は、図10に示すフローチャートと図11に示すフローチャートとの繋がりを表す。
【0048】
監視装置9は、計算装置8からにおい分析電文を受信する(ステップSt60)。
【0049】
監視装置9は、ステップSt60にて受信したにおい分析電文のターゲット品目データから、ターゲット品目を特定する(ステップSt61)。本フローチャートの説明において、ターゲット品目はバナナである。
【0050】
監視装置9は、ステップSt61にて特定したターゲット品目に対応するアラームレベル管理テーブルを読み込む(ステップSt62)。監視装置9は、図8に示したバナナに対応するアラームレベル管理テーブルを読み込む。
【0051】
監視装置9は、ステップSt60にて受信したにおい分析電文に含まれる分析結果要素のうち先頭の分析結果要素に着目する(ステップSt63)。本明細書において、あるデータまたは情報に着目するとは、当該データまたは情報に対して何らかの処理を行えるように抽出して取得することである。先頭の分析結果要素とは、におい分析電文に最も早く追加された分析結果要素である。図7の例では、におい分析電文50に含まれる分析結果要素のうち先頭の分析結果要素は、分析結果要素52であり、分析結果要素52の次の分析結果要素は、分析結果要素53である。
【0052】
監視装置9は、分析結果要素に着目できた場合(ステップSt64;YES)、着目している分析結果要素からバナナの各状態に対するマッチ率を取得する(ステップSt65)。
【0053】
監視装置9は、分析結果要素に着目できなかった場合(ステップSt64;NO)、処理フローを終了する。監視装置9が分析結果要素に着目できない場合とは、後述するステップSt73の処理を繰り返すことで、ステップSt60にて受信したにおい分析電文に含まれる全ての分析結果要素に着目し終えた場合である。
【0054】
監視装置9は、ステップSt65にて取得したバナナの各状態に対するマッチ率に基づいて、ハーフイエロー、グリーンチップ、フルイエロー、スターおよびダップルの少なくとも1つに対するマッチ率が1%以上であるか否かを判定する(ステップSt66)。
【0055】
まず、ハーフイエロー、グリーンチップ、フルイエロー、スターおよびダップルの少なくとも1つに対するマッチ率が1%以上である場合(ステップSt66;YES)について説明する。この場合、監視装置9は、分析の対象となったバナナのアラームレベルが3であると認定する(ステップSt67)。
【0056】
監視装置9は、貨物管理表を参照し、分析の対象となったバナナのアラームレベルを特定する(ステップSt68)。監視装置9は、例えば、におい分析電文に含まれるデバイスIDに基づいて、貨物管理表に記載されているバナナのアラームレベルを特定する。
【0057】
監視装置9は、ステップSt67、後述するステップSt75または後述するステップSt77にて認定したアラームレベルが、ステップSt68にて特定したアラームレベルより高いか否かを判定する(ステップSt69)。
【0058】
監視装置9は、ステップSt67、後述するステップSt75または後述するステップSt77にて認定したアラームレベルが、ステップSt68にて特定したアラームレベルより高くないと判定した場合(ステップSt69;NO)、処理を後述するステップSt73に進める。
【0059】
監視装置9は、ステップSt67、後述するステップSt75または後述するステップSt77にて認定したアラームレベルが、ステップSt68にて特定したアラームレベルより高いと判定した場合(ステップSt69;YES)、アラーム電文を作成する(ステップSt70)。アラーム電文については、図12を参照して後述する。
【0060】
監視装置9は、アラーム動作を実行する(ステップSt71)。アラーム動作とは、例えば、アラームレベルが上がったこと、すなわちバナナの状態に変化があったことを、輸送のオペレータまたは責任者等にメール等で一斉に同報したり、監視装置9が備える不図示の表示装置の表示画面にアラーム電文等を表示したりすることである。または、監視装置9は、アラーム動作として、品質管理システム1とは異なる不図示の他のシステムに通知を行ってもよい。これにより、荷卸し作業等のスケジューリングを関係者もしくは何らかのシステム等が行うことができる。
【0061】
監視装置9は、貨物管理表に記載されている、分析の対象となったバナナのアラームレベルを、ステップSt67、後述するステップSt75または後述するステップSt77にて認定したアラームレベルに書き換える(ステップSt72)。
【0062】
監視装置9は、ステップSt60にて受信したにおい分析電文に含まれる分析結果要素のうち、着目している分析結果要素の次の分析結果要素に着目する(ステップSt73)。そして、監視装置9は、ステップSt64に戻り、処理を繰り返す。
【0063】
次に、ハーフイエロー、グリーンチップ、フルイエロー、スターおよびダップルのそれぞれに対するマッチ率が1%未満である場合(ステップSt66;NO)について説明する。この場合、監視装置9は、ハーフグリーンに対するマッチ率が10%以上であるか否かについて判定する(ステップSt74)。
【0064】
監視装置9は、ハーフグリーンに対するマッチ率が10%以上である場合(ステップSt74;YES)、分析の対象となったバナナのアラームレベルが2であると認定する(ステップSt75)。そして、監視装置9は、処理をステップSt68に進める。
【0065】
監視装置9は、ハーフグリーンに対するマッチ率が10%未満である場合(ステップSt74;NO)、ライトグリーンに対するマッチ率が50%以上であるか否かを判定する(ステップSt76)。
【0066】
監視装置9は、ライトグリーンに対するマッチ率が50%以上である場合(ステップSt76;YES)、分析の対象となったバナナのアラームレベルが1であると認定する(ステップSt77)。そして、監視装置9は、処理をステップSt68に進める。
【0067】
監視装置9は、ライトグリーンに対するマッチ率が50%未満である場合(ステップSt76;NO)、着目している分析結果要素に関して、分析対象となったバナナは異常なしであると認定する(ステップSt78)。そして、監視装置9は、処理をステップSt73に進める。
【0068】
なお、ステップSt66、ステップSt74およびステップSt76のそれぞれにおける判定内容は、貨物6がバナナである場合の一例である。また、監視装置9により認定されるアラームレベルは「1」、「2」、「3」の3段階であったが、これに限定されるものではない。また、図10および図11に示した、アラームレベルの判定のためのバナナの各状態と、各状態に対するマッチ率の閾値とは一例であり、これに限定されない。例えば、ステップSt74では、ハーフグリーンに対するマッチ率が10%以上である場合に、監視装置9はアラームレベルが2であると認定していたが、これに限定するものではない。例えば、監視装置9は、ハーフグリーンおよびライトグリーンの少なくとも1つに対するマッチ率が20%以上である場合に、アラームレベルが2であると認定してもよい。
【0069】
図12は、実施の形態1に係るアラーム電文80の例を説明するための概略図である。アラーム電文80には、コンテナID81、ターゲット品目データ82、日付データ83、アラームレベルデータ84およびマッチ率データ85が含まれる。コンテナID81は、分析対象となったバナナが格納されているコンテナ10のコンテナIDである。ターゲット品目データ82は、ターゲット品目がバナナであることを示す。日付データ83は、におい分析電文に含まれる日付データが示す年月日時分秒から、次の時間だけ進めた年月日時分秒を示す。以下、詳細に説明する。
【0070】
計算装置8は、図4に示すフローチャートのステップSt31にて、規定の期間のにおいデータ本体をにおいデータから切り出した。日付データ83は、におい分析電文に含まれる日付データが示す年月日時分秒から、当該規定の期間を、図10に示すフローチャートのステップSt64の処理に戻った回数だけ進めた場合の年月日時分秒を示す。図7に示すにおい分析電文50を取り上げて具体例を説明する。図7の例では、においデータからにおいデータ本体を切り出す際の規定の期間は、30分である。監視装置9が、におい分析電文50に含まれる分析結果要素53に着目する場合、図10に示すフローチャートのステップSt64の処理に戻った回数は1回である。監視装置9が、におい分析電文50に含まれる分析結果要素53に着目している際にアラーム電文を作成する場合、当該アラーム電文に含まれる日付データは、次の通りである。すなわち、アラーム電文に含まれる日付データは、におい分析電文50に含まれる日付データ51が示す2023年9月23日9時0分0秒から、30分を1回だけ進めた2023年9月23日9時30分0秒を示す。分析結果要素53は、2023年9月23日9時30分0秒から2023年9月23日10時0分0秒におけるバナナの各状態に対するマッチ率を示す。つまり、アラーム電文に含まれる日付データは、アラームレベルが上がった、すなわちバナナの状態に変化が生じた概ねの時刻を示す。
【0071】
アラームレベルデータ84は、監視装置9により認定されたアラームレベルを示す。マッチ率データ85は、着目している分析結果要素が示すバナナの各状態に対するマッチ率を示す。
【0072】
このように、監視装置9は、バナナの状態の分析結果を取得し、バナナの状態に対応するアラームレベルに基づいて、バナナの状態をユーザに通知するためのアラーム動作を実行するか否かを判定する。
【0073】
[要因分析]
次に、監視装置9がアラーム動作を実行した場合に行う、アラームレベルが上がった要因、すなわち異常要因の分析について説明する。監視装置9は、図13に示す測定データと、図14に示すセンシングテーブルとに基づいて、異常要因を分析する。
【0074】
図13は、実施の形態1に係る測定データの例を説明するためのテーブル図である。図13(a)は、温度データと湿度データとを示すテーブル図である。図13(b)は、加速度データを示すテーブル図である。図13(c)は、照度データを示すテーブル図である。図13(d)は、位置情報を示すテーブル図である。各測定データは、計算装置8が各センサから取得する。そして、計算装置8は、監視装置9に各測定データを送信する。
【0075】
なお、実施の形態1において、加速度センサ14は、X軸、Y軸、Z軸という3つの直交する軸に沿った加速度を測定する。なお、加速度の単位はm/sであるとする。また、実施の形態1において、照度センサ15は、硫化カドミウム(以下、「CdS」と称する)を使用した素子によって構成される。照度が低い場合、照度センサ15の抵抗値は高くなる。一方、照度が高い場合、照度センサ15の抵抗値は低くなる。また、位置情報は、経度、緯度および高度を含む。
【0076】
例えば、図13(c)に示すテーブル図から、2023年8月19日の0時18分に、照度センサの抵抗値が低くなっていることが分かる。つまり、この時刻にコンテナ10が開梱されたことが分かる。これにより、例えば、この時刻にコンテナ10がどの輸送拠点付近にいたのか、コンテナ10の位置情報から割り出すこと等ができる。
【0077】
図14は、実施の形態1に係るセンシングテーブルの例を説明するためのテーブル図である。センシングテーブルは、例えば監視装置9のメモリに格納されていてよい。センシングテーブルは、温度データ、湿度データ、照度データおよび加速度データという4つのデータ種別のそれぞれの優先度と閾値とを示す。なお、センシングテーブルから各データ種別の単位は省略されている。監視装置9は、優先度の高い順にデータ種別に着目して異常の有無の分析を行う。なお、優先度が高いとは、優先度の数字が小さいことを意味する。つまり、優先度が1である温度が最も優先度が高く、優先度が4である加速度が最も優先度が低い。また、センシングテーブルに示された各データ種別の閾値の下限値から上限値までの範囲が、各データ種別の正常値の範囲である。照度データのように閾値の上限値が規定されていない場合、下限値以上の範囲が正常値の範囲である。加速度データのように閾値の下限値が規定されていない場合、上限値以下の範囲が正常値の範囲である。監視装置9は、温度データが示す温度が10℃を下回っている場合、または15℃を超えている場合、当該温度データを異常データであると認定する。また、監視装置9は、湿度データが示す湿度が85%を下回っている場合、または90%を超えている場合、当該湿度データを異常データであると認定する。また、監視装置9は、照度データが示す抵抗値が100kΩを下回っている場合、当該照度データを異常データであると認定する。また、監視装置9は、加速度データが示すX軸、Y軸、Z軸のそれぞれの加速度のうちいずれかが20m/sを超えている場合、当該加速度データを異常データであると認定する。なお、これらの閾値は説明のための一例である。また、例えば、照度データの閾値の上限値が規定されていてもよいし、加速度データの閾値の下限値が規定されていてもよい。
【0078】
次に、監視装置9による要因分析の処理について説明する。図15は、実施の形態1に係る監視装置9の処理のフローチャートである。なお、図15に示すフローチャートの開始時点で、監視装置9は、アラーム動作を実行している。言い換えると、アラーム動作の実行が、図15に示すフローチャートの開始のトリガとなる。
【0079】
監視装置9は、センシングテーブルを読み込む(ステップSt90)。監視装置9は、図14に示すセンシングテーブルを読み込む。
【0080】
監視装置9は、ステップSt90で読み込んだセンシングテーブルに記載のデータ種別のうち、優先度が最も高いデータ種別に着目する(ステップSt91)。監視装置9は、温度データに着目する。
【0081】
監視装置9は、着目しているデータ種別について、アラーム動作が行われた日時より以前の特定の期間の測定データを読み込む(ステップSt92)。より正確には、監視装置9は、アラーム電文に含まれる日付データが示す年月日時分秒より以前の特定の期間の測定データを読み込む。特定の期間とは、例えば、1日であってもよいし、1時間であってもよい。図12に示すアラーム電文80を例に挙げて説明する。例えば、監視装置9は、アラーム電文80に含まれる日付データ83が示す2023年9月23日9時30分0秒より以前の、1日分の温度データを読み込む。つまり、監視装置9は、2023年9月22日9時30分0秒から2023年9月23日9時30分0秒までの1日分の温度データを読み込む。
【0082】
監視装置9は、ステップSt90にて読み込んだセンシングテーブルから、着目しているデータ種別の閾値を読み込む(ステップSt93)。
【0083】
監視装置9は、ステップSt92にて読み込んだ特定の期間の測定データのうち、最も早い時刻のデータに着目する(ステップSt94)。最も早い時刻のデータについて、図13(a)に示す温度データと湿度データとのテーブル図のうち、温度データを例に挙げて説明する。図13(a)の例では、温度データのうち最も早い時刻のデータは、2023年8月19日0時0分のデータである。また、2023年8月19日0時0分のデータの次の時刻のデータは、2023年8月19日0時2分のデータである。
【0084】
監視装置9は、着目中のデータは、ステップSt93にて読み込んだ閾値の上限値を超えているか、または下限値を下回っているかを判定する(ステップSt95)。
【0085】
監視装置9は、着目中のデータは、閾値の上限値を超えておらず、かつ下限値を下回っていないと判定した場合(ステップSt95;NO)、後述するステップSt97の処理に進む。
【0086】
監視装置9は、着目中のデータは、閾値の上限値を超えている、または下限値を下回っていると判定した場合(ステップSt95;YES)、着目中のデータを異常データとして抽出する(ステップSt96)。
【0087】
監視装置9は、ステップSt92にて取得した特定の期間における全ての時刻のデータについて着目完了したか否かを判定する(ステップSt97)。言い換えると、監視装置9は、ステップSt92にて取得した特定の期間における全ての時刻のデータについて、閾値に基づいた異常か否かの判定を完了したか否かを判定する。
【0088】
監視装置9は、ステップSt92にて取得した特定の期間における全ての時刻のデータについて着目完了していないと判定した場合(ステップSt97;NO)、着目しているデータの次の時刻のデータに着目する(ステップSt98)。そして、監視装置9は、ステップSt95に戻り、処理を繰り返す。
【0089】
監視装置9は、ステップSt92にて取得した特定の期間における全ての時刻のデータについて着目完了したと判定した場合(ステップSt97;YES)、センシングテーブルに含まれる全てのデータ種別に着目したか否かを判定する(ステップSt99)。
【0090】
監視装置9は、センシングテーブルに含まれる全てのデータ種別に着目していないと判定した場合(ステップSt99;NO)、現在着目しているデータ種別の優先度よりも優先度が1つ下のデータ種別に着目する(ステップSt100)。図14に示すセンシングテーブルが示す通り、例えば、温度データよりも優先度が1つ下のデータ種別は湿度データである。そして、監視装置9は、ステップSt92に戻り、処理を繰り返す。
【0091】
監視装置9は、センシングテーブルに含まれる全てのデータ種別に着目したと判定した場合(ステップSt99;YES)、要因電文を作成して、ユーザに通知する(ステップSt101)。そして、監視装置9は、本処理フローを終了する。ユーザへの通知の方法は特に限定されるものではなく、例えばメールの送信であってもよいし、表示装置による表示等であってもよい。要因電文については、図16を参照して後述する。
【0092】
図16は、実施の形態1に係る要因電文の例を説明するための概略図である。図16には、要因電文110の他、異常要因の発生とアラーム動作との時系列を説明するための概略図120が示されている。
【0093】
要因電文110には、コンテナID111、ターゲット品目データ112およびアラームレベルデータ113が含まれる。これらのデータは、アラーム電文に含まれるデータがそのまま要因電文110へと追加されたものである。要因電文110は更に、図15に示すフローチャートのステップSt96にて抽出した異常データが含まれる。図16の例では、要因電文110には、異常データ114、異常データ115および異常データ116が含まれる。異常データ114は、温度についての異常データである。異常データ115は、加速度についての異常データである。異常データ116は、照度についての異常データである。なお、異常データが1つも抽出されていない場合、要因電文には異常データが含まれない。
【0094】
概略図120には、湿度変化を表すグラフ121と、温度変化を表すグラフ122と、加速度の変化を表すグラフ123と、照度の変化を表すグラフ124とが含まれる。また、概略図120には、各グラフが表す測定データの変化の時系列を説明するための日付が記されている。
【0095】
輸送されているバナナの色は、8月19日の時刻P1まではオールグリーンであったが、時刻P1にライトグリーンとなった。この情報は、においの測定と分析によって得られる。また、バナナの成熟が進んだことにより、監視装置9によりアラームレベルが1と認定され、アラーム電文が作成される。そして、監視装置9は、時刻P1より以前の特定の期間の各種の測定データを取得し、要因分析を行い、異常データ114、異常データ115および異常データ116を抽出する。概略図120からも、グラフ122、グラフ123およびグラフ124のそれぞれが、異常データ114、異常データ115、異常データ116のそれぞれが示す時刻付近で大きく変動していることが分かる。監視装置9は、要因電文110に基づいて、次のような判断を行うことができる。すなわち、監視装置9は、8月18日の20時頃にコンテナ10に何らかの衝撃が加えられ、安全確認のために19日の0時頃に輸送中のコンテナ10が開かれ、それによりコンテナ10内の温度が上昇し、その温度上昇の影響で、バナナの成熟が進行した、と判断できる。なお、監視装置9によるコンテナ10に何らかの衝撃が加えられたという判断は、加速度の異常に基づき、コンテナ10が開かれたという判断は、照度の異常に基づき、温度が上昇したという判断は、温度の異常に基づく。
【0096】
[アクションの実行]
監視装置9は、要因分析の後、アラームレベルと異常要因に基づいて、バナナの状態の変化、すなわちバナナの品質異常の可能性に対するアクションを実行する。監視装置9は、図17に示す貨物輸送先管理テーブルと、図18に示す輸送先別許容レベル管理テーブルと、図19に示す輸送拠点管理テーブルとに基づいて、品質管理のための対策アクションを実行する。
【0097】
図17は、実施の形態1に係る貨物輸送先管理テーブルの例を説明するためのテーブル図である。貨物輸送先管理テーブルは、例えば、監視装置9のメモリに格納されていてよい。貨物輸送先管理テーブルは、項目として、コンテナID、当該コンテナIDが付与されたコンテナ10の輸送先、当該輸送先の種別、当該輸送先の住所および当該輸送先への到着予測日時を含む。以下、到着予測日時のことを、到着予定日時と称することがある。
【0098】
図18は、実施の形態1に係る輸送先別許容レベル管理テーブルの例を説明するためのテーブル図である。輸送先別許容レベル管理テーブルは、例えば、監視装置9のメモリに格納されていてよい。輸送先別許容レベル管理テーブルは、輸送先の種別に応じて決められた、許容されるバナナの成熟度レベルを示す。図18の例では、輸送先の種別がスーパーマーケットである場合、成熟度レベルが2までのバナナが許容される。つまり、スーパーマーケットは、成熟度レベルが2までのバナナ、すなわち色がオールグリーンまたはライトグリーンのバナナのみ受け入れる。また、輸送先の種別が製菓メーカである場合、成熟度レベルが5までのバナナが許容される。説明を簡単にするため、図18に示す輸送先別許容レベル管理テーブルには、スーパーマーケットおよび製菓メーカの例のみ示している。なお、図18に示す輸送先別許容レベル管理テーブルは、貨物6がバナナの場合のテーブルであり、貨物6の品目に対応したテーブルが用意されていてよい。
【0099】
図19は、実施の形態1に係る輸送拠点管理テーブルの例を説明するためのテーブル図である。輸送拠点管理テーブルは、例えば、監視装置9のメモリに格納されていてよい。輸送拠点管理テーブルは、項目として、輸送を担当する業者、言い換えると輸送拠点を識別するための業者ID、当該業者名、当該業者の緯度および経度、当該業者の住所、当該業者の担当者の連絡先および当該業者の評価を含む。業者の評価とは、例えば、図19の例のように、「8」、「9」および「10」等の数字によって決められてよい。実施の形態1では、数字が大きければ大きいほど、高評価であるとする。また、評価に用いられる数字は10が最大であるものとする。
【0100】
図20および図21を参照して、監視装置9による品質管理のための対策アクション実行処理について説明する。図20および図21は、実施の形態1に係る監視装置の処理のフローチャートである。図20および図21のそれぞれのフローチャートに示す「D」および「E」は、図20に示すフローチャートと図21に示すフローチャートとの繋がりを表す。なお、図20に示すフローチャートの開始時点で、要因電文が監視装置9により作成されている。言い換えると、要因電文が作成されることが、本処理フローの開始のトリガとなる。
【0101】
監視装置9は、作成した要因電文を読み出す(ステップSt130)。
【0102】
監視装置9は、ステップSt130で読み出した要因電文に異常データが含まれるか否かを判定する(ステップSt131)。
【0103】
監視装置9は、要因電文に異常データが含まれない場合(ステップSt131;NO)、輸送をキャンセルする指示をユーザまたは輸送のためのシステムに送信し(ステップSt142)、再発注の指示をユーザまたは輸送のためのシステムに送信する(ステップSt143)。そして、監視装置9は、本処理フローを終了する。これは、異常データが含まれていないにもかかわらずアラームレベルが上がったため、監視装置9は、輸送しているバナナが不良品であると判断するためである。輸送のためのシステムとは、例えば、貨物6の受発注を管理するシステム等である。監視装置9は、再発注の指示を送信する際、例えば、コンテナIDに基づいて、貨物管理表から再発注する貨物6の積載品目と積載量とを取得し、貨物輸送先管理テーブルから輸送をキャンセルした貨物6の輸送先を取得する。そして、監視装置9は、輸送をキャンセルした貨物6と同一の品目を、同一の数量だけ同一の輸送先に対して再輸送する旨の指示を、受発注を管理するシステム等へ送信する。
【0104】
監視装置9は、要因電文に異常データが含まれる場合(ステップSt131;YES)、異常要因が温度または湿度であるか否かを判定する(ステップSt132)。つまり、監視装置9は、異常データに温度データ、湿度データまたはその両方が含まれるか否かを判定する。
【0105】
監視装置9は、異常要因が温度または湿度であると判定した場合(ステップSt132;YES)、コンテナ10内のエアーコンディショナを制御する(ステップSt133)。そして、監視装置9は、処理を後述するステップSt134に進める。
【0106】
監視装置9は、異常要因が温度または湿度ではないと判定した場合(ステップSt132;NO)、言い換えると、異常要因は加速度または照度であると判定した場合、処理を後述するステップSt135に進める。
【0107】
監視装置9は、異常要因に加速度または照度が含まれるか否かを判定する(ステップSt134)。
【0108】
監視装置9は、異常要因に加速度または照度が含まれないと判定した場合(ステップSt134;NO)、処理を後述するステップSt137に進める。
【0109】
監視装置9は、異常要因に加速度または照度が含まれると判定した場合(ステップSt134;YES)、異常データの時刻の位置情報を取得する(ステップSt135)。
【0110】
監視装置9は、ステップSt135にて取得した位置情報の緯度と経度とが示す位置に近い輸送拠点が、輸送拠点管理テーブルに含まれているか否かを判定する(ステップSt136)。
【0111】
監視装置9は、ステップSt135にて取得した位置情報の緯度と経度とが示す位置に近い輸送拠点が、輸送拠点管理テーブルに含まれていないと判定した場合(ステップSt136;NO)、処理を後述するステップSt139に進める。
【0112】
監視装置9は、ステップSt135にて取得した位置情報の緯度と経度とが示す位置に近い輸送拠点が、輸送拠点管理テーブルに含まれていると判定した場合(ステップSt136;YES)、当該輸送拠点の担当者に、異常発生の日時とその要因を通知する(ステップSt137)。または、監視装置9は、ステップSt134にて異常要因に加速度または照度が含まれないと判定した場合、コンテナ10のエアーコンディショナの設定を行った輸送拠点の担当者に、異常発生の日時とその要因を通知する(ステップSt137)。
【0113】
監視装置9は、ステップSt137にて異常発生の日時とその要因を通知した先の輸送拠点の評価を下げ、輸送拠点管理テーブルに反映させる(ステップSt138)。
【0114】
監視装置9は、ステップSt130にて読み出した要因電文が示すアラームレベルが、レベル1、レベル2またはレベル3のうちいずれであるかを判定する(ステップSt139)。
【0115】
監視装置9は、アラームレベルが1である場合(ステップSt139;レベル1)、本処理フローを終了する。これは、アラームレベルが1である場合、監視装置9は、バナナの品質に問題は無いと判断するためである。
【0116】
監視装置9は、アラームレベルが2である場合(ステップSt139;レベル2)、バナナの輸送先の入れ替え処理を実行する(ステップSt140)。詳細は、図22を参照して後述する。
【0117】
監視装置9は、バナナの輸送先の入れ替えに成功した場合、または入れ替えが不要である場合(ステップSt141;YES)、本処理フローを終了する。
【0118】
監視装置9は、バナナの輸送先の入れ替えに失敗した場合(ステップSt141;NO)、輸送をキャンセルする指示をユーザまたは輸送のためのシステムに送信し(ステップSt142)、再発注の指示をユーザまたは輸送のためのシステムに送信する(ステップSt143)。そして、監視装置9は、本処理フローを終了する。
【0119】
監視装置9は、アラームレベルが3である場合(ステップSt139;レベル3)、輸送をキャンセルする指示をユーザまたは輸送のためのシステムに送信し(ステップSt142)、再発注の指示をユーザまたは輸送のためのシステムに送信する(ステップSt143)。そして、監視装置9は、本処理フローを終了する。
【0120】
図22を参照して、監視装置9によるバナナの輸送先の入れ替え処理について説明する。図22は、実施の形態1に係る監視装置の処理のフローチャートである。
【0121】
監視装置9は、入れ替え対象のバナナのコンテナIDに基づいて、貨物輸送先管理テーブルから当該バナナの輸送先種別を取得する(ステップSt150)。図23を参照して、具体例と共に説明する。図23は、実施の形態1に係る輸送先の入れ替えの例を説明するための概略図である。図23の例では、コンテナIDが「2847469」のバナナが、入れ替え対象、すなわちアラームレベルが2のバナナである。また、入れ替え対象のバナナの輸送先種別は、スーパーマーケットである。図23の例では、コンテナIDが「2847469」のバナナの輸送先と、コンテナIDが「837498233」のバナナの輸送先とが入れ替えられる。
【0122】
監視装置9は、ステップSt150にて取得したバナナの輸送先種別に基づいて、バナナに関する輸送先別許容レベル管理テーブルから、当該輸送先種別が許容するバナナの成熟度レベルを取得する(ステップSt151)。入れ替え対象のバナナの輸送先種別は、スーパーマーケットである。図18の例に示すように、スーパーマーケットが許容するバナナの成熟度レベルは2である。入れ替え対象のバナナのアラームレベルは2であるから、当該バナナの現在の成熟度レベルは3であり、その色はハーフグリーンである。現在の成熟度レベルとは、より正確には、アラーム検知日時、すなわちアラーム電文の日付データが示す日時における成熟度レベルである。
【0123】
監視装置9は、コンテナIDに基づいて、貨物輸送先管理テーブルから入れ替え対象のバナナの到着予測日時を取得する(ステップSt152)。図23の例では、入れ替え対象のバナナの到着予測日時は、2023年8月20日15時0分である。
【0124】
監視装置9は、公知の技術により、入れ替え対象のバナナの到着予測日時における色と、当該バナナの現在の成熟度レベルが現在の成熟度レベルよりも高い各成熟度レベルへと上がるそれぞれの日数とを予測する(ステップSt153)。図23の例では、監視装置9は、2023年8月20日15時0分における、入れ替え対象のバナナの色を予測する。更に、監視装置9は、入れ替え対象のバナナの現在の色、すなわちハーフグリーンが、ハーフイエロー、グリーンチップ、フルイエロー、スターおよびダップルのそれぞれに変化するまでの日数を予測する。監視装置9は、例えば、バナナのにおいデータ、においデータ取得日時、収穫日、温度データ、湿度データおよび当該バナナの色を用いて、特定の温度および湿度の下、収穫後何日目にバナナの色が何色になっているかを予測する学習済みモデルを予め生成していてよい。監視装置9は、当該学習済みモデルににおいデータを入力することで、当該においデータの元となったバナナの色の予測と、当該バナナが指定の色に変化するまでの日数の予測とをさせることができる。
【0125】
説明の便宜上、入れ替え対象のバナナの2023年8月20日15時0分における成熟度レベルは3であり、色はハーフグリーンであると予測されたとする。また、入れ替え対象のバナナの現在の色であるハーフグリーンは、4日後にグリーンチップへと変化すると予測されたとする。アラーム検知日は2023年8月19日であるから、入れ替え対象のバナナの色は、2023年8月23日にはグリーンチップとなっている。
【0126】
監視装置9は、入れ替え対象のバナナの輸送先が許容する成熟度レベルは、バナナが当該輸送先に到着する日時における成熟度レベル以上か否かを判定する(ステップSt154)。
【0127】
監視装置9は、入れ替え対象のバナナの輸送先が許容する成熟度レベルが、バナナが当該輸送先に到着する日時における成熟度レベル以上であると判定した場合(ステップSt154;YES)、入れ替えが不要であると判断して、本処理フローを終了する。
【0128】
監視装置9は、入れ替え対象のバナナの輸送先が許容する成熟度レベルが、バナナが当該輸送先に到着する日時における成熟度レベル未満であると判定した場合(ステップSt154;NO)、処理をステップSt155へと進める。図23の例では、入れ替え対象のバナナの輸送先、すなわちスーパーマーケットが許容する成熟度レベルは2である。つまり、スーパーマーケットが許容するバナナの色はライトグリーンである。ステップSt153にて予測された通り、入れ替え対象のバナナがスーパーマーケットに到着する日時における色はハーフグリーンであり、成熟度レベルは3である。したがって、監視装置9は、入れ替え対象のバナナの輸送先が許容する成熟度レベルが、バナナが当該輸送先に到着する日時における成熟度レベル未満であると判定し、処理をステップSt155へと進める。
【0129】
監視装置9は、貨物管理表を参照して、入れ替え対象の貨物6と同一品目かつ同一積載量の貨物を格納したコンテナがあるか否かを判定する(ステップSt155)。
【0130】
監視装置9は、貨物管理表を参照して、入れ替え対象の貨物6と同一品目かつ同一積載量の貨物を格納したコンテナが無いと判定した場合(ステップSt155;NO)、入れ替え失敗と判断して、本処理フローを終了する。
【0131】
監視装置9は、貨物管理表を参照して、入れ替え対象の貨物6と同一品目かつ同一積載量の貨物を格納したコンテナがあると判定した場合(ステップSt155;YES)、当該コンテナの輸送先を、貨物6の輸送先の候補として選定し、処理をステップSt156へと進める。説明の便宜上、監視装置9は、貨物管理表を参照して、コンテナIDが「837498233」のコンテナが、バナナを入れ替え対象のバナナと同じだけ積載していると判定したとする。このとき、監視装置9は、コンテナIDが「837498233」のコンテナの輸送先である「CakeMaker」を輸送先の候補として選定する。
【0132】
監視装置9は、貨物輸送先管理テーブルを参照して、輸送先の候補が入れ替え条件を満たすか否かを判定する(ステップSt156)。つまり、監視装置9は、コンテナIDが「837498233」のコンテナの輸送先である「CakeMaker」が、入れ替え条件を満たすか否かを判定する。入れ替え条件とは、例えば、以下の(A1)から(A4)の4つである。
【0133】
(A1)輸送先の候補が許容する成熟度レベルが、入れ替え対象のバナナを当該輸送先の候補に輸送した場合の到着予測日時における、入れ替え対象のバナナの成熟度レベル以上であること。
【0134】
(A2)輸送先の候補に輸送予定のバナナを入れ替え対象のバナナの輸送先に輸送した場合の到着予測日時における、輸送先の候補に輸送される予定だったバナナの成熟度レベルが、入れ替え対象のバナナの輸送先が許容する成熟度レベル以下であること。
【0135】
(A3)入れ替え対象のバナナを輸送先の候補に輸送した場合の到着予測日時が、アラーム検知日時に、入れ替え対象のバナナの色が輸送先の候補が許容するバナナの色に変化するまでの日数を加えた日時よりも前であること。
【0136】
(A4)(A1)から(A3)の3つの条件を満たす輸送先の候補のうち、輸送先の候補に輸送予定のバナナを入れ替え対象のバナナの輸送先に輸送した場合の到着予測日時が最も早い輸送先であること。
【0137】
(A1)の条件は、例えば、入れ替え対象のバナナを「CakeMaker」へ輸送したとしても、当該バナナが「CakeMaker」に到着した時点で、「CakeMaker」が当該バナナを受け入れられない程度まで当該バナナの成熟が進んでいることを避けるための条件である。
【0138】
(A2)の条件は、例えば、「CakeMaker」に輸送予定のバナナを「SuperX」へ輸送したとしても、当該バナナが「SuperX」に到着した時点で、「SuperX」が当該バナナを受け入れられない程度まで当該バナナの成熟が進んでいることを避けるための条件である。
【0139】
(A3)の条件は、例えば、以下のような場合を避けるための条件である。
【0140】
ステップSt153にて、入れ替え対象のバナナの現在の色であるハーフグリーンが、「CakeMaker」が許容する色であるグリーンチップに変化するまでの日数は4日であると予測された。すなわち、アラーム検知日が2023年8月19日であるため、入れ替え対象のバナナは、2023年8月23日にはグリーンチップに変化している。入れ替え対象のバナナを「CakeMaker」に輸送したとしても、当該バナナが「CakeMaker」に8月23日よりも後に到着した場合、当該バナナの成熟が進み、「CakeMaker」が当該バナナを受け入れられない場合がある。このような場合を避けるために、入れ替え対象のバナナを輸送先の候補に輸送した場合の到着予測日時が、アラーム検知日時に、入れ替え対象のバナナの色が輸送先の候補が許容するバナナの色に変化するまでの日数を加えた日時よりも前であることが求められる。なお、説明を簡単にするため、日時のうち時刻は省略している。
【0141】
(A4)の条件は、監視装置9が、ステップSt155にて輸送先の候補を複数箇所選定した場合に、輸送先の候補を1つに絞るための条件である。
【0142】
なお、監視装置9は、輸送先の候補が入れ替え条件を満たすか否かの判定のために、ステップSt153にて用いた公知の技術、例えば、予め生成した学習済みモデルを用いてよい。
【0143】
監視装置9は、輸送先の候補が入れ替え条件を満たさないと判定した場合(ステップSt156;NO)、入れ替え失敗と判断して、本処理フローを終了する。
【0144】
監視装置9は、輸送先の候補が入れ替え条件を満たすと判定した場合(ステップSt156;YES)、貨物輸送先管理テーブルを修正する(ステップSt157)。そして、監視装置9は、入れ替え成功と判断して、本処理フローを終了する。図23の例では、監視装置9は、貨物輸送先管理テーブルでコンテナID「2847469」とコンテナID「837498233」とが入れ替えられるように修正する。また、図23の例では、到着予測日時は修正されていない。つまり、各貨物は本来の到着予測日時通りに輸送される。このように、貨物6の輸送先の入れ替えを行ったとしても、各貨物の到着予測日時の変更が生じないことが好ましい。また、監視装置9による貨物輸送先管理テーブルの修正が行われることで、ユーザまたは輸送のためのシステム等に、貨物6の輸送先の入れ替えの指示が送信されてよい。このように、監視装置9は、アラーム動作が実行された場合に、貨物6の異常の要因を分析し、アラームレベルと異常要因とに基づいてアクションを実行する。監視装置9は、アクションとして、例えば、貨物6の輸送先の変更、貨物6の再発注または異常要因の通知等を実行する。ここで、貨物6の輸送先の変更とは、貨物6の輸送先と他の貨物の輸送先との入れ替え、貨物6の輸送のキャンセルおよび貨物6の出荷業者への返品等を含む。
【0145】
(実施の形態1の変形例)
上記の実施の形態1では、コンテナ10に格納される貨物6がバナナである例を説明した。しかしこれに限定するものではなく、貨物6はモータサイクルであってもよい。この場合、アラームレベル管理テーブルと輸送先別許容レベル管理テーブルとは、例えば、それぞれ図24図25のようになる。
【0146】
図24は、実施の形態1の変形例に係るオイルに対応するアラームレベル管理テーブルを説明するためのテーブル図である。貨物6がモータサイクルである場合、モータサイクルのオイルのにおいの有無に基づいてアラームレベルが規定される。オイルのにおいが無い場合、すなわち、オイルが漏れていない場合、においの程度を示すにおいレベルは0であり、アラームレベルは0である。一方、オイルのにおいが有る場合、すなわち、オイルが漏れている場合、においレベルは1であり、アラームレベルは1である。
【0147】
図25は、実施の形態1の変形例に係る輸送先別許容レベル管理テーブルの例を説明するためのテーブル図である。貨物6がモータサイクルである場合、輸送先種別が個人輸入者である場合は、においレベルが0のみが許容される。一方、輸送先種別がディーラまたはメーカ等の個人輸入者以外である場合は、においレベルが1であっても許容される。これは、ディーラまたはメーカは、オイルが漏れていたとしても、自分たちで修理できるためである。
【0148】
図26は、実施の形態1の変形例に係るアラーム動作と異常発生との時系列を説明するための概略図である。図26に示す概略図160には、湿度変化を表すグラフ161と、温度変化を表すグラフ162と、加速度の変化を表すグラフ163と、照度の変化を表すグラフ164とが含まれる。また、概略図160には、各グラフが表す測定データの変化の時系列を説明するための日付が記されている。なお、説明の便宜上、日付のみ表示し、時刻は省略している。
【0149】
輸送されているモータサイクルのオイルは、日時P2の時点で漏れ、においセンサ11によってオイルのにおいが測定される。計算装置8は、においデータに基づいて、オイルのにおい有りと分析する。また、監視装置9は、アラームレベルを1と認定し、アラーム電文を作成する。そして、監視装置9は、日時P2より以前の特定の期間の各種の測定データを取得し、要因分析を行う。監視装置9は、要因分析により、8月8日にコンテナ10に何らかの衝撃が加えられ、その衝撃によってモータサイクルのオイルが漏れたと判断できる。
【0150】
(実施の形態1のまとめ)
以上の実施の形態1の記載により、少なくとも以下の技術が開示される。なお、括弧内には、実施の形態1において対応する構成要素等を例示しているが、これに限定されるものではない。
【0151】
(技術1)
品質管理システム(例えば、品質管理システム1)は、貨物(例えば、貨物6)が格納されたコンテナ(例えば、コンテナ10)内のにおいに基づいて貨物の品質を管理する品質管理システムであって、コンテナ内のにおいを測定してにおいデータ(例えば、においデータ40)を生成するにおいセンサ(例えば、においセンサ11)を少なくとも含み、コンテナ内の状態を測定して測定データを生成する複数のセンサと、においデータに基づいて貨物の状態を分析する計算装置(例えば、計算装置8)と、貨物の状態の分析結果に対応するアラームレベルに基づいて、貨物の状態を通知するアラーム動作を実行するか否かを判定し、アラーム動作を実行した場合に、測定データと測定データに対応する閾値とに基づいて異常要因を分析し、アラームレベルと異常要因とに基づいてアクションを実行する監視装置(例えば、監視装置9)と、を備える。
【0152】
これにより、品質管理システムは、貨物のにおいに基づいて、貨物の状態を分析することができる。また、品質管理システムは、分析した貨物の状態に基づいて、アラーム動作を実行することができる。これにより、輸送関係者等のユーザは、輸送中の貨物の品質に異常が発生している可能性があることを確認できる。また、品質管理システムは、コンテナ内の状態に関する測定データに基づいて、貨物に発生している可能性がある異常の要因を分析できる。また、品質管理システムは、分析した異常要因と貨物のアラームレベルとに基づいて、品質管理のためのアクションを実行できる。このように、においに基づいて、貨物の状態を分析することで、コンテナを開梱することなく、貨物の品質を管理することができる。また、コンテナの開梱が必要無いため、コンテナの数が多い場合でも、品質管理システムにより貨物の品質を管理することができる。
【0153】
(技術2)
技術1に記載の品質管理システムにおいて、品質管理システムは、においセンサに空気を送り込むポンプ(例えば、ポンプ3)を更に備え、ポンプは、コンテナ内の空気と新鮮空気とを規定の時間間隔で交互ににおいセンサに送り、においセンサは、貨物のにおいと新鮮空気のにおいとを規定の時間間隔で交互に測定する。
【0154】
これにより、においセンサに付着した貨物のにおい成分を定期的に除去できるので、においセンサによるにおいの測定の精度が悪くなることを避けることができる。
【0155】
(技術3)
技術1または2に記載の品質管理システムにおいて、監視装置は、第1貨物の第1輸送先への到着予定日時に基づいて、当該到着予定日時における第1貨物の状態を予測し、当該予測結果と貨物の輸送先毎に規定された貨物の状態の許容範囲とに基づいて、第1貨物の第1輸送先への輸送可否を判定する。
【0156】
これにより、監視装置は、第1貨物の第1輸送先への到着予定日時における状態を予測することができる。また、監視装置は、輸送先毎に規定された貨物の状態の許容範囲に基づいて、第1貨物を第1輸送先へ輸送できないと判定することができる。
【0157】
(技術4)
技術3に記載の品質管理システムにおいて、監視装置は、第1貨物を第1輸送先へ輸送できないと判定した場合、第1貨物の輸送先の変更または再発注を実行する。
【0158】
これにより、監視装置は、輸送先毎に規定された貨物の状態の許容範囲に基づいて、第1貨物を第1輸送先へ輸送できないと判定した場合、例えば、第1貨物の輸送先の入れ替え、輸送のキャンセル、返品または再発注を実行することができる。
【0159】
(技術5)
技術4に記載の品質管理システムにおいて、監視装置は、第1貨物の輸送先を変更する場合、輸送先の候補を第2輸送先として選定し、第1貨物を第2輸送先に輸送した場合の到着予定日時を予測し、当該到着予定日時における第1貨物の状態を予測し、当該予測結果と許容範囲とに基づいて、第1貨物を第2輸送先に輸送可能であると判定し、かつ、第2輸送先に輸送予定の第2貨物を第1輸送先へ輸送した場合の到着予定日時を予測し、当該到着予定日時における第2貨物の状態を予測し、当該予測結果と許容範囲とに基づいて、第2貨物を第1輸送先に輸送可能であると判定した場合、第1貨物の第1輸送先と第2貨物の第2輸送先とを入れ替える。
【0160】
これにより、監視装置は、第1貨物の輸送先を、第1輸送先から第2輸送先へと変更し、第2貨物の輸送先を、第2輸送先から第1輸送先へと入れ替えることができる。
【0161】
(技術6)
技術4に記載の品質管理システムにおいて、監視装置は、輸送先の候補を複数箇所選定し、複数の候補それぞれに輸送予定の貨物を第1輸送先へ輸送した場合のそれぞれの到着予定日時を予測し、複数の候補のうち予測された到着予定日時が最も早い候補を、第1輸送先と入れ替える。
【0162】
これにより、監視装置は、第1貨物の輸送先の入れ替えのための複数の輸送先の候補を1つに絞ることができる。
【0163】
(技術7)
技術5に記載の品質管理システムにおいて、第2貨物の品目および積載量は、第1貨物の品目および積載量とそれぞれ同一である。
【0164】
これにより、監視装置は、同一品目かつ同一積載量の貨物を格納したコンテナの輸送先を入れ替えることができる。
【0165】
(技術8)
技術1から7のいずれか1つに記載の品質管理システムにおいて、アクションは、貨物の輸送先の変更を含む。
【0166】
これにより、品質管理システムは、貨物の品質管理のために、貨物の輸送先を変更することができる。つまり、品質管理システムは、例えば、貨物の輸送先の入れ替え、輸送のキャンセルまたは返品ができる。
【0167】
(技術9)
技術1から8のいずれか1つに記載の品質管理システムにおいて、アクションは、貨物の再発注を含む。
【0168】
これにより、品質管理システムは、貨物の品質管理のために、貨物を再発注することができる。
【0169】
(技術10)
技術1から9のいずれか1つに記載の品質管理システムにおいて、アクションは、異常要因の通知を含む。
【0170】
これにより、品質管理システムは、貨物の品質管理のために、貨物に発生している可能性がある異常の要因を、輸送関係者等に通知することができる。
【0171】
(技術11)
技術1から10のいずれか1つに記載の品質管理システムにおいて、複数のセンサは、湿度センサ(例えば、湿度センサ13)、温度センサ(温度センサ12)、加速度センサ(加速度センサ14)、照度センサ(照度センサ15)およびGPSセンサ(GPSセンサ16)を含み、測定データは、コンテナ内の湿度データ、温度データおよび照度データと、コンテナの加速度データおよび位置情報とを含む。
【0172】
これにより、品質管理システムは、コンテナ内の温度データ、湿度データおよび照度データと、コンテナの加速度データおよび位置情報とに基づいて、貨物に発生している可能性がある異常の要因を分析できる。
【0173】
(技術12)
技術1から11のいずれか1つに記載の品質管理システムにおいて、監視装置は、アラーム動作を実行した時刻に基づいて、特定の期間における測定データを取得する。
【0174】
これにより、監視装置は、異常が発生したと考えられる期間の測定データを取得することができる。
【0175】
(技術13)
貨物が格納されたコンテナ内のにおいに基づいて貨物の品質を管理する品質管理方法は、コンテナ内のにおいを測定してにおいデータを生成し、コンテナ内の状態を測定して測定データを生成し、においデータに基づいて貨物の状態を分析し、貨物の状態の分析結果に対応するアラームレベルに基づいて、貨物の状態を通知するアラーム動作を実行するか否かを判定し、アラーム動作を実行した場合に、測定データと測定データに対応する閾値とに基づいて異常要因を分析し、アラームレベルと異常要因とに基づいてアクションを実行する。
【0176】
これにより、品質管理方法は、技術1と同様の効果を得ることができる。
【0177】
上述した実施の形態の機能は、上述した実施の形態の機能を実現するためのプログラムおよびアプリケーションを、ネットワークまたは記憶媒体などを用いてシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。
【0178】
また、上述した実施の形態の機能は、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、Application Specific Integrated Circuit(以下、「ASIC」と称する)、またはFPGA)によって実現してもよい。
【0179】
以上、図面を参照しながら本開示に係る実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本開示は、品質管理システムおよび品質管理方法として有用である。
【符号の説明】
【0181】
1 品質管理システム
2 センサモジュール
3 ポンプ
4 電源装置
5 通信装置
6 貨物
7 ネットワーク
8 計算装置
9 監視装置
10 コンテナ
11 においセンサ
12 温度センサ
13 湿度センサ
14 加速度センサ
15 照度センサ
16 GPSセンサ
17 トラクタ
18 コンテナ船
40 においデータ
50 におい分析電文
80 アラーム電文
110 要因電文
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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