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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105130
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/534 20060101AFI20250703BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20250703BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
A61F13/534 200
A61F13/53 100
A61F13/539
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223452
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 広嗣
(72)【発明者】
【氏名】槇 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】小泉 桂人
(72)【発明者】
【氏名】米澤 時希
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA14
3B200BA16
3B200BB03
3B200BB17
3B200CA02
3B200CA11
3B200DB14
3B200DB18
(57)【要約】
【課題】接着剤の染み出しを抑制しつつSAPが崩れ難い吸収体を提供する。
【解決手段】高吸収性ポリマー(SAP)を含む吸収層(21)と、吸収層(21)の厚さ方向における一方側に配置されたコアラップシート(25)と、を有する吸収性物品(1)であって、コアラップシート(25)の厚さ方向における他方側の面には、帯状の接着剤が設けられており、帯状の接着剤の平均幅は、高吸収性ポリマー(SAP)の平均粒径よりも小さく、コアラップシート(25)の他方側の面のうち、幅方向において吸収層(21)の最も外側の端(21e)よりも外側に位置する領域を外側領域(OR)とし、外側の端(21e)よりも内側に位置する領域を内側領域(IR)としたとき、外側領域(OR)における、単位面積当たりの、接着剤同士の交点の数は、内側領域(IR)における、単位面積当たりの、接着剤同士の交点の数よりも少ない。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開状態において、互いに直交する長手方向、幅方向、及び、厚さ方向を有し、
高吸収性ポリマーを含む吸収層と、前記吸収層の前記厚さ方向における一方側に配置されたコアラップシートと、を有する吸収性物品であって、
前記コアラップシートの前記厚さ方向における他方側の面には、帯状の接着剤が設けられており、
前記帯状の接着剤の平均幅は、前記高吸収性ポリマーの平均粒径よりも小さく、
前記コアラップシートの前記他方側の面のうち、前記幅方向において前記吸収層の最も外側の端よりも外側に位置する領域を外側領域とし、
前記コアラップシートの前記他方側の面のうち、前記幅方向における前記吸収層の最も外側の端よりも内側に位置する領域を内側領域としたとき、
前記外側領域における、単位面積当たりの、前記帯状の接着剤同士の交点の数は、
前記内側領域における、単位面積当たりの、前記帯状の接着剤同士の交点の数よりも少ない、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記帯状の接着剤同士の交点間距離の最小値は、膨潤したときの前記高吸収性ポリマーの平均粒径よりも小さい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項2に記載の吸収性物品であって、
前記帯状の接着剤同士の交点間距離の最小値は、膨潤していないときの前記高吸収性ポリマーの平均粒径よりも小さい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収層の厚さは、前記高吸収性ポリマーの平均粒径の1.5倍よりも大きい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項4に記載の吸収性物品であって、
前記吸収層の前記厚さ方向における中央位置に前記帯状の接着剤の少なくとも一部が存在している、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1~3の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記コアラップシートに前記高吸収性ポリマーを固定するための接着剤の残留応力が2KPa以上、20KPa以下である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項1~3の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収層の前記厚さ方向の他方側に、中間シートを有し、
前記中間シートの前記厚さ方向における一方側の面に、帯状の接着剤が設けられており、
前記コアラップシートの前記他方側の面に設けられた前記帯状の接着剤の平均幅は、
前記中間シートの前記一方側の面に設けられた前記帯状の接着剤の平均幅よりも小さい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1~3の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収層の前記厚さ方向の他方側に、中間シートを有し、
前記中間シートの前記厚さ方向における一方側の面に、帯状の接着剤が設けられており、
前記コアラップシートの前記他方側の面に設けられた前記帯状の接着剤の平均幅は、
前記中間シートの前記一方側の面に設けられた前記帯状の接着剤の平均幅よりも大きい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項1~3の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収層は、前記幅方向において所定の幅を有する領域であって、周囲よりも坪量の低くなった低坪量領域を有する、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
請求項9に記載の吸収性物品であって、
前記低坪量領域の平均坪量は、前記吸収層のうち前記低坪量領域以外の領域の平均坪量の0%より大きく、50%以下である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項11】
請求項10に記載の吸収性物品であって、
前記帯状の接着剤同士の交点間距離の最小値は、前記低坪量領域の幅よりも小さい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
請求項11に記載の吸収性物品であって、
前記吸収層の前記厚さ方向の他方側に、中間シートを有し、
前記低坪量領域において、前記コアラップシートと前記中間シートとが前記厚さ方向に接合されている部分を有する、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項13】
請求項1~3の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収層及び前記コアラップシートを備えた吸収体を有し、
前記吸収体の前記長手方向における前側及び後側の端部に、前記高吸収性ポリマーが設けられていない間欠領域を有する、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項14】
請求項13に記載の吸収性物品であって、
前記吸収体の前記長手方向における中央位置よりも前側における前記高吸収性ポリマーの平均坪量は、
前記吸収体の前記長手方向における中央位置よりも後側における前記高吸収性ポリマーの平均坪量よりも小さい、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項15】
請求項13に記載の吸収性物品であって、
前記吸収体の前記長手方向における中央位置よりも前側における前記高吸収性ポリマーの平均坪量は、
前記吸収体の前記長手方向における中央位置よりも後側における前記高吸収性ポリマーの平均坪量以上である、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項16】
請求項1~3の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記高吸収性ポリマー、及び、液体吸収性繊維を含んだ第2吸収層が、前記厚さ方向において前記吸収層と積層して設けられている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項17】
請求項16に記載の吸収性物品であって、
前記第2吸収層は、前記吸収層よりも前記他方側に配置されている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項18】
請求項16に記載の吸収性物品であって、
前記第2吸収層は、前記吸収層よりも前記一方側に配置されている、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項19】
請求項1~3の何れか1項に記載の吸収性物品であって、
前記コアラップシートは、不織布によって構成されている、ことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の高吸収性ポリマー(SAP)粒子を基材シート(コアラップシート)で包含することでシート状に形成した、所謂SAPシートを備えた吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、横断方向及び長手方向に延在し、SAP等の吸収性材料をコアラップに封入し、実質的に平面状に形成された吸収性コア(SAPシート)に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-518813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなSAPシートでは、従来、コアラップシートの内側の表面に塗工した接着剤によって、包含される多数のSAP粒子を固定して平面状に形成することが一般的であった。しかしながら、多数のSAP粒子のうち、コアラップシートの表面と対向していない粒子には接着剤が行きわたり難く、SAP粒子の位置ズレによってSAPシートの型崩れが生じやすくなっていた。一方、コアラップシートに塗工される接着剤の量を多くしてSAP粒子の位置ズレを抑制しようとすると、コアラップシートの外側に接着剤が染み出してしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、接着剤の染み出しを抑制しつつSAPが崩れ難い吸収体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、展開状態において、互いに直交する長手方向、幅方向、及び、厚さ方向を有し、高吸収性ポリマーを含む吸収層と、前記吸収層の前記厚さ方向における一方側に配置されたコアラップシートと、を有する吸収性物品であって、前記コアラップシートの前記厚さ方向における他方側の面には、帯状の接着剤が設けられており、前記帯状の接着剤の平均幅は、前記高吸収性ポリマーの平均粒径よりも小さく、前記コアラップシートの前記他方側の面のうち、前記幅方向において前記吸収層の最も外側の端よりも外側に位置する領域を外側領域とし、前記コアラップシートの前記他方側の面のうち、前記幅方向における前記吸収層の最も外側の端よりも内側に位置する領域を内側領域としたとき、前記外側領域における、単位面積当たりの、前記帯状の接着剤同士の交点の数は、前記内側領域における、単位面積当たりの、前記帯状の接着剤同士の交点の数よりも少ない、ことを特徴とする吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接着剤の染み出しを抑制しつつSAPが崩れ難い吸収体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】おむつ1の概略斜視図である。
図2】展開且つ伸長状態のおむつ1を肌側から見た平面図である。
図3図2の中央線CLでの概略断面図である。
図4】吸収体20の断面模式図である。
図5】吸収性コア21~23を重ね合わせた平面図である。
図6】吸収体20を形成する吸収性体形成装置100の一部を模式的に示す図である。
図7図7A及び図7Bは、第1接着剤吐出機構140の構成について説明する図である。
図8】第2接着剤吐出機構150の構成について説明する図である。
図9】コアラップシート25において、SAP粒子及び接着剤が設けられる領域について説明する平面図である。
図10】内側領域IRにおいてコアラップシート25の肌側面の一部を40倍に拡大して撮像した写真である。
図11】外側領域ORにおいてコアラップシート25の肌側面の一部を40倍に拡大して撮像した写真である。
図12】SAPの粒径分布の測定結果の一例である。
図13】一方側吸収層21の変形例を示した吸収体20の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
展開状態において、互いに直交する長手方向、幅方向、及び、厚さ方向を有し、高吸収性ポリマーを含む吸収層と、前記吸収層の前記厚さ方向における一方側に配置されたコアラップシートと、を有する吸収性物品であって、前記コアラップシートの前記厚さ方向における他方側の面には、帯状の接着剤が設けられており、前記帯状の接着剤の平均幅は、前記高吸収性ポリマーの平均粒径よりも小さく、前記コアラップシートの前記他方側の面のうち、前記幅方向において前記吸収層の最も外側の端よりも外側に位置する領域を外側領域とし、前記コアラップシートの前記他方側の面のうち、前記幅方向における前記吸収層の最も外側の端よりも内側に位置する領域を内側領域としたとき、前記外側領域における、単位面積当たりの、前記帯状の接着剤同士の交点の数は、前記内側領域における、単位面積当たりの、前記帯状の接着剤同士の交点の数よりも少ない、ことを特徴とする吸収性物品。
【0010】
態様1の吸収性物品によれば、SAP粒径よりも細い幅で帯状の接着剤が設けられているため、接着剤がSAP粒子同士の隙間に入り込みやすく、SAP粒子同士が固定されて型崩れが抑制される。また、コアラップシートにおいて、SAP粒子が配置されていない幅方向の外側領域では、SAP粒子が配置されている幅方向の内側領域よりも接着剤同士の交点数が少なくなるように接着剤の塗工密度を下げることで、接着剤の染み出しが抑制される。
【0011】
(態様2)
前記帯状の接着剤同士の交点間距離の最小値は、膨潤したときの前記高吸収性ポリマーの平均粒径よりも小さい、態様1に記載の吸収性物品。
【0012】
態様2の吸収性物品によれば、使用時に排泄液を吸収してSAP粒子が膨潤したばあいであっても、帯状の接着剤の網目からSAP粒子がはみ出し難くなる。これにより、吸収層(一方側吸収層)が崩れ難くなる。
【0013】
(態様3)
前記帯状の接着剤同士の交点間距離の最小値は、膨潤していないときの前記高吸収性ポリマーの平均粒径よりも小さい、態様1または2に記載の吸収性物品。
【0014】
態様3の吸収性物品によれば、使用前においても、多数の帯状の接着剤が交差して形成される網目からSAP粒子がはみ出し難くなる。例えば、吸収性物品の流通過程でSAPの位置ズレが生じて使用前に吸収層(吸収性コア)が崩れてしまうこと等が抑制される。
【0015】
(態様4)
前記吸収層の厚さは、前記高吸収性ポリマーの平均粒径の1.5倍よりも大きい、態様1~3の何れかに記載の吸収性物品。
【0016】
態様4の吸収性物品によれば、吸収層(吸収性コア)において、少なくともSAP粒子が1.5層よりも多く積層されていることによって、SAP粒子が平面状に並んだ単層の吸収性コアである場合と比較して、吸水性や保水性を向上させることができる。
【0017】
(態様5)
前記吸収層の前記厚さ方向における中央位置に前記帯状の接着剤の少なくとも一部が存在している、態様1~4の何れかに記載の吸収性物品。
【0018】
態様5の吸収性物品によれば、吸収層の内部まで接着剤が浸透していることにより、SAP粒子同士の位置ずれが生じ難く、吸収層(吸収性コア)を崩れ難くすることができる。
【0019】
(態様6)
前記コアラップシートに前記高吸収性ポリマーを固定するための接着剤の残留応力が2KPa以上、20KPa以下である、態様1~5の何れかに記載の吸収性物品。
【0020】
態様6の吸収性物品によれば、SAP粒子を固定する接着剤が、外力等が加わってもSAP粒子をコアラップシート(基材シート)から脱落させない程度の抵抗力(残留応力)を備えていることにより、SAP粒子の固定率が40%以上となる確率が高くなり、吸収層(吸収性コア)を崩れ難くすることができる。
【0021】
(態様7)
前記吸収層の前記厚さ方向の他方側に、中間シートを有し、前記中間シートの前記厚さ方向における一方側の面に、帯状の接着剤が設けられており、前記コアラップシートの前記他方側の面に設けられた前記帯状の接着剤の平均幅は、前記中間シートの前記一方側の面に設けられた前記帯状の接着剤の平均幅よりも小さい、態様1~6の何れかに記載の吸収性物品。
【0022】
態様7の吸収性物品によれば、コアラップシートの肌側(他方側)の面に接着剤が過度に塗工されないため、コアラップシートの非肌側に接着剤が染み出してしまうことが抑制される。一方、中間シートの非肌側(一方側)の面に接着剤が多めに設けられていれば、その分SAP粒子に向かって吐出された接着剤の量も多かったということであるから、SAP粒子同士がより強固に固定され、吸収層(吸収性コア)の型崩れを抑制することができる。
【0023】
(態様8)
前記吸収層の前記厚さ方向の他方側に、中間シートを有し、前記中間シートの前記厚さ方向における一方側の面に、帯状の接着剤が設けられており、前記コアラップシートの前記他方側の面に設けられた前記帯状の接着剤の平均幅は、前記中間シートの前記一方側の面に設けられた前記帯状の接着剤の平均幅よりも大きい、態様1~6の何れかに記載の吸収性物品。
【0024】
態様8の吸収性物品によれば、中間シートに設けられる接着剤の量が少なくなるため、該中間シートにおいて排泄液が厚さ方向へ移動することが阻害され難くなる。これにより、中間シートの厚さ方向の非肌側(一方側)に設けられた吸収層へ排泄液等をスムーズに移行させやすくすることができる。
【0025】
(態様9)
前記吸収層は、前記幅方向において所定の幅を有する領域であって、周囲よりも坪量の低くなった低坪量領域を有する、態様1~8の何れかに記載の吸収性物品。
【0026】
態様9の吸収性物品によれば、低坪量領域では他の領域よりも排泄液が吸収され難く、該低坪量領域に沿って排泄液が拡散されやすくなる。したがって、吸収性物品の着用時に着用者が座姿勢を取る等によって吸収層を厚さ方向に圧縮するような力が作用するような場合であっても、吸収層の内部まで排泄液を引き込みやすくすることができる。
【0027】
(態様10)
前記低坪量領域の平均坪量は、前記吸収層のうち前記低坪量領域以外の領域の平均坪量の0%より大きく、50%以下である、態様1~9の何れかに記載の吸収性物品。
【0028】
態様10の吸収性物品によれば、低坪量領域における平均坪量を、他の領域の平均坪量の50%以下とすることにより、50%よりも大きい場合と比較して、平均坪量の差が大きくなり、該低坪量領域に沿って排泄液等の液体を移動させやすくすることができる。また、低坪量領域における平均坪量が0%よりも大きければ、少なくとも低坪量領域の全体がスリットとしとして構成されてしまうことが抑制され、低坪量領域の強度が確保されやすくなる。
【0029】
(態様11)
前記帯状の接着剤同士の交点間距離の最小値は、前記低坪量領域の幅よりも小さい、態様1~10の何れかに記載の吸収性物品。
【0030】
態様11の吸収性物品によれば、低坪量領域の両側端部の間に接着剤同士の交点が少なくとも1以上設けられるため、剛性の低い低坪量領域においてSAP粒子が固定されやすくなる。また、低坪量領域の両側端部に接着剤が存在する可能性が高くなる。したがって、吸収層(吸収性コア)において低坪量領域が崩れたり潰れたりしてしまうことが抑制される。
【0031】
(態様12)
前記吸収層の前記厚さ方向の他方側に、中間シートを有し、前記低坪量領域において、前記コアラップシートと前記中間シートとが前記厚さ方向に接合されている部分を有する、態様1~11の何れかに記載の吸収性物品。
【0032】
態様12の吸収性物品によれば、低坪量領域が設けられている部分の少なくとも一部でコアラップシートと中間シートとが接合されていれば、低坪量領域を跨いでSAP粒子が移動してしまうことが抑制される。すなわち、低坪量領域によって分割された吸収層(吸収性コア)の各々が独立して形状を維持しやすくなる。したがって、吸収層(吸収性コア)の全体として型崩れを生じ難くなる。
【0033】
(態様13)
前記吸収層及び前記コアラップシートを備えた吸収体を有し、前記吸収体の前記長手方向における前側及び後側の端部に、前記高吸収性ポリマーが設けられていない間欠領域を有する、態様1~12の何れかに記載の吸収性物品。
【0034】
態様13の吸収性物品によれば、間欠領域にはSAP粒子が配置されていないため、コアラップシートが、厚さ方向に対向して配置されている部材(例えば、中間シート等)と直接接合されやすくなる。これにより、吸収層(吸収性コア)を構成しているSAP粒子が前後方向の両端側へ飛び出し難くなり、吸収層が型崩れを生じ難くなる。
【0035】
(態様14)
前記吸収体の前記長手方向における中央位置よりも前側における前記高吸収性ポリマーの平均坪量は、前記吸収体の前記長手方向における中央位置よりも後側における前記高吸収性ポリマーの平均坪量よりも小さい、態様1~13の何れかに記載の吸収性物品。
【0036】
態様14の吸収性物品によれば、着用時に着用者の排泄口の近くに位置する長手方向前側の領域においてSAP粒子の平均坪量を大きくすることで、尿等の排泄液を速やかに吸収しやすくなり、腹側における尿漏れを抑制することができる。
【0037】
(態様15)
前記吸収体の前記長手方向における中央位置よりも前側における前記高吸収性ポリマーの平均坪量は、前記吸収体の前記長手方向における中央位置よりも後側における前記高吸収性ポリマーの平均坪量以上である、態様1~13の何れかに記載の吸収性物品。
【0038】
態様15の吸収性物品によれば、着用時において、着用者の背側(臀部側)に位置する長手方向後側の領域においてSAP粒子の平均坪量を大きくすることで、尿等の排泄液が臀部を伝って背側に回り込んで、背側上端部から外側に漏出してしまうことを抑制することができる。
【0039】
(態様16)
前記高吸収性ポリマー、及び、液体吸収性繊維を含んだ第2吸収層が、前記厚さ方向において前記吸収層と積層して設けられている、態様1~15の何れかに記載の吸収性物品。
【0040】
態様16の吸収性物品によれば、吸収性コアが2層以上の積層構造(吸収層及び第2吸収層)を有していることにより、吸収性コアが1層のみの場合と比較して、吸水性や保水容量が向上する。
【0041】
(態様17)
前記第2吸収層は、前記吸収層よりも前記他方側に配置されている、態様1~16の何れかに記載の吸収性物品。
【0042】
態様17の吸収性物品によれば、SAP粒子よりも吸水速度が速い液体吸収性繊維を含んだ第2吸収層が厚さ方向の肌側(他方側)に配置されていることにより、排泄液が肌側から非肌側へ速やかに引き込まれて、非肌側に配置されている吸収層にて保持されやすくなる。これにより、肌側ではDRY性が向上し、着用者に違和感や不快感を生じ難くさせることができる。
【0043】
(態様18)
前記第2吸収層は、前記吸収層よりも前記一方側に配置されている、態様1~16の何れかに記載の吸収性物品。
【0044】
態様18の吸収性物品によれば、液体吸収性繊維よりも保水性の高いSAP粒子を含んだ吸収層が厚さ方向の非肌側(一方側)に配置されていることにより、肌側における保水性が高められ、リウェットを生じ難くすることができる。したがって、着用者に違和感や不快感を生じ難くさせることができる。
【0045】
(態様19)
前記コアラップシートは、不織布によって構成されている、態様1~18の何れかに記載の吸収性物品。
【0046】
態様19の吸収性物品によれば、不織布を基材シートとしてMD方向に搬送しながら接着剤を塗工したりSAP粒子を積層させたりする際に、不織布からなる基材シートが破れ難いことから、安定した形状の吸収体(吸収性コア)を形成することができる。また、サクション機構等により、基材シートを吸引しながら搬送すれば、SAP粒子を基材シート上に固定させやすくすることができる。
【0047】
(態様20)
互いに直交する長手方向と幅方向と厚さ方向とを有し、基材シートと、前記基材シートに積層された高吸収性ポリマーとを有する吸収体であって、前記高吸収性ポリマーの坪量が周囲よりも高い高坪量領域を有し、前記高坪量領域は、前記厚さ方向における最大厚みとなる点が前記長手方向及び前記幅方向に間欠的に位置するよう配置され、前記最大厚みは、3mm以内であり、隣接する前記最大厚みとなる点同士の間隔は、前記最大厚みの5倍以下であることを特徴とする、吸収体。
【0048】
態様20によれば、厚さ方向における最大厚みとなる点が長手方向及び幅方向に間欠的に位置するように高坪量領域が配置され、各々の高坪量領域の周囲に低坪量領域が形成される。吸収体は、低坪量領域が折れ起点となることで、着用者の身体の凹凸に沿って変形し易くなり、フィット性が向上する。また、吸収体の最大厚みが3mm以内であり、隣接する最大厚みとなる点同士の間隔が最大厚みの5倍以下であることにより、吸収体の薄さを保ちつつ、多数の高坪量領域及び低坪量領域を配置することができる。したがって、態様20によれば、高吸収性ポリマーを有する吸収体において、薄さを保ちつつ、着用時のフィット性を向上させることができる。
【0049】
(態様21)
態様20に記載の吸収体であって、前記最大厚みは、2mm以内であり、隣接する前記最大厚みとなる点同士の間隔は、前記最大厚みの4倍以下であることを特徴とする、吸収体。
【0050】
態様20によれば、高吸収性ポリマーを有する吸収体において、より薄さを保ちつつ、着用時のフィット性を向上させることができる。
【0051】
(態様22)
態様20に記載の吸収体であって、前記高坪量領域は、前記高吸収性ポリマー以外の繊維状材料を含まないことを特徴とする、吸収体。
【0052】
態様22によれば、繊維状材料を含んだ吸収体と比較してより薄型の吸収体を形成することができる。
【0053】
(態様23)
態様20に記載の吸収体であって、平面視において、複数の前記高坪量領域の各々に外接する外接円の直径は、2mm以上4mm以下であることを特徴とする、吸収体。
【0054】
態様23によれば、複数の高坪量領域の各々の平面視におけるサイズを小さくすることにより、多数の高坪量領域及び低坪量領域を基材シートに配置することができ、吸収体が着用者の身体の凹凸に沿って変形し易くなり、フィット性を向上させることができる。
【0055】
(態様24)
態様20に記載の吸収体であって、隣接する前記最大厚みとなる点同士の間で前記高吸収性ポリマーが積層された低坪量積層領域と、別の隣接する前記最大厚みとなる点同士の間で前記高吸収性ポリマーがない非積層領域とを有することを特徴とする、吸収体。
【0056】
態様24によれば、折れ起点となる低坪量領域として、排泄液を吸収保持することができる低坪量積層領域と、高吸収性ポリマーがないことでより折れ曲がり易くなる非積層領域とを有する。したがって、低坪量領域であっても、着用者の身体の凹凸に沿った変形し易さと、排泄液の吸収保持力とを両立することができる。
【0057】
(態様25)
態様24に記載の吸収体であって、前記低坪量積層領域は、前記長手方向及び前記幅方向に間欠的に配置され、前記非積層領域は、前記長手方向及び前記幅方向に間欠的に配置されることを特徴とする、吸収体。
【0058】
態様25によれば、低坪量積層領域と非積層領域とを平面的にまばらに配置することにより、着用者の身体の凹凸に沿った変形し易さと、排泄液の吸収保持力とを、平面的に拡がりを持って有することができる。
【0059】
(態様26)
態様25に記載の吸収体であって、平面視において、複数の前記非積層領域の各々に内接する内接円の直径のうち、最大の直径は、前記最大厚み以下であることを特徴とする、吸収体。
【0060】
態様26によれば、高吸収性ポリマーがない非積層領域の平面視におけるサイズを小さくすることにより、非積層領域を介した排泄液の漏れを抑制できる。
【0061】
(態様27)
態様26に記載の吸収体であって、前記低坪量積層領域の数は、前記長手方向に三等分した各領域で異なる、又は、前記非積層領域の数は、前記長手方向に三等分した各領域で異なることを特徴とする、吸収体。
【0062】
態様27によれば、低坪量積層領域と非積層領域とを平面的にランダムに配置することにより、吸収体が着用者の身体の凹凸に沿って変形し易くなり、フィット性を向上させることができる。
【0063】
(態様28)
態様25に記載の吸収体であって、前記最大厚みとなる点のうち、前記幅方向の一方側又は他方側に前記非積層領域が隣接して位置する点の数は、前記長手方向の一方側又は他方側に前記非積層領域が隣接して位置する点の数より多いことを特徴とする、吸収体。
【0064】
態様28によれば、吸収体が膨潤状態の際に幅方向の柔軟性が失われることを抑制することができる。
【0065】
(態様29)
態様20に記載の吸収体であって、前記基材シートとの間で前記高吸収性ポリマーを挟むように位置する別のシートを有し、隣接する前記最大厚みとなる点同士の間で前記基材シートと前記別のシートとが接合されている接合領域と、別の隣接する前記最大厚みとなる点同士の間で前記基材シートと前記別のシートとが接合されていない非接合領域とを有することを特徴とする、吸収体。
【0066】
態様29によれば、折れ起点となる接合領域と、基材シートと別のシートとの間で高吸収性ポリマーを配置することができる非接合領域とを有することで、着用者の身体の凹凸に沿った変形し易さと、排泄液の吸収保持力とを両立することができる。
【0067】
(態様30)
態様20に記載の吸収体であって、前記基材シートの一方の面側の前記厚さ方向における最高点と最低点との差分と、前記基材シートの他方の面側の前記差分とが異なることを特徴とする、吸収体。
【0068】
態様30によれば、目的に応じた特性を有する吸収体を形成することができる。
【0069】
(態様31)
態様30に記載の吸収体であって、前記基材シートの一方の面側において、隣接する前記最大厚みとなる点同士の間で前記高吸収性ポリマーが存在しない非積層領域を有し、平面視において、複数の前記非積層領域の各々に内接する内接円の直径のうち、最大の直径は、前記一方の面側の前記差分以下である、ことを特徴とする、吸収体。
【0070】
態様31によれば、高吸収性ポリマーがない非積層領域の平面視におけるサイズを小さくすることにより、非積層領域を介した排泄液の漏れを抑制できる。
【0071】
(態様32)
態様30に記載の吸収体であって、前記基材シートの一方の面側において、前記最高点よりも下方に積層される前記高吸収性ポリマーの重量は、前記基材シート全体に積層される前記高吸収性ポリマーの重量の50%以上であることを特徴とする、吸収体。
【0072】
態様32によれば、高吸収性ポリマーの所望の重量を基材シートの凹部領域に積層させることで、適切な位置に高坪量領域を形成することができる。
【0073】
(態様33)
態様30に記載の吸収体であって、前記最高点と前記最低点との中間位置よりも下方の領域を凹部領域としたとき、平面視において、複数の前記凹部領域の中心を前記長手方向に沿って通る仮想線上における、前記複数の凹部領域の長さの合計は、前記基材シート全体の長さの50%以上であることを特徴とする、吸収体。
【0074】
態様33によれば、高吸収性ポリマーを基材シートの所望の領域に積層させることで、適切な位置に高坪量領域と低坪量領域とを形成することができる。
【0075】
(態様34)
態様30に記載の吸収体であって、前記最高点と前記最低点の中間位置よりも下方の領域を凹部領域としたとき、平面視において、複数の前記凹部領域の中心を前記幅方向に沿って通る仮想線上において、前記複数の凹部領域の長さの合計は、前記基材シート全体の長さの50%以上であることを特徴とする、吸収体。
【0076】
態様34によれば、高吸収性ポリマーを基材シートの所望の領域に積層させることで、適切な位置に高坪量領域と低坪量領域とを形成することができる。
【0077】
===実施形態===
本発明に係る吸収性物品として、乳幼児用のパンツ型使い捨ておむつ1(以下、「おむつ1」とも呼ぶ)を例に挙げて説明する。ただし、本発明に係る吸収性物品には、テープ型使い捨ておむつ、ショーツ型ナプキン、吸収パッド、生理用ナプキンやその他の吸収性物品も含まれる。また、吸収性物品の着用者は、乳幼児に限らず、大人又は動物等の生物であってもよい。
【0078】
<おむつ1の構成>
図1は、おむつ1の概略斜視図である。図2は、展開且つ伸長状態のおむつ1を肌側から見た平面図である。図3は、図2の中央線CLでの概略断面図である。おむつ1の「伸長状態」とは、おむつ1全体を皺なく伸長させた状態、具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば、後述する吸収性本体10や胴回り部30、40等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸長させた状態のことを言う。おむつ1の「展開状態」とは、おむつ1の両側部に設けられている一対のサイド接合部2を分離して、おむつ1を開いて平面的に展開した状態である。
【0079】
おむつ1は、互いに直交する上下方向と幅方向と前後方向とを有し、胴回り開口部BHと一対の脚回り開口部LHとを有している。上下方向の上側が胴回り開口部BH側に対応し、下側が股下側に対応する。前後方向の前側が着用者の腹側に対応し、後側が着用者の背側に対応する。幅方向は、前側胴回り部30及び後側胴回り部40の糸ゴム33、43の伸縮方向に沿った方向である。上下方向は、伸縮方向に直交する直交方向に沿った方向である。
【0080】
おむつ1は、液吸収性の吸収性本体10と、一対の胴回り部30,40とを有する所謂3ピースタイプのパンツ型おむつである。一対の胴回り部のうち、着用者の腹側部を覆うものを前側胴回り部30とも称し、着用者の背側部を覆う後側胴回り部40とも称す。
【0081】
図2の展開状態において、おむつ1は、互いに直交する長手方向、幅方向、及び、厚さ方向を有する。長手方向は、吸収性本体10の長手方向に沿い、且つ、パンツ型のおむつ1の上下方向に沿う方向である。厚さ方向は、図3に示すように、おむつ1を構成する資材が積層された方向である。厚さ方向において着用者の肌と接する側を肌側とし、その反対側を非肌側とする。また、展開状態において、前側胴回り部30と後側胴回り部40とが互いに長手方向に間隔をあけて平行に並んだ状態で、これらの間に吸収性本体10が掛け渡されつつ、吸収性本体10の長手方向の各端部がそれぞれ最寄りの胴回り部30,40の肌側に接合固定されており、外観形状は平面視略H形状をなす。そして、この状態から、吸収性本体10の長手方向の中央線CLにて二つ折りされる。この二つ折りの状態において、互いに対向する前側胴回り部30と後側胴回り部40とが、幅方向両側の側部にて接合・連結され、一対のサイド接合部2が形成される。なお、サイド接合部2は、溶着や接着等の公知の接合手段によって形成されている。
【0082】
吸収性本体10は、吸収体20(詳細は後述)と、吸収体20よりも肌側に配置された液透過性のトップシート12と、吸収体20よりも非肌側に配置されたバックシート13とを有する。バックシート13は、液不透過性シート13aと、その非肌側に配された疎水性の外装シート13bと、の二層構造である。但し、吸収性本体10が、これ以外のシート部材を備えていても良い。例えば、トップシート12と吸収体20との厚さ方向の間に、セカンドシート(不図示)を備えていてもよい。
【0083】
吸収性本体10の幅方向の両側部には、吸収性本体10の長手方向に沿って一対の防漏壁部15が設けられている。図3では、幅方向において、外装シート13bの一部が吸収体20の両端よりも外側に延出しつつ、肌側に複数個所で折り曲げられることによって、一対の防漏壁部15が形成される。防漏壁部15の先端部には、糸ゴム等の防漏壁弾性部材16が吸収性本体10の長手方向に沿って伸長した状態で取り付けられ、防漏壁部15が肌側に起立可能に構成されている。また、吸収性本体10の幅方向の両側部には、糸ゴム等の脚回り弾性部材17が吸収性本体10の長手方向に沿って伸長した状態で取り付けられている。
【0084】
前側胴回り部30及び後側胴回り部40は、それぞれ、肌側シート31,41と、非肌側シート32,42と、複数の糸ゴム等の胴回り弾性部材33,43とを有する。複数の胴回り弾性部材33,43は、肌側シート31,41と非肌側シート32,42の間に、上下方向に並んで配置されるとともに、幅方向に伸長した状態で取り付けられている。胴回り弾性部材33,43の伸縮性によって、前側胴回り部30及び後側胴回り部40は、着用者の胴回りにフィットする。また、吸収性本体10の上端部を肌側から覆うように、カバーシート34,44が設けられていてもよい。カバーシート34,44によって、吸収性本体10の口開き等を抑制できる。
【0085】
また、図2に示すように、展開かつ伸長状態における前側胴回り部30と後側胴回り部40の平面形状は異なる。前側胴回り部30は、上下方向の長さがサイド接合部2と概ね同じ長さであり、幅方向に長い長方形状である。後側胴回り部40は、前側胴回り部30と重なる長方形状の部位と、それよりも下側に延出する略台形形状の部位40Eとを有する。該延出する部位40Eによって着用者の臀部を被覆できる。
【0086】
以上、おむつ1の基本構成を説明したが、上記構成は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、前側胴回り部30と後側胴回り部40が連続した1つの部材で形成されていたり、前側胴回り部30と後側胴回り部40を繋ぐ股下部の外装部材が設けられていたりしてもよい。また、胴回り弾性部材33,43等の弾性部材が、糸ゴムではなく、シート状の弾性部材であってもよい。
【0087】
<吸収体20について>
図4は、吸収体20の断面模式図である。図5は、吸収性コア21~23を重ね合わせた平面図である。なお、図4では、厚さ方向における一方側を非肌側とし、厚さ方向における他方側を肌側としている。
【0088】
図4に示すように、吸収体20は、厚さ方向において、一方側(非肌側)に設けられたコアラップシート25と他方側(肌側)に設けられたコアラップシート24との間に、吸収性コア21~23及び中間シート26を有する。吸収性コア21~23は、尿等の排泄液を吸収して保持する部材であり、液体吸収性繊維201、及び、高吸収性ポリマーを含む。液体吸収性繊維201、及び、高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer:以下、SAPとも称す)は、吸収性物品の吸収性コアとして使用可能なものであれば特に制限されない。例えば、液体吸収性繊維201としては、木材パルプ繊維や、バガス、ケナフ、竹、麻、綿等の非木材パルプ繊維、レーヨン繊維等の再生セルロース繊維、アセテート繊維等の半合成繊維等を例示できる。SAPとしては、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系の高分子吸収剤を例示できる。また、コアラップシート24,25、及び、中間シート26は、液透過性のシートであり、ティッシュや不織布等を例示できる。
【0089】
吸収性コア21~23は、厚さ方向の一方側(非肌側)から他方側(肌側)に向かって順に、一方側吸収層21と、中間吸収層22と、他方側吸収層23とを有する。一方側吸収層21及び他方側吸収層23は、SAPの占める体積が液体吸収性繊維201の占める体積よりも大きい層である。中間吸収層22は、液体吸収性繊維201の占める体積がSAPの占める体積よりも大きい層である。図4では、他方側吸収層23と中間吸収層22とが厚さ方向に隣接するように一体的に形成されているのに対して、一方側吸収層21は、中間シート26によって中間吸収層22及び他方側吸収層23とは離間して設けられている。また、図4では、一体的に形成された他方側吸収層23及び中間吸収層22のうち、他方側吸収層23は主にSAPによって構成され、中間吸収層22は主に液体吸収性繊維201によって構成されている。すなわち、他方側吸収層23と中間吸収層22とがそれぞれ異なる種類の層として構成されている。これに対して、SAPと液体吸収性繊維201とが均一に混合された状態で中間吸収層22及び他方側吸収層23が構成されるのであっても良い。すなわち、中間吸収層22と他方側吸収層23とが同じ種類の層として形成されていても良い。
【0090】
一方側吸収層21は、図5に示されるような平面視略矩形状に形成されており、周囲に比べて、吸収性コアの坪量(すなわち液体吸収性繊維201及びSAPの合計坪量:g/m)が低い低坪量領域211を有する。図5では、幅方向において中心位置CWを挟んで両側に、2つの低坪量領域211,211が長手方向に沿って設けられている。この低坪量領域211,211によって、一方側吸収層21は3つの分割領域21a~21cに分割されている。一方側吸収層21に低坪量領域211が設けられていることによって、尿等の排泄液が一方側吸収層21の厚さ方向及び長手方向に移動しやすくなり、一方側吸収層21の広範囲で排泄液等の液体をSAPに保持しやすくなる。
【0091】
なお、低坪量領域211は、一方側吸収層21を厚さ方向に貫通するスリットとしても良い。この場合、泄液等の液体を低坪量領域211の広範囲に亘って効率的に拡散させやすくすることができる。但し、一方側吸収層21の低坪量領域211に液体吸収性繊維201やSAPが存在していてもよい。また、一方側吸収層21の一部が厚さ方向に凹んだ低坪量領域211であってもよい。
【0092】
中間吸収層22及び他方側吸収層23は、一体化して形成されたものであり、同じ平面形状を成す。本実施形態においては、図5に示されるように、長手方向の中央部において、幅方向の内側に括れた括れ部222,232を備えた略砂時計形状に形成されている。また、図5では、一方側吸収層21の一部が、中間吸収層22及び他方側吸収層23の括れ部222,232よりも幅方向の外側に延出している。このような構成であれば、括れ部222,232によって着用者が脚を開閉した際の違和感を軽減しつつ、幅の狭い中間吸収層22及び他方側吸収層23の括れ部222,232の外側にSAPを配することができる。これにより、着用者の股下部におけるフィット性を向上させつつ排泄液の横漏れを抑制できる。
【0093】
一方側吸収層21と同様に、中間吸収層22と他方側吸収層23の少なくとも一方は、周囲に比べて、吸収性コアの坪量(液体吸収性繊維201及びSAPの合計坪量:g/m)が低い低坪量領域を有することが好ましい。本実施形態の吸収体20は、図4に示すように、中間吸収層22と他方側吸収層23の両方が低坪量領域221,231を有する。着用者がおむつ1に排泄し、肌側に設けられた他方側吸収層23が排泄液を受けた時、排泄液は、低坪量領域231から吸収体20の内部(中間吸収層22)に素早く引き込まれる。中間吸収層22では、SAPに比べて液体の吸収速度が速い液体吸収性繊維201の体積占有率が高いため、低坪量領域231から中間吸収層22に移行した排泄液は、中間吸収層22に素早く一時吸収される。また、他方側吸収層23では、液体の吸収速度が遅いSAPの体積占有率が高い。そのため、低坪量領域231以外の他方側吸収層23の領域においても、排泄液は、他方側吸収層23のSAPに吸収される前に、中間吸収層22に移行しやすい。
【0094】
その後、中間吸収層22の液体吸収性繊維201の繊維間に吸収された排泄液は、重力により徐々に一方側吸収層21に移行する。一方側吸収層21ではSAPの体積占有率が高い。そのため、排泄液は一方側吸収層21のSAPにしっかりと吸収保持される。このように、本実施形態の吸収体20では、吸収性コア21~23の肌側から非肌側へ排泄液を素早く引き込んで保持することができる。
【0095】
吸収性コア21~23の各層において、液体吸収性繊維201とSAPがそれぞれ占める体積の比較は、周知の方法で確認できる。例えば、外力が作用していない自然状態且つ乾燥状態のおむつ1において、吸収体20の長手方向の任意の位置、具体的には、3層21~23が積層されている箇所、かつ、製品折り位置から離れた箇所にて、おむつ1(吸収体20)を幅方向に沿って切断する。次に、光学顕微鏡(例:キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX-7000、又はそれと同等のもの)を用いて、切断面を拡大し(例:30~100倍)、撮影する。撮影された断面画像において、液体吸収性繊維201とSAPを識別する。そして、断面画像において、SAPの占める面積が液体吸収性繊維201の占める面積よりも大きい一方側吸収層21と、液体吸収性繊維201の占める面積がSAPの占める面積よりも大きい中間吸収層22と、SAPの占める面積が液体吸収性繊維201の占める面積よりも大きい他方側吸収層23とが、厚さ方向の一方側(非肌側)から順に積層されていることを確認する。上記のことが確認された場合、本実施形態の吸収性コア21~23とする。なお、好ましくは、吸収体20の長手方向の複数箇所の断面画像において、3層21~23が重ねられていることを確認するが望ましい。また、撮影された断面画像に基づいて、一方側吸収層21が低坪量領域211を有することや、低坪量領域211がスリットであることも確認できる。
【0096】
<吸収体20の形成について>
次に、吸収体20の形成方法の概略について説明する。ここでは、吸収体20のうち、主に一方側吸収層21を形成する方法について説明する。図6は、吸収体20を形成する吸収性体形成装置100の一部を模式的に示す図である。吸収性体形成装置100は、基材シートを搬送方向へ搬送する搬送機構110と、基材シートに向けて高吸収性ポリマー(SAP)粒子を供給する粒子供給機構120と、基材シートに向けて接着剤を空気流と共に吐出する第1接着剤吐出機構140~第3接着剤吐出機構160とを有している。
【0097】
また、以下の説明では、基材シートが搬送される搬送方向のことを「MD方向」とも呼び、MD方向と直交する方向(図6において紙面の奥行方向)を「CD方向」とも呼ぶ。本実施形態において、MD方向は、吸収体20の長手方向に沿った方向であり、CD方向は吸収体20の幅方向に沿った方向である。
【0098】
吸収性体形成装置100は、コアラップシート25が長手方向に連続してなるコアラップシート連続体25aを基材シートとしてMD方向に搬送し、当該コアラップシート連続体25a(基材シート)上に高吸収性ポリマー(SAP)粒子を積層させることによって、吸収性コア21(一方側吸収層21)を製造する。
【0099】
搬送機構110は、搬送コンベアや複数の搬送ローラー等を有している。搬送ローラーについては、モータ等の駆動源で駆動回転する駆動ローラーであっても良いし、駆動源が無く従動回転する従動ローラーであっても良い。また、搬送コンベアは、駆動周回する無端ベルトの上面を搬送面とし、当該搬送面に設けられた複数の吸気孔(不図示)で基材シートを吸着しながら搬送するサクションベルトコンベアであることが好ましい。なお、本実施形態では、図6に示すように、搬送機構110の搬送面は、MD方向の下流側が下がるように水平面に対して所定の角度θだけ傾斜している。そうすることにより、後述する粒子供給機構120から供給されたSAP粒子が基材シートの表面で跳ね返った場合に、跳ね返ったSAP粒子が重力によって下流側に行き易くなり、意図しない位置へのSAP粒子の配置を低減することができる。
【0100】
第1接着剤吐出機構140は、MD方向に搬送されるコアラップシート連続体25a(基材シート)の所定の領域に、ホットメルト接着剤(HMA)等の接着剤を吐出する。図7A及び図7Bは、第1接着剤吐出機構140の構成について説明する図である。第1接着剤吐出機構140は、基材シートが搬送されている搬送面の鉛直上方に設けられ、複数の接着剤吐出部141,141…を有している。各々の接着剤吐出部141には、基材シートに向けて接着剤を吐出する複数の吐出ノズル142,142…が、図7BのようにCD方向に沿って所定の間隔で並んで設けられている。接着剤吐出部141のCD方向において、吐出ノズル142,142…が設けられている領域を接着剤吐出領域141fとする。つまり、接着剤吐出領域141fは、CD方向において接着剤吐出部141が接着剤を吐出することが可能な範囲を表している。吐出ノズル142から吐出された接着剤は、同吐出ノズル142から噴射されるエアにより繊維状(すなわち、細い帯状)に延ばされて、スパイラル形状やΩ字形状となって基材シート上に着弾する。一方、接着剤吐出部141のCD方向における両端部には吐出ノズル142が設けられておらず、当該両端部からは接着剤が吐出されない。以下では、CD方向の両端部において吐出ノズル142が設けられていない領域を接着剤非吐出領域141nとする。
【0101】
夫々の接着剤吐出部141は、CD方向に並んで配置されることにより、接着剤吐出列を形成している。図7Aでは、4つの接着剤吐出部141が並ぶ第1接着剤吐出列140Aと、5つの接着剤吐出部141が並ぶ第2接着剤吐出列140Bによって第1接着剤吐出機構140が構成されている。但し、接着剤吐出列140A,140Bを構成している接着剤吐出部141の数はこの限りでは無く、CD方向における接着剤吐出範囲の広さに応じて適宜調整される。
【0102】
第1接着剤吐出列140Aを構成している接着剤吐出部141と、第2接着剤吐出列140Bを構成している接着剤吐出部141とは、図7AのようにCD方向において互いに位置をずらして配置されている。具体的には、互いの接着剤非吐出領域141nがCD方向において重ならないように配置されている。そして、MD方向に搬送される基材シートに対して、第1接着剤吐出列140A及び第2接着剤吐出列140Bの各接着剤吐出領域141fから接着剤を吐出することにより、CD方向において、基材シート上に接着剤が塗工されない領域が形成されないようにすることができる。
【0103】
本実施形態では、CD方向の中央部において、第1接着剤吐出列140A及び第2接着剤吐出列140Bの接着剤吐出領域141fが重複している領域を中央領域CRとする。また、CD方向の両側部において、第1接着剤吐出列140A及び第2接着剤吐出列140Bの接着剤吐出領域141fが重複していない領域を端部領域SRとする。図7Aに示されるように、中央領域CRでは、第1接着剤吐出列140A及び第2接着剤吐出列140Bの接着剤吐出領域141fから接着剤が吐出されるのに対して、端部領域SRでは第2接着剤吐出列140Bの両端部に設けられた接着剤吐出領域141fのみから接着剤が吐出される。そのため、端部領域SRでは、中央領域CRよりも単位面積当たりに吐出される接着剤の量が少なくなる。
【0104】
図6に戻って、第1接着剤吐出機構140によって基材シート(コアラップシート連続体25a)の所定の領域に接着剤が塗工された後、第1接着剤吐出機構140のMD方向下流側に配置された粒子供給機構120から基材シートに対してSAP粒子が供給される。粒子供給機構120は、重力供給若しくは加圧空気と共にSAP粒子を吐出して基材シートに向かってSAP粒子を供給する。基材シートに到達したSAP粒子は、第1接着剤吐出機構140によって塗工された接着剤の上に堆積して、一方側吸収層21(吸収性コア21)を形成する。なお、基材シートがサクションベルトコンベアによって搬送されている場合には、供給されたSAP粒子も、当該コンベアの吸気によって基材シート上により留まりやすく、位置ズレ等を生じ難くなる。本実施形態において、粒子供給機構120は、CD方向の中央領域CR(図7A参照)にSAP粒子を供給する。すなわち、一方側吸収層21は、CD方向において中央領域CRと重複する領域に形成される。この理由については、後で説明する。
【0105】
次いで、基材シートの所定の領域に堆積したSAP粒子(一方側吸収層21)に対して、粒子供給機構120のMD方向下流側に配置された第2接着剤吐出機構150から、基材シートに対して接着剤が吐出される。図8は、第2接着剤吐出機構150の構成について説明する図である。第2接着剤吐出機構150は、第1接着剤吐出機構140と略同様の構成及び機能を有している。すなわち、第2接着剤吐出機構150は、複数の接着剤吐出ノズル(図7B参照、図8では不図示)を備えた接着剤吐出部151,151…を有している。各々の接着剤吐出部151は、CD方向において接着剤吐出ノズルが設けられている領域である接着剤吐出領域151fと、接着剤吐出ノズルが設けられていない領域である接着剤非吐出領域151nとを有する。そして、夫々の接着剤吐出部151は、CD方向に並んで配置されることにより、接着剤吐出列150A及び150Bを形成し、各々の接着剤吐出領域151fから基材シートに向けて接着剤を吐出する。
【0106】
また、CD方向中央部において、第1接着剤吐出列150A及び第2接着剤吐出列150Bの接着剤吐出領域151fが重複している領域を中央領域CRとして、CD方向両端部において、第1接着剤吐出列150A及び第2接着剤吐出列150Bの接着剤吐出領域151fが重複していない領域を端部領域SRとする。このとき、中央領域CRの単位面積あたりに吐出される接着剤の量は、端部領域SRの単位面積あたりに吐出される接着剤の量よりも多くなる。つまり、中央領域CRと重複して設けられたSAP粒子(一方側吸収層21)の上には、端部領域SRよりも多くの接着剤が吐出される。
【0107】
次いで、第3接着剤吐出機構160から、基材シート(及び一方側吸収層21)に向けて接着剤が吐出される(図6参照)。第3接着剤吐出機構160は、第2接着剤吐出機構150のMD方向の下流側に設けられ、第2接着剤吐出機構150とほぼ同様の機能及び構成を有している。すなわち、第3接着剤吐出機構160は、CD方向において中央領域CRと重複して設けられたSAP粒子(一方側吸収層21)の上に、端部領域SRよりも多くの接着剤を吐出する。
【0108】
次いで、第3接着剤吐出機構160のMD方向の下流側で、SAP粒子(一方側吸収層21)の上側から、中間シート26が長手方向に連続してなる中間シート連続体26aが供給される。供給された中間シート連続体26aは、接着剤を介して基材シート(コアラップシート連続体25a)及びSAP粒子(一方側吸収層21)に接合され、これにより、コアラップシート25と中間シート26との厚さ方向の間にSAP粒子(一方側吸収層21)が挟み込まれた吸収性コア21が形成される。
【0109】
なお、図6では示されていないが、MD方向に搬送される吸収性コア21(基材シート)に対して、さらに、接着剤、液体吸収性繊維201及びSAP、接着剤、コアラップシート24の連続体が供給されることによって、図4に示されるような積層構造を有する吸収体20が形成される。
【0110】
上述したように、本実施形態の吸収性コア21(一方側吸収層21)は、SAP粒子が基材シート(コアラップシート25及び中間シート26)によって厚さ方向に挟み込まれることによって形成される。従来、このような吸収性コアを形成する場合は、SAP粒子を挟み込む基材シートの内側の面に接着剤を塗工して、当該接着剤によってSAP粒子を固定することが一般的であった。しかしながら、この方法では、接着剤が塗工された基材シートと対向する位置に配置されたSAP粒子は、接着剤と直接接触してしっかりと固定されるのに対して、厚さ方向において基材シートと離間して配置されたSAP粒子は接着剤と接触しないため固定され難い。すなわち、厚さ方向に積み重なったSAP粒子(SAP層)のうち、厚さ方向の両側において、基材シート(接着剤)と隣接して配置されているSAP粒子には接着剤が付着しやすいが、厚さ方向の中央部に配置されているSAP粒子には接着剤が行きわたり難い。その結果、厚さ方向の中央部においてSAP粒子同士の相対位置がズレやすくなり、吸収性コアに型崩れが生じるおそれがあった。
【0111】
また、SAP粒子の位置ズレを抑制するために、基材シートの内側面に塗工される接着剤の量を増やすと、当該接着剤が基材シートの外側(吸収体20の肌側若しくは非肌側の表面)に染み出してしまい、使用者に不快感を生じさせたり吸収性能が劣化したりするおそれがあった。
【0112】
これに対して、本実施形態では、第1接着剤吐出機構140~第3接着剤吐出機構160から帯状(繊維状)に延ばされて吐出される接着剤の平均幅が、SAP粒子の平均粒径よりも小さいため、SAP粒子間に接着剤が入り込みやすい。具体的に、帯状の接着剤の平均幅は0.016~0.018mmであるのに対して、SAP粒子の平均粒径は、0.3~0.4mmである(図10参照)。さらに、本実施形態において、第2接着剤吐出機構150及び第3接着剤吐出機構160は、基材シート上に堆積したSAP粒子に向けて直接接着剤を吐出する(図6参照)。したがって、細い帯状の接着剤が、隣り合うSAP粒子同士の間に浸入しながら厚さ方向の他方側から一方側へ移動しやすく、各々のSAP粒子に接着剤が行き渡りやすくなる。これにより、SAP粒子同士が固定されやすくなり、吸収性コアの型崩れが抑制される。
【0113】
なお、SAPの平均粒径は、電磁式ふるい振とう器(例えば、Retsch社製 AS-200型)を使用して、以下のように測定することができる。電磁式ふるい振とう器は、目開きの異なる第1~第7篩(例えば、目開き:850,600,500,355,300,250,150μm)と、受け皿とを有する。先ず、第1~第7篩、及び受け皿の重量を測定して測定値Aとする。次いで、下側から、受け皿、目開き150、250、300、355、500、600、850μmの篩の順に積み重ねて振とう機にセットする。次いで、最上部の目開き850μmの篩にSAPを50g入れ、ふたをして押さえで止める。次いで、振とう器の設定を1.35mm振幅(AS-200型の場合振幅調整dialは45)・連続運転・運転時間30分として、振とうを開始し、30分間の振とう試験を行う。振とう試験終了後、第1~第7篩の各々について、篩上に残ったSAPと篩と受け皿の重量を測定して測定値Bとして記録する。これらのデータから、SAPの粒径ごとの分布=(B-A)/(各篩い上・受け皿上に残ったSAP重量合計)×100(%)を算出する。
【0114】
図12は、SAPの粒径分布の測定結果の一例である。同図12は、吸収性コアとして使用可能な2種類のSAP(何れも市販のSAP)をサンプルA,Bとして上述の振とう試験に基づいてSAPの粒径分布を測定したものである。例えば、サンプルAについて、振とう試験を行った結果、第4篩(目開き355μm)上に残ったSAPの分布が48.3%であった場合、サンプルAのSAPでは粒径355~500μmの分布が48.3%ということになる。このようなデータから、SAPの平均粒径を求めることができる。また、このような振とう試験によらず、図10の様な拡大顕微鏡画像からSAP粒径を算出しても良い。
【0115】
また、本実施形態では、基材シート(コアラップシート25)において、SAP粒子が供給される領域の単位面積あたりに吐出される接着剤が、SAP粒子が供給されない領域の単位面積あたりに吐出される接着剤よりも少なくなる。例えば、図7で説明したように、第1接着剤吐出機構140は、CD方向の中央領域CRにおいて、第1接着剤吐出列140A及び第2接着剤吐出列140Bの2つの接着剤吐出列から接着剤を吐出するのに対して、CD方向の端部領域SRにおいては、第2接着剤吐出列140Bのみから接着剤を吐出する。そして、粒子供給機構120によって、中央領域CRにSAP粒子が供給される。
【0116】
図9は、コアラップシート25において、SAP粒子及び接着剤が設けられる領域について説明する平面図である。同図9では、展開且つ伸長状態のコアラップシート25を厚さ方向の肌側(他方側)から見たときの状態について表している。図9のコアラップシート25(肌側面)において、ハッチング表示された分割領域21a~21bには、SAP粒子が設けられることによって一方側吸収層21(吸収性コア21)が形成されている。そして、コアラップシート25のうち、幅方向における一方側吸収層21の最も外側の端21es,21esよりも内側に位置する領域を内側領域IRとする。また、コアラップシート25のうち、幅方向における一方側吸収層21の最も外側の端21es,21esよりも外側に位置する領域を外側領域ORとする。上述したように、本実施形態では、中央領域CRにSAP粒子が供給されることによって内側領域IRが形成されることから、少なくともCD方向において内側領域IRは図7Aで説明した中央領域CRと一致する。同様に、端部領域SRにはSAP粒子が供給されないことによって外側領域ORが形成されることから、少なくともCD方向において外側領域ORは図7Aで説明した端部領域SRと一致する。但し、内側領域IR(外側領域OR)と中央領域CR(端部領域SR)との位置が完全に一致している必要は無く、CD方向において両者の位置が多少ずれていても良い。例えば、CD方向において、一方側吸収層21の外側端21esの位置が、中央領域CRと端部領域SRとの境界よりも外側にズレていても良いし、内側にズレていても良い。
【0117】
図10は、内側領域IRにおいてコアラップシート25の肌側面の一部を40倍に拡大して撮像した写真である。図11は、外側領域ORにおいてコアラップシート25の肌側面の一部を40倍に拡大して撮像した写真である。図10の内側領域IRには、複数の帯状(繊維状)の接着剤とSAP粒子とが配置されていることが分かる。一方、図11の外側領域ORには、複数の帯状(繊維状)の接着剤は配置されているが、SAP粒子は配置されていない。また、図10及び図11では、コアラップシート25として不織布を用いていることから、不織布を製造する際に形成されるエンボスも配置されている。
【0118】
図10から明らかなように、帯状(繊維状)の接着剤の幅は、SAP粒子の粒径よりも小さく、SAP粒子とSAP粒子との間に、接着剤が入り込んでいることが分かる。したがって、上述したように、SAP粒子同士が接着剤を介して固定されやすく、SAP粒子の位置ずれが生じ難くなり、吸収性コアの型崩れが抑制される。
【0119】
また、図10と比較して、図11では帯状の接着剤が単位面積あたりに塗工されている量(つまり塗工密度)が低くなっていることが分かる。すなわち、外側領域ORにおける、単位面積当たりの帯状(繊維状)の接着剤同士の交点の数(図11参照)は、内側領域IRにおける、単位面積当たりの帯状(繊維状)の接着剤同士の交点の数(図10参照)よりも少なくなっている。このように、SAP粒子が配置されていない外側領域ORでは、コアラップシート25に塗工される接着剤の塗工密度を、SAP粒子が配置されている内側領域IRよりも低くすることによって、接着剤がコアラップシート25の外側(非肌側面)へ染み出してしまうことが抑制される。一方、内側領域IRではSAP粒子同士を固定する接着剤の塗工密度を高くすることで、SAP粒子の位置ずれを生じにくくすることができる。
【0120】
単位面積当たりの帯状(繊維状)の接着剤同士の交点の数は、図10図11の様な写真を撮像して、例えば画像解析を行うことにより計数することができる。また、外側領域ORと内側領域IRとで接着剤の塗工量(塗工密度)を測定する場合は、例えば、竹炭等を用いて接着剤を着色してから写真を撮影し、撮影した画像をデータ化した上で二値化処理を行って接着剤を抽出する。そして、測定対象とする領域中において接着剤が塗工されている部分の面積を算出することで、接着剤の塗工密度を求めることができる。
【0121】
また、図10は、使用前のおむつ1の内側領域IRにおいてコアラップシート25の肌側面を撮像している。すなわち、図10は、SAP粒子が排泄液等の液体を吸収して膨潤する前の状態について表している。この状態で、帯状の接着剤の交点間距離の最小値は、SAP粒子の粒径(平均粒径)よりも小さくなっている。例えば、図10に表示されている或る帯状の接着剤の交点間距離diは、或るSAPの直径Dsapよりも明らかに小さい。したがって、多数の帯状の接着剤が交差して形成される網目からSAP粒子がはみ出し難くなる。これにより、一方側吸収層21の型崩れが抑制されやすくなる。例えば、おむつ1が製造工場で製造されて市場に流通する際に、流通過程でSAPの位置ズレが生じておむつ1の使用前に一方側吸収層21(吸収性コア)が崩れてしまうこと等が抑制される。
【0122】
また、おむつ1の使用時には、SAP粒子が排泄液等の液体を吸収して膨潤するため、SAP粒子の粒径(平均粒径)は図10に示される直径Dsapよりもさらに大きくなる。つまり、帯状の接着剤の交点間距離の最小値は、膨潤したときのSAP粒子の粒径(平均粒径)よりも小さい。したがって、おむつ1の使用時に排泄液を吸収してSAPが膨潤した状態においても、帯状の接着剤の網目からSAP粒子がはみ出し難くなる。これにより、おむつ1の使用時においても一方側吸収層21(吸収性コア)が崩れ難くなる。
【0123】
また、一方側吸収層21(吸収性コア)の厚さは、SAP粒子の平均粒径の1.5倍よりも大きいことが好ましい。図6で説明したように、本実施形態では、接着剤が塗工された基材シート(コアラップシート25)上にSAP粒子をばらまくように供給して一方側吸収層21を形成している。このとき、SAP粒子の一部は厚さ方向に重なるようにして積層され、少なくともSAP粒子の平均粒径の1.5倍よりも厚い一方側吸収層21(吸収性コア)が形成される。例えば、SAP粒子の平均粒径が0.3~0.4mmである場合に、0.475~0.63mm程度の厚さを有する一方側吸収層21が形成される。一方側吸収層21(吸収性コア)において、少なくともSAP粒子が1.5層よりも多く積層されていることによって、SAP粒子が平面状に並んだ単層の吸収性コアである場合と比較して、吸水性や保水性をより向上させることができる。
【0124】
そして、本実施形態では、そのような1.5層以上の一方側吸収層21(吸収性コア)において、厚さ方向の中央位置に接着剤が存在している。本実施形態では、帯状(繊維状)の接着剤の幅が、SAP粒子の平均粒径よりも著しく小さく(図10参照)、また、接着剤の一部は、第2接着剤吐出機構150や第3接着剤吐出機構160によってSAP粒子に向かって直接吐出される(図6参照)。したがって、SAP粒子上に吐出された接着剤は、重力や吐出時の圧力に基づいてSAP粒子同士の隙間を厚さ方向の上側(肌側)から下側(非肌側)へ移動し、一方側吸収層21(吸収性コア)の厚さ方向の中央位置まで到達しやすい。つまり、一方側吸収層21の内部まで接着剤が浸透しやすいことにより、SAP粒子同士の位置ずれが生じ難く、一方側吸収層21を崩れ難くすることができる。なお、サクション機構によって基材シート(コアラップシート25)が厚さ方向の一方側に吸引されている場合は、SAP粒子上に吐出された接着剤も厚さ方向の一方側(非肌側)へ吸引され、一方側吸収層21(吸収性コア)の厚さ方向の中央位置までより到達しやすくなる。
【0125】
また、コアラップシート25の肌側面にSAP粒子を固定するために塗工される接着剤の残留応力は、2KPa以上、20KPa以下であることが好ましい。SAP粒子を固定する接着剤は、SAP粒子の膨潤に伴う外力等が加わっても該SAP粒子をコアラップシート25(基材シート)から脱落させない、抵抗力(残留応力)が要求される。そして、接着剤の残留応力が2KPa以上、20KPa以下であれば、SAPの固定率が40%以上となる確率が高くなり、一方側吸収層21を崩れ難くすることができる。
【0126】
ここで、SAPの固定率は、所定の回転数で攪拌中の生理食塩水(0.9質量%食塩水)に測定対象たる吸収性シートを投入しても脱落しないSAPの割合を示すもので、吸液・膨潤したSAPの基材シートに対する固定性の指標となり得るものであり、SAP固定率の数値が大きいほど、当該吸収性シートにおけるSAPの基材シートに対する固定性が高く、使用前はもとより、吸液後であってもSAPの脱落が生じ難いことを示す。SAP固定率は、以下の手順1~5に従って測定される。
【0127】
(手順1)測定サンプルとして、5cm四方の平面視正方形形状の吸収性シートを用意する。測定サンプルの端部を把持して該測定サンプルを一旦垂直に吊り下げた状態としてから、該測定サンプルの重量(初期サンプル重量)を測定する。
(手順2)測定サンプルの全体を生理食塩水に浸漬し、浸漬開始から30分後に該測定サンプルを該生理食塩水から取り出す。
(手順3)容量300mlのビーカーに直径35mm、軸方向長さ12mmの円柱形撹拌子及び生理食塩水300mlを入れ、マグネティックスターラーを用いて回転数60
±5rpmで該攪拌子を回転させて該生理食塩水を攪拌する。この攪拌中の生理食塩水に前記手順2を経た測定サンプルを投入し、その投入から30秒後に該測定サンプルを該生理食塩水から取り出す。
(手順4)前記手順3を経た湿潤状態の測定サンプルを、槽内の温度が105℃に設定された恒温槽の該槽内に12時間静置した後、その乾燥状態の測定サンプルの重量(攪拌処理後サンプル重量) を測定する。
(手順5)前記初期サンプル重量及び前記攪拌処理後サンプル重量それぞれから吸水性ポリマー以外の部材の総重量を減算し、初期吸水性ポリマー重量(W0)及び攪拌処理後吸水性ポリマー重量(W1) をそれぞれ算出する。そして次式により、測定サンプル(吸収性シート)の吸水性ポリマー固定率を算出する。
吸水性ポリマーの固定率(%)=(W1/W0)×100
【0128】
前記手順1において、測定サンプル(5cm四方の平面視正方形形状の吸収性シート)の端部を把持して一旦これを垂直に吊り下げた状態とする理由は、基材シート上に非固定で配されている吸水性ポリマー(例えば、接着剤などで固定されておらずに単に基材シートの上方から振りかけられただけの吸水性ポリマー)などの非固定物を除去するためである。この測定サンプルの吊り下げ操作においては、単に、測定サンプルの端部を把持して略垂直に3~5秒程度吊り下げるだけでよく、吊り下げた測定サンプルを叩いたり、大きく揺らしたりしない。また、測定サンプルを吊り下げる際には、先ず、ピンセットなどを用いて測定サンプルの端部を把持して3~5秒吊り下げ、その後、斯かる吊り下げ時に把持した端部とは反対側の端部を把持して3~5秒吊り下げる。
また、前記手順1において、測定サンプルとして、5cm四方の吸収性シートを用意できない場合(例えば、吸収性シートのサイズが小さいために、測定サンプルのサイズが5cm四方に満たない場合)は、評価対象のシートからサイズが5cm四方に満たない小サイズの測定サンプルを複数採取し、それら複数の測定サンプルの片面の面積の合計が25cm2となるようにする。そして、複数の測定サンプルそれぞれについて、前記手順1~5に従って吸水性ポリマー固定率を測定し、そうして得られた複数の吸水性ポリマー固定率の平均値を、当該吸収性シートの吸水性ポリマー固定率とする。
【0129】
前記手順3で使用する測定機器としては、例えば下記のものが挙げられる。
・マグネティックスターラー:HI-304N(HANNA社製、反転スターラー)
・攪拌子: スターヘッド NALGENE(6600-0035)〔35φ×12mm〕
・ビーカー:300ml〔78φ×103mm〕
【0130】
また、接着剤の残留応力の測定は、以下の方法による。
<接着剤の残留応力の測定方法>
回転式レオメーター(アントンパール(Anton paar)社製、型式「Physica MCR301」)を用い、測定サンプルを下方から支持する平面視円形状の受け板と、該受け板の上方に対向配置される平面視円形状の押し当て板との間に、測定対象の接着剤を介在配置させる。この状態での接着剤は平面視円形状をなし、厚み1.5mm、直径12mm、温度30℃である。そして、斯かる状態から押し当て板を回転させて、接着剤に30%の歪みをかける。接着剤に歪みをかけてから20分経過後に、該接着剤のせん断応力を測定し、その測定値を該接着剤の残留応力とする。
【0131】
尚、前記の残留応力の測定において、測定対象の接着剤が未使用の場合(基材シートに塗布されておらず、吸収性シートの構成要素となっていない場合)は、その未使用の接着剤をそのまま測定対象とする。一方、測定対象の接着剤が吸収性シートの構成要素となっている場合は、下記の溶媒抽出法により、吸収性シートから接着剤を採取し、その採取した接着剤を測定対象とする。
【0132】
<接着剤の溶媒抽出法>
先ず、ビーカー等の容器中にて、接着剤を含む吸収性シートと、該接着剤を溶解可能な溶媒とを混合し、該接着剤が該溶媒に溶解した接着剤溶液を得る。次に、容器から接着剤溶液を採取し、該接着剤溶液をロータリーエバポレーターで減圧乾固する等して、該接着剤溶液から溶媒を除去することにより接着剤を得る。こうして得られた接着剤を、前記の残留応力の測定における測定対象として用いる。接着剤の溶解に用いる溶媒は、接着剤の種類等に応じて適宜選択すればよい。測定対象の接着剤が、例えば、ホットメルト接着剤等である場合、該接着剤の溶解に用いる溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン、ヘプタンを例示できる。
【0133】
また、第2接着剤吐出機構150や第3接着剤吐出機構160からSAP粒子(一方側吸収層21)に向かって接着剤が吐出された後、当該SAP粒子の上側から中間シート26が配置される際に(図6参照)、SAP粒子の表面に塗工された接着剤の一部が中間シート26に付着する。すなわち、中間シート26の非肌側の面には、第2接着剤吐出機構150等によって吐出された帯状の接着剤の一部が設けられている。
【0134】
本実施形態では、中間シート26の非肌側の面(一方側吸収層21と対向する側の面)に設けられた帯状の接着剤の平均幅が、コアラップシート25の肌側の面(一方側吸収層21と対向する側の面)に設けられた帯状の接着剤の平均幅よりも大きくなるように、接着剤が塗工される。このような構成であれば、コアラップシート25の肌側の面に接着剤が過度に塗工され難いため、該コアラップシート25の非肌側に接着剤が染み出してしまうことを抑制しやすい。一方、中間シート26の非肌側の面に接着剤が多めに設けられていれば、その分SAP粒子に向かって吐出された接着剤の量も多かったということであるから、SAP粒子同士がより強固に固定され、一方側吸収層21の型崩れを抑制することができる。
【0135】
逆に、中間シート26の非肌側の面(一方側吸収層21と対向する側の面)に設けられた帯状の接着剤の平均幅が、コアラップシート25の肌側の面(一方側吸収層21と対向する側の面)に設けられた帯状の接着剤の平均幅よりも小さくなるようにしても良い。この場合、中間シート26に設けられる接着剤の量が少なくなるため、該中間シート26において排泄液が厚さ方向へ移動することが阻害され難くなる。すなわち、中間シート26の厚さ方向の非肌側に設けられた一方側吸収層21へ排泄液等をスムーズに移行させやすくすることができる。
【0136】
また、吸収体20の一方側吸収層21には、周囲よりも坪量が低くなった低坪量領域211が設けられている。低坪量領域211では他の領域よりも排泄液が吸収され難く、該低坪量領域211に沿って排泄液が拡散されやすくなる。例えば、排泄液の厚さ方向への拡散が促進されることにより、一方側吸収層21の内部まで排泄液が移動しやすくなる。したがって、おむつ1の着用時に着用者が座姿勢を取る等によって吸収体20を厚さ方向に圧縮するような力が作用するような場合であっても、吸収体20の内部まで排泄液を引き込みやすくすることができる。
【0137】
そして、一方側吸収層21の低坪量領域211における平均坪量は、一方側吸収層21の他の領域(低坪量領域211以外の領域)における平均坪量の0%よりも大きく、50%以下であることが好ましい。低坪量領域211における平均坪量が他の領域の平均坪量の50%以下であれば、50%よりも大きい場合と比較して、低坪量領域211と他の領域との坪量の差が大きくなり、該低坪量領域211に沿って排泄液等の液体を移動させやすくすることができる。また、低坪量領域211における平均坪量が0%よりも大きければ、少なくとも低坪量領域211の全体がスリットとしとして構成されてしまうことが抑制されるため、低坪量領域211の強度が確保されやすくなる。すなわち、ある程度の大きさの坪量でSAP粒子が設けられていることにより、一方側吸収層21の型崩れを抑制しつつ、液拡散性を向上させることができる。
【0138】
また、低坪量領域211の幅方向における距離(幅)W211は、帯状の接着剤の交点間距離di(図10参照)の最小値よりも大きい。仮に、帯状の接着剤の交点間距離diが低坪量領域211の幅方向における距離W211よりも大きかった場合、低坪量領域211の両側端部の間に接着剤同士の交点が一つも配置されない可能性が生じ、低坪量領域211においてSAPが位置ずれを生じやすく、低坪量領域211自体の形状を維持できなくなるおそれがある。これに対して、本実施形態では、帯状の接着剤の交点間距離diが、低坪量領域211の幅方向における距離W211よりも小さく、低坪量領域211の両側端部の間に接着剤同士の交点が少なくとも1以上設けられるため、剛性の低い低坪量領域211においてSAP粒子が固定されやすくなる。また、低坪量領域211の両側端部に接着剤が存在する可能性が高くなる。したがって、一方側吸収層21において低坪量領域211が崩れたり潰れたりしてしまうことが抑制される。
【0139】
また、低坪量領域211において、コアラップシート25と中間シート26とが厚さ方向に接合されている部分を有していることが好ましい。例えば、図4において、低坪量領域211が設けられている部分の少なくとも一部でコアラップシート25と中間シート26とが接合されていれば、一方側吸収層21の分割領域21a,21b,21cのそれぞれがCD方向においてしっかりと分割され、隣り合う分割領域間で低坪量領域211を跨いでSAP粒子が移動してしまうことが抑制される。すなわち、分割領域21a,21b,21cの各々が独立して形状を維持しやすくなる。したがって、一方側吸収層21の全体として型崩れを生じ難くなる。
【0140】
また、吸収体20は、長手方向の両端部に、SAP粒子が設けられていない間欠領域を有している。図9では、コアラップシート25(吸収体20)の長手方向において、一方側吸収層21の前側端21efよりも前側に、SAP粒子が配置されていない前側間欠領域FAが設けられている。同様に、長手方向において、一方側吸収層21の後側端21ebよりも後側に、SAP粒子が配置されていない後側間欠領域BAが設けられている。前側間欠領域FA及び後側間欠領域BAにはSAP粒子が配置されていないため、コアラップシート25は、該コアラップシート25の肌側面に塗工されている接着剤を介して、厚さ方向の肌側に対向して配置されている部材(例えば、図4における中間シート26等)と接合される。これにより、一方側吸収層21を構成しているSAP粒子が前後方向の両端側へ飛び出し難くなり、一方側吸収層21が型崩れを生じ難くなる。
【0141】
また、吸収体20の長手方向において、中央位置CLよりも前側の領域に設けられているSAPの平均坪量が、中央位置CLよりも後側に設けられているSAPの平均坪量よりも大きくなるようにすると良い。長手方向における前側の領域は、後側の領域と比較して、おむつ1の着用時に着用者の排泄口の近くに位置する。したがって、排泄口に近い長手方向前側の領域においてSAPの平均坪量を大きくすることで、尿等の排泄液を速やかに吸収しやすくなり、腹側における尿漏れを抑制しやすくすることができる。
【0142】
一方、吸収体20の長手方向において、中央位置CLよりも後側に設けられているSAPの平均坪量が、中央位置CLよりも前側の領域に設けられているSAPの平均坪量以上となるようにしても良い。この場合、おむつ1の着用時において、着用者の背側領域で吸水性を高めることができる。例えば、着用者がおむつ1を着用した状態で仰向けの姿勢で寝ていた場合、尿等の排泄液が臀部を伝って背側に回り込んで、吸収体20の外側に漏出してしまうおそれがある。このような場合、長手方向後側の領域においてSAPの平均坪量をなるべく大きくしておくことで、背側からの尿漏れを抑制しやすくすることができる。
【0143】
また、本実施形態の吸収体20には、一方側吸収層21の厚さ方向の他方側に積層するように、液体吸収性繊維201及びSAPを含んだ中間吸収層22及び他方側吸収層23(第2吸収層に相当)が設けられている。すなわち、吸収体20は、厚さ方向に積層された2層以上の吸収性コアによって構成されている。吸収性コアが2層以上の構造を有していることにより、吸収性コアが1層のみの場合と比較して、吸水性や保水容量が向上する。また、SAP粒子よりも吸水速度が速い液体吸収性繊維201を含む層(中間吸収層22)を設けることで、複数の層の間で液拡散が生じやすくなり、吸収体20(吸収性コア)の全体として、吸水性や保水性を向上させることができる。
【0144】
本実施系形態では、図4に示されるように、主にSAP粒子を含んだ一方側吸収層21が厚さ方向の非肌側(一方側)に配置され、SAP粒子よりも吸水速度が速い液体吸収性繊維201を含んだ中間吸収層22及び他方側吸収層23(第2吸収層)が厚さ方向の肌側(他方側)に配置されている。したがって、排泄液が肌側から非肌側へ速やかに引き込まれて、一方側吸収層21にて保持されやすくなる。これにより、肌側ではDRY性が向上し、着用者に違和感や不快感を生じ難くさせることができる。
【0145】
一方、図4の場合とは逆に、主にSAP粒子を含んだ一方側吸収層21が厚さ方向の肌側(他方側)に配置され、SAP粒子よりも吸水速度が速い液体吸収性繊維(パルプ繊維)201を含んだ中間吸収層22及び他方側吸収層23(第2吸収層)が厚さ方向の非肌側(一方側)に配置される構成としても良い。この場合、肌側における保水性が高められるため、吸収性コアに吸収された排泄液が着用者の肌側に戻ってしまう、所謂リウェットを生じ難くすることができる。したがって、着用者に違和感や不快感を生じ難くさせることができる。
【0146】
また、おむつ1の吸収体20で、吸収性コア(SAP粒子)を被覆しているコアラップシートは、不織布により形成されている。一般に、不織布は、ティッシュ等と比較して強度が高く破れ難いため、吸収体20を形成する際の基材シートとして好適である。例えば、図6で説明したように、不織布を基材シートとしてMD方向に搬送しながら接着剤を塗工したりSAP粒子を積層させたりする際に、基材シートが破れ難いことから、安定した形状の吸収体20を形成することができる。また、サクション機構等により、基材シートを吸引しながら搬送することが可能となるため、SAP粒子を基材シート上に固定させやすい。この場合、吸引された接着剤がSAP粒子同士の隙間を移動して吸収性コアの内側(厚さ方向における中央位置)に到達しやすくなるため、SAP粒子同士の位置ズレを抑制しやすくなる。
【0147】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0148】
上述の実施形態では、図4に示される様な複数の層によって構成された吸収体20が説明されていたが、吸収体20は図4に示される構成には限られない。例えば、中間シート26が設けられていない構成でも良いし、吸収性コアとして一方側吸収層21のみを有する構成であっても良い。また、図4の厚さ方向における一方側を肌側、他方側を非肌側とした吸収体20であっても良い。
【0149】
吸収体20の吸収性コア(一方側吸収層21や他方側吸収層23)は、以下の様に変形しても良い。図13は、一方側吸収層21の変形例を示した吸収体20の断面模式図である。変形例の一方側吸収層21は、図13に示されるように、SAPの坪量が周囲よりも高い高坪量領域213を有する。そして、高坪量領域213のうち、厚さ方向における最大厚みとなる点Sが長手方向及び幅方向に間欠的に位置している。これにより、高坪量領域213は、長手方向及び幅方向に間欠的に配置されている。さらに、隣接する最大厚みとなる点S同士の間(すなわち、高坪量領域213の周囲)には、SAPの坪量が高坪量領域213よりも低い低坪量領域214が形成される。但し、最大厚みとなる点Sが長手方向及び幅方向に間欠的に位置していれば、隣接する最大厚みとなる点S同士の間のうち、その一部が高坪量領域213で形成されていてもよい。つまり、隣接する最大厚みとなる点S同士の間のうち、その一部が高坪量領域213でつながっていてもよい。
【0150】
低坪量領域214は、SAPが積層された低坪量積層領域214Eと、SAPがない非積層領域214Nとを有する。ここで、「SAPがない」とは、SAPの粒子が存在しないことの意味に加え、積層されたSAPの粒子がごく少数であり、実質的にSAPの粒子が存在しないことを含む。
【0151】
変形例の吸収体20では、低坪量領域214(低坪量積層領域214E及び非積層領域214N)が折れ起点となり、着用者の身体の凹凸に沿って変形し易くなり、フィット性が向上する。さらに、折れ起点となる低坪量領域214として、排泄液を吸収保持することができる低坪量積層領域214Eと、SAPがないことでより折れ曲がり易くなる非積層領域214Nとを有する。これにより、SAPの坪量が高坪量領域213よりも低い低坪量領域214であっても、着用者の身体の凹凸に沿った変形し易さと、排泄液の吸収保持力とを両立することができる。
【符号の説明】
【0152】
1 おむつ(吸収性物品、パンツ型使い捨ておむつ)、
2 サイド接合部、
10 吸収性本体、
12 トップシート、
13a バックシート(液不透過性シート)、
13b バックシート(外装シート)、
15 防漏壁部、16 防漏壁弾性部材、
17 脚回り弾性部材、
20 吸収体、
21 一方側吸収層(吸収性コア)、211 低坪量領域、
21a 分割領域、21b 分割領域、21c 分割領域、
22 中間吸収層(吸収性コア)、221 低坪量領域、222 括れ部、
23 他方側吸収層(吸収性コア)、231 低坪量領域、232 括れ部、
24 コアラップシート、25 コアラップシート、
26 中間シート、
30 前側胴回り部、
31 肌側シート、32 非肌側シート、33 胴回り弾性部材、34 カバーシート、
40 後側胴回り部、
41 肌側シート、42 非肌側シート、43 胴回り弾性部材、44 カバーシート、
100 吸収性体形成装置、
110 搬送機構、
120 粒子供給機構、
140 第1接着剤吐出機構、
140A 接着剤吐出列、140B 接着剤吐出列、
141 接着剤吐出部、141f 接着剤吐出領域、141n 接着剤非吐出領域、
142 吐出ノズル、
150 第2接着剤吐出機構、
150A 接着剤吐出列、150B 接着剤吐出列、
151 接着剤吐出部、151f 接着剤吐出領域、151n 接着剤非吐出領域、
160 第3接着剤吐出機構、
201 液体吸収性繊維、
SAP 高吸収性ポリマー、
IR 内側領域、
OR 外側領域
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