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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010516
(43)【公開日】2025-01-21
(54)【発明の名称】水硬性組成物用プレミックス
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20250110BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20250110BHJP
   C04B 24/32 20060101ALI20250110BHJP
   B28B 1/32 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/26 E
C04B24/32 A
B28B1/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024108626
(22)【出願日】2024-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2023111921
(32)【優先日】2023-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】島田 恒平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 憲一
(72)【発明者】
【氏名】谷本 理勇
(72)【発明者】
【氏名】佐川 桂一郎
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MD01
4G112PB31
4G112PB36
4G112PE04
(57)【要約】
【課題】細骨材と分散剤を併用した際に、水硬性組成物の凝結遅延を起こしにくい水硬性組成物用プレミックス及びその製造方法、その水硬性組成物用プレミックスを用いた水硬性組成物の製造方法、並びにその水硬性組成物用プレミックスを用いた乾式吹付工法を提供する。
【解決手段】(A)セメント、(B)表面水率が-5%以上0%未満の細骨材、(C)ポリカルボン酸系分散剤、及び(D)重量平均分子量が5,000以上1,000,000未満のポリアルキレンオキサイドを含有する、水硬性組成物用プレミックス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セメント(以下、(A)成分という)、(B)表面水率が-5%以上0%未満の細骨材(以下、(B)成分という)、(C)ポリカルボン酸系分散剤(以下、(C)成分という)、及び(D)重量平均分子量が5,000以上1,000,000未満のポリアルキレンオキサイド(以下、(D)成分という)を含有する、水硬性組成物用プレミックス。
【請求項2】
(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比(B)/(A)が、0.5以上5以下である、請求項1に記載の水硬性組成物用プレミックス。
【請求項3】
(A)成分の含有量が、前記水硬性組成物用プレミックス100質量部に対して、10質量部以上60質量部以下である、請求項1又は2に記載の水硬性組成物用プレミックス。
【請求項4】
(B)成分の含有量が、前記水硬性組成物用プレミックス100質量部に対して、40質量部以上90質量部以下である、請求項1又は2に記載の水硬性組成物用プレミックス。
【請求項5】
(C)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0.05質量部以以上1質量部以下である、請求項1又は2に記載の水硬性組成物用プレミックス。
【請求項6】
(D)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0.05質量部以上2質量部以下である、請求項1又は2に記載の水硬性組成物用プレミックス。
【請求項7】
(D)成分の重量平均分子量が、50,000以上600,000以下である、請求項1又は2に記載の水硬性組成物用プレミックス。
【請求項8】
乾式吹付用である、請求項1又は2に記載の水硬性組成物用プレミックス。
【請求項9】
(A)セメント(以下、(A)成分という)、(B)表面水率が-5%以上0%未満の細骨材(以下、(B)成分という)、(C)ポリカルボン酸系分散剤(以下、(C)成分という)、及び(D)重量平均分子量が5,000以上1,000,000未満のポリアルキレンオキサイド(以下、(D)成分という)を配合してなる、水硬性組成物用プレミックス。
【請求項10】
(A)セメント(以下、(A)成分という)、(B’)細骨材(以下、(B’)成分という)、(C)ポリカルボン酸系分散剤(以下、(C)成分という)、及び(D)重量平均分子量が5,000以上1,000,000未満のポリアルキレンオキサイド(以下、(D)成分という)を含有する水硬性組成物用プレミックスであり、前記水硬性組成物用プレミックスの下記方法により測定される乾燥減量が2.9質量%未満である、水硬性組成物用プレミックス。
乾燥減量:前記水硬性組成物用プレミックスを恒温送風乾燥機で105℃、2時間乾燥させた後の下記式により算出される乾燥減量(質量%)
乾燥減量(質量%)=(乾燥前の水硬性組成物用プレミックス質量(g)―105℃、2時間乾燥後の水硬性組成物用プレミックス質量(g))×100/乾燥前の水硬性組成物用プレミックス質量(g)
【請求項11】
(A)セメント(以下、(A)成分という)と、(B)表面水率が-5%以上0%未満の細骨材(以下、(B)成分という)と、(C)ポリカルボン酸系分散剤(以下、(C)成分という)と、(D)重量平均分子量が5,000以上1,000,000未満のポリアルキレンオキサイド(以下、(D)成分という)とを混合する、水硬性組成物用プレミックスの製造方法。
【請求項12】
(B)成分が、細骨材を加熱乾燥処理により表面水率が-5%以上0%未満に調整したものである、請求項11に記載の水硬性組成物用プレミックスの製造方法。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の水硬性組成物用プレミックスと、水とを混合する、水硬性組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の水硬性組成物用プレミックスと、水とを混合して水硬性組成物を製造し、前記水硬性組成物を対象物に吹き付ける、乾式吹付工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用プレミックス及びその製造方法、その水硬性組成物用プレミックスを用いた水硬性組成物の製造方法、並びにその水硬性組成物用プレミックスを用いた乾式吹付工法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは人類の発展に欠くことのできないことのできない建設資材であり、中でもセメントコンクリートは、主にセメント、水、細骨材、粗骨材を混合し成形、硬化させることによって製造される。
細骨材としては、JIS A0203-2014中の番号2311で規定される、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂および珪砂に代表される天然骨材と、これらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材及び再生細骨材等の人工骨材が挙げられる。
細骨材の多くは、火山活動や産業副産物で生じたシリカを主成分とする無機物であり、産生の過程で高温にさらされるため、水和水の蒸発、脱水、有機物の燃焼等により、多孔質である。
【0003】
そのためコンクリート産業においても、細骨材は内部に空気や水蒸気を含んだ状態で用いられることが多いが、現場で、水のみの添加、混練により水硬性組成物を調製できることを特徴とする水硬性組成物用プレミックスに使用される細骨材は、表面に水がブリードした状態で水硬性粉体と接すると、水硬性粉体が水和反応を起こして保存中に“風化”し、水の添加、混練による水和反応性が低下して、コンクリートに求められる主要な性能の一つである強度を低下させることが知られている。
それゆえに、水硬性組成物用プレミックスには、表面に水がブリードしておらず、JIS A 1111に規定される方法で実施され、算出された表面水率が負の値を示す、絶対乾燥状態乃至空気中乾燥状態の細骨材が使用される。
【0004】
またトンネル工事や法面保護工事等露出した地山の崩落を防止するために、水硬性組成物を用いた吹付工法が行われている。この工法のうち、乾式吹付工法と呼ばれるものは、セメント、細骨材等を含有する水硬性組成物用プレミックスを吹付け機に投入し、圧縮空気に乗せてホース内を圧送して、先端の吹付ノズル部分で別系統から圧送した水と合流させ、この合流物(水硬性組成物)を吹付ノズル先端から地山面に所定の厚みになるまで吹き付ける工法である。
【0005】
特許文献1には、プレミックスモルタル組成物に炭酸カルシウム粉末を配合することで、ポリカルボン酸塩系減水剤を使用したプレミックスモルタル組成物及びプレミックス無収縮モルタル組成物を長期間保管しても、流動性の低下と流動保持性の低下とを抑制できるプレミックスモルタル組成物及びプレミックス無収縮モルタル組成物が開示されている。
特許文献2には、セメント、膨張材、添加剤、発泡剤、及び細骨材を配合し、その合計100部中、特定の粒度の発泡剤が0.001~0.01部の金属アルミニウム類である無収縮モルタル組成物、さらにカルシウムアルミネートと硫酸塩を配合し、その合計100部中、添加剤が0.001~1.0部のアルカリ金属炭酸塩で、発泡剤が0.001~0.01部の金属アルミニウム類である、長期貯蔵後も製造直後の品質を維持して、品質劣化が少なく、特に、初期膨張率の低下が少なく、流動性も良いことから、収縮による沈下やひび割れを防止でき、品質に優れるものが得られる、優れた流動性と強度発現性を有する無収縮モルタル組成物又は速硬性無収縮モルタル組成物が開示されている。
特許文献3には、(A)特定の二元系共重合体(A-1)及び特定のリン酸エステル系共重合体(A-2)からなる群より選ばれる1種以上の共重合体と、(B)特定の三元系共重合体と、(C)重量平均分子量1,000~90,000のポリエチレングリコールとを含有する、水硬性粉体を含む水硬性組成物に対して、優れた初期流動性と流動保持性を発現させる事が出来る水硬性組成物用混和剤が開示されている。
特許文献4には、硫酸アルミニウム100部とビスフェノールS2部未満を含有してなる液状急結剤と、平均分子量は100万~500万のポリアルキレンオキサイドを含有するセメントコンクリートとを混合してなる吹付け工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-241095号公報
【特許文献2】特開2001-328856号公報
【特許文献3】特開2009-249197号公報
【特許文献4】特開2014-5184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特に水とセメントの質量比が低い条件の水硬性組成物に用いられる水硬性組成物用プレミックスは、水硬性組成物の流動性発現のために粉末状の分散剤を含有させるが、分散剤の併用によって水硬性組成物の硬化が遅くなる、つまり凝結遅延を起こすといった課題がある。
【0008】
本発明は、細骨材と分散剤を併用した際に、水硬性組成物の凝結遅延を起こしにくい水硬性組成物用プレミックス及びその製造方法、その水硬性組成物用プレミックスを用いた水硬性組成物の製造方法、並びにその水硬性組成物用プレミックスを用いた乾式吹付工法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(A)セメント(以下、(A)成分という)、(B)表面水率が-5%以上0%未満の細骨材(以下、(B)成分という)、(C)ポリカルボン酸系分散剤(以下、(C)成分という)、及び(D)重量平均分子量が5,000以上1,000,000未満のポリアルキレンオキサイド(以下、(D)成分という)を含有する、水硬性組成物用プレミックスに関する。
【0010】
また本発明は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を配合してなる、水硬性組成物用プレミックスに関する。
【0011】
また本発明は、(A)成分、(B’)細骨材(以下、(B’)成分という)、(C)成分、及び(D)成分を含有する水硬性組成物用プレミックスであり、前記水硬性組成物用プレミックスの下記方法により測定される乾燥減量が2.9質量%未満である、水硬性組成物用プレミックスに関する。
乾燥減量:前記水硬性組成物用プレミックスを恒温送風乾燥機で105℃、2時間乾燥させた後の下記式により算出される乾燥減量(質量%)
乾燥減量(質量%)=(乾燥前の水硬性組成物用プレミックス質量(g)―105℃、2時間乾燥後の水硬性組成物用プレミックス質量(g))×100/乾燥前の水硬性組成物用プレミックス質量(g)
【0012】
また本発明は、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分とを混合する、水硬性組成物用プレミックスの製造方法に関する。
【0013】
また本発明は、本発明の水硬性組成物用プレミックスと、水とを混合する、水硬性組成物の製造方法に関する。
【0014】
また本発明は、本発明の水硬性組成物用プレミックスと、水とを混合して水硬性組成物を製造し、前記水硬性組成物を対象物に吹き付ける、乾式吹付工法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、細骨材と分散剤を併用した際に、水硬性組成物の凝結遅延を起こしにくい水硬性組成物用プレミックス及びその製造方法、その水硬性組成物用プレミックスを用いた水硬性組成物の製造方法、並びにその水硬性組成物用プレミックスを用いた乾式吹付工法が提供される。
【0016】
近年、持続的な社会実現のためにSDGsが提唱されている。本発明は、水硬性組成物硬化体の生産性向上に資し、例えば、SDGsのNo.9、11、12などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、細骨材と分散剤を併用した際に、水硬性組成物の凝結遅延を起こしにくい水硬性組成物用プレミックスを見出した。このような効果が発現する理由は必ずしも定かではないが、以下のように推測される。
水硬性組成物用プレミックスは前述の通り、セメント等の水硬性粉体および乾燥状態の細骨材、また必要に応じて粗骨材等を混合して調製される。ここに水を加えて混練すると、セメントの硬化反応である水和反応と、多孔質である細骨材への水の浸潤が一気に進行すると考えられる。細骨材の表面は親水性のシリカによって形成され、分散剤の併用は毛管圧を低下させるため、分散剤を併用する系においては、分散剤のセメント粒子への吸着に伴う水和反応の遅延と細骨材との水の奪い合いによって、セメントの凝結遅延が起こりやすいと考えられる。
ここで、表面水率が0%未満の細骨材と分散剤を含有する水硬性組成物用プレミックスに、本発明の(D)成分である、特定の重量平均分子量を有するポリアルキレンオキサイドを含有すると、セメントへの吸着性が低くセメントの水和反応を阻害しないこと、一定以上の分子量を有することで、水溶液の表面張力低下を抑制しながら細骨材表面の水を保持し、細骨材の急激な水の吸水を抑制すること、一定以下の分子量を有することで、過度に分子的に疎水化せず水を効果的に保持し、顕著な分子鎖の絡み合いによる増粘に起因する混合性、水和反応の不活性化を伴わないため、水硬性組成物用プレミックスが表面水率0%未満の細骨材と分散剤を含有しても、セメントの凝結遅延を起こしにくくなったものと考えられる。
また細骨材と分散剤と特定の重量平均分子量を有するポリアルキレンオキサイドを含有する水硬性組成物用プレミックスであって、前記方法により測定される乾燥減量が2.9質量%未満である水硬性組成物用プレミックスについても、含まれる細骨材が乾燥状態であり、上記と同様の作用機構で、セメントの凝結遅延を起こしにくくなったものと考えられる。
なお本発明は上記の作用機構に限定されるものではない。
【0018】
〔水硬性組成物用プレミックス〕
<(A)成分>
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、(A)成分として、セメントを含有する。
セメントとしては、普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸セメント等が挙げられ、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加された高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等でもよい。これらから1種以上を用いることができる。
【0019】
本発明の水硬性組成物用プレミックス中、(A)成分の含有量は、前記水硬性組成物用プレミックス100質量部に対して、水硬性組成物の硬化体強度の観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは14質量部以上、更に好ましくは18質量部以上、そして、水硬性組成物の硬化体ひび割れ抑制の観点から、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、より更に好ましくは30質量部以下、より更に好ましくは25質量部以下である。
【0020】
<(B)成分>
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、(B)成分として、表面水率が-5%以上0%未満の細骨材を含有する。
【0021】
(B)成分の細骨材の表面水率は、水硬性組成物の強度発現性及び硬化促進の観点から、-5%以上、好ましくは-4%以上、より好ましくは-3.5%以上、そして、0%未満、好ましくは-0.5%以下、より好ましくは-1%以下である。
(B)成分の細骨材の表面水率は、JIS A 1111に記載の方法により測定する。より正確には、以下の手順により20℃下で測定される。
上水道水200mLおよび500.0gの細骨材を、500mLのチャップマンフラスコ(例えば、KC-103、関西機器製作所製)に入れ、軽く振とうし30分静置して脱気・吸水させ、チャップマンフラスコの目盛(V)を記録して、下記式に基づいて、2回の試験の平均値として表面水率を算出する。
表面水率(%)
={(V-500.0)-(500.0/細骨材の表乾密度)}
/{500.0-(V-500.0)}×100
【0022】
細骨材とは、目開き10mmふるいを全部通り、目開き5mmふるいを重量で85%以上通過する骨材である。
細骨材としては、JIS A0203-2014中の番号2311で規定されるものが挙げられる。細骨材としては、具体的には、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)並びに再生細骨材等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0023】
(B)成分の細骨材の表面水率の調整は、以下の方法にて行うことができる。(1)表面水率が所定の範囲にある細骨材を選択する方法、(2)細骨材の乾燥処理を行うことで表面水率が所定の範囲に調整する方法、等が挙げられる。
前記乾燥処理は、特に制限はなく、例えば、送風、加熱、吸湿剤との接触等の処理、及びそれらの併用処理が可能であり、加熱と乾燥を含む処理が好ましい。
また、細骨材の表面水率は環境により変化しやすいので、所定の表面水率に調整した後は、外的な変化要因からの影響を低減するために、暗所保存、密封保存、温度調節などを行い、表面水率を所定の範囲に維持することが望ましい。より望ましい手段は、容器内での密封保存が挙げられる。
【0024】
本発明の水硬性組成物用プレミックス中、(B)成分の含有量は、前記水硬性組成物用プレミックス100質量部に対して、水硬性組成物の硬化体強度及び硬化促進の観点から、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは60質量部以上、より更に好ましくは70質量部以上、そして、好ましくは90質量部以下、より好ましくは85質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。
【0025】
本発明の水硬性組成物用プレミックス中、(A)成分の含有量と(B)成分の含有量との質量比(B)/(A)は、水硬性組成物の硬化体ひび割れ抑制及び硬化促進の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.75以上、更に好ましくは1以上、より更に好ましくは2以上、より更に好ましくは3以上、そして、水硬性組成物の硬化体強度及び硬化促進の観点から、好ましくは5以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは4以下である。
【0026】
<(C)成分>
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、(C)成分として、ポリカルボン酸系分散剤を含有する。
ポリカルボン酸系分散剤は、硬化体強度の観点から、粉末状のものが好ましい。
【0027】
ポリカルボン酸系分散剤は、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体(例えば特開平8-12397号公報に記載の化合物等)、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールとマレイン酸等のジカルボン酸との共重合体等を用いることができる。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるカルボン酸の意味である。
【0028】
ポリカルボン酸系重合体としては、下記一般式(1c)で示される単量体(1c)と、下記一般式(2c)で示される単量体(2c)とを構成単量体として含む共重合体(c)が挙げられる。
【0029】
【化1】
【0030】
〔式中、
1c、R2c、R3c:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CHCOOMであり、(CHCOOMは、COOM又は他の(CHCOOMと無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM、Mは存在しない。
、M:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
【0031】
【化2】
【0032】
〔式中、
4c、R5c: 同一でも異なっていても良く、水素原子又はメチル基
6c:水素原子又は-(CHq1(CO)p1O(AO)n17c
7c:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
n1:AOの平均付加モル数であり、4以上200以下の数
q1:0以上2以下の数
p1:0又は1
を示す。〕
【0033】
一般式(1c)中、入手性の観点から、R1cは、水素原子が好ましい。
一般式(1c)中、入手性の観点から、R2cは、水素原子またはメチル基が好ましい。
一般式(1c)中、入手性の観点から、R3cは、水素原子が好ましい。
(CHCOOMについては、COOM又は他の(CHCOOMと酸無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM、Mは存在しない。
とMは同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基である。
とMのアルキル基、ヒドロアルキル基、及びアルケニル基は、それぞれ、炭素数1以上4以下が好ましい。
とMは、同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、又はアルキルアンモニウム基が好ましく、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、又はアンモニウム基がより好ましく、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属(1/2原子)が更に好ましく、水素原子、又はアルカリ金属がより更に好ましい。
一般式(1c)中の(CHCOOMのrは、0が好ましい。
【0034】
一般式(2c)中、R4cは、入手性の観点から、水素原子が好ましい。
一般式(2c)中、R5cは、入手性の観点から、水素原子またはメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(2c)中、R6cは、入手性の観点から、水素原子が好ましい。
一般式(2c)中、R7cは、入手性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(2c)中、AOは、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる基が好ましく、エチレンオキシ基がより好ましい。AOはエチレンオキシ基を含むことが好ましい。
一般式(2c)中、n1は、AOの平均付加モル数であり、好ましくは4以上、より好ましくは20以上、そして、好ましくは150以下、より好ましくは120以下である。
一般式(2c)中、q1は、0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0が更に好ましい。
一般式(2c)中、p1は、1が好ましい。
【0035】
共重合体(c)の全構成単量体中、単量体(1c)と単量体(2c)の合計量中の単量体(1c)の割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0036】
共重合体(c)の全構成単量体中、単量体(1c)の割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0037】
共重合体(c)の全構成単量体中、単量体(1c)と単量体(2c)の合計量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。この合計量は、100質量%であってよい。
【0038】
共重合体(c)の重量平均分子量は、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは20,000以上、そして、好ましくは10,0000以下、より好ましくは80,000以下、更に好ましくは60,000以下である。
【0039】
共重合体(c)の重量平均分子量は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されたものである。
*GPC条件
装置:GPC(HLC-8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CHCN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(分子量既知の単分散ポリエチレングリコール、分子量87,500、250,000、145,000、46,000、24,000
【0040】
共重合体(c)は、単量体(1c)、単量体(2c)の他に、任意に、単量体(1c)および/または単量体(2c)と共重合可能な1種類以上の単量体(3c)を有していてもよい。単量体(3c)としては、アクリル酸エステルが挙げられる。共重合体(c)は、全構成単位中、単量体(1c)、及び単量体(2c)の合計、又は単量体(1c)、単量体(2c)、及び単量体(3c)の合計が100質量%であってよい。
【0041】
本発明の水硬性組成物用プレミックス中、(C)成分の含有量は、前記水硬性組成物用プレミックス100質量部に対して、水硬性組成物のワーカビリティーの観点から、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上、そして、水硬性組成物の硬化体強度の観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下、より更に好ましくは0.05質量部以下である。
【0042】
本発明の水硬性組成物用プレミックス中、(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、水硬性組成物のワーカビリティーの観点から、0.05質量部以上、好ましくは0.075質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、そして、水硬性組成物の硬化体強度の観点から、1質量部以下、好ましくは0.75質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.2質量部以下である。
【0043】
<(D)成分>
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、(D)成分として、重量平均分子量が5,000以上1,000,000未満のポリアルキレンオキサイドを含有する。
【0044】
(D)成分の重量平均分子量は、水硬性組成物の硬化促進の観点から、5,000以上、好ましくは10,000以上、より好ましくは50,000以上、更に好ましくは100,000以上、より更に好ましくは150,000以上、より更に好ましくは200,000以上、より更に好ましくは250,000以上、より更に好ましくは300,000以上、より更に好ましくは350,000以上、より更に好ましくは400,000以上、そして、水硬性組成物の硬化促進、及び水硬性組成物のワーカビリティーの観点から、1,000,000未満、好ましくは900,000以下、より好ましくは800,000以下、更に好ましくは700,000以下、より更に好ましくは600,000以下、より更に好ましくは500,000以下である。
ポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量は、市販品の場合は商品情報(カタログなど)に基づいた値を採用してよい。
ポリアルキレンオキサイドの重量平均分子量は、下記測定条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)測定により決定できる。
〈測定条件〉
・装置:製品名「LC-10AD」(株式会社島津製作所製)
・検出器:示差屈折率検出器(RID)
・カラム:製品名「SHODEX KF-804」(昭和電工株式会社製)
・測定温度:30℃
・溶離液:THF
・流速:1.0mL/min
・サンプル濃度:0.2質量%(THF)
・サンプル注入量:100μL
・換算標準:ポリエチレンオキサイド
【0045】
(D)成分は、重合単位としてエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを含むものが好ましく、エチレンオキサイドを含むものが好ましい。
(D)成分が重合単位として、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを含む場合、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドは、ランダム共重合体、及びブロック共重合体のいずれでもよい。
(D)成分は、水溶性の観点から、ポリオキシエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドの共重合体、及びポリエチレンオキサイドから選ばれる1種以上が好ましく、ポリエチレンオキサイドがより好ましい。
【0046】
本発明の水硬性組成物用プレミックス中、(D)成分の含有量は、前記水硬性組成物用プレミックス100質量部に対して、水硬性組成物の流動性低下抑制及び硬化促進の観点から、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下、より更に好ましくは0.05質量部以下、より更に好ましくは0.03質量部以下である。
【0047】
本発明の水硬性組成物用プレミックス中、(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、水硬性組成物の流動性低下抑制及び硬化促進の観点から、0.05質量部以上、好ましくは0.075質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、そして、2質量部以下、好ましくは1質量部以下、好ましくは0.75質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.2質量部以下である。
【0048】
<その他成分等>
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、本発明の効果を損なわない範囲で、(E)成分として、粗骨材を含有してよい。
粗骨材とは5mm網ふるいに質量で85%以上とどまる骨材である。粗骨材は、JIS A0203-2014中の番号2312で規定されるものが挙げられる。例えば粗骨材としては、川砂利、陸砂利、山砂利、海砂利、石灰砂利、これらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、軽量粗骨材(人工及び天然)及び再生粗骨材等が挙げられる。
【0049】
本発明の水硬性組成物用プレミックス中、(E)成分を含有する場合、(E)成分の含有量は、前記水硬性組成物100質量部に対して、水硬性組成物の流動性の観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、そして、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
【0050】
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、(C)成分以外の分散剤、膨張材、硬化促進剤、硬化遅延剤、セメント用ポリマー、発泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、顔料、繊維、撥水剤、白華防止剤等(但し、前記した成分に該当するものは除く)から選ばれる1種以上を含有してもよい。
【0051】
本発明の水硬性組成物用プレミックスの水分量は、水硬性組成物用プレミックス100質量部に対して、水硬性組成物の硬化促進の観点から、好ましくは0質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。なお、上記水分量は下記式に基づいて算出される。
水硬性組成物用プレミックスの水分量(質量部)=100-[(105℃・24時間乾燥後の水硬性組成物用プレミックス質量×100)/乾燥前の水硬性組成物用プレミックス質量]
【0052】
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、(B)成分である表面水率が0%未満の細骨材と(C)成分であるポリカルボン酸系分散剤を併用しても水硬性組成物の凝結遅延を起こしにくいことから、吹付け機内で、水と水硬性組成物用プレミックスの混合性向上のために、該プレミックスにポリカルボン酸系分散剤を含有する必要がある、乾式吹付工法に最適である。
すなわち、本発明の水硬性組成物用プレミックスは、乾式吹付用として好適である。
【0053】
本発明により、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有する組成物の水硬性組成物用プレミックスとしての使用が提供される。
また本発明により、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有する組成物の乾式吹付用水硬性組成物用プレミックスとしての使用が提供される。
(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分、並びに各成分の配合量、及び質量比は、本発明の水硬性組成物用プレミックスで記載した態様と同じである。(A)成分~(D)成分以外のその他成分も同様であり、前記組成物に含有することができる。
各成分の配合量、及び質量比は、本発明の水硬性組成物用プレミックスで記載した各成分の含有量、及び質量比の規定について、含有量を配合量に置き換えて前記組成物に適用することができる。本発明の使用には、本発明の水硬性組成物用プレミックスで記載した態様を適宜適用することができる。
【0054】
本発明は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を配合してなる、水硬性組成物用プレミックスであってよい。
(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分は、本発明の水硬性組成物用プレミックスで記載した態様と同じである。(A)成分~(D)成分以外のその他成分も同様であり、前記水硬性組成物用プレミックスに配合することができる。
各成分の配合量、及び質量比は、本発明の水硬性組成物用プレミックスで記載した各成分の含有量、及び質量比の規定について、含有量を配合量に置き換えて前記水硬性組成物用プレミックスに適用することができる。
【0055】
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、下記方法により測定される乾燥減量が2.9質量%未満である。
すなわち、本発明は、(A)成分、(B’)細骨材(以下、(B’)成分という)、(C)成分、及び(D)成分を含有する水硬性組成物用プレミックスであり、前記水硬性組成物用プレミックスの下記方法により測定される乾燥減量が2.9質量%未満である、水硬性組成物用プレミックスを提供する。
乾燥減量:前記水硬性組成物用プレミックスを恒温送風乾燥機で105℃、2時間乾燥させた後の下記式により算出される乾燥減量(質量%)
乾燥減量(質量%)=(乾燥前の水硬性組成物用プレミックス質量(g)―105℃、2時間乾燥後の水硬性組成物用プレミックス質量(g))×100/乾燥前の水硬性組成物用プレミックス質量(g)
(A)成分、(C)成分、及び(D)成分は、本発明の水硬性組成物用プレミックスで記載した態様と同じである。(A)成分、(B’)成分、(C)成分、及び(D)成分以外のその他成分も同様であり、前記水硬性組成物用プレミックスに含有することができる。
各成分の含有量、及び質量比は、本発明の水硬性組成物用プレミックスで記載した範囲と同じである。
【0056】
前記水硬性組成物用プレミックスの乾燥減量は、水硬性組成物の強度発現性及び硬化促進の観点から、2.9質量%未満、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、更に1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、そして、0質量%以上である。
乾燥減量は、例えば、水硬性組成物用プレミックスをアルミニウム製の平皿に10.0g計量し、恒温送風乾燥機(例えば、DRM620DE、アドバンテック株式会社製)に入れ、105℃、2時間乾燥させて、次いで、室温まで冷却した後、質量を測定し、前記式に基づいて乾燥減量(質量%)を算出する。
【0057】
(B’)成分の細骨材は、目開き10mmふるいを全部通り、目開き5mmふるいを重量で85%以上通過する骨材である。
細骨材としては、JIS A0203-2014中の番号2311で規定されるものが挙げられる。細骨材としては、具体的には、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)並びに再生細骨材等から選ばれる1種以上が挙げられる。
(B’)成分は、本発明の(B)成分である、表面水率が-5%以上0%未満の細骨材であってよく、本発明の(B)成分で記載した態様を適宜適用することができる。
【0058】
本発明の水硬性組成物用プレミックス中、(B’)成分の含有量は、前記水硬性組成物用プレミックス100質量部に対して、水硬性組成物の硬化体強度及び硬化促進の観点から、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは60質量部以上、より更に好ましくは70質量部以上、そして、好ましくは90質量部以下、より好ましくは85質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。
【0059】
本発明の水硬性組成物用プレミックス中、(A)成分の含有量と(B’)成分の含有量との質量比(B’)/(A)は、水硬性組成物の硬化体ひび割れ抑制及び硬化促進の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.75以上、更に好ましくは1以上、より更に好ましくは2以上、より更に好ましくは3以上、そして、水硬性組成物の硬化体強度及び硬化促進の観点から、好ましくは5以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは4以下である。
【0060】
〔水硬性組成物用プレミックスの製造方法〕
本発明は、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分とを混合する、水硬性組成物用プレミックスの製造方法を提供する。
(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分は、本発明の水硬性組成物用プレミックスで記載した態様と同じである。(A)成分~(D)成分以外のその他成分も同様であり、本発明の水硬性組成物用プレミックスの製造方法において混合することができる。
各成分の混合量、及び質量比は、本発明の水硬性組成物用プレミックスで記載した各成分の含有量、及び質量比の規定について、含有量を混合量に置き換えて本発明の水硬性組成物用プレミックスの製造方法に適用することができる。
本発明の水硬性組成物用プレミックスの製造方法は、本発明の水硬性組成物用プレミックスで記載した態様を適宜適用することができる。
【0061】
本発明の水硬性組成物用プレミックスの製造方法において、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の混合は、公知の方法により行うことができる。具体的には、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を同時に混合する方法が挙げられる。これらの成分の混合には、パン型強制ミキサー、2軸強制ミキサー、可傾式ミキサー、リボンミキサー、ナウタミキサー等の混合ミキサーを使用することができる。
【0062】
本発明の水硬性組成物用プレミックスの製造方法により、(A)成分、(B’)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有する水硬性組成物用プレミックスであり、前記水硬性組成物用プレミックスの上記方法により測定される乾燥減量が2.9質量%未満である、水硬性組成物用プレミックスが製造される。
【0063】
〔水硬性組成物〕
本発明は、本発明の水硬性組成物用プレミックスと、水とを混合する、水硬性組成物の製造方法を提供する。
本発明の水硬性組成物の製造方法は、本発明の水硬性組成物用プレミックスで記載した態様を適宜適用することができる。
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有する、本発明の水硬性組成物用プレミックス、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を配合してなる、本発明の水硬性組成物用プレミックス、(A)成分、(B’)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有する水硬性組成物用プレミックスであり、前記水硬性組成物用プレミックスの下記方法により測定される乾燥減量が2.9質量%未満である、本発明の水硬性組成物用プレミックスのいずれであってもよい。
【0064】
本発明の水硬性組成物の製造方法において、水硬性組成物用プレミックス中の(A)成分の混合量と、水の混合量との比(水/(A))[水硬性組成物中の水と(A)成分の質量百分率(質量%)]が、水硬性組成物の硬化促進、及び水硬性組成物のワーカビリティーの観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは65質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは75質量%以下である。
【0065】
本発明は、本発明の水硬性組成物用プレミックス、及び水を配合してなる、水硬性組成物を提供する。
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用プレミックスで記載した態様を適宜適用することができる。
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有する、本発明の水硬性組成物用プレミックス、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を配合してなる、本発明の水硬性組成物用プレミックス、(A)成分、(B’)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有する水硬性組成物用プレミックスであり、前記水硬性組成物用プレミックスの前記方法により測定される乾燥減量が2.9質量%未満である、本発明の水硬性組成物用プレミックスのいずれであってもよい。
【0066】
本発明の水硬性組成物において、水硬性組成物用プレミックス中の(A)成分の配合量と、水の配合量との比(水/(A))[水硬性組成物中の水と(A)成分の質量百分率(質量%)]が、水硬性組成物の硬化促進、及び水硬性組成物のワーカビリティーの観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは65質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは75質量%以下である。
【0067】
〔乾式吹付工法〕
本発明は、本発明の水硬性組成物用プレミックスと、水とを混合して水硬性組成物を製造し、前記水硬性組成物を対象物に吹き付ける、乾式吹付工法を提供する。
【0068】
本発明の乾式吹付工法は、本発明の水硬性組成物用プレミックスで記載した態様を適宜適用することができる。
本発明の水硬性組成物用プレミックスは、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有する、本発明の水硬性組成物用プレミックス、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を配合してなる、本発明の水硬性組成物用プレミックス、(A)成分、(B’)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有する水硬性組成物用プレミックスであり、前記水硬性組成物用プレミックスの前記方法により測定される乾燥減量が2.9質量%未満である、本発明の水硬性組成物用プレミックスのいずれであってもよい。
本発明の乾式吹付工法における前記水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物と同じであり、本発明の水硬性組成物、及びその製造方法で記載した態様を適宜適用することができる。水硬性組成物用プレミックス中の(A)成分の混合量と、水の混合量との比(水/(A))[水硬性組成物中の水と(A)成分の質量百分率(質量%)]も、本発明の水硬性組成物の製造方法で記載した範囲と同じである。
【0069】
本発明の吹付工法では、本発明の水硬性組成物用プレミックスと水と混合して調製した前記水硬性組成物を対象物に吹き付ける。この方法は、いわゆる乾式吹付工法に相当する。
本発明の乾式吹付工法は、従来の吹付設備により実施可能である。吹付設備は、乾式での吹き付けが支障なく行われればよく、例えば、吹付け機内で、本発明の水硬性組成物用プレミックスを空気圧送し、水を合流混合して吹付けを行うことが可能である。
【実施例0070】
表中の成分は以下のものを用いた。
<(A)成分>
A-1:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製、比重3.16)
<(B)成分>
B-1:山砂(京都府城陽市産、表乾密度2.51)
<(C)成分>
C-1:マイテイ 21PSD(花王株式会社製、ポリカルボン酸エーテル系粉末状分散剤)
【0071】
<(D)成分>
D-1:アルコックス L-6(明成化学工業株式会社製、ポリエチレンオキサイド、重量平均分子量:60,000)
D-2:アルコックス R-150(明成化学工業株式会社製、ポリエチレンオキサイド、重量平均分子量:150,000)
D-3:アルコックス R-1000(明成化学工業株式会社製、ポリエチレンオキサイド、重量平均分子量:325,000)
D-4:アルコックス E-30(明成化学工業株式会社製、ポリエチレンオキサイド、重量平均分子量:475,000)
D-5:アルコックス E-45(明成化学工業株式会社製、ポリエチレンオキサイド、重量平均分子量:800,000)
D-6:アルコックス EP1010N(明成化学工業株式会社製、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体、重量平均分子量:100,000)
<(D’)成分((D)成分の比較成分)>
D’-1:ポリエチレンオキサイド、分子量1,000,000(富士フイルム和光純薬株式会社製)
【0072】
(1)(B)成分の表面水率の調整
上記(B)成分を恒温送風乾燥機DRM620DE(アドバンテック株式会社製)に入れ、105℃、24時間乾燥させ絶対乾燥状態とした。次いで、室温まで冷却した後展開し、肩掛式噴霧器(キンボシ株式会社製)で和歌山市上水を散布しながら、シャベルで均質化して、JIS A 1111に記載の方法で測定した表面水率が、-3.2%、-1.6%、0%となるようにそれぞれ調整した。用いた(B)成分の表面水率を表1中に併記する。なお、表面水率が0%のものは、(B)成分の比較成分となる。
【0073】
(2)水硬性組成物用プレミックスの調製
(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分又は(D’)成分を表1記載の配合量(質量部)となるようにJIS R 5201記載のホバート型のミキサーに投入し、62rpmで20秒間混合し、水硬性組成物用プレミックスを調製した。なお表1中の(C)成分、及び(D)成分又は(D’)成分の(A)100に対する配合量は、(A)成分100質量部に対する各成分の配合量(質量部)である。
【0074】
(3)水硬性組成物用プレミックスの乾燥減量の測定
(2)に記載の方法で調製した水硬性組成物用プレミックスをアルミニウム製の平皿に10.0g計量し、恒温送風乾燥機DRM620DE(アドバンテック株式会社製)に入れ、105℃、2時間乾燥させた。次いで、室温まで冷却した後、質量を測定し、下記式に基づいて乾燥減量(質量%)を算出した。結果を表1に示す。
乾燥減量(質量%)=(乾燥前の水硬性組成物用プレミックス質量(g)―105℃、2時間乾燥後の水硬性組成物用プレミックス質量(g))×100/乾燥前の水硬性組成物用プレミックス質量(g)
【0075】
(4)水硬性組成物の調製
次いで、(2)に記載の方法で調製した水硬性組成物用プレミックスに対して、上水道水(和歌山市上水、比重1.00)を表1記載の水/(A)比[水硬性組成物中の水と(A)成分の質量百分率(質量%)]となるように添加し、(2)記載のホバート型のミキサーを用いて、62rpmでさらに2分間混練して水硬性組成物を調製した。
【0076】
(5)凝結遅延性の評価
(4)に記載の方法で調製した調製直後の水硬性組成物を20.0gサンプリングし、等温熱量測定装置 TAM Air(TA Instruments製)を用いて水和発熱量(kJ/g)を測定し、水和発熱第二ピーク到達までに要した時間(分)を、凝結時間の指標とした。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1中、本発明の実施例と比較例を対比して、本発明の実施例は、短い水和発熱第二ピーク到達時間を示した。これは、重量平均分子量が適度に大きい本発明の(D)成分であるポリアルキレンオキサイドにより、水溶液の表面張力低下を抑制しながら細骨材表面の水を保持し、細骨材による水の吸水に伴う凝結遅延を起こしにくいためであると考察される。このように本発明の水硬性組成物用プレミックスは、(B)成分である表面水率が0%未満の細骨材と(C)成分であるポリカルボン酸系分散剤を併用しても水硬性組成物の凝結遅延を起こしにくいことから、吹付け機内で、水と水硬性組成物用プレミックスの混合性向上のために、該プレミックスに分散剤を含有する必要がある、乾式吹付工法に最適である。
同様に、本発明の水硬性組成物用プレミックスは、細骨材、及び(C)成分であるポリカルボン酸系分散剤を併用し、乾燥減量が2.9質量%未満であることから、水硬性組成物の凝結遅延を起こしにくく、吹付け機内で、水と水硬性組成物用プレミックスの混合性向上のために、該プレミックスに分散剤を含有する必要がある、乾式吹付工法に最適である。
なお表面水率が-5%を下回る細骨材を用いた場合には、細骨材による吸水が著しく、水溶性高分子が細骨材による急激な水の吸水を抑制することが困難となるため、水和促進効果が低下すると考えられる。