(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105164
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】下水汚泥等の高含水率物質の燃料化システム
(51)【国際特許分類】
C10L 5/46 20060101AFI20250703BHJP
C02F 11/13 20190101ALI20250703BHJP
C10B 53/00 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
C10L5/46
C02F11/13 ZAB
C10B53/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223517
(22)【出願日】2023-12-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り NECRESカタログ(令和5年7月25日の説明で使用) NECRES説明資料(令和5年7月25日の説明で使用)
(71)【出願人】
【識別番号】597022540
【氏名又は名称】株式会社環境経営総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002181
【氏名又は名称】弁理士法人IP-FOCUS
(72)【発明者】
【氏名】松下 敬通
【テーマコード(参考)】
4D059
4H015
【Fターム(参考)】
4D059AA01
4D059AA03
4D059AA07
4D059BB03
4D059BD03
4D059BD21
4D059BJ03
4D059CA01
4D059CA14
4D059CC03
4H015AA01
4H015AB01
4H015BA09
4H015BB03
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】汚泥等の含水率の高い物質を迅速に乾燥させ、CO
2の排出量を低減し、発熱量の高い燃料が得られる燃料化システムを提供する。
【解決手段】燃料化システム1は、汚泥等の含水原料M1の乾燥を行うシステムであって、バイオマス燃料を用いる熱源装置10と、熱風を利用して炭化用原料M2を炭化させる炭化装置20と、含水原料M1の乾燥を行う乾燥装置40を備える。炭化装置20の炭化物Cは、ペレットバーナ13や火力発電等に用いることができる。汚泥や畜糞等の含水原料M1を乾燥させ、炭化処理を行って燃料を生成し、燃料化システム1の運転を行うことで、化石燃料の供給を極力抑制して連続運転を可能とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水原料を乾燥及び炭化させて燃料を生成する燃料化システムであって、
バイオマス燃料を用いて熱風を発生させる熱源装置と、前記熱風を利用して前記含水原料の乾燥を行う乾燥装置と、前記熱風を利用して炭化用原料を炭化させる炭化装置とを備え、
前記乾燥装置は、前記含水原料に前記熱風を直接接触させることにより乾燥を行う装置であり、
前記炭化装置は、前記炭化用原料を間接的に加熱する間接加熱式の装置であり、
前記熱源装置と前記炭化装置、及び前記炭化装置と前記乾燥装置を熱風用ダクトにより順に接続し、
前記熱源装置からの前記熱風により前記炭化装置の加熱を行い、前記炭化装置の加熱を行った熱風を前記乾燥装置内に導入して乾燥処理を行い、
前記乾燥装置により乾燥された乾燥原料を前記炭化装置に投入し、前記炭化装置により燃料としての炭化物を生成することを特徴とする燃料化システム。
【請求項2】
前記バイオマス燃料が、前記炭化装置により炭化された前記炭化物であることを特徴とする請求項1に記載の燃料化システム。
【請求項3】
前記炭化装置は、外室と、前記外室内に間隔を存して保持される加熱室とを備え、前記加熱室は、前記炭化用原料が投入される炭化用投入口と、前記加熱室内に設けられ、前記加熱室内に投入された前記炭化用原料を下流側に搬送する搬送手段と、前記加熱室の下流側に設けられた炭化用吐出口とを備え、
前記外室と前記加熱室の間に加熱通路が形成され、前記熱源装置からの前記熱風を前記加熱通路に供給することにより前記加熱室を間接的に加熱することを特徴とする請求項1に記載の燃料化システム。
【請求項4】
前記乾燥装置は、内部に円柱状の空間を有する乾燥機本体と、前記乾燥機本体の内部で前記乾燥機本体の軸方向に沿って設けられた回転軸を中心に回転し、前記乾燥機本体の内部に供給された前記含水原料を攪拌する攪拌手段と、前記乾燥機本体の上流側に設けられ前記熱風が供給される熱風供給口と、前記乾燥機本体の上流側に設けられ前記含水原料が投入される乾燥用投入口と、前記乾燥機本体の下流側に設けられた乾燥用吐出口と、前記乾燥機本体の下流側に設けられた排気口とを備え、
前記乾燥装置により乾燥された乾燥原料は、前記乾燥用吐出口から吐出されるものと、前記排気口から排出された排気ガスから分離されて吐出されたものを含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料化システム。
【請求項5】
前記熱風用ダクトは、前記熱源装置と前記炭化装置とを接続する第1熱風用ダクトと、前記炭化装置と前記乾燥装置とを接続する第2熱風用ダクトを備え、
前記第2熱風用ダクトに、前記炭化装置から前記乾燥装置に供給する前記熱風の量を調節する調節ダンパが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料化システム。
【請求項6】
ガスを燃料とするガスエンジンと、前記ガスエンジンの排気ガスを含む排熱ガスを前記乾燥装置に供給する排熱供給手段と、前記ガスエンジンによって駆動される発電装置をさらに備え、
前記炭化装置において前記炭化用原料を加熱した際に発生する可燃性ガスを用いて前記ガスエンジンを駆動させ、前記発電装置により発電を行い、前記排熱供給手段により前記排熱ガスを前記乾燥装置に供給して前記乾燥装置による乾燥処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の燃料化システム。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料化システムにおいて、
前記乾燥装置により前記含水原料を乾燥させて前記乾燥原料を生成し、
前記炭化装置により前記乾燥原料を炭化させて前記炭化物を生成し、
前記炭化物を前記バイオマス燃料として前記熱源装置により前記熱風を生成し、
前記発電装置によって発電された電力を用いて前記乾燥装置、前記炭化装置、又は前記熱源装置のいずれか又はすべてを稼働させた状態で、前記熱源装置で使用される前記炭化物の単位時間当たりの使用量が前記炭化装置により生成される前記炭化物の単位時間当たりの生成量を下回る構成であることを特徴とする燃料化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥等の含水率の高い物質を乾燥させ、燃料化を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥等の含水率の高い物質は、従来は主に脱水して焼却するという処理が行われており、脱水と焼却において多くの化石燃料を必要としていた。例えば、脱水処理だけを見ても、処理の際にA重油が多く用いられており、含水率が80%の1トンの下水汚泥の乾燥を行うのに、約87.7LのA重油が必要となる。
【0003】
ここで、A重油1L当たりのCO2排出量は、約2.71kgであり、1トンの下水汚泥の乾燥を行うと、約237.7kgのCO2が排出されることになる。これは、単に下水汚泥を乾燥するために必要なA重油であり、焼却に必要となるA重油は別途必要となる。
【0004】
このように、汚泥等の含水率の高い物質の処理には、多くの化石燃料が必要であり、多くの費用がかかることになる。また、その処理によってCO2排出量も増大するため、SDGsへの取り組みとして、CO2の排出量を削減するための手段が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、下水汚泥を脱水処理した脱水汚泥を乾燥して焼却処分すると共に、乾燥汚泥を作製してバイオマスボイラ等のバイオマス燃料として利用可能な下水汚泥燃料化システムが開示されている。特許文献1に記載された下水汚泥燃料化システムは、バイオマス燃料を燃焼させるバイオマスボイラを用いると共に、乾燥機によって乾燥された乾燥汚泥をバイオマスバーナに供給することにより、CO2の排出量を削減できるとしている。また、乾燥汚泥をバイオマス燃料として利用することも記載されている。
【0007】
特許文献1では、乾燥汚泥をバイオマス燃料に利用することが記載されているが、乾燥汚泥は、単位質量当たりの発熱量が約4,000kcal/kg(約16.8MJ/kg)程度であり(段落0035)、火力発電等に用いられる燃料(6,000kcal以上:約25.2MJ/kg)の発熱量のような高い発熱量の燃料は得ることができない。
【0008】
本発明は、汚泥等の含水率の高い物質を迅速に乾燥させると共に、CO2の排出量を低減し、さらに発熱量の高い燃料を得ることができる燃料化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の燃料化システムは、含水原料を乾燥及び炭化させて燃料を生成する燃料化システムであって、バイオマス燃料を用いて熱風を発生させる熱源装置と、前記熱風を利用して前記含水原料の乾燥を行う乾燥装置と、前記熱風を利用して炭化用原料を炭化させる炭化装置とを備え、前記乾燥装置は、前記含水原料に前記熱風を直接接触させることにより乾燥を行う装置であり、前記炭化装置は、前記炭化用原料を間接的に加熱する間接加熱式の装置であり、前記熱源装置と前記炭化装置、及び前記炭化装置と前記乾燥装置を熱風用ダクトにより順に接続し、前記熱源装置からの前記熱風により前記炭化装置の加熱を行い、前記炭化装置の加熱を行った熱風を前記乾燥装置内に導入して乾燥処理を行い、前記乾燥装置により乾燥された乾燥原料を前記炭化装置に投入し、前記炭化装置により燃料としての炭化物を生成することを特徴とする。
【0010】
本発明の燃料化システムによれば、熱源装置によってバイオマス燃料を用いて熱風を発生させ、その熱風で炭化装置による炭化と、乾燥装置による乾燥を行っている。これにより、化石燃料を用いる場合に比べてCO2の排出量を低減することができる。また、乾燥装置による乾燥を行うのみならず、炭化装置による炭化を行っている。乾燥装置により乾燥された乾燥原料は、例えば汚泥の場合は、前述の通り約16.8MJ/kg程度の発熱量であるが、これを炭化用原料として炭化装置で炭化させれば、最終的な炭化物は火力発電等に用いられる燃料と同等の発熱量を有する燃料を得ることができる。
【0011】
また、本発明の燃料化システムにおいて、前記バイオマス燃料が、前記炭化装置により炭化された前記炭化物であってもよい。当該構成によれば、汚泥等の含水原料から良質な燃料である炭化物を得ることができ、当該炭化物をバイオマス燃料とするため、化石燃料を極力用いることなく汚泥等を燃料化することができる。
【0012】
また、本発明の燃料化システムにおいて、前記炭化装置は、外室と、前記外室内に間隔を存して保持される加熱室とを備え、前記加熱室は、前記炭化用原料が投入される炭化用投入口と、前記加熱室内に設けられ、前記加熱室内に投入された前記炭化用原料を下流側に搬送する搬送手段と、前記加熱室の下流側に設けられた炭化用吐出口とを備え、前記外室と前記加熱室の間に加熱通路が形成され、前記熱源装置からの前記熱風を前記加熱通路に供給することにより前記加熱室を間接的に加熱するものであってもよい。
【0013】
当該構成によれば、熱風を加熱通路に供給して加熱室を間接的に加熱するため、この加熱装置を経由した熱風の温度低下が抑えられ、乾燥装置に供給される熱風の温度を高く保つことができる。
【0014】
また、本発明の燃料化システムにおいて、前記乾燥装置は、内部に円柱状の空間を有する乾燥機本体と、前記乾燥機本体の内部で前記乾燥機本体の軸方向に沿って設けられた回転軸を中心に回転し、前記乾燥機本体の内部に供給された前記含水原料を攪拌する攪拌手段と、前記乾燥機本体の上流側に設けられ前記熱風が供給される熱風供給口と、前記乾燥機本体の上流側に設けられ前記含水原料が投入される乾燥用投入口と、前記乾燥機本体の下流側に設けられた乾燥用吐出口と、前記乾燥機本体の下流側に設けられた排気口とを備え、前記乾燥装置により乾燥された乾燥原料は、前記乾燥用吐出口から吐出されるものと、前記排気口から排出された排気ガスから分離されて吐出されたものを含むものであってもよい。
【0015】
当該構成によれば、乾燥機本体に投入された含水原料は、乾燥機本体内で攪拌手段により攪拌され、直接熱風に曝されるため、迅速に乾燥させることができる。また、乾燥された原料は、乾燥用吐出口から吐出されると共に、攪拌手段によって乾燥機本体内に浮遊しているものは、排気口から排出された後に排気ガスから分離されて吐出される。
【0016】
また、本発明の燃料化システムにおいて、前記熱風用ダクトは、前記熱源装置と前記炭化装置とを接続する第1熱風用ダクトと、前記炭化装置と前記乾燥装置とを接続する第2熱風用ダクトを備え、前記第2熱風用ダクトに、前記炭化装置から前記乾燥装置に供給する前記熱風の量を調節する調節ダンパが設けられていてもよい。
【0017】
当該構成によれば、乾燥装置に流入する熱風の流量が調節できるので、乾燥装置の乾燥状態の調節が可能となる。また、当該構成により、乾燥装置がメンテナンス中である等の理由により稼働できない場合であっても、調節ダンパにより熱風を炭化装置から乾燥装置に供給しないようにすれば、炭化装置を単独で稼働させることができる。
【0018】
また、本発明の燃料化システムにおいては、ガスを燃料とするガスエンジンと、前記ガスエンジンの排気ガスを含む排熱ガスを前記乾燥装置に供給する排熱供給手段と、前記ガスエンジンによって駆動される発電装置をさらに備え、前記炭化装置において前記炭化用原料を加熱した際に発生する可燃性ガスを用いて前記ガスエンジンを駆動させ、前記発電装置により発電を行い、前記排熱供給手段により前記排熱ガスを前記乾燥装置に供給して前記乾燥装置による乾燥処理を行うものであってもよい。
【0019】
当該構成によれば、炭化装置から発生する可燃性ガスを用いてガスエンジンを駆動させることができるので、当該ガスエンジンの動力を利用することが可能となる。例えば、ガスエンジンで発電機を駆動することにより発電を行うことができる。また、ガスエンジンの排熱ガスにより乾燥装置の乾燥処理の効率を向上させることができる。
【0020】
また、当該構成において、前記乾燥装置により前記含水原料を乾燥させて前記乾燥原料を生成し、前記炭化装置により前記乾燥原料を炭化させて前記炭化物を生成し、前記炭化物を前記バイオマス燃料として前記熱源装置により前記熱風を生成し、前記発電装置によって発電された電力を用いて前記乾燥装置、前記炭化装置、又は前記熱源装置のいずれか又はすべてを稼働させた状態で、前記熱源装置で使用される前記炭化物の単位時間当たりの使用量が前記炭化装置により生成される前記炭化物の単位時間当たりの生成量を下回る構成とすることが好ましい。
【0021】
当該構成によれば、本発明の燃料化システムに汚泥等の含水原料を供給するだけで、外部から化石燃料を補充することなくシステム全体を稼働させることができる。また、発電装置によって発電された電力で各装置を稼働させることができるので、外部からの電力の供給も不要とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、汚泥等の含水率の高い物質を迅速に乾燥させると共に、CO2の排出量を低減し、発熱量の高い燃料を得ることができる。また、発電装置を備えることにより、さらに電力も得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態の燃料化システムの概要を示す説明図。
【
図2】本実施形態の燃料化システムの具体的構成を示す説明図。
【
図3】第2の実施形態の燃料化システムの主要構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態の一例である燃料化システム1について、
図1~
図3を参照して説明する。燃料化システム1は、
図1に示すように、含水原料M1の乾燥及び炭化を行って燃料としての炭化物Cを得るシステムであって、バイオマス燃料Bを用いて熱風を発生させる熱源装置10と、熱風を利用して炭化用原料M2を炭化させて炭化物Cを得る炭化装置20と、熱風を利用して含水原料M1の乾燥を行う乾燥装置40を備えている。なお、
図1~
図3において、必要に応じて各構成の内部構造を可視化して表示している。
【0025】
熱源装置10と炭化装置20は、第1熱風用ダクト11により接続されており、炭化装置20と乾燥装置40は、第2熱風用ダクト12により接続されている。これらの第1熱風用ダクト11と第2熱風用ダクト12が、本発明における熱風用ダクトを構成している。本実施形態では、熱源装置10、炭化装置20及び乾燥装置40が熱風用ダクトにより順に接続される。
【0026】
熱源装置10は、本実施形態では、ペレット状のバイオマス燃料Bを燃料として燃焼を行うペレットバーナ13を用いている。また、本実施形態では、バイオマス燃料Bとして、後述する炭化物Cを用いることができる。ペレットバーナ13は、ペレット状の燃料を燃焼させて熱源とするバーナであり、本実施形態では市場に流通している設備を用いている。また、熱源装置10は、
図2に示すように、バイオマス燃料Bを供給する燃料供給口14と、ペレットバーナ13による燃焼を行う円筒状の燃焼室15と、燃焼室15に対して直交するように配置された円筒状の副燃焼室16を備えている。
【0027】
炭化装置20は、本実施形態では、間接加熱式のロータリーキルンを用いている。具体的には、炭化装置20は炭化用原料M2を間接的に加熱する間接加熱式の装置であり、設置面に固定される固定式の外室21と、外室21内に間隔を存して保持される回転式の加熱室22とを備えている。加熱室22は、炭化用原料M2が投入される炭化用投入口23と、加熱室22内に設けられ、内部に投入された炭化用原料M2を下流側に搬送する搬送手段24と、加熱室22の下流側に設けられた炭化用吐出口25と、炭化用吐出口25から吐出される炭化物Cを冷却する炭化物冷却器26を備えている。
【0028】
炭化装置20は、外室21と加熱室22の間に加熱通路27が形成され、外室21には第1熱風用ダクト11が接続される熱風供給口28と、第2熱風用ダクト12が接続される熱風導出口29が設けられている。
【0029】
炭化装置20は、第1熱風用ダクト11及び熱風供給口28を介して熱源装置10からの熱風を加熱通路27に供給することにより加熱室22の内部を間接的に加熱する装置である。この炭化装置20によって炭化され、炭化用吐出口25から吐出される炭化物Cは、発熱量が約21.0~23.1MJ/kgであり、ペレットバーナ13や火力発電等に用いることができる良質な燃料となる。
【0030】
炭化装置20の搬送手段24は、本実施形態では加熱室22内に形成された軸方向に延びる突起を設け、加熱室22を下流側に向けて傾斜させている。当該構成により、炭化用原料M2の均一な炭化を行うと共に、炭化用原料M2を搬送可能としている。具体的には、下流側に傾斜した加熱室22が回転されることにより炭化用原料M2を下流側に搬送し、内部の突起で炭化用原料M2の均一な炭化を行っている。また、炭化装置20の加熱室22の下流側には、加熱室22内で発生する可燃性ガスCGが導出される可燃性ガス導出口30が設けられている。
【0031】
本実施形態では、可燃性ガス導出口30から導出された可燃性ガスCGは、可燃性ガス処理装置31によって浄化されて回収される。この可燃性ガスCGは、ボイラ等の熱源として用いてもよく、後述する第2の実施形態のように、発電ユニット70用の燃料として用いることもできる。また、可燃性ガス処理装置31の浄化によって除去されたタール分もボイラ等の熱源に使用することができる。
【0032】
乾燥装置40は、汚泥や畜糞等の含水原料M1を攪拌しながら熱風を直接接触させることにより乾燥を行う装置であり、内部に円柱状の空間を有する乾燥機本体41と、乾燥機本体41の内部でその軸方向に沿って設けられた回転軸42を中心に回転し、内部に供給された含水原料M1を攪拌する攪拌手段43を備えている。
【0033】
また、乾燥装置40は、乾燥機本体41の上流側に設けられ熱風が供給される熱風供給口44と、乾燥機本体41の上流側に設けられ含水原料M1が投入される乾燥用投入口45と、乾燥機本体41の下流側に設けられた乾燥用吐出口46と、乾燥された乾燥原料M3を導出する導出器47とを備えている。この導出器47には、冷却機構を設けて乾燥原料M3を冷却できるようにしてもよい。
【0034】
また、乾燥装置40は、乾燥機本体41の下流側に設けられた排気口48と、排気口48に接続されたサイクロン49と、サイクロン49によって灰等の固形物の分離が行われた後の排ガスを処理する排ガス処理装置50を備えている。
【0035】
攪拌手段43は、回転軸42から放射状に延びるアーム43aと、アーム43aの先端に設けられたフィン43bを有している。フィン43bは、
図2に示すように、回転軸42の軸方向に対して傾斜するようにアーム43aに取り付けられており、乾燥用投入口から投入された含水原料M1を攪拌しながら下流側に搬送する構成となっている。
【0036】
乾燥装置40により乾燥された結果物である乾燥原料M3は、乾燥用吐出口46から吐出されるものと、排気口48から排出された排気ガスからサイクロン49によって分離されて吐出されたものが含まれる。
【0037】
図2は、本実施形態の燃料化システム1の主要部を上方から見た平面図である。
図2に示すように、本実施形態の燃料化システム1では、熱源装置10と、炭化装置20と、乾燥装置40が平行に隣接して設けられている。熱源装置10の副燃焼室16と炭化装置20の外室21は短い第1熱風用ダクト11により接続されている。
【0038】
また、炭化装置20の熱風導出口29と乾燥装置40の熱風供給口44を接続する第2熱風用ダクト12には、炭化装置20から排出されて乾燥装置40に流入する熱風の流量の調節が可能な調節ダンパ12aが設けられている。炭化装置20から排出される熱風は、調節ダンパ12aによって、第2熱風用ダクト12に流入される量と、排ガス処理装置50へ導入される量の調節が行われる。
【0039】
このように、炭化装置20と乾燥装置40とを接続する第2熱風用ダクト12に調節ダンパ12aを用いることにより、乾燥装置40に流入する熱風の流量が調節できるので、乾燥装置40の乾燥状態の調節が可能となる。また、当該構成により、乾燥装置40を稼働させずに炭化装置20を稼働させることもできる。このため、例えば乾燥装置40がメンテナンス中である場合であっても、炭化装置20を稼働させて炭化物Cを生成することができる。
【0040】
次に、本実施形態の燃料化システム1の作動について、
図1及び2を参照して説明する。燃料化システム1の始動にあたっては、まず、熱源装置10のペレットバーナ13の燃料供給口14に燃料を供給し、燃料に点火することによって燃焼を開始する。その際の燃料は、炭化装置20によって炭化された炭化物Cを用いることが好ましい。炭化物Cがない場合は、炭化物Cと同等の発熱量を有する燃料を用いればよい。
【0041】
熱源装置10によって発生した熱風は、第1熱風用ダクト11を介して炭化装置20の加熱通路27に導入され、加熱室22内の加熱が行われる。また、加熱通路27を通過した熱風は、熱風導出口29及び第2熱風用ダクト12を介して乾燥装置40の乾燥機本体41の内部に導入され、その内部を加熱する。乾燥機本体41の内部を加熱した熱風は、排気口48からサイクロン49を介して排ガス処理装置50に送られる。
【0042】
このように、各装置の暖機が行われた後、炭化装置20に炭化用原料M2を投入し、乾燥装置40に含水原料M1を投入する。
【0043】
炭化装置20においては、炭化用投入口23から投入された炭化用原料M2は、加熱室22の内部で搬送手段24に搬送されながら加熱され、炭化処理が行われる。炭化用原料M2を加熱すると、炭化用原料M2の一部が可燃性ガスCGとなり、固形物は炭化されて炭化物Cとなる。可燃性ガスCGは、可燃性ガス導出口30から導出され、可燃性ガス処理装置31によって浄化されて回収される。
【0044】
乾燥装置40においては、乾燥用投入口45から投入された含水原料M1が、攪拌手段43によって攪拌され、熱風供給口44から供給された熱風によって徐々に乾燥されながら乾燥機本体41の内部で下流側に搬送される。乾燥機本体41内で乾燥されて生成された乾燥原料M3は、乾燥用吐出口46から外部に吐出される。また、攪拌手段43によって攪拌されて熱風により浮遊した乾燥原料M3は、排気口48から外部に吐出され、サイクロン49によって固形分が分離されてサイクロン49から外部に吐出される。
【0045】
本実施形態の燃料化システム1によれば、含水原料M1が含水率70%~80%の下水汚泥であった場合、乾燥原料M3となった際には含水率を10%~20%にまで低減させることができた。
【0046】
従来は、汚泥等の含水原料M1を脱水及び焼却する際に多くの化石燃料を用いていたが、本実施形態の燃料化システム1によれば、処理対象である汚泥等の含水原料M1を乾燥装置40で乾燥させて乾燥原料M3とし、これを炭化装置20で炭化させて炭化物Cとし、これをペレットバーナ13で燃料とするため、使用する化石燃料を大幅に削減することができる。
【0047】
また、本実施形態の燃料化システム1においては、汚泥や畜糞のみならず、食料品に関する残渣(コーヒーの絞りかす、農産物加工残渣、加工食品や食品原料のロス品)、選定枝や草類等の植物残渣等、多くの物質を原料として、乾燥及び炭化処理を行うことができる。
【0048】
このため、自治体や特定の地域内において、従来不要とされていた物質を燃料に変換し、その地域内において燃料として使用することができる。この燃料は、その由来が汚泥や畜糞等であり、いわゆるバイオマス燃料Bとなるため、カーボンニュートラルの実現に大きく貢献するものとなる。
【0049】
なお、上記実施形態において、炭化装置20の外室21を固定式のものとしているが、これに限らず、外室21が回転するものであってもよい。また、炭化装置20の搬送手段24は、加熱室22内に設けられた突起及び傾斜状態で回転させる構成となっているが、加熱室22内の炭化用原料M2を上流側から下流側に搬送できれば、加熱室22内に螺旋状のフィンを設けた構成としてもよい。
【0050】
また、上記実施形態において、熱源装置10の副燃焼室16に熱交換器を設置して、副燃焼室16から過熱蒸気等の熱源を取り出して利用するようにしてもよい。当該構成によれば、ペレットバーナ13により発生する熱の幅広い利用が可能となる。
【0051】
次に、本発明の第2の実施形態である燃料化システム1Aについて、
図3を参照して説明する。第2の実施形態の燃料化システム1Aは、
図3に示すように、炭化装置20の可燃性ガス導出口30に接続された発電ユニット70を備えている点が上記実施形態と異なる。燃料化システム1Aのその他の構成において、上記実施形態と共通の構成については詳細な説明を省略する。
【0052】
発電ユニット70は、可燃性ガス導入口71を備え、可燃性ガス導入口71は可燃性ガスダクト72によって炭化装置20の可燃性ガス導出口30に接続されている。可燃性ガスダクト72には、可燃性ガスにおけるタール除去等を行う可燃性ガス処理装置31が設けられている。
【0053】
発電ユニット70は、主要構成として、ガスエンジン73と発電装置74とを有している。ガスエンジン73は、可燃性ガス導入口71から導入される可燃性ガスを燃料として稼働され、発電装置74を回転させて発電を行う。本実施形態では、このガスエンジン73は、市場に流通している一般的なガスエンジンを使用している。また、発電装置74も同様に、市場に流通している一般的な発電機を使用している。
【0054】
ガスエンジン73は、排気ガス及び排気系(エキゾーストマニホールド等)の排熱を排熱ガスとして回収して乾燥装置40に供給する排熱供給手段75を備えている。この排熱供給手段75は、炭化装置20と乾燥装置40とを接続する第2熱風用ダクト12に接続されている。
【0055】
第2の実施形態の燃料化システム1Aは、上記構成を備えているので、炭化装置20の炭化処理により発生した可燃性ガスCGを発電ユニット70の発電に利用することができる。また、可燃性ガスCGを燃料にしてガスエンジン73を駆動させた際の排気ガス及び排気系の排熱を乾燥装置40の乾燥処理に利用することができる。
【0056】
このように、第2の実施形態の燃料化システム1Aによれば、本来は廃棄物となる汚泥等の物質を原料として、極力他の化石燃料等を用いることを抑制しながら、乾燥処理及び炭化処理を行い、炭化処理により生じた可燃性ガスCGを利用して発電を行うことができる。
【0057】
また、第2の実施形態の燃料化システム1Aは、熱源装置10によって生成された熱風を効率よく利用するために、炭化装置20を間接加熱式とすると共に、乾燥装置40において含水原料を攪拌させて熱風を直接接触させる構成とし、さらにガスエンジン73の排熱ガスも乾燥装置40で利用する構成となっている。
【0058】
このように、第2の実施形態の燃料化システム1Aは、熱源装置10により発生させた熱風を効率よく利用しているため、含水原料M1が潜在的に備えている発熱量で、システム全体を稼働させるためのエネルギー量を確保することができる。
【0059】
即ち、一度システムが稼働し出せば、外部から化石燃料を補給することなく、連続してシステムを稼働させることができる。また、発電装置74によって発電も行われるので、熱源装置10、炭化装置20、乾燥装置40、及び発電ユニット70で使用する電力もまかなうことができる。
【0060】
例えば、発電装置74によって発電された電力を用いて、乾燥装置40、炭化装置20、又は熱源装置10のいずれか又はすべてを稼働させた状態で、熱源装置10で使用される炭化物Cの時間当たりの使用量が、炭化装置20により生成される炭化物Cの単位時間当たりの生成量を下回る場合、熱源装置10で使用されるバイオマス燃料Bを外部から供給する必要がない。
【0061】
従って、従来は汚泥等の処理に多くの化石燃料を必要としていたが、本発明の燃料化システム1Aによれば、化石燃料を必要とすることなく、また、外部からの電力の供給を必要とすることなく、汚泥等の含水原料M1の処理を連続して行うことができる。
【0062】
なお、第2の実施形態の燃料化システム1Aにおいて、排熱供給手段75によって排気ガス及び排気系の排熱を排熱ガスとして回収しているが、ガスエンジン73の排気ガスのみを排熱ガスとして用いてもよい。
【0063】
また、本実施形態の燃料化システム1及び1Aは、熱源装置10、炭化装置20、乾燥装置40、排ガス処理装置50、及び発電ユニット70等を含めて縦横が約30m×30m、高さ約8mの敷地内に設置が可能となるように設計を行っている。従って、例えば、廃校の体育館等の使われていない施設を有効活用し、汚泥等の廃棄物から燃料及び電力を生成可能なシステムを導入することができるので、地方の自治体においても設置のための負担を軽減させることができる。
【符号の説明】
【0064】
1,1A…燃料化システム
10…熱源装置
11…第1熱風用ダクト(熱風用ダクト)
12…第2熱風用ダクト(熱風用ダクト)
20…炭化装置
21…外室
22…加熱室
23…炭化用投入口
24…搬送手段
25…炭化用吐出口
27…加熱通路
28…熱風供給口
40…乾燥装置
41…乾燥機本体
42…回転軸
43…攪拌手段
44…熱風供給口
45…乾燥用投入口
46…乾燥用吐出口
48…排気口
73…ガスエンジン
74…発電装置
75…排熱供給手段
B…バイオマス燃料
CG…可燃性ガス
M1…含水原料
M2…炭化用原料
M3…乾燥原料