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2025-105253吸収性物品の液透過性シート用の不織布、当該不織布を含む吸収性物品、及び当該不織布の製造方法
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  • -吸収性物品の液透過性シート用の不織布、当該不織布を含む吸収性物品、及び当該不織布の製造方法 図1
  • -吸収性物品の液透過性シート用の不織布、当該不織布を含む吸収性物品、及び当該不織布の製造方法 図2
  • -吸収性物品の液透過性シート用の不織布、当該不織布を含む吸収性物品、及び当該不織布の製造方法 図3
  • -吸収性物品の液透過性シート用の不織布、当該不織布を含む吸収性物品、及び当該不織布の製造方法 図4
  • -吸収性物品の液透過性シート用の不織布、当該不織布を含む吸収性物品、及び当該不織布の製造方法 図5
  • -吸収性物品の液透過性シート用の不織布、当該不織布を含む吸収性物品、及び当該不織布の製造方法 図6
  • -吸収性物品の液透過性シート用の不織布、当該不織布を含む吸収性物品、及び当該不織布の製造方法 図7
  • -吸収性物品の液透過性シート用の不織布、当該不織布を含む吸収性物品、及び当該不織布の製造方法 図8
  • -吸収性物品の液透過性シート用の不織布、当該不織布を含む吸収性物品、及び当該不織布の製造方法 図9
  • -吸収性物品の液透過性シート用の不織布、当該不織布を含む吸収性物品、及び当該不織布の製造方法 図10
  • -吸収性物品の液透過性シート用の不織布、当該不織布を含む吸収性物品、及び当該不織布の製造方法 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105253
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】吸収性物品の液透過性シート用の不織布、当該不織布を含む吸収性物品、及び当該不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20250703BHJP
【FI】
A61F13/511 300
A61F13/511 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223685
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】出谷 耕
(72)【発明者】
【氏名】野本 貴志
(72)【発明者】
【氏名】木村 明寛
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA02
3B200BA05
3B200BA15
3B200BB03
3B200CA02
3B200CA11
3B200DA25
3B200DC02
3B200DC07
3B200DC10
3B200EA07
(57)【要約】
【課題】経血を吸収する吸収性物品の液透過性シートとして用いた場合に、経血により赤く着色しにくいとともに、吸収性物品の内部に移行した経血の隠蔽性に優れる不織布を提供すること。
【解決手段】疎水性を有する熱収縮性繊維が熱収縮した熱収縮後繊維5を含む熱収縮後繊維層3を備えている、経血を吸収する吸収性物品の液透過性シート用の不織布1であって、熱収縮後繊維層3では、熱収縮後繊維5が、第1方向D1及び第2方向D2に延在しており、熱収縮後繊維層3は、複数の親水性領域7と、疎水性領域9とを備えており、複数の親水性領域7は、第1方向D1に沿う方向に連続的又は間欠的に延びているとともに、第2方向D2に離間して配置されているとともに、複数の親水性領域7のそれぞれでは、親水性繊維13が、熱収縮後繊維5を第1面S1から第2面S2まで厚さ方向Tに貫通しており、熱収縮後繊維層3では、熱収縮後繊維5が第1面S1に配置されていることを特徴とする不織布1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性を有する熱収縮性繊維が熱収縮した熱収縮後繊維を含む熱収縮後繊維層を備えているとともに、お互いに直交する第1方向、第2方向及び厚さ方向を有する、経血を吸収する吸収性物品の液透過性シート用の不織布であって、
前記熱収縮後繊維層は、第1面及び第2面を有し、
前記熱収縮後繊維層では、前記熱収縮後繊維が、第1方向及び第2方向に延在しており、
前記熱収縮後繊維層は、複数の親水性領域と、疎水性領域とを備えており、
前記複数の親水性領域は、第1方向に沿う方向に連続的又は間欠的に延びているとともに、第2方向に離間して配置されているとともに、前記複数の親水性領域のそれぞれでは、親水性繊維が、前記熱収縮後繊維を第1面から第2面まで前記厚さ方向に貫通しており、
前記疎水性領域では、前記熱収縮後繊維が第1面に配置されている、
ことを特徴とする不織布。
【請求項2】
前記複数の親水性領域の少なくとも一部において、前記親水性領域の第2方向の一方に存在する前記疎水性領域である一方側疎水性領域と、前記親水性領域の第2方向の他方に存在する前記疎水性領域である他方側疎水性領域とが、前記一方側疎水性領域から前記他方側疎水性領域の間に連続して配置されている前記熱収縮後繊維により連結されている、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記疎水性領域では、前記厚さ方向において、前記熱収縮後繊維が第1面から第2面まで配置されている、請求項1に記載の不織布。
【請求項4】
前記不織布は、前記熱収縮後繊維層の第2面に接合されている、親水性繊維を含む親水性繊維層をさらに備えている、請求項1に記載の不織布。
【請求項5】
前記親水性繊維層は、前記熱収縮後繊維層の第2面から前記厚さ方向に突出し且つ第1方向に沿う方向に延びている、複数の突状部を備えており、
前記複数の突状部の少なくとも一部は、前記不織布の前記厚さ方向からの平面視において、前記疎水性領域と重複するように配置されている、
請求項4に記載の不織布。
【請求項6】
前記複数の突状部の少なくとも一部は、前記不織布の前記厚さ方向からの平面視において、前記複数の親水性領域の一部とさらに重複するように配置されている、請求項5に記載の不織布。
【請求項7】
前記複数の親水性領域は、0.3~2.0mmの第2方向におけるピッチを有するように配置されている、請求項1に記載の不織布。
【請求項8】
前記不織布はスパンレース不織布である、請求項1に記載の不織布。
【請求項9】
前記不織布は、前記熱収縮後繊維が熱融着している熱融着部を備えていない、請求項1に記載の不織布。
【請求項10】
前記親水性繊維は、セルロース系繊維である、請求項1に記載の不織布。
【請求項11】
前記不織布が、0.3~2.5mmの厚さを有する、請求項1に記載の不織布。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の不織布を液透過性シートとして備えている吸収性物品。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の不織布の製造方法であって、
前記熱収縮性繊維を含む熱収縮性繊維ウェブの上に前記親水性繊維を含む親水性繊維シートが積層されている積層ウェブを準備する準備ステップ、
前記積層ウェブを前記親水性繊維シート側からウォータージェット処理するウォータージェット処理ステップ、
ウォータージェット処理された前記積層ウェブを加熱し、前記熱収縮性繊維を熱収縮させて前記熱収縮後繊維を形成することにより、前記不織布を形成する不織布形成ステップ、
を含む製造方法。
【請求項14】
前記親水性繊維シートが、任意の方向において、2.0N/25mm以下の湿潤強度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記親水性繊維シートが、前記親水性繊維を含むウェブ、不織布又は薄葉紙である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ウォータージェット処理ステップにおいて、前記積層ウェブを搬送方向に搬送しながら、内径:0.03~0.17mmの複数のノズルが、0.3~2.0mmの前記搬送方向と直交する直交方向のピッチで配列されているウォータージェット装置を、前記複数のノズル及び前記積層ウェブの距離が10~60mmとなるように配置するとともに、前記複数のノズルから、水圧:1~15MPaで前記積層ウェブに水を吹き付けることにより、前記積層ウェブをウォータージェット処理する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記不織布形成ステップにおいて、前記熱収縮性繊維を熱収縮させることにより、ウォータージェット処理された前記積層ウェブよりも厚さの厚い前記不織布を形成する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収性物品の液透過性シート用の不織布、当該不織布を液透過性シートとして備えている吸収性物品、及び当該不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の液透過性シート用の不織布に関する検討が行われている。
例えば、特許文献1には、トップシートと、バックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置された吸収性コアとを含む吸収性物品であって、前記トップシートは第一の側及び第二の側を有し、前記第一の側は身体に面する側であり、及び前記第二の側は前記吸収性コアと流体連通しており、前記トップシートは更に:a.第一の比較的疎水性の構成要素及び第二の比較的親水性の構成要素;b.前記比較的親水性の構成要素が、前記比較的疎水性の構成要素を貫いて延び、及び前記トップシートの前記側の両方上に配置されており;並びにc.前記吸収性物品が、噴出獲得及び再湿潤試験方法により試験される時、約94mg未満の再湿潤値及び少なくとも約0.10ml/sの流体獲得率を示す;により特徴付けられる吸収性物品が開示されている。特許文献1では、高い噴出獲得率が提供可能であり、なおかつ改善された乾燥性の提供も可能な、使い捨て吸収性物品用トップシートの改良等を目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2004/058118号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、本開示に係る、経血を吸収する吸収性物品の液透過性シート用の不織布は開示されていない。
従って、本開示は、経血を吸収する吸収性物品の液透過性シートとして用いた場合に、経血により赤く着色しにくいとともに、吸収性物品の内部に移行した経血の隠蔽性に優れる不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示者らは、疎水性を有する熱収縮性繊維が熱収縮した熱収縮後繊維を含む熱収縮後繊維層を備えているとともに、お互いに直交する第1方向、第2方向及び厚さ方向を有する、経血を吸収する吸収性物品の液透過性シート用の不織布であって、上記熱収縮後繊維層は、第1面及び第2面を有し、上記熱収縮後繊維層では、上記熱収縮後繊維が、第1方向及び第2方向に延在しており、上記熱収縮後繊維層は、複数の親水性領域と、疎水性領域とを備えており、上記複数の親水性領域は、第1方向に沿う方向に連続的又は間欠的に延びているとともに、第2方向に離間して配置されているとともに、上記複数の親水性領域のそれぞれでは、親水性繊維が、上記熱収縮後繊維を第1面から第2面まで上記厚さ方向に貫通しており、上記熱収縮後繊維層では、上記熱収縮後繊維が第1面に配置されていることを特徴とする不織布を見出した。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る不織布は、経血を吸収する吸収性物品の液透過性シートとして用いた場合に、経血により赤く着色しにくいとともに、吸収性物品の内部に移行した経血の隠蔽性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に従う不織布1を説明するための図である。
図2図2は、第1実施形態に従う不織布1を製造する製造装置101を示す図である。
図3図3は、実施例を説明するための図である。
図4図4は、実施例を説明するための図である。
図5図5は、実施例を説明するための図である。
図6図6は、実施例を説明するための図である。
図7図7は、実施例を説明するための図である。
図8図8は、実施例を説明するための図である。
図9図9は、実施例を説明するための図である。
図10図10は、実施例を説明するための図である。
図11図11は、実施例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
具体的には、本開示は以下の態様に関する。
[態様1A]
疎水性を有する熱収縮性繊維が熱収縮した熱収縮後繊維を含む熱収縮後繊維層を備えているとともに、お互いに直交する第1方向、第2方向及び厚さ方向を有する、経血を吸収する吸収性物品の液透過性シート用の不織布であって、
上記熱収縮後繊維層は、第1面及び第2面を有し、
上記熱収縮後繊維層では、上記熱収縮後繊維が、第1方向及び第2方向に延在しており、
上記熱収縮後繊維層は、複数の親水性領域と、疎水性領域とを備えており、
上記複数の親水性領域は、第1方向に沿う方向に連続的又は間欠的に延びているとともに、第2方向に離間して配置されているとともに、上記複数の親水性領域のそれぞれでは、親水性繊維が、上記熱収縮後繊維を第1面から第2面まで上記厚さ方向に貫通しており、
上記熱収縮後繊維層では、上記熱収縮後繊維が第1面に配置されている、
ことを特徴とする不織布。
【0009】
上記不織布は、所定の疎水性領域及び親水性領域を備えている。従って、上記不織布を経血を吸収する吸収性物品の液透過性シートとして、そして不織布の第1面が液透過性シートの肌当接面を構成するように用いた場合(以下、単に「不織布を吸収性物品に用いた場合」等と称することがある)には、上記不織布の第1面に到達した経血は、疎水性の捲縮後繊維を含む疎水性領域に留まりにくく且つ疎水性領域内に入り込みにくいとともに、第1面から第2面まで厚さ方向に貫通する親水性領域を通って吸収性物品の内部へ移行しやすい。従って、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記不織布が経血により赤色に着色しにくい。
【0010】
経血が吸収性物品の内部に移行した後には、上記不織布の疎水性領域の少なくとも第1面は捲縮後繊維を含むことから、可視光を透過させにくく、吸収性物品の内部に移行した経血を視認させにくくすることができる。また、上記不織布の疎水性領域は、疎水性の捲縮後繊維を含むことから、吸収性物品の内部に移行した経血を物理的に透過させにくい(リウェットバックを生じさせにくい)。
【0011】
また、上記親水性領域においても、熱収縮後繊維が第1方向及び第2方向に延在していることから、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、体圧等の力が加わった場合であっても、親水性領域が開口しにくく、親水性繊維が保持する経血、吸収性物品の内部に吸収した経血を吸収性物品の外部から視認しにくくなる。
以上より、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記不織布は、経血により赤く着色しにくいとともに、吸収性物品の内部に移行した経血の隠蔽性に優れる。
【0012】
[態様1B]
疎水性を有する熱収縮性繊維が熱収縮した熱収縮後繊維を含む熱収縮後繊維層を備えているとともに、お互いに直交する第1方向、第2方向及び厚さ方向を有する、液体を吸収する吸収性物品の液透過性シート用の不織布であって、
上記熱収縮後繊維層は、第1面及び第2面を有し、
上記熱収縮後繊維層では、上記熱収縮後繊維が、第1方向及び第2方向に延在しており、
上記熱収縮後繊維層は、複数の親水性領域と、疎水性領域とを備えており、
上記複数の親水性領域は、第1方向に沿う方向に連続的又は間欠的に延びているとともに、第2方向に離間して配置されているとともに、上記複数の親水性領域のそれぞれでは、親水性繊維が、上記熱収縮後繊維を第1面から第2面まで上記厚さ方向に貫通しており、
上記熱収縮後繊維層では、上記熱収縮後繊維が第1面に配置されている、
ことを特徴とする不織布。
【0013】
上記不織布は、態様1Aと同様の理由により、上記不織布を、液体を吸収する吸収性物品に用いた場合に、上記不織布は、液体により着色しにくいとともに、吸収性物品の内部に移行した液体の隠蔽性に優れる。なお、「液体を吸収する吸収性物品」を、『液体吸収型吸収性物品』と称する。
【0014】
上記液体としては、例えば、体液、例えば、経血、血液(例えば、血漿、血球)、おりもの、母乳、尿、鼻水、唾液等が挙げられる。
上記液体吸収型吸収性物品は、吸収コアを有するものであれば、特に制限されない。上記液体吸収型吸収性物品としては、例えば、女性用の吸収性物品、例えば、生理用ナプキン、生理用ショーツ、タンポン、褥瘡パッド、絆創膏、食包シート、パンティーライナー、母乳パッド、使い捨ておむつ、尿漏れパッド、尿取りシート、使い捨てパンツ、マスク等が挙げられる。
【0015】
なお、本明細書における開示事項は、経血を吸収する吸収性物品のみならず、上記液体吸収型吸収性物品に適用することができる。その場合において、「吸収性物品」及び「経血」は、それぞれ、『液体吸収型吸収性物品』及び『液体』と読み替えることができ、そして「赤く」及び「赤み」の用語は、それぞれ、『液体の有する色に』及び『液体の有する色』と読み替えることができる。
【0016】
[態様2]
上記複数の親水性領域の少なくとも一部において、上記親水性領域の第2方向の一方に存在する上記疎水性領域である一方側疎水性領域と、上記親水性領域の第2方向の他方に存在する上記疎水性領域である他方側疎水性領域とが、上記一方側疎水性領域から上記他方側疎水性領域の間に連続して配置されている上記熱収縮後繊維により連結されている、態様1A又は1Bに記載の不織布。
【0017】
上記不織布では、複数の親水性領域の少なくとも一部が、一方側疎水性領域から他方側疎水性領域まで連続して配置されている熱収縮後繊維により連結されていることから、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、体圧等の力が加わった場合であっても、親水性領域が開口しにくく、親水性繊維が保持する経血、吸収性物品の内部に吸収した経血を吸収性物品の外部から視認しにくくなる。その結果、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記不織布は、吸収性物品の内部に移行した経血の隠蔽性に優れる。
【0018】
[態様3]
上記疎水性領域では、上記厚さ方向において、上記熱収縮後繊維が第1面から第2面まで配置されている、態様1A,1B又は2に記載の不織布。
【0019】
上記不織布の疎水性領域では、厚さ方向において、熱収縮後繊維が第1面から第2面まで配置されている。従って、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、疎水性領域が可視光を透過させにくく、吸収性物品の内部に移行した経血を視認させにくくすることができる。また、上記不織布の疎水性領域は、疎水性の捲縮後繊維を含むことから、吸収性物品の内部に移行した経血を物理的に透過させにくい(リウェットバックを生じさせにくい)。
【0020】
[態様4]
上記不織布は、上記熱収縮後繊維層の第2面に接合されている、親水性繊維を含む親水性繊維層をさらに備えている、態様1A,1B,2又は3に記載の不織布。
【0021】
上記不織布は、親水性繊維を含む所定の親水性繊維層をさらに備えている。従って、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、親水性繊維層が、不織布(液透過性シート)を透過した経血を平面方向に拡散させることができるとともに、経血を保持する経血保持部材(例えば、吸収体)側に隣接する部材に受け渡しやすくなる。その結果、経血を排泄口当接域から第1方向及び第2方向に拡散させつつ、経血を経血保持部材側に隣接する部材に移行させやすくなり、ひいては経血保持部材の赤みが部分的に濃くなりにくい。従って、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記不織布は、経血の隠蔽性に優れる。
【0022】
[態様5]
上記親水性繊維層は、上記熱収縮後繊維層の第2面から上記厚さ方向に突出し且つ第1方向に沿う方向に延びている、複数の突状部を備えており、
上記複数の突状部の少なくとも一部は、上記不織布の上記厚さ方向からの平面視において、上記疎水性領域と重複するように配置されている、
態様4に記載の不織布。
【0023】
上記不織布では、親水性繊維層が、所定の複数の突状部を備えている。従って、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、親水性領域を通って上記不織布を厚さ方向に透過した経血を、突状部を経由して経血保持部材側に隣接する部材に移行させやすくなる。また、疎水性領域と重複するように配置されている突状部は、経血を、経血保持部材側に隣接する部材の、疎水性領域と厚さ方向に重複する領域に移行させやすくなる。その結果、経血保持部材の赤みが部分的に濃くなりにくくなる。従って、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記不織布は、経血の隠蔽性に優れる。
【0024】
[態様6]
上記複数の突状部の少なくとも一部は、上記不織布の上記厚さ方向からの平面視において、上記複数の親水性領域の一部とさらに重複するように配置されている、態様5に記載の不織布。
【0025】
上記不織布では、上記複数の突状部の少なくとも一部は、上記不織布の上記厚さ方向からの平面視において、上記複数の親水性領域の一部とさらに重複するように配置されている。従って、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、親水性領域を通って上記不織布を透過した経血を、突状部を経由して、経血保持部材側に隣接する部材の、疎水性領域と厚さ方向に重複する領域により移行させやすくなる。その結果、経血保持部材の赤みが部分的に濃くなりにくくなる。従って、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記不織布は、経血の隠蔽性に優れる。
【0026】
[態様7]
上記複数の親水性領域は、0.3~2.0mmの第2方向におけるピッチを有するように配置されている、態様1A,1B,及び2~6のいずれか一項に記載の不織布。
【0027】
上記不織布は、複数の親水性領域が所定のピッチを有するように配置されている。従って、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、経血を複数の親水性領域を通って経血保持部材側に隣接する部材に移行させやすくなり、経血が疎水性領域の第1面に残存しにくくなる。その結果、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記不織布は、経血の隠蔽性に優れる。
【0028】
[態様8]
上記不織布はスパンレース不織布である、態様1A,1B,及び2~7のいずれか一項に記載の不織布。
上記不織布はスパンレース不織布であることから、圧搾部を有する不織布と比較して、上記不織布の厚みを確保しやすくなる。その結果、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記不織布は、経血の隠蔽性に優れる。また、上記不織布は、肌触りに優れる。
【0029】
[態様9]
上記不織布は、上記熱収縮後繊維が熱融着している熱融着部を備えていない、態様1A,1B,及び2~8のいずれか一項に記載の不織布。
【0030】
上記不織布は所定の熱融着部を備えていないことから、熱融着部を備えている不織布と比較して、上記不織布の厚みを確保しやすくなる。その結果、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記不織布は、経血の隠蔽性に優れる。また、上記不織布は、肌触りに優れる。
【0031】
[態様10]
上記親水性繊維は、セルロース系繊維である、態様1A,1B,及び2~9のいずれか一項に記載の不織布。
【0032】
上記不織布では、親水性繊維がセルロース系繊維であることから、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、複数の親水性領域を通して、経血を吸収性物品の内部に引き込みやすくなる。その結果、経血が疎水性領域の第1面に残存しにくくなり、ひいては、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記不織布は、経血の隠蔽性に優れる。
【0033】
[態様11]
上記不織布が、0.3~2.5mmの厚さを有する、態様1A,1B,及び2~10のいずれか一項に記載の不織布。
上記不織布は所定の厚さを有することから、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記不織布は、経血の隠蔽性に優れる。
【0034】
[態様12]
態様1A,1B,及び2~11のいずれか一項に記載の不織布を液透過性シートとして備えている吸収性物品。
上記吸収性物品は、経血により赤く着色しにくいとともに、吸収性物品の内部に移行した経血の隠蔽性に優れる。
【0035】
[態様13]
態様1A,1B,及び2~11のいずれか一項に記載の不織布の製造方法であって、
上記熱収縮性繊維を含む熱収縮性繊維ウェブの上に上記親水性繊維を含む親水性繊維シートが積層されている積層ウェブを準備する準備ステップ、
上記積層ウェブを上記親水性繊維シート側からウォータージェット処理するウォータージェット処理ステップ、
ウォータージェット処理された上記積層ウェブを加熱し、上記熱収縮性繊維を熱収縮させて上記熱収縮後繊維を形成することにより、上記不織布を形成する不織布形成ステップ、
を含む製造方法。
【0036】
上記製造方法は、態様1に係る不織布を簡易に製造することができる。
【0037】
[態様14]
上記親水性繊維シートが、任意の方向において、2.0N/25mm以下の湿潤強度を有する、態様13に記載の方法。
上記製造方法では、親水性繊維シートが所定の湿潤強度を有することから、態様1に係る不織布を簡易に製造することができる。
【0038】
[態様15]
上記親水性繊維シートが、上記親水性繊維を含むウェブ、不織布又は薄葉紙である、態様13又は14に記載の方法。
【0039】
上記製造方法では、親水性繊維シートが所定のものから構成されることから、態様1に係る不織布を簡易に製造することができる。
【0040】
[態様16]
上記ウォータージェット処理ステップにおいて、上記積層ウェブを搬送方向に搬送しながら、内径:0.03~0.17mmの複数のノズルが、0.3~2.0mmの上記搬送方向と直交する直交方向のピッチで配列されているウォータージェット装置を、上記複数のノズル及び上記積層ウェブの距離が10~60mmとなるように配置するとともに、上記複数のノズルから、水圧:1~15MPaで上記積層ウェブに水を吹き付けることにより、上記積層ウェブをウォータージェット処理する、態様13~15のいずれか一項に記載の方法。
【0041】
上記製造方法では、所定の条件で積層ウェブをウォータージェット処理することから、態様1に係る不織布を簡易に製造することができる。
【0042】
[態様17]
上記不織布形成ステップにおいて、上記熱収縮性繊維を熱収縮させることにより、ウォータージェット処理された上記積層ウェブよりも厚さの厚い上記不織布を形成する、態様13~16のいずれか一項に記載の方法。
【0043】
上記製造方法では、熱収縮性繊維を熱収縮させることにより、所定の厚さを有する不織布を形成することから、形成される不織布が、隠蔽性に優れるとともに、肌触りに優れる。
【0044】
本開示に係る経血を吸収する吸収性物品の液透過性シート用の不織布、当該不織布を液透過性シートとして備えている吸収性物品、及び当該不織布の製造方法について、以下、詳細に説明する。なお、上記吸収性物品については、上記不織布の箇所で合わせて説明する。
【0045】
本開示に係る不織布は、経血を吸収する吸収性物品の液透過性シート用の不織布である。なお、本明細書では、「経血を吸収する吸収性物品の液透過性シート用の不織布」を、単に『不織布』と称する場合がある。
【0046】
[不織布]
図1は、本開示の実施形態の1つ(以下、「第1実施形態」と称する)に従う不織布1を説明するための図である。具体的には、図1は、第1実施形態に従う不織布1の斜視図である。
不織布1は、経血を吸収する吸収性物品の液透過性シート用の不織布である。不織布1は、お互いに直交する第1方向D1、第2方向D2及び厚さ方向Tを有する。不織布1は、疎水性を有する熱収縮性繊維が熱収縮した熱収縮後繊維5を含む熱収縮後繊維層3を備えている。具体的には、熱収縮性繊維は、潜在捲縮性繊維であり、熱収縮後繊維5は、捲縮した潜在捲縮性繊維である。
【0047】
熱収縮後繊維層3は、液透過性シートに用いられた場合に肌当接面を構成する第1面S1と、第1面S1と反対側の第2面S2とを有している。熱収縮後繊維層3では、熱収縮後繊維5が、捲縮しながら、第1方向D1及び第2方向D2に延在している。
【0048】
熱収縮後繊維層3は、複数の親水性領域7と、複数の疎水性領域9とに区画される。複数の親水性領域7は、第1方向D1と平行に連続的に延びているとともに、第2方向D2に所定のピッチPで離間して配置されている。複数の親水性領域7のそれぞれでは、親水性繊維13が、熱収縮後繊維5を第1面S1から第2面S2まで厚さ方向Tに貫通している。親水性繊維13は、セルロース系繊維、具体的には、レーヨン繊維である。
複数の熱収縮後繊維層3のそれぞれでは、熱収縮後繊維5が、厚さ方向Tにおいて、第1面S1から第2面S2まで至るように配置されている。
【0049】
なお、図1では、発明を理解しやすくする観点から、親水性繊維13を、熱収縮後繊維5よりも太く表示しているが、実際の親水性繊維13及び熱収縮後繊維5の繊維径の関係を意味するものではない。親水性繊維13及び熱収縮後繊維5の繊維長についても同様である。
また、図1では、熱収縮後繊維5を螺旋状に記載しているが、実際の熱収縮後繊維の捲縮状態、配向性等を表しているものではない。
【0050】
不織布1は、複数の親水性領域7と、複数の疎水性領域9とを備えていることから、不織布1を吸収性物品に用いた場合に、不織布1は、経血により赤く着色しにくいとともに、吸収性物品の内部に移行した経血の隠蔽性に優れる。
【0051】
複数の親水性領域7のそれぞれでは、親水性領域7の第2方向D2の一方に存在する疎水性領域9である一方側疎水性領域9aと、第2方向D2の他方に存在する疎水性領域9である他方側疎水性領域9bとが、連続している熱収縮後繊維5により連結されている。換言すると、複数の親水性領域7のそれぞれは、第1方向D1と平行に延びているとともに、厚さ方向Tに貫通する、熱収縮後繊維5を破断する破断面を有していない。それにより、不織布1を吸収性物品に用いた場合に、体圧等の力が加わった場合であっても、複数の親水性領域7が開口しにくく、親水性繊維が保持する経血、吸収性物品の内部に吸収した経血を吸収性物品の外部から視認しにくくなる。
【0052】
不織布1は、熱収縮後繊維層3の第2面S2に接合されている、親水性繊維13を含む親水性繊維層11をさらに備えている。具体的には、親水性繊維層11は、親水性繊維13から構成されるとともに、熱収縮後繊維層3の第2面S2から、熱収縮後繊維層3と反対方向に厚さ方向Tに突出し且つ第1方向D1と平行に延びている、複数の突状部15を備えている。複数の突状部15のそれぞれは、不織布1の厚さ方向Tからの平面視において、疎水性領域9と重複するとともに、当該疎水性領域9の第2方向D2に隣接する2つの親水性領域7と重複するように配置されている。それにより、不織布1を吸収性物品に用いた場合に、親水性領域7を通って不織布1を厚さ方向Tに透過した経血を、突状部15を経由して、経血保持部材側に隣接する部材の、疎水性領域9と厚さ方向Tに重複する領域により移行させやすくなる。
【0053】
本開示に係る不織布は、経血を吸収する吸収性物品の液透過性シート用の不織布である。
上記吸収性物品としては、経血を吸収する経血保持部材を備えているものであれば特に制限されず、例えば、女性用の吸収性物品、例えば、生理用ナプキン、生理用ショーツ等が挙げられる。上記経血保持部材としては、例えば、吸収コア、吸収コア及び吸収コアを覆うコアラップを備えている吸収体等が挙げられる。上記液透過性シートとしては、肌当接面を有する液透過性のトップシート、吸収コアを覆うコアラップ、トップシート及び吸収コアの間に配置される液拡散シート(セカンドシート)等が挙げられる。
上記液透過性シートの、上記経血保持部材側に隣接する部材としては、経血保持部材、セカンドシート、コアラップ等が挙げられる。
【0054】
本開示に係る不織布は、お互いに直交する第1方向、第2方向及び厚さ方向を有している。第1方向及び第2方向としては、例えば、それぞれ、製造時の搬送方向及び搬送方向と直交する直交方向が挙げられる。なお、本明細書では、第1方向及び第2方向を含む方向を平面方向と称する場合がある。
【0055】
本開示に係る不織布は、疎水性を有する熱収縮性繊維が熱収縮した熱収縮後繊維を含む熱収縮後繊維層を備えている。上記熱収縮後繊維層は、上記平面方向に延びている第1面及び第2面を備えている。
上記熱収縮性繊維としては、例えば、加熱処理により実際の繊維長が短くなる繊維、加熱処理により見かけ上の繊維長が短くなる繊維(例えば、捲縮発現によって見かけ上の繊維長が短くなる潜在捲縮性繊維)等が挙げられる。
上記潜在捲縮性繊維としては、例えば、収縮率の異なる2種の熱可塑性樹脂を含む複合繊維、例えば、偏心芯鞘型の複合繊維、サイドバイサイド型の複合繊維が挙げられる。
【0056】
上記複合繊維としては、例えば、芯部がポリエチレンテレフタレート樹脂であり、鞘部がポリエチレン樹脂である偏心芯鞘型の複合繊維;芯部がポリプロピレン樹脂であり、鞘部がポリエチレン樹脂である偏心芯鞘型の複合繊維;芯部が高融点ポリプロピレン樹脂であり、鞘部が低融点ポリプロピレン樹脂である偏心芯鞘型の複合繊維;ポリエチレンテレフタラート樹脂(PET)及び低融点ポリエチレンテレフタラート樹脂からなるサイドバイサイド型の複合繊維;ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレン樹脂からなるサイドバイサイド型の複合繊維;ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂からなるサイドバイサイド型の複合繊維等が挙げられる。
【0057】
上記熱収縮性繊維は、好ましくは20mm以上、そしてより好ましくは30mm以上の平均繊維長を有する。また、上記熱収縮性繊維は、好ましくは70mm以下、そしてより好ましくは60mm以下の平均繊維長を有する。それにより、本開示に係る不織布の形成性に優れる。
【0058】
上記熱収縮性繊維は、好ましくは0.5dtex以上、そしてより好ましくは1.0dtex以上の繊度を有する。また、上記熱収縮性繊維は、好ましくは8.0dtex以下、そしてより好ましくは7.0dtex以下の繊度を有する。それにより、本開示に係る不織布が一定の厚さを確保しやすくなることから、肌触りに優れるとともに、リウェットバックを生じさせにくくなり、そして熱収縮性繊維の本数を一定程度確保することができることから、上記不織布が隠蔽性に優れる。
【0059】
本開示に係る不織布の熱収縮後繊維層では、上記熱収縮後繊維が、第1方向及び第2方向に延在している。
上記熱収縮後繊維層は、複数の親水性領域と、単一又は複数の疎水性領域とを備えている。上記熱収縮後繊維層は、複数の親水性領域と、単一又は複数の疎水性領域とに区画されてもよい。
【0060】
上記複数の親水性領域は、平面方向においては、第1方向と沿う方向に連続的又は間欠的に延びているとともに、第2方向に離間して配置されている。また、厚さ方向においては、上記複数の親水性領域のそれぞれでは、親水性繊維が、上記熱収縮後繊維を第1面から第2面まで厚さ方向に貫通している。
本開示では、「第1方向と沿う方向」は、第1の方向と、好ましくは45°未満、より好ましくは30°以下、さらに好ましくは20°以下、そしてさらにいっそう好ましくは5°以下の交差角を有する方向を意味する。
【0061】
上記熱収縮後繊維層が、複数の親水性領域と、単一の疎水性領域とを備えている不織布としては、複数の親水性領域のそれぞれが、第1方向に沿う方向に間欠的に延びているもの、換言すると、単一の疎水性領域の中に、第1方向に沿う方向に間欠的に延びている複数の親水性領域が、第1方向及び第2方向に離間して配置されている不織布が挙げられる。
【0062】
上記熱収縮後繊維層が、複数の親水性領域と、複数の疎水性領域とを備えている不織布としては、複数の親水性領域のそれぞれが第1方向に沿う方向に連続的に延びているとともに、複数の疎水性領域のそれぞれが第1方向に沿う方向に連続的に延びており、親水性領域と、疎水性領域とが第2方向に交互に配置されているものが挙げられる。
【0063】
上記複数の親水性領域は、所定のピッチで第2方向に離間されることができる。上記所定のピッチは、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、そしてさらに好ましくは0.7mm以上である。また、上記所定のピッチは、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.7mm以下、そしてさらに好ましくは1.5mm以下である。それにより、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、経血を複数の親水性領域を通って経血保持部材側に隣接している部材に移行させやすくなり、経血が疎水性領域の第1面に残存しにくくなる。
【0064】
上記親水性繊維としては、当技術分野で親水性を有する繊維として用いられているものを採用することができ、例えば、吸水性繊維、例えば、セルロース系繊維、非吸水性繊維、例えば、親水化処理した合成繊維等が挙げられる。
上記セルロース系繊維としては、例えば、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、精製セルロース繊維及び半合成セルロース繊維が挙げられる。
上記天然セルロース繊維としては、植物繊維、例えば、パルプ繊維、種子毛繊維(例えば、コットン繊維)、じん皮繊維(例えば、麻)、葉脈繊維(例えば、マニラ麻)、果実繊維(例えば、やし)が挙げられる。
【0065】
上記パルプ繊維としては、当技術分野で公知のものが含まれ、例えば、木材パルプ繊維及び非木材パルプ繊維が挙げられる。上記木材パルプ繊維としては、例えば、針葉樹パルプ繊維及び広葉樹パルプ繊維が挙げられる。上記非木材パルプ繊維としては、例えば、ワラパルプ繊維、バガスパルプ繊維、ヨシパルプ繊維、ケナフパルプ繊維、クワパルプ繊維、竹パルプ繊維、麻パルプ繊維、綿パルプ繊維(例えば、コットンリンター繊維)等が挙げられる。
上記パルプ繊維は、古紙、リサイクルされたリサイクルパルプ繊維等であってもよい。
【0066】
上記コットン繊維としては、ヒルスツム種コットン繊維(例えば、アップランドコットン)、バルバデンセ種コットン繊維、アルボレウム種コットン繊維及びヘルバケウム種コットン繊維が挙げられる。
また、上記コットン繊維は、オーガニックコットン繊維、プレオーガニックコットン(商標)繊維であることができる。
オーガニックコットン繊維は、GOTS(Global Organic Textile Standard)による認証を受けたコットンを意味する。
【0067】
上記再生セルロース繊維としては、レーヨン、例えば、ビスコースから得られるビスコースレーヨン、ポリノジック及びモダール、セルロースの銅アンモニア塩溶液から得られる銅アンモニアレーヨン(「キュプラ」とも称される)等の繊維が挙げられる。
【0068】
上記精製セルロース繊維としては、リヨセル、具体的には、パルプを、N-メチルモルホリンN-オキシドの水溶液に溶解させて紡糸原液(ドープ)とし、N-メチルモルホリンN-オキシドの希薄溶液中に押出して繊維としたものが挙げられる。上記精製セルロースは、例えば、テンセル(商標)として市販されている。
上記半合成繊維としては、半合成セルロース、例えば、アセテート繊維、例えば、トリアセテート及びジアセテート等の繊維が挙げられる。
【0069】
上記親水化処理した合成繊維における合成繊維としては、当技術分野で通常用いられているものが挙げられ、例えば、単一の成分を含むもの、例えば、単一繊維、又は複数の成分を含むもの、例えば、複合繊維が挙げられる。また、上記合成繊維は、バイオマスプラスチック、リサイクルされたもの等であることができる。
【0070】
上記成分としては、例えば、ポリオレフィン系ポリマー、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン;ポリエステル系ポリマー、例えば、テレフタラート系ポリマー、例えば、ポリエチレンテレフタラート,ポリブチレンテレフタラート,ポリペンチレンテレフタラート;ポリアミド系ポリマー、例えば、ナイロン6及びナイロン6,6;アクリル系ポリマー;ポリアクリロニトリル系ポリマー;及びそれらの変性物が挙げられる。
【0071】
上記合成繊維は、生分解性を有する合成繊維であることが好ましい。それにより、上記不織布が、生分解性を有しやすくなる。
上記生分解性を有する合成繊維の成分としては、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン/ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、ポリエチレンサクシネート、又はポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリグリコール酸、又は酢酸セルロースが挙げられる。
【0072】
上記親水性繊維は、セルロース系繊維であることが好ましい。それにより、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、複数の親水性領域を通して、経血を吸収性物品の内部に引き込みやすくなる。その結果、経血が疎水性領域の第1面に残存しにくくなる。
【0073】
上記親水性繊維は、パルプ繊維を除き、好ましくは20mm以上、そしてより好ましくは30mm以上の平均繊維長を有する。また、上記親水性繊維は、好ましくは70mm以下、そしてより好ましくは60mm以下の平均繊維長を有する。それにより、本開示に係る不織布の形成性に優れるとともに、経血が、親水性領域を通って吸収性物品の内部へ移行しやすくなる。
上記親水性繊維がパルプ繊維である場合には、同様の理由により、上記親水性繊維は、好ましくは0.1mm以上、そしてより好ましくは1mm以上の平均繊維長を有し、そして上記親水性繊維は、好ましくは5mm以下、そしてより好ましくは4mm以下の平均繊維長を有する。
【0074】
上記親水性繊維は、天然セルロース繊維を除き、好ましくは0.5dtex以上、そしてより好ましくは1.0dtex以上の繊度を有する。また、上記親水性繊維は、天然セルロース繊維を除き、好ましくは5.0dtex以下、そしてより好ましくは4.0dtex以下の繊度を有する。それにより、経血が、親水性領域を通って吸収性物品の内部へ移行しやすくなる。
【0075】
本明細書では、熱収縮性繊維及び親水性繊維(パルプ繊維を除く)を含む繊維の平均繊維長は、JIS L 1015:2010の附属書Aの「A7.1 繊維長の測定」の「A7.1.1 A法(標準法)目盛りが付いたガラス板上で個々の繊維の長さを測定する方法」に従って測定する。なお、上記方法は、1981年に発行されたISO 6989に相当する試験方法である。
【0076】
本明細書では、パルプ繊維の平均繊維長は、重さ加重平均繊維長を意味し、メッツォオートメーション(metso automation)社製のカヤーニファイバーラボファイバープロパティーズ(オフライン)[kajaaniFiberLab fiber properties(off-line)]により測定されるL(w)値を意味する。
【0077】
上記熱収縮後繊維層は、上記熱収縮後繊維を少なくとも第1面に備えており、そして厚さ方向において、熱収縮後繊維が第1面から第2面まで配置されていることが好ましい。それにより、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、疎水性領域が可視光を透過させにくく、吸収性物品の内部に移行した経血を視認させにくくすることができる。また、上記不織布の疎水性領域は、疎水性の捲縮後繊維を含むことから、吸収性物品の内部に移行した経血を物理的に透過させにくくなる(リウェットバックを生じさせにくくなる)。
【0078】
本開示に係る不織布では、好ましくは複数の親水性領域の少なくとも一部において、そしてより好ましくは複数の親水性領域の全部において、親水性領域の第2方向の一方に存在する疎水性領域である一方側疎水性領域と、親水性領域の第2方向の他方に存在する疎水性領域である他方側疎水性領域とが、一方側疎水性領域から他方側疎水性領域間に連続して配置されている熱収縮後繊維により連結されている。それにより、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、体圧等の力が加わった場合であっても、親水性領域が開口しにくく、親水性繊維が保持する経血、吸収性物品の内部に吸収した経血を吸収性物品の外部から視認しにくくなる。
【0079】
本開示に係る不織布は、厚さ方向において、熱収縮後繊維層の単層のみから構成されていても、熱収縮後繊維層及び追加の層を含む2層以上の層から構成されていてもよい。
本開示に係る不織布が、上記2層以上の層から構成されている場合には、上記追加の層は、熱収縮後繊維層の第2面に接合されていること、すなわち、追加の層は、熱収縮後繊維層の第1面に接合されていないことができる。それにより、上記不織布が、熱収縮後繊維層の第1面を、例えば、上述のトップシートの肌当接面として用いることができ、上記不織布が経血により赤く着色しにくくなるとともに、吸収性物品の内部に移行した経血の隠蔽性に優れる。
【0080】
熱収縮後繊維層及び追加の層の接合としては、特に制限されず、熱収縮後繊維層を構成する繊維及び追加の層を構成する繊維の交絡による接合、熱収縮後繊維層を構成する繊維及び追加の層を構成する繊維が連続していることによる接合、熱収縮後繊維層を構成する繊維及び追加の層を構成する繊維の融着による接合、熱収縮後繊維層及び追加の層の接着による接合、それらの任意の組み合わせ等が挙げられる。
【0081】
本開示に係る不織布は、上記追加の層として、熱収縮後繊維層の第2面に接合されている、親水性繊維を含む親水性繊維層をさらに備えていることができる。それにより、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、親水性繊維層が、不織布(液透過性シート)を透過した経血を平面方向に拡散させることができるとともに、経血を、経血保持部材側に隣接する部材に受け渡しやすくなる。
【0082】
上記親水性繊維層を構成する親水性繊維としては、上述の親水性領域を構成する親水性繊維と同一のものが挙げられる。また、上記親水性繊維層を構成する親水性繊維と、上述の親水性領域を構成する親水性繊維とは、同一であっても、異なっていてもよい。
【0083】
上記親水性繊維層は、第1方向に沿う方向及び第2方向に沿う方向の一方又は両方に延びていることができ、第1方向に沿う方向に延びていることが好ましい。それにより、経血を、親水性繊維層が延びている方向に拡散させることができる。
【0084】
上記親水性繊維層は、熱収縮後繊維層の第2面から厚さ方向に突出し且つ第1方向に沿う方向に延びている、複数の突状部を備えていることができる。また、好ましくは上記複数の突状部の少なくとも一部、そしてより好ましくは上記複数の突状部の全部(上記複数の突状部のそれぞれ)は、上記不織布の上記厚さ方向からの平面視において、上記疎水性領域と重複するように配置されている。それにより、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、親水性領域を通って上記不織布を厚さ方向に透過した経血を、突状部を経由して経血保持部材側に隣接する部材に移行させやすくなる。また、疎水性領域と重複するように配置されている突状部は、経血を、経血保持部材側に隣接する部材の、疎水性領域と厚さ方向に重複する領域に移行させやすくなる。
【0085】
また、好ましくは上記複数の突状部の少なくとも一部、そしてより好ましくは上記複数の突状部の全部(上記複数の突状部のそれぞれ)は、上記不織布の厚さ方向からの平面視において、好ましくは上記複数の親水性領域の一部とさらに重複するように配置されている。それにより、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、親水性領域を通って上記不織布を厚さ方向に透過した経血を、突状部を経由して、経血保持部材側に隣接する部材の、疎水性領域と厚さ方向に重複する領域により移行させやすくなる。
【0086】
また、同様の理由から、好ましくは上記複数の突状部の少なくとも一部、そしてより好ましくは上記複数の突状部の全部(上記複数の突状部のそれぞれ)は、上記不織布の厚さ方向からの平面視において、第2方向の一方に隣接する親水性領域と、第2方向の他方に隣接する親水性領域とさらに重複するように配置されている。
【0087】
本開示に係る不織布は、当技術分野で公知の不織布であることができ、例えば、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布等が挙げられる。上記不織布は、スパンレース不織布であることが好ましい。それにより、圧搾部を有する不織布と比較して、上記不織布の厚みを確保しやすくなる。
【0088】
本開示に係る不織布は、上述の熱収縮後繊維が他の繊維と融着している熱融着部を備えていても、上記熱融着部を備えていなくともよいが、上記熱融着部を備えていないことが好ましい。それにより、熱融着部を備えている不織布と比較して、上記不織布の厚みを確保しやすくなる。
【0089】
本開示に係る不織布は、上記熱収縮後繊維(熱融着性繊維)及び親水性繊維を任意の質量比で含むことができる。本開示に係る不織布は、上記熱収縮後繊維(熱融着性繊維)及び親水性繊維を、それらの合計100質量部に対して、好ましくは40~90:10~60、より好ましくは45~85:15~55、そしてさらに好ましくは50~80:20~50の質量比で含むことができる。それにより、上記不織布が、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、経血により赤く着色しにくくなるとともに、吸収性物品の内部に移行した経血の隠蔽性に優れやすくなる。
【0090】
上記不織布は、任意の厚さを有することができるが、好ましくは0.3mm以上、そしてより好ましくは0.5mm以上の厚さを有する。また、上記不織布は、好ましくは2.5mm以下、そしてより好ましくは2.0mm以下の厚さを有する。それにより、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記不織布は、経血の隠蔽性に優れる。
【0091】
本明細書では、不織布の厚さは、厚さ計(例えば、株式会社大栄科学精器製作所製FS-60DS,測定子面積15cm2)を用いて、不織布の異なる3つの部位(厚さ計FS-60DSを使用する場合、各部位の面積は15cm2)を定圧3g/cm2で加圧し、各部位における加圧10秒後の厚さを測定する。10枚の不織布のそれぞれについて同様の測定を行い、合計30個の測定値の平均値を不織布の厚さとする。
【0092】
本開示に係る不織布は、任意の坪量を有することができるが、好ましくは30g/m2以上、より好ましくは40g/m2以上、そしてさらに好ましくは50g/m2以上の坪量を有する。また、本開示に係る不織布は、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは180g/m2以下、そしてさらに好ましくは150g/m2以下の坪量を有する。それにより、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記不織布は、経血の隠蔽性に優れる。
【0093】
本開示において、不織布の坪量は、不織布から切り出された3個の試験片(10mm×10mm)の質量を直示天秤(例えば、研精工業株式会社製 電子天秤HF-300)で測定し、3個の試験片の質量の平均値から算出された単位面積当たりの質量(g/m2)を意味する。
【0094】
本開示に係る不織布では、親水性領域における熱収縮後繊維の熱収縮度は、疎水性領域における熱収縮後繊維の熱収縮度よりも小さいことが好ましい。また、親水性領域における熱収縮後繊維の第2方向における熱収縮度は、疎水性領域における熱収縮後繊維の第2方向における熱収縮度よりも小さいことが好ましい。それにより、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記熱収縮度の関係を満たさないときと比較して、経血が親水性繊維を通って吸収性物品の内部に移行しやすくなる。その結果、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記不織布は、赤く着色しにくいとともに、経血の隠蔽性に優れる。
【0095】
本開示に係る不織布では、疎水性領域において、熱収縮後繊維の厚さ方向における熱収縮度と、第1方向及び第2方向における熱収縮度とは、任意の関係にあることができるが、例えば、疎水性領域の少なくとも一部において、熱収縮後繊維の厚さ方向における熱収縮度は、第1方向及び第2方向における熱収縮度よりも低いことができる。それにより、上記不織布を吸収性物品に用いた場合に、上記不織布は、熱収縮度の方向性が少ない場合と比較して、厚さ方向の熱収縮度が相対的に少なく、隠蔽性及び肌触りに優れる。
なお、本願発明者が確認したところ、親水性領域を有しない場合、すなわち、熱収縮後繊維のみから構成される不織布では、熱収縮度に方向性が少ないことが分かった。
【0096】
[不織布の製造方法]
本開示に係る不織布の製造方法は、次のステップを含む。
-上記熱収縮性繊維を含む熱収縮性繊維ウェブの上に上記親水性繊維を含む親水性繊維シートが積層されている積層ウェブを準備する準備ステップ(以下、「準備ステップ」と称する場合がある)
-上記積層ウェブを上記親水性繊維シート側からウォータージェット処理するウォータージェット処理ステップ(以下、「ウォータージェット処理ステップ」と称する場合がある)
-ウォータージェット処理された上記積層ウェブを加熱し、上記熱収縮性繊維を熱収縮させて上記熱収縮後繊維を形成することにより、上記不織布を形成する不織布形成ステップ(以下、「不織布形成ステップ」と称する場合がある)
【0097】
上記準備ステップでは、上記熱収縮性繊維を含む熱収縮性繊維ウェブの上に上記親水性繊維を含む親水性繊維シートが積層されている積層ウェブを準備する。
上記親水性繊維シートは、任意の方向において、特に搬送方向及び搬送方向と直交する方向の両方において、好ましくは2.0N/25mm以下、より好ましくは1.5N/25mm以下、そしてさらに好ましくは1.0N/25mm以下の湿潤強度を有する。それにより、本開示に係る不織布を簡易に形成することができる。
なお、上記湿潤強度の下限は、ウォータージェット処理の観点からは特に制限がないが、親水性繊維シートを搬送する観点からは、0.3N/25mmが挙げられる。
【0098】
本明細書では、湿潤強度(N/25mm)は、以下の通り測定される。
(1)温度:25±5℃及び湿度:65±5%RHの恒温恒湿室にテンシロン試験機を準備するとともに、サンプルを24時間静置する。
(2)幅25mm×長さ50mmに裁断したサンプルに、脱イオン水50μLを含浸させ、サンプルを3分間静置し、脱イオン水をサンプル全体に行き渡らせて、湿潤状態のサンプルを形成する。
(3)当該湿潤状態のサンプルを、テンシロン試験機でチャック間隔30mm、引張速度100mm/分で測定し、破断時における幅25mm当たりの引張力(N)を湿潤強度(N/25mm)とする。
なお、湿潤強度は、JIS P 8135:1998の「紙及び板紙-湿潤引張強さ試験方法」及びJIS P 8113:2006の「紙及び板紙-引張特性の試験方法-第2部:定速伸張法」に準拠して実施する。
【0099】
上記親水性繊維シートとしては、親水性繊維を含むウェブ、不織布、又は薄葉紙であることができる。それにより、本開示に係る不織布を簡易に形成することができる。
【0100】
上記ウォータージェット処理ステップでは、上記積層ウェブを上記親水性繊維シート側からウォータージェット処理する。
ウォータージェット処理の条件は、複数のノズルを備えているウォータージェット装置を用いて、本開示に係る不織布を形成できるものであれば、特に制限されないが、例えば、以下の条件を挙げることができる。
【0101】
-ノズルの内径:
好ましくは0.03mm以上、より好ましくは0.05mm以上
好ましくは0.17mm以下、より好ましくは0.15mm以下
-ノズルのピッチ(搬送方向と直交する直交方向におけるピッチ):
好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.4mm以上
好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下
-ノズル及び積層ウェブの距離:
好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上
好ましくは60mm以下、より好ましくは50mm以下
-ノズルの水圧:
好ましくは1MPa以上、より好ましくは2MPa以上
好ましくは15MPa以下、より好ましくは13MPa以下
【0102】
上記ウォータージェット処理は、通常、上記積層ウェブを支持体上に配置して行うことができる。上記支持体としては、当技術分野で支持体として用いられているものを特に制限なく採用することができ、例えば、メッシュ状の支持部材が挙げられる。上記メッシュ状の支持部材は、細線状の支持部材(例えば、樹脂線、金属線)が平織網状又は綾織網状に配置されたものであることができる。上記メッシュ状の支持部材の開口径は、好ましくは0.2mm以上、そしてより好ましくは0.25mm以上である。また、上記メッシュ状の支持部材の開口径は、好ましくは0.6mm以下、そしてより好ましくは0.45mm以下である。それにより、本開示に係る不織布を形成しやすくなる。
【0103】
上記不織布形成ステップでは、ウォータージェット処理された上記積層ウェブを加熱し、上記熱収縮性繊維を熱収縮させて上記熱収縮後繊維を形成することにより、上記不織布を形成する。
上記不織布形成ステップでは、上記熱収縮性繊維を熱収縮させることにより、ウォータージェット処理された上記積層ウェブよりも厚さの厚い不織布を形成することが好ましい。それにより、形成される不織布が、隠蔽性に優れるとともに、肌触りに優れる。
【0104】
なお、上記ウォータージェット処理ステップにおいて、上述のウォータージェット条件にて、親水性繊維を熱収縮性繊維に入り込ませた後、上記不織布形成ステップにおいて、熱収縮性繊維を熱収縮させると、ウォータージェット処理された上記積層ウェブが上記直交方向に熱収縮しにくくなる。従って、上記不織布形成ステップにおいて、ウォータージェット処理された上記積層ウェブの搬送速度を調整する(具体的には、加熱後の不織布の搬送速度を、加熱前におけるウォータージェット処理された上記積層ウェブの搬送速度よりも遅くする)と、熱収縮性繊維(熱収縮後繊維)が厚さ方向に集まりやすくなるため、上記不織布が積層ウェブよりも厚くなると考えられる。
【0105】
図2は、第1実施形態に従う不織布1の製造に用いられる製造装置101を示す図である。図2に基づいて、第1実施形態に従う不織布1の製造方法を説明する。
図2に示されるように、製造装置101は、熱収縮性繊維103をフィーダーから投入して熱収縮性繊維ウェブ105を形成する第1カード機107と、親水性繊維13をフィーダーから投入して親水性繊維シート109を形成する第2カード機111とを備えている。
【0106】
製造装置101では、第1カード機107から形成された熱収縮性繊維ウェブ105の上に、第2カード機111から形成された親水性繊維シート109を積層し、積層ウェブ113を形成する。
【0107】
第1カード機107及び第2カード機111の下流には、搬送ベルト115と、ウォータージェット装置121とが配置されている。ウォータージェット装置121は、軸線まわりに回転しながら搬送中の積層ウェブ113を吸引して外周面に保持する第1サクションドラム123及び第2サクションドラム125と、積層ウェブ113を間に挟むように第1サクションドラム123の外側に配置された、水を吹き付ける複数のノズル127と、搬送ベルト129と、脱水機131とを備えている。脱水機131は、搬送ベルト131aと、複数のサクションボックス131bとを備えている。
【0108】
積層ウェブ113を搬送ベルト115にて搬送し、複数のノズル127から積層ウェブ113に水を吹き付け、ウォータージェット処理された積層ウェブ133を形成する。ウォータージェット処理された積層ウェブ133では、親水性繊維シート109のうち、水が吹き付けられた部分の親水性繊維が、熱収縮性繊維ウェブ105の中に入り込み、当該入り込んだ親水性繊維が、後に複数の親水性領域7を形成する。また、ウォータージェット処理された積層ウェブ133では、親水性繊維シート109のうち、水が吹き付けられなかった部分の親水性繊維がそのまま残り、そのまま残った部分が、後に親水性繊維層11の突状部15を形成する。
なお、吹き付けられた水及びウォータージェット処理された積層ウェブ133が保持する水分は、第1サクションドラム123、第2サクションドラム125及び複数のサクションボックス131bから回収される。
【0109】
製造装置101は、脱水機131の下流に加熱装置141を備えている。
ウォータージェット処理された積層ウェブ133は、加熱装置141内で所定の熱収縮温度で加熱され、熱収縮性繊維を熱収縮させ、不織布1が形成され、不織布1は、巻取機151にて巻き取られる。
【実施例0110】
以下、例を挙げて本開示を説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
[製造例1]
図2に記載の製造装置101を用い、不織布No.1を製造した。条件は、以下の通りである。
-熱収縮性繊維103:潜在捲縮性繊維(PET及び低融点PETからなるサイドバイサイド型の複合繊維,平均繊維長:51mm,繊度:2.2dtex)
-熱収縮性繊維ウェブ105:坪量:50g/m2
-親水性繊維13:針葉樹パルプ繊維
-親水性繊維シート109:ティッシュ(坪量:20g/m2
【0111】
-ノズルの内径:0.10mm
-ノズルのピッチ:1.0mm
-距離:50mm
-水圧:7MPa
-熱収縮温度:140℃
【0112】
不織布No.1の坪量は72.4g/m2であり、厚さは1.76mmであった。親水性繊維を青色の染料で着色した不織布No.1の断面の画像を図3に示す。また、不織布No.1の第2面の画像を図4に示す。なお、図4では、親水性繊維は着色されていない。
液不透過性シートの上に、簡易吸収体を配置し、その上に不織布No.1を第1面が肌当接面となるように配置し、簡易吸収性物品No.1を形成した。なお、簡易吸収体は、坪量:400g/m2の針葉樹パルプ繊維から構成される吸収コアを、ホットメルト接着剤を塗工した坪量:14g/m2のティッシュから構成されるコアラップで覆うとともに、エンボス部を形成することにより製造した。
【0113】
[製造例2]
親水性繊維13を、「針葉樹パルプ繊維」から『レーヨン繊維(平均繊維長:40mm,繊度:1.7dtex)』に変更し、親水性繊維シート109を「ティッシュ」から『レーヨン繊維のウェブ(坪量:20g/m2)』に変更した以外は製造例1と同様にして、不織布No.2及び簡易吸収性物品No.2を製造した。
不織布No.2の坪量は85.3g/m2であり、厚さは1.80mmであった。親水性繊維を青色の染料で着色した不織布No.2の断面の画像を図5に示す。
【0114】
[比較製造例3]
親水性繊維13を、「針葉樹パルプ繊維」から『潜在捲縮性繊維(PET及び低融点PETからなるサイドバイサイド型の複合繊維,平均繊維長:51mm,繊度:2.2dtex)』に変更し、親水性繊維シート109を「ティッシュ」から『熱収縮性繊維ウェブ105(坪量:20g/m2)』に変更した以外は製造例1と同様にして、不織布No.3及び簡易吸収性物品No.3を製造した。不織布No.3の坪量は71.5g/m2であり、厚さは0.82mmであった。
【0115】
[比較製造例4]
吸収性物品の液透過性のトップシートとして一般的に用いられている、熱融着性繊維(芯:ポリエチレンテレフタラート,鞘:ポリエチレン,平均繊維長:51mm,繊度:2.8dtex)からなるエアスルー不織布(坪量:28g/m2)を準備し、不織布No.4とした。また、不織布No.4を用いて、製造例1と同様にして、簡易吸収性物品No.4を形成した。
【0116】
[比較製造例5]
熱収縮性繊維を熱収縮させなかった以外は、製造例1と同様にして、不織布No.5及び簡易吸収性物品No.5を形成した。不織布No.5の坪量は66.6g/m2であり、厚さは1.09mmであった。親水性繊維を青色の染料で着色した不織布No.5の断面の画像を図6に示す。
【0117】
[実施例1]
不織布No.1~不織布No.5の風合いを、KES(Kawabata's Evaluation System for Fabrics)に従い、カトーテック株式会社製のKES-FB3-Aにより評価した。具体的には、圧縮直線性:LCと、圧縮仕事量:WC(gf・cm/cm2)とを測定した。結果を表1に示す。なお、圧縮直線性は、値が大きいほど、初期の弾性が高いことを意味し、圧縮仕事量は、値が大きいほど圧縮されやすく柔らかいことを意味する。
【0118】
KES-FB3-Aの測定条件は以下の通りである。
-SENS:2
-速度:0.0020cm/秒
-加圧面積:2cm2
-上限加重:50.00gf/cm2
-DEFOUT:10mm/10V
【0119】
[実施例2]
簡易吸収性物品No.1~No.5に対して、経血の吸収試験を行った。吸収試験の手順は、以下の通りである。
[吸収試験]
(1)色差計を用いて、簡易吸収性物品の中心付近の初期色(L***)を測色する。
(2)200mm×100mm(長手方向×幅方向)のサイズを有し、中央に40mm×10mm(長手方向×幅方向)の穴を有しているアクリル板を準備する。
(3)簡易吸収性物品の上に上記アクリル板を、簡易吸収性物品の中心と、アクリル板の穴の中心とが一致するように載せる。
【0120】
(4)アクリル板の中央の穴に馬血3mL(1回目)を入れる。
(5)馬血3mL(1回目)から30秒後に、アクリル板の中央の穴に馬血3mL(2回目)を入れる。
(6)馬血3mL(1回目)から60秒後に、簡易吸収性物品からアクリル板を除去し、簡易吸収性物品の試験後写真を撮影するとともに、簡易吸収性物品の中心付近の試験後色(L***)を測色する。
(7)初期色(L***)及び試験後色(L***)から、色差(ΔE)を測定する。
(8)馬血3mL(1回目)から90秒後に、初期質量:m0(g)を測定したろ紙10枚を載せ、ろ紙10枚の上に525gのおもり(底面のサイズが50mm×35mm)を載せる。
【0121】
(9)おもりを載せてから1分後におもり及びろ紙を除去し、ろ紙10枚の試験後質量:m1(g)を測定する。
(10)リウェット率:R(質量%)を、次の式:
R(質量%)=100×(m1-m0)/6
により算出する。
なお、馬血は、簡易的に1g/mLの比重を有するものとした。
簡易吸収性No.1~No.5の色差(ΔE)及びリウェット率を表1に示し、馬血を吸収させた後の簡易吸収性No.1~No.5の試験後写真を、それぞれ、図7図11に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
不織布No.1及びNo.2は、吸収性物品の液透過性のトップシートとして一般的に用いられているエアスルー不織布である不織布No.4と比較して、初期の弾性が高く、そして柔らかいことが分かる。
また、不織布No.1及びNo.2は、不織布No.4と比較して、隠蔽性に優れ、そしてリウェットバックしにくいことが分かる。
【符号の説明】
【0124】
1 不織布
3 熱収縮後繊維層
5 熱収縮後繊維
7 親水性領域
9 疎水性領域
9a 一方側疎水性領域
9b 他方側疎水性領域
11 親水性繊維層
13 親水性繊維
15 突状部
1 第1方向
2 第2方向
T 厚さ方向
1 第1面
2 第2面
P ピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11