(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105284
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】消音器、シールプレート及びフェンダーライナー
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20250703BHJP
G10K 13/00 20060101ALI20250703BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
G10K11/16 140
G10K13/00
B60R13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223735
(22)【出願日】2023-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】丹下 勝博
【テーマコード(参考)】
3D023
5D061
【Fターム(参考)】
3D023BA02
3D023BA03
3D023BA04
3D023BB21
3D023BC01
3D023BD12
3D023BD25
3D023BE20
5D061CC01
(57)【要約】
【課題】新規な消音器の開発が求められている。
【解決手段】発明の一態様は、大部屋と複数の小部屋とを前記大部屋から延びる複数の通気路で連絡した状態に備えると共に、前記大部屋及び前記複数の小部屋の各一面に、同一方向を向いて開口する開口部が形成されているハウジングと、各前記開口部の開口縁に固定されて、前記開口部を閉塞する複数の振動膜部と、を有し、前記ハウジング内では、前記ハウジングの内外での気体の流出入は規制され、前記複数の振動膜部の振動によって音を低減させる消音器である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大部屋と複数の小部屋とを前記大部屋から延びる複数の通気路で連絡した状態に備えると共に、前記大部屋及び前記複数の小部屋の各一面に、同一方向を向いて開口する開口部が形成されているハウジングと、
各前記開口部の開口縁に固定されて、前記開口部を閉塞する複数の振動膜部と、を有し、
前記ハウジング内では、前記ハウジングの内外での気体の流出入は規制され、前記複数の振動膜部の振動によって音を低減させる消音器。
【請求項2】
前記大部屋の前記開口部の開口面積と、前記複数の小部屋の前記開口部の開口総面積とが同一である請求項1に記載の消音器。
【請求項3】
前記複数の通気路が、均一な長さになっている請求項1に記載の消音器。
【請求項4】
前記大部屋、前記複数の小部屋及び前記複数の通気路は、前記ハウジングの共通の平坦な外面に開口する凹状構造をなし、前記ハウジングの前記外面に重ねて固定される膜体によって前記外面における開口が閉塞されると共に前記複数の振動膜部が形成されている請求項1に記載の消音器。
【請求項5】
前記複数の振動膜部を外側から覆う保護用フェンスを備える請求項1に記載の消音器。
【請求項6】
車両のフロントタイヤの後側に配置されて、ピラーに固定されてフェンダーライナーに後方から対向するシールプレートであって、
請求項1から5の何れか一項に記載の消音器を前面に有し、その消音器の前記ハウジングが一体成形された樹脂成形品であるシールプレート本体を備えるシールプレート。
【請求項7】
車両のフェンダーライナーであって、
タイヤとの対向面とは反対側の外側面に請求項1から5の何れか一項に記載の消音器を有し、その消音器の前記ハウジングが一体成形された樹脂成形品であるフェンダーライナー本体を備えるフェンダーライナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、消音器と、それを有するシールプレート及びフェンダーライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な消音器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-047168(段落[0027]~[0040]、
図1~
図5等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
新規な消音器の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の一態様は、大部屋と複数の小部屋とを前記大部屋から延びる複数の通気路で連絡した状態に備えると共に、前記大部屋及び前記複数の小部屋の各一面に、同一方向を向いて開口する開口部が形成されているハウジングと、各前記開口部の開口縁に固定されて、前記開口部を閉塞する複数の振動膜部と、を有し、前記ハウジング内では、前記ハウジングの内外での気体の流出入は規制され、前記複数の振動膜部の振動によって音を低減させる消音器である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図5】
図5は、保護フェンス付きの消音器の分解斜視図
【
図6】
図6は、消音器が取り付けられた車体の側面図
【
図7】
図7は、消音器を備えるシールプレートの正面図
【
図8】
図8は、消音器を備えるフェンダーライナーの斜視図
【
図9】
図9Aは、音が第1振動膜部に入力したときの振動膜部の側断面図、
図9Bは、音が第2振動膜部に入力したときの振動膜部の側断面図
【
図13】
図13は、他の実施形態の消音器のハウジングの正面図
【
図15】
図15は、実施例1と比較例1における周波数と騒音レベルの関係を示すグラフ
【
図16】
図16は、実施例2と比較例1における周波数と騒音レベルの関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
図1及び
図2に示すように、本実施形態の消音器10は、複数の部屋20を有するハウジング11を備え、ハウジング11には、これらの部屋20を開放する開口部12が形成されている。本実施形態の例では、これらの部屋20として、大部屋20Aと複数の小部屋20Bとが設けられ、それらの各一面に、同一方向を向いて開口部12が開口している。以下では、消音器10のうち開口部12が開口した側を表側、その反対側を裏側、と適宜呼ぶこととする。例えば、大部屋20Aと各小部屋20Bは、ハウジング11の平坦面等の共通の外面(表側面)に開口する凹状構造をなしている。例えば、消音器10は、平板状をなし、厚さ方向から見ると長四角形状をなしている(
図3参照)。
【0008】
図2及び
図4に示すように、小部屋20Bは、1つの大部屋20Aに対して、大部屋20Aの周りに複数設けられ、本実施形態の例では、2つ設けられている。具体的には、本実施形態の消音器10では、ハウジング11に大部屋20Aが1つ形成されると共に、その大部屋20Aを挟むように2つの小部屋20Bが配置され、それらが消音器10の長手方向に並んでいる(例えば、直線状に並んでいる)。
【0009】
大部屋20Aの開口部12の開口面積は、小部屋20Bの開口部12の開口面積に比べて大きいが、全ての小部屋20Bの開口面積の合計である開口総面積と同一であることが好ましい。また、小部屋20B同士の開口面積は同一であることが好ましく、小部屋20B同士の高さ(深さ)も同一であることが好ましい(容積も同一であることが好ましい)。本実施形態の例では、大部屋20Aの開口部12の開口面積が、小部屋20Bの開口部12の開口面積の2倍になっていると共に、小部屋20B同士の容積及び形状が同一になっている。また、本実施形態の例では、大部屋20Aと小部屋20Bの高さ(深さ)も同一であり、小部屋20Bの容積の合計は、大部屋20Aの容積と同一である。本実施形態の例では、大部屋20Aと小部屋20Bは、表側から見ると円形になっている。なお、本開示において、複数の量(例えば、長さ、面積、容積等)同士が同一(均一)であるとは、厳密に同一である場合を含むことはもちろんのこと、例えば、一方の量に対する他方の量の差が、±5%の範囲内にあることをも含む意味である。
【0010】
ハウジング11には、大部屋20Aから延びて各小部屋20Bと連絡される通気路21が備えられている。本実施形態の例では、大部屋20Aと各小部屋20Bとの間隔は同じになっていて、通気路21同士は均一な長さになっている。本実施形態のように大部屋20Aと小部屋20Bが円形である場合、通気路21の長さは、大部屋20Aと小部屋20Bの直径差より短いことが好ましい。通気路21の幅は、小部屋20Bの半径より狭く設定されるのが好ましい。通気路21同士は、断面積も同一であることが好ましい。本実施形態の例では、通気路21は直線状に延びていて、部屋20同士をつなぐ最短経路になるように配置されている(大部屋20Aと小部屋20Bとの中心同士を結ぶ線分上に配置されている)。本実施形態の例では、通気路21の高さ(深さ)は、部屋20(大部屋20A、小部屋20B)と同一であり、通気路21と部屋20との底面同士が段差なしに連続しているが、通気路21の高さ(深さ)を、部屋20より低く(浅く)することもできるし、高く(深く)することもできる。また、本実施形態の例では、通気路21は、ハウジング11の表側に開口している(大部屋20A及び小部屋20Bと共通の表側面に開口する凹状構造をなしている)。なお、本開示において、均一な長さとは、上述のように、厳密に同一である場合を含むことはもちろんのこと、長さの差が±5%の範囲内に収まっていることをも含む意味である。
【0011】
図2に示すように、本実施形態の例では、ハウジング11は、ベースプレート13と、ベースプレート13から表側に突出した囲壁部14と、を備えている。ベースプレート13は、平板状をなしている。囲壁部14は、各部屋20を内側に形成するリング部15と、通気路21を間に形成してリング部15と連続する1対の対向壁16と、を有している。各部屋20を形成するリング部15は、隣の部屋20との対向部分が開放された形状をなし、その開放された部分同士が通気路21で連絡される。そして、リング部15の突出先端面により、開口部12の開口縁が形成されている。
【0012】
図1に示すように、ハウジング11のうち各開口部12の開口縁には、開口部12を閉塞する振動膜部31がそれぞれ固定されている。振動膜部31として、大部屋20Aの開口部12を閉塞する第1振動膜部31Aと、各小部屋20Bの開口部12をそれぞれ閉塞する1対の第2振動膜部31Bと、が設けられている。
【0013】
本実施形態の例では、ハウジング11の外面(表側面)に重ねて固定されて全ての開口部12を閉塞する膜体30(
図2参照)によって、第1振動膜部31Aと第2振動膜部31Bとが形成されている。各振動膜部31は、音により振動可能になっていて、消音器10では、振動膜部31の振動によって音を低減させることが可能になっている。
【0014】
本実施形態のハウジング11では、膜体30によって、開口部12だけでなく、表側に開口した通気路21も閉塞されている。これにより、大部屋20Aと小部屋20Bと通気路21とが閉じられ、ハウジング11の内外での気体の流出入が規制される。一方、通気路21により、大部屋20Aと各小部屋20Bとの間での気体の流出入は許容される。
【0015】
本実施形態の例では、消音器10に、カバー19が備えられている。カバー19は、ハウジング11(具体的には、開口部12の開口縁)とによって、膜体30(振動膜部31)を挟み付けている。カバー19には、大部屋20Aと小部屋20Bの各開口部12に対応する位置(例えば、同心となる位置)に、空気が通過可能なカバー開口部18が形成されている。例えば、カバー開口部18は、ハウジング11の開口部12に対応した大きさを有している(例えば、開口部12と形状及びサイズが同じになっている)。例えば、カバー19は、ハウジング11に被せられて固定される(
図1参照)。本実施形態の消音器10では、膜体30において第1振動膜部31Aと第2振動膜部31Bのみが露出するようにカバー19が設けられている。
【0016】
図5に示すように、消音器10には、振動膜部31を外側から覆う保護用フェンス17が備えられていてもよい。例えば、保護用フェンス17は、カバー19において、カバー開口部18に設けられてもよい。この場合、保護用フェンス17は、振動した振動膜部31に接触しないように離れた位置に配置されることが好ましい。
【0017】
なお、膜体30(振動膜部31)の材料としては、弾性体が好ましく、例えば、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、TPU(熱可塑性ポリウレタン)、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)、等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、膜体30(振動膜部31)の厚さは、膜体30が音(特に騒音)により振動可能であれば、特に限定されるものでない。
【0018】
なお、ハウジング11やカバー19の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、ポリカーボネート、等の熱可塑性樹脂が挙げられる。ハウジング11の材料は、熱硬化性樹脂であってもよい。例えば、ハウジング11やカバー19は、樹脂製であってもよいし(例えば、射出成形品等の樹脂成形品であってもよいし)、金属製であってもよい。
【0019】
消音器10は、車両等の乗り物に用いられてもよいし、建物に用いられてもよい。
図6及び
図7には、消音器10が車両90に用いられた一例が示されている。この例では、消音器10は、シールプレート81に備えられている。シールプレート81は、車両90のフロントのタイヤ82の後側に配置されて、フロントのフェンダーライナー83に後方から対向配置される。具体的には、シールプレート81は、車両90のフロントフェンダー84とフロントピラー85とに挟まれてそれらに固定される。そして、例えば、消音器10は、シールプレート81の前面81M(フロントのタイヤ82側を向く面)に備えられる。シールプレート81の前面81Mに、振動膜部31が露出する。シールプレート81は、縦長形状をなしているので、振動膜部31は、シールプレート81の長手方向に並ぶように配置されることが好ましい(例えば、シールプレート81は長手方向が上下方向となるように配置される)。また、シールプレート81は、シールプレート本体81Hが消音器10のハウジング11と一体成形された樹脂成形品であってもよい。この構成では、消音器10付きのシールプレート81の製造を容易にすることが可能となる。
【0020】
図8には、消音器10が車両90に用いられた別の例が示されている。この例では、消音器10は、フェンダーライナー83(例えば、リア用のもの。
図6参照)に備えられている。このフェンダーライナー83では、消音器10が、タイヤ82との対向面(内側面)とは反対側の外側面(例えば、リア又はフロントのタイヤ82の後側の位置)に設けられる。振動膜部31が、タイヤ82との対向面(内側面)とは反対側の外側面に露出する。また、フェンダーライナー83は、フェンダーライナー本体83Hが消音器10のハウジング11と一体成形された樹脂成形品であってもよい。この構成では、消音器10付きのフェンダーライナー83の製造を容易にすることが可能となる。なお、消音器10は、フェンダーライナー83のうちタイヤ82と対向する内側面に設けられていてもよい。
【0021】
また、例えば、消音器10は、車両90のボディパネルや内装材(例えば、ルーフライナー等)に取り付けられてもよい。なお、車両90としては、例えば、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車等が挙げられる。消音器10は、建物の壁や床や天井等に取り付けられてもよい。
【0022】
次に、本実施形態の消音器10の作用効果について説明する。
図9Aに示すように、消音器10に、表側から音Sが入力される場合、例えば、音Sは、第1振動膜部31A(大部屋20A)に入力される。このとき、第1振動膜部31Aは、音Sの周波数に応じた周波数で振動する。ここで、上述のように、大部屋20Aと小部屋20Bと通気路21とは、ハウジング11と膜体30により閉じられていて、ハウジング11の内外での気体の流出入が規制される。一方、通気路21により、大部屋20Aと各小部屋20Bとの間での気体の流出入は許容される。従って、大部屋20Aに入力された音Sは、通気路21を通して各小部屋20Bに伝達される。これにより、各小部屋20Bを閉塞する第2振動膜部31Bを、第1振動膜部31Aの振動に従動して振動させることができる。このとき、
図9Aに示すように、音Sの入力を受けて第1振動膜部31Aが大部屋20A側(内側)に膨出したときには、第1振動膜部31Aは、逆に、外側に膨出する状態になる。即ち、第2振動膜部31Bは、第1振動膜部31Aと同一の周波数でありかつ逆位相の振動をすることが可能となり、第1振動膜部31A(大部屋20A)に入力された音Sと同一の周波数で逆位相の音S'を出力することが可能となる。これにより、消音器10は、音Sを相殺して消音することが可能となる。特に、本実施形態の例のように、大部屋20Aの開口部12の開口面積が、小部屋20Bの開口部12の合計の開口面積(開口総面積)と同一であることが好ましく、大部屋20Aの容積が、小部屋20Bの合計の容積と同一であることがより好ましい。これらのようにすれば、より消音効果を高めることが可能となる。
【0023】
また、消音器10に表側から音Sが入力される場合、例えば、
図9Bに示すように、音Sが、各第2振動膜部31B(各小部屋20B)に入力されることもある。この場合、第2振動膜部31Bは、音Sの周波数に応じた周波数で振動する。そして、小部屋20Bに入力された音Sは、通気路21を通して大部屋20Aへと伝達される。これにより、大部屋20Aを閉塞する第1振動膜部31Aを、第2振動膜部31Bの振動に従動して振動させることが可能となる。そして、第1振動膜部31Aから、音Sとは同一の周波数で逆位相の音S'を出力することが可能となり、音Sを相殺して消音することが可能となる。
【0024】
なお、消音器10では、大部屋20Aと小部屋20Bについて、開口部12の開口面積や容積を調整したり、振動膜部31の厚さや材料を調整することで、所望の周波数帯の音の消音を図ることが可能となる。
【0025】
[第2実施形態]
図10及び
図11には、第2実施形態の消音器10が示されている。本実施形態の消音器10では、ハウジング11の構成が、上記第1実施形態とは異なっている。本実施形態のハウジング11では、大部屋20Aと小部屋20Bと通気路21が、板状のハウジング11の表側面(例えば平坦面)に形成された凹部で構成されている。具体的には、ハウジング11は、プレート部材41と、その裏面に重なって固定される閉塞部材42と、を備えている。
図11に示すように、プレート部材41は、大部屋20Aと各小部屋20Bと通気路21とを、表裏の両面に開口した状態に備えている。そして、プレート部材41におけるそれらの表側の開口部(開口部12及び通気路21の開口部)が、膜体30によって閉塞されている。また、閉塞部材42は、プレート部材41における大部屋20Aと小部屋20Bと通気路21の裏側の開口部を閉塞する。なお、本実施形態のハウジング11は、プレート部材41と閉塞部材42が一体成形されたもの(例えば、射出成型品等の樹脂成形品)であってもよい。
【0026】
本実施形態の消音器10のその他の点は、上記第1実施形態の消音器10と同様である。本実施形態の消音器10によっても、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0027】
[他の実施形態]
上記実施形態では、消音器10が平板状であったが、消音器10は、これに限定されるものではなく、例えば、湾曲した板状であってもよい。この場合、複数の開口部12は、同じ側(表側)を向いて開口していればよい。このように、消音器10が湾曲した板状であると、消音器10を、フェンダーライナー83等の湾曲面に設け易くすることが可能となる。
【0028】
上記実施形態では、ハウジング11の部屋20の開口部12が、円形であったが、開口部12は、これに限定されるものではなく、楕円状であってもよいし、多角形状(例えば正多角形状)であってもよい。
【0029】
図12及び
図13に示すように、消音器10は、1つの大部屋20Aに対して通気路21を介してつながった小部屋20Bが、3つ以上設けられたものであってもよい。同図に示す例では、円形状の大部屋20Aから複数の通気路21が放射状に延びて大部屋20Aの周りに複数の小部屋20Bが配置されている。このように小部屋20Bが3つ以上ある場合でも、小部屋20Bの開口部12の合計の開口面積が、大部屋20Aの開口面積と同一であることが好ましい。さらに、小部屋20Bの合計の容積が、大部屋20Aの容積と同一であることが好ましい。また、小部屋20B同士のサイズや形状が同一であることが好ましい。これらの場合でも、小部屋20Bは、大部屋20Aの周方向で、等間隔に配置されることが好ましく、回転対称であることが好ましい。
【0030】
上記実施形態の消音器10において、ハウジング11の内外で極小の流量の気体の流出入を許容して、ハウジング11の内外の気圧差を緩和するオリフィスが備えられていてもよい。また、上記実施形態において、ハウジング11を、ハウジング11の内外で極小の流量の気体の流出入を許容して、ハウジング11の内外の気圧差を緩和可能な通気性を有する多孔質体で形成してもよい。このような多孔質体としては、例えば、発泡体が挙げられ、発泡体としては、例えば、ポリウレタン樹脂製のものや、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂等)製のものが挙げられる。
【0031】
上記実施形態において、各振動膜部31が、共通の膜体30に設けられていたが、別々の膜体に設けられていてもよい。
【実施例0032】
以下、実施例及び比較例によって上記実施形態をさらに具体的に説明するが、本開示の消音器は、以下の実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例の消音器について、消音効果を評価した。
【0033】
(1)実施例及び比較例の消音器
<実施例1,2>
実施例1,2の消音器は、
図1~9に示す上記第1実施形態の消音器10であり、1つの大部屋20Aと2つの小部屋20Bを備え、それらは表側から見ると円形である。大部屋20A(開口部12)の直径は、41mmであり、各小部屋20B(開口部12)の直径は、29mmであり、それらの部屋20の高さ(深さ)は、10mmである。大部屋20Aと小部屋20Bは、それらの中心が等間隔に一直線上に並ぶように配置されている。通気路21については、幅が5mm、長さが10mm、高さ(深さ)は、10mmである。カバー19のカバー開口18も円形であり、大部屋20Aに対応するカバー開口18の直径は41mm、小部屋20Bに対応するカバー開口18の直径は29mmである。膜体30は、厚さが0.3mmのEPDM製のものである。
【0034】
実施例1では、消音器10を、車両90(電気自動車)の右前のシールプレート81の前面(右のフロントのタイヤ82側を向く面)に設けた。
【0035】
実施例2では、消音器10を、車両90(電気自動車)の右後ろのリアのフェンダーライナー83の外側面のうち、右のリアのタイヤ82の後側の部分に設けた。
【0036】
<比較例1>
比較例1では、消音器10を車両90(電気自動車)に設けていない。
【0037】
(2)評価方法
実施例1,2及び比較例1について、騒音レベル(音圧レベル)を評価した。具体的には、車両90(電気自動車)を粗路面上で50km/hにて前方に走行させた状態で、運転者の耳元付近となる位置Pに設置したマイクで車室内の騒音レベル(dB(A))を測定した(
図14参照)。
【0038】
(3)評価結果
図15及び
図16に示すように、車両90に消音器10が設けられた実施例1,2では、消音器10が設けられていない比較例1に比べて、特に乗員にとって気になる音の周波数範囲である50~500Hzの周波数範囲において、車室内への騒音レベル(dB(A))が顕著に低減されていることが確認できた。
【0039】
<付記>
以下、上記実施形態及び実施例から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、これら特徴群は、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0040】
例えば、以下の特徴群は、消音器と、それを有するシールプレート及びフェンダーライナーに関し、「従来から、様々な消音器が提案されている(例えば、特開2012-047168(段落[0027]~[0040]、
図1~
図5等)参照)。」という背景技術について、「新規な消音器の開発が求められている。」という課題をもって想到されたものと考えることができる。また、従来から、シールプレートやフェンダーライナー等、新規な消音器を有する部品の開発が求められている。
【0041】
[特徴1]
大部屋と複数の小部屋とを前記大部屋から延びる複数の通気路で連絡した状態に備えると共に、前記大部屋及び前記複数の小部屋の各一面に、同一方向を向いて開口する開口部が形成されているハウジングと、
各前記開口部の開口縁に固定されて、前記開口部を閉塞する複数の振動膜部と、を有し、
前記ハウジング内では、前記ハウジングの内外での気体の流出入は規制され、前記複数の振動膜部の振動によって音を低減させる消音器。
【0042】
上記特徴によれば、新規な消音器を提供できる。また、上記の従来構成に比べて、コンパクト化を図ることも可能となる。
【0043】
[特徴2]
前記大部屋の前記開口部の開口面積と、前記複数の小部屋の前記開口部の開口総面積とが同一である特徴1に記載の消音器。
【0044】
[特徴3]
前記複数の通気路が、均一な長さになっている特徴1又は2に記載の消音器。
【0045】
[特徴4]
前記大部屋、前記複数の小部屋及び前記複数の通気路は、前記ハウジングの共通の平坦な外面に開口する凹状構造をなし、前記ハウジングの前記外面に重ねて固定される膜体によって前記外面における開口が閉塞されると共に前記複数の振動膜部が形成されている特徴1から3の何れか1の特徴に記載の消音器。
【0046】
[特徴5]
前記ハウジングの内外で極小の流量の気体の流出入を許容して前記ハウジングの内外の気圧差を緩和するオリフィスを備える特徴1から4の何れか1の特徴に記載の消音器。
【0047】
[特徴6]
前記複数の振動膜部を外側から覆う保護用フェンスを備える特徴1から5の何れか1の特徴に記載の消音器。
【0048】
[特徴7]
前記小部屋は、総数が2つで、前記大部屋を間に挟むように配置されている特徴1から6の何れか1の特徴に記載の消音器。
【0049】
[特徴8]
前記大部屋は、円形をなし、前記複数の通気路は前記大部屋から放射状に延びて前記大部屋の周りに前記複数の小部屋が配置されている特徴1から7の何れか1の特徴に記載の消音器。
【0050】
[特徴9]
前記複数の小部屋は、前記大部屋に対して回転対称に配置されている特徴1から8の何れか1の特徴に記載の消音器。
【0051】
[特徴10]
前記ハウジングは、射出成形品である特徴1から10の何れか1の特徴に記載の消音器。
【0052】
[特徴11]
前記ハウジングには、表裏の両面に前記大部屋、前記複数の小部屋及び前記複数の通気路が開口し、表面の開口が前記膜体によって閉塞されているプレート部材と、
前記プレート部材の裏面に重ねて固定され、前記プレート部材の裏面の開口を閉塞する閉塞部材と、が含まれる特徴4に記載の消音器。
【0053】
[特徴12]
車両のフロントタイヤの後側に配置されて、ピラー(フロントピラー85)に固定されてフェンダーライナーに後方から対向するシールプレートであって、
特徴1から5の何れか1の特徴に記載の消音器を前面に有し、その消音器の前記ハウジングが一体成形された樹脂成形品であるシールプレート本体を備えるシールプレート。
【0054】
[特徴13]
車両のフェンダーライナーであって、
タイヤとの対向面に対する裏側面に特徴1から5の何れか1の特徴に記載の消音器を有し、その消音器の前記ハウジングが一体成形された樹脂成形品であるフェンダーライナー本体を備えるフェンダーライナー。
【0055】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。