(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010537
(43)【公開日】2025-01-21
(54)【発明の名称】選択配向性電極薄膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/06 20060101AFI20250110BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20250110BHJP
H10D 64/60 20250101ALI20250110BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20250110BHJP
【FI】
C23C14/06 N
C23C14/06 A
H01L21/285 S
H01L21/28 301R
H10N30/853
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024155391
(22)【出願日】2024-09-09
(31)【優先権主張番号】202310833485.1
(32)【優先日】2023-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】524333611
【氏名又は名称】ロマレ チップ テクノロジー チャンジョウ カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】524333622
【氏名又は名称】ロマレ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(74)【代理人】
【識別番号】100219933
【弁理士】
【氏名又は名称】元川 信輔
(72)【発明者】
【氏名】スン シュードン
(72)【発明者】
【氏名】ユー フォンジ
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ ビン
(72)【発明者】
【氏名】ミハイ アンドレイ ポール
(72)【発明者】
【氏名】ゼメン ジャン
【テーマコード(参考)】
4K029
4M104
【Fターム(参考)】
4K029AA06
4K029AA24
4K029BA05
4K029BA07
4K029BA08
4K029BA09
4K029BA13
4K029BA16
4K029BA17
4K029BA43
4K029BA58
4K029BA60
4K029BB02
4K029BB07
4K029BC03
4K029BD01
4K029CA05
4K029CA06
4K029DC03
4K029DC05
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4K029DC39
4K029EA01
4K029EA03
4K029EA04
4K029EA08
4M104AA01
4M104AA03
4M104BB13
4M104BB14
4M104BB17
4M104BB29
4M104BB30
4M104BB32
4M104BB36
4M104BB37
4M104BB38
4M104DD28
4M104DD37
4M104DD40
4M104DD41
4M104FF13
4M104GG16
4M104HH20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シリコン半導体分野において基板上に(00l)選択配向性電極薄膜を製造する方法及び該選択配向性電極薄膜を提供する。
【解決手段】選択配向性電極薄膜において、シリコン基板及び前記シリコン基板上に順に成長される第一シード層、第二シード層及び下部電極層を含み、前記第一シード層はA
xB
1-xN薄膜またはA
3-xB
1-xN膜であり、そのうちA=Cu、Fe、B=Pd、Pt、0<x<1であり、前記第二シード層は、窒化クロム薄膜、窒化チタン薄膜、窒化タンタル薄膜、酸化マグネシウム薄膜のうちの一種又は複数種の薄膜が用いられ、前記下部電極薄膜は、白金薄膜、窒化チタン薄膜、金薄膜、ルテニウム薄膜又はニオブドープチタン酸ストロンチウム薄膜のうちの一種又は複数種の薄膜が用いられ、それは(00l)結晶方向に選択配向を備え、従来のシリコン基板に(00l)選択配向性薄膜を取得できないという問題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択配向性電極薄膜において、
基板及び前記基板上に順に成長される第一シード層、第二シード層及び下部電極層を含み、
前記第一シード層はAxB1-xN薄膜またはA3-xB1-xN薄膜であり、A=Cu、Fe、B=Pd、Pt、0<x<1であり、
前記第二シード層は、窒化クロム薄膜、窒化チタン薄膜、窒化タンタル薄膜、酸化マグネシウム薄膜のうちの一種又は複数種の薄膜が用いられ、
前記下部電極薄膜は、白金薄膜、窒化チタン薄膜、金薄膜、ルテニウム薄膜又はニオブドープチタン酸ストロンチウム薄膜のうちの一種又は複数種の薄膜が用いられ、それは(00l)結晶方向に選択配向を備える、ことを特徴とする選択配向性電極薄膜。
【請求項2】
前記基板はシリコン基板、表面酸化シリコン基板、表面窒化シリコン基板、炭化シリコン基板、金属基板、ガラス基板、酸化マグネシウム基板を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の電極薄膜。
【請求項3】
前記第一シード層と第二シード層の厚さはいずれも2nm~500nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の電極薄膜。
【請求項4】
前記基板と前記第一シード層の間に緩衝層を設置し、前記緩衝層は金属薄膜又は金属窒化物薄膜である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電極薄膜。
【請求項5】
前記緩衝層はタンタル薄膜、クロム薄膜、チタン薄膜、窒化チタン、窒化タンタル薄膜を含み、且つ前記緩衝層の厚さは2nm~50nmである、
ことを特徴とする請求項4に記載の電極薄膜。
【請求項6】
前記一次シード層がCu3BN薄膜であり、ここでB=Pd、Ptである、
ことを特徴とする請求項1に記載の電極薄膜。
【請求項7】
選択配向性電極薄膜の製造方法において、
基板を提供し、前記基板に対して前処理を行い、マグネトロンスパッタリング装置内のサンプル台に取り付けるステップと
マグネトロンスパッタリング装置下で、第一ターゲットを接続し、窒素及び不活性ガス下で第一シード層を成長させ、形成された第一シード層はAxB1-xN薄膜またはA3-xB1-xN薄膜であり、A=Cu、Fe、B=Pd、Pt、0<x<1であるステップと、
第一シード層のスパッタリングを終了し、第二ターゲットを接続し、窒素/酸素及び不活性ガス下で第二シード層を成長させ、形成された第二シード層は窒化クロム薄膜、窒化チタン薄膜、窒化タンタル薄膜、酸化マグネシウム薄膜のうちの一種又は複数種の組み合わせであるステップと、
第二シード層のスパッタリングを終了し、第三ターゲットを接続し、(00l)結晶方向に選択配向を備える下部電極層を成長させるようにし、形成された下部電極層は白金薄膜、窒化チタン薄膜、金薄膜、ルテニウム薄膜又はニオブドープチタン酸ストロンチウム薄膜のうちの一種又は複数種の組み合わせであるステップと、を含む、ことを特徴とする選択配向性電極薄膜の製造方法。
【請求項8】
第四ターゲットを接続し、基板上に予め緩衝層を成長させ、前記緩衝層は金属薄膜又は金属窒化物薄膜である、
ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
形成された第一シード層又は第二シード層に基づいて基板温度、通入するガスの流量及び圧力を決定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
形成された前記第一シード層と第二シード層の厚さは2nm~500nmである、
ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項11】
前記基板はシリコン基板、表面酸化シリコン基板、表面窒化シリコン基板、炭化シリコン基板、金属基板、ガラス基板、酸化マグネシウム基板を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項12】
前記一次シード層がCu3BN薄膜であり、ここでB=Pd、Ptである、
ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜製造技術分野に関し、特に選択配向性電極薄膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの研究でマイクロエレクトロニクスやナノエレクトロニクスにおいて、(00l)結晶配向構造の薄膜(ここで,lは、一般的に1~9の整数である)が広範な用途に応用できることが示されてきている。(111)結晶方向に選択配向した薄膜及び多結晶薄膜と比べて、(00l)結晶配向の薄膜はより優れた圧電、強誘電、磁気メモリ等の性能を備える。
【0003】
例えば磁気ランダムメモリの分野では、(00l)結晶配向の下部電極をエピタキシャル成長させると、(111)結晶配向又はハイブリッド結晶配向の下部電極と比べて、デバイスのトンネル磁気抵抗(TMR)は最大50%以上高まる。またチタン酸ストロンチウムの構造化合物において、(00l)選択配向性薄膜も(111)優先配向した薄膜及び多結晶薄膜と比べてより優れた圧電性能を備える。しかし従来の研究結果の多くは電極結晶格子に比較的よくマッチする酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム(STO)等の基板に集中し、シリコン半導体分野に応用できない。このため(00l)結晶配向の薄膜を現在のシリコンベースの大規模集積回路産業に集積することは1つの主要な課題である。
【発明の概要】
【0004】
上記技術的欠陥を克服するために、本発明の目的は選択配向性電極薄膜及びその製造方法を提供することであり、従来のシリコン半導体分野内で基板上に(00l)選択配向性の薄膜を取得できない問題を解決することを旨とする。
【0005】
本発明は選択配向性電極薄膜を開示し、
【0006】
シリコン基板及び前記シリコン基板上に順に成長される第一シード層、第二シード層及び下部電極層を含み、
【0007】
前記第一シード層はAxB1-xN薄膜であり、A=Cu、Fe、B=Pd、Pt、0<x<1であり、好ましくはA3―xB1-xN薄膜であり、A=Cu、Fe、B=Pd、Pt、0<x<1であり、さらに好ましくはA4-xBxN1-y薄膜であり、A=Cu、Fe、B=Pd、Pt、0≦x<4および0≦y<1、例えばB=Pd、PtであるCu3BN薄膜であり
【0008】
前記第二シード層は、窒化クロム薄膜、窒化チタン薄膜、窒化タンタル薄膜、酸化マグネシウム薄膜のうちの一種又は複数種の薄膜が用いられ、
【0009】
前記下部電極薄膜は、白金薄膜、窒化チタン薄膜、金薄膜、ルテニウム薄膜又はニオブドープチタン酸ストロンチウム薄膜のうちの一種又は複数種の薄膜が用いられ、それは(00l)方向に選択配向を備える。
【0010】
好ましくは、前記基板はシリコン基板、表面酸化シリコン基板、表面窒化シリコン基板、炭化シリコン基板、金属基板、ガラス基板、酸化マグネシウム基板を含む。
【0011】
好ましくは、前記第一シード層と第二シード層の厚さはいずれも2nm~500nmである。
【0012】
好ましくは、前記基板と前記第一シード層の間に緩衝層を設置し、前記緩衝層は金属薄膜又は金属窒化物薄膜である。
【0013】
好ましくは、前記緩衝層はタンタル薄膜、クロム薄膜、チタン薄膜、窒化チタン、窒化タンタル薄膜を含み、且つ前記緩衝層の厚さは2nm~50nmである。
【0014】
本発明は選択配向性電極薄膜の製造方法をさらに提供し、
【0015】
基板を提供し、前記基板に対して前処理を行い、マグネトロンスパッタリング装置内のサンプル台に取り付けるステップと
【0016】
マグネトロンスパッタリング装置で、第一ターゲットを接続し、窒素及び不活性ガス下で第一シード層を成長させ、形成された第一シード層はAxB1-xN薄膜であり、A=Cu、B=Pd、Pt、0<x<1、または好ましくはA3―xB1-xN薄膜であり、A=Cu、Fe、B=Pd、Pt、0<x<1であり、または好ましくはA4-xBxN1-y薄膜であり、A=Cu、Fe、B=Pd、Pt、0≦x<4および0≦y<1、例えばB=Pd、PtであるCu3BN薄膜であるステップと、
【0017】
第一シード層のスパッタリングを終了し、第二ターゲットを接続し、窒素酸素及び不活性ガス下で第二シード層を成長させ、形成された第二シード層は窒化クロム薄膜、窒化チタン薄膜、窒化タンタル薄膜、酸化マグネシウム薄膜のうちの一種又は複数種の組み合わせであるステップと、
【0018】
第二シード層のスパッタリングを終了し、第三ターゲットを接続し、(00l)結晶配向に選択配向を備える下部電極層を成長させるようにし、形成された下部電極層はクロム薄膜、窒化チタン薄膜、金薄膜、ルテニウム薄膜又はニオブドープチタン酸ストロンチウム薄膜のうちの一種又は複数種の組み合わせであるステップと、を含む。
【0019】
好ましくは、前記第一ターゲットを接続する前に
【0020】
第四ターゲットを接続し、基板上に予め緩衝層を成長させる。
【0021】
好ましくは、形成された第一シード層又は第二シード層に基づいて基板温度、通入するガスの流量及び圧力を決定する。
【0022】
好ましくは、形成された前記第一シード層と第二シード層の厚さは2nm~500nmである。
【0023】
好ましくは、前記基板はシリコン基板、表面酸化シリコン基板、表面窒化シリコン基板、炭化シリコン基板、金属基板、ガラス基板、酸化マグネシウム基板を含む。
【0024】
上記技術的解決手段を用いると、従来技術と比較して、以下の有益な効果を備える。
【0025】
本願が提供する電極薄膜及びその製造方法は、(00l)結晶方向に形成しやすいAxB1-xN薄膜を第一シード層として用い、窒化クロム、窒化チタン、窒化タンタル、酸化マグネシウム等を第二シード層として用いて、(00l)結晶方向に高度な選択配向の下部電極薄膜構造を取得し、高温下でも元素の拡散が生じないだけでなく、半導体分野の高品質な下部電極として用いることができ、デバイスの性能を高め、さらに後続の成長(00l)結晶配向の圧電、強誘電、磁気メモリ等の機能薄膜の結晶体の成長のために結晶配向を制御する作用を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は本発明の選択配向性電極薄膜の実施例一の構造概略図である。
【0027】
【
図2】
図2は本発明の選択配向性電極薄膜の実施例一の緩衝層を示す構造概略図である。
【0028】
【
図3】
図3は本発明の選択配向性電極薄膜の製造方法の実施例二のフロー図である。
【0029】
【
図4】
図4は本発明の選択配向性電極薄膜の製造方法の実施例二で製造された薄膜のXRD図である。
【0030】
【
図5】
図5は本発明は選択配向性電極薄膜の製造方法の実施例二で製造された薄膜の透過電子顕微鏡図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下で添付図と具体的な実施例を関連付けて本発明の利点をさらに詳述する。
【0032】
ここで例示的な実施形態を詳細に説明するが、その例は添付図面に示される。以下の説明が添付図面に関する場合、特に示さない限り、異なる添付図面における同じ数字は、同じ又は類似の要素を示す。以下の例示的な実施形態で説明される実施形態は本開示に一致する全ての実施形態を表すわけではない。逆に、それらは添付の特許請求の範囲に示されているように、本開示のいくつかの態様と一致する装置及び方法の例に過ぎない。
【0033】
本開示で使用される用語は、特定の実施例を説明する目的のみに使用され、本開示を限定することを意図するわけではない。本開示及び添付の特許請求の範囲で使用される単数の形式「一種」、「前記」及び「該」も文脈で明らかにその他の意味を含むことが示されない限り、複数の形式を含むことを意図している。本書で使用される用語「及び/又は」は1つの又は複数の関連する列挙された項目のいずれか又は全ての可能な組み合わせを指し且つ含むことを理解されたい。
【0034】
本開示で用語第一、第二、第三等を使用して各種の情報を説明するが、これらの情報はこれらの用語に限定されるものではないことを理解されたい。これらの用語は同一タイプの情報を互いに区別することにのみ使用される。文脈によって決まり、本明細書で使用される言葉「例えば」は「……のとき」又は「……のとき」又は「決定に基づいて」のように解釈されてもよい。
【0035】
本発明の説明において、理解すべきなのは、用語「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後ろ」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「最上」、「下」、「内」、「外」等の指示する方向又は位置関係は添付図に示される方位又は位置関係に基づくが、本発明を説明しやすくし説明を簡略化するためだけのものであり、指示される装置又は素子は必ずしも特定の方位、特定の方位での構造及び操作を備えることを指示又は暗示しているわけではなく、これにより本発明を限定すると理解されるものではない。
【0036】
本発明の説明において、特に規定及び限定されない限り、留意すべきなのは、用語「装着」、「連接」、「接続」は広く理解されるべきであり、例えば、機械接続又は電気的接続であってもよく、二つの素子の内部の連通であってもよく、直接接続でもよく、中間媒体を介した間接接続であってもよい。本分野の当業者であれば、具体的な状況に基づいて上記用語の具体的な意味を理解され得る。
【0037】
後続の説明において、素子を表すのに例えば「モジュール」、「部材」又は「ユニット」の接尾辞を使用するが、本発明の説明をしやすくするためだけであり、それ自体に特定の意味はない。このため、「モジュール」と「部材」は混合して使用してもよい。
【0038】
実施例一、本発明は選択配向性電極薄膜を開示し、シリコン基板上に(00l)高度選択配向性を実現する下部電極薄膜構造を提供するのに用いられ、具体的に、
図1を参照し、シリコン基板及び前記シリコン基板上に順に成長される第一シード層、第二シード層及び下部電極層を含み、前記第一シード層はA
xB
pxN薄膜であり、そのうちA=Cu、Fe、B=Pd、Pt、0<x<1、または好ましくはA
3―xB
1-xN薄膜であり、A=Cu、Fe、B=Pd、Pt、0<x<1であり、または好ましくはA
4-xB
xN
1-y薄膜であり、A=Cu、Fe、B=Pd、Pt、0≦x<4および0≦y<1、例えばB=Pd、PtであるCu
3BN薄膜であり、前記第二シード層は、窒化クロム薄膜、窒化チタン薄膜、窒化タンタル薄膜、酸化マグネシウム薄膜のうちの一種又は複数種の薄膜が用いられるがそれらに限定されず、前記下部電極薄膜は、白金薄膜、窒化チタン薄膜、金薄膜、ルテニウム薄膜(SrRuO
3薄膜又はニオブドープチタン酸ストロンチウム(Nb・doped・SrTiO
3)薄膜のうちの一種又は複数種の薄膜が用いられるがそれらに限定されず、それは(00l)結晶方向に選択配向を備える。
【0039】
例示として、本実施形態で提供される電極薄膜は、(00l)結晶方向に形成しやすいAxB1-xN薄膜または好ましくはA3―xB1-xN薄膜を第一シード層として用い、A=Cu、Fe、B=Pd、Pt、0<x<1であり、それはシリコン基板と下部電極の間で結晶格子の不一致が生じやすいという問題を改善し、後続の薄膜の成長のために(00l)結晶方向に成長するテンプレートを提供する。それから窒化クロム、窒化タンタル、酸化マグネシウム等を第二シード層として用いて、高温下での(第一シード層に用いられた)銅元素の拡散問題を解決するだけでなく、その結晶体の構造も(00l)結晶配向であり、格子定数が白金、窒化チタン等の本実施形態で用いられる下部電極により近づき、さらにシリコン基板と下部電極層の間の格子不整合の問題を低減し、よって高品質の(00l)結晶配向下部電極薄膜を成長させる。
【0040】
上記により、本実施形態における(00l)結晶方向に高度選択配向の下部電極薄膜構造は、高温下でも元素の拡散が生じないだけでなく、半導体分野の高品質な下部電極に用いることができ、デバイスの性能を高め、さらに後続の成長(00l)結晶配向の圧電、強誘電、磁気メモリ等の機能薄膜の結晶体の成長のために結晶配向を制御する作用を提供することができ、即ちその他の高度な選択配向を備える薄膜を取得する。
【0041】
本実施形態において、上記基板はシリコン基板、表面酸化シリコン基板、表面窒化シリコン基板、炭化シリコン基板、金属基板、ガラス基板、を含むがそれらに限定されず、酸化マグネシウム基板等の従来の基板を用いてもよく、上記のように、第一シード層に(00l)結晶配向を備えやすいように形成してもよく、このため従来の(00l)高度選択配向の薄膜が主として下部電極結晶格子とマッチする酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム(STO)等の基板上に応用され、シリコン半導体分野に応用できないという問題を克服することができる。
【0042】
上記実施形態において、好ましくは、前記第一シード層と第二シード層の厚さは2nm~500nmである。最も好ましくは、第一シード層の厚さは50nmであり、第二シード層の厚さは30nmであり、第一シード層と第二シード層には一定の厚さの制限があり、第一シード層と第二シード層の格子定数は一致又は類似しているようにし、後続で成長させた下部電極薄膜(又はその他の薄膜)が(00l)の高度に選択配向された結晶配向を備え、成長させた薄膜の構造全体が(00l)高度選択配向の高品質なデバイスになるようにし、上記第一シード層と第二シード層の結晶方向も(00l)である。
【0043】
本実施例において、選択可能に、
図2を参照し、前記基板と前記第一シード層の間に緩衝層を設置してもよく、該緩衝層を設置することは基板の表面の粗さ及び粘着性等の特性を改善するのに用いられ、具体的に、前記緩衝層はタンタル薄膜、窒化タンタル、クロム薄膜、チタン薄膜又は窒化チタン薄膜等を含むがそれらに限定されず、且つ前記緩衝層の厚さは2nm~50nmであり、該緩衝層を設置することは上記第一シード層、第二シード層及び下部電極層を成長させる前に予め製造してもよく、後続の第一シード層と基板の接続の安定性を高めるようにする。該後続で成長させた第一シード層、第二シード層及び下部電極層下部電極薄膜を安定して基板に配置し、形成された(00l)の高度選択配向結晶配向は後続の圧電、強誘電、磁気メモリ等の機能薄膜の成長のために結晶配向を制御する作用を提供することができる。
【0044】
実施例二、本発明はさらに選択配向性電極薄膜の製造方法を提供し、上記実施例一の前記(00l)結晶方向に高度選択配向された電極薄膜を製造するのに用いられ、
図3を参照し、以下を含む。
【0045】
基板を提供し、前記基板に対して前処理を行い、マグネトロンスパッタリング装置のサンプル台に取り付けるステップS10と
【0046】
本実施形態において、下記のように、前記基板はシリコン基板、表面酸化シリコン基板、表面窒化シリコン基板、炭化シリコン基板、金属基板、ガラス基板、酸化マグネシウム基板を含む。上の実施例に記載のように、基板も従来のその他の基板を含んでもよい。留意すべきなのは、上記前処理は具体的には該基板の洗浄過程に対してであり、基板表面のRCA標準洗浄等を含むがそれに限定されず、具体的に基板材料によって適した試薬を用いて基板表面を洗浄する等でもよい。
【0047】
マグネトロンスパッタリング装置下で、第一ターゲットを接続し、窒素及び不活性ガス下で第一シード層を成長させ、形成された第一シード層はAxB1-xN薄膜であり、A=Cu、Fe、B=Pd、Pt、0<x<1、または好ましくはA3―xB1-xN薄膜であり、A=Cu、Fe、B=Pd、Pt、0<x<1であり、または好ましくはA4-xBxN1-y薄膜であり、A=Cu、Fe、B=Pd、Pt、0≦x<4および0≦y<1、例えばB=Pd、PtであるCu3BN薄膜であるステップS20。
【0048】
具体的に、マグネトロンスパッタリングで前記第一シード層を成長させる前に、マグネトロンスパッタリングキャビティに対して真空引き処理を行い、具体的なキャビティの真空が7*10-8mTorr(又は基板又はスパッタリングの第一シード層に基づいて調整)より小さいとき、基板をマグネトロンスパッタリング装置内のサンプル台上に取り付け、第一ターゲットは合金ターゲットであってもよい。
【0049】
第一シード層のスパッタリングを終了し、第二ターゲットを接続し、窒素酸素及び不活性ガス下で第二シード層を成長させ、形成された第二シード層は窒化クロム薄膜、窒化チタン薄膜、窒化タンタル薄膜、酸化マグネシウム薄膜のうちの一種又は複数種の組み合わせであり、第二ターゲットは金属ターゲットであってもよいステップS30。
【0050】
第二シード層のスパッタリングを終了し、第三ターゲットを接続し、(00l)結晶方向に選択配向を備える下部電極層を成長させるようにし、形成された下部電極層はクロム薄膜、窒化チタン薄膜、金薄膜、ルテニウム薄膜又はニオブドープチタン酸ストロンチウム薄膜のうちの一種又は複数種であり、第三ターゲットは金属ターゲットであってもよいステップS40。
【0051】
本実施形態が提供する製造方法であって、第一シード層、第二シード層及び下部電極層が順に基板上にスパッタリングされ、形成された第一シード層はシリコン基板と下部電極の間で格子の不一致の問題が生じやすいことを改善し、それから成長させた第二シード層は、高温下での(第一シード層に用いられた)元素の拡散問題を解決するだけでなく、その結晶体の構造も(00l)結晶配向であり、さらに高品質(00l)結晶配向下部電極薄膜を成長させ、その格子定数がいずれも一致し又は類似し、形成された前記第一シード層と第二シード層の厚さは2nm~500nmであり、最も好ましくは、第一シード層の厚さが50nmであり、第二シード層の厚さが30nmである。具体的に、上記第一シード層、第二シード層及び下記の下部電極層のスパッタリング成長の時間、温度等はいずれも異なる。
【0052】
好ましい実施形態として、前記第一ターゲットを接続する前に、第四ターゲットを接続してもよく、基板上に予め緩衝層を成長させてもよく、前記緩衝層は金属薄膜又は金属窒化物薄膜であってもよい。前記緩衝層はタンタル薄膜、窒化タンタル、クロム薄膜、チタン薄膜又は窒化チタン薄膜を含み、且つ前記緩衝層の厚さは2nm~50nmであり、該緩衝層を設置することは上記第一シード層、第二シード層及び下部電極層を成長させる前に予め製造してもよく、基板表面の粗さ及び粘着性等の特性を改善し、後続の第一シード層等と基板の接続の安定性を高めるようにする。
【0053】
留意すべきなのは、上記ステップS10-S40において、形成された第一シード層、第二シード層及び下部電極層に基づいて基板温度、通入するガスの流量及び圧力を決定し、即ち形成された第一シード層、第二シード層及び下部電極層の異なる薄膜に基づいて、制御するスパッタリング条件は異なる。具体的に、例示として、以下の具体的な製造例により本実施形態を用いて提供される製造方法で製造された下部電極薄膜が高度選択配向の(00l)結晶配向を備えることを説明する。
【0054】
シリコン(Si)基板を提供し、洗浄等の前処理を行ってもよく、マグネトロンスパッタリングキャビティに真空引き処理を行い、Si基板をマグネトロンスパッタリング装置内のサンプル台上に取り付け、CuxPd1-x(0<x<1)合金ターゲットを接続し、それぞれ窒素、酸素を通入し、直流スパッタリング電源を入れ、30w~80w出力で成長させ、第一シード層のスパッタリングを終了し、第一シード層CuxPd1-xN(CuxPd1-xN、0<x<1、または好ましくはCu3-xPd1-xN,0≦x<1、例えば、Cu3PdN)薄膜を得て、その厚さは50nmであり、金属クロムターゲットを接続し、それぞれ窒素、酸素を通入し、窒素酸素の流量比は0.1-0.5であり、20w~80wの出力下で成長させ、第二シード層のスパッタリングを終了し、第二シード層窒化クロム(CrN)薄膜を得て、その厚さは30nmであり、金属クロムターゲットを接続し、純粋な酸素を通入し、温度を100℃‐300℃まで上げた後保温し、直流スパッタリング電源を入れ、10w~50wの出力下で成長させ、スパッタリング電源を切り、白金薄膜のスパッタリングを終了し、(00l)高度選択配向の薄膜を得て、その厚さは40nmであり、薄膜の成長を終了させ、成長させた薄膜を取り出す。
【0055】
本例示で製造される薄膜はシリコン基板上で第一シード層Cu
xPd
1-xN(Cu
xPd
1-xN、0<x<1、または好ましくはCu
3-xPd
1-xN,0≦x<1、例えば、Cu
3PdN)薄膜、第二シード層窒化クロム(CrN)薄膜、(00l)高度選択配向の下部電極白金薄膜に成長し、いずれも高度な(00l)結晶配向を備えると同時に、(00l)高度な選択配向の下部電極層白金薄膜も後続の薄膜が(00l)結晶配向に沿って成長するようにガイドできる。
図4に本実施例で成長させた薄膜のXRD測定図を示し、薄膜の(00l)ピークがあるだけでなく、(111)ピークがなく、製造された下部電極薄膜が高度な選択配向の(00l)結晶配向を備えることが充分に説明される。
【0056】
上記例示された製造過程により、本実施例で製造された薄膜はさらに、表面酸化シリコン(SiO
2)基板上に予め成長させたタンタル薄膜、第一シード層Cu
xPd
1-xN(Cu
xPd
1-xN、0<x<1、または好ましくはCu
3-xPd
1-xN,0≦x<1、例えば、Cu
3PdN)薄膜、第二シード層窒化クロム(CrN)薄膜、(00l)高度選択配向の下部電極白金薄膜を成長させ、タンタル薄膜以外はアモルファス(即ち上記緩衝層)であり、その残りの層薄膜はいずれも高度な(00l)結晶配向を備えると同時に、(00l)高度な選択配向の下部電極層白金薄膜も後続の薄膜が(00l)結晶配向に沿って成長するようにガイドできる。
図5に高温(450℃)下での膜成長を示す透過電子顕微鏡(TEM)図を示し、各層の薄膜の間に元素の拡散の発生が見られない。
【0057】
本発明の実施例は優れた実施性を有し、且つ本発明に対していかなる形態でも限定するわけではないことに留意すべきであり、当業者であれば上記の開示された技術的な内容を利用して同等の効果的な実施例に変更又は修正可能であるが、本発明の技術的解決手段の内容を逸脱しない範囲で、本発明の技術的実体に基づく上記の実施例に対する変更又は同等の変更及び修正は、いずれも本発明の技術的解決手段の範囲内に属する。