(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105382
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】簡易設置型落雷抑制装置およびその設置方法
(51)【国際特許分類】
H05F 3/04 20060101AFI20250703BHJP
H02G 13/00 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
H05F3/04 G
H02G13/00
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049102
(22)【出願日】2024-03-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2023222235
(32)【優先日】2023-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】511019144
【氏名又は名称】株式会社落雷抑制システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 敏男
【テーマコード(参考)】
5G067
【Fターム(参考)】
5G067AA11
5G067AA16
5G067DA02
5G067DA31
(57)【要約】
【課題】本発明は、上記の課題に鑑み、より低コストで、かつ占有空間を抑え、かつ人力で容易に落雷抑制装置の移動や設営をすることができ、さらに接地の状態を安定して保つことができる簡易設置型落雷抑制装置を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決する本願発明は、落雷抑制の主要部を構成する落雷抑制装置本体1と、落雷抑制装置本体1を所定の高さに支持する支持体2と、支持体2を立設可能かつ搬送可能な枠体3と、を備える移動式の簡易設置型落雷抑制装置Xであって、枠体3は、周縁部を形成して重量を与える枠部材と、搬送時に落雷抑制装置本体1及び支持体2を収容可能な収容部311と、落雷抑制装置本体1を接地する接地部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
落雷抑制の主要部を構成する落雷抑制装置本体と、前記落雷抑制装置本体を所定の高さに支持する支持体と、前記支持体を立設可能かつ搬送可能な枠体と、を備える移動式の簡易設置型落雷抑制装置であって、
前記枠体は、周縁部を形成して重量を与える枠部材と、搬送時に前記落雷抑制装置本体及び前記支持体を収容可能な収容部と、前記落雷抑制装置本体を接地する接地部と、を有する、簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項2】
前記枠体は、前記接地部と地面との接触面積を拡大可能な調整部材を更に有する、
請求項1に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項3】
前記調整部材は、前記高さ方向について伸縮可能な伸縮部を含む、
請求項2に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項4】
前記調整部材は、前記枠体の下面と、地面との間隙に挿入可能な調整具を含む、
請求項2に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項5】
前記枠体は、前記高さ方向に突出する突出部を有する、
請求項1に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項6】
前記枠体は、支持体取付部を有し、
前記支持体取付部には、回動可能な関節部が設けられている、
請求項1に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項7】
前記関節部は、水平方向の一の軸線について回動可能に設けられている、
請求項6に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項8】
回動軸を有する移動用機構を更に備え、
前記枠体は、前記移動用機構を一時的に固定可能な取付部を更に有する、
請求項1に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項9】
前記取付部には、前記移動用機構の一部と嵌合する凹部が設けられている、
請求項8に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項10】
前記取付部には、前記移動用機構を水平方向の軸線について回動可能な軸関節部が設けられている、
請求項8に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項11】
前記移動用機構は、前記枠体に複数取付けられており、そのうち少なくとも一の前記移動用機構は、鉛直方向の軸線について回動可能な舵部を有している、
請求項8に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項12】
落雷抑制の主要部を構成する落雷抑制装置本体と、前記落雷抑制装置本体を所定の高さに支持する支持体とを、前記支持体を立設可能かつ搬送可能な枠体に収容する収容工程と、
前記落雷抑制装置本体と、前記支持体と、が収容された前記枠体を設置場所へ搬送する搬送工程と、
前記枠体を接地する接地工程と、
前記落雷抑制装置本体が装着された前記支持体と前記枠体に立設固定して、前記落雷抑制装置本体を所定の高さに支持する支持工程と、を含む簡易設置型落雷抑制装置の設置方法。
【請求項13】
前記接地工程は、
前記高さ方向について、長さを調整可能な調整部材を用いて、前記枠体の下面と、地面との電気的な接触面積を拡大する接地面拡大工程を含む、
請求項12に記載の簡易設置型落雷抑制装置の設置方法。
【請求項14】
前記落雷抑制装置本体と、前記支持体と、が収容された前記枠体に、回動軸を有する移動用機構を固定する移動用機構取付工程を更に含む、
請求項12に記載の簡易設置型落雷抑制装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落雷を抑制することで、雷害から被保護体を保護するための簡易設置型落雷抑制装置であって、所望の場所に移動させることが可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
落雷に対するインフラ等の保護において、従来の雷保護概念では、落雷は防止できないものとの観点から、落雷を突針型避雷針(フランクリンロッド)に受けて大地に流す方式が大半であった。これに対し、本発明者等は、落雷の発生を極力抑制することによって被保護体を保護すべく、特許文献1に示される落雷抑制装置を提案した。
【0003】
この落雷抑制装置は、絶縁体を挟んで中心点を同じくする球殻形状の内側電極体と外側電極体を有し、内側電極のみを接地して構成したものである。
【0004】
そして、たとえばマイナス電荷が雲底に分布した雷雲が近づくと、それとは逆の電荷(プラス電荷)が大地の表面に分布し、接地されている内側電極体にもプラス電荷が集まる。すると、絶縁体を介して配置されている外側電極体は、コンデンサの作用でマイナス電荷を帯びることとなる。この作用により、避雷装置とその周辺における上向きストリーマの発生を起こりにくくして落雷の発生を抑制するようにしている。
【0005】
特許文献1に示される落雷抑制装置は、その設置作業において、既存の建築物を利用して設置する場合には、その建築物への支柱の固定作業が必要であり、新たに構築する支持構造物を利用する場合には、支持構造物の建築作業およびこの支持構造物への支柱の固定作業が必要であり、さらに、何れの場合においても、電極体を接地するための接地線の敷設作業がさらに必要となる。また、設置位置も建築物の位置や支持構造物の位置に拘束され、さらに、撤去作業が繁雑であることから、設置後は、ほぼ恒久的な構造物となってしまう。
【0006】
また、落雷から保護すべきインフラは建物に限らず、屋外に留め置かれる乗り物や、コンピューター等の電気製品も含まれる。このように、落雷抑制装置で保護する対象は本来、動産か不動産かを問わず電力を使用するものであるという事情から、建物以外にも容易に設置できる落雷抑制装置が望まれるようになった。
【0007】
このような課題を受けて、本発明者等は、特許文献2に示す落雷抑制装置を提案した。この落雷抑制装置は、自動車の後方に連結し、トレーラーとして移動が可能な基体を備え、移動先で支柱と落雷抑制装置本体を組立て、任意の場所で落雷対策を可能とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許6128539号公報
【特許文献2】特許7405348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載の落雷抑制装置により、駐機場で航空機の駐機場所に合わせて落雷抑制装置を設置する等、落雷対策における柔軟性を向上したが、この落雷抑制装置は大型であるため、移動には自動車の牽引が必要となるほか、非使用時であっても占有する空間が大きかった。
【0010】
上記に加え、落雷抑制装置の搬送においては、トラックの荷台に積層する方法や、人力で保持する方法も考えられる点、また、車輪とは別に設置のための構成を備える必要がある点を考慮すると、車輪を恒久的に備える基体の構成は、取扱いや設備費用、部品点数の観点から非効率であった。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑み、より低コストで、かつ占有空間を抑え、かつ人力で容易に落雷抑制装置の移動や設営をすることができ、さらに接地の状態を安定して保つことができる簡易設置型落雷抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本願発明は、落雷抑制の主要部を構成する落雷抑制装置本体と、該落雷抑制装置本体を所定の高さに支持する支持体と、該支持体を立設可能かつ搬送可能な枠体と、を備える移動式の簡易設置型落雷抑制装置であって、該枠体は、周縁部を形成して重量を与える枠部材と、搬送時に該落雷抑制装置本体及び該支持体を収容可能な収容部と、該落雷抑制装置本体を接地する接地部と、を有する。
このような構成によって、より低コストで、かつ占有空間を抑え、かつ人力で容易に落雷抑制装置の移動や設営をすることができ、さらに接地の状態を安定して保つことができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、該枠体は、該接地部と地面との接触面積を拡大可能な調整部材を更に有する。
このような構成によって、枠体を接地する地面の凹凸に容易に対応し、落雷抑制装置の接地の状態をより安定してすることができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、該調整部材は、該高さ方向について伸縮可能な伸縮部を含む。
このような構成によって、簡便な操作で落雷抑制装置本体を接地することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、該調整部材は、該枠体の下面と、地面との間隙に挿入可能な調整具を含む。
このような構成によって、少ない部品点数で、容易に枠体と地面の電気的な接続面積を確保することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、該枠体は、該高さ方向に突出する突出部を有する。
このような構成によって、非使用時の枠体を、複数積み重ねて保管できるほか、容易に搬出することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、該枠体は、支持体取付部を有し、該支持体取付部には、回動可能な関節部が設けられている。
このような構成によって、落雷抑制装置本体を装着した支持体を、容易に起こし立設させることができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、該関節部は、水平方向の一の軸線について回動可能に設けられている。
このような構成によって、落雷抑制装置本体を容易に起こし立設させることができるほか、撤去時にも倒す方向が定まり、容易に安全を確保できる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、回動軸を有する移動用機構を更に備え、該枠体は、該移動用機構を一時的に固定可能な取付部を更に有する。
このような構成によって、人力で容易に落雷抑制装置の移動や設営をすることができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、該取付部には、該移動用機構の一部と嵌合する凹部が設けられている。
このような構成によって、移動用機構を容易に着脱し、枠体の搬送と接地を容易に切り替えることができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、該取付部には、該移動用機構を水平方向の軸線について回動可能な軸関節部が設けられている。
このような構成によって、移動用機構を容易に回動させ、枠体の搬送と接地を容易に切り替えることができる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、該移動用機構は、該枠体に複数取付けられており、そのうち少なくとも一の該移動用機構は、鉛直方向の軸線について回動可能な舵部を有している。
このような構成によって、枠体の搬送時において、人力でも容易に進行方向を変えることができる。
【0023】
上記課題を解決する本願発明は、落雷抑制の主要部を構成する落雷抑制装置本体と、該落雷抑制装置本体を所定の高さに支持する支持体とを、該支持体を立設可能かつ搬送可能な枠体に収容する収容工程と、該落雷抑制装置本体と、該支持体と、が収容された該枠体を設置場所へ搬送する搬送工程と、該枠体を接地する接地工程と、該落雷抑制装置本体が装着された該支持体と該枠体に立設固定して、該落雷抑制装置本体を所定の高さに支持する支持工程と、を含む簡易設置型落雷抑制装置の設置方法である。
このような方法によって、より低コストで、かつ占有空間を抑え、かつ人力で容易に落雷抑制装置の移動や設営をすることができ、さらに接地の状態を安定して保つことができる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、該接地工程は、該高さ方向について、長さを調整可能な調整部材を用いて、該枠体の下面と、地面との電気的な接触面積を拡大する接地面拡大工程を含む。
このような方法によって、落雷抑制装置本体の接地状態を、より安定させることができる。
【0025】
本発明の好ましい形態では、該落雷抑制装置本体と、該支持体と、が収容された該枠体に、回動軸を有する移動用機構を固定する移動用機構取付工程を更に含む。
このような方法によって、簡易設置型落雷抑制装置を容易に設置場所へ搬送することができる。
【発明の効果】
【0026】
上記課題を解決する本発明は、より低コストで、かつ占有空間を抑え、かつ人力で容易に落雷抑制装置の移動や設営をすることができ、さらに接地の状態を安定して保つことができる簡易設置型落雷抑制装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置を移動可能にする枠体および移動用機構の斜視図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置を移動可能にする枠体および移動用機構の側面図及び断面図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置を支持する枠体の側面図及び領域Cの拡大図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置に取付けられる落雷抑制装置本体の断面模式図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置を構成する落雷抑制装置本体、支持体、及び枠体を分解した状態の概略図である。
【
図6】本発明の第一の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置の設置途中を示す模式図である。
【
図7】本発明の第一の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置の設置途中及び設置状態を示す模式図である。
【
図8】本発明の第二の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置を移動可能にする枠体および移動用機構の側面図、及び領域Dの拡大図である。
【
図9】本発明の第二の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置を移動可能にする枠体および移動用機構の側面図、及び領域Eの拡大図である。
【
図10】本発明の第三の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置を移動可能にする枠体および移動用機構の側面図である。
【
図11】本発明の第四の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置を移動可能にする枠体および移動用機構の斜視図である。
【
図12】本発明の第五の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置を移動可能にする枠体および移動用機構の側面図、正面図、部分拡大図である。
【
図13】本発明の第五の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置を移動可能にする枠体および移動用機構の設置に係る作業を示す概略図である。
【
図14】本発明の第六の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置を支持する枠体の斜視図及び側面図である。
【
図15】本発明の第六の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置の設置状態を示す模式図である。
【
図16】本発明の第六の実施形態に係る、簡易設置型落雷抑制装置を支持する枠体の接地状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を用いて、本発明の各実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xについて説明する。説明は、実施形態の構成、実施の方法、他の実施例の順に詳述する。
なお、以下に示す各実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。
【0029】
≪第一の実施形態≫
本実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xは、
図1(a)、
図1(b)若しくは
図7(b)に示すように、落雷抑制装置本体1と、落雷抑制装置本体1を所定の高さに支持する支持体2と、支持体2を立設可能かつ所定の場所に搬送可能な枠体3と、枠体3に取付可能な移動用機構4を備える。また、以下の説明における「高さ方向」は各図面内に示す座標軸の方向であり、「高さ方向」に垂直な平面内における任意の方向を水平方向とする。
【0030】
ここで、各図面に示す内容を詳述する。
図1(a)、
図1(b)は、本実施形態に係る枠体3に移動用機構4を取付けた状態の斜視図であり、背面、右側面、平面の方向から見た図である。
図2(a)は、本実施形態に係る枠体3に移動用機構4を取付けた状態の右側面図であり、
図2(b)は、
図2(a)における平面A―A’についての断面図と、該断面図のうち平面B-B’についての部分断面図と、を示し、
図2(c)は、
図2(a)における平面A―A’についての断面図から、移動用機構4(後述する第一移動用機構P)を取り外した状態の図を示す。
図3(a)は、本実施形態に係る枠体3から、移動用機構4が取り外された状態を示す右側面図であり、
図3(b)は、
図3(a)における領域Cの拡大図、
図3(c)は、本実施形態に係る枠体3を複数個積み上げた状態を示す模式図である。
図4は、本実施形態に係る落雷抑制装置本体1の構成を示す断面図である。
図5は、本実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xの設置において、落雷抑制装置本体1と、支持体2と、枠体3と、を準備した際の模式図である。
図6(a)、
図6(b)は、本実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xの設置又は解体途中の状態を示す模式図、
図7(a)、
図7(b)は、簡易設置型落雷抑制装置Xが設置された状態を示す模式図である。
【0031】
ここで、図面に表す簡易設置型落雷抑制装置Xの形態について、
図2以降で示されるものは、説明のため
図1(b)に準拠しているが、
図1(a)に準拠した形態に適宜変換することも可能である。これは他の実施形態の説明にも準用される。
【0032】
落雷抑制装置本体1は、簡易設置型落雷抑制装置Xの主要部を構成する装置であって、
図4に示すように、導電性材料によって略球体又は略球殻状に形成された第一電極体11と、第一電極体11を所定の隙間を空けて略同心の略球殻状に形成された第二電極体12(接地側電極構成体121と、先端側電極構成体122と、の2つに分かれていてもよく、また一体成型でもよい)と、第一電極体11を支持し、地面Gと接続可能にする導電性材料の接続柱13と、第一電極体11と第二電極体12との隙間を維持し、かつ第二電極体12を支持する絶縁性材料のスペーサ14を有する。
【0033】
落雷抑制装置本体1は、接続柱13によって支持体2、特に主支持柱21(後述)と接続される。第一電極体11から、接続柱13、支持体2、枠体3が全て導電性部材で構成され、電気的に接続された構成に組立てられることで、第一電極体11が接地され、落雷抑制装置本体1がコンデンサの作用を発生し、落雷の発生を抑制する。
【0034】
支持体2は、高さ方向について落雷抑制装置本体1を所定の高さに支持する主支持柱21と、主支持柱21が倒れないように補助する補助支持柱22と、落雷抑制装置本体1を設置する際の作業用に用いられる吊下用支柱23と、を有する。
【0035】
主支持柱21は、導電性材料で構成され、かつ、
図5、
図6(a)、
図6(b)、
図7(a)、
図7(b)に示すように、複数本の柱状部材であり、これらを長さ方向に直列に接続することで、落雷抑制装置本体1の設置に必要な所定の高さを得て、更に枠体3に立設される。図面では、主支持柱21は3本で構成される形態を示すが、所定の高さを得ることができれば本数は異なってもよい。また、図面では省略しているが、主支持柱21同士の接続は、例えば端部に設けられたフランジや段付き部をボルト締結で固定する構成による。
【0036】
複数の主支持柱21のうち、少なくとも一の主支持柱21は、接続フランジ211を設ける構成が好ましい。接続フランジ211は、主支持柱21の断面を拡大する平板状の部材であり、後述する補助支持柱22や、作業用のワイヤWを取付可能な取付部を設ける。このような構成によって、主支持柱21周りの部品を容易に取付けることができる。
【0037】
補助支持柱22は、主支持柱21を立設状態に保持する柱状の部材であり、
図7(b)に示すように、主支持柱21の中程、特に接続フランジ211から、枠体3に向かって複数の斜め方向に接続され、錐体を形成して主支持柱21を支持する。
【0038】
吊下用支柱23は、
図6(a)、
図6(b)、
図7(a)に示すように、枠体3から所定の仰角をつけて斜め方向に立設される柱状の部材であり、高さ方向について上方に向かうにつれ主支持柱21の立設位置から遠ざかるように設けられる。また、吊下用支柱23は、先端に滑車231を設ける。このような構成によって、接続フランジ211に取付けられたワイヤWを滑車231に掛け、そのワイヤWを引っ張ることで主支持柱21を容易に引き起こすことができる。
【0039】
枠体3は、落雷抑制装置本体1及び支持体2を、所望の場所(設置場所)に搬送可能にする搬送手段の台枠部分であり、立枠31と、底板32と、主支持柱取付部33と、吊下用支柱取付部34と、巻上機35と、突出部36と、移動用機構取付部37と、を有する。これにより、落雷抑制装置を移動式にする。
【0040】
立枠31は、
図1(a)又は
図1(b)に示すように、枠体3の周縁部を形成して重量を与える枠部材である。このような構成によって、枠体3の強度を向上し、設置場所への搬送を容易に、且つ安全にする。また、周縁部の重量を増やすことで、枠体3を地面Gに載置した際に、地面Gの僅かな凹凸に対する追従性が高くなり、より安定して地面Gと接触することができ、接地部としてより安定した接地状態を保つことができる。
【0041】
本実施形態の立枠31は、枠体3に高さを出し、全体の大きさ及び形状を決定する部材である。また、立枠31は、
図1(a)に示すように、H鋼材(その他の金属材料、例えば金属梁や金属板、L字鋼材、角筒状鋼材等の組み合わせでもよい)を組み合わせて、水平方向に略長方形を形成する。H鋼を用いることにより、金属板の組み合わせに比べて枠体3の重量が増加するため、枠体3がより安定して接地することができる。
【0042】
底板32は、立枠31の最下面の一部または全部を塞ぐ平板状の部材であり、落雷抑制装置本体1を接地可能な接地部として扱われるほか、立枠31と底板32とで、受け箱状の収容部311を形成する。これにより、落雷抑制装置本体1や支持体2を、枠体3に収容する。このような構成によって、簡易設置型落雷抑制装置Xの全ての部品を所望の場所まで容易に搬送することができる。
【0043】
立枠31は、枠体3の外形を決定する外枠のみではなく、内部を仕切るように更に数か所設けられる構成が好ましい。このような構成によって、特に主支持柱取付部33や巻上機35など、枠体3の中でも特に荷重が集中する部分を補強することができる。
【0044】
図3(b)に示すように、主支持柱取付部33は、枠体3の水平方向における略中央部に設けられる支持体取付部であって、主支持柱21を挿入して支持する挿入部331と、挿入部331の底を塞ぐ可動底板332と、挿入部331及び可動底板332を回動可能にする立設用軸関節部333と、を設ける。このような構成によって、立枠31及び底板32による枠体3の水平方向広さを、落雷抑制装置本体1及び支持体2の支持において有効に使用することができる。
【0045】
挿入部331は、主支持柱21を挿入して高さ方向について起立させ支持することが可能な筒状の部材であり、可動底板332との接続部を補強するリブが設けられる。また、可動底板332は、挿入部331の底部を塞ぎ、さらに拡大する平板状の部材であり、立設用軸関節部333を介して立枠31若しくは底板32に対し回動可能に接続される。ここで、可動底板332は、枠体3の上面、又は立枠31の上面に面で当接可能である。このような構成によって、落雷抑制装置本体1を接続した支持体2、特に主支持柱21を起こして立設させるとき、可動底板332によって立設用軸関節部333の回動が止まり、支持体2の引き起こしの動作が行き過ぎて反対側に倒れることを防ぐため、簡易設置型落雷抑制装置Xの設置作業を安全に行うことができる。また、簡易設置型落雷抑制装置Xを撤収する際にも、主支持柱21が一方向にのみ倒れるため、作業時の安全を確保しやすくなる。
【0046】
立設用軸関節部333は、水平方向の位置の軸線について回動可能な軸関節(蝶番関節)であり、挿入部331及び可動底板332を水平方向から高さ方向まで回動可能にする。好ましくは、
図6(a)、
図6(b)、
図7(a)に示すように、挿入部331が枠体3の長手方向の辺を向いて倒れる構成、換言すれば、回動する軸線が枠体3の短手方向の辺と平行に向く構成である。このような構成によって、落雷抑制装置本体1及び主支持柱21を起立させる、或いは倒すときに発生する荷重の変動を、枠体3の長手方向全体で受け止めることができ、より安全に作業することができる。
【0047】
立枠31、底板32、及び主支持柱取付部33は、導電性材料で構成される。このような構成によって、落雷抑制装置本体1を装着した支持体2を接続すると、第一電極体11から底板32までが電気的に接続される。更にこのとき、底板32が接地可能な(コンクリートや土などの)地面Gに接触することで、第一電極体11を容易に接地することができる。また、枠体3の水平方向の大きさ全体と、落雷抑制装置本体1と、支持体2と、枠体3とのすべての重量を以て、導電性の部分を地面Gに圧接することができ、簡易設置型落雷抑制装置Xの接地状態を容易に安定させることができるため、地面Gに穴を掘って接地線を埋めることができない条件下(駐機場、コンクリート舗装等)でも、確実に落雷抑制装置本体1を接地することができる。
【0048】
吊下用支柱取付部34は、主支持柱取付部33に隣接して設けられ、吊下用支柱23を挿入して支持する筒状の部材と、立枠31又は底板32との接続部を補強する平板状のリブで構成される。特に筒の方向は、
図3(b)、
図6(a)に示すように、吊下用支柱23を斜め方向、かつその先端を主支持柱21から最も遠ざける方向に支持するように設けられる。このような構成によって、
図6(a)、
図6(b)、
図7(a)に示すように、ワイヤWを用いて容易に主支持柱21を起立させることができる。
【0049】
巻上機35は、ワイヤWの巻取り或いは引出しを行う装置であり、
図1(a)、
図1(b)に示すように、立枠31又は底板32において、吊下用支柱取付部34について主支持柱取付部33と反対側に設けられる。このような構成によって、
図6(a)、
図6(b)、
図7(a)に示すように、ワイヤWを巻取り、容易に主支持柱21を起立させることができるほか、主支持柱21を倒す際にも、より安全に作業することができる。
【0050】
突出部36は、
図1(a)、
図1(b)、
図2(a)、
図2(b)に示すように、枠体3において、高さ方向(上向き)に突出する柱状の部材であり、その突出高さは、立設用軸関節部333、吊下用支柱取付部34、巻上機35など、枠体3の上部に設けられる他のいずれの部品よりも高い。このような構成によって、
図3(c)に示すように、非使用時の枠体3を鉛直方向に積み重ねた際に、下段の枠体3の突出部36が、上段の枠体3の底板32を受け止めるため、安定性を保ちつつ、フォークリフトで容易に積み降ろし可能な隙間を確保することができる。
【0051】
移動用機構取付部37は、枠体3を容易に移動させる移動用機構4を一時的に固定可能、或いは保持可能な取付部であり、その位置や移動用機構4の構成に合わせた構成を有する。本実施形態においては、巻上機35が設けられている方に、移動用機構4の一部と嵌合する凹部371を設け、その対辺側に挿通部372を設ける。
【0052】
図2(b)、
図2(c)に示すように、凹部371は、移動用機構4の一部、特に軸受43(後述)などの固定部を含む部品と嵌合する部分であり、移動用機構4の上に枠体3を載置して容易に嵌合できるように、例えば軸受43に対応する部分は上側が半円柱型、下側が直方体の空間を有する。このほか、凹部371は、移動用機構4のうち回動する部品を避けるように、枠体3が切り欠かれている部分も含む。
【0053】
挿通部372は、枠体3を鉛直方向(図面においては高さ方向と同一)に貫通する孔であり、移動用機構4のうち、鉛直方向に伸びる柱状の部材を挿通する。挿通部372は、
図1(a)、
図1(b)に示すように、立枠31の高さ方向の全体に亘って設けられる構成が好ましい。このような構成によって、挿通する部材を安定して保持することができる。
【0054】
移動用機構4は、枠体3を容易に移動させる機構であり、回動軸41と、回動軸41に固定された転動体42と、を設けており、更に、要求される機能により軸受43、押え板44、軸箱45、舵部46の何れか一以上を設ける。但し、本明細書で用いる軸受43はハウジングの有無を問わないもの(軸受43が剥き出しのものを含む)、軸箱45はハウジングやその他の構成を含めた軸受部のアセンブリを指す。
【0055】
本実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xは、
図2(a)、
図2(b)、
図2(c)に示すように、2種類の移動用機構4を備え、それぞれ第一移動用機構P、第二移動用機構Qとする。第一移動用機構Pは、回動軸41と、一対の転動体42と、一対の軸受43と、一対の押え板44と、を有する。一方の第二移動用機構Qは、回動軸41と、一対の転動体42と、軸箱45と、舵部46と、を有する。
【0056】
回動軸41は、第一移動用機構P及び第二移動用機構Qに共通して設けられ、回動する各部品を接続する円柱状の部材であり、転動体42、軸受43、押え板44、軸箱45が接続される。
【0057】
転動体42は、第一移動用機構P及び第二移動用機構Qに共通して設けられ、回動軸41と同心軸に接続され、地面Gに接触して回動することで枠体3を容易に移動させる円盤状または円柱状の部材であり、例としてタイヤ、トレーラー、ホイール等が挙げられる。
【0058】
第一移動用機構Pは、水平方向における枠体3の短辺よりも長い回動軸41を有し、一対の転動体42は、その間の距離が枠体3の短辺よりも長い。更に、転動体42の直径は、立枠31の高さ方向の長さの2倍程度である構成が好ましい。このような構成によって、
図2(b)に示すように、地面Gから枠体3の下面までの高さを確保しつつ、第一移動用機構Pが枠体3を安定して支持することができる。
【0059】
軸受43は、固定側の円環部材と回動側の円環部材とを、回動体を介して組み合わせた一般的なベアリングであり、回動軸41と同心軸かつ、転動体42の内側に所定の隙間を空けて2つ設けられる。本実施形態においては、少ない部品点数で落雷抑制装置本体1、支持体2、枠体3の荷重を全て支持するため、
図2(b)、
図2(c)においてはラジアルころ軸受の形態を示している。但し、玉軸受やスラスト軸受など、簡易設置型落雷抑制装置Xを移動させる環境に合わせて、適宜変更してよい。
【0060】
押え板44は、軸受43に隣接して、回動軸41と同心軸に2つ固定して設けられる平板状の部材であり、軸受43が回動軸41の軸方向にずれ動くことを防ぐ。
【0061】
第一移動用機構Pは、移動用機構取付部37に取付けられる際、凹部371に軸受43と、押え板44とが嵌合する。このとき、凹部371側に、軸受43が外れないように保持するストッパー等が設けられていてもよい。このような構成によって、枠体3と第一移動用機構Pとを容易に着脱することができる。
【0062】
第二移動用機構Qは、
図2(b)に示すように、水平方向における枠体3の短辺よりも短い回動軸41を有し、一対の転動体42の直径は、第一移動用機構Pを枠体3に取付けた際の、地面Gから枠体3の下面までの高さよりも小さい。このような構成によって、第二移動用機構Qを、枠体3の下に収めて取付けることができる。
【0063】
軸箱45は、第二移動用機構Qの中央、特に一対の転動体42の中間に設けられる箱型或いは円柱型のアセンブリであり、回動軸41と同心軸のベアリングと、このベアリングを覆うハウジングと、舵部46を取付ける穴部を含む。
【0064】
舵部46は、軸箱45に接続され、第二移動用機構Qを鉛直方向(高さ方向と同一)の軸線について回動可能にする部材であり、伝達部461と、操縦桿462と、を含む。このような構成によって、枠体3の移動に際し、人力で容易に進行方向を変えることができる。
【0065】
伝達部461は、挿通部372を貫通し、下端部が軸箱45の穴部に貫入する柱状の部材であり、上端部で操縦桿462に固定される。また、伝達部461の下端部と軸箱45の穴部とは円形以外、換言すれば係止する部分があれば楕円形、扇形、多角形、楔形などどのような断面形状でもよい。さらに、伝達部461は、挿通部372に対してはやや小さい半径の断面であり、これにより枠体3に対し容易に回動することができる。
【0066】
操縦桿462は、伝達部461の上端部に固定され、水平方向に、かつ枠体3から遠ざかる方向に伸びる棒状の部材である。操縦桿462は、使用者が手で把持して伝達部461周りに回動させることで、小さい力で第二移動用機構Qを容易に回動させ、枠体3の進行方向を変更する。
【0067】
第二移動用機構Qは、枠体3から取り外されているときは、
図3(a)に示すように、舵部46が軸箱45から外れており、枠体3に取付けられているときは、
図2(a)、
図2(b)に示すように、挿通部372を貫通して軸箱45に接続されて設けられる。このような構成によって、第二移動用機構Qは、枠体3に容易に着脱することができる。
【0068】
本実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xは、以下の構成を有してもよい。但し、以下に示す構成はあくまで一例であり、特に従属の指定がない限り、その有無は任意に決定できる。
【0069】
≪変更例≫
枠体3は、使用者が手で把持することができるグリップを設ける。このグリップは、人の手の形状に追従する程度の柔軟性を有する絶縁性材料(例えば、ゴム、ウレタン等)で構成され、特に立枠31の上縁や、突出部36の上端部付近に巻き付くように設けられる構成が好ましい。このような構成によって、使用者が枠体3に力を加えて移動させる際に、余計な力を必要とせず、容易に簡易設置型落雷抑制装置Xを所望の場所に移動させることができる。
【0070】
底板32は、立枠31と合わせて形成する収容部311において、一か所あたり一以上の孔を設ける。このような構成によって、雨などで収容部311に水が入っても容易に排出することができる。
【0071】
枠体3は、収納及び引出しが可能な導電ケーブルを有してもよい。この導電ケーブルは、枠体3の導電性材料の部分と電気的に接続された導電体かつ線状の部材であり、設置場所の地面Gに載置された枠体3から引き出され、立枠31及び底板32による接地の状態を補助する。特に、枠体3の設置場所がコンクリート舗装された場所(駐機場など)である場合、地中に金属部材(鉄筋など)が埋め込まれているため、その金属部材に導電ケーブルを接続することにより、より安定して落雷抑制装置本体1を接地することができる。
【0072】
移動用機構4において、第一移動用機構P及び第二移動用機構Qに設けられている転動体42は、全て同一の直径であってもよい。このような構成によって、移動用機構4を構成する部品の種類を少なく抑えることができる。この場合でも、
図2(a)と同様に、第一移動用機構Pは、軸受43が凹部371と嵌合して取付けられ、第二移動用機構Qは、底板32と地面Gの間に収まるように取付けられるため、枠体3の移動時においては、枠体3の全体が、地面Gに対して第二移動用機構Q側の方が上になるように傾く。
【0073】
以下、図面を用いて、本実施形態の実施の方法について詳述する。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0074】
≪実施の方法≫
使用者は、簡易設置型落雷抑制装置Xが非使用時の状態においては、
図3(a)に示すように、枠体3から移動用機構4を外した状態とし、且つ
図5に示すように、落雷抑制装置本体1と、分割された支持体2と、を収容部311に収容した状態で保管する(収容工程)。特に、簡易設置型落雷抑制装置Xが複数ある場合には、
図3(c)に示すように、各部品が収容された枠体3を高さ方向に積み重ねて保管する。これにより、簡易設置型落雷抑制装置Xが複数必要な現場であっても、非使用時に保管のための空間が最小限で済み、空間を有効活用することができる。
【0075】
使用者は、簡易設置型落雷抑制装置Xを使用するとき、
図3(c)に示す状態から、フォークリフト、ハンドリフト、或いは複数人の手作業等で上から枠体3を取り出し、移動用機構4と共に地面Gに置く。その後、
図3(a)に示す状態と逆の手順で、枠体3に移動用機構4を取付ける。
【0076】
使用者は、枠体3に移動用機構4を取付けるとき、まずジャッキを用いて枠体3の巻上機35側を持ち上げ、そこに第一移動用機構Pの転動体42の間の部分を潜り込ませて、軸受43及び押え板44に凹部371を載置して嵌合させる。そのジャッキを外した後、使用者は、再度ジャッキを用いて、枠体3の第一移動用機構Pと反対側を持ち上げ、第二移動用機構Qを取付ける(移動用機構取付工程)。ここではまず、伝達部461に挿通部372を貫通させ、枠体3の下側に出た伝達部461の下端部を、軸箱45に貫入して接続する。その後使用者はジャッキを外して、枠体3を所望の場所に移動させる(搬送工程)。
【0077】
使用者は、枠体3の移動時において、人力で立枠31や突出部36に力を加え、舵部46を操作して適宜進行方向を変える。枠体3を所望の場所に移動させた後、使用者は、上記と逆の手順で、移動用機構4を枠体3から取り外し(離脱工程)、枠体3を地面Gに置いて圧接させる(接地工程)。
【0078】
続いて使用者は、収容部311に収容されている支持体2と、落雷抑制装置本体1と、を取り出す。その後、使用者は、
図6(a)に示すように、主支持柱21を直列(同軸)に接続し、その片端を横倒しにした挿入部331に挿入して固定、他端に落雷抑制装置本体1を装着し、併せて吊下用支柱23と滑車231を組立て、吊下用支柱取付部34に挿入して固定する。更に、使用者は、巻上機35からワイヤWを伸ばして滑車231に掛け、ワイヤWの先端を主支持柱21、特に接続フランジ211に接続する。
【0079】
その後、使用者は、巻上機35を作動させて、
図6(b)に示すように、主支持柱21を引き起こす。そして、
図7(a)に示すように、主支持柱21が高さ方向に直立したら、使用者は巻上機35を止め、補助支持柱22を主支持柱21(接続フランジ211)と枠体3に接続し、ワイヤWと吊下用支柱23を取外して
図7(b)に示す状態とする(支持工程)。
【0080】
使用者は、簡易設置型落雷抑制装置Xを撤去する際は、上記と逆の手順で落雷抑制装置本体1及び支持体2を解体、収容し、枠体3を保管場所まで移動させる。
【0081】
以下、図面を用いて、本発明の第二の実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xについて説明する。なお、第一の実施形態と同様の構成については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0082】
≪第二の実施形態≫
本実施形態において、底板32は、
図8(a)、
図8(c)、
図9(a)、
図9(c)に示すように、底下部321を設ける。底下部321は、底板32からさらに下方向に厚みをもたせる板状の部材であり、導電性材料で構成される。このような構成によって、後述する移動用機構取付部37の構成によらず、確実に枠体3を地面Gに接触させることができる。
【0083】
第一移動用機構Pは、回動軸41と、回動軸41に固定される転動体42及び軸箱45と、を有し、第二移動用機構Qは、第一移動用機構Pと同様、回動軸41と、回動軸41に固定される転動体42及び軸箱45と、を有し、更に舵部46を有する。本実施形態においては、第一移動用機構Pと第二移動用機構Qは、回動軸41の長さと転動体42の直径がそれぞれ共通であり、転動体42は軸箱45を挟んで2つ設けられる構成が好ましい。さらに、第一移動用機構Pは、枠体3の巻上機35に近い角付近に2か所、第二移動用機構Qは、枠体3の挿通部372に近い角付近に2か所設けられる。
【0084】
移動用機構取付部37は、移動機構用軸関節部373を設けている。
図8(b)、
図9(b)に示すように、移動機構用軸関節部373は、底板32の辺沿いに設けられ、第一移動用機構P又は第二移動用機構Qの舵部46を除く部分を水平方向の軸線について回動可能にする。但し、枠体3の移動中に移動機構用軸関節部373が意図せず回動しないように、ネジ止めや係止具等のストッパーを設けている構成が好ましい。
【0085】
ここで、
図8(a)、
図8(b)、
図8(c)に示す形態では、移動機構用軸関節部373は、第一移動用機構P及び第二移動用機構Qの移動時の取付位置よりも外側に設けられる構成、換言すれば第一移動用機構P及び第二移動用機構Qが移動時の位置から枠体3の外側に向かって回動し、底下部321が地面Gに接触する構成である。
【0086】
一方、
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)に示す形態では、移動機構用軸関節部373は、第一移動用機構P及び第二移動用機構Qの移動時の取付位置よりも内側に設けられる構成、換言すれば第一移動用機構P及び第二移動用機構Qが移動時の位置から枠体3の内側に向かって回動して枠体3の内部に格納され、底下部321が地面Gに接触する構成である。
【0087】
上記2種の構成は何れを採用しても構わない。このような構成によって、移動用機構4を枠体3から完全に取り外す必要がなく、より簡便な操作で枠体3を地面Gに降ろして接地させることができる。
【0088】
以下、図面を用いて、本実施形態の実施の方法について詳述する。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。なお、第一の実施形態と同様の方法については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0089】
≪実施の方法≫
本実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xは、非使用時及び設置時においては、
図8(c)又は
図9(c)に示すように、移動用機構4は転動体42が上方を向き、底下部321が地面Gに接触している状態である。ここから枠体3を所望の場所に移動させるとき、使用者は、移動機構用軸関節部373について第一移動用機構P及び第二移動用機構Qを回動させ、
図8(a)又は
図9(a)に示すように、転動体42のみが地面Gに接触する状態に切り替える。枠体3の移動が完了し、非使用又は落雷抑制装置本体1を設置する状態に移行するときは、使用者は、移動機構用軸関節部373について第一移動用機構P及び第二移動用機構Qを前述と逆周りに回動させ、
図8(c)又は
図9(c)に示すように、移動用機構4は転動体42が情報を向き、底下部321が地面Gに接触している状態に切り替える(回動工程)。
【0090】
以下、図面を用いて、本発明の第三の実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xについて説明する。なお、第一、第二の実施形態と同様の構成については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0091】
≪第三の実施形態≫
図10(a)、
図10(b)に示すように、本実施形態において、突出部36は筒状に構成され、更に伸縮可能な伸縮部361を内蔵する。伸縮部361は、枠体3から地面Gの方向について伸縮可能な柱状の部材であり、非使用時は突出部36の筒の内部に格納されて設けられる。また、伸縮部361の伸縮可能な長さは、移動用機構4を取付けたときの枠体3の底板32から地面Gまでの距離よりも長い。このような構成によって、簡易設置型落雷抑制装置Xの使用時に、突出部36を伸長させて地面Gに当接させ、落雷抑制装置本体1の第一電極体11を容易に接地することができる。さらに、移動用機構4を着脱する必要がなくなり、より効率的に簡易設置型落雷抑制装置Xを設置することができる。
【0092】
以下、図面を用いて、本実施形態の実施の方法について詳述する。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。なお、第一、第二の実施形態と同様の方法については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0093】
≪実施の方法≫
本実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xを所望の場所に設置するとき、使用者は、
図10(a)に示す枠体3の状態から、
図10(b)に示すように、伸縮部361を下方に向かって伸長させ、その先端を地面Gに当接させる(伸長工程)。このとき、移動用機構4と伸縮部361の両方が地面Gに接触している状態であればよい。但し、
図10(b)に示すように、移動用機構4が地面Gから浮き上がり、伸縮部361のみが地面Gに接触している状態としてもよい。この場合、使用者はジャッキを用いて枠体3を持ち上げる。これにより、簡易設置型落雷抑制装置Xの全ての重量が伸縮部361に集中するため、伸縮部361がより安定して地面Gに圧接される。
【0094】
以下、図面を用いて、本発明の第四の実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xについて説明する。なお、第一、第二、第三の実施形態と同様の構成については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0095】
≪第四の実施形態≫
図11(a)、
図11(b)に示すように、本実施形態において、枠体3は、展開接地部38を有する。展開接地部38は、可動梁収納部381と、可動梁382と、調整具383と、を含む導電体材料の部材であり、地面Gに対する枠体3の接触面積を拡大する。
【0096】
可動梁収納部381は、立枠31の外周に沿って設けられる一対の平板状の部材であり、高さ方向について可動梁382を挟み込む。
図11(a)、
図11(b)においては、可動梁収納部381が立枠31の側面から張り出すフィンのような構成であるが、立枠31がH鋼で構成される場合、ウェブとフランジにより生じるコの字型断面の内部空間を可動梁収納部381として扱うことができる。また、可動梁収納部381は、可動梁382を取付可能な関節部を有する。
【0097】
可動梁382は、可動梁収納部381に回動可能に取付けられ、立枠31の外周から更に外側かつ水平方向に展開可能な柱状の部材である。
図11(a)、
図11(b)においては、可動梁382は、可動梁収納部381に設けられた関節部(回動軸)を中心に水平面上で回動し、枠体3の短手方向を拡大する構成である。このような構成によって、移動時や非使用時には枠体3による占有面積を抑えることができ、落雷抑制装置本体1及び支持体2を立設した状態においては簡易設置型落雷抑制装置X全体の安定性を向上することができる。
【0098】
調整具383は、展開された可動梁382の先端部分の下に配置される箱状或いは板状の部材であり、可動梁382と地面Gを電気的に接続する。
図11(a)、
図11(b)においては、調整具383の高さは、移動用機構4を取付けた状態における可動梁382の下面から地面Gまでの距離と略等しい構成であるが、移動用機構4を取り外した状態での可動梁382の下面から地面Gまでの距離に合わせた高さであってもよい。換言すれば、移動用機構4の有無に関わらず、枠体3は、底板32と調整具383の両方で同時に接地される構成が好ましい。このような構成によって、枠体3を容易に且つ安定的に接地させることができる。
【0099】
本実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xは、以下の構成を有してもよい。但し、以下に示す構成はあくまで一例であり、特に従属の指定がない限り、その有無は任意に決定できる。
【0100】
≪変更例≫
以上に示す展開接地部38の変更例として、可動梁382が可動梁収納部381に対し摺動可能に取付けられる構成が挙げられる。この場合は、可動梁収納部381は、第一移動用機構Pの回動軸41の軸方向と平行に設けられる筒状の部材であり、内部に可動梁382を収納する構成である。換言すれば、第三の実施形態で示した突出部36及び伸縮部361の構成が水平方向に設けられている構成である。これにより、移動時や非使用時では可動梁382は収納されており、落雷抑制装置本体1及び支持体2を立設した状態においては、前述の通り可動梁382の先端が調整具383に載置され、枠体3が設置される。
【0101】
以下、図面を用いて、本実施形態の実施の方法について詳述する。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。なお、第一、第二、第三の実施形態と同様の方法については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0102】
≪実施の方法≫
本実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xを所望の場所に設置するとき、使用者は、
図11(b)に示すように、可動梁382を水平方向に展開し、更に可動梁382の下に調整具383を挿入して、可動梁382を地面Gと電気的に接続する。
図11(b)では、移動用機構4を取り外さずに展開接地部38を取り扱う状態を示しているが、使用者は、移動用機構4を枠体3から取り外し(離脱工程)、より薄い調整具383で可動梁382を接地してもよい。これにより、枠体3の水平方向の設置面積を広げ、落雷抑制装置本体1及び支持体2をより安定して支持することができるほか、枠体3が底板32と調整具383の底面を合わせた面積で地面Gと接触するため、第一電極体11をより安定して接地させることができる。
【0103】
以下、図面を用いて、本発明の第五の実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xについて説明する。なお、第一、第二、第三、第四の実施形態と同様の構成については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0104】
≪第五の実施形態≫
図12(a)、
図12(b)はそれぞれ、本実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xを搬送可能な枠体3と、枠体3に取付けられた移動用機構4、及び動力装置5と、を示す右側面図と正面図であり、
図12(c)は、
図12(b)における移動用機構4と、それに関連する各部の構成を示す拡大図である。
【0105】
図12(a)、
図12(b)に示すように、枠体3、特に移動用機構取付部37は、第二移動用機構Qと接続する中間リンク374を設けているほか、第二移動用機構Qは、回動軸41、転動体42、軸箱45、舵部46に加えて、ブレーキ47を含み、更に動力装置5を設けている。
【0106】
図12(a)に示すように、第二移動用機構Qが動力装置5を設ける空間を確保するため、底板32から地面Gまでの高さは、他の実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xよりも高くなる場合がある。この場合、本実施形態に係る枠体3は、底下部321を設け、第二移動用機構Qが入る空間を切り欠きのようにして確保する。
【0107】
中間リンク374は、第二移動用機構Qを立枠31に接続する部材であり、軸関節で回動可能に接続された平板状の部材や柱状の部材を含む。このような構成によって、立枠31に高さ方向の厚みがある場合でも、第二移動用機構Qを立枠31の上側まで跳ね上げることができ、枠体3を容易に接地することができる。また、本実施形態における立枠31には、中間リンク374が収まる切り欠きが設けられている構成が好ましい。このような構成によって、中間リンク374の大きさ(幅、厚み等)の分だけ第二移動用機構Qの空間を確保することができる。
【0108】
枠体3は、第二移動用機構Q付近の辺沿いに、移動機構用滑車39を有する。移動機構用滑車39は、ワイヤWを掛けて使用される一般的な滑車であり、本実施形態においては、第二移動用機構Qを立枠31の上側に引き上げる際に、巻上機35から伸びるワイヤWを引掛けて使用される。このとき、
図12(b)、
図12(c)に示すように、移動機構用滑車39は、枠体3の中心からずれた位置に設けられる。これにより、巻上機35からのワイヤWが主支持柱取付部33、吊下用支柱取付部34、舵部46に干渉しない。
【0109】
ブレーキ47は、第二移動用機構Qに設けられる制動装置であり、ハンドル操作によって回動軸41の回動を止める。このような構成によって、移動中の枠体3を容易に制動し、原則又は停止させることができる。
【0110】
動力装置5は、電動モータ51と、電動モータ51を支持するモータ支持体52と、電動モータ51に電力を供給可能なバッテリ53と、電動モータ51及びバッテリ53を接続して回路とする電気ケーブル54と、を有する。
【0111】
電動モータ51は、電気的な入力を回動運動の出力に変換する一般的な電動機であり、出力軸は回動軸41に接続される。これにより、電動モータ51によって回動軸41が回動する。電動モータ51の出力軸から回動軸41(転動体42でも可)までの間には減速機が設けられており、電動モータ51によって生み出された回動運動は、適切に減速されて転動体42に伝わる。このような構成によって、枠体3を自走により移動させることができる。また、減速機は遊星歯車機構などが挙げられる。
【0112】
電動モータ51は、転動体42と一体に設けられてもよい。この構成においては、ホイールモータを採用することで、第二移動用機構Q全体の大きさを抑えることができ、加えて、簡易設置型落雷抑制装置X全体の重量の偏りも抑えることができる。
【0113】
モータ支持体52は、高さ方向について転動体42と底板32との間に設けられる梁と、その梁から電動モータ51を吊下げる柱又は板を含む部材である。モータ支持体52は、電動モータ51を介して回動軸41と接続し、該梁においては軸箱45と舵部46とを繋ぐ柱に接続され、舵部46の操作により回動軸41等と一緒に水平方向について回動する。
【0114】
バッテリ53は、電動モータ51が稼働するための電圧を発生させる電池(一次電池でも二次電池でもよい)である。本発明は屋外での使用が想定されるため、
図12(a)~
図12(c)に示すように、筐体に収容され、電気ケーブル54によって電動モータ51と回路が形成される構成が好ましい。また、バッテリ53を収容する筐体は、表面にスイッチ又は電磁波等の受信ポートを設けている構成が好ましい。このような構成によって、使用者は、スイッチ操作やリモコン操作によって容易にバッテリ53による電力供給を操作することができる。
【0115】
電気ケーブル54は、電動モータ51とバッテリ53を接続して回路を形成する線状部材であり、表面は絶縁材料で被覆されている一般的な配線である。本実施形態においては、
図12(a)~
図12(c)に示すように、緊張状態ではなく、やや緩んだ状態で設けられる構成が好ましい。このような構成によって、舵部46の操作による電動モータ51の回動に対応できるほか、枠体3への圧接による断線のリスクを回避できる。
【0116】
動力装置5は、各部の表面が絶縁性材料で被覆されている構成が好ましい。このような構成によって、動力装置5の全体を、落雷抑制装置本体1の接地に係る各導体部品から電気的に独立させ、故障を防ぐ。
【0117】
図13(a)~
図13(c)は、枠体3を接地する際の状態を示す右側面図であり、
図13(d)は、
図13(c)の領域Fにおける、第二移動用機構Q及び移動機構用滑車39の状態を示す拡大図である。各図に示すように、第二移動用機構Qは、中間リンク374の可動範囲に従って回動し、立枠31の上側に跳ね上げられ、枠体3が地面Gに接触可能な状態となる。このとき、ワイヤWは、第二移動用機構Qのうち中間リンク374以下で回動可能な部品(例えば、軸箱45、電動モータ51、モータ支持体52)の何れかに接続され、移動機構用滑車39に掛かって巻上機35に巻上られることで、第二移動用機構Qの全体が、立枠31の上側に引き上げられる。引き上げられた第二移動用機構Qは、
図13(d)に示すように、枠体3の上面に載置或いは収納される。
【0118】
以下、図面を用いて、本実施形態の実施の方法について詳述する。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。なお、第一、第二、第三、第四の実施形態と同様の方法については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0119】
≪実施の方法≫
図13(a)は、第一移動用機構Pを取り外した状態の枠体3、第二移動用機構Qの状態を示す。使用者は、第一移動用機構Pを枠体3から取り外す際に、ジャッキ6を用いて枠体3を持ち上げて支持する。このとき、使用者は、第二移動用機構Qが地面Gから離間するように、複数のジャッキ6で枠体3を持ち上げる。更に使用者は、舵部46を軸箱45から引き抜いて外す。
【0120】
続いて使用者は、巻上機35からワイヤWを引き出し、移動機構用滑車39にワイヤWを引掛けて、第二移動用機構Qの適切な箇所(中間リンク374以下で回動可能な部品)にワイヤWの先端を取付ける。その後、
図13(b)に示すように、巻上機35によってワイヤWが巻き取られると、第二移動用機構Qが、中間リンク374の可動範囲に従って立枠31の上側に跳ね上がるように引き上げられる。
【0121】
図13(c)に示すように、第二移動用機構Qの全体が立枠31の上側に引き上げられた後、転動体42は、立枠31の上面若しくは収容部311に載置される。このとき、使用者は、第二移動用機構Qと枠体3の間に緩衝材を挟んで第二移動用機構Qを支持する。これにより、第二移動用機構Q、特に転動体42に衝撃を加えずに取り扱うことができる。この緩衝材は、衝撃吸収材(ショックアブソーバー)が設けられた柱体等が挙げられる。
【0122】
最後に使用者は、ワイヤWを第二移動用機構Qから取り外し、電気ケーブル54が他の部品に絡まる等の干渉をしていないことを確認し、ジャッキ6を収縮させて枠体3を地面Gに載置する。
【0123】
使用者は、前述と逆の手順で、第二移動用機構Qを地面G側に降ろし、枠体3を移動可能な状態に切り替える。
【0124】
以下、図面を用いて、本発明の第六の実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xについて説明する。なお、第一、第二、第三、第四、第五の実施形態と同様の構成については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0125】
≪第六の実施形態≫
本実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xは、
図14(a)、
図14(b)、
図15(a)、
図15(b)の各図に示すように、落雷抑制装置本体1と、支持体2と、枠体3と、を備える。前述の実施形態との差異は、移動用機構4及び動力装置5を備えていない点である。このような構成によって、簡易設置型落雷抑制装置Xの部品点数を削減し、所望の場所に搬送、設置することができる。
【0126】
図15(a)、
図15(b)には、本実施形態において、落雷抑制装置本体1を支持体2によって枠体3の上に立設した状態を示す。このとき、落雷抑制装置本体1は、枠体3の底面が接地部として地面Gと接触することで、第一電極体11と地面Gとが、電気的に接続される。これにおいて、枠体3の重量が大きいと、より安定して地面Gに圧接され、接地状態を良好に保つことができる。また、これにより、落雷抑制装置本体1及び支持体2に対し、水平方向に風が当たっても、簡易設置型落雷抑制装置Xの全体で、落雷抑制装置本体1が容易には倒れず、強風にも耐えて支えることができる。
【0127】
枠体3は、接地部と地面Gとの接触面積を拡大可能な調整部材を有する構成が好ましい。
図15(b)に示すように、簡易設置型落雷抑制装置Xが設置される地面Gは平らとは限らず、凹凸を含む場合がある。例えば、駐機場等におけるコンクリートの舗装面にも僅かな凹凸がある。このとき、枠体3と地面Gとの接触面積は、枠体3の底面、若しくは底板32の面積よりも小さくなり、落雷抑制装置本体1を接地するための面積が小さくなる。該調整部材は、これを補うほか、立枠31により決定された地面Gとの接触面積をさらに外側に拡大可能にする構成としてもよい。また、該調整部材は、各図に示す高さ方向について長さ調整が可能であればどのような形態でもよい。以下、調整部材の構成の好ましい例を挙げる。
【0128】
図16(a)に示すように、枠体3は、調整部材の一形態として、高さ方向、特に地面G方向に向かって伸縮可能な伸縮部361を設ける。伸縮部361は、第三の実施形態に示す伸縮部361と同様、筒状の突出部36に格納可能な柱状の部材と、地面G側の端部に平板状の部材を設けている。このような構成によって、枠体3と地面Gとの間隙に向かって伸縮部361が伸長し、立枠31若しくは底板32では地面Gに接触しない部分において、容易に接触面積を拡大することができる。
【0129】
図16(b)に示すように、枠体3は、調整部材の別の一形態として、枠体3の下面(立枠31の下面、又は底板32)と、地面Gとの間隙に挿入可能な調整具383を設ける。このときの調整具383は、第四の実施形態とは異なり、枠体3の下面と、地面Gとの間隙に挿入可能な薄板状の部材である。また、調整具383は、厚みや面方向の大きさ又は形状が異なる複数種類があってもよい。これにより、複数種類の調整具383を、地面Gの凹凸に合わせて適宜組み合わせて使用することができ、枠体3と地面Gとの接触面積を容易に拡大することができる。また、この形態における調整具383は、平板状を基本に、厚み方向について波型に褶曲した形状でもよい。これにより、調整具383は、板ばねの原理で枠体3と地面Gとの双方に圧接され、より安定した接地状態とすることができる。
【0130】
図16(c)に示すように、枠体3は、調整部材の更に別の一形態として、展開接地部38を有する。展開接地部38は、第四の実施形態と同様に、可動梁収納部381と、可動梁382と、調整具383と、を設ける。この形態においては、可動梁収納部381は、立枠31を形成するH鋼の、ウェブとフランジにより生じるコの字型断面の内部空間を利用した構成である。また、可動梁382は、可動梁収納部381と高さ方向に伸びる軸関節で接続されており、可動梁収納部381から水平方向に回動可能な柱状の部材である。更に、調整具383は、可動梁382の先端と、地面Gとの間隙に挿入可能な平板状の部材であり、枠体3と地面Gとの接触面積を、外側に拡大可能にする。このような構成によって、落雷抑制装置本体1の接地をより安定させることができるほか、枠体3の水平方向についての短手方向を容易に拡大し、簡易設置型落雷抑制装置Xを設置したときの安定性を向上することができる。
【0131】
以下、図面を用いて、本発明の実施の方法について詳述する。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0132】
≪実施の方法≫
本実施形態に係る簡易設置型落雷抑制装置Xを設置場所へ搬送するとき、使用者は、落雷抑制装置本体1と、支持体2と、を収容部311に収容した枠体3を、手作業で、又は運搬用車両(トラック等)の荷台に乗せて、所望の場所へ搬送する。これにより、特殊な装置等を必要とせず、容易に簡易設置型落雷抑制装置Xを搬送できるほか、搬送のための部品の着脱も必要とせず、簡易設置型落雷抑制装置Xの搬送に係る作業工数を削減することができる。
【0133】
続いて使用者は、搬送された枠体3を、所望の一の地面Gに載置し、必要に応じて、調整部材を用いて、枠体3と地面Gとの接触面積を拡大する(接地面拡大工程)。その後使用者は、他の実施形態と同様の手順で、落雷抑制装置本体1と、支持体2を介して立設する。簡易設置型落雷抑制装置Xを撤収する際は、以上と逆の手順で作業を行う。
【符号の説明】
【0134】
X 簡易設置型落雷抑制装置
1 落雷抑制装置本体
11 第一電極体
12 第二電極体
121 接地側電極構成体
122 先端側電極構成体
13 接続柱
14 スペーサ
2 支持体
21 主支持柱
211 接続フランジ
22 補助支持柱
23 吊下用支柱
231 滑車
3 枠体
31 立枠
311 収容部
32 底板
321 底下部
33 主支持柱取付部
331 挿入部
332 可動底板
333 立設用軸関節部
34 吊下用支柱取付部
35 巻上機
36 突出部
361 伸縮部
37 移動用機構取付部
371 凹部
372 挿通部
373 移動機構用軸関節部
374 中間リンク
38 展開接地部
381 可動梁収納部
382 可動梁
383 調整具
39 移動機構用滑車
4 移動用機構
41 回動軸
42 転動体
43 軸受
44 押え板
45 軸箱
46 舵部
461 伝達部
462 操縦桿
47 ブレーキ
5 動力装置
51 電動モータ
52 モータ支持体
53 バッテリ
54 電気ケーブル
6 ジャッキ
G 地面
P 第一移動用機構
Q 第二移動用機構
W ワイヤ
【手続補正書】
【提出日】2024-11-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
落雷抑制の主要部を構成する落雷抑制装置本体と、前記落雷抑制装置本体を所定の高さに支持する支持体と、前記支持体を立設可能かつ搬送可能な枠体と、を備える移動式の簡易設置型落雷抑制装置であって、
前記枠体は、周縁部を形成して重量を与える枠部材と、前記枠部材の最下面の一部または全部を塞ぎ、且つ地面に接触して前記落雷抑制装置本体を接地することが可能な底板と、搬送時に前記落雷抑制装置本体及び前記支持体を収容可能な収容部と、を有する、簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項2】
前記枠体は、前記接地部と地面との接触面積を拡大可能な調整部材を更に有する、
請求項1に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項3】
前記調整部材は、前記高さ方向について伸縮可能な伸縮部を含む、
請求項2に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項4】
前記調整部材は、前記枠体の下面と、地面との間隙に挿入可能な調整具を含む、
請求項2に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項5】
前記枠体は、前記高さ方向に突出する突出部を有する、
請求項1に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項6】
前記枠体は、支持体取付部を有し、
前記支持体取付部には、回動可能な関節部が設けられている、
請求項1に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項7】
前記関節部は、水平方向の一の軸線について回動可能に設けられている、
請求項6に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項8】
回動軸を有する移動用機構を更に備え、
前記枠体は、前記移動用機構を一時的に固定可能な取付部を更に有する、
請求項1に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項9】
前記取付部には、前記移動用機構の一部と嵌合する凹部が設けられている、
請求項8に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項10】
前記取付部には、前記移動用機構を水平方向の軸線について回動可能な軸関節部が設けられている、
請求項8に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項11】
前記移動用機構は、前記枠体に複数取付けられており、そのうち少なくとも一の前記移動用機構は、鉛直方向の軸線について回動可能な舵部を有している、
請求項8に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項12】
落雷抑制の主要部を構成する落雷抑制装置本体と、前記落雷抑制装置本体を所定の高さに支持する支持体とを、前記支持体を立設可能かつ搬送可能な枠体に収容する収容工程と、
前記落雷抑制装置本体と、前記支持体と、が収容された前記枠体を設置場所へ搬送する搬送工程と、
前記枠体を、その最下面の一部または全部を塞ぐ底板を接地面に載置して接地する接地工程と、
前記落雷抑制装置本体が装着された前記支持体と前記枠体に立設固定して、前記落雷抑制装置本体を所定の高さに支持する支持工程と、を含む簡易設置型落雷抑制装置の設置方法。
【請求項13】
前記接地工程は、
前記高さ方向について、長さを調整可能な調整部材を用いて、前記枠体の下面と、地面との電気的な接触面積を拡大する接地面拡大工程を含む、
請求項12に記載の簡易設置型落雷抑制装置の設置方法。
【請求項14】
前記落雷抑制装置本体と、前記支持体と、が収容された前記枠体に、回動軸を有する移動用機構を固定する移動用機構取付工程を更に含む、
請求項12に記載の簡易設置型落雷抑制装置の設置方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-12-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
落雷抑制の主要部を構成する落雷抑制装置本体と、前記落雷抑制装置本体を所定の高さに支持する支持体と、前記支持体を立設可能かつ搬送可能な枠体と、を備える移動式の簡易設置型落雷抑制装置であって、
前記枠体は、周縁部を形成して重量を与える枠部材と、前記枠部材の最下面の一部または全部を塞ぎ、且つ地面に接触して前記落雷抑制装置本体を接地することが可能な底板と、搬送時に前記落雷抑制装置本体及び前記支持体を収容可能な収容部と、を有する、簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項2】
前記枠体は、前記底板と地面との接触面積を拡大可能な調整部材を更に有する、
請求項1に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項3】
前記調整部材は、前記高さ方向について伸縮可能な伸縮部を含む、
請求項2に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項4】
前記調整部材は、前記枠体の下面と、地面との間隙に挿入可能な調整具を含む、
請求項2に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項5】
前記枠体は、前記高さ方向に突出する突出部を有する、
請求項1に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項6】
前記枠体は、支持体取付部を有し、
前記支持体取付部には、回動可能な関節部が設けられている、
請求項1に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項7】
前記関節部は、水平方向の一の軸線について回動可能に設けられている、
請求項6に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項8】
回動軸を有する移動用機構を更に備え、
前記枠体は、前記移動用機構を一時的に固定可能な取付部を更に有する、
請求項1に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項9】
前記取付部には、前記移動用機構の一部と嵌合する凹部が設けられている、
請求項8に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項10】
前記取付部には、前記移動用機構を水平方向の軸線について回動可能な軸関節部が設けられている、
請求項8に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項11】
前記移動用機構は、前記枠体に複数取付けられており、そのうち少なくとも一の前記移動用機構は、鉛直方向の軸線について回動可能な舵部を有している、
請求項8に記載の簡易設置型落雷抑制装置。
【請求項12】
落雷抑制の主要部を構成する落雷抑制装置本体と、前記落雷抑制装置本体を所定の高さに支持する支持体とを、前記支持体を立設可能かつ搬送可能な枠体に収容する収容工程と、
前記落雷抑制装置本体と、前記支持体と、が収容された前記枠体を設置場所へ搬送する搬送工程と、
前記枠体を、その最下面の一部または全部を塞ぐ底板を接地面に載置して接地する接地工程と、
前記落雷抑制装置本体が装着された前記支持体と前記枠体に立設固定して、前記落雷抑制装置本体を所定の高さに支持する支持工程と、を含む簡易設置型落雷抑制装置の設置方法。
【請求項13】
前記接地工程は、
前記高さ方向について、長さを調整可能な調整部材を用いて、前記枠体の下面と、地面との電気的な接触面積を拡大する接地面拡大工程を含む、
請求項12に記載の簡易設置型落雷抑制装置の設置方法。
【請求項14】
前記落雷抑制装置本体と、前記支持体と、が収容された前記枠体に、回動軸を有する移動用機構を固定する移動用機構取付工程を更に含む、
請求項12に記載の簡易設置型落雷抑制装置の設置方法。