(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010543
(43)【公開日】2025-01-22
(54)【発明の名称】アロエ抽出物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C11B 1/10 20060101AFI20250115BHJP
C11D 3/22 20060101ALI20250115BHJP
C11D 3/382 20060101ALI20250115BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20250115BHJP
A23L 33/11 20160101ALI20250115BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20250115BHJP
A61K 36/886 20060101ALI20250115BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20250115BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C11B1/10
C11D3/22
C11D3/382
A23L33/105
A23L33/11
A23L2/00 F
A23L2/52
A61K36/886
A61K8/9794
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157498
(22)【出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 佑実
(72)【発明者】
【氏名】小澤 智仁
(72)【発明者】
【氏名】元吉 智美
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C083
4C088
4H003
4H059
【Fターム(参考)】
4B018MD65
4B018ME14
4B018MF01
4B117LC04
4B117LG24
4B117LP01
4C083AA111
4C083CC01
4C083EE11
4C083FF01
4C088AB86
4C088AC05
4C088CA10
4C088NA20
4H003DA02
4H003EB41
4H003EB43
4H003EB46
4H059AA04
4H059AA06
4H059BA33
4H059BB57
4H059BC12
4H059BC13
4H059CA14
4H059CA72
4H059CA73
4H059EA21
(57)【要約】
【課題】本発明は、より効率的なアロエ抽出物の製造方法の開発を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、アロエ抽出物の製造方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:乾燥アロエ葉肉から超臨界流体抽出法により抽出物を得る工程、および前記工程で得られた抽出物を油水分離して、油相をアロエ抽出物として得る工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アロエ抽出物の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
乾燥アロエ葉肉から超臨界流体抽出法により抽出物を得る工程、および
前記工程で得られた抽出物を油水分離して、油相をアロエ抽出物として得る工程。
【請求項2】
前記超臨界流体抽出法により抽出物を得る工程が、以下のa)~c)の条件を満たすものである、請求項1に記載の方法。
a)抽出溶媒が炭酸ガスであること、
b)抽出温度が50~100℃であること、および
c)抽出圧力が10~60MPaであること。
【請求項3】
アロエ葉肉を乾燥し、前記乾燥アロエ葉肉を得る工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
アロエ抽出物であって、
アロエ抽出物全量に対する、植物ステロールの含有量が0.3質量%以上であり、アロインの含有量が0.0005質量%以下である、アロエ抽出物。
【請求項5】
前記植物ステロールが、ロフェノール化合物およびシクロラノスタン化合物からなる群から選択される1または2以上の化合物である、請求項4に記載のアロエ抽出物。
【請求項6】
アロエ抽出物を含有する組成物であって、
組成物全量に対する、植物ステロールの含有量が0.001質量%以上であり、アロインの含有量が0.0005質量%以下である、組成物。
【請求項7】
請求項4または5に記載のアロエ抽出物、を含有する、組成物。
【請求項8】
請求項4もしくは5に記載のアロエ抽出物、または請求項6もしくは7に記載の組成物を含有する、飲食品、医薬品、または化粧品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アロエ抽出物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
アロエは、アロエベラ(Aloe barbadenisis Miller)やキダチアロエ(Aloe arborescens Miller var. natalensis Berger)等を含む多肉植物の一種であり、様々な効能を有することが経験的に知られている。近年、アロエの有する機能性が注目され、機能性食品、サプリメント、医薬品、化粧品等への利用が検討されている。
【0003】
また、アロエは、微量の植物ステロールを含有することも知られている。アロエに含まれる植物ステロールは、高血糖改善作用等を示すことが見出されている(特許文献1)。アロエに含有されるこのような機能性成分である植物ステロールが濃縮されたアロエ抽出物を製造したり、植物ステロールを精製したりするために、様々な技術が開発されつつある。
【0004】
特許文献1には、アロエベラの葉皮を含まない葉肉部分を乾燥して調製した粉末アロエベラ葉肉から超臨界流体抽出により天然のアロエベラ中に含まれる植物ステロールを含むアロエベラ抽出物を製造する方法が開示されている。このような方法では、アロエ中に含まれる植物ステロールを濃縮し、かつアントラキノン類を除去することが可能となるが、植物ステロールの抽出量の向上が望まれていた。すなわち、より効率的なアロエ抽出物の製造方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/060911号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の状況を鑑み、より効率的なアロエ抽出物の製造方法の開発を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、従来に比べ、より効率的なアロエ抽出物の製造方法を得ることを目的として鋭意検討を行った。そして、アロエ抽出物の製造方法において、乾燥アロエ葉肉から超臨界流体抽出法により抽出物を得た後、当該抽出物を油水分離することで、アントラキノン類であるアロインを効果的に除去しつつ効率的に植物ステロールを油相に濃縮することができることを知見した。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] アロエ抽出物の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
乾燥アロエ葉肉から超臨界流体抽出法により抽出物を得る工程、および
前記工程で得られた抽出物を油水分離して、油相をアロエ抽出物として得る工程。
[2] 前記超臨界流体抽出法により抽出物を得る工程が、以下のa)~c)の条件を満たすものである、[1]に記載の方法。
a)抽出溶媒が炭酸ガスであること、
b)抽出温度が50~100℃であること、および
c)抽出圧力が10~60MPaであること。
[3] アロエ葉肉を乾燥し、前記乾燥アロエ葉肉を得る工程をさらに含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4] アロエ抽出物であって、
アロエ抽出物全量に対する、植物ステロールの含有量が0.3質量%以上であり、アロインの含有量が0.0005質量%以下である、アロエ抽出物。
[5] 前記植物ステロールが、ロフェノール化合物およびシクロラノスタン化合物からなる群から選択される1または2以上の化合物である、[4]に記載のアロエ抽出物。
[6] アロエ抽出物を含有する組成物であって、
組成物全量に対する、植物ステロールの含有量が0.001質量%以上であり、アロインの含有量が0.0005質量%以下である、組成物。
[7][4]または[5]に記載のアロエ抽出物を含有する、組成物。
[8] [4]もしくは[5]に記載のアロエ抽出物、または[6]もしくは[7]に記載の組成物を含有する、飲食品、医薬品、または化粧品。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、植物ステロールの抽出量が向上された、より効率的なアロエ抽出物の製造方法が提供される。また、本発明のアロエ抽出物の製造方法によれば、アロインの混入を極めて低くすることができる。
さらに、本発明によって提供される製造方法によって、植物ステロール含有量が高く、かつアロインの混入が低いアロエ抽出物が提供される。さらに、このようなアロエ抽出物を含有する、組成物、飲食品、医薬品および化粧品等が提供される。アロエ等の植物を利用して機能性食品を開発するにあたっては、機能性を保証するための摂取量を考える上で、アロエの有効成分の含有率とともに非有効成分の含有率を考慮しなければならない。すなわち、本発明によりアロエを利用した機能性食品の開発に適した素材を提供することが可能となり、アロエの食品等への利用が促進されると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。なお、本明細書における百分率(%)は、特に記載しない限り質量%である。
【0011】
<アロエ抽出物の製造方法>
本発明の一態様は、アロエ抽出物の製造方法であって、以下の工程を含む方法(以下、「本発明のアロエ抽出物の製造方法」ということがある)に関する:
乾燥アロエ葉肉から超臨界流体抽出法により抽出物(以下、「超臨界流体抽出物」ということがある)を得る工程、および
前記工程で得られた抽出物を油水分離して、油相をアロエ抽出物として得る工程。
【0012】
本明細書において、「超臨界流体抽出物」とは、乾燥アロエ葉肉から超臨界流体抽出法により抽出される植物ステロールを含有する抽出物である。本明細書において、「アロエ抽出物」とは、超臨界流体抽出物を油水分離して油相として得られる、植物ステロールを含有する抽出物であり、抽出・精製等による植物ステロールの製造用、および植物ステロール高含有組成物の製造用等の原料として使用され得る。「アロエ抽出物」では、「超臨界流体抽出物」に対し、植物ステロールが濃縮され、アロイン等のアントラキノン類の混入が低減されている。本明細書における「アロエ抽出物」は、液体状、固形状(乾燥物およびその粉末)、半固形状等の全ての形態を包含する。
【0013】
≪超臨界流体抽出工程≫
本発明のアロエ抽出物の製造方法は、乾燥アロエ葉肉から超臨界流体抽出法により抽出
物を得る工程(以下、「超臨界流体抽出工程」ということがある)を含む。超臨界流体抽出工程は、乾燥アロエ葉肉に対して、超臨界流体抽出法により抽出処理を行い、抽出物を得る工程である。
【0014】
≪乾燥アロエ葉肉≫
本明細書において、「アロエ葉肉」とは、ユリ科(Liliaceae)アロエ属(Aloe)に属する植物の葉肉である。前記アロエ属に属する植物としては、限定されないが、例えば、アロエベラ(Aloe barbadensis Miller)、キダチアロエ(Aloe arborescens Miller var. natalensis Berger)、ケープアロエ(Aloe ferox Miller)等が挙げられる。中でも、アロエベラおよびキダチアロエが好ましく用いられる。
【0015】
アロエは、葉を横にスライスすると、厚いクチクラ層に覆われた表皮の外壁が現れる。表皮の下方には、緑色組織細胞と、柔組織として知られる細胞壁の薄い細胞とに分化した葉肉がある。柔組織細胞は、透明な粘液のようなゼリーをためている。内部維管束鞘細胞を持つ維管束は緩下薬の性質を持つ黄色い液汁を含み、2つの大きな細胞の間に挟まれている。すなわち、アロエは2種類の主要な液源、黄色液汁(浸出液)および透明ゲル(粘液)を有している。なお、透明ゲル(粘液)はアロエ葉肉(アロエゲル)と呼ばれる。このように、アロエの葉は、(A)黄色液汁、(B)アロエ葉肉、(C)外皮、先端、基部および棘からなる葉皮の3つの部分に分けることができる。
本発明における「アロエ葉肉」は、(B)アロエ葉肉(アロエゲル)を含む。本発明において用いられるアロエ葉肉は、上記(B)アロエ葉肉以外に、(A)黄色液汁や(C)葉皮を含んでいてもよいが、好ましくは(A)黄色液汁や(C)葉皮は含まない。
【0016】
アロエ葉肉は、常法により調製できる。例えば、アロエの葉から葉皮を剥き取り、さらに黄色液汁を洗浄して除去し、アロエの葉肉を回収する工程を経て調製することができる。
なお、アロエ葉肉の市販品を用いてもよい。
【0017】
先の工程で回収した、または市販品のアロエ葉肉を乾燥し、水分を除去し、乾燥アロエ葉肉を調製する。このアロエ葉肉の乾燥は常法により行うことができ、例えば、熱風乾燥機や凍結乾燥機を用いて乾燥することができるが、特に限定されない。水分が除去されたアロエ葉肉は、粗い粉末状となる。
なお、乾燥アロエ葉肉の市販品を用いてもよい。
【0018】
本発明の一態様では、本発明のアロエ抽出物の製造方法において、上記アロエ葉肉を乾燥し、乾燥アロエ葉肉を得る工程をさらに含む。
【0019】
≪植物ステロール≫
植物ステロールは、好ましくは、後述するロフェノール化合物およびシクロラノスタン化合物からなる群から選択される1または2以上の化合物である。
植物ステロールは、より好ましくは、アロエステロール(森永乳業株式会社の登録商標)である。アロエステロールは、アロエベラの葉肉部位に含まれる5つの植物ステロール(4-メチルコレスト-7-エン-3-オール、4-メチルエルゴスト-7-エン-3-オール、4-メチルスチグマスト-7-エン-3-オール、9,19-シクロラノスタン-3-オール、24-メチレン-9,19-シクロラノスタン-3-オール)の総称である。
【0020】
ロフェノール化合物は、以下の一般式(1)で表される。
【0021】
【0022】
一般式(1)中、R1は、炭素原子数5~16の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基、または2重結合を1つもしくは2つ含むアルケニル基である。また、前記アルキル基またはアルケニル基は、1または2の水素原子がヒドロキシ基および/またはカルボニル基に置換された置換アルキル基または置換アルケニル基であってもよい。
また、R2およびR3は各々独立に水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基である。ここで、前記炭素原子数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基等が好ましく、メチル基が特に好ましい。また、前記炭素原子数1~3のアルキル基は、少なくとも1の水素原子がヒドロキシ基および/またはカルボニル基に置換された置換アルキル基であってもよく、具体的には以下の式で表される基が挙げられる。
【0023】
-CH2-OH
-CH2-COOH
-CH2-CH2-OH
-CH2-CH2-COOH
-CH(OH)-CH3
-CH(COOH)-CH3
【0024】
また、R4は環を構成する炭素原子とともにC=Oを形成する基、ヒドロキシ基、または-OCOCH3である。
【0025】
前記一般式(1)中、R1は、下記式で表される基の何れかであることが好ましい。
【0026】
-CH2-CH2-CH(-CH2-CH3)-CH(CH3)2
-CH2-CH2-CH=C(CH3)2
-CH2-CH=C(CH3)-CH(CH3)2
-CH2-CH2-C(=CH-CH3)-CH(CH3)2
-CH2-CH2-C(Ra)=C(CH3)Rb
(ただし、Ra、Rbは独立して水素原子、ヒドロキシ基またはメチル基である)
-CH2-CH2-CH(Rc)-CH(CH3)Rd
(ただし、Rc、Rdは独立して水素原子、ヒドロキシ基またはメチル基である)
【0027】
また、前記一般式(1)中、R2およびR3の一方が水素原子であり、他方がメチル基であることが好ましく、R4がヒドロキシ基であることが好ましい。
【0028】
ロフェノール化合物として、好ましくは、4-メチルコレスト-7-エン-3-オール、4-メチルエルゴスト-7-エン-3-オールおよび4-メチルスチグマスト-7-エン-3-オールが挙げられる。各化合物は、それぞれ、以下の式で表される構造を有する。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
シクロラノスタン化合物は、以下の一般式(2)で表される。
【0033】
【0034】
一般式(2)中、R5は、炭素原子数6~8の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、または2重結合を1つまたは2つ含むアルケニル基である。また、前記アルキル基またはアルケニル基は、1または2の水素原子がヒドロキシ基および/またはカルボニル基に置換された置換アルキル基または置換アルケニル基であってもよい。
また、R6およびR7は各々独立に水素原子またはメチル基である。また、R8は環を構成する炭素原子とともにC=Oを形成する基、または下記の基の何れかである。
【0035】
【0036】
前記一般式(2)中、R5は、下記式で表される基の何れかであることが好ましい。
【0037】
-CH2-CH2-CH2-CH(CH3)2
-CH2-CH2-CHRe-C(CH3)2Rf
(ただし、Reは水素原子、ヒドロキシ基またはメチル基であり、Rfは水素原子またはヒドロキシ基である)
-CH2-CH2-CH(CH2-CH3)-CH(CH3)2
-CH2-CH2-CHRg-C(CH3)=CH2
(ただし、Rgは水素原子、ヒドロキシ基またはメチル基である)
-CH2-CH2-C(=O)-C(CH3)=CH2
-CH2-CH2-C(=CH2)-CH(CH3)2
-CH2-CH2-CH=C(CH3)2
-CH2-CH=C(CH3)-CH(CH3)2
-CH2-CH2-C(=CH-CH3)-CH(CH3)2
【0038】
また、前記一般式(2)中、R6およびR7の一方が水素原子であり、他方がメチル基であることが好ましく、R8がヒドロキシ基であることが好ましい。
【0039】
シクロラノスタン化合物としては、好ましくは、9,19-シクロラノスタン-3-オール、および24-メチレン-9,19-シクロラノスタン-3-オールが挙げられる。各化合物は、それぞれ、以下の式で表される構造を有する。
【0040】
【0041】
【0042】
≪超臨界流体抽出≫
超臨界流体抽出法は、限定されないが、例えば、以下の方法で行うことができる。
【0043】
超臨界流体抽出に用いる抽出溶媒は特に制限されないが、例えば酪酸、2,4-ヘプタジエナール、2-エチルヘキサノール、特に2,4-ヘプタジエナールを抽出することができる溶媒であることが好ましい。例えば、炭酸ガス(二酸化炭素)、超臨界プロパン、超臨界エチレン、超臨界1,1,1,2-テトラフルオロエタン等を使用することが可能である。本発明のアロエ抽出物の製造方法により製造されたアロエ抽出物を飲食品、医薬品、化粧品、飼料等の成分として利用する場合には、安全性を重視する観点から、抽出溶媒として炭酸ガスを使用することが好ましい。
【0044】
なお、酪酸は、腐敗したバター様の不快な酸臭を有する無色液体である。また、2,4-へプタジエナールは刺激的でグリーンな香気であり、青臭みを有する無色液体である。2-エチルヘキサノールはローズ様フローラル香の無色液体であるが、量により好ましく
ない臭気になりうるものである。
【0045】
抽出温度は、抽出溶媒の種類およびその他の条件に応じて変更され得るが、植物ステロールの抽出量の向上の観点、さらにはアロエ独特の上記臭気成分を十分に抽出する観点、後述する粉砕に適した物性を得る観点から、抽出温度は、例えば50℃以上、60℃以上、70℃以上または75℃以上であってよく、100℃以下、90℃以下、85℃以下または80℃以下であってよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってよい。抽出温度は、具体的には、例えば、50℃~100℃、60℃~90℃、70℃~85℃、または75℃~80℃のいずれかの範囲であってよい。
【0046】
抽出圧力は、抽出溶媒の種類およびその他の条件に応じて変更され得るが、植物ステロールの抽出量の向上の観点、さらにはアロエ独特の上記臭気成分を十分に抽出する観点、または後述する粉砕に適した物性を得る観点からは、抽出圧力は、例えば10MPa以上、15MPa以上、20MPa以上、25MPa以上、30MPa以上、35MPa以上または40MPa以上であってよく、60MPa以下、55MPa以下、50MPa以下または45MPa以下であってよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってよい。抽出圧力は、具体的には、例えば、10MPa~60MPa、15MPa~60MPa、20MPa~55MPa、25MPa~55MPa、30MPa~50MPa、35MPa~50MPa、または40MPa~45MPaのいずれかの範囲であってよい。
【0047】
抽出時間は、抽出溶媒の種類およびその他の条件に応じて適宜選択することができ、抽出効率を向上する観点およびエネルギーコストの観点から、例えば30秒以上、30分以上、または60分以上であってよく、7時間以下、5時間以下、または120分以下であってよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってよい。
【0048】
本発明の一態様としては、本発明のアロエ抽出物の製造方法において、超臨界流体抽出法により抽出物を得る工程が、以下のa)~c)の条件を満たすものである。
a)抽出溶媒が炭酸ガスであること、
b)抽出温度が50~100℃であること、および
c)抽出圧力が10~60MPaであること。
【0049】
また、超臨界流体抽出においては、アロエ独特の上記臭気成分を十分に抽出する観点から、エタノール等のエントレーナーを使用することもできる。
【0050】
超臨界流体抽出法は、上記本発明の特定の条件以外の条件等については、例えば、国際公開第2007/060911号パンフレット等に記載の公知の超臨界流体抽出法を参照することができる。
【0051】
<油水分離工程>
本発明のアロエ抽出物の製造方法は、超臨界流体抽出物を油水分離して、油相をアロエ抽出物として得る工程(以下、「油水分離工程」ということがある)を含む。超臨界流体抽出物は、通常水分と油分を含む混合物である。油水分離工程は、超臨界流体抽出物に対して、油水分離処理を行い、超臨界流体抽出物中の水分(水相)を除去し、油分(油相)をアロエ抽出物として得る工程である。
【0052】
≪油水分離≫
油水分離の方法としては、超臨界流体抽出物中の水分(水相)と油分(油相)を分離することができれば、特に限定されない。
例えば、超臨界流体抽出物と常温で液体状の油脂とを混合し、静置分離、遠心分離等を行い、比重差によって水相と油相に分離し、油相を回収する方法で行うことができる。静
置分離後に遠心分離することも可能である。超臨界流体抽出物と油脂の混合、その後の油水分離操作は、複数回実施してもよい。複数回実施する場合には、作業性の観点から2~5回程度が好ましい。
また、例えば、超臨界流体抽出物と常温で液体状、半固体状~固体状の油脂とを加熱溶融、および冷却・分離操作によって、水分と固化した油分を分離する方法でも油水分離をすることができる(本態様は「固液分離」と換言できる)。すなわち、加熱した油脂と超臨界抽出物を混合して溶解、または油脂と超臨界抽出物を混合して加熱溶解した後に、少なくとも当該油脂が固化する温度(一態様では、油脂の凝固点または融点)以下の温度まで冷却することで、液状の水相と固体状の油相とに分離されるため、固体状の油相から液状の水相を容易に除去することができる。油脂の加熱溶融および冷却、その後の油水分離操作は、複数回実施してもよい。複数回実施する場合には、作業性の観点から2~5回程度が好ましい。
【0053】
油水分離に使用する油脂としては、超臨界流体抽出物中の油分を溶解することができ、水分と分離し得る油脂であれば特に限定されない。油脂としては、常温で半固体状~固体状である固体脂と、常温で液体状である液状油のいずれも使用可能である。好ましくは、食品等に使用できる油脂である。例えば、動物油、植物油等が挙げられ、操作性の観点から、凝固点あるいは融点が-10℃以上30℃以下であることが好ましい。具体的には、例えば、ナタネ油、コーン油、サフラワー油、コメ油、魚油、MCT等を挙げることができ、好ましくは、MCTである。MCTは、炭素数6~12の中鎖脂肪酸トリグリセリドである。好ましくは炭素数8~10の中鎖脂肪酸トリグリセリドである。油脂は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。油脂は、市販品を用いることができる。
【0054】
超臨界流体抽出物に対する油脂の添加量は、超臨界流体抽出物の水分量、油脂の種類等によって変更され得るが、超臨界流体抽出物の質量(g):油脂の質量(g)として、抽出物中の水分低減および分離効率向上の観点から、例えば5,000:900~100:80、または3000:900~100:60となるように添加することが好ましい。
【0055】
油水分離工程における温度は、超臨界流体抽出物中の水分量、油脂の種類等によって変更され得るが、油脂の粘度を下げ、分離効率を向上する観点およびエネルギーコストの観点から、例えば50℃以上、70℃以上、または80℃以上であってよく、100℃以下、95℃以下、または90℃以下であってよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってよい。
なお、上記固液分離によって水相と油相に分離する態様において、超臨界流体抽出物と油脂とを上記温度で混合し、抽出物を溶解した後は、室温、あるいは分離効率の向上等のため、油脂の融点付近以下の温度等で分離を実施することができる。固液分離する方法としては、例えば、ろ過等の方法を用いることができる。
【0056】
上記比重差によって水相と油相に分離する態様において、静置分離を行う場合、超臨界流体抽出物中の水分量、油脂の種類等によって変更され得るが、超臨界流体抽出物中の水分量低減の観点および生産性向上の観点から、静置時間は、例えば0.5時間以上、1時間以上、または5時間以上であってよく、100時間以下、50時間以下、または30時間以下であってよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってよい。
【0057】
上記比重差によって水相と油相に分離する態様において、遠心分離を行う場合、超臨界流体抽出物中の水分量、油脂の種類等によって変更され得るが、油脂中の水分量低減および生産性向上の観点および経済性の観点から、遠心力は、例えば500G以上、1,000G以上、または2,000G以上であってよく、20,000G以下、または10,000G以下であってよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってよい。遠心分離
を行う時間は、超臨界流体抽出物中の水分量低減および生産性向上の観点から、例えば1分以上、2分以上、または5分以上であってよく、60分以下、30分以下、または20分以下であってよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってよい。
【0058】
本発明のアロエ抽出物の製造方法における超臨界流体抽出工程および油水分離工程を行った後に、油相の状態で原料として使用することで各種食品等に使用することができるが、所望により、粉砕工程、精製工程等の工程をさらに行ってもよい。さらに、油水分離工程で得られた油相を希釈・溶解したり、乳化して乳化液にしたり、該乳化液を噴霧乾燥、真空乾燥、または凍結乾燥といった乾燥方法により粉末化してもよい。
【0059】
<アロエ抽出物>
本発明の一態様は、アロエ抽出物であって、
アロエ抽出物全量に対する、植物ステロールの含有量が0.3質量%以上であり、アロインの含有量が0.0005質量%以下である、アロエ抽出物(以下、「本発明のアロエ抽出物」ということがある)に関する。
なお、上記本発明のアロエ抽出物の製造方法において説明された事項は、本発明のアロエ抽出物の説明に全て適用される。
本発明のアロエ抽出物は、例えば、本発明のアロエ抽出物の製造方法によって製造される。
本発明のアロエ抽出物は、従来のアロエ抽出物の製造方法によって得られるアロエ抽出物に比べ、植物ステロールを多く含有し、アロイン等のアントラキノン類(以下、「アントラキノン系化合物」ということがあるが、同義である)の混入が低減されている。アロエ抽出物としては、アロイン、アロエニン、アロエエモジン等のアントラキノン類を、実用上問題のない範囲で含んでいてもよいが、これらの化合物は緩化作用を持つため、その含有量は少ないことが好ましい。
【0060】
本発明のアロエ抽出物における植物ステロールの含有量は、用いるアロエ原料、製造方法における諸条件等によって変化し得るが、例えば、アロエ抽出物において0.1質量%以上、0.3質量%以上、または0.5質量%以上であってよい。上限は特にないが、例えば、アロエ抽出物において50.0質量%以下、10.0質量%以下、2.0質量%以下、または1.0質量%以下であってよい。植物ステロールの含有量は、具体的には、例えば、0.1質量%~50.0質量%、0.3質量%~10.0質量%、または0.3質量%~2.0質量%のいずれかの範囲であってよい。
【0061】
本発明のアロエ抽出物におけるアロインの含有量は、用いるアロエ原料、製造方法における諸条件等によって変化し得るが、例えば、アロエ抽出物において、通常の検出装置による検出方法(例えば、下記実施例に記載の検出方法)で検出限界以下、0.0005質量%以下、0.0001質量%以下、または全く含有されないもの(0質量%)であってよい。アロインの含有量は、具体的には、例えば、0質量%~検出限界以下、0質量%~0.0005質量%、または0質量%~0.0001質量%のいずれかの範囲であってよい。
【0062】
一態様では、本発明のアロエ抽出物において、アロエニンおよびアロエエモジンは、それぞれ0.001質量%以下、0.0005質量%以下、または全く含有されない(0質量%)。
【0063】
<組成物>
本発明の別の一態様は、アロエ抽出物を含有する組成物であって、組成物全量に対する、植物ステロールの含有量が0.0001質量%以上であり、アロインの含有量が0.0005質量%以下である、組成物(以下、「本発明の組成物」ということがある)に関す
る。
本発明の組成物における、組成物全量に対する、植物ステロールの含有量は、特に制限されるものではなく、配合目的や配合すべき飲食品、医薬品または化粧品等の種類・形態・目的等によって異なり一概には決められないが、液体状、および半固形状の組成物に対し、例えば0.001質量%以上、または0.005質量%以上であってよく、50.0質量%以下、20.0質量%以下、10.0質量%以下、または1.0質量%以下であってよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってよい。また、固形状(乾燥物およびその粉末)の組成物に対し、例えば0.001質量%以上、または0.005質量%以上であってよく、50.0質量%以下、20.0質量%以下、10.0質量%以下、または1.0質量%以下であってよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってよい。
本発明の組成物における、組成物全量に対する、アロインの含有量は、用いるアロエ原料、製造方法における諸条件等によって変化し得るが、組成物に対し、例えば、0.001質量%以下、0.0001質量%以下、0.0005質量%以下、0.0001質量%以下、または全く含有されないものであってよい。
本発明の組成物に含有されるアロエ抽出物は、例えば、本発明のアロエ抽出物の製造方法によって製造される。すなわち、別の一態様では、本発明の組成物は、本発明のアロエ抽出物を含有する、組成物である。
本発明の組成物に含有されるアロエ抽出物における植物ステロールの含有量、アロインの含有量、およびアロエニンおよびアロエエモジンの含有量の範囲は、上記本発明のアロエ抽出物において説明された内容と同様である。
なお、上記本発明のアロエ抽出物の製造方法、および本発明のアロエ抽出物において説明された事項は、本発明の組成物の説明に全て適用される。
【0064】
本発明の組成物における本発明のアロエ抽出物の配合量は、特に制限されるものではなく、配合目的や配合すべき飲食品、医薬品または化粧品等の種類・形態・目的等によって異なり一概には決められないが、組成物に対し、例えば0.1質量%以上、0.5質量%以上、または1.0質量%以上であってよく、15.0質量%以下、10.0質量%以下、または5.0質量%以下であってよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってよい。
【0065】
本発明の組成物の一態様としては、例えば、本発明のアロエ抽出物を油脂で希釈・溶解して得る油状組成物が挙げられる。この油状組成物には、希釈・溶解に際して、食品等に使用できる油脂を使用できる。例えば、動物油、植物油等が挙げられ、具体的には、例えば、ナタネ油、コーン油、サフラワー油、コメ油、魚油、MCT等を挙げることができ、好ましくは、MCTである。これらの使用量は使用目的等に応じて適宜に選択することができる。
本発明の組成物の別の一態様としては、例えば、本発明のアロエ抽出物を乳化して得る乳化組成物が挙げられる。この乳化組成物には、乳化に際して、必要に応じて、大豆油、菜種油、ヤシ油、コメ油、コーン油、パーム油、紅花油、オリーブ油等の植物油脂類;炭素数6~12の飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸等)を主要な構成成分とした脂肪酸とグリセリンから構成される中鎖脂肪酸トリグリセリド類、牛脂、豚脂、鶏脂、魚油等の動物油脂類等の油脂類;脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、化工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸およびその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼイン等の乳化剤;pH調整剤;砂糖、水飴等の糖類;グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール等の多価アルコール類;クエン酸、リンゴ酸等の有機酸類;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の塩類;シュークロースアセテートイソブチレート(SAIB);ロジン、ダンマル、エレミ等の樹脂類;抽出トコフェノール、ローズマリー抽出物等の酸化防
止剤;β-カロチン、パプリカ色素等の色素類;デキストリン、マルトデキストリン等の倍散剤等を適宜配合することもできる。これらの使用量は使用目的等に応じて適宜に選択することができる。また、本発明の乳化組成物には、乳化剤等を溶解するため水を加えることもできる。
【0066】
本発明の組成物は、本発明のアロエ抽出物を含有する以外は、常法の組成物の製造方法に基づいて製造できる。例えば、本発明の乳化組成物の製造方法の好ましい一実施態様を示せば、例えば、アロエ抽出物と油脂類との混合物と、水とを混合し、次いで所望により乳化組成物のpHを調整し、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー等を用いて混合処理を行ことにより、本発明の乳化組成物を得ることができる。また、該乳化組成物を噴霧乾燥、真空乾燥、または凍結乾燥といった乾燥方法により粉末化してもよい。このように乾燥・粉末化等の処理をした乳化組成物も、本明細書における乳化組成物に包含される。
【0067】
<飲食品、医薬品または化粧品>
本発明の一態様は、本発明のアロエ抽出物および/または組成物(以下、「本発明のアロエ抽出物等」ということがある)を含有する、飲食品、医薬品または化粧品(以下、「本発明の飲食品、医薬品または化粧品」ということがある)に関する。
なお、上記本発明のアロエ抽出物の製造方法、本発明のアロエ抽出物、および本発明の組成物において説明された事項は、本発明の飲食品、医薬品または化粧品の説明に全て適用される。
本発明の飲食品は、本発明のアロエ抽出物等を有効成分としてそのまま、もしくはこれらを飲食品と組み合わせて製造することができる。本発明の飲食品としては、アロエ抽出物の効果を損なわない限り特に制限されない。飲食品は、固体、液体、半固体等の任意の形態とし得る。このような食品は、健康食品、サプリメント、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)等を含む。本発明の飲食品は、従来の製造方法によって得られるアロエ抽出物に比べ、植物ステロールを多く含有し、アロインの混入が低減されているアロエ抽出物を用いる。その結果、例えば、健康食品、サプリメント、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)等に好適に応用することができる。
本発明の飲食品の製造は、本発明のアロエ抽出物または組成物を含有させる以外は、公知の食品の製造方法に基づいて行うことができる。
食品における本発明のアロエ抽出物または組成物の含有量は、植物ステロールの効果が得られる限り特に制限されないが、植物ステロール量として0.001質量%以上、または0.003質量%以上であってよく、50.0質量%以下、20.0質量%以下であってよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってよい。
【0068】
本発明の医薬品は、本発明のアロエ抽出物等を有効成分としてそのまま、もしくはこれらを製剤学的に許容される製剤担体と組み合わせて製造することができ、経口的、または非経口的にヒトを含む哺乳動物に投与することができる。なお、本発明の医薬品において、アロエ抽出物中のシクロラノスタン化合物および/またはロフェノール化合物は医薬に許容される塩にすることもできる。医薬に許容可能な塩として、金属塩(無機塩)と有機塩との両方が含まれ、それらのリストは「レミントン・ファーマシューティカル・サイエンシーズ(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第17版、第1418ページ、1985年」に掲載されているものが例示される。具体的には塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩および臭化水素酸塩等の無機酸塩や、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩、サリチル酸塩およびステアリン酸塩等の有機酸塩が非限定的に含まれる。また、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の金属の塩、リジン等のアミノ酸との塩とすることもできる。また、アロエ抽出物中のシクロラノスタン化合物および/またはロフェノール化合物もしくはその医薬上許容される塩の水和物等の溶媒和物を含む医薬品も本発明に含まれる。
【0069】
本発明の医薬品の製剤形態は特に限定されず、治療目的に応じて適宜選択でき、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤、点鼻剤等を例示できる。製剤化にあたっては製剤担体として通常の賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、注射剤用溶剤等の添加剤を使用できる。また、本発明の効果を損なわない限り、本発明のアロエ抽出物と、他の有効成分とを併用してもよい。
【0070】
本発明の医薬品に含まれる本発明のアロエ抽出物または組成物の量は、特に限定されず適宜選択すればよいが、植物ステロール量として、例えば、医薬品製剤中に0.001質量%以上、または0.003質量%以上であってよく、10.0質量%以下、または1.0質量%以下であってよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってよい。
【0071】
本発明の医薬品の投与時期は特に限定されず、対象となる疾患の治療方法に従って、適宜投与時期を選択することが可能である。また、投与形態は製剤形態、患者の年齢、性別、その他の条件、患者の症状の程度等に応じて決定されることが好ましい。本発明の医薬品の有効成分の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度、その他の条件等により適宜選択され、植物ステロール量が、例えば、0.001~50mg/kg/日、または0.01~1mg/kg/日の範囲となる量を目安とすることができる。また、本発明のアロエ抽出物の乾燥質量としては、0.1~1000mg/kg/日、または1~100mg/kg/日の範囲となる量を目安とすることができる。本発明の医薬品は、1日1回または複数回に分けて投与することができる。
【0072】
アロエに含まれる植物ステロールは、紫外線抵抗性向上作用等を示すことも見出されていることから、本発明のアロエ抽出物等は、化粧品として適用することもできる。本発明のアロエ抽出物等を有効成分としてそのまま、もしくはこれらを製剤学的に許容される製剤担体と組み合わせて、本発明の化粧品を製造することができる。
化粧品における本発明のアロエ抽出物または組成物の含有量は、植物ステロールの効果が得られる限り特に制限されないが、植物ステロール量として0.001質量%以上、または0.003質量%以上であってよく、50.0質量%以下、20.0質量%以下であってよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってよい。
本発明の化粧品は、例えば、皮膚を紫外線へ暴露することにより引き起こされる皮膚の状態または疾患の予防または改善に有効である。
前記症状としては、紅斑、浮腫、光線角化症、日光皮膚炎、光線過敏症、光老化が挙げられる。
【0073】
「化粧品」には、薬事法における化粧品および医薬部外品が含まれ、皮膚に使用する化粧品、浴用剤、芳香品等が挙げられる。
化粧品には、通常用いられる成分を適宜配合することができる。また、化粧品の形態も特に制限されない。
本発明の化粧品としては、例えば、せっけん、合成化粧せっけん、液状ボディ洗浄料(ボディーソープ)、洗顔料等の洗浄料、クレンジングクリーム、洗浄用化粧水、化粧水、乳液、美容液、ローション、液状パック、ペースト状パック等のパック、粉白粉、水白粉、練白粉等の白粉、打粉、ファンデーション、口紅、頬紅等の化粧品、アイライナー、アイシャドウ等の目のまわりの化粧料、日焼け止め化粧料、サンタン化粧料、除毛化粧料等の化粧料、或いはシェービングローション、アフターシェービングローション等のひげそり用化粧料等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の化粧品は、上記植物ステロールを有効量含んでなるものであり、使用により、
紫外線抵抗性向上作用等を発揮できるものである。
【実施例0074】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
<実施例1> アロエ抽出物の製造
(超臨界流体抽出)
アロエベラ約80kgについて、葉皮を剥き取って葉肉(透明ゲル)部分を回収し、回収した葉肉部分を凍結乾燥してアロエベラ葉肉粉末約400gを調製した。
【0076】
調製したアロエベラ葉肉粉末80gを用いて超臨界流体抽出法により抽出を行った。超臨界流体抽出は、株式会社アイテック製超臨界CO2抽出装置を用い、抽出溶媒として炭酸ガス、以下の表1に示す抽出温度および抽出圧力、抽出時間80分の条件で、エントレーナーを使用しないで実施し、アロエ抽出物を製造した。
【0077】
製造したアロエ抽出物について、LC/MS/MS(型式Agilent 6460;アジレント・テクノロジー社製)を使用し、内部標準物質としてブラシカステロール(富士フイルム和光純薬工業社製)を用いて、アロエステロール(シクロラノスタン化合物である9,19-シクロラノスタン-3-オール、24-メチレン-9,19-シクロラノスタン-3-オール、および、ロフェノール化合物である4-メチルコレスト-7-エン-3-オール、4-メチルエルゴスト-7-エン-3-オール、4-メチルスチグマスト-7-エン-3-オール)の含有量を測定した。
結果を表1に示す。
【0078】
【0079】
超臨界流体抽出の条件を検討した結果、より高温高圧力での抽出の方がアロエステロールの抽出効率(アロエステロール濃度、アロエステロール含量、および/または超臨界流体抽出物収量)が高いことが分かった。
【0080】
(油水分離)
上記抽出条件4によるアロエ超臨界流体抽出物約2.4kgおよび秤量した濃度調整用O.D.O(食用油脂:中鎖脂肪酸トリグリセリド;日清オイリオグループ株式会社製)(900g)を投入した溶解用容器を湯煎にて約90℃(抽出物温度)に加温し、撹拌機(IKA LABORATECK RW20)で撹拌しながら均一に溶解した。約1時間撹拌後、加温溶解液中に溶け残りが見られる場合は、溶解用容器ごと超音波処理を行い、再度撹拌しながら均一に溶解した。10℃で静置し、アロエステロールを含むアロエ超臨界流体抽出物の油相部が固化したことを確認後、アロエステロールを含まない水相部を除去した。
アロエベラ葉肉粉末(原料)、アロエ超臨界流体抽出物の油相部および水相部について、液体クロマトグラフィー質量分析法を使用し、アロインの含有量を測定した。アロインの分析については下記のとおりである。それぞれのサンプルはメタノールに溶解し、高速液体クロマトグラフィーで測定した。標準液として、成分含量測定用アロイン(バルバロイン)メタノール溶液を用いた。アロエステロール含量については、上述のLC/MS/MSを用いた方法で測定した。
結果を表2に示す。
【0081】
【0082】
超臨界流体抽出の後、油水分離することで、水相側にアロインが移行し、油相側にアロインは残らないという結果が得られた。また、アロエステロールは油相側に移行した(3.8mg/g)。
【0083】
以上の結果より、本発明のアロエ抽出物の製造方法では、より高温高圧力での抽出によりアロエステロールの抽出効率を高め、さらに、油水分離をすることで、アロインを効果的に除去できることが明らかとなった。
【0084】
<実施例2> 乳化組成物の製造
実施例1で得られたアロエ抽出物800gを加熱して溶融した後、グリセリン脂肪酸エステル800gを添加、溶解し、その後、さらに水6000gおよびデキストリン24000gを添加して撹拌溶解して混合液の乳化組成物を得る。当該乳化組成物中の植物ステロールの含量は、0.0096質量%である。当該混合液を、加熱して均質化してから冷却した後、凍結乾燥して粉末状の乳化組成物25kgを得る。