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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010544
(43)【公開日】2025-01-22
(54)【発明の名称】加飾シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20250115BHJP
【FI】
B32B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162741
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】片岡 咲恵
(72)【発明者】
【氏名】名木 義幸
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK41D
4F100AK45C
4F100AK51D
4F100AK74C
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100DD01A
4F100DD09A
4F100EH36C
4F100EJ39
4F100GB08
4F100GB31
4F100GB48
4F100HB00B
4F100HB31B
4F100JL11D
4F100JN01A
(57)【要約】
【課題】成形後においても、内部の凹凸形状による優れた立体感を備える加飾シートを提供する。
【解決手段】
一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層と、
前記透明樹脂フィルム層の前記凹凸形状に沿って形成された装飾層と、
を備える加飾シートであって、
前記凹凸形状は、前記透明樹脂フィルム層側から前記装飾層側に突出した、複数の凸部を備えており、
前記複数の凸部は、それぞれ、多段状に形成されている、加飾シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層と、
前記透明樹脂フィルム層の前記凹凸形状に沿って形成された装飾層と、
を備える加飾シートであって、
前記凹凸形状は、前記透明樹脂フィルム層側から前記装飾層側に突出した、複数の凸部を備えており、
前記複数の凸部は、それぞれ、多段状に形成されている、加飾シート。
【請求項2】
前記装飾層側に、支持フィルム層をさらに有する、請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記支持フィルム層が、前記装飾層側の凹部を埋めるようにして形成されている、請求項2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記装飾層と前記支持フィルム層との間に接着層をさらに有する、請求項2または3に記載の加飾シート。
【請求項5】
前記透明樹脂フィルム層の前記装飾層側とは反対側の表面が平滑である、請求項1~4のいずれか1項に記載の加飾シート。
【請求項6】
一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層と、
前記透明樹脂フィルム層の前記凹凸形状に沿って形成された装飾層と、
成形樹脂層と、
を備える加飾樹脂成形品であって、
前記凹凸形状は、前記透明樹脂フィルム層側から前記装飾層側に突出した、複数の凸部を備えており、
前記複数の凸部は、それぞれ、多段状に形成されている、加飾樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加飾シート、及びこれを利用した加飾樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内外装部品、建材内装材、家電筐体等には、樹脂成形品の表面に加飾シートを積層させた加飾樹脂成形品が使用されている。このような加飾樹脂成形品の製造においては、予め意匠が付与された加飾シートを、射出成形によって樹脂と一体化させる成形法などが用いられている。かかる成形法の代表的な例としては、加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形しておき、当該加飾シートを射出成形型に挿入し、流動状態の樹脂を型内に射出することにより樹脂と加飾シートとを一体化するインサート成形法や、射出成形の際に金型内に挿入された加飾シートを、キャビティ内に射出注入された溶融樹脂と一体化させる射出成形同時加飾法が挙げられる。
【0003】
例えば、加飾シートの表面に位置するアクリルフィルムの裏面に印刷層を設け、印刷層側に凹凸形状を形成することで、加飾シートの内部に立体形状を表現した加飾シートが存在している。このような加飾シートでは、凹凸形状の精緻なラインと陰影により、単なる印刷による絵柄表現と比較して、本物感、高級感を演出している。
【0004】
近年、加飾シートに求められるデザインは多様化しており、より多様な立体感の演出が求められている。
【0005】
また、加飾シートのインサート成形法などにおける射出成形時、またはこれに先立つ予備成形(真空成形)時の熱と圧力によって、加飾シートの内部に形成されていた凹凸形状が、なだらかとなったり、小さくなったりすることにより、凹凸形状による高い質感が劣化するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-82912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、成形後においても、内部の凹凸形状による優れた立体感を備える加飾シートを提供することを主な目的とする。さらに、本開示は、当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層と、透明樹脂フィルム層の凹凸形状に沿って形成された装飾層とを備える加飾シートにおいて、当該凹凸形状は、透明樹脂フィルム層側から装飾層側に突出した、高さの異なる複数の凸部を備えており、さらに、当該複数の凸部をそれぞれ多段状に形成することにより、成形後においても、加飾シート内部の凹凸形状による優れた立体感が奏されることを見出した。本開示は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層と、
前記透明樹脂フィルム層の前記凹凸形状に沿って形成された装飾層と、
を備える加飾シートであって、
前記凹凸形状は、前記透明樹脂フィルム層側から前記装飾層側に突出した、複数の凸部を備えており、
前記複数の凸部は、それぞれ、多段状に形成されている、加飾シート。
項2. 前記装飾層側に、支持フィルム層をさらに有する、項1に記載の加飾シート。
項3. 前記支持フィルム層が、前記装飾層側の凹部を埋めるようにして形成されている、項2に記載の加飾シート。
項4. 前記装飾層と前記支持フィルム層との間に接着層をさらに有する、項2または3に記載の加飾シート。
項5. 前記透明樹脂フィルム層の前記装飾層側とは反対側の表面が平滑である、項1~4のいずれか1項に記載の加飾シート。
項6. 一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層と、
前記透明樹脂フィルム層の前記凹凸形状に沿って形成された装飾層と、
成形樹脂層と、
を備える加飾樹脂成形品であって、
前記凹凸形状は、前記透明樹脂フィルム層側から前記装飾層側に突出した、複数の凸部を備えており、
前記複数の凸部は、それぞれ、多段状に形成されている、加飾樹脂成形品。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、成形後においても、内部の凹凸形状による優れた立体感を備える加飾シートを提供することができる。また、本開示によれば、当該加飾シートを利用した加飾樹脂成形品を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の加飾シートの一形態の断面構造の模式図である。
図2】透明樹脂フィルム層の凸部の多段形状を説明するための模式的断面図である。
図3】本開示の加飾シートの一形態の断面構造の模式図である。
図4】本開示の加飾樹脂成形品の一形態の断面構造の模式図である。
図5】透明樹脂フィルム層の凸部の各段の幅及び最上段の幅の測定方法を説明するための模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.加飾シート
本開示の加飾シートは、一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層と、透明樹脂フィルム層の凹凸形状に沿って形成された装飾層と、を備える加飾シートであって、凹凸形状は、透明樹脂フィルム層側から装飾層側に突出した、複数の凸部を備えており、複数の凸部は、それぞれ、多段状に形成されていることを特徴とする。本開示の加飾シートは、このような構成を有することにより、成形後においても、内部の凹凸形状による優れた立体感が奏される。以下、本開示の加飾シートについて詳述する。
【0013】
加飾シートの積層構造
図1に示されるように、本開示の加飾シート10は、少なくとも、透明樹脂フィルム層1と装飾層2とを備える。透明樹脂フィルム層1は、一方の面に凹凸形状を有する。装飾層2は、透明樹脂フィルム層1の前記凹凸形状に沿って形成されている。すなわち、装飾層2の透明樹脂フィルム層1とは反対側の表面は、凹凸形状を有している。なお、透明樹脂フィルム層1の凹凸形状を有する面とは反対側の面は、平滑であることが好ましい。
【0014】
本開示の加飾シート10は、保形性を高めることなどを目的として、装飾層2側に、必要に応じて支持フィルム層3を備えていてもよい。支持フィルム層3は、装飾層2側の凹凸形状の凹部を埋めるように形成されていてもよい。なお、当該凹部の全てが支持フィルム層3によって埋められていてもよいし、凹部の一部が支持フィルム層3によって埋められており、支持フィルム層3と装飾層2側の凹凸形状との間に空隙が存在していてもよい。
【0015】
また、本開示の加飾シート10において、装飾層2と支持フィルム層3との間に、必要に応じて接着層4を設けてもよい。また、図示を省略するが、支持フィルム層3の装飾層2側とは反対側の表面に、必要に応じて接着層を設けてもよい。
【0016】
本開示の加飾シートの積層構造として、透明樹脂フィルム層/装飾層がこの順に積層された積層構造;透明樹脂フィルム層/装飾層/支持フィルム層がこの順に積層された積層構造;透明樹脂フィルム層/装飾層/接着層/支持フィルム層がこの順に積層された積層構造;透明樹脂フィルム層/装飾層/接着層/支持フィルム層/接着層がこの順に積層された積層構造などが挙げられる。図1に、本開示の加飾シートの積層構造の一態様として、透明樹脂フィルム層/装飾層/支持フィルム層が積層された加飾シートの一形態の断面構造の模式図を示す。図3に、本開示の加飾シートの積層構造の一態様として、透明樹脂フィルム層/装飾層/接着層/支持フィルム層がこの順に積層された加飾シートの一形態の断面構造の模式図を示す。
【0017】
加飾シートの凹凸形状
本開示の加飾シート10は、一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層1と、透明樹脂フィルム層1の当該凹凸形状に沿って形成された装飾層2とを備えている。すなわち、透明樹脂フィルム層1と装飾層2との界面に形成された凹凸形状は、加飾シートの内部の凹凸形状を構成している。本開示の加飾シートを透明樹脂フィルム層1側(すなわち、加飾シート10が成形樹脂層5と積層されて加飾樹脂成形品20となった場合に視認される側)から観察した場合に、当該凹凸形状が透明樹脂フィルム層1を通して視認され、高い立体感を感じることができる。
【0018】
本開示において、透明樹脂フィルム層1の前記凹凸形状は、透明樹脂フィルム層1側から装飾層2側に突出した、複数の凸部1aを備えている。当該凹凸形状において、複数の凸部1aは、それぞれ、多段状に形成されている。すなわち、本開示の加飾シートにおいては、加飾シートの内部に形成されている透明樹脂フィルム層1の凹凸形状について、複数形成された凸部1aを多段状とすることで、ピラミッドを上から覗くような立体的な意匠が表現され、さらに、段階的なエッジが凸部に形成されていることにより、加飾シートの成形時の熱と圧力によって立体的な形状が損なわれることが好適に抑制されており、成形後においても、内部の凹凸形状による優れた立体感を表出することができる。
【0019】
また、本開示の加飾シート10においては、多段状の各凸部1aの高さH、段数、各段の高さh、各段の幅wn、最上段の幅w、さらには凸部1aを平面視した形状などを調整すること、さらには凸部1aを平面視した形状を多角形状や円形とすることによって、個々の凸部を様々な形状の多段状とすることができ、多様な意匠を加飾樹脂成形品表面に付与することが可能である。
【0020】
例えば図2の模式図において、凸部1aの段数は3段、凸部1aの全体の高さH、1段目の高さh1、2段目の高さh2、3段目の高さh3、1段目の幅w1、2段目の幅w2、3段目の幅(すなわち最上段の幅)wである場合を例示している。また、図5には、凸部1aを平面視した場合の形状が菱形である場合の模式図を示している。
【0021】
凸部1aの段数については特に制限されないが、加飾シートを成形した後においても、個々の凸部の形状を多段状とする場合には、各段の幅w、高さhなどにもよるが、例えば2~9段程度とすることが好ましい。
【0022】
本開示の発明の効果を好適に発揮する観点から、凸部1aの高さH(全体の高さ)は、好ましくは3~100μm程度、より好ましくは8~60μm程度が挙げられる。
【0023】
本開示の発明の効果を好適に発揮する観点から、凸部1aの各段の高さhについては好ましくは3~50μm程度、より好ましくは8~30μm程度が挙げられる。
【0024】
また、本開示の発明の効果を好適に発揮する観点から、凸部1aの各段の幅wnは、好ましくは10~200μm程度、より好ましくは20~100μm程度が挙げられる。
【0025】
また、本開示の発明の効果を好適に発揮する観点から、凸部1aの最上段の幅wは、好ましくは10~300μm程度、より好ましくは20~200μm程度が挙げられる。
【0026】
なお、各段の幅及び最上段の幅は、それぞれ、凸部を平面視した場合に、凸部の周縁(外縁)を形成する辺に対して垂直方向(図5の模式図に示すように、例えば、菱形であれば、互いに対向する辺に対して垂直方向であり、円形であれば接線に対して垂直方向である)に測定した値である。
【0027】
なお、図1図3及び図4には、各凸部1aが互いに独立して配置されている態様を例示しているが、各凸部1aは、少なくとも一部において互いに連結されていてもよい。各凸部1aが連結されている態様として、各凸部1aを構成する複数の凸部(多段状の凸部)が互いに連結されて凹凸形状の1つの層を構成している態様が挙げられる。
【0028】
各凸部1aが配置されるパターンについては、特に制限されない。例えば、多数の各凸部1aをマトリックス状に配置することにより、表面に凸部1aがマトリックス状に形成された加飾シート10が得られる。
【0029】
各凸部1aを平面視した形状(外縁の形状)については、特に制限はなく、例えば、多角形状(例えば、三角形、四角形(正方形、長方形、菱形など)、五角形、六角形など)、円形(正円、楕円など)、その他の幾何学模様などであってもよい。
【0030】
本開示の加飾シートにおいて、上記の凹凸形状は、加飾シートを透明樹脂フィルム層1から観察した際に、凹凸形状による高い立体感を付与する少なくとも一部の領域に形成すればよい。すなわち、本開示の加飾シートにおいては、上記の凹凸形状が一部の領域に形成されていてもよいし、全領域に形成されていてもよい。
【0031】
加飾シートを形成する各層の組成
[透明樹脂フィルム層1]
本開示の加飾シートに10おいて、透明樹脂フィルム層1は、通常、加飾シート10及び加飾樹脂成形品20の最表面に位置するように設けられる層である。本開示の加飾シート10の成形性を高める観点からは、透明樹脂フィルム層1の素材としては、好ましくは熱可塑性樹脂が挙げられる。また、本開示の加飾シートを用いた加飾樹脂成形品は、透明樹脂フィルム層1側から観察されることから、前述の凹凸形状による高い立体感を表出させるために、透明樹脂フィルム層1は、透明性を有することが必要である。なお、ここでいう透明には、透明樹脂フィルム層1を透して当該凹凸形状が視認される程度の半透明や、着色透明を含む。
【0032】
透明樹脂フィルム層1は、一方の面に凹凸形状を有している。後述の通り、当該凹凸形状は、エンボス加工により形成されている。例えば、透明樹脂フィルム層1と装飾層2とを積層し、装飾層2側からエンボス加工を施すことにより、装飾層2から透明樹脂フィルム層1に至る凹凸形状を形成することができる。
【0033】
透明樹脂フィルム層1に使用される熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体)、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、又はポリエチレンテレフタレート、成形性ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂、又はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂等が好ましい。これらの中でも、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂がより好ましく、アクリル系樹脂が特に好ましい。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート-ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート-スチレン共重合体等のアクリル系樹脂を単体で又は2種以上混合して用いる。なお、本開示において(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0035】
また、ポリエステル樹脂としては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、非晶性ポリエステル等が使用できる。上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントに高結晶で高融点の芳香族ポリエステル、ソフトセグメントにはガラス転移温度が-70℃以下の非晶性ポリエーテル等を使用したブロックポリマー等があり、該高結晶性で高融点の芳香族ポリエステルには、例えばポリブチレンテレフタレートが使用され、該非晶性ポリエーテルには、ポリテトラメチレングリコール等が使用される。また、前記非晶質ポリエステルとしては、代表的には、エチレングリコール-1,4-シクロヘキサンジメタノール-テレフタル酸共重合体がある。
【0036】
透明樹脂フィルム層1としては、例えば上記のような樹脂からなる単層又は多層構成の樹脂フィルムが使用できる。また、透明樹脂フィルム層1中には、必要に応じて適宜、安定剤、可塑剤、着色剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、体質顔料等の各種添加剤を、物性調整のために添加してもよい。これらの添加剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、透明樹脂フィルム層1は、透明性が損なわれない範囲で着色されていてもよい。透明樹脂フィルム層1の着色には、例えば、後述する装飾層2で例示した公知の着色剤を使用することができる。
【0037】
透明樹脂フィルム層1の厚み(多層の場合は総厚)としては、特に制限されないが、コスト面、加飾樹脂成形品に求められる性能、加飾シートの成形性等の観点から、好ましくは30~300μm程度、より好ましくは100~200μm程度が好ましい。なお、透明樹脂フィルム層1の厚みは、凹凸形状の凹部が形成されていない部分における厚みをいう。
【0038】
透明樹脂フィルム層1の表面、裏面、又は表裏両面には、透明樹脂フィルム層1に接する他層との密着性向上のために、必要に応じ適宜、コロナ放電処理、プラズマ処理、ウレタン樹脂等によるプライマー層形成等の公知の易接着処理を施してもよい。
【0039】
また、透明樹脂フィルム層1の装飾層2側とは反対側の表面の少なくとも一部には、加飾シートの表面物性の向上や艶消し調の意匠とすることなどを目的として、必要に応じて、表面保護層(図示を省略)がさらに設けられていてもよい。
【0040】
表面保護層を形成する樹脂としては、特に制限されず、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。表面保護層を形成する樹脂の具体例としては、二液硬化型樹脂及び艶消し剤を含むマットコート剤からなるものが挙げられる。ここで、二液硬化型樹脂としては、ポリオールとイソシアネートとの2液硬化性の樹脂が好ましい。
【0041】
ポリオールとしては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、エポキシポリオール等、種々のものがあるが、アクリルポリオールが好ましい。このアクリルポリオールとしては、塩化ビニル変性アクリルポリオール、塩化ビニル-酢酸ビニル変性アクリルポリオール、塩素化ポリオレフィン変性アクリルポリオール、メチル(メタ)アクリレート-2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、オクチル(メタ)アクリレート-エチルヘキシル(メタ)アクリレート-2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート-ブチル(メタ)アクリレート-2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート-スチレン共重合体等が挙げられるが、塩化ビニル変性アクリルポリオールが特に好ましい。
【0042】
また、イソシアネートとしては、従来公知の化合物を適宜使用すれば良い。例えば、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート 等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネート等のポリイソシアネートが用いられる。或いはまた、これら各種イソシアネートの付加体又は多量体、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等も用いられる。
【0043】
マットコート剤に用いられる艶消し剤としては、特に制限は無いが、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、アルミノシリケート、硫酸バリウム等の無機物、アクリルビーズ、ポリエチレン、ウレタン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)等の有機高分子等、から成る粒子が用いられる。粒子の平均粒径は好ましくは0.5~20μm、より好ましくは0.5~10μmであって、添加量はマットコート剤基準(溶剤分を除く)で好ましくは2~40質量%、より好ましくは5~30質量%である。なお、粒子の形状は、多面体、球形、鱗片状等である。上記の無機又は有機粒子の内、シリカが好ましい。
【0044】
また、艷消し剤としては、透明性があるものが好ましい。この様な艷消し剤としては、例えば、シリカ、球状シリカ、アルミナ、カオリナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硝子等の粒子からなる無機系艷消し剤、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド(ナイロン)樹脂、尿素樹脂、ケィ素系樹脂等の有機系艷消し剤等が使用できる。艷消し剤の粒子形状は、球状、多面体状、鱗片状等である。また、艷消し剤の粒径1~10μm程度である。艷消し剤の添加量は、要求される低艷レベルに応じた添加量とすれば良い。また、艷消し剤としては、表面保護層が最表面となる関係上、耐摩耗性に優れるものを選定するのも好ましい。球状シリカ、アルミナ等の艷消し剤はその例である。なお、艷消し剤の平均粒径は、通常1~10μmである。
【0045】
[装飾層2]
本開示の加飾シートにおいて、装飾層2は、加飾シートに上記の凹凸形状による高い立体感を付与するために、透明樹脂フィルム層の前記凹凸形状に沿って設けられる層である。例えば図1図3及び図4に示されるように、装飾層2は透明樹脂フィルム層1の凹凸形状に沿って積層されており、装飾層2は、透明樹脂フィルム層1の凹凸形状の凹部1bを埋めている。また、装飾層2の透明樹脂フィルム層1とは反対側の面は、凹部を有している。
【0046】
装飾層2は、絵柄層及び/又はベタ印刷層により形成することができる。絵柄層の絵柄は任意であるが、透明樹脂フィルム層1の凹凸形状によって表現される意匠に合わせて選択することができる。絵柄層の絵柄としては、前述のストライプ柄、カーボン柄などの他、例えば、木目、石目、布目、砂目、皮絞模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、幾何学模様、文字、記号等が、用途に合わせて、1種又は2種以上組み合わせて使用される。
【0047】
装飾層2は、装飾層形成用のインキ組成物を透明樹脂フィルム層1に塗布(印刷)することにより形成することができる。装飾層形成用のインキ組成物は、バインダー樹脂、顔料や染料等の着色剤、これに適宜加える各種添加剤からなる。バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。より選択される1種単独の樹脂、又は2種以上の混合樹脂が用いられる。バインダー樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
また、着色剤としては、例えば、チタン白、亜鉛華、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、クロムバーミリオン、カドミウムレッド、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタンイエロー等の無機顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド、ペリレンレッド等の有機顔料(染料も含む)、又はアルミニウム、真鍮等の鱗片状箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等が使用される。着色剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
装飾層2の具体例としては、メタリック色のベタ印刷層などが挙げられる。
【0050】
装飾層2は、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の印刷法、ロールコート等の公知の塗工法等により、装飾層形成用のインキを透明樹脂フィルム層1の上に塗布することにより形成することができる。
【0051】
また、装飾層2の厚みとしては、特に制限されないが、好ましくは0.5~20μm程度、より好ましくは1~10μm程度が挙げられる。なお、装飾層2の厚みは、凹凸形状の凹部が形成されていない部分における厚みをいう。
【0052】
また、装飾層2は、金属薄膜層であってもよい。金属薄膜層を形成する金属としては、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。金属薄膜層の形成方法は、特に制限されず、例えば上記の金属を用いた、真空蒸着法などの蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。この場合の装飾層2(金属薄膜層)の厚みとしては、特に限定されないが、加飾シートの意匠性や成形性を高める観点からは、光学濃度(OD値)が0.6~1.8程度、好ましくは0.8~1.5程度が挙げられる。また、隣接する層との密着性を向上させるため、金属薄膜層の表面や裏面には公知の樹脂を用いた接着層設けてもよい。
【0053】
[支持フィルム層3]
本開示の加飾シートにおいて、支持フィルム層3は、支持部材としての役割を果たすために、必要に応じて、加飾シート10の装飾層2側(透明樹脂フィルム層1とは反対側)に設けられる層である。後述のインサート成形法による加飾樹脂成形品の製造に用いる場合、本開示の加飾シートは支持フィルム層3を有していることが好ましい。
【0054】
支持フィルム層3の素材としては、特に制限されないが、例えば、ABS樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン樹脂が好ましい。これらの樹脂の中でも、ABS樹脂及びポリプロピレン樹脂が特に好ましい。また、成形樹脂層5を構成する成形用樹脂がABS樹脂である場合はABS樹脂が好ましく、ポリプロピレン樹脂である場合はポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0055】
図3から図5に示されるように、本開示の加飾シートにおいて、支持フィルム層3は、装飾層2側の凹凸形状の凹部を埋めるように積層されていてもよい。当該凹部を支持フィルム層3で埋める方法としては、例えば、支持フィルム層3を加熱により軟化させてから凹凸形状が形成された面の上に積層する方法が挙げられる。
【0056】
本開示の加飾シート10において装飾層2側の凹凸形状の凹部(装飾層2の凹凸形状の凹部、後述の接着層4をさらに有する場合には接着層4の凹凸形状の凹部など)の全てが支持フィルム層3によって埋められていてもよいし、凹部の一部が支持フィルム層3によって埋められており、支持フィルム層3と装飾層2側の凹凸形状との間に空隙が存在していてもよい。
【0057】
支持フィルム層3の厚みとしては、特に制限されず、例えば0.1~0.5mm程度、より好ましくは0.2~0.4mm程度が挙げられる。なお、支持フィルム層3の厚みは、加飾シート10の装飾層2側の凹凸形状の凹部を埋めていない部分の厚みをいう。
【0058】
[接着層4]
本開示の加飾シート10においては、装飾層2と支持フィルム層3との間の密着性を高めることなどを目的として、これらの層間に、必要に応じて接着層4を設けてもよい。なお、図示を省略するが、支持フィルム層3の装飾層2側とは反対側の表面に、必要に応じて接着層を設けてもよい。
【0059】
本開示において、接着層4が装飾層2と支持フィルム層3との間に設けられる場合には、装飾層2の透明樹脂フィルム層1側とは反対側からエンボス加工によって凹凸形状が形成された後に、当該凹凸形状の上から接着層を形成することができる。
【0060】
接着層を4構成する接着剤の素材としては、例えば、イソシアネートを硬化剤とする2液硬化型ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、及び(メタ)アクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体との混合物などが挙げられる。接着層での(メタ)アクリル樹脂や塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体としては、上述の装飾層2と同様なものを使用すればよい。支持フィルム層3がABS樹脂又はポリオレフィン樹脂の場合は、接着層としてイソシアネートを硬化剤とする2液硬化型ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィンなどを用いることが好ましい。
【0061】
また、接着層4は、上記のような接着剤を、グラビア印刷、ロールコート等の公知の印刷又は塗工法により形成することができる。接着層の厚さとしては、特に制限されず、通常は1~50μm程度である。
【0062】
エンボス加工
本開示の加飾シート10において、前述した内部の凹凸形状は、エンボス加工により形成することができる。具体的には、少なくとも透明樹脂フィルム層1及び装飾層2を有するシートを用意し、装飾層2側から当該シートにエンボス加工を施し、透明樹脂フィルム層1に凹部が至る凹凸形状を形成する。エンボス版によって賦形される凸部の形状を多段状とすることにより、透明樹脂フィルム層1側から装飾層2側に突出した、多段状の凸部1aを複数備える凹凸形状を形成することができる。
【0063】
エンボス加工を施す方法としては、通常、加熱加圧によるエンボス加工法が用いられる。加熱加圧によるエンボス加工法は、シートの表面を加熱軟化させ、エンボス版で加圧してエンボス版の凹凸模様を賦形し、冷却して固定化する方法である。エンボス加工に使用されるエンボス版の形状が、透明樹脂フィルム層1及び装飾層2に形成される凹凸形状に対応している。エンボス加工には、例えば、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機を用いることができる。
【0064】
加熱加圧によるエンボス加工法では、例えば、装飾層2上にエンボス加工を行う方法と、凹凸形状が付された透明樹脂フィルム層1の凹凸形状の上から、凹凸形状に沿うようにして装飾層2を塗工する方法がある。例えば、エンボス加工によって、エンボス版が装飾層2から透明樹脂フィルム層1まで到達することにより、透明樹脂フィルム層1に至る凹部を形成することができる。具体的には、少なくとも装飾層2及び透明樹脂フィルム層1を含む層を有するシートを用意し、装飾層2の上から、エンボス加工を施して、多段状の凸部1aを複数備える凹凸形状が設けられた領域を形成する。
【0065】
エンボス加工における加熱温度としては、特に制限されないが、好ましくは180℃~220℃程度が挙げられる。
【0066】
前記の通り、透明樹脂フィルム層1の凹凸形状を有する面とは反対側の面は、平滑であることが好ましく、鏡面加工によって当該平滑性を高めることができる。透明樹脂フィルム層1の表面の鏡面加工は、鏡面ローラなどを用いて行うことができる。具体的には、エンボス加工を行った後のシートを、加熱した鏡面ローラとゴムローラとの間に通して熱圧を加えることで行うことができる。透明樹脂フィルム層1の表面には鏡面ローラを押しつけ、該シートの裏側からはゴムシートで押さえる。なお、鏡面ローラは、鉄芯等の表面にクロムメッキ等により表面を鏡面とした金属製のローラ等を使用でき、ゴムローラは鉄芯等の表面をシリコーンゴム等のゴムで被覆したローラを使用できる。
【0067】
鏡面加工によって、透明樹脂フィルム層1の表側には優れた鏡面性を付与できる。なお、該鏡面性としては、好ましくは、JIS B0601(1996年)の算術平均粗さRaで1μm以下、より好ましくは0.1μm以下とするのがよい。すなわち、鏡面加工された面は、その表面が上記算術平均粗さRaで好ましくは1μm以下、より好ましくは0.1μm以下となった面である。
【0068】
2.加飾樹脂成形品
本開示の加飾樹脂成形品20は、本開示の加飾シート10と成形樹脂とを一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本開示の加飾樹脂成形品20は、少なくとも、一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層1と、透明樹脂フィルム層1の凹凸形状に沿って形成された装飾層2と、成形樹脂層5とを備える加飾樹脂成形品であって、当該凹凸形状は、透明樹脂フィルム層1側から装飾層2側に突出した、高さの異なる複数の凸部1aを備えており、当該複数の凸部1aは、それぞれ、多段状に形成されている。また、本開示の加飾シート10について説明したとおり、加飾樹脂成形品には、支持フィルム層3、接着層4、さらには支持フィルム層3の装飾層2側とは反対側の表面に設けられる接着層などが設けられていてもよい。
【0069】
本開示の加飾樹脂成形品は、例えば、本開示の加飾シートを用いて、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法により作製される。これらの射出成形法の中でも、好ましくはインサート成形法及び射出成形同時加飾法が挙げられる。また、本開示の加飾樹脂成形品は、真空圧着法等の、予め用意された立体的な樹脂成形体(成形樹脂層)上に、本開示の加飾シートを貼着する加飾方法によっても作製することができる。
【0070】
インサート成形法では、まず、真空成形工程において、本開示の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
【0071】
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本開示の加飾樹脂成形品が製造される。
本開示の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、
真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び
成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を射出成形型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する一体化工程。
【0072】
インサート成形法における真空成形工程では、加飾シートを加熱して成形してもよい。この時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、通常100~250℃程度、好ましくは130~200℃程度とすることができる。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180~320℃程度、好ましくは220~280℃程度とすることができる。
【0073】
また、射出成形同時加飾法では、本開示の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に本開示の加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
【0074】
より具体的には、下記の工程を含む射出成形同時加飾法によって、本開示の加飾樹脂成形品が製造される。
本開示の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、加飾シートの透明樹脂フィルム層1とは反対側の表面が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する予備成形工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂を射出、充填して固化させることにより樹脂成形体を形成し、樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる一体化工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す取出工程。
【0075】
射出成形同時加飾法の予備成形工程において、加飾シートの加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、通常70~130℃程度とすることができる。また、射出成形工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180~320℃程度、好ましくは220~280℃程度とすることができる。
【0076】
真空圧着法では、まず、上側に位置する第1真空室及び下側に位置する第2真空室からなる真空圧着機内に、本開示の加飾シート及び樹脂成形体を、加飾シートが第1真空室側、樹脂成形体が第2真空室側となるように、且つ加飾シートの透明樹脂フィルム層1とは反対側が樹脂成形体側に向くように真空圧着機内に設置し、2つの真空室を真空状態とする。樹脂成形体は、第2真空室側に備えられた、上下に昇降可能な昇降台上に設置される。次いで、第1の真空室を加圧すると共に、昇降台を用いて成形体を加飾シートに押し当て、2つの真空室間の圧力差を利用して、加飾シートを延伸しながら樹脂成形体の表面に貼着する。最後に2つの真空室を大気圧に開放し、必要に応じて加飾シートの余分な部分をトリミングすることにより、本開示の加飾樹脂成形品を得ることができる。
【0077】
真空圧着法においては、上記の成形体を加飾シートに押し当てる工程の前に、加飾シートを軟化させて成形性を高めるため、加飾シートを加熱する工程を備えることが好ましい。当該工程を備える真空圧着法は、特に真空加熱圧着法と呼ばれることがある。当該工程における加熱温度は、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、通常60~200℃程度とすることができる。
【0078】
本開示の加飾樹脂成形品において、成形樹脂層は、用途に応じた樹脂を選択して形成すればよい。成形樹脂層を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
【0079】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
本開示の加飾樹脂成形品は、凹凸形状による、凹凸感、立体感、奥行き感などの高い立体感を有しており、さらに高い表面平滑性を有しているので、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
【実施例0082】
以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し本開示は実施例に限定されるものではない。
【0083】
[実施例1~5及び比較例1]
<加飾シートの製造>
透明樹脂フィルム層として、両面が平滑なアクリルフィルム(厚さ125μm)を用意した。透明樹脂フィルム層の一方面に、インキ組成物(ポリブチルメタクリレート/塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体)をグラビア印刷により塗布し、装飾層(厚み5μm)を形成した。次に、装飾層の上から、エンボス版(平面視が菱形、三角形、又は四角形(表1を参照)の複数の凹部が、エンボス版の凸部によって形成されるエンボス版であって、当該凸部の形状が透明樹脂フィルム層の凸部の形状に対応する)を用いてエンボス加工を行い、凹凸形状を形成した。実施例5については、装飾層の上から、さらに接着剤(ポリエステル樹脂組成物 ポリエステルポリオール:イソシアネート=100:10)をグラビア印刷により塗布し、接着層(厚み30μm)を形成した。
【0084】
各実施例及び比較例で用いたエンボス版は、それぞれ異なっている。実施例1~5では、エンボス版の凸部(すなわち、透明樹脂フィルム層の凸部)が多段状に形成されており、凸部の段数、高さH、各段の高さh、各段の幅w1~w6、最上段の幅wは、それぞれ、表1に記載のとおりである。例えば、実施例1は、透明樹脂フィルム層の各凸部は、平面視菱形で多段状(階段状)に形成されており、凸部としての高さHは76μm、各段の高さhはそれぞれ11μm、各段の幅wnはそれぞれ35μm、最上段の幅wは100μmであった。なお、各段の幅及び最上段の幅は、それぞれ、凸部を平面視した場合に、凸部の周縁(外縁)を形成する辺に対して垂直方向(図5の模式図に示すように、例えば、菱形であれば、互いに対向する辺に対して垂直方向)に測定した値である。結果を表1に示す。
【0085】
<加飾樹脂成形品の製造>
加飾シートを真空成形機(布施真空社製「VPF-T1」)に配し、ヒーターにて表面温度が160℃になるまで加熱し、真空成形を行った。成形後の加飾シートを取り出し、トリミングした後、インサート成形により、装飾層側と成形樹脂とを一体化して加飾樹脂成形品を得た。成形樹脂としては、ポリカーボネートとABS樹脂の混合物(商品名:サイコロイIP1000BK GEプラスチック製)を用いた。
【0086】
(立体感の評価)
上記で得られた加飾シート、成形後の加飾シート、及び加飾樹脂成形品をそれぞれ試験サンプルとし、透明樹脂フィルム層が上になるようにして、白色光の蛍光灯下の水平面に置いた。次に、試験サンプルから約50cm離れ、水平面に対して、90°(真上)の方向から目視で観察し、立体感を以下の評価基準に従い評価した。評価基準は以下の通りである。
A+:凹凸形状が明瞭に視認でき、目視による立体感が強く感じられた。
A:凹凸形状が視認でき、目視により立体感が感じられた。
B:凹凸形状がやや視認し難いが、凹凸形状による立体感の意匠が表現されていることは確認できた。
C:凹凸形状が確認できなかった。
【0087】
【表1】
【符号の説明】
【0088】
1 透明樹脂フィルム層
1a 凸部
2 装飾層
3 支持フィルム層
4 接着層
5 成形樹脂層
10 加飾シート
20 加飾樹脂成形品
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に凹凸形状を有する透明樹脂フィルム層と、
前記透明樹脂フィルム層の前記凹凸形状に沿って形成された装飾層と、
成形樹脂層と、
を備える加飾樹脂成形品であって、
前記凹凸形状は、前記透明樹脂フィルム層側から前記装飾層側に突出した、複数の凸部を備えており、
前記複数の凸部は、それぞれ、多段状に形成されている、加飾樹脂成形品。