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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010551
(43)【公開日】2025-01-22
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20250115BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
E02F9/24 J
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201164
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003BA07
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D015GA03
2D015GB01
2D015GB03
(57)【要約】
【課題】オペレータの不注意や走行操作の誤りによる転倒を防止することが可能な作業機械を提供する。
【解決手段】走行制御装置20は、相対角度検出装置10からの相対角度情報に基づいて、下部走行体2が走行する可能性のある領域を走行領域31a,31bとして設定し、環境認識装置17からの周囲環境情報に基づいて、下部走行体2の進入が禁止される領域を進入禁止領域30として設定し、走行領域31a,31bと進入禁止領域30とに重複領域が存在する場合に、走行操作装置9の操作を無効とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体上に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、
前記下部走行体の動作を指示する走行操作装置と、
前記走行操作装置の操作に応じて前記下部走行体の動作を制御する走行制御装置とを備えた作業機械において、
前記下部走行体に対する前記上部旋回体の相対角度を検出する相対角度検出装置と、
前記作業機械の周囲の環境を認識する環境認識装置とを備え、
前記走行制御装置は、
前記相対角度検出装置からの相対角度情報に基づいて、前記下部走行体が走行する可能性のある領域を走行領域として設定し、
前記環境認識装置からの周囲環境情報に基づいて、前記下部走行体の進入が禁止される領域を進入禁止領域として設定し、
前記走行領域と前記進入禁止領域とに重複領域が存在する場合に、前記走行操作装置による操作を無効とする
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記走行制御装置は、前記走行領域として、前記走行操作装置から前記下部走行体の前進側の走行動作が指示された場合に前記下部走行体が進入する可能性のある前進領域と、前記走行操作装置から前記下部走行体の後進側の走行動作が指示された場合に前記下部走行体が進入する可能性のある後進領域とを設定し、
前記前進領域と前記進入禁止領域とに重複領域が存在する場合は、前記走行操作装置による前進側の走行操作を無効とし、
前記後進領域と前記進入禁止領域とに重複領域が存在する場合は、前記走行操作装置による後進側の走行操作を無効とする
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記環境認識装置は、前記作業機械の周囲に存在する物体までの距離を測定する測距センサである
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
前記測距センサは、前記上部旋回体に、前記下部走行体の接地面側に傾斜して設置されており、
前記走行制御装置は、前記測距センサが距離を測定できなかった領域を前記進入禁止領域として設定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械において、
前記走行制御装置は、
前記下部走行体の接地面よりも低い領域を機体下方空間として設定し、
前記機体下方空間と前記測距センサが距離を測定できなかった空間との重複空間を進入禁止空間として設定し、
前記進入禁止空間を前記上部旋回体の旋回軸に直交する平面に投影して得られる2次元領域を前記進入禁止領域として設定する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部走行体と上部旋回体とを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
下部走行体と上部旋回体を有する作業機械においては、下部走行体と上部旋回体の相対角度によって上部旋回体における前方と、下部走行体における前方とが一致しない。そのため、オペレータが前進と後進を誤って走行操作を行ってしまうケースが起こり得る。また、作業を行う場所は必ずしも平坦ではなく、傾斜地や高所にて作業が行われる際に、走行操作の誤操作によって機械が転倒する可能性がある。特許文献1では、下部走行体に対する上部旋回体の相対角度(旋回角度)をオペレータの見やすい位置に表示することで誤操作を防止する方法が提案されている。一方、特許文献2では、機械に取り付けたステレオカメラを使用して機械の周囲にある斜面や崖の情報を抽出してオペレータに通知する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-73414号公報
【特許文献2】特許第6386213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2によれば、下部走行体と上部旋回体の相対角度または周囲の斜面や崖の情報を表示装置等に表示することによりオペレータが容易に認識することが可能となる。しかし、オペレータは常に表示装置を見ているわけではなく、作業機の動作に集中していることが多い。そのため、オペレータへの表示だけでは走行操作の誤りによる転倒を防止することはできない。また、周囲に斜面や崖があった場合に全ての走行操作を禁止してしまうと、リスクの低い方向へ走行することもできなくなり、安全性が低下するといった課題が生じる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、オペレータの不注意や走行操作の誤りによる転倒を防止することが可能な作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、前記下部走行体の動作を指示する走行操作装置と、前記走行操作装置の操作に応じて前記下部走行体の動作を制御する走行制御装置とを備えた作業機械において、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の相対角度を検出する相対角度検出装置と、前記作業機械の周囲の環境を認識する環境認識装置とを備え、前記走行制御装置は、前記相対角度検出装置からの相対角度情報に基づいて、前記下部走行体が走行する可能性のある領域を走行領域として設定し、前記環境認識装置からの周囲環境情報に基づいて、前記下部走行体の進入が禁止される領域を進入禁止領域として設定し、前記走行領域と前記進入禁止領域とに重複領域が存在する場合に、前記走行操作装置の操作を無効とするものとする。
【0007】
以上のように構成した本発明によれば、オペレータが進入禁止領域の存在に気づいていない場合や、オペレータが進入禁止領域の存在を認識しつつも誤った走行操作を行った場合に、下部走行体が進入禁止領域に進入してしまうことを防止できる。これにより、オペレータの不注意や走行操作の誤りによる転倒を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る作業機械によれば、オペレータの不注意や走行操作の誤りによる転倒を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施例に係る油圧ショベルの側面図である。
図2】油圧ショベルを上方から見た図である。
図3】油圧ショベルに搭載された走行制御システムの構成を示す図である。
図4】進入禁止領域設定部により設定された進入禁止領域の一例を示す図である。
図5】上部旋回体の下部走行体に対する相対角度が0度の場合の走行領域の一例を示す図である。
図6】上部旋回体の下部走行体に対する相対角度が180度の場合の走行領域の一例を示す図である。
図7】走行判定部の処理を示すフローチャートである。
図8】走行領域と進入禁止領域とに重複領域が存在するか否かの判定方法を示す図である。
図9】本発明の第2の実施例における進入禁止領域の設定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る作業機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例0011】
図1は、本発明の第1の実施例に係る油圧ショベルの側面図である。図1に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2上に360度旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に上下、前後方向に回動可能に連結された作業装置4とを備えている。上部旋回体3は、旋回装置5により左右方向に旋回駆動される。下部走行体2は、走行装置6により前後方向に走行可能である。走行装置6は、油圧モータなどの走行駆動装置7(図3に示す)により駆動される。
【0012】
上部旋回体3の前部左側には、キャブ8が設けられている。キャブ8には、下部走行体2の動作を指示するための走行操作レバー9と、上部旋回体3および作業装置4の動作を指示するための作業操作レバー(図示せず)などが配置されている。上部旋回体3の旋回軸X付近には、上部旋回体3の下部走行体2に対する相対角度(旋回角度)を検出する相対角度検出装置としての角度センサ10が取り付けられている。本実施形態では、下部走行体2の前方と上部旋回体3の前方とが一致するとき(図1に示す状態)の相対角度を0度とする。
【0013】
作業装置4は、上部旋回体3の前部中央に上下方向に回動可能に連結されたブーム11と、ブーム11の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結されたアーム12と、アーム12の先端部に上下、前後方向に回動可能に連結されたバケット13と、ブーム11を駆動するブームシリンダ14と、アーム12を駆動するアームシリンダ15と、バケット13を駆動するバケットシリンダ16とを有する。
【0014】
図2は、油圧ショベル1を上方から見た図である。上部旋回体3の上部の隅付近には、環境認識装置17がそれぞれ設置されている。環境認識装置17は、物体検知範囲18が上部旋回体3の周囲をカバーするように配置されている。環境認識装置17は、例えば測距センサ(LiDAR等)で構成され、油圧ショベル1の周囲の地形を計測することができる。なお、環境認識装置17の数や配置は、車格や作業環境などに応じて変更しても良い。
【0015】
図3は、油圧ショベル1に搭載された走行制御システムの構成を示す図である。図3において、走行制御システム100は、走行装置6と、走行駆動装置7と、走行操作装置9と、相対角度検出装置10と、環境認識装置17と、走行制限機能設定装置19と、走行制御装置20とで構成される。走行制御装置20は、進入禁止領域設定部21と、走行領域設定部22と、走行判定部23と、走行駆動制御部24とを有する。走行制御装置20は、例えばCPU、メモリ、記憶装置、入出力インタフェースなどを有し、CPUが記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより各処理部21~24の機能を実現する。
【0016】
進入禁止領域設定部21は、環境認識装置17からの周囲環境情報に基づいて、下部走行体2が進入した場合に機体が転倒する可能性がある領域(急斜面や穴など)を進入禁止領域として設定する。図4に進入禁止領域の一例を示す。図4に示す例では、上部旋回体3の後方に進入禁止領域30が設定されている。ここで、進入禁止領域30は、機体が転倒する可能性がある地形部分の3次元データを旋回軸Xと直交する平面(旋回平面)に投影して得られる2次元領域である。
【0017】
図3に戻り、走行領域設定部22は、下部走行体2が進入し得る領域(走行領域)を算出し、走行領域として設定する。図5に相対角度が0度の場合の走行領域の一例を示し、図6に相対角度が180度の場合の走行領域の一例を示す。図5および図6において、走行領域は、前進領域31aと後進領域31bとで構成される。前進領域31aは、走行操作装置9により前進側の走行動作が指示された場合に下部走行体2が進入する可能性のある3次元領域を旋回平面に投影して得られる2次元領域である。後進領域31bは、走行操作装置9により後進側の走行動作が指示された場合に下部走行体2が進入する可能性のある3次元領域を旋回平面に投影して得られる2次元領域である。走行領域31a,31bの形状や大きさは、下部走行体2の走行モード(高速、低速)や環境条件等を考慮して適宜設定される。図5および図6に示す例では、下部走行体2の蛇行を考慮し、走行領域31a,31bがそれぞれ扇形に設定されている。図5に示す例では、上部旋回体3の前後方向が下部走行体2の前後方向と一致しているため、上部旋回体3の前方に前進領域31aが設定され、上部旋回体3の後方に後進領域31bが設定されている。この場合、オペレータから見た前後方向と下部走行体2の前後方向とが一致するため、オペレータが走行操作を誤る可能性は低い。一方、図6に示す例では、上部旋回体3の前後方向が下部走行体2の前後方向に対して反転しているため、上部旋回体3の前方に後進領域31bが設定され、上部旋回体3の後方に前進領域31aが設定されている。この場合、オペレータから見た前後方向と下部走行体2の前後方向とが一致しないため、オペレータが走行操作を誤る可能性が高くなる。
【0018】
図3に戻り、走行判定部23は、走行制限機能設定装置19により走行制限機能が有効に設定されている場合は、走行領域31a,31bと進入禁止領域30との位置関係に基づいて、前進側の走行操作および後進側の走行操作の有効/無効を判定する。ここでいう走行制限機能とは、周囲の環境に応じて油圧ショベル1の走行動作を制限する機能である。走行制限機能設定装置19は、走行制御装置20に対して走行制限機能の有効/無効を指示する入力インタフェースであり、キャブ8に配置されたスイッチやタッチパネル等で構成される。
【0019】
走行駆動制御部24は、走行判定部23により前進側の走行操作が有効と判定された場合は、走行操作装置9の前進側の操作量に応じて走行装置6が駆動されるように走行駆動装置7を制御し、前進側の走行操作が無効と判定された場合は、走行装置6の前進側の駆動が停止するように走行駆動装置7を制御する。同様に、後進側の走行操作が有効と判定された場合は、走行操作装置9の後進側の操作量に応じて走行装置6が駆動されるように走行駆動装置7を制御し、後進側の走行操作が無効と判定された場合は、走行装置6の後進側の駆動が停止するように走行駆動装置7を制御する。
【0020】
図7は、走行判定部23の処理を示すフローチャートである。以下、各ステップを順に説明する。
【0021】
走行判定部23は、まず、走行制限機能が有効か否かを判定する(ステップS101)。ステップS101でNO(走行制限機能が無効である)と判定した場合は、走行操作を有効と判定し(ステップS102)、当該フローを終了する。これにより、走行駆動制御部24は、走行操作装置9の操作量に応じて走行装置6が駆動されるように走行駆動装置7を制御する。
【0022】
ステップS101でYES(走行制限機能が有効である)と判定した場合は、進入禁止領域設定部21により進入禁止領域30が設定されているか否かを判定する(ステップS103)。ステップS103でNO(進入禁止領域30が設定されていない)と判定した場合は、走行操作を有効と判定し(ステップS102)、当該フローを終了する。これにより、走行駆動制御部24は、走行操作装置9の操作量に応じて走行装置6が駆動されるように走行駆動装置7を制御する。
【0023】
ステップS103でYES(進入禁止領域30が設定されている)と判定した場合は、前進領域31aと進入禁止領域30とに重複領域が存在するか否かを判定する(ステップS104)。ここで、走行領域(前進領域31aおよび後進領域31b)と進入禁止領域30とに重複領域が存在するか否かの判定方法について図8を用いて説明する。走行領域31a,31bは下部走行体2を基準とする座標系で設定されるが、進入禁止領域30は上部旋回体3を基準とする座標系で設定されている。そのため、走行領域31a,31bと進入禁止領域30とに重複領域が存在するか否かを判定する際は、基準となる座標系をいずれか一方にそろえる必要がある。本実施例では、図8に示すように、走行領域31a,31bを旋回軸X周りに相対角度θだけ回転させることにより、上部旋回体3を基準とする座標系で走行領域31a,31bと進入禁止領域30との重複領域の有無を判定する。図8に示す例では、後進領域31bと進入禁止領域30とに重複領域が存在している。
【0024】
図7に戻り、ステップS104でNO(前進領域31aと進入禁止領域30とに重複領域が存在しない)と判定した場合は、前進側の走行操作を有効と判定する(ステップS105)。これにより、走行駆動制御部24は、走行操作装置9により前進側の走行動作が指示された場合に、その操作量に応じて走行装置6が駆動されるように走行駆動装置7を制御する。
【0025】
ステップS104でYES(前進領域31aと進入禁止領域30とに重複領域が存在する)と判定した場合は、前進側の走行操作を無効と判定する(ステップS106)。これにより、走行駆動制御部24は、走行操作装置9により前進側の走行動作が指示された場合に、走行駆動装置7の駆動を停止する。
【0026】
ステップS105またはステップS106に続き、後進領域31bと進入禁止領域30とに重複領域が存在するか否かを判定する(ステップS107)。
【0027】
ステップS107でNO(後進領域31bと進入禁止領域30とに重複領域が存在しない)と判定した場合は、後進側の走行操作を有効と判定し(ステップS108)、当該フローを終了する。これにより、走行駆動制御部24は、走行操作装置9により後進側の走行動作が指示された場合に、その操作量に応じて走行装置6が駆動されるように走行駆動装置7を制御する。
【0028】
ステップS107でYES(後進領域31bと進入禁止領域30とに重複領域が存在する)と判定した場合は、後進側の走行操作を無効と判定し(ステップS109)、当該フローを終了する。これにより、走行駆動制御部24は、走行操作装置9により後進側の走行動作が指示された場合に、走行装置6が停止するように走行駆動装置7を制御する。
【0029】
(まとめ)
本実施例では、下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に取り付けられた上部旋回体3と、下部走行体2の動作を指示する走行操作装置9と、走行操作装置9の操作に応じて下部走行体2の動作を制御する走行制御装置20とを備えた作業機械1において、下部走行体2に対する上部旋回体3の相対角度θを検出する相対角度検出装置10と、作業機械1の周囲の環境を認識する環境認識装置17とを備え、走行制御装置20は、相対角度検出装置10からの相対角度情報に基づいて、下部走行体2が走行する可能性のある領域を走行領域31a,31bとして設定し、環境認識装置17からの周囲環境情報に基づいて、下部走行体2の進入が禁止される領域を進入禁止領域30として設定し、走行領域31a,31bと進入禁止領域30とに重複領域が存在する場合に、走行操作装置9による操作を無効とする。
【0030】
以上のように構成した本実施例によれば、オペレータが進入禁止領域30の存在に気付いていない場合や、オペレータが進入禁止領域30の存在を認識しつつも誤った走行操作を行った場合に、下部走行体2が進入禁止領域30に進入してしまうことを防止できる。これにより、オペレータの不注意や走行操作の誤りによる転倒を防止することが可能となる。
【0031】
また、本実施例における走行制御装置20は、走行領域31a,31bとして、走行操作装置9から下部走行体2の前進側の走行動作が指示された場合に下部走行体2が進入する可能性のある前進領域31aと、走行操作装置9から下部走行体2の後進側の走行動作が指示された場合に下部走行体2が進入する可能性のある後進領域31bとを設定し、前進領域31aと進入禁止領域30とに重複領域が存在する場合は、走行操作装置9による前進側の走行操作を無効とし、後進領域31bと前記進入禁止領域30とに重複領域が存在する場合は、走行操作装置9による後進側の走行操作を無効とする。これにより、進入禁止領域30に進入する方向の走行動作のみが制限され、進入禁止領域30に進入しない方向の走行動作は可能となるため、作業効率の低下を抑制することができる。
【実施例0032】
本発明の第2の実施例に係る油圧ショベル1について、図9を参照して説明する。
【0033】
図9は、本実施例における進入禁止領域30の設定方法を示す図である。図9において、環境認識装置17は、LiDAR等の測距センサで構成されており、上部旋回体3の上部に、下部走行体2の接地面40側に傾斜して設置されている。走行制御装置20は、接地面40よりも所定の高さHだけ下方に機体下方空間41を設定し、物体検知範囲18のうち物体が検知されなかった空間と機体下方空間41との重複空間を進入禁止空間42として設定し、進入禁止空間42を旋回平面に投影して得られる2次元領域を進入禁止領域30(図4に示す)として設定する。図9に示す例では、上部旋回体3の後方に斜面が存在しており、当該斜面を所定の高さHだけ下った箇所に進入禁止空間42が設定されている。
【0034】
(まとめ)
本実施例における環境認識装置17は、作業機械1の周囲に存在する物体までの距離を測定する測距センサである。
【0035】
以上のように構成した本実施例によれば、環境認識装置17として測距センサを備えた作業機械1において、第1の実施例と同様の効果を達成することができる。
【0036】
また、本実施例における測距センサ17は、上部旋回体3に、下部走行体2の接地面40側に傾斜して設置されており、走行制御装置20は、測距センサ17が距離を測定できなかった領域を進入禁止領域30として設定する。これにより、測距センサ17が失報した領域が進入禁止領域30として設定されるため、測距センサ17の失報による進入禁止領域30の設定漏れを防ぐことができる。
【0037】
また、本実施例における走行制御装置20は、下部走行体2の接地面40よりも低い領域を機体下方空間41として設定し、機体下方空間41と測距センサ17が距離を測定できなかった空間との重複空間を進入禁止空間42として設定し、進入禁止空間42を上部旋回体3の旋回軸Xに直交する平面に投影して得られる2次元領域を進入禁止領域30として設定する。これにより、機体下方空間41を作業機械1が転倒しない程度の高さ分だけ下部走行体2の下方に設定する設定することで、転倒する可能性のある斜面や段差に対してのみ走行動作が制限されるため、作業効率の低下を抑制することができる。
【0038】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、本発明の適用対象は油圧ショベルに限定されず、下部走行体と上部旋回体とを備えた作業機械全般に適用可能である。また、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。さらに、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…油圧ショベル(作業機械)、2…下部走行体、3…上部旋回体、4…作業装置、5…旋回装置、6…走行装置、7…走行駆動装置、8…キャブ、9…走行操作レバー(走行操作装置)、10…角度センサ(相対角度検出装置)、11…ブーム、12…アーム、13…バケット、14…ブームシリンダ、15…アームシリンダ、16…バケットシリンダ、17…測距センサ(環境認識装置)、18…物体検知範囲、19…走行制限機能設定装置、20…走行制御装置、21…進入禁止領域設定部、22…走行領域設定部、23…走行判定部、24…走行駆動制御部、30…進入禁止領域、31a…前進領域(走行領域)、31b…後進領域(走行領域)、40…接地面、41…機体下方空間、42…進入禁止空間、100…走行制御システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9