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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105556
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】発光デバイスおよび表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/19 20230101AFI20250703BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20250703BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20250703BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20250703BHJP
   H10K 50/81 20230101ALI20250703BHJP
【FI】
H10K50/19
H10K50/16
H10K50/12
H05B33/12 B
H10K50/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024228746
(22)【出願日】2024-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2023223533
(32)【優先日】2023-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024035811
(32)【優先日】2024-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
(72)【発明者】
【氏名】大澤 信晴
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 広美
(72)【発明者】
【氏名】木戸 裕允
(72)【発明者】
【氏名】松原 友恵
(72)【発明者】
【氏名】林 有毅
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB06
3K107BB07
3K107CC04
3K107CC09
3K107CC14
3K107CC32
3K107CC33
3K107CC35
3K107DD21
3K107DD69
3K107DD74
3K107DD78
3K107DD84
3K107DD86
3K107FF13
(57)【要約】
【課題】特性の良好な発光デバイスを提供する。
【解決手段】第1の電極と、第2の電極と、その間に位置する中間層と、第1の発光層と、第2の発光層と、第1の電子輸送層と、第2の電子輸送層と、を有する発光デバイスであって、第1の発光層は、第1の電極と中間層との間に位置し、第2の発光層は、中間層と第2の電極との間に位置し、第1の電子輸送層は、第1の発光層と中間層との間に位置し、第2の電子輸送層は、第2の発光層と第2の電極との間に位置し、第2の電子輸送層は、トリアジン骨格を含む第1の有機化合物を有し、中間層は、フェナントロリン骨格を含む第2の有機化合物を有し、第1の発光層と第2の発光層は同じ発光中心物質を有し、第1の発光層および第2の発光層は、発光デバイスに隣接する複数の他の発光デバイスのうち、少なくとも一の発光デバイスが有する発光層と分離されている発光デバイスである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
中間層と、
第1の発光層と、
第2の発光層と、
第1の電子輸送層と、
第2の電子輸送層と、を有する発光デバイスであって、
前記中間層は前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置し、
前記第1の発光層は、前記第1の電極と前記中間層との間に位置し、
前記第2の発光層は、前記中間層と前記第2の電極との間に位置し、
前記第1の電子輸送層は、前記第1の発光層と前記中間層との間に位置し、
前記第2の電子輸送層は、前記第2の発光層と前記第2の電極との間に位置し、
前記第2の電子輸送層は、トリアジン骨格を含む第1の有機化合物を有し、
前記中間層は、フェナントロリン骨格を有する第2の有機化合物と、リチウムまたはリチウム化合物との混合層を有し、
前記第1の発光層は、第1の発光中心物質を有し、
前記第2の発光層は、第2の発光中心物質を有し、
前記第1の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長と、前記第2の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差は、30nm以下であり、
前記第1の発光層および前記第2の発光層は、前記発光デバイスに隣接する複数の他の発光デバイスのうち、少なくとも一の発光デバイスが有する発光層と異なる発光層である発光デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の電子輸送層が、トリアジン骨格を含む第3の有機化合物を有する発光デバイス。
【請求項3】
請求項2において、前記第1の有機化合物と前記第3の有機化合物が同じ有機化合物である発光デバイス。
【請求項4】
請求項1において、
前記第1の電子輸送層が、トリアジン骨格を含まない第4の有機化合物を有する発光デバイス。
【請求項5】
請求項1において、
前記第1の電子輸送層が、ピリミジン骨格、イミダゾール骨格およびアントラセン骨格の少なくとも一を含む第4の有機化合物を有する発光デバイス。
【請求項6】
第1の電極と、
第2の電極と、
中間層と、
第1の発光層と、
第2の発光層と、
第1の電子輸送層と、
第2の電子輸送層と、を有する発光デバイスであって、
前記中間層は前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置し、
前記第1の発光層は、前記第1の電極と前記中間層との間に位置し、
前記第2の発光層は、前記中間層と前記第2の電極との間に位置し、
前記第1の電子輸送層は、前記第1の発光層と前記中間層との間に位置し、
前記第2の電子輸送層は、前記第2の発光層と前記第2の電極との間に位置し、
前記第2の電子輸送層は、トリアジン骨格を含む第1の有機化合物を有し、
前記中間層は、フェナントロリン骨格を有する第2の有機化合物を有し、
前記第1の電子輸送層は、トリアジン骨格を含む第3の有機化合物を有し、
前記第1の発光層は、第1の発光中心物質を有し、
前記第2の発光層は、第2の発光中心物質を有し、
前記第1の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長と、前記第2の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差は、30nm以下であり、
前記第1の発光層および前記第2の発光層は、前記発光デバイスに隣接する複数の他の発光デバイスのうち、少なくとも一の発光デバイスが有する発光層と異なる発光層である発光デバイス。
【請求項7】
請求項6において、前記第1の有機化合物と前記第3の有機化合物が同じ有機化合物である発光デバイス。
【請求項8】
請求項6において、
前記中間層がリチウムまたはリチウム化合物を含む発光デバイス。
【請求項9】
請求項8において、
前記中間層が、前記第2の有機化合物と前記リチウムまたはリチウム化合物との混合層を有する発光デバイス。
【請求項10】
発光デバイスAと、発光デバイスBと、を有する表示装置であって、
前記発光デバイスAと前記発光デバイスBとは隣り合っており、
前記発光デバイスAは、
第1の電極Aと、
第2の電極Aと、
中間層Aと、
第1の発光層Aと、
第2の発光層Aと、
第1の電子輸送層Aと、
第2の電子輸送層Aと、を有し、
前記中間層Aは前記第1の電極Aと前記第2の電極Aとの間に位置し、
前記第1の発光層Aは、前記第1の電極Aと前記中間層Aとの間に位置し、
前記第2の発光層Aは、前記中間層Aと前記第2の電極Aとの間に位置し、
前記第1の電子輸送層Aは、前記第1の発光層Aと前記中間層Aとの間に位置し、
前記第2の電子輸送層Aは、前記第2の発光層Aと前記第2の電極Aとの間に位置し、
前記発光デバイスBは、
第1の電極Bと、
第2の電極Bと、
中間層Bと、
第1の発光層Bと、
第2の発光層Bと、
第1の電子輸送層Bと、
第2の電子輸送層Bと、を有し、
前記中間層Bは前記第1の電極Bと前記第2の電極Bとの間に位置し、
前記第1の発光層Bは、前記第1の電極Bと前記中間層Bとの間に位置し、
前記第2の発光層Bは、前記中間層Bと前記第2の電極Bとの間に位置し、
前記第1の電子輸送層Bは、前記第1の発光層Bと前記中間層Bとの間に位置し、
前記第2の電子輸送層Bは、前記第2の発光層Bと前記第2の電極Bとの間に位置し、
前記第2の電子輸送層Aおよび前記第2の電子輸送層Bは、トリアジン骨格を含む第1の有機化合物を有し、
前記第2の電子輸送層Aおよび前記第2の電子輸送層Bは同じ材料で構成され、
前記中間層Aおよび前記中間層Bは、フェナントロリン骨格を有する第2の有機化合物と、リチウムまたはリチウム化合物を有し、
前記第1の発光層Aは、第1の発光中心物質を有し、
前記第2の発光層Aは、第2の発光中心物質を有し、
前記第1の発光層Bは、第3の発光中心物質を有し、
前記第2の発光層Bは、第4の発光中心物質を有し、
前記第1の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長と、前記第2の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差は、30nm以下であり、
前記第3の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長と、前記第4の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差は、30nm以下であり、
前記第1の発光層Aと前記第1の発光層B、前記第2の発光層Aと前記第2の発光層Bはそれぞれ異なる発光層である表示装置。
【請求項11】
発光デバイスAと、発光デバイスBと、を有する表示装置であって、
前記発光デバイスAと前記発光デバイスBとは隣り合っており、
前記発光デバイスAは、
第1の電極Aと、
第2の電極Aと、
中間層Aと、
第1の発光層Aと、
第2の発光層Aと、
第1の電子輸送層Aと、
第2の電子輸送層Aと、を有し、
前記中間層Aは前記第1の電極Aと前記第2の電極Aとの間に位置し、
前記第1の発光層Aは、前記第1の電極Aと前記中間層Aとの間に位置し、
前記第2の発光層Aは、前記中間層Aと前記第2の電極Aとの間に位置し、
前記第1の電子輸送層Aは、前記第1の発光層Aと前記中間層Aとの間に位置し、
前記第2の電子輸送層Aは、前記第2の発光層Aと前記第2の電極Aとの間に位置し、
前記発光デバイスBは、
第1の電極Bと、
第2の電極Bと、
中間層Bと、
第1の発光層Bと、
第2の発光層Bと、
第1の電子輸送層Bと、
第2の電子輸送層Bと、を有し、
前記中間層Bは前記第1の電極Bと前記第2の電極Bとの間に位置し、
前記第1の発光層Bは、前記第1の電極Bと前記中間層Bとの間に位置し、
前記第2の発光層Bは、前記中間層Bと前記第2の電極Bとの間に位置し、
前記第1の電子輸送層Bは、前記第1の発光層Bと前記中間層Bとの間に位置し、
前記第2の電子輸送層Bは、前記第2の発光層Bと前記第2の電極Bとの間に位置し、
前記第2の電子輸送層Aおよび前記第2の電子輸送層Bは、トリアジン骨格を含む第1の有機化合物を有し、
前記第2の電子輸送層Aおよび前記第2の電子輸送層Bは連続した一続きの層であり、
前記中間層Aおよび前記中間層Bは、フェナントロリン骨格を有する第2の有機化合物と、リチウムまたはリチウム化合物を有し、
前記第1の発光層Aは、第1の発光中心物質を有し、
前記第2の発光層Aは、第2の発光中心物質を有し、
前記第1の発光層Bは、第3の発光中心物質を有し、
前記第2の発光層Bは、第4の発光中心物質を有し、
前記第1の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長と、前記第2の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差は、30nm以下であり、
前記第3の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長と、前記第4の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差は、30nm以下であり、
前記第1の発光層Aと前記第1の発光層B、前記第2の発光層Aと前記第2の発光層Bはそれぞれ異なる発光層である表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、有機化合物、有機半導体素子、発光デバイス、フォトダイオードセンサ、ディスプレイモジュール、照明モジュール、表示装置、電子機器、照明装置および電子デバイスに関する。なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、照明装置、蓄電装置、記憶装置、撮像装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
有機化合物を用いたエレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)を利用する発光デバイス(有機EL素子ともいう)の実用化が進んでいる。これら発光デバイスの基本的な構成は、一対の電極間に発光中心物質を含む有機化合物層を挟んだものである。このデバイスに電圧を印加して、キャリアを注入し、当該キャリアの再結合エネルギーを利用することにより、発光中心物質からの発光を得ることができる。
【0003】
発光デバイスは自発光型であるため、当該発光デバイスを画素として用いた表示装置は、液晶表示装置に比べ視認性が高く、また、バックライトが不要である。また、このような発光デバイスを用いた表示装置は、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。さらに非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
また、これらの発光デバイスは発光層を平面状に連続して形成することが可能であるため、面状に発光を得ることができる。これは、白熱電球、LEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
このように発光デバイスを用いた表示装置、照明装置はさまざまな電子機器に好適であるが、より良好な特性を有する発光デバイスを求めて研究開発が進められている。
【0006】
特にタンデム型の発光デバイスは、高い電流効率を実現することから、注目されている。
【0007】
特許文献1および特許文献2は、塗分け方式のタンデム型発光デバイスについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-317548号公報
【特許文献2】特開2023-161850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一態様では特性の良好な発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の一態様では、発光効率の良好な発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の一態様では、信頼性の良好な発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の一態様では、駆動電圧の低い発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の一態様では、信頼性が良好で、駆動電圧の低い発光デバイスを提供することを目的とする。
【0010】
または、本発明の一態様では、特性の良好な表示装置を提供することが可能な発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の一態様では、発光効率の良好な表示装置を提供することが可能な発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の一態様では、信頼性の良好な表示装置を提供することが可能な発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の一態様では、駆動電圧の低い表示装置を提供することが可能な発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の一態様では、駆動電圧が低く、且つ信頼性の良好な表示装置を提供することが可能な発光デバイスを提供することを目的とする。
【0011】
または、消費電力の小さい有機半導体デバイス、発光デバイス、受光デバイス、表示装置、電子機器および照明装置のいずれかを提供することを目的とする。または、信頼性の高い電子機器および照明装置のいずれかを提供することを目的とする。または、新規な有機半導体デバイス、発光デバイス、受光デバイス、表示装置、電子機器および照明装置のいずれかを提供することを目的とする。
【0012】
本発明は上述の課題のうちいずれか一を解決すればよいものとする。なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、第1の電極と、第2の電極と、中間層と、第1の発光層と、第2の発光層と、第1の電子輸送層と、第2の電子輸送層と、を有する発光デバイスであって、中間層は第1の電極と第2の電極との間に位置し、第1の発光層は、第1の電極と中間層との間に位置し、第2の発光層は、中間層と第2の電極との間に位置し、第1の電子輸送層は、第1の発光層と中間層との間に位置し、第2の電子輸送層は、第2の発光層と第2の電極との間に位置し、第2の電子輸送層は、トリアジン骨格を含む第1の有機化合物を有し、中間層は、フェナントロリン骨格を有する第2の有機化合物と、リチウムまたはリチウム化合物との混合層を有し、第1の発光層は、第1の発光中心物質を有し、第2の発光層は、第2の発光中心物質を有し、第1の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長と、第2の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差は、30nm以下であり、第1の発光層および第2の発光層は、発光デバイスに隣接する複数の他の発光デバイスのうち、少なくとも一の発光デバイスが有する発光層と異なる発光層である発光デバイスである。
【0014】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の電子輸送層が、トリアジン骨格を含む第3の有機化合物を有する発光デバイスである。
【0015】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の有機化合物と第3の有機化合物が同じ有機化合物である発光デバイスである。
【0016】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の電子輸送層が、トリアジン骨格を含まない第4の有機化合物を有する発光デバイスである。
【0017】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の電子輸送層が、ピリミジン骨格、イミダゾール骨格およびアントラセン骨格の少なくとも一を含む第4の有機化合物を有する発光デバイスである。
【0018】
または、本発明の他の一態様は、第1の電極と、第2の電極と、中間層と、第1の発光層と、第2の発光層と、第1の電子輸送層と、第2の電子輸送層と、を有する発光デバイスであって、中間層は第1の電極と第2の電極との間に位置し、第1の発光層は、第1の電極と中間層との間に位置し、第2の発光層は、中間層と第2の電極との間に位置し、第1の電子輸送層は、第1の発光層と中間層との間に位置し、第2の電子輸送層は、第2の発光層と第2の電極との間に位置し、第2の電子輸送層は、トリアジン骨格を含む第1の有機化合物を有し、中間層は、フェナントロリン骨格を有する第2の有機化合物を有し、第1の電子輸送層は、トリアジン骨格を含む第3の有機化合物を有し、第1の発光層は、第1の発光中心物質を有し、第2の発光層は、第2の発光中心物質を有し、第1の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長と、第2の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差は、30nm以下であり、第1の発光層および第2の発光層は、発光デバイスに隣接する複数の他の発光デバイスのうち、少なくとも一の発光デバイスが有する発光層と異なる発光層である発光デバイスである。
【0019】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の有機化合物と第3の有機化合物が同じ有機化合物である発光デバイスである。
【0020】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、中間層がリチウムまたはリチウム化合物を含む発光デバイスである。
【0021】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、中間層が、第2の有機化合物とリチウムまたはリチウム化合物との混合層を有する発光デバイスである。
【0022】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第2の電子輸送層が、リチウムまたはリチウム化合物を有する発光デバイスである。
【0023】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の発光中心物質と、第2の発光中心物質が同じ物質である発光デバイスである。
【0024】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、中間層は、第2の有機化合物を含む第1の層を有する発光デバイスである。
【0025】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の層がリチウムまたはリチウム化合物を含む発光デバイスである。
【0026】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、中間層が、さらに第2の層を有し、第2の層は、第1の層と第2の発光層との間に位置する発光デバイスである。
【0027】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第2の層が、正孔輸送性を有する第5の有機化合物を含む発光デバイスである。
【0028】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第2の層が、ハロゲン基およびシアノ基の少なくとも一を有する有機化合物を含む発光デバイスである。
【0029】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第2の層が、フッ素およびシアノ基の少なくとも一を有する有機化合物を含む発光デバイスである。
【0030】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第2の層が、ハロゲン基およびシアノ基の少なくとも一を4以上有する有機化合物を含む発光デバイスである。
【0031】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第2の層が、フッ素およびシアノ基の少なくとも一を4以上有する有機化合物を含む発光デバイスである。
【0032】
または、本発明の他の一態様は、上記いずれかに記載の発光デバイスを備えた表示装置である。
【0033】
または、本発明の他の一態様は、発光デバイスAと、発光デバイスBと、を有する表示装置であって、発光デバイスAと発光デバイスBとは隣り合っており、発光デバイスAは、第1の電極Aと、第2の電極Aと、中間層Aと、第1の発光層Aと、第2の発光層Aと、第1の電子輸送層Aと、第2の電子輸送層Aと、を有し、中間層Aは第1の電極Aと第2の電極Aとの間に位置し、第1の発光層Aは、第1の電極Aと中間層Aとの間に位置し、第2の発光層Aは、中間層Aと第2の電極Aとの間に位置し、第1の電子輸送層Aは、第1の発光層Aと中間層Aとの間に位置し、第2の電子輸送層Aは、第2の発光層Aと第2の電極Aとの間に位置し、発光デバイスBは、第1の電極Bと、第2の電極Bと、中間層Bと、第1の発光層Bと、第2の発光層Bと、第1の電子輸送層Bと、第2の電子輸送層Bと、を有し、中間層Bは第1の電極Bと第2の電極Bとの間に位置し、第1の発光層Bは、第1の電極Bと中間層Bとの間に位置し、第2の発光層Bは、中間層Bと第2の電極Bとの間に位置し、第1の電子輸送層Bは、第1の発光層Bと中間層Bとの間に位置し、第2の電子輸送層Bは、第2の発光層Bと第2の電極Bとの間に位置し、第2の電子輸送層Aおよび第2の電子輸送層Bは、トリアジン骨格を含む第1の有機化合物を有し、第2の電子輸送層Aおよび第2の電子輸送層Bは同じ材料で構成され、中間層Aおよび中間層Bは、フェナントロリン骨格を有する第2の有機化合物と、リチウムまたはリチウム化合物を有し、第1の発光層Aは、第1の発光中心物質を有し、第2の発光層Aは、第2の発光中心物質を有し、第1の発光層Bは、第3の発光中心物質を有し、第2の発光層Bは、第4の発光中心物質を有し、第1の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長と、第2の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差は、30nm以下であり、第3の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長と、第4の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差は、30nm以下であり、第1の発光層Aと第1の発光層B、第2の発光層Aと第2の発光層Bはそれぞれ異なる発光層である表示装置である。
【0034】
または、本発明の他の一態様は、発光デバイスAと、発光デバイスBと、を有する表示装置であって、発光デバイスAと発光デバイスBとは隣り合っており、発光デバイスAは、第1の電極Aと、第2の電極Aと、中間層Aと、第1の発光層Aと、第2の発光層Aと、第1の電子輸送層Aと、第2の電子輸送層Aと、を有し、中間層Aは第1の電極Aと第2の電極Aとの間に位置し、第1の発光層Aは、第1の電極Aと中間層Aとの間に位置し、第2の発光層Aは、中間層Aと第2の電極Aとの間に位置し、第1の電子輸送層Aは、第1の発光層Aと中間層Aとの間に位置し、第2の電子輸送層Aは、第2の発光層Aと第2の電極Aとの間に位置し、発光デバイスBは、第1の電極Bと、第2の電極Bと、中間層Bと、第1の発光層Bと、第2の発光層Bと、第1の電子輸送層Bと、第2の電子輸送層Bと、を有し、中間層Bは第1の電極Bと第2の電極Bとの間に位置し、第1の発光層Bは、第1の電極Bと中間層Bとの間に位置し、第2の発光層Bは、中間層Bと第2の電極Bとの間に位置し、第1の電子輸送層Bは、第1の発光層Bと中間層Bとの間に位置し、第2の電子輸送層Bは、第2の発光層Bと第2の電極Bとの間に位置し、第2の電子輸送層Aおよび第2の電子輸送層Bは、トリアジン骨格を含む第1の有機化合物を有し、第2の電子輸送層Aおよび第2の電子輸送層Bは連続した一続きの層であり、中間層Aおよび中間層Bは、フェナントロリン骨格を有する第2の有機化合物と、リチウムまたはリチウム化合物を有し、第1の発光層Aは、第1の発光中心物質を有し、第2の発光層Aは、第2の発光中心物質を有し、第1の発光層Bは、第3の発光中心物質を有し、第2の発光層Bは、第4の発光中心物質を有し、第1の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長と、第2の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差は、30nm以下であり、第3の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長と、第4の発光中心物質の発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差は、30nm以下であり、第1の発光層Aと第1の発光層B、第2の発光層Aと第2の発光層Bはそれぞれ異なる発光層である表示装置である。
【0035】
または、本発明の他の一態様は、上記発光デバイスと、センサ、操作ボタン、スピーカ、または、マイクと、を有する電子機器である。
【0036】
または、本発明の他の一態様は、上記発光デバイスと、筐体と、を有する照明装置である。
【0037】
上記は本発明の一態様であり、上記構成に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0038】
本発明の一態様では特性の良好な発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様では、発光効率の良好な発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様では、信頼性の良好な発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様では、駆動電圧の低い発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様では、信頼性が良好で、駆動電圧の低い発光デバイスを提供することができる。
【0039】
または、本発明の一態様では、特性の良好な表示装置を提供することが可能な発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様では、発光効率の良好な表示装置を提供することが可能な発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様では、信頼性の良好な表示装置を提供することが可能な発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様では、駆動電圧の低い表示装置を提供することが可能な発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様では、駆動電圧が低く、且つ信頼性の良好な表示装置を提供することが可能な発光デバイスを提供することができる。
【0040】
または、消費電力の小さい有機半導体デバイス、発光デバイス、受光デバイス、表示装置、電子機器および照明装置のいずれかを提供することができる。または、信頼性の高い電子機器および照明装置のいずれかを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1(A)乃至図1(C)は、本発明の一態様の発光デバイスの模式図である。
図2図2(A)及び図2(B)は、本発明の一態様の発光デバイスの模式図である。
図3図3(A)及び図3(B)は、本発明の一態様の表示装置を表す図である。
図4図4(A)及び図4(B)は、本発明の一態様の表示装置を表す図である。
図5図5(A)乃至5(E)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図6図6(A)及び図6(B)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図7図7(A)乃至図7(D)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図8図8(A)乃至図8(C)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図9図9(A)乃至図9(C)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図10図10(A)乃至図10(C)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図11図11(A)及び図11(B)は、表示モジュールの構成例を示す斜視図である。
図12図12(A)、及び図12(B)は、表示装置の構成例を示す断面図である。
図13図13は、表示装置の構成例を示す斜視図である。
図14図14は、表示装置の構成例を示す断面図である。
図15図15は、表示装置の構成例を示す断面図である。
図16図16(A)乃至図16(C)は、表示装置の構成例を示す図である。
図17図17は、表示装置の構成例を示す断面図である。
図18図18(A)乃至図18(C)は、表示装置の構成例を示す図である。
図19図19(A)乃至図19(D)は、ウェアラブル機器の一例を説明する図である。
図20図20(A)乃至図20(F)は、電子機器の一例を示す図である。
図21図21(A)乃至図21(G)は、電子機器の一例を示す図である。
図22図22は、発光デバイスR1および比較発光デバイスR1の電流密度-電圧特性を表す図である。
図23図23は、発光デバイスR1および比較発光デバイスR1の電流効率-輝度特性を表す図である。
図24図24は、発光デバイスR1および比較発光デバイスR1のパワー効率-輝度特性を表す図である。
図25図25は、発光デバイスR1および比較発光デバイスR1の電界発光スペクトルを表す図である。
図26図26は、発光デバイスG1および比較発光デバイスG1の電流密度-電圧特性を表す図である。
図27図27は、発光デバイスG1および比較発光デバイスG1の電流効率-輝度特性を表す図である。
図28図28は、発光デバイスG1および比較発光デバイスG1のパワー効率-輝度特性を表す図である。
図29図29は、発光デバイスG1および比較発光デバイスG1の電界発光スペクトルを表す図である。
図30図30は、発光デバイスB1および比較発光デバイスB1の電流密度-電圧特性を表す図である。
図31図31は、発光デバイスB1および比較発光デバイスB1の電流効率-輝度特性を表す図である。
図32図32は、発光デバイスB1および比較発光デバイスB1のブルーインデックス-輝度特性を表す図である。
図33図33は、発光デバイスB1および比較発光デバイスB1のパワー効率-輝度特性を表す図である。
図34図34は、発光デバイスB1および比較発光デバイスB1の電界発光スペクトルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0043】
なお、本明細書等において、メタルマスク、またはFMM(ファインメタルマスク、高精細なメタルマスク)を用いて作製されるデバイスをMM(メタルマスク)構造のデバイスと呼称する場合がある。また、本明細書等において、メタルマスク、またはFMMを用いることなく作製されるデバイスをMML(メタルマスクレス)構造のデバイスと呼称する場合がある。
【0044】
(実施の形態1)
タンデム型の発光デバイスは、一対の電極間に、中間層(電荷発生層)を間に挟んで複数の発光ユニットが積層した構造を有する。複数の発光ユニットは各々発光層を有し、電流を流すことによっていずれの発光層からも発光を得ることができる。このような構成を有するタンデム型の発光デバイスは、タンデム型でない発光デバイスと比較して電流効率が大幅に高くなるため、高輝度の表示が要求される表示装置、または高い信頼性が必要な表示装置に好適に用いることができる。
【0045】
タンデム型の発光デバイスは複数の発光層を有するため、白色発光を得ることが容易であることから、タンデム型発光デバイスを用いた表示装置のフルカラー化方式は、白色カラーフィルタ方式が採用されることが多い。また、青色発光を呈する発光層を積層し、量子ドットに代表される色変換層を用いた色変換方式も実用化されている。
【0046】
一方で、フルカラー化方式として塗分け方式を採用し、タンデム型の発光デバイスを用いた表示装置も一部実用化されている。塗分け方式の発光デバイスは、カラーフィルタまたは色変換層でのエネルギーロスがない、または少ないことから、前述の2方式より発光効率の良好な発光デバイスとすることが可能である。
【0047】
本発明の一態様のタンデム型の発光デバイスは、陰極側の発光ユニットが有する電子輸送層がトリアジン骨格を含む第1の有機化合物を有し、中間層がフェナントロリン骨格を含む第2の有機化合物を有する構成を有する。
【0048】
また、当該タンデム型の発光デバイスが有する発光層は、隣接する他の発光デバイスの少なくとも一の発光デバイスが有する発光層と分離されていることが好ましい。または、当該タンデム型の発光デバイスが有する発光層は、隣接する他の発光デバイスの少なくとも一の発光デバイスが有する発光層と異なる発光層であることが好ましい。または、当該タンデム型の発光デバイスまたは当該タンデム型の発光デバイスを有する画素が発する発光色は、隣接する他の発光デバイスまたは画素の少なくとも一の発光デバイスまたは画素が発する発光色とは異なることが好ましい。または、当該タンデム型の発光デバイスの発光層が有する発光中心物質は、隣接する他の発光デバイスの少なくとも一の発光デバイスの発光層が有する発光中心物質とは異なる構成を有することが好ましい。
【0049】
このような構成を有する本発明の発光デバイスは、電流効率が高く、エネルギーロスが少なく、特性の良好な発光デバイスとすることが可能となる。このような発光デバイスを用いた本発明の一態様の表示装置では、消費電力が小さく、信頼性が高く、高輝度での表示が可能であり視認性の良好な表示装置とすることが可能である。
【0050】
上記トリアジン骨格を含む第1の有機化合物は、正孔よりも電子の輸送性が高い物質であれば用いることができるが、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-7cm/Vs以上の有機化合物であることが好ましく、1×10-6cm/Vs以上の有機化合物であることがより好ましい。
【0051】
トリアジン骨格を含む第1の有機化合物は、トリアジン骨格と芳香環とを含む化合物が好ましい。当該芳香環としては、単環式芳香環、多環式芳香環、置換基としてアルキル基を有する芳香環、置換基としてフルオロ基を有する芳香環、置換基としてシアノ基を有する芳香環などを用いことが好ましい。トリアジン骨格は上記芳香環以外の置換基を有していてもよく、また、芳香環は上記フルオロ基、シアノ基、またはアルキル基以外の置換基を有していてもよい。なお、トリアジン骨格はトリアジン環とも呼び、他の骨格に関しても、骨格を環に言い換えることができる。
【0052】
単環式芳香環としては、ベンゼン環などの芳香族炭化水素環、またはピロール環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環などの複素芳香環が挙げられる。置換基として芳香環を有することで耐熱性の向上、具体的にはガラス転移温度(Tg)を向上させる効果、電子輸送性を向上させる効果などを奏する。
【0053】
多環式芳香環としては、ナフタレン環、フェナントレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、スピロビフルオレン環、などの芳香族炭化水素環の他、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、キサンテン環、インドロカルバゾール環、インデノカルバゾール環などの複素芳香環などが挙げられる。置換基として多環式芳香環を有する化合物は、ベンゼン環などの単環式芳香環を有する化合物と比較して耐熱性を向上させることができる。また、置換基として、これらの多環式芳香環に更に芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環等)が縮合した環を有する化合物の場合、更に耐熱性を向上させることができる。多環式芳香環に更に芳香環が縮合した環としては、ベンゾフルオレン環、ベンゾナフトフラン環、ベンゾキサンテン環、ベンゾナフトチオフェン環などが挙げられる。耐熱性の高い化合物を有する層を陰極近傍に設けることで、該層または陰極を形成した後にパターニング工程などの高温処理を行う際に、熱による素子の損傷を抑制することができる。
【0054】
また、上述のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ターシャリーブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などが挙げられる。置換基としてアルキル基を有する第1の有機化合物は、屈折率の低い有機化合物とすることができ、当該第1の有機化合物を用いた層は、屈折率を低くすることが可能である。そのため、当該層と他の層との界面での全反射を抑制することができ、当該層を用いた発光デバイスの光の取り出し効率を向上させることができる。また、アルキル基として、炭素数が複数、好ましくは3個以上、より好ましくは4個以上、更に好ましくは5個以上有する有機化合物は屈折率を低くする効果を高めることができる。
【0055】
また、これらアルキル基を有する化合物を正孔輸送層にも用いることで、正孔輸送層の屈折率を低減することができる。特に、電子輸送層にトリアジン骨格とアルキル基とを有する化合物を用い、さらに正孔輸送層に芳香族アミン骨格とアルキル基とを有する化合物を用いることで、光取り出し効率の向上効果を相乗的に高めることができる。
【0056】
また、置換基としてフルオロ基を有する化合物を用いた層も、屈折率を低くすることができるため好ましい。特にフルオロ基を複数有する有機化合物は屈折率低減効果を高めることができる。電子輸送層と正孔輸送層との両方にフルオロ基を有する化合物を用いることも効果的である。
【0057】
また、一の芳香環に複数のアルキル基またはフルオロ基が結合した構造を含む化合物は、層の屈折率を更に低くすることができる。例えば、1つのベンゼン環に置換基としてターシャリーブチル基が2つまたは3つ以上結合した構造が挙げられる。ベンゼン環に限らず、ピリジン環等の他の単環式芳香環、フルオレン環等の多環式芳香環に複数のアルキル基またはフルオロ基が結合した構造であっても良い。また、多環式芳香環(ナフタレン環、フルオレン環、カルバゾール環、キノリン環、キサンテン環など)について、構成する一部の環に複数のアルキル基またはフルオロ基が結合した構造にすることも好適である。例えばフルオレン環を構成する1つのベンゼン環に複数のターシャリーブチル基が結合している構成などが挙げられる。
【0058】
また、置換基としてシアノ基を有する第1の有機化合物は電子輸送性を向上させることができるため好ましい。
【0059】
また、第1の有機化合物が有する置換基として多環式芳香環、アルキル基、フルオロ基、またはシアノ基のうち、複数を組み合わせることも好適である。例えば、置換基として多環式芳香環とシアノ基とを有する場合、耐熱性と電子輸送性の両方を向上させることができる。また、多環式芳香環とアルキル基とを有することで耐熱性と光取り出し効率の両方を向上させることができる。このように、求める機能に応じて置換基を組み合わせて用いることができる。
【0060】
また置換基として多環式芳香環を複数有する第1の有機化合物は耐熱性を更に向上させることができる。その場合、当該第1の有機化合物は、上記芳香族炭化水素環と上記複素芳香環とを含むと良い。
【0061】
トリアジン骨格を含む第1の有機化合物の具体例としては、例えば、2-(ビフェニル-4-イル)-4-フェニル-6-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:BP-SFTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn-02)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)、2-[3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mFBPTzn)、5-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-7,7-ジメチル-5H,7H-インデノ[2,1-b]カルバゾール(略称:mINc(II)PTzn)、2-{3-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mDBtBPTzn)、2,4,6-トリス[3’-(ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル]-1,3,5-トリアジン(略称:TmPPPyTz)、2-[3-(2,6-ジメチル-3-ピリジニル)-5-(9-フェナントレニル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mPn-mDMePyPTzn)、11-[4-(ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル]-11,12-ジヒドロ-12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール(略称:BP-Icz(II)Tzn)、2-[3’-(トリフェニレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mTpBPTzn)、3-[9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-2-ジベンゾフラニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCDBfTzn)、2-(ビフェニル-3-イル)-4-フェニル-6-{8-[(1,1’:4’,1’’-ターフェニル)-4-イル]-1-ジベンゾフラニル}-1,3,5-トリアジン(略称:mBP-TPDBfTzn)、2-[4-(2-ナフタレニル)フェニル]-4-フェニル-6-スピロ[9H-フルオレン-9,9’-[9H]キサンテン]-4-イル-1,3,5-トリアジン(略称:βNP-SFx(4)Tzn)、9,9’-{6-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}ビス(9H-カルバゾール)(略称:SiTrzCz2)、2-フェニル-4,6-ビス[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-1,3,5-トリアジン(略称:mSiTrz)、11-[4-(ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル]-11,12-ジヒドロ-12-(ビフェニル-3-イル)インドロ[2,3-a]カルバゾール(略称:BP-mBPIcz(II)Tzn)、3-{3-[9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-2-ジベンゾフラニル]フェニル}-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:mPCPDBfTzn)、9,9’-[6-(ビフェニル4-イル)-2-フェニル-1,3,5-トリアジン-4,3’’-ジイル]ビス(9H-カルバゾール)(略称:Cz-pmCzBPTzn)、3-フェニル-9-[4-フェニル-6-(9-フェニル-3-ジベンゾフラニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-9H-カルバゾール(略称:PDBf-PCzTzn)、9-[4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-2-ジベンゾチエニル]-2-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCzDBtTzn)、2,4-ジフェニル-6-[3’-(スピロ[7H-ベンゾ[c]フルオレン-7,9’-[9H]キサンテン]-2-イル)ビフェニル-3-イル]-1,3,5-トリアジン(略称:mSbfxBPTzn)、3′-[4-フェニル-6-(スピロ[9H-フルオレン-9,9′-[9H]キサンテン]-2′-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]ビフェニル-4-カルボニトリル(略称:mpCNBP-SFxTzn)、2,2’-[1,2-ナフタレンジイルジ(4,1-フェニレン)]ビス(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン)(略称:TznP2N)などのトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物を用いることができるが下記構造式(100)乃至(106)で表される、TznP2N(100)、mSbfxBPTzn(101)、mpCNBP-SFxTzn(102)、CNBPNPTzn(103)、βNP-SFx(4)Tzn(104)、mmtBuBP-mDMePyPTzn(105)、mBnfBPTzn(106)などが特に好ましい。なお、以上に挙げた有機化合物が適宜重水素化された有機化合物も同様に用いることができる。
【0062】
【化1】
【0063】
なお、陽極側の発光ユニットに含まれる電子輸送層は、陰極側の発光ユニットに含まれる電子輸送層と同様に、トリアジン骨格を含む第3の有機化合物を含む層であってもよいし、トリアジン骨格を含まない第4の有機化合物を含む層であってもよい。
【0064】
陽極側の発光ユニットに含まれる電子輸送層は、トリアジン骨格を含む第3の有機化合物を有していることが消費電力低減のため好ましい。特に、第1の有機化合物と同じ有機化合物を有することが、製造装置の複雑化を抑制し、原料調達コスト的にも有利となるため好ましい。
【0065】
また、陽極側の発光ユニットに含まれる電子輸送層は、トリアジン骨格を含まない第4の有機化合物を有していることで、キャリアの輸送性の制御が容易となり、より特性の良好な発光デバイスを提供することが可能となる。トリアジン骨格を含まない有機化合物としては、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物が好ましい。また、トリアジン骨格を含まない有機化合物としては、ピリミジン骨格、イミダゾール骨格およびアントラセン骨格の少なくとも一を有する有機化合物であると好ましい。例えば、ピリミジン骨格とアントラセン骨格とを有する有機化合物、または、イミダゾール骨格とアントラセン骨格とを有する有機化合物を用いると、キャリアの輸送性が一層制御しやすくなるため好ましい。
【0066】
上記フェナントロリン骨格を含む第2の有機化合物は、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-7cm/Vs以上、好ましくは1×10-6cm/Vs以上の有機化合物であることが好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性が高い物質であれば、これら以外のものを用いることができる。
【0067】
フェナントロリン骨格を含む第2の有機化合物としては、フェナントロリン骨格と芳香環とを含む化合物であると好ましい。当該芳香環としては、単環式芳香環、多環式芳香環などを用いると良い。
【0068】
単環式芳香環としては、ベンゼン環、ピロール環、ピリジン環、ピリミジン環などが挙げられる。また、多環式芳香環としては、ナフタレン環、フェナントレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環などの芳香族炭化水素環、フェナントロリン環、ピロール環などの複素芳香環など含むと好ましい。特にこれらの多環式芳香環を複数含むと耐熱性または電子輸送性を向上させることができるため好ましい。
【0069】
フェナントロリン骨格を含む第2の有機化合物としては、例えば、バソフェナントロリン(略称:Bphen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、2,9-ジ(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBphen)、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)、2-[3-(2-トリフェニレニル)フェニル]-1,10-フェナントロリン(略称:mTpPPhen)、2-フェニル-9-(2-トリフェニレニル)-1,10-フェナントロリン(略称:Ph-TpPhen)、2-[4-(9-フェナントレニル)-1-ナフタレニル]-1,10-フェナントロリン(略称:PnNPhen)、2-[4-(2-トリフェニレニル)フェニル]-1,10-フェナントロリン(略称:pTpPPhen)などのフェナントロリン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物を用いることができるが下記構造式(200)乃至(201)で表されるPnNPhen(200)、mPPhen2P(201)などが好ましい。
【0070】
【化2】
【0071】
本発明の一態様の発光デバイスでは、中間層はフェナントロリン骨格を含む第2の有機化合物を有し、且つ第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加することで、当該中間層に接する陽極側の発光ユニットに電子を、陰極側の発光ユニットに正孔を注入することができる層であればどのような構成であってもよい。ただし、中間層は、第2の有機化合物を含む第1の層と、第1の層よりも陰極側に位置する第2の層とを備える積層構造であることが好ましい。
【0072】
第1の層は、第2の有機化合物の他に、金属または金属化合物を含むことが好ましい。当該金属、または金属化合物における金属は、Liなどのアルカリ金属(第1族元素)、Mg、Caなどのアルカリ土類金属(第2族元素)、Y、Eu、Ybなどのランタノイドを含む第3族元素、Cu、Ag、Auなどの第11族元素、Znなどの第12族元素、Al、Inなどの土類金属(第13族元素)が好ましい。
【0073】
なお、第1の層は、有機化合物を含む層と、有機化合物を含む層より陰極側に位置する金属または金属化合物を有する層との積層構造である場合と、有機化合物と金属または金属化合物との混合層である場合があるが、混合層である方が成膜チャンバーが少なく製造コスト低減のため好ましく、発光デバイスの安定性向上にも寄与するため好ましい。
【0074】
有機化合物と金属または金属化合物とが混合している場合、第1の層を膜厚方向に分析した際に、有機化合物の分布と金属または金属化合物の分布がおおむね同じ傾向を示す。すなわち、有機化合物の分布が一定である場合には、金属または金属化合物の分布もおおむね一定である。有機化合物を含む層と金属または金属化合物を有する層との積層構造である場合、金属または金属化合物が金属または金属化合物を有する層からの拡散により当該層以外の領域にも検出される場合があるが、有機化合物の分布と異なる分布を示すことから分析の結果を拡散と混合とで切り分けることができる。
【0075】
また、第1の層を膜厚方向に分析した際に、金属または金属化合物が検出される領域が、10nm以上存在する場合、好ましくは15nm以上、より好ましくは20nm以上存在する場合も、第1の層が有機化合物と金属または金属化合物とが混合した混合層を有しているとみなすことができる。
【0076】
中でも、上記金属または金属化合物における金属は、第2の有機化合物にドナー性を示す物質であることが好ましい。第2の有機化合物にドナー性を示す物質としては、例えば、第1族、第2族の金属を挙げることができ、特にリチウムまたはリチウム化合物が好ましい。具体的には、Li、フッ化リチウム(LiF)、酸化リチウム(LiO)、および8-ヒドロキシキノリナト-リチウム(略称:Liq)などが好ましい。第1の層が、第2の有機化合物と、当該第2の有機化合物にドナー性を示す物質と、が含まれる層である場合、電荷分離により電子が発生し、第1の電極と第2の電極との間に電圧が印加されると当該電子は、第2の有機化合物を介して陽極側の発光ユニットに注入される。これにより、本発明の一態様の発光デバイスは、駆動電圧の低い発光デバイスとすることができる。
【0077】
また、第2の有機化合物は、上で述べた有機化合物の他に、電子供与性を有する置換基を備えたフェナントロリン骨格を含む有機化合物が好ましい。フェナントロリン骨格は金属などと相互作用を起こしやすい骨格であり、このようなフェナントロリン骨格を含む第2の有機化合物がさらに電子供与基を有することで、当該フェナントロリン骨格の電子密度が上昇し、金属、または金属化合物との相互作用をさらに起こしやすくすることができる。特に、金属、または金属化合物における金属として第3族、第11族、第12族、第13族の金属を用いた場合、駆動電圧の上昇を抑制し、良好な特性を有するタンデム型の発光デバイスを提供できる。
【0078】
電子供与基の具体例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、複素環式アミノ基などが挙げられる。ただし、フェナントロリン環に導入すると好ましい電子供与基はこれらに限定されない。フェナントロリン環に導入することで、フェナントロリン環の電子密度を高めることのできる基であれば、電子供与基として適用することができる。また、当該電子供与基は、フェニレン基などアリーレン基を介してフェナントロリン環に導入してもよく、当該アリーレン基としてはp-フェニレン基が好ましい。
【0079】
電子供与性を有する置換基を備えたフェナントロリン骨格を含む有機化合物の具体例を構造式(300)乃至(310)に示す。
【0080】
【化3】
【0081】
なお、第1の層に、第1族または第2族、特にリチウムまたはリチウム化合物と、電子供与性を有する置換基を備えたフェナントロリン骨格と、を含む第2の有機化合物を有する構成は、より駆動電圧が低く、信頼性が良好なタンデム型の発光デバイスを提供できるため好ましい。さらに、第1の層に、第1族または第2族、特にリチウムまたはリチウム化合物と、電子供与性を有する置換基を備えたフェナントロリン骨格を含む第2の有機化合物を有する構成は、フォトリソグラフィ法により発光デバイスの有機化合物層を加工する場合に駆動電圧の上昇を抑制することができることから好ましい構成である。
【0082】
以上に述べてきたような構成を有する中間層において、第2の有機化合物は、特にフェナントロリン骨格の中でも、1,10-フェナントロリン骨格を含む有機化合物が、含有する2つの窒素原子が金属に配位可能であることから、金属または金属化合物との相互作用が起こりやすく、好ましい。
【0083】
1,10-フェナントロリン骨格に電子供与基を導入する場合、電子供与基は1,10-フェナントロリン骨格の4位および7位に置換されていることが好ましい。1,10-フェナントロリン骨格の4位および7位に電子供与基を導入することにより、1位および10位の窒素原子の電子密度を高めることができ、金属または金属化合物との相互作用をより起こりやすくすることができる。
【0084】
第1の層は、さらに第2の有機化合物とは異なる有機化合物を含んでいてもよい。なお、当該有機化合物は、電子輸送性を有する有機化合物であることが好ましい。特に、当該有機化合物は、互いに結合または縮合した2以上の複素芳香環を有し、かつ当該2以上の複素芳香環は合計で3以上のヘテロ原子を有することが好ましい。第1の層がこのような有機化合物を含むことによって、耐熱性の向上、電子輸送性の向上などを図ることができる。
【0085】
第2の層は、正孔輸送性を有する第5の有機化合物を含むことが好ましい。また、第2の層は、さらにアクセプタ性を示す物質を含むことが好ましく、アクセプタ性を示す物質は第5の有機化合物にアクセプタ性を示す有機化合物であることが好ましい。アクセプタ性を有する物質としては、特に、ハロゲン基およびシアノ基の少なくとも一を有する有機化合物が好ましく、フッ素およびシアノ基の少なくとも一を有する有機化合物がより好ましい。なお、当該有機化合物に含まれるハロゲン基(フッ素)およびシアノ基は合わせて4以上であることがさらに好ましい。
【0086】
第2の層が、第5の有機化合物と、当該第5の有機化合物にアクセプタ性を示す物質と、が含まれる層である場合、電荷分離により正孔が発生し、第1の電極と第2の電極との間に電圧が印加されることで当該正孔は、第5の有機化合物を介して陰極側の発光ユニットに注入される。これにより、本発明の一態様の発光デバイスは、駆動電圧の低い発光デバイスとすることができる。
【0087】
中間層は、第1の層と第2の層との間に第3の層を有していてもよい。
【0088】
第3の層は、電子輸送性を有する物質を含み、第1の層と第2の層との間で電子の授受をスムーズにして駆動電圧を低減する、第1の層と第2の層との間の相互作用を低減し信頼性を向上するなどの機能を有する。
【0089】
また、第3の層の膜厚は1nm以上10nm以下、好ましくは2nm以上5nm以下であることが、駆動電圧の上昇を抑制できるために好ましい。
【0090】
以上のような構成を有する本発明の発光デバイスは、電流効率が高く、エネルギーロスが少なく、特性の良好な発光デバイスとすることが可能となる。また、このような発光デバイスを用いた本発明の一態様の表示装置では、消費電力が小さく、信頼性が高く、高輝度での表示が可能であり視認性の良好な表示装置とすることが可能である。
【0091】
続いて、本発明の一態様の発光デバイスについて図面を用いながら詳しく説明する。図1(A)に、本発明の一態様の発光デバイス130を示した。本発明の一態様の発光デバイスは、陽極を含む第1の電極101と、陰極を含む第2の電極102との間に、第1の発光層113_1を含む第1の発光ユニット501と、第2の発光層113_2と第2の電子輸送層114_2を含む第2の発光ユニット502と、中間層116とを有する有機化合物層103(EL層ともいう)を有している、タンデム型の発光デバイスである。なお、第1の発光ユニットは、第1の発光層113_1と中間層116との間に第1の電子輸送層114_1を有していてもよい。
【0092】
発光デバイス130において、第2の電子輸送層114_2は、トリアジン骨格を含む第1の有機化合物を含み、中間層116は、フェナントロリン骨格を含む第2の有機化合物を有する。また、トリアジン骨格を含む第1の有機化合物を含む第2の電子輸送層114_2は、第2の電極102と接していることが消費電力低減のため好ましい。
【0093】
本実施の形態では、一つの中間層116と、二つの発光ユニットを有する発光デバイスを例に説明するが、n(nは1以上の整数)層の中間層と、n+1層の発光ユニットを有する発光デバイスであってもよい。例えば、図1(B)に示す発光デバイス130は、第1の発光ユニット501、第1の中間層116_1、第2の発光ユニット502、第2の中間層116_2および第3の発光ユニット503を有するnが2のタンデム型の発光デバイスの例である。
【0094】
第1の発光ユニット501と第2の発光ユニット502には、先に述べた発光層、電子輸送層などの層以外に他の機能層が含まれていてもよい。図1(A)では、第1の発光ユニット501には、第1の発光層113_1、第1の電子輸送層114_1の他に、正孔注入層111、および第1の正孔輸送層112_1が、第2の発光ユニット502には、第2の発光層113_2、第2の電子輸送層114_2の他に、第2の正孔輸送層112_2が設けられている構成を図示したが、本発明の一態様における有機化合物層103の構成は、これに限られず、いずれかの層が設けられていなくともよいし、他の層が設けられていてもよい。なお、他の層としては、代表的には、キャリアブロック層、励起子ブロック層などがある。
【0095】
第1の電極101は、陽極を含む電極である。第1の電極101は、積層構造を有していてもよく、その場合、有機化合物層103に触れる層が陽極として機能する。陽極は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル-ゲル法などを応用して作製しても構わない。作製方法の例としては、酸化インジウム-酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1~20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成する方法などがある。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5~5wt%、酸化亜鉛を0.1~1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することもできる。この他に、陽極に用いられる材料は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。又は、陽極に用いられる材料として、グラフェンも用いることができる。なお、上記中間層116における第2の層117を構成する複合材料を陽極と接する層(代表的には正孔注入層)として用いることで、仕事関数に関わらず、電極材料を選択することができるようになる。
【0096】
正孔注入層111は、陽極に接して設けられ、正孔を有機化合物層103(第1の発光ユニット501)に注入しやすくする機能を有する。正孔注入層111は、フタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物または錯体化合物、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、またはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(略称:PEDOT/PSS)等の高分子等によって形成することができる。
【0097】
また、正孔注入層111は電子のアクセプタ性を有する物質により形成してもよい。アクセプタ性を有する物質としては、電子吸引基(ハロゲン基、シアノ基など)を有する有機化合物を用いることができ、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)、2-(7-ジシアノメチレン-1,3,4,5,6,8,9,10-オクタフルオロ-7H-ピレン-2-イリデン)マロノニトリル等を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基、シアノ基など)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。アクセプタ性を有する物質としては以上で述べた有機化合物以外にも、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の遷移金属酸化物を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物または錯体化合物、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、或いはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(略称:PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層111を形成することができる。アクセプタ性を有する物質は、隣接する正孔輸送層(あるいは正孔輸送材料)から、電界の印加により電子を引き抜くことができる。
【0098】
また、正孔注入層111は、上記アクセプタ性を有する材料と、正孔輸送性を有する物質とを含む複合材料により形成することが好ましい。
【0099】
複合材料に用いる正孔輸送性を有する物質としては、芳香族アミン化合物、複素芳香族化合物、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる正孔輸送性を有する物質としては、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。複合材料に用いられる正孔輸送性を有する物質は、縮合芳香族炭化水素環、または、π電子過剰型複素芳香環を有する化合物であることが好ましい。縮合芳香族炭化水素環としては、アントラセン環、ナフタレン環等が好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環としては、ピロール骨格、フラン骨格、チオフェン骨格の少なくともいずれか1を環に含む縮合芳香環が好ましく、具体的にはカルバゾール環、ジベンゾチオフェン環あるいはそれらにさらに芳香環または複素芳香環が縮合した環が好ましい。
【0100】
このような正孔輸送性を有する物質は、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格のいずれかを有していることがより好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。なお、これら正孔輸送性を有する物質が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する物質であると、寿命の良好な発光デバイスを作製することができるため好ましい。
【0101】
以上のような正孔輸送性を有する物質としては、具体的には、N-(4-ビフェニル)-6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BnfABP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)、4,4’-ビス(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:BnfBB1BP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-アミン(略称:BBABnf(6))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf(8))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン-4-アミン(略称:BBABnf(II)(4))、N,N-ビス[4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-4-アミノ-p-ターフェニル(略称:DBfBB1TP)、N-[4-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-N-フェニル-4-ビフェニルアミン(略称:ThBA1BP)、4-(2-ナフチル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)、4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNBi)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7-フェニル)ナフチル-2-イルトリフェニルアミン(略称:BBAPβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(4;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(5;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB-02)、4-(4-ビフェニリル)-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNB)、4-(3-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:mTPBiAβNBi)、4-(4-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNBi)、4-フェニル-4’-(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBA1BP)、4,4’-ビス(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBB1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]トリフェニルアミン(略称:YGTBi1BP)、4’-[4-(3-フェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]トリス(ビフェニル-4-イル)アミン(略称:YGTBi1BP-02)、4-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:YGTBiβNB)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBNBSF)、N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:BBASF)、N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:BBASF(4))、N-(ビフェニル-2-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:oFBiSF)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ジベンゾフラン-4-アミン(略称:FrBiF)、N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-N-[3-(6-フェニルジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-1-ナフチルアミン(略称:mPDBfBNBN)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-[4-(9-フェニルフルオレン-9-イル)フェニル]トリフェニルアミン(略称:BPAFLBi)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-4-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-3-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-2-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-1-アミン、9-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-3,9’-ビ-9H-カルバゾール(略称:PSiCzCz)、9’-フェニル-9’H-9,3’:6’,9’’-ターカルバゾール(略称:PSiCzGI)等を挙げることができる。
【0102】
また、正孔輸送性を有する物質としては、その他芳香族アミン化合物として、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を用いることもできる。
【0103】
正孔注入層111を形成することによって、正孔の注入性が良好となり、駆動電圧の小さい発光デバイスを得ることができる。
【0104】
なお、アクセプタ性を有する物質の中でもアクセプタ性を有する有機化合物は蒸着が容易で成膜がしやすいため、用いやすい材料である。
【0105】
正孔輸送層(第1の正孔輸送層112_1、第2の正孔輸送層112_2)は、正孔輸送性を有する有機化合物を含んで形成される。正孔輸送性を有する有機化合物としては、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有していることが好ましい。
【0106】
上記正孔輸送性を有する物質としては、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:TPD)、N,N’-ビス(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、9,9’-ビス(ビフェニル-4-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:BisBPCz)、9,9’-ビス(ビフェニル-3-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:BismBPCz)、9-(ビフェニル-3-イル)-9’-(ビフェニル-4-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:mBPCCBP)、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)、9-(3-ビフェニル)-9’-(2-ナフチル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:βNCCmBP)、9-(4-ビフェニル)-9’-(2-ナフチル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:βNCCBP)、9,9’-ジ-2-ナフチル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール(略称:BisβNCz)、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-3-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-3-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-5’-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-フェニル-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール(略称:PCCzTp)、9,9’-ビス(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(4-ビフェニル)-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(トリフェニレン-2-イル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-1-アミン、9-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-3,9’-ビ-9H-カルバゾール(略称:PSiCzCz)などのカルバゾール骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。また、正孔注入層111の複合材料に用いられる正孔輸送性を有する物質として挙げた有機化合物も正孔輸送層112を構成する材料として好適に用いることができる。なお、以上に挙げた有機化合物が適宜重水素化された有機化合物も同様に用いることができる。
【0107】
なお、第1の正孔輸送層112_1と第2の正孔輸送層112_2は、同じ骨格を含む有機化合物を有していることが好ましく、同じ化合物を有していることがより好ましい。
【0108】
発光層(第1の発光層113_1、第2の発光層113_2)は発光中心物質とホスト材料を有していることが好ましい。なお、発光層は、その他の材料を同時に含んでいても構わない。
【0109】
また、第1の発光層113_1と、第2の発光層113_2は、類似の色の発光を呈する発光層であることが好ましい。例えば、表示装置においてはフルカラーを表現するために、赤、緑、青の画素が用いられることが多いが、赤の画素に用いる発光デバイスの場合は、第1の発光層113_1及び第2の発光層113_2はどちらも赤の発光を呈する発光層であり、緑の画素に用いられる場合は、二つの発光層はどちらも緑の発光を呈する発光層であり、青の画素の場合はどちらも青の発光を呈する。また、この際、第1の発光層113_1に含まれる発光中心物質と第2の発光層113_2に含まれる発光中心物質は、その発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差が30nm以下である化合物であることが好ましく、20nm以下である化合物であることがより好ましく、10nm以下である化合物であることがさらに好ましい。なお、第1の発光層113_1に含まれる発光中心物質と第2の発光層113_2に含まれる発光中心物質が同じであることがより好ましい。
【0110】
発光中心物質は蛍光発光物質であっても、燐光発光物質であっても、熱活性化遅延蛍光(TADF)を示す物質であっても、その他の発光物質であっても構わない。
【0111】
発光層において、発光中心物質として用いることができる蛍光発光物質としては、例えば以下のようなものが挙げられる。また、これ以外の蛍光発光物質も用いることができる。
【0112】
5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス(N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン)(略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、9,10-ジフェニル-2-[N-フェニル-N-(9-フェニル-カルバゾール-3-イル)-アミノ]-アントラセン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10-ビス(ビフェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、5,12-ビス(ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、N,N’-ジフェニル-N,N’-(1,6-ピレン-ジイル)ビス[(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-03)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン-3,10-ジアミン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)-02)、3,10-ビス[N-(ジベンゾフラン-3-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10FrA2Nbf(IV)-02)などが挙げられる。特に、1,6FLPAPrnおよび1,6mMemFLPAPrn、1,6BnfAPrn-03のようなピレンジアミン化合物に代表される縮合芳香族ジアミン化合物は、ホールトラップ性が高く、発光効率または信頼性に優れているため好ましい。
【0113】
発光層において、発光中心物質として用いることが可能な燐光発光物質としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0114】
トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(mpptz-dmp)])、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz)])、のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1-mp)])、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1-Me)])のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、fac-トリス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpim)])、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt-Me)])、トリス(2-{1-[2,6-ビス(1-メチルエチル)フェニル]-1H-イミダゾール-2-イル-κN3}-4-シアノフェニル-κC)イリジウム(III)(略称:CNImIr)のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス[(6-tert-ブチル-3-フェニル-2H-イミダゾ[4,5-b]ピラジン-1-イル-κC2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(cb)])のようなベンズイミダゾリデン骨格を有する有機金属錯体、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CFppy)(pic)])、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体、(2-{3-[3-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾイミダゾール-1-イル-2-イリデン-κC2]フェノキシ-κC2}-9-(4-tert-ブチル-2-ピリジニル-κN)カルバゾール-2,1-ジイル-κC1)白金(II)(略称:PtON-TBBI)などの白金錯体などが挙げられる。これらは青色の燐光発光を示す化合物であり、450nmから520nmまでの波長域において発光のピークを有する化合物である。また、これらの化合物が有する水素を一部重水素とした化合物も用いることができる。
【0115】
また、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6-(2-ノルボルニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)(acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-Me)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-iPr)(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)])、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)])、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)])、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)(acac)])、[2-d3-メチル-8-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(5-d-メチル-2-ピリジニル-κN2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(5mppy-d(mbfpypy-d))、{2-(メチル-d)-8-[4-(1-メチルエチル-1-d)-2-ピリジニル-κN]ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-7-イル-κC}ビス{5-(メチル-d)-2-[5-(メチル-d)-2-ピリジニル-κN]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(5mtpy-d6)(mbfpypy-iPr-d))、[2-d-メチル-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)(mbfpypy-d))、[2-(4-メチル-5-フェニル-2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)(mdppy))、[2-(4-d-メチル-5-フェニル-2-ピリジニル-κN2)フェニル-κC]ビス[2-(5-d-メチル-2-ピリジニル-κN2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mppy-d)2(mdppy-d)])、[2-メチル-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)(mbfpypy)])、[2-(4-メチル-5-フェニル-2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(略称:[Ir(ppy)(mdppy)])、トリス{2-[5-(メチル-d3)-4-フェニル-2-ピリジニル-κN]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(5m4dppy-d)のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは主に緑色の燐光発光を示す化合物であり、500nmから600nmまでの波長域において発光のピークを有する。なお、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性または発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。また、これらの化合物が有する水素を一部重水素とした化合物も用いることができる。
【0116】
また、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)(dibm)])、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)(dpm)])、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(d1npm)(dpm)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(acac)])、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)])、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)(acac)])、(3,7-ジエチル-4,6-ノナンジオナト-κO4,κO6)ビス[2,4-ジメチル-6-[7-(1-メチルエチル)-1-イソキノリニル-κN]フェニル-κC]イリジウム(III)、(3,7-ジエチル-4,6-ノナンジオナト-κO4,κO6)ビス[2,4-ジメチル-6-[5-(1-メチルエチル)-2-キノリニル-κN]フェニル-κC]イリジウム(III)のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)(Phen)])、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは、赤色の燐光発光を示す化合物であり、600nmから700nmまでの波長域において発光のピークを有する。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。また、これらの化合物が有する水素を一部重水素とした化合物も用いることができる。
【0117】
なお、本発明の一態様において、発光中心物質として、重水素化された化合物を用いることで、発光効率が向上する。そのため、発光中心物質は、重水素化された材料であることが好ましい。
【0118】
また、以上で述べた燐光性化合物の他、公知の燐光性化合物を選択し、用いてもよい。
【0119】
TADF材料としてはフラーレン及びその誘導体、アクリジン及びその誘導体、エオシン誘導体等を用いることができる。またマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、以下の構造式に示されるプロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(SnF(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtClOEP)等も挙げられる。
【0120】
【化4】
【0121】
また、以下の構造式に示される2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:PCCzTzn)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)、等のπ電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環の一方または両方を有する複素環化合物も用いることができる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が共に高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、およびトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため好ましい。特に、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプタ性が高く、信頼性が良好なため好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の少なくとも一を有することが好ましい。なお、フラン骨格としてはジベンゾフラン骨格が、チオフェン骨格としてはジベンゾチオフェン骨格が、それぞれ好ましい。また、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、インドロカルバゾール骨格、ビカルバゾール骨格、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格が特に好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環の電子供与性とπ電子不足型複素芳香環の電子受容性が共に強くなり、S1準位とT1準位のエネルギー差が小さくなるため、熱活性化遅延蛍光を効率よく得られることから特に好ましい。なお、π電子不足型複素芳香環の代わりに、シアノ基のような電子吸引基が結合した芳香環を用いても良い。また、π電子過剰型骨格として、芳香族アミン骨格、フェナジン骨格等を用いることができる。また、π電子不足型骨格として、キサンテン骨格、チオキサンテンジオキサイド骨格、オキサジアゾール骨格、トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、アントラキノン骨格、フェニルボラン、ボラントレン等の含ホウ素骨格、ベンゾニトリルまたはシアノベンゼン等のニトリル基またはシアノ基を有する芳香環、複素芳香環、ベンゾフェノン等のカルボニル骨格、ホスフィンオキシド骨格、スルホン骨格等を用いることができる。このように、π電子不足型複素芳香環およびπ電子過剰型複素芳香環の少なくとも一方の代わりにπ電子不足型骨格およびπ電子過剰型骨格を用いることができる。
【0122】
【化5】
【0123】
また、TADF材料として、一重項励起状態と三重項励起状態間が熱平衡状態にあるTADF材料を用いてもよい。このようなTADF材料は発光寿命(励起寿命)が短くなるため、発光デバイスにおける高輝度領域での効率低下を抑制することができる。具体的には、下記に示す分子構造のような材料が挙げられる。
【0124】
【化6】
【0125】
なお、TADF材料とは、S1準位とT1準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起エネルギーから一重項励起エネルギーへエネルギーを変換することができる機能を有する材料である。そのため、三重項励起エネルギーをわずかな熱エネルギーによって一重項励起エネルギーにアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態を効率よく生成することができる。また、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる。
【0126】
また、2種類の物質で励起状態を形成する励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスまたはExciplexともいう)は、S1準位とT1準位との差が極めて小さく、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換することが可能なTADF材料としての機能を有する。
【0127】
なお、T1準位の指標としては、低温(例えば77Kから10K)で観測される燐光スペクトルを用いればよい。TADF材料としては、その蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS1準位とし、燐光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをT1準位とした際に、そのS1とT1の差が0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以下であることがさらに好ましい。
【0128】
また、TADF材料を発光物質として用いる場合、ホスト材料のS1準位はTADF材料のS1準位より高い方が好ましい。また、ホスト材料のT1準位はTADF材料のT1準位より高いことが好ましい。
【0129】
発光層のホスト材料としては、電子輸送性を有する材料および/または正孔輸送性を有する材料、上記TADF材料など様々なキャリア輸送材料を用いることができる。
【0130】
正孔輸送性を有する材料としては、アミン骨格、π電子過剰型複素芳香環骨格などを有する有機化合物が好ましい。π電子過剰型複素芳香環としては、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格の少なくともいずれか1を環に含む縮合芳香環が好ましく、具体的にはカルバゾール環、ジベンゾチオフェン環あるいはそれらにさらに芳香環または複素芳香環が縮合した環が好ましい。
【0131】
このような正孔輸送性を有する物質としては、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格のいずれかを有していることがより好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。なお、これら正孔輸送性を有する物質が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する有機化合物であると、寿命の良好な発光デバイスを作製することができるため好ましい。
【0132】
このような有機化合物としては、例えば、以下に挙げる有機化合物が好ましい。4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:TPD)、N,N’-ビス(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、3,9-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール(略称:PCCzPC)、9-(ビフェニル-4-イル)-9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:PCCzBP)、9,9’-ビス(ビフェニル-4-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:BisBPCz)、9,9’-ビス(ビフェニル-3-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:BismBPCz)、9-(ビフェニル-3-イル)-9’-(ビフェニル-4-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:mBPCCBP)、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)、9-(3-ビフェニル)-9’-(2-ナフチル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:βNCCmBP)、9-(4-ビフェニル)-9’-(2-ナフチル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:βNCCBP)、9,9’-ジ-2-ナフチル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール(略称:BisβNCz)、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-3-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-3-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-5’-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-フェニル-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール(略称:PCCzTp)、9,9’-ビス(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(4-ビフェニル)-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(トリフェニレン-2-イル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-1-アミン、9-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-3,9’-ビ-9H-カルバゾール(略称:PSiCzCz)、9’-フェニル-9’H-9,3’:6’,9’’-ターカルバゾール(略称:PSiCzGI)などのカルバゾール骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物またはカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。また、正孔輸送層における、正孔輸送性を有する材料の例として挙げた有機化合物も用いることができる。
【0133】
電子輸送性を有する材料としては、π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物が好ましい。π電子不足型複素芳香環骨格を有する有機化合物としては、例えばアゾール骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物およびトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物を挙げることができる。
【0134】
中でも、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)を有する複素芳香環を含む有機化合物またはピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。また、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプタ性が高く、信頼性が良好なため好ましい。
【0135】
π電子不足型複素芳香環骨格を有する有機化合物としては、例えば、以下に挙げる有機化合物が好ましい。2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)などのアゾール骨格を有する有機化合物、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)、バソフェナントロリン(略称:Bphen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、2,9-ジ(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBphen)、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)、2-[3-(2-トリフェニレニル)フェニル]-1,10-フェナントロリン(略称:mTpPPhen)、2-フェニル-9-(2-トリフェニレニル)-1,10-フェナントロリン(略称:Ph-TpPhen)、2-[4-(9-フェナントレニル)-1-ナフタレニル]-1,10-フェナントロリン(略称:PnNPhen)、2-[4-(2-トリフェニレニル)フェニル]-1,10-フェナントロリン(略称:pTpPPhen)などのピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-3,1’-ビフェニル-1-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mpPCBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-II)、9-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mDBtBPNfpr)、9-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-4-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9pmDBtBPNfpr)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)、9,9’-[ピリミジン-4,6-ジイルビス(ビフェニル-3,3’-ジイル)]ビス(9H-カルバゾール)(略称:4,6mCzBP2Pm)、8-(ビフェニル-4-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8BP-4mDBtPBfpm)、3,8-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ベンゾフロ[2,3-b]ピラジン(略称:3,8mDBtP2Bfpr)、4,8-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,8mDBtP2Bfpm)、8-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)(ビフェニル-3-イル)]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8mDBtBPNfpm)、8-[(2,2’-ビナフタレン)-6-イル]-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8(βN2)-4mDBtPBfpm)、2,2’-(ピリジン-2,6-ジイル)ビス(4-フェニルベンゾ[h]キナゾリン)(略称:2,6(P-Bqn)2Py)、2,2’-(ピリジン-2,6-ジイル)ビス{4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-6-フェニルピリミジン}(略称:2,6(NP-PPm)2Py)、6-(ビフェニル-3-イル)-4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニルピリミジン(略称:6mBP-4Cz2PPm)、2,6-ビス(4-ナフタレン-1-イルフェニル)-4-[4-(3-ピリジル)フェニル]ピリミジン(略称:2,4NP-6PyPPm)、4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニル-6-(ビフェニル-4-イル)ピリミジン(略称:6BP-4Cz2PPm)、7-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)キナゾリン-2-イル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:PC-cgDBCzQz)、8-(1,1’:4’,1’’-テルフェニル-3-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8mpTP-4mDBtPBfpm)などのジアジン骨格を有する有機化合物、2-(ビフェニル-4-イル)-4-フェニル-6-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:BP-SFTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn-02)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)、2-[3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mFBPTzn)、5-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-7,7-ジメチル-5H,7H-インデノ[2,1-b]カルバゾール(略称:mINc(II)PTzn)、2-{3-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mDBtBPTzn)、2,4,6-トリス[3’-(ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル]-1,3,5-トリアジン(略称:TmPPPyTz)、2-[3-(2,6-ジメチル-3-ピリジニル)-5-(9-フェナントレニル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mPn-mDMePyPTzn)、11-[4-(ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル]-11,12-ジヒドロ-12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール(略称:BP-Icz(II)Tzn)、2-[3’-(トリフェニレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mTpBPTzn)、3-[9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-2-ジベンゾフラニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCDBfTzn)、2-(ビフェニル-3-イル)-4-フェニル-6-{8-[(1,1’:4’,1’’-ターフェニル)-4-イル]-1-ジベンゾフラニル}-1,3,5-トリアジン(略称:mBP-TPDBfTzn)、2-[4-(2-ナフタレニル)フェニル]-4-フェニル-6-スピロ[9H-フルオレン-9,9’-[9H]キサンテン]-4-イル-1,3,5-トリアジン(略称:βNP-SFx(4)Tzn)、9,9’-{6-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}ビス(9H-カルバゾール)(略称:SiTrzCz2)、2-フェニル-4,6-ビス[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-1,3,5-トリアジン(略称:mSiTrz)、11-[4-(ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル]-11,12-ジヒドロ-12-(ビフェニル-3-イル)インドロ[2,3-a]カルバゾール(略称:BP-mBPIcz(II)Tzn)、3-{3-[9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-2-ジベンゾフラニル]フェニル}-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:mPCPDBfTzn)、9,9’-[6-(ビフェニル4-イル)-2-フェニル-1,3,5-トリアジン-4,3’’-ジイル]ビス(9H-カルバゾール)(略称:Cz-pmCzBPTzn)、3-フェニル-9-[4-フェニル-6-(9-フェニル-3-ジベンゾフラニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-9H-カルバゾール(略称:PDBf-PCzTzn)、9-[4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-2-ジベンゾチエニル]-2-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCzDBtTzn)などのトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物が挙げられる。また、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物またはピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0136】
ホスト材料として用いることが可能なTADF材料としては、先に発光中心物質として用いることが可能なTADF材料として挙げたものを同様に用いることができる。TADF材料をホスト材料として用いると、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが、逆項間交差によって一重項励起エネルギーに変換され、さらに発光物質へエネルギー移動することで、発光デバイスの発光効率を高めることができる。このとき、TADF材料がエネルギードナーとして機能し、発光物質がエネルギーアクセプターとして機能する。
【0137】
これは、上記発光物質が蛍光発光物質である場合に、非常に有効である。また、このとき、高い発光効率を得るためには、TADF材料のS1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。また、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。したがって、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のT1準位より高いことが好ましい。
【0138】
また、蛍光発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈するTADF材料を用いることが好ましい。そうすることで、TADF材料から蛍光発光物質への励起エネルギーの移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため、好ましい。
【0139】
また、効率良く三重項励起エネルギーから逆項間交差によって一重項励起エネルギーが生成されるためには、TADF材料でキャリア再結合が生じることが好ましい。また、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが蛍光発光物質の三重項励起エネルギーに移動しないことが好ましい。そのためには、蛍光発光物質は、蛍光発光物質が有する発光団(発光の原因となる骨格)の周囲に保護基を有すると好ましい。該保護基としては、π結合を有さない置換基が好ましく、飽和炭化水素が好ましく、具体的には炭素数3以上10以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上10以下のトリアルキルシリル基が挙げられ、保護基が複数あるとさらに好ましい。π結合を有さない置換基は、キャリアを輸送する機能に乏しいため、キャリア輸送またはキャリア再結合に影響をほとんど与えずに、TADF材料と蛍光発光物質の発光団との距離を遠ざけることができる。ここで、発光団とは、蛍光発光物質において発光の原因となる原子団(骨格)を指す。発光団は、π結合を有する骨格が好ましく、芳香環を含むことが好ましく、縮合芳香環または縮合複素芳香環を有すると好ましい。このような発光団としては、例えば、フェナントレン骨格、スチルベン骨格、アクリドン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格等が挙げられる。特にナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格を有する蛍光発光物質は蛍光量子収率が高いため好ましい。
【0140】
蛍光発光物質を発光中心物質として用いる場合、ホスト材料としては、アントラセン骨格を有する材料が好適である。アントラセン骨格を有する物質を蛍光発光物質のホスト材料として用いると、発光効率、耐久性共に良好な発光層を実現することが可能である。ホスト材料として用いるアントラセン骨格を有する物質としては、ジフェニルアントラセン骨格、特に9,10-ジフェニルアントラセン骨格を有する物質が化学的に安定であるため好ましい。また、ホスト材料がカルバゾール骨格を有する場合、正孔の注入・輸送性が高まるため好ましいが、カルバゾールにベンゼン環がさらに縮合したベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾール骨格よりもHOMOが0.1eV程度高くなり、正孔が入りやすくなるためより好ましい。特に、ホスト材料がジベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾール骨格よりもHOMOが0.1eV程度高くなり、正孔が入りやすくなる上に、正孔輸送性にも優れ、耐熱性も高くなるため好適である。したがって、さらにホスト材料として好ましいのは、9,10-ジフェニルアントラセン骨格およびカルバゾール骨格(あるいはベンゾカルバゾール骨格またはジベンゾカルバゾール骨格)を同時に有する物質である。なお、上記の正孔注入・輸送性の観点から、カルバゾール骨格に換えて、ベンゾフルオレン骨格またはジベンゾフルオレン骨格を用いてもよい。このような物質の例としては、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン(略称:2mBnfPPA)、9-フェニル-10-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)ビフェニル-4’-イル]アントラセン(略称:FLPPA)、9-(1-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-βNPAnth)、9-(1-ナフチル)-10-(2-ナフチル)アントラセン(略称:α,βADN)、2-(10-フェニルアントラセン-9-イル)ジベンゾフラン、2-(10-フェニル-9-アントラセニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン(略称:Bnf(II)PhA)、9-(2-ナフチル)-10-[3-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:βN-mβNPAnth)、1-{4-[10-(ビフェニル-4-イル)-9-アントラセニル]フェニル}-2-エチル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:EtBImPBPhA)、等が挙げられる。特に、CzPA、cgDBCzPA、2mBnfPPA、PCzPAは非常に良好な特性を示すため、好ましい選択である。
【0141】
なお、ホスト材料は複数種の物質を混合した材料であっても良く、混合したホスト材料を用いる場合は、電子輸送性を有する材料と、正孔輸送性を有する材料とを混合することが好ましい。電子輸送性を有する材料と、正孔輸送性を有する材料を混合することによって、発光層113の輸送性を容易に調整することができ、再結合領域の制御も簡便に行うことができる。正孔輸送性を有する材料と電子輸送性を有する材料の含有量の重量比は、正孔輸送性を有する材料:電子輸送性を有する材料=1:19~19:1とすればよい。
【0142】
なお、上記混合された材料の一部として、燐光発光物質を用いることができる。燐光発光物質は、発光物質として蛍光発光物質を用いる際に蛍光発光物質へ励起エネルギーを供与するエネルギードナーとして用いることができる。
【0143】
また、これら混合された材料同士で励起錯体を形成しても良い。当該励起錯体は発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈する励起錯体を形成するような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため好ましい。また、当該構成を用いることで駆動電圧も低下するため好ましい。
【0144】
なお、励起錯体を形成する材料の少なくとも一方は、燐光発光物質であってもよい。そうすることで、三重項励起エネルギーを逆項間交差によって効率よく一重項励起エネルギーへ変換することができる。
【0145】
効率よく励起錯体を形成する材料の組み合わせとしては、正孔輸送性を有する材料のHOMO準位が電子輸送性を有する材料のHOMO準位以上であると好ましい。また、正孔輸送性を有する材料のLUMO準位が電子輸送性を有する材料のLUMO準位以上であると好ましい。なお、材料のLUMO準位およびHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される材料の電気化学特性(還元電位および酸化電位)から導出することができる。
【0146】
なお、励起錯体の形成は、例えば正孔輸送性を有する材料の発光スペクトル、電子輸送性を有する材料の発光スペクトル、およびこれら材料を混合した混合膜の発光スペクトルを比較し、混合膜の発光スペクトルが、各材料の発光スペクトルよりも長波長シフトする(あるいは長波長側に新たなピークを持つ)現象を観測することにより確認することができる。あるいは、正孔輸送性を有する材料の過渡フォトルミネッセンス(PL)、電子輸送性を有する材料の過渡PL、及びこれら材料を混合した混合膜の過渡PLを比較し、混合膜の過渡PL寿命が、各材料の過渡PL寿命よりも長寿命成分を有する、あるいは遅延成分の割合が大きくなるなどの過渡応答の違いを観測することにより、確認することができる。また、上述の過渡PLは過渡エレクトロルミネッセンス(EL)と読み替えても構わない。すなわち、正孔輸送性を有する材料の過渡EL、電子輸送性を有する材料の過渡EL及びこれらの混合膜の過渡ELを比較し、過渡応答の違いを観測することによっても、励起錯体の形成を確認することができる。
【0147】
第1の電子輸送層114_1は、電子輸送性を有する物質を含む層である。電子輸送性を有する材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-7cm/Vs以上好ましくは1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性が高い物質であれば、これら以外のものを用いることができる。なお、上記有機化合物としてはπ電子不足型複素芳香環を有する有機化合物が好ましい。π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物としては、例えばアゾール骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物およびトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物のいずれかまたは複数であることが好ましく、特にトリアジンであることが好ましい。
【0148】
上記第1の電子輸送層114_1に用いることが可能な電子輸送性を有する有機化合物としては、上記第1の発光層113_1および第2の発光層113_2におけるホスト材料の電子輸送性を有する有機化合物として用いることが可能な有機化合物を同様に用いることができる。中でも、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物またはピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0149】
第2の電子輸送層114_2は、前述したように、トリアジン骨格を含む第1の有機化合物を有する層である。詳細については、すでに説明したため割愛する。
【0150】
なお、第1の電子輸送層114_1は、トリアジン骨格を含む有機化合物を有していることが消費電力低減のため好ましい。特に、第2の電子輸送層114_2に含まれるトリアジン骨格を含む第1の有機化合物と同じトリアジン骨格を含む有機化合物を有することが、製造装置の複雑化を抑制し、原料調達コスト的にも有利となるため好ましい。
【0151】
また、第1の電子輸送層114_1は、トリアジン骨格を含まない有機化合物を有していることで、キャリアの輸送性の制御が容易となり、より特性の良好な発光デバイスを提供することが可能となる。トリアジン骨格を含まない有機化合物としては、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物が好ましい。
【0152】
中間層116は、フェナントロリン骨格を含む第2の有機化合物を含む層である。中間層116は、図1(A)のように、フェナントロリン骨格を含む第2の有機化合物を含む第1の層119を有することが好ましい。また、中間層116は、正孔輸送性を有する第5の有機化合物と、アクセプタ性を有する物質を含む第2の層117を有することが好ましい。なお、第2の層117は、第1の層119よりも第2の電極102側に位置する。また、中間層116は、第1の層119と第2の層117との間に第3の層118を有していてもよい。
【0153】
第1の層の詳細は、先に述べたため、繰り返しとなる記載は省略する。
【0154】
なお、第1の層119は、さらに電子輸送性を有する有機化合物を含んでいてもよい。当該有機化合物に用いることが可能な電子輸送性を有する有機化合物としては、上記第1の発光層113_1および第2の発光層113_2におけるホスト材料の電子輸送性を有する有機化合物として用いることが可能な有機化合物を同様に用いることができる。また、当該有機化合物としては、互いに結合または縮合した2以上の複素芳香環を有し、かつ当該2以上の複素芳香環は合計で3以上のヘテロ原子を有する有機化合物を用いると、よりフォトリソグラフィ法に対する耐性が向上し、駆動電圧の上昇を抑制できるため好ましい。
【0155】
なお、第1の層119は、有機化合物を含む層と、有機化合物を含む層より陰極側に位置する金属または金属化合物を有する層との積層構造である場合と、有機化合物と金属または金属化合物の混合層である場合があるが、混合層である方が成膜チャンバーが少なく製造コスト低減のため好ましく、発光デバイスの安定性向上にも寄与するため好ましい。
【0156】
有機化合物と金属または金属化合物とが混合している場合、第1の層119を膜厚方向に分析した際に、有機化合物の分布と金属または金属化合物の分布がおおむね同じ傾向を示す。すなわち、有機化合物の分布が一定である場合には、金属または金属化合物の分布もおおむね一定である。有機化合物を含む層と金属または金属化合物を有する層との積層構造である場合、金属または金属化合物が金属または金属化合物を有する層からの拡散により当該層以外の領域にも検出される場合があるが、有機化合物の分布と異なる分布を示すことから分析の結果を拡散と混合とで切り分けることができる。
【0157】
第2の層117は、正孔輸送性を有する第5の有機化合物を含むことが好ましい。また、第2の層117は、さらにアクセプタ性を示す物質を含むことが好ましく、アクセプタ性を示す物質は第5の有機化合物にアクセプタ性を示す有機化合物であることが好ましい。
【0158】
第2の層117が、第5の有機化合物と、当該第5の有機化合物にアクセプタ性を示す物質と、が含まれる層である場合、電荷分離により正孔が発生し、第1の電極101と第2の電極102との間に電圧が印加されることで当該正孔は、第5の有機化合物を介して陰極側の発光ユニットに注入される。これにより、本発明の一態様の発光デバイス130は、駆動電圧の低い発光デバイスとすることができる。
【0159】
正孔輸送性を有する第5の有機化合物としては、芳香族アミン化合物、複素芳香族化合物、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。なお、第5の有機化合物としては、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する有機化合物であることが好ましい。また、第5の有機化合物は、縮合芳香族炭化水素環、または、π電子過剰型複素芳香環を有する化合物であることが好ましい。縮合芳香族炭化水素環としては、アントラセン環、ナフタレン環等が好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環としては、ピロール骨格、フラン骨格、チオフェン骨格の少なくとも少なくとも一を含む縮合芳香環が好ましく、具体的にはカルバゾール環、ジベンゾチオフェン環あるいはそれらにさらに芳香環または複素芳香環が縮合した環が好ましい。
【0160】
このような正孔輸送性を有する有機化合物としては、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格のいずれかを有していることがより好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。なお、これら正孔輸送性を有する有機化合物が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する物質であると、寿命の良好な発光デバイスを作製することができるため好ましい。
【0161】
以上のような正孔輸送性を有する有機化合物としては、具体的には、正孔注入層111に用いることが可能な正孔輸送性を有する有機化合物として挙げた有機化合物を同様に用いることが可能である。
【0162】
アクセプタ性を有する物質としては、例えば、正孔注入層111に用いることが可能なアクセプタ性を有する有機化合物として挙げた物質を同様に用いることが可能である。特に、ハロゲン基およびシアノ基の少なくとも一を有する有機化合物が好ましく、フッ素およびシアノ基の少なくとも一を有する有機化合物がより好ましい。なお、当該有機化合物に含まれるハロゲン基(フッ素)およびシアノ基は合わせて4以上であることがさらに好ましい。ハロゲン基およびシアノ基の少なくとも一を有する有機化合物としては、例えば、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などを挙げることができる。
【0163】
なお、アクセプタ性を有する材料は、正孔輸送性を有する第5の有機化合物に対する電子受容性を有することが好ましい。アクセプタ性を有する材料が第5の有機化合物に電子受容性を有することで、電荷分離が生じて、第2の層117は電荷発生層として機能することができ、タンデムの中間層として機能する。また、第2の層117は、電子スピン共鳴で観測されるシグナルが観測されることが好ましい。例えば、g値2.00付近に観測されるシグナルに起因するスピン密度が1×1017spins/cm以上がより好ましく、1×1018spins/cm以上がより好ましく、1×1019spins/cm以上がさらに好ましい。
【0164】
第3の層118は、電子輸送性を有する物質を含み、第1の層119と第2の層117との間の相互作用を防ぎ、また電子の授受をスムーズにして駆動電圧を低減する、第1の層119と第2の層117との間の相互作用を低減し信頼性を向上するなどの機能を有する。
【0165】
第3の層118に含まれる電子輸送性を有する物質のLUMO準位は、第2の層117におけるアクセプタ性を有する物質のLUMO準位と、陽極側の発光ユニットにおける第1の層119に接する層(図1(A)では第1の発光ユニット501における第1の電子輸送層114_1)に含まれる有機化合物のLUMO準位との間であることが好ましい。
【0166】
また、第3の層118に用いられる電子輸送性を有する物質におけるLUMO準位の具体的なエネルギー準位は-5.0eV以上、好ましくは-5.0eV以上-3.0eV以下、より好ましくは-4.30eV以上-3.00eV以下、より好ましくは-4.30eV以上-3.30eV以下とすると駆動電圧の上昇を抑制でき好ましい。なお、第3の層118に用いられる電子輸送性を有する物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属-酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0167】
第3の層118に用いられる電子輸送性を有する物質としては、具体的には、ジキノキサリノ[2,3-a:2’,3’-c]フェナジン(略称:HATNA)、2,3,8,9,14,15-ヘキサフルオロジキノキサリノ[2,3-a:2’,3’-c]フェナジン(略称:HATNA-F6)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシル-ビス-ベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)などのペリレンテトラカルボン酸誘導体、(C60-Ih)[5,6]フラーレン(略称:C60)、(C70-D5h)[5,6]フラーレン(略称:C70)を用いることができる。また、ヘテロ環を含むシクロファン骨格であるヘテロファン骨格を有する化合物を用いることができ、当該化合物としては例えばフタロシアニン(略称:HPc)等のフタロシアニン化合物を用いることができる。また、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、亜鉛フタロシアニン(略称:ZnPc)、コバルトフタロシアニン(略称:CoPc)、鉄フタロシアニン(略称:FePc)、錫フタロシアニン(略称:SnPc)、酸化錫フタロシアニン(略称:SnOPc)、酸化チタンフタロシアニン(略称:TiOPc)、酸化バナジウムフタロシアニン(略称:VOPc)等の銅、亜鉛、コバルト、鉄、クロム、ニッケル、等を有する金属フタロシアニンおよびその誘導体、などを用いることができる。また、特に銅フタロシアニンまたは亜鉛フタロシアニンのような、フタロシアニン系の金属錯体または2,3,8,9,14,15-ヘキサフルオロジキノキサリノ[2,3-a:2’,3’-c]フェナジンが好ましい。
【0168】
また、第3の層118の膜厚は1nm以上10nm以下、好ましくは2nm以上5nm以下であることが好ましい。
【0169】
なお、中間層116における第2の層117が正孔注入層の機能を担うため、第2の発光ユニット502には正孔注入層を設けていないが、第2の発光ユニット502に正孔注入層を設けてもよい。
【0170】
第2の電極102は、陰極を含む電極である。第2の電極102は、積層構造を有していてもよく、その場合、有機化合物層103と接する層が陰極として機能する。陰極を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、リチウム(Li)またはセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等の元素周期表の第1族または第2族に属する元素、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。具体的には、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、8-ヒドロキシキノリナト-リチウム(略称:Liq)、のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、又はそれらの化合物もしくは錯体を含む層を用いることができる。エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。なお、これらの中から2以上を混合して用いてもよい。第2の電極102が積層構造を有する場合は、陰極以外は、仕事関数にかかわらず、導電性の良好な材料を用いることができる。
【0171】
なお、第2の電子輸送層114_2は、第2の電極102に接していることが好ましい。第2の電子輸送層114_2が第2の電極102と接していることで、電子注入性および電子輸送性に優れ、駆動電圧が低く消費電力が低い発光デバイスとすることができる。
【0172】
なお、第2の電極102を可視光に対し透過性を有する材料で形成した場合、第2の電極102側から光を発する発光デバイスとすることができる。
【0173】
これら導電性材料は、真空蒸着法またはスパッタリング法などの乾式法、インクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。また、ゾル-ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペーストを用いて湿式法で形成してもよい。
【0174】
また、有機化合物層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法またはスピンコート法など用いても構わない。
【0175】
また上述した各電極または各層を異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0176】
図1(C)には、本発明の一態様の表示装置に含まれる、隣り合う二つの発光デバイス(発光デバイス130a、発光デバイス130b)の図を示した。
【0177】
発光デバイス130aは、絶縁層175上において第1の電極101aと第2の電極102との間に有機化合物層103aを有している。有機化合物層103aは第1の発光ユニット501aと、第2の発光ユニット502aとが、中間層116aを挟んで積層した構成を有する。なお、図1(C)では2つの発光ユニットが積層する例を示したが、3つ以上の発光ユニットが積層する構成であってもよい。第1の発光ユニット501aは、正孔注入層111a、第1の正孔輸送層112a_1、第1の発光層113a_1、第1の電子輸送層114a_1を有する。中間層116aは、第2の層117a、第3の層118a、第1の層119aを有する。第3の層118aはあっても無くても構わない。第2の発光ユニット502aは、第2の正孔輸送層112a_2、第2の発光層113a_2、第2の電子輸送層114a_2を有する。
【0178】
発光デバイス130bは、絶縁層175上において第1の電極101bと第2の電極102との間に有機化合物層103bを有している。有機化合物層103bは第1の発光ユニット501bと、第2の発光ユニット502bとが、中間層116bを挟んで積層した構成を有する。なお、図1(C)では2つの発光ユニットが積層する例を示したが、3つ以上の発光ユニットが積層する構成であってもよい。第1の発光ユニット501bは、正孔注入層111b、第1の正孔輸送層112b_1、第1の発光層113b_1、第1の電子輸送層114b_1を有する。中間層116bは、第2の層117b、第3の層118b、第1の層119bを有する。第3の層118bはあっても無くても構わない。第2の発光ユニット502bは、第2の正孔輸送層112b_2、第2の発光層113b_2、第2の電子輸送層114b_2を有する。
【0179】
第2の電子輸送層114a_2および第2の電子輸送層114b_2はトリアジン骨格を含む第1の有機化合物を有する層である。第1の層119aおよび第1の層119bはフェナントロリン骨格を含む第2の有機化合物を含む層である。
【0180】
第1の発光層113a_1と第2の発光層113a_2は、類似の色の発光を呈する発光層であることが好ましい。また、互いに含まれる発光中心物質は、その発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差が30nm以下である化合物であることが好ましく、20nm以下である化合物であることがより好ましく、10nm以下である化合物であることがさらに好ましく、含まれる発光中心物質が同じであることが一層好ましい。第1の発光層113b_1と第2の発光層113b_2は類似の色の発光を呈する発光層であることが好ましい。また、互いに含まれる発光中心物質は、その発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差が30nm以下である化合物であることが好ましく、20nm以下である化合物であることがより好ましく、10nm以下である化合物であることがさらに好ましく、含まれる発光中心物質が同じであることが一層好ましい。
【0181】
また、第1の発光層113a_1と第1の発光層113b_1とは分離しており、第2の発光層113a_2と第2の発光層113b_2は分離していることが好ましい。また、第1の発光層113a_1および第2の発光層113a_2の発光色と、第1の発光層113b_1および第2の発光層113b_2の発光色は異なることが好ましい。また、第1の発光層113a_1に含まれる発光中心物質と第1の発光層113b_1に含まれる発光中心物質とは異なる物質であり、第2の発光層113a_2に含まれる発光中心物質と第2の発光層113b_2に含まれる発光中心物質は異なる物質であることが好ましい。
【0182】
なお、正孔注入層111aと正孔注入層111b、第1の正孔輸送層112a_1と第1の正孔輸送層112b_1、第1の電子輸送層114a_1と第1の電子輸送層114b_1、中間層116aと中間層116b(第2の層117aと第2の層117b、第3の層118aと第3の層118b、第1の層119aと第1の層119b)、第2の正孔輸送層112a_2と第2の正孔輸送層112b_2、および第2の電子輸送層114a_2と第2の電子輸送層114b_2、それぞれ連続した層であってもよいし、発光デバイス130aと発光デバイス130bとで各々独立に分離していてもよい。連続した層であることで、生産性が向上し、安価に発光デバイスを作成することができる。発光デバイスごとに分離した層であることによって、発光色に合わせた材料を用いることができ、特性の良好な発光デバイスまたは表示装置を作製することができる。特に、第2の電子輸送層114a_2と第2の電子輸送層114b_2は連続した層であることによって、発光デバイス130aと発光デバイス130bの両方を良好な特性を有する発光デバイスとすることができるため好ましい。
【0183】
一続きの連続した層であるということは、第2の電子輸送層114a_2と第2の電子輸送層114b_2とが同じ材料で構成された層であることを意味する。すなわち、第2の電子輸送層114a_2と第2の電子輸送層114b_2とが同じ材料で構成された層であることによって発光デバイス130aと発光デバイス130bの両方を良好な特性を有する発光デバイスとすることができる。また、第2の電子輸送層114a_2と第2の電子輸送層114b_2とが同様の構成を有する層であることがより好ましく、同じ構成を有する層であることがさらに好ましい。
【0184】
さらに、第1の発光層113a_1に含まれる発光中心物質と第1の発光層113b_1に含まれる発光中心物質とは異なる物質であり、第2の発光層113a_2に含まれる発光中心物質と第2の発光層113b_2に含まれる発光中心物質は異なる物質である場合(例えば、第1の発光層113a_1および第2の発光層113a_2が青色の蛍光発光層であり、第1の発光層113b_1および第2の発光層113b_2が緑色の燐光発光層のような場合、あるいは、第1の発光層113a_1および第2の発光層113a_2が青色の蛍光発光層であり、第1の発光層113b_1および第2の発光層113b_2が赤色の燐光発光層のような場合、あるいは、第1の発光層113a_1および第2の発光層113a_2が緑色の燐光発光層であり、第1の発光層113b_1および第2の発光層113b_2が赤色の燐光発光層のような場合)、発光デバイス130a、発光デバイス130bの発光層のキャリアバランスは各々異なる。したがって、通常、発光デバイス130a、発光デバイス130b各々の性能を引き出すには、各々に適切な中間層および電子輸送層を選択し、変えなければならない。しかしながら、第2の電子輸送層114a_2および第2の電子輸送層114b_2にはトリアジン骨格を含む第1の有機化合物を有する層を適用し、第1の層119aおよび第1の層119bにはフェナントロリン骨格を含む第2の有機化合物を含む層を適用することで、第2の電子輸送層114a_2と第2の電子輸送層114b_2とを同じ構成としたとしても、発光デバイス130a、発光デバイス130bの双方で性能を引き出すことができる。つまり、生産性向上と性能向上の双方を満たすことができる。なお、第1の層119aと第1の層119bとを同じ構成としてもよい。
【0185】
なお、一続きの連続した層とは、発光デバイス130aと発光デバイス130bの双方にまたがって形成される、いわゆる共通層(common layer)のことである。
【0186】
図2(A)は、図1(C)の変形例である。発光デバイス130aと、発光デバイス130b1は、発光色が異なる発光デバイスであるため、マイクロキャビティを用いて発光を増幅できる電極間の光路長が異なる。そこで、発光デバイス130b1では、発光層113b_11、発光層113b_21のように発光層の膜厚を厚くすることによって電極間の距離を調節することができる。または、正孔輸送層112b_21のように、機能層を厚膜化する、または追加することによって光路長を変化させてもよい。
【0187】
図2(B)は、本発明の一態様の表示装置に含まれる、隣り合う3つの発光デバイス(発光デバイス130a、発光デバイス130b1、発光デバイス130c)の図を示した。
【0188】
発光デバイス130cは、絶縁層175上において第1の電極101cと第2の電極102との間に有機化合物層103cを有している。有機化合物層103cは第1の発光ユニット501cと、第2の発光ユニット502cとが、中間層116cを挟んで積層した構成を有する。なお、図2(B)では2つの発光ユニットが積層する例を示したが、3つ以上の発光ユニットが積層する構成であってもよい。第1の発光ユニット501cは、正孔注入層111c、第1の正孔輸送層112c_1、第1の発光層113c_1、第1の電子輸送層114c_1を有する。中間層116cは、第2の層117c、第3の層118c、第1の層119cを有する。第3の層118cはあっても無くても構わない。第2の発光ユニット502cは、第2の正孔輸送層112c_2、第2の発光層113c_2、第2の電子輸送層114c_2を有する。
【0189】
発光デバイス130cの発光色は、発光デバイス130a及び発光デバイス130b1よりも短波長であることを想定している。発光デバイス130cの電極間距離は、第1の発光層113c_1及び第2の発光層113c_2の膜厚が他2つの発光デバイスにおける発光層より薄いことによって調節されている。
【0190】
第2の電子輸送層114c_2はトリアジン骨格を含む第1の有機化合物を有する層である。第1の層119cはフェナントロリン骨格を含む第2の有機化合物を含む層である。
【0191】
第1の発光層113c_1と第2の発光層113c_2は、類似の色の発光を呈する発光層であることが好ましい。また、互いに含まれる発光中心物質は、その発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差が30nm以下である化合物であることが好ましく、20nm以下である化合物であることがより好ましく、10nm以下である化合物であることがさらに好ましく、含まれる発光中心物質が同じであることが一層好ましい。
【0192】
また、第1の発光層113a_1と第1の発光層113c_1とは分離しており、第2の発光層113a_2と第2の発光層113c_2は分離していることが好ましい。また、第1の発光層113a_1および第2の発光層113a_2の発光色と、第1の発光層113c_1および第2の発光層113c_2の発光色は異なることが好ましい。また、第1の発光層113a_1に含まれる発光中心物質と第1の発光層113c_1に含まれる発光中心物質とは異なる物質であり、第2の発光層113a_2に含まれる発光中心物質と第2の発光層113c_2に含まれる発光中心物質は異なる物質であることが好ましい。
【0193】
なお、正孔注入層111aと正孔注入層111c、第1の正孔輸送層112a_1と第1の正孔輸送層112c_1、第1の電子輸送層114a_1と第1の電子輸送層114c_1、中間層116aと中間層116c(第2の層117aと第2の層117c、第3の層118aと第3の層118c、第1の層119aと第1の層119c)、第2の正孔輸送層112a_2と第2の正孔輸送層112c_2は発光デバイス130aと発光デバイス130cとで各々独立に分離している例を示し、第2の電子輸送層114a_2と第2の電子輸送層114c_2は連続した層である例を示した。このように一つの発光デバイスにおいて、連続する層と、分離する層が両方含まれていてもよい。これにより、生産性と特性のバランスの取れた発光デバイスまたは表示装置を作製することができる。特に、第2の電子輸送層114a_2と第2の電子輸送層114c_2は一続きの連続した層であることによって、発光デバイス130aと発光デバイス130cの両方を良好な特性を有する発光デバイスとすることができるため好ましい。
【0194】
例えば、三色の発光デバイスにおいて、発光中心物質が蛍光である発光デバイスが二つ、燐光である発光デバイスが一つであった場合、発光中心物質が蛍光である発光デバイスではキャリア輸送層を連続した層として形成し、発光中心物質が燐光である発光デバイスではキャリア輸送層を他の発光色を呈する発光デバイスと分離された層とすることが好ましい。または、三色の発光デバイスにおいて、発光中心物質が燐光である発光デバイスが二つ、蛍光である発光デバイスが一つであった場合、発光中心物質が燐光である発光デバイスではキャリア輸送層を連続した層として形成し、発光中心物質が蛍光である発光デバイスではキャリア輸送層を他の発光色を呈する発光デバイスと分離された層とすることが好ましい。
【0195】
このような構成を有する本発明の発光デバイスは、電流効率が高く、エネルギーロスが少なく、特性の良好な発光デバイスとすることが可能となる。このような発光デバイスを用いた本発明の一態様の表示装置では、消費電力が小さく、信頼性が高く、高輝度での表示が可能であり視認性の良好な表示装置とすることが可能である。また、本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0196】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に記載の発光デバイスを用いて作製された表示装置について図3を用いて説明する。なお、図3(A)は、表示装置を示す上面図、図3(B)は図3(A)をA-BおよびC-Dで切断した断面図である。この表示装置は、発光デバイスの発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース線駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート線駆動回路)603を含んでいる。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0197】
なお、引き回し配線608はソース線駆動回路601及びゲート線駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における表示装置には、表示装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0198】
次に、断面構造について図3(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース線駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0199】
素子基板610はガラス、石英、有機樹脂、金属、合金、半導体などからなる基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル樹脂等からなるプラスチック基板を用いて作製すればよい。
【0200】
画素および駆動回路に用いられるトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、逆スタガ型のトランジスタとしてもよいし、スタガ型のトランジスタとしてもよい。また、トップゲート型のトランジスタでもボトムゲート型トランジスタでもよい。トランジスタに用いる半導体材料は特に限定されず、例えば、シリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、窒化ガリウム等を用いることができる。または、In-Ga-Zn系金属酸化物などの、インジウム、ガリウム、亜鉛のうち少なくとも一つを含む酸化物半導体を用いてもよい。
【0201】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0202】
ここで、上記画素および駆動回路に設けられるトランジスタの他、後述するタッチセンサ等に用いられるトランジスタなどの半導体装置には、酸化物半導体を適用することが好ましい。特にシリコンよりもバンドギャップの広い酸化物半導体を適用することが好ましい。シリコンよりもバンドギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ状態における電流を低減できる。
【0203】
上記酸化物半導体は、少なくともインジウム(In)又は亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。また、In-M-Zn系酸化物(MはAl、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)で表記される酸化物を含む酸化物半導体であることがより好ましい。
【0204】
特に、半導体層として、複数の結晶部を有し、当該結晶部はc軸が半導体層の被形成面、または半導体層の上面に対し垂直に配向し、且つ隣接する結晶部間には粒界を有さない酸化物半導体膜を用いることが好ましい。
【0205】
半導体層としてこのような材料を用いることで、電気特性の変動が抑制され、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0206】
また、上述の半導体層を有するトランジスタはその低いオフ電流により、トランジスタを介して容量に蓄積した電荷を長期間に亘って保持することが可能である。このようなトランジスタを画素に適用することで、各表示領域に表示した画像の階調を維持しつつ、駆動回路を停止することも可能となる。その結果、極めて消費電力の低減された電子機器を実現できる。
【0207】
トランジスタの特性安定化等のため、下地膜を設けることが好ましい。下地膜としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜などの無機絶縁膜を用い、単層で又は積層して作製することができる。下地膜はスパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法(プラズマCVD法、熱CVD法、MOCVD(Metal Organic CVD)法など)、ALD(Atomic Layer Deposition)法、塗布法、印刷法等を用いて形成できる。なお、下地膜は、必要で無ければ設けなくてもよい。
【0208】
なお、FET623は駆動回路部601に形成されるトランジスタの一つを示すものである。また、駆動回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成すれば良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0209】
また、画素部602はスイッチング用FET611と、電流制御用FET612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成されているが、これに限定されず、3つ以上のFETと、容量素子とを組み合わせた画素部としてもよい。
【0210】
なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成することができる。
【0211】
また、後に形成する有機化合物層等の被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm~3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型の感光性樹脂、或いはポジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
【0212】
第1の電極613上には、有機化合物層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、またはケイ素を含有したインジウム錫酸化物膜、2~20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
【0213】
また、有機化合物層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。有機化合物層616は、実施の形態1で説明したような構成を含んでいる。また、有機化合物層616を構成する他の材料としては、低分子化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。
【0214】
さらに、有機化合物層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金および化合物(MgAg、MgIn、AlLi等)等)を用いることが好ましい。なお、有機化合物層616で生じた光が第2の電極617を透過させる場合には、第2の電極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2~20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、ケイ素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
【0215】
なお、第1の電極613、有機化合物層616、第2の電極617でもって、発光デバイスが形成されている。当該発光デバイスは実施の形態1に記載の発光デバイスである。なお、画素部は複数の発光デバイスが形成されてなっているが、本実施の形態における表示装置では、実施の形態1に記載の発光デバイスと、それ以外の構成を有する発光デバイスの両方が混在していても良い。
【0216】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光デバイス618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素、アルゴン等)が充填される場合の他、シール材で充填される場合もある。封止基板には凹部を形成し、そこに乾燥材を設けることで水分の影響による劣化を抑制することができ、好ましい構成である。
【0217】
なお、シール材605にはエポキシ樹脂、ガラスフリットを用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分および酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板、石英基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル樹脂等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0218】
図3(B)には示されていないが、第2の電極617上に保護膜を設けても良い。保護膜は有機樹脂膜、無機絶縁膜で形成すればよい。また、シール材605の露出した部分を覆うように、保護膜が形成されていても良い。また、保護膜は、一対の基板の表面及び側面、封止層、絶縁層、等の露出した側面を覆って設けることができる。
【0219】
保護膜には、水などの不純物を透過しにくい材料を用いることができる。したがって、水などの不純物が外部から内部に拡散することを効果的に抑制することができる。
【0220】
保護膜を構成する材料としては、酸化物、窒化物、フッ化物、硫化物、三元化合物、金属またはポリマー等を用いることができ、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、ハフニウムシリケート、酸化ランタン、酸化珪素、チタン酸ストロンチウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化スカンジウム、酸化エルビウム、酸化バナジウムまたは酸化インジウム等を含む材料、窒化アルミニウム、窒化ハフニウム、窒化珪素、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ニオブ、窒化モリブデン、窒化ジルコニウムまたは窒化ガリウム等を含む材料、チタンおよびアルミニウムを含む窒化物、チタンおよびアルミニウムを含む酸化物、アルミニウムおよび亜鉛を含む酸化物、マンガンおよび亜鉛を含む硫化物、セリウムおよびストロンチウムを含む硫化物、エルビウムおよびアルミニウムを含む酸化物、イットリウムおよびジルコニウムを含む酸化物等を含む材料を用いることができる。
【0221】
保護膜は、段差被覆性(ステップカバレッジ)の良好な成膜方法を用いて形成することが好ましい。このような手法の一つに、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法がある。ALD法を用いて形成することができる材料を、保護膜に用いることが好ましい。ALD法を用いることで緻密な、クラック、ピンホールなどの欠陥が低減された、または均一な厚さを備える保護膜を形成することができる。また、保護膜を形成する際に加工部材に与える損傷を、低減することができる。
【0222】
例えばALD法を用いて保護膜を形成することで、複雑な凹凸形状を有する表面、タッチパネルの上面、側面及び裏面にまで均一で欠陥の少ない保護膜を形成することができる。
【0223】
以上のようにして、実施の形態1に記載の発光デバイスを用いて作製された表示装置を得ることができる。
【0224】
本実施の形態における表示装置は、実施の形態1に記載の発光デバイスを用いているため、良好な特性を備えた表示装置を得ることができる。具体的には、実施の形態1に記載の発光デバイスは発光効率が高いため、消費電力の小さい表示装置とすることが可能である。また、実施の形態1に記載の発光デバイスは、信頼性が良好であることから、信頼性の良好な表示装置とすることができる。また、それに加えて実施の形態1に記載の発光デバイスは、色度および色純度の良好な発光デバイスとすることができることから、表示品質の良好な表示装置とすることができる。
【0225】
また、本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0226】
(実施の形態3)
発光デバイス130は図4(A)および図4(B)に例示したように、絶縁層175上に複数形成され表示装置を構成する。本実施の形態では、本発明の他の一態様の表示装置について詳しく説明する。
【0227】
表示装置100は、複数の画素178がマトリクス状に配列された画素部177を有する。画素178は、副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bを有する。
【0228】
本明細書等において、例えば副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bに共通する事項を説明する場合には、副画素110と呼称して説明する場合がある。アルファベットで区別する他の構成要素についても、これらに共通する事項を説明する場合には、アルファベットを省略した符号を用いて説明する場合がある。
【0229】
副画素110Rは赤色の光を呈し、副画素110Gは緑色の光を呈し、副画素110Bは青色の光を呈する。これにより、画素部177に画像を表示することができる。なお、本実施の形態では、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の副画素を例に挙げて説明するが、その他の色の副画素の組み合わせを用いてもよい。また、副画素は3つに限られず、4つ以上としてもよい。4つの副画素としては、例えば、R、G、B、白色(W)の4色の副画素、R、G、B、Yの4色の副画素、及び、R、G、B、赤外光(IR)の4つの副画素、等が挙げられる。
【0230】
本明細書等において、行方向をX方向、列方向をY方向という場合がある。X方向とY方向は交差し、例えば垂直に交差する。
【0231】
図4(A)では、異なる色の副画素がX方向に並べて配置されており、同じ色の副画素が、Y方向に並べて配置されている例を示す。なお、異なる色の副画素がY方向に並べて配置され、同じ色の副画素が、X方向に並べて配置されていてもよい。
【0232】
画素部177の外側には、接続部140が設けられ、領域141が設けられていてもよい。領域141が設けられる場合、領域141は画素部177と接続部140の間に設けられる。領域141が設けられる場合、領域141には、有機化合物層が設けられる。また、接続部140には、導電層151Cが設けられる。
【0233】
図4(A)では、領域141、及び接続部140が画素部177の右側に位置する例を示すが、領域141、及び接続部140の位置は特に限定されない。また、領域141、及び接続部140は、単数であっても複数であってもよい。
【0234】
図4(B)は、図4(A)における一点鎖線A1-A2間の断面図の例である。図4(B)に示すように、表示装置100は、絶縁層171と、絶縁層171上の導電層172と、絶縁層171上、及び導電層172上の絶縁層173と、絶縁層173上の絶縁層174と、絶縁層174上の絶縁層175と、を有する。絶縁層171は、基板(図示せず)上に設けられる。絶縁層175、絶縁層174、及び絶縁層173には、導電層172に達する開口が設けられ、当該開口を埋め込むようにプラグ176が設けられている。
【0235】
画素部177において、絶縁層175及びプラグ176上に、発光デバイス130が設けられる。また、発光デバイス130を覆うように、保護層131が設けられている。保護層131上には、樹脂層122によって基板120が貼り合わされている。また、隣り合う発光デバイス130の間には、無機絶縁層125と、無機絶縁層125上の絶縁層127と、が設けられていることが好ましい。
【0236】
図4(B)では、無機絶縁層125及び絶縁層127の断面が複数示されているが、表示装置100を上面から見た場合、無機絶縁層125及び絶縁層127は、それぞれ1つに繋がっていることが好ましい。
【0237】
図4(B)では、発光デバイス130として、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bを示している。発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bは、互いに異なる色の光を発するものとする。例えば、発光デバイス130Rは赤色の光を発することができ、発光デバイス130Gは緑色の光を発することができ、発光デバイス130Bは青色の光を発することができる。また、発光デバイス130R、発光デバイス130G、又は発光デバイス130Bは、他の可視光又は赤外光を発してもよい。
【0238】
本発明の一態様の表示装置は、例えば発光デバイスが形成されている基板とは反対方向に光を射出する上面射出型(トップエミッション型)とすることができる。なお、本発明の一態様の表示装置は、下面射出型(ボトムエミッション型)であってもよい。
【0239】
発光デバイス130Rは、導電層151Rと導電層152Rとからなる第1の電極101R(画素電極)と、第1の電極上の有機化合物層103Rと、有機化合物層103R上の共通層104と、共通層104上の第2の電極(共通電極)102と、を有する。なお、共通層104は、設けられていても設けられていなくても構わないが、設けられていることが加工時の有機化合物層103Rへのダメージを低減できることから好ましい。
【0240】
発光デバイス130Gは、導電層151Gと導電層152Gとからなる第1の電極101G(画素電極)と、第1の電極上の有機化合物層103Gと、有機化合物層103G上の共通層104と、共通層104上の第2の電極(共通電極)102と、を有する。なお、共通層104は、設けられていても設けられていなくても構わないが、設けられていることが加工時の有機化合物層103Gへのダメージを低減できることから好ましい。
【0241】
発光デバイス130Bは、実施の形態1に示したような構成を有する。導電層151Bと導電層152Bとからなる第1の電極101B(画素電極)と、第1の電極上の有機化合物層103Bと、有機化合物層103B上の共通層104と、共通層104上の第2の電極(共通電極)102と、を有する。なお、共通層104は、設けられていても設けられていなくても構わないが、設けられていることが加工時の有機化合物層103Bへのダメージを低減できることから好ましい。また、共通層104が設けられている場合、有機化合物層103Bと共通層104との積層構造が、実施の形態1における有機化合物層103に相当し、共通層104が設けられていない場合は、有機化合物層103Bが実施の形態1における有機化合物層103に相当する。
【0242】
なお、共通層104は、電子輸送層であることが好ましい。
【0243】
また、発光デバイス130Rおよび発光デバイス130Gもフォトリソグラフィ工程を経て作製される発光デバイスである。
【0244】
発光デバイス130が有する画素電極と共通電極のうち、一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。以下では、特に断りが無い場合は、画素電極が陽極として機能し、共通電極が陰極として機能するものとして説明する。
【0245】
有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bは、発光デバイス毎または、発光色毎に島状に独立している。有機化合物層103を発光デバイス130ごとに島状に設けることで、高精細な表示装置においても隣接する発光デバイス130間のリーク電流を抑制できる。これにより、クロストークを防ぐことができ、コントラストの極めて高い表示装置を実現できる。特に、低輝度における電流効率の高い表示装置を実現できる。
【0246】
島状の有機化合物層103は、有機化合物膜を成膜し、当該有機化合物膜をフォトリソグラフィ法を用いて加工することにより形成する。
【0247】
有機化合物層103は、発光デバイス130の第1の電極(画素電極)の上面及び側面を覆うように設けられることが好ましい。これにより、有機化合物層103の端部が画素電極の端部よりも内側に位置する構成に比べて、表示装置100の開口率を高めることが容易となる。また、発光デバイス130の画素電極の側面を有機化合物層103で覆うことで、画素電極と第2の電極102とが接することを抑制できるため、発光デバイス130のショートを抑制できる。
【0248】
また、本発明の一態様の表示装置では、発光デバイスの第1の電極(画素電極)を、積層構成とすることが好ましい。例えば、図4(B)に示す例では、発光デバイス130の第1の電極を、導電層151と、導電層152と、の積層構成としている。
【0249】
導電層151として、例えば金属材料を用いることができる。具体的には、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)等の金属、及びこれらを適宜組み合わせて含む合金を用いることもできる。
【0250】
導電層152として、インジウム、錫、亜鉛、ガリウム、チタン、アルミニウム、及びシリコンの中から選ばれるいずれか一又は複数を有する酸化物を用いることができる。例えば、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを含む酸化亜鉛、酸化チタン、ガリウムを含むインジウム亜鉛酸化物、アルミニウムを含むインジウム亜鉛酸化物、シリコンを含むインジウム錫酸化物、及びシリコンを含むインジウム亜鉛酸化物等のいずれか一又は複数を含む導電性酸化物を用いることが好ましい。特に、シリコンを含むインジウム錫酸化物は仕事関数が大きい、例えば仕事関数が4.0eV以上であるため、導電層152として好適に用いることができる。
【0251】
導電層151は、異なる材料を有する複数の層の積層構成であってもよく、導電層152は、異なる材料を有する複数の層の積層構成であってもよい。この場合、導電層151が、導電性酸化物等の導電層152に用いることができる材料を用いた層を有してもよく、また、導電層152が、金属材料等の導電層151に用いることができる材料を用いた層を有してもよい。例えば、導電層151が2層以上の積層構成である場合は、導電層152と接する層は、導電層152に用いることができる材料を用いた層とすることができる。
【0252】
続いて図4(A)に示す構成を有する表示装置100の作製方法の例を図5乃至図10を用いて説明する。
【0253】
[作製方法例1]
表示装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、又はALD法等を用いて形成できる。
【0254】
また、表示装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ法、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、又はナイフコート等の湿式の成膜方法により形成できる。
【0255】
また、表示装置を構成する薄膜を加工する際には、例えばフォトリソグラフィ法を用いて加工できる。
【0256】
フォトリソグラフィ法において、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、又はこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線、KrFレーザ光、又はArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外(EUV:Extreme Ultra-violet)光、又はX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。
【0257】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、又はサンドブラスト法等を用いることができる。
【0258】
まず、図5(A)に示すように、基板(図示せず)上に絶縁層171を形成する。続いて、絶縁層171上に導電層172、及び導電層179を形成し、導電層172、及び導電層179を覆うように絶縁層171上に絶縁層173を形成する。続いて、絶縁層173上に絶縁層174を形成し、絶縁層174上に絶縁層175を形成する。
【0259】
基板としては、少なくとも後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有する基板を用いることができる。例えばガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板、又は有機樹脂基板、シリコン又は炭化シリコン等を材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板等の半導体基板を用いることができる。
【0260】
続いて、図5(A)に示すように、絶縁層175、絶縁層174、及び絶縁層173に、導電層172に達する開口を形成する。続いて、当該開口を埋め込むように、プラグ176を形成する。
【0261】
続いて、図5(A)に示すように、プラグ176上、及び絶縁層175上に、後に導電層151R、導電層151G、導電層151B、及び導電層151Cとなる導電膜151f、導電層152R、導電層152G、導電層152B、及び導電層152Cとなる導電膜152fを形成する。導電膜151fとして、例えば金属材料を用いることができる。導電膜152fとしては、例えばインジウム、錫、亜鉛、ガリウム、チタン、アルミニウム、及びシリコンの中から選ばれるいずれか一又は複数を有する酸化物を用いることができる。
【0262】
続いて、図5(A)に示すように、導電膜152f上にレジストマスク191を形成する。レジストマスク191は、感光性材料(フォトレジスト)を塗布し、露光及び現像を行うことで形成できる。
【0263】
続いて、図5(B)に示すように、例えばレジストマスク191と重ならない領域の導電膜151fおよび導電膜152fを除去する。これにより、導電層151および導電層152が形成される。
【0264】
続いて、図5(C)に示すように、レジストマスク191を除去する。レジストマスク191は、例えば、酸素プラズマを用いたアッシングにより除去できる。
【0265】
続いて、図5(D)に示すように、導電層152R上、導電層152G上、導電層152B上、導電層152C上、及び絶縁層175上に、後に絶縁層156R、絶縁層156G、絶縁層156B、及び絶縁層156Cとなる絶縁膜156fを形成する。
【0266】
絶縁膜156fには、酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、酸化窒化絶縁膜、又は窒化酸化絶縁膜等の無機絶縁膜、例えば、酸化窒化シリコンを用いることができる。
【0267】
続いて、図5(E)に示すように、絶縁膜156fを加工することにより、絶縁層156R、絶縁層156G、絶縁層156B、及び絶縁層156Cを形成する。
【0268】
続いて、図6(A)に示すように、有機化合物膜103Rfを、導電層152R上、導電層152G上、導電層152B上、及び絶縁層175上に形成する。なお、図6(A)に示すように、導電層152C上には、有機化合物膜103Rfを形成していない。
【0269】
続いて、図6(A)に示すように、犠牲膜158Rf、マスク膜159Rfを形成する。
【0270】
有機化合物膜103Rf上に犠牲膜158Rfを設けることで、表示装置の作製工程中に有機化合物膜103Rfが受けるダメージを低減し、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0271】
犠牲膜158Rfには、有機化合物膜103Rfの加工条件に対する耐性の高い膜、具体的には、有機化合物膜103Rfとのエッチングの選択比が大きい膜を用いる。マスク膜159Rfには、犠牲膜158Rfとのエッチングの選択比が大きい膜を用いる。
【0272】
また、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfは、有機化合物膜103Rfの耐熱温度よりも低い温度で形成する。犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfを形成する際の基板温度としては、それぞれ、代表的には、100℃以上200℃以下、好ましくは100℃以上150℃以下、より好ましくは100℃以上120℃以下である。本発明の一態様の発光デバイスは、第1の有機化合物を含むことから、より高い温度での加熱工程を経ても表示品質の良好な表示装置を提供することができる。
【0273】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、ウェットエッチング法またはドライエッチング法により除去できる膜を用いることが好ましい。
【0274】
なお、有機化合物膜103Rf上に接して形成される犠牲膜158Rfは、マスク膜159Rfよりも、有機化合物膜103Rfへのダメージが少ない形成方法を用いて形成されることが好ましい。例えば、スパッタリング法よりも、ALD法(Atomic Layer Deposition法)又は真空蒸着法が好ましい。
【0275】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfとしては、それぞれ、例えば、金属膜、合金膜、金属酸化物膜、半導体膜、有機絶縁膜、及び、無機絶縁膜等のうち一種又は複数種を用いることができる。
【0276】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、それぞれ、例えば、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、チタン、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、及びタンタル等の金属材料、又は該金属材料を含む合金材料を用いることができる。特に、アルミニウム又は銀等の低融点材料を用いることが好ましい。犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfの一方又は双方に紫外線を遮蔽することが可能な金属材料を用いることで、有機化合物膜103Rfにパターン露光時の紫外線が照射されることを抑制でき、有機化合物膜103Rfの劣化を抑制できるため、好ましい。
【0277】
また、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、それぞれ、In-Ga-Zn酸化物、酸化インジウム、In-Zn酸化物、In-Sn酸化物、インジウムチタン酸化物(In-Ti酸化物)、インジウムスズ亜鉛酸化物(In-Sn-Zn酸化物)、インジウムチタン亜鉛酸化物(In-Ti-Zn酸化物)、インジウムガリウムスズ亜鉛酸化物(In-Ga-Sn-Zn酸化物)、シリコンを含むインジウムスズ酸化物等の金属酸化物を用いることができる。
【0278】
なお、上記金属酸化物においてガリウムに代えて元素M(Mは、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムから選ばれた一種又は複数種)を用いてもよい。
【0279】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfとしては、例えば、シリコン又はゲルマニウム等の半導体材料を用いることが、半導体の製造プロセスと親和性が高いため好ましい。又は、上記半導体材料を含む化合物を用いることができる。
【0280】
また、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfとしては、それぞれ、各種無機絶縁膜を用いることができる。特に、酸化絶縁膜は、窒化絶縁膜に比べて有機化合物膜103Rfとの密着性が高く好ましい。
【0281】
続いて、図6(A)に示すように、レジストマスク190Rを形成する。レジストマスク190Rは、感光性材料(フォトレジスト)を塗布し、露光及び現像を行うことで形成できる。
【0282】
レジストマスク190Rは、導電層152Rと重なる位置に設ける。レジストマスク190Rは、導電層152Cと重なる位置にも設けることが好ましい。これにより、導電層152Cが表示装置の作製工程中にダメージを受けることを抑制できる。
【0283】
続いて、図6(B)に示すように、レジストマスク190Rを用いて、マスク膜159Rfの一部を除去し、マスク層159Rを形成する。マスク層159Rは、導電層152R上と、導電層152C上と、に残存する。その後、レジストマスク190Rを除去する。続いて、マスク層159Rをマスク(ハードマスクともいう)に用いて、犠牲膜158Rfの一部を除去し、犠牲層158Rを形成する。
【0284】
ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfの加工時に、有機化合物膜103Rfに加わるダメージを低減できる。ウェットエッチング法を用いる場合、例えば、現像液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)などのアルカリ水溶液、希フッ酸、シュウ酸、リン酸、酢酸、硝酸、又はこれらの混合液体を用いた薬液等の酸水溶液を用いることが好ましい。
【0285】
また、犠牲膜158Rfの加工においてドライエッチング法を用いる場合は、エッチングガスに酸素を含むガスを用いないことで、有機化合物膜103Rfの劣化を抑制できる。
【0286】
レジストマスク190Rは、レジストマスク191と同様の方法で除去できる。
【0287】
続いて、図6(B)に示すように、有機化合物膜103Rfを加工して、有機化合物層103Rを形成する。例えば、マスク層159R及び犠牲層158Rをハードマスクに用いて、有機化合物膜103Rfの一部を除去し、有機化合物層103Rを形成する。
【0288】
これにより、図6(B)に示すように、導電層152R上に、有機化合物層103R、犠牲層158R、及び、マスク層159Rの積層構造が残存する。また、導電層152G及び導電層152Bは露出する。
【0289】
有機化合物膜103Rfの加工は、異方性エッチングにより行うことが好ましい。特に、異方性のドライエッチングが好ましい。又は、ウェットエッチングを用いてもよい。
【0290】
ドライエッチング法を用いる場合は、エッチングガスに酸素を含むガスを用いないことで、有機化合物膜103Rfの劣化を抑制できる。
【0291】
また、エッチングガスに酸素を含むガスを用いてもよい。エッチングガスが酸素を含むことで、エッチングの速度を速めることができる。したがって、エッチング速度を十分な速さに維持しつつ、低パワーの条件でエッチングを行うことができる。このため、有機化合物膜103Rfに与えるダメージを抑制できる。さらに、エッチング時に生じる反応生成物の付着等の不具合を抑制できる。
【0292】
ドライエッチング法を用いる場合、例えば、H、CF、C、SF、CHF、Cl、HO、BCl、又はHe、Ar等の第18族元素のうち、一種以上を含むガスをエッチングガスに用いることが好ましい。又は、これらの一種以上と、酸素を含むガスをエッチングガスに用いることが好ましい。又は、酸素ガスをエッチングガスに用いてもよい。
【0293】
続いて、図7(A)に示すように、後に有機化合物層103Gとなる有機化合物膜103Gfを形成する。
【0294】
有機化合物膜103Gfは、有機化合物膜103Rfの形成に用いることができる方法と同様の方法で形成できる。また、有機化合物膜103Gfは、有機化合物膜103Rfと同様の構成とすることができる。
【0295】
続いて、図7(A)に示すように犠牲膜158Gfとマスク膜159Gfとを順に形成する。その後、レジストマスク190Gを形成する。犠牲膜158Gf及びマスク膜159Gfの材料及び形成方法は、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfに適用できる条件と同様である。レジストマスク190Gの材料及び形成方法は、レジストマスク190Rに適用できる条件と同様である。
【0296】
レジストマスク190Gは、導電層152Gと重なる位置に設ける。
【0297】
続いて、図7(B)に示すように、レジストマスク190Gを用いて、マスク膜159Gfの一部を除去し、マスク層159Gを形成する。マスク層159Gは、導電層152G上に残存する。その後、レジストマスク190Gを除去する。続いて、マスク層159Gをマスクに用いて、犠牲膜158Gfの一部を除去し、犠牲層158Gを形成する。続いて、有機化合物膜103Gfを加工して、有機化合物層103Gを形成する。
【0298】
続いて、図7(C)に示すように、有機化合物膜103Bfを形成する。
【0299】
有機化合物膜103Bfは、有機化合物膜103Rfの形成に用いることができる方法と同様の方法で形成できる。また、有機化合物膜103Bfは、有機化合物膜103Rfと同様の構成とすることができる。
【0300】
続いて、図7(C)に示すように、犠牲膜158Bfとマスク膜159Bfとを順に形成する。その後、レジストマスク190Bを形成する。犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfの材料及び形成方法は、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfに適用できる条件と同様である。レジストマスク190Bの材料及び形成方法は、レジストマスク190Rに適用できる条件と同様である。
【0301】
レジストマスク190Bは、導電層152Bと重なる位置に設ける。
【0302】
続いて、図7(D)に示すように、レジストマスク190Bを用いて、マスク膜159Bfの一部を除去し、マスク層159Bを形成する。マスク層159Bは、導電層152B上に残存する。その後、レジストマスク190Bを除去する。続いて、マスク層159Bをマスクに用いて、犠牲膜158Bfの一部を除去し、犠牲層158Bを形成する。続いて、有機化合物膜103Bfを加工して、有機化合物層103Bを形成する。例えば、マスク層159B及び犠牲層158Bをハードマスクに用いて、有機化合物膜103Bfの一部を除去し、有機化合物層103Bを形成する。
【0303】
これにより、図7(D)に示すように、導電層152B上に、有機化合物層103B、犠牲層158B、及び、マスク層159Bの積層構造が残存する。また、マスク層159R、及びマスク層159Gは露出する。
【0304】
なお、有機化合物層103R、有機化合物層103G、有機化合物層103Bの側面は、それぞれ、被形成面に対して垂直又は概略垂直であることが好ましい。例えば、被形成面と、これらの側面との成す角度を、60度以上90度以下とすることが好ましい。
【0305】
上記のように、フォトリソグラフィ法を用いて形成した有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bのうち隣接する2つの間の距離は、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下、又は、1μm以下にまで狭めることができる。ここで、当該距離とは、例えば、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bのうち、隣接する2つの対向する端部の間の距離で規定できる。このように、島状の有機化合物層の間の距離を狭めることで、高い精細度と、大きな開口率を有する表示装置を提供できる。また、隣り合う発光デバイス間における第1の電極同士の距離も、狭めることができ、例えば10μm以下、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下とすることができる。なお、隣り合う発光デバイス間における第1の電極同士の距離は2μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0306】
続いて、図8(A)に示すように、マスク層159R、マスク層159G、及びマスク層159Bを除去することが好ましい。
【0307】
マスク層の除去工程には、マスク膜の加工工程と同様の方法を用いることができる。特に、ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、マスク層を除去する際に、有機化合物層103に加わるダメージを低減できる。
【0308】
また、マスク層を、水又はアルコール等の極性溶媒に溶解させることで除去してもよい。アルコールとしては、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、又はグリセリン等が挙げられる。
【0309】
マスク層を除去した後に、表面に吸着する水を除去するため、乾燥処理を行ってもよい。例えば、不活性ガス雰囲気又は減圧雰囲気下における加熱処理を行うことができる。加熱処理は、基板温度として50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上120℃以下の温度で行うことができる。減圧雰囲気とすることで、より低温で乾燥が可能であるため好ましい。
【0310】
続いて、図8(B)に示すように、無機絶縁膜125fを形成する。
【0311】
続いて、図8(C)に示すように、無機絶縁膜125f上に、後に絶縁層127となる絶縁膜127fを形成する。
【0312】
無機絶縁膜125f及び絶縁膜127fを形成する際の基板温度としては、それぞれ、60℃以上、80℃以上、100℃以上、又は、120℃以上、かつ、200℃以下、180℃以下、160℃以下、150℃以下、又は140℃以下であることが好ましい。
【0313】
無機絶縁膜125fとしては、上記の基板温度の範囲で、3nm以上、5nm以上、又は、10nm以上、かつ、200nm以下、150nm以下、100nm以下、又は、50nm以下の厚さの絶縁膜を形成することが好ましい。
【0314】
無機絶縁膜125fは、例えば、ALD法を用いて形成することが好ましい。ALD法を用いることで、成膜ダメージを小さくすることができ、また、被覆性の高い膜を成膜可能なため好ましい。無機絶縁膜125fとしては、例えば、ALD法を用いて、酸化アルミニウム膜を形成することが好ましい。
【0315】
絶縁膜127fは、前述の湿式の成膜方法を用いて形成することが好ましい。絶縁膜127fは、例えば、スピンコートにより、感光性材料を用いて形成することが好ましく、より具体的には、アクリル樹脂を含む感光性の樹脂組成物を用いて形成することが好ましい。
【0316】
続いて、露光を行って、絶縁膜127fの一部に、可視光線又は紫外線を感光させる。絶縁層127は、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bのいずれか2つに挟まれる領域、及び、導電層152Cの周囲に形成される。
【0317】
絶縁膜127fへの露光領域によって、後に形成する絶縁層127の幅を制御できる。本実施の形態では、絶縁層127が導電層151の上面と重なる部分を有するように加工する。
【0318】
露光に用いる光は、i線(波長365nm)を含むことが好ましい。また、露光に用いる光は、g線(波長436nm)、及びh線(波長405nm)の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0319】
続いて、図9(A)に示すように、現像を行って、絶縁膜127fの露光させた領域を除去し、絶縁層127aを形成する。
【0320】
続いて、図9(B)に示すように、絶縁層127aをマスクとして、エッチング処理を行って、無機絶縁膜125fの一部を除去し、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの一部の膜厚を薄くする。これにより、絶縁層127aの下に、無機絶縁層125が形成される。また、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの膜厚が薄い部分の表面が露出する。なお、以下では、絶縁層127aをマスクに用いたエッチング処理を、第1のエッチング処理ということがある。
【0321】
第1のエッチング処理は、ドライエッチング又はウェットエッチングによって行うことができる。なお、無機絶縁膜125fを、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bと同様の材料を用いて成膜していた場合、第1のエッチング処理を一括で行うことができるため、好ましい。
【0322】
ドライエッチングを行う場合、塩素系のガスを用いることが好ましい。塩素系ガスとしては、Cl、BCl、SiCl、及びCCl等を、単独又は2以上のガスを混合して用いることができる。また、上記塩素系ガスに、酸素ガス、水素ガス、ヘリウムガス、及びアルゴンガス等を、単独又は2以上のガスを混合して、適宜添加できる。ドライエッチングを用いることにより、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの膜厚が薄い領域を、良好な面内均一性で形成できる。
【0323】
ドライエッチング装置としては、高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置を用いることができる。高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置は、例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。又は、平行平板型電極を有する容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。
【0324】
また、第1のエッチング処理をウェットエッチングで行うことが好ましい。ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに加わるダメージを低減できる。例えば、ウェットエッチングは、アルカリ溶液を用いて行うことができる。例えば、酸化アルミニウム膜のウェットエッチングには、アルカリ溶液であるTMAHを用いることができる。また、フッ化物を含む酸溶液を用いることもできる。この場合、パドル方式でウェットエッチングを行うことができる。なお、無機絶縁膜125fを、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bと同様の材料を用いて成膜していた場合、上記エッチング処理を一括で行うことができるため、好ましい。
【0325】
第1のエッチング処理では、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを完全に除去せず、膜厚が薄くなった状態でエッチング処理を停止する。このように、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103B上に、対応する犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを残存させておくことで、後の工程の処理で、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bが損傷することを防ぐことができる。
【0326】
続いて、基板全体に露光を行い、可視光線又は紫外線を絶縁層127aに照射することが好ましい。当該露光のエネルギー密度は、0mJ/cmより大きく、800mJ/cm以下とすることが好ましく、0mJ/cmより大きく、500mJ/cm以下とすることがより好ましい。現像後にこのような露光を行うことで、絶縁層127aの透明度を向上させることができる場合がある。また、後の工程における、絶縁層127aをテーパ形状に変形させる加熱処理に必要とされる基板温度を低下させることができる場合がある。
【0327】
ここで、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bとして、酸素に対するバリア絶縁層(例えば、酸化アルミニウム膜等)が存在することで、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに酸素が拡散することを低減できる。
【0328】
続いて、加熱処理(ポストベークともいう)を行う。加熱処理を行うことで、絶縁層127aを、側面にテーパ形状を有する絶縁層127に変形させることができる(図9(C))。当該加熱処理は、有機化合物層の耐熱温度よりも低い温度で行う。加熱処理は、基板温度として50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上130℃以下の温度で行うことができる。加熱雰囲気は、大気雰囲気であってもよく、不活性ガス雰囲気であってもよい。また、加熱雰囲気は、大気圧雰囲気であってもよく、減圧雰囲気であってもよい。これにより、絶縁層127と無機絶縁層125との密着性を向上させ、絶縁層127の耐食性も向上させることができる。
【0329】
第1のエッチング処理にて、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを完全に除去せず、膜厚が薄くなった状態の犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを残存させておくことで、当該加熱処理において、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bがダメージを受けて劣化することを防ぐことができる。したがって、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0330】
続いて、図10(A)に示すように、絶縁層127をマスクとして、エッチング処理を行って、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの一部を除去する。これにより、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bそれぞれに開口が形成され、有機化合物層103R、有機化合物層103G、有機化合物層103B、及び導電層152Cの上面が露出する。なお、以下では、このエッチング処理を、第2のエッチング処理ということがある。
【0331】
無機絶縁層125の端部は絶縁層127で覆われている。また、図10(A)では、犠牲層158Gの端部の一部(具体的には、第1のエッチング処理により形成されたテーパ形状の部分)を絶縁層127が覆い、第2のエッチング処理により形成されたテーパ形状の部分は露出している例を示す。
【0332】
第2のエッチング処理はウェットエッチングで行う。ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに加わるダメージを低減できる。ウェットエッチングは、例えばアルカリ溶液または酸性溶液を用いて行うことができる。有機化合物層103が溶けないように、水溶液であることが好ましい。
【0333】
続いて、図10(B)に示すように、有機化合物層103R上、有機化合物層103G上、有機化合物層103B上、導電層152C上、及び絶縁層127上に共通電極155を形成する。共通電極155は、スパッタリング法、又は真空蒸着法等の方法で形成できる。
【0334】
続いて、図10(C)に示すように、共通電極155上に保護層131を形成する。保護層131は、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、又はALD法等の方法で形成できる。
【0335】
続いて、樹脂層122を用いて、保護層131上に、基板120を貼り合わせることで、表示装置を作製できる。前述のように、本発明の一態様の表示装置の作製方法では、導電層151の側面と重なる領域を有するように絶縁層156を設け、且つ導電層151及び絶縁層156を覆うように導電層152を形成する。これにより、表示装置の歩留まりを高め、また不良の発生を抑制できる。
【0336】
以上のように、本発明の一態様の表示装置の作製方法では、島状の有機化合物層103R、島状の有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bは、ファインメタルマスクを用いて形成されるのではなく、膜を一面に成膜した後に加工することで形成されるため、島状の層を均一の厚さで形成できる。そして、高精細な表示装置又は高開口率の表示装置を実現できる。また、精細度又は開口率が高く、副画素間の距離が極めて短くても、隣接する副画素において、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び、有機化合物層103Bが互いに接することを抑制できる。したがって、副画素間にリーク電流が発生することを抑制できる。これにより、クロストークを防ぐことができ、コントラストの極めて高い表示装置を実現できる。また、フォトリソグラフィ法を用いて作製されたタンデム型の発光デバイスを有する表示装置であっても、良好な特性の表示装置を提供することができる。
【0337】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置について説明する。
【0338】
本実施の形態の表示装置は、高精細な表示装置とすることができる。したがって、本実施の形態の表示装置は、例えば、腕時計型、及び、ブレスレット型等の情報端末機(ウェアラブル機器)の表示部、並びに、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)等のVR向け機器、及び、メガネ型のAR向け機器等の頭部に装着可能なウェアラブル機器の表示部に用いることができる。
【0339】
また、本実施の形態の表示装置は、高解像度な表示装置又は大型な表示装置とすることができる。したがって、本実施の形態の表示装置は、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用等のモニタ、デジタルサイネージ、及び、パチンコ機等の大型ゲーム機等の比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、及び、音響再生装置の表示部に用いることができる。
【0340】
[表示モジュール]
図11(A)に、表示モジュール280の斜視図を示す。表示モジュール280は、表示装置100Aと、FPC290と、を有する。なお、表示モジュール280が有する表示装置は表示装置100Aに限られず、後述する表示装置100B乃至表示装置100Eのいずれかであってもよい。
【0341】
表示モジュール280は、基板291及び基板292を有する。表示モジュール280は、表示部281を有する。表示部281は、表示モジュール280における画像を表示する領域であり、後述する画素部284に設けられる各画素からの光を視認できる領域である。
【0342】
図11(B)に、基板291側の構成を模式的に示した斜視図を示している。基板291上には、回路部282と、回路部282上の画素回路部283と、画素回路部283上の画素部284と、が積層されている。また、基板291上の画素部284と重ならない部分に、FPC290と接続するための端子部285が設けられている。端子部285と回路部282とは、複数の配線により構成される配線部286により電気的に接続されている。
【0343】
画素部284は、周期的に配列した複数の画素284aを有する。図11(B)の右側に、1つの画素284aの拡大図を示している。画素284aには、先の実施の形態で説明した各種構成を適用できる。
【0344】
画素回路部283は、周期的に配列した複数の画素回路283aを有する。
【0345】
1つの画素回路283aは、1つの画素284aが有する複数の素子の駆動を制御する回路である。
【0346】
回路部282は、画素回路部283の各画素回路283aを駆動する回路を有する。例えば、ゲート線駆動回路、及び、ソース線駆動回路の一方又は双方を有することが好ましい。このほか、演算回路、メモリ回路、及び電源回路等の少なくとも一つを有していてもよい。
【0347】
FPC290は、外部から回路部282にビデオ信号又は電源電位等を供給するための配線として機能する。また、FPC290上にICが実装されていてもよい。
【0348】
表示モジュール280は、画素部284の下側に画素回路部283及び回路部282の一方又は双方が積層された構成とすることができるため、表示部281の開口率(有効表示面積比)を極めて高くすることができる。
【0349】
このような表示モジュール280は、極めて高精細であることから、HMD等のVR向け機器又はメガネ型のAR向け機器に好適に用いることができる。例えば、レンズを通して表示モジュール280の表示部を視認する構成の場合であっても、表示モジュール280は極めて高精細な表示部281を有するためにレンズで表示部を拡大しても画素が視認されず、没入感の高い表示を行うことができる。また、表示モジュール280はこれに限られず、比較的小型の表示部を有する電子機器に好適に用いることができる。
【0350】
[表示装置100A]
図12(A)に示す表示装置100Aは、基板301、発光デバイス130R、発光デバイス130G、発光デバイス130B、容量240、及び、トランジスタ310を有する。
【0351】
基板301は、図12(A)及び図12(B)における基板291に相当する。トランジスタ310は、基板301にチャネル形成領域を有するトランジスタである。基板301としては、例えば単結晶シリコン基板等の半導体基板を用いることができる。トランジスタ310は、基板301の一部、導電層311、低抵抗領域312、絶縁層313、及び、絶縁層314を有する。導電層311は、ゲート電極として機能する。絶縁層313は、基板301と導電層311の間に位置し、ゲート絶縁層として機能する。低抵抗領域312は、基板301に不純物がドープされた領域であり、ソース又はドレインとして機能する。絶縁層314は、導電層311の側面を覆って設けられる。
【0352】
また、基板301に埋め込まれるように、隣接する2つのトランジスタ310の間に素子分離層315が設けられている。
【0353】
また、トランジスタ310を覆って絶縁層261が設けられ、絶縁層261上に容量240が設けられている。
【0354】
容量240は、導電層241と、導電層245と、これらの間に位置する絶縁層243を有する。導電層241は、容量240の一方の電極として機能し、導電層245は、容量240の他方の電極として機能し、絶縁層243は、容量240の誘電体として機能する。
【0355】
導電層241は絶縁層261上に設けられ、絶縁層254に埋め込まれている。導電層241は、絶縁層261に埋め込まれたプラグ271によってトランジスタ310のソース又はドレインの一方と電気的に接続されている。絶縁層243は導電層241を覆って設けられる。導電層245は、絶縁層243を介して導電層241と重なる領域に設けられている。
【0356】
容量240を覆って、絶縁層255が設けられ、絶縁層255上に絶縁層174が設けられ、絶縁層174上に絶縁層175が設けられている。絶縁層175上に発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び、発光デバイス130Bが設けられている。隣り合う発光デバイスの間の領域には、絶縁物が設けられる。
【0357】
導電層151Rの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Rが設けられ、導電層151Gの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Gが設けられ、導電層151Bの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Bが設けられる。また、導電層151R及び絶縁層156Rを覆うように導電層152Rが設けられ、導電層151G及び絶縁層156Gを覆うように導電層152Gが設けられ、導電層151B及び絶縁層156Bを覆うように導電層152Bが設けられる。有機化合物層103R上には、犠牲層158Rが位置し、有機化合物層103G上には、犠牲層158Gが位置し、有機化合物層103B上には、犠牲層158Bが位置する。
【0358】
導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bは、絶縁層243、絶縁層255、絶縁層174、及び絶縁層175に埋め込まれたプラグ256、絶縁層254に埋め込まれた導電層241、及び、絶縁層261に埋め込まれたプラグ271によってトランジスタ310のソース又はドレインの一方と電気的に接続されている。プラグには各種導電材料を用いることができる。
【0359】
また、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び、発光デバイス130B上には保護層131が設けられている。保護層131上には、樹脂層122によって基板120が貼り合わされている。発光デバイス130から基板120までの構成要素についての詳細は、実施の形態3を参照できる。基板120は、図11(A)における基板292に相当する。
【0360】
図12(B)は、図12(A)に示す表示装置100Aの変形例である。図12(B)に示す表示装置は、着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを有し、発光デバイス130が着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bのうち一つと重なる領域を有する。図12(B)に示す表示装置において、発光デバイス130は、例えば白色光を発することができる。また、例えば着色層132Rは赤色の光を透過し、着色層132Gは緑色の光を透過し、着色層132Bは青色の光を透過できる。
【0361】
[表示装置100B]
図13に、表示装置100Bの斜視図を示し、図14に、表示装置100Cの断面図を示す。
【0362】
表示装置100Bは、基板352と基板351とが貼り合わされた構成を有する。図13では、基板352を破線で示している。
【0363】
表示装置100Bは、画素部177、接続部140、回路356、及び配線355等を有する。図13では表示装置100BにIC354及びFPC353が実装されている例を示している。このため、図13に示す構成は、表示装置100Bと、IC(集積回路)と、FPCと、を有する表示モジュールということもできる。ここで、表示装置の基板に、FPC等のコネクタが取り付けられたもの、又は当該基板にICが実装されたものを、表示モジュールと呼ぶ。
【0364】
接続部140は、画素部177の外側に設けられる。接続部140は、単数であっても複数であってもよい。接続部140は、発光デバイスの共通電極と、導電層とが電気的に接続されており、共通電極に電位を供給できる。
【0365】
回路356としては、例えば走査線駆動回路を用いることができる。
【0366】
配線355は、画素部177及び回路356に信号及び電力を供給する機能を有する。当該信号及び電力は、FPC353を介して外部から、又はIC354から配線355に入力される。
【0367】
図13では、COG(Chip On Glass)方式又はCOF(Chip on Film)方式等により、基板351にIC354が設けられている例を示す。IC354は、例えば走査線駆動回路又は信号線駆動回路等を有するICを適用できる。なお、表示装置100B及び表示モジュールは、ICを設けない構成としてもよい。また、ICを、例えばCOF方式により、FPCに実装してもよい。
【0368】
図14に、図13における表示装置100Bの、FPC353を含む領域の一部、回路356の一部、画素部177の一部、接続部140の一部、及び、端部を含む領域の一部をそれぞれ切断したときの断面の一例を表示装置100Cとして示す。
【0369】
[表示装置100C]
図14に示す表示装置100Cは、基板351と基板352の間に、トランジスタ201、トランジスタ205、赤色の光を発する発光デバイス130R、緑色の光を発する発光デバイス130G、及び、青色の光を発する発光デバイス130B等を有する。
【0370】
発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bの詳細は実施の形態3を参照できる。
【0371】
発光デバイス130Rは、導電層224Rと、導電層224R上の導電層151Rと、導電層151R上の導電層152Rと、を有する。発光デバイス130Gは、導電層224Gと、導電層224G上の導電層151Gと、導電層151G上の導電層152Gと、を有する。発光デバイス130Bは、導電層224Bと、導電層224B上の導電層151Bと、導電層151B上の導電層152Bと、を有する。
【0372】
導電層224Rは、絶縁層214に設けられた開口を介して、トランジスタ205が有する導電層222bと接続されている。導電層224Rの端部よりも外側に導電層151Rの端部が位置している。導電層151Rの側面と接する領域を有するように絶縁層156Rが設けられ、導電層151R及び絶縁層156Rを覆うように導電層152Rが設けられる。
【0373】
発光デバイス130Gにおける導電層224G、導電層151G、導電層152G、絶縁層156G、及び発光デバイス130Bにおける導電層224B、導電層151B、導電層152B、絶縁層156Bについては、発光デバイス130Rにおける導電層224R、導電層151R、導電層152R、絶縁層156Rと同様であるため詳細な説明は省略する。
【0374】
導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bには、絶縁層214に設けられた開口を覆うように凹部が形成される。当該凹部には、層128が埋め込まれている。
【0375】
層128は、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bの凹部を埋め、平坦化する機能を有する。導電層224R、導電層224G、及び導電層224B及び層128上には、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bと電気的に接続される導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bが設けられている。したがって、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bの凹部と重なる領域も発光領域として使用でき、画素の開口率を高めることができる。
【0376】
層128は、絶縁層であってもよく、導電層であってもよい。層128には、各種無機絶縁材料、有機絶縁材料、及び導電材料を適宜用いることができる。特に、層128は、絶縁材料を用いて形成されることが好ましく、有機絶縁材料を用いて形成されることが特に好ましい。層128には、例えば前述の絶縁層127に用いることができる有機絶縁材料を適用できる。
【0377】
発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130B上には保護層131が設けられている。保護層131と基板352は接着層142を介して接着されている。基板352には、遮光層157が設けられている。発光デバイス130の封止には、固体封止構造又は中空封止構造等が適用できる。図14では、基板352と基板351との間の空間が、接着層142で充填されており、固体封止構造が適用されている。又は、当該空間を不活性ガス(窒素又はアルゴン等)で充填し、中空封止構造を適用してもよい。このとき、接着層142は、発光デバイスと重ならないように設けられていてもよい。また、当該空間を、枠状に設けられた接着層142とは異なる樹脂で充填してもよい。
【0378】
図14では、接続部140が、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層224Cと、導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層151Cと、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層152Cと、を有する例を示している。また、図14では、導電層151Cの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Cが設けられる例を示している。
【0379】
表示装置100Cは、トップエミッション型である。発光デバイスが発する光は、基板352側に射出される。基板352には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。画素電極は可視光を反射する材料を含み、対向電極(共通電極155)は可視光を透過する材料を含む。
【0380】
基板351上には、絶縁層211、絶縁層213、絶縁層215、及び絶縁層214がこの順で設けられている。絶縁層211は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層213は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層215は、トランジスタを覆って設けられる。絶縁層214は、トランジスタを覆って設けられ、平坦化層としての機能を有する。なお、ゲート絶縁層の数及びトランジスタを覆う絶縁層の数は限定されず、それぞれ単層であっても2層以上であってもよい。
【0381】
絶縁層211、絶縁層213、及び絶縁層215としては、それぞれ、無機絶縁膜を用いることが好ましい。
【0382】
平坦化層として機能する絶縁層214には、有機絶縁層が好適である。
【0383】
トランジスタ201及びトランジスタ205は、ゲートとして機能する導電層221、ゲート絶縁層として機能する絶縁層211、ソース及びドレインとして機能する導電層222a及び導電層222b、半導体層231、ゲート絶縁層として機能する絶縁層213、並びに、ゲートとして機能する導電層223を有する。
【0384】
基板351の、基板352が重ならない領域には、接続部204が設けられている。接続部204では、トランジスタ201のソース電極またはドレイン電極が導電層166及び接続層242を介してFPC353と電気的に接続されている。導電層166は、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、の積層構造である例を示す。接続部204の上面では、導電層166が露出している。これにより、接続部204とFPC353とを接続層242を介して電気的に接続できる。
【0385】
基板352の基板351側の面には、遮光層157を設けることが好ましい。遮光層157は、隣り合う発光デバイスの間、接続部140、及び、回路356等に設けることができる。また、基板352の外側には各種光学部材を配置できる。
【0386】
基板351及び基板352としては、それぞれ、基板120に用いることができる材料を適用できる。
【0387】
接着層142としては、樹脂層122に用いることができる材料を適用できる。
【0388】
接続層242としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、又は異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)等を用いることができる。
【0389】
[表示装置100D]
図15に示す表示装置100Dは、ボトムエミッション型の表示装置である点で、図14に示す表示装置100Cと主に相違する。
【0390】
発光デバイスが発する光は、基板351側に射出される。基板351には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。一方、基板352に用いる材料の透光性は問わない。
【0391】
基板351とトランジスタ201との間、基板351とトランジスタ205との間には、遮光層317を形成することが好ましい。図15では、基板351上に遮光層317が設けられ、遮光層317上に絶縁層153が設けられ、絶縁層153上にトランジスタ201、205などが設けられている例を示す。
【0392】
発光デバイス130Rは、導電層112Rと、導電層112R上の導電層126Rと、導電層126R上の導電層129Rと、を有する。
【0393】
発光デバイス130Bは、導電層112Bと、導電層112B上の導電層126Bと、導電層126B上の導電層129Bと、を有する。
【0394】
導電層112R、112B、126R、126B、129R、129Bには、それぞれ、可視光に対する透過性が高い材料を用いる。第2の電極102には可視光を反射する材料を用いることが好ましい。
【0395】
なお、図15では、発光デバイス130Gを図示していないが、発光デバイス130Gも設けられている。
【0396】
また、図15などでは、層128の上面が平坦部を有する例を示すが、層128の形状は、特に限定されない。
【0397】
[表示装置100D2]
図16(A)に示す表示装置100D2は、図15に示す表示装置100Dとは異なるボトムエミッション型の表示装置の一例である。表示装置100D2は、有機樹脂層180を有する点で、表示装置100Dと相違する。なお、図中、図15と同じ構成要素の符号は省略している場合があり、その詳細は図15の記載を参酌するとよい。
【0398】
また、図16(B)は、副画素110(副画素110R、副画素110G、副画素110B、副画素110W)を有する画素178(画素178a、および画素178b)の上面レイアウトを、図16(C)は、画素178が有する副画素110Rおよび副画素110Gが形成される領域における有機樹脂層180の上面図を示す。なお、遮光層317と遮光層317との間は、副画素110Rの発光領域における幅110Rwである。
【0399】
図16(A)に示すように、有機樹脂層180は、絶縁層214上に設けられる。図16(A)の一点鎖線で囲む領域、および図16(C)に示すように、有機樹脂層180は、少なくとも副画素が形成される領域に、曲面を有する凹部181(凹部181a、凹部181b)を有する。なお、凹部181は凹部181cのように発光領域外に設けられていてもよい。凹部181cを設けることで、遮光層317と重畳する領域で生じた発光または遮光層317と重畳する領域に進行した光が屈折し、発光領域から取り出すことができるため、発光効率を向上させることができる。
【0400】
凹部181はマトリクス状に複数形成されていてもよい。凹部181aと凹部181bは接して設けられていても、間に平面を有していてもよい。
【0401】
また、図16では、当該凹部の上面形状を六角形(図16(C))、断面形状を半円形(図16(A))で示したが、必要に応じて他の形状としてもよい。例えば、当該凹部の上面形状としては、三角形、四角形(長方形、正方形を含む)、五角形等の多角形、これら多角形の角が丸い形状、楕円形、又は円形等が挙げられる。
【0402】
有機樹脂層180としては、有機材料を有する絶縁層を用いることができる。例えば、有機樹脂層180として、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、およびこれら樹脂の前駆体等を適用することができる。また、有機樹脂層180として、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、プルラン、水溶性のセルロース、またはアルコール可溶性のポリアミド樹脂などの有機材料を用いてもよい。
【0403】
また、有機樹脂層180として、感光性の樹脂を用いることができる。感光性の樹脂としてはフォトレジストを用いてもよい。感光性の樹脂は、ポジ型の材料、またはネガ型の材料を用いることができる。
【0404】
有機樹脂層180は、可視光を吸収する材料を含んでいてもよい。例えば、有機樹脂層180自体が可視光を吸収する材料により構成されていてもよいし、有機樹脂層180が、可視光を吸収する顔料を含んでいてもよい。有機樹脂層180としては、例えば、赤色、青色、または緑色の光を透過し、他の光を吸収するカラーフィルタとして用いることのできる樹脂、またはカーボンブラックを顔料として含み、ブラックマトリクスとして機能する樹脂などを用いることができる。
【0405】
また、有機樹脂層180上に、第1の電極101(第1の電極101Rおよび第1の電極101W)、第1の電極101上に有機化合物層103を有する。第1の電極101、および有機化合物層103の端部は絶縁層127で覆われていてもよい。
【0406】
また、有機樹脂層180上に形成される、第1の電極101は、有機樹脂層180の凹部に沿って同様に凹部を有する。さらに、第1の電極101上に形成された有機化合物層103は、第1の電極101の凹部に沿って同様に凹部を有する。さらに、有機化合物層103上に形成された共通層104は、有機化合物層103の凹部に沿って同様に凹部を有する。さらに、共通層104上に形成された第2の電極102は、共通層104の凹部に沿って同様に凹部を有する。すなわち、有機樹脂層180、第1の電極101、有機化合物層103、共通層104、および第2の電極102の凹部は互いに重なる構造を有する。
【0407】
また、有機化合物層103および絶縁層127上に共通層104、共通層104上に第2の電極102を有する。第2の電極102上に保護層131を設け、接着層142を介して基板352と貼り合わせた構造とする。
【0408】
なお、図16では、発光デバイス130Gおよび発光デバイス130Bを図示していないが、発光デバイス130Gおよび発光デバイス130Bも設けられている。
【0409】
[表示装置100E]
図17に示す表示装置100Eは、図14に示す表示装置100Cの変形例であり、着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを有する点で、表示装置100Cと主に相違する。
【0410】
表示装置100Eにおいて、発光デバイス130は、着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bのうち一つと重なる領域を有する。着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bは、基板352の基板351側の面に設けることができる。着色層132Rの端部、着色層132Gの端部、及び着色層132Bの端部は、遮光層157と重ねることができる。
【0411】
表示装置100Eにおいて、発光デバイス130は、例えば白色光を発することができる。また、例えば着色層132Rは赤色の光を透過し、着色層132Gは緑色の光を透過し、着色層132Bは青色の光を透過できる。なお、表示装置100Eは、保護層131と接着層142の間に着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを設ける構成としてもよい。
【0412】
[表示装置100E2]
図18(A)に示す表示装置100E2は、図17に示す表示装置100Eの変形例であり、着色層132R、着色層132G、及び着色層132B上に、マイクロレンズ182を有する。なお、図中、図17と同じ構成要素の符号は省略している場合があり、その詳細は図17の記載を参酌するとよい。
【0413】
また、図18(B)は、副画素110(副画素110R、副画素110G、副画素110B)を有する画素178(画素178a、および画素178b)の上面レイアウトを、図18(C)は、画素178が有する副画素110Rおよび副画素110Gが形成される領域におけるマイクロレンズ182の上面図を示す。なお、共通電極155と有機化合物層103が接する領域は、副画素110Gの発光領域における幅110Gwである。
【0414】
図18(A)に示す表示装置100E2は、保護層131上の平坦化膜143を設け、平坦化膜144上に着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを設ける。着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを覆うように、平坦化膜144を設ける。平坦化膜144上に、マイクロレンズ182を設ける。
【0415】
なお、マイクロレンズ182は、図18(C)に示すように、副画素が形成される領域に、副画素毎に設けるとよい。
【0416】
なお、図18(C)では、マイクロレンズ182の上面形状を六角形で示したが、必要に応じて他の形状としてもよい。例えば、当該凹部の上面形状としては、三角形、四角形(長方形、正方形を含む)、五角形等の多角形、これら多角形の角が丸い形状、楕円形、又は円形等が挙げられる。
【0417】
マイクロレンズ182は、有機樹脂層180と同様の材料を用いて形成することができる。
【0418】
本実施の形態は、他の実施の形態、又は実施例と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0419】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器について説明する。
【0420】
本実施の形態の電子機器は、表示部に本発明の一態様の表示装置を有する。本発明の一態様の表示装置は消費電力が低く、信頼性が高い。したがって、様々な電子機器の表示部に用いることができる。
【0421】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用等のモニタ、デジタルサイネージ、パチンコ機等の大型ゲーム機等の比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、等が挙げられる。
【0422】
図19(A)乃至図19(D)を用いて、頭部に装着可能なウェアラブル機器の一例を説明する。
【0423】
図19(A)に示す電子機器700A、及び、図19(B)に示す電子機器700Bは、それぞれ、一対の表示パネル751と、一対の筐体721と、通信部(図示しない)と、一対の装着部723と、制御部(図示しない)と、撮像部(図示しない)と、一対の光学部材753と、フレーム757と、一対の鼻パッド758と、を有する。
【0424】
表示パネル751には、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0425】
電子機器700A、及び、電子機器700Bは、それぞれ、光学部材753の表示領域756に、表示パネル751で表示した画像を投影できる。光学部材753は透光性を有するため、使用者は光学部材753を通して視認される透過像に重ねて、表示領域に表示された画像を見ることができる。
【0426】
電子機器700A、及び、電子機器700Bには、撮像部として、前方を撮像することのできるカメラが設けられていてもよい。また、電子機器700A、及び、電子機器700Bは、それぞれ、ジャイロセンサ等の加速度センサを備えることで、使用者の頭部の向きを検知して、その向きに応じた画像を表示領域756に表示することもできる。
【0427】
通信部は無線通信機を有し、当該無線通信機により例えば映像信号を供給できる。なお、無線通信機に代えて、又は無線通信機に加えて、映像信号及び電源電位が供給されるケーブルを接続可能なコネクタを備えていてもよい。
【0428】
また、電子機器700A、及び、電子機器700Bには、バッテリが設けられており、無線及び有線の一方又は双方によって充電できる。
【0429】
筐体721には、タッチセンサモジュールが設けられていてもよい。
【0430】
タッチセンサモジュールとしては、様々なタッチセンサを適用できる。例えば、静電容量方式、抵抗膜方式、赤外線方式、電磁誘導方式、表面弾性波方式、又は光学方式等、種々の方式を採用できる。特に、静電容量方式又は光学方式のセンサを、タッチセンサモジュールに適用することが好ましい。
【0431】
図19(C)に示す電子機器800A、及び、図19(D)に示す電子機器800Bは、それぞれ、一対の表示部820と、筐体821と、通信部822と、一対の装着部823と、制御部824と、一対の撮像部825と、一対のレンズ832と、を有する。
【0432】
表示部820には、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0433】
表示部820は、筐体821の内部の、レンズ832を通して視認できる位置に設けられる。また、一対の表示部820に異なる画像を表示させることで、視差を用いた3次元表示を行うこともできる。
【0434】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、レンズ832及び表示部820が、使用者の目の位置に応じて最適な位置となるように、これらの左右の位置を調整可能な機構を有していることが好ましい。
【0435】
装着部823により、使用者は電子機器800A又は電子機器800Bを頭部に装着できる。
【0436】
撮像部825は、外部の情報を取得する機能を有する。撮像部825が取得したデータは、表示部820に出力できる。撮像部825には、イメージセンサを用いることができる。また、望遠、及び広角等の複数の画角に対応可能なように複数のカメラを設けてもよい。
【0437】
電子機器800Aは、骨伝導イヤフォンとして機能する振動機構を有していてもよい。
【0438】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、入力端子を有していてもよい。入力端子には映像出力機器等からの映像信号、及び、電子機器内に設けられるバッテリを充電するための電力等を供給するケーブルを接続できる。
【0439】
本発明の一態様の電子機器は、イヤフォン750と無線通信を行う機能を有していてもよい。
【0440】
また、電子機器がイヤフォン部を有していてもよい。図19(B)に示す電子機器700Bは、イヤフォン部727を有する。イヤフォン部727と制御部とをつなぐ配線の一部は、筐体721又は装着部723の内部に配置されていてもよい。
【0441】
同様に、図19(D)に示す電子機器800Bは、イヤフォン部827を有する。例えば、イヤフォン部827と制御部824とは、互いに有線接続されている構成とすることができる。
【0442】
このように、本発明の一態様の電子機器としては、メガネ型(電子機器700A、及び、電子機器700B等)と、ゴーグル型(電子機器800A、及び、電子機器800B等)と、のどちらも好適である。
【0443】
図20(A)に示す電子機器6500は、スマートフォンとして用いることのできる携帯情報端末機である。
【0444】
電子機器6500は、筐体6501、表示部6502、電源ボタン6503、ボタン6504、スピーカ6505、マイク6506、カメラ6507、及び光源6508等を有する。表示部6502はタッチパネル機能を備える。
【0445】
表示部6502に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0446】
図20(B)は、筐体6501のマイク6506側の端部を含む断面概略図である。
【0447】
筐体6501の表示面側には透光性を有する保護部材6510が設けられ、筐体6501と保護部材6510に囲まれた空間内に、表示パネル6511、光学部材6512、タッチセンサパネル6513、プリント基板6517、及びバッテリ6518等が配置されている。
【0448】
保護部材6510には、表示パネル6511、光学部材6512、及びタッチセンサパネル6513が接着層(図示しない)により固定されている。
【0449】
表示部6502よりも外側の領域において、表示パネル6511の一部が折り返されており、当該折り返された部分にFPC6515が接続されている。FPC6515には、IC6516が実装されている。FPC6515は、プリント基板6517に設けられた端子に接続されている。
【0450】
表示パネル6511には本発明の一態様の表示装置を適用できる。このため、極めて軽量な電子機器を実現できる。また、表示パネル6511が極めて薄いため、電子機器の厚さを抑えつつ、大容量のバッテリ6518を搭載することもできる。また、表示パネル6511の一部を折り返して、画素部の裏側にFPC6515との接続部を配置することにより、狭額縁の電子機器を実現できる。
【0451】
図20(C)にテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7171に表示部7000が組み込まれている。ここでは、スタンド7173により筐体7171を支持した構成を示している。
【0452】
表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0453】
図20(C)に示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7171が備える操作スイッチ、及び、別体のリモコン操作機7151により行うことができる。
【0454】
図20(D)に、ノート型パーソナルコンピュータの一例を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、及び外部接続ポート7214等を有する。筐体7211に、表示部7000が組み込まれている。
【0455】
表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0456】
図20(E)及び図20(F)に、デジタルサイネージの一例を示す。
【0457】
図20(E)に示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7000、及びスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0458】
図20(F)は円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7000を有する。
【0459】
図20(E)及び図20(F)において、表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0460】
表示部7000が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができる。また、表示部7000が広いほど、人の目につきやすく、例えば、広告の宣伝効果を高めることができる。
【0461】
また、図20(E)及び図20(F)に示すように、デジタルサイネージ7300又はデジタルサイネージ7400は、使用者が所持するスマートフォン等の情報端末機7311又は情報端末機7411と無線通信により連携可能であることが好ましい。
【0462】
図21(A)乃至図21(G)に示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有する。
【0463】
図21(A)乃至図21(G)に示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像等)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻等を表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して処理する機能、等を有することができる。
【0464】
図21(A)乃至図21(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0465】
図21(A)は、携帯情報端末9171を示す斜視図である。携帯情報端末9171は、例えばスマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9171は、スピーカ9003、接続端子9006、又はセンサ9007等を設けてもよい。また、携帯情報端末9171は、文字及び画像情報をその複数の面に表示できる。図21(A)では3つのアイコン9050を表示した例を示している。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示することもできる。情報9051の一例としては、電子メール、SNS、電話等の着信の通知、電子メール又はSNS等の題名、送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、電波強度等がある。又は、情報9051が表示されている位置にはアイコン9050等を表示してもよい。
【0466】
図21(B)は、携帯情報端末9172を示す斜視図である。携帯情報端末9172は、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9172を収納した状態で、携帯情報端末9172の上方から観察できる位置に表示された情報9053を確認することもできる。
【0467】
図21(C)は、タブレット端末9173を示す斜視図である。タブレット端末9173は、一例として、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲーム等の種々のアプリケーションの実行が可能である。タブレット端末9173は、筐体9000の正面に表示部9001、カメラ9002、マイクロフォン9008、スピーカ9003を有し、筐体9000の左側面には操作用のボタンとしての操作キー9005、底面には接続端子9006を有する。
【0468】
図21(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、例えばスマートウォッチ(登録商標)として用いることができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006により、他の情報端末と相互にデータ伝送を行うこと、及び、充電を行うこともできる。なお、充電動作は無線給電により行ってもよい。
【0469】
図21(E)乃至図21(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。また、図21(E)は携帯情報端末9201を展開した状態、図21(G)は折り畳んだ状態、図21(F)は図21(E)と図21(G)の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。例えば、表示部9001は、曲率半径0.1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0470】
本実施の形態は、他の実施の形態、又は実施例と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【実施例0471】
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイスである発光デバイスR1、発光デバイスG1および発光デバイスB1並びに比較発光デバイスである比較発光デバイスR1、比較発光デバイスG1、および比較発光デバイスB1に関して、詳しい作製方法および特性について説明する。本実施例で用いた主な化合物の構造式を以下に示す。
【0472】
【化7】
【0473】
【化8】
【0474】
(発光デバイスR1の作製方法)
まず、ガラス基板上に、反射電極として基板側から銀(Ag)を100nm、透明電極として酸化ケイ素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)を85nm、スパッタリング法により順次積層し、2mm×2mmの大きさで第1の電極101を形成した。なお、透明電極は陽極として機能し、上記反射電極と共に第1の電極101とみなされる。
【0475】
次に、基板上に発光デバイスを形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した。
【0476】
その後、約1×10-4Paまで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を約30分放冷した。
【0477】
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、基板を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定し、第1の電極101上に、蒸着法により上記構造式(i)で表されるN-(ビフェニル-2-イル)-N-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:oFBiSF(2))と分子量672でフッ素を含む電子のアクセプタ性を有する材料(OCHD-003)とを、重量比で1:0.03(=oFBiSF(2):OCHD-003)となるように10nm共蒸着して正孔注入層111を形成した。
【0478】
正孔注入層111上に、oFBiSF(2)を150nm蒸着し、第1の正孔輸送層を形成した。
【0479】
続いて、第1の正孔輸送層上に、上記構造式(ii)で表される11-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]フェナントロ[9’,10’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:11mDBtBPPnfpr)と、上記構造式(iii)で表されるN-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)と、赤色燐光を発する材料であるOCPG-006とを、重量比で0.7:0.3:0.05(=11mDBtBPPnfpr:PCBBiF:OCPG-006)となるように40nm共蒸着して第1の発光層を形成した。
【0480】
こののち、上記構造式(iv)で表される9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)を10nmとなるように蒸着し第1の電子輸送層を形成した。
【0481】
第1の電子輸送層の形成後、フェナントロリン骨格を含む第2の有機化合物として上記構造式(v)で表される2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)と酸化リチウム(LiO)とを重量比で1:0.02(=mPPhen2P:LiO)となるように5nm共蒸着して第1の層を形成し、上記構造式(vii)で表される銅フタロシアニン(略称:CuPc)を2nmとなるように蒸着して第3の層を形成し、さらにoFBiSF(2)とOCHD-003とを、重量比で1:0.15(=oFBiSF(2):OCHD-003)となるように10nm共蒸着して第2の層を形成し、中間層を形成した。
【0482】
中間層上に、oFBiSF(2)を75nm蒸着し、第2の正孔輸送層を形成した。
【0483】
第2の正孔輸送層上に、11mDBtBPPnfprと、PCBBiFと、OCPG-006とを、重量比で0.7:0.3:0.05(=11mDBtBPPnfpr:PCBBiF:OCPG-006)となるように40nm共蒸着して第2の発光層を形成した。
【0484】
その後、上記構造式(viii)で表される2,2’-[1,2-ナフタレンジイルジ(4,1-フェニレン)]ビス(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン)(略称:TznP2N)と、上記構造式(ix)で表される8-ヒドロキシキノリナト-リチウム(略称:Liq)とを、重量比で1:1(=TznP2N:Liq)となるように25nm共蒸着して第2の電子輸送層を形成した。
【0485】
その後、Liqを膜厚1nmとなるように蒸着し、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)とを体積比1:0.1、膜厚15nmとなるように共蒸着して、第2の電極102を形成した。また、第2の電極102上には、上記構造式(x)で表される4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)をキャップ層として70nm成膜して、光の取り出し効率を向上させている。
【0486】
続いて窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光デバイスが大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(UV硬化性のシール材を素子の周囲への塗布、発光デバイスには照射しないようにシール材のみにUVを照射する処理、および大気圧下で80℃にて1時間熱処理)を行い、発光デバイスR1を形成した。
【0487】
(比較発光デバイスR1の作製方法)
比較発光デバイスR1は、発光デバイスR1における第2の電子輸送層のTznP2Nを、上記構造式(xi)で表される4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニル-6-(ビフェニル-4-イル)ピリミジン(略称:6BP-4Cz2PPm)に変えて作製した他は、発光デバイスR1と同様に作製した。
【0488】
(発光デバイスG1の作製方法)
発光デバイスG1は、発光デバイスR1における第1の正孔輸送層の膜厚を80nm、第2の正孔輸送層の膜厚を60nmとして形成し、第1の発光層及び第2の発光層を、上記構造式(xii)で表される7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)と上記構造式(xiii)で表される9,10-ジフェニル-2-[N-フェニル-N-(9-フェニル-カルバゾール-3-イル)-アミノ]-アントラセン(略称:2PCAPA)とを重量比で1:0.05(=cgDBCzPA:2PCAPA)となるように共蒸着して形成した他は、発光デバイスR1と同様に作製した。
【0489】
(比較発光デバイスG1の作製方法)
比較発光デバイスG1は、発光デバイスG1における第2の電子輸送層のTznP2Nを、6BP-4Cz2PPmに変えて作製した他は、発光デバイスG1と同様に作製した。
【0490】
(発光デバイスB1の作製方法)
発光デバイスB1は、発光デバイスR1における第1の正孔輸送層の膜厚を45nm、第2の正孔輸送層の膜厚を55nmとして形成し、第1の発光層及び第2の発光層を、上記構造式(xiv)で表される9-(1-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-βNPAnth)と上記構造式(xv)で表されるN,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン-3,10-ジアミン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)-02)とを重量比で1:0.015(=αN-βNPAnth:3,10PCA2Nbf(IV)-02)となるように25nm、共蒸着して形成した他は発光デバイスR1と同様に作製した。
【0491】
(比較発光デバイスB1の作製方法)
比較発光デバイスB1は、発光デバイスB1における第2の電子輸送層のTznP2Nを、6BP-4Cz2PPmに変えて作製した他は、発光デバイスB1と同様に作製した。
【0492】
発光デバイスR1、発光デバイスG1、発光デバイスB1、比較発光デバイスR1、比較発光デバイスG1、および比較発光デバイスB1の素子構造を以下に示す。
【0493】
【表1】
【0494】
【表2】
【0495】
【表3】
【0496】
発光デバイスR1および比較発光デバイスR1の電流密度-電圧特性を図22に、電流効率-輝度特性を図23に、パワー効率-輝度特性を図24に、電界発光スペクトルを図25に示す。また、発光デバイスG1および比較発光デバイスG1の電流密度-電圧特性を図26に、電流効率-輝度特性を図27に、パワー効率-輝度特性を図28に、電界発光スペクトルを図29に示す。また、発光デバイスB1および比較発光デバイスB1の電流密度-電圧特性を図30に、電流効率-輝度特性を図31に、ブルーインデックス-輝度特性を図32に、パワー効率-輝度特性を図33に、電界発光スペクトルを図34に示す。
【0497】
なお、ブルーインデックス(BI)とは、電流効率(cd/A)をさらにCIE(x,y)色度のy値で割った値であり、青色発光の発光特性を表す指標の一つである。青色発光は、色度y値が小さいほど色純度の高い発光となる傾向にある。色度y値が小さく色純度の高い青色発光を用いることで、ディスプレイにおいて広い色度範囲の青色を表現することが可能となり、ディスプレイにおいて白色を表現するために必要な青色の輝度が低下することから、ディスプレイの消費電力を低減する効果が得られる。そのため、青色純度の指標の一つとなる色度y値を考慮した電流効率であるBIが青色発光の効率を表す手段として好適に用いられる場合があり、BIが高い発光デバイスほどディスプレイに用いられる青色発光デバイスとしての効率が良好であるということができる。
【0498】
また、発光デバイスR1および比較発光デバイスR1の1000cd/m付近における主な特性を表4に、発光デバイスG1および比較発光デバイスG1の1000cd/m付近における主な特性を表5に、発光デバイスB1および比較発光デバイスB1の1000cd/m付近における主な特性を表6に示す。なお、輝度、CIE色度、及び電界発光スペクトルの測定には分光放射計(トプコン社製、SR-UL1R)を用い、常温で測定した。
【0499】
【表4】
【0500】
図22乃至図25および表4から、発光デバイスR1および比較発光デバイスR1はどちらの発光デバイスからも電界発光スペクトルのピーク波長が625nmの赤色発光が得られることが分かった。また、発光デバイスR1および比較発光デバイスR1は、どちらも電流効率が良好な発光デバイスであるが、発光デバイスR1は、比較発光デバイスR1より駆動電圧が低いため消費電力が低く、良好な特性を有する発光デバイスであることが分かった。これにより本発明の一態様の発光デバイスR1は、良好な特性を有するタンデム型の発光デバイスであることがわかった。
【0501】
【表5】
【0502】
図26乃至図29および表5から、発光デバイスG1および比較発光デバイスG1はどちらの発光デバイスからも電界発光スペクトルのピーク波長が533nmの緑色発光が得られることが分かった。また、発光デバイスG1および比較発光デバイスG1は、どちらも電流効率が良好な発光デバイスであるが、発光デバイスG1は、比較発光デバイスG1より駆動電圧が低いため消費電力が低く、良好な特性を有する発光デバイスであることが分かった。これにより本発明の一態様の発光デバイスG1は、良好な特性を有するタンデム型の発光デバイスであることがわかった。
【0503】
【表6】
【0504】
図30乃至図34および表6から、発光デバイスB1および比較発光デバイスB1はどちらの発光デバイスからも電界発光スペクトルのピーク波長が457nmの青色発光が得られることが分かった。また、発光デバイスB1および比較発光デバイスB1は、どちらも電流効率が良好な発光デバイスであるが、発光デバイスB1は、比較発光デバイスB1より駆動電圧が低いため消費電力が低く、良好な特性を有する発光デバイスであることが分かった。また、発光デバイスB1は、ブルーインデックスの良好な発光デバイスであることが分かった。これにより本発明の一態様の発光デバイスB1は、良好な特性を有するタンデム型の発光デバイスであることがわかった。また、発光デバイスB1は、特に実用輝度である500cd/cm以上において特性の良好な発光デバイスであることがわかった。
【0505】
ここで、発光デバイスR1、発光デバイスG1、および発光デバイスB1の第2の電子輸送層は、同じ材料(トリアジン骨格を含む第1の有機化合物)を含んで構成されている。このように、本発明の一態様の発光デバイスでは、異なる発光色の発光デバイスにおいて、第2の電子輸送層が同じ材料で構成されていても、どの発光デバイスも良好な特性を有する発光デバイスとすることが可能となる。
【0506】
次に、赤、緑、および青の副画素に、それぞれ発光デバイスR1、発光デバイスG1および発光デバイスB1を用いた実施例の表示装置と、それぞれ比較発光デバイスR1、比較発光デバイスG1および比較発光デバイスB1を用いた比較例表示装置を各々想定し、表示部(ただし駆動トランジスタおよび駆動回路などの消費電力は除く)の消費電力を試算した。なお、どちらの表示装置も、用いることを想定されている各発光デバイスはタンデム型の発光デバイスであり、且つ、各発光デバイスが有する複数の発光層に含まれる発光中心物質は各々同じ物質であることから塗分け方式を採用した表示装置である。
【0507】
試算のために想定した表示装置の条件は以下の通りである。
【0508】
【表7】
【0509】
まず、上記条件の表示装置において、全面発光させた際にCIE1931色度座標における色度(x,y)=(0.31,0.33)である白色発光が、1000cd/mで得られる発光デバイスの輝度(実効輝度)を各色それぞれ求めた。
【0510】
続いて、開口率を加味し、求められた実効輝度を得るために必要な輝度(真性輝度)を各色の発光デバイスに対して算出した。真性輝度は、当該表示装置をCIE1931色度座標における色度(x,y)=(0.31,0.33)である白色発光で全面発光させた際に、1000cd/mの実効輝度を得るために、実際に各発光デバイスを光らせる輝度である。試算を行う表示装置では全体の開口率30%、発光色毎では10%であるため、真性輝度は実効輝度の約10倍となる。
【0511】
先に示した各発光デバイスの測定結果より、真性輝度を用いて当該輝度で発光デバイスを光らせるための電流密度と電圧を求めることができる。すなわち、上記条件の表示装置において、全面発光させた際にCIE1931色度座標における色度(x,y)=(0.31,0.33)である白色発光が、輝度1000cd/mで得られる発光デバイスの電流密度と電圧とを求めることができる。
【0512】
消費電力は電流量と電圧との積で求められる。電流量は、電流密度とパネル面積と開口率との積で求められる。試算した表示装置の大きさは対角5インチ、縦横比が16対9で、パネル面積は68.9cm、各色の発光デバイスの開口率は10%であることから、前段落で算出した電流密度にそれらを掛け合わせることによって電流量が算出でき、さらに、前段落で求めた電圧をかけて、発光色毎に発光デバイスの消費電力を算出することができる。発光デバイス各色において消費電力の算出をし、足し合わせることによって表示装置における表示部の全体(ただし駆動トランジスタおよび駆動回路などの消費電力は除く)の消費電力を求めることができる。
【0513】
発光デバイスR1、発光デバイスG1および発光デバイスB1を用いることを想定した実施例の表示装置について消費電力を算出した結果を表8に、比較発光デバイスR1、比較発光デバイスG1および比較発光デバイスB1を用いることを想定した比較例の表示装置について消費電力を算出した結果を表9に示す。
【0514】
【表8】
【0515】
【表9】
【0516】
表8および表9より、実施例の表示装置は比較例の表示装置より、白色発光での電流効率が高く、且つ駆動電圧が低いことがわかった。また、実施例の表示装置の消費電力は、比較例の表示装置の消費電力よりも小さい表示装置となることがわかった。
【0517】
このように第2の電子輸送層が、トリアジン骨格を含む第1の有機化合物を有し、中間層は、フェナントロリン骨格を有する第2の有機化合物と、リチウムまたはリチウム化合物との混合層を有し、複数の発光層から発する光の発光スペクトルにおける最大ピーク波長の差が30nm以下であるタンデム型の発光デバイスを用いた表示装置は、消費電力の小さい良好な特性を有する表示装置であることがわかった。
【符号の説明】
【0518】
100A 表示装置
100B 表示装置
100C 表示装置
100D 表示装置
100E 表示装置
100 表示装置
101 第1の電極
101a 第1の電極
101b 第1の電極
101c 第1の電極
101B 第1の電極
101G 第1の電極
101R 第1の電極
101W 第1の電極
102 第2の電極
103B 有機化合物層
103Bf 有機化合物膜
103G 有機化合物層
103Gf 有機化合物膜
103R 有機化合物層
103Rf 有機化合物膜
103 有機化合物層
103a 有機化合物層
103b 有機化合物層
103c 有機化合物層
104 共通層
110B 副画素
110G 副画素
110R 副画素
110W 副画素
110 副画素
111 正孔注入層
111a 正孔注入層
111b 正孔注入層
111c 正孔注入層
112B 導電層
112R 導電層
112 正孔輸送層
112b_21 正孔輸送層
113 発光層
113b_11 発光層
113b_21 発光層
114 電子輸送層
116 中間層
117 第2の層
118 第3の層
119 第1の層
120 基板
122 樹脂層
125f 無機絶縁膜
125 無機絶縁層
126B 導電層
126R 導電層
127a 絶縁層
127f 絶縁膜
127 絶縁層
128 層
129B 導電層
129R 導電層
130B 発光デバイス
130G 発光デバイス
130R 発光デバイス
130 発光デバイス
130a 発光デバイス
130b 発光デバイス
130c 発光デバイス
131 保護層
132B 着色層
132G 着色層
132R 着色層
140 接続部
141 領域
142 接着層
151B 導電層
151C 導電層
151f 導電膜
151G 導電層
151R 導電層
151 導電層
152B 導電層
152C 導電層
152f 導電膜
152G 導電層
152R 導電層
152 導電層
153 絶縁層
155 共通電極
156B 絶縁層
156C 絶縁層
156f 絶縁膜
156G 絶縁層
156R 絶縁層
156 絶縁層
157 遮光層
158B 犠牲層
158Bf 犠牲膜
158G 犠牲層
158Gf 犠牲膜
158R 犠牲層
158Rf 犠牲膜
159B マスク層
159Bf マスク膜
159G マスク層
159Gf マスク膜
159R マスク層
159Rf マスク膜
166 導電層
171 絶縁層
172 導電層
173 絶縁層
174 絶縁層
175 絶縁層
176 プラグ
177 画素部
178 画素
178a 画素
178b 画素
179 導電層
190B レジストマスク
190G レジストマスク
190R レジストマスク
191 レジストマスク
201 トランジスタ
204 接続部
205 トランジスタ
211 絶縁層
213 絶縁層
214 絶縁層
215 絶縁層
221 導電層
222a 導電層
222b 導電層
223 導電層
224B 導電層
224C 導電層
224G 導電層
224R 導電層
231 半導体層
240 容量
241 導電層
242 接続層
243 絶縁層
245 導電層
254 絶縁層
255 絶縁層
256 プラグ
261 絶縁層
271 プラグ
280 表示モジュール
281 表示部
282 回路部
283a 画素回路
283 画素回路部
284a 画素
284 画素部
285 端子部
286 配線部
290 FPC
291 基板
292 基板
301 基板
310 トランジスタ
311 導電層
312 低抵抗領域
313 絶縁層
314 絶縁層
315 素子分離層
317 遮光層
351 基板
352 基板
353 FPC
354 IC
355 配線
356 回路
501 第1の発光ユニット
501a 第1の発光ユニット
501b 第1の発光ユニット
501c 第1の発光ユニット
502 第2の発光ユニット
502a 第2の発光ユニット
502b 第2の発光ユニット
502c 第2の発光ユニット
601 ソース線駆動回路, 駆動回路部
602 画素部
603 ゲート線駆動回路
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 引き回し配線
610 素子基板
611 スイッチング用FET
612 電流制御用FET
613 第1の電極
614 絶縁物
616 有機化合物層
617 第2の電極
618 発光デバイス
623 FET
700A 電子機器
700B 電子機器
721 筐体
723 装着部
727 イヤフォン部
750 イヤフォン
751 表示パネル
753 光学部材
756 表示領域
757 フレーム
758 鼻パッド
800A 電子機器
800B 電子機器
820 表示部
821 筐体
822 通信部
823 装着部
824 制御部
825 撮像部
827 イヤフォン部
832 レンズ
6500 電子機器
6501 筐体
6502 表示部
6503 電源ボタン
6504 ボタン
6505 スピーカ
6506 マイク
6507 カメラ
6508 光源
6510 保護部材
6511 表示パネル
6512 光学部材
6513 タッチセンサパネル
6515 FPC
6516 IC
6517 プリント基板
6518 バッテリ
7000 表示部
7100 テレビジョン装置
7151 リモコン操作機
7171 筐体
7173 スタンド
7200 ノート型パーソナルコンピュータ
7211 筐体
7212 キーボード
7213 ポインティングデバイス
7214 外部接続ポート
7300 デジタルサイネージ
7301 筐体
7303 スピーカ
7311 情報端末機
7400 デジタルサイネージ
7401 柱
7411 情報端末機
9000 筐体
9001 表示部
9002 カメラ
9003 スピーカ
9005 操作キー
9006 接続端子
9007 センサ
9008 マイクロフォン
9050 アイコン
9051 情報
9052 情報
9053 情報
9054 情報
9055 ヒンジ
9171 携帯情報端末
9172 携帯情報端末
9173 タブレット端末
9200 携帯情報端末
9201 携帯情報端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34