(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105579
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】積層型キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20250703BHJP
【FI】
H01G4/30 201D
H01G4/30 201C
H01G4/30 201L
H01G4/30 516
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024231143
(22)【出願日】2024-12-26
(31)【優先権主張番号】10-2023-0194174
(32)【優先日】2023-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】朴 ▲ス▼雅
(72)【発明者】
【氏名】羅 ▲ヒョン▼雄
(72)【発明者】
【氏名】閔 景基
(72)【発明者】
【氏名】朴 性▲ミン▼
(72)【発明者】
【氏名】朴 榮圭
(72)【発明者】
【氏名】呉 泳俊
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE22
5E082EE29
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
(57)【要約】
【課題】実施形態の一側面は、電極の薄層化を実現することができ、電気的特性が改善された積層型キャパシタを提供する。
【解決手段】本発明による積層型キャパシタは、誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディ、そして前記キャパシタボディの外側に配置される外部電極を含み、
前記内部電極は下記の化学式1で表される化合物を含む:
[化学式1]
M
n+1X
n
前記化学式1中、
MはTi、Zr、Hf、Sc、Cr、V、Nb、Ta、Mo、Mn、W、Y、またはこれらの組み合わせを含み、
XはC、N、またはこれらの組み合わせを含み、かつ、1≦n≦2である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディと、前記キャパシタボディの外側に配置される外部電極と、を含み、
前記内部電極は、下記化学式1で表される化合物を含む、積層型キャパシタ:
[化学式1]
Mn+1Xn
前記化学式1中、
MはTi、Zr、Hf、Sc、Cr、V、Nb、Ta、Mo、Mn、W、Y、またはこれらの組み合わせを含み、
XはC、N、またはこれらの組み合わせを含み、かつ、1≦n≦2である。
【請求項2】
前記化学式1で表される化合物は、Ti2C、V2C、Nb2C、Mo2C、Mo2N、Ti2N、(Ti2-yNby)C、(V2-yNby)C、(Ti2-yVy)C、W1.33C、Nb1.33C、Mo1.33C、Mo1.33Y0.67C、またはこれらの組み合わせ(0<y<2)を含む、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項3】
前記化学式1で表される化合物は、板状(plate)の単位マキシン(Mxene)層であり、
前記内部電極は、前記単位マキシン層が1層以上積層されたマキシン積層体を含む、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項4】
前記内部電極は、前記単位マキシン層が1層~500層積層されたマキシン積層体を含む、請求項3に記載の積層型キャパシタ。
【請求項5】
前記内部電極の平均厚さは0.002μm~2.5μmである、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項6】
前記誘電体層の平均厚さは0.5μm~3μmである、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項7】
前記誘電体層は、チタン酸バリウム系化合物を主成分として含み、
前記チタン酸バリウム系化合物は、BamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1-xCax)m(Ti1-yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1-xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)、(Ba1-xCax)m(Ti1-ySny)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項8】
前記誘電体層は副成分をさらに含み、
前記副成分は、ジスプロシウム(Dy)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、インジウム(In)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の積層型キャパシタ。
【請求項9】
誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディと、前記キャパシタボディの外側に配置される外部電極と、を含み、
前記内部電極は、下記化学式1で表される化合物を含み、
前記内部電極の平均厚さは0.002μm~2.5μmである、積層型キャパシタ:
[化学式1]
Mn+1Xn
前記化学式1中、
MはTi、Zr、Hf、Sc、Cr、V、Nb、Ta、Mo、Mn、W、Y、またはこれらの組み合わせを含み、
XはC、N、またはこれらの組み合わせを含み、かつ、1≦n≦2である。
【請求項10】
前記化学式1で表される化合物は、Ti2C、V2C、Nb2C、Mo2C、Mo2N、Ti2N、(Ti2-yNby)C、(V2-yNby)C、(Ti2-yVy)C、W1.33C、Nb1.33C、Mo1.33C、Mo1.33Y0.67C、またはこれらの組み合わせ(0<y<2)を含む、請求項9に記載の積層型キャパシタ。
【請求項11】
前記化学式1で表される化合物は、板状(plate)の単位マキシン(Mxene)層であり、
前記内部電極は、前記単位マキシン層が1層以上積層されたマキシン積層体を含む、請求項9に記載の積層型キャパシタ。
【請求項12】
前記内部電極は、前記単位マキシン層が1層~500層積層されたマキシン積層体を含む、請求項11に記載の積層型キャパシタ。
【請求項13】
前記誘電体層の平均厚さは0.5μm~3μmである、請求項9に記載の積層型キャパシタ。
【請求項14】
前記誘電体層は、チタン酸バリウム系化合物を主成分として含み、
前記チタン酸バリウム系化合物は、BamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1-xCax)m(Ti1-yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1-xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)、(Ba1-xCax)m(Ti1-ySny)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の積層型キャパシタ。
【請求項15】
前記誘電体層は副成分をさらに含み、
前記副成分は、ジスプロシウム(Dy)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、インジウム(In)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項14に記載の積層型キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子機器の多機能化および小型化が急速に進むにつれて、電子部品の小型化と性能向上もまた急速に進められている。また、自動車またはネットワーク機器などに使用される電気装置、および産業用に使用するための電子部品の高信頼性に対する要求も大きく増加している。
【0003】
このような市場の要求に応えるために、インダクタ(Inductor)、キャパシタ(Capacitor)、またはレジスタ(Resistor)などの受動部品の技術開発競争が加速化している。特に、受動部品としてその用途と使用量が持続的に増加している積層型キャパシタ(Multilayer Ceramic Capacitor、MLCC)の多様な製品の開発で市場を先取りするための多くの努力が求められている。
【0004】
また、積層型キャパシタは誘電体層と内部電極を積み重ねた形態で製造された蓄電器であって、携帯電話、ノートパソコン、LCD(液晶)テレビなど各種電子機器に使用されている。
【0005】
最近、技術の発展につれて積層型キャパシタは小型化、高容量化が要求されており、そのために内部電極の薄層化が必須であることが知られている。
【0006】
しかし、内部電極が薄く形成されるほど電極連結性は低くなり、これは容量低下、耐電圧特性および信頼性低下を引き起こすことが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施形態の一側面は、電極の薄層化を実現することができ、電気的特性が改善された積層型キャパシタを提供する。
【0008】
しかし、実施形態が解決しようとする課題は上述した課題に限定されず、実施形態に含まれている技術的思想の範囲で多様に拡張することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による積層型キャパシタは、誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディ、そして前記キャパシタボディの外側に配置される外部電極を含み、
前記内部電極は、下記化学式1で表される化合物を含む。
【0010】
[化学式1]
Mn+1Xn
前記化学式1中、
MはTi、Zr、Hf、Sc、Cr、V、Nb、Ta、Mo、Mn、W、Y、またはこれらの組み合わせを含み、
XはC、N、またはこれらの組み合わせを含み、かつ1≦n≦2である。
【0011】
前記化学式1で表される化合物は、Ti2C、V2C、Nb2C、Mo2C、Mo2N、Ti2N、(Ti2-yNby)C、(V2-yNby)C、(Ti2-yVy)C、W1.33C、Nb1.33C、Mo1.33C、Mo1.33Y0.67C、またはこれらの組み合わせ(0<y<2)を含むことができる。
【0012】
前記化学式1で表される化合物は、板状(plate)の単位マキシン(Mxene)層であり、前記内部電極は、前記単位マキシン層が1層以上積層されたマキシン積層体を含むことができる。
【0013】
前記内部電極は、前記単位マキシン層が1層~500層で積層されたマキシン積層体を含むことができる。
【0014】
前記内部電極の平均厚さは0.002μm~2.5μmであり得る。
【0015】
前記誘電体層の平均厚さは0.5μm~3μmであり得る。
【0016】
前記誘電体層は、チタン酸バリウム系化合物を主成分として含み、
前記チタン酸バリウム系化合物は、BamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1-xCax)m(Ti1-yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1-xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)、(Ba1-xCax)m(Ti1-ySny)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0017】
前記誘電体層は副成分をさらに含み、
前記副成分は、ジスプロシウム(Dy)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、インジウム(In)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0018】
他の実施形態による積層型キャパシタは、誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディ、そして前記キャパシタボディの外側に配置される外部電極を含み、
前記内部電極は、下記化学式1で表される化合物を含み、
前記内部電極の平均厚さは0.002μm~2.5μmである。
【0019】
[化学式1]
Mn+1Xn
前記化学式1中、
MはTi、Zr、Hf、Sc、Cr、V、Nb、Ta、Mo、Mn、W、Y、またはこれらの組み合わせを含み、
XはC、N、またはこれらの組み合わせを含み、かつ、1≦n≦2である。
【0020】
前記化学式1で表される化合物は、Ti2C、V2C、Nb2C、Mo2C、Mo2N、Ti2N、(Ti2-yNby)C、(V2-yNby)C、(Ti2-yVy)C、W1.33C、Nb1.33C、Mo1.33C、Mo1.33Y0.67C、またはこれらの組み合わせ(0<y<2)を含むことができる。
【0021】
前記化学式1で表される化合物は、板状(plate)の単位マキシン(Mxene)層であり、前記内部電極は、前記単位マキシン層が1層以上積層されたマキシン積層体を含むことができる。
【0022】
前記内部電極は、前記単位マキシン層が1層~500層で積層されたマキシン積層体を含むことができる。
【0023】
前記誘電体層の平均厚さは0.5μm~3μmであり得る。
【0024】
前記誘電体層は、チタン酸バリウム系化合物を主成分として含み、
前記チタン酸バリウム系化合物は、BamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1-xCax)m(Ti1-yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1-xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)、(Ba1-xCax)m(Ti1-ySny)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0025】
前記誘電体層は副成分をさらに含み、
前記副成分は、ジスプロシウム(Dy)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、インジウム(In)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の実施形態による積層型キャパシタによれば、電極の薄層化を実現することができ、電気的特性が改善され得るという長所がある。
【0027】
但し、本発明の多様で、かつ有益な長所と効果は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施形態による積層型キャパシタを示す斜視図である。
【
図2】
図1のI-I’線に沿って切断した積層型キャパシタの断面図である。
【
図3】
図1のキャパシタボディで内部電極層の積層構造を示す分離斜視図である。
【
図4】一実施形態による積層型キャパシタの断面の一部を示す模式図である。
【
図5】実施例1および比較例1による積層型キャパシタのインピーダンス(Impedance)を評価したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付した図面を参照して本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施形態を詳しく説明する。図面で本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付した。また、添付された図面は本明細書に開示された実施形態を容易に理解することができるようにするためのものに過ぎず、添付された図面によって本明細書に開示された技術的思想が制限されず、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物または代替物を含むと理解されなければならない。
【0030】
第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0031】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」または「接続されて」いると言及された時には、その他の構成要素に直接的に連結されているか、接続されているか、または対向していることもあるが、中間に他の構成要素が存在することもあると理解されなければならない。反面、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」または「直接接続されて」いると言及された時には、中間に他の構成要素が存在しないと理解されなければならない。
【0032】
明細書全体で、「含む」または「有する」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。したがって、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対になる記載がない限り他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0033】
図1は、一実施形態による積層型キャパシタ100を示す斜視図であり、
図2は、
図1のI-I’線に沿って切断した積層型キャパシタ100の断面図であり、
図3は、
図1のキャパシタボディ110で内部電極の積層構造を示す分離斜視図である。
【0034】
本実施形態を明確に説明するために方向を定義すれば、図面に表示されたL軸、W軸、およびT軸はそれぞれキャパシタボディ110の長さ方向、幅方向、および厚さ方向を示す。ここで、厚さ方向(T軸方向)はシート形状の構成要素の広い面(主面)に垂直な方向であってもよく、一例として誘電体層111が積層される積層方向と同一な概念として使用できる。長さ方向(L軸方向)はシート形状の構成要素の広い面(主面)に平行に延長される方向で厚さ方向(T軸方向)と大略的に垂直な方向であってもよく、一例として両側に第1外部電極131および第2外部電極132が位置する方向であってもよい。幅方向(W軸方向)はシート形状の構成要素の広い面(主面)に平行に延長される方向で厚さ方向(T軸方向)および長さ方向(L軸方向)と大略的に垂直な方向であってもよく、シート形状の構成要素の長さ方向(L軸方向)の長さは幅方向(W軸方向)の長さよりさらに長くてもよい。
【0035】
図1~
図3を参照すると、一実施形態による積層型キャパシタ100は、キャパシタボディ110、そしてキャパシタボディ110の長さ方向(L軸方向)に対向する両端に配置される第1外部電極131および第2外部電極132を含むことができる。
【0036】
キャパシタボディ110は一例として、大略的な六面体形状であってもよい。
【0037】
本実施形態では説明の便宜のために、キャパシタボディ110で厚さ方向(T軸方向)に互いに対向する両面を第1面および第2面と、第1面および第2面と連結され長さ方向(L軸方向)に互いに対向する両面を第3面および第4面と、第1面および第2面と連結され第3面および第4面と連結され幅方向(W軸方向)に互いに対向する両面を第5面および第6面と定義する。
【0038】
一例として、下面である第1面が実装方向に向かう面になり得る。また、第1面~第6面は平らであってもよいが、本実施形態がこれに限定されず、例えば、第1面~第6面は中央部が凸の曲面であってもよく、各面の境界である角はラウンド(round)されていてもよい。
【0039】
キャパシタボディ110の形状、寸法、および誘電体層111の積層数が本実施形態の図面に示されたものに限定されるものではない。
【0040】
キャパシタボディ110は複数の誘電体層111を厚さ方向(T軸方向)に積層した後に焼成したものであって、複数の誘電体層111と誘電体層111を挟んで厚さ方向(T軸方向)に交互に配置される第1内部電極121および第2内部電極122を含む。
【0041】
このとき、キャパシタボディ110の互いに隣接するそれぞれの誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を使用せずには確認しにくい程度に一体化できる。
【0042】
また、キャパシタボディ110は、アクティブ領域とカバー領域112、113を含むことができる。
【0043】
アクティブ領域は、積層型キャパシタ100の容量形成に寄与する部分である。一例として、アクティブ領域は、厚さ方向(T軸方向)に沿って積層される第1内部電極121または第2内部電極122が重畳(overlap)した領域であってもよい。
【0044】
カバー領域112、113は厚さ方向マージン部であって厚さ方向(T軸方向)にアクティブ領域の第1面および第2面側にそれぞれ配置され得る。このようなカバー領域112、113は、単一誘電体層111または二つ以上の誘電体層111がアクティブ領域の上面および下面にそれぞれ積層されたものであってもよい。
【0045】
また、キャパシタボディ110は、側面カバー領域をさらに含むことができる。側面カバー領域は幅方向マージン部であって幅方向(W軸方向)にアクティブ領域の第5面および第6面側にそれぞれ配置され得る。このような側面カバー領域は、誘電体グリーンシート表面に内部電極形成用導電性ペースト層を塗布する時、誘電体グリーンシート表面の一部領域にのみ導電性ペースト層を塗布し、誘電体グリーンシート表面の両方の側面には導電性ペースト層を塗布していない誘電体グリーンシートを積層した後、焼成することによって形成することができる。
【0046】
カバー領域112、113と側面カバー領域は、物理的または化学的ストレスによる第1内部電極121および第2内部電極122の損傷を防止する役割を果たす。
【0047】
一実施形態による積層型キャパシタ100は、誘電体層111および内部電極121、122を含むキャパシタボディ110、そして前記キャパシタボディ110の外側に配置される外部電極131、132を含む。
【0048】
以下、前記積層型キャパシタ100について図面を参照して詳細に説明する。
【0049】
内部電極
第1内部電極121と第2内部電極122は互いに異なる極性を有する電極であって、誘電体層111を間に置いてT軸方向に沿って互いに対向するように交互に配置され、一端がキャパシタボディ110の第3面および第4面を介してそれぞれ露出する。
【0050】
第1内部電極121と第2内部電極122は中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に絶縁され得る。
【0051】
キャパシタボディ110の第3面および第4面を介して交互に露出する第1内部電極121および第2内部電極122の端部は、第1外部電極131および第2外部電極132とそれぞれ接続されて電気的に連結され得る。
【0052】
一実施形態で、前記内部電極121、122は、下記化学式1で表される第1化合物を含む。
【0053】
[化学式1]
Mn+1Xn
前記化学式1中、
MはTi、Zr、Hf、Sc、Cr、V、Nb、Ta、Mo、Mn、W、Y、またはこれらの組み合わせを含み、
XはC、N、またはこれらの組み合わせを含み、かつ、1≦n≦2である。
【0054】
一例として、前記化学式1で表される化合物は、Ti2C、V2C、Nb2C、Mo2C、Mo2N、Ti2N、(Ti2-yNby)C、(V2-yNby)C、(Ti2-yVy)C、W1.33C、Nb1.33C、Mo1.33C、Mo1.33Y0.67C、またはこれらの組み合わせ(0<y<2)を含むことができる。
【0055】
一例として、前記化学式1で表される化合物はマキシン(Mxene)化合物であり得る。前記マキシン化合物とは、2次元形態の物質であり、電気伝導性と強度に優れた非磁性の化合物であり得る。
【0056】
前記マキシン(Mxene)化合物は非磁性材料であり、透磁率が低いため、これを内部電極121、122に適用する場合、積層型キャパシタ100の等価直列インダクタンス(Equivalent Series Inductance、ESL)を低減することができ、高周波領域でのインピーダンス(Impedance)特性を改善することができる。
【0057】
また、前記マキシン(Mxene)化合物は単位厚さが数nmレベル(例えば2nm以下のレベル)と非常に薄く、2次元の物質であるため、焼成過程中にL軸方向とW軸方向よりもT軸方向への収縮が活性化することができる。これにより、マキシン(Mxene)化合物を内部電極121、122に適用する場合、電極の薄層化を実現することができる。したがって、キャパシタの設計自由度を確保することができ、超小型で、かつ高容量である積層型キャパシタ100を実現することができる。
【0058】
一例として、前記化学式1で表されるマキシン(Mxene)化合物は、下記化学式2で表されるMAX相(MAX phase)化合物から得られる化合物であり得る。
【0059】
[化学式2]
Mn+1AXn
前記化学式2中、
MはTi、Zr、Hf、Sc、Cr、V、Nb、Ta、Mo、Mn、W、Y、またはこれらの組み合わせを含み、
AはAl、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Zn、Cd、P、As、S、Cu、Au、またはこれらの組み合わせを含み、
XはC、N、またはこれらの組み合わせを含み、
nは1~4の整数である。
【0060】
前記MAX相化合物は、金属とセラミックの特性を全て有する化合物であって、熱伝導度と電気伝導度に非常に優れ、強度とモジュラスが高いという特徴がある。
【0061】
前記化学式2で表されるMAX相化合物は、Ti2AlC、V2AlC、Cr2AlC、Nb2AlC、Ta2AlC、Zr2AlC、Ti2AlN、Ti3AlC2、V3AlC2、Ta3AlC2、Zr3AlC2、Ti4AlN3、V4AlC3、Nb4AlC3、Ta4AlC3、(Mo,V)4AlC3、Mo4VAlC4、Ti3SiC2、Ti4SiC3、Ti2CdC、Sc2InC、Sc2SnC、Ti2GaC、Ti2InC、Ti2TlC、V2GaC、Cr2GaC、Ti2GaN、Ti2InN、V2GaN、Cr2GaN、Ti2GeC、Ti2SnC、Ti2PbC、V2GeC、Cr2GeC、V2PC、V2AsC、Ti2SC、Zr2InC、Zr2TlC、Nb2GaC、Nb2InC、Mo2GaC、Zr2InN、Zr2TlN、Zr2SnC、Zr2PbC、Nb2SnC、Nb2PC、Nb2AsC、Zr2SC、Nb2SC、Hf2InC、Hf2TlC、Ta2GaC、Hf2SnC、Hf2PbC、Hf2SnN、Hf2SC、Ti2ZnC、Ti2ZnN、V2ZnC、Nb2CuC、Mn2GaC、Mo2AuC、Ti2AuN、Ti3GaC2、Ti3InC2、Ti3GeC2、Ti3SnC2、Ti3ZnC2、Ti4GaC3、Ti4GeC3、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0062】
一例として、前記内部電極121、122は導電性金属をさらに含むことができ、導電性金属は、例えばNi、Cu、Ag、Pd、またはAuなどの金属やこれらの合金、例えばAg-Pd合金をさらに含むことができる。
【0063】
また、第1内部電極121および第2内部電極122は、誘電体層111に含まれるセラミック材料と同一組成系の誘電体粒子を含むこともできる。
【0064】
図4は、一実施形態による積層型キャパシタ100の断面の一部を示す模式図である。
【0065】
図4を参照すると、前記化学式1で表される化合物は層状構造であってもよく、1層以上で積層され前記内部電極121、122を構成することができる。
【0066】
一例として、前記化学式1で表される化合物は、板状(plate)の単位マキシン層であってもよく、前記内部電極121、122は、前記単位マキシン層が1層以上積層されたマキシン積層体を含むことができる。前記単位マキシンはキャパシタボディ110のT軸方向に積層され、それぞれの単位マキシン層間の重畳する面積が不均一に積層されていてもよい。一例として、前記単位マキシン層は、キャパシタボディ110のL軸方向に連続的または不連続的に連結されていてもよい。
【0067】
一例として、前記化学式1で表される化合物(単位マキシン層)は1層(single layer)以上積層することができ、例えば、2層以上、10層以上、20層以上、100層以上、または350層以上積層することができる。積層数の上限は特に限定されないが、例えば500層以下積層することができる。
【0068】
一例として、前記内部電極121、122の平均厚さは0.002μm以上、0.01μm以上、0.05μm以上、0.1μm以上、または0.5μm以上であり、2.5μm以下、2μm以下、1.5μm以下、または1μm以下であり得る。上述したように、前記化学式1で表される化合物であるマキシン(Mxene)化合物を内部電極121、122に適用することによって内部電極121、122の薄層化を実現することができる。
【0069】
前記内部電極121、122の平均厚さは、以下の方法で測定することができる。
【0070】
まず、積層型キャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディ110のL軸方向およびT軸方向の側面をW軸方向に1/2地点まで研磨(Polishing)し、固定後真空雰囲気チャンバー内に維持して、キャパシタボディ110のW軸方向の中央からL軸方向およびT軸方向に切断した断面サンプル(以下、「断面サンプル」という)を準備する。
【0071】
その後、前記断面サンプルの走査電子顕微鏡(SEM)イメージにおいて、第1内部電極121または第2内部電極122のL軸方向またはW軸方向の中央地点を基準点にして、基準点から所定間隔で離れた10個の地点における前記内部電極121、122の厚さの算術平均値を求めて内部電極の平均厚さを求めることができる。
【0072】
10個の地点の間隔は、走査電子顕微鏡(SEM)イメージのスケール(scale)によって調節することができる。このとき、10個の地点は全て第1内部電極121または第2内部電極122内に位置しなければならず、10個の地点が全て第1内部電極121または第2内部電極122内に位置しない場合、基準点の位置を変更するか、または10個の地点の間の間隔を調節することができる。
【0073】
上述した化学式1で表される化合物を含む内部電極121、122の積層構造と構成元素は以下の方法で確認することができる。
【0074】
前記断面サンプルの走査電子顕微鏡(SEM)イメージで板状(plate)の単位マキシン層が板状に積層された形態の内部電極121、122を確認することができる。
【0075】
また、SEM-EDS分析により、内部電極121、122を構成する元素がマキシン化合物を構成する元素(例えば、Ti、Cなど)であることを確認することができる。
【0076】
誘電体層
誘電体層111は誘電体を含み、誘電体は主成分と副成分を含むことができる。
【0077】
主成分は誘電体の母材であって、高い誘電率を有し、積層型キャパシタ100の誘電率の形成に寄与する。
【0078】
一例として、主成分はチタン酸バリウム系化合物を含み、前記チタン酸バリウム系化合物は、BamTiO3(0.995≦m≦1.010)、(Ba1-xCax)m(Ti1-yZry)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、Bam(Ti1-xZrx)O3(0.995≦m≦1.010、x≦0.10)、(Ba1-xCax)m(Ti1-ySny)O3(0.995≦m≦1.010、0≦x≦0.10、0<y≦0.20)、またはこれらの組み合わせを含む誘電材料であってもよい。
【0079】
一例として、主成分は、BaTiO3、Ba(Ti,Zr)O3、Ba(Ti,Sn)O3、(Ba,Ca)TiO3、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3、(Ba,Ca)(Ti,Sn)O3、(Ba,Sr)TiO3、(Ba,Sr)(Ti,Zr)O3、(Ba,Sr)(Ti,Sn)O3、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0080】
一例として、前記副成分は、ジスプロシウム(Dy)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、インジウム(In)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0081】
誘電体は、セラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0082】
一例として、誘電体層111の平均厚さは0.5μm以上、1.0μm以上、または2.0μm以上であり、3μm以下、2.9μm以下、2.8μm以下、または2.7μmであり得る。
【0083】
キャパシタボディの焼成過程中に前記内部電極121、122に含まれるマキシン化合物のT軸方向への収縮が活性化しながら、L軸方向とW軸方向への収縮を抑制することができる。これにより、誘電体層111のL軸方向とW軸方向への収縮も抑制することができ、したがって、誘電体層111のT軸方向への収縮が活性化しながら誘電体層111の厚さも薄層化することができるという長所がある。
【0084】
誘電体層111の平均厚さは、以下の方法で測定することができる。
【0085】
まず、断面サンプルを走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で観察して得た走査電子顕微鏡イメージを準備する。
【0086】
断面サンプルの走査電子顕微鏡(SEM)イメージにおいて、誘電体層111の長さ方向(L軸方向)または幅方向(W軸方向)の中央地点を基準点にして、基準点から所定間隔で離れた10個の地点における誘電体層111の厚さの算術平均値であり得る。
【0087】
10個の地点の間隔は走査電子顕微鏡(SEM)イメージのスケール(scale)によって調節することができる。このとき、10個の地点は全て誘電体層111内に位置しなければならず、10個の地点が全て誘電体層111内に位置しない場合、基準点の位置を変更するか、または10個の地点の間の間隔を調節することができる。
【0088】
外部電極
第1外部電極131および第2外部電極132は互いに異なる極性の電圧が提供され、第1内部電極121および第2内部電極122の露出される部分とそれぞれ接続されて電気的に連結できる。
【0089】
上記のような構成により、第1外部電極131および第2外部電極132に所定の電圧を印加すると、互いに対向する第1内部電極121と第2内部電極122との間に電荷が蓄積される。このとき、積層型キャパシタ100の静電容量はアクティブ領域でT軸方向に沿って互いに重畳する第1内部電極121および第2内部電極122のオーバーラップされた面積と比例する。
【0090】
第1外部電極131および第2外部電極132は、キャパシタボディ110の第3面および第4面にそれぞれ配置され、第1内部電極121および第2内部電極122と接続される第1接続部および第2接続部と、キャパシタボディ110の第3面および第4面と、第1面および第2面または第5面および第6面が接する角に配置される第1バンド部および第2バンド部をそれぞれ含むことができる。
【0091】
第1バンド部および第2バンド部は、第1接続部および第2接続部からキャパシタボディ110の第1面および第2面または第5面および第6面の一部までそれぞれ延長される。第1バンド部および第2バンド部は、第1外部電極131および第2外部電極132の固着強度を向上させる役割を果たす。
【0092】
一例として、第1外部電極131および第2外部電極132はそれぞれ、キャパシタボディ110と接触する焼結金属層、焼結金属層を覆うように配置される伝導性樹脂層、および伝導性樹脂層を覆うように配置されるメッキ層を含むことができる。
【0093】
焼結金属層は、導電性金属およびガラスを含むことができる。
【0094】
一例として、焼結金属層は導電性金属として銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、これらの合金、またはこれらの組み合わせを含むことができ、例えば銅(Cu)は銅(Cu)合金を含むことができる。導電性金属が銅を含む場合、銅以外の金属は銅100モル部に対して5モル部以下で含まれてもよい。
【0095】
一例として、焼結金属層はガラスとして酸化物が混合された組成を含むことができ、例えば、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物、遷移金属酸化物、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択される一つ以上であってもよい。遷移金属は、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、銅(Cu)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、およびニッケル(Ni)からなる群より選択され、アルカリ金属はリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、およびカリウム(K)からなる群より選択され、アルカリ土類金属はマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、およびバリウム(Ba)からなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0096】
選択的に、伝導性樹脂層は焼結金属層の上に形成され、例えば、焼結金属層を完全に覆う形態で形成することができる。一方、第1外部電極131および第2外部電極132は焼結金属層を含まなくてもよく、この場合、伝導性樹脂層がキャパシタボディ110と直接接触してもよい。
【0097】
伝導性樹脂層はキャパシタボディ110の第1面および第2面または第5面および第6面に延長され、伝導性樹脂層がキャパシタボディ110の第1面および第2面または第5面および第6面に延長して配置された領域(即ち、バンド部)の長さは焼結金属層がキャパシタボディ110の第1面および第2面または第5面および第6面に延長して配置された領域(即ち、バンド部)の長さより長くてもよい。即ち、伝導性樹脂層は焼結金属層の上に形成され、焼結金属層を完全に覆う形態で形成することができる。
【0098】
伝導性樹脂層は、樹脂および導電性金属を含む。
【0099】
伝導性樹脂層に含まれる樹脂は接合性および衝撃吸収性を有し、導電性金属粉末と混合してペーストを作ることができるものであれば特に制限されず、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、またはポリイミド樹脂を含むことができる。
【0100】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、第1内部電極121および第2内部電極122または焼結金属層と電気的に連結されるようにする役割を果たす。
【0101】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、球形、フレーク形、またはこれらの組み合わせの形態を有することができる。即ち、導電性金属はフレーク形のみからなるか、または球形のみからなってもよく、フレーク形と球形が混合された形態であってもよい。
【0102】
ここで、球形は完全な球形でない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下である形態を含むことができる。フレーク形粉末は平たくて細長い形態を有する粉末を意味し、特に制限されるわけではないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であってもよい。
【0103】
第1外部電極131および第2外部電極132は、伝導性樹脂層外側に配置されるメッキ層をさらに含むことができる。
【0104】
メッキ層は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、タングステン(W)、チタン(Ti)または鉛(Pb)などの単独またはこれらの合金を含むことができる。一例として、メッキ層は、ニッケル(Ni)メッキ層またはスズ(Sn)メッキ層であってもよく、ニッケル(Ni)メッキ層およびスズ(Sn)メッキ層が順次積層された形態であってもよく、スズ(Sn)メッキ層、ニッケル(Ni)メッキ層、およびスズ(Sn)メッキ層が順次積層された形態であってもよい。また、メッキ層は、複数のニッケル(Ni)メッキ層および/または複数のスズ(Sn)メッキ層を含むこともできる。
【0105】
メッキ層は、積層型キャパシタ100の基板との実装性、構造的信頼性、外部に対する耐久度、耐熱性、および等価直列抵抗値(Equivalent Series Resistance、ESR)を改善することができる。
【0106】
積層型キャパシタの製造方法
他の実施形態による積層型キャパシタの製造方法は、誘電体層および内部電極を含むキャパシタボディを製造する段階と、キャパシタボディの外側に外部電極を形成する段階とを含む。
【0107】
まず、キャパシタボディの製造について説明する。
【0108】
キャパシタボディの製造工程では、焼成後に誘電体層になる誘電体用ペーストと、焼成後に内部電極になる導電性ペーストを準備する。
【0109】
誘電体用ペーストは、例えば次のような方法で製造する。誘電体粉末を湿式混合などの手段によって均一に混合し、乾燥させた後、所定の条件で熱処理することによって、可塑粉末を得る。得られた可塑粉末に、有機ビヒクルまたは水系ビヒクルを追加して混練し誘電体用ペーストを調製する。
【0110】
得られた誘電体用ペーストをドクターブレード法などの技法によってシート化することによって、誘電体グリーンシートを得る。また、誘電体用ペーストには、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、またはガラスなどから選択される添加物が含まれていてもよい。
【0111】
内部電極用導電性ペーストは、前記化学式1で表されるマキシン化合物を含んで調製することができる。化学式1で表されるマキシン化合物については上述したので、ここでは説明を省略する。
【0112】
一例として、誘電体グリーンシート表面に、スクリーン印刷などの各種印刷法や転写法によって、内部電極用導電性ペーストを所定のパターンで塗布することができる。他の一例として、誘電体グリーンシート表面にスピンコーティング(spin coating)、スプレーコーティング(spray coating)などのコーティング工程により内部電極用導電性ペーストを塗布することができる。
【0113】
そして内部電極パターンを形成した誘電体グリーンシートを複数層にわたって積層した後、積層方向にプレスすることによって誘電体グリーンシート積層体を得る。このとき、誘電体グリーンシート積層体の積層方向の上面および下面に誘電体グリーンシートが位置するように、誘電体グリーンシートと内部電極パターンを積層することができる。
【0114】
選択的に、得られた誘電体グリーンシート積層体をダイシングなどによって所定の寸法に切断することができる。
【0115】
また、誘電体グリーンシート積層体は必要に応じて可塑剤などを除去するために固化乾燥することができ、固化乾燥後に水平遠心バレル研磨機などを用いてバレル研磨することができる。バレル研磨では、誘電体グリーンシート積層体をメディアおよび研磨液と共に、バレル容器内に投入しそのバレル容器に対して回転運動や振動などを付与することによって、切断時に発生したバーなどの不要な部分を研磨することができる。また、バレル研磨後、誘電体グリーンシート積層体は水などの洗浄液で洗浄して乾燥することができる。
【0116】
誘電体グリーンシート積層体を脱バインダー処理および焼成処理してキャパシタボディを得る。
【0117】
脱バインダー処理の条件は、誘電体層の主成分組成や内部電極の主成分組成によって適切に調節することができる。例えば、脱バインダー処理時の昇温速度は5℃/時間~300℃/時間、支持温度は180℃~400℃、温度維持時間は0.5時間~24時間であってもよい。脱バインダー雰囲気は、空気または還元性雰囲気であってもよい。
【0118】
焼成処理の条件は、誘電体層の主成分組成や内部電極の主成分組成によって適切に調節することができる。例えば、焼成時の温度は1200℃~1350℃、または1220℃~1300℃であってもよく、時間は0.5時間~8時間、または1時間~3時間であってもよい。焼成雰囲気は還元性雰囲気であってもよく、例えば、窒素ガス(N2)と水素ガス(H2)の混合ガスを加湿した雰囲気であってもよい。
【0119】
焼成処理後には、必要に応じてアニーリングを行うことができる。アニーリングは誘電体層を再酸化させるための処理であり、焼成処理を還元性雰囲気で行った場合には、アニーリングを行うことができる。アニーリング処理の条件も誘電体層の主成分組成などによって適切に調節することができる。例えば、アニーリング時の温度は950℃~1150℃であってもよく、時間は0時間~20時間であってもよく、昇温速度は50℃/時間~500℃/時間であってもよい。アニーリング雰囲気は加湿した窒素ガス(N2)雰囲気であってもよく、酸素分圧は1.0×10-9MPa~1.0×10-5MPaであってもよい。
【0120】
脱バインダー処理、焼成処理、またはアニーリング処理で、窒素ガスや混合ガスなどを加湿するためには例えばウェッター(wetter)などを使用することができ、この場合、水温は5℃~75℃であってもよい。脱バインダー処理、焼成処理、およびアニーリング処理は連続して行うことができ、独立的に行うこともできる。
【0121】
選択的に、得られたキャパシタボディの第3面および第4面に対して、サンドブラスティング処理、レーザー照射、またはバレル研磨などの表面処理を行うことができる。このような表面処理を行うことによって、第3面および第4面の最表面に第1内部電極および第2内部電極の端部が露出され、これにより第1外部電極および第2外部電極と第1内部電極および第2内部電極の電気的接合が良好になり、合金部が形成されやすくなり得る。
【0122】
その後に、得られたキャパシタボディの外面に、外部電極として焼結金属層形成用ペーストを塗布した後に焼結させて、焼結金属層を形成することができる。
【0123】
焼結金属層形成用ペーストは、導電性金属とガラスを含むことができる。導電性金属とガラスに関する説明は上述した通りであるので、反復的な説明は省略する。また、焼結金属層形成用ペーストは選択的にバインダー、溶剤、分散剤、可塑剤、または酸化物粉末などの副成分を含むことができる。例えば、バインダーはエチルセルロース、アクリル、またはブチラール(butyral)などを使用することができ、溶剤はテルピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、またはトルエンなどの有機溶剤や水系溶剤を使用することができる。
【0124】
焼結金属層形成用ペーストをキャパシタボディの外面に塗布する方法としては、ディップ法、またはスクリーン印刷などの各種印刷法、ディスペンサーなどを用いた塗布法、またはスプレーを用いた噴霧法などを使用することができる。焼結金属層用ペーストは少なくともキャパシタボディの第3面および第4面に塗布され、選択的に第1外部電極および第2外部電極のバンド部が形成される第1面、第2面、第5面、または第6面の一部にも塗布できる。
【0125】
その後、焼結金属層形成用ペーストが塗布されたキャパシタボディを乾燥させ、700℃~1000℃の温度で0.1時間~3時間焼結させ、焼結金属層を形成する。
【0126】
選択的に、得られたキャパシタボディの外面に、伝導性樹脂層形成用ペーストを塗布した後に硬化させ、伝導性樹脂層を形成することができる。
【0127】
伝導性樹脂層形成用ペーストは、樹脂、および選択的に導電性金属または非伝導性フィラーを含むことができる。導電性金属と樹脂に関する説明は上述した通りであるので、反復的な説明は省略する。また、伝導性樹脂層形成用ペーストは選択的にバインダー、溶剤、分散剤、可塑剤、または酸化物粉末などの副成分を含むことができる。例えば、バインダーはエチルセルロース、アクリル、またはブチラール(butyral)などを使用することができ、溶剤はテルピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、またはトルエンなどの有機溶剤や水系溶剤を使用することができる。
【0128】
一例として、伝導性樹脂層の形成方法は、伝導性樹脂層形成用ペーストにキャパシタボディ110をディッピングして形成した後に硬化させるか、または伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディ110の表面にスクリーン印刷法またはグラビア印刷法などで印刷するか、または伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディ110の表面に塗布した後に硬化させて形成することができる。
【0129】
その後、伝導性樹脂層の外側にメッキ層を形成する。
【0130】
一例として、メッキ層はメッキ法によって形成することができ、スパッタまたは電解メッキ(Electric Deposition)によって形成することもできる。
【0131】
以下、発明の具体的な実施例を提示する。但し、下記に記載された実施例は発明を具体的に例示するかまたは説明するためのものに過ぎず、これによって発明の範囲が制限されてはならない。
【実施例0132】
実施例1
BaTiO3を含む誘電体用スラリーを製造し、前記誘電体用スラリーをヘッド吐出方式のオン-ロール(on roll)成形コーター(coater)を用いてコートし、4μm厚さの誘電体グリーンシートを製造した。その後、Ti2Cを含む内部電極用導電性ペーストを準備した。
【0133】
前記誘電体グリーンシート表面に上記導電性ペーストを2μm厚さ(Ti2C 350層)で印刷し、導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層およびプレスして誘電体グリーンシート積層体を製造した。
【0134】
誘電体グリーンシート積層体を400℃以下、窒素雰囲気で可塑工程を経て焼成温度1300℃以下、水素濃度1.0% H2以下の条件で焼成して実施例1による積層型キャパシタを製造した。
【0135】
実施例2
前記誘電体グリーンシート表面に前記導電性ペーストを1μm厚さ(Ti2C 145層)で印刷して製造したことを除いては、実施例1と同様の方法で実施例2による積層型キャパシタを製造した。
【0136】
実施例3
前記誘電体グリーンシート表面に前記導電性ペーストを0.2μm厚さ(Ti2C 24層)で印刷して製造したことを除いては、実施例1と同様の方法で実施例3による積層型キャパシタを製造した。
【0137】
実施例4
前記誘電体グリーンシート表面に前記導電性ペーストを0.005μm厚さ(Ti2C 1層)で印刷して製造したことを除いては、実施例1と同様の方法で実施例4による積層型キャパシタを製造した。
【0138】
比較例1
BaTiO3を含む誘電体用スラリーを製造し、前記誘電体用スラリーをヘッド吐出方式のオン-ロール(on roll)成形コーター(coater)を用いて4μm厚さの誘電体グリーンシートを製造した。その後、Niを含む内部電極用導電性ペーストを準備した。
【0139】
前記誘電体グリーンシート表面に上記導電性ペーストを4μm厚さで印刷し、導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層およびプレスして誘電体グリーンシート積層体を製造した。
【0140】
誘電体グリーンシート積層体を400℃以下、窒素雰囲気で可塑工程を経て焼成温度1300℃以下、水素濃度1.0% H2以下の条件で焼成して比較例1による積層型キャパシタを製造した。
【0141】
比較例2
前記誘電体グリーンシート表面に前記導電性ペーストを3μm厚さで印刷して製造したことを除いては、比較例1と同様の方法で比較例2による積層型キャパシタを製造した。
【0142】
比較例3
前記誘電体グリーンシート表面に前記導電性ペーストを2μm厚さで印刷して製造したことを除いては、比較例1と同様の方法で比較例3による積層型キャパシタを製造した。
【0143】
比較例4
前記誘電体グリーンシート表面に前記導電性ペーストを1μm厚さで印刷して製造したことを除いては、比較例1と同様の方法で比較例4による積層型キャパシタを製造した。
【0144】
(評価例)
評価例1:内部電極と誘電体層の厚さ評価
実施例1および比較例1による積層型キャパシタにおいて内部電極と誘電体層の厚さは以下の方法で測定する。
【0145】
まず、積層型キャパシタをエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディのL軸方向およびT軸方向の側面をW軸方向に1/2地点まで研磨し、固定後、真空雰囲気チャンバー内に維持して、キャパシタボディのW軸方向の中央からL軸方向およびT軸方向に切断した断面サンプル(以下、「断面サンプル」という)を準備する。
【0146】
その後、前記断面サンプルの走査電子顕微鏡(SEM)イメージにおいて、内部電極のL軸方向またはW軸方向の中央地点を基準点にして、基準点から所定間隔で離れた10個の地点における内部電極の厚さの算術平均値を求めて内部電極の平均厚さを求めることができる。
【0147】
また、前記断面サンプルの走査電子顕微鏡(SEM)イメージにおいて、誘電体層のL軸方向またはW軸方向の中央地点を基準点にして、基準点から所定間隔で離れた10個の地点における誘電体層の厚さの算術平均値を求めて誘電体層の平均厚さを求めることができる。
【0148】
【0149】
表1を参照すると、実施例1~実施例4による積層型キャパシタの場合、内部電極にマキシン化合物であるTi2Cを適用することによって、内部電極の厚さが比較例1~比較例4に比べて非常に薄いことを確認することができる。
【0150】
また、実施例の場合、内部電極と誘電体層のT軸方向への収縮が活性化するので、比較例と同じ厚さの誘電体グリーンシートを焼成しても、焼成後、誘電体層の平均厚さが相対的に薄いことを確認することができる。
【0151】
評価例2:高周波領域インピーダンス(Impedance)特性評価
実施例1および比較例3による積層型キャパシタに対して高周波領域でのインピーダンス特性を評価して
図5に結果を示す。
【0152】
比較例3による積層型キャパシタの場合、内部電極に使用されるNiの高い透磁率によりESL値が大きく、共振周波数が低く測定されることを確認することができる。
【0153】
反面、実施例1による積層型キャパシタの場合、内部電極に使用されるマキシン化合物の低い透磁率によりESL値が低減され、高周波領域でのインピーダンス特性が改善されることを確認することができる。
【0154】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属するのは当然である。