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特開2025-10558ボルトへのナット螺合装置及びこれを用いたボルトへのナット螺合方法
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  • 特開-ボルトへのナット螺合装置及びこれを用いたボルトへのナット螺合方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010558
(43)【公開日】2025-01-22
(54)【発明の名称】ボルトへのナット螺合装置及びこれを用いたボルトへのナット螺合方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20250115BHJP
   B25B 21/00 20060101ALI20250115BHJP
   B25B 23/02 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B23P19/06 E
B25B21/00 H
B25B23/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112678
(22)【出願日】2023-07-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】523261023
【氏名又は名称】株式会社阿部工機
(74)【代理人】
【識別番号】100095717
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 博文
(72)【発明者】
【氏名】阿部 安広
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA03
3C038AA04
3C038EA01
(57)【要約】
【課題】作業者の簡単な操作で種々規格に対応したボルトとナットとを迅速に螺合させて一対一体化ができ、かつ搬送移動が容易で安価な螺合装置及びこれを用いたボルトへのナット螺合方法を提供する。
【解決手段】ボルトへのナット螺合装置は、モータ1の出力軸11に連結した軸受け部材2に着脱可能に装着されて鉛直軸で回転する円柱形状のナット保持体3と、該ナット保持体3には、その上面中央部に所定のナット5が遊嵌し得る内径をもって鉛直上方に開口した有底円筒形状のナット収納空間4が形成されており、前記ナット保持体3は、水平板状のテーブル6に遊嵌し得る開口径をもって形成した設置口60から、ナット保持体3の上面を露出させた状態で挿入保持して成る。また、前記ナット収納空間4の内周面の一カ所に、上端縁部から内底面部まで連続した溝部41を、鉛直下方に向かって形成しても良い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの出力軸に連結した軸受け部材に着脱可能に装着されて鉛直軸で回転する円柱形状のナット保持体と、
該ナット保持体には、その上面中央部に所定のナットが遊嵌し得る内径をもって鉛直上方に開口した有底円筒形状のナット収納空間が形成されており、
前記ナット保持体は、水平板状のテーブルに遊嵌し得る開口径をもって形成した設置口から、ナット保持体の上面を露出させた状態で挿入保持して成ること特徴とするボルトへのナット螺合装置。
【請求項2】
前記ナット収納空間の内周面の一カ所に、上端縁部から内底面部まで連続した溝部を、鉛直下方に向かって形成したことを特徴とする請求項1記載のボルトへのナット螺合装置。
【請求項3】
前記ボルトへのナット螺合装置を用いるものであって、
所定規格のナットが遊嵌し得る内径をもった鉛直上方開口の有底円筒形のナット収納空間を、上面中央部に備えたナット保持体を、モータによって鉛直軸回転させ、
該軸回転しているナット収納空間に所定規格のナットを収納保持して、該ナットの下面と前記ナット収納空間の内底面部との接触摩擦によって軸回転させ、
次に収納保持した状態で回転しているナットの螺合部に、ボルトの先端部を押接させて、ナットをボルトの先端付近に螺合させて取り付けたことを特徴としたボルトへのナット螺合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種規格に対応したボルトへナットを螺合させて一対とする螺合装置及びこれを用いたボルトへのナット螺合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルトへのナット螺合装置は、ボルト又はナットのいずれかを軸回転させて行っており、大量処理の場合には全自動の大型装置により行っており、効率的な処理を行っている。一方、多規格の少量処理の場合は、作業者の手作業により行っているのが現状であった。これを、大型機械装置で行うのは、段取り設定が煩雑になって作業性が悪いうえに、装置のコストを考慮すると極めて不経済であった。
【0003】
また、少量ではあっても、多種のボルトとナットを手作業により螺合させる方式では、作業者に長時間の緊張を強いるため、ボルトへのナット取り付け位置のばらつきが発生して、作業効率が悪いうえに、取り扱いの安定性に欠けていた。
【0004】
これに解決するものとして、ボルトへのナットの螺合位置までセンサー等で検知して自動化した機械装置が、例えば、特許文献1及び特許文献2において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平06-074238号公報
【特許文献2】特開2019-123036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記開示発明は構成部品点数の多い自動化機械であるため、メンテナンスが煩雑となる課題があった。また多くの装置は大型の固定設置型であるため、運搬移動が困難であるとの課題もあった。当然にかかる装置は高額となり、簡易手軽に操作ができて、かつ搬送移動が容易なものでは無かった。
【0007】
そこで、本願発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、作業者の簡単な操作で種々規格に対応したボルトとナットとを迅速に螺合させて一対一体化ができ、かつ搬送移動が容易で安価な螺合装置及びこれを用いたボルトへのナット螺合方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本願にかかるボルトへのナット螺合装置は以下のように構成している。
【0009】
すなわち、モータの出力軸に連結した軸受け部材に着脱可能に装着されて鉛直軸で回転する円柱形状のナット保持体と、該ナット保持体には、その上面中央部に所定のナットが遊嵌し得る内径をもって鉛直上方に開口した有底円筒形状のナット収納空間が形成されており、前記ナット保持体は、水平板状のテーブルに遊嵌し得る開口径をもって形成した設置口から、ナット保持体の上面を露出させた状態で挿入保持して成る。
【0010】
また、前記ナット収納空間の内周面の一カ所に、上端縁部から内底面部まで連続した溝部を、鉛直下方に向かって形成しても良い。これにより、ボルトにメッキや塗装がされている場合に、ナットの外周側の角部が溝部の縁辺と当接して回転力が発生し、これと接触摩擦による回転力とが相まってナットの螺合力を増大させることができる。
【0011】
さらに前記ボルトへのナット螺合装置は、所定規格のナットが遊嵌し得る内径をもった鉛直上方開口の有底円筒形のナット収納空間を上面中央部に開設されたナット保持体を、モータ駆動に着脱可能に連結して鉛直軸回転させ、該回転しているナット収納空間に所定規格のナットを収納して、前記ナット収納空間の底面部との摩擦により軸回転させた状態で、該回転しているナットの螺合口にボルトの先端を当接させて、ナットをボルトの先端付近に螺合させる手順で行う方法を採っている。
【発明の効果】
【0012】
上記構成により、以下の効果を奏する。
【0013】
複数の規格に対応したナット保持体を交換することで、多品種少量生産に迅速に対応できる。ナット収納空間の内底面部との接触摩擦によって、ナットを回転させることで、ボルトへの取り付け時間を短縮し、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態例の全体構成を一部縦断面で示した平面図である。
図2】本実施形態例の要部の対応関係を示した斜視図である。
図3】本実施形態例におけるボルトへのナット螺合の各行程を示した概略斜視図である。
図4】本実施形態例におけるボルトへのナット螺合の各行程を示した概略斜視図である。
図5】本実施形態例におけるボルトへのナット螺合の各行程を示した概略斜視図である。
図6】本実施形態例におけるボルトへのナット螺合の各行程を示した概略斜視図である。
図7】本実施形態例におけるボルトへのナット螺合の各行程を示した概略斜視図である。
図8】本実施形態例におけるボルトへのナット螺合の各行程を示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願発明を実施するための形態例(以下、「本実施形態例」)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図示1は、駆動源としてのモータであり、筐体(図示省略)の所定位置に配置した基台10に、モータ1の出力軸11の回転軸を鉛直上方に向けて配置している。該出力軸11には、軸受け部材2を取り付けている。この軸受け部材2は、後述するナット保持体3と着脱可能に連結して軸回転力を伝達する。
【0017】
なお、本実施形態例では、図示したようにモータ1の出力軸11に直接的に軸受け部材2を取り付けているが、これに限らず図示は省略するが、モータ1の出力軸11からギアやベルト等で連繋させて軸受け部材2の軸線を鉛直上方に向けて配置する構造を採ってもよい。
【0018】
該軸受け部材2は、外観が円柱形状を成したナット保持体3の回転を軸受けしている。この構造は、前記ナット保持体3の底部外側の中央部から鉛直下方に突出した円柱状の嵌合凸部30を一体形成している。この嵌合凸部30は、軸受け部材2の中心部から上方に開口した円筒状の嵌合凹部20と嵌合するように形成している。この嵌合の仕様は、前記嵌合凸部30の外周面の一部を軸に沿って切り欠いてDカット面31を形成し、このDカット面31と適合するように前記嵌合凹部20に突出面21を形成している。かかる構造により、前記軸受け部材2と鉛直方向の着脱が自在になると共に、Dカット面31と突出面21との当接により、軸回転力のみが伝達されることとなる。なお、この回転力のみを伝達する嵌合構造は、一般的な公知技術であり、例えば、キー連結構造としてもよい。
【0019】
前記ナット保持体3の上面中央部には、鉛直下方にナット5の高さ程度の深さ(例えば、M20の場合は25mm程度)と、該ナット5の外径に遊嵌(僅かな間隙をもって外接すること。)する内径(例えば、M20の場合は、約35mm程度)をもって有底円筒形状のナット収納空間4を形成している。
【0020】
また、ナット収納空間4の内周面40には、開口縁部から内底面部42まで連続した溝部41を、鉛直下方に向かって形成している。この溝部41の形成は必須のものではないが、ボルト7の製品仕様によっては、ネジ溝にメッキや塗装が施されている場合があり、ナット5の螺合力の増大に役立つものとなる。
【0021】
さらに、上記ナット収納空間4の内底面部42の一部又は全部には、鉛直回転軸と垂直となる平面状に形成しているが、これに限らず、内底面部42の内周面40の近傍付近又はドーナツ状の平面部(ナットとの接触面部となる。)を形成しても良い。
【0022】
前記ナット保持体3も、後述する水平板状のテーブル6に、遊嵌し得る開口径をもって形成した設置口60から、ナット保持体3の上面を露出させた状態で挿入保持している。本実施形態例では、このテーブル6の板面と略面一となるように設定している。
【0023】
この構成により、テーブル6を配置しているため、設置口60へのナット保持体3の挿入設置が迅速となり(図3参照)、さらにナット保持体3の上面とテーブル6とが略面一であるため、ナット保持体3へのナット5の収納保持を摺動移動操作のみで行うことができ(図4参照)、作業性の向上が図れる。
[作業手順]
次に、上記構成のボルトへのナット螺合装置の作業手順について説明する。
【0024】
はじめに、目的のボルト7に螺合させるナット5に適合したナット収納空間4を有するナット保持体3を、テーブル6に開設した設置口60から嵌合凸部30を下方に向けてモータ1の取り付けられた軸受け部材2の嵌合凹部20
【0025】
に嵌入する(図3参照)。この際に上記したように嵌合凸部30に形成したDカット面31と突出面21とを当接させることにより、鉛直上方への着脱を可能としつつ軸回転力の伝達を可能としている。
【0026】
次に、モータ1を駆動させてナット保持体3を軸回転させながら、ナット収納空間4に目的の規格ナット5を、テーブル6上をスライドさせて螺合口50を鉛直上方に向けて収納する(図4参照)。この収納によりナット5の下側面と、ナット収納空間4の内底面部40とが接触し、その接触摩擦により、ナット5は軸回転する(図5参照)。
【0027】
この回転を維持しながら所定のボルト7の先端部を、ナット5の螺合口50に近づけて押接(押し圧を掛けながら接触させること。)させることにより、ナット5は自動的にボルト7と螺合して上方に移動して前記内底面部40から離れて接触摩擦が無くなり、回転が終了する(図6参照)。
【0028】
この時点で把持したボルト7には、先端部付近にナット5が螺合した状態で保持され(図7参照)、かかるボルトナットの作業時の取り扱いに便益となる(図8参照)。
【0029】
また、ボルト7によっては、ネジ溝にメッキや塗装が施されているものもあり、このような仕様のボルト7に対しては、ナット5の下側面と、ナット収納空間4の内底面部40との接触摩擦力のみではナット5への螺入力が弱いため、十分な螺合入ができない場合がある。これを考慮して、ナット収納空間4の内周面40には、前記開口の上縁部から底面部まで連続した溝部41を、鉛直下方に向かって形成している。
【0030】
かかる溝部41を形成することにより、ナット5が回転中にその外周側の六角部と溝部41の縁部とが接触してさらに回転力を付加することかできる。これによりナット5の回転トルクを増すことができる。
【0031】
以上により、各規格ナット5に対応させたナット収納空間4を有する各種のナット保持体3を準備しておき、これを適宜に交換して作業することによって、種々規格のナット5とボルト7との組合せを迅速に行うことができる。これにより、従来の手作業に比べて格段に作業性の向上が図れる。
【符号の説明】
【0032】
1 モータ
10 基台
11 出力軸
2 軸受け部材
20 嵌合凹部
21 突出面
3 ナット保持体
30 嵌合凸部
31 Dカット面
4 ナット収納空間
40 内周面
41 溝部
42 内底面部
5 ナット
50 螺合部
6 テーブル
60 設置口
7 ボルト

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの出力軸に連結した軸受け部材に着脱可能に装着されて鉛直軸で回転する円柱形状のナット保持体と、
該ナット保持体には、その上面中央部に所定のナットが遊嵌し得る内径をもって鉛直上方に開口し、かつナットの下面と接触し得る内底面部を有する有底円筒形状のナット収納空間が形成されており、
前記ナット保持体は、水平板状のテーブルに遊嵌し得る開口径をもって形成した設置口から、ナット保持体の上面を露出させた状態で挿入保持されており、
前記ナット収納空間に収納したナットを、ナット下面と前記内底面部との接触摩擦によって回転させたナットの螺合部に、ボルトの先端部を押接させてボルトの先端付近に螺合させることを特徴とするボルトへのナット螺合装置。
【請求項2】
前記ナット収納空間の内周面の一カ所に、上端縁部から内底面部まで連続した溝部を、鉛直下方に向かって形成したことを特徴とする請求項1記載のボルトへのナット螺合装置。
【請求項3】
ボルトへのナット螺合装置を用いるものであって、
所定規格のナットが遊嵌し得る内径をもった鉛直上方開口の有底円筒形のナット収納空間を、上面中央部に備えたナット保持体を、モータによって鉛直軸回転させ、
該軸回転しているナット収納空間に所定規格のナットを収納保持して、該ナットの下面と前記ナット収納空間の内底面部との接触摩擦によって軸回転させ、
次に収納保持した状態で回転しているナットの螺合部に、ボルトの先端部を押接させて、ナットをボルトの先端付近に螺合させて取り付けたことを特徴としたボルトへのナット螺合方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
すなわち、モータの出力軸に連結した軸受け部材に着脱可能に装着されて鉛直軸で回転する円柱形状のナット保持体と、該ナット保持体には、その上面中央部に所定のナットが遊嵌し得る内径をもって鉛直上方に開口し、かつナットの下面と接触し得る内底面部を有する有底円筒形状のナット収納空間が形成されており、前記ナット保持体は、水平板状のテーブルに遊嵌し得る開口径をもって形成した設置口から、ナット保持体の上面を露出させた状態で挿入保持されており、前記ナット収納空間に収納したナットを、ナット下面と前記内底面部との接触摩擦によって回転させたナットの螺合部に、ボルトの先端部を押接させてボルトの先端付近に螺合させて取り付けを行うものである。