(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025105816
(43)【公開日】2025-07-10
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20250703BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
A61B5/11 110
A61B5/16 130
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025072433
(22)【出願日】2025-04-24
(62)【分割の表示】P 2021116993の分割
【原出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 耕祐
(72)【発明者】
【氏名】野口 浩
(72)【発明者】
【氏名】安木 慎
(57)【要約】
【課題】人の身体状態に関する複数の項目についての変化を非接触で検出する。
【解決手段】情報処理装置80は、レーダー10によって人物を検知した情報に基づいて、人物の身体状態に関する複数の項目を時系列に推定する推定部802,803と、複数の項目について時系列に得られた推定結果に基づいて、人物の身体状態の変化を検出する検出部806と、検出した身体状態の変化に関する情報を出力する出力部807と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダーによって人物を検知した情報に基づいて、前記人物の睡眠状態およびに歩行速度に関する項目を時系列に推定する推定部と、
前記複数の項目について時系列に得られた推定結果に基づいて、前記人物の身体状態の変化を検出する検出部と、
検出した前記人物の身体状態の変化に関する情報を出力する出力部と、
を備え、
前記人物の就寝場所に対応したエリアを設定し、
前記エリアに対する前記人物の位置に基づいて、前記睡眠状態の時間帯を推定し、
前記時間帯を除いた時間帯における前記人物のレーダーデータに対し、前記人物の移動軌跡に近づけるための補正を行うことにより歩行区間を推定し、
前記歩行区間における歩行速度の推定を行う、
情報処理装置。
【請求項2】
前記エリアは、前記人物の前記就寝場所における仰臥位、伏臥位、および、側臥位の少なくとも1つの体位が占める3次元空間に応じた空間サイズを有する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記情報において示される、前記人物の位置の変化と前記位置の変化にかかった時間とに基づいて、前記歩行速度を推定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記レーダーは、ミリ波レーダーである、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
1つ又は複数の情報処理装置によって、
レーダーによって人物を検知した情報に基づいて、前記人物の睡眠状態およびに歩行速度に関する項目を時系列に推定し、
前記複数の項目について時系列に得られた推定結果に基づいて、前記人物の身体状態の変化を検出し、
検出した前記人物の身体状態の変化に関する情報を出力し、
前記人物の就寝場所に対応したエリアを設定し、
前記エリアに対する前記人物の位置に基づいて、前記睡眠状態の時間帯を推定し、
前記時間帯を除いた時間帯における前記人物のレーダーデータに対し、前記人物の移動軌跡に近づけるための補正を行うことにより歩行区間を推定し、
前記歩行区間における歩行速度の推定を行う、
情報処理方法。
【請求項6】
1つ又は複数の情報処理装置によって、
レーダーによって人物を検知した情報に基づいて、前記人物の睡眠状態およびに歩行速度に関する項目を時系列に推定する処理と、
前記複数の項目について時系列に得られた推定結果に基づいて、前記人物の身体状態の変化を検出する処理と、
検出した前記人物の身体状態の変化に関する情報を出力する処理と、
前記人物の就寝場所に対応したエリアを設定する処理と、
前記エリアに対する前記人物の位置に基づいて、前記睡眠状態の時間帯を推定する処理と、
前記時間帯を除いた時間帯における前記人物のレーダーデータに対し、前記人物の移動軌跡に近づけるための補正を行うことにより歩行区間を推定する処理と、
前記歩行区間における歩行速度を推定する処理と、
を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラによって撮影された人物の画像を基に人物の歩行速度を推定し、推定した歩行速度の変化を基に人物の認知機能を評価する技術がある。また、住居内において人物が電源を操作した電気機器の組み合わせや順番を基に、あるいは、人物の衣服に装着した無線タグの位置情報を基に、住居における人物の行動を監視(見守り)する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/014938号
【特許文献2】特開2020-53070号公報
【特許文献3】国際公開第2020/262526号
【特許文献4】特開2017-200572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人の身体状態の変化を検出する技術については、更なる検討の余地がある。
【0005】
本開示の非限定的な実施例は、人の身体状態に関する複数の項目についての変化を非接触で検出できる情報処理装置、情報処理方法、及び、プログラムの提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施例に係る情報処理装置は、レーダーによって人物を検知した情報に基づいて、前記人物の身体状態に関する複数の項目を時系列に推定する推定部と、前記複数の項目について時系列に得られた推定結果に基づいて、前記人物の身体状態の変化を検出する検出部と、検出した前記人物の身体状態の変化に関する情報を出力する出力部と、を備える。
【0007】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、又は、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の非限定的な実施例は、例えば、人の身体状態に関する複数の項目についての変化を非接触で検出できる。
【0009】
本開示の一実施例における更なる利点及び効果は、明細書及び図面から明らかにされる。かかる利点及び/又は効果は、いくつかの実施形態並びに明細書及び図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つ又はそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施の形態に係る身体状態検出システムの構成例を示す図
【
図2】一実施の形態に係る身体状態検出システムの構成例を示すブロック図
【
図3】一実施の形態に係る身体状態検出システムの全体的な動作の一例を示すフローチャート
【
図4】
図3に例示した睡眠時間帯検出処理の一例を示すフローチャート
【
図5】一実施の形態に係る睡眠場所定義エリアの設定例を示す図
【
図6】一実施の形態に係る睡眠時間帯の検出例を示す図
【
図7】一実施の形態に係るノンレム睡眠時間帯の検出例を示す図
【
図8】一実施の形態に係る無呼吸睡眠時間帯の検出例を示す図
【
図9】一実施の形態に係る中途覚醒の検出例を示す図
【
図10】一実施の形態に係る人物の上体起こしの検出例を示す図
【
図11】一実施の形態に係る歩行速度の検出例を示す図
【
図12】一実施の形態に係る検知位置のフィルタリング処理の一例を示す図
【
図13】一実施の形態に係る状態変化検出処理の一例を示す図
【
図14】一実施の形態に係る画面表示(グラフィカルユーザインタフェース;GUI)の一例を示す図
【
図15】コンピュータのハードウェア構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
<一実施の形態>
人の身体状態の変化を早期に発見し対策を講じることは、健康を維持するためにも重要である。例えば、睡眠状態あるいは歩行速度の変化の検出は、人の集中力、意欲、食欲、運動能力といった身体状態の把握につながるため、抑うつ又は怪我の予防、さらには認知症の発見に応用が可能である。
【0013】
人の身体状態の変化の一例としては、睡眠状態の変化および歩行速度の変化(例えば、低下)が挙げられる。睡眠状態の変化の一例としては、ノンレム睡眠(深い睡眠)状態にある時間の増減、無呼吸睡眠状態にある時間の増減、中途覚醒の頻度の増減といった変化が挙げられる。
【0014】
以上のような身体状態の変化を検出するため、例えば、以下の(1)~(3)に示す手法が検討される。
【0015】
(1)ウェアラブル機器による脈拍または呼吸の検知を用いた、レム睡眠またはノンレム睡眠の状態、あるいは無呼吸睡眠状態の検出
(2)センサーマットによる体動、呼吸、または脈拍の検知を用いた、レム睡眠またはノンレム睡眠の状態、あるいは中途覚醒の検出
(3)検出対象者をカメラによって撮影した画像(以下「カメラ画像」と称することがある)を用いた歩行速度の検出
【0016】
なお、以降の説明において、「検出」あるいは「検知」という用語は、例えば、「推定」あるいは「測定」といった用語に相互に読み替えられてもよい。
【0017】
ここで、手法(1)では、検出対象者に機器を装着するため、例えば、検出対象者に違和感あるいは不快感を与えかねない。また、手法(2)では、睡眠状態以外の項目(例えば、歩行速度)は測定されない。
【0018】
手法(3)では、検出対象者のカメラ画像を用いるため、例えば、プライバシー侵害が問題になり得る。また、手法(3)において、カメラ画像内の検出対象者の大きさの変化を基に検出対象者の位置変化を推定する場合、検出対象者の移動経路によってはカメラ画像内の大きさが変化しないことがあり得る。そのため、歩行速度の推定が難しいことがある。
【0019】
本開示の一実施例では、例えば、検出対象者である人物の身体状態に関する複数の項目の時間変化(別言すると、経時変化)を、単一の電波センサ(例えば、ミリ波レーダー)によって非接触に検出し提示する。検出対象の複数の項目の非限定的な一例は、「睡眠状態の変化」および「歩行速度の低下」である。
【0020】
ミリ波レーダーは、例えば、非接触に人物の位置を3次元的に検出できるため、人物の移動経路に依存せずに当該人物の移動距離を算出でき、したがって、当該人物の歩行速度を推定できる。
【0021】
また、ミリ波レーダーは、例えば、検出した人物の体動(例えば、心拍あるいは呼吸に伴う体表の変動を含む)を検出できるため、睡眠時の体動を基に睡眠状態(例えば、ノンレム睡眠、レム睡眠といった睡眠の深さ)を推定できる。また、睡眠時の呼吸の有無を基に無呼吸睡眠状態を推定できる。
【0022】
<システム構成例>
図1は、一実施の形態に係る身体状態検出システム1の構成例を示す図である。
図1に示すように、身体状態検出システム1は、例えば、ミリ波レーダー10、パーソナルコンピュータ(PC)20、サーバ30A及び30B、並びに、データベース(DB)40A及び40Bを備えてよい。
【0023】
これらの構成要素10、20、30A、30B、40A及び40Bは、例えば、インターネットあるいはローカルエリアネットワークのようなネットワーク50を介して相互に通信可能に接続されてよい。構成要素10、20、30A、30B、40A及び40Bの接続形態は、有線及び無線の何れであってもよいし、有線及び無線が混在してもよい。PC20、サーバ30Aおよびサーバ30Bのそれぞれは、情報処理装置の一例である。
【0024】
ミリ波レーダー10は、電波センサの一例であり、例えば、建物60内の居室に設置されて、居室内に位置する人物Pを検知対象として電波(レーダー波)によって非接触で検知する。建物60の非限定的な一例としては、居宅、店舗、寄宿舎、共同住宅、事務所、旅館、料理店、校舎、研究所、病院、診療所などが挙げられる。
【0025】
「検知」は、例えば、「検出」あるいは「センシング」に読み替えられてもよい。ミリ波レーダー10の周波数は、非限定的な一例として、数十ギガヘルツ(GHz)~数百GHzの周波数であってよく、例えば、60GHz帯の周波数であってよい。
【0026】
PC20は、例えば、ミリ波レーダー10による検知結果(以下「レーダー検知結果」、「レーダー検知情報」、あるいは「レーダーデータ」と称されてもよい)をミリ波レーダー10から取得(あるいは受信)する。
【0027】
レーダー検知結果は、例えば、PC20からネットワーク50経由でサーバ30A及び30Bの一方又は双方へ送信されてよい。なお、ミリ波レーダー10が、ネットワーク50に対する接続(あるいはアクセス)機能(別言すると、通信機能)を有する場合、レーダー検知結果は、PC20を介さずにサーバ30A及び30Bの一方又は双方へ送信されてもよい。
【0028】
また、PC20は、例えば、ネットワーク50経由でサーバ30A及び30Bの一方又は双方から受信した情報をPC20の表示部(ディスプレイ)に表示してよい。例えば、サーバ30A及び30Bの一方又は双方においてレーダー検知結果を基に処理あるいは生成された情報(例えば、人物Pの身体状態の変化に関する情報)が、PC20において表示されてよい。PC20に接続されたプリンタに、ネットワーク50経由で受信した情報が印刷されてもよい。
【0029】
なお、PC20の代替あるいは追加で、スマートフォンのような携帯端末が、上述したPC20が有する機能の少なくとも一部と同等の機能を果たしてもよい。
【0030】
サーバ30A及び30Bの一方(例えば、サーバ30A)は、例えば、レーダー検知結果を基に、居室内の人物Pの位置、体動、呼吸数(あるいは心拍数)といった情報を検出(あるいは推定又は測定)する。検出した情報は、例えば、DB40Aに逐次的(別言すると、時系列)に記憶(あるいは蓄積)されてよい。
【0031】
また、サーバ30Aは、例えば、DB40Aから所定期間(例えば、一日分)の情報を読み出し、人物Pの睡眠状態(例えば、ノンレム睡眠、無呼吸睡眠、および、中途覚醒の少なくとも1つの時間帯)、および、歩行速度といった情報を検出(あるいは推定又は測定)する。検出した情報は、例えば、DB40Bに時系列(例えば、日ごと)に記憶(あるいは蓄積)されてよい。
【0032】
サーバ30Bは、例えば、DB40Bに蓄積された時系列の情報(以下「時系列データ」と称することがある)を基に、人物Pの身体状態に変化が有るか否かを判定(又は検出)する。人物Pの身体状態に変化が有ると判定した場合、サーバ30Bは、例えば、人物Pの身体状態に変化があることを示す情報(以下「身体状態変化情報」と称することがある)を、ネットワーク50経由でPC20へ提供(あるいは通知)する。PC20は、受信した身体状態変化情報を例えばPC20のディスプレイに表示あるいはプリンタによって印刷する。なお、身体状態変化情報の表示又は印刷は、PC20に限らず、サーバ40A又は40Bにおいて行われてもよい。
【0033】
なお、人物Pの位置、体動、呼吸数(あるいは心拍数)、睡眠状態、および、歩行速度といった各種情報の検出(あるいは推定又は測定)は、サーバ30A及び30Bの一方又は双方において、レーダー検知結果を基に、集中的あるいは分散的に実施されてよい。別言すると、各種情報(「測定項目」と称されてもよい)のうちの特定の情報が特定のサーバにおいて検出される関係である必要はない。
【0034】
例えば、サーバ30A及び30Bは、例えば、1つのサーバに統合されてもよい。また、3台以上のサーバによって、上述した測定項目の検出に関する処理が分散的に実施されてもよい。
【0035】
DB40A及び40Bは、それぞれ、サーバ30A及び30Bの内部に備えられてもよい。別言すると、サーバ30A及び30Bに備えられた記憶部または記憶装置がDB40A及び40Bに相当してもよい。DB40A及び40Bは、例えば、1つのDBに統合されてもよい。3台以上のDBにおいて、上述した測定項目が分散的に蓄積、管理されてもよい。
【0036】
図2は、一実施の形態に係る身体状態検出システム1の構成例を示すブロック図である。
図2において、ミリ波レーダー10は、例えば、検出部101、処理部102及び出力部103を備えてよい。
【0037】
検出部101は、例えば、レーダー波を送信し、レーダー波が検知対象(例えば、人物P)において反射した反射波を受信、検出する。
【0038】
処理部102は、例えば、反射波によって得られる、検知対象に対応する点群データに基づいて、検知対象のミリ波レーダー10に対する位置、速度、角度といった情報を検出する。
【0039】
出力部103は、例えば、処理部102によって得られた情報(別言すると、レーダーデータ)をレーダー制御装置70へ送信する。
【0040】
レーダー制御装置70は、例えば、レーダー通信部701およびレーダーデータ格納部702を備えてよい。なお、レーダー制御装置70は、例えば、
図1に例示したPC20に相当してもよいし、
図1に例示したサーバ30Aおよび30Bの一方又は双方に相当してもよい。
【0041】
レーダー通信部701は、例えば、ミリ波レーダー10と有線又は無線によって通信し、レーダーデータを受信し、レーダーデータ格納部702に格納(記憶)する。また、レーダー通信部701は、例えば、レーダーデータを状態変化検出装置80へ有線又は無線によって送信する。
【0042】
状態変化検出装置80は、例えば、レーダーデータを基に検知対象(例えば、人物P)の身体状態の変化を検出する。状態変化検出装置80は、情報処理装置の一例であり、例えば、
図1に例示したサーバ30Aおよび30Bの一方又は双方に相当してよい。
【0043】
状態変化検出装置80は、例えば、レーダーデータ読出部801、睡眠状態推定部802、歩行速度推定部803、推定結果格納部804、推定結果読出部805、状態変化検出処理部806、通信部807、レーダーデータ記憶部808、及び、推定結果情報記憶部809を備えてよい。
【0044】
レーダーデータ読出部801は、例えば、レーダーデータ記憶部808に記憶されたレーダーデータを読み出して、睡眠状態推定部802へ出力する。なお、レーダーデータ記憶部808は、例えば、
図1に例示したDB40Aに相当してよい。
【0045】
睡眠状態推定部802は、例えば、レーダーデータに基づいて、検知対象である人物Pの睡眠状態(例えば、ノンレム睡眠、無呼吸睡眠、及び、中途覚醒の時間帯)を推定する。
【0046】
歩行速度推定部803は、例えば、レーダーデータに基づいて、人物Pの歩行速度を推定する。歩行速度の推定は、例えば、睡眠状態推定部802において推定された睡眠時間帯において実行されなくてよいので、人物Pの推定された睡眠時間帯を除いた時間帯について実行されてよい。
【0047】
睡眠状態推定部802および歩行速度推定部803は、例えば、1つの推定部に統合されてもよい。
【0048】
推定結果格納部804は、例えば、睡眠状態推定部802及び歩行速度推定部803による各推定結果を推定結果情報記憶部809に格納(記憶)する。なお、推定結果情報記憶部809は、例えば、レーダーデータ記憶部808と統合されてもよい。また、推定結果情報記憶部809は、
図1に例示したDB40Bに相当してもよい。
【0049】
推定結果読出部805は、例えば、推定結果情報記憶部809に記憶された推定結果を読み出して状態変化検出処理部806へ出力する。
【0050】
推定結果格納部804および推定結果読出部805は、例えば、1つの書き込み及び読み出し制御部に統合されてもよい。
【0051】
状態変化検出処理部806は、例えば、推定結果読出部805から入力された推定結果に基づいて、人物Pの身体状態の変化を検出する。検出結果は、例えば、通信部807に出力されてよい。
【0052】
通信部807は、出力部の一例であり、例えば、表示端末装置90(例えば、通信部901)と無線又は有線によって通信し、人物Pの身体状態の変化に関する検出結果を表示端末装置90へ送信する。
【0053】
表示端末装置90は、例えば、通信部901及び表示部902を備えてよい。なお、表示端末装置90は、例えば、
図1に例示したPC20に相当してよい。
【0054】
通信部901は、例えば、状態変化検出装置80(例えば、通信部807)と無線又は有線によって通信し、人物Pの身体状態の変化に関する検出結果を受信し、受信した情報を表示部902に出力する。
【0055】
表示部902は、例えば、通信部901から入力された情報を表示する。
【0056】
以上、一実施の形態に係る身体状態検出システム1の構成例について説明した。
【0057】
<動作例>
次に、上述した構成を有する身体状態検出システム1の動作例について、
図3及び
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0058】
図3は、一実施の形態に係る身体状態検出システム1の全体的な動作の一例を示すフローチャートである。
図4は、
図3に例示した睡眠時間帯検出処理(S803)の一例を示すフローチャートである。
【0059】
図3に示すように、ミリ波レーダー10においてレーダーデータが検出され(S101)、検出されたレーダーデータが、例えば、状態変化検出装置80のレーダーデータ記憶部808に格納(記憶)される(S102)。
【0060】
状態変化検出装置80は、例えば、レーダーデータ読出部801によって、定期的にレーダーデータ記憶部808からレーダーデータを読み出す。例えば、レーダーデータ読出部801は、毎日1:00に1日分のレーダーデータをレーダーデータ記憶部808から読み出す(S801、S802)。
【0061】
レーダーデータ記憶部808から読み出されたレーダーデータは、例えば、睡眠状態推定部802へ出力され、睡眠状態推定部802は、レーダーデータに基づいて、検知対象である人物Pの睡眠状態を推定する(S803)。
【0062】
例えば、睡眠状態推定部802は、例えば、1日分のレーダーデータを基に、睡眠時間帯の有無を判定する(S804)。睡眠時間帯の検出処理の一例については
図4により後述する。判定の結果、睡眠時間帯が無ければ(S804;NO)、例えば、睡眠状態推定部802による推定は終了して、歩行速度推定部803による推定が実行されてよい(S808)。
【0063】
睡眠時間帯が有れば(S804;YES)、睡眠状態推定部802は、例えば、ノンレム睡眠、無呼吸睡眠、及び、中途覚醒の時間帯を推定する(S805~S807)。
【0064】
次いで、例えば、歩行速度推定部803によって、レーダーデータを基に人物Pの歩行速度が推定される(S808)。
【0065】
S805~S808の各処理によって得られた推定結果は、例えば、推定結果格納部804によって、推定結果情報記憶部809に格納(記憶)される(S809)。
【0066】
なお、S805~S808の処理は、上述のようにシリアルに実施されてもよいし、あるいはパラレルに実施されてもよい。シリアルに実施される場合、S805~S807の処理順序は適宜に入れ替えられてもよい。
【0067】
推定結果情報記憶部809に記憶された推定結果は、例えば、推定結果読出部805によって読み出されて状態変化検出処理部806へ出力される(S810)。
【0068】
状態変化検出処理部806は、例えば、推定結果読出部805から入力された推定結果に基づいて、人物Pの身体状態の変化を検出する(S811)。例えば、状態変化検出処理部806は、睡眠状態および歩行速度の各推定結果を基に、人物Pの身体状態に変化が有るか否かを判定する(S812)。
【0069】
判定の結果、人物Pの身体状態に変化が無ければ(S812;NO)、状態変化検出処理部806は、処理を終了してよい。一方、人物Pの身体状態に変化が有れば(S812;YES)、状態変化検出処理部806は、例えば、人物Pの身体状態の変化に関する情報を、通信部807によって、表示端末装置90へ送信する(S813)。
【0070】
表示端末装置90は、状態変化検出装置80から人物Pの身体状態の変化に関する情報を受信した場合(S901)、受信した情報を例えば表示部902の画面に表示する(S902)。
【0071】
<睡眠状態の推定>
次に、睡眠状態推定部802における、人物Pの睡眠状態(例えば、睡眠時間帯、ノンレム睡眠、無呼吸睡眠、および、中途覚醒の各時間帯)の推定(あるいは検出)について、項目別に説明する。
【0072】
<睡眠時間帯の検出(
図3のS803)>
図4に例示したように、睡眠状態推定部802は、例えば、人物Pの睡眠場所定義エリア501(
図5参照)の設定を読み出す(S831)。睡眠場所定義エリア501の設定は、例えば、睡眠状態推定部802によって行われてもよいし、状態変化検出装置80において図示を省略した設定部によって行われてもよい。
【0073】
睡眠場所定義エリア501の設定データは、例えば、記憶部808及び809の何れか一方に記憶されてもよいし、状態変化検出装置80において図示を省略した別の記憶部に記憶されてもよい。
【0074】
睡眠場所定義エリア501は、例えば
図5の上段に示すように、居室内において人物Pが就寝する場所(例えば、ベッドあるいは敷布団といった寝具)に対して3次元(3D)空間として設定されてよい。
【0075】
図5の上段の例では、人物Pの就寝場所の上部空間にXYZ座標によって規定される睡眠場所定義エリア501が設定される。睡眠場所定義エリア501のXY平面のサイズ(面積)は、例えば、ベッド、マットレス、敷布団といった寝具のサイズに応じたサイズに設定されてよい。
【0076】
例えば、睡眠場所定義エリア501のXY平面のサイズは、寝具のサイズと一致するサイズに設定されてもよいし、寝具のサイズよりも少し小さいサイズあるいは少し大きいサイズに設定されてもよい。あるいは、睡眠場所定義エリア501は、人物Pの就寝場所における仰臥位、伏臥位、および、側臥位の少なくとも1つの体位が占める3次元空間に応じた空間サイズに設定されてもよい。
【0077】
例えば、睡眠場所定義エリア501のZ軸方向の長さ(別言すると、高さ)は、人物Pの就寝時の姿勢(あるいは体位)における高さ(別言すると、体高)に応じた高さに設定されてよい。例えば、人物Pの仰臥位、伏臥位、および、側臥位のそれぞれにおける人物Pの体高のうち最も高い体高に合わせて設定されてよい。
【0078】
このような設定によれば、例えば、人物Pが睡眠場所定義エリア501に留まったまま上体を起こしたような場合、人物Pの上体の少なくとも一部が睡眠場所定義エリア501から外れる。したがって、人物Pの上体起こしを、ミリ波レーダー10によって検知できる。
【0079】
なお、睡眠場所定義エリア501の高さは、
図5に例示したようにベッド、マットレス、敷布団といった寝具の上面を基準に設定されてもよいし、寝具の置かれた床面を基準に設定されてもよい。別言すると、睡眠場所定義エリア501は、例えば、寝具をカバーする空間として設定されてもよいし、寝具をカバーしない空間として設定されてもよい。
【0080】
図5の下段には、例えば、
図5の上段に例示したように、人物Pが睡眠場所定義エリア501の内側及び外側に位置する場合のそれぞれについて、ミリ波レーダー10によって人物Pの位置(XYZ座標位置)がレーダーデータとして検知される例が示される。
【0081】
睡眠場所定義エリア501の設定によって、例えば、人物Pが就寝のために睡眠場所定義エリア501に進入したか否か、あるいは、人物Pが起床(中途覚醒を含む。)して睡眠場所定義エリア501の外側に退出したか否かを、レーダーデータ(例えば、人物Pの位置情報)を基に検知できる。
【0082】
したがって、例えば、以下のように、人物Pの睡眠場所定義エリア501に対する進入検知及び退出検知に基づいた睡眠開始判定条件および睡眠終了判定条件を設定することで、人物Pの睡眠時間帯を検出(あるいは推定)できる。
【0083】
(1)睡眠開始判定条件:睡眠場所定義エリア501への進入検知
(2)睡眠終了判定条件:睡眠場所定義エリア501からの退出検知、かつ、以降N分間以内の睡眠場所定義エリア501への進入未検知
【0084】
Nは、例えば、人物Pが起床して就寝場所には戻らないと判定してよい時間、例えば、30分のような数十分程度の時間に設定されてよい。別言すると、N分以下の時間内に睡眠場所定義エリア501への進入が(再)検知された場合、睡眠終了判定条件は満たされないので、人物Pの睡眠時間は終了しておらず継続していると判定されてよい。なお、N分以下の時間帯は、人物Pに中途覚醒が生じた時間帯であると判定されてよい。
【0085】
図4に戻り、以下、上述した条件(1)及び条件(2)に基づく睡眠時間帯の検出処理について説明する。
【0086】
睡眠状態推定部802は、既述のとおり睡眠場所定義エリア501の設定を読み出した後、例えば、レーダーデータのうち先頭時刻のデータを取得し(S832)、当該データが睡眠開始判定条件(1)を満たすか否かを判定する(S833)。
【0087】
判定の結果、先頭時刻のデータが睡眠開始判定条件(1)を満たさないと判定した場合(S833;NO)、睡眠状態推定部802は、例えば、次時刻のデータが存在する限り(S834;YES)、次時刻のデータを取得して(S835)、睡眠開始判定条件(1)を満たすか否かを判定する。
【0088】
睡眠開始判定条件(1)を満たすデータが存在した場合(S833;YES)、睡眠状態推定部802は、次時刻のデータが睡眠終了判定条件(2)を満たすか否かを判定する(S836)。
【0089】
判定の結果、次時刻のデータが睡眠終了判定条件(2)を満たさないと判定した場合(S836;NO)、睡眠状態推定部802は、例えば、次時刻のデータが存在する限り(S837;YES)、次時刻のデータを取得して(S838)、睡眠終了判定条件(2)を満たすか否かを判定する。
【0090】
判定の結果、次時刻のデータが睡眠終了判定条件(2)を満たすと判定した場合(S836;YES)、睡眠状態推定部802は、例えば、睡眠開始判定条件(1)を満たしたデータの時刻と、睡眠終了判定条件(2)を満たしたデータの時刻との間の時間帯を人物Pの睡眠時間帯として記録する(S839)。
【0091】
その後、睡眠状態推定部802は、次時刻のデータの有無を確認し(S840)、次時刻のデータが存在する場合(S840;YES)、例えば、次時刻のデータを取得して(S841)、次時刻のデータが睡眠開始判定条件(1)を満たすか否かを判定する(S833)。
【0092】
このように、睡眠状態推定部802は、時系列に得られたレーダーデータの時刻の順に、睡眠開始判定条件(1)を満たすデータと、その後に睡眠終了判定条件(2)を満たすデータと、を検索し、両データの時刻の間を睡眠時間帯として検出、記録する。
【0093】
かかるデータ検索において、例えば、次時刻のデータ存在しなくなった場合(S834、S837及びS840のNO)、睡眠状態推定部802は、睡眠時間帯の検出処理を終了してよい。睡眠時間帯の検出処理の終了に応じて、例えば、
図3に例示したS804以降の処理が実行される。
【0094】
図6に、睡眠時間帯の検出の一例を示す。
図6には、例示的に、1日(0時から24時の24時間)のうち、00:00:00~07:00:00の時間帯(7時間)および22:00:00~24:00:00の時間帯(4時間)に人物Pの睡眠時間帯が検出され、01:10:20~01:20:20の時間帯(20分<N)に中途覚醒が人物Pに生じと推定される例が示される。
【0095】
ノンレム睡眠、無呼吸睡眠、及び、中途覚醒の時間帯の推定は、上述のごとく検出された睡眠時間帯について行われてよい。以下、ノンレム睡眠、無呼吸睡眠、及び、中途覚醒の時間帯の推定について説明する。
【0096】
<ノンレム睡眠時間帯の推定(
図3のS805)>
人がノンレム睡眠であるか否かを判定(あるいは推定)できる指標の一例として、呼吸数および脈拍数が挙げられる。例えば、ノンレム睡眠中においては、呼吸数および脈拍数が安定し規則的(別言すると、周期的)である傾向にある。これに対し、ノンレム睡眠中においては、心拍数および呼吸数がノンレム睡眠に比して増加し不規則になる傾向にある。
【0097】
したがって、睡眠状態推定部802は、例えば、レーダーデータを基に、人物Pの検出された睡眠時間帯における呼吸状態(例えば、呼吸数および脈拍数)を測定し、周期的な波形が継続して観測された時間帯をノンレム睡眠と推定してよい。例えば
図7に示すように、01:10:25~01:50:14の時間帯がノンレム睡眠の時間帯と推定されてよい。なお、
図7の縦軸は、胸部の動きによる電波信号の位相変化を表し、単位は例えば[rad]である。
図8の縦軸についても、
図7と同様である。
【0098】
<無呼吸睡眠時間帯の推定(
図3のS806)>
睡眠状態推定部802は、例えば、レーダーデータを基に、人物Pの検出された睡眠時間帯における呼吸状態(例えば、呼吸数および脈拍数)を測定し、呼吸の検知が途切れた時間帯を無呼吸睡眠状態と推定してよい。例えば
図8に示すように、03:20:27~03:20:36の時間帯が無呼吸睡眠の時間帯と推定されてよい。
【0099】
<中途覚醒時間帯の推定(
図3のS807)>
例えば、睡眠状態推定部802は、例えば、レーダーデータを基に、睡眠中に人物Pが一時的に就寝場所(睡眠場所定義エリア501)を離れる行為、あるいは人物Pが上体を起こす行為を検出した場合、その継続時間を中途覚醒の生じた時間と推定してよい。
【0100】
例えば
図9の上段に示すように、人物Pが睡眠時間帯の或る時刻(例えば、01:10:20)において就寝場所(睡眠場所定義エリア501)から離れた後、10分後の01:20:20に就寝場所に戻った場合を想定する。
【0101】
この場合、レーダーデータにおいて人物Pの動き(別言すると、位置変化)は
図9の下段に示すように表され、例えば、時刻01:10:20に睡眠場所からの人物Pの退出が検出され、時刻01:20:20に睡眠場所への人物Pの進入が検出される。したがって、睡眠状態推定部802は、例えば、01:10:20~01:20:20の10分間の時間帯を中途覚醒の時間帯と推定してよい。
【0102】
なお、
図10の上段に示すように、人物Pが就寝場所に留まった状態で上体を起こした場合、既述のとおり少なくとも上体の一部が睡眠場所定義エリア501から外れるため、
図10の下段に示すように、レーダーデータを基に人物Pの上体起こしを検出できる。したがって、睡眠状態推定部802は、例えば、このように人物Pの上体起こしが検出された時間帯を中途覚醒の時間帯に含めてもよい。
【0103】
<歩行速度の推定(
図3のS808)>
次に、歩行速度推定部803(
図2参照)による人物Pの移動速度(例えば、歩行速度)の推定について説明する。歩行速度推定部803は、例えば、レーダーデータを基に、居室内において人物Pが移動した距離(D)を算出し、当該距離を移動にかかった時間(T)によって除することで、人物Pの歩行速度(V)を推定する。
【0104】
例えば
図11の上段に示すように、時刻t1から時刻t4までの時間に人物Pが移動した場合、
図11の下段に示すように、歩行速度推定部803は、例えば、レーダーデータを基に、人物Pの移動距離DをD=d1+d2+d3によって算出する。したがって、人物Pの歩行速度Vは、移動にかかった時間T=t4-t1として、V=(d1+d2+d3)/(t4-t1)によって推定される。
【0105】
なお、歩行速度Vの推定は、既述の睡眠時間帯の検出処理(
図3のS803)において検出された睡眠時間帯を除いた時間帯(別言すると、睡眠時間帯ではないと判定された時間帯)に対して行われてよい。
【0106】
このように、歩行速度Vの推定を行う時間帯を非睡眠時間帯に絞る(あるいは限定する)ことにより、歩行速度の推定に用いるレーダーデータ量を削減できるため、状態変化検出装置80の処理量を削減できる。
【0107】
<レーダー検知位置誤差の移動距離への影響低減>
ミリ波レーダー10によるレーダーデータの取得頻度が例えば数十ミリ秒~数百ミリ秒である場合、あるいは、数センチメートル(cm)~数十cm程度の検知位置の誤差が含まれる場合、実際の人物Pの移動(例えば
図12の上段)に一致しない軌跡の揺れあるいはずれがレーダーレーダにおいて生じ得る(例えば
図12の中段)。
【0108】
そのため、レーダーデータに基づく検知位置を単純に積算し移動距離Dを算出した場合、実際の人物Pの移動距離に対して許容範囲外の誤差が生じ得る。そこで、歩行速度推定部803は、例えば、
図12の下段に示すように、レーダーデータに基づく検知位置に対して補正(例えば、移動平均フィルタリング)を施してよい。これにより、人物Pの検知位置の時間変化(別言すると、軌跡)を実際の人物Pの移動軌跡に一致させる、あるいは最小誤差となるように近づけることができ、歩行速度Vの推定精度を向上できる。
【0109】
<状態変化検出(
図3のS811)>
次に、状態変化検出処理部806(
図2参照)による状態変化検出処理(
図3のS811)の一例について説明する。
【0110】
状態変化検出処理部806は、例えば、睡眠状態推定部802によって推定された睡眠状態(例えば、ノンレム睡眠、無呼吸睡眠、及び、中途覚醒の各時間帯)、並びに、歩行速度推定部803によって推定された歩行速度の時系列データに基づいて、人物Pの身体状態の傾向変動(別言すると、トレンド)の変化点を検出する。
【0111】
例えば、状態変化検出処理部806は、睡眠状態および歩行速度の別に時系列データの傾向変動の変化点の有無を判定する。変化点が検出された場合、状態変化検出処理部806は、例えば、その変化点よりも前の時系列データを基に、変化点以後の時系列データの予測モデルを作成する。予測モデルの作成には、例えば、自己回帰(AR)モデルが用いられてよい。
【0112】
例えば
図13の(a)に示すように、ノンレム睡眠に関する時系列データにおいて、1月5日に傾向変動の変化が検出された場合、
図13の(e)に示すように、1月4日以前の時系列データ(例えば、3日といった数日分の時系列データ)を基に、1月5日以降の予測モデルが作成される。
【0113】
なお、予測モデルは、例えば、
図13の(b)~(d)に例示した、無呼吸睡眠、中途覚醒の各時間帯、および、歩行速度の各時系列データについても、傾向変動の変化点が検出された場合に個別的に作成されてよい。
【0114】
そして、状態変化検出処理部806は、例えば、実測値と予測モデルによる予測値との差分を異常度の指標として、異常度が閾値以上であるか否かを判定し、異常度が閾値以上であると判定したタイミングを傾向変動の変化点として検出する。例えば、
図13の(e)には、ノンレム睡眠の時間帯に関して1月5日に傾向変動の変化(別言すると、異常)が検出された例が示される。
【0115】
状態変化検出処理部806は、例えば、ノンレム睡眠時間、無呼吸睡眠時間、中途覚醒時間、および、歩行速度の測定項目の別に、傾向変動の変化点が検出された測定項目についての情報を、人物Pの身体状態の変化に関する情報として表示端末装置90へ送信する。
【0116】
表示端末装置90は、状態変化検出装置90から受信した情報を例えば表示端末装置90の表示部902の画面に表示する。これにより、例えば、人物P本人、あるいは人物Pの健康管理に携わる他の人物(例えば、人物Pの家族、介護者、管理者、担当医など)に対して、人物Pの身体状態の変化に関する情報が提示される。
【0117】
図14に、表示部902の画面表示(GUI)の一例を示す。
図14には、表示部902の表示画面が、状態表示領域921と、通知領域922とに区分される例が示される。
図14に例示したように、状態表示領域921には、
図13の(a)~(d)にそれぞれ例示した時系列データが表示され、通知領域922には、人物Pの身体状態の変化、例えば、ノンレム睡眠時間の減少が検出されたこと、無呼吸睡眠時間の増加が検出されたことが表示されてよい。
【0118】
なお、表示部902の画面表示例は、
図14に示した例に限られない。例えば、状態表示領域921および通知領域922は、何れか一方が選択的に表示されてもよい。状態表示領域921において、
図13の(a)~(d)に例示した時系列データの何れか1つ以上が選択的に表示されてもよい。例えば、状態表示領域921において、身体状態の変化の検出に寄与した時系列データが選択的に表示されてもよい。代替的あるいは追加的に、身体状態の変化の検出に寄与した時系列データが状態表示領域921において強調表示されてもよい。強調表示の態様は問わない。また、通知領域922における表示態様も
図14の例に限定されない。通知領域922への表示と併せてアラーム音といった音によって、身体状態の変化が検出されたことに対する注意喚起を促してもよい。
【0119】
以上のように、上述した実施の形態によれば、ノンレム睡眠時間、無呼吸睡眠時間、中途覚醒時間、および、歩行速度といった、人物Pの身体状態の変化をミリ波レーダー10によって非接触で検出して提示できる。
【0120】
したがって、例えば、人物Pの睡眠状態および歩行速度の変化に応じた、人物Pの集中力、意欲、食欲、運動能力といった身体状態を早期に把握できるので、人物Pの健康を維持するための対策を早期に講じることが可能になる。例えば、人物Pの抑うつ又は怪我の予防、さらには認知症の発見に応用が可能である。
【0121】
また、上述した実施の形態によれば、日単位のような時間軸の揃った(別言すると、タイミング同期した)時系列データを基に、ノンレム睡眠時間、無呼吸睡眠時間、中途覚醒時間、および、歩行速度といった、人物Pの身体状態に関する複数の測定項目を検出あるいは推定するので、人物Pの身体状態に変化が生じたタイミングを測定項目別に容易に把握できる。
【0122】
したがって、例えば、身体状態に関する測定項目別の傾向変動の変化点(例えば、一致あるいは不一致の度合い)を基に、人物Pの身体状態に変化が生じたと推定される要因の究明が容易になり得る。また、例えば、複数の測定項目間の変化点の相互関連性に基づいて、人物Pの身体状態の変化の要因を複合的に分析、推定できる。
【0123】
<全体の補足>
睡眠場所定義エリア501(
図5参照)は、3次元空間として設定されなくてもよく、例えば、2次元(例えば、Z軸方向を除いたX-Y軸)に設定されてもよい。
【0124】
ミリ波レーダー10による測定対象の項目は、ノンレム睡眠時間、無呼吸睡眠時間、中途覚醒時間、および、歩行速度の全てでなくてもよく、例えば、一部の測定項目の組み合わせであってもよい。また、ミリ波レーダー10による測定対象の項目は、ノンレム睡眠時間、無呼吸睡眠時間、中途覚醒時間、および、歩行速度の4項目に限られない。
【0125】
4項目のうちの一部が、ミリ波レーダー10によって検知可能な人物Pの身体状態に関連した他の項目に置き換えられてもよい。また、ミリ波レーダー10によって検知可能な人物Pの身体状態に関連した5つ以上の項目が、ミリ波レーダー10による測定対象とされてもよい。
【0126】
また、ミリ波レーダー10による検知対象の人物は1人に限られず、2人以上であってもよい。ミリ波レーダー10の距離分解能によれば、例えば、人物毎に体動および移動を検知できるため、複数の人物の別に、上述した身体状態の変化を検出できる。
【0127】
以上、図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0128】
また、本開示の具体例は例示に過ぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0129】
また、上述した実施の形態における「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に相互に置換されてもよい。
【0130】
また、本開示はソフトウェア、ハードウェア、又は、ハードウェアと連携したソフトウェアによって実現可能である。例えば、上述したシステムの機能は、コンピュータプログラムによって実現され得る。
【0131】
図15は、上述した通過管理システム1を構成する各装置の機能をプログラムにより実現するコンピュータ(あるいは情報処理装置)のハードウェア構成を示す図である。
図15において、コンピュータ1100は、キーボード又はマウス、タッチパッド等の入力装置1101、ディスプレイ又はスピーカー等の出力装置1102、CPU(Central Processing Unit)1103、GPU(Graphics Processing Unit)1104、ROM(Read Only Memory)1105、RAM(Random Access Memory)1106、ハードディスク装置又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置1107、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)又はUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体から情報を読み取る読取装置1108、ネットワークを介して通信を行う送受信装置1109を備え、各部はバス1110により接続される。
【0132】
読取装置1108は、例えば、端末PC20の機能を実現するためのプログラムを記録した記録媒体からそのプログラムを読み取り、記憶装置1107に記憶させる。あるいは、送受信装置1109が、ネットワークに接続されたサーバ装置(サーバ30でもよいし、サーバ30とは異なるサーバ装置でもよい)と通信を行い、サーバ装置からダウンロードした上記各装置の機能を実現するためのプログラムを記憶装置1107に記憶させる。
【0133】
CPU1103が、記憶装置1107に記憶されたプログラムをRAM1106にコピーし、そのプログラムに含まれる命令をRAM1106から順次読み出して実行することにより、上述した実施の形態に係る端末PC20の機能が実現される。
【0134】
上述した実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、部分的に又は全体的に、集積回路であるLSIとして実現され、上記実施の形態で説明した各プロセスは、部分的に又は全体的に、一つのLSI又はLSIの組み合わせによって制御されてもよい。LSIは個々のチップから構成されてもよいし、機能ブロックの一部又は全てを含むように一つのチップから構成されてもよい。LSIはデータの入力と出力を備えてもよい。LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0135】
集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、汎用プロセッサ又は専用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。本開示は、デジタル処理又はアナログ処理として実現されてもよい。
【0136】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0137】
本開示は、通信機能を有するあらゆる種類の装置、デバイス、システム(通信装置と総称)において実施可能である。通信装置は無線送受信機(トランシーバー)と処理/制御回路を含んでもよい。無線送受信機は受信部と送信部、またはそれらを機能として、含んでもよい。無線送受信機(送信部、受信部)は、RF(Radio Frequency)モジュールと1または複数のアンテナを含んでもよい。RFモジュールは、増幅器、RF変調器/復調器、またはそれらに類するものを含んでもよい。通信装置の、非限定的な例としては、電話機(携帯電話、スマートフォン等)、タブレット、PC(ラップトップ、デスクトップ、ノートブック等)、カメラ(デジタル・スチル/ビデオ・カメラ等)、デジタル・プレーヤー(デジタル・オーディオ/ビデオ・プレーヤー等)、着用可能なデバイス(ウェアラブル・カメラ、スマートウオッチ、トラッキングデバイス等)、ゲーム・コンソール、デジタル・ブック・リーダー、テレヘルス・テレメディシン(遠隔ヘルスケア・メディシン処方)デバイス、通信機能付きの乗り物又は移動輸送機関(自動車、飛行機、船等)、及び上述の各種装置の組み合わせがあげられる。
【0138】
通信装置は、持ち運び可能又は移動可能なものに限定されず、持ち運びできない又は固定されている、あらゆる種類の装置、デバイス、システム、例えば、スマート・ホーム・デバイス(家電機器、照明機器、スマートメーター又は計測機器、コントロール・パネル等)、自動販売機、その他IoT(Internet of Things)ネットワーク上に存在し得るあらゆる「モノ(Things)」をも含む。
【0139】
また、近年、IoT(Internet of Things)技術において、フィジカル空間とサイバー空間の情報連携により新たな付加価値を作りだすという新しいコンセプトであるCPS(Cyber Physical Systems)が注目されている。上記の実施の形態においても、このCPSコンセプトを採用することができる。
【0140】
すなわち、CPSの基本構成として、例えば、フィジカル空間に配置されるエッジサーバと、サイバー空間に配置されるクラウドサーバとを、ネットワークを介して接続し、双方のサーバに搭載されたプロセッサにより、処理を分散して処理することが可能である。ここで、エッジサーバまたはクラウドサーバにおいて生成される各処理データは、標準化されたプラットフォーム上で生成されることが好ましく、このような標準化プラットフォームを用いることで、各種多様なセンサ群やIoTアプリケーションソフトウェアを含むシステムを構築する際の効率化を図ることができる。
【0141】
通信には、セルラーシステム、無線LANシステム、通信衛星システム等によるデータ通信に加え、これらの組み合わせによるデータ通信も含まれる。
【0142】
また、通信装置には、本開示に記載される通信機能を実行する通信デバイスに接続又は連結される、コントローラやセンサ等のデバイスも含まれる。例えば、通信装置の通信機能を実行する通信デバイスが使用する制御信号やデータ信号を生成するような、コントローラやセンサが含まれる。
【0143】
また、通信装置には、上記の非限定的な各種装置と通信を行う、あるいはこれら各種装置を制御する、インフラストラクチャ設備、例えば、基地局、アクセスポイント、その他あらゆる装置、デバイス、システムが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本開示の一実施例は、例えば、人の身体状態変化の検出に好適である。
【符号の説明】
【0145】
1 身体状態検出システム
10 ミリ波レーダー
20 パーソナルコンピュータ(PC)
30A,30B サーバ
40A,40B データベース(DB)
70 レーダー制御装置
80 状態変化検出装置
90 表示端末装置
101 検出部
102 処理部
701 レーダー通信部
702 レーダーデータ格納部
801 レーダーデータ読出部
802 睡眠状態推定部
803 歩行速度推定部
804 推定結果格納部
805 推定結果読出部
806 状態変化検出処理部
807,901 通信部
808 レーダーデータ記憶部
809 推定結果情報記憶部
902 表示部
921 状態表示領域
922 通知領域
1100 コンピュータ
1101 入力装置
1102 出力装置
1103 CPU
1104 GPU(Graphics Processing Unit)
1105 ROM(Read Only Memory)
1106 RAM(Random Access Memory)
1107 記憶装置
1108 読取装置
1109 送受信装置
1110 バス
P 人物