(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025106185
(43)【公開日】2025-07-15
(54)【発明の名称】複合サイクル発電所の水・蒸気系統を運転前に洗浄する方法、及びこの方法のために構成された複合サイクル発電所
(51)【国際特許分類】
F22B 37/56 20060101AFI20250708BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20250708BHJP
F22B 37/52 20060101ALI20250708BHJP
F22B 37/54 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
F22B37/56 A
F01D25/00 R
F22B37/52 A
F22B37/54 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024199205
(22)【出願日】2024-11-14
(31)【優先権主張番号】23216011
(32)【優先日】2023-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンテオム、オリヴィエ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複合サイクル発電所における水・蒸気系統を運転前に洗浄する方法を提供する。
【解決手段】複合サイクル発電所(1)の水・蒸気系統に対して、運転前の初期フラッシング及び化学洗浄を実行すること、ガスタービンエンジン(2)を起動させ試運転すること、ガスタービンエンジンが試運転されている間に蒸気ブロー動作を含む検証用蒸気ブロー手順を実行することであって、HRSG(3)内で蒸気を発生させ蒸気を閉じた流体回路の一部に流してHRSGの蒸気輸送部品とHRSGを蒸気タービンシステム(4)に接続する蒸気ライン(39-51)とを洗浄し、蒸気は一時的な配管を使用することなく運転用バイパスライン(52-54)を経由して蒸気タービンシステムをバイパスし、復水器(6)に排出する検証用蒸気ブロー手順を実行すること、および選択され蒸気がブローされた蒸気ライン(39-54)の洗浄度を監視し検証する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン(2)、蒸気タービンシステム(4)、復水器(6)、及び熱回収蒸気発生器HRSG(3)を含む複合サイクル発電所(1、1’)における水・蒸気系統を運転前に洗浄する方法であって、前記方法は、
最終的に建設された複合サイクル発電所(1,1’)の水・蒸気系統に対して、運転前の初期フラッシング及び化学洗浄を実行すること、
前記ガスタービンエンジン(2)を起動させ、前記ガスタービンエンジン(2)を試運転すること、
前記ガスタービンエンジン(2)が試運転されている間に、蒸気ブロー動作を含む検証用蒸気ブロー手順を実行することであって、前記HRSG(3)内で蒸気を発生させ、高い流速、温度、および洗浄力比条件で、蒸気を、閉じた流体回路の一部に流して、前記HRSG(3)の蒸気輸送部品と、前記HRSG(3)を蒸気タービンシステム(4)に接続する蒸気ライン(39-51)とを洗浄し、前記蒸気は、一時的な配管を使用することなく、運転用バイパスライン(52-54)を経由して前記蒸気タービンシステム(4)をバイパスし、復水器(6)に排出される、検証用蒸気ブロー手順を実行すること、および
選択され蒸気がブローされた蒸気ライン(39-54)の洗浄度を監視し、検証すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記ガスタービンエンジン(2)がベース負荷で運転されている間に、蒸気ブロー運転が実行され、前記HRSG(3)の蒸気輸送部分、蒸気ライン(39~51)、及び蒸気ブローされるバイパスバルブ(55~57)を含む運転用バイパスライン(52~54)は、少なくとも1.1の洗浄力比CFRで設計されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記HRSG(3)は、高圧HP段(21)、中圧IP段(22)、低圧LP段(23)を含む複数の圧力段、及び再熱器(24)有し、
前記蒸気タービンシステム(4)は、HP蒸気タービン(17)、IP蒸気タービン(18)、及びLP蒸気タービン(19)を含み、
前記蒸気ライン(39-51)は、前記HRSG(3)のHP段(21)から前記HP蒸気タービン(17)に向けてHP蒸気を供給するためのHP蒸気ライン(47)と、前記HRSG(3)のIP段(22)を再熱器(24)に接続するIP蒸気ライン(43)と、前記再熱器(24)からIP蒸気タービン(18)に向けてIP蒸気を供給するための高温再熱HRHライン(49)と、前記HP蒸気タービン(17)から使用済みHP蒸気を受け取り、前記使用済みHP蒸気を前記再熱器(24)に供給するための低温再熱CRHライン(51)と、前記HP蒸気ライン(47)と前記CRHライン(51)との間に配置された運転用HPバイパスライン(52)と、前記HRHライン(49)と前記復水器(6)との間に配置された運転用HRHバイパスライン(53)と、前記LP蒸気ライン(41)と前記復水器(6)との間に配置された運転用LPバイパスライン(54)とを含み、
前記HRSG(3)の蒸気輸送部品と、蒸気ライン(39~51)と、バイパスバルブ(55~57)を含む運転用バイパスライン(52~54)との設計には、洗浄力比CFRが少なくとも1.1になるように、少なくとも、HP蒸気ライン、IP蒸気ライン、HRHライン、CRHライン、及びLP蒸気ライン(47、43、49、51、41)、並びにHPバイパスライン、HRHバイパスライン、及びLPバイパスライン(52、53、54)のサイズを定めること及びこれらのラインの配置を定めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
単一のHRSGプラント構成では少なくとも1.2の洗浄力比がサポートされ、マルチHRSGプラント構成では少なくとも1.03の洗浄力比CFRがサポートされるように、運転用のHPバイパスライン、HRHバイパスライン、及びLPバイパスライン(52、53、54)のHPバイパスバルブ、HRHバイパスバルブ、及びLPバイパスバルブ(55、56、57)のうちの少なくとも一部のバイパスバルブに、バイパスバルブ(55、56、57)の流量係数CVの性能を増加させるように設計された調整可能犠牲トリムを備えることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
運転用のHPバイパスライン、HRHバイパスライン、及びLPバイパスライン(52、53、54)の分離接続部を、HP蒸気タービン、IP蒸気タービン、及びLP蒸気タービン(17、18、19)の制御及び遮断用のバルブアセンブリ(63、64、65)のすぐ近くの位置であって、そのアセンブリの直ぐ上流の位置において、可能な限り蒸気タービンシステムに近い位置に配置すること、および
CRHライン(51)の逆止めバルブ(66)と、CRHライン(51)に対するHPバイパスライン(52)の下流接続部を、可能な限りHP蒸気タービン(4)の近くに設置すること
を更に含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
好ましくは高研磨鋼板の形態のターゲットインサート(67、68)を、HRHライン(49)及びLP蒸気ライン(41)に設置することをさらに含み、前記ターゲットインサート(67、68)は、検証用ブロー手順中の蒸気の温度と圧力の運転条件下で、オンラインでのターゲット検査と蒸気ブローされた蒸気ライン(39~57)の洗浄度の監視ができるように構成され、配置される、請求項3~5のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記HRSG(3)の蒸気輸送部品、蒸気ライン(39~51)、及び運転用バイパスライン(52~54)の関連部分に蒸気流量計を設置すること、及び
前記検証ブロー手順の間の前記蒸気流量計の蒸気流量測定値に基づいて、関連部分のCFRを計算すること
をさらに含む、請求項2~6のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記蒸気ライン(47、41、49、51)の蒸気ブローが実行されない部分(69~72)に検査ポート/洗浄ポートを設けること、及び、
検証ブロー手順が完了した後、蒸気ブローが実行されない部分(69~72)を検査し、洗浄すること
をさらに含む、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
HPバイパスライン、HRHバイパスライン、及びLPバイパスライン(52、53、54)の複数の分岐接続部のうちの少なくとも一部の分岐接続部は、それぞれの蒸気タービン部(17、18、19)の上流側のデッドレグにおけるデブリの蓄積を低減するために、それぞれのバイパスラインに対して直線的であるが、それぞれの蒸気タービン部(17、18、19)に対しては直線的ではないT接続部を設けることを更に含む、請求項3~8のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記複合サイクル発電所(1’)は、単一の蒸気タービンシステム(4)と、第1のHRSG(3a)及び第1のガスタービンエンジン(2a)を含む第1のユニット(73)と、第2のHRSG(3b)及び第2のガスタービンエンジン(2b)を含む第2のユニット(74)とを含むマルチユニット構成を有し、前記方法は、第1及び第2のユニット(73、74)の間で独立して検証ブロー手順を実行することを含む、請求項1~9のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1及び第2のユニット(73、74)の検証ブロー手順を互いに続けて実行することを含み、好ましくは、前記第1及び第2のユニット(73、74)のうちの一方のユニットの検証ブロー手順を実行し、同時に、他方のユニット(74、73)において、検証ブロー手順の後のデッドレッグの検査及び洗浄を実行することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複合サイクル発電所(1’)は、単一の蒸気タービンシステム(4)と、第1のHRSG(3a)及び第1のガスタービンエンジン(2a)を含む第1のユニット(73)と、第2のHRSG(3b)及び第2のガスタービンエンジン(2b)を含む第2のユニット(74)とを含むマルチユニット構成を含み、前記方法は、前記第1及び第2のユニット(73、74)のうちの一方のユニットで検証ブロー手順を実行している間に、他方のユニット(74、73)では少なくとも1つのバイパスライン(52~54)及びバイパスバルブ(55~57)を使用して検証用蒸気を流すことを含む、請求項1~9のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記複合サイクル発電所(1’)は、単一の蒸気タービンシステム(4)、第1のHRSG(3a)及び第1のガスタービンエンジン(2a)を含む第1のユニット(73)と、第2のHRSG(3b)及び第2のガスタービンエンジン(2b)を含む第2のユニット(74)とを含むマルチユニット構成を含み、一時的ジャンパ(78)を、前記HP蒸気タービン(17)のHP蒸気タービンバルブ(63)から共通低温再熱CRHライン(81)の逆止めバルブ(79)まで設置することと、HPおよびHRH蒸気システムにおいて1.1のCFRが得られるようにHRHバイパスバルブ(56a、56b)のサイズを定めることとを含む、請求項3~9のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
複合サイクル発電所(1、1’)であって、
電力を発生するガスタービンエンジン(2)、
前記ガスタービンエンジン(2)に流体接続された熱回収蒸気発生器HRSG(3)であって、前記ガスタービンエンジン(2)の発電から生じる高エネルギー排気ガスを受け取り、前記高エネルギー排気ガスから蒸気を生成するように構成された熱回収蒸気発生器HRSG(3)、
蒸気ライン(39-51)を通じて前記HRSG(3)に流体接続された蒸気タービンシステム(4)であって、前記HRSG(3)で生成された蒸気を受け取り、前記蒸気から追加の電力を生成するように構成された蒸気タービンシステム(4)、
前記蒸気タービンシステム(4)に結合され、前記蒸気タービンシステム(4)から出力された使用済み蒸気を凝縮するとともに、復水システム(7)に結合され、復水を前記復水器(6)から前記HRSG(3)に戻すための復水器(6)、
前記蒸気ライン(39-51)と前記復水器(6)との間に流体的に接続され、前記蒸気タービンシステム(4)をバイパスするように配置された運転用バイパスライン(52-54)、
様々な運転条件下で電力を生成するため、前記ガスタービンエンジン(2)、前記HRSG(3)、前記蒸気タービンシステム(4)、及び前記復水器(6)の通常運転を制御する制御システム(9)であって、前記制御システム(9)は、
前記ガスタービンエンジン(2)を起動させ、前記ガスタービンエンジン(2)を試運転すること、
前記ガスタービンエンジン(2)が試運転されている間に、蒸気ブロー動作を含む検証用蒸気ブロー手順を実行することであって、前記HRSG(3)内で蒸気を発生させ、高い流速、温度、および洗浄力比条件で、蒸気を、閉じた流体回路の一部に流して、前記HRSG(3)の蒸気輸送部品と、前記HRSG(3)を蒸気タービンシステム(4)に接続する蒸気ライン(39-51)とを洗浄し、前記蒸気は、一時的な配管を使用することなく、運転用バイパスライン(52-54)を経由して前記蒸気タービンシステム(4)をバイパスし、復水器(6)に排出される、検証用蒸気ブロー手順を実行すること、および
選択され蒸気がブローされた蒸気ライン(39-54)の洗浄度を監視し、検証すること
によって、前記複合サイクル発電所(1、1’)の水・蒸気系統の運転前洗浄を実行するように更に構成されている、制御システム(9)
を含む、複合サイクル発電所(1、1’)。
【請求項15】
前記複合サイクル発電所(1、1’)は、請求項1~14のうちのいずれか一項に記載のように構成され、前記制御システム(9)は、請求項1~14のうちのいずれか一項に記載の検証用蒸気ブロー手順を実行するように較正される、請求項14に記載の複合サイクル発電所(1、1’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合サイクル発電所の新品の部品又は修復された部品の運転前洗浄に関し、より詳細には、複合サイクル発電所の水及び蒸気を利用するシステムの運転前洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複合サイクル発電所では、ガスタービンエンジンと蒸気タービンエンジンを組み合わせて使用し、発電する。複合サイクル発電所では、ガスタービンエンジンは、熱回収蒸気発生器(HRSG)を通じて蒸気タービンエンジンに熱的に接続されている。HRSGは非接触型の熱交換器であり、蒸気発生プロセス用の給水を、ガスタービンエンジンの本来は廃棄される排気ガスによって加熱することができる。HRSGは、チューブバンドルが配置された大きなダクトであり、チューブバンドルを流れる水が、ダクトを流れる排気ガスによって加熱され蒸気になる。
【0003】
現行の複合サイクル発電所は多圧HRSGを使用しており、多圧HRSGは、3つの異なる動作圧力(高圧、中圧、低圧)を有しており、様々な圧力と温度で蒸気を発生させる部品を備えている。HRSGは、例えば、低圧部、中圧部、高圧部を含み、低圧部、中圧部、高圧部の各々は、一般に1つ又は複数のエコノマイザ、蒸発器、および/又は過熱器を含むことができる。それぞれの圧力の蒸気は、蒸気タービンシステムの対応する段に供給される蒸気として使用される。ガスタービンシステムおよび蒸気タービンシステムは、電力を生成する1つ又は2つの発電機を駆動する。
【0004】
蒸気タービンシステムからの使用済み蒸気は復水器に排気され、復水器で蒸気が凝縮し、次に、凝縮物は、復水ポンプによって、復水器から、1つ又は複数の導管を経由してHRSGに戻る。
【0005】
発電所の運転において蒸気の純度は、厳しい要件を満たさなければならない。粒子状のデブリが蒸気中に取り込まれ、発電所の運転に支障をきたしたり、発電所の部品に損傷を与えたりするような状況を避けることが重要である。例えば、粒子状デブリは蒸気スクリーンを詰まらせたり、狭い蒸気通路を詰まらせたりする。粒子状デブリは、蒸気タービンの固定部品や回転部品に浸食や衝撃による損傷を与える恐れがあり、また、蒸気の流れを制御するために使用される蒸気弁の内面を詰まらせたり損傷させたりする恐れもある。
【0006】
複合サイクル発電所を製造し、建設している間、汚染物質(溶接スパッタ、切粉、溶接電極残渣、泥、砂、粉塵などの)は、あらゆる注意を払っても、システム内に残留することがある。汚染物質は、除去しやすい形態で存在することもあれば、発電所の部品の内壁に付着することもある。
【0007】
従って、新しく改修された蒸気タービン発電機設備を始動させる典型的な先行技術の方法では、蒸気輸送機器及び配管(例えば、HRSG領域、HRSGと蒸気タービンシステムとの間の蒸気ライン、復水器につながる蒸気ライン、及び制御弁)の内面から粒子状汚染を除去するために多数の方法が採用されてきた。一般に、このような蒸気輸送部品は、ガスタービンエンジンを試運転する前に、及び蒸気タービンシステムに最初の蒸気パルスを送るたびに、その最初の蒸気パルスの前に、汚染物が吹き飛ばされ又は洗い流され、始動前に粒子状汚染物質が確実に存在しないようにする。
【0008】
当技術分野の運転前洗浄方法には、処理水と化学洗浄手順(高温アルカリ脱脂、酸洗浄、パッシベーション、すすぎ及び/又はエアブロー洗浄を含む)で蒸気・水系統の構成要素を洗浄すること、その後に、ドラム及び低点ヘッダを検査し、ドラム及び低点ヘッダの堆積物を手作業で洗浄する又はすすぐことと、を含む。その後に初めて、ガスタービンエンジンおよび複合サイクル発電所の全体が稼働する。
【0009】
蒸気タービンの隔離弁と制御弁に設置された一時的な配管とサイレンサを経由して大気に排出される蒸気を使用して蒸気発生器と関連蒸気ラインを送風により清掃する蒸気ブロー手順を実行することも知られている。蒸気ブローは、連続的又は不連続的(パルスブロー)に行うことができ、所望の攪乱係数に到達するように一般に低負荷および低排気圧力下で実行される。他の一部の方法としては、一時的な配管を通じて、大気と復水器への蒸気負荷を組み合わせる方法がある。高い擾乱係数に達することなく、また洗浄された水・蒸気系統の構成要素の目標検証を行うことなく、通常のバイパス運転で復水器に蒸気を排出することも行われているが、要求とされる効率よりも低い。
【0010】
US2009/0107532A1には、発電所のプラント部品の運転前洗浄のための方法が開示されており、この方法は、洗浄すべき1つ又は複数のプラント部品を媒体が流れるように閉流路回路に媒体を連続的に供給することと、運転中のプラント部品の純度を測定するために媒体を試験することとを含んでいる。蒸気は蒸気ボイラ装置から抽出され、復水器で蒸気から得られた液体は運転中のプラント部品に供給され、蒸気によってプラント部品を洗浄するために閉流路回路に送られる。蒸気タービンユニットの高圧段を迂回するために、一時的な蒸気ラインシステムおよびブローアウトインサートと、ブローアウトインサートの間に配置された測定装置とを備えた一時的な洗浄設備に、高圧蒸気ラインからの分岐部が設けられる。測定装置は研磨された金属バッフルプレートであり、このプレートは、流れ方向に対して横方向に蒸気ラインに設置され、ブローアウト動作中にバッフルプレートに衝突する粒子衝撃によって媒体の純度を視覚的に観察し、判定することができる。この方法には、蒸気ブロー手順を実行するために一時的に蒸気ラインシステムの設置が必要である。一時的な蒸気ラインシステムと一時的なブローアウト設備は、発電所の通常運転時には撤去しなければならない。このため、運転前の洗浄に必要な作業量、費用、時間が増加する。
【0011】
US10612771B2には、複合サイクル発電所における水・蒸気系統の運転前洗浄方法が開示されており、この方法は、簡易な運転前洗浄を実施し、一時的な配管を用いて最初に蒸気を大気中に放出して、次に復水器へのライン上のバイパスバルブを迂回する別の配管を用いて蒸気を復水器に吹き出す、復水器への蒸気ブローを含んでいる。一時的な配管および装置は、基本負荷又は最大100%負荷の運転ができるように設計されている。排気蒸気の清浄度を監視し確認するために、高度に研磨された金属板状のターゲットインサートを蒸気ブロー排気に挿入して取り出し、検査することで、排気蒸気中の微粒子の汚染物質が継続的に存在するかどうかを判断することができる。蒸気ブロー手順は効率的であり、ガスタービンエンジンの試運転中に実行することができる。しかし、検証用蒸気ブロー手順の全体で必要となる一時的な配管、一時的な設備、および一時的な制御によって、それに対応する構成および再構成の作業負荷、材料要件、およびコストが大幅に増加する。さらに、最初の蒸気ブローは大気に排出されるため、過度の騒音公害を回避するために、大気サイレンサを蒸気の大気への排気ポイントに設けて使用しなければならない。
【0012】
蒸気発生装置及び配管を運転前洗浄する従来の方法は、大規模で一時的な配管を使用し、それに対応する構成及び再構成の作業負荷、必要な人員、及び材料コストがかかる。従来の方法は、大気サイレンサ及び大量の脱塩水を必要とする大気への蒸気ブローを実行する、従来の方法は、ガスタービンエンジンの通常の試運転と並行して実施することができないこと、及び/又は従来の方法は、実施に時間とコストがかかる。
【0013】
本開示の目的は、複合サイクル発電所の水・蒸気系統の有効蒸気ブローを使用する新規の運転前洗浄方法を提供し、従来の運転前洗浄方法の上述の複数の欠点のうちの1つ以上を克服することである。本方法は、蒸気・水系統を効率的に洗浄することができるものでなければならず、好ましくは、ガスタービンシステムの試運転と少なくとも部分的に並行して実行されることにより、運転前洗浄において、ガスタービンシステムにおける着火時間及び燃料消費量、ならびに脱塩水消費量を低減することができる。さらに、この方法は、安全上の懸念がなく、視覚公害もなく、騒音及び排気ガスの規制を満たすものでなければならない。
【0014】
本開示の他の目的は、このような運転前洗浄を実行するように構成された複合サイクル発電所を提供することである。
【発明の概要】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、複合サイクル発電所における水・蒸気系統の運転前洗浄方法が提供される。複合サイクル発電所は、ガスタービンエンジン、蒸気タービンシステム、復水器、及び熱回収蒸気発生器(HRSG)を含む。本方法は以下を含む:最終的に建設された複合発電所の水・蒸気系統に対して運転前の初期フラッシング及び化学洗浄を行うこと、ガスタービンエンジンを燃焼させること、及びガスタービンエンジンを試運転すること;ガスタービンエンジンが試運転されている間に、HRSG内で蒸気を発生させ、HRSGの蒸気搬送部及びHRSGと蒸気タービンを接続する蒸気ラインを洗浄するための閉流路の一部を通して、高速度、高温度、及び洗浄力比の条件で蒸気を吹き付ける蒸気吹き付け操作を含む検証蒸気吹き付け手順を実行するステップであって、蒸気は、一時的な配管を使用することなく、恒久的な運用バイパスラインを介して蒸気タービンシステムをバイパスするようにルートされ、復水器に排出される、ステップと選択された蒸気ブロー蒸気ラインの清浄度を監視し、検証すること。
【0016】
本発明の方法では、ガスタービンシステムの通常の始動は、検証吹き付け手順と並行して実行される。特に、通常の完全なガスタービン試運転作業では、ガスタービンをバイパス運転で全速無負荷(FSNL)状態まで駆動すること、同期運転とHRSG安全弁試験を実行すること、燃料ガスストレーナを取り付けた状態で、燃焼調整のためにガスタービンシステムの負荷をベース負荷にすること、およびその他の一般的な試運転作業を実行することができる。発電所は、一時的な制御又は手動制御を行うことなく、通常の構成で起動することができる。一時的な配管又はラインは必要ないため、事前の洗浄を実行するためのプラントの構成および再構成は最小限で済む。
【0017】
一時的なパイプライン又はラインは、特に、洗浄プロセスのみに必要とされ、設置される(例えば、蒸気タービンシステムを迂回するために必要とされ、設置される)蒸気パイプライン又は蒸気ラインを意味するものとして理解される。これとは対照的に、常設の運転配管又は運転ラインは、通常運転、例えば、特定の運転条件下(負荷遮断など)で、蒸気タービンシステムを迂回するために必要であり、設置されている。本発明の方法では、このような一時的な配管、一時的な圧縮機、一時的な流出手段、及び一時的な制御が不要であるため、前洗浄を実行するための人員と材料に関する労力、時間、及びコストを大幅に削減することができる。
【0018】
加えて、復水器に対する検証ブロー方法によって、一部の従来の運転前洗浄方法で行われているように、蒸気を大気中に放出することが回避される。したがって、サイクル水質を維持し、騒音を軽減し、視覚公害を最小限に抑えるための脱塩水の消費を制限することができる。さらに、ガスタービンシステムの試運転を検証ブロー手順と並行して実行することで、ガスタービンシステムの着火時間と燃料消費を削減し、高負荷での蒸気ブローの間において排出基準遵守を満たすことができる。発電所は全ての通常の規制と保護手段を含む通常運転であるため、安全上の懸念はない。熱サイクルと最大サイクル温度を用いることによって、効率的に洗浄することができる。蒸気流路に復水器が含まれた大規模な運転前洗浄により、早期に良質の蒸気が得られ、サイクルは真空下で高負荷運転される。
【0019】
ガスタービンシステムの最新の発電機では、ガスタービンエンジンの排気温度が高くなっており、この方法は、HRSGの一部の乾燥蒸気セクションの制限を受けず、また追加の温度調整を必要とする可能性のある一時的な配管の設計温度により制限を受けることもない。ガスタービンエンジンの最新の発電機では、蒸気流量が大幅に増加しており、従来の前洗浄方法ではかなりの脱塩水が消費される。その結果、従来のシステムでは一時的な配管およびその設置も次第に大型化している。
【0020】
本発明の方法では、運転前の初期フラッシング及び化学洗浄の作業は、一般的に知られている化学洗浄手順(開放フラッシング(open flushing)又は閉鎖フラッシング(closed flushing)、高温脱脂、酸洗浄、不動態化及びリンスなど)を含むことができる。化学洗浄は、蒸気・水系統全体(HRSGドラム、エコノマイザ、蒸発器、過熱器、再熱器、バランスオブプラントの蒸気ライン、補助蒸気ライン、給水ライン、復水システムを含む)に対して行われる。、一部の特定のケースでは、HRSGから蒸気タービンまでの蒸気配管が別の方法で機械的に洗浄される(例えば、プレハブ後にショットブラスト処理し、設置後に洗浄する、又は設置後にハイドロブラスト処理し、検査する)場合、酸洗浄はHRSGの水・蒸気系統に限定されることがある。化学洗浄が完了したら、低所およびHRSGコレクタを含む様々な場所で広範囲の検査を実施することができ、これらの場所は、高圧水の噴射を使用して水洗され、化学洗浄で残った固形堆積物を除去することができる。蒸気ブローの手順とともに、発電所の製造及び建設後にシステム内に残留する可能性のある全ての蒸気発生プラントの汚染物質(砂、ほこり、泥、溶接飛散物、切り粉、溶接電極残留物など)を、発電所の初期起動前に効率的に除去することができる。
【0021】
上述したいずれの方法においても、ガスタービンエンジンがベース負荷条件又は最大負荷条件で運転されている間に、蒸気ブロー運転を有利に実施することができる。蒸気ブローされるHRSGの蒸気輸送部分、蒸気ライン及び運転バイパスライン(バイパスバルブを含む)は、それぞれ洗浄力比(cleaning force ratio)CFRが少なくとも1.1、さらには少なくとも1.2となるように設計することができる。試運転中、ガスタービンエンジンは、蒸気システムの効率的な洗浄を実現するための所望の要求されるCFRを達成するために、ベース負荷の負荷がかけられる。
【0022】
全体的な蒸気ブローの手順と計算は、初期の設計および概念の工程でうまく統合されれば、大幅に簡素化することができる。新しい複合サイクル発電所の建設プロジェクトの初期のエンジニアリング作業と調達の段階で、HRSGと蒸気ラインが十分なCFRとなるように、エンジニアは様々な蒸気ブローケースを計算することができる。蒸気ブローの例は、他の通常運転シナリオの中でバイパス機能仕様に含めることができ、パイプラインとバイパスの供給業者は、蒸気ブローの例に応じてバイパスラインとバイパスバルブのサイズを適切に設定することができる。したがって、検証ブロー手順のために特定の機器が必要となる可能性が少なくなる。
【0023】
検証用蒸気ブローのための蒸気バイパス能力を決定するために、蒸気ブローに対して予想される現実的な周囲条件の下で、ガスタービンエンジンを蒸気バイパスにおけるベース負荷で運転する場合、利用可能な蒸気流量において期待されるCFRを超えるには、各配管部分がどの程度の圧力で運転されなければならないかをチェックすることができる。この目的のため、普通は、通常の周囲条件を考慮することができ、通常の周囲条件は一般には許容される。
【0024】
上述の方法の好ましい適用例では、HRSGは、複数の圧力段(高圧(HP)段、中圧(IP)段、低圧(LP)段を含む)、及び再熱器を有することができる。蒸気タービンシステムは、HP蒸気タービン、IP蒸気タービン、及びLP蒸気タービンを含むことができる。蒸気ブローされる蒸気ラインとしては、HRSGのHP段からHP蒸気タービンに向けてHP蒸気を供給するためのHP蒸気ライン、HRSGのIP段を再熱器に接続するIP蒸気ライン、再熱器からIP蒸気タービンに向けてIP蒸気を供給するための高温再熱(HRH)ライン、HP蒸気タービンから使用済みHP蒸気を受け取り、その使用済みHP蒸気を再熱器に供給する低温再熱(CRH)ライン、HP蒸気ラインとCRHラインの間に配置された運転用HPバイパスライン、HRHラインと復水器との間に配置された運転用HRHバイパスライン、LP蒸気ラインと復水器との間に配置された運転用LPバイパスラインを少なくとも含むことができる。常設運転配管ラインの設計には、洗浄力比CFRが少なくとも1.1、好ましくは少なくとも1.2になるように、少なくとも、HP蒸気ライン、IP蒸気ライン、HRHライン、CRHライン、LP蒸気ライン、HPバイパスライン、HRHバイパスライン、LPバイパスラインのサイズを決定し、配置することが含まれる。
【0025】
上述の実施形態において、本方法は、単一のHRSGプラント構成で少なくとも1.2の洗浄力比(CFR)を維持し、複数のHRSGプラント構成で少なくとも1.03の洗浄力比(CFR)を維持するために、運転用HPバイパスライン、運転用HRHバイパスライン、および運転用LPバイパスラインの複数のバイパスバルブのうちの少なくとも一部のバイパスバルブに、バイパスバルブの流量係数(CV)能力を向上させるように設計された調整可能な犠牲トリムを備えることを含むことができる。
【0026】
検証ブロー手順中にのみ、犠牲トリムをバイパスバルブに取り付けることで、運転用トリムの損傷を防ぎ、バイパスバルブの流量係数の値を増加させることができる。犠牲トリムは耐久性が低下する恐れがあり、検証用蒸気ブロー手順が完了した時点でバイパスバルブから取り外すことができる。永久トリムは、通常運転用のバイパスバルブに含まれており、蒸気ブローの例を除く最大負荷の例に基づいてサイズが決められ、大きい強度と優れた耐久性を持つことができる。
【0027】
一部の実施形態では、犠牲トリムを設計する場合、現場での真の運転条件で必要な洗浄力比CFRを得ることができるように、犠牲トリムの必要なバルブ流量係数CVに、例えば約10%のマージンを加えることができる。HPバイパスラインについては、ベース負荷条件下で検証ブローを実行できるように、バルブ本体を収容できる最大CVを提供する犠牲トリムを設けることができる。一部の実施形態では、犠牲トリムを、関連するガスケットを有するピストンと、ケージとから構成し、ケージは、ケージを通過する蒸気の体積流量を大きくし、蒸気の速度を速くすることができるように、例えば、孔の数を増やす及び/又は孔のサイズを大きくすることができる。
【0028】
HPバイパスライン及びHPバイパスバルブを設計する場合、バイパス温度調整流量が必要となることがあり、バイパス温度調整流量を考慮することもできる。HPバイパス温度調整の設定温度は、通常のバイパス温度調整制御のように、期待されるCRH圧力に基づいて設定することができるが、使用されるのは、蒸気ブロー時における期待されるCRH圧力である。
【0029】
本方法の上述した実施形態は、運転用のHPバイパスライン、HRHバイパスライン、およびLPバイパスラインの分岐接続部を、HP蒸気タービン、IP蒸気タービン、およびLP蒸気タービンの制御および遮断用のバルブアセンブリのすぐ近くの位置であって、そのアセンブリの直ぐ上流の位置において、可能な限り蒸気タービンシステムに近い位置に配置することをさらに含むことができる。「可能な限り近く」とは、バイパスラインが、タービン建屋、復水器の種類などの影響を受けないように、許容可能で受入れ可能な範囲で蒸気タービンシステムに近い位置にあることを意味する。バイパスラインは、HRSGエリア、特にHRSGパイプラックには設置せず、蒸気タービンシステムの近くに設置する。HRHバイパスラインおよびLPバイパスラインは蒸気タービンエリアに直接設置することができる。HPバイパスラインは、蒸気タービンエリアには直接設置されないが、可能な限り許容可能で受入れ可能な範囲でその近くに設置する。CRHラインの逆止めバルブと、CRHラインに対するHPバイパスラインの下流接続部も、可能な限りHP蒸気タービンの近くに設置する。このようにして、蒸気輸送部品と蒸気ラインの長さのある部分は、蒸気ブローで洗浄することができる。
【0030】
上述のいずれの実施形態においても、本方法は、ターゲットインサート(好ましくは鏡面鋼板又は高研磨鋼板の形態のインサート)を、少なくともHRH及びLP蒸気ラインに設置することをさらに含むことができる。ターゲットインサートは、検証ブロー手順中の蒸気の温度と圧力の運転条件下で、オンラインでのターゲット検査と洗浄度の監視ができるように構成され、配置される。ターゲットインサートは、蒸気ブローによって運ばれたデブリの影響を視覚的に示すことができる。
【0031】
上記の実施形態において、本方法は、検証用蒸気ブロー手順中に、HRSGの蒸気輸送部品、蒸気ライン、および運転用バイパスラインの関連する部分に蒸気流量計を設置し、これらの蒸気流量計の測定値に基づいて、関連する部分におけるCFR(洗浄力比)をオンラインで計算することを含むことができる。
【0032】
蒸気流量計の種類は、例えばベンチュリー型でもノズル型でもよい。CFRの計算は、検証ブロー中に洗浄比を検証する通常のプラント制御ソフトウェアの一部として含めることができる。
【0033】
本方法の上記実施形態は、蒸気ラインの蒸気ブローが実行されない部分に検査ポート/洗浄ポートを設けること、及び、検証ブロー手順が完了した後、必要に応じて、蒸気ブローが実行されない部分を検査し、洗浄することをさらに含むことができる。洗浄は、例えば、脱塩水を使用したすすぎによって実行することができる。全ての重要な流路およびデッドレグなどが、確実に、汚染物質を実質的に含まないようにすることができる。
【0034】
上述した方法の有利な実施形態では、HPバイパスライン、HRHバイパスライン、及びLPバイパスラインの複数の分岐接続部のうちの少なくとも一部の分岐接続部は、それぞれの蒸気タービンセクションの上流側のデッドレグにおけるデブリの蓄積を低減するために、それぞれのバイパスラインに対して直線的であるが、それぞれの蒸気タービンセクションに対しては直線的ではないT接続部を備えることができる。これにより、重要な流路の点検および洗浄の時間を節約することができる。また、通常必要とされる検査および洗浄の複数のポートのうちの一部のポートを省略することができる。この手法は、蒸気遮断バルブの無い構成や蒸気遮断バルブの上流の部分が無い構成で特に適用できる。この手法は、検査フランジ又は検査ポートを追加する選択肢が困難であるHP蒸気ラインの場合にも、特に重要である。加えて、最近の研究では、バイパスラインに対して直線的なラインを設けることによって、プラントを長期的に運転している間における蒸気タービンバルブの浸食を抑制できることが示されている。
【0035】
本方法の上述の実施形態は、単一の蒸気タービンシステムと、第1のHRSG及び第1のガスタービンエンジンを含む第1のユニットと、第2のHRSG及び第2のガスタービンエンジンを含む第2のユニットとを含むマルチユニット構成を含む複合サイクル発電所にさらに適用することができる。本方法は、好ましくは、ユニット間で独立して検証ブロー手順を実行することを含んでいる。これは、ユニットの共通部分が含まれないので容易に実現することができる。好ましくは、第1のユニットと第2のユニットの検証ブロー手順は、互いに続けて実行される。有利な実施形態では、第1のユニットおよび第2のユニットのうちの一方のユニットの検証ブロー手順が実行され、同時に、他方のユニットにおいて、検証ブロー手順の後のデッドレッグの検査および洗浄を実行することができる。これにより、運転前洗浄を完了するための時間を節約することができる。
【0036】
複数ユニット構成を含む複合サイクル発電所に適用される方法の一部の実施形態では、本方法は、第1のユニット及び第2のユニットのうちの一方のユニットで検証ブローを実行し、他のユニットでは少なくとも1つのバイパスライン及びバイパスバルブを使用して検証用蒸気を流すことを含むことができる。これにより、バイパスラインのバイパスバルブのサイズを大きくし過ぎてしまうことを回避することができる。
【0037】
代替例として、HPバイパスバルブのサイズが大きくし過ぎないように、HP蒸気ラインとHRHウォーミングラインの接続を複数ユニットの発電所構成に使用することができる。検証用蒸気ブローの間、HPバイパスラインと、HRHウォーミングラインに接続されたHPとの両方のラインを使用して、HPバイパスラインの圧力を下げることができる。
【0038】
マルチユニット構成を含む複合サイクル発電所に適用される上述の方法の一部の実施形態では、HPバイパスバルブがHP蒸気ラインにおいて十分なCFRを達成することができない場合、またはHPおよびCRHのブローが行われない部分を十分に狭い範囲に抑えることができない場合、本方法の修正された実施形態は、任意選択で絞り装置を有する一時的なジャンパ配管を、HP蒸気タービンのHP蒸気タービンバルブからCRHラインの逆止めバルブまで設置すること、およびHRH蒸気システムにおいて必要とされる少なくとも1.03の洗浄力比(CFR)が得られるようにHRHバイパスバルブのサイズを定めることを含むことができる。必要であれば、絞り装置を一時的な配管で使用して、HP蒸気システムにおける洗浄力比CFRを小さい値にすることができる。マルチユニット構成の発電所の両方のユニットで共通の一時的な配管を限定的に使用することで、蒸気ブロー運転のために両方のユニットのHPバイパスラインおよびバルブを使用することが回避される。
【0039】
さらに、一時的な配管が使用される場合、(HP蒸気最終温度調整器が存在しているのであれば)HP蒸気最終温度調整器は、最大蒸気ブロー条件下で、HP蒸気がCRH蒸気ラインに入る前にHP蒸気の温度調整をできるように設計することができる。HP最終温度調整器が利用可能ではない場合、HP蒸気ラインに特定のポートを設けて、検証ブロー中に一時的な温度調整器が接続できるようにしてもよい。これらの点を除いて、複合サイクル発電所のマルチユニット構成の第1のユニットおよび第2のユニットの各ユニットにおいて、前述のような一時的な配管又は設備は使用されない。
【0040】
本発明の別の態様によれば、上述の目的を解決するために、複合サイクル発電所が提供される。この複合サイクル発電所は、電力を発生するガスタービンエンジン、前記ガスタービンエンジンに流体接続された熱回収蒸気発生器HRSGであって、前記ガスタービンエンジンの発電から生じる高エネルギー排気ガスを受け取り、前記高エネルギー排気ガスから蒸気を生成するように構成された熱回収蒸気発生器HRSG、蒸気ラインを通じて前記HRSGに流体接続された蒸気タービンシステムであって、前記HRSGで生成された蒸気を受け取り、前記蒸気から追加の電力を生成するように構成された蒸気タービンシステム、前記蒸気タービンシステムに結合され、前記蒸気タービンシステムから出力された使用済み蒸気を凝縮するとともに、復水システムに結合され、復水を前記復水器から前記HRSGに戻すための復水器、前記蒸気ラインと前記復水器との間に流体的に接続され、前記蒸気タービンシステムをバイパスするように配置された運転用バイパスライン、様々な運転条件下で電力を生成するため、前記ガスタービンエンジン、前記HRSG、前記蒸気タービンシステム、及び前記復水器の通常運転を制御する制御システムであって、前記制御システムは、前記ガスタービンエンジンを起動させ、前記ガスタービンエンジンを試運転すること、前記ガスタービンエンジンが試運転されている間に、蒸気ブロー動作を含む検証用蒸気ブロー手順を実行することであって、前記HRSG内で蒸気を発生させ、高い流速、温度、および洗浄力比条件で、蒸気を、閉じた流体回路の一部に流して、前記HRSGの蒸気輸送部品と、前記HRSGを蒸気タービンシステムに接続する蒸気ラインとを洗浄し、前記蒸気は、一時的な配管を使用することなく、運転用バイパスラインを経由して前記蒸気タービンシステムをバイパスし、復水器に排出される、検証用蒸気ブロー手順を実行すること、および選択され蒸気がブローされた蒸気ラインの洗浄度を監視し、検証することによって、前記複合サイクル発電所の水・蒸気系統の運転前洗浄を実行するように更に構成されている、制御システムを含む。
【0041】
複合サイクル発電所は、例えば、発電所が新設された又は修理された後、ガスタービンシステムの試運転と並行して、一時的な配管、設置、制御、およびそれらに伴う構成及び再構成を一切必要とせずに、発電所の通常運転に向けた準備が行われ、それによって、本発明の方法に関連して前述された利点が実現される。上述した方法の他の実施形態及び関連する効果及び利点は、複合サイクル発電所にも同様に適用される。本発明の複合サイクル発電所の最も好ましい実施形態は以下の通りである。
【0042】
制御システムは、ガスタービンエンジンをベース負荷(すなわち、最大負荷条件)で運転しながら、蒸気ブロー動作を実行するように構成することができ、蒸気ブローされるHRSGの運転用配管、スチームライン、およびバイパスバルブを含む運転用バイパスラインは、それぞれ、少なくとも1.03、少なくとも1.1、さらには少なくとも1.2の洗浄力比CFRが得られるように設計することができる。
【0043】
上述の種類の複合サイクル発電所の好ましい実施形態では、HRSGは、複数の圧力段(高圧(HP)段、中圧(IP)段、低圧(LP)段を含む)、及び再熱器を有することができる。蒸気タービンシステムは、HP蒸気タービン、IP蒸気タービン、及びLP蒸気タービンを含むことができる。蒸気ラインは、HRSGのHP段からHP蒸気タービンに向けてHP蒸気を供給するHP蒸気ラインと、HRSGのIP段と再熱器とを接続するIP蒸気ラインと、再熱器からIP蒸気タービンに向けてIP蒸気を供給する高温再熱(HRH)ラインと、HP蒸気タービンから使用済みHP蒸気を受け取り、使用済みHP蒸気を再熱器に供給する低温再熱(CRH)ラインと、HP蒸気ラインとCRHラインとの間に配置された運転用HPバイパスラインと、HRHラインと復水器との間に配置された運転用HRHバイパスラインと、LP蒸気ラインと復水器との間に配置された運転用LPバイパスラインとを含むことができる。少なくともHP蒸気ライン、IP蒸気ライン、HRHライン、CRHライン、LP蒸気ライン、HPバイパスライン、HRHバイパスライン、およびLPバイパスラインは、洗浄力比CFRが少なくとも1.03、少なくとも1.1、および好ましくは少なくとも1.2になるような大きさに作られ、構成することができる。
【0044】
複合サイクル発電所の好ましい実施形態では、運転用HPバイパスライン、運転用HRHバイパスライン、及び運転用LPバイパスラインのバイパスバルブのうちの少なくとも一部のバイパスバルブは、検証用蒸気ブロー手順を実行するために、バイパスバルブの流量係数(CV)を増加させるように設計された調整可能な犠牲トリムを備えてもよく、これにより、単一のHRSGプラント構成で少なくとも1.2の洗浄力比(CFR)を、複数のHRSGプラント構成で少なくとも1.03の洗浄力比(CFR)を得ることができる。犠牲トリムは、検証ブロー手順中に運転用トリムが損傷するのを防ぎ、バイパスバルブの流量係数の値を向上させるために設置されるが、場合によっては耐久性が低下する恐れがある。犠牲トリムは、検証用蒸気ブロー手順が完了した時点でバイパスバルブから取り外すことができる。
【0045】
複合サイクル発電所の上述した実施形態において、運転用HPバイパスライン、運転用HRHバイパスライン、及び運転用LPバイパスラインの分岐接続部は、好ましくは、可能な限り蒸気タービンシステムに近い位置、すなわち、許容可能で受入れ可能な範囲内で蒸気タービンシステムに近い位置に配置することができ、更に、分岐接続部は、蒸気タービンエリアよりもHRSGエリアから離れ、HRSGの配管ラックに配置されるものではなく、蒸気タービンエリア内に直接配置されるものでもないが、HP蒸気タービン、IP蒸気タービン、およびLP蒸気タービンの制御バルブおよび遮断バルブのアセンブリの近くの位置であって、そのアセンブリの直ぐ上流の位置に配置することができる。運転用配管の長い部分が蒸気ブローできるようにするため、(CRHラインに遮断バルブが存在するのであれば)遮断バルブと、HPバイパスラインに対するCRHラインとの下流接続部は、可能な限り高圧蒸気タービンに近い位置に配置されることが望ましい。
【0046】
複合サイクル発電所の上述の実施形態において、検証用蒸気ブロー手順のために、ターゲットインサート(好ましくは鏡面鋼板又は高研磨鋼板の形態のインサート)を、それぞれHRH蒸気ライン49及びLP蒸気ライン41、及び/又は他の蒸気輸送部品及び蒸気輸送ラインに設置し、ターゲットインサートは、検証ブロー手順中の蒸気の温度と圧力の運転条件において、オンラインでのターゲット検査と洗浄度の監視ができるように構成し配置することが好ましい。
【0047】
複合サイクル発電所の上述の実施形態において、蒸気流量計は、蒸気ブローされるHRSGの運転用配管、蒸気ライン、及び/又はバイパスラインの関連部分に設けることができ、制御システムは、検証用蒸気ブロー手順の間の蒸気流量計の蒸気流量測定値に基づいて、関連部分のCFRを計算するように構成することができる。関連部分の計算されたCFRは、制御システム9のグラフィックインターフェース上で発電所のオペレータに提示され、オペレータは、要求されるCFRが実現されたことを確認できるようにすることができる。
【0048】
複合サイクル発電所の上述した実施形態においては、蒸気ブローが実行されない部分の検査及び洗浄ができるように、蒸気ラインの蒸気ブローが実行されない部分に検査ポート/洗浄ポートを設けることができる。このような部分は、酸洗浄及び高圧水洗浄され、ボアスコープ、ロボットカメラなどを用いて検査され、その後で、ガスタービンエンジンが点火され、通常運転が行われる。蒸気タービンシステムの周囲のデッドレグは、蒸気ブロー手順の間及び蒸気ブロー手順の後に検査することができる。デッドレグに蓄積されたデブリはすすぎによって除去することができる。
【0049】
上述した複合サイクル発電所の有利な他の実施形態では、HPバイパスライン、HRHバイパスライン、及びLPバイパスラインの分岐接続部のうちの少なくとも一部の分岐接続部は、それぞれの蒸気タービンセクションの上流側のデッドレグにおけるデブリの蓄積を低減するために、それぞれのバイパスラインに対して直線的であるが、それぞれの蒸気タービンセクションに対しては直線的ではないT接続部を備えることができる。これにより、重要な流路の点検および清掃の時間を節約し、点検/洗浄ポートの一部を省略することができる。さらに、長期間のプラント運転中における蒸気タービンバルブの浸食を低減することができる。
【0050】
上述の実施形態の好ましい用途において、複合サイクル発電所は、マルチユニット構成を含むことができ、マルチユニット構成は、単一の蒸気タービンシステムと、第1のHRSG及び第1のガスタービンエンジンを含む第1のユニットと、第2のHRSG及び第2のガスタービンを含む第2のユニットとを含む。マルチユニット構成では、制御システムは、ユニット間で独立して検証ブロー手順を実行するように構成することができる。特に、制御システムは、第1のユニット及び第2のユニットのうちの一方のユニットの検証ブロー手順を実行し、同時に、他方のユニットにおいて、検査ブロー手順の後の当該他方のユニットのデッドレグの検査および洗浄が実行されるように構成することができる。
【0051】
上述の複合サイクル発電所の一部の実施形態では、バイパスバルブのサイズを大きくし過ぎないように、及び/又はバイパスバルブに犠牲トリムを設置するのを回避するために、制御システムは、第1のユニット及び第2のユニットのうちの一方のユニットにおいて、他方のユニットの少なくとも1つのバイパスライン及びバイパスバルブを使用して、検証用蒸気ブロー手順を実行し、検証蒸気フローが当該一方のユニットに流れるように構成することができる。
【0052】
代替例として、複数ユニットのプラント構成では、HPバイパスバルブのサイズを大きくし過ぎないために、HP蒸気ラインをHRHウォーミングラインに接続することができる。
【0053】
複合サイクル発電所の一部の他の実施形態では、HP蒸気タービンのHP蒸気タービンバルブとCRHラインの逆止めバルブとの間に一時的なジャンパを設置することができる。これは、ジャンバを経由してHP蒸気を送り、HPバイパスライン及びHPバイパスバルブの使用を回避するためである。HRHバイパスバルブは、HPおよびHRHの蒸気システムが少なくとも1.1のCFRになるようなサイズにすることができる。これらの実施形態は、HPバイパスバルブがHP蒸気ラインで十分なCFRに到達できない用途、又はHP及びCRHのブローされない部分を少なくする用途で特に有利である。
【0054】
本発明のこれらの利点および特徴並びに他の利点及び特徴は、図面と併せて以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
主題は、本発明とみなされ、特許請求の範囲において特に明らかにされ、明確に特許請求されている。本発明の前述の特徴および利点並びに他の特徴及び利点は、添付図面と併せて以下の発明を実施するための形態から明らかである。
【
図1】単一HRSG構成の複合サイクル発電所において水・蒸気系統の検証用蒸気ブローを使用して運転前洗浄を実現するための、本発明の一実施形態のプロセスフロー概略図である。
【
図2】遮断バルブを備えたマルチHRSG構成を有する複合サイクル発電所において、水・蒸気系統の検証用蒸気ブローを使用して運転前洗浄を実現するための、本発明の一実施形態のプロセスフロー概略図である。
【
図3】
図2と同様に、マルチユニット構成の複合サイクル発電所の代替実施形態のプロセスフロー概略図であり、複合サイクル発電所のマルチHRSG構成において、高圧蒸気タービンバルブから低温再熱ラインまでの一時的なジャンパを有する検証流路を示す。
【
図4】バイパスバルブのサイズが大きすぎてしまうことを回避するために両方のユニットのバイパスを使用する、本発明による検証用蒸気ブロー手順の他の実施形態を示すマルチユニット構成の複合サイクル発電所のプロセスフロー概略図である。
【
図5】バイパスバルブのサイズが大きすぎてしまうことを回避するために両方のユニットのバイパスを使用する、本発明による検証用蒸気ブロー手順の他の実施形態を示すマルチユニット構成の複合サイクル発電所のプロセスフロー概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
ここで図面、特に
図1を参照すると、複合サイクル発電所1(以下、単に発電所1と称する場合がある)が示されている。発電所1は、電力を生成するガスタービンエンジン2と、ガスタービンエンジン2に流体接続され、ガスタービンエンジン2における発電から生成された高エネルギー排気ガスを受け取り、高エネルギー排気ガスから蒸気を生成するように構成された熱回収蒸気発生器(HRSG)3と、蒸気ラインを通じてHRSG3に流体接続され、HRSGで生成された蒸気を受け取り、蒸気から追加の電力を生成するように構成された蒸気タービンシステム4と、蒸気タービンシステム4に結合され、蒸気タービンシステム4から出力される使用済み蒸気を凝縮するとともに、復水システム7に結合され、復水を復水器6からHRSG3に戻すための復水器6と、蒸気タービンシステム4及びガスタービンエンジン2によって駆動され、電力を生成する発電機8と、
図1にブロック9の形で概略的にのみ示されている制御システムであって、様々な運転条件下で電力を生成するためにガスタービンエンジン2、HRSG3、蒸気タービンシステム4、及び復水器6の通常運転を制御するように構成されている制御システムとを含んでいる。以下にさらに説明するように、制御システム9は、複合サイクル発電所1の水・蒸気系統の運転前洗浄を実行するようにさらに構成されている。
【0057】
ガスタービンエンジン2は、入口部11を流れる空気を受け取り、その空気を圧縮する圧縮機10と、圧縮機10からの圧縮空気および燃料源(図示せず)からの燃料流(例えば、天然ガス)を受け取り、圧縮空気と燃料を混合し、混合物を燃焼して高エネルギー排気ガスを生成する燃焼器12と、燃焼器12から高エネルギー排気ガス流を受け取るタービン部13とを含んでいる。タービン部13では、高エネルギー排気ガスが膨張し、排気ガスの熱エネルギーが、シャフト14を駆動する運動エネルギーに変換される。シャフト14の機械的動力によって、圧縮機10及び外部負荷(発電機8など)が駆動する。高エネルギーの排ガス流は、タービン部13から排気ダクト16を流れてHRSG3に送られる。発電所1の図示された例示的な実施形態では、ガスタービンエンジン2、蒸気タービンシステム4、及び発電機8は、単一のシャフト14上に配置されているが、別々のシャフト及び外部負荷を有する他の構成を使用することもできる。
【0058】
蒸気タービンシステム4は、発電所1の図示された例示的な実施形態において、高圧(HP)蒸気タービン17、中圧(IP)蒸気タービン18、及び低圧(LP)蒸気タービン19を含み、異なる圧力の複数の蒸気導入点を有している。LP蒸気タービン19は、復水器6に結合されており、発電に使用された使用済み蒸気を復水器6に排出する。
【0059】
HRSG3は、ガスタービンエンジン2から排気ダクト16経由で受け取った高エネルギー排気ガスを使用してHRSG3を流れる給水を加熱するように構成された逆流型熱交換器である。HRSG3は、蒸気タービンシステム4と関連しており、様々な圧力と温度で蒸気を生成するために、対応する複数の圧力段(HP段21、IP段22、LP段23を含む)と、再加熱器24とを含んでいる。その蒸気は、蒸気タービンシステム4のそれぞれの段に対する蒸気供給源として使用される。
【0060】
HRSG3のHP段21、IP段22、およびLP段23の各段は、一般的に、1つ又は複数のドラム、エコノマイザ、蒸発器、OT(貫流)セクション、及び/又は過熱器を含むことができる。例えば、HP段21は、HPドラム26、HPエコノマイザ27、HP蒸発器28、及び1つ又は複数のHP過熱器29を含むことができる。同様に、IP段22は、IPドラム31、IPエコノマイザ32、IP蒸発器33、及びIP過熱器34を含むことができる。LP段23は、LPドラム35、LPエコノマイザ36、LP蒸発器37、及びLP過熱器38を含むことができる。HRSG3のHP段21、IP段22、およびLP段23のエコノマイザ、蒸発器、および過熱器と、再熱器24は、HRSG3の内部に管又は管束として配置されており、HRSG3を流れる高エネルギー排ガスが、管又は管束を循環する流体(給水又は蒸気)に熱を伝達する。
図1に示す構成を有する多圧HRSG3は、複合サイクル発電所1における蒸気発生設備の好ましい実施形態であるが、HRSGの他の構成および他の蒸気発生設備(異なる種類の蒸気ボイラ装置など)を用いてもよい。
【0061】
図1に見られるように、発電所1は、蒸気タービンシステム4にHRSG3で生成された蒸気を供給するために配置された複数の蒸気ラインを含んでいる。例えば、複数の蒸気ラインは、LP蒸気を供給するために、LPドラム35とLP過熱器38との間に流体的に結合されたLP蒸気移送ライン39と、LP過熱器38とLP蒸気タービン19との間に流体的に結合されたLP蒸気ライン41とを含むことができる。HRSG3のIP段22は、IPドラム31とIP過熱器34との間に流体的に結合されたIP蒸気移送ライン42と、IP過熱器34を再熱器24に流体的に結合するIP蒸気ライン43とを含むことができる。必要に応じて、別の蒸気ライン(
図1では符号は付されていない)を使用して、IP蒸気をIPドラム31からLPドラム35に戻してもよい。HRSG3のHP段21は、HPドラム26とHP過熱器29との間を流体的に結合するHP蒸気移送ライン44と、HP過熱器29の異なる部分があれば、当該異なる部分を流体的に結合するHP蒸気移送ライン46と、HP過熱器29とHP蒸気タービン17との間を流体的に結合しHP蒸気を供給するHP蒸気ライン47とを含むことができる。
【0062】
さらに、再熱器24は、再熱器24の異なる部分があれば、当該異なる部分を流体的に接続する再加熱器蒸気移送ライン48と、再熱器24の出力部とIP蒸気タービン18の入力部との間に流体的に結合されIP蒸気を供給する高温再熱(HRH)ライン49と、一端が再熱器24の入力部及びIP蒸気ライン43に流体的に結合され、他端がHP蒸気タービン17の出力部に流体的に結合され、HP蒸気タービン17から使用済みHP蒸気を受け取る低温再熱(CRH)ライン51とを含むことができる。蒸気ライン39~51のうちの少なくとも一部の蒸気ラインは、蒸気流を遮断する又は調整するための遮断バルブ及び/又は制御バルブを含むことができる。
【0063】
発電所1は、HRSG3で生成された蒸気を、蒸気タービンシステム4を迂回させて復水器6に供給するために、通常運転時(負荷遮断の間など)に使用することができる複数の常設運転用蒸気バイパスラインを含む常設バイパスシステムをさらに含んでいる。特に、複数の運転バイパスラインは、HPバイパスライン52、HRHバイパスライン53、及びLPバイパスライン54を含むことができる。HPバイパスライン52は、HP蒸気ライン47とCRHライン51との間に流体的に結合されており、HPバイパスライン52は、HPバイパスライン52を流れるHPバイパス蒸気流を制御するために、HPバイパスライン52に設置されたHPバイパスバルブ55を含んでいる。HRHバイパスライン53は、HRHライン49と復水器6との間に流体的に結合されており、HRHバイパスライン53は、HRHバイパスライン53を流れるIPバイパス蒸気流を制御するために、HRHバイパスライン53に設置されたHRHバイパスバルブ56を含んでいる。LPバイパスライン54は、LP蒸気ライン41と復水器6との間に流体的に結合され、LPバイパスライン54は、LPバイパスライン54を流れるLPバイパス蒸気流を制御するために、LPバイパスライン54に設置されたLPバイパスバルブ57を含んでいる。
【0064】
復水器6は、蒸気タービンシステム4(特に、LP蒸気タービン19)に結合されており、蒸気タービンシステム4から使用済み蒸気を受け取り、使用済み蒸気を冷却して凝縮させて水にする大型の熱交換器である。復水器にはいくつかの種類が知られているが、一般的な設計では、冷却水が流れる多数の小径管58が含まれている。復水器からの蒸気凝縮水は、復水器の底部に位置するホットウェル59に落下する、及び/又は凝縮水タンク60(
図2参照)に供給される。復水システム7は、復水ポンプ61および復水ライン62を含んでいる。復水ポンプ61は、復水ライン62によって、蒸気復水を、復水器6からHRSG3に戻す。復水ポンプ61の吸込側には、復水ポンプ61の損傷及び復水システム7の他の構成部品の損傷を防ぐために、復水ホットウェル59又は復水タンク60(
図2)から復水ポンプ61に供給される蒸気凝縮水から粒子状汚染を除去するためのストレーナ(図示せず)を配置することができる。
図1の実施形態では液冷式脱泡復水器が示されているが、適切な種類の復水器(例えば、
図2の実施形態で概略的に示されている空冷式復水器)を使用することができる。
【0065】
通常の運転では、ガスタービンエンジン2は機械動力を生成し、機械動力は、発電機8によって電力に変換される。蒸気タービンシステム4は、HRSG3から受け取った蒸気から、追加の動力を生成することができる。蒸気タービンシステム4からの使用済み蒸気は復水器6で凝縮され、復水システム7を経由してHRSG3に戻る。負荷要件によっては、HP蒸気タービン17、IP蒸気タービン18、および/又はLP蒸気タービン19のうちの1つ以上のタービンが使用されないことがある。その場合、運転用HPバイパスライン52、運転用HRHバイパスライン53、および運転用LPバイパスライン54を使用して、それぞれの蒸気タービンセクションを迂回することができる。制御バルブおよび停止バルブのアセンブリ63、64、65は、HP蒸気タービン17、IP蒸気タービン18、およびLP蒸気タービン19の入口に配置されており、それぞれの蒸気タービン段への蒸気流を停止する、開放する、および制御する。遮断バルブ66は、HP蒸気タービン17の出口の下流にあるCRHライン51(例えば、CRHラインセクション71)に配置されている。
【0066】
複合サイクル発電所1を製造および建設している間に、又は複合サイクル発電所1を改修する又は点検している間に、汚染物質(泥、砂、ほこり、溶接スパッタ、切粉、溶接電極残渣、破片、その他の粒子状汚染物質など)がシステム内に残留する恐れがある。運転中の蒸気タービンの構成要素の汚染および損傷を防止するために、HRSG3、復水器6、および復水システム7の全ての蒸気輸送及び水輸送のプラント部品、HRSG3を蒸気タービンシステム4及び復水器6に接続する蒸気ライン、および運転用バイパスライン52、53、54は、このような汚染粒子を含まないようにしなければならない。この目的のために、複合サイクル発電所における水・蒸気系統の運転前洗浄方法が提供される。以下、本開示の運転前洗浄方法を、
図1に示す複合サイクル発電所1に関連して説明するが、本方法は、蒸気発生設備を含む他の発電所にも適用することができる。
【0067】
本明細書に記載されているように、運転前洗浄の方法は、建設された複合サイクル発電所1の水・蒸気系統に対して運転前の初期フラッシング及び化学洗浄動作を実行することから始まる。蒸気又は蒸気復水を輸送する実質的にすべての部品及びパイプライン(例えば、HRSGドラム、エコノマイザ、過熱器及び再熱器、蒸気ライン、補助蒸気ライン、バイパスライン、給水ライン、及び復水システム)は、処理された脱イオン水を使用して洗浄され、汚染物質を除去することができる。さらに、他の化学洗浄工程(例えば、高温脱脂、酸洗浄、パッシベーション、すすぎのうちの1つ以上)を実行することができる。低所およびHRSGコレクタは、必要に応じて検査され、粒子状汚染物質を除去するために加水分解することができる。最後に、乾燥空気による保全工程を実行することができる。
【0068】
化学洗浄作業が完了すると、運転前洗浄方法の次のステップとして、検証用蒸気ブロー手順が実行される。本方法によれば、ガスタービンエンジンの試運転中に復水器への検証用蒸気ブロー手順が実行される。
【0069】
したがって、ガスタービンエンジン2が最初に点火され、ガスタービンエンジン2の試運転が開始される。通常のガスタービンエンジンの試運転作業は、ガスタービンエンジン2をバイパス運転させた状態で、通常のスケジュールで実行される。通常のスケジュールには、全速無負荷(FSNL)運転、HRSG3の安全バルブ試験、および燃焼調整のためにガスタービンエンジン2の負荷をベース負荷(即ち、最大定格負荷)に設定して燃焼調整を行う作業が含まれる。
【0070】
検証用蒸気ブロー手順はガスタービンエンジン2の試運転と並行して実行される。検証用蒸気ブロー手順には蒸気ブロー運転が含まれおり、蒸気はガスタービンエンジン2からの高エネルギー排ガスを使用してHRSG3で生成され、その蒸気は、HRSG3、HRSG3を蒸気タービンシステム4に接続する配管、バイパスライン52、53、54、復水器6、および復水システム7によって形成される閉じた流路回路の蒸気輸送部分を、高速、高温、および高洗浄力比の条件下で吹き込まれ、蒸気輸送部品が洗浄される。このように蒸気を吹き込むことによって、検証用の蒸気は、常設の運転用のHPバイパスライン52、HRHバイパスライン53、およびLPバイパスライン54を含む常設バイパスシステムを経由し、蒸気タービンシステム4を迂回するように導かれ、復水器6に排出される。復水器6で生成された復水は必要に応じて清浄化され、HRSG3に戻される。したがって、閉ループ回路が形成されている。検証用蒸気ブローの閉ループ回路の蒸気ブロー蒸気ラインは、
図1では太い実線で示されています。検証用蒸気ブローの手順には、更に、蒸気ブローと並行して、蒸気ブローされた蒸気ラインの洗浄度の監視と検証が含まれる。
【0071】
復水器に検証用蒸気ブローを実行することに、通常のガスタービンエンジンの試運転を並行で同時に実行することを組み合わせることで、様々な利点が得られる。発電所1は、本来であれば検証用蒸気ブロー手順のためだけに必要で通常運転中には使用されない一時的な制御および一時的な配管を必要とすることなく、通常の構成に従って起動する。ここでは、常設の運転用のHPバイパスライン52、HRHバイパスライン53、およびLPバイパスライン54は、復水器6への検証用蒸気ブローに使用される。蒸気および水は閉回路で循環するので、脱塩水の消費を抑えることができる。騒音も視覚公害も発生せず、蒸気ブローの手順中は排出基準に適合している。さらに、通常のガスタービンエンジンの試運転が並行して行われるため、この手順を実行するための着火時間および燃料消費量も抑えることができる。発電所1は通常運転中であるため、安全上の懸念はない。熱サイクルと高温により効率的な洗浄が達成され、通常運転に必要な蒸気品質が短時間でコスト効率よく実現することができる。
【0072】
蒸気ブロー手順中に、蒸気ブローされる機器の損傷を回避しながら、必要な擾乱係数と洗浄効率を実現するために、検証用蒸気ブロープロセスは、新しい発電所を建設するプロジェクトの初期の設計又は概念の段階ですでに統合され、考慮されていることが好ましい。蒸気ブロー運転はガスタービンエンジンがベース負荷で運転されている間に実行され、HRSG3の全ての運転用配管、スチームライン39~51、バイパスライン52~54、及びバイパスバルブ55~57は、効果的に蒸気ブローされるべきであり、配管およびラインのそれぞれは、その運転条件と、少なくとも1.1、さらには少なくとも1.2の洗浄力比CFRに適するように設計される。洗浄力比CFRは、次のように計算することができる。
【数1】
ここで、Qcは洗浄時の計算された流量、Qmaxは最大負荷流量、(PV)cは洗浄時の圧力と比容積の積、(PV)maxは最大負荷流量時の圧力と比容積の積、Pmaxは最大負荷流量時の圧力、Pcは洗浄時の圧力である。したがって、蒸気ブローされる蒸気輸送部品は、最大定格運転条件下で、従来の発電所の対応する部品よりも厳しい要件を満たさなければならない。
【0073】
蒸気ブロー手順に必要な蒸気・水系統の機器の能力を決定するために、蒸気ブローに対して予想される現実的な周囲条件の下で、ガスタービンエンジンをベース負荷で運転する場合、各配管セクションは、利用可能な蒸気流量において期待されるCFRを超えるには、どの圧力において運転されなければならないかをチェックすることができる。一般には、通常の周囲条件を考慮することができる。
図1に示す発電所の好ましい実施形態では、少なくとも蒸気ライン39~51、バイパスライン52~54、及びバイパスバルブ55~57の本体は、洗浄力比CFRが少なくとも1.1になるような大きさに作られ、配置される。より好ましくは、これらの蒸気ラインのうちの少なくとも一部の蒸気ラインは、CFRが少なくとも1.2になるような大きさに作られ、配置することができる。
【0074】
幾つかの準備作業を行うことによって、検証用蒸気ブロー手順を効率的で安全に行うことができる。特に、運転用トリムが損傷するのを防ぎ、必要な場合にはバイパスバルブの流量係数(CV)能力を向上させるために、運転用のHPバイパスライン52、HRHバイパスライン53、およびLPバイパスライン54のHPバイパスバルブ55、HRHバイパスバルブ56、およびLPバイパスバルブ57のうちの少なくとも一部のバイパスバルブに、調整可能犠牲トリム(図示せず)を設置することができる。常設のトリムは、蒸気ブローの場合を除き、最大負荷の例に基づいてサイズが決定され、高い耐久性を持つように決定される。対照的に、犠牲トリムは、流量係数CVを増加させるため、又は流量係数CVを最大にするように、特別に設計されている。耐久性は副次的な役割である。
【0075】
犠牲トリムは、単一のHRSGプラント構成では少なくとも1.2の洗浄力比CFRをサポートし、マルチHRSGプラント構成では少なくとも1.03の洗浄力比CFRをサポートするように設計することができる。使い捨てトリムの必要な流量係数CVは、推定された条件に基づいて計算することができ、必要なCFRが確実に現場における真の運転条件を満たすようにするため、例えば10%~20%のマージンを、計算されたCVに加えることができる。蒸気ブロー手順中に最大の負荷にさらされるHPバイパスバルブ55の場合、使い捨てトリムは、バルブ本体を収容できる最大CVを提供するように設計されるのが好ましい。
【0076】
好ましい実装態様では、設置される調節可能な使い捨てトリムは、ガスケットを有するピストンと、ケージであって、ケージを通過する蒸気の体積流量及び流速が大きくなるように、孔の数を増加させた又は孔を大きくしたケージとから構成することができる。使い捨てトリムは、蒸気ブローの手順が完了した後、取り外され、最終的な運転用トリムと交換される。
【0077】
バイパス運転で実現される蒸気ブローでは、もしバイパス温度調整流があれば、検証用蒸気ブロー手順の計画に、バイパス温度調整流を考慮する必要がある。例えば、HPバイパスライン52の温度設定点は、通常のバイパス温度調整の制御に従って、CRHライン51の予想圧力に基づいて設定することができるが、検証用蒸気ブロー時のCRHラインの予想される圧力を使用する。
【0078】
蒸気輸送配管の長い区間を洗浄できるようにするために、常設の運転用HPバイパスライン52、HRHバイパスライン53、及びLPバイパスライン54の分岐部は、可能な限り蒸気タービンシステム4の近くに配置することができる。これは、分岐部が、蒸気タービンシステム4の領域の近くに位置するように、許容可能で受入れ可能な範囲で蒸気タービンシステム4に近い場所に配置されるが、バイパスライン52、53、54が蒸気タービン建屋、復水器6の種類、および蒸気タービン建屋および復水器の運転によって影響を受けないように、十分な距離を保つことを意味する。HPバイパスライン52、HRHバイパスライン53、およびLPバイパスライン54の分岐部は、HP、IP、およびLPの蒸気の制御および遮断用のバルブアセンブリ63、64、65のすぐ近くの位置であって、そのバルブアセンブリの直ぐ上流の位置に配置される。HPバイパスライン52、HRHバイパスライン53、およびLPバイパスライン54は、HRSG3のエリア(特に、HRSGパイプラック)に設置してはならない。HRHバイパスライン53およびLPバイパスライン54は、復水器6に直接接続され、一般的に、蒸気タービンエリアの復水器6の近くに設置することができる。HPバイパスライン52は蒸気タービンエリアに直接設置してはならないが、可能な限り蒸気タービンエリアの近くに設置するのが妥当である。CRHライン51の逆止めバルブ66と、HPバイパスライン52のCRHライン51への下流接続部も、可能な限りHP蒸気タービン17の近くに配置される。
【0079】
検証ブロー手順の間、蒸気温度と圧力の運転条件におけるターゲットの検査と洗浄度の監視ができるようにするため、蒸気輸送配管の関連部分にターゲットインサートが設置される。特に、HRHライン49には、HRHバイパスライン53とIPの制御および遮断用のバルブアセンブリ64の少し上流において、第1のターゲットインサート67が設置されており、LP蒸気ライン41には、LPバイパスライン54とLPの制御および遮断用のバルブアセンブリ65の少し上流において、第2のターゲットインサート68が設置されている。
【0080】
ターゲットインサート67、68は、HRH蒸気ライン49及びLP蒸気ライン41のそれぞれの蒸気流の最大の蒸気条件及び力に耐えることができる鋼で構成された鏡面プレート又は高度に研磨された金属プレートを使用することが好ましい。ターゲットインサート67、68のターゲットプレートは、検証用蒸気ブロー手順の間、蒸気流によって運ばれたデブリによって衝撃を受け、ターゲット(金属又は鏡面の)プレートへの粒子の衝撃によって、蒸気流で運ばれた粒子汚染の存在を視覚的に示す。
【0081】
さらに、検証用蒸気ブローの本方法においては、HRSG3の運転配管、蒸気ライン39~51、及びバイパスライン52~54の関連部分に蒸気流量計(図示せず)を設置し、これらの部分の蒸気ブローの流量を計測することもできる。蒸気流量計(図示せず)としては、例えばベンチュリー型やノズル型などを用いることができる。次に、関連部分の洗浄力比CFRは、検証ブロー手順中に蒸気流量計から受け取った蒸気流量測定値に基づいてオンラインで計算することができる。特に、CFRの計算は、制御システム9の通常のプラント制御ソフトウェアの一部として含め、検証用蒸気ブロー手順の間に洗浄力比を検証することができる。計算されたCFR値は、必要な蒸気ブロー条件が満たされていることを監視する及び検証することができるように、検証用蒸気ブロー手順の間、適切なグラフィカルインターフェースを通じて発電所1のオペレータに提示することができる。
【0082】
運転前洗浄の方法は、蒸気ラインの蒸気ブローが実行されない部分に検査ポート/洗浄ポート(
図1には示されていない)を設けること、及び検証ブロー手順が完了した後に蒸気ブローが実行されない部分を検査及び洗浄することをさらに含むことができる。蒸気ブローが実行されない部分は、
図1(及び他の図)において太い破線で示されており、特に、HPバイパスライン52のCRHライン51に対する分岐接続部とHPの制御および遮断用のバルブアセンブリ63との間のHP蒸気ラインのブローが実行されない部分69;HRHバイパスライン53の復水器6に対する分岐接続部とIPの制御および遮断用のバルブアセンブリ64との間のHRHラインのブローが実行されない部分70;HPバイパスライン52のCRHライン51に対する下流接続部とHP蒸気タービン17の出口部における逆止めバルブ66との間のCRHラインのブローが実行されない部分71;及びLPバイパスライン54の復水器6に対する分岐接続部とLPの制御および遮断用のバルブアセンブリ65との間のLP蒸気ラインのブローが実行されない部分72、を含む。
【0083】
蒸気ブローが実行されない部分69~72の検査ポート/洗浄ポートは、検査と洗浄を容易に実行できるように適切な位置に設けられている。検査は、ボアスコープ又はカメラを装備したロボットを使用して実行することができ、重要な部分に残った汚染物質は、すすぎ又は他の適切な手段によって除去することができる。他の配管部分に容易にアクセスできるようにするための他の点検ポート/洗浄ポートを設けて、デッドレグやドレンポートなどの点検および洗浄をすることができる。
【0084】
複合サイクル発電所1の一部の他の実施形態では、運転前洗浄の方法を効率的に実行するために、HPバイパスライン52、HRHバイパスライン53、及びLPバイパスライン54の複数の分岐接続部のうちの少なくとも一部の分岐接続部は、それぞれのバイパスライン52、53、又は54に対して直線的であるが、それぞれの蒸気タービン17、18、又は19に対しては直線的ではないT接続部(図示せず)で実現することができる。このような構成によって、それぞれの蒸気タービン17、18、又は19の上流側のデッドレグにおけるデブリの蓄積を減少させることができ、重要な流路を検査し、流路の汚れを洗浄するための時間を節約することができる。検査及び洗浄ポートは、場合によっては不要となり、省略することができる。この選択肢は、好ましくは、蒸気遮断バルブが無い構成又は蒸気隔離弁の上流の部分が無い構成に適用され、検査フランジを追加する選択肢が困難であるHP蒸気の場合に特に重要である。バイパスラインに対して直線的なラインを備えることによって、有利なことに、プラントを長期的に運転している間における蒸気タービンバルブの浸食を抑制できることがわかった。
【0085】
ここで
図2を参照すると、マルチユニット構成を含む複合サイクル発電所1’の概略図が示されている。
図2に示す例示的な実施形態では、発電所1’は、単一の蒸気タービンシステム4と、第1のHRSG3a及び第1のガスタービンエンジン2aを含む第1のユニット73と、第2のHRSG3b及び第2のガスタービンエンジン2bを含む第2のユニット74とを含んでいる。第1のユニット73の関連する構成要素は、
図1の対応する参照符号を用いて、「a」を追加して示されており、第2のユニット74の対応する構成要素は、「b」を追加して示されている。
【0086】
図2から分かるように、複合サイクル発電所1’の水・蒸気系統の運転前洗浄の方法は、有利なことに、第1のユニット73及び第2のユニット74の各ユニットに対して、他方のユニットとは独立して実行することができる。ここでも、蒸気ブローの蒸気ラインは
図2において太い実線で示され、蒸気ブローが実行されない部分は太い破線で示されている。蒸気ブローが実行されない部分は、バイパス分岐部から蒸気タービンバルブまで延在している。蒸気ブローが実行されない全ての部分は、化学洗浄後に、事前洗浄、検査、検証を行う必要がある。蒸気遮断バルブのすぐ上流部分は、検証用蒸気ブローの間にデブリが蓄積する恐れがあり、後洗浄が必要な場合がある(蒸気遮断バルブの下流部分に蓄積物が持ち込まれることを回避するため、検証用蒸気ブローの間、蒸気遮断バルブは閉じられているとする)。
【0087】
第1のユニット73及び第2のユニット74の検査ブロー手順は、同時に実行してもよいが、順次に(すなわち、一方のユニットの後に、他方のユニット)実行されることが好ましい。この場合も、第1のユニット73及び第2のユニット74の各ユニットの検証用蒸気ブロー操作には、一時的な配管や一時的な制御は必要ない。ガスタービンエンジン2a,2bの通常の試運転と並行して実行される復水器6の蒸気ブロー手順には、バイパスライン52a,52b,53a,53b,54a,54bを含む常設の運転蒸気ラインのみを使用することができる。
図2の復水器6は空冷式復水器であることが示されているが、水冷式復水器又は他のタイプの復水器(例えば、直接復水器(ジェット復水器))であってもよいことが理解できる。
【0088】
一部の好適な実施形態では、検証用ブロー手順は、第1のユニット73及び第2のユニット74のうちの一方のユニットに対して実行され、同時に、他方のユニットにおいて、検証用ブロー手順の後の当該他方のユニットのデッドレグ及び他の重要な流路の検査および後洗浄が実行される。一般に共通部分は含まれないので、蒸気ブロー、検査、及び後洗浄の手順は、第1のユニット73及び第2のユニット74の各ユニットに対して、独立して実行することができる。
【0089】
図2に示すマルチユニット構成の複合ドサイクル発電所1’では、第1のユニット73及び第2のユニット74は、それぞれのHPバイパスライン52a、52b、HRHバイパスライン53a、53b及びLPバイパスライン54a、54bの分岐接続部の下流にあるLP蒸気ライン41a、41b、HRHライン49a、49b及びHP蒸気ライン47a、47bをそれぞれ一緒に接続する連絡ライン76を通じて、互いに流体的に結合されている。連絡ライン76は、検証用蒸気ブロー手順には含まれない。検証用蒸気ブロー手順の間、連絡ライン76を遮断するために、バイパスライン52a、52b、53a、53b、54a、54bのそれぞれの分岐接続部のわずかに下流側に遮断バルブ77a、77bが組み込まれており、これにより、蒸気ブローがバイパスライン52a、52b、53a、53b、54a、54bを経由して復水器6に送られ、検証用蒸気ブロー中にこれらの結合/共通ラインが汚染される恐れを防ぐことができる。化学洗浄の後、検証用蒸気ブローの前に、遮断バルブ77aおよび77bの下流に位置する配管区間(連絡ライン76を含み、蒸気タービン17、18、19まで)は、高圧水噴射され、完全に(100%)検査され、検証される。
【0090】
2つのユニット73,74及び連絡ライン76を設けることを除けば、発電所1’の構成(特に、蒸気タービンシステム4及び各ユニット73,74の構成)は、
図1の実施形態における発電所1(特に、蒸気タービンシステム4、及びガスタービンエンジン2及びHRSG3の組合せ)の構成に対応している。これらのユニットの運転と、特に、複合サイクル発電所1、1’における水・蒸気系統の運転前洗浄の方法も、実質的に互いに対応しており、上記の構成及び運転前洗浄方法並びにそれらに関連する技術的効果及び利点は、
図2の実施形態にも同様に適用される。
【0091】
ここで
図3を参照すると、
図2の発電所1’の実施形態の修正の概略が示されている。
図1の実施形態の記載と組み合わせた
図2の実施形態の記載全体は、以下に述べる相違点を除いて、
図3の実施形態にも適用されるものとする。
図2及び
図3の実施形態における同じ構成要素は、同じ参照番号で示されている。
【0092】
図3の実施形態が
図2の実施形態と本質的に異なるのは、一時的なジャンパ78が、HP蒸気タービン17のHPの制御および遮断のバルブアセンブリ63から、第1のユニット73及び第2のユニット74のCRHライン51a,51bの分岐接続部の上流側の共通CRHライン81上の逆止めバルブ79まで設置されている点である。一時的なジャンパ78により、HPバイパスライン52a、52bを使用することなく、又はHPバイパスライン52a、52bの使用を少なくして、検証用蒸気フロー手順における蒸気流を、HP蒸気ライン47a、47bから一時的なジャンパ78を経由してCRHライン51a、51bに直接送ることができる。この実施形態は、HPバイパスバルブ55a、55bがHPラインに十分なCFRを到達させることができない場合、又はHP蒸気ライン47a、47b及びCRHライン51a、51bの蒸気フローが実行されない区間の範囲を少なくする用途において有利である。HRHバイパスバルブ56a、56bは、HP蒸気ライン及びHRH蒸気ラインで適切なCFRを達成できるようなサイズに作られている。
【0093】
CRHライン81、51a、51bを過加熱せず、CRHラインを流れる蒸気の温度を制御するために、最大蒸気ブロー条件下で、HP蒸気が共通CRH管81に流入する前にHP蒸気を温度調整できるように、HP蒸気ターミナル温度調整器(図示せず)を設計し配置することができる。HPターミナル温度調整器が利用できない場合は、検証用ブローの間に、一時的な温度調整器を接続できるように、HP蒸気配管に専用のポートを設ける計画を立てることができる。上記で説明された他の全ての態様は引き続き適用可能である。
【0094】
図4及び
図5は、
図2の複合サイクル発電所1’の実施形態を、変更した概略的なプロセスフローで示す。一般に、
図4及び
図5に示す発電所の構成は、
図2に示す発電所1’の構成に対応する。
図4および
図5において、
図2と同じ構成要素には同じ参照符号が割り当てられており、一般的に、
図2の実施形態の上記の説明は、
図4および
図5に示す実施形態にも同様に適用される。このプラント構成では、HRSG3a及び3bのうちの一方のHRSGのみを加熱して蒸気を発生させ、他方のHRSGは待機状態とする。
【0095】
図4と
図5の実施形態では、バイパスバルブ(特に、第1のユニット73および第2のユニット74のHPバイパスバルブ55a、55b)のサイズが大きすぎないように、検証用蒸気ブロー手順の一部のみがわずかに変更されている。このため、第1のユニット73及び第2のユニット74のうちの一方のユニットで検証用蒸気ブロー手順が実行されている間、他方のユニット74又は73では、少なくとも1つのバイパスラインとバイパスバルブを使用して、検証蒸気流の少なくとも一部を送り、これにより、バイパスバルブにおける蒸気の体積流量を低減することができる。検証用蒸気の流れは、
図4および
図5において、太い実線で示されている。
【0096】
図4に示すシナリオでは、検証用蒸気は、第1のユニット73に供給され、HRSG3aからHP過熱器29aを経由してHPバイパスライン52aの分岐接続部に流れ、検証用蒸気流は2つの部分に分割される。検証蒸気流の第1部分は、HPバイパスライン52a及びHPバイパスバルブ55aを経由し、更にCRHライン51aを経由して再熱器24aに導かれる。検証蒸気流の第2の部分は、複数の連絡ライン76のうちの、2つのユニット73、74のHP蒸気ライン47a、47bを接続する連絡ライン76aを経由して、第2のユニット74のHPバイパスライン52bに流れる。その後、検証蒸気流の第2の部分は、HPバイパスライン52b及びHPバイパスバルブ55b、CRHライン51b、及び連絡ライン76の他の共通の連絡ライン76bを通って第1のユニット73のCRHライン51aに戻り、検証蒸気流の第1の部分と混合して第1のユニット73の再加熱器24aに供給される。このような検証蒸気流を流すことができるようにするためには、HP-蒸気ライン47a、共通の連絡ライン76a、CRHライン51a、51b、及び共通の連絡ライン76bの全ての制御バルブ及び遮断バルブは開いている必要がある。結合された検証用蒸気流は、その後、再熱器24aから、第1のユニット73のHRHライン49a及びHRHバイパスライン53aを経由して復水器6に直接排出される。
【0097】
同様に、検証用蒸気流の手順中に第2のユニット74に適用されるHP蒸気流は、HP蒸気流が分割され、両ユニット73、74の両方のHPバイパスライン52a、52b、CRHライン51a、51b、及び共通の連絡ライン76a、76bを流れ、その後再結合され、第2のユニット74の再熱器24b及びHRHバイパスライン53bを通って復水器6に直接供給されるように制御することができる。
【0098】
図4に示す例では、検証用蒸気ブロー手順は、第1のユニット73と第2のユニット74の間で独立して実行されないが、HPバイパスライン52a、52b及びHPバイパスバルブ55a、55bの要件を緩和することができる。
【0099】
図5に示す修正されたプロセスフローでは、第1のユニット73のHRSG3aからのHP蒸気は、HP蒸気ライン47aを流れ、HPバイパスライン52a及びHPバイパスバルブ55aを流れて、再熱器24aに送られる。次に、検証蒸気流の第1の部分は、再熱器24aから第1のユニット73のHRHライン49a、HRHバイパスライン53a、HRHバイパスバルブ56aを流れて、復水器6に直接供給される。検証蒸気流の第2の部分は、再熱器24aの下流のHRHライン49aで分岐され、連絡ライン76の共通の連絡ライン76cを流れて、第2のユニット74のHRHライン49bに送られる。その後、検証蒸気流の第2の部分は、HRHバイパスライン53b及びHRHバイパスバルブ56bを経由して、復水器6に直接送ることができる。したがって、検証蒸気流を分割して、第1及び第2のユニット73、74の両方のHRHバイパスライン及びバイパスバルブを流れるようにすることができ、それにより、必要なCFRを達成するためにHRHバイパスライン及びHRHバイパスバルブに課されるサイズの要件を緩和することができる。
【0100】
本発明による複合サイクル発電所の水・蒸気系統の運転前洗浄の方法及び対応する複合サイクル発電所の技術的効果及び利点は、少なくとも以下のものが含まれる。発電所は、一時的な制御を行うことなく、通常の構成どおりに始動させることができ、簡単な始動シーケンスが提供される。発電所は、最初の発電所試運転の間、ガスタービンエンジンの全負荷(ベースロード)で運転されるため、高熱サイクル及び高温で効率的な洗浄を実現することができる。高負荷での復水器洗浄と閉ループ回路運転により、高速で蒸気品質を達成することができる。一般的に、検証用蒸気ブロー手順を実行するのに、一時的な配管および一時的な制御は必要ない。着火時間を短縮し、天然ガス又はその他の燃料ガスの消費量を抑制することができる。脱塩水の消費を抑制することもできる。通常のガスタービンと発電機の試運転は、検証ブローと並行して実施することができ、再設定のためのシャットダウンの回数を少なくすることができる。重要な経路の残りの検査と洗浄に必要な時間は最小限ですむ。発電所は通常運転しているため、安全上の懸念はなく、騒音や視覚公害もない。蒸気ブローが最低環境負荷以上で行われるため、ガスタービン排気ガスの排出量を削減できる。選択式触媒還元(SCR)触媒は、検査および最終洗浄のための蒸気ブロー停止中において、検証用蒸気ブローの直後に設置できる。この理由は、ガスタービンエンジンが既にベース負荷で運転されており、それが触媒に対してガスタービンエンジンおよびHRSGエアダクトからのグリースや塵埃による被毒を最大限に防ぎ、ホットコミッショニング中に更に停止する必要性をなくすからである。複合サイクル発電所のマルチユニット構成において、検証用蒸気ブロー手順は各ユニットに対して独立に実施できる。あるいは、両方のユニットにおける検証用蒸気ブロー手順は、組み合わせて実施したり、および/または、使用されるバイパスバルブの要件を緩和するために短い一時的なジャンパーを用いて実施したりすることができる。
【符号の説明】
【0101】
1、1’ 複合サイクル発電所
2 ガスタービンエンジン
【外国語明細書】