(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010625
(43)【公開日】2025-01-22
(54)【発明の名称】再生スチレン系樹脂組成物、及びその成形体、並びにカートリッジ
(51)【国際特許分類】
C08L 25/04 20060101AFI20250115BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20250115BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C08L25/04
C08L21/00
C08L51/04
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024189368
(22)【出願日】2024-10-28
(62)【分割の表示】P 2024520827の分割
【原出願日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2022164283
(32)【優先日】2022-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500199479
【氏名又は名称】PSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】北山 雅博
(57)【要約】
【課題】本開示が解決する課題は、環境負荷を低減して、機械強度及び耐薬品性の低下を抑制し、かつ優れた外観及び耐熱クリープ特性を示す再生スチレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形品を提供することである。
【解決手段】本開示は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、ドメイン相を構成するゴム状重合体粒子(b2)及びポリマーマトリックス相を構成するポリスチレン系樹脂(b1)を含有するゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)と、を含有する再生スチレン系樹脂組成物であって、
前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して0超~10質量%である、再生スチレン系樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、ドメイン相を構成するゴム状重合体粒子(b2)及びポリマーマトリックス相を構成するポリスチレン系樹脂(b1)を含有するゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)と、を含有する再生スチレン系樹脂組成物であって、
前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して0超~10質量%である、再生スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)、及び前記ポリスチレン系樹脂(b1)を含むポリマー成分55~97.9質量%未満と、
前記ゴム状重合体粒子(b2)を含むゴム成分2.1~35質量%と、
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)を四酸化オスミウム処理した後の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)0超~10質量%と、
を含む、請求項1に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
ゴム状重合体粒子を含有しないスチレン系樹脂(C)をさらに含有する、請求項1又は2に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
重量平均分子量(Mw)が10万~35万の範囲である、請求項1又は2に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記再生スチレン系樹脂組成物中の全ゴム状重合体粒子の平均粒子径は、1.6~3.2μmの範囲である、請求項1又は2に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記再生スチレン系樹脂組成物中の全ゴム状重合体粒子は、共役ジエン系単量体単位を含有し、かつ前記共役ジエン系単量体単位の含有量は、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して2~15質量%である、請求項1又は2に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【請求項7】
酸化防止剤、顔料、難燃剤、添加剤、鉱物油、植物油及び滑剤からなる群から選択される1種又は2種以上含有する、請求項1又は2に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【請求項8】
前記再生スチレン系樹脂組成物中の全ゴム状重合体粒子の含有量が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して2.1~35質量%である、請求項1に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【請求項9】
四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、ドメイン相を構成するゴム状重合体粒子(b2)及びポリマーマトリックス相を構成するポリスチレン系樹脂(b1)を含有するゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)とを準備する工程(I)と、
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)及び前記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)を溶融混錬する工程(II)と、を有する、請求項1又は2に記載の再生スチレン系樹脂組成物を製造する、再生スチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の再生スチレン系樹脂組成物を成形してなる成形体。
【請求項11】
電子写真方式によって記録媒体に多色又は単色の画像を形成する画像形成装置に着脱されるカートリッジであって、
カートリッジ本体、感光体ドラム及び前記感光体ドラムの表面を帯電する帯電手段を有し、
前記カートリッジ本体は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、ドメイン相を構成するゴム状重合体粒子(b2)及びポリマーマトリックス相を構成するポリスチレン系樹脂(b1)を含有するゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)と、を含む再生スチレン系樹脂組成物を含有し、かつ前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して0超~10質量%である、カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、再生スチレン系樹脂組成物、及び該再生スチレン系樹脂組成物を用いて成形される成形体、並びにカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン等のスチレン系樹脂は、無味無臭、食品用途に適しているだけでなく、完全燃焼によって発生する成分は炭酸ガス及び水蒸気であるため、環境負荷が少ない材料として知られている。特に、スチレン系樹脂の成形工場等の生産工程で発生するインナーロス等の廃スチレン系樹脂は品質及び組成が明確であるため、リサイクル容易な材料である。
しかし、市場から回収された廃スチレン系樹脂は、当該廃スチレン系樹脂以外の種々の樹脂若しくは金属粉、付着物又は異物を多く含んでいるため、廃スチレン系樹脂を単にリサイクルした成形品は、新品のスチレン系樹脂を用いた成形品と同等の機械的性質を維持し難いのが実情である。例えば、TVの筐体、冷蔵庫内の仕切り棚あるいは複合機のカートリッジ等に使用される部材にはスチレン系樹脂が多く含んでいるため、これらの部材のマテリアルリサイクル技術が要求されている。
特許文献1には、使用済みスチレン系樹脂とゼオライトとを含有する再生スチレン系樹脂組成物により、成形時の金型へのヤニ付着、経時的な黄変の原因である樹脂用添加剤のジブチルヒドロキシトルエン分子あるいはジブチルヒドロキシトルエン二量体を前記ゼオライトに吸着させることによって外観意匠性の低下を抑制する技術が開示されている。また、特許文献2には、未使用のポリスチレン樹脂と同等の良好な剛性、衝撃強度、成形性及び難燃性示すポリスチレン系樹脂を提供すべく、難燃剤とゴム成分とを含むポリスチレン樹脂及びゴム成分を含まないポリスチレン樹脂を含有する使用済み樹脂廃材(C)と、スチレン系熱可塑性エラストマー(D)と、臭素系難燃剤(E)と、ポリフルオロオレフィン(F)とを含む再生ポリスチレン系樹脂の技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-007424号公報
【特許文献2】特開2018-087261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1及び2の技術では、機械強度及び難燃性については検討しているものの、耐薬品性、外観については不十分であった。
そこで、本開示が解決する課題は、環境負荷を低減して、機械強度の低下を抑制し、かつ優れた外観を示す再生スチレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形品、並びにカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記問題点に鑑みて鋭意研究を進めた結果、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)に含まれるスチレン系樹脂組成物の物性低下を引き起こす成分の含有量を四酸化オスミウム処理により定量できることを見出し、かつリサイクルポリスチレン系樹脂(A)に対して、バージン材のゴム変性ポリスチレン(以下、HIPSとも称する。)を所定量配合した組成物において、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を所定量に制御することにより、機械強度の低下を抑制し、かつ優れた外観を示す再生スチレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形品、カートリッジの実現に成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本開示は以下の通りである。
【0006】
[1]本開示は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、ドメイン相を構成するゴム状重合体粒子(b2)及びポリマーマトリックス相を構成するポリスチレン系樹脂(b1)を含有するゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)と、を含有する再生スチレン系樹脂組成物であって、
前記再生スチレン系樹脂組成物の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して0超~10質量%である、再生スチレン系樹脂組成物である。
[2]本開示は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)並びにゴム状重合体粒子(b2)及びポリスチレン系樹脂(b1)を含有し、
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)及び前記ポリスチレン系樹脂(b1)を含むポリマー成分55~97.9質量%未満と、
前記ゴム状重合体粒子(b2)を含むゴム成分2.1~35質量%と、
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)を四酸化オスミウム処理した後の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)0超~10質量%と、
を含む、再生スチレン系樹脂組成物である。
[3]前記再生スチレン系樹脂組成物をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解分散させた組成物分散液中の分散質が以下の式(1):
[数1]
0<(|d84%-d16%|)/2<2 (1)
(上記式中、d84%は、レーザー回折法により測定した前記分散質の粒子径の積分分布曲線における積算値84%径を表し、d16%は、レーザー回折法により測定した前記分散質の粒子径の積分分布曲線における積算値16%径を表す。)
を満たす、[1]に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【0007】
[4]スチレン系樹脂(C)をさらに含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【0008】
[5]前記ポリマー成分の重量平均分子量(Mw)が10万~35万の範囲である、[2]~[4]のいずれか1項に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【0009】
[6]前記再生スチレン系樹脂組成物に含まれる全ゴム状重合体粒子の平均粒子径は、1.6~3.2μmの範囲である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【0010】
[7]前記再生スチレン系樹脂組成物に含まれる全ゴム状重合体粒子は共役ジエン系単量体単位を含有し、かつ前記共役ジエン系単量体単位の含有量は、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して2~15質量%である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【0011】
[8]酸化防止剤、顔料、難燃剤、添加剤、鉱物油、植物油及び滑剤からなる群から選択される1種又は2種以上含有する、[1]~[7]のいずれか1項に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【0012】
[9]前記全ゴム状重合体粒子の含有量が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して2.1~35質量%である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
【0013】
[10]四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、ドメイン相を構成するゴム状重合体粒子(b2)及びポリマーマトリックス相を構成するポリスチレン系樹脂(b1)を含有するゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)とを準備する工程(I)と、
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)及び前記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)を溶融混錬する工程(II)と、を有する、[1]~[9]のいずれか1項に記載の再生スチレン系樹脂組成物を製造する、再生スチレン系樹脂組成物の製造方法。
【0014】
[11][1]~[10]のいずれか1項に記載の再生スチレン系樹脂組成物を成形してなる成形体。
【0015】
[12]電子写真方式によって記録媒体に多色又は単色の画像を形成する画像形成装置に着脱されるカートリッジであって、
カートリッジ本体、感光体ドラム及び前記感光体ドラムの表面を帯電する帯電手段を有し、
前記カートリッジ本体は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、ドメイン相を構成するゴム状重合体粒子(b2)及びポリマーマトリックス相を構成するポリスチレン系樹脂(b1)を含有するゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)と、を含む再生スチレン系樹脂組成物を含有し、かつ前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して0超~10質量%である、カートリッジ。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、機械強度及び耐薬品性の低下を抑制し、かつ優れた外観及び優れた耐熱クリープ特性を示す再生スチレン系樹脂組成物を提供することができる。
本開示によれば、機械強度及び耐薬品性の低下を抑制し、かつ優れた外観及び優れた耐熱クリープ特性を示す、再生スチレン系樹脂組成物を用いた成形品及びカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態のカートリッジの一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のカートリッジをドラムカートリッジ及びトナーカートリッジに分離した一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本開示の範囲は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0019】
[再生スチレン系樹脂組成物]
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、ドメイン相を構成するゴム状重合体粒子(b2)及びポリマーマトリックス相を構成するポリスチレン系樹脂(b1)を含有するゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)と、を含有する。そして、前記再生スチレン系樹脂組成物全体を四酸化オスミウム処理した後のトルエン不溶分が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して0超~10質量%である。
これにより、機械強度の低下を抑制し、かつ優れた外観を示す再生スチレン系樹脂組成物を提供できる。
【0020】
本開示の再生スチレン系樹脂組成物の別の態様は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)並びにポリスチレン系樹脂(b1)及びゴム状重合体粒子(b2)を含有し、
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)及び前記ポリスチレン系樹脂(b1)を含むポリマー成分が、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、55~97.9質量%未満と、
前記ゴム状重合体粒子(b2)を含むゴム成分が、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、2.1~35質量%と、
前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)の含有量が、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して0超~10質量%と、を含む再生スチレン系樹脂組成物である。
これにより、機械強度及び耐薬品性の低下を抑制し、かつ優れた外観及び耐熱クリープ特性を示す再生スチレン系樹脂組成物を提供できる。
本実施形態において、ゴム状重合体粒子(b2)及びポリスチレン系樹脂(b1)は、前記ゴム状重合体粒子(b2)をドメイン相及びポリスチレン系樹脂(b1)をポリマーマトリックス相として含有するゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)として、再生スチレン系樹脂組成物に含有されてもよい。
【0021】
前記ポリマー成分、前記ポリマーマトリックス部(a1)及び前記ポリスチレン系樹脂(b1)は、スチレン系単量体単位を必須に含有し、必要により、後述の不飽和カルボン酸系単量体単位を含有する。そして、前記ポリマー成分は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)及びポリスチレン系樹脂(b1)を含む混合物であり、前記ポリスチレン系樹脂(b1)及び前記ゴム状重合体粒子(b2)は、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)由来の材料でありうる。
当該不飽和カルボン酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体であることが好ましい。当該(メタ)アクリル酸単量体としては、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸(n-ブチル)、(メタ)アクリル酸(t-ブチル)、(メタ)アクリル酸(イソブチル)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シベンジル、(メタ)アクリル酸(n-オクチル)、(メタ)アクリル酸(2-エチルヘキシル)、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。
【0022】
また、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、ゴム状重合体粒子(a2)を含有してもよい。すなわち、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、使用済のゴム変性ポリスチレン系樹脂を含んでもよい。そのため、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)にゴム状重合体粒子(a2)を含有する場合、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)及びゴム状重合体粒子(a2)を含有する。
なお、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)にゴム状重合体粒子(a2)を含有する場合、前記ゴム成分は、ゴム状重合体粒子(a2)及びゴム状重合体粒子(b2)を含有する。
【0023】
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物に含有される成分をモルフォロジ―的に分類すると、当該再生スチレン系樹脂組成物は、ポリマー成分と、ゴム成分と、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)(=リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の混入物)と、必要により配合される添加成分とに分類できる。
そして、前記ポリマー成分として、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来のポリマーマトリックス部(a1)、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)由来のポリスチレン系樹脂(b1)及び必要により配合されるスチレン系樹脂(C)を含み、前記ゴム成分としては、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)由来のゴム状重合体粒子(b2)と、必要に配合されるリサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来のゴム状重合体粒子(a2)を含む。また、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の混入物(例えば、他の樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン樹脂)、無機物(例えば、金属粉又はシリカ)、顔料、付着物又は異物)を含む。
また別の表現では、当該再生スチレン系樹脂組成物は、スチレン系重合体(例えば、上記ポリマーマトリックス部(a1)、上記ポリスチレン系樹脂(b1)及び必要によりゴム状重合体粒子を含有しないスチレン系樹脂(C)を包含する)から構成されたポリマーマトリックス相と、当該ポリマーマトリックス相に(例えば、海島状に)分散されるゴム状重合体粒子(b2)を含むゴム成分と、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の混入物(例えば、他の樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン樹脂)、無機物(例えば、金属粉又はシリカ)、顔料、付着物又は異物)と、に分類されうる。
そのため、前記スチレン系重合体から構成された前記ポリマーマトリックス相を、本明細書では「ポリマー成分」と称する。
そして、「ゴム成分」は、ゴム状重合体粒子(b2)及び必要により含まれるゴム状重合体粒子(a2)から構成された成分と称する。
また、前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の混入物は、後述の四酸化オスミウム処理を行った後においてもトルエンに不溶であり、かつその量が、四酸化オスミウム処理後のトルエン溶解処理前後においても一定であることが確認された。一方、ポリマー成分は、トルエンに可溶である。さらには、共役ジエン系単量体単位を含有するゴム状重合体粒子(b2)及び(a2)はトルエンに不溶であるが、後述の四酸化オスミウム処理を行うと、トルエンに可溶になることが確認された。なお、前記ゴム状重合体粒子(b2)及び(a2)内に内包されるポリマー相(例えば、コアシェル構造又はサラミ構造の前記ゴム状重合体粒子中のポリマー相)及び前記ゴム状重合体粒子の表面におけるスチレン系単量体を有するグラフトポリマー鎖(スチレン系重合体)の合計を、本明細書では「オクルード成分」とする。そして、本明細書では便宜上、「ポリマー成分」は、上記のスチレン系重合体から構成され、かつ四酸化オスミウム処理を行う前の再生スチレン系樹脂組成物中のトルエンに可溶な成分とする。一方、「オクルード成分」は、前記スチレン系重合体から構成され、かつ四酸化オスミウム処理を行う前の再生スチレン系樹脂組成物中のトルエンに不溶な成分から、前記トルエンに不溶な成分に対して四酸化オスミウム処理を行った後のトルエン不溶分(=四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1))の量及びゴム状重合体の量の合計量を引いた成分とする。また、本明細書における「四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)」とは、再生スチレン系樹脂組成物又はリサイクルポリスチレン系樹脂(A)をトルエン溶解処理して、トルエンに可溶な成分と、トルエンに不溶な成分とに分けた後、前記トルエンに不溶な成分に対して四酸化オスミウム処理を行って炭素-炭素二重結合を切断し、かつさらにトルエン溶解処理して、四酸化オスミウム処理後のトルエンに可溶な成分と、四酸化オスミウム処理後のトルエンに不溶な成分とに分けたうち、前記四酸化オスミウム処理後のトルエンに不溶な成分を「四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)」と称する。明細書では説明の便宜上、四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分(2)と区別するため、両者に番号を附している。
そして、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の混入物の大きさが所定の粒度分布を示すと、割れの起点になりにくいことを見出し、後述の式(1)の関係式を規定した。
【0024】
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物において、ゴム成分の含有量の上限は、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、35質量%以下、35質量%未満、30質量%以下、29質量%以下、28.7質量%以下、28.4質量%以下、28.1質量%以下、27.8質量%以下、27.4質量%以下、26質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、5質量%以下、4.9質量%以下、4.8質量%以下、4.7質量%以下、4.6質量%以下であることが好ましい。一方、ゴム成分の含有量の下限は、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、2.1質量%以上、2.7質量%以上、3.1質量%以上、3.7質量%以上、4質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、9.3質量%以上、9.5質量%以上又は10質量%以上であることが好ましい。
上記上限の値及び上記下限の値は適宜組み合わせることができる。
ゴム成分の含有量が上記範囲であると、耐熱クリープ特性及び耐薬品性の向上効果を奏する。なお、ゴム成分の含有量は、後述に説明する通り、四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分(2)から四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を引いた値として算出する。
【0025】
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物において、ポリマー成分の含有量の下限は、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、64質量%以上、64質量%超、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、又は80質量%以上である。一方、ポリマー成分の含有量の上限は、再生スチレン系樹脂組成物全体に対して、97.9質量%未満、97.5質量%以下、97質量%以下、96質量%以下、95質量%以下、95質量%未満、94.8質量%以下、94質量%以下、93質量%以下、92質量%以下、91質量%以下、90質量%以下、又は90質量%未満である。
上記上限の値及び上記下限の値は適宜組み合わせることができる。
なお、ポリマー成分の含有量は、再生スチレン系樹脂組成物の全体量より四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分(2)を差し引くことにより算出する。
また、前記ポリマー成分は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)及びポリスチレン系樹脂(b1)以外、スチレン系樹脂(C)をさらに含有してもよい。
本実施形態のポリマー成分において、ポリマー成分全体に対して、スチレン系単量体単位は50~100質量%、(メタ)アクリル酸単量体単位は0~20質量%、及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は0~50質量%であることが好ましく、スチレン系単量体単位は55~100質量%、(メタ)アクリル酸単量体単位は0~15質量%、及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は0~45質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、ポリマー成分全体の重量平均分子量(Mw)は、10万~35万であることが好ましく、より好ましくは10万~30万、更に好ましくは11万~28万、よりさらに好ましくは11.5万~25万、特に好ましくは12万~23万である。重量平均分子量が10万~35万である場合、衝撃強度と流動性とのバランスの実用性に優れる樹脂が得られる。
重量平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定できる。
【0026】
本明細書における「リサイクルポリスチレン系樹脂(A)」は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有し、かつ前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)の含有量は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)全体に対して10質量%以下、好ましくは0超~5質量%、更に好ましくは0超~3質量%でありうる。また、別の態様では、トルエン不溶分(1)の含有量は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)全体に対して、好ましくは0.1~6質量%、特に好ましくは1~6質量%である。
本明細書における「ポリスチレン系樹脂(b1)」は、四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分(2)及び四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を実質的には含有しておらず、ポリスチレン系樹脂(b1)の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)の含有量は、ポリスチレン系樹脂(b1)全体に対して0.01質量%未満、実質的には、検出限界以下でありうる。
本明細書における「スチレン系樹脂(C)」は、四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分(2)及び四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を実質的には含有しておらず、スチレン系樹脂(C)の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)の含有量は、スチレン系樹脂(C)全体に対して0.01質量%未満、実質的には、検出限界以下でありうる。
【0027】
本実施形態の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含むリサイクルポリスチレン系樹脂(A)の含有量の上限は特に限定されるものではないが、再生スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、99質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下が好ましい。
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)の含有量が70質量%以下であると、より優れた耐衝撃性を発揮できる。
一方、本実施形態の四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分(1)を含むリサイクルポリスチレン系樹脂(A)の含有量の下限は、再生スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、1質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上が好ましい。
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)の含有量が30質量%以上であると、より優れた環境負荷低減を発揮できる。前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)の含有量の上限及び下限はそれぞれ任意に組み合わせできる。
【0028】
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の含有量の上限は、再生スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、99質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下が好ましい。
ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の含有量が70質量%以下であると、より優れた環境負荷低減を発揮できる。
一方、本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の含有量の下限は、再生スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、1質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上が好ましい。
ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の含有量が30質量%以上であると、より優れた耐衝撃性を発揮できる。また、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の含有量の上限及び下限はそれぞれ任意に組み合わせできる。
本実施形態のゴム状重合体粒子(b2)の含有量の上限は、再生スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、35質量%以下、33質量%以下、30質量%以下、28質量%以下、26質量%以下、25質量%以下、24質量%以下が好ましい。
本実施形態のゴム状重合体粒子(b2)の含有量の下限は、再生スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、2.1質量%以上、2.5質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、9質量%以上、11質量%以上が好ましい。なお、ゴム状重合体粒子(b2)の含有量は、後述のトルエン不溶分として算出する。
【0029】
(ゴム成分の好ましい形態)
本実施形態のゴム成分の平均粒子径又は再生スチレン系樹脂組成物中に含まれる全ゴム状重合体粒子の平均粒子径は、耐衝撃性及び耐薬品性向上の観点から、1.6~3.2μmであることが好ましく、更に好ましくは1.7~2.8μmである。
また、ゴム成分又は再生スチレン系樹脂組成物中に含まれる全ゴム状重合体粒子の平均粒子径は、後述するゴム状重合体粒子(b2)の平均粒子径の方法により測定することができる。
当該全ゴム状重合体粒子の平均粒子径としては、ゴム状重合体粒子(b2)及び任意成分であるゴム状重合体粒子(a2)の合計の粒子の平均粒子径を表す。上記ゴム状重合体粒子の平均粒子径・含有量であると耐衝撃性と剛性とのバランスよく向上する。
【0030】
(トルエン不溶分)
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物において、「トルエン不溶分」とは、再生スチレン系樹脂組成物あるいはリサイクルポリスチレン系樹脂(A)等の対象物1gをトルエン20mlに加えて23℃で2時間振とうした後、当該トルエンに未溶解の成分をいう。
そして、「四酸化オスミウム処理前の再生スチレン系樹脂組成物あるいはリサイクルポリスチレン系樹脂(A)」とは、四酸化オスミウム処理を行っていない再生スチレン系樹脂組成物あるいはリサイクルポリスチレン系樹脂(A)をいう。したがって、四酸化オスミウム処理前の再生スチレン系樹脂組成物あるいは当該リサイクルポリスチレン系樹脂(A)中に存在するトルエン不溶分には、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)に含有されるゴム状重合体粒子(b2)、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の成分(前記ゴム状重合体粒子(b2)以外のゴム(例えば、ゴム状重合体粒子(a2))、金属、他の樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン樹脂)、顔料、付着物又は異物)等が含まれている。
一方、「四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)」とは、四酸化オスミウム処理前のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)に対して、四酸化オスミウム処理した四酸化オスミウム処理済のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)に残存するトルエン不溶分を含むリサイクルポリスチレン系樹脂(A)をいう。
そして、四酸化オスミウム処理後の再生スチレン系樹脂組成物あるいは四酸化オスミウム処理後のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)におけるトルエン不溶分には、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の成分(他の樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン樹脂)、無機物(例えば、金属粉又はシリカ)、顔料、付着物又は異物)が含まれている。
後述の参考例に示すように、未使用のスチレン系単量体単位を含むスチレン系バージン材(例えば、未使用の樹脂であるスチレン系樹脂(C)及びゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)など)を四酸化オスミウム処理した後、トルエン不溶分の量を測定すると、当該バージン材には実質的にトルエン不溶分が含まれていないことが確認された。したがって、スチレン系バージン材を四酸化オスミウム処理した四酸化オスミウム処理後のスチレン系バージン材に含まれるトルエン不溶分の含有量は、組成物あるいはスチレン系バージン材全体に対して、0.01質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以下であることがより好ましく、0.0001質量%以下、検出下限以下であることがさらに好ましい。
【0031】
本実施形態において、再生スチレン系樹脂組成物又はリサイクルポリスチレン系樹脂(A)のトルエン不溶分の量の測定方法は、以下の通りである。沈殿管に測定対象の再生スチレン系樹脂組成物又はリサイクルポリスチレン系樹脂(A)1gを精秤し、トルエン20mLを加え23℃で2時間振とう後、遠心分離機(佐久間製作所社製、SS-2050A ローター:6B-N6L)にて温度4℃、回転数20000rpm、遠心加速度45100×Gで60分間遠心分離した。沈澱管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除いた。トルエンを含んだ不溶分の質量を精秤し、この質量をW1とする。引き続き、160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケータ内で室温まで冷却後、トルエン不溶分の質量を精秤し、この質量をW2とする。そして、沈殿管内からトルエン不溶分を回収した
下記式により、トルエン不溶分の膨潤指数を求めた。トルエン不溶分の膨潤指数=(W1/W2)
【0032】
(四酸化オスミウム処理)
本実施形態における四酸化オスミウム処理は、アルケン基等の炭素-炭素不飽和結合に対して二つのヒドロキシ基がシン付加する四酸化オスミウムによる酸化反応を利用した化学処理をいう。また、触媒量の四酸化オスミウム及び酸化剤をアルケン基等の炭素-炭素不飽和結合を有する化合物(例えば、ゴム成分やトルエン不溶分)に加えて、ジオールへと変換した後、四酸化オスミウムとあわせて添加しうる過酸化物によりアルケン基等の炭素-炭素不飽和結合を切断することができる。そのため、再生スチレン系樹脂組成物あるいはリサイクルポリスチレン系樹脂(A)に対して四酸化オスミウム処理を行うと、当該再生スチレン系樹脂組成物あるいはリサイクルポリスチレン系樹脂(A)に含まれるゴム成分(共役ジエン構造)が溶媒(例えば、トルエン)に対して可溶化し、再生スチレン系樹脂組成物あるいはリサイクルポリスチレン系樹脂(A)に含まれるリサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の混入物(他の樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン樹脂)、無機物(例えば、金属粉又はシリカ)、顔料、付着物又は異物)が残留することが確認された。
以上のことから、本明細書では、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)を再利用のため回収した際に混入されているリサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の混入物を、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)として規定している。
本実施形態における四酸化オスミウム処理は、再生スチレン系樹脂組成物あるいはリサイクルポリスチレン系樹脂(A)に含まれるゴム成分(共役ジエン構造)がトルエンに対して可溶化する条件であれば特に制限されることはないが、例えば、以下の手順で行うことが好ましい。
本実施形態における四酸化オスミウム処理は、四酸化オスミウム分解剤を調製する工程(I)と、当該四酸化オスミウム分解剤を再生スチレン系樹脂組成物あるいはリサイクルポリスチレン系樹脂(A)のトルエン不溶分に接触させる工程(II)とを有することが好ましい。
前記工程(I)としては、酸化オスミウム(VIII)30~500mg(例えば、
100mg)と、t-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(濃度40~80質量%、例えば70質量%)50~1,400g(例えば、200g)と、低級アルコール(例えば、t-ブチルアルコール)90~1,500ml(例えば、300ml)とを混合し、四酸化オスミウム分解剤とすることが好ましい。
前記工程(II)としては、上記回収したトルエン不溶分を有機溶媒(例えば、クロロホルム)に溶解したトルエン不溶分含有溶液を調製した後、四酸化オスミウム分解剤を当該トルエン不溶分含有溶液に添加して、70~90℃(例えば、90℃の温水バス中)で10~30分(例えば、12分間)還流下において、前記四酸化オスミウム分解剤と前記トルエン不溶分とを接触させることが好ましい。
当該工程(II)により、トルエン不溶分に含まれるアルケン等の不飽和結合の分解処理を行った。
上記工程(II)の後、分解処理後の固形分及び液分を回収する回収工程(III)を設けてもよい。当該回収工程(III)の一例としては、前記四酸化オスミウム分解剤を添加したトルエン不溶分含有溶液を冷却した後、当該溶液にメタノールを撹拌しながら加えて、前記メタノール添加によるメタノール不溶分を沈殿させる沈殿工程(IV)と、そして、ガラスフィルターにより前記メタノール不溶分と液分とを分離し、前記メタノール不溶分である回収物をトルエンで繰り返し洗浄し、ガラスフィルター上に残ったものをトルエン不溶分として回収する洗浄工程(V)とを有することが好ましい。
【0033】
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物において、四酸化オスミウム処理した後の再生スチレン系樹脂組成物中に含まれるトルエン不溶分が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して0超~10質量%であり、好ましくは0.0001~5質量%、より好ましくは0.0001~3質量%、さらに好ましくは0.0001~1質量%、特に好ましくは0.0001~0.5質量%でありうる。
四酸化オスミウム処理した後の再生スチレン系樹脂組成物中に含まれるトルエン不溶分が0超~10質量%の範囲であると、衝撃の観点で好ましい。特に、四酸化オスミウム処理した後の再生スチレン系樹脂組成物中に含まれるトルエン不溶分が、0.0001~1質量%の範囲であると、外観ならびに各機械物性の観点で好ましい。
【0034】
以下、本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
(リサイクルポリスチレン系樹脂(A))
本実施形態のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、使用済のポリスチレン系樹脂であり、いわゆる廃棄されたポリスチレン系樹脂の回収物でありうる。より詳細には、当該リサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、スチレン系樹脂を含む製品の生産工程で生じる端材、スチレン系樹脂を含む製品の不良品、スチレン系樹脂を含む売れ残り品、品質保証期間を経過したスチレン系樹脂及び出荷前に廃棄されたスチレン系樹脂を回収して再利用した材料(プレコンシューマー材料)であっても、あるいは、一度市場に出荷され、消費者による使用が終了した後に回収して再利用する材料(ポストコンシューマー材料)であってもよい。
そして、本実施形態のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有する。当該リサイクルポリスチレン系樹脂(A)中の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)の含有量は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)全体に対して、好ましくは0質量%超35質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%超25質量%以下、よりさらに好ましくは0質量%超20質量%以下、さらにより好ましくは0質量%超15質量%以下、特に好ましくは0質量%超10質量%以下である。
本開示に使用可能なリサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)全体に対してスチレン系単量体単位を60質量%以上含有し、かつ四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)の含有量が、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)全体に対して0質量%超35質量%以下であるポリスチレン系樹脂であればよく特に制限されることはない。
本開示の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、ゴム状重合体(a)の粒子(=ゴム状重合体粒子(a2))を含んでいても良い。
また、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)には、使用済み家電製品等から回収されたポリスチレン系樹脂も含まれる。当該ポリスチレン系樹脂にスチレン系エラストマー等の公知の樹脂やタルク、マイカ、ワラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、クレイ、アルミナ、シリカ、硫酸カルシウム、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、セルロース、けい砂、けし石、カーボンブラック、酸化チタン、水酸化マグネシウム、アスベスト、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、水酸化カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸ソーダ、ベントナイト、黒鉛等の無機充填材を含有するものも含まれる。このようなリサイクルポリスチレン系樹脂(A)には、一般にリサイクルポリスチレン系樹脂(A)100重量部に対して、0.01~10重量部程度の無機充填材が含有されていることが多い。
本実施形態において、四酸化オスミウム処理前のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、10万~40万であることが好ましく、更に好ましくは12万~38万である。重量平均分子量が15万~35万である場合、衝撃強度と流動性とのバランスの実用性に優れる樹脂が得られる。
重量平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定できる。
本実施形態において、四酸化オスミウム処理前のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)がゴム状重合体粒子(a2)を含む場合、当該ゴム状重合体粒子(a2)の内側にスチレン系単量体より得られるスチレン単量体単位を含有する樹脂若しくはポリスチレン系重合体(ポリスチレン及び/又はポリスチレン-不飽和カルボン酸系重合体)を内包してもよく、及び/又は、当該ゴム状重合体粒子(a2)の表面にスチレン単量体単位を含有する樹脂若しくはポリスチレン系重合体がグラフトされたものであってよい。より詳細には、本実施形態におけるゴム状重合体粒子(a2)は、ゴム状重合体(a)を含有する粒子体であればよい。したがって、ゴム状重合体粒子(a2)の形態は、ゴム状重合体(a)からなる中実粒子、ゴム状重合体(a)からなる中空粒子、ゴム状重合体(a)内にポリスチレン系重合体を含む相が内包された内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)、並びに表面にポリスチレン系重合体がグラフトされた表面グラフト化粒子を含む。また、これらの形態を複合的に備えてもよい。
本実施形態のゴム状重合体(a)としては、共役ジエン構造を有していればよい。そのため、当該ゴム状重合体(a)は、共役ジエン単量体単位を有する共役ジエン系重合体であり、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等のゴム成分を使用できる。
【0035】
本実施形態の四酸化オスミウム処理前のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)中に含まれるゴム状重合体粒子(a2)の平均粒子径は、耐衝撃性の観点から、0.1~4.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.3~3.8μmである。
また、四酸化オスミウム処理前のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)中に含まれるゴム状重合体粒子(a2)の平均粒子径は、後述するゴム状重合体粒子(b2)の平均粒子径の方法により測定することができる。
なお、ゴム状重合体粒子(a2)の好ましい形態としては、下記のゴム状重合体粒子(b2)の形態を適用することができる。
【0036】
<積分分布曲線>
本実施形態において、再生スチレン系樹脂組成物をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解分散させた当該再生スチレン系樹脂組成物分散液中の分散質が以下の式(1):
[数2]
0<(|d84%-d16%|)/2<2 (1)
(上記式中、d84%は、レーザー回折法により測定した前記分散質の粒子径の積分分布曲線における積算値84%径を表し、d16%は、レーザー回折法により測定した前記分散質の粒子径の積分分布曲線における積算値16%径を表す。)を満たすことが好ましい。
これにより、環境負荷を低減し、かつ機械強度に優れた再生スチレン系樹脂組成物を提供することができる。
前記分散質は、再生スチレン系樹脂組成物中に含まれるリサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)(例えば、上記混入物)及び再生スチレン系樹脂組成物中の全ゴム状重合体粒子から構成される。そして、当該分散質が、分散質の粒子径分布を積分した積分分布曲線において、頻度(%)の積算値(以下、積算値と称する)が16%の16%径(d16%)と、頻度の積算値が84%の84%径(d84%)との差(以下、d84%-d16%と称する)の絶対値を2で割った値が、0超2未満である。これにより、優れた機械的特性を奏する。その理由の詳細は不明であるが、分散質として含まれるリサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の四酸化オスミウム処理後のトルエンに不溶な成分の粒子の大きさが、比較的小さいものが多く含まれるため、割れの起点になりにくいと考えられる。
【0037】
レーザー回折法は、球形と仮定した粒子によるレーザー光の前方回折光度の角度分布が、前記粒子の粒径の関数になることを利用する粒度測定装置に用いられている。より具体的には、測定対象物を球形と仮定した粒子を分散させた懸濁液の流路に対して、レーザー光等の単色光を投射し、そのレーザー光を横切って次々に通過する測定対象の前記粒子の回折光をレンズ系により平面波にし、回転スリットを通して前記平面波の半径方向の光強度分布を光検出器に供給し、当該光検出器の検出出力を表示して前記粒子の粒径分布を算出する方法である。
そして、当該レーザー回折法により、横軸に球相当径を表示し、縦軸に頻度(%)を表示する、数基準又は体積基準の粒子径分布が得られる。本明細書では、体積基準を採用している。
そのため、本明細書において、「粒子径分布」とは、横軸に球相当径を示し、縦軸に頻度(%)(種々の球相当径を有する、分散質(=リサイクルポリスチレン系樹脂(A)由来の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)及び再生スチレン系樹脂組成物中の全ゴム状重合体粒子)の体積分率(%))を示す場合における、前記分散質の粒子径分布をいう。
本明細書において、「積分分布曲線」とは、横軸に球相当径を示し、縦軸に前記頻度(%)の積算値を表示した場合における、分散質の球相当径を積算した曲線をいう。また、積分分布曲線は、前記粒子径分布を積分した関数である。
なお、体積分率は、粒子径の測定の際に得られた分散質を球体とみなしたときの体積の割合を示したものである。
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物において、分散質は、当該分散質の粒子径分布を積分した積分分布曲線(数基準の粒子径分布)において、頻度(%)の積算値(以下、積算値と称する)が16%の16%径(d16%)と、頻度の積算値が84%の84%径(d84%)との差の絶対値(以下、d84%-d16%と称する)の1/2が、0超2μm未満であり、好ましくは0.1μm以上1.8μm以下であり、より好ましくは0.2μm以上1.6μm以下であり、0.3μm以上1.5μm以下であることがさらに好ましい。
また、分散質は、当該分散質の粒子径分布を積分した積分分布曲線(体積基準の粒子径分布)において、頻度(%)の積算値(以下、積算値と称する)が16%の16%径(d16%)と、頻度の積算値が84%の84%径(d84%)との差の絶対値(以下、d84%-d16%と称する)の1/2が、0超2μm未満であり、好ましくは0.4μm以上1.9μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上1.8μm以下であり、0.6μm以上1.7μm以下であることがさらに好ましい。
d84%-d16%の絶対値の1/2が、0超2μm未満にコントロールする手段としては、リサイクルスチレン系樹脂(A)及びスチレン系樹脂(B)を配合(混合)した後、スクリーンメッシュを通過するメッシュによる篩をかける手段、リサイクルスチレン系樹脂(A)を粉砕機により解砕又は粉砕する手段、あるいは粉砕機により解砕又は粉砕したリサイクルスチレン系樹脂(A)を使用する手段等が挙げられる。当該粉砕機としては、例えば、ボールミル(例えば、転動ボールミル)、ローラーミル、遊星ミル、撹拌ミル等が挙げられる。
【0038】
本実施形態の分散質の積分分布曲線(数基準の粒子径分布)において、(縦軸の)積算値が84%の84%径(d84%)としては、0.5μm以上6.0μm以下が好ましく、0.6μm以上5.5μm以下がより好ましく、0.7μm以上5.0μm以下がさらに好ましい。
本実施形態の分散質の積分分布曲線(体積基準の粒子径分布)において、(縦軸の)積算値が84%の84%径(d84%)としては、1.0μm以上8.0μm以下が好ましく、1.2μm以上7.5μm以下がより好ましく、1.4μm以上7.0μm以下がさらに好ましい。
本実施形態の分散質の積分分布曲線(数基準の粒子径分布)において、(縦軸の)積算値が16%の16%径(d16%)としては、0.05μm以上4.0μm以下が好ましく、0.1μm以上3.0μm以下がより好ましく、0.2μm以上2.0μm以下がさらに好ましい。
本実施形態の分散質の積分分布曲線(体積基準の粒子径分布)において、(縦軸の)積算値が16%の16%径(d16%)としては、0.1μm以上4.0μm以下が好ましく、0.2μm以上3.5μm以下がより好ましく、0.3μm以上3.0μm以下がさらに好ましい。
【0039】
<ポリマーマトリックス部(a1)>
本実施形態のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)がゴム状重合体粒子(a2)を含む場合、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)、ポリマーマトリックス部(a1)及びゴム状重合体粒子(a2)から構成される。一方、本実施形態のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)がゴム状重合体粒子(a2)を含まない場合、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)及びポリマーマトリックス部(a1)から構成される。
本実施形態のポリマーマトリックス部(a1)は、スチレン系単量体単独重合体(=ポリスチレン)、スチレン系単量体と、不飽和カルボン酸系単量体単位からなる群から選ばれる単量体単位1種以上とを含むスチレン共重合樹脂、又はスチレン系単量体単独重合体とスチレン共重合樹脂との混合物でありうる。
前記スチレン系単量体単位を構成する単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-メチルp-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。
当該不飽和カルボン酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体であることが好ましい。当該(メタ)アクリル酸単量体としては、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸(n-ブチル)、(メタ)アクリル酸(t-ブチル)、(メタ)アクリル酸(イソブチル)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シベンジル、(メタ)アクリル酸(n-オクチル)、(メタ)アクリル酸(2-エチルヘキシル)、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。
なお、本実施形態のポリマーマトリックス部(a1)の組成は、使用するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)によって変動するが、概ね、ポリマーマトリックス部(a1)全体に対して、スチレン系単量体単位は40~100質量%、(メタ)アクリル酸単量体単位は0~25質量%、及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は0~50質量%であることが好ましい。
また、本実施形態のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分(2)を含有する。当該リサイクルポリスチレン系樹脂(A)中の四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分(2)の含有量は、上記の混入物(他の樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン樹脂)、無機物(例えば、金属粉又はシリカ)、顔料、付着物又は異物)及び必要により配合されているゴム状重合体粒子(a2)が含まれる。
四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分(2)の含有量は、使用するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)によって変動するが、概ね、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)全体に対して、好ましくは0超~35質量%であり、より好ましくは0超~30質量%であり、さらに好ましくは0超~25質量%であり、よりさらに好ましくは0超~20質量%であり、よりさらに好ましくは0超~17質量%である。別の形態としては、四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分(2)の含有量は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)全体に対して、21.3質量%以上35質量%以下であることが好ましく、22質量%以上32質量%以下であることがより好ましい。
そのため、ポリマーマトリックス部(a1)の含有量は、概ね、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)から前記四酸化オスミウム処理前のトルエン不溶分(2)を除いた値でありうる。
本実施形態において、ポリマーマトリックス部(a1)の重量平均分子量(Mw)は、10万~40万であることが好ましく、更に好ましくは12万~38万である。重量平均分子量が15万~35万である場合、衝撃強度と流動性とのバランスの実用性に優れる樹脂が得られる。
重量平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定できる。
【0040】
(ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B))
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)は、ドメイン相を構成するゴム状重合体粒子(b2)及びポリマーマトリックス相を構成するポリスチレン系樹脂(b1)を含有する。より詳細には、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)は、ポリマーマトリックス相としてのポリスチレン系樹脂(b1)中にゴム状重合体(b)の粒子(以下、ゴム状重合体粒子(b2))が分散したものであり、ゴム状重合体(b)の存在下でスチレン系単量体を重合させることにより製造することができる。また、当該ポリスチレン系樹脂(b1)としては、ポリスチレン系重合体(ポリスチレン及び/又はポリスチレン-不飽和カルボン酸系重合体等)などが挙げられる。
また、本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)としては、バージン材、すなわち未使用であることが好ましい。
【0041】
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)を構成するスチレン系単量体としては、スチレンの他に、例えば、α-メチルスチレン、α-メチルp-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。特に、スチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種若しくは2種以上使用することができる。なお、本実施形態において、ポリスチレンとは、前記スチレン系単量体を重合した単独重合体であり、一般的に入手できるものを適宜選択して用いることができる。
【0042】
本実施形態において、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)のポリマーマトリックス相を構成するポリスチレン系樹脂(b1)又はゴム状重合体粒子(b2)の一部に含まれるポリスチレン系樹脂(b1)は、上記スチレン系単量体から構成されるスチレン系単量体単位を必須に含有する重合体である。また、前記重合体は、上記スチレン系単量体と不飽和カルボン酸系単量体との共重合体であってもよい。そのため、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)のポリマーマトリックス相を構成するポリスチレン系樹脂(b1)又はゴム状重合体粒子(b2)の一部に含まれるポリスチレン系樹脂(b1)を構成する単量体は、上記スチレン系単量体以外として不飽和カルボン酸系単量体が挙げられる。当該不飽和カルボン酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体であることが好ましい。当該(メタ)アクリル酸単量体としては、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸(n-ブチル)、(メタ)アクリル酸(t-ブチル)、(メタ)アクリル酸(イソブチル)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シベンジル、(メタ)アクリル酸(n-オクチル)、(メタ)アクリル酸(2-エチルヘキシル)、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。
【0043】
上記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)のポリマーマトリックス相を構成するポリスチレン系樹脂(b1)は、ポリスチレン及びスチレン-不飽和カルボン酸共重合体からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0044】
本実施形態において、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)全体に対するスチレン系単量体単位の含有量は、37~98質量%であることが好ましく、49~96質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)全体に対する不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量は、0~63質量%であることが好ましく、0~51質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)全体に対する(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量は、0~3質量%であることが好ましく、0~1質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)全体に対する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、0~60質量%であることが好ましく、0~50質量%であることがより好ましい。
【0045】
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)に含まれるゴム状重合体粒子(b2)は、例えば、当該ゴム状重合体粒子(b2)の内側に上記のスチレン系単量体より得られるスチレン単量体単位を含有する樹脂若しくはポリスチレン系重合体を内包してもよく、及び/又は、当該ゴム状重合体粒子(b2)の表面にスチレン単量体単位を含有する樹脂若しくはポリスチレン系重合体がグラフトされたものであってよい。より詳細には、本実施形態におけるゴム状重合体粒子(b2)は、ゴム状重合体(b)を含有する粒子体であればよい。したがって、ゴム状重合体粒子(b2)の形態は、ゴム状重合体(b)からなる中実粒子、ゴム状重合体(b)からなる中空粒子、ゴム状重合体(b)内にポリスチレン系樹脂(b1)を構成する重合体を含む相が内包された内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)、並びに表面にポリスチレン系樹脂(b1)を構成する重合体がグラフトされた表面グラフト化粒子を含む。また、これらの形態を複合的に備えてもよい。
なお、本明細書における「スチレン系単量体単位」とは、スチレン系単量体が重合された高分子を構成する繰返し単位を意味し、スチレン系単量体の重合反応又は架橋反応により、当該スチレン系単量体中の炭素-炭素二重結合が単結合(-C-C-)になった繰返し単位(又は構造単位)である。また、本明細書中のその他の「単量体単位」も同様の意味である。
【0046】
本実施形態のゴム状重合体(b)としては、共役ジエン構造を有していればよい。そのため、当該ゴム状重合体(b)は、共役ジエン単量体単位を有する共役ジエン系重合体であり、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等のゴム成分を使用できる。また、当該ゴム成分には、ポリスチレン及び/又はポリスチレン-不飽和カルボン酸系重合体等のポリスチレン系樹脂(b1)を内包した形態を含んでも良い。なかでも、ゴム状重合体(b)は、ポリブタジエン又はスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、スチレン-ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体(b)は1種若しくは2種以上使用することができる。また、ブタジエン系ゴムを水素添加した飽和ゴムを使用することもできる。
本実施形態のゴム状重合体粒子(b2)を構成するゴム状重合体(b)が、共役ジエン構造を有するため、上記の四酸化オスミウム処理によりゴム状重合体粒子(b2)をトルエン等の有機溶媒に可溶化することができる。
【0047】
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の例としては、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合体)等が挙げられ、HIPS(高衝撃ポリスチレン)が特に好ましい。
ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)がHIPS系樹脂である場合、これらのゴム状重合体(b)の中で特に好ましいのは、シス1,4結合が90モル%以上で構成されるハイシスポリブタジエンである。該ハイシスポリブタジエンにおいては、ビニル1,2結合が6モル%以下で構成されることが好ましく、3モル%以下で構成されることが特に好ましい。
なお、上記ハイシスポリブタジエンの構成単位に関する異性体としてシス-1,4構造、トランス-1,4構造、又はビニル-1,2構造を有するものの含有率は、赤外分光光度計を用いて測定し、モレロ法によりデータ処理することにより算出できる。
また、上記ハイシスポリブタジエンは、公知の製造法、例えば有機アルミニウム化合物とコバルト又はニッケル化合物を含んだ触媒を用いて、1,3-ブタジエンを重合して容易に得ることができる。
本実施形態において、ゴム状重合体粒子(b2)或いはゴム状重合体(b)に用いる材料としてアクリロニトリル単量体単位などの(メタ)アクリロニトリルを含む共役ジエン系重合体を使用する場合、(メタ)アクリロニトリル単量体単位の含有量は、再生スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、0.7質量%以下であることが特に好ましい。
【0048】
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)中に含まれるゴム状重合体(b)の含有量は、当該ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)総量100質量%に対して、2~15質量%が好ましく、より好ましくは2.2~10質量%、更に好ましくは2.4~8質量%である。別の観点から、2.6~6質量%が好ましく、3~5質量%がより好ましい。ゴム状重合体(b)の含有量が2.1質量%未満であると耐衝撃性が低下する虞がある。また、ゴム状重合体(b)の含有量が15質量%を超えると光沢の低下ならびに曲げクリープ特性が低下する虞がある。
なお本開示で、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)中に含まれるゴム状重合体(b)の含有量(いわゆるポリブタジエン含量)は、熱分解ガスクロマトグラフイーを用いて算出される値である。
【0049】
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)中に含まれるゴム状重合体粒子(b2)の含有量(ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)中のトルエン不溶分)は、当該ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)総量100質量%に対して、8~35質量%が好ましい。
なお本開示で、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)中又は再生スチレン系樹脂組成物中に含まれるに含まれるゴム状重合体粒子(b2)又は全ゴム状重合体粒子の含有量は、四酸化オスミウム処理前の前記樹脂(B)あるいは前記組成物のトルエン不溶分に対応する。具体的には、以下の方法により算出している。
組成物中のゴム状重合体粒子(b2)の含有量(質量%)の測定は、沈殿管に測定対象の樹脂又は組成物1gを精秤し(この質量をWとする)、トルエン20mLを加えて23℃で2時間振とう後、遠心分離機(佐久間製作所製、SS-2050A)にて5℃以下、20000rpm(遠心加速度:4510G)で60分間遠心分離した。そして、沈殿管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除き、得られた不溶分を、引き続き160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケータ内で室温まで冷却後、トルエン不溶分の質量を精秤し(この質量をGとする)、下記式により、ゴム状重合体粒子(b2)の含有量(質量%)を求めた。
ゴム状重合体粒子(b2)の含有量=(G/W)×100
【0050】
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)中に含まれるゴム状重合体粒子(b2)の平均粒子径は、耐衝撃性の観点から、0.5~3.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.8~2.8μmである。別の観点から、0.55~3.2μmであることが好ましく、0.65~2.8μmであることがより好ましい。ゴム状重合体粒子(b2)の平均粒子径が0.5μmより小さかったり、あるいは3.0μmより大きかったりすると衝撃強度や耐薬品性が不十分となったり、光沢が低下する虞がある。
【0051】
なお本開示で、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)中に含まれるゴム状重合体粒子(b2)の平均粒子径は、以下の方法により測定することができる。
四酸化オスミウムで染色したゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)から厚さ75nmの超薄切片を作製し、電子顕微鏡を用いて倍率10000倍の写真を撮影する。当該写真中、黒く染色された粒子がゴム状重合体粒子(b2)である。写真から、下記数式(N1):
[数3]
平均粒子径=ΣniDri3 /ΣniDri2 (N1)
(上記数式(N1)中、niは、粒子径Driのゴム状重合体(a)粒子の個数であり、粒子径Driは、写真中の粒子の面積から円相当径として算出した粒子径である。)
により面積平均粒子径を算出し、ゴム状重合体粒子(b2)の平均粒子径とする。本測定は、写真を200dpiの解像度でスキャナーに取り込み、画像解析装置IP-1000(旭化成社製)の粒子解析ソフトを用いて測定する。
【0052】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の還元粘度(これは、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の分子量の指標となる)は、0.50~0.85dL/gの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.55~0.80dL/gの範囲である。0.50dL/gより小さいと衝撃強度が低下する虞があり、0.85dL/gを超えると流動性の低下により成形性が低下する虞がある。
なお本開示で、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の還元粘度は、トルエン溶液中で30℃、濃度0.5g/dLの条件で測定される値である。
本実施形態において、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)中のポリスチレン系樹脂(b1)の重量平均分子量(Mw)は、10万~35万であることが好ましく、更に好ましくは12.7万~25万である。また、別の態様では、ポリスチレン系樹脂(b1)の重量平均分子量(Mw)は、11万~23.5万、12万~22.4万、12.3万~19.3万でありうる。重量平均分子量が10万~35万である場合、衝撃強度と流動性とのバランスの実用性に優れる樹脂が得られる。
重量平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定できる。
【0053】
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の製造方法は、特に制限されるものではないが、ゴム状重合体(b)の存在下、スチレン系単量体及び任意に添加される不飽和カルボン酸系単量体(及び溶媒)を重合する塊状重合(若しくは溶液重合)、又は反応途中で懸濁重合に移行する塊状-懸濁重合、又はゴム状重合体(b)ラテックスの存在下、スチレン系単量体及び任意に添加される不飽和カルボン酸系単量体を重合する乳化グラフト重合にて製造することができる。塊状重合においては、ゴム状重合体(b)とスチレン系単量体及び任意に添加される不飽和カルボン酸系単量体、並びに必要に応じて有機溶媒、有機過酸化物、及び/又は連鎖移動剤を添加した混合溶液を、完全混合型反応器又は槽型反応器と複数の槽型反応器とを直列に連結し構成される重合装置に連続的に供給することにより製造することができる。
【0054】
本実施形態において、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の200℃でのメルトフローレートは、好ましくは0.3~10.0g/10分、より好ましくは0.5~8.0g/10分、更に好ましくは0.7~7.0g/10分である。上記メルトフローレートが0.3~10.0g/10分の範囲であれば、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)との混合性が良く、また機械的強度も良好である。本開示で、メルトフローレートは、ISO 1133に準拠して、200℃、荷重49Nにて測定される値である。
以上が本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物の必須成分である。以下、本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物の任意成分である、スチレン系樹脂(C)及び任意の添加成分について説明する。
【0055】
(スチレン系樹脂(C))
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)及びゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)以外にスチレン系樹脂(C)をさらに含有してもよい。
本実施形態のスチレン系樹脂(C)は、スチレン系単量体単位を必須に含み、必要により、スチレン系単量体と共重合可能な不飽和カルボン酸系単量体由来の単量体単位を含有してもよい。
前記スチレン系単量体としては、上記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)と同様のスチレン系単量体が挙げられるためここでは省略する。
前記不飽和カルボン酸系単量体としては、上記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)と同様のスチレン系単量体が挙げられるためここでは省略する。
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)と当該スチレン系樹脂(C)とは、前記当該スチレン系樹脂(C)は、ゴム状重合体粒子(b2)を含有しない点でゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)と異なる。換言すると、スチレン系樹脂(C)(四酸化オスミウム処理前)は、トルエン不溶分を実質的に含有しない。また、スチレン系樹脂(C)は、ポリスチレン系樹脂(b1)と同一のポリマー組成であっても、あるいは異なっていてもよい。なお、スチレン系樹脂(C)がポリスチレン系樹脂(b1)と同一のポリマー組成である場合は、再生スチレン系樹脂組成物中において両者を区別し難いが、再生スチレン系樹脂組成物におけるポリマー成分全体(ゴム成分以外の成分)としてのスチレン系単量体単位、必要により含有される不飽和カルボン酸系単量体単位の組成比を制御することにより、環境負荷の低減、機械的強度などの効果を奏する。
【0056】
[任意の添加成分]
本実施形態において、上記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)又は任意成分を製造する際の回収工程の前後の任意の段階、又は再生スチレン系樹脂組成物を押出加工、成形加工する段階において、必要に応じ本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤、例えば、流動パラフィン等の可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ヒンダートフェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、各種染料や顔料、無機結晶核剤(酸化チタン、酸化スズ等の金属酸化物)、有機結晶核剤、蛍光増白剤、光拡散剤、選択波長吸収剤を添加してもよい。
本実施形態にかかる再生スチレン系樹脂組成物は、酸化防止剤、顔料、難燃剤、添加剤、鉱物油、植物油及び滑剤からなる群から選択される1種又は2種以上含有することが好ましい。
【0057】
本実施形態の光安定剤は、自身に紫外線吸収能はないが、再生スチレン系樹脂系組成物が紫外線を吸収することで発生した光ラジカルを捕捉し、無害化することで、ラジカルによる組成物の劣化や着色を防ぐ機能を有することが好ましい。光安定剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができ、後述の紫外線吸収剤及び又は酸化防止剤を併用することで、より高い耐光性効果を発揮することができる。
本実施形態の光安定剤としては、ビス(1,2,2,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-ウンデカンオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミン、ブチル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)などが挙げられ、具体的な製品名としては、ADEKA社製アデカスタブLA-52、アデカスタブLA-57、アデカスタブLA-63P、アデカスタブLA-68、アデカスタブLA-72、アデカスタブLA-77Y、アデカスタブLA-77G、アデカスタブLA-81、城北化学社製JF-90G、JF-95、BASFジャパン社製Chimassorb2020FDL、Chimassorb944FDL、Tinuvn622SFなどが挙げられる。
【0058】
本実施形態の紫外線吸収剤は、再生スチレン系樹脂組成物が吸収する紫外線を、当該再生スチレン系樹脂組成物に代わって吸収し、熱や化学エネルギーに変換することで、スチレン系樹脂組成物の紫外線吸収による光ラジカル発生を抑制し、樹脂の劣化や着色を抑制する機能を有する。
本実施形態の好ましい紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物が好ましい。
本実施形態の好ましい酸化防止剤として、例えばオクタデシル-3-(3,5-ターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(製品名としては例えば、BASFジャパン社製Irganox1076)などのヒンダートフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4-ジ-ターシャリーブチルフェニル)フォスファイト(製品名としては例えば、BASFジャパン社製Irgafos168)などのリン系加工熱安定剤等を挙げることができる。これらの安定剤をそれぞれ単独、あるいは2種以上を組み合わせて適宜用いてもよい。添加時期については、特に制限はなく、重合工程又は脱揮工程のいずれでもよい。また、押出機やミキサー等機械的装置で製品に安定剤を混合することもできる。
【0059】
本実施形態の光安定剤、紫外線吸収剤及び酸化防止剤の各含有量としては、再生スチレン系樹脂系組成物の総量に対して、0.001~2.0質量%であり、上限値としては1.8質量%以下、1.6質量%以下、1.4質量%以下、1.2質量%以下、1.0質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下の順で好ましく、下限値としては0.005質量%以上、0.010質量%以上、0.021質量%以上、0.051質量%以上、0.061質量%以上、0.071質量%以上、0.079質量%以上、0.089質量%以上、0.12質量%以上、0.17質量%以上の順で好ましい。前記含有量としては、上記の上限値、下限値の任意の組み合わせで選ぶことができる。
【0060】
本発明に係る再生スチレン系樹脂組成物は、さらに無機結晶核剤として金属又は金属酸化物を含有してもよい。本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物において、金属酸化物(例えば、二酸化チタン)の含有量は、再生スチレン系樹脂組成物の総量100質量%に対して、0.07質量以上5.5質量%以下であることが好ましく、0.65質量%以上3.8質量%以下であることがより好ましく、1.2質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。また、別の態様としては、1.1質量%以上2.8質量%以下であることが好ましい。さらに別の態様としては、0.2質量%以上0.9質量%以下であることがさらに好ましい。
【0061】
尚、本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物中の上記各種添加剤は、再生スチレン系樹脂組成物100質量%に対して10.0質量%以下であることが好ましく、5.5質量%以下であることがより好ましく、2.9質量%以下であることがさらに好ましく、1.5質量%以下であることがよりさらに好ましく、0.9質量%以下であることが特に好ましい。
【0062】
[再生スチレン系樹脂組成物の物性]
以下に本実施形態における再生スチレン系樹脂組成物の好ましい物性について述べる。
<ビカット軟化温度>
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は88℃以上であることが好ましく、より好ましくは91℃以上、より更に好ましくは93℃以上である。当該ビカット軟化温度を88℃以上とすることにより耐熱性に優れる成形品が得られる。本明細書におけるビカット軟化温度は、ISO306に準拠して、5kg荷重、昇温速度50℃/hの条件で測定している。
【0063】
<シャルピー衝撃強さ>
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強度は、5kJ/m2以上であることが好ましく、より好ましくは7~20kJ/m2である。5kJ/m2未満であると、使用中に破損する懸念がある。尚、本開示で、シャルピー衝撃強度は、ISO 179に準拠して測定される値である。
【0064】
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物は、メルトマスフローレイトが、1.5g/10min以上であることが好ましく、2~18g/10minであることがより好ましい。メルトマスフローレイトが1.5g/10min以上であれば、押出成形時や真空成形時の成形性が良好である。上記メルトマスフローレイトは、各成分(A)~(C)のメルトマスフローレイト、並びにこれらの樹脂の混合比を調整することにより達成できる。尚、本開示で、メルトマスフローレイトは、ISO 1133に準拠して、温度200℃、5.00kgにて測定される値である。
【0065】
本実施形態において、四酸化オスミウム処理前の再生スチレン系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、上記ポリマー成分と同様であり、10万~35万であることが好ましく、より好ましくは10万~30万、更に好ましくは11万~28万、よりさらに好ましくは11.5万~25万、特に好ましくは12万~23万である。重量平均分子量が10万~35万である場合、衝撃強度と流動性とのバランスの実用性に優れる樹脂が得られる。なお、前記重量平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定できる。
【0066】
[再生スチレン系樹脂組成物の製造方法]
本実施形態において、再生スチレン系樹脂組成物の製造方法は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)、及び必要により任意成分を準備する。そして、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)及び必要により任意成分を配合、溶融、混練、造粒する方法は特に限定されず、一般的なスチレン樹脂の製造で常用されている方法を用いることができる。
例えば、ドラムタンブラー、ヘンシェルミキサー等で配合(混合)した上記各成分をバンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー等を用いて溶融、混練し、スクリーンメッシュを通過するメッシュによる篩をかける工程を行い、ロータリーカッター、ファンカッター等で造粒することによって再生スチレン系樹脂組成物を得ることができる。溶融、混練における樹脂温度は180~240℃が好ましい。目標とする樹脂温度にするためには、押出機等のシリンダー温度は樹脂温度よりも10~20℃低い温度に設定することが好ましい。樹脂温度が180℃未満では混合が不十分となり好ましくない。一方、樹脂温度が240℃を超えると樹脂の熱分解が起こり好ましくない。
【0067】
(再生スチレン系樹脂組成物の製造方法の好ましい態様)
本実施形態の好ましい製造方法は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、ドメイン相を構成するゴム状重合体粒子(b2)及びポリマーマトリックス相を構成するポリスチレン系樹脂(b1)を含有するゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)とを準備する工程(I)と、
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)及び前記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)を溶融混錬する工程(II)と、を有することが好ましい。これにより、環境負荷を低減して、機械強度の低下を抑制し、かつ優れた外観を示す再生スチレン系樹脂組成物を容易に製造しうる。
以下、上記工程(I)及び上記工程(II)について詳説する。
【0068】
<工程(I)>
工程(I)は、本開示の再生スチレン系樹脂組成物の原料である、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)及びゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)を準備する準備工程である。
したがって、当該準備工程としては、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)を準備する工程(I-A)と、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)を準備する工程(I-B)とを有することが好ましい。これにより、前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)及び/又はゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)に含まれる化合物及び特性等によって、後述の工程(II)に使用される。
また、再生スチレン系樹脂組成物の原料として、上述のゴム状重合体粒子を含有しないスチレン系樹脂(C)を使用する場合、前記準備工程は、ゴム状重合体粒子を含有しないスチレン系樹脂(C)を準備する工程(I-C)をさらに有してもよい。
【0069】
<<工程(I-A)>>
本実施形態のリサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、上記の通り、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)と、前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)とを含有する。そして、当該リサイクルポリスチレン系樹脂(A)は、ゴム状重合体粒子(a2)を含有してもよい。
したがって、前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)の態様としては、以下の(i)及び(ii)の態様が挙げられる。
(i)前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)が、ポリマーマトリックス部(a1)及び四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有し、かつ前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)の総量に対して99質量%以上が、ポリマーマトリックス部(a1)及び四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)で占められる態様(例えば、前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するポリスチレン、前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するスチレン系共重合樹脂)
(ii)前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)が、ポリマーマトリックス部(a1)、ゴム状重合体粒子(a2)及び四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有し、かつ前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)の総量に対して99質量%以上が、ポリマーマトリックス部(a1)、ゴム状重合体粒子(a2)及び四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)で占められる態様(例えば、前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するゴム変性ポリスチレン系樹脂)
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)が上記(i)の態様である場合、前記工程(I-A)は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)中に含まれる前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)の含有量、及び、ポリマーマトリックス部(a1)の重量平均分子量を特定する工程(D1)であることが好ましい。
一方、前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)が上記(ii)の態様である場合、前記工程(I-A)は、前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)中に含まれる、前記ゴム状重合体粒子(a2)の含有量及び前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)の含有量、並びに、前記ポリマーマトリックス部(a1)の重量平均分子量を特定する工程(D2)であることが好ましい。
これにより、環境負荷を低減して、機械強度の低下をより抑制し、かつより優れた外観及び優れた耐熱クリープ特性を示す再生スチレン系樹脂組成物が得られる。
この際、前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)中に含まれる、前記ゴム状重合体粒子(a2)の含有量及び前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)の含有量、並びに、前記ポリマーマトリックス部(a1)の重量平均分子量は、それぞれ上記した範囲内であることが好ましい。
【0070】
<工程(I-B)>
本実施形態のゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)を準備する工程(I-B)としては、前記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)中に含まれる、前記ゴム状重合体粒子(b2)の含有量及び前記ポリスチレン系樹脂(b1)の重量平均分子量を選定する工程(E1)を有することが好ましい。
これにより、環境負荷を低減して、機械強度の低下をより抑制し、かつより優れた外観及び優れた耐熱クリープ特性を示す再生スチレン系樹脂組成物が得られる。
この際、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)中に含まれる、ゴム状重合体粒子(b2)の含有量及び前記ポリスチレン系樹脂(b1)の重量平均分子量は、それぞれ上記した範囲内であることが好ましい。
【0071】
<工程(I-C)>
本実施形態のゴム状重合体粒子を含有しないスチレン系樹脂(C)を準備する工程(I-C)は、前記ゴム状重合体粒子を含有しないスチレン系樹脂(C)の重量平均分子量を選定する工程(E2)を有することが好ましい。
これにより、環境負荷を低減して、機械強度の低下をより抑制し、かつより優れた外観及び優れた耐熱クリープ特性を示す再生スチレン系樹脂組成物が得られる。この際、スチレン系樹脂(C)の重量平均分子量は、それぞれ上記した範囲内であることが好ましい。
【0072】
本実施形態の好ましい工程(I)は、前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)中に含まれる、前記ゴム状重合体粒子(a2)の含有量及び前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)の含有量、並びに、前記ポリマーマトリックス部(a1)の重量平均分子量を特定する工程(D2)と、前記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)中に含まれる、前記ゴム状重合体粒子(b2)の含有量及び前記ポリスチレン系樹脂(b1)の重量平均分子量を選定する工程(E1)と、前記ゴム状重合体粒子を含有しないスチレン系樹脂(C)の重量平均分子量を選定する工程(E2)と、を有する。
これにより、環境負荷を低減して、機械強度の低下をより抑制し、かつより優れた外観及び優れた耐熱クリープ特性を示す再生スチレン系樹脂組成物が得られる。
また、工程(I)は、所定の大きさ以上(例えば、最大平均粒子径200μm以上)の粒状物を除去する工程(III)を有することが好ましい。
【0073】
<工程(II)>
上記工程(II)は、上記工程(I)により準備した、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)とを用いて、前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)及び前記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)を溶融混錬する工程である。
当該溶融混錬する条件としては、例えば、ドラムタンブラー、ヘンシェルミキサー等で配合(混合)した上記各成分をバンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー等を用いて溶融混練することが好ましい。また、当該溶融混練における樹脂温度は180~240℃であることが好ましい。
なお、ここでいう溶融とは、通常は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)又はゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)の一部が溶融している状態を意味し、系内の全ての成分が溶融していることを意味するものではない。
本実施形態の工程(II)は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)と、必要により配合されるゴム状重合体粒子を含有しないスチレン系樹脂(C)との配合量を決定する工程を有することが好ましい。
具体的には、得られる再生スチレン系樹脂組成物が下記(v)~(z)を満足するように上記配合量を決定することが好ましい。
(v)リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)のポリスチレン系樹脂(b1)及びゴム状重合体粒子を含有しないスチレン系樹脂(C)を含むポリマー成分の含有量を、得られる再生スチレン系樹脂組成物の総量に対して、64~90質量%未満の範囲に制御する。
(x)前記ゴム状重合体粒子(a2)及び前記ゴム状重合体粒子(b2)を含むゴム成分の含有量を、得られる再生スチレン系樹脂組成物の総量に対して、9~30質量%未満、好ましくは10~28質量%未満の範囲に制御する。
(y)前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)の含有量を、得られる再生スチレン系樹脂組成物の総量に対して、0.1~6質量%の範囲、好ましくは1~6質量%の範囲に制御する。
(z)前記ポリマー成分全体の重量平均分子量(Mw)を10万~35万の範囲に制御する。
これにより、環境負荷を低減して、機械強度の低下をより抑制し、かつより優れた外観及び優れた耐熱クリープ特性を示す再生スチレン系樹脂組成物が得られる。
【0074】
本実施形態の工程(II)は、再生スチレン系樹脂組成物中のDMF不溶分(=前記再生スチレン系樹脂組成物をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解分散させた組成物分散液中の分散質)の粒子径分布(μm)が下記式を満たすように溶融混練条件を調整する工程(G)を有することが好ましい。
0.00<(|d84%-d16%|)/2<2.00
(d84%は粒子径の積分分布曲線における積算値84%径を表し、d16%は、粒子径の積分分布曲線における積算値16%径を表す。)
これにより、環境負荷を低減して、機械強度の低下をより抑制し、かつより優れた外観及び優れた耐熱クリープ特性を示す再生スチレン系樹脂組成物が得られる。
また、工程(II)は、所定の大きさ以上の粒状物を除去する工程(III)を有することが好ましい。
【0075】
<工程(III)>
上記工程(III)は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)中に含まれる混入物を除去する工程であり、上記工程(I)中又は上記工程(II)中、あるいは上記工程(I)の後又は上記工程(II)の後に行うことが好ましい。
これにより、環境負荷を低減して、機械強度の低下をより抑制し、かつより優れた外観及び優れた耐熱クリープ特性を示す再生スチレン系樹脂組成物が得られる。
例えば、上記工程(III)は、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)と、必要により配合されるゴム状重合体粒子を含有しないスチレン系樹脂(C)と、を配合した後、好ましくは原料を配合した後、かつ前記原料が溶融している間に、所定の大きさ未満の粒状物を分別する工程であり、換言すると、所定以上の四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を除去する工程でありうる。
同様に、例えば、上記工程(D1)又は上記工程(D2)の後、上記工程(II)の前に所定の大きさ未満の粒状物を分別する工程(III)を施してもよい。
前記工程(II)は、具体的には、フィルター及びスクリーンメッシュからなる群から選択される1又は2以上による篩をかける工程が挙げられる。例えば、溶融された原料が、フィルター及び/又はスクリーンメッシュを通過する工程でありうる。
これにより、リサイクルポリスチレン系樹脂(A)中に含まれる所定の大きさ以上の混入物を減らすことができる。また、原料の溶融は、例えば、押出機に投入して行うことができる。そして、フィルター及びスクリーンメッシュからの通過は、押出機の出口又は入口付近に、ポリマーフィルター及び/又はスクリーンメッシュを設けることによって行うことができる。
【0076】
上記フィルターとしては、溶融した原料のポリマー成分等を濾過するものであり、具体的には、リーフディスクフィルター、キャンドルフィルター又はパックフィルターが挙げられる。そして、前記フィルターの平均孔径の下限は、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、また、前記フィルターの平均孔径の上限は、好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下であることがより好ましい。
上記スクリーンメッシュは、銅メッシュ、SUS(ステンレス鋼)メッシュ等が挙げられる。前記スクリーンメッシュの目開きの下限は、好ましくは94μm以上、より好ましくは112μm以上、さらに好ましくは134μm以上、よりさらに好ましくは140μm以以上である。また、スクリーンメッシュの目開きは、好ましくは198μm以下、より好ましくは164μm以下、さらに好ましくは132μm以下、よりさらに好ましくは109μm以下であることがより好ましい。
上記上限の値及び上記下限の値は任意に組み合わせることができる。例えば、スクリーンメッシュは、80メッシュ(約198μm~140μm)、100メッシュ(約164μm~134μm)、120メッシュ(132μm~112μm)又は150メッシュ(109μm~94μm)が挙げられる。
上記フィルターの平均孔径又はスクリーンメッシュの目開きの下限を、上記の値とすることにより、過剰な樹脂圧力を生じさせないため、生産性が向上する傾向にある。同様に、上記フィルターの平均孔径又はスクリーンメッシュの目開きの上記値とすることにより、より微細な混入物を除去することができる傾向にある。
本実施形態においては、フィルター及び/又はスクリーンメッシュの通過は、いずれか一方のみを通過させてもよいし、両方を通過させてもよい。さらには、フィルターのみを複数回通過させても、あるいはスクリーンメッシュのみを複数回通過させてもよい。さらには、これらを組み合わせて通過させてもよい。
【0077】
本実施形態において、上記の製造方法を用いることにより、得られる再生スチレン系樹脂組成物は以下の特性を有しやすくなる傾向を示す。
前記再生スチレン系樹脂組成物中のDMF不溶分(=前記再生スチレン系樹脂組成物をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解分散させた組成物分散液中の分散質)の粒子径分布(μm)が下記式を満たす。
0.00<(|d84%-d16%|)/2<2.00
(d84%は粒子径の積分分布曲線における積算値84%径を表し、d16%は、粒子径の積分分布曲線における積算値16%径を表す。)
【0078】
(特に好ましい再生スチレン系樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物の製造方法は、ポリマーマトリックス部(a1)、ゴム状重合体粒子(a2)及び四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、
ポリスチレン系樹脂(b1)からなるポリマーマトリックス相及びゴム状重合体粒子(b2)からなるドメイン相を含有するゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)と、
任意成分として使用する、スチレン系樹脂(C)と、を溶融混練して、再生スチレン系樹脂組成物を得るための製造方法であって、
前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)中に含有する、前記ゴム状重合体粒子(a2)及び前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)の総量、並びに前記ポリマーマトリックス部(a1)の重量平均分子量を特定する工程(D2)と、
前記ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)における前記ゴム状重合体粒子(b2)の含有量及び前記ポリスチレン系樹脂(b1)の重量平均分子量、並びに、前記スチレン系樹脂(C)の重量平均分子量を選定する工程(E)と、を有し、
前記再生スチレン系樹脂組成物が下記(v)~(z)を満足するように、前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)及びスチレン系樹脂(C)の各成分の配合量を決定する工程(F)、を含む製造方法であり、
(v)リサイクルポリスチレン系樹脂(A)のポリマーマトリックス部(a1)、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)のポリスチレン系樹脂(b1)及びゴム状重合体粒子を含有しないスチレン系樹脂(C)を含むポリマー成分の含有量を、得られる再生スチレン系樹脂組成物の総量に対して、64~90質量%未満の範囲に制御する。
(x)前記ゴム状重合体粒子(a2)及び前記ゴム状重合体粒子(b2)を含むゴム成分の含有量を、得られる再生スチレン系樹脂組成物の総量に対して、9~30質量%未満の範囲に制御する。
(y)前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)の含有量を、得られる再生スチレン系樹脂組成物の総量に対して、1~6質量%の範囲に制御する。
(z)前記ポリマー成分全体の重量平均分子量(Mw)を10万~35万の範囲に制御する。
上記決定した配合量により溶融混練するに際し、前記再生スチレン系樹脂組成物中のDMF不溶分(=前記再生スチレン系樹脂組成物をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解分散させた組成物分散液中の分散質)の粒子径分布(μm)が下記式(1)を満たすように溶融混練条件を調整する工程(G)、を有する、再生スチレン系樹脂組成物の製造方法。
[数4]
0.00<(|d84%-d16%|)/2<2.00 (1)
(d84%は粒子径の積分分布曲線における積算値84%径を表し、d16%は、粒子径の積分分布曲線における積算値16%径を表す。)
また、前記前記リサイクルポリスチレン系樹脂(A)を、前記再生スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、30~65質量%含有することが好ましい。
これにより、環境負荷を低減して、機械強度の低下をより抑制し、かつより優れた外観及び優れた耐熱クリープ特性を示す再生スチレン系樹脂組成物が得られる。
【0079】
[成形品]
本開示に係る再生スチレン系樹脂組成物の用途としては、インジェクションブロー成形、シート体(フィルムも含む)、射出成形、又は押出成形に供されることが好ましい。
【0080】
[カートリッジ]
本開示の再生スチレン系樹脂組成物を成形してなる成形体の一例として、カートリッジについて以下説明する。
【0081】
本開示は、電子写真方式によって記録媒体に多色又は単色の画像を形成する画像形成装置に着脱されるカートリッジであって、カートリッジ本体、感光体ドラム及び前記感光体ドラムの表面を帯電する帯電手段を有し、
前記カートリッジ本体は、四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分を含有するリサイクルポリスチレン系樹脂(A)と、ドメイン相を構成するゴム状重合体粒子(b2)及びポリマーマトリックス相を構成するポリスチレン系樹脂(b1)を含有するゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)と、を含む再生スチレン系樹脂組成物を含有し、かつ前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して0超~10質量%である、カートリッジである。
機械強度及び耐薬品性の低下を抑制し、かつ優れた外観及び優れた耐熱クリープ特性を示す、再生スチレン系樹脂組成物を用いたカートリッジを提供する。
画像形成装置の本体筐体に着脱可能なドラムカートリッジなどのカートリッジが一般的に知られており、当該カートリッジは、現像容器内にトナー及びキャリアが収容されており、当該現像容器内においてトナーをキャリアとともに搬送する機構を備えている。一方で、画像形成装置の本体筐体内には、感光体ドラムに供給されたトナーをシートに転写させる転写ローラが配置されている。そのため、感光体ドラム及び転写ローラにおける発熱が生じ、カートリッジ自体又は他の部材との篏合部材(爪部など)若しくは接続部材においてクリープ変形が生じることが確認された。また、クリープ変形の量は、各部材にかかる応力と環境温度に依存するため、各部材の材質(樹脂種、金属種)によってクリープ変形量がそれぞれ異なる。その結果、感光体ドラムが安定して回転駆動し難いという新たな問題が生じる。しかし、本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物を使用することにより、耐熱クリープ特性が非常に優れたカートリッジを形成できることが確認された(後述の実施例参照)。また、クリープ変形量を低減するために、カートリッジ自体又は他の部材との篏合部材(爪部など)若しくは接続部材に金属製板金等の補強材を入れる方法も考えられるが、本実施形態の再生スチレン系樹脂組成物を使用することにより、金属製板金等の補強材を用いることなく、クリープ変形量が少ないカートリッジ、特に、感光体ドラムを有するカートリッジを提供しうる。
【0082】
本実施形態に係るカートリッジは、トナーにより、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるカートリッジでありうる。以下、本実施形態に係るカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。
【0083】
本実施形態のカートリッジは、トナーを収容するトナー筐体を有する、及び/又は感光体ドラムを有するカートリッジであることが好ましい。換言すると、本実施形態のカートリッジは、トナーを収容するトナー筐体部(いわゆるトナーカートリッジ部)と感光体ドラムを有するドラム部(いわゆるドラムカートリッジ部)とが一体となった一体型カートリッジであっても、あるいは前記トナーカートリッジ(部)と前記ドラムカートリッジ(部)とが分離する分離型カートリッジであってもよい。したがって、本実施形態のカートリッジは、トナーを収容するトナー筐体を有するトナーカートリッジ、感光体ドラムを有するドラムカートリッジ、トナーを収容するトナー筐体部及び感光体ドラムを有する一体型カートリッジ、並びに前記トナーカートリッジと、前記トナーカートリッジと着脱可能の前記ドラムカートリッジとを有する分離型カートリッジを包含する。
【0084】
以下、
図1~3を参照して、感光体ドラムを有するドラムカートリッジ10、トナーを収容するトナー筐体3を有するトナーカートリッジ2、及び分離型カートリッジの一例を説明する。
図1は、いわゆるカートリッジ1の模式図であって、
図1のカートリッジ1は、ドラムカートリッジ10に対して着脱可能なトナーカートリッジ2が、ドラムカートリッジ10に取り付けられた分離型カートリッジを示している。そして、分離型カートリッジは、画像形成装置の本体筐体に装着される。本明細書では、トナーカートリッジ2がドラムカートリッジ10に装着された状態のカートリッジを分離型カートリッジと呼ぶ。すなわち、分離型カートリッジは、ドラムカートリッジ10とトナーカートリッジ2とを備える。
また、
図2は、
図1に示すカートリッジ1の断面図である。そして、
図3は、
図1に示すカートリッジ1のトナーカートリッジ2と、ドラムカートリッジ10とを分離した状態を示す模式図である。
【0085】
ドラムカートリッジ10は、ドラムカートリッジ本体7と、感光体ドラム5とを有する。また、ドラムカートリッジ10は、帯電手段4と、クリーニングローラ8と、転写ローラ11と、現像ユニット9と、搬送ローラ12と、さらに備えることが好ましい。また、ドラムカートリッジ10は、トナーカートリッジ2が着脱可能である(
図3参照)。また、ドラムカートリッジ本体7は、感光体ドラム5、帯電手段4、クリーニングローラ8、転写ローラ11、搬送ローラ12、現像ユニット9及びトナーカートリッジ2を支持する筐体である。ドラムカートリッジ本体7は、軸受(図示せず)を位置決めするための位置決め突起(図示せず)を有している。また、感光体ドラム5は、軸方向に延びるドラム軸について回転可能である。
以下の説明において、「軸方向」は、感光体ドラム5のドラム軸が延伸する方向であり、
図1中のX方向を表す。そして、「搬送方向」は、搬送ローラ12から転写ローラ11に向かう方向であり、
図1中のY方向を表す。また「搬送方向」は、搬送ローラ12の下端から感光体ドラム5と転写ローラ11により、紙などのシートSのニップ位置に向かう方向である。また、「軸方向」及び「搬送方向」に直交する方向を「直交方向」と称し、
図1中のZ方向を表す。
【0086】
帯電手段4は、感光体ドラム5を帯電させる役割を有する。当該帯電手段4としては、スコロトロン型又はコロトロン型、あるいは帯電ローラが挙げられる。また、クリーニングローラ8は、感光体ドラム5をクリーニングする役割を有する。そして、クリーニングローラ8は、軸方向に延びるクリーニングローラ軸について回転可能である。クリーニングローラ8は、感光体ドラム5の表面と対面しており、当該クリーニングローラ8は、感光体ドラム5の搬送方向における下流側に位置する。
【0087】
転写ローラ11は、感光体ドラム5に供給されたトナーを、感光体ドラム5からシートSに転写させる役割を有する。そして、転写ローラ11は、軸方向に延びる転写ローラ軸について回転可能である。転写ローラ11は、感光体ドラム5の表面と対面しており、当該転写ローラ11は、感光体ドラム5の直交方向における他方側(
図1における下側)に位置する。転写ローラ11は、感光体ドラム5との間でシートSをニップして搬送可能である。
【0088】
搬送ローラ12は、ドラムカートリッジ10が画像形成装置の本体筐体内に装着された場合に、画像形成装置の本体ローラと接触して従動回転し、本体ローラと共にシートSを搬送する役割を有する。そして、搬送ローラ12は、軸方向に延びる搬送ローラ軸について回転可能である。搬送ローラ12は、感光体ドラム5の搬送方向の上流側に所定距離だけ離間して位置する。
【0089】
ドラムカートリッジ10は、必要によりドラムギヤをさらに備えてもよい。当該ドラムギヤから入力された駆動力は、ギヤ列により感光体ドラム5の他、クリーニングローラ8および転写ローラ11に伝達されうる。
【0090】
現像ユニット9は、搬送方向において搬送ローラ12と感光体ドラム5との間に位置する。現像ユニット9は、磁気ローラ6と、ブレードと、ブレードホルダと、現像容器と、貯留容器とを有する。そして、磁気ローラ6は、感光体ドラム5にトナーを供給するローラである。また、磁気ローラ6は、軸方向に延びる磁気ローラ軸について回転可能である。そして、磁気ローラ6は、感光体ドラム5の表面と対面し、感光体ドラム5の搬送方向における上流側に位置する。磁気ローラ6は、感光体ドラム5の表面から離間している。
現像容器は、磁気ローラ6に供給されるトナー(図示せず)及びキャリア(図示せず)を収容する容器である。キャリアは、磁性体でありうる。また、キャリアの一例は鉄粉である。現像容器は、トナーカートリッジ2(又はトナー筐体3内部)に収容されていたトナー(図示せず)が補給される。なお、当該キャリアは鉄粉以外の磁性体であってもよい。
【0091】
トナーカートリッジ2は、トナーカップリングをさらに有してもよい。当該トナーカップリングは、軸方向の一方側の端部に位置する。そして、トナーカップリングは、画像形成装置の装置本体からトナーカートリッジ2に駆動力が入力される部分である。トナーカップリングから入力された駆動力は、ギヤ列によってアジテータ等に伝達される。
【0092】
上記した実施形態では、トナーカートリッジ2がドラムカートリッジ10に装着された状態の分離型カートリッジについて説明したが、本開示のカートリッジ1はこれに限定されない。例えば、トナーカートリッジ2が装着されないタイプのドラムカートリッジ10、トナーカートリッジ2又はトナーカートリッジ2に収容されている部材がドラムカートリッジ10内に収容された一体型カートリッジにも適用可能である。
上記した実施形態では、画像形成装置の一例としてレーザプリンタを例示したが、これに限定されず、インクジェットプリンタなどの他の画像形成装置、複写機、複合機などに本開示を適用してもよい。
【実施例0093】
次に本発明を実施例及び比較例により詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における樹脂及び成形品の分析、評価方法は、下記の通りである。
【0094】
[各樹脂及び樹脂組成物の特性評価]
(1)重量平均分子量の測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂及び樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定した。
測定機器:東ソー製HLC―8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM-H(内径4.6mm)を直列に2本接続
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ-H
測定溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:測定試料5mgを10mLの溶媒に溶解し、0.45μmのフィルターでろ過を行った。
注入量:10μL
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
検出器:示差屈折率計
検量線の作成には東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F-850、F-450、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000)を用いた。1次直線の近似式を用いて検量線を作成した。
【0095】
(2)メルトマスフローレート(MFR)の測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂及び樹脂組成物のメルトマスフローレート(g/10分)を、ISO1133に準拠して、200℃、49Nの荷重条件にて測定した。
【0096】
(3)ビカット軟化温度の測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂及び樹脂組成物のビカット軟化温度をISO306に準拠して測定した。荷重は50N、昇温速度は50℃/hとした。
【0097】
(4)スチレン系単量体単位(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、(メタ)アクリル酸単量体単位の各々の単量体単位の含有量(質量%)の算出
(NMR測定)
プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から、樹脂組成を定量した。
試料調製:樹脂ペレット30mgをd6-DMSO 0.75mlに60℃で6時間加熱溶解した。
測定機器:日本電子 JNM ECA-500
測定条件:測定温度 25℃、観測核 1H、積算回数 64回、繰り返し時間 11秒
(NMRスペクトルの帰属)
DMSO重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5~1.5ppmのピークはメタクリル酸、メタクリル酸メチル及び六員環酸無水物のα-メチル基の水素、1.6~2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(-COOCH3)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素である。また、6.5~7.5ppmのピークはスチレンの芳香族環の水素である。尚、本実施形態の樹脂は六員環酸無水物の含有量が少ないため、本測定の方法では通常定量化は難しい。
【0098】
(5)各単量体単位の含有量の測定
以下の条件にて熱分解GC/MSにて実施例及び比較例で調製した樹脂組成物中に含まれる各単量体単位の含有量の測定を行なった。
<測定条件>
熱分解ユニット
機器 :フロンティアラボ製 PY-3030D
加熱炉温度 :600℃
境界温度 :300℃
GC/MS
機器 :島津製作所製 GCMS-GP2020NX
カラム :Ultra Alloy-5
(長さ30m、膜厚0.25μm、径0.250mmφ)
カラム温度 :50℃に5分間保持、10℃/分で昇温、
100℃からは7℃/分で昇温、300℃で10分間保持。
注入口温度 :300℃
検出器温度 :300℃
スプリット比 :1/300
キャリアガス :ヘリウム
検出方法 :質量分析計(MSD)
サンプル量 :50μg
検出モード :スキャンモードまたはSIMモード
なお、各単量体ピークの検出に際し、ピークの重なりや、ピーク強度の飽和を避けるため、適宜サンプルの希釈率等の前処理や、使用するカラムや、検出条件を適宜調整してもよい。
【0099】
(6)ゴム状重合体粒子の測定
後述の実施例の再生スチレン系樹脂組成物及び比較例の樹脂組成物を、四酸化オスミウムで染色した後、厚さ100nmの超薄切片を5つ作製し、透過電子顕微鏡を用いて、それぞれ5つの明視野像(倍率10000倍)を取得した。そして、それぞれの5つ明視野像を合計して、下記数式(N1):
重量平均径=ΣniDri4 /ΣniDri3 (N1)
(上記数式(N1)中、niは、粒子径Driのゴム状重合体粒子の個数であり、粒子径Driは、明視野画像中の粒子の面積から円相当径として算出した粒子径である。)により面積平均粒子径を算出し、ゴム状重合体粒子の重量平均径とした。上記解析は、画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて次の通り実施した。取得した前記画像を大津の手法(Otsu metod)で二値化し、ゴム状重合体粒子以外の白部分(ポリマーマトリックス相)に相当)を塗りつぶした。隣接接触しているゴム状重合体粒子同士をWatershed処理により分割し、ゴム状重合体粒子の面積を算出後、円相当径に換算した。得られた円相当径の数値群から個数基準のヒストグラム及び平均値を導出した。また使用した装置等は以下の通りである。
ウルトラミクロトーム:UC7/ライカ
透過電子顕微鏡:HT7700/日立ハイテクノロジーズ
【0100】
(8)シャルピー衝撃強度の測定
シャルピー衝撃強度の測定に用いた試験片は、後述の「「ISOダンベル試験片の製造方法」の欄に記載の方法で作製した1A型ダンベルの中央平行部より切り出した規定寸法の短冊を用いた。試験はISO 179に準拠して、シャルピー衝撃強度(kJ/m2)をノッチありで測定した。
【0101】
(9)引張降伏応力の測定
引張降伏応力の測定に用いた試験片として、実施例及び比較例で製造した各樹脂組成物を用いて、後述の「ISOダンベル試験片の製造方法」の欄に記載の方法で作製した1A型ダンベルを用いた。試験片は、ISO527-1に準拠して引張降伏応力(MPa)を測定した。
【0102】
(10)引張破壊呼び歪みの測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂組成物から220℃でJIS K 7152に準拠して射出成形片を作製し、JIS K 7161ISO527-1に準拠して引張破壊呼び歪(%)を測定した。
【0103】
(11)曲げ弾性率の測定
実施例及び比較例で製造した各種樹脂組成物をISOタイプ1A型ダンベル試験片に射出成形し、ダンベルの中央平行部より切り出した規定寸法の短冊にてISO178に従って曲げ弾性率(MPa)を測定した。
【0104】
(12)荷重たわみ温度の測定
実施例及び比較例で製造した各種樹脂組成物から、ISOタイプ1A型ダンベル試験片に射出成形し、ダンベルの中央平行部より切り出した規定寸法の短冊にてISO75-1及び75-2に準拠して、荷重1.8MPaの条件で荷重たわみ温度(単位:℃)を測定した。また、荷重たわみ温度の測定に際し、東洋精機社製「AUTO HDT Tester 6A-2V」を用いた。
【0105】
(13)耐薬品性(物性保持率)の測定
実施例及び比較例で製造した各種樹脂組成物の耐薬品性を評価するため、ISOタイプ1A型ダンベル試験片の中央平行部に所定のグリス(モリコートEM―50LP:デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社)を塗布、熱風循環式オーブン中に60℃の雰囲気下で168時間エージング処理した。グリスをウエスで払拭後、外観を確認して、引張破断歪みを測定し、初期値と比較し保持率(%)を計算した。
耐薬品性(物性保持率)(%)=(グリスを塗布して168時間エージング処理後のサンプルの引張破断歪み)÷(グリスを塗布しないで、且つ168時間エージング処理無しのサンプルの引張破断歪み)
【0106】
(14)耐熱クリープ特性の測定
1A型ダンベル試験片の中央平行部より切り出した規定寸法の短冊にてISO899-2に準拠した3点負荷による曲げクリープ試験を実施した。雰囲気温度は60℃、荷重は29.4Nの条件とし、一定時間後(100時間)の歪み量(mm)で評価した。
【0107】
(15)外観
射出成型機にて120×50mm、厚み2.5mm、2.0mm、1.0mmの部分を持つ3段プレートを成形した。プレート中央部の厚み2.0mmの平面部(40×50mm)を用い、黒点異物の観察、ならびに60°光沢度を測定した。黒点は夾雑物測定図表(JIS P 8208)に従いサイズ分けし、個数を調べた。
観察された黒点がすべて0.1mm2以下であれば〇、0.1超~0.5mm2のものが20個以下かつ0.5超~0.7mm2のものが2個以下であれば△、それ以外は×とした。
光沢度は光沢度計GM26D(株式会社村上色彩技術研究所)を用い、JIS Z 8741に従い、60°鏡面光沢を測定した。光沢度が35以下を△、36以上を〇(合格)とした。
【0108】
(16)レーザー回折法測定
ポリプロピレン製ディスポーサルカップに、実施例の再生スチレン系樹脂組成物及び比較例の樹脂組成物を20mgと、N,N-ジメチルホルムアミド20mLとを入れて、超音波振動を15分間かけて溶解・分散させた。振動させた状態で、サンプルの白濁液の一部を採取し、測定用セルに入れ、回転子で撹拌させながら、レーザー回折式粒径測定装置((株)堀場製作所製、LA-960V2)を用いて、前記再生スチレン系樹脂組成物又は前記樹脂組成物を含むN,N-ジメチルホルムアミド溶液の分散質の粒子径(d84%、d50%、d16%)及び積分分布曲線を求めた。このとき、サンプルの屈折率は1.6―0.00i、溶媒の屈折率を1.428とした。本実施例では体積基準の粒子径分布を採用している。
例えば、実施例1の再生スチレン系樹脂組成物における体積基準の粒子径分布(d84%-d16%)は1.18であり、平均粒子径d50%は1.7μmだった。一方、実施例1の再生スチレン系樹脂組成物における個数基準の粒子径分布(d84%-d16%)は0.90であり、平均粒子径d50%は1.2μmだった。他の実施例においても、個数基準の方が平均粒子径は小さく、分布は狭くなる傾向を示した。
【0109】
(17)ウェルド強度保持率(曲げ強さ)の測定
実施例及び比較例で得られた再生スチレン系樹脂組成物を用いて、長さ125mm、幅13mm、厚み3.2mmの形状の長さ方向の両端から、前記再生スチレン系樹脂組成物の溶融樹脂が流れ込み、長さ方向の中央部にウェルドが形成されるような金型を取り付けた、射出成形機(日精樹脂工業(株)製PS40E)で成形(成形温度220℃、金型温度45℃、射出圧力:7.5MPa(50%)、射出速度:215cm/分(50%)、一速一圧成形)を行い、試験片を得た。この成形した試験片をチャック間距離50mm、引張速度1.5mm/分にした以外は、ISO 527に準拠した方法で引張試験を実施し、引張強度を求めた後、以下の式から算出した。なお、測定値はN=5の平均値とした。
ウェルド強度保持率(%)=(ウェルド有の曲げ強さ)÷(ウェルド無しの曲げ強さ)×100
【0110】
[実施例・比較例に使用した原料]
実施例及び比較例で使用したリサイクルポリスチレン系樹脂(A)、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B)及びスチレン系樹脂(C)の特性を表1に示す。また、実施例及び比較例で使用した添加剤は以下の通りである。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
(添加剤)
酸化防止剤:オクタデシル3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
離型剤:ステアリン酸亜鉛
可塑剤:流動パラフィン
【0116】
[実施例・比較例]
「実施例1~20の再生スチレン系樹脂組成物の製造方法」
上記の[実施例・比較例に使用した原料]の欄に記載した原料を準備した。具体的には、リサイクルポリスチレン系樹脂(A1)~(A8)中に含まれる、ゴム状重合体粒子(a2)の含有量、前記四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)(=混入物)の含有量、並びに、ポリマーマトリックス部(a1)の重量平均分子量を、溶融混錬する前に測定した。
また、ゴム変性ポリスチレン系樹脂(B1)~(B7)中に含まれる、ゴム状重合体粒子(b2)の含有量、ポリスチレン系樹脂(b1)の重量平均分子量を測定した。
次いで、バージン材(C1)の重量平均分子量を測定した。そして、各実施例では、得られる再生スチレン系樹脂組成物の分子量、ゴム成分の含有量、混入物(四酸化オスミウム処理後のトルエン不溶分(1)の含有量)の含有量並びにポリマー成分の重量平均分子量が所定の値になるように、上記の[実施例・比較例に使用した原料]の欄及び下記の表2-1~表2-3に従い原料をそれぞれ調製した後、計量した原料をドラムタンブラーで配合し、二軸押出機(東芝機械株式会社製TEM-26SS)でシリンダー設定温度220℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練、溶融樹脂は押出機スクリュー先端とダイの間にあるブレーカープレートの上流側に設けたスクリーンメッシュを通過したのち、ダイより溶融ストランドとして抜き出した。溶融ストランドを水冷しロータリーカッターでストランドをカッティングすることにより、実施例1~20のペレット状の再生スチレン系樹脂組成物を得た。そして、上記に記載の測定方法に従い、得られた実施例1~20のスチレン系樹脂組成物の物性の測定及び評価を行った。その結果を表2-1~表2-3に示す。
なお、上記溶融混錬において、体積基準の粒子径分布(d84%-d16%)が2未満になるように、必要により溶融物をスクリーンメッシュにかけた。
【0117】
「比較例1~6及び参考例1~4の樹脂組成物の製造方法」
上記の[実施例・比較例に使用した原料]の欄及び下記の表1に従い、原料をそれぞれ調製した後、計量した原料をドラムタンブラーで配合し、二軸押出機(東芝機械株式会社製TEM-26SS)でシリンダー設定温度220℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し溶融ストランドとして抜き出した。溶融ストランドを水冷しロータリーカッターでストランドをカッティングすることにより、比較例1~6及び参考例1~4のペレット状の樹脂組成物を得た。そして、上記に記載の測定方法に従い、得られた比較例1~6及び参考例1~4の樹脂組成物の物性の測定及び評価を行った。その結果を表2-3及び表2-4に示す。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
「実施例21~実施例26のカートリッジの作製と評価」
上記実施例で製造した再生スチレン系樹脂組成物を用いて、カートリッジ筐体(カートリッジ本体)を作製した。具体的には、カートリッジ筐体は、リブが格子状に設定された箱型形状(寸法 長さ:260mm×奥行:80mm×高さ:80mm)であり、表3に示す実施例で製造した再生スチレン系樹脂組成物を用いて、ピンゲート2点のコールドランナーによる3プレート金型によって成形して、カートリッジ筐体を作製した。
そして、得られたカートリッジ筐体について、以下の条件の実用クリープ評価を行った。その結果を表3に示す。
<実用クリープ特性の評価>
カートリッジ筐体内部の位置決めピンを治具に固定する。次いで、カートリッジ筐体の長手方向における中央部に重さ4.6kg(直径50mm×高さ300mmの鉄製のおもり)の加重をかけた状態で、60℃のオーブン内に入れて100時間経過後のカートリッジ筐体の中央部の変形量(mm)を測定した。その結果、カートリッジ筐体の中央部の変形量が0.5mm以内であれば合格(○)とし、当該変形量が0.5mm超の場合は不合格(×)とする。
【0123】
「比較例7のカートリッジ」
上記実施例21~26と同様の方法で樹脂組成物を用いて、カートリッジ筐体を作製した。比較例7で使用した樹脂組成物は表3に示す通りである。
【0124】
前記再生スチレン系樹脂組成物中の全ゴム状重合体粒子は、共役ジエン系単量体単位を含有し、かつ前記共役ジエン系単量体単位の含有量は、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して2~15質量%である、請求項1又は2に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
酸化防止剤、顔料、難燃剤、添加剤、鉱物油、植物油及び滑剤からなる群から選択される1種又は2種以上含有する、請求項1又は2に記載の再生スチレン系樹脂組成物。
前記再生スチレン系樹脂組成物中の全ゴム状重合体粒子の含有量が、前記再生スチレン系樹脂組成物全体に対して2.1~35質量%である、請求項1に記載の再生スチレン系樹脂組成物。