(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010643
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】干渉計
(51)【国際特許分類】
G01B 9/02001 20220101AFI20250116BHJP
【FI】
G01B9/02001
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112724
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101269
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 道夫
(72)【発明者】
【氏名】古谷 涼秋
(72)【発明者】
【氏名】石井 広太
【テーマコード(参考)】
2F064
【Fターム(参考)】
2F064AA01
2F064AA06
2F064BB05
2F064CC10
2F064EE05
2F064FF01
2F064GG12
2F064GG23
2F064GG34
2F064GG38
2F064HH01
2F064HH06
(57)【要約】
【課題】 被測定物の光軸方向に沿った変位量と光軸周りの角度変化量の非接触での同時測定を可能とする干渉計を得る。
【解決手段】 レーザー発振器12からの光束が、ステージ14に備えられた1/4波長板16を透過すると共にボールレンズ18が反射する。レーザー発振器12とステージ14との間に配置された第1ビームスプリッタ22が光束を分離し、反射された光束を更に第2ビームスプリッタ24が2つに分離する。分離された2つの光束を相互に角度の異なる偏光板26、28を介して2つの光検出器30、32が検出する。他方、第1ビームスプリッタ22を透過した光束は、レーザー発振器12とステージ14との間を再度通過して第1ビームスプリッタ22で反射される。この光束を更に第2ビームスプリッタ24が2つに分離して最終的に2つの光検出器30、32が検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光の光束を発生させる光源と、
光源からの光束の光軸上に設置された1/4波長板および、光軸に沿って光束を反射する反射鏡を含む被測定物と、
光源と被測定物との間の光軸上に配置されて、光束を透過すると共に光束の一部を反射することで、光束を分離しうる第1ビームスプリッタと、
第1ビームスプリッタで反射された光束を2つに分離する第2ビームスプリッタと、
第2ビームスプリッタで分離された2つの光束を相互に角度の異なる偏光板を介してそれぞれ受光する2つの光検出器と、
を含む干渉計。
【請求項2】
光源が光束を発生させるレーザー光源とされると共に、光束を発生させる光源の面に反射材を有した請求項1に記載の干渉計。
【請求項3】
2つの光検出器に対応してそれぞれ1つずつの計2つの偏光板があり、一方の偏光板の向きが45度とされ、他方の偏光板の向きが135度とされる請求項1又は請求項2に記載の干渉計。
【請求項4】
被測定物が、光軸に沿った方向の変位及び光軸周りの角度変化を可能とした請求項1に記載の干渉計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元空間内での物体とされる被測定物の動きの内、光源の光軸方向に沿った変位量と光軸周りの回転角を非接触かつ同時に測定可能な干渉計に関する。
【背景技術】
【0002】
干渉計は、物体の位置や姿勢、更には物体までの距離などの測定に使用されている。そして、物体の位置や姿勢を高精度にそれぞれ測定する際には近年、レーザ干渉計が用いられている。このレーザ干渉計は、測定点に対応してコーナーキューブやキャッツアイ等のレトロリフレクタを反射鏡として固定し、これらからの反射光を利用して測定したりしていた。
【0003】
この一方、このような干渉計の従来技術として、下記特許文献1~3が知られている。
特許文献1では、レーザ光源から光束を被測定物に照射し、その反射光を干渉計で取り込むことにより、被測定物のローリング角を干渉計内の受光素子上に記憶された変位から算出する技術が示されている。
【0004】
また、特許文献2では、光源から送り出されたレーザ光が被測定物で反射し、この反射されたレーザ光を受光することで、測距を行うレーザ干渉計に関する技術が示されている。
さらに、特許文献3では、3つの干渉計を用いて移動体の線形変位とロール角を同時に測定する干渉計測定システムに関する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-66090公報
【特許文献2】特開2011-64610公報
【特許文献3】特開平2-290502公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これら特許文献1~3であっても、単一の干渉計を用いた場合、被測定物の光軸方向に沿った変位の測定のみ、あるいは被測定物の光軸周りの回転量の測定のみしか測定できなかった。他方、回転運動の測定に限定すれば、ロータリーエンコーダのように高精度での測定が可能な装置も上記特許文献とは別に知られているが、非接触での回転運動の検出は困難であった。
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、被測定物の光軸方向に沿った変位量と光軸周りの角度変化量の非接触での同時測定を可能とする干渉計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した請求項1記載の発明は、直線偏光の光束を発生させる光源と、
光源からの光束の光軸上に設置された1/4波長板および、光軸に沿って光束を反射する反射鏡を含む被測定物と、
光源と被測定物との間の光軸上に配置されて、光束を透過すると共に光束の一部を反射することで、光束を分離しうる第1ビームスプリッタと、
第1ビームスプリッタで反射された光束を2つに分離する第2ビームスプリッタと、
第2ビームスプリッタで分離された2つの光束を相互に角度の異なる偏光板を介してそれぞれ受光する2つの光検出器と、
を含む干渉計である。
【0008】
請求項1の発明のような干渉計によれば、光源にて発生された直線偏光の光束が第1ビームスプリッタを透過して被測定物に入射され、この被測定物に備えられた1/4波長板を透過してこの光束が円偏光になる。さらに、この光束が反射鏡によりその光軸に沿って反射すると共に1/4波長板を再度透過して、直線偏光に光束が戻る。このことで、被測定物から直線偏光に戻った光束が第1ビームスプリッタに入射する。
【0009】
この後、上記のように被測定物との間で1往復して第1ビームスプリッタに入射した光束の一部は、反射して第2ビームスプリッタに送られ、この第2ビームスプリッタにて更に2つに分離される。そして、分離された2つの光束を相互に角度の異なる偏光板を介して、2つの光検出器がそれぞれ受光する。
【0010】
他方、第1ビームスプリッタに入射したものの、そのまま透過した光束は光源において光軸に沿って反射して、上記と同様に第1ビームスプリッタを再度透過すると共に被測定物に再度入射される。これに伴い、1/4波長板を透過して円偏光になった光束が反射鏡によりその光軸に沿って反射すると共に1/4波長板を再度透過する。このことで、被測定物から直線偏光に戻った光束が第1ビームスプリッタに入射する。
【0011】
この後、上記のように被測定物との間で2往復して第1ビームスプリッタに入射した光束は、反射して第2ビームスプリッタに送られ、この第2ビームスプリッタにて更に2つに分離される。そして、上記と同様に分離された2つの光束を相互に角度の異なる偏光板を介して、2つの光検出器がそれぞれ受光する。
【0012】
以上より、本請求項の干渉計によれば、被測定物の反射鏡を一度反射して1往復した光束と二度反射して2往復した光束を相互に角度の異なる偏光板をそれぞれ介して2つの光検出器が受光する形となる。つまり、反射鏡で一度反射して1往復した光束と二度反射して2往復した光束の光路長の差が、被測定物の変位量の2倍に相当するので、被測定物の光軸方向に沿った変位量が明確になる。
【0013】
この一方、直線偏光の光束は被測定物の1/4波長板を1度通ると円偏光になり、再度通ると再び直線偏光に戻るが、この時、最初の直線偏光の偏光角と1/4波長板の姿勢との関係から、直線偏光に戻る際の偏光角が決まる。これに伴い、被測定物の反射鏡を一度反射するのに伴い1/4波長板を2度通る光束と、二度反射するのに伴い1/4波長板を4度通る光束があるので、二種類の偏光角が存在することになり、この相違を光検出器が検出することにより光軸周りの角度変化量が明確になる。
【0014】
従って、本請求項の干渉計によれば、被測定物の光軸方向に沿った変位量と光軸周りの角度変化量の非接触での同時測定が可能となる。つまり、被測定物と第1ビームスプリッタの間で1往復した光束と2往復した光束から、これらの測定が可能となるが、3往復以上は光束が減衰して測定を阻害することがない。
【0015】
請求項2の発明のような干渉計によれば、光源が光束を発生させるレーザー光源とされると共に、光束を発生させる光源の面に反射材を有したことから、光源が直線偏光を確実に生成可能なレーザー光源であり、また、光束を発生させる光源の面の反射材により、被測定物への再度の送り出しが可能となる。
【0016】
請求項3の発明のような干渉計によれば、2つの光検出器に対応してそれぞれ一つずつの計2つの偏光板があり、一方の偏光板の向きが45度とされ、他方の偏光板の向きが135度とされることから、1/4波長板を2度通過した光束と4度通過した光束が偏光板でそれぞれ分かれて、2つの光検出器で検出可能となる。
【0017】
請求項4の発明のような干渉計によれば、被測定物が、光軸に沿った方向の変位及び光軸周りの角度変化を可能としたことから、これらの変位量や角度変化量を本発明の干渉計で確実に検出可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る干渉計によれば、被測定物の光軸方向に沿った変位量と光軸周りの角度変化量の非接触での同時測定が可能となる。これに伴い、本発明に係る干渉計を例えば3つ組み合わせて使用した場合、3次元空間での物体である被測定物のいかなる運動をも測定可能となる等の測定の用途も広がるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーザー干渉計の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るレーザー干渉計の光路長を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る干渉計の一実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に示すように本実施形態のレーザー干渉計10においては、光束Fとされる直線偏光したレーザー光を光軸C1に沿って発生するレーザー発振器12が本実施形態の光源とされ、光束Fを発生させるこのレーザー発振器12の射出面12Aには、光軸C1に対して垂直な反射材であるミラー13が備えられている。ここで、
図1における紙面に垂直な方向をY方向とし、レーザー発振器12からのレーザー光の射出方向をZ方向とし、これらY方向とZ方向に対して垂直な方向をX方向とする。
【0021】
この光軸C1上に、被測定物とされる一端が解放された箱状のステージ14が位置しており、このステージ14の筐体14Aは、Δαで回転角を表す光軸C1周りの回転が可能となると共に、ΔZで表す光軸C1に沿った直線的な変位が少なくとも可能となっている。さらに、このステージ14内の光軸C1上には、1/4波長板16が設置されていると共に、この1/4波長板16を透過した光束Fを光軸C1に沿って反射しうる反射鏡であるボールレンズ18も、ステージ14の一部を構成するブラケット20に保持されて設置されている。このため、ステージ14の移動や回転に伴い、1/4波長板16とボールレンズ18も一体的に移動や回転をすることになる。
【0022】
なおここでボールレンズ18とは、高屈折率ガラスを球形に精密研磨したレンズであり、入射した光を入射方向と平行かつ反対方向へと反射する機能を有するものである。また、ブラケット20には、ボールレンズ18を保持するための凹部があり、この凹部のボールレンズ18との対向面はその表面が反射面となるようにコートされている。
【0023】
他方、これらレーザー発振器12とステージ14との間の光軸C1上には、光束Fをそのまま透過すると共にこの光束Fの一部を反射することで、光束Fを分離しうる第1ビームスプリッタ22が光軸C1に対して45度傾いて配置されている。そして、第1ビームスプリッタ22をそのまま透過した光束Fは、レーザー発振器12のミラー13で一旦反射して、レーザー発振器12からの最初の光束Fと同様な光路をたどることになるが、この際に第1ビームスプリッタ22で反射した光束Fは、反射光軸C2に沿って反射光Rとして送り出される様にもなっている。
【0024】
この第1ビームスプリッタ22の反射光軸C2上となるX方向の位置には、第1ビームスプリッタ22で反射された反射光Rを2つに分離する第2ビームスプリッタ24が、反射光軸C2に対して45傾いて配置されていて、反射光Rをそのまま透過すると共に反射光Rの一部を反射することになる。
【0025】
これに伴い、第2ビームスプリッタ24で分離された2つの光束である反射光Rを相互に角度の異なる偏光板26、28を介して2つの光検出器30、32がそれぞれ受光している。 具体的には、第2ビームスプリッタ24で反射された光を受光する第1光検出器30の直前に、向きが45度とされる第1偏光板26が配置されている。また、第2ビームスプリッタ24を透過した光を受光する第2光検出器32の直前に、向きが135度とされる第2偏光板28が配置されている。なお、レーザー発振器12からの直線偏光の角度が45度と成っていることから、この角度を基準として光検出器30、32の傾きが設定される。
【0026】
次に、本実施形態に係るレーザー干渉計10の具体的な動作について説明する。
本実施形態のレーザー干渉計10によれば、レーザー光の出射面12Aにミラー13が配置されたレーザー発振器12が直線偏光の光束Fを発生させることで、この光束Fが第1ビームスプリッタ22を透過してステージ14に入射される。これに伴い1/4波長板16を透過し、円偏光となった光束Fがボールレンズ18にて同軸方向とされる光軸C1に沿って反射することで、1/4波長板16を逆方向に再度透過して、直線偏光に戻る。
【0027】
このことで、ステージ14から戻って第1ビームスプリッタ22に直線偏光の光束Fが入射される。第1ビームスプリッタ22に入射した直線偏光の光束Fの一部は、反射して第2ビームスプリッタ24に送られるが、これが
図1において実線で示す光路K1となる。そして、この第2ビームスプリッタ24にて反射光Rが更に2つに分離される。この後、分離された2つの反射光Rを相互に角度が異なって一方の向きが45度とされ、他方の向きが135度とされる偏光板26、28を介して、2つの光検出器30、32がそれぞれ受光する。
【0028】
他方、第1ビームスプリッタ22に入射したものの、そのまま透過した光束Fは、レーザー発振器12においてミラー13により光軸C1に沿って反射して、第1ビームスプリッタ22を再度透過すると共にステージ14に再度入射される。これに伴い、上記と同様に1/4波長板16を透過して円偏光となってボールレンズ18が光束Fを光軸C1に沿って反射すると共に、1/4波長板16を再度透過することで、直線偏光に再度戻った光束Fがステージ14から第1ビームスプリッタ22に入射する。
【0029】
第1ビームスプリッタ22に入射した光束Fは反射して第2ビームスプリッタ24に送られるが、これが
図1において点線で示す光路K2となる。そして、前述のようにこの第2ビームスプリッタ24にて更に2つに分離される。この後、上記と同様に分離された2つの反射光Rを相互に角度が異なる偏光板26、28を介して、2つの光検出器30、32がそれぞれ受光する。
【0030】
以上より本実施形態では、ステージ14の光軸C1方向に沿った変位ΔZで表す変位量の測定に際しては、以下のようになる。
まず、光軸C1に沿った直線的なステージ14の変位ΔZに伴うボールレンズ18の移動により光路K1と光路K2の位相差が生じることで干渉が生じるが、光路K1と光路K2との間の光路長の差がステージ14の変位ΔZの2倍に相当する。このため、2つの光検出器30、32がそれぞれ受光する光束Fの光路長の差を1/2としたものが、ステージ14の変位量となる結果として、本実施形態のレーザー干渉計10では、光軸C1方向に沿った変位量の容易な検出が可能となる。
【0031】
他方、ステージ14の光軸C1周りの回転角Δαで表す角度変化量の測定に際しては、以下のようになる。
前述のようにレーザー発振器12からの直線偏光の光束Fがステージ14の1/4波長板16を1度通過すると円偏光になり、1/4波長板16を再度通過すると再び直線偏光になる。この際、レーザー発振器12からの最初の直線偏光の偏光角と1/4波長板16の姿勢の関係から、ステージ14を通過した回数により直線偏光の偏光角が変化する。
【0032】
これに伴い、光路K1では1/4波長板16を1往復し、光路K2ではこの1/4波長板16を2往復するので、光路K1を通った光と光路K2を通った光束Fとでは、直線偏光の偏光角が異なる。具体的には、1/4波長板16を1往復した光路K1の光束F及び1/4波長板16を2往復した光路K2の光束Fを第1ビームスプリッタ22でそれぞれ反射して、第2ビームスプリッタ24に送り、この第2ビームスプリッタ24にて分割する。
【0033】
そして、一方の反射光Rを45度の傾きを有した第1偏光板26によって検波し、他方を135度の傾きを有した第2偏光板28によって検波し、これら検波された信号を2つの光検出器30、32によって、それぞれ検出する。つまり、本実施形態のレーザー干渉計10では、1/4波長板16の通過回数の相違に基づき、直線偏光の偏光角が異なることから、光軸C1周りのステージ14の回転運動をも検出できるようになっている。
【0034】
以上より、本実施形態のレーザー干渉計10によれば、ステージ14の光軸C1方向に沿った変位量である変位ΔZと光軸C1周りの角度変化量である回転角Δαの非接触での同時測定が可能となる。この際、レーザー発振器12の射出面のミラー13により、ステージ14への光束Fの再度の送り出しが可能となることで、ステージ14と第1ビームスプリッタ22の間で1往復した光束Fと2往復した光束Fからこれらの測定が可能となる。これに伴い、1往復だけでなく2往復の光束Fの作りだしが可能となるが、3往復以上は光束Fが減衰して測定を阻害することがない。
【0035】
他方、本実施形態では、2つの偏光板26、28があり、一方の第1偏光板26の向きが45度とされ、他方の第2偏光板28の向きが135度とされることから、1/4波長板16を2度通過して1往復した光束Fと4度通過して2往復した光束Fが偏光板26、28でそれぞれ分かれて、2つの光検出器30、32で確実に検出可能となる。
【0036】
ここで、変位と角度を同時に測定する原理を以下に数式を用いて説明する。
まず、偏光の一般式を示す。旋光子に対するジョーンズ行列R(θ)は、下記(1)式となる。
【0037】
【0038】
さらに、位相をEとし、偏光素子をθ回転させた時のジョーンズ行列T(θ,E)は、下記(2)式で表される。
【0039】
【0040】
α回転するλ/4波長板のジョーンズ行列L4(α)は、下記(3)式で表され、鏡のジョーンズ行列Mは、下記(4)式で表される。
【0041】
【0042】
また、t度傾いている直線偏光のジョーンズベクトルは、下記(5)で表される。
【0043】
【0044】
第1偏光板が45°傾いている時のジョーンズ行列I45は下記(6)式で表され、第2偏光板が135°傾いている時のジョーンズ行列I135は下記(7)式で表される。
【0045】
【0046】
次に、本実施形態のレーザー干渉計10の場合の基本的な式を以下に示す。
レーザー発振器12から出射され、第1ビームスプリッタ22及び1/4波長板16を透過し、ボールレンズ18で反射した後、1/4波長板16を再度透過して第1ビームスプリッタ22で反射するものを前述のように光路K1とするのに対して、この第1ビームスプリッタ22を透過後、レーザー発振器12の表面のミラー13で反射された後、光路K1と同様に進むものを前述のように光路K2としている。
【0047】
そして、本実施形態におけるt=π/4の時の光路K1のジョーンズ行列q1を下記(8)式で示し、光路K2のジョーンズ行列q2を(9)式で示す。
q1=M*L4(-α) * M*L4(α) *v(π/4) ・・・(8)式
q2=M*L4(-α) * M*L4(α) *M*L4(-α) * M*L4(α) *v(π/4)・・・(9)式
【0048】
この時、
図2に示すように、レーザー発振器12から第1ビームスプリッタ22までの光路長をl
1とし、第1ビームスプリッタ22からボールレンズ18までの光路長をl
2とし、第1ビームスプリッタ22から光検出器30、32まで(図において第2光検出器32までの距離を示す)の光路長をl
0とした場合、光路K1の総光路長p1を下記(10)で示し、光路K2の総光路長p2を下記(11)で示すが、これらの式から光路K1と光路K2との間の位相差が求まる。
p1=l
0+l
1+2l
2 ・・・(10)式
p2=l
0+3l
1+4l
2 ・・・(11)式
【0049】
尚、上記実施形態ではレーザー発振器12の表面に反射材としてミラー13を配置したが、このかわりに反射材としてレンズ等の他の部材を配置しても良い。また、上記実施形態で用いられるボールレンズの大きさは種々選択可能であるが、たとえば2mm~5mm程度の直径のものが考えられる。ただし、ボールレンズの替わりに、コーナーキューブやキャッツアイなどのレトロリフレクタを採用することが考えられる他、平面的な反射鏡を採用することとしても良い。
【0050】
そして、光検出器30、32としては、一般的なフォトダイオード等の受光素子を用いることができる。さらに、光検出器30、32で変化して出力されたデータをコンピュータ等の処理装置に入力してデータをディスプレイ等の出力装置により目視可能な形に変更することも可能である。また、本実施形態のレーザー発振器12からステージ14までの距離はたとえば数十cmや数m程度が考えられる。
【0051】
他方、本実施形態に係るレーザー干渉計10では光源とされるレーザー発振器12が1つのみであったが、ステージ14に対して更に2方向に光源を各1つそれぞれ配置する共に第1ビームスプリッタ、第2ビームスプリッタ、2つの偏光板及び2つの光検出器をそれぞれ各2組配置し、合計3組の干渉計を設置することで、3方向からステージ14の変位量や旋回量を検出できる結果として、3次元空間での物体の全体運動を測定できるようにもなる。
【0052】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明は係る実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、測定物対象物の位置や姿勢の測定の他にさまざまな産業分野に適用可能となる。
【符号の説明】
【0054】
10 レーザー干渉計
12 レーザー発振器(光源)
13 ミラー(反射材)
14 ステージ(被測定物)
16 1/4波長板
18 ボールレンズ(反射鏡)
22 第1ビームスプリッタ
24 第2ビームスプリッタ
26 第1偏光板
28 第2偏光板
30 第1光検出器
32 第2光検出器
F 光束
R 反射光
K1 光路
K2 光路