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特開2025-10656印刷制御装置、印刷装置、印刷制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010656
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】印刷制御装置、印刷装置、印刷制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20250116BHJP
   A45D 29/00 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 451
B41J2/01 109
A45D29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112746
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 修一
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB13
2C056EB37
2C056EC08
2C056EC37
2C056EC77
2C056FA10
2C056FB01
2C056FB09
(57)【要約】
【課題】インク吐出口ごとに異なる着弾インクのずれ量を被印刷対象の湾曲に合わせて補正し、印刷精度を高めることである。
【解決手段】印刷制御装置は、記憶手段と、算出手段と、制御手段と、を備える。記憶手段は、印刷ヘッド41のノズルの各インク吐出口に対応した着弾インクのずれ量を補正するための基準ずれ量を記憶する。算出手段は、各インク吐出口(インク吐出面421)から湾曲した被印刷対象としての爪Tまでのノズル爪間距離dを取得し、ノズル爪間距離dと各インク吐出口の基準ずれ量とから、着弾インクのずれ量を補正するための補正値を算出する。制御手段は、算出された補正値に基づいて、印刷ヘッド41の印刷の制御を行うを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ヘッドのノズルの各インク吐出口に対応した着弾インクのずれ量を補正するための基準ずれ量を記憶する記憶手段と、
前記各インク吐出口から湾曲した被印刷対象までの距離を取得し、当該距離と当該各インク吐出口の前記基準ずれ量とから、着弾インクのずれ量を補正するための補正値を算出する算出手段と、
前記算出された補正値に基づいて、前記印刷ヘッドの印刷の制御を行う制御手段と、を備える印刷制御装置。
【請求項2】
前記基準ずれ量は、前記インク吐出口から前記被印刷対象への最も短い距離で測定されたずれ量である請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、複数のインク吐出口からなるブロック内で共通の基準ずれ量を当該ブロックごとに記憶し、
前記算出手段は、前記取得された距離と各インク吐出口が属するブロックごとの前記基準ずれ量とから、補正値を算出する請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記算出された補正値に基づいて、前記印刷ヘッドに印刷させるシングリングデータの補正を行う請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記算出された補正値に基づいて、前記印刷ヘッドのインク吐出口のインクの噴射タイミングの補正を行う請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項6】
前記基準ずれ量は、インクの色ごとの情報である請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の印刷制御装置と、
前記印刷ヘッドと、を備える印刷装置。
【請求項8】
印刷ヘッドのノズルの各インク吐出口に対応した着弾インクのずれ量を補正するための基準ずれ量を記憶する記憶手段から各インク吐出口の基準ずれ量を読み出す読出工程と、
前記各インク吐出口から湾曲した被印刷対象までの距離を取得し、当該距離と当該各インク吐出口の前記基準ずれ量とから、着弾インクのずれ量を補正するための補正値を算出する算出工程と、
前記算出された補正値に基づいて、前記印刷ヘッドの印刷の制御を行う制御工程と、を含む印刷制御方法。
【請求項9】
コンピュータを、
印刷ヘッドのノズルの各インク吐出口に対応した着弾インクのずれ量を補正するための基準ずれ量を記憶する記憶手段、
前記各インク吐出口から湾曲した被印刷対象までの距離を取得し、当該距離と当該各インク吐出口の前記基準ずれ量とから、着弾インクのずれ量を補正するための補正値を算出する算出手段、
前記算出された補正値に基づいて、前記印刷ヘッドの印刷の制御を行う制御手段、 として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置、印刷装置、印刷制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式の印刷ヘッドを、所定の主走査方向の双方向に往復移動させながらシングリング印刷を利用して印刷媒体に印刷を行うネイルプリント装置などの印刷装置が知られている。
【0003】
また、双方向に走査する印刷ノズルを用いて、往動時の第1の濃度測定パターン及び第1の判定パターンと復動時の第2の濃度測定パターン及び第2の判定パターンとを用いて、第1及び第2の判定パターンを異ならせたインクジェットプリンタが知られている(特許文献1参照)。このインクジェットプリンタは、第1及び第2の判定パターンの位置ズレを調整することにより、第1、第2の濃度測定パターンの位置関係が理想状態に近い状態を実現できる。このため、双方向着弾位置ズレの影響を排除した上で各ノズルの吐出調整を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-14979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェットヘッドからインクが吐出される場合、ノズル面(インク吐出面)に垂直な方向に直進飛翔する又はノズルが移動しながらの吐出の場合は移動方向へある角度をもって飛翔する前提で吐出制御や画像生成が成されている。
【0006】
しかし、インクの特性やノズルの汚れなどでインクは斜めに飛翔する場合があるため、例えば湾曲した印刷面を有する被印刷対象である爪に対して印刷を行うネイルプリント装置の様に、インク吐出面と着弾面との間隙距離が爪の両サイドと中心付近等位置によって異なる場合に、このようなインク吐出口ごとのずれ量を補正する場合には、インク吐出面とインクの着弾面との間隙距離毎にずれ量を測定しておく必要があり、正確に印刷することが難しかった。
【0007】
本発明の課題は、インク吐出口ごとに異なる着弾インクのずれ量を被印刷対象の湾曲に合わせて補正し、印刷精度を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の印刷制御装置は、印刷ヘッドのノズルの各インク吐出口に対応した着弾インクのずれ量を補正するための基準ずれ量を記憶する記憶手段と、前記各インク吐出口から湾曲した被印刷対象までの距離を取得し、当該距離と当該各インク吐出口の前記基準ずれ量とから、着弾インクのずれ量を補正するための補正値を算出する算出手段と、前記算出された補正値に基づいて、前記印刷ヘッドの印刷の制御を行う制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、インク吐出口ごとに異なる着弾インクのずれ量を被印刷対象の湾曲に合わせて補正でき、印刷精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態におけるネイルプリント装置の外観構成を示す斜視図である。
図2】ネイルプリント装置の制御構成の要部を示すブロック図である。
図3】印刷ヘッドのノズルと、ノズルのノズル部におけるインクの着弾画像と、を示す図である。
図4】シアンのインクの間隙距離別湾曲性を示す図である。
図5】爪及び印刷ヘッド並びにノズル爪間距離を示す図である。
図6】異なるインク吐出口番号のインク吐出口の着弾インクのずれ量の予測値及び実測値を示す図である。
図7】第1の印刷処理を示すフローチャートである。
図8】第1の印刷処理の第1の補正処理を示すフローチャートである。
図9】第2の印刷処理を示すフローチャートである。
図10】第2の印刷処理の第2の補正処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施の形態及び変形例について説明する。
なお、以下に述べる実施の形態及び変形例には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施の形態、変形例及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施の形態では、印刷制御装置が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷するネイルプリント装置である場合を例に説明するが、本発明における印刷制御装置は手の指の爪に印刷を施すもの限るものではなく、例えば足の指の爪を印刷対象としてもよい。また、本発明の印刷制御装置はその一部に曲面を有する印刷媒体に対して印刷を行うものに広く適用することができ、ネイルチップや各種アクセサリの表面など、爪以外のものを印刷対象とするものでもよい。
【0012】
(実施の形態)
まず、図1から図8を参照しつつ、本発明が単体の印刷装置によって構成される実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態におけるネイルプリント装置1の外観構成を示す斜視図である。なお、以下の実施の形態において、上下、左右及び前後の方向は、ネイルプリント装置1を基準にして、図1に示した向きをいうものとする。また、X方向、Y方向は、図1に示した方向をいうものとする。X方向は、左右方向であり、印刷部40の印刷ヘッド41(図2)の主走査方向である。Y方向は、前後方向であり、印刷ヘッド41の副走査方向である。
【0014】
図1に示すように、印刷装置としてのネイルプリント装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。筐体2の上面(天板)には操作部21が設置されている。操作部21は、ユーザが各種入力を行うものである。操作部21には、例えば、ネイルプリント装置1の電源をONする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、印刷開始を指示する印刷開始釦など、各種の入力を行うための操作釦が配置されている。操作部21が操作されると操作信号が制御装置30に出力され、制御装置30が操作信号に従った制御を行い、ネイルプリント装置1の各部を動作させる。また、後述する表示部22にタッチパネル式の入力部が設けられている場合には、操作部21はタッチパネル式の入力部を含んでもよい。
【0015】
また、筐体2の上面(天板)には表示部22が設置されている。表示部22は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、その他のフラットディスプレイなどで構成されている。本実施の形態の表示部22の表面には、タッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、ユーザが指先や図示しない専用のペンなどによって表示部22の表面をタッチするタッチ操作によって各種の入力を行うことができるように構成され、タッチパネル式の入力部が操作部21として機能する。本実施の形態において、この表示部22には、例えば、湾曲した被印刷対象である爪T(図5)に対応するユーザの指である印刷指(図示せず)を撮影して得た爪画像(すなわち、爪Tの画像を含む印刷指の画像)、この爪画像中に含まれる爪Tの輪郭形状やそのうち印刷が予定されている範囲(印刷領域)などの画像、爪Tの印刷領域に印刷すべきネイルデザインを選択するためのデザイン選択画面、デザイン確認用のサムネイル画像、各種の指示を表示させる指示画面、告知画面、警告画面などが適宜表示される。
【0016】
さらに、筐体2の前面側(図1の手前側)であって装置のX方向のほぼ中央部には、ネイルプリント装置1による印刷時に指を挿入する開口部である指挿入口23が形成されている。指挿入口23は、後述の指置部6に対応する位置に設けられている。本実施の形態では、指置部6に1本ずつ指を載置可能となっており、指挿入口23は、指を装置内に挿入することができる程度の幅(X方向の長さ)及び高さに形成されている。指挿入口23の大きさなどは、これに限定されず、指置部6の大きさ、形状などに応じて適宜設定される。
【0017】
また、筐体2の一部には、印刷ヘッド41を交換することができる開口部24が設けられている。開口部24には図示しないヒンジなどによって開閉可能に構成された蓋部25が設けられている。蓋部25を閉状態とすることで開口部24が塞がれて装置内部に埃などが浸入するのを防ぐことができる。開口部24は、蓋部25が開状態となった場合に、ユーザが装置外から装置内部に対してアクセス可能となっている。なお、開口部24を閉状態とする蓋部25は、ユーザが手動で開閉させるものでもよいし、図示しないボタンなどを押すことで自動的に開閉するように構成されていてもよい。開口部24が設けられる位置は、印刷ヘッド41が対応位置まで移動してくることが可能な位置であり、本実施の形態では図1に示すように、装置の上部右側に開口部24が形成されている。なお、開口部24の位置や大きさは適宜設定される。すなわち、本実施の形態の印刷ヘッド41は、キャリッジ(図示略)から取り外して交換することが可能に構成されている。開口部24は、印刷ヘッド41の着脱、装置内からの取出しなどを円滑に行うことができる位置及び大きさに形成される。
【0018】
筐体2の内部には、図示しない装置本体が収容されている。装置本体は、基台上に各構成部が組み付けられて構成されている。基台上であって装置手前側には、前述の指挿入口23に対応する位置に、指挿入口23から挿入された印刷指を載置する指置部6が設けられている。ここで印刷指とは、印刷部40による印刷対象となる爪Tに対応する指である。
【0019】
指置部6の下側面には、指置部6内に挿入される印刷指の腹部分を載置させる載置部材62が設けられている。載置部材62は、指置部6内において印刷指を下側から支持するものであり、例えば柔軟性を有する樹脂などで形成されている。本実施の形態の載置部材62には、指置部6内に挿入可能な指の本数に応じてY軸方向に沿って窪んだ形状となった窪み部62aが形成されている。これにより、印刷指を載置部材62上に載置した際に、印刷指の腹部分を窪み部62aが受けて、左右方向に各印刷指がガタつくのを防止することができる。なお、載置部材62は上下動可能に構成されていてもよい。この構成では、印刷指の太さなどに応じて載置部材62の高さを調整することができる。また、指置部6の天面奥側は開口しており、この開口部分からは指置部6内に挿入された印刷指の爪Tが露出するようになっている。本実施の形態では、当該開口している領域において、印刷部40により印刷が行われるようになっている。
【0020】
また、装置本体には、印刷指の爪Tの表面に印刷を施す印刷部40と、爪Tを含む印刷指の撮影画像(爪Tを含む爪画像)を取得する撮影部50などが設けられている(図2)。
【0021】
印刷部40は、一部に曲面を有する印刷媒体に対して印刷を行うものであり、本実施の形態では、爪Tの表面に対して印刷を行う。印刷部40は、キャリッジなどに支持された印刷ヘッド41と、印刷ヘッド41をX方向、Y方向に移動させるためのヘッド移動機構49(図2)などを備える。ヘッド移動機構49は、印刷ヘッド41をX方向及びY方向に適宜移動させるためのX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48などを有する。印刷部40は、後述する制御装置30の制御部31(図2)に接続され、制御部31によって制御される。
【0022】
印刷ヘッド41は、指置部6に保持された印刷指の爪Tの上(すなわち、爪表面の上方)を移動しながら、爪Tの表面にインクを吐出させ、ネイルデザインを印刷する。印刷ヘッド41は、一部に曲面を有する印刷媒体である爪Tの表面に対して第1の方向(例えば、X方向の左から右に向かう方向)に移動しながらインクの第1の液滴を吐出させる。また、印刷ヘッド41は、第1の方向と逆向きの第2の方向(例えば、X方向の右から左に向かう方向)に移動しながら爪Tの表面に対して第1の液滴に対応する第2の液滴を吐出させる。
【0023】
印刷ヘッド41は、爪Tの表面に対向する面がインクを吐出させるノズルN(図2)を備える。ノズルNは、複数のインク吐出口(ノズル口)を有する。ノズルNの複数のインク吐出口が配列された吐出面をインク吐出面421(図5)とする。印刷ヘッド41は、ノズルNによりインクを微滴化し、インク吐出面421からの各インク吐出口の爪Tの表面に対して直接にインクを吹き付けて印刷を行うインクジェット方式のヘッドである。印刷ヘッド41は、例えば、各色のインクを内蔵したカートリッジ一体型となっており、イエロー、マゼンタ、シアンのインクを吐出可能となっている。ノズルNは、X方向及びY方向のマトリクス状に配列されている。ノズルNは、例えば図3に示すように、X方向の左から右に、Y方向に配置されたマゼンタのインクを吐出する複数のインク吐出口OMと、同じくイエローのインク吐出口OYと、同じくシアンのインク吐出口OCと、が順に配置されている。
【0024】
なお、印刷ヘッド41が吐出可能なインクはこれらに限定されない。例えば、黒色(K;ブラック)のインクをも内蔵し、黒色のインクも吐出可能となっていてもよい。また、印刷ヘッド41の構成などもここに例示したものに限定されない。例えば、印刷ヘッド41はカートリッジと別体に構成されていてもよい。
【0025】
撮影部50は、撮像装置51と、照明装置52と、を備える。撮像装置51は、例えば、200万画素程度以上の画素を有する固体撮像素子と、レンズ(いずれも図示略)などを備える小型デジタルカメラである。照明装置52は、例えば白色LED(Light Emitting Diode)などで構成される照明灯である。
【0026】
撮影部50は、指置部6に配置された印刷指の爪Tを照明装置52によって照明する。そして、撮像装置51によってその印刷指の爪Tに対応する領域を撮影して、爪画像(爪Tの画像を含む印刷指の画像)の画像データを得る。撮影部50は、制御装置30の制御部31に接続され、制御部31によって制御される。撮影部50によって取得された撮影画像データは、後述する記憶部32に記憶されてもよい。
【0027】
図2は、ネイルプリント装置1の制御構成の要部を示すブロック図である。図2に示すように、ネイルプリント装置1は、印刷制御装置としての制御装置30を備える。制御装置30は、算出手段、制御手段としての制御部31と、記憶手段としての記憶部32と、を備えるコンピュータである。制御部31は、図示しないCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、RAM(Random Access Memory)により構成される。記憶部32は、ROM(Read Only Memory)や、フラッシュメモリで構成される。制御装置30は、例えば筐体2の天面の下面側などに配置された図示しない基板などに設置されている。
【0028】
記憶部32には、ネイルプリント装置1を動作させるための各種プログラムや各種データなどが格納されている。具体的には、例えば、記憶部32に、後述する第1の印刷処理を行うための第1の印刷プログラムP1などの各種プログラムが記憶されている。制御部31は、CPUがプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUと展開したプログラムとの協働で、ネイルプリント装置1の各部を統括制御する。
【0029】
また、記憶部32は、ネイルデザインのデータであるデザインデータ321と、補正情報322と、を記憶している。
【0030】
補正情報322は、爪の湾曲レベルごとの湾曲形状データを有する。ここでは、人の爪の形状について、湾曲の度合いに応じて5つの湾曲レベルに分けるものとする。その中の湾曲レベル2は、全ての人の爪の約80%の形状をカバーする。このため、補正情報322には、湾曲レベルが1~5の湾曲レベル形状データが記憶されているが、デフォルトの設定湾曲レベルが2であるものとする。ただし、操作部21を介するユーザからの設定入力により、設定湾曲レベルが他の湾曲レベルに変更される構成としてもよい。
【0031】
また、補正情報322は、ノズルNの各インク吐出口における、インクの色及びインク吐出口番号(のブロック)に対応付けられた基準ずれ量Δeを有する。基準ずれ量Δeは、ノズル爪間距離d(図5)に応じた着弾インクのずれ量を補正するために用いる補正式(後述する式(1))により補正値eを算出するための情報である。
【0032】
制御部31は、表示部22を制御して表示部22に各種の表示画面を表示させる。例えば、制御部31は、デザインデータ321の複数のネイルデザインをユーザが選択するためのデザイン選択画面を表示部22に表示させる。デザインデータ321は、記憶部32にデフォルトで記憶されているものとする。しかし、デザインデータ321は、例えば外部の端末装置や、通信ネットワーク上のサーバ装置などの外部装置から取得されるものでもよい。制御部31は、デザイン選択画面においてネイルデザインを順次又は一覧に表示部22に表示させることが好ましい。さらに、制御部31は、爪Tの画像に、ユーザが選択したネイルデザインを重畳した画像を表示部22に表示させて、実際の印刷開始前にユーザが仕上がりイメージを確認できる構成としてもよい。気に入らない場合には、操作部21を介してユーザがネイルデザインを選択入力しなおすことを可能にしてもよい。その他、制御部31は、ユーザに対する各種メッセージや各種指示などを表示部22に表示させる。
【0033】
また、制御部31は、撮像装置51及び照明装置52を制御し、撮像装置51により、指置部6に載置された印刷指を撮影させ、爪Tの画像を含む爪画像の爪画像データを取得させる。撮影部50により取得された爪画像の画像データは、記憶部32に記憶されてもよい。
【0034】
また、制御部31は、印刷指の爪Tの爪画像データから、爪情報として爪幅を取得し、爪幅と設定湾曲レベルに応じた湾曲レベル形状データと、に応じて、爪形状データを設定する。
【0035】
また、制御部31は、爪画像データから、印刷部40によって印刷すべき範囲としての印刷領域を特定する。制御部31が印刷領域を検出する具体的な手法は特に限定されないが、例えば、爪Tを含む印刷指と異なる色の下地を塗布した爪Tを撮影して得られた爪画像を解析して、下地が塗布されている領域を検出し、印刷領域として設定する。
【0036】
すなわち、爪Tは、何も塗られていない状態では指など、周囲の皮膚の色と区別がつきづらい。このため、ユーザは、爪Tの表面に予め白色などの下地や白色インクを塗布しておく。制御部31は、爪画像について輝度や明度、色合いなどを解析することにより、下地などの塗られている部分とそれ以外の部分とを区別して認識する。そして、制御部31は、設定された爪形状データ上において、下地などが塗られている領域を印刷領域とする。
【0037】
なお、制御部31が印刷指の爪Tについて印刷領域を特定するための情報は、爪画像データに限定されない。例えば爪Tの配置されている領域を検出するセンサなどを設けた場合には、当該センサによる検出情報などであってもよい。
【0038】
ここで、図3図4を参照して、従来の印刷装置におけるノズルNのうちの異なるインク吐出口(ノズル口)における着弾画像のずれを説明する。図3は、印刷ヘッドのノズルNと、ノズルNのノズル部N1,N2,N3におけるインクの着弾画像I1,I2,I3と、を示す図である。
【0039】
図3に示すように、印刷装置の往復移動する印刷ヘッドのノズルNにおいて、印刷ヘッドが主として移動する方向を主走査方向とし、主走査方向に垂直な方向を副走査方向とする。ノズルNは、マゼンタ(M)のインクを吐出する複数のインク吐出口IMと、イエロー(Y)のインクを吐出する複数のインク吐出口(ノズル口)IYと、シアン(C)のインクを吐出する複数のインク吐出口OCと、を有する。ノズルNのインク吐出口OY,OM,OCは、それぞれ、副走査方向に延在する337個が各1ライン状に配列されている。
【0040】
複数のインク吐出口OMは、図3の副走査方向の下から上への方向に、0~336のインク吐出口番号が順に付与されているものとする。同様に、複数のインク吐出口OYは、0~336のインク吐出口番号が順に付与されている。同様に、複数のインク吐出口OCは、0~336のインク吐出口番号が順に付与されている。このように、各色のインク吐出口に同じインク吐出口番号が付与されているため、色及びインク吐出口番号により、インク吐出口の特定が可能であるものとする。
【0041】
また、ノズルNのうち、インク吐出口番号が336付近の複数のインク吐出口をノズル部N1とし、インク吐出口番号が200付近の複数のインク吐出口をノズル部N2とし、インク吐出口番号が0付近の複数のインク吐出口をノズル部N3とする。
【0042】
ノズル部N1,N2,N3において、インク吐出口の下面からの間隙距離が1.5[mm]位置の印刷媒体へのインクの着弾の様子を撮影してインク着弾画像I1,I2,I3を得た。インク着弾画像I1,I2,I3において、右の着弾インクの列は、副走査方向のマゼンタ及びシアンの奇数のインク吐出口番号のインク吐出口から吐出した着弾インクを示す。中央の着弾インクの列は、副走査方向のマゼンタ及びシアンの偶数のインク吐出口番号のインク吐出口を用いて吐出した着弾インクを示す。左の着弾インクの列は、副走査方向のマゼンタ及びシアンの奇数及び偶数のインク吐出口番号のインク吐出口を用いて吐出した着弾インクを示す。インク着弾画像I1,I2,I3において、マゼンタの着弾インクは、濃いグレーで示されている。同じく、シアンの着弾インクは、薄いグレーで示されている。
【0043】
ノズルNの上側のノズル部N1の着弾画像I1と、下側のノズル部N3の着弾画像I3とにおいて、マゼンタ及びシアンのインクは、ほぼ同位置に着弾している。しかし、ノズルNの上下方向の中央付近のノズル部N2の着弾画像I2において、シアンのインクがマゼンタのインクの右側の位置に着弾している。
【0044】
図4は、シアンのインクの間隙距離別湾曲性を示す図である。間隙距離は、ノズルNのインク吐出面と、印刷媒体との間の距離である。図4に、シアンのインクのインク吐出口番号に対するインク吐出口位置からのインク着弾位置のずれ量[μm]を示す。間隙距離[mm]として、1.50、2.00、2.50、3.00をとった。
【0045】
間隙距離が1.50[mm]において、ずれ量は、インク吐出口番号336の位置で20[μm]弱である。同様に、ずれ量は、インク吐出口番号256の位置で30[μm]である。同様に、ずれ量は、インク吐出口番号176の位置で30[μm]強である。同様に、ずれ量は、インク吐出口番号96の位置で30[μm]弱である。同様に、ずれ量は、インク吐出口番号16の位置で10[μm]強である。
【0046】
つまり、間隙距離が1.50[mm]において、インク吐出口ごとのずれ量は、ノズルNの副走査方向の中央付近でピークとなるように湾曲している。また、間隙距離が大きくなるほどずれ量も大きくなっているのが分かる。
【0047】
ネイルプリント装置の様に、インク吐出面と着弾面との間隙距離が爪の両サイドと中心付近等位置によって異なる場合に、このようなインク吐出口ごとのずれ量を補正する場合には、インク吐出面とインクの着弾面との間隙距離毎にずれ量を測定しておく必要があった。また、間隙距離が3.00[mm]でのずれ量の測定では、図4に見られるように間隙距離が延びる為に着弾が乱れ、正確な値の取得は困難であった。
【0048】
つぎに、図5を参照して、本実施の形態における爪Tのノズル爪間距離dを説明する。図5は、爪T及び印刷ヘッド41並びにノズル爪間距離dを示す図である。
【0049】
爪Tに印刷をする場合、印刷ヘッド41は、X方向移動モータ46により主走査方向(左右方向)に移動してインクを吐出しつつ往復走査し、往復時の4回のインク吐出によって印刷が完了する。より厳密には、往復における主走査方向の左又は右の一方向の走査完了ごとに、印刷ヘッド41がY方向移動モータ48により副走査方向(前方向)に所定距離ずらされる。このようにして、爪Tの印刷範囲の各部が4回のインク吐出で印刷完了するように、主走査方向及び副走査方向の駆動とインク吐出とが制御される。
【0050】
印刷ヘッド41のノズルNの各インク吐出口の着弾インクのずれ量は、インクの色と、インク吐出口番号と、爪ノズル間距離dと、により決まる。図5に示すように、印刷ヘッド41が主走査方向Xに走査される場合に、インク吐出面421と爪Tの表面との間の上下方向の間隙距離を爪ノズル間距離dとする。ここでは、爪T高さがピークの爪幅位置における爪ノズル間距離dを、1.5[mm]に設定している。爪は湾曲しているため、ピークの爪幅位置から、主走査方向の両端側にいくにつれて、爪ノズル間距離dは次第に大きくなっていく。図4に示したように、爪ノズル間距離dが大きくなれば、着弾インクのずれ量も大きくなっていく。
【0051】
ここで、爪ノズル間距離dに応じた着弾インクのずれ量の補正値の算出を説明する。ここで、ずれ量は、印刷媒体の着弾面上で印刷吐出口の垂直下方の位置からの主走査方向の着弾インクのずれ量である。爪Tの爪幅位置に応じた爪ノズル間距離dによって補正値が決まるので、ノズル爪間距離d毎にずれ量を取得する必要がある。しかし、ノズル爪間距離d毎に補正量を測定することは着弾の乱れがあり、正しい補正値を取得するには複数回の測定を行いその平均値や中心値を取得する必要がある。また、複数の距離で測定をすることは、現実的ではない。
【0052】
そこで、爪ノズル間距離dについて、着弾の綺麗な間隙距離が1.5[mm]の位置で正確なずれ量[μm]を基準ずれ量Δeとして測定し、間隙距離が1.5[mm]の位置で補正値を取得する。間隙距離1.5[mm]は、インク吐出面421と指置部6上の印刷指の爪Tとの間の最も短い距離である。まず、インクの液滴の飛翔は直線的であるので、間隙距離が1.5[mm]の位置でインクを噴射して基準ずれ量Δeを測定する。そして、間隙距離が1.5[mm]で基準ずれ量Δe[μm]となる傾きkを算出する。そして、ノズル爪間距離d[mm]での補正値e[μm]を次式(1)により算出する。
e=k・d
=(Δe/1.5)・d …(1)
このように、爪幅位置に応じたノズル爪間距離dにより補正値(ずれ量)eを求められる。
【0053】
ここで、図3に示したように、着弾インクのずれ量は、インク吐出口番号(インク吐出口の位置)によって異なっている。このため、全てのインク吐出口毎に補正値を求める必要があるが、現実的ではない。図3に示したように、ずれ量はインク吐出口番号に応じて少しずつ変化しており、例えば副走査方向の隣同士のインク吐出口では、そのずれ量はほぼ同じである。
【0054】
したがって、インク吐出口をブロック分けして補正値を取得する方法を考えた。例えば図3図4のように全てのインク吐出口を5つのブロックに分ける。具体的には、インク吐出口番号が336付近のブロックと、同じく256付近のブロックと、同じく176付近のブロックと、同じく96付近のブロックと、同じく16付近のブロックとで、間隙距離1.5[mm]の基準ずれ量Δeを取得する。5つに分けたブロックに含まれるインク吐出口は、ブロック内で同じ共通の基準ずれ量Δeに基づく補正値eで補正しても良いものとする。
【0055】
実験では、インク吐出口番号が16付近のブロックは、例えば、インク吐出口番号が0~16のインク吐出口での基準ずれ量Δeを測定している。付近とは、インク吐出口番号が16などの所定のインク吐出口の近辺の10~20程度のインク吐出口の着弾インクの基準ずれ量Δeの中心値を求めている。また、近辺以外のインク吐出口の基準ずれ量Δeは2点間の線形補間でも良いし、全ブロックの5点の基準ずれ量Δeの近似曲線から求めても良い。
【0056】
図6は、異なるインク吐出口番号のインク吐出口の着弾インクのずれ量の予測値及び実測値を示す図である。図6に示すように、インク吐出口番号が336、256、176、96、16のインク吐出口における間隙距離[mm]に対する着弾インクのずれ量[μm]の予測値及び実測値を示す。図6において、ずれ量[μm]の予測値を点線で示し、同じく実測値を実線で示した。ずれ量[μm]の予測値は、間隙距離が1.50[mm]の着弾インクの基準ずれ量Δe[μm]の実測値と原点(間隙距離[mm]=0、ずれ量=0[μm])との傾きkを用いて、各間隙距離(2.00[mm]、2.50[mm]3.00[mm])のずれ量[μm]を算出した値である。
【0057】
ずれ量[μm]の実測値は、距離が大きくなるほど測定誤差などがあるが、ほぼ予測値に近い。このため、ずれ量[μm]の実測値は、間隙距離が1.50[mm]の基準ずれ量Δe[μm]から算出した傾きkを用いて算出した予測値で予測できることが理解できる。
【0058】
また、着弾インクのずれ量は、インクの色によっても異なる。このため、補正情報322は、上記のように、インク吐出口番号のブロックと、インクの色と、に対応する基準ずれ量Δeを含めるものとする。補正情報322は、あらかじめ設定されて記憶部32に記憶されている。
【0059】
つぎに、図7及び図8を参照して、ネイルプリント装置1の動作を説明する。図7は、第1の印刷処理を示すフローチャートである。図8は、第1の印刷処理の第1の補正処理を示すフローチャートである。
【0060】
あらかじめ、インク吐出口番号のブロック及びインクの色に対応する各基準ずれ量Δeと、爪の湾曲レベルごとの湾曲形状データと、を含む補正情報322が記憶部32に記憶されているものとする。また、ユーザの爪に対応する設定湾曲レベルが設定されて記憶部32に記憶されているものとする。また、ユーザは、印刷指の爪に下地(ベースコート)、プレプリントコートを塗っておく。
【0061】
ネイルプリント装置1において、制御部31は、操作部21を介してユーザから第1の印刷処理の実行指示の入力を受け付ける。当該入力をトリガとして、制御部31は、記憶部32に記憶された第1の印刷プログラムP1に従い、第1の印刷処理を実行する。
【0062】
図7に示すように、制御部31は、ネイルデザインの一覧を含むデザイン選択画面を表示部22に表示し、操作部21を介してユーザから印刷するネイルデザインの選択入力を受け付ける(ステップS11)。ステップS11において、制御部31は、ネイルのデザインデータ321を記憶部32から読み出してデザインデータ321に基づくデザイン選択画面を表示する。
【0063】
そして、制御部31は、爪の設定湾曲レベルを記憶部32から読み出す(ステップS12)。ここで、ユーザは、印刷指を指置部6に置く。そして、制御部31は、撮影部50により、印刷指を撮影して印刷対象となる爪の写真である爪画像データを取得する(ステップS13)。
【0064】
そして、制御部31は、ステップS13で取得された爪画像データを画像解析して爪情報を取得する(ステップS14)。爪情報は、爪幅と、印刷領域とである。そして、制御部31は、ステップS11で選択されたネイルデザインと、ステップS13で取得された爪情報の印刷領域とから、爪の印刷用の印刷画像データを生成する(ステップS15)。印刷画像データは、ネイルデザインを印刷領域に合わせ込み、適宜補正などを行って生成される。
【0065】
そして、制御部31は、ステップS15で生成された印刷画像データから、次に主走査方向(左方向又は右方向)へ印刷ヘッド41を走査して印刷するためのシングリングデータを生成する(ステップS16)。そして、制御部31は、ヘッド移動機構49により、印刷ヘッド41を次の主走査方向の走査の初期位置に移動してセットする(ステップS17)。初期位置は、副走査方向にシングリンデータの幅(副走査方向の長さ)分の所定量ずらした後の、左端又は右端の位置である。
【0066】
そして、制御部31は、第1の補正処理を実行する(ステップS18)。ここで、図8を参照して、ステップS18の第1の補正処理を説明する。まず、制御部31は、爪幅位置に応じたノズル爪間距離を取得する(ステップS31)。
【0067】
ステップS31において、制御部31は、ステップS12で取得された設定湾曲レベルに対応する湾曲レベル形状データを記憶部32の補正情報322から読み出す。制御部31は、読み出した湾曲レベル形状データとステップS14で取得された爪幅とに基づいて、爪の湾曲形状データを生成する。湾曲形状データは、ユーザの爪Tに対応する図5の太線の形状データである。制御部31は、爪の湾曲形状データにおいて、爪高さがピークとなる印刷基準位置のノズル爪間距離dを所定値(基準ずれ量Δeのノズル爪間距離であり、例えば、1.5[mm])にする。制御部31は、爪の湾曲形状データにおいて、爪幅位置における、爪自体の爪高さと爪幅位置の爪高さとの差を取得し、当該差に基準ずれ量Δeのノズル爪間距離を加算することにより、爪幅位置に応じたノズル爪間距離を取得する。
【0068】
なお、ステップS31において、ネイルプリント装置1が、測距センサを備え、制御部31が、測距センサにより、爪幅位置に応じたノズル爪間距離dを実測して取得する構成としてもよい。
【0069】
そして、制御部31は、ノズルNのインク吐出口について、インクの色とインク吐出口番号のブロックとに対応する基準ずれ量Δeを記憶部32の補正情報322から読み出す(ステップS32)。同一ブロック内のインク吐出口の基準ずれ量Δe、補正係数kは、同じ値となる。そして、制御部31は、ステップS31で取得した爪幅位置に応じたノズル爪間距離dと、ステップS32で取得したインク吐出口の基準ずれ量Δeと、を式(1)に代入して、各爪幅位置における各色の各インク吐出口の補正値eを算出する(ステップS33)。
【0070】
そして、制御部31は、ステップS33で算出された各爪幅位置における各色の各インク吐出口の補正値eに基づいて、着弾インクのずれ量を補正するように、ステップS16で生成されたシングリングデータを補正する(ステップS34)。ステップS34では、例えばあるインク吐出口において、噴射するタイミングで着弾インクが本来の位置より1画素分右側へずれるのであれば、そのタイミングで1画素右側の画素を噴射するようにシングリングデータが画像補正される。
【0071】
図7に戻り、制御部31は、ステップS34で補正されたシングリングデータに基づいて、印刷部40の駆動により、主走査方向の1方向分の爪画像を印刷指の爪に印刷する(ステップS19)。そして、制御部31は、ステップS15で生成した印刷画像データに対応する全てのシングリングデータを印刷終了したか否かを判別する(ステップS20)。印刷終了していない場合(ステップS20;NO)、処理はステップS16に移行される。印刷終了した場合(ステップS20;YES)、第1の印刷処理が終了する。
【0072】
上記の第1の印刷処理では、ステップS20でシングリングデータを印刷しながら、ステップS16~S18で新たな補正したシングリングデータを作成する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、ステップS16,S18の処理を全てのシングリングデータについて行った後、ステップS17,S19で、全ての補正後のシングリングデータが順に印刷される構成としてもよい。
【0073】
以上、本実施の形態によれば、ネイルプリント装置1は、記憶部32と、制御部31と、を備える。記憶部32は、印刷ヘッド41のノズルNの各インク吐出口に対応した着弾インクのずれ量を補正するための基準ずれ量を記憶する。制御部31は、各インク吐出口から爪Tまでのノズル爪間距離dを取得し、ノズル爪間距離dと各インク吐出口の基準ずれ量Δeとから、着弾インクのずれ量を補正するための補正値eを算出し、補正値eに基づいて、印刷ヘッド41の印刷の制御を行う。
【0074】
このため、インク吐出口ごとに異なる着弾インクのずれ量を爪Tの湾曲に合わせて補正でき、印刷精度を高めることができる。
【0075】
また、基準ずれ量は、インク吐出口から爪への最も短い距離(ここでは1.5[mm])で測定されたずれ量である。インク吐出口から爪への最も短い距離は、インク吐出口から爪への着弾インクのずれ量が少ない。このため、ノズル爪間距離dを変化(大きく)しても、算出した補正値eとそのずれ量の実測値との差を小さくできる。
【0076】
また、記憶部32は、複数のインク吐出口からなるブロック内で共通の基準ずれ量をブロックごとに記憶する。制御部31は、取得されたノズル爪間距離dと各インク吐出口が属するブロックごとの基準ずれ量Δeとから、補正値eを算出する。このため、記憶部32の記憶容量を低減できるとともに、各インク吐出口の補正値eの算出の処理負担を低減できる。
【0077】
また、制御部31は、算出された補正値eに基づいて、印刷ヘッド41に印刷させるシングリングデータの補正を行う。このため、印刷精度を高めることができるとともに、インクの噴射制御の処理負担を軽減できる。
【0078】
また、基準ずれ量Δeは、インクの色ごとの情報である。このため、各色のインクの特性に基づくずれ量を、色ごとにより正確に補正でき、印刷精度をより高めることができる。
【0079】
また、ネイルプリント装置1は、記憶部32と、制御部31と、印刷ヘッド41と、を備える。このため、装置構成を簡単にすることができる。
【0080】
(変形例)
図9図10を参照して、上記実施の形態の変形例を説明する。図9は、第2の印刷処理を示すフローチャートである。図10は、第2の印刷処理の第2の補正処理を示すフローチャートである。
【0081】
上記実施の形態は、着弾インクのずれ量を補正するために、画像データ(シングリングデータ)を補正する構成であった。本変形例は、着弾インクのずれ量を補正するために、インクの噴射タイミングを補正する構成である。
【0082】
本変形例の装置構成は、上記実施の形態と同様に、ネイルプリント装置1を用いるものとする。ただし、記憶部32には、第1の印刷プログラムP1に代えて、後述する第2の印刷処理を実行するための第2の印刷プログラムが記憶されているものとする。
【0083】
つぎに、図9図10を参照して、ネイルプリント装置1の動作を説明する。あらかじめ、インク吐出口番号のブロック及びインクの色に対応する基準ずれ量Δeと、爪の湾曲レベルごとの湾曲形状データと、を含む補正情報322が記憶部32に記憶されているものとする。また、ユーザの爪に対応する設定湾曲レベルが設定されて記憶部32に記憶されているものとする。また、ユーザは、印刷指の爪に下地(ベースコート)、プレプリントコートを塗っておく。
【0084】
ネイルプリント装置1において、制御部31は、操作部21を介してユーザから第2の印刷処理の実行指示の入力を受け付ける。当該入力をトリガとして、制御部31は、記憶部32に記憶された第2の印刷プログラムに従い、第2の印刷処理を実行する。
【0085】
図9に示すように、ステップS41~S47は、図7の第1の印刷処理のS11~S17と同様である。そして、制御部31は、第2の補正処理を実行する(ステップS48)。ここで、図10を参照して、ステップS48の第2の補正処理を説明する。ステップS61~S63は、図8の第1の補正処理のS31~S33と同様である。
【0086】
そして、制御部31は、ステップS33で算出された各爪幅位置における各色の各インク吐出口の補正値eに基づいて、着弾インクのずれ量を補正するように、各爪幅位置における各色の各インク吐出口のインクの噴射タイミングを補正する(ステップS64)。ステップS64では、例えば、主走査方向の左から右へ走査の印刷時には、噴射するタイミングで着弾が本来の位置より右側へずれるのであれば、本来の噴射タイミングより1画素分早く噴射するように噴射タイミングを補正する。
【0087】
図9に戻り、制御部31は、ステップS46で生成されたシングリングデータに基づいて、ステップS64の補正後の噴射タイミングでの印刷部40の駆動により、主走査方向の1方向分の爪画像を印刷指の爪に印刷する(ステップS49)。ステップS50は、図7の第1の印刷処理のS20と同様である。
【0088】
なお、上記の第2の印刷処理でも、例えば、ステップS46,S48の処理を全てのシングリングデータについて行った後、ステップS47,S49で、全てのシングリングデータが補正後の噴射タイミングにより印刷される構成としてもよい。
【0089】
以上、本変形例によれば、制御部31は、算出された補正値eに基づいて、印刷ヘッド41の各インク吐出口のインクの噴射タイミングの補正を行う。このため、印刷精度を高めることができるとともに、画像処理の負担を軽減できる。
【0090】
以上の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてROM、フラッシュメモリなどの記憶部32を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、他の不揮発性メモリ、CD-ROMなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【0091】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る印刷制御装置、印刷装置、印刷制御方法及びプログラムの一例であり、これに限定されるものではない。
【0092】
上記実施の形態では、ネイルプリント装置1の制御部31が第1の印刷処理又は第2の印刷処理を実行し、ネイルプリント装置1が単体で印刷処理を完結させる構成を例示した。しかし、印刷処理の主体が制御部31である構成に限定されない。例えば、ネイルプリント装置1が外部装置(例えばスマートフォンなどの端末装置)と連携している場合には、外部装置の制御部などが、印刷制御装置の印刷処理の主体として機能してもよい。外部装置が、表示部及び操作部を有する場合には、ネイルプリント装置1が操作部21及び表示部22を有しない構成としてもよい。また、外部装置とネイルプリント装置1とには、互いに無線通信などの通信を行う通信部を備える。
【0093】
この構成では、例えば外部装置の記憶部などに、ネイルプリント装置1と連携するためのネイルプリントアプリケーションプログラムなど、所定の印刷をネイルプリント装置1に行わせるためのプログラムや、デザインデータ321、補正情報322などの各種データが記憶される。
【0094】
この構成では、外部装置の制御部が、例えば第1の印刷処理又は第2の印刷処理の各ステップの少なくとも一部を実行する。例えば、外部装置の制御部が、ネイルプリント装置1の撮影部50を制御して爪画像データを取得させ、当該爪画像データ受信して画像解析する。また、例えば、外部装置の制御部は、印刷画像データ及び補正後のシングリングデータ(又はシングリングデータ及び補正後の噴射タイミング)を生成して、ネイルプリント装置1に送信し印刷部40により印刷させる。
【0095】
この構成によれば、ネイルプリント装置1の制御部31や記憶部32にかかる負荷を軽減することができ、ネイルプリント装置1の制御構成をより簡易にできる。
【0096】
本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0097】
1 ネイルプリント装置
2 筐体
21 操作部
22 表示部
23 指挿入口
24 開口部
25 蓋部
7 端末装置
30 制御装置
31 制御部
32 記憶部
40 印刷部
41 印刷ヘッド
N ノズル
421 インク吐出面
46 X方向移動モータ
48 Y方向移動モータ
49 ヘッド移動機構
50 撮影部
51 撮像装置
52 照明装置
6 指置部
62 載置部材
62a 窪み部
T 爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10