(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025106561
(43)【公開日】2025-07-15
(54)【発明の名称】転写シート、物品の製造方法および離型フィルム付物品
(51)【国際特許分類】
B32B 7/06 20190101AFI20250708BHJP
【FI】
B32B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025067498
(22)【出願日】2025-04-16
(62)【分割の表示】P 2023055061の分割
【原出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】杉田 夏生
(72)【発明者】
【氏名】古田 哲
(72)【発明者】
【氏名】林 優美子
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コーナー部における転写シートの浮きを抑制すること、スプリングバックによる離型フィルムの部分剥離を抑制すること、および、離型フィルムを転写層から良好に剥離可能であること、を両立した転写シートを提供する。
【解決手段】離型フィルムと、上記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、上記離型フィルムのループスティフネスが、0.18N/15mm以下であり、上記離型フィルムおよび上記転写層の剥離強度が、0.7N/25mm以下であり、上記ループスティフネスをXとし、上記剥離強度をYとした場合に、上記Xおよび上記Yは、Y≧0.67X+0.17を満たす、転写シートが提供される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写シートであって、
前記転写シートは、離型フィルムと、前記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、
前記離型フィルムのループスティフネスが、0.18N/15mm以下であり、
前記離型フィルムおよび前記転写層の剥離強度が、0.7N/25mm以下であり、
前記ループスティフネスをXとし、前記剥離強度をYとした場合に、前記Xおよび前記Yは、Y≧0.67X+0.17を満たす、転写シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写シート、物品の製造方法および離型フィルム付物品に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材および樹脂部材等の被着体に、転写シートにおける転写層(転写シートから転写される層)を転写することで、被着体を加飾することが知られている。例えば特許文献1には、アルミニウム基材の外面に酸化皮膜層が配され、その外面に加飾層が配されており、該加飾層の表面に模様が施されている雨樋が開示されている。具体的に、特許文献1には、アルマイト処理したアルミニウム基材の外面に、水圧転写処理で加飾層を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の面を有する被着体に、転写シートにおける転写層を転写する際に、転写シートにおける離型フィルムのコシ(スティフネス)に起因して、被着体のコーナー部において、転写シートが被着体から浮くことがある。また、転写シートを被着体に密着させた後に、離型フィルムのコシに起因して、離型フィルムが転写層から部分的に剥離することがある(スプリングバックによる離型フィルムの部分剥離)。さらに、転写シートには、転写シートを被着体に密着させた後に、離型フィルムを転写層から良好に剥離可能であることが求められている。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、コーナー部における転写シートの浮きを抑制すること、スプリングバックによる離型フィルムの部分剥離を抑制すること、および、離型フィルムを転写層から良好に剥離可能であること、を両立した転写シートを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示においては、転写シートであって、上記転写シートは、離型フィルムと、上記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、上記離型フィルムのループスティフネスが、0.18N/15mm以下であり、上記離型フィルムおよび上記転写層の剥離強度が、0.7N/25mm以下であり、上記ループスティフネスをXとし、上記剥離強度をYとした場合に、上記Xおよび上記Yは、Y≧0.67X+0.17を満たす、転写シートを提供する。
【0007】
本開示においては、複数の面を有する被着体と、上述した転写シートと、を準備する準備工程と、上記被着体における上記複数の面に対して、ローラーを用いて、上記転写シートにおける上記転写層を、順次貼り合わせるラッピング加工工程と、を有する、物品の製造方法を提供する。
【0008】
本開示においては、複数の面を有する被着体と、上記複数の面に追従して配置された転写層と、上記転写層に追従して配置された離型フィルムと、を有し、
前記離型フィルムのループスティフネスが、0.18N/15mm以下であり、
前記離型フィルムおよび前記転写層の剥離強度が、0.7N/25mm以下であり、
前記ループスティフネスをXとし、前記剥離強度をYとした場合に、前記Xおよび前記Yは、Y≧0.67X+0.17を満たす、離型フィルム付物品を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示においては、コーナー部における転写シートの浮きを抑制すること、スプリングバックによる離型フィルムの部分剥離を抑制すること、および、離型フィルムを転写層から良好に剥離可能であること、を両立した転写シートを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示における転写シートを例示する概略断面図である。
【
図2】本開示におけるループスティフネスの測定方法の概略を説明する説明図である。
【
図3】本開示におけるラッピング加工工程を例示する概略側面図である。
【
図4】
図3におけるA-A断面図、B-B断面図、C-C断面図、D-D断面図、およびE-E断面図である。
【
図5】各ローラーの軸方向を説明する説明図である。
【
図6】本開示における離型フィルム付物品の一部、および、本開示における物品の一部を例示する概略断面図である。
【
図7】実施例1~5および比較例1~3における、ループスティフネスおよび剥離強度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記に、図面等を参照しながら、実施の形態を説明する。ただし、本開示は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定されるべきではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状について模式的に表す場合があるが、これはあくまで一例であり、限定して解釈されるべきではない。
【0012】
本明細書において、ある部材に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。
【0013】
以下、本開示における、転写シート、物品の製造方法および離型フィルム付物品について、詳細に説明する。
【0014】
A.転写シート
図1(a)は、本開示における転写シートを例示する概略断面図である。
図1(a)に示すように、転写シート10は、離型フィルム1と、離型フィルム1の一方の面に配置された転写層Xと、を有する。
図1(a)に示す転写層Xは、離型フィルム1側から、第1保護層2および第2保護層3を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有する。また、
図1(b)に示すように、転写シート10は、第2保護層3の第1保護層2とは反対側の面に、意匠層4を有していてもよい。本開示においては、離型フィルム1のループスティフネスが、所定の範囲にある。また、離型フィルム1および転写層Xの剥離強度が、所定の範囲にある。さらに、離型フィルム1のループスティフネスと、離型フィルム1および転写層Xの剥離強度とは、所定の関係を満たす。
【0015】
本開示によれば、上記ループスティフネスおよび上記剥離強度が、それぞれ特定の範囲にあり、さらに、上記ループスティフネスおよび上記剥離強度が、特定の関係を満たすことで、コーナー部における転写シートの浮きを抑制すること、スプリングバックによる離型フィルムの部分剥離を抑制すること、および、離型フィルムを転写層から良好に剥離可能であること、を両立した転写シートとなる。
【0016】
上述したように、複数の面を有する被着体に、転写シートにおける転写層を転写する際に、転写シートにおける離型フィルムのコシ(スティフネス)に起因して、被着体のコーナー部において、転写シートが被着体に十分に密着せず、転写シートが被着体から浮くことがある。被着体のコーナー部とは、隣り合う面の境界部である。コーナー部における転写シートの浮きは、製品不良につながるため、生じないことが好ましい。また、転写シートを被着体に密着させた後に、離型フィルムのコシに起因して、離型フィルムが転写層から部分的に剥離することがある(スプリングバックによる離型フィルムの部分剥離)。転写シートを被着体に密着させた後、離型フィルムは、被着体および転写層を外部の衝撃から保護する保護フィルムとして機能する。そのため、スプリングバックによる離型フィルムの部分剥離は生じないことが好ましい。さらに、転写シートには、転写シートを被着体に密着させた後に、離型フィルムを転写層から良好に剥離可能であることが求められている。
【0017】
特に、転写シートを被着体に密着させた直後の段階では、スプリングバックによって離型フィルムが転写層から部分剥離することを抑制することが求められている。一方で、最終的には、保護フィルムとしても機能する離型フィルムを転写層から良好に剥離可能であることが求められている。このような相反する課題に対して、本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、離型フィルムおよび転写層の剥離強度が特定の範囲にあり、さらに、上記剥離強度と、離型フィルムのループスティフネスとが、特定の関係を満たすことで、上記の相反する課題を解決できることを見出した。さらに、本件発明者らは、離型フィルムのループスティフネスが特定の範囲にあることで、複数の面を有する被着体に転写層を貼着する場合であっても、コーナー部における転写シートの浮きが生じることを抑制できることを見出した。
【0018】
また、後述するように、本開示における転写シートは、ラッピング加工に用いられることが好ましい。ラッピング加工は、被着体における複数の面に対して、ローラーを用いて、転写シートにおける転写層を、順次貼り合わせる加工である。離型フィルムおよび転写層の剥離強度は、例えば、転写層を構成する各層の剥離強度に比べて低いため、ラッピング加工のように、複数の面に対して、転写シートを順次貼り合わせると、上述したスプリングバックによる離型フィルムの部分剥離が生じやすい。これに対して、本開示においては、離型フィルムおよび転写層の剥離強度が特定の範囲にあり、さらに、上記剥離強度と、離型フィルムのループスティフネスとが、特定の関係を満たすことで、スプリングバックによって離型フィルムが転写層から部分剥離することを抑制しつつ、最終的には、保護フィルムとしても機能する離型フィルムを転写層から良好に剥離することができる。
【0019】
また、後述するように、本開示における転写シートは、外装品(屋外用途の物品)の製造に用いられる転写シートとして有用である。外装品は、内装品(屋内用途の物品)に比べて、過酷な環境に曝されるため、高い耐候性が求められる。例えば、化粧シートを用いて外装品を製造する場合、強度向上を目的として、化粧シートに透明樹脂層を設ける場合がある。この場合、透明樹脂層は比較的厚い層であるため、例えば透明樹脂層に十分な量の耐候剤を添加することで、高い耐候性が付与される。これに対して、透明樹脂層に該当する層を有しない転写シートに、高い耐候性を付与することは、技術的な困難性が高い。本開示においては、後述するように、転写層が第1保護層および第2保護層を有し、かつ、第1保護層および第2保護層の両方が耐候剤を含有することが好ましい。これにより、第1保護層に求められる特性(例えば耐擦傷性等の表面特性)、および、第2保護層に求められる特性(例えば密着性)を維持しつつ、高い耐候性を付与することができる。
【0020】
また、転写シートの場合、第1保護層および第2保護層の密着性は不足しやすい。ここで、化粧シートの場合、通常、基材層上に意匠層を形成し、次に、意匠層上に第2保護層を形成し、次に、第2保護層上に第1保護層を形成する。第1保護層は、典型的には、第2保護層上に形成された第1保護層形成用の組成物を硬化することで作製されるため、第1保護層および第2保護層の密着性は良好になる。これに対して、転写シートの場合、通常、離型フィルム上に第1保護層を形成し、次に、第1保護層上に第2保護層を形成し、次に、第2保護層上に意匠層を形成する。第1保護層は、典型的には、離型フィルム上に第1保護層用形成用の組成物を硬化することで作製される。その硬化した第1保護層上に、第2保護層を形成するため、第1保護層および第2保護層の密着性は不足しやすい。本開示においては、第2保護層は第1保護層よりも柔軟性が高い層であることが好ましい。これにより、第1保護層および第2保護層の密着性を高くすることができる。
【0021】
1.ループスティフネスおよび剥離強度
本開示においては、離型フィルムのループスティフネスが、特定の範囲にある。また、本開示においては、離型フィルムおよび転写層の剥離強度が、特定の範囲にある。さらに、本開示においては、上記ループスティフネスおよび上記剥離強度が、特定の関係を満たす。
【0022】
(1)ループスティフネス
本開示においては、離型フィルムのループスティフネスが、特定の範囲にある。ループスティフネスにより、離型フィルムのコシの程度が特定される。
図2は、本開示におけるループスティフネスの測定方法の概略を説明する説明図である。
図2に示すように、転写シートから剥離した離型フィルム1をカットし、短冊状のサンプルを作製し、離型フィルム1の端部同士を重ね合わせることで離型フィルム1をループ状に変形させる。その後、重ね合わせた端部同士を、ループスティフネステスタの固定治具41で固定する。固定治具41により固定された、ループ状の離型フィルム1に対して、ループスティフネステスタの加圧治具42を鉛直方向から押し当て、圧縮時の応力を測定する。本開示においては、転写シートから剥離した離型フィルムを、幅15mm、長さ150mmの短冊状にカットして、サンプルを作製する。さらに、ループスティフネステスタに、ループ長さが60mmとなるようにサンプルを固定し、加圧治具を鉛直方向から押し当て、圧縮時の応力を測定し、その応力の最大値をループスティフネスとして求める。
【0023】
離型フィルムのループスティフネスは、通常、0.18N/15mm以下であり、0.15N/15mm以下であってもよい。離型フィルムのループスティフネスが大きすぎると、コーナー部における転写シートの浮きが生じやすくなる。一方、離型フィルムのループスティフネスは、例えば0.005N/15mm以上であり、0.010N/15mm以上であってもよく、0.012N/15mm以上であってもよい。離型フィルムのループスティフネスは、例えば、離型フィルムの厚さにより調整できる。離型フィルムが厚いほど、通常、ループスティフネスは大きくなる。
【0024】
(2)剥離強度
本開示においては、離型フィルムおよび転写層の剥離強度が、特定の範囲にある。離型フィルムおよび転写層の剥離強度は、以下の方法で測定される。まず、転写シートを幅25mmにカットし、離型フィルムの転写層とは反対側の面の全面に、両面テープを貼付け、幅25mmの金属板に離型フィルムを固定する。次に、転写層の離型フィルムとは反対側の面の全面に、幅25mmのニチバン製セロテープ(登録商標)を貼り付ける。次に、剥離強度試験装置を用いて、剥離速度:200mm/min、剥離角度:90°の条件で剥離強度を測定する。上降伏点を超えたのち、下降伏点荷重に至った点から20mmまでの剥離強度の積分平均値を取り、剥離強度(N/25mm)を算出する。
【0025】
離型フィルムおよび転写層の剥離強度は、通常、0.7N/25mm以下であり、0.6N/25mm以下であってもよい。離型フィルムおよび転写層の剥離強度が大きすぎると、離型フィルムを転写層から良好に剥離することが困難になる。一方、離型フィルムおよび転写層の剥離強度は、例えば0.17N/25mm以上であり、0.19N/25mm以上であってもよい。離型フィルムおよび転写層の剥離強度は、例えば、離型フィルムの転写層側の面の表面性状、および、転写層(例えば保護層)の硬さにより調整できる。例えば、離型フィルムの転写層側の面の表面粗さが大きいほど、通常、離型フィルムおよび転写層の剥離強度は小さくなる。また、転写層(例えば保護層)が柔らかいほど、通常、離型フィルムおよび転写層の剥離強度は大きくなる。
【0026】
(3)ループスティフネスおよび剥離強度の関係性
本開示において、上記ループスティフネスをXとし、上記剥離強度をYとした場合に、上記Xおよび上記Yは、通常、Y≧0.67X+0.17を満たす。上記Xおよび上記Yが関係式1を満たすことにより、スプリングバックによる離型フィルムの部分剥離を抑制できる。後述する実施例に記載するように、上記Xおよび上記Yは、Y≧0.67X+0.19を満たしていてもよい。また、上記Xおよび上記Yは、Y≦2.99X+0.03を満たしてもよい。
【0027】
2.転写層
本開示における転写層は、転写シートから転写される層である。転写層は、被着体の表面を保護する保護層を有することが好ましい。また、転写層は、保護層の離型フィルムとは反対側の面に、意匠層を有することが好ましい。
【0028】
(1)保護層
本開示における転写層は、保護層を有することが好ましい。保護層については、特に限定されない。また、転写層は、保護層を1層のみ有していてもよく、保護層を2層以上有していてもよい。例えば、転写層は、後述する第1保護層の単層であってもよく、後述する第2保護層の単層であってもよい。中でも、転写層は、離型フィルム側から、後述する第1保護層および第2保護層を、厚さ方向において、この順に有することが好ましい。特に、外装品(屋外用途の物品)に用いられる転写シートとして有用だからである。
【0029】
(i)第1保護層
本開示における転写層は、第1保護層を有することが好ましい。第1保護層は、物品の表面特性(例えば耐傷性)の向上に寄与する。第1保護層および離型フィルムは、直接接触するように配置されていてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。
【0030】
第1保護層は、樹脂成分として、硬化性樹脂組成物の硬化物(架橋構造体)を含むことが好ましい。硬化性樹脂組成物の硬化物の割合は、第1保護層を構成する全樹脂成分に対して、例えば、70質量%以上であり、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0031】
第1保護層に用いられる硬化性樹脂組成物としては、例えば、電離放射線硬化性樹脂組成物および熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂組成物としては、例えば、電子線硬化性樹脂組成物、紫外線硬化性樹脂組成物が挙げられる。これらの中でも、重合開始剤が不要のため臭気が少なく、着色が生じにくいことから、電子線硬化性樹脂組成物が好ましい。
【0032】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する官能基が挙げられる。なお、本開示において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはメタクロイル基をいう。
【0033】
電離放射線とは、電磁波または荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものをいう。電離放射線としては、例えば、電子線(EB)および紫外線(UV)が挙げられる。また、電離放射線の他の例としては、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線が挙げられる。
【0034】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性化合物として、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。中でも、電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性化合物として、ウレタン(メタ)アクリレートを少なくとも含むことが好ましい。本開示において、ウレタン(メタ)アクリレートとは、ウレタンアクリレートまたはウレタンメタクリレートをいう。ウレタン(メタ)アクリレートは、カプロラクタン系ウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0035】
電離放射線硬化性樹脂組成物がカプロラクタン系ウレタン(メタ)アクリレートを含有する場合、カプロラクタン系ウレタン(メタ)アクリレートの官能基数は、2以上4以下が好ましく、2以上3以下がより好ましい。
【0036】
また、電離放射線硬化性樹脂組成物は、カプロラクタン系ウレタン(メタ)アクリレートと、カプロラクタン変性されていないウレタン(メタ)アクリレートと含んでいてもよい。この場合、第1保護層に含まれるカプロラクタン系ウレタン(メタ)アクリレートの含有量をMCLUAとし、カプロラクタン変性されていないウレタン(メタ)アクリレートの含有量をMUAとする。MUAおよびMCLUAの合計に対するMCLUAの質量比(MCLUA/(MUA+MCLUA))は、例えば、40質量%以上90質量%以下であり、45質量%以上80質量%以下であってもよく、50質量%以上70質量%以下であってもよい。
【0037】
カプロラクタン系ウレタン(メタ)アクリレートは、通常、カプロラクタン系ポリオールと、有機イソシアネートと、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応により得ることができる。合成法としては、例えば、ポリカプロラクタン系ポリオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて、両末端に-NCO基(イソシアナート基)を含有するポリウレタンプレポリマーを生成させた後に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートと反応させる方法が挙げられる。
【0038】
カプロラクタン系ポリオールとして、市販されるものを使用することができ、好ましくは2個の水酸基を有し、数平均分子量が好ましくは500~3000、より好ましくは750~2000のものが挙げられる。また、カプロラクタン系以外のポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のポリオールを1種または複数種を任意の割合で混合して使用することもできる。有機ポリイソシアネートとしては、2個のイソシアネート基を有するジイソシアネートが好ましく、黄変を抑制する観点から、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が好ましく挙げられる。ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、カプロラクタン変性-2-ヒドロキシエチルアクリレート等が好ましく挙げられる。
【0039】
電離放射線硬化性樹脂組成物がカプロラクタン系ポリオールを含む場合、カプロラクタン系ウレタン(メタ)アクリレートは、カプロラクタンジオール系ウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。カプロラクタンジオール系ウレタン(メタ)アクリレートとは、カプロラクタン系ウレタン(メタ)アクリレートのうち、末端がジエチレングリコールであるウレタン(メタ)アクリレートをいう。カプロラクタンジオール系ウレタン(メタ)アクリレートを用いることで、第1保護層に、割れおよび白化が生じることを抑制できる。
【0040】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性化合物として、水酸基含有(メタ)アクリレートを含有していてもよい。水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イソシアヌル酸モノアクリレート、イソシアヌル酸モノメタクリレート、イソシアヌル酸ジアクリレート、イソシアヌル酸ジメタクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリンジメタクリレートが挙げられる。また、水酸基含有(メタ)アクリレートは、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、カプロラクタン等により変性した水酸基含有(メタ)アクリレートであってもよい。また、電離放射線硬化性樹脂組成物における水酸基含有(メタ)アクリレートの割合は、例えば10質量%以上90質量%以下である。
【0041】
電離放射線硬化性化合物の数平均分子量は、例えば、200以上10,000以下であり、1,000以上10,000以下であってもよく、2,000以上10,000以下であってもよい。数平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0042】
例えば、電離放射線硬化性化合物が、紫外線硬化性化合物である場合、電離放射線硬化性化合物は、光重合開始剤および光重合促進剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、アシルフォスフィンオキサイド、チオキサントン類が挙げられる。光重合促進剤としては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルが挙げられる。
【0043】
第1保護層は、耐候剤を含有することが好ましい。耐候剤としては、例えば、紫外線吸収剤および光安定剤が挙げられる。第1保護層は、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一つを含むことが好ましい。第1保護層は、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含んでいてもよい。同様に、第1保護層は、1種または2種以上の光安定剤を含んでいてもよい。
【0044】
第1保護層に含まれる紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノ(メタ)アクリレート系紫外線吸収剤等の有機系紫外線吸収剤、二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中でも、トリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。
【0045】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2'-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールが挙げられる。
【0046】
第1保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、電離放射線硬化性化合物100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上10質量部以下であり、0.8質量部以上8質量部以下であってもよく、1質量部以上5質量部以下であってもよい。紫外線吸収剤の含有量が多いと、紫外線吸収剤のブリードアウトが発生する可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が少ないと、十分な紫外線吸収性能が得られない可能性がある。
【0047】
第1保護層に含まれる光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルメタクリレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン)が挙げられる。
【0048】
第1保護層に含まれる光安定剤の含有量は、電離放射線硬化性化合物100質量部に対して、例えば、1質量部以上10質量部以下であり、1.5質量部以上8質量部以下であってもよく、2質量部以上5質量部以下であってもよい。光安定剤の含有量が多いと、光安定剤のブリードアウトが発生する可能性があり、光安定剤の含有量が少ないと、十分な光安定性が得られない可能性がある。
【0049】
第1保護層は、シリコーン化合物、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、防汚剤、消泡剤、充填剤等の添加剤を含有していてもよい。また、第1保護層の厚さは、例えば、2μm以上20μm以下であり、3μm以上15μm以下であってもよく、4μm以上10μm以下であってもよい。第1保護層が薄いと、十分な耐候性が得られない可能性があり、第1保護層が厚いと、第1保護層にクラックが生じやすくなり、良好な密着性が得られない可能性がある。
【0050】
(ii)第2保護層
本開示における転写層は、第1保護層の離型フィルムとは反対側の面に、第2保護層を有することが好ましい。第2保護層は、第1保護層より柔軟な層であることが好ましい。また、第2保護層および第1保護層は、直接接触するように配置されていてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。
【0051】
第2保護層は、樹脂成分として、硬化性樹脂組成物の硬化物(架橋構造体)を含むことが好ましい。また、硬化性樹脂組成物の硬化物の割合は、第2保護層を構成する全樹脂成分に対して、例えば70質量%以上であり、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0052】
第2保護層に用いられる硬化性樹脂組成物としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する組成物である。熱硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、尿素メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂として、ウレタン(メタ)アクリル系樹脂を含有することが好ましい。また、熱硬化性樹脂組成物は、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤をさらに含有していてもよい。
【0053】
また、硬化性樹脂組成物が、ウレタン(メタ)アクリル系樹脂を含有する場合、ウレタン(メタ)アクリル系樹脂は、ウレタン(メタ)アクリル共重合体であることが好ましく、ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリル共重合体であることがより好ましい。ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリル共重合体は、ポリカーボネートジオールと(ジ)イソシアネートとを反応させて得られるポリカーボネート系ポリウレタンポリマーに、(メタ)アクリルモノマーをラジカル重合させて得られる樹脂である。
【0054】
(ジ)イソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、n-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、o-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族イソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式イソシアネートが挙げられる。
【0055】
(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0056】
ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリル共重合体における、(メタ)アクリル成分およびウレタン成分の合計に対するウレタン成分の質量比([ウレタン成分]/([(メタ)アクリル成分]+[ウレタン成分])は、例えば、70質量%以上95質量%以下であり、75質量%以上95質量%以下であってもよく、80質量%以上90質量%以下であってもよい。
【0057】
第2保護層は、耐候剤を含有することが好ましい。耐候剤としては、例えば、紫外線吸収剤および光安定剤が挙げられる。第2保護層は、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一つを含むことが好ましい。耐候剤の好ましい種類および態様については、上記「(i)第1保護層」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。特に、第2保護層は、トリアジン系紫外線吸収剤を含むことが好ましい。また、第2保護層は、ヒンダードアミン系光安定剤を含むことが好ましい。
【0058】
第2保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上50質量部以下であり、3質量部以上40質量部以下であってもよく、10質量部以上35質量部以下であってもよい。また、第2保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)は、第1保護層に含まれる紫外線吸収剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)より多くてもよい。
【0059】
第2保護層に含まれる光安定剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上15質量部以下であり、1質量部以上15質量部以下であってもよく、3質量部以上10質量部以下であってもよい。また、第2保護層に含まれる光安定剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)は、第1保護層に含まれる光安定剤の含有量(樹脂成分100質量部に対する含有量)より多くてもよい。
【0060】
第2保護層は、シリコーン化合物、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、防汚剤、消泡剤、充填剤等の添加剤を含有していてもよい。また、第2保護層の厚さは、例えば、2μm以上10μm以下であり、3μm以上8μm以下であってもよく、3μm以上5μm以下であってもよい。第2保護層が薄いと、相対的に硬い第1保護層との密着性(特に初期密着性)が低くなる可能性がある。一方、第2保護層が厚いと、熱による第2保護層の動きが大きくなり、第1保護層にクラックが生じやすくなる。
【0061】
(2)その他の層
本開示における転写層は、保護層の離型フィルムとは反対側の面に、意匠層を有していてもよく、有していなくてもよい。意匠層を設けることで、物品の意匠性が向上する。意匠層および保護層は、直接接触するように配置されていてもよく、他の層を介して配置されていてもよい。
【0062】
意匠層としては、例えば、ベタ層(インキをベタ塗りした層)、絵柄層(インキを印刷した層)が挙げられる。転写シートは、意匠層として、離型フィルム側から順に、絵柄層およびベタ層を有していてもよい。絵柄層における絵柄(模様)としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様、草花模様が挙げられる。
【0063】
意匠層は、通常、着色剤およびバインダー樹脂を含有する。着色剤としては、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾ錯体、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾブラック等の有機顔料(染料を含む)、アルミニウム、真鍮等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等のパール顔料が挙げられる。
【0064】
バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリルポリオール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ブチラール系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体、塩素化プロピレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂が挙げられる。
【0065】
意匠層は、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化剤、可塑剤、触媒等の添加剤を含有していてもよい。意匠層の厚さは、例えば、0.5μm以上20μm以下であり、1μm以上10μm以下であってもよく、2μm以上5μm以下であってもよい。
【0066】
本開示における転写層は、保護層の離型フィルムとは反対側の面に、接着層を有していてもよく、有していなくてもよい。接着層および保護層は、直接接触するように配置されていてもよく、他の層(例えば意匠層)を介して配置されていてもよい。接着層は、接着性を有する成分を含有してもよい。接着性を有する成分としては、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、ゴム系樹脂が挙げられる。
【0067】
接着層は、いわゆる粘着層であってもよい。粘着層は、常温で粘着性を有している。粘着層に含まれる樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ゴム系樹脂、アイオノマー系樹脂が挙げられる。また、接着層は、いわゆるヒートシール層であってもよい。ヒートシール層は、熱により粘着性を発現する。ヒートシール層に含まれる樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレア系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ビニル系樹脂が挙げられる。接着層の厚さは、例えば、1μm以上30μm以下である。
【0068】
(3)転写層
転写層の厚さは、例えば8μm以上であり、10μm以上であってもよく、12μm以上であってもよく、14μm以上であってよい。一方、転写層の厚さは、例えば50μm以下であり、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよい。
【0069】
3.離型フィルム
本開示における転写シートは、転写層と対向する離型フィルムを有する。
【0070】
離型フィルムは、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、例えば、エステル系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、カーボネート系樹脂が挙げられる。
【0071】
離型フィルムは、エステル系樹脂またはオレフィン系樹脂を含有することが好ましい。エステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体が挙げられる。これらの中でも、転写シートを製造する際の熱収縮、および、電離放射線の照射による収縮が生じにくいという観点から、PETまたはPBTが好ましく、PETがより好ましい。
【0072】
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体が挙げられる。これらの中でも、転写シートを製造する際の熱収縮、および、電離放射線の照射による収縮が生じにくいという観点から、ポリプロピレンが好ましい。また、離型フィルムは、例えば、ポリプロピレン(PP)加工された紙であってもよい。
【0073】
離型フィルムは、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムにおける機械方向(MD)における延伸倍率は、例えば5倍以上30倍以下である。延伸フィルムにおける幅方向(TD)における延伸倍率は、例えば5倍以上30倍以下である。また、離型フィルムの厚さは、例えば、10μm以上200μm以下であり、15μm以上150μm以下であってもよく、20μm以上100μm以下であってもよい。
【0074】
離型フィルムは、内部に練りこまれたマット剤を含有していてもよい。練りこまれたマット剤の一部の領域は、通常、離型フィルムから露出している。離型フィルムにマット剤を添加することで、離型フィルムおよび転写層の剥離強度を調整できる。マット剤としては、例えば、無機粒子、有機粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリンが挙げられる。有機粒子としては、例えば、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、ナイロンビーズ、シリコーンビーズ、シリコーンゴムビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリオレフィンワックス(例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス)が挙げられる。マット剤の平均粒径は、例えば、1.0μm以上、10μm以下であり、2.0μm以上、8.0μm以下であってもよい。マット剤の平均粒径は、レーザ光回折法による粒度分布測定(体積基準)におけるD50をいう。
【0075】
離型フィルムは、転写層側の面に、マット剤を含有するマット層を有していてもよい。マット層に用いられるマット剤については、上述した内容と同様である。また、マット層は、樹脂成分として、硬化性樹脂組成物の硬化物(架橋構造体)を含んでいてもよい。マット層に用いられる硬化性樹脂組成物としては、例えば、電離放射線硬化性樹脂組成物および熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂組成物および熱硬化性樹脂組成物の詳細については、上述した内容と同様である。また、マット層は、樹脂成分として、熱可塑性樹脂を含有していてもよい。マット層は、必要に応じて、離型剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、熱ラジカル発生剤、アルミキレート剤等の添加剤を含有していてもよい。マット層の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上、10μm以下である。
【0076】
4.転写シート
本開示における転写シートは、離型フィルム(第1離型フィルム)および転写層を有する。転写シートは、転写層の離型フィルムとは反対側の面に、第2離型フィルムを有していてもよい。例えば、転写シートをロール状に巻き取って製造した場合に、ブロッキングの発生を抑制できる。第2離型フィルムの詳細については、上述した第1離型フィルムに記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、本開示における転写シートは、ラッピング加工に用いられることが好ましい。ラッピング加工の詳細については、後述する「B.物品の製造方法」で説明する。
【0077】
5.転写シートの作製方法
本開示における転写シートの作製方法は、特に限定されない。例えば
図1(a)に示す転写シートを作製する場合、離型フィルム1の一方の面に、第1保護層2を形成し、次いで、第1保護層2の離型フィルム1とは反対側の面に、第2保護層3を形成することが好ましい。また、
図1(b)に示す転写シートを作製する場合、離型フィルム1の一方の面に、第1保護層2を形成し、次いで、第1保護層2の離型フィルム1とは反対側の面に、第2保護層3を形成し、次いで、第2保護層3の第1保護層2とは反対側の面に意匠層4を形成することが好ましい。
【0078】
第1保護層の形成方法としては、例えば、離型フィルムの面に、第1保護層を形成するための組成物を塗工し、硬化させる方法が挙げられる。上記組成物の塗工方法としては、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法が挙げられる。上記硬化方法としては、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線を照射する方法が挙げられる。
【0079】
第2保護層の形成方法としては、例えば、第1保護層の離型フィルムとは反対側の面に、第2保護層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて硬化させる方法が挙げられる。上記組成物の塗工方法としては、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法が挙げられる。上記硬化方法としては、例えば、熱が挙げられる。また、意匠層の形成方法としては、例えば、第2保護層の第1保護層とは反対側の面に、着色剤、バインダー樹脂および溶剤を含有するインキを塗工する方法が挙げられる。
【0080】
B.物品の製造方法
本開示における物品の製造方法は、複数の面を有する被着体と、上述した転写シートと、を準備する準備工程と、上記被着体における上記複数の面に対して、ローラーを用いて、上記転写シートにおける上記転写層を、順次貼り合わせるラッピング加工工程と、を有する。
【0081】
図3は、本開示におけるラッピング加工工程を例示する概略断面図である。
図3においては、被着体20を、長手方向D
Lに沿って搬送しつつ、被着体20における複数の面に対して、複数のローラー60(60a~60e)を用いて、転写シート10における転写層Xを、順次貼り合わせる。
【0082】
本開示によれば、上述した転写シートを用いることで、コーナー部における転写シートの浮きを抑制すること、スプリングバックによる離型フィルムの部分剥離を抑制すること、および、離型フィルムを転写層から良好に剥離可能であることを両立することができる。
【0083】
1.準備工程
本開示における準備工程は、複数の面を有する被着体と、上述した転写シートと、を準備する工程である。転写シートについては、上記「A.転写シート」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0084】
本開示における被着体の一例としては、金属部材が挙げられる。金属部材と、転写層に含まれる樹脂とは、異種材料であるため、両者の密着性が低くなりやすい。この場合、被着体および転写層を、例えば、後述する接着剤層を介して密着させることで、被着体および転写層の密着性を向上させることができる。特に、外装品(屋外用途の物品)は、過酷な環境に曝されるため、被着体および転写層の密着性は高いことが望まれる。
【0085】
金属部材は、金属単体または金属合金を含む部材である。金属部材に用いられる金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、鋼(スチール)、銅が挙げられる。金属部材は、アルミニウム部材であることが好ましい。アルミニウム部材は、軽量であり、かつ、耐食性に優れており、外装品(屋外用途の物品)の被着体として有用だからである。アルミニウム部材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む部材である。アルミニウム部材は、表面に酸化アルミニウム被膜を有することが好ましい。アルミニウム部材の耐食性が向上するからである。酸化アルミニウム被膜の形成方法としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。
【0086】
被着体の他の例としては、樹脂部材が挙げられる。樹脂部材に用いられる樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体(ABS系樹脂)、フェノール系樹脂、セルロース系樹脂、ゴムが挙げられる。また、被着体の他の例としては、木質部材が挙げられる。木質部材としては、例えば、木材単板、木材合板、パーティクルボード、木質繊維板が挙げられる。木質部材に用いられる木材としては、例えば、杉、檜、松、ラワンが挙げられる。また、被着体の他の例としては、窯業部材が挙げられる。窯業部材の材料は、ガラス、陶磁器等のセラミックスであってもよく、石膏等の非セメント窯業系材料であってもよく、ALC(軽量気泡コンクリート)等の非陶磁器窯業系材料であってもよい。
【0087】
被着体の形状は、特に限定されないが、例えば、板状、シート状、立体形状が挙げられる。立体形状とは、X軸、Y軸およびZ軸の座標で表現される三次元形状をいう。被着体は、複数の面を有する。上記面は、平面部であってもよく、曲面部であってもよい。
【0088】
2.接着剤層形成工程
本開示における接着剤層形成工程は、上記転写層の上記離型フィルムとは反対側の面、または、上記被着体における上記複数の面に、接着剤層を形成する工程である。本開示における物品の製造方法は、上記準備工程の後、かつ、後述するラッピング加工工程の前に、接着剤層形成工程を有することが好ましい。
【0089】
接着剤層に用いられる接着剤としては、特に限定されず、公知の接着剤を使用することができる。例えば、感熱接着剤、感圧接着剤等の接着剤が挙げられる。接着剤に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合、スチレン-アクリル共重合が挙げられる。また、接着剤として、イソシアネート化合物を硬化剤とする2液硬化型のポリウレタン系接着剤、および、ポリエステル系接着剤を用いてもよい。また、接着剤は、溶剤系接着剤またはポリウレタンリアクティブ系(PUR系)接着剤であることが好ましい。
【0090】
接着剤層形成工程において、転写シートにおける転写層の離型フィルムとは反対側の面に、接着剤層用塗工液を塗工し、接着剤層を形成してもよい。この場合、接着剤層用塗工液を転写シートに均一に塗工できるという利点がある。一方、接着剤層形成工程において、被着体における複数の面に、接着剤層用塗工液を塗工し、接着剤層を形成してもよい。この場合、接着剤の熱収縮の影響が生じにくいという利点がある。接着剤層の厚さは、特に限定されないが、例えば、2μm以上100μm以下であり、2μm以上50μm以下であってもよく、2μm以上35μm以下であってもよい。なお、例えば、転写シートが上述した接着層を有する場合、接着剤層形成工程を行わなくてもよい。
【0091】
3.ラッピング加工工程
本開示におけるラッピング加工工程は、上記被着体における上記複数の面に対して、ローラーを用いて、上記転写シートにおける上記転写層を、順次貼り合わせる工程である。「順次貼り合わせる」とは、被着体の一つの面に、転写シートを貼り合わせ、その後、転写シートを貼り合わせた面と隣り合う面に、転写シートを貼り合わせることをいう。通常は、転写シートを貼り合わせた面と隣り合う面に、転写シートを貼り合わせる操作を繰り返す。例えば、被着体の第1面に転写シートを貼り合わせ、次に、第1面と隣り合う第2面に転写シートを貼り合わせ、次に、第2面と隣り合う第3面に転写シートを貼り合わせる。
【0092】
被着体における複数の面は、それぞれ、被着体の長手方向に延在する面であることが好ましい。ラッピング加工工程では、単一のローラーを用いて、被着体における複数の面に対して転写シートを順次貼り合わせてもよく、複数のローラーを用いて、被着体における複数の面に対して転写シートを順次貼り合わせてもよい。また、ラッピング加工工程では、ローラーの位置を固定し、被着体および転写シートを搬送することが好ましい。
【0093】
図3に示すように、ラッピング加工工程においては、被着体20を、長手方向D
Lに沿って搬送しつつ、被着体20における複数の面に対して、複数のローラー60(60a~60e)を用いて、転写シート10における転写層Xを、順次貼り合わせることが好ましい。ラッピング加工工程では、被着体20における1つの面に対して、ローラー60を用いて、転写シート10における転写層Xを貼り合わせ、その後、連続的に、ローラー60を用いて、被着体20における他の面に対して、転写シート10における転写層Xを貼り合わせる。
【0094】
図4(a)に示すように、被着体20の第1面S
1に対して、転写シート10を介して、第1ローラー60aを押し付ける。これにより、被着体20の第1面S
1に、転写シート10(転写層X)を貼着する。なお、特に図示しないが、被着体および転写シート(転写層)の間には、上述した接着剤層が形成されていることが好ましい。また、
図4(a)において、第1ローラー60aの軸方向A
1は、水平方向である。
【0095】
次に、
図4(b)に示すように、第1ガイドローラー60b、60b´により、転写シート10を折り込むようにガイドし、その後、
図4(c)に示すように、被着体20の第2面S
2、S
2´に対して、転写シート10を介して、第2ローラー60c、60c´をそれぞれ押し付ける。これにより、被着体20の第2面S
2、S
2´に、転写シート10(転写層X)を貼着する。
図4(c)において、第2ローラー60c、60c´の軸方向A
2、A
2´は、鉛直方向である。
【0096】
次に、
図4(d)に示すように、第2ガイドローラー60dにより、転写シート10を折り込むようにガイドし、その後、
図4(e)に示すように、被着体20の第3面S
3に対して、転写シート10を介して、第3ローラー60eを押し付ける。これにより、被着体20の第3面S
3に、転写シート10(転写層X)を貼着する。
図4(e)において、第3ローラー60eの軸方向A
3は、水平方向である。
【0097】
図5に示すように、第1ローラーの軸方向A
1から第2ローラーの軸方向A
2までの角度をθ
12とし、第1ローラーの軸方向A
1から第1ガイドローラーまでの軸方向A
Mまでの角度をθ
1Mとする。上記角度(中心角)は、同一の周方向における角度である。本開示において、θ
12およびθ
1Mは、θ
12>θ
1Mを満たすことが好ましい。各ローラーの軸方向を、被着体20の長手方向に沿って徐々に変化させることで、被着体に転写層を転写する際に、転写層に割れが生じることをさらに抑制できるからである。
【0098】
図5に示すように、第2ローラーの軸方向A
2から第3ローラーの軸方向A
3までの角度をθ
23とし、第2ローラーの軸方向A
2から第2ガイドローラーまでの軸方向A
Nまでの角度をθ
2Nとする。上記角度(中心角)は、同一の周方向における角度である。本開示において、θ
23およびθ
2Nは、θ
23>θ
2Nを満たすことが好ましい。各ローラーの軸方向を、被着体20の長手方向に沿って徐々に変化させることで、被着体に転写層を転写する際に、転写層に割れが生じることをさらに抑制できるからである。
【0099】
ラッピング加工工程では、加熱したローラーを用いてもよい。ローラーの加熱温度は、例えば200℃以下であり、180℃以下であってもよい。加熱温度が高いと、転写シートが必要以上に軟化する可能性がある。一方、ローラーの加熱温度は、例えば100℃以上であり、110℃以上であってもよく、120℃以上であってもよい。
【0100】
図6(a)は、本開示における離型フィルム付物品の一部を例示する概略断面図であり、
図4(e)における領域αに該当する概略断面図である。
図6(a)に示すように、ラッピング加工工程により、転写シート10と、被着体20と、を少なくとも有する離型フィルム付物品50が得られる。また、
図6(a)に示す離型フィルム付物品50は、転写シート10および被着体20の間に、接着剤層30を有する。また、
図6(a)に示す離型フィルム付物品50は、離型フィルム1、転写層X、接着剤層30および被着体20を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有している。
【0101】
本開示における物品の製造方法は、ラッピング加工工程の後に、転写層から離型フィルムを剥離する剥離工程を有していてもよい。
図6(b)に示すように、剥離工程により、転写層Xと、被着体20と、を少なくとも有する物品100が得られる。また、
図6(b)に示す物品100は、転写層Xおよび被着体20の間に、接着剤層30を有する。また、
図6(b)に示す物品100は、転写層X、接着剤層30および被着体20を、厚さ方向D
Tにおいて、この順に有している。
【0102】
3.物品
本開示における物品は、複数の面を有する被着体と、上記複数の面に追従して配置された転写層と、を有する。また、被着体および転写層の間に、接着剤層が配置されていてもよい。また、本開示における物品は、例えば建材に用いられる。建材は、例えば、住宅、事務所、店舗、病院、診療所等の建築物に用いられる。上記物品は、外装品(屋外用途の物品)であってもよく、内装品(屋内用途の物品)であってもよい。物品の具体例としては、外壁、屋根、軒天井、ルーバー、戸袋、窓枠、扉、扉枠、手すり、塀、物干台が挙げられる。
【0103】
C.離型フィルム付物品
本開示における離型フィルム付物品は、複数の面を有する被着体と、上記複数の面に追従して配置された転写層と、上記転写層に追従して配置された離型フィルムと、を有し、上記離型フィルムのループスティフネスが、0.18N/15mm以下であり、上記離型フィルムおよび上記転写層の剥離強度が、0.7N/25mm以下であり、上記ループスティフネスをXとし、上記剥離強度をYとした場合に、上記Xおよび上記Yは、Y≧0.67X+0.17を満たす。
【0104】
本開示によれば、上記ループスティフネスおよび上記剥離強度が、それぞれ特定の範囲にあり、さらに、上記ループスティフネスおよび上記剥離強度が、特定の関係を満たすことで、コーナー部における転写シートの浮きを抑制すること、スプリングバックによる離型フィルムの部分剥離を抑制すること、および、離型フィルムを転写層から良好に剥離可能であること、を両立した離型フィルム付物品となる。本開示における離型フィルム付物品については、上記「B.物品の製造方法」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0105】
本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0106】
[実施例1]
離型フィルムとして、易接着処理を施しておらず、マット剤が練りこまれたポリエチレンテレフタレートフィルム(練込マット、厚さ:26μm)を準備した。離型フィルムの一方の面に、下記の第1保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工して未硬化樹脂層を形成した。その後、165kVの加速電圧にて50kGyの電子線照射を行い、硬化させ、厚さ5μmの第1保護層を形成した。その後、第1保護層の離型フィルムとは反対側の面に、コロナ照射を実施した。
<第1保護層形成用の組成物(EB1)>
・電離放射線硬化性樹脂組成物:100質量部
カプロラクタン系ウレタンアクリレート:30質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基含有アクリレート):70質量部
・紫外線吸収剤:2質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
【0107】
次に、コロナ照射した第1保護層の面に、下記の第2保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工し、乾燥させ、厚さ3.5μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
・紫外線吸収剤:17質量部(品名:TINUVIN400、BASF社)
・紫外線吸収剤:13質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・ヒンダードアミン系光安定剤:8質量部(品名:TINUVIN123、BASF社)・ブロッキング防止剤:9質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・硬化剤:25質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
【0108】
次に、得られた第2保護層の面に、下記の意匠層形成用のインキをグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、意匠層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層および意匠層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
<意匠層形成用のインキ>
・樹脂組成物:100質量部
アクリル樹脂:80質量部
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:20質量部
・顔料
【0109】
[実施例2]
離型フィルムとして、易接着処理を施していない鏡面ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:38μm)を準備した。離型フィルムの一方の面に、下記の第1保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工して未硬化樹脂層を形成した。その後、165kVの加速電圧にて50kGyの電子線照射を行い、硬化させ、厚さ5μmの第1保護層を形成した。その後、第1保護層の離型フィルムとは反対側の面に、コロナ照射を実施した。
<第1保護層形成用の組成物(EB2)>
・電離放射線硬化性樹脂組成物:100質量部
カプロラクタン系ウレタンアクリレート:50質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基含有アクリレート):50質量部
・紫外線吸収剤:2質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
【0110】
次に、コロナ照射した第1保護層の面に、下記の第2保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工し、乾燥させ、厚さ3.5μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
・紫外線吸収剤:17質量部(品名:TINUVIN400、BASF社)
・紫外線吸収剤:13質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・ヒンダードアミン系光安定剤:8質量部(品名:TINUVIN123、BASF社)・ブロッキング防止剤:9質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・硬化剤:25質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
【0111】
次に、得られた第2保護層の面に、下記の意匠層形成用のインキをグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、意匠層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層および意匠層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
<意匠層形成用のインキ>
・樹脂組成物:100質量部
アクリル樹脂:80質量部
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:20質量部
・顔料
【0112】
[実施例3]
離型フィルムとして、マット剤を含有するマット層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(マットコート、厚さ:50μm)を準備した。離型フィルムのマット層側の面に、下記の第1保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工して未硬化樹脂層を形成した。その後、165kVの加速電圧にて50kGyの電子線照射を行い、硬化させ、厚さ5μmの第1保護層を形成した。その後、第1保護層の離型フィルムとは反対側の面に、コロナ照射を実施した。
<第1保護層形成用の組成物(EB1)>
・電離放射線硬化性樹脂組成物:100質量部
カプロラクタン系ウレタンアクリレート:30質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基含有アクリレート):70質量部
・紫外線吸収剤:2質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
【0113】
次に、コロナ照射した第1保護層の面に、下記の第2保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工し、乾燥させ、厚さ3.5μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
・紫外線吸収剤:17質量部(品名:TINUVIN400、BASF社)
・紫外線吸収剤:13質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・ヒンダードアミン系光安定剤:8質量部(品名:TINUVIN123、BASF社)・ブロッキング防止剤:9質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・硬化剤:25質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
【0114】
次に、得られた第2保護層の面に、下記の意匠層形成用のインキをグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、意匠層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層および意匠層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
<意匠層形成用のインキ>
・樹脂組成物:100質量部
アクリル樹脂:80質量部
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:20質量部
・顔料
【0115】
[実施例4]
離型フィルムとして、易接着処理を施しておらず、マット剤が練りこまれたポリエチレンテレフタレートフィルム(練込マット、厚さ:50μm)を準備した。離型フィルムの一方の面に、下記の第1保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工して未硬化樹脂層を形成した。その後、165kVの加速電圧にて50kGyの電子線照射を行い、硬化させ、厚さ5μmの第1保護層を形成した。その後、第1保護層の離型フィルムとは反対側の面に、コロナ照射を実施した。
<第1保護層形成用の組成物(EB3)>
・電離放射線硬化性樹脂組成物(カプロラクタン系ウレタンアクリレート):100質量部
・紫外線吸収剤:2質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
【0116】
次に、コロナ照射した第1保護層の面に、下記の第2保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工し、乾燥させ、厚さ3.5μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
・紫外線吸収剤:17質量部(品名:TINUVIN400、BASF社)
・紫外線吸収剤:13質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・ヒンダードアミン系光安定剤:8質量部(品名:TINUVIN123、BASF社)・ブロッキング防止剤:9質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・硬化剤:25質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
【0117】
次に、得られた第2保護層の面に、下記の意匠層形成用のインキをグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、意匠層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層および意匠層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
<意匠層形成用のインキ>
・樹脂組成物:100質量部
アクリル樹脂:80質量部
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:20質量部
・顔料
【0118】
[実施例5]
離型フィルムとして、マット調のポリプロピレン(PP)層を有する転写紙(マットPP、厚さ:75μm)を準備した。離型フィルムのPP層側の面に、下記の第1保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工して未硬化樹脂層を形成した。その後、165kVの加速電圧にて50kGyの電子線照射を行い、硬化させ、厚さ5μmの第1保護層を形成した。その後、第1保護層の離型フィルムとは反対側の面に、コロナ照射を実施した。
<第1保護層形成用の組成物(EB3)>
・電離放射線硬化性樹脂組成物(カプロラクタン系ウレタンアクリレート):100質量部
・紫外線吸収剤:2質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
【0119】
次に、コロナ照射した第1保護層の面に、下記の第2保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工し、乾燥させ、厚さ3.5μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
・紫外線吸収剤:17質量部(品名:TINUVIN400、BASF社)
・紫外線吸収剤:13質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・ヒンダードアミン系光安定剤:8質量部(品名:TINUVIN123、BASF社)・ブロッキング防止剤:9質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・硬化剤:25質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
【0120】
次に、得られた第2保護層の面に、下記の意匠層形成用のインキをグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、意匠層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層および意匠層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
<意匠層形成用のインキ>
・樹脂組成物:100質量部
アクリル樹脂:80質量部
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:20質量部
・顔料
【0121】
[比較例1]
離型フィルムとして、易接着処理を施しておらず、マット剤が練りこまれたポリエチレンテレフタレートフィルム(練込マット、厚さ:50μm)を準備した。離型フィルムの一方の面に、下記の第1保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工して未硬化樹脂層を形成した。その後、165kVの加速電圧にて50kGyの電子線照射を行い、硬化させ、厚さ5μmの第1保護層を形成した。その後、第1保護層の離型フィルムとは反対側の面に、コロナ照射を実施した。
<第1保護層形成用の組成物(EB1)>
・電離放射線硬化性樹脂組成物:100質量部
カプロラクタン系ウレタンアクリレート:30質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基含有アクリレート):70質量部
・紫外線吸収剤:2質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
【0122】
次に、コロナ照射した第1保護層の面に、下記の第2保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工し、乾燥させ、厚さ3.5μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
・紫外線吸収剤:17質量部(品名:TINUVIN400、BASF社)
・紫外線吸収剤:13質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・ヒンダードアミン系光安定剤:8質量部(品名:TINUVIN123、BASF社)・ブロッキング防止剤:9質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・硬化剤:25質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
【0123】
次に、得られた第2保護層の面に、下記の意匠層形成用のインキをグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、意匠層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層および意匠層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
<意匠層形成用のインキ>
・樹脂組成物:100質量部
アクリル樹脂:80質量部
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:20質量部
・顔料
【0124】
[比較例2]
離型フィルムとして、易接着処理を施していない鏡面ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:50μm)を準備した。離型フィルムの一方の面に、下記の第1保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工して未硬化樹脂層を形成した。その後、165kVの加速電圧にて50kGyの電子線照射を行い、硬化させ、厚さ5μmの第1保護層を形成した。その後、第1保護層の離型フィルムとは反対側の面に、コロナ照射を実施した。
<第1保護層形成用の組成物(EB1)>
・電離放射線硬化性樹脂組成物:100質量部
カプロラクタン系ウレタンアクリレート:30質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基含有アクリレート):70質量部
・紫外線吸収剤:2質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
【0125】
次に、コロナ照射した第1保護層の面に、下記の第2保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工し、乾燥させ、厚さ3.5μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
・紫外線吸収剤:17質量部(品名:TINUVIN400、BASF社)
・紫外線吸収剤:13質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・ヒンダードアミン系光安定剤:8質量部(品名:TINUVIN123、BASF社)・ブロッキング防止剤:9質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・硬化剤:25質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
【0126】
次に、得られた第2保護層の面に、下記の意匠層形成用のインキをグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、意匠層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層および意匠層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
<意匠層形成用のインキ>
・樹脂組成物:100質量部
アクリル樹脂:80質量部
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:20質量部
・顔料
【0127】
[比較例3]
離型フィルムとして、易接着処理を施していない鏡面ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:75μm)を準備した。離型フィルムの一方の面に、下記の第1保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工して未硬化樹脂層を形成した。その後、165kVの加速電圧にて50kGyの電子線照射を行い、硬化させ、厚さ5μmの第1保護層を形成した。その後、第1保護層の離型フィルムとは反対側の面に、コロナ照射を実施した。
<第1保護層形成用の組成物(EB3)>
・電離放射線硬化性樹脂組成物(カプロラクタン系ウレタンアクリレート):100質量部
・紫外線吸収剤:2質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
【0128】
次に、コロナ照射した第1保護層の面に、下記の第2保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工し、乾燥させ、厚さ3.5μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
・紫外線吸収剤:17質量部(品名:TINUVIN400、BASF社)
・紫外線吸収剤:13質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・ヒンダードアミン系光安定剤:8質量部(品名:TINUVIN123、BASF社)・ブロッキング防止剤:9質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・硬化剤:25質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
【0129】
次に、得られた第2保護層の面に、下記の意匠層形成用のインキをグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、意匠層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層および意匠層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
<意匠層形成用のインキ>
・樹脂組成物:100質量部
アクリル樹脂:80質量部
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:20質量部
・顔料
【0130】
[比較例4]
離型フィルムとして、マット剤を含有するマット層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(マットコート、厚さ:38μm)を準備した。離型フィルムの一方の面に、下記の第1保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工して未硬化樹脂層を形成した。その後、165kVの加速電圧にて50kGyの電子線照射を行い、硬化させ、厚さ5μmの第1保護層を形成した。その後、第1保護層の離型フィルムとは反対側の面に、コロナ照射を実施した。
<第1保護層形成用の組成物(EB1)>
・電離放射線硬化性樹脂組成物:100質量部
カプロラクタン系ウレタンアクリレート:30質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基含有アクリレート):70質量部
・紫外線吸収剤:2質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・反応性官能基を有する光安定剤:2質量部(品名:サノールLS-3410、日本乳化剤株式会社)
【0131】
次に、コロナ照射した第1保護層の面に、下記の第2保護層形成用の組成物を、グラビアコーティングにより塗工し、乾燥させ、厚さ3.5μmの第2保護層を形成した。
<第2保護層形成用の組成物>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
・紫外線吸収剤:17質量部(品名:TINUVIN400、BASF社)
・紫外線吸収剤:13質量部(品名:TINUVIN479、BASF社)
・ヒンダードアミン系光安定剤:8質量部(品名:TINUVIN123、BASF社)・ブロッキング防止剤:9質量部(シリカ粒子、平均粒径3μm)
・硬化剤:25質量部(ヘキサメチレンジイソシアネート)
【0132】
次に、得られた第2保護層の面に、下記の意匠層形成用のインキをグラビアコーティングにより塗工、乾燥し、意匠層を形成した。これにより、離型フィルム、第1保護層、第2保護層および意匠層を、厚さ方向において、この順に有する転写シートを得た。
<意匠層形成用のインキ>
・樹脂組成物:100質量部
アクリル樹脂:80質量部
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体:20質量部
・顔料
【0133】
[評価]
(ループスティフネスの測定)
各実施例および各比較例で得られた転写シートにおける離型フィルムのループスティフネスを測定した。まず、転写シートから転写層を剥離し、離型フィルムだけの状態とした。次に、離型フィルムを、幅15mm、長さ150mmの短冊状にカットし、サンプルを作製した。次に、東洋精機製の「ループスティフネステスタ(型式:DR)」に、ループ長さが60mmとなるようにサンプルを固定し、加圧治具を鉛直方向から押し当て、圧縮時の応力を測定し、その応力の最大値をループスティフネス(RS)として求めた。
【0134】
(剥離強度の測定)
各実施例および各比較例で得られた転写シートにおける剥離強度を測定した。まず、転写シートを幅25mmにカットし、離型フィルムの転写層とは反対側の面の全面に、両面テープを貼付け、幅25mmの金属板に離型フィルムを固定した。次に、転写層の離型フィルムとは反対側の面の全面に、幅25mmのニチバン製セロテープ(登録商標)を貼り付けた。次に、株式会社エー・アンド・デイ製の「テンシロンRTG1250」を用いて、剥離速度:200mm/min、剥離角度:90°の条件で剥離強度を測定した。上降伏点を超えたのち、下降伏点荷重に至った点から20mmまでの剥離強度の積分平均値を取り、剥離強度(N/25mm)を算出した。その結果を表1に示す。
【0135】
(コーナー浮き、スプリングバック、離型フィルム剥離性)
各実施例および各比較例で得られた転写シートにおける、コーナー浮き(コーナー部における転写シートの浮き)、スプリングバック(スプリングバックによる離型フィルムの部分剥離)、および、離型フィルム剥離性(転写シートを被着体に貼付けた後における離型フィルム剥離性)を評価した。まず、40mm×40mmの断面を有し、かつ、長さ2mのアルミニウム基材(被着体)を準備した。次に、転写シートにおける転写層に、接着剤を塗布し(昭和電工マテリアル製YR117-1、厚さ50μm)、ラッピング機を用いてアルミニウム基材に貼付けた。次に、以下の基準で、コーナー浮き、スプリングバック、離型フィルム剥離性を評価した。
<コーナー浮き>
A:コーナー部に転写シートが完全に追従していた。
B:コーナー部から転写シートが僅かに浮いているが、使用上問題ないレベルであった。
C:コーナー部から転写シートが大きく浮いてしまった。
<スプリングバック>
A:離型フィルムが転写層から浮くことがなく、追従していた。
B:転写シート端部より、離型フィルムが僅かに浮いていたが、使用上問題ないレベルであった。
C:転写シート端部より、離型フィルムが大きく剥離してしまった。
<離型フィルム剥離性>
A:離型フィルムが容易に剥離できた。
B:剥離の際にやや力を要するが、転写層に離型フィルムが残ることなく剥離できた。
C:転写層から離型フィルムが剥離できず、離型フィルムが破損してしまった。
【0136】
【0137】
【0138】
表1および表2に示すように、実施例1~5では、コーナー浮き、スプリングバック、離型フィルム剥離性が、いずれも良好であった。これに対して、比較例1~4では、コーナー浮き、スプリングバック、離型フィルム剥離性のいずれかが不十分であった。また、実施例1~5および比較例1~3における、ループスティフネスおよび剥離強度の関係を
図7に示す。なお、比較例4については、剥離強度が大きすぎるため、
図7には示していない。
【0139】
図7に示すように、ループスティフネスをXとし、剥離強度をYとした場合に、Y≧0.67X+0.17を満たす場合に、スプリングバックを良好に抑制できることが確認された。比較例3は、スプリングバックを良好に抑制でき、比較例3および実施例1を結ぶ直線は、Y=0.67X+0.19(直線1)となる。一方、傾きが0.67であり、比較例1を通過する直線は、Y=0.67X+0.14(直線2)となる。直線1および直線2の中間に位置するY=0.67X+0.17を境界にして、Y≧0.67X+0.17の範囲であれば、スプリングバックを良好に抑制できると推測される。また、実施例1および実施例5を結ぶ直線は、Y=2.25X+0.12であった。また、実施例1および実施例4を結ぶ直線は、Y=2.99X+0.03であった。また、
図7に示すように、ループスティフネスXが0.18N/15mmを超える場合は、コーナー浮きが生じやすく、剥離強度Yが0.7N/25mmを超える場合は、剥離性が低下することが示唆された。
【0140】
このように、本開示においては、例えば、以下の発明が提供される。
【0141】
[1]
転写シートであって、
上記転写シートは、離型フィルムと、上記離型フィルムの一方の面に配置された転写層と、を有し、
上記離型フィルムのループスティフネスが、0.18N/15mm以下であり、
上記離型フィルムおよび上記転写層の剥離強度が、0.7N/25mm以下であり、
上記ループスティフネスをXとし、上記剥離強度をYとした場合に、上記Xおよび上記Yは、Y≧0.67X+0.17を満たす、転写シート。
【0142】
[2]
上記転写シートは、ラッピング加工に用いられる、[1]に記載の転写シート。
【0143】
[3]
上記転写層は、上記離型フィルム側から、第1保護層および第2保護層を、厚さ方向において、この順に有する、[1]または[2]に記載の転写シート。
【0144】
[4]
上記第1保護層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、[3]に記載の転写シート。
【0145】
[5]
上記第2保護層は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、[3]または[4]に記載の転写シート。
【0146】
[6]
上記第1保護層は、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一方を含有する、[3]から[5]までのいずれかに記載の転写シート。
【0147】
[7]
上記第2保護層は、紫外線吸収剤および光安定剤の少なくとも一方を含有する、[3]から[6]までのいずれかに記載の転写シート。
【0148】
[8]
上記転写層は、上記第2保護層の上記第1保護層とは反対側の面に、意匠層を有する、[3]から[7]までのいずれかに記載の転写シート。
【0149】
[9]
上記転写シートは、外装品の製造に用いられる、[1]から[8]までのいずれかに記載の転写シート。
【0150】
[10]
複数の面を有する被着体と、[1]から[9]までのいずれかに記載された転写シートと、を準備する準備工程と、
上記被着体における上記複数の面に対して、ローラーを用いて、上記転写シートにおける上記転写層を、順次貼り合わせるラッピング加工工程と、
を有する、物品の製造方法。
【0151】
[11]
上記物品の製造方法は、上記準備工程の後、かつ、上記ラッピング加工工程の前に、上記転写層の上記離型フィルムとは反対側の面、または、上記被着体における上記複数の面に、接着剤層を形成する接着剤層形成工程を有する、[10]に記載の物品の製造方法。
【0152】
[12]
複数の面を有する被着体と、上記複数の面に追従して配置された転写層と、上記転写層に追従して配置された離型フィルムと、を有し、
上記離型フィルムのループスティフネスが、0.18N/15mm以下であり、
上記離型フィルムおよび上記転写層の剥離強度が、0.7N/25mm以下であり、
上記ループスティフネスをXとし、上記剥離強度をYとした場合に、上記Xおよび上記Yは、Y≧0.67X+0.17を満たす、離型フィルム付物品。
【0153】
[13]
上記離型フィルム付物品は、上記転写層および上記被着体の間に、接着剤層を有する、[12]に記載の離型フィルム付物品。