IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サイレックス・テクノロジー株式会社の特許一覧

特開2025-10662通信システム、基地局、通信方法およびプログラム
<>
  • 特開-通信システム、基地局、通信方法およびプログラム 図1
  • 特開-通信システム、基地局、通信方法およびプログラム 図2
  • 特開-通信システム、基地局、通信方法およびプログラム 図3
  • 特開-通信システム、基地局、通信方法およびプログラム 図4
  • 特開-通信システム、基地局、通信方法およびプログラム 図5
  • 特開-通信システム、基地局、通信方法およびプログラム 図6
  • 特開-通信システム、基地局、通信方法およびプログラム 図7
  • 特開-通信システム、基地局、通信方法およびプログラム 図8
  • 特開-通信システム、基地局、通信方法およびプログラム 図9
  • 特開-通信システム、基地局、通信方法およびプログラム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010662
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】通信システム、基地局、通信方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/22 20090101AFI20250116BHJP
   H04W 40/02 20090101ALI20250116BHJP
   H04W 40/12 20090101ALI20250116BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20250116BHJP
【FI】
H04W40/22
H04W40/02 110
H04W40/12
H04W92/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112755
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】篠原 哲平
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067DD44
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】接続の構成を環境に合わせて動的に変更することによって、通信の品質を高いレベルで維持できる通信システム、基地局、通信方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】アクセスポイント1は、自局のホップ数として更新するホップ数更新部117と、更新された自局のホップ数を含むビーコンフレームをルートのアクセスポイント2または他のリピータのアクセスポイント1へ送信する送信制御部116と、無線フレームのRSSI値を算出するRSSI算出部111と、ホップ数およびRSSI値を、ビーコンフレームの送信元のアクセスポイント1、2のSSIDと紐づけて記憶する接続先リスト記憶部131と、RSSI値とホップ数とに基づいて、リピータのアクセスポイント1と無線接続する接続先を、他のアクセスポイント1、2のうちから選定する接続先選定部115と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルートの基地局と、複数のリピータの基地局と、を備える通信システムであって、
前記リピータの基地局は、
前記ルートの基地局または他の前記リピータの基地局から送信されるビーコンフレームを取得すると、前記ルートの基地局から、前記ビーコンフレームを送信した前記ルートの基地局または他の前記リピータの基地局に至るまでに経由したリピータの基地局の数を反映したホップ数を示すホップ数情報を抽出するホップ数抽出部と、
前記抽出されたホップ数が自局のホップ数より大きい場合を除き、当該抽出されたホップ数を1だけインクリメントして自局のホップ数として更新するホップ数更新部と、
前記更新された自局のホップ数を含むビーコンフレームをブロードキャスト送信する送信制御部と、
前記ルートの基地局または他のリピータの基地局から到来する無線フレームの電波強度を算出する電波強度算出部と、
前記ビーコンフレームから抽出されたホップ数および電波強度を、前記ビーコンフレームの送信元の基地局の識別子と紐づけて記憶する接続先リスト記憶部と、
算出された前記電波強度と、抽出された前記ホップ数情報が示す前記ホップ数と、に基づいて、前記リピータの基地局と無線接続する接続先を、前記ルートの基地局または他のリピータの基地局から選定する接続先選定部と、を有する、
通信システム。
【請求項2】
前記接続先選定部は、接続先更新周期が到来した場合であって、
(1)現在の接続先から到来する無線フレームの電波強度が基準値未満である、または、(2)現在の接続先基地局のホップ数より、前記ビーコンフレームから抽出されたホップ数のほうが少ない基地局が存在する、のいずれかを満たした場合、
前記電波強度が予め設定された基準電波強度以上である少なくとも1つの他の基地局を選出し、選出した前記少なくとも1つの他の基地局の中から、選出した前記少なくとも1つの他の基地局それぞれから送信された前記ビーコンフレームから抽出された前記ホップ数情報が示す前記ホップ数が最小の他の基地局を新たな接続先として選定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記接続先選定部は、前記電波強度が予め設定された基準電波強度以上であり且つ自局と通信可能な少なくとも1つの他のリピータの基地局を選出し、選出した前記少なくとも1つの他の基地局の中から、選出した前記少なくとも1つの他の基地局それぞれから送信された前記無線フレームから抽出された前記ホップ数情報が示す前記ホップ数が最小の他のリピータの基地局を選出することを繰り返したときに、予め設定された回数だけ連続して選出された他の基地局を新たな接続先として選定する、
請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
少なくとも1つの他の基地局から到来する無線フレームの電波強度を算出する電波強度算出部と、
他の基地局から送信されるビーコンフレームを取得すると、自局に至るまでに経由した前記他の基地局の数を反映したホップ数を示すホップ数情報を抽出するホップ数抽出部と、
他の基地局から送信されるビーコンフレームを取得すると、前記抽出されたホップ数が自局のホップ数より大きい場合を除き、当該抽出されたホップ数を1だけインクリメントして自局のホップ数として更新するホップ数更新部と、
前記更新された自局のホップ数を含むビーコンフレームをブロードキャスト送信する送信制御部と、
算出された前記電波強度と、抽出された前記ホップ数情報が示す前記ホップ数と、に基づいて、自局と無線接続する接続先を、前記他の基地局のうちから選定する接続先選定部と、を備える、
基地局。
【請求項5】
ルートの基地局と、リピータの基地局と、を備える通信システムにおける通信方法であって、
前記リピータの基地局が、前記ルートの基地局または他の前記リピータの基地局から送信されるビーコンフレームを取得すると、前記ルートの基地局から、前記ビーコンフレームを送信した前記ルートの基地局または他の前記リピータの基地局に至るまでに経由したリピータの基地局の数を反映したホップ数を示すホップ数情報を抽出するステップと、
前記抽出されたホップ数が自局のホップ数より大きい場合を除き、当該抽出されたホップ数を1だけインクリメントして自局のホップ数として更新するステップと、
前記更新された自局のホップ数を含むビーコンフレームをブロードキャスト送信するステップと、
前記ルートの基地局または他のリピータの基地局から到来する無線フレームの電波強度を算出するステップと、
前記ビーコンフレームから抽出されたホップ数および電波強度を、前記ビーコンフレームの送信元の基地局の識別子と紐づけて記憶するステップと、
算出された前記電波強度と、抽出された前記ホップ数情報が示す前記ホップ数と、に基づいて、前記リピータの基地局と無線接続する接続先を、前記ルートの基地局または他のリピータの基地局から選定するステップと、を含む、
通信方法。
【請求項6】
コンピュータを、
少なくとも1つの他の基地局から到来する無線フレームの電波強度を算出する電波強度算出部、
他の基地局から送信されるビーコンフレームを取得すると、自局に至るまでに経由した前記他の基地局の数を反映したホップ数を示すホップ数情報を抽出するホップ数抽出部、
算出された前記電波強度と、抽出された前記ホップ数情報が示す前記ホップ数と、に基づいて、自局と無線接続する接続先を、前記他の基地局のうちから選定する接続先選定部、
他の基地局から送信されるビーコンフレームを取得すると、前記抽出されたホップ数が自局のホップ数より大きい場合を除き、当該抽出されたホップ数を1だけインクリメントして自局のホップ数として更新するホップ数更新部、および
前記更新された自局のホップ数を含むビーコンフレームを、ブロードキャスト送信する送信制御部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、基地局、通信方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
WDS(Wireless Distribution System)リピート機能を有する複数の基地局を備え、ツリー型ネットワークを構成する通信システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-47333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された通信システムでは、複数の基地局それぞれについて静的な通信経路が設定される場合がある。この場合、例えば基地局の移動により、既に設定された通信経路の一部分での通信の品質が劣化したり、複数の基地局のうちの少なくとも1つの基地局間での通信の品質が劣化したりした場合でも、通信経路を変更できず、品質が低下した状態での通信を強いられる虞がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、接続の構成を環境に合わせて動的に変更することによって、通信の品質を高いレベルで維持できる通信システム、基地局、通信方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る通信システムは、
ルートの基地局と、複数のリピータの基地局と、を備える通信システムであって、
前記リピータの基地局は、
前記ルートの基地局または他の前記リピータの基地局から送信されるビーコンフレームを取得すると、前記ルートの基地局から、前記ビーコンフレームを送信した前記ルートの基地局または他の前記リピータの基地局に至るまでに経由したリピータの基地局の数を反映したホップ数を示すホップ数情報を抽出するホップ数抽出部と、
前記抽出されたホップ数が自局のホップ数より大きい場合を除き、当該抽出されたホップ数を1だけインクリメントして自局のホップ数として更新するホップ数更新部と、
前記更新された自局のホップ数を含むビーコンフレームをブロードキャスト送信する送信制御部と、
前記ルートの基地局または他のリピータの基地局から到来する無線フレームの電波強度を算出する電波強度算出部と、
前記ビーコンフレームから抽出されたホップ数および電波強度を、前記ビーコンフレームの送信元の基地局の識別子と紐づけて記憶する接続先リスト記憶部と、
算出された前記電波強度と、抽出された前記ホップ数情報が示す前記ホップ数と、に基づいて、前記リピータの基地局と無線接続する接続先を、前記ルートの基地局または他のリピータの基地局から選定する接続先選定部と、を有する。
なお、本明細書および特許請求の範囲にいうホップ数については、ルート基地局では0であり、リピータ基地局では、ルート基地局と自局との経路中に存在するリピータ基地局の数(自局も含む)を意味する。
【0007】
他の観点から見た本発明に係る基地局は、
少なくとも1つの他の基地局から到来する無線フレームの電波強度を算出する電波強度算出部と、
他の基地局から送信されるビーコンフレームを取得すると、自局に至るまでに経由した前記他の基地局の数を反映したホップ数を示すホップ数情報を抽出するホップ数抽出部と、
他の基地局から送信されるビーコンフレームを取得すると、前記抽出されたホップ数が自局のホップ数より大きい場合を除き、当該抽出されたホップ数を1だけインクリメントして自局のホップ数として更新するホップ数更新部と、
前記更新された自局のホップ数を含むビーコンフレームをブロードキャスト送信する送信制御部と、
算出された前記電波強度と、抽出された前記ホップ数情報が示す前記ホップ数と、に基づいて、自局と無線接続する接続先を、前記他の基地局のうちから選定する接続先選定部と、を備える。
【0008】
他の観点から見た本発明に係る通信方法は、
ルートの基地局と、リピータの基地局と、を備える通信システムにおける通信方法であって、
前記リピータの基地局が、前記ルートの基地局または他の前記リピータの基地局から送信されるビーコンフレームを取得すると、前記ルートの基地局から、前記ビーコンフレームを送信した前記ルートの基地局または他の前記リピータの基地局に至るまでに経由したリピータの基地局の数を反映したホップ数を示すホップ数情報を抽出するステップと、
前記抽出されたホップ数が自局のホップ数より大きい場合を除き、当該抽出されたホップ数を1だけインクリメントして自局のホップ数として更新するステップと、
前記更新された自局のホップ数を含むビーコンフレームをブロードキャスト送信するステップと、
前記ルートの基地局または他のリピータの基地局から到来する無線フレームの電波強度を算出するステップと、
前記ビーコンフレームから抽出されたホップ数および電波強度を、前記ビーコンフレームの送信元の基地局の識別子と紐づけて記憶するステップと、
算出された前記電波強度と、抽出された前記ホップ数情報が示す前記ホップ数と、に基づいて、前記リピータの基地局と無線接続する接続先を、前記ルートの基地局または他のリピータの基地局のうちから選定するステップと、を含む。
【0009】
他の観点から見た本発明に係るプログラムは、
コンピュータを、
少なくとも1つの他の基地局から到来する無線フレームの電波強度を算出する電波強度算出部、
他の基地局から送信されるビーコンフレームを取得すると、自局に至るまでに経由した前記他の基地局の数を反映したホップ数を示すホップ数情報を抽出するホップ数抽出部、
算出された前記電波強度と、抽出された前記ホップ数情報が示す前記ホップ数と、に基づいて、自局と無線接続する接続先を、前記他の基地局のうちから選定する接続先選定部、
他の基地局から送信されるビーコンフレームを取得すると、前記抽出されたホップ数が自局のホップ数より大きい場合を除き、当該抽出されたホップ数を1だけインクリメントして自局のホップ数として更新するホップ数更新部、および
前記更新された自局のホップ数を含むビーコンフレームを、ブロードキャスト送信する送信制御部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電波強度算出部が、リピータの基地局と通信可能な少なくとも1つの他のリピータの基地局それぞれから到来する無線フレームの電波強度を算出し、ホップ数抽出部が、他のリピータの基地局から送信されるビーコンフレームを取得すると、取得したビーコンフレームに含まれるホップ数情報を抽出する。そして、接続先選定部が、算出された電波強度が大きく、抽出されたホップ数情報が示すホップ数が小さい他のリピータの基地局またはルートの基地局を、無線接続する接続先として優先的に選定する。これにより、リピータの基地局へ到来する電波の電波強度が大きく且つホップ数が小さい他のリピータの基地局またはルートの基地局が優先的に選定されるので、リピータの基地局と他のリピータの基地局またはルートの基地局との間での通信の品質を高いレベルで維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図2】実施の形態に係る通信システムのハードウェア構成を示す図である。
図3】実施の形態に係る通信システムの機能構成を示す図である。
図4】実施の形態に係る接続先リスト記憶部が記憶する情報の一例を示す図である。
図5】実施の形態に係る通信システムの動作を示すシーケンス図である。
図6】実施の形態に係る通信システムの動作を示すシーケンス図である。
図7】(A)は実施の形態に係る通信システムの通信経路を示す模式図であり、(B)は実施の形態に係る通信システムの他の通信経路を示す模式図である。
図8】実施の形態に係る通信システムの動作を示すシーケンス図である。
図9】実施の形態に係るアクセスポイントが実行する中継処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】実施の形態に係るアクセスポイントが実行する中継処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態に係る通信システムについて図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係る通信システムは、ルートの基地局と、複数のリピータの基地局と、を備える通信システムであって、リピータの基地局は、ルートの基地局または他のリピータの基地局から送信されるビーコンフレームを取得すると、ルートの基地局から、ビーコンフレームを送信したルートの基地局または他のリピータの基地局に至るまでに経由したリピータの基地局の数を反映したホップ数を示すホップ数情報を抽出するホップ数抽出部と、抽出されたホップ数が自局のホップ数より大きい場合を除き、当該抽出されたホップ数を1だけインクリメントして自局のホップ数として更新するホップ数更新部と、更新された自局のホップ数を含むビーコンフレームをブロードキャスト送信する送信制御部と、ルートの基地局または他のリピータの基地局から到来する無線フレームの電波強度を算出する電波強度算出部と、ビーコンフレームから抽出されたホップ数および電波強度を、ビーコンフレームの送信元の基地局の識別子と紐づけて記憶する接続先リスト記憶部と、算出された電波強度と、抽出されたホップ数情報が示すホップ数と、に基づいて、リピータの基地局と無線接続する接続先を、ルートの基地局または他のリピータの基地局のうちから選定する接続先選定部と、を有する。以下、本実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
本実施の形態に係る通信システムは、例えば図1に示すように、親機(ルート)となるアクセスポイント2(特許請求の範囲において「ルートの基地局」に相当)と、リピータとして動作する、即ち、データフレームをそのまま中継する動作をする複数(図1では5つ)のアクセスポイント1(1A、1B、1C、1D、1E:特許請求の範囲において「リピータの基地局」に相当)と、を備える。なおルートの基地局とリピータの基地局を総称して単に基地局ともいう。アクセスポイント1および2は、それぞれ、例えば家庭内ネットワーク、オフィス内無線LANとして採用されるWDS(Wireless Distribution System)リピート機能を有する基地局である。また、アクセスポイント2、および、複数のアクセスポイント1A、1B、1C、1D、1Eは、それぞれ異なるBSSID(Basic Service Set Identifier)で識別される。通常、これらBSSIDは、アクセスポイント2およびアクセスポイント1それぞれのMACアドレスを指している。なお、図1に示すとおり、本実施の形態に係る通信システムは、ルートのアクセスポイント2がリピータのアクセスポイント1Aとの間でWDS通信を行う一方、リピータのアクセスポイント1B、1C、1D、および1Eとの間でもWDS通信を行っている状況を示している。つまり、図1ではルートのアクセスポイント2が2つの通信経路を有し、WDS通信を行っている。なお、アクセスポイント2およびアクセスポイント1それぞれで構成されるWDS通信では同一のESSID(Extended SSID)を用いて通信が行われる。
【0014】
本実施の形態に係るルートのアクセスポイント2は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)201と、主記憶部202と、補助記憶部203と、無線モジュール205と、各部を接続するバス209と、を備える。主記憶部202は、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリから構成され、CPU201の作業領域として使用される。補助記憶部203は、例えばROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ、または、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等から構成され、アクセスポイント2を制御するためのプログラムを記憶する。
【0015】
無線モジュール205は、例えばIEEE802.11に準拠した無線LAN規格に適合する通信方式で通信する。無線モジュール205は、それぞれ、アンテナ(図示せず)と、受信回路(図示せず)と、信号処理部(図示せず)と、送信回路(図示せず)と、を有する。受信回路は、アンテナを介して無線信号を受信し、受信した無線信号を復調してベースバンド信号を生成して信号処理部へ出力する。送信回路は、信号処理部から入力されるベースバンド信号を用いてキャリア信号を変調することにより、送信するフレームに対応する無線信号を生成し、生成した無線信号を、アンテナを介して送信する。信号処理部は、例えばDSP(Digital Signal Processor)により実現され、受信回路から入力されるベースバンド信号に基づいて受信回路が受信した無線信号に対応するフレームを生成してバス209へ送出する。また、信号処理部は、主記憶部202からバス209を介して転送されてきた各種フレームに基づいてベースバンド信号を生成して送信回路へ出力する。また、無線モジュール205は、例えば5GHzの周波数帯域に属するチャネルを使用してアクセスポイント1と無線通信する。
【0016】
CPU201は、補助記憶部203が記憶するプログラムを主記憶部202に読み込んで実行することにより、図3に示すように、フレーム取得部212、接続管理部215および送信制御部216として機能する。また、図2に示す主記憶部202は、図3に示すように、無線モジュール205により受信されたデータフレームを一時的に記憶するフレームバッファ221を有する。
【0017】
フレーム取得部212は、アクセスポイント1から送信される無線フレームを取得する。具体的には、管理フレームであり、即ち、ビーコンフレーム、認証要求フレーム、アソシエーション要求フレームを、無線モジュール205を介して取得すると、取得した管理フレームを接続管理部215に通知する。また、フレーム取得部212は、アクセスポイント1から送信されるデータフレームを、無線モジュール205を介して取得すると、取得したデータフレームをフレームバッファ221に記憶させる。
【0018】
接続管理部215は、フレーム取得部212から認証要求フレームが通知されると、認証処理を実行し、認証に成功すると、認証要求フレームの送信元を送信先とする認証応答フレームを送信制御部216に通知する。また、接続管理部215は、フレーム取得部212からアソシエーション要求フレームが通知されると、これに応じて、アソシエーション要求フレームの送信元を送信先とするアソシエーション応答フレームを送信制御部216に通知する。更に、接続管理部215は、ホップ数を示すホップ数情報を含むビーコンフレームを定期的に生成し、生成したビーコンフレームを送信制御部216に通知する。ここに言う、ホップ数は、ルートのアクセスポイント2から通信を行いたいリピータのアクセスポイント1(つまり自機)までに経由するアクセスポイント1(自機も含む)の数を示している。
【0019】
送信制御部216は、接続管理部215からビーコンフレームが通知されると、通知されたビーコンフレームを、無線モジュール205を介してブロードキャスト送信する。また、送信制御部216は、接続管理部215から認証応答フレーム、アソシエーション応答フレームが通知されると、通知された認証応答フレーム、アソシエーション応答フレームをアクセスポイント1へ送信する。
【0020】
リピータのアクセスポイント1は、図2に示すように、アクセスポイント2と同様のハードウェア構成を有し、CPU101と、主記憶部102と、補助記憶部103と、無線モジュール105と、計時部108と、各部を接続するバス109と、を備える。主記憶部102は、揮発性メモリから構成され、補助記憶部103は、不揮発性メモリから構成され、アクセスポイント1を制御するためのプログラムを記憶する。
【0021】
無線モジュール105は、前述の無線モジュール205と同様に、例えばIEEE802.11に準拠した無線LAN規格に適合する通信方式で通信する。無線モジュール105は、無線モジュール205と同様に、5GHzの周波数帯域に属するチャネルを使用してアクセスポイント2または他のアクセスポイント1と無線通信する。計時部108は、後述する接続先更新周期の到来を判定するために、電源投下後、アクセスポイント2または他のアクセスポイント1と無線接続が完了したのち(つまり、WDS通信が構築されたとき)、予め決められた一定時間(以後、接続先更新周期とも呼ぶ。例えば30秒など)毎にリセットを繰り返すタイマを有する。接続先更新周期は、例えば、アクセスポイントの運用前に初期設定ツール(不図示)を用いてユーザによって決められる。
【0022】
CPU101は、補助記憶部103が記憶するプログラムを主記憶部102に読み込んで実行することにより、図3に示すように、RSSI(Received Signal Strength Indicator)算出部111、フレーム取得部112、ホップ数抽出部114、接続先選定部115、送信制御部116、ホップ数更新部117および接続管理部118として機能する。また、図2に示す補助記憶部103は、図3に示すように、接続先リスト記憶部131を有する。更に、図2に示す主記憶部102は、図3に示すように、無線モジュール105により受信されたデータフレームを一時的に記憶するフレームバッファ121を有する。接続先リスト記憶部131は、例えば図4に示すように、接続先候補のアクセスポイント1、2それぞれに対応するRSSI値を示すRSSI情報と、ホップ数を示すホップ数情報と、を、対応するアクセスポイント1、2を識別するSSIDを示す接続先SSID情報に対応づけて記憶する。図4は、アクセスポイント1Eの接続先リスト記憶部131が記憶する情報の一例を示し、BSSID[0]が、アクセスポイント1AのBSSID、BSSID[1]が、アクセスポイント1DのBSSIDを示す。
【0023】
図3に戻って、RSSI算出部111は、アクセスポイント1(自機)と通信可能な他のノード(他のアクセスポイント1またはアクセスポイント2)それぞれから無線モジュール105に到来する無線フレームに格納されたRSSI値を算出する電波強度算出部である。RSSI算出部111は、算出したRSSI値を、対応するアクセスポイント1、2のSSID情報に対応づけて接続先リスト記憶部131に記憶させる。フレーム取得部112は、アクセスポイント2または他のアクセスポイント1から送信される管理フレーム、即ち、ビーコンフレーム、認証応答フレームまたはアソシエーション応答フレームを取得する。フレーム取得部112は、アクセスポイント2または他のアクセスポイント1から送信されるビーコンフレームを、無線モジュール105を介して取得すると、取得したビーコンフレームを、接続管理部118、ホップ数抽出部114およびホップ数更新部117に通知する。ここで、フレーム取得部112は、予め設定された接続先更新周期毎に、受信可能なアクセスポイント2および他のアクセスポイント1から定期的に送信されているビーコンフレームを取得する。また、フレーム取得部112は、アクセスポイント2または他のアクセスポイント1から送信される認証応答フレーム、アソシエーション応答フレームを、無線モジュール105を介して取得すると、取得した認証応答フレーム、アソシエーション応答フレームを接続管理部118に通知する。
【0024】
ホップ数抽出部114は、フレーム取得部112からビーコンフレームが通知されると、通知されたビーコンフレームに含まれるホップ数情報と、ビーコンフレームの送信元のアクセスポイント1または2のSSID情報と、を抽出し、抽出したホップ数情報を、当該アクセスポイントのSSID情報に対応づけて接続先リスト記憶部131に記憶させる。また、ホップ数抽出部114は、抽出したホップ数情報をホップ数更新部117に通知する。ホップ数更新部117は、ホップ数抽出部114からホップ数情報が通知されると、通知されたホップ数情報が示すホップ数を1だけインクリメントした値に、自機が接続先リスト記憶部131に保有する各接続先BSSIDに対応するホップ数の値を更新する。(ただし、抽出したホップ数情報が示すホップ数が、自機が保有するホップ数より大きい場合は、更新しない。自機よりアクセスポイント2から遠い下流側に位置する他のアクセスポイントのホップ数だからである)そして、ホップ数更新部117は、更新後のホップ数情報を接続管理部118に通知する。
【0025】
接続管理部118は、フレーム取得部112から認証応答フレームが通知されると、これに応じて、アソシエーション要求フレームを送信制御部116に通知する。また、接続管理部118は、フレーム取得部112からアソシエーション応答フレームが通知されると、これに応じて、フレーム取得部112をデータフレームの取得可能な状態にするとともに、送信制御部116をデータフレームの送信可能な状態とする。更に、接続管理部118は、ホップ数更新部117から更新後のホップ数情報を取得すると、取得したホップ数情報とアクセスポイント1のSSID情報と含むビーコンフレームを生成して送信制御部116に通知する。
【0026】
接続先選定部115は、接続先リスト記憶部131が記憶するRSSI情報が示すRSSI値と、ホップ数情報が示すホップ数と、に基づいて、アクセスポイント1(自機)と無線接続する接続先のアクセスポイントを選定する。具体的には、接続先選定部115は、RSSI値が予め設定された基準RSSI以上である他のアクセスポイントを選出する。ここで、「基準RSSI」は、例えば-65dBm以上-70dBm以下のある数値に設定される基準電波強度である。次に、接続先選定部115は、選出した他のアクセスポイントの中から、選出した他のアクセスポイントそれぞれから送信されたビーコンフレームから抽出されたホップ数情報が示すホップ数が最小のアクセスポイントを接続先候補として選出する。選出される候補は1つでもよいし、複数でもよい。その後、接続先選定部115は、前述のRSSI値とホップ数とに基づいて、接続先候補を選出する処理を繰り返し実行し、予め設定された回数(例えば3回)連続で選出された接続先アクセスポイント1つを選定する。そして、接続先選定部115は、選定した接続先アクセスポイントのSSID情報をフレーム取得部112および送信制御部116に通知する。また、すでに接続が確立されているときであっても、接続先更新周期が到来した場合であって、(1)現在の接続先のアクセスポイント1または2からの無線フレームの電波強度であるRSSI値が基準RSSI未満である、または(2)現在の接続先のアクセスポイントのホップ数よりも、ビーコンフレームから抽出されたホップ数のほうが少ないアクセスポイントが存在する、場合には、新たな接続先アクセスポイントの選定を開始する。
【0027】
送信制御部116は、フレームバッファ121が記憶するデータフレームを、接続先選定部115により選定された、SSID情報で識別される接続先アクセスポイントへ送信する。また、送信制御部116は、接続管理部118からアソシエーション要求フレームを取得すると、取得したアソシエーション要求フレームを、接続先選定部116により選定された、SSID情報で識別される接続先アクセスポイントへ送信する。更に、送信制御部116は、接続管理部118からビーコンフレームを取得すると、取得したビーコンフレームを他のノードへブロードキャスト送信する。
【0028】
次に、本実施の形態に係る通信システムの動作について図5乃至図8を参照しながら詳細に説明する。なお、図5図6および図8では、ACK(ACKnowledgement)フレームの送受信については図示を省略している。また、アクセスポイント1A、1B、1C、1D、1E、2は、当初図1に示すように配置・接続されているとする。
【0029】
まず、図5に示すように、アクセスポイント2は、定期的に、前述のホップ数情報を含むビーコンフレームを生成すると(ステップS1)、生成されたビーコンフレームが、図1で示されるアクセスポイント2からブロードキャストされ、隣接するアクセスポイント(例えば、アクセスポイント1A、1B)はこれを受信する(ステップS2、S3)。アクセスポイント1Aは、ビーコンフレームを取得すると、取得したビーコンフレームに含まれるホップ数情報が示すホップ数が1だけインクリメントされる形で更新された更新後のホップ数情報を含むビーコンフレームを生成する(ステップS4)。このとき、ホップ数は「1」に設定される。そして、生成されたビーコンフレームが、アクセスポイント1Aからブロードキャストされる。このとき、図1に示すとおり、アクセスポイント1Aと接続はしていないが、隣接するアクセスポイント1Eもこれを受信する(ステップS5)。その際、アクセスポイント1Eは、ビーコンフレームを受信すると、ビーコンフレームの送信元のアクセスポイント1Aから到来する無線フレームのRSSI値を算出し、算出したRSSI値を示すRSSI情報を生成して、当該ビーコンフレームの送信元のアクセスポイント1AのSSID情報に対応づけて接続先リスト記憶部131に記憶させる(ステップS6)。次に、アクセスポイント1Eは、取得したビーコンフレームに含まれるホップ数情報を抽出し、抽出したホップ数情報(ホップ数「1」)を、ビーコンフレームの送信元のアクセスポイント1AのSSID情報に対応づけて接続先リスト記憶部131に記憶させる(ステップS7)。
【0030】
また、アクセスポイント1Bは、アクセスポイント2がブロードキャストしたビーコンフレームを受信すると、取得したビーコンフレームに含まれるホップ数情報が示すホップ数を1だけインクリメントする形で更新した更新後のホップ数情報を含むビーコンフレームを生成する(ステップS8)。このとき、ホップ数は、「1」に設定される。続いて、生成されたビーコンフレームが、アクセスポイント1Bからブロードキャストされアクセスポイント1Cがこれを受信する(ステップS9)。一方、アクセスポイント1Cは、ビーコンフレームを受信すると、受信したビーコンフレームに含まれるホップ数情報が示すホップ数を1だけインクリメントする形で更新した更新後のホップ数情報を含むビーコンフレームを生成する(ステップS10)。このとき、ホップ数は、「2」に設定される。その後、生成されたビーコンフレームが、アクセスポイント1Cからブロードキャストされ、アクセスポイント1Dはこれを受信する(ステップS11)。一方、アクセスポイント1Dは、ビーコンフレームを受信すると、受信したビーコンフレームに含まれるホップ数情報が示すホップ数を1だけインクリメントする形で更新した更新後のホップ数情報を含むビーコンフレームを生成する(ステップS12)。このとき、ホップ数は、「3」に設定される。その後、生成されたビーコンフレームが、アクセスポイント1Dからブロードキャストされ、アクセスポイント1Eはこれを受信する(ステップS13)。ここで、アクセスポイント1Eは、受信したビーコンフレームに含まれるホップ数情報を抽出し、抽出したホップ数情報を、ビーコンフレームの送信元のアクセスポイント1DのSSID情報に対応づけて接続先リスト記憶部131に記憶させる(ステップS14)。また、ビーコンフレームを取得する際、ビーコンフレームの送信元のアクセスポイント1Dから到来する電波のRSSI値を算出し、算出したRSSI値を示すRSSI情報を生成して、当該ビーコンフレームの送信元であるアクセスポイント1DのSSID情報に対応づけて接続先リスト記憶部131に記憶させる(ステップS15)。
【0031】
続いて、アクセスポイント1Eは、接続先リスト記憶部131が記憶するホップ数情報を参照して、現在の接続先のアクセスポイント(1D)よりもホップ数が少ないアクセスポイントが存在するか否か判定し、現在の接続先のアクセスポイント(1D)よりもホップ数が少ないアクセスポイントが存在すると判定したとする(ステップS16)。そして、アクセスポイント1Eが、更に、現在の接続先のアクセスポイント(1D)のアクセスポイントについてのRSSI情報が示すRSSI値が、基準RSSI未満であると判定したとする(ステップS17)。この場合、アクセスポイント1Eは、接続先リスト記憶部131が記憶するRSSI情報およびホップ数情報を参照して、ホップ数情報が示すホップ数が現在の接続先(1D)では「3」であり、候補のアクセスポイント1Aではこれより小さい「1」であるので、アクセスポイント1Aを新たな接続先候補として選出する(ステップS18)。接続先のアクセスポイントを変更するステップを開始する具体的なポリシーとしては、前述のとおり、(1)現在の接続先から到来する無線フレームの電波強度であるRSSI値が基準値未満になった、または、(2)現在の接続先アクセスポイントのホップ数より、ビーコンフレームから抽出されたホップ数のほうが少ないアクセスポイントが見つかった、のいずれかを満たした場合である。例えば、アクセスポイント1Eが、図4に示すように、RSSI情報およびホップ数情報を記憶している場合、ホップ数が最小「1」であるアクセスポイント1Aを選出する。その後、ステップS1からS18までの一連の処理が繰り返されることにより、図6に示すように、アクセスポイント1Eが、接続先候補を繰り返し選出する(ステップS18)。このように、ステップS1からS18までの一連の処理を繰り返すことで、偶発的に前述の(1)および(2)の条件を共に満たしてしまい、現在の接続先から新たな接続先へ変更するための接続先変更処理を不必要に繰り返したり、接続先として選定されるべきでない不適切なアクセスポイントが選定されたりする事態を回避できる。アクセスポイント1Eは、N(Nは正の整数)回連続で接続先候補に選出されたアクセスポイント1Aが有ると判定すると(ステップS19)、当該アクセスポイント1Aを接続先として選定する(ステップS20)。ここで、Nは、例えば「3」に設定される。
【0032】
続いて、認証要求フレームが、アクセスポイント1Eからアクセスポイント1Aへ送信され(ステップS21)、アクセスポイント1Aにおいて認証が成功すると、認証応答フレームが、アクセスポイント1Aからアクセスポイント1Eへ送信される(ステップS22)。その後、アソシエーション要求フレームが、アクセスポイント1Eからアクセスポイント1Aへ送信され(ステップS23)、アクセスポイント1Aが、アソシエーション要求フレームを取得すると、これに応じて、アソシエーション応答フレームが、アクセスポイント1Aからアクセスポイント1Eへ送信される(ステップS24)。これにより、図7(A)の太破線で示すように、アクセスポイント1Aとアクセスポイント1Eとが無線接続された状態となる。
【0033】
図6に戻って、次に、データフレームが、アクセスポイント2からアクセスポイント1Aへ送信されると(ステップS25)、当該データフレームが、アクセスポイント1Aからアクセスポイント1Eへ送信される(ステップS26)。また、データフレームが、アクセスポイント1Eからアクセスポイント1Aへ送信されると(ステップS27)、当該データフレームが、アクセスポイント1Aからアクセスポイント2へ送信される(ステップS28)。
【0034】
その後、無線環境が変化し、図7(B)に示すように、アクセスポイント1Aとアクセスポイント1Eとの間の通信が障害物BAにより遮断されるとともに、アクセスポイント1C、1Dの位置がそれぞれ矢印で示すように移動したとする。この状況により、アクセスポイント1Aがブロードキャストしたビーコンフレームは、もはやアクセスポイント1Eで受信できない、またはそのRSSI値が基準値未満となる。この状況下で、図6に示すように、再び、接続先更新周期が到来したとする。この場合、前述のビーコンフレームが、アクセスポイント2からブロードキャストされ、アクセスポイント1Bが受信すると(ステップS29)、アクセスポイント1Bが、取得したビーコンフレームに含まれるホップ数情報が示すホップ数を1だけインクリメントする形で更新した更新後のホップ数情報を含むビーコンフレームを生成する(ステップS30)。このとき、ホップ数は、「1」に設定される。続いて、生成されたビーコンフレームが、アクセスポイント1Bからブロードキャストされ、アクセスポイント1Cはこれを受信する(ステップS31)。アクセスポイント1Cは、ビーコンフレームを受信すると、受信したビーコンフレームに含まれるホップ数情報が示すホップ数を1だけインクリメントする形で更新した更新後のホップ数情報を含むビーコンフレームを生成する(ステップS32)。このとき、ホップ数は、「2」に設定される。その後、図8に示すように、生成されたビーコンフレームが、アクセスポイント1Cからブロードキャストされ、隣接するアクセスポイント1D、1Eがこれを受信する(ステップS33、S34)。アクセスポイント1Eは、ビーコンフレームを受信する際、ビーコンフレームの送信元のアクセスポイント1Cから到来する無線フレームのRSSI値を算出し、算出したRSSI値を示すRSSI情報を生成して、ビーコンフレームの送信元であるアクセスポイント1CのSSID情報に対応づけて接続先リスト記憶部131に記憶させる(ステップS35)。その後、アクセスポイント1Eは、取得したビーコンフレームに含まれるホップ数情報およびビーコンフレームの送信元のアクセスポイント1CのSSID情報を抽出し、抽出したホップ数情報およびSSID情報を互いに対応づけて接続先リスト記憶部131に記憶させる(ステップS36)。次に、アクセスポイント1Cからのビーコンフレームを受信したアクセスポイント1Dは、取得したビーコンフレームに含まれるホップ数情報が示すホップ数を1だけインクリメントする形で更新した更新後のホップ数情報を含むビーコンフレームを生成する(ステップS12に同じ処理 )。このとき、ホップ数は、「3」に設定される。そして、生成されたビーコンフレームは、アクセスポイント1Dからブロードキャストされ(ステップS13に同じ処理)、アクセスポイント1Eがこれを受信し、取得したビーコンフレームに含まれるRSSI情報、ホップ数情報、およびビーコンフレームの送信元のアクセスポイント1DのSSID情報を抽出し、抽出したRSSI値、ホップ数、およびSSIDを互いに対応づけて接続先リスト記憶部131に記憶させる(図示しない)。こうした一連の処理が実行されると、アクセスポイント1Eは、接続先リスト記憶部131が記憶するRSSI情報およびホップ数情報を参照して、RSSI値が予め設定された基準RSSI以上であり且つホップ数情報が示すホップ数が最小のアクセスポイント1Cを接続先候補として選出する(ステップS37)。なお、現在の接続先である1Aからの信号はもはや受信できない状況であり、選出のための、RSSI情報およびホップ数情報参照の対象とはなり得ない。続いて、ステップS29からS37までの一連の処理が繰り返されることにより、アクセスポイント1Eが、接続先候補を繰り返し選出する(ステップS37)。その後、アクセスポイント1Eは、N回連続で接続先候補に選出されたアクセスポイント1Cが有ると判定すると(ステップS38)、当該アクセスポイント1Cを接続先として選定する(ステップS39)。
【0035】
次に、認証要求フレームが、アクセスポイント1Eからアクセスポイント1Cへ送信され(ステップS40)、アクセスポイント1Cにおいて認証が成功すると、認証応答フレームが、アクセスポイント1Cからアクセスポイント1Eへ送信される(ステップS41)。続いて、アソシエーション要求フレームが、アクセスポイント1Eからアクセスポイント1Cへ送信され(ステップS42)、アクセスポイント1Cが、アソシエーション要求フレームを取得すると、これに応じて、アソシエーション応答フレームが、アクセスポイント1Cからアクセスポイント1Eへ送信される(ステップS43)。これにより、図7(B)の太破線で示すように、アクセスポイント1Cとアクセスポイント1Eとが無線接続された状態となる。
【0036】
次に、本実施の形態に係るアクセスポイント1が実行する中継処理について図9および図10を参照しながら詳細に説明する。この中継処理は、例えばアクセスポイント1へ電源が投入されたことを契機として開始される。なお、図9および図10では、アクセスポイント1が、ACKフレームを送信する処理およびACKフレームを取得する処理については図示を省略している。
【0037】
まず、図9に示すように、フレーム取得部112は、計時部108により計時される経過時間に基づいて、予め設定された接続先更新周期が到来したか否かを判定する(ステップS101)。ここで、フレーム取得部112が、未だ接続先更新周期が到来していないと判定すると(ステップS101:No)、後述する図10に示すステップS114の処理が実行される。一方、フレーム取得部112は、接続先更新周期が到来したと判定すると(ステップS101:Yes)、ビーコンフレームを取得したか否かを判定する(ステップS102)。ここで、フレーム取得部112が、ビーコンフレームを取得していないと判定する限り(ステップS102:No)、再びステップS101の処理を実行する。一方、フレーム取得部112が、ビーコンフレームを取得したと判定すると(ステップS102:Yes)、取得されたビーコンフレームを、接続管理部118、ホップ数抽出部114およびホップ数更新部117に通知する。そして、RSSI算出部111は、アクセスポイント1(自機)が受信可能な他のノードそれぞれから到来する無線フレームのRSSI値を算出する。また、RSSI算出部111は、算出したRSSI値を、対応するアクセスポイント1または2から送信されるビーコンフレームに含まれるSSID情報に対応づけて接続先リスト記憶部131に記憶させる(ステップS103)。
【0038】
次に、ホップ数抽出部114は、フレーム取得部112から通知されたビーコンフレームに含まれるホップ数情報と、ビーコンフレームに含まれる送信元のアクセスポイント1または2のSSID情報と、を抽出し、抽出したホップ数情報とSSID情報とを互いに対応づけて接続先リスト記憶部131に記憶させる(ステップS104)。続いて、接続先選定部115は、接続先リスト記憶部131におけるRSSI情報を参照して、現在の接続先のアクセスポイント1または2のRSSI値が基準RSSI未満であるか否かを判定する(ステップS105)。ここで、接続先選定部115が、現在の接続先のアクセスポイント1または2のRSSI値が基準RSSI未満であると判定すると(ステップS105:Yes)、後述のステップS107の接続先候補選出の処理が実行される。一方、接続先選定部115は、現在の接続先のアクセスポイント1または2のRSSI値が基準RSSI未満でないと判定すると(ステップS105:No)、次に接続先リスト記憶部131が記憶するホップ数情報を参照して、現在の接続先のアクセスポイントよりもホップ数が少ないアクセスポイント1または2が存在するか否かを判定する(ステップS106)。ここで、接続先選定部115は、現在の接続先のアクセスポイントよりもホップ数が少ないアクセスポイント1または2が存在しないと判定すると(ステップS106:No)、接続先候補選出の処理をせず、ステップS101の処理に戻る。
【0039】
一方、接続先選定部115は、現在の接続先のアクセスポイント(1または2)よりもホップ数が少ないアクセスポイント(1または2)が存在すると判定すると(ステップS106:Yes)、他のアクセスポイント1、2の中から、選出した他のアクセスポイント1、2それぞれから送信されたビーコンフレームをもとに、抽出されたRSSI情報が示すRSSI値が現在の接続先のRSSI値より大きく、かつホップ数情報が示すホップ数が最小の他のアクセスポイント1または2を、接続先候補として選出する(ステップS107)。その後、接続先選定部115は、選出した接続先候補が、N(Nは正の整数)回連続で選出された接続先候補であるか否かを判定する(ステップS108)。ここで、接続先選定部115により、選出した接続先候補が、N回連続で選出された接続先候補でないと判定されると(ステップS108:No)、再びステップS101の処理が実行される。一方、接続先選定部115は、選出した接続先候補が、N回連続で選出された接続先候補であると判定すると(ステップS108:Yes)、選出した接続先候補を新たな接続先のアクセスポイント1として選定する(ステップS109)。
【0040】
次に、接続管理部118は、認証要求フレームを送信制御部116に通知し、送信制御部116が、通知された認証フレームを新たな接続先の他のアクセスポイント1、2へ送信する(ステップS110)。続いて、フレーム取得部112が、認証応答フレームを取得すると(ステップS111)、フレーム取得部112が、取得した認証応答フレームを接続管理部118に通知する。そして、接続管理部118は、アソシエーション要求フレームを送信制御部116に通知し、送信制御部116が、通知されたアソシエーション要求フレームを新たな接続先の他のアクセスポイント1、2へ送信する(ステップS112)。続いて、フレーム取得部112が、アソシエーション応答フレームが取得すると(ステップS113)、フレーム取得部112が、取得したアソシエーション応答フレームを接続管理部118に通知する。このとき、接続管理部118は、フレーム取得部112をデータフレーム取得可能な状態にするとともに、送信制御部116をデータフレーム送信可能な状態とする。
【0041】
その後、図10に示すように、フレーム取得部112は、ビーコンフレームを取得したか否かを判定する(ステップS114)。ここで、フレーム取得部112が、ビーコンフレームを取得していないと判定すると(ステップS114:No)、後述のステップS117の処理が実行される。一方、フレーム取得部112が、ビーコンフレームを取得したと判定すると(ステップS114:Yes)、取得されたビーコンフレームを、ホップ数抽出部114に通知する。そして、ホップ数抽出部114は、フレーム取得部112から通知されたビーコンフレームに含まれるホップ数情報を抽出し(ステップS115)、抽出したホップ数情報を、ホップ数更新部117に通知する。次に、ホップ数更新部117が、ホップ数抽出部114から通知されたホップ数情報が示すホップ数が自機のホップ数より小さい場合、これを1だけインクリメントする形で更新し、接続管理部118が、更新後のホップ数情報を取得し、取得したホップ数情報と自局のSSID情報とを含むビーコンフレームを生成する。そして、送信制御部116が、生成されたビーコンフレームをブロードキャスト送信する(ステップS116)。
【0042】
続いて、フレーム取得部112は、データフレームを取得したか否かを判定する(ステップS117)。ここで、フレーム取得部112が、データフレームを取得していないと判定すると(ステップS117:No)、再びステップS101の処理が実行される。一方、フレーム取得部112が、データフレームを取得したと判定すると(ステップS117:Yes)、フレーム取得部112は、取得したデータフレームをフレームバッファ121に記憶させる。そして、送信制御部116は、フレームバッファ121が記憶するデータフレームを、接続先の他のアクセスポイント1または2へ送信する(ステップS118)。その後、再び図9に示すステップS101の処理が実行される。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態に係るアクセスポイント1によれば、RSSI算出部111が、他のアクセスポイント1または2それぞれから到来する無線フレーム電波のRSSI値を算出する。また、ホップ数抽出部114が、他のアクセスポイント1または2から送信されるビーコンフレームを取得すると、取得したビーコンフレームに含まれるホップ数情報を抽出する。そして、接続先選定部115は、(1)現在の接続先から到来する無線フレームの電波強度であるRSSI値が基準値未満になった、または(2)現在の接続先アクセスポイントよりホップ数が少ないアクセスポイントが見つかった、のいずれかの場合に新たな接続先を具体的に選定開始し、その結果として、算出されたRSSI値が大きく、抽出されたホップ数情報が示すホップ数が、現在接続先のホップ数より小さい他のアクセスポイント1または2を、無線接続する接続先として優先的に選定する。これにより、アクセスポイント1へ到来する電波のRSSI値が大きく且つホップ数が小さい他のアクセスポイント1または2が優先的に選定されるので、アクセスポイント1と他のアクセスポイント1または2との間での通信の品質を高いレベルで維持することができる。
【0044】
ところで、従来のWDSリピート機能を有するアクセスポイントで構築されるツリー型ネットワークでは、ルートのアクセスポイントからリピータとして機能する各アクセスポイントまでの通信経路が静的である。このため、ネットワークの初期の経路設定では通信の品質が悪化する場合であっても初期に設定された通信経路が維持され、通信品質が向上するように通信経路を更新することが難しい。従って、例えばアクセスポイント間に障害物が挿入され通信の品質が劣化した場合でも通信経路を動的に変更することが難しかった。これに対して、通信経路に冗長性を持たせるとともに通信経路の動的な変更が可能な無線LAN(Local Area Network)規格としてIEEE802.11sが存在する。しかしながら、IEEE802.11sに対応した複数のアクセスポイントから構築されるネットワークでは、通信の品質を良好に維持するための通信経路の更新のために定期的に専用の無線フレームを送信する必要がある。このため、当該無線フレームの送信のために無線帯域が使用される分、無線帯域が圧迫される虞がある。また、通信経路の更新が頻発し、通信状態が不安定になる虞もある。
【0045】
これに対して、本実施の形態に係る通信システムでは、通信品質が向上するように動的な通信経路を実現しつつ、IEEE802.11sにおける専用の無線フレームが不要である。従って、無線帯域を使用するフレーム数を低減することができ、その分、無線帯域をデータフレームの送信に有効に活用できるという利点がある。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば各実施の形態において、ホップ数情報を含むビーコンフレームの代わりに、ホップ数情報を含む他の管理フレームを採用してもよい。
【0047】
実施の形態において、ルートのアクセスポイント2およびリピータとして機能する複数のアクセスポイント1の相互間通信を5GHzの周波数帯域に属するチャネルを使用して実行する例について説明した。但し、これに限らず、ルートのアクセスポイント2およびリピータとして機能する複数のアクセスポイント1の相互間通信を2.4GHzの周波数帯域に属するチャネル、或いは、6GHzの周波数帯域に属するチャネルを使用して実行するものであってもよい。
【0048】
本発明に係るアクセスポイント1および2の各種機能は、専用のシステムによらず、無線通信モジュールを備えるコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、ネットワークに接続されているコンピュータに、上記動作を実行するためのプログラムを、コンピュータシステムが読み取り可能な非一時的な記録媒体(CD-ROM等)に格納して配布し、当該プログラムをコンピュータシステムにインストールすることにより、上述の処理を実行するアクセスポイント1、2を構成してもよい。
【0049】
また、コンピュータにプログラムを提供する方法は任意である。例えば、プログラムは、通信回線のサーバにアップロードされ、通信回線を介してコンピュータに配信されてもよい。そして、コンピュータは、このプログラムを起動して、OSの制御の下、他のアプリケーションと同様に実行する。これにより、コンピュータは、上述の処理を実行するアクセスポイント1、2として機能する。
【0050】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、WDSリピート機能を有するアクセスポイントを用いてツリー型ネットワークを構築している通信システムとして好適である。
【符号の説明】
【0052】
1,1A,1B,1C,1D,1E,2:アクセスポイント、101,201:CPU、102,202:主記憶部、103,203:補助記憶部、105,106,205,206:無線モジュール、108:計時部、109,209:バス、111:RSSI算出部、112,212:フレーム取得部、114:ホップ数抽出部、115:接続先選定部、116,216:送信制御部、117:ホップ数更新部、118,215:接続管理部、121,221:フレームバッファ、131:接続先リスト記憶部、BA:障害物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10