(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025106628
(43)【公開日】2025-07-16
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
F02D 35/00 20060101AFI20250709BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20250709BHJP
F01N 13/00 20100101ALI20250709BHJP
【FI】
F02D35/00 368C
F01N13/08 G
F01N13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056527
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】間平 弘志
(72)【発明者】
【氏名】大塚 卓也
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004AA02
3G004DA01
3G004DA02
(57)【要約】
【課題】鞍乗型車両に搭載される複数の気筒を有する内燃機関おいて、排気ガスセンサの保護性能を十分に確保しつつ排気ガスセンサを排気浄化用触媒の上流側に好適に配置することを可能にする構成を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両10は、各気筒の排気ポートに接続される複数の排気管68が集合する集合排気管70と、その下流側に配置される排気浄化用触媒54aと、その上流側に設けられる排気ガスセンサ60とを備える。複数の前記排気管の各々は、クランク軸よりも上側に位置する対応する排気ポートから延び、触媒は、クランク軸の下側に配置されるとともに、車両の前後方向においてクランク軸と重なる位置に配置されていて、排気ガスセンサの少なくとも一部は、複数の排気管68とエンジン本体34Bとの間の領域に延びるように設けられている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を有する内燃機関(34)を搭載した鞍乗型車両(10)であって、
各気筒の排気ポート(39c)に接続される複数の排気管(68)が集合する集合排気管(70)と、
前記集合排気管(70)の下流側に配置される排気浄化用触媒(54a)と、
前記排気浄化用触媒(54a)の上流側に設けられる排気ガスセンサ(60)と
を備え
複数の前記排気管(68)の各々は、前記内燃機関(34)のクランク軸(35)よりも上側に位置する対応する前記排気ポート(39c)から延び、
前記触媒(54a)は、前記クランク軸(35)の下側に配置されるとともに、前記車両(10)の前後方向において前記内燃機関(34)の前記クランク軸(35)と重なる位置に配置されていて、
前記排気ガスセンサ(60)の少なくとも一部は、複数の前記排気管(68)と前記内燃機関(34)のエンジン本体(34B)との間の領域(R)に延びるように設けられている
ことを特徴とする鞍乗型車両(10)。
【請求項2】
前記排気ガスセンサ(60)は前記集合排気管(70、170)に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両(10)。
【請求項3】
前記触媒(54a)の上流側に2つの前記集合排気管(70)があり、
前記車両(10)の側面視において2つの前記集合排気管(70)は少なくとも一部が重なり合う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗型車両(10)。
【請求項4】
2つの前記集合排気管(70)の各々に前記排気ガスセンサ(60)を配置し、
2つの前記排気ガスセンサ(60)は、車幅方向において、互いに同一方向に向けて配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の鞍乗型車両(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を搭載した自動二輪車などである鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車において、多気筒エンジンつまり、複数の気筒を有する内燃機関を備えることが行われている。例えば、特許文献1の自動二輪車は、多気筒エンジンの各気筒の排気口に接続される複数の排気管と、連通孔を介して対となる排気管同士を連結する連結管と、排気管の前方に配置されるラジエータとを備える。特許文献1が開示するエンジンは、4つの気筒を有し、その気筒配列は、左から右に向けて1番気筒、2番気筒、3番気筒及び4番気筒が直列に並ぶ。1番気筒の排気管と2番気筒の排気管が合流部で合流し、3番気筒の排気管と4番気筒の排気管が合流部で合流する。更に、それら合流部が相互に合流することで、1番気筒から4番気筒の4本の排気管が最終的に単一の集合管に集合する。この集合管にはマフラーが接続され、このマフラーから排気ガスが排出される。連結管は、1番気筒及び4番気筒の排気管を連結する第1の連結管と、2番気筒及び3番気筒の排気管を連結する第2の連結管とを含み、第1の連結管は、第2の連結管よりも上方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の自動二輪車でも、内燃機関の排気通路に排気浄化用触媒が配置されることが望まれるが、それに関する記載は特許文献1にない。一方で、排気浄化用触媒を設ける場合、その上流側に酸素センサなどの排気ガスセンサを設けて例えば燃料噴射制御が行われることが望まれる。しかし、自動二輪車における各種装置のレイアウトには種々の制約があり、例えば排気ガスセンサの保護性能を十分に確保しつつ排気ガスセンサを排気浄化用触媒の上流側に配置することは容易でない。本発明の目的は、例えば自動二輪車である鞍乗型車両に搭載される複数の気筒を有する内燃機関おいて、排気ガスセンサの保護性能を十分に確保しつつ排気ガスセンサを排気浄化用触媒の上流側に好適に配置することを可能にする構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、
複数の気筒を有する内燃機関を搭載した鞍乗型車両であって、
各気筒の排気ポートに接続される複数の排気管が集合する集合排気管と、
前記集合排気管の下流側に配置される排気浄化用触媒と、
前記排気浄化用触媒の上流側に設けられる排気ガスセンサと
を備え
複数の前記排気管の各々は、前記内燃機関のクランク軸よりも上側に位置する対応する前記排気ポートから延び、
前記触媒は、前記クランク軸の下側に配置されるとともに、前記車両の前後方向において前記内燃機関の前記クランク軸と重なる位置に配置されていて、
前記排気ガスセンサの少なくとも一部は、複数の前記排気管と前記内燃機関のエンジン本体との間の領域に延びるように設けられている
ことを特徴とする鞍乗型車両
を提供する。
【0006】
上記構成によれば、複数の排気管とエンジン本体との間の領域を有効に活用して排気ガスセンサを配置することができ、また、排気管の後側に排気ガスセンサを隠すように配置することができる。これにより、例えば前輪により跳ね上げられる石等から排気ガスセンサを保護することができる。このように、鞍乗型車両に搭載される複数の気筒を有する内燃機関おいて、排気ガスセンサの保護性能を十分に確保しつつ排気ガスセンサを排気浄化用触媒の上流側に好適に配置することが可能になる。
【0007】
好ましくは、前記排気ガスセンサは前記集合排気管に配置されている。この構成によれば、その排気ガスセンサを用いて、集合排気管内で各排気管から排出された排気ガスが混ざり合った排気ガスをセンシングすることが可能になり、排気ガスセンサにおける検出精度を向上させることができる。
【0008】
好ましくは、前記触媒の上流側に2つの前記集合排気管があり、前記車両の側面視において2つの前記集合排気管は少なくとも一部が重なり合う。この構成によれば、排気管の集合部をコンパクトに配置することができる。
【0009】
好ましくは、2つの前記集合排気管の各々に前記排気ガスセンサを配置し、2つの前記排気ガスセンサは、車幅方向において、互いに同一方向に向けて配置されている。この構成によれば、2つの排気ガスセンサの組み付け時の相互干渉を防ぐことができ、それらの組み付けの効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記一態様によれば、上記構成を備えるので、鞍乗型車両に搭載される複数の気筒を有する内燃機関おいて、排気ガスセンサの保護性能を十分に確保しつつ排気ガスセンサを排気浄化用触媒の上流側に好適に配置することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両である自動二輪車の左側面図である。
【
図2】車体カバーの一部を外して、更に自動二輪車の一部を断面で表した、
図1の自動二輪車の左側面図である。
【
図3】
図1の自動二輪車に搭載された内燃機関の排気装置の側面図である。
【
図4】
図3の排気装置の上流側部分の斜視図である。
【
図5】
図3の排気装置46の一部を自動二輪車の下方から見た底面図である。
【
図6】
図3の排気装置の一部を車両前方から見た正面図である。
【
図7】車体カバーの一部を外した
図1の自動二輪車を前方から見た正面図である。
【
図8】
図1の自動二輪車の左側面図の一部の拡大図である。
【
図10】
図3の排気装置の変形例の一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両である自動二輪車10を説明する。ここで、車体の上下前後左右は、自動二輪車10に乗車した運転者の目線に基づき規定されるものとする。図中、上下方向における上側には符号「UP」を用い、下側には符号「DW」を用い、車両前後方向における前側には符号「FR」を用い、後側には符号「RR」を用い、車幅方向における右側には符号「RH」を用い、左側には符号「LH」を用いる。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両である自動二輪車10の左側面図を示す。自動二輪車10は、車体フレーム12と、車体フレーム12に装着された車体カバー13とを備える。車体カバー13は、ヘッドパイプ部14の後方で車体フレーム12に支持される燃料タンク15を覆い、燃料タンク15の後方のシート17に接続されるタンクカバー18と、タンクカバー18の下端から連続するサイドカバー19とを有する。なお、燃料タンク15に燃料は貯留される。自動二輪車10の運転にあたって運転者を含む乗員はシート17を跨ぐ。
【0014】
ヘッドパイプ部14には操向可能にフロントフォーク27が支持される。フロントフォーク27には車軸28回りで回転自在に前輪WFが支持される。フロントフォーク27の上端には操向ハンドル29が結合される。運転者は自動二輪車10の運転にあたって操向ハンドル29の左右端のグリップを握る。
【0015】
車両の後方で車体フレーム12にはピボット31回りで上下に揺動自在にスイングアーム32が連結される。スイングアーム32の後端に車軸33回りで回転自在に後輪WRが支持される。前輪WFと後輪WRとの間で車体フレーム12には燃料タンク15から供給される燃料を燃焼して動力を生成する内燃機関(以下、エンジン)34が搭載される。エンジン34の動力は伝動装置を経て後輪WRに伝達される。
【0016】
車体フレーム12は、前述のヘッドパイプ部14と、ヘッドパイプ部14から後ろ下がりに延びるメインフレーム部と、メインフレーム部から略水平方向に後方に延びて、下方からシート17を支持するシートフレーム部と、シートフレーム部に結合されるリアフレーム部とを有するが、ここではその詳細な説明は省略する。
【0017】
図2に車体カバー13の一部を外して、更に自動二輪車10の一部を断面で表した自動二輪車10の左側面図を示す。エンジン34のエンジン本体34Bは、前述のメインフレームの下方に配置されてメインフレームに連結される。エンジン本体34Bは、回転軸線35A回りで回転自在にクランク軸35を支持するクランクケース36に上方から結合されて、斜め前方に向かって起立するシリンダー軸線C上でピストン37の線形往復運動を案内するシリンダーを区画するシリンダーブロック38と、シリンダーブロック38に上方から結合されて、動弁機構39aを支持するシリンダーヘッド39と、シリンダーヘッド39の上端に結合されて、シリンダーヘッド39上の動弁機構39aを覆うヘッドカバー41とを備える。クランクケース36には、クランク軸35に連結されて規定の変速比でクランク軸35の動力を出力する変速機が収容される。変速機はクランク軸35の後方に配置される。
【0018】
図2に示されるように、エンジン34のエンジン本体34Bには、エンジン本体34Bに向けて混合気を供給する吸気装置と、車両の後方に向けてエンジン本体34Bの排気ガスを排出する排気装置46とが接続される。吸気装置は、シリンダーヘッド39の後壁に結合され、シリンダーヘッド39の吸気ポート39bとともに吸気通路を区画形成する。吸気装置は、スロットルバルブの働きでシリンダーヘッド39の吸気ポート39bに流通する空気の流量を調整するスロットルボディと、エンジン34に供給される外気を浄化するエアクリーナとを備える。なお、シリンダーヘッド39の吸気ポート39bに臨んで燃料を噴射する燃料噴射弁も設けられる。
【0019】
図3に、排気装置46の側面図を示す。
図3では、自動二輪車10に搭載されたときの姿勢で排気装置46を示す。また、
図4に、排気装置46の上流側部分の斜視図を示す。なお、
図3及び
図4におけるカバー部材44は自動二輪車10の右側面に設けられ、運転者を排気ガスの熱から保護する。
図5に、排気装置46の一部を自動二輪車10の下方から見た底面図を示す。
図5では、自動二輪車10における排気装置46の配置を理解し易くするように車輪WF、WR及び自動二輪車10の大まかな輪郭線を示すとともに、後述する連通管の図示を省略する。
図6に、
図3に示す排気装置46の一部を車両前方から見た前面視である正面図を示す。
【0020】
排気装置46は、シリンダーヘッド39の前壁に結合されて、シリンダーヘッド39の排気ポート39cとともに排気通路50を区画形成する。排気装置46は、エンジン本体34Bの下方をくぐって後方に延びるように自動二輪車10に配置される。排気装置46は、排気通路50において上流側から順に、排気浄化用触媒54aを備えた浄化装置54と、浄化装置54よりも下流側に設けられるエンジン34の消音機能を有するマフラー56とを備える。なお、
図1及び
図2に示すように、シリンダーヘッド39の前壁が車両前後方向において前側を向くとともに斜め下方を向くようにエンジン本体34Bは車体フレーム12に設けられている。
【0021】
さて、エンジン34は、複数の気筒を有する内燃機関であり、より具体的には直列4気筒の水冷エンジンである。ここで、エンジン34の気筒配列は、左から右に向けて1番(♯1)気筒、2番(♯2)気筒、3番(#3)気筒及び4番(♯4)気筒とする。各気筒の燃焼室58に臨むように設けられる点火プラグによる点火順序は、♯1気筒、♯2気筒、♯4気筒、♯3気筒の順(1-2-4-3の順序)である。
【0022】
エンジン34などの制御装置つまりECU(エンジン制御ユニット)は、コンピュータとしての構成を備える。つまり、ECUは、プロセッサ(例えばCPU)及びメモリ(例えばROM、RAM)を備える。ECUには、各種センサからの出力信号が入力される。例えば、エンジン回転速度センサ、スロットル開度センサなどのエンジン負荷センサがECUに接続されている。ECUは、これらのセンサからの入力に基づき運転状態を解析し、解析した運転状態に基づいて、例えば燃料噴射弁、点火プラグ、スロットルバルブの各作動を制御する。なお、スロットルバルブは電子制御式であることに限定されず、機械作動式の構成を備えてもよい。
【0023】
また、ECUには、排気浄化用触媒54aを備えた浄化装置54の上流側に設けられた排気ガスセンサ60、排気浄化用触媒54aを備えた浄化装置54の下流側に設けられた排気ガスセンサ62なども接続されている。ECUは、排気ガスセンサ60、62からの入力に基づいて、例えば運転状態に基づく燃料噴射制御の補正制御を行う。排気ガスセンサ60、62は、それぞれ酸素センサであるが、例えば空燃比(A/F)センサであってもよい。その他、ブレーキ操作部などがECUには接続されている。浄化装置54の下流側には、排気制御バルブ64が設けられていて、この排気制御バルブ64の作動も、ECUによりここでは制御される。
【0024】
更に、エンジン34は水冷式エンジンであり、シリンダーブロックの周囲には冷却水が循環するように形成したウォータジャケットが構成されると共に、そのウォータジャケットに送給される冷却水を冷却する、熱交換器であるラジエータ66を備える。ラジエータ66はエンジン34の前方に配置され、
図1に示すように、車両前後方向において前輪WFとエンジン本体34Bとの間に配置されている。ラジエータ66は、その上部がブラケットを介して車体フレーム12に結合し、その下部が別のブラケットを介してシリンダーブロック38に結合し、これにより支持される。ラジエータ66の背面部つまり後側には、シリンダーヘッド38の略前方に位置するようにファンが取り付けられている。
【0025】
ここで、自動二輪車10に搭載されたエンジン34の排気装置46について更に詳しく説明する。
【0026】
排気装置46は、各気筒の排気ポート39cに接続される複数の排気管68と、これらの排気管68が集合する集合排気管70と、集合排気管70の下流側に配置される排気浄化用触媒54aを備えた浄化装置54と、浄化装置54の下流側につながる下流側排気管72と下流側排気管72の下流側につながるマフラー56とを備える。ここでは、エンジン34は4つ気筒を有するので、4本の排気管68が設けられている。そして、4本の排気管68のうち隣り合う2つの排気管68が対応する集合排気管70に接続し、この集合排気管70は浄化装置54に接続する。つまり、
図4に示すように、#1気筒の排気管68aと#2気筒の排気管68bが第1の集合排気管70aに接続し、#3気筒の排気管68cと#4気筒の排気管68dが第2の集合排気管70bに接続し、それらの集合排気管70a、70bは浄化装置54に接続する。なお、排気浄化用触媒54aを備えた浄化装置54の上流側の2つの集合排気管70a、70bは車幅方向で隣合わせにされて実質的に一体的にされている。
【0027】
複数の排気管68の各々は、エンジン本体34Bの前壁に接続し、前壁から斜め前下方向に延出して、その後、後方に向けて湾曲し、エンジン本体34Bの下方を向くように形作られている。複数の排気管68の各々は、エンジン34のクランク軸35よりも上側に位置する対応する排気ポート39cから延びるように設けられる。そして、複数の排気管68は集合排気管70につながることで集合する。集合排気管70はエンジン本体34Bの下方に配置された浄化装置54に接続する。そして、下流側排気管72は更に後方に延びて車幅方向右側に湾曲して車体右側方で上側に延びて後方に延び、マフラー56に接続する。これにより、エンジン34のエンジン本体34Bのシリンダーヘッドの排気ポート39cに燃焼室58から排出された排気ガスは、排気装置46を通過してマフラー56の下流側の排気出口を介して排出される。なお、浄化装置54はエンジン34のクランク軸35の下側に位置付けられている。そして、
図5に示すように、自動二輪車10の前後方向に延びる中央仮想面ISを定めるとき、浄化装置54はその中央仮想面ISと交差して前後方向に延びるように設けられている。なお、中央仮想面ISはクランク軸35及び車軸28、33と実質的に直交し、前輪WF及び後輪WRのそれぞれを略二等分する。
【0028】
図1から
図4に示すように、排気管68の各々は、車両前方に向けて凸になるように湾曲している。そして、複数の排気管68の各々は対応する排気ポート39cと集合排気管70との間で、複数の排気管68が車幅方向において広がるように湾曲している。4本の排気管68は車幅方向において広がるように湾曲している。この排気管68の広がりは、排気管68を互いに対して離すように設計されている。したがって、車体カバー13の一部を外した自動二輪車10を前方から見た前面視である正面図である
図7において、両サイドの排気管68a、68dの一部が表れる。
【0029】
ここで、
図1の自動二輪車10の左側面図の一部の拡大図を
図8に示す。
図8に、車両前後方向に直交して上下に延びるとともにクランク軸35の回転軸線35Aを通る線L1、その回転軸線35Aを通るとともに排気ポート39cの略中心39dを通る線L2、線L1に平行でありかつ排気管68ここでは排気管68aに接点L3aで接する接線である線L3、及び、浄化装置54の長手方向軸線54Lと線L1との交点L4aと前述の接点L3aとを通る線L4を引く。
図8は車幅方向左側から自動二輪車10を見た図であるので、線L1及び線L3は車両前後方向に直交する。なお、線L3は、線L1に平行でありかつ
図1及び
図8において排気管68aの変曲点を通る線であってもよく、この場合、線L4はその変曲点と、浄化装置54の長手方向軸線54Lと線L1との交点L4aとを通る線であるとよい。
【0030】
図8から明らかなように、線L1は排気浄化用触媒54aを備えた浄化装置54と交差する。つまり、排気浄化用触媒54aは、クランク軸35の下側に配置されるとともに、自動二輪車10の前後方向においてエンジン34のクランク軸35と重なる位置に配置されている。そして、排気浄化用触媒54aを備えた浄化装置54の上流側の排気ガスセンサ60は集合排気管70のそれぞれに設けられ、4本の線L1、L2、L3、L4に囲まれた
図8の領域にその一部は位置する。また、別の見方では、排気ガスセンサ60のそれぞれの少なくとも一部は複数の排気管68とエンジン34のエンジン本体34Bとの間の領域R(
図8参照)に配置されている。このように、触媒54aはエンジン本体34Bの下側にエンジン本体34Bの近くに配置され、その結果、排気ポート39cから触媒54aまでの排気通路50の一部が、例えば触媒54aをマフラー56に配置する場合に比べてかなり短くされている。
【0031】
また、排気装置46では、集合排気管70の上流側において2つの排気管68を連通させる連通管76が設けられている。ここでは2つの連通管76a、76bが設けられている。第1の連通管76aは、#1気筒の排気管68aと#4気筒の排気管68dとをつなぐように設けられ、それらの排気管68a、68d間での排気ガスの相互移動を可能にする。第2の連通管76bは、#2気筒の排気管68bと#3気筒の排気管68cとをつなぐように設けられ、それらの排気管68b、68c間での排気ガスの相互移動を可能にする。第1の連通管76a及び第2の連通管76bはそれぞれ車幅方向に概ね平行に延びるように設けられている。
図4及び
図6から理解できるように、第1の連通管76aは第2の連通管76bよりも下側に位置付けられているが、第2の連通管76bと同じ高さ又は第2の連通管76bよりも上側に設けられてもよい。
【0032】
図4に示すように、第1の連通管76aはその間につなぎ目つまり接続部を有し、2つの管部材Pを接続して構成されているが、3つ以上の管部材を接続して構成されてもよい。これは、ここでは単一の管部材で構成されている第2の連通管76bにおいても同様であり、第2の連通管76bも少なくとも2つの管部材を接続して構成されてもよい。なお、第1の連通管76aを単一の管部材で構成することも可能である。
【0033】
図4に示すように、連通管76a、76bは、つなぎ管部材78を介して、対応する排気管68に接続されている。つなぎ管部材78は、排気管68の接続箇所の湾曲形状に対応した接続形状を有する。
【0034】
図8に示すように、第1の連通管76aは、4本の線L1、L2、L3、L4に囲まれた
図8の領域に概ね延びるように設けられている。そして、別の見方では、第1の連通管76aは、複数の排気管68とエンジン34のエンジン本体34Bとの間の領域Rに概ね延びている。これに対して、第2の連通管76bは、複数の排気管68の前側には位置しないが、領域Rに突き出ないように配置されている。なお、第2の連通管76bも、第1の連通管76aと同様に領域Rに突き出て延びるように設けられてもよい。
【0035】
図9に、例えば
図1及び
図8の自動二輪車10の側面視において少なくとも一部が重なり合う集合排気管70を中心とした排気装置46の一部の拡大斜視図を示す。第1の集合排気管70a及び第2の集合排気管70bのそれぞれにおいて設けられている2つの排気ガスセンサ60は同じ側を向いて取り付けられていて、車幅方向において、互いに同一方向に向けて配置されている。ここでは、2つの排気ガスセンサ60は車幅方向左側に向けて配置されている。
【0036】
上記構成を有する鞍乗型車両である自動二輪車10による特徴的構成と、作用及び効果とについて以下説明する。
【0037】
複数の気筒を有するエンジン34を搭載した自動二輪車10は、各気筒の排気ポート39cに接続される複数の排気管68が集合する集合排気管70と、集合排気管70の下流側に配置される排気浄化用触媒54aと、排気浄化用触媒54aの上流側に設けられる排気ガスセンサ60とを備える。複数の排気管68の各々は、エンジン34のクランク軸35よりも上側に位置する対応する排気ポート39aから延びる。触媒54aは、クランク軸35の下側に配置されるとともに、車両前後方向においてエンジン34のクランク軸35と重なる位置に配置されている。そして、排気ガスセンサ60の少なくとも一部は、複数の排気管68とエンジン34のエンジン本体34Bとの間の領域Rに延びるように設けられている。この構成によれば、複数の排気管68とエンジン本体34Bとの間の領域Rを有効に活用して排気ガスセンサ60を配置することができる。また、排気管68の後側に排気ガスセンサ60を隠すように配置することができる。これにより、例えば前輪WFにより跳ね上げられる石等から排気ガスセンサ60を保護することができる。このように、自動二輪車10に搭載される複数の気筒を有するエンジン34おいて、排気ガスセンサ60の保護性能を十分に確保しつつ排気ガスセンサ60を排気浄化用触媒54aの上流側に好適に配置することが可能になる。
【0038】
また、排気ガスセンサ60は集合排気管70に配置されている。この構成によれば、その排気ガスセンサ60を用いて、集合排気管70内で各排気管68から排出された排気ガスが混ざり合った排気ガスをセンシングすることが可能になり、排気ガスセンサ60における検出精度を向上させることができる。
【0039】
また、触媒54aの上流側の2つの集合排気管70は、それらの少なくとも一部が
図1などの自動二輪車10の側面視において重なり合うように、自動二輪車10に設けられている。この構成によれば、排気管68の集合部つまり集合排気管70をコンパクトに配置することができる。
【0040】
更に、2つの集合排気管70の各々に排気ガスセンサ60を配置している。そして、2つの排気ガスセンサ60は、車幅方向において、互いに同一方向に向けて配置されている。この構成によれば、2つの排気ガスセンサ60の組み付け時の相互干渉を防ぐことができ、それらの組み付けの効率を高めることができる。
【0041】
また、自動二輪車10の排気装置46は、複数の排気管68が集合する集合排気管70の下流側に配置される排気浄化用触媒54aに加えて、集合排気管70の上流側において対応する排気管68を連通させる連通管76とを備える。複数の排気管68の各々は、クランク軸35よりも上側に位置する対応する排気ポート39cから延びて、集合排気管70に接続し、この集合排気管70はその下流側の触媒54aを有する浄化装置54に直接的に接続する。触媒54aは、クランク軸35の下側に配置されるとともに、車両前後方向においてエンジン34のクランク軸35と重なる位置に配置されている(
図8で線1と触媒54aを内部に担持する浄化装置54は交わる。)。この構成によれば、排気浄化用触媒54aをエンジン34の下側に配置することができ、よって排気浄化用触媒54aをマフラー56内に設ける場合と比較して排気ポート39cから触媒54aまでの距離を短くでき、早期に触媒54aを活性化することができる。一方、触媒54aをクランク軸35に近づけて配置した場合、触媒54aの上流側の排気通路の排圧があがりエンジン34の出力への影響が懸念されるが、排気管68に連通管76を取り付けることにより、エンジンの出力特性を改善させることができる。このように、上記構成によれば、自動二輪車10に搭載される複数の気筒を有するエンジン34において排気浄化用触媒54aの早期活性化をより好適に行うことが可能になる。
【0042】
特に上記内燃機関では、点火順序は、♯1気筒、♯2気筒、♯4気筒、♯3気筒の順(1-2-4-3の順序)である。そして、2つの連通管76a、76bの一方の第1の連通管76aは、#1気筒の排気管68aと#4気筒の排気管68dとをつなぐように設けられ、他方の第2の連通管76bは、#2気筒の排気管68bと#3気筒の排気管68cとをつなぐように設けられている。このように、点火間隔が離れた気筒の排気管68、換言すると、排気行程が時間的に離れた気筒の排気管68が連通管76により接続されるので、ある気筒での排気行程で排出される排気ガスは対応する排気管68のみならず連通管76を介してつながる他の気筒の排気管68にも流れることができる。よって、排気ポート39cから触媒54aまでの排気通路の距離を短くしても、その排気通路の長さをより好適に実質的に長くすることができる。
【0043】
また、上記排気装置46では、複数の排気管68の各々は対応する排気ポート39cと集合排気管70との間で、複数の排気管が車幅方向において広がるように湾曲している。この構成によれば、触媒54aの上流側の排気通路の長さをより長くすることができる。よって、例えば高回転領域でのエンジン34の出力特性を高めることができる。
【0044】
更に、連通管76、76aは、複数の排気管68とエンジン34のエンジン本体34Bとの間の領域R(例えば
図8参照)に延びるように設けられている。この構成によれば、連通管76をコンパクトに配置することができる。
【0045】
また、連通管76は、つなぎ管部材78を介して、対応する排気管68に接続されている。この構成によれば、排気管68の形状に柔軟に対応した連通管76の取り付けが可能になる。
【0046】
そして、連通管76は、少なくとも2つの管部材、ここでは2つの管部材Pを接続して構成されている。この構成によれば、連通管76の組み付け誤差をそれらの管部材Pの接続部で調整し易くなる。
【0047】
なお、自動二輪車10用のエンジン34の排気装置46は、各気筒の排気ポート39cに接続される複数の排気管68が集合する集合排気管70の下流側に配置される排気浄化用触媒54aを備える。
図2に示すように、触媒54aはシリンダー軸線Cの方向においてエンジン34のクランク軸35を基準にして排気ポート39cと反対側に位置する。また、排気装置46は、少なくとも1つの連通管、ここでは2つの連通管76を備える。連通管76は集合排気管70の上流側において少なくとも2つの排気管ここでは2つの排気管68を連通させる。この構成によれば、排気浄化用触媒54aをクランク軸35の近辺に配置することができ、よって触媒54aをマフラー内に設ける場合と比較して排気ポート39cから触媒54aまでの距離を短くでき、早期に触媒54aを活性化することができる。一方、触媒54aをクランク軸35に近づけて配置した場合、触媒54aの上流側の排気通路の排圧があがり易くエンジン34の出力への影響が懸念されるが、排気管68に上記連通管76を取り付けることにより、エンジン34の出力特性を改善させることができる。
【0048】
上記自動二輪車10の排気装置46では、4つの気筒からの4つの排気管68に対して2つの集合排気管70が用いられたが、4つの排気管68に対して単一の集合排気管70が用いられてもよい。
図10に変形例の排気装置164の一部を示す。排気装置164の集合排気管170は2つの排気管68が接続する上流側合流部172と、この上流側合流部172が更に集合する集合部本体174とを備えている。そして、集合排気管170の集合部本体174に排気ガスセンサ60が設けられている。このようにより多くの気筒からの排気ガスが通る箇所に排気ガスセンサ60を設けることで、排気ガスセンサによる検出精度をより高めることができる。また、排気装置164では、上記第2の連通管76bに対応する、#2気筒の排気管68bと#3気筒の排気管68cとをつなぐ連通管76のみが設けられ、#1気筒の排気管68aと#4気筒の排気管68dとをつなぐ連通管は設けられていない。連通管がつなぐ排気管の数、排気管の選定などは、任意に定めることができる。
【0049】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明はそれに限定されない。本願の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
【0050】
本発明が適用される鞍乗型車両に搭載される内燃機関の気筒数などは上記実施形態に限定されない。内燃機関の気筒数は2つ以上いくつであってもよく、排気管68の数は内燃機関の気筒数に対応する数、好ましくは内燃機関の気筒数と同じ数に定められ得、集合排気管70の数は排気管68の数未満の数に定められることができる。
【符号の説明】
【0051】
10…自動二輪車(鞍乗型車両)、12…車体フレーム、14…ヘッドパイプ
15…燃料タンク、17…シート、34…内燃機関、46…排気装置
54a…排気浄化用触媒、60…排気ガスセンサ、68…排気管
70…集合排気管、76…連通管、78…つなぎ管部材、P…管部材