IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -離型フィルム及び電子部品の製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025106653
(43)【公開日】2025-07-16
(54)【発明の名称】離型フィルム及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20250709BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20250709BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000033
(22)【出願日】2024-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】前岨 晋一
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK04J
4F100AK70B
4F100AK71B
4F100AL01B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA16
4F100EH202
4F100EH20A
4F100EH20B
4F100EH20C
4F100GB41
4F100JB04
4F100JK07
4F100JK08
4F100JK11B
4F100JL14A
4F100YY00
(57)【要約】
【課題】凹凸への追従性に優れた離型フィルム及び当該離型フィルムを用いた電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】電子部品の製造工程に用いる離型フィルムであって、前記離型フィルムは、離型面を構成する離型層と、前記離型層上に積層されたクッション層と、を有し、前記離型層は、ポリエチレン系樹脂を含み、前記クッション層は、エチレン系コポリマーを含む、離型フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の製造工程に用いる離型フィルムであって、
前記離型フィルムは、離型面を構成する離型層と、前記離型層上に積層されたクッション層と、を有し、
前記離型層は、ポリエチレン系樹脂を含み、
前記クッション層は、エチレン系コポリマーを含む、離型フィルム。
【請求項2】
25℃における引張弾性率が300MPa以下である、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
25℃における破断伸びが400%以上である、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記離型フィルムについて、昇温速度5℃/分、周波数1Hzの条件で動的粘弾性(DMA)測定したとき、90℃における貯蔵弾性率が100MPa以下である、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項5】
25℃における表面自由エネルギーが40mJ/m以下である、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記エチレン系コポリマーにおいてエチレンと共重合させるコモノマーが、極性ビニル系モノマー又はシクロオレフィン系モノマーを含む請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の離型フィルムを用いた電子部品の製造方法であって、
前記離型フィルムの前記離型面が対象物側になるように、前記対象物上に前記離型フィルムを配置する工程と、
前記離型フィルムが配置された前記対象物に対し、加熱プレスを行う工程と、
を含み、
前記離型フィルムを配置する工程において、前記対象物の前記離型フィルムが配置される面が、凹部又は凸部を有する、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルム及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、離型フィルムの分野では様々な技術が開発されている。例えば、離型フィルムは、成型品や積層体を製造する際等に使用される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-46645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
段差等の凹凸を有する成型品や積層体を製造する際には、凹凸への追従性に優れた離型フィルムの実現が望まれる。
【0005】
本発明は、凹凸への追従性に優れた離型フィルム及び当該離型フィルムを用いた電子部品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1] 電子部品の製造工程に用いる離型フィルムであって、前記離型フィルムは、離型面を構成する離型層と、前記離型層上に積層されたクッション層と、を有し、前記離型層は、ポリエチレン系樹脂を含み、前記クッション層は、エチレン系コポリマーを含む、離型フィルム。
[2] 25℃における引張弾性率が300MPa以下である、[1]に記載の離型フィルム。
[3] 25℃における破断伸びが400%以上である、[1]又は[2]に記載の離型フィルム。
[4] 前記離型フィルムについて、昇温速度5℃/分、周波数1Hzの条件で動的粘弾性(DMA)測定したとき、90℃における貯蔵弾性率が100MPa以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の離型フィルム。
[5] 25℃における表面自由エネルギーが40mJ/m以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の離型フィルム。
[6] 前記エチレン系コポリマーにおいてエチレンと共重合させるコモノマーが、極性ビニル系モノマー又はシクロオレフィン系モノマーを含む[1]~[5]のいずれか1つに記載の離型フィルム。
[7] [1]~[6]のいずれか1つに記載の離型フィルムを用いた電子部品の製造方法であって、前記離型フィルムの前記離型面が対象物側になるように、前記対象物上に前記離型フィルムを配置する工程と、前記離型フィルムが配置された前記対象物に対し、加熱プレスを行う工程と、を含み、前記離型フィルムを配置する工程において、前記対象物の前記離型フィルムが配置される面が、凹部又は凸部を有する、電子部品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、凹凸への追従性に優れた離型フィルム及び当該離型フィルムを用いた電子部品の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る離型フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0010】
本発明の一実施形態に係る離型フィルムは、電子部品の製造工程に用いる離型フィルムである。前記離型フィルムは、離型面を構成する離型層と、前記離型層上に積層されたクッション層と、を有する。前記離型層は、ポリエチレン系樹脂を含み、前記クッション層は、エチレン系コポリマーを含む。
【0011】
前記離型フィルムは、前記電子部品の製造工程において、対象物と、前記対象物の処理に用いられる製造用部材との間に配置される。前記対象物とは、前記電子部品の製造工程に用いる材料である。
【0012】
前記対象物としては、金属、プラスチック、セラミックス等から選択される1種以上を含む材料が挙げられる。前記対象物は、充填材、有機溶剤、添加剤等から選択される1種以上を含有してもよい。前記対象物は、導体を主体としてもよく、半導体又は絶縁体を主体としてもよい。ここで、特定の材料が前記対象物の主体という場合には、前記対象物の質量比で最大となる成分を指してもよく、前記対象物が前記電子部品の機能を発揮するために必須となる成分を指してもよい。前記対象物が半導体又は絶縁体を主体とする場合であっても、前記電子部品を外部と電気的に接続するための外部端子、前記電子部品の内部で電気的に接続するための内部配線等に導体を含んでもよい。
【0013】
前記製造用部材としては、金型、加熱板、加圧板等が挙げられる。前記製造用部材はl前記電子部品の製造工程において、前記離型フィルムを介して、前記対象物に熱、圧力、磁気等から選択される物理的作用を少なくとも1種以上作用させてもよい。
【0014】
<離型層>
離型層は、前記離型フィルムの一方の面に配されて、離型面を構成する。前記離型フィルムを前記電子部品の製造工程に用いる際には、前記離型面が前記対象物側に配置される。
【0015】
前記離型層は、ポリエチレン系樹脂を含む。ポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体、あるいは、エチレンを主体として他のコモノマーと共重合させた共重合体である。ポリエチレン系樹脂のコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、メチルペンテン等のα-オレフィンが挙げられる。
【0016】
前記離型層に用いられるポリエチレン系樹脂の具体例としては、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)等のポリエチレンが挙げられる。前記離型層は、これらのポリエチレン系樹脂のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記離型層は、ポリエチレン系樹脂のみから形成されてもよく、添加剤等を含んで形成されてもよい。前記離型層に用いられる添加剤としては、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、着色剤、安定剤、充填剤等が挙げられる。前記離型層は、シリカ、アルミナ等の無機粒子を含有してもよい。
【0018】
前記離型層の層厚みは、特に限定されないが、例えば1~50μmであることが挙げられる。前記離型フィルムの総厚みに対する前記離型層の層厚みの割合は、例えば30%以下であり、20%以下、10%以下であってもよい。また、前記離型フィルムの総厚みに対する前記離型層の層厚みの割合は、例えば1%以上であり、2%以上、5%以上であってもよい。
【0019】
前記離型層を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、空冷インフレーション押出法、水冷インフレーション押出法、Tダイ押出法等の公知の方法が挙げられる。
【0020】
<クッション層>
クッション層は、前記離型層と前記製造用部材との間に配されて、前記離型フィルムの追従性を向上しつつ、適度なコシを付与する。
【0021】
前記クッション層は、エチレン系コポリマーを含む。エチレン系コポリマーは、エチレンと他のコモノマーとの共重合体である。前記エチレン系コポリマーは、前記ポリエチレン系樹脂とは異なる共重合体である。前記エチレン系コポリマーにおいてエチレンと共重合させるコモノマーが、極性ビニル系モノマー又はシクロオレフィン系モノマーを含むことが好ましい。
【0022】
前記極性ビニル系モノマーとしては、酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。ビニルアルコール単位は、酢酸ビニル等のビニルエステルモノマーを共重合した後に、ケン化して生成させることができる。
【0023】
前記シクロオレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。前記エチレン系コポリマーは、さらに、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、メチルペンテン等のα-オレフィンをコモノマーに含んでもよい。
【0024】
前記エチレン系コポリマーの具体例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン-メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン-エチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、エチレン-アクリレート共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレンシクロオレフィン共重合体(COC)、及びアイオノマー樹脂(ION)等が挙げられる。前記クッション層は、これらのエチレン系コポリマーのうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記クッション層は、エチレン系コポリマーのみから形成されてもよく、エチレン系コポリマー以外の樹脂を含んでもよい。前記クッション層がエチレン系コポリマー以外の樹脂を含む場合、エチレン系コポリマーの含有量が、クッション層の全量に対して、40質量%以上、80質量%以下となることが好ましく、50質量%以上、70質量%以下となることがより好ましい。
【0026】
前記クッション層に用いられるエチレン系コポリマー以外の樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のα-オレフィン系重合体;プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、メチルペンテン等を重合体成分として有するα-オレフィン系共重合体;ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等のエンジニアリングプラスチックス;ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリメチルペンテン(PMP)等が挙げられる。前記クッション層は、これらの樹脂のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、前記クッション層に適度な強度や弾性を付与し、前記離型フィルムの離型性を良好に保持する観点から、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン樹脂を含むことが好ましい。
【0027】
前記クッション層をエチレン系コポリマーとそれ以外の樹脂とから構成する場合における樹脂混合物としては、例えば、PEとEMMAとの混合物、PPとEMMAとの混合物、PBTとPPとEMMAとの混合物、PPとEMAとPMPとの混合物、PPとEMAAとPMPとの混合物などが挙げられる。
【0028】
前記クッション層は、さらにゴム成分を含んでもよい。ゴム成分としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー材料、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム等のゴム材料等が挙げられる。前記クッション層は、エチレン系コポリマーとゴム成分を含む混合物であってもよく、エチレン系コポリマーとそれ以外の樹脂とゴム成分を含む混合物であってもよい。
【0029】
前記クッション層は、添加剤を含んで形成されてもよい。前記クッション層に用いられる添加剤としては、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、着色剤、安定剤、充填剤等が挙げられる。
【0030】
前記クッション層の層厚みは、特に限定されないが、例えば10~200μmであることが挙げられる。前記離型フィルムの総厚みに対する前記クッション層の層厚みの割合は、例えば70%以下であり、80%以上、90%以上であってもよい。前記クッション層の層厚みは、前記離型層の層厚みの1.1倍以上であることが好ましく、3~10倍、5~9倍などであってもよい。
【0031】
前記クッション層を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、空冷インフレーション押出法、水冷インフレーション押出法、Tダイ押出法等の公知の方法が挙げられる。
【0032】
前記クッション層は、前記離型フィルムの他方の面に配されてもよい。ここで、前記離型フィルムの他方の面とは、前記離型層側である一方の面とは反対側の面である。前記クッション層が、前記他方の面に配される場合は、前記電子部品の製造工程において、前記製造用部材に対する当接面を構成してもよい。
【0033】
<中間層>
前記クッション層と前記離型層との間に、中間層が介在してもよい。中間層は前記離型フィルムの追従性やコシを調整する。前記中間層は、前記クッション層で記載された材料を用いても良く、環境を考慮したリサイクル材料、その他の材料を含んでも良い。前記中間層に用いられる材料としては、前記ポリエチレン系樹脂、前記エチレン系コポリマー、前記α-オレフィン系共重合体、前記ゴム成分等が挙げられる。前記中間層は、これらの樹脂のうち材料を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記中間層は、1層でも2層以上でもよい。
【0034】
<離型フィルムの他の層>
また、前記クッション層と前記製造用部材との間に、他の層が介在してもよい。前記他の層は、前記離型フィルムに含まれる層であってもよく、前記離型フィルムとは別に配置される部材であってもよい。例えば、前記離型フィルムが、前記他方の面に第2の離型層を有してもよい。なお、前記第2の離型層と区別するため、前記一方の面に配される離型層を第1の離型層という場合がある。
【0035】
前記第2の離型層は、前記第1の離型層と同様の熱可塑性樹脂を用いて形成することができる。前記第2の離型層が、前記第1の離型層と同一の樹脂組成でもよく、異なる樹脂組成でもよい。例えば、前記第2の離型層は、ポリエチレン系樹脂を含むことが好ましい。前記第2の離型層は、前記第1の離型層と層厚みが同一でもよく、異なってもよい。
【0036】
<離型フィルムの一実施形態>
図1は、本実施形態の離型フィルムの一例を模式的に示す断面図である。離型フィルム10は、離型面11aを有する離型層11と、離型層11上に積層されたクッション層12と、を有する。クッション層12は、追従性付与層として機能する。クッション層12は、当接面12aを有してもよい。特に図示しないが、クッション層12上で、離型層11とは反対側に、第2の離型層が積層されてもよい。
【0037】
離型フィルムの総厚みは、特に限定されないが、例えば50~500μmであることが好ましく、80~400μm以下であることがより好ましく、100~300μmであることがさらに好ましい。こうすることで、プレス圧を離型フィルムに対してムラなく均一に印加することが可能となる。
【0038】
<離型フィルムの製造方法>
本実施形態の離型フィルムは、共押出法、押出ラミネート法、ドライラミネート法、インフレーション法等、公知の方法を用いて作製することができる。また、前記離型フィルムは、前記離型層及び前記クッション層を含む各層を、別々に製造してからラミネーター等により接合してもよい。
【0039】
層間密着性等の観点からは、前記離型層及び前記クッション層が、共押出により積層されていることが好ましい。共押出の具体例として、空冷式共押出インフレーション法、水冷式共押出インフレーション法、共押出Tダイ法等が挙げられる。各層の厚み制御の観点では、共押出Tダイ法で成膜する方法が好ましい。前記離型層及び前記クッション層の間が、直接接合されてもよいし、各層間が接着層を介して接合されてもよい。
【0040】
<離型フィルムの引張特性>
本実施形態の離型フィルムの引張特性は、例えばJIS K 7127に規定される適宜の試験片について、引張試験機を用いて測定することができる。
【0041】
前記離型フィルムの25℃における引張弾性率は、300MPa以下であることが好ましい。前記引張弾性率が前記上限値以下であることにより、小さい荷重に対しても材料が大きく変位することが容易になり、凹凸への追従性を向上しやすくなる。前記引張弾性率の下限値は特に限定されないが、前記引張弾性率が100MPa以上、200MPa以上等であってもよい。
【0042】
前記離型フィルムの25℃における破断伸びは、400%以上であることが好ましい。前記破断伸びが前記下限値以上であることにより、大きい変位に対しても材料が破断しにくくなり、凹凸への追従性を向上しやすくなる。前記破断伸びの上限値は特に限定されないが、前記破断伸びが1000%以下、800%以下等であってもよい。
【0043】
<離型フィルムの動的粘弾性>
本実施形態の離型フィルムは、昇温速度5℃/分、周波数1Hzの条件で動的粘弾性(DMA)測定したとき、90℃における貯蔵弾性率が100MPa以下であることが好ましい。前記貯蔵弾性率が前記上限値以下であることにより、離型フィルムの弾性が抑制され、凹凸への追従性を向上しやすくなる。前記貯蔵弾性率の下限値は特に限定されないが、前記貯蔵弾性率が1MPa以上、100MPa以下等であってもよい。
【0044】
<離型フィルムの濡れ性>
本実施形態の離型フィルムは、25℃における表面自由エネルギーが40mJ/m以下であることが好ましい。前記表面自由エネルギーが前記上限値以下であることにより、前記対象物に対する良好な離型性または前記製造用部材に対する耐貼りつき性が得られやすくなる。前記表面自由エネルギーの上限値は特に限定されないが、25mJ/m以上、30mJ/m以上等であってもよい。
【0045】
前記表面自由エネルギーは、前記離型面において前記上限値以下であることが好ましい。これにより、前記対象物に対する良好な離型性が得られやすくなる。
前記表面自由エネルギーは、前記クッション層による当接面または前記第2の離型層による当接面において前記上限値以下であることが好ましい。これにより、前記製造用部材に対する耐貼りつき性が得られやすくなる。
【0046】
前記表面自由エネルギーを調整する方法としては、当該表面を構成する材料の選択、なかでも、樹脂の種類の選択、延伸処理の有無、表面粗さの調整等が挙げられる。
【0047】
前記表面自由エネルギーは、汎用の接触角計を用いて測定することができる。具体的には、表面自由エネルギー及びその各成分(分散力、極性力、水素結合力)の値が既知の3種の液体として、水、ジヨードメタン、n-ヘキサデカンを用い、23℃、65%RHの雰囲気下で、接触角計にて各液体の接触角を測定し、これらの測定値に基づいて北崎・畑の式より前記各成分の値を計算し、前記各成分の値の和から表面自由エネルギーを算出することができる。
【0048】
<電子部品の製造方法>
本実施形態の電子部品の製造方法は、本実施形態の離型フィルムを用いた方法である。前記対象物及び前記製造用部材に関しては、上述したとおりである。前記方法は、前記離型フィルムの前記離型面が対象物側になるように、前記対象物上に前記離型フィルムを配置する工程と、前記離型フィルムが配置された前記対象物に対し、前記製造用部材を用いて所定の処理を行う工程と、を含む。
【0049】
前記製造用部材は、加熱プレス板などの加熱プレス部材であってもよい。この場合の前記方法は、前記離型フィルムの前記離型面が対象物側になるように、前記対象物上に前記離型フィルムを配置する工程と、前記離型フィルムが配置された前記対象物に対し、加熱プレスを行う工程と、を含む。
【0050】
前記対象物は、前記対象物の前記離型フィルムが配置される面に、凹凸を有してもよい。凹凸とは、前記対象物の表面全体が1つの平面からなる場合と異なり、不均一な高さを有する表面形状である。
【0051】
前記対象物の表面全体に凹凸が均一に分布していてもよく、凹凸の分布が不均一でもよく、凹凸が局所的に配置されていてもよい。前記凹凸の配置は、周期性等の規則性を有して規則的な配置でもよく、規則性を有しない不規則な配置でもよい。凹凸が局所的に配置される場合は、凹凸以外の領域において、前記対象物の表面が平面であってもよい。
【0052】
前記凹凸の具体的な形状としては、凹部又は凸部が挙げられる。前記対象物の表面が、凹部及び凸部を含んでいてもよい。凹部としては、穴、溝、開口等が挙げられる。凸部としては、突起、リブ、ボス等が挙げられる。波形状のように、凹部と凸部が交互に繰り返す場合は、凹部と凸部の境界が明確である必要はない。前記対象物の表面に対する平面視において、複数の前記凹凸が接触又は交差して、多角形状、格子状、ジグザグ状等に配置されてもよい。複数の前記凹凸が間隔を介して、平行状、千鳥状、破線状、同心状、スパイラル状等に配置されてもよい。
【0053】
前記凹凸の寸法は、特に限定されないが、凹凸の高さ又は深さが前記離型フィルムの総厚みの2倍以上、10倍以下であってもよく、また、凹凸の幅が前記離型フィルムの総厚みの2倍以上、10倍以下であってもよい。ここで、凹凸の高さ又は深さの方向とは、前記製造用部材が前記対象物に対して接近し、又は離れる方向の寸法である。例えば前記対象物が基板状である場合には、凹凸の高さ又は深さの方向が、前記対象物の厚み方向であってもよい。また、凹凸の幅とは、凹凸の高さ又は深さの方向に垂直な方向である。例えば前記対象物が基板状である場合には、凹凸の幅の方向が、前記対象物の面内方向であってもよい。
【0054】
前記凹凸は、前記凹凸の高さ又は深さの方向において、高い部分と低い部分を連絡する段差部を含んでもよい。前記段差部は、前記凹凸の高さ又は深さの方向に沿った垂直壁を含んでもよく、前記凹凸の高さ又は深さの方向に対して傾斜した傾斜壁を含んでもよい。垂直壁又は傾斜壁の角度は特に限定されないが、前記対象物の表面が主に水平面から構成される場合、水平面に対して10°以上90°以下であることが好ましく、45°以上85°以下であってもよい。
【0055】
電子部品としては、特に限定されないが、回路基板、半導体装置、抵抗素子、容量素子、誘導素子、端子、電極、配線等が挙げられる。同一の基板上に同種の電子部品が複数含まれてもよい。同一の基板上に2種以上の電子部品が含まれてもよい。
【0056】
前記電子部品の製造方法において、加熱プレスを行う工程は、電子部品を完成させる工程である必要はなく、電子部品の完成に至る途中の工程のいずれかであればよい。前記加熱プレスを行う工程は、前記対象物に対して、成形、焼結、焼成、乾燥、硬化等の処理工程を実施してもよい。
【0057】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0058】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0059】
<離型フィルムの製造>
以下に示すようにして、実施例1~4及び比較例1~3の離型フィルムを製造した。
【0060】
(実施例1)
ポリエチレン(PE、宇部丸善ポリエチレン製ユメリット(登録商標)1520F)からなる層厚み20μmの離型層と、アイオノマー樹脂(ION、三井・ダウポリケミカル製ハイミラン(登録商標)1652)からなる層厚み130μmのクッション層とを共押出により積層し、実施例1の離型フィルムを製造した。
【0061】
(実施例2)
ポリエチレン(PE、宇部丸善ポリエチレン製ユメリット(登録商標)1520F)からなる層厚み20μmの離型層と、ポリエチレン(PE、宇部丸善ポリエチレン製ユメリット(登録商標)1520F)からなる層厚み100μmの中間層と、アイオノマー樹脂(ION、三井・ダウポリケミカル製ハイミラン(登録商標)1652)からなる層厚み30μmのクッション層とを共押出により積層し、実施例2の離型フィルムを製造した。
【0062】
(実施例3)
アイオノマー樹脂(ION)をエチレン-メチルメタクリレート共重合体(EMMA、住友化学製アクリフト(登録商標)WD106)に変更する以外は、実施例2と同様にして、実施例3の離型フィルムを製造した。
【0063】
(実施例4)
中間層の層厚みを255μm、クッション層の層厚みを25μmに変更する以外は、実施例2と同様にして、実施例4の離型フィルムを製造した。
【0064】
(比較例1)
基材層となる層厚み98μmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムと、離型層となる層厚み48μmのポリエチレン(PE)樹脂フィルムとを、層厚み6μmのドライラミネート接着層(AD)を介して積層し、比較例1の離型フィルムを製造した。
【0065】
(比較例2)
ポリプロピレン(PP、住友化学製ノーブレン(登録商標)FS2011DG3)を150μmの厚みに押出成形し、比較例2の離型フィルムを製造した。
【0066】
(比較例3)
ポリプロピレン(PP)をポリメチルペンテン(PMP、三井化学製TPX(登録商標)RT18)に変更する以外は、比較例2と同様にして、比較例3の離型フィルムを製造した。
【0067】
<柔軟性の評価>
各離型フィルムから試験片を作製し、JIS K 7127に準拠する方法で、引張試験機を用いて25℃における引張弾性率及び破断伸びを測定した。
また、各離型フィルムについて、昇温速度5℃/分、周波数1Hzの条件で動的粘弾性(DMA)測定により、90℃における貯蔵弾性率(E')を測定した。
【0068】
<表面自由エネルギーの評価>
既知の3種の液体として、水、ジヨードメタン、n-ヘキサデカンを用い、23℃、65%RHの雰囲気下で、接触角計にて各液体の接触角を測定し、これらの測定値に基づいて北崎・畑の式より表面自由エネルギーを算出した。同一の試料に対する測定数はn=3とし、平均値を求めた。
【0069】
<離型フィルムのプレス評価>
幅500μm、深さ400μmの溝を有する基板に対し、離型層が対向するように離型フィルムを配置した後、温度80℃、圧力約1MPa(約10kgf/cm)、時間3分の条件で加熱プレスを行い、溝を有する基板の熱処理を実施した。
【0070】
溝は、基板の表面と幅500μmの底面との間に深さ400μmの段差面を有し、段差面は、底面の幅方向の両側に配置されている。このような溝に対し、離型フィルムは、基板の表面から溝の段差面に向けて山折り状に屈曲し、さらに、溝の段差面と底面との間で谷折り状に屈曲することが期待される。
【0071】
<離型フィルムの評価>
得られた離型フィルムを用いて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
[離型性]
上記プレス評価の手順において、成形後の離型フィルムから基板を離型した時の離型挙動から以下の基準で評価した。
○;引っ掛かり等の不具合無く、離型性に問題なし。
△;角部で密着が強く、離型が若干重たいが実用上問題なし。
×;離型不能。
【0072】
[追従性]
上記プレス評価の手順において、離型フィルムを加熱プレスによって基板の溝に追従させた後のフィルム形状について以下の基準で評価した。
○;プレス後のフィルムに溝の形状が転写されている。
△;プレス後のフィルムに溝の形状が転写されているが、転写した凹凸がやや小さい。
×;転写できていない部分がある。
【0073】
【表1】
【0074】
(総括)
表1に示すように、比較例1~3の離型フィルムは、柔軟性が低く、溝部による凹凸への追従性が悪かった。これに対し、本実施形態の離型フィルムは、柔軟性に優れ、溝部による凹凸への追従性が優れている。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、凹凸への追従性に優れた離型フィルムを提供することができる。
【符号の説明】
【0076】
10…離型フィルム、11…離型層、11a…離型面、12…クッション層、12a…当接面
図1