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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025106686
(43)【公開日】2025-07-16
(54)【発明の名称】配列用マスク
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20250709BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20250709BHJP
【FI】
H05K3/34 505A
H01L21/92 604H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000132
(22)【出願日】2024-01-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】石川 樹一郎
(72)【発明者】
【氏名】田丸 裕仁
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319BB04
5E319BB05
5E319CD04
5E319CD26
5E319GG09
(57)【要約】
【課題】例えばアンダーフィル用のダムのような突壁を備える基板に適用される配列用マスクにおいて、突壁の上端がマスク本体の下面に当接することに起因して半田ボールの搭載不良が発生することを防ぐ。
【解決手段】本発明の配列用マスクは、多数個の通孔12が形成されたマスク本体10と、マスク本体10の下面15から下方に突設されて、マスク本体10を基板3の上面17から離れた姿勢で支持する突起部18とを備える。そして、マスク本体10の下面15に、基板3の上面17から上方に突設される突壁7の上部を受け入れる陥没部19が凹み形成されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配列パターンに対応した通孔(12)内に半田ボール(2)を振り込むことで、基板(3)上の所定位置に半田ボール(2)を搭載する配列用マスクであって、
多数個の通孔(12)が形成されたマスク本体(10)と、マスク本体(10)の下面(15)から下方に突設されて、マスク本体(10)を基板(3)の上面(17)から離れた姿勢で支持する突起部(18)とを備え、
マスク本体(10)の下面(15)に、基板(3)の上面(17)から上方に突設される突壁(7)の上部を受け入れる陥没部(19)が凹み形成されていることを特徴とする配列用マスク。
【請求項2】
突起部(18)を基板(3)の上面(17)に当接させた載置姿勢において、
陥没部(19)に侵入した突壁(7)の外面と、陥没部(19)の底面(20)及び周面(21)との間に、余裕隙間(G)が形成される請求項1に記載の配列用マスク。
【請求項3】
陥没部(19)の深さ寸法を(D)、マスク本体(10)の厚み寸法を(T)と規定したとき、陥没部(19)の深さ寸法(D)がマスク本体(10)の厚み寸法(T)の80%以下に設定されている請求項1に記載の配列用マスク。
【請求項4】
突起部(18)の高さ寸法を(H1)、マスク本体(10)の厚み寸法を(T)、前記高さ寸法(H1)と厚み寸法(T)の和を総マスク寸法(H3)と規定したとき、突起部(18)の高さ寸法(H1)が総マスク寸法(H3)の50%以上、70%以下に設定されている請求項1に記載の配列用マスク。
【請求項5】
マスク本体(10)の上面(14)に、マスク本体(10)の肉厚化を図る膨出部(45)が、陥没部(19)に対応して突出状に形成されている請求項1に記載の配列用マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BGA(Ball Grid Array)方式の半田バンプの作成に使用される、半田ボールの配列用マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半田バンプの形成方法として、BGA(Ball Grid Array)方式が知られている。このBGA方式では、ウエハ・フレキシブル基板・リジッド基板などの基板上の電極にフラックスを塗布する印刷工程と、フラックス上に半田ボールを配列する配列工程と、半田ボールを加熱・溶解する加熱工程を経てバンプを形成している。そして、前述の配列工程において、基板上に半田ボールを配列する方式としては、マスクを用いた振込方式がある。この振込方式では、基板の電極の配列パターンに対応して半田ボールが挿通可能な位置決め用の通孔を有する配列用マスク(以下、適宜に単に「マスク」と称す)を用いて、半田ボールを基板の電極上に搭載させている。具体的には、通孔と電極とが一致するように基板に対しマスクを位置合わせしたうえで、マスクの上に供給された半田ボールをスキージやブラシ等で掃引して、各通孔に一つずつ半田ボールを投入する。そして、フラックスに半田ボールを固着させることにより、基板上の所定位置に半田ボールを仮止め的に搭載させている。
【0003】
この種の配列用マスクの公知例としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。特許文献1に記載のマスクでは、通孔を有するマスク本体の下面に多数本の支持用の突起部が形成されている。半田ボールの配列作業に際しては、突起部の下面が基板の上面に当接されることで、マスク本体と基板との対向間隔が確保され、これにより電極上に塗布されたフラックスがマスク本体の下面に付着することを防ぐことができる。同様の構成を備える配列用マスクは、本特許出願人による特許文献2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-287215号公報
【特許文献2】特開2008-263053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半田バンプを用いて基板上に電子部品を実装するとき、基板に対する電子部品の機械的な補強を目的として、両者(基板と電子部品)の間に液状樹脂を塗布し、これを硬化させて、所謂「アンダーフィル」を形成することがある。このようにアンダーフィルが形成される基板の表面には、液状樹脂の塗布領域外への流出を防ぐための突壁からなるダムが予め突設されている。かかるダムの高さ寸法が突起部の高さ寸法より小さい場合には、突起部の下端を基板の上面に当接させることが可能であり、配列用マスクを基板上に安定的に載置することができる。一方、ダムの高さ寸法が突起部の高さ寸法よりも大きい場合には、突起部が基板に当接する前に、ダムの上端がマスク本体の下面に先当たりすることとなり、突起部と基板との間に隙間が生じてしまう。この場合には、マスク本体と基板との間の対向間隔が、予め設定された対向間隔よりも大きくなるため、配列用マスクは、通孔の孔内面で半田ボールを保持することが不可能となり、電極から外れた位置に半田ボールが搭載されるなどの搭載不良が生じるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、例えばアンダーフィル用のダムのような突壁を備える基板に適用される配列用マスクにおいて、突壁の上端がマスク本体の下面に当接することに起因して半田ボールの搭載不良が発生することを防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定の配列パターンに対応した通孔12内に半田ボール2を振り込むことで、基板3上の所定位置に半田ボール2を搭載する配列用マスクを対象とする。この配列用マスクは、多数個の通孔12が形成されたマスク本体10と、マスク本体10の下面15から下方に突設されて、マスク本体10を基板3の上面17から離れた姿勢で支持する突起部18とを備える。そして、マスク本体10の下面15に、基板3の上面17から上方に突設される突壁7の上部を受け入れる陥没部19が凹み形成されていることを特徴とする。
【0008】
突起部18を基板3の上面17に当接させた載置姿勢において、陥没部19に侵入した突壁7の外面と、陥没部19の底面20及び周面21との間に、余裕隙間Gが形成されている。
【0009】
陥没部19の深さ寸法をD、マスク本体10の厚み寸法をTと規定したとき、陥没部19の深さ寸法Dはマスク本体10の厚み寸法Tの80%以下に設定されていることが好ましい。
【0010】
突起部18の高さ寸法をH1、マスク本体10の厚み寸法をT、前記高さ寸法H1と厚み寸法Tの和を総マスク寸法H3と規定したとき、突起部18の高さ寸法H1は総マスク寸法H3の50%以上、70%以下に設定されていることが好ましい。
【0011】
マスク本体10の上面14に、マスク本体10の肉厚化を図る膨出部45が、陥没部19に対応して突出状に形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の配列用マスクのように、マスク本体10の下面に、基板3の上面17から上方に突設される突壁7の上部を受け入れる陥没部19が凹み形成されていると、突壁7の高さ寸法H2が突起部18の高さ寸法H1を超える基板3に対しても、陥没部19に突壁7を受け入れることで、マスク本体10の下面15が突壁7の上端と当接すること、つまり、マスク本体10が突壁7に先当たりして受け止められることを防ぐことができる。以上より、本発明のマスク1によれば、突起部18の先端を基板3の上面17に確実に当接させることができるので、マスク本体10の下面15と基板3の上面17との間の対向間隔を予め設定された距離に維持しながら、半田ボール2の配列作業を進めることができる。また、本発明によれば、突壁7の上端がマスク本体10の下面に当接することに起因して、半田ボール2の搭載不良が発生することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る配列用マスクを示す要部の縦断面図である。
図2】配列用マスクの全体を示す斜視図である。
図3】(a)~(d)は本発明の第1実施形態に係るスクリーン印刷用マスクの製造方法を示す縦断面図である。
図4】(a)~(d)は本発明の第1実施形態に係るスクリーン印刷用マスクの製造方法を示す縦断面図である。
図5】(a)~(d)は本発明の第1実施形態に係るスクリーン印刷用マスクの製造方法を示す縦断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る配列用マスクを示す要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態) 図1から図5に本発明に係る配列用マスクの第1実施形態を示す。なお、上下方向は配列用マスクの厚み方向に相当し、各図における厚みなどの寸法は、実際の様子を示したものではなく模式的に示したものである。この配列用マスク(以下、単にマスクと記す。)1は、BGA方式の半田バンプ作成における半田ボール2の配列作業において使用されるものである。
【0015】
図2において符号3は、マスク1による半田ボール2の搭載対象となる基板(ワーク)を示す。この基板3は、例えばガラスエポキシ基板のベース4に複数個の半導体チップ5を搭載し、ワイヤボンディングで配線したのちトランスファモールド封止してなるものである。基板3の上面には、半導体チップ5を囲むように、入出力端子である電極6が所定のパターンで形成されている。さらに、基板3の上面には、半導体チップ5及び電極6を囲むようにダム(突壁)7が上方に突出形成されている。ダム7は、基板3の作成と同時に形成される四角枠状の突起からなり、アンダーフィルを形成する際に、基板3と電子部品との間に塗布された液状樹脂(アンダーフィル形成用の液体樹脂)が必要以上に流動しないように堰き止めるためのものである。アンダーフィルは、基板3と半田バンプを用いて基板3上に搭載された電子部品との接合強度を高める目的で設けられる。電極6上には、半田ボール2の配列作業に先立つ印刷工程において、半田ボール2を仮止め的に粘着保持するフラックス8が塗布されている。ダム7はこのフラックスや半田(ペースト、ボール、剥離したバンプなど)の移動も堰き止めることができる。ダム7の形状は、格子状、L字状、或いは一対の縦桟(横桟)状であってもよい。
【0016】
図2に示すように、マスク1は、銅やニッケル、ニッケルコバルト等のニッケル合金、その他の電着金属を素材として電鋳法によって形成されたマスク本体10と、このマスク本体10を囲むように接合された枠体11とからなる。枠体11は四角枠体からなり、その外周形状はマスク本体10の外周形状と一致している。枠体11を構成する金属は、42アロイ、インバー材、SUS430等のマスク本体10を構成する金属よりも熱線膨張係数の小さな金属(低熱膨張材)を素材とすることが好ましい。枠体11で囲まれるマスク本体10の盤面には、各半導体チップ5に対応して、半田ボール2を投入するための多数独立の通孔12を有するパターン領域13が多数形成されている。枠体11は、マスク本体10を保持するための保持部材と、マスク本体10を補強するための補強部材とを兼ねている。
【0017】
図1に示すように各通孔12は、マスク本体10を上下方向(厚み方向)に貫通して、上下面14・15に開口を有するストレート状の丸孔からなり、基板3における各半導体チップ5の電極6の配列パターンに対応した位置に形成されている。半田ボール2は、100μm以下の直径dを有する球体であり、各通孔12の開口直径は、孔内面16で半田ボール2を受け止めて保持するため、当該ボール2の直径dよりも僅かに大きな寸法を有している。
【0018】
半田ボール2の配列作業に際してマスク1は基板3上に載置されるが、このとき、マスク本体10を基板3の上面17から浮き離れた姿勢で支持するため、マスク本体10の下面15には、突起部18が設けられている。具体的には、図1に示すように、マスク本体10の下面15側、すなわち基板3に対向する対向面側には、基板3との対向間隔を確保する突起部18が、下方に突出するようにマスク本体10に一体に多数形成されている。各突起部18は、その高さ寸法H1が半田ボール2の直径dの2分の1(半径)と同程度、もしくはそれよりも僅かに小さい円柱状に形成されている。突起部18は、独立形成されたものに限らず、パターン領域13を囲むように格子枠状に設けることができる。なお、突起部18は、マスク本体10と一体形成されているが、別体で形成したものをマスク本体10に一体的に接合することもできる。突起部18の形状は柱状に限らずリブ状であってもよい。
【0019】
ダム7の高さ寸法H2(図1参照)が、突起部18の高さ寸法H1より大きく形成されている場合、基板3上に載置されたマスク1は、ダム7に対応する部分では、突起部18の下端が基板3の上面に当接するよりも先に、マスク本体10の下面15がダム7の上端に当接するので、マスク本体10はダム7で受け止められることになる。このように部分的にマスク本体10がダム7で受け止められると、突起部18の下端が基板3の上面17に当接しないので、マスク本体10の下面15と基板3の上面17との間の対向間隔が、予め設定された距離より大きくなる。このように、対向間隔の距離が大きくなると、半田ボール2の配列作業時に、通孔12の孔内面16で半田ボール2を保持することができず、電極6の配設位置から外れた位置に半田ボール2が搭載されるおそれがある。そこで、本実施形態のマスク1では、半田ボール2の配列作業時に、マスク本体10とダム7とが接触することを回避するための構造が設けられている。
【0020】
具体的には、図1に示すように、基板3上にマスク1を載置したときのマスク本体10とダム7との接触を回避するため、ダム7に対応するマスク本体10の下面15に、ダム7の上部を受け入れる陥没部19が凹み状に形成されている。陥没部19は、マスク本体10の下面15側に開口する、開口形状がダム7よりひとまわり大きい四角枠状の凹溝からなる。陥没部19の溝断面の形状は矩形状とされている。陥没部19の深さ寸法Dは、陥没部19にダム7が侵入したとき、陥没部19の底面(上面)20と、ダム7の上端面とが当接しない寸法に設定されていることが好ましい。本実施形態では、陥没部19の深さ寸法Dをダム7が当接しない寸法に設定している。以上より、陥没部19に侵入したダム7の外面と、陥没部19の底面20及び周面21(陥没部19の内表面)との間には、余裕隙間Gが形成される。
【0021】
上記余裕隙間Gは必須ではなく、ダム7に陥没部19が嵌合する形態であってもよい。この場合には、基板3に対するマスク1の位置決め精度の向上や、載置の安定性の向上に寄与できる。陥没部19の溝断面の形状は矩形状に限らず、台形状、多角形状、半円状であってもよい。陥没部19を構成する凹溝は、底面20の少なくとも一部が、マスク本体10の上面14に連通する形態であってもよい。この場合には、連通部分の開口径は、半田ボール2の直径dよりも小さいものとする。陥没部19は、基板3上に搭載された搭載物(例えば、半導体チップ5やバンプなど)の逃げとして用いることもできる。
【0022】
陥没部19は、該陥没部19の深さ寸法Dが、マスク本体10の厚み寸法Tの80%以下に形成されていることが好ましい。陥没部19の深さ寸法Dがマスク本体10の厚み寸法Tの80%を超えると、陥没部19に対応する部分の強度が不足し、マスク本体10の耐久性が低下するおそれがあるからである。より好ましくは、陥没部19の深さ寸法Dは、マスク本体10の厚み寸法Tの5%以上80%以下に設定する。本実施形態では、陥没部19の深さ寸法Dはマスク本体10の厚み寸法Tの60%に設定した。
【0023】
また、突起部18は、該突起部18の高さ寸法H1が、マスク本体10の厚み寸法Tと突起部18の高さ寸法H1との和である総マスク寸法H3(図1参照)の50%以上70%以下に設定されていることが好ましい。突起部18の高さ寸法H1が総マスク寸法H3の50%未満であると、電極6に塗布されたフラックス8がマスク本体10の下面15に付着するおそれが高まるからであり、突起部18の高さ寸法H1が総マスク寸法H3の70%を超えると、基板3上にマスク1を載置した際に突起部18に作用する負荷が大きくなり、マスク1の耐久性が低下するからである。本実施形態では、突起部18の高さ寸法H1は、総マスク寸法H3の55%に設定した。配列用マスクにおける総マスク寸法H3は、30~120μm程度に設定される。
【0024】
半田ボール2の配列作業は、まず、基板3に対してマスク1を位置合わせしたうえで、基板3上にマスク1を載置する。このとき、陥没部19にダム7を受け入れることで、マスク本体10の下面15との当接が回避され、突起部18の下端が基板3の上面17に当接する。以上より、マスク本体10の下面15と基板3の上面17との間に適正な対向間隔が形成された状態で、基板3上にマスク1を安定的に載置することができる。
【0025】
続いて、マスク1上に多数個の半田ボール2を供給し、スキージブラシを用いてマスク1上で半田ボール2を分散させて、通孔12内に一つずつ半田ボール2を投入する。通孔12に投入された半田ボール2は、突起部18の高さ寸法H1が半田ボール2の直径dの2分の1(半径)より僅かに小さく設定されていることから、水平方向の径が最大となる球状周面の上下方向中央部分が通孔12の孔内面16で受け止められることにより、電極6に対して位置決めされる。通孔12に投入された半田ボール2は、フラックス8に仮止め的に粘着保持される。最後に、基板3上からマスク1を垂直方向に持ち上げて取り除くことで、半田ボール2が電極6上に搭載され配列作業が完了する。
【0026】
図3から図5に本実施形態に係るマスク1の製造方法の一例を示す。まず、図3(a)に示すように、導電性を有する例えばステンレス鋼製や真ちゅう製の母型26の表面に第1フォトレジスト層27を形成し、この第1フォトレジスト層27の上に、前記の突起部18に対応する透光孔28aを有する第1パターンフィルム28を密着させる。第1フォトレジスト層27は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成した。次に、紫外光ランプ29で紫外線光を照射して第1フォトレジスト層27を露光し、現像・乾燥の各処理を行ったのち、未露光部分を溶解除去することにより、図3(b)に示すような、突起部18に対応するストレート状の第1レジスト体30aからなる第1パターンレジスト30を母型26上に形成した。
【0027】
続いて、母型26を所定の条件に建浴した電鋳槽(めっき槽)に入れ、図3(c)に示すように、第1レジスト体30aの高さの範囲内で、母型26の第1レジスト体30aで覆われていない表面にニッケル合金等の電着金属を電鋳(めっき)し、こののち第1パターンレジスト30を溶解除去することにより、図3(d)に示すような第1電鋳層31を母型26上に形成した。第1電鋳層31の形成高さは、突起部18の高さ寸法H1に一致している。なお、第1パターンレジスト30は、除去しないまま次工程に進めることも可能であり、この場合には、第2パターンレジスト34(後述)とともに第1パターンレジスト30を溶解除去すればよい。
【0028】
続いて、図4(a)に示すように、母型26の第1電鋳層31で覆われていない表面、及び第1電鋳層31の表面に、第2フォトレジスト層32を形成し、この第2フォトレジスト層32の上に、前記の陥没部19に対応する透光孔33aを有する第2パターンフィルム33を密着させる。第2フォトレジスト層32は、先の第1フォトレジスト層27と同様の方法で形成した。次に、紫外光ランプ29で紫外線光を照射して第2フォトレジスト層32を露光し、現像・乾燥の各処理を行ったのち、未露光部分を溶解除去することにより、図4(b)に示すような、陥没部19に対応するストレート状の孔を有する第2レジスト体34aからなる第2パターンレジスト34を母型26及び第1電鋳層31の上に形成した。
【0029】
続いて、母型26を所定の条件に建浴した電鋳槽(めっき槽)に入れ、図4(c)に示すように、第2レジスト体34aの高さの範囲内で、第1電鋳層31の第2レジスト体34aで覆われていない表面にニッケル合金等の電着金属を電鋳(めっき)し、こののち第2パターンレジスト34を溶解除去することにより、図4(d)に示すような第2電鋳層35を第1電鋳層31上に形成した。第2電鋳層35の形成高さは、陥没部19の深さ寸法Dに一致している。なお、上記では陥没部19に対応するものとして第2電鋳層35(金属)を形成したが、当該金属は樹脂(レジスト体)に置き換えることもできる。
【0030】
続いて、図5(a)に示すように、母型26の第1電鋳層31で覆われていない表面、及び両電鋳層31・35の表面に、第3フォトレジスト層36を形成し、この第3フォトレジスト層36の上に、前記の通孔12やマスク本体10の外形形状に対応する透光孔37aを有する第3パターンフィルム37を密着させる。第3フォトレジスト層36は、先の第1フォトレジスト層27と同様の方法で形成した。次に、紫外光ランプ29で紫外線光を照射して第3フォトレジスト層36を露光し、現像・乾燥の各処理を行ったのち、未露光部分を溶解除去することにより、図5(b)に示すような、通孔12やマスク本体10に対応するストレート状の第3レジスト体38aからなる第3パターンレジスト38を第1電鋳層31上に形成した。なお、マスク本体10の外形形状に対応する孔を形成する第3レジスト体38aについては図示していない。
【0031】
続いて、母型26の第1電鋳層31で覆われていない表面、及び両電鋳層31・35の表面に剥離処理もしくはカバーめっきを施したのち、母型26を所定の条件に建浴した電鋳槽(めっき槽)に入れ、第3レジスト体38aの高さの範囲内で、母型26の第1電鋳層31で覆われていない表面、及び両電鋳層31・35の表面にニッケル合金等の電着金属を電鋳(めっき)して、母型26、第1電鋳層31、及び第2電鋳層35の上面に第3電鋳層39を形成し、さらに第3電鋳層39の形成後に、第3電鋳層39及び第3レジスト体38aの上面に研磨処理を施して、図5(c)に示すように、第3電鋳層39の上面を平坦に仕上げた。次に、第3電鋳層39を母型26及び両電鋳層31・35から剥離することにより、図5(d)に示すような、下面15に突出形成された突起部18と凹み状に形成された陥没部19を有し、盤面に貫通状の通孔12が形成されたマスク本体10を得た。第1電鋳層31の上面に形成される第3電鋳層39の形成厚みが、マスク本体10の厚み寸法Tに一致している。最後に、マスク本体10の上面14に枠体11を一体的に固定することにより、図2に示すような、マスク1を得ることができる。なお、第3電鋳層39の形成後は、必要に応じてその上面に研磨処理を施して、マスク本体10の上面14の平坦度を向上させるとよい。
【0032】
(第2実施形態) 図6に本発明に係る配列用マスクの第2実施形態を示す。本実施形態では、マスク本体10の上面14に、マスク本体10の部分的な肉厚化を図る膨出部45が設けられている点が、先の第1実施形態と相違する。膨出部45は、陥没部19に対応してマスク本体10の上面14側に突出状に形成されている。マスク本体10の上面14に膨出部45を設けることにより、陥没部19の底面20からマスク本体10の上面14までの厚みを増大させて、陥没部19が形成されることによるマスク本体10の構造強度の低下を抑えることができる。また、陥没部19が形成されているマスク本体10であっても、膨出部45を設けることでマスク本体10の全体でその厚みを均一に形成することができる。
【0033】
本実施形態のマスク1は、先の第1実施形態の製造方法(図3図5参照)とほぼ同一の工程を経て作成されるが、第3電鋳層39の形成後、研磨処理が施されない点のみが異なる。電鋳(めっき)は、その厚み方向の成長量が均一であるので、第1電鋳層31に対応する部分と第2電鋳層35に対応する部分とでは段差が生じて、第3電鋳層39の上面に膨出部45となる膨らみが形成される。なお、必要に応じて、第3電鋳層39の電鋳(めっき)時に、第2電鋳層35に対応する部分の電流密度を高める制御を行いつつ電鋳(めっき)を行うことにより、第2電鋳層35に対応する部分を他の部分よりも肉厚に形成することができる。他は第1実施形態と同様であるので、同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0034】
上記各実施形態に係るマスク1においては、マスク本体10の下面15に、ダム7の上部を受け入れる陥没部19を凹み状に形成したので、ダム7の高さ寸法H2が突起部18の高さ寸法H1を超える基板3に対しても、陥没部19にダム7を受け入れることで、マスク本体10の下面15がダム7の上端と当接すること、つまり、マスク本体10がダム7に先当たりして受け止められることを防ぐことができる。以上より、このマスク1によれば、突起部18の先端を基板3の上面17に確実に当接させることができるので、マスク本体10の下面15と基板3の上面17との間の対向間隔を予め設定された距離に維持しながら、半田ボール2の配列作業を進めることができる。また、このマスク1によれば、ダム7の上端がマスク本体10の下面15に当接することに起因して、半田ボール2の搭載不良が発生することを防ぐことができる。
【0035】
突起部18を基板3の上面17に当接させた載置姿勢において、陥没部19に侵入したダム7の外面と、陥没部19の底面20及び周面21との間に、余裕隙間Gを形成したので、陥没部19の底面20及び周面21とダム7の外面とが接触することを抑えて、突起部18の先端を基板3の上面17により確実に当接させることができる。
【0036】
陥没部19の深さ寸法Dは、マスク本体10の厚み寸法Tの80%以下に設定することが好ましく、これにより、陥没部19に対応する部分のマスク本体10の強度が不足することによるマスク本体10の耐久性の低下を抑えることができる。
【0037】
突起部18の高さ寸法H1は、総マスク寸法H3の50%以上に設定することが好ましく、これにより、マスク本体10の下面15や通孔12の内面に対するフラックス8の付着を防ぐことができる。また。突起部18の高さ寸法H1は、総マスク寸法H3の70%以下に設定することが好ましく、これにより、突起部18に作用する負荷が大きくなることによるマスク1の耐久性の低下を抑えることができる。
【0038】
陥没部19に対応してマスク本体10の上面14に膨出部45が形成されたマスク1によれば、マスク本体10の厚み寸法Tが部分的に薄肉に形成されることを防ぐことができるので、陥没部19が形成されることによるマスク本体10の構造強度の低下を抑えることができる。
【0039】
本発明に係る配列マスクは、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs : Sustainable Development Goals)の目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)および目標12(つくる責任、つかう責任)に貢献することができる。また、本発明に係る配列マスクの構造は、半田ボール吸着用、スクリーン印刷用マスク、或いは蒸着用等の各種メタルマスクにも適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 配列用マスク
2 半田ボール
3 基板
7 突壁(ダム)
10 マスク本体
12 通孔
15 マスク本体の下面
17 基板の上面
18 突起部
19 陥没部
45 膨出部
D 陥没部の深さ寸法
G 余裕隙間
H1 突起部の高さ寸法
H3 総マスク寸法
T マスク本体の厚み寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6