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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010693
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】移植装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20250116BHJP
【FI】
A01C11/02 302C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112820
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】大坪 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】東條 克彦
(72)【発明者】
【氏名】岸本 智
【テーマコード(参考)】
2B060
【Fターム(参考)】
2B060AA06
2B060AC02
2B060AD05
2B060BA04
2B060CA07
2B060CA09
2B060CB02
2B060CC05
2B060CC15
2B060DA09
(57)【要約】
【課題】植え付けカップを有する苗の移植装置において、苗の植え付けの時間間隔を短くしつつ、適切に苗を圃場へ移植することができる技術を提供する。
【解決手段】この移植装置20は、中心軸Oを中心として動力入力軸41とともに回転する第1ケース31と、動力入力軸41から第1ケース31とともに回転する第1出力軸42へ動力を伝達する第1動力変換機構51と、第1出力軸42とともに第1軸O1を中心として回転する第2ケース32と、第2ケース32とともに第1軸O1を中心として回転する第2軸O2周りに回動可能に支持される植え付け部33を有する。第1動力変換機構51は、動力入力軸41から出力された回転動力を中心軸Oの上方で遅くし下方で早くする不等速比変換部と、不等速比変換部から出力された回転動力を、逆向きかつ2倍の回転速度に変換して第1出力軸42へ出力する速度比変換部とを含む。これにより、植え付け部33を複数有する場合に、下死点付近での前後方向の動きを小さくできる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗箱に保持された複数のポット苗を、進行方向に移動しつつ移植するための移植装置であって、
移植装置本体に対して固定された固定ケースに対して回転し、左右方向に延びる中心軸に沿って延びる動力入力軸と、
前記中心軸を中心として、前記動力入力軸とともに回転する第1ケースと、
前記第1ケースに周方向に間隔を空けて配置される第1軸に沿って延び、前記第1ケースとともに前記中心軸を中心として公転し、回転動力を出力する複数の第1出力軸と、
前記第1ケースの内部に収容され、前記動力入力軸からの回転動力を変換し、複数の前記第1出力軸に伝達する第1動力変換機構と、
前記第1軸を中心として、前記第1出力軸とともに回転する、複数の第2ケースと、
前記第2ケースとともに前記第1軸を中心として回転する第2軸を中心として前記第2ケースに対して回動可能に支持される複数の植え付け部と、
を有し、
前記第1動力変換機構は、
前記動力入力軸からの回転動力を、前記中心軸の上方において遅くするとともに、前記中心軸の下方において速くするように不等速比変換する不等速比変換部と、
前記不等速比変換部から出力された回転動力を、逆向きの回転、かつ、2倍の回転速度に変換し、前記第1出力軸へ出力する速度比変換部と、
を含む、移植装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移植装置であって、
前記第2ケースの内部に収容され、前記第1出力軸から入力された回転動力を、逆向きの回転、かつ、1/2倍の回転速度に変換し、第2出力軸へ出力する第2動力変換機構
をさらに有し、
前記植え付け部はそれぞれ、
植え付けカップと、
先端部に前記植え付けカップを保持し、前後方向に延びるアームと、
を有し、
前記アームの基端部は、前記第2出力軸に対して固定され、
前記アームおよび前記植え付けカップは、前記第2出力軸とともに、前記第2ケースに対して前記第2軸を中心として回転する、移植装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の移植装置であって、
前記不等速比変換部は、
前記中心軸を中心として回転する第1偏芯ギヤと、
前記第1偏芯ギヤと噛み合う、複数の第2偏芯ギヤと、
を含む、移植装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の移植装置であって、
前記第1ケースと、前記第1動力変換機構と、複数の前記第2ケースと、複数の前記植え付け部を有する移植部を2つ有し、
2つの前記移植部は、左右方向に間隔をあけて、前記固定ケースに対して左右対称に配置され、
前記固定ケースに対する前記移植部の角度は可変である、移植装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、稲や野菜などの苗を圃場に移植する移植機として、苗箱に育成されたポット苗を圃場に移植する移植機が知られている。従来のポット苗を圃場に移植する移植機については、例えば、特許文献1に記載されている。図11は、特許文献1に記載された移植機の側面図である。
【0003】
特許文献1に記載の移植機(X1)では、図11に示すように、移植機(X1)の進行方向前方から後方へ向かうにつれて、植え付けカップ(植付カップX18)を有する移植機構と、鎮圧輪(覆土輪X13)とが順に配置されている。
【0004】
この移植機(X1)では、植え付けカップ(植付カップX18)が上下に往復移動し、上死点付近で苗を受け取り、下死点付近で圃場に穴を作りつつ苗を放すことにより、苗を圃場に植え付ける。そして、鎮圧輪(覆土輪X13)が、苗が植え付けられた穴を埋め戻し、苗の根部を土で覆う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第2511414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような植え付けカップを有する移植装置において、移植装置の進行方向における苗同士の距離間隔(移植ピッチ)を短くしたり、移植装置の進行速度を大きくしたりするためには、苗の植え付けの時間間隔を短くする必要がある。従来の移植装置の構成を変更すること無く、苗の植え付けの時間間隔を短くするためには、植え付けカップの移動速度を大きくする必要がある。
【0007】
しかしながら、単に植え付けカップの移動速度を大きくすると、様々な問題が生じる。例えば、植え付けカップの下降時には、植え付けカップ内において苗は自由落下により植え付けカップとともに下降する。このため、単に植え付けカップの移動速度を大きくすると、植え付けカップ内の苗が植え付けカップに追いつけず、浮き上がってしまう。
【0008】
また、移植装置の進行速度を大きくする場合には、下死点付近で植え付けカップが圃場に接触している状態で移植装置全体が大きく前進するため、植え付けカップが前方へ引きずられ、植え付け穴が前後に延びるという問題が生じる。
【0009】
そこで、苗の植え付けの時間間隔を短くするその他の方法として、複数の植え付けカップを設けることが考えられる。植え付けカップを複数設けた場合に、従来の移植装置と同様に植え付けカップを上下方向に移動させると、植え付けカップ同士が接触してしまう。このため、複数の植え付けカップを、互いに接触させることなく、上方の苗受け取り位置と下方の苗植え付け位置との間で移動させる必要が生じる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、植え付けカップを有する苗の移植装置において、苗の植え付けの時間間隔を短くしつつ、適切に苗を圃場へ移植することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、苗箱に保持された複数のポット苗を、進行方向に移動しつつ移植するための移植装置であって、移植装置本体に対して固定された固定ケースに対して回転し、左右方向に延びる中心軸に沿って延びる動力入力軸と、前記中心軸を中心として、前記動力入力軸とともに回転する第1ケースと、前記第1ケースに周方向に間隔を空けて配置される第1軸に沿って延び、前記第1ケースとともに前記中心軸を中心として公転し、回転動力を出力する複数の第1出力軸と、前記第1ケースの内部に収容され、前記動力入力軸からの回転動力を変換し、複数の前記第1出力軸に伝達する第1動力変換機構と、前記第1軸を中心として、前記第1出力軸とともに回転する、複数の第2ケースと、前記第2ケースとともに前記第1軸を中心として回転する第2軸を中心として前記第2ケースに対して回動可能に支持される複数の植え付け部と、を有し、前記第1動力変換機構は、前記動力入力軸からの回転動力を、前記中心軸の上方において遅くするとともに、前記中心軸の下方において速くするように不等速比変換する不等速比変換部と、前記不等速比変換部から出力された回転動力を、逆向きの回転、かつ、2倍の回転速度に変換し、前記第1出力軸へ出力する速度比変換部と、を含む。
【0012】
本願の第2発明は、第1発明の移植装置であって、前記第2ケースの内部に収容され、前記第1出力軸から入力された回転動力を、逆向きの回転、かつ、1/2倍の回転速度に変換し、第2出力軸へ出力する第2動力変換機構をさらに有し、前記植え付け部はそれぞれ、植え付けカップと、先端部に前記植え付けカップを保持し、前後方向に延びるアームと、を有し、前記アームの基端部は、前記第2出力軸に対して固定され、前記アームおよび前記植え付けカップは、前記第2出力軸とともに、前記第2ケースに対して前記第2軸を中心として回転する。
【0013】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の移植装置であって、前記不等速比変換部は、前記中心軸を中心として回転する第1偏芯ギヤと、前記第1偏芯ギヤと噛み合う、複数の第2偏芯ギヤと、を含む。
【0014】
本願の第4発明は、第1発明ないし第3発明のいずれか一発明の移植装置であって、前記第1ケースと、前記第1動力変換機構と、複数の前記第2ケースと、複数の前記植え付け部を有する移植部を2つ有し、2つの前記移植部は、左右方向に間隔をあけて、前記固定ケースに対して左右対称に配置され、前記固定ケースに対する前記移植部の角度は可変である。
【発明の効果】
【0015】
本願の第1発明および第2発明によれば、第2ケースが第1ケースと逆向きに回転することにより、植え付け部を保持している第2軸が、第1出力軸に対して、第1ケースの上側では上に、前側では後に、下側では下に、後側では前に配置される。これにより、植え付け部の軌道が、第1出力軸の軌道である円形に比べて、前後方向に幅が小さく、上下方向に長くなる。これにより、植え付け部を複数有する場合に、植え付け部同士が接触せずにすれ違える前後方向の間隔を保ちつつ、下死点付近での前後方向の動きを小さくできる。
【0016】
また、第1動力変換機構において不等速比に動力変換されることにより、第2ケースが、動力入力軸の上側では遅く、動力入力軸の下側では速く回転する。これにより、第2軸(すなわち植え付け部)の軌道が、上側では前後に広く、下側では前後に細くなる。その結果、植え付け部の下死点付近での前後方向の動きをさらに小さくできる。
【0017】
特に、本願の第2発明によれば、植え付け部は、固定ケースに対して、回転すること無く、揺動する。これにより、植え付けカップが前方から下死点へ向かう際には植え付けカップ下端部が後方を向き、植え付けカップが下死点から後方へ向かう際には植え付けカップ下端部が前方を向く。その結果、植え付けカップ下端部の軌道は、第2軸のきどうよりもさらに、下側において前後に細くなる。したがって、植え付け部の下死点付近での前後方向の動きをさらに小さくできる。
【0018】
特に、本願の第4発明によれば、移植部の取り付け角度を変更することにより、2つの移植部の下端部における苗植え付け位置の間隔を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】移植機の側面図である。
図2】移植機の移植部付近の背面から見た断面図である。
図3】移植部の側面図である。
図4】移植部の上面図である。
図5】第1ケースの内部に配置された第1動力変換機構の側面図である。
図6】第2ケースの内部に配置された第2動力変換機構の側面図である。
図7】植え付け部の側面図である。
図8】移植部の各部の軌道を示した図である。
図9】移植部の各部の軌道を示した図である。
図10】植え付けカップの軌道を示した図である。
図11】特許文献1に係る従来の移植機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本願では、移植装置の進行方向を「前方向」、移植装置の進行方向と逆の方向を「後方向」とそれぞれ称する。また、前後方向および上下方向と直交する方向を左右方向と称する。なお、本願では、移植装置の使用時の姿勢に従って上下方向を定義する。
【0021】
<1.第1実施形態>
<1-1.移植機全体の構成について>
図1は、移植機1の側面図である。この移植機1は、苗箱において育成された複数の野菜のポット苗を、苗箱から取り出して圃場100へ移植する装置である。この移植機1において移植されるポット苗は、例えば、ブロッコリー等の双子葉植物の苗であってもよいし、長ネギなどの単子葉類の野菜の苗であってもよい。
【0022】
図1に示すように、移植機1は、走行部10と、移植装置20とを有する。図1では、移植装置20が圃場100に対してポット苗を植え付けることが可能な植え付け位置に配置されている。なお、移植装置20は、苗の移植を行わない場合には、圃場や路面に接触しないように、上方に持ち上げて保持することができる。
【0023】
走行部10は、移植装置20を支持しつつ、前方へ向かって走行することができる。移植装置20は、ポット苗を苗箱から取り出して圃場100へと移植する。移植機1は、走行部10を有することにより、苗箱に保持された複数のポット苗を、進行方向に移動しつつ移植する。
【0024】
走行部10は、車体11と、車輪12と、操作部13と、座席14と、苗箱載置台15とを有する。車体11は、エンジン111と、エンジン111から出力される動力を移植装置20へと伝達する動力伝達機構として、後述する苗取り出し部21や苗搬送部22へ動力を伝達するPTO軸(図示省略)と、後述する移植部23へ動力を伝達する動力伝達部16(図2参照)とを有する。
【0025】
図2は、移植装置20の背面図である。図2に示すように、動力伝達部16は、左右2つのローラチェーン161と、1つまたは2つの前スプロケット(図示省略)と、左右2つの後スプロケット162とを有する。ローラチェーン161、前スプロケットおよび後スプロケット162は、チェーンケース160内に収容されている。エンジン111から出力される回転動力により前スプロケットが回転すると、ローラチェーン161を介して後スプロケット162へ動力が伝達され、後スプロケット162が回転する。
【0026】
車輪12は、走行部10のその他の部位と、移植装置20とを走行自在に支持する。車輪12は、エンジン111の出力した動力によって回転し、移植機1を走行させる。本実施形態では、操作部13、座席14および苗箱載置台15は、走行部10の後方であって、移植装置20よりも後側に配置される。苗箱載置台15は、移植前または移植後の苗箱を載置可能である。
【0027】
作業者は、座席14に着席したまま、操作部13を操作して、走行部10を走行させつつ、移植装置20を駆動させて、圃場100に苗を移植することができる。また、作業者は、苗の移植を行いつつ、苗箱載置台15からポット苗の入った苗箱を取り出して移植装置20へ供給したり、空になった苗箱を移植装置20から回収して苗箱載置台15へと収容することができる。
【0028】
<1-2.移植装置の構成について>
次に、移植装置20の詳細な構成について、図1および図2を参照しつつ説明する。なお、図2は、苗搬送部22の一部は背面から見た様子が、移植部23および鎮圧部24については、各部の要部がわかる断面における断面が、背面側から見た状態で示されている。各部において示される断面の切断面は、部材毎に異なる。
【0029】
この移植機1では、苗箱内で育成されたポット苗を苗箱内から取り出して、圃場100へと植え付ける。苗箱は、厚みのある長方形のマット状であり、表側の面から裏側に向かって窪むカップ状の苗室が、2次元的に複数配列されている。各苗室に土を入れた後、各苗室内に播種し、育苗することで、ポット苗が得られる。ポット苗は、苗室内で土と根とにより構成される根部と、根部から延びる茎葉部とを有する。育成したポット苗は、苗箱に収容されたまま苗箱ごと移植機1へ載置される。
【0030】
本実施形態の移植装置20は、苗取り出し部21と、苗搬送部22と、左右2つの移植部23と、左右2つの鎮圧部24とを有する。苗取り出し部21は、投入された苗箱からポット苗を順に取り出して、苗搬送部22へと引き渡す。
【0031】
苗搬送部22は、左右2つの移植部23のそれぞれへポット苗を搬送する。具体的には、苗搬送部22は、図1および図2に示すように、左右2つのコンベア221と、左右2つの苗押し出し爪222と、左右2組の送り出しローラ223とを有する。
【0032】
苗取り出し部21は、苗箱から取り出したポット苗を、水平方向に倒れた姿勢でコンベア221上に落下させて並べる。右側のコンベア221は、ポット苗を水平方向右側に搬送し、左側のコンベア221は、ポット苗を水平方向左側に搬送する。
【0033】
そして、右側の苗押し出し爪222は、右側のコンベア221の右端部に達したポット苗の根部を、下方へ向かって押し出す。これにより、当該ポット苗は、根部が下、茎葉部が上の起き上がった姿勢で右の送り出しローラ223へと押し出される。また、左側の苗押し出し爪222は、左側のコンベア221の左端部に達したポット苗の根部を、下方へ向かって押し出す。これにより、当該ポット苗は、根部が下、茎葉部が上の起き上がった姿勢で左の送り出しローラ223へと押し出される。
【0034】
送り出しローラ223はそれぞれ、前後方向に延びる2つのローラ220を有する。2つのローラ220は、左右に並んでおり、互いに向かい合う面が下方へ向かうように回転する。これにより、上方から2つのローラ220の間に押し出されたポット苗は、根部が下の起き上がった状態で2つのローラ220間に保持されつつ下方へ搬送される。これにより、送り出しローラ223から、送り出しローラ223の下方に配置された移植部23へポット苗が受け渡される。
【0035】
移植部23は、3つの植え付けカップ230を有する。植え付けカップ230は、上部が開口されたカップ状の部材である。植え付けカップ230は、下端部が前後方向に開閉可能である。また、植え付けカップ230は、閉状態において、下方に向かって窄み、下端部が尖った形状をしている。植え付けカップ230は、上下方向の移動を繰り返すことにより、苗搬送部22からポット苗を受け取って、圃場100へポット苗を植え付ける。
【0036】
具体的には、植え付けカップ230は、上死点付近において、送り出しローラ223の下方の苗受け取り位置に配置される。当該位置において、上部の開口からポット苗が植え付けカップ230内に落下して収容される。そして、下死点付近において植え付けカップ230は閉状態から開状態へと変化する。これにより、植え付けカップ230の下端部が圃場100に刺さって穴を形成し、植え付けカップ230の下端部が開くことで、穴を前後に拡げるとともに、穴の内部にポット苗を落下させる。その後、植え付けカップ230は開放状態のまま上方へ移動することで、ポット苗を圃場100に残したまま上方へ移動することができる。
【0037】
鎮圧部24はそれぞれ、左右に間隔を空けて配置された2つの鎮圧輪240を有する。鎮圧部24は、移植部23の移植したポット苗の周辺の土を、2つの鎮圧輪240でポット苗の左右両側から押さえる。これにより、植え付けカップ230によって形成された穴が埋め戻される。これにより、ポット苗が圃場100に安定して移植される。
【0038】
<1-3.移植部の構成について>
続いて、移植部23が動作するための構成について、図2図4を参照しつつ説明する。本実施形態では、左右2つの移植部23は、左右対称に形成されている。このため、以下では、左側の移植部23について説明し、右側の移植部23についての説明を省略する。
【0039】
図3は、左側の移植部23の側面図である。図4は、左側の移植部23の横断面図である。図4は、具体的には、第1ケース31および第1動力変換機構51については、1つの第1軸O1-中心軸O-他の1つの第1軸O1を通る断面、第2ケース32および第2動力変換機構52については、第1軸O1および第2軸O2を通る断面、植え付け部33については、第2軸O2を通る断面が示されている。
【0040】
図2図4に示すように、移植部23は、第1ケース31と、3つの第2ケース32と、3つの植え付け部33と、動力入力軸41と、3つの第1出力軸42と、3つの第2出力軸43と、第1動力変換機構51と、3つの第2動力変換機構52とを有する。
【0041】
第1ケース31は、移植装置20本体に対して固定されたチェーンケース160に対して、左右に延びる中心軸Oを中心として回転可能に支持されている。上述の通り、中心軸Oは、左側の後スプロケット162の回転軸と一致する。
【0042】
ここで、中心軸Oは、水平であってもよいし、図2に示すように、水平方向からやや傾いていてもよい。動力伝達部16にチェーン・スプロケットを用いることにより、第1ケース31に対して回転動力を出力する動力入力軸41の角度を調整することができる。本実施形態では、中心軸Oの傾きを変更することにより、左右の植え付けカップ230の植え付け位置の間隔を変えることができる。
【0043】
動力入力軸41は、中心軸Oに沿って延びる部材である。動力入力軸41は、移植装置20本体に対して固定されたチェーンケース160(固定ケース)に対して、左右に延びる中心軸Oを中心として回転可能に支持されている。動力入力軸41は、後スプロケット162に固定され、後スプロケット162とともに回転する。すなわち、動力入力軸41には、後スプロケット162から回転動力が入力される。
【0044】
第1ケース31と動力入力軸41とは互いに固定されている。これにより、第1ケース31は、動力入力軸41から入力された回転動力により、中心軸Oを中心として、動力入力軸41とともに回転する。図3中に実線矢印で示すように、左側の移植部23を外側(左側)から見た状態において、第1ケース31は反時計回りに回転する。
【0045】
図5は、第1ケース31の内部に配置された第1動力変換機構51の側面図である。図5に示すように、第1ケース31には、3つの第1出力軸42が、周方向に間隔を空けて配置される。3つの第1出力軸42は、周方向に略等間隔に配置される。第1出力軸42は、中心軸Oと平行に延びる第1軸O1に沿って延びる部材である。第1軸O1は、第1ケース31とともに、中心軸Oを中心として公転する。また、第1出力軸42は、第1ケース31に対して、第1軸O1を中心として回転可能に支持されている。このため、第1出力軸42は、第1ケース31とともに中心軸Oを中心として公転するとともに、第1軸O1を中心として自転する。
【0046】
第1動力変換機構51は、第1ケース31の内部に収容される。第1動力変換機構51は、固定偏芯ギヤ511と、3つの回動偏芯ギヤ512と、3つの第1回動ギヤ513と、3つの第2回動ギヤ514とを有する。なお、固定偏芯ギヤ511は第1偏芯ギヤを構成し、回動偏芯ギヤ512は第2偏芯ギヤを構成する。
【0047】
固定偏芯ギヤ511は、チェーンケース160に対して固定されている。固定偏芯ギヤ511は円形のギヤであるが、その中心が中心軸Oから外れた位置に配置されている。このため、第1ケース31が中心軸Oを中心として回転すると、固定偏芯ギヤ511は、第1ケース31に対して相対的に偏芯して回転していることとなる。なお、固定偏芯ギヤ511の中心は、中心軸Oよりも下方に配置されている。
【0048】
回動偏芯ギヤ512と第1回動ギヤ513とは、互いに固定されている。3組の回動偏芯ギヤ512および第1回動ギヤ513は、それぞれ、中心軸Oを中心として周方向に略等間隔に配置される。また、回動偏芯ギヤ512と第1回動ギヤ513とは、中心軸Oと第1軸O1との間に配置された中間軸Omを中心として、第1ケース31に対して回動可能に支持されている。中間軸Omは、第1軸O1と同様、第1ケース31とともに中心軸Oを中心として公転する。このため、回動偏芯ギヤ512および第1回動ギヤ513は、第1ケース31とともに中心軸Oを中心として公転するとともに、中間軸Omを中心として自転する。
【0049】
回動偏芯ギヤ512は、固定偏芯ギヤ511と噛み合うギヤである。本実施形態では、固定偏芯ギヤ511と回動偏芯ギヤ512とは同じ大きさおよび同じギヤ歯数である。回動偏芯ギヤ512は円形のギヤであるが、中間軸Omと回動偏芯ギヤ512の中心とが一致しないように配置されている。これにより、回動偏芯ギヤ512は、固定偏芯ギヤ511との相対的な位置によって、固定偏芯ギヤ511の回転速度に対して不等速に回転する。なお、固定偏芯ギヤ511に対して第1ケース31が反時計回りに1回転する間に、回動偏芯ギヤ512は中間軸Omを中心として反時計回りに1回転する。
【0050】
具体的には、図5に示すように、回動偏芯ギヤ512が固定偏芯ギヤ511の上方に位置する場合には、固定偏芯ギヤ511の回転中心である中心軸Oから、固定偏芯ギヤ511と回動偏芯ギヤ512との噛み合わせまでの距離が短く、回動偏芯ギヤ512の回転中心である中間軸Omから噛み合わせまでの距離が長い。これにより、回動偏芯ギヤ512が固定偏芯ギヤ511の上方に位置する場合には、回動偏芯ギヤ512の回転速度は、第1ケース31の回転速度よりも遅くなる。
【0051】
一方、回動偏芯ギヤ512が固定偏芯ギヤ511の下方に位置する場合には、固定偏芯ギヤ511の回転中心である中心軸Oから、固定偏芯ギヤ511と回動偏芯ギヤ512との噛み合わせまでの距離が長く、回動偏芯ギヤ512の回転中心である中間軸Omから噛み合わせまでの距離が短い。これにより、回動偏芯ギヤ512が固定偏芯ギヤ511の下方に位置する場合には、回動偏芯ギヤ512の回転速度は、第1ケース31の回転速度よりも速くなる。
【0052】
このため、回動偏芯ギヤ512は、固定偏芯ギヤ511の上方において、第1ケース31の回転速度よりも遅い速度で、中間軸Omを中心として自転する。また、回動偏芯ギヤ512は、固定偏芯ギヤ511の下方において、第1ケース31の回転速度よりも速い速度で、中間軸Omを中心として自転する。
【0053】
すなわち、固定偏芯ギヤ511および回動偏芯ギヤ512は、動力入力軸41からの回転動力を、中心軸Oの上方において遅くするとともに、中心軸Oの下方において速くするように不等速比変換する不等速比変換部51aを構成する。第1回動ギヤ513は、回動偏芯ギヤ512とともに回転する。これにより、不等速比変換部51aにおいて不等速比に変換された回転動力は、第1回動ギヤ513に入力される。
【0054】
ここで、回動偏芯ギヤ512の第1ケース31に対する回転速度が、中心軸Oの真上(上死点)において、第1ケース31の回転速度の(1-α)倍となり、中心軸Oの真下(下死点)において、第1ケース31の回転速度の(1+β)倍となるものとする。なお、αおよびβは定数であり、0<α<1および0<β<1である。
【0055】
このとき、第1ケース31の回転速度をvとすると、回動偏芯ギヤ512および第1回動ギヤ513の第1ケース31に対する回転速度は、上死点においてv(1-α)であり、上死点から前方を通って下死点に向かうにつれて増速し、下死点においてv(1+β)となり、下死点から後方を通って上死点に向かうにつれて減速する。このため、回動偏芯ギヤ512は、中心軸Oの前方および後方の所定位置において、第1ケース31の回転速度vと同じとなる。
【0056】
なお、本実施形態では、不等速比変換部51aは、動力入力軸41から3つの第1回動ギヤ513に動力を不等速比で伝達するために、1つの固定偏芯ギヤ511と3つの回動偏芯ギヤ512によって3対の偏芯ギヤを有していた。しかしながら、不等速比変換部51aは、複数方向に分岐して回転動力の不等速比変換を行うことができれば、偏芯ギヤ以外の構成を有していてもよい。不等速比変換部51aは、例えば、3対の非円形ギヤを有していてもよい。その場合、不等速比変換部51aは、回転動力が入力される1つの第1非円形ギヤと、第1非円形ギヤと噛み合う3つの第2非円形ギヤとにより構成される。
【0057】
第2回動ギヤ514は、第1ケース31に対して、第1軸O1を中心として回動可能に支持されている。第2回動ギヤ514は、第1回動ギヤ513と噛み合う。第1回動ギヤ513と第2回動ギヤ514とのギヤ歯数比は2:1であり、速度伝達比は1:2である。このため、第2回動ギヤ514の第1ケース31に対する第1軸O1周りの時計回りの回転速度は、第1回動ギヤ513の第1ケース31に対する中間軸Om周りの反時計回りの回転速度の2倍となる。すなわち、第2回動ギヤ514の第1ケース31に対する回転速度は、上死点において2v(1-α)であり、下死点において2v(1+β)となる。
【0058】
第2回動ギヤ514は、第1出力軸42に固定されている。これにより、第1出力軸42は、第2回動ギヤ514とともに、第1軸O1を中心として、動力入力軸41から第1ケース31に入力された回転動力の逆向きの回転、かつ、2倍の回転速度で第1ケース31に対して回転する。
【0059】
すなわち、第1回動ギヤ513および第2回動ギヤ514は、不等速比変換部51aから第1回動ギヤ513に出力された回転動力を、逆向きの回転、かつ、2倍の回転速度に変換し、第1出力軸42へ出力する速度比変換部51bを構成する。速度比変換部51bにおいて速度比が変換された回転動力は、第1出力軸42に入力される。このように、第1動力変換機構51は、不等速比変換部51aと速度比変換部51bとからなる。
【0060】
第2ケース32は、第1出力軸42に固定されている。これにより、第1動力変換機構51から出力された回転動力により、第2ケース32が回転する。これにより、第2ケース32は、第1ケース31に対して、第1軸O1を中心として時計回りに回転する。このとき、第2ケース32の平均回転速度は第1ケース31の回転速度の2倍である。したがって、第1ケース31がチェーンケース160に対して反時計回りに1回転する間に、第2ケース32は第1ケース31に対して時計回りに2回転する。その結果、第1ケース31がチェーンケース160に対して反時計回りに1回転する間に、第2ケース32は、チェーンケース160に対して時計回りに1回転する。
【0061】
また、第2ケース32の第1ケース31に対する回転速度は、第2ケース32が中心軸Oの真上(上死点)に配置された時が最も遅く、第2ケース32が中心軸Oの真下(下死点)に配置された時が最も速い。
【0062】
具体的には、第1ケース31がチェーンケース160に対して反時計回りに回転速度vで回転するのに対して、第2ケース32は第1ケース31に対して、時計回りに、上死点では回転速度2v(1-α)、下死点では回転速度2v(1+β)で回転する。このため、第2ケース32は、チェーンケース160に対しては、時計回りに、上死点では回転速度v(1-2α)、下死点では回転速度v(1+2β)で回転することとなる。
【0063】
図6は、第2ケース32の内部に配置された第2動力変換機構52の側面図である。図6に示すように、第2ケース32に収容された第2動力変換機構52は、第3回動ギヤ521と、アイドルギヤ522と、第4回動ギヤ523とを有する。
【0064】
第3回動ギヤ521は、第1ケース31に対して固定されている。このため、第3回動ギヤ521は、第1軸O1を中心として、第2ケース32に対して回転する。このとき、第2ケース32は第1ケースに対して時計回りに回転しているため、第3回動ギヤ521は第2ケース32に対して反時計回りに回転する。第3回動ギヤ521の第2ケース32に対する回転速度は、回転方向は逆であるが、第2ケース32の第1ケース31に対する回転速度と同じである。
【0065】
このため、第3回動ギヤ521の第2ケース32に対する回転速度は、第2ケース32が中心軸Oの真上(上死点)に配置された時が最も遅く、第2ケース32が中心軸Oの真下(下死点)に配置された時が最も速い。すなわち、第3回動ギヤ521は、第2ケース32に対して、反時計回りに、上死点では回転速度2v(1-α)、下死点では回転速度2v(1+β)で回転する。
【0066】
アイドルギヤ522は、第2ケース32に対して回転可能に支持されたギヤである。アイドルギヤ522は、第3回動ギヤ521および第4回動ギヤ523と噛み合う。これにより、アイドルギヤ522は、第3回動ギヤ521の回転動力を回転方向を変更せずに第4回動ギヤ523へと伝達する。
【0067】
第4回動ギヤ523は、第2ケース32に対して回転可能に支持されたギヤである。第4回動ギヤ523は、第2ケース32とともに中心軸Oを中心として公転する第2軸O2を中心として、第2ケース32に対して回転する。第3回動ギヤ521と第4回動ギヤ523とのギヤ歯数比は1:2であり、速度伝達比は2:1である。このため、第4回動ギヤ523の第2ケース32に対する第2軸O2周りの反時計回りの回転速度は、第3回動ギヤ521の第2ケース32に対する第1軸O1周りの反時計回りの回転速度の1/2倍となる。
【0068】
すなわち、第1ケース31が1回回転する間に、第4回動ギヤ523は第2ケース32に対して1回回転する。また、第4回動ギヤ523の第2ケース32に対する回転速度は、第2ケース32が中心軸Oの真上(上死点)に配置された時が最も遅く、第2ケース32が中心軸Oの真下(下死点)に配置された時が最も速い。具体的には、第4回動ギヤ523は、第2ケース32に対して、反時計回りに、上死点では回転速度v(1-α)、下死点では回転速度v(1+β)で回転する。
【0069】
第4回動ギヤ523は、第2出力軸43と固定されている。これにより、第2出力軸43は、第4回動ギヤ523とともに、第2軸O2を中心として動力入力軸41から第1ケース31に入力された回転動力と同じ向きの回転であって、平均速度が同じ、かつ、上死点において遅く、下死点において速くなる不等速比で、第2ケース32に対して回転する。
【0070】
ここで、上述の通り、第2ケース32は、チェーンケース160に対して、時計回りに、上死点では回転速度v(1-2α)、下死点では回転速度v(1+2β)で回転する。また、第2出力軸43および第4回動ギヤ523は、第2ケース32に対して、反時計回りに、上死点では回転速度v(1-α)、下死点では回転速度v(1+β)で回転する。これにより、第2出力軸43は、チェーンケース160に対して、前方および後方に回転速度が0となる点があり、上死点では時計回りに回転速度-αv、下死点では時計回りに回転速度βvで回動する。すなわち、第2出力軸43は、チェーンケース160に対して、後方から上死点を通って前方へ向かう間は反時計回りに回動し、前方から下死点を通って後方へ向かう間は時計回りに回動することで、第1ケース31が1回転する間に1往復揺動する。
【0071】
図7は、植え付け部33の側面図である。なお、図7では、外側から目視できない部材ついても示されている。植え付け部33は、植え付けカップ230と、アーム331と、カム332と、カム従動部333と、牽引力伝達部334と、カップ開閉機構335とを有する。
【0072】
アーム331は、植え付けカップ230を支持するための部材である。アーム331は、前後に延びる方向に配置されている。アーム331の先端部(後端部)には、カップ開閉機構335を介して植え付けカップ230が開閉可能に取り付けられている。アーム331は、第2ケース32に対して回動可能に支持されている。具体的には、アーム331の基端部(先端部)は、第2出力軸43に固定される。これにより、動力入力軸41から第1ケース31に回転動力が入力され、第1ケース31が回転すると、植え付け部33は第2ケース32の第2軸O2の軌道に沿って中心軸O周りを公転する。このとき、アーム331は、チェーンケース160に対して第2軸O2を中心として揺動する。
【0073】
図8および図9は、移植部23の要部と、移植部23の一部の軌道を示した図である。具体的には、図8および図9には、第1動力変換機構51および第2動力変換機構52の各部と、第2ケース32と、植え付け部33と、中間軸Omの軌道T1と、第1軸O1の軌道T2と、植え付けカップ230の上端部中央の軌道Tuと、植え付けカップ230の下端部の軌道Tbとが示されている。
【0074】
図8および図9には、植え付け部33の位置として、上死点P1、前上点P2、前下点P3、下死点P4、後下点P5、および後上点P6の6つの位置が示されている。上死点P1は、第1軸O1が中心軸Oの真上の上死点にある場合の植え付け部33の位置である。前上点P2、前下点P3、下死点P4、後下点P5、および後上点P6はそれぞれ、上死点P1から、第1軸O1が中心軸Oを中心として60°、120°、180°、240°および300°時計回りに回転した位置にある場合の植え付け部33の位置である。
【0075】
図10は、植え付けカップ230の上端部中央の軌道Tuと、植え付けカップ230の下端部の軌道Tbとを示した図である。図10には、各軌道Tu,Tb上に、上死点P1から、第1ケース31が15°回転する毎の植え付けカップ230の上端部中央および下端部の位置が黒点で示されている。そして、黒点で示された各位置における、植え付けカップ230の上端部中央と下端部とを繋ぐ点線をカップ姿勢線Tpと称する。上死点P1、前上点P2、前下点P3、下死点P4、後下点P5および後上点P6のそれぞれにおけるカップ姿勢線Tpの符号をそれぞれTp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5およびTp6で示している。
【0076】
図8および図9に示すように、アーム331は、上死点P1および下死点P4において略水平となるように調整されている。したがって、図10に示すように、上死点P1および下死点P4におけるカップ姿勢線Tp1,Tp4はいずれも略鉛直に延びる。
【0077】
アーム331は、第2出力軸43とともに、後方から上死点を通って前方へ移動する際には、第2軸O2を中心として反時計回りに回動する。図8および図9からも、後上点P6、上死点P1、前上点P2の順に、アーム331が第2軸O2を中心として反時計回りに回動することがわかる。
【0078】
また、アーム331は第2出力軸43とともに、前方から下死点を通って後方へ移動する際には、第2軸O2を中心として時計回りに回動する。図8および図9からも、前下点P3、下死点P4、後下点P5の順に、アーム331が第2軸O2を中心として時計回りに回動することがわかる。
【0079】
これにより、図8および図9に示すように、植え付けカップ230は、上死点P1から前方を通って下死点P4へ向かう間は、植え付けカップ230の下端部が、植え付けカップ230の上端部中央よりも後方へ向くように後傾している。このため、図10において、カップ姿勢線Tp2,Tp3は、下方へ向かうにつれ後方へ延びている。
【0080】
また、図8および図9に示すように、下死点P4から後方を通って上死点P1へ向かう間は、植え付けカップ230の下端部が、植え付けカップ230の上端部中央よりも前方へ向くように前傾している。このため、図10において、カップ姿勢線Tp4,Tp5は、下方へ向かうにつれ前方へ延びている。
【0081】
これにより、図10に示すように、植え付けカップ230の先端部の軌道Tbは、植え付けカップ230の上端部中央の軌道Tuと比べて、全体的に前後の幅が小さいとともに、下死点付近における前後の幅がさらに小さい。また、植え付けカップ230の下端部は、下死点付近において、圃場100に対して前方から後方へ向かって刺さるとともに、後方へと抜けていく。
【0082】
カム332は、略円形の板状のカムである。カム332は、アーム331に対して、第2軸O2を中心として回転可能に支持されている。カム332は、第2ケース32に対して固定され、第2ケース32とともに回転する。このため、カム332は、アーム331に対して、時計回りに、上死点では回転速度v(1-α)、下死点では回転速度v(1+β)で回転する。このため、第1ケース31が1回転する間に、カム332は、アーム331に対して1回転する。カム332は、周方向の一部が、他の部分よりも長径な押圧部332aを有する。
【0083】
カム従動部333は、くの字状の板状部材である本体部333aと、本体部333aに固定された円柱状のカムフォロワ333bとを有する。本体部333aの一端333cは、アーム331に対して回動可能に固定されている。本体部333aの他端333dは、牽引力伝達部334の一端と固定されている。カムフォロワ333bは、本体部333aの中央付近に固定されている。また、カムフォロワ333bは、カム332の外周部と対向して配置される。
【0084】
本体部333aの他端333dは、牽引力伝達部334を介して、カップ開閉機構335の後述する付勢部材によって後方に付勢されている。カム332は回転するため、回転とともに、カムフォロワ333bと対向する外周部の周方向の位置が移動する。カムフォロワ333bと対向するカム332の外周面が、押圧部332aでない箇所である場合には、カム332の外周面とカムフォロワ333bとの間には僅かな隙間が生じる。回転により、カムフォロワ333bと対向するカム332の外周面が、押圧部332aでない箇所から押圧部332aがカムフォロワ333bと対向する位置へと移動すると、カム332はカムフォロワ333bを径方向外側に押圧する。これにより、カムフォロワ333bが前方かつ上方へと押し上げられる。すると、本体部333aの他端も前方かつ上方へと押し上げられる。その結果、牽引力伝達部334の一端は前方かつ上方へ牽引される。
【0085】
牽引力伝達部334は、カム従動部333からの牽引力をカップ開閉機構335に伝達する。牽引力伝達部334の一端(前端)は、カム従動部333の本体部333aの他端333dに取り付けられている。また、牽引力伝達部334の他端(後端)は、カップ開閉機構335に取り付けられている。牽引力伝達部334は、例えば、長さ調整可能な金属ワイヤーや金属棒であってもよい。
【0086】
カップ開閉機構335は、植え付けカップ230を開閉する。植え付けカップ230は、前側カップ231および後側カップ232を有する。植え付けカップ230は、閉状態においては、前側カップ231と後側カップ232とが、上端から下端まで近接することで、上部が開口し、下部が縮径して閉塞した逆円錐面状となる。このため、閉状態において、植え付けカップ230の上方からポット苗を受け渡し、植え付けカップ230内にポット苗を保持することができる。
【0087】
植え付けカップ230は、開状態においては、前側カップ231および後側カップ232の下端部同士が前後方向に離れる。これにより、植え付けカップ230内に保持していたポット苗を、植え付けカップ230の下方へと引き渡すことができる。
【0088】
カップ開閉機構335は、前側カップ保持部335aと、後側カップ保持部335bと、付勢部材(図示省略)とを有する。前側カップ保持部335aは、前側カップ231の上部と固定され、第1カップ回動軸C1を中心として回動可能である。後側カップ保持部335bは、後側カップ232の上部と固定され、第2カップ回動軸C2を中心として回動可能である。付勢部材は、前側カップ保持部335aの下端部と後側カップ保持部335bの下端部とを接続し、前側カップ保持部335aの下端部と後側カップ保持部335bの下端部とを、前後方向に互いに近づく方向に付勢する。すなわち、付勢部材は、植え付けカップ230が閉状態となるように付勢する。
【0089】
また、前側カップ保持部335aの下端部には、牽引力伝達部334の他端が接続されている。前側カップ保持部335aの上端部には、後側カップ保持部335bの上端部に設けられた切り欠き335dに嵌まる突起335cを有する。牽引力伝達部334の一端がカム従動部333により前方に引っ張られると、牽引力伝達部334の他端が前側カップ保持部335aの下端部を前方に引っ張る。これにより、前側カップ保持部335aが第1カップ回動軸C1を中心として時計回り回動すると、突起335cが下方に移動する。その結果、切り欠き335d突起335cとともに下方に移動することにより、後側カップ保持部335bが第2カップ回動軸C2を中心として反時計回りに回動し、植え付けカップ230が開状態となる。
【0090】
動力入力軸41から回転動力が入力され、第1ケース31が回転すると、第1ケース31が1回転する間に、植え付け部33は第2ケース32とともに中心軸O周りを公転する。同時に、第1ケース31が1回転する間に、アーム331に対してカム332が1回転する。
【0091】
植え付け部33が下死点に配置された直後に、押圧部332aがカムフォロワ333bと対向する。これにより、押圧部332aがカムフォロワ333bを押圧することで、カムフォロワ333bが第2軸O2から離れる方向に移動する。その結果、カム従動部333が、牽引力伝達部334を前方へ引く。これにより、植え付けカップ230が開状態となる。
【0092】
その後、植え付け部33が上死点に到達する前に、カム332の回転によりカムフォロワ333bがカム332の押圧部332aと接触しなくなる。これにより、カム従動部333による牽引力伝達部334の牽引が停止するとともに、植え付けカップ230が閉状態となる。
【0093】
これにより、植え付け部33が下死点に配置され、植え付けカップ230が閉状態で圃場100に接触して穴を形成し始めたところで、植え付けカップ230が開く。これにより、植え付けカップ230が穴を前後方向に拡げつつ、当該穴の内部に植え付けカップ230内に保持されていたポット苗を落下させる。そして、開状態のまま、ポット苗になるべく接触しないように植え付けカップ230を上昇させる。そして、植え付け部33が、上死点付近において苗搬送部22からポット苗を受け取る前に、植え付けカップ230を閉状態とする。
【0094】
以上の構成により、動力入力軸41から入力された回転動力により、移植部23が、植え付けカップ230によるポット苗の植え付けを行う。
【0095】
植え付けカップによりポット苗を圃場に移植する走行式の移植機において、移植機の走行速度を遅くすること無く植え付けピッチを狭くしたい場合や、同じ植え付けピッチで移植機の走行速度を速くしたい場合には、例えば、単に植え付けカップの移動速度を大きくすることが考えられる。しかしながら、単に植え付けカップの移動速度を大きくすると、ポット苗の自由落下が植え付けカップの下降速度に追いつけず、ポット苗が植え付けカップ内で浮き上がってしまうという問題が生じる。
【0096】
そこで、この移植機1では、左右の移植部23のそれぞれが、複数(3つ)の植え付けカップ230を有する。複数の植え付けカップ230で順次にポット苗の植え付けを行うことにより、植え付けピッチを狭くすることができる。ただし、植え付けカップ230が複数ある場合、特に、植え付けカップ230が3つ以上ある場合には、全ての植え付けカップ230を互いに接触しないように、各植え付けカップ230を上方の苗受け取り位置と、下方の苗植え付け位置との間を交互に移動させなければならない。そこで、この移植機1では、植え付けカップ230を有する植え付け部33が中心軸Oの周囲を公転する構成としている。
【0097】
しかしながら、植え付け部33が単に中心軸Oを中心として円形に等速回転すると、下死点付近で植え付けカップ230が圃場に接触している状態で移植機1全体が前進するため、植え付けカップ230が前方へ引きずられ、植え付けカップ230が傾いてポット苗を圃場100へうまく落下させられなくなったり、植え付け穴が前後に延びたりするという問題が生じる。
【0098】
本実施形態の移植機1では、図8および図9に示すように、左側の移植部23を左側から見た場合、第2ケース32が第1軸O1とともに中心軸Oの周囲を反時計回りに1回転公転する間に、第2ケース32は第1軸O1の周囲を時計回りに1回転している。これにより、第2ケース32の第2軸O2の軌道が、左側から見て、円形ではなく、上下に長く、前後に短い略楕円状となる。これにより、圃場100へポット苗を植え付ける植え付け部33の下死点付近での前後方向の動きを小さくできる。これにより、植え付け部33を複数有する場合に、植え付け部33同士が前後に重なってすれ違う位置において、植え付け部33同士が接触せずにすれ違える前後方向の間隔を保ちつつ、植え付けカップ230の下死点付近での前後方向の動きを小さくできる。
【0099】
また、この移植機1では、第2ケース32には、動力入力軸41から入力された回転動力が、第1動力変換機構51によって、単なる逆向きの2倍ではなく、不等速比変換後に逆向きの2倍となって伝達されている。このため、第2ケース32は、中心軸Oおよび動力入力軸41の上側では遅く、下側では速く回転する。これにより、第2軸O2および第2出力軸43の軌道が、中心軸Oおよび動力入力軸41の上側では前後に広く、下側では前後に細くなる。その結果、図8図10に示すように、植え付けカップ230の上端部中央の軌道Tuも、第2軸O2および第2出力軸43の軌道と同様に、中心軸Oおよび動力入力軸41の上側では前後に広く、下側では前後に細くなる。このように、第1動力変換機構51によって、植え付けカップ230の下死点付近での前後方向の動きをさらに小さくできる。
【0100】
また、この移植機1では、植え付け部33には、第2ケース32に入力された回転動力が、第2動力変換機構52によって、第2ケース32の回転方向と逆向きの1/2倍となって伝達されている。これにより、左側の移植部23を左側から見た場合、植え付け部33は、第2軸O2を中心として揺動する。その結果、図8図10に示すように、植え付けカップ230の下端部の軌道Tbは、植え付けカップ230の上端部中央の軌道Tuと比べて、さらに、中心軸Oおよび動力入力軸41の下側において前後に細くなる。このように、第1動力変換機構51と第2動力変換機構52とを組み合わせることによって、植え付けカップ230の下端部の下死点付近での前後方向の動きをさらに小さくできる。
【0101】
<2.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。

上記の実施形態の移植装置は、1つの移植部が3つの植え付けカップを有した。すなわち、1つの移植部が、3つの第2ケースおよび3つの植え付け部を有した。しかしながら、本発明の移植装置はこれに限られない。1つの移植部が有する植え付けカップの数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。すなわち、1つの移植部有する第2ケースおよび植え付け部の数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0102】
また、上記の実施形態の移植機は、左右2条分のポット苗を同時に移植できる、いわゆる2条植の移植機であった。そのため、上記の実施形態の移植機に搭載された移植装置は、左右2つの移植部を有する2条植の移植装置であったが、本発明の移植装置は、移植部を1つのみ有する1条植のものであってもよい。また、本発明の移植機は、2条植には限られない。例えば、1条植の他に、2条植の移植装置を複数搭載した4条植、6条植、および8条植の移植機に、本発明を適用してもよい。
【0103】
また、上記の実施形態の移植機は、作業者が移植機に乗り込んで操作を行う乗用式の移植機であったが、本発明はこれに限られない。本発明の移植機は、移植部が自動走行する走行部に搭載され、作業者が歩行しつつ走行部を操作する歩行式の移植機であってもよい。
【0104】
また、移植機の細部の構成については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 :移植機
20 :移植装置
23 :移植部
31 :第1ケース
32 :第2ケース
33 :植え付け部
41 :動力入力軸
42 :第1出力軸
43 :第2出力軸
51 :第1動力変換機構
51a :不等速比変換部
51b :速度比変換部
52 :第2動力変換機構
160 :チェーンケース(固定ケース)
230 :植え付けカップ
331 :アーム
511 :固定偏芯ギヤ(第1偏芯ギヤ)
512 :回動偏芯ギヤ(第2偏芯ギヤ)
O :中心軸
O1 :第1軸
O2 :第2軸
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
図10
図11