IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧

特開2025-107098コイル部品の製造方法、コイル部品、コイル部品中間体、送電装置、受電装置、及び電力伝送システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025107098
(43)【公開日】2025-07-17
(54)【発明の名称】コイル部品の製造方法、コイル部品、コイル部品中間体、送電装置、受電装置、及び電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/04 20060101AFI20250710BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20250710BHJP
   H01F 41/00 20060101ALI20250710BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20250710BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20250710BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20250710BHJP
   H02J 50/70 20160101ALI20250710BHJP
【FI】
H01F41/04 A
H01F38/14
H01F41/00 C
H01F27/30 130
H01F41/12 C
H02J50/10
H02J50/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000882
(22)【出願日】2024-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】荒川 茜
【テーマコード(参考)】
5E043
5E044
5E062
【Fターム(参考)】
5E043AB02
5E043FA07
5E044AD09
5E062DD01
5E062FF02
(57)【要約】
【課題】コイル部品の厚みのバラつき及び反りの発生を抑制する。
【解決手段】一実施の形態に係るコイル部品10の製造方法では、板状の本体部分101と、本体部分の表面から突出する渦巻形状の凸部とを有し、前記凸部の先端から凹み、前記凸部がなす渦巻形状の中心側に位置する前記凸部の内側面及びその反対側の外側面から開放する一つ又は複数の切欠きが形成される金型が準備される。前記凸部に沿うように、前記金型の前記本体部分の表面に渦巻形状の平面コイルが設置される。前記平面コイル及び前記金型を覆うように溶融状態の成形材料が設置される。そして、成形材料を硬化させることにより、平面コイル11を保持する第1コイル保持部材20が作製される。
【選択図】図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の本体部分と、前記本体部分の表面から突出する渦巻形状の凸部とを有し、前記凸部の先端から凹み、前記凸部がなす渦巻形状の中心側に位置する前記凸部の内側面及びその反対側の外側面から開放する一つ又は複数の切欠きが形成される金型を準備する工程と、
前記凸部に沿うように、前記金型の前記本体部分の表面に渦巻形状の平面コイルを設置する工程と、
前記平面コイル及び前記金型を覆うように溶融状態の成形材料を設置する工程と、
前記成形材料を硬化させることにより、前記凸部に対応する渦巻形状の溝が形成されるとともに、前記溝における前記切欠きに対応する位置に、前記溝を部分的に埋めて前記溝を分断するか又は前記溝の深さを部分的に浅くする隆起部が形成される第1コイル保持部材と、前記第1コイル保持部材に一体化された前記平面コイルとからなる中間体を作製する工程と、を備える、コイル部品の製造方法。
【請求項2】
前記金型に複数の前記切欠きが形成され、
複数の前記切欠きには、前記凸部がなす渦巻形状の径方向又は前記径方向と平行な方向に並ぶ複数の前記切欠きからなる一つ又は複数の切欠き群が含まれる、請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項3】
複数の前記切欠きには、前記凸部がなす渦巻形状の中心周りを周回する周方向に一定の角度毎に配置され、それぞれが前記径方向に並ぶ複数の前記切欠き群が含まれる、請求項2に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項4】
前記凸部がなす渦巻形状の軸方向に見た際、前記凸部は、直線状に延びる複数の直線部を含み、隣り合う前記直線部のうちの一方に対して他方が折れ曲がるように複数の前記直線部を順次接続することで、渦巻形状を形成し、
前記切欠きは、前記直線部の両端の間に形成される、請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項5】
前記凸部の体積と、全ての前記切欠きの体積とを合算した基準体積に対する、全ての前記切欠きの体積の割合が10%未満になる前記金型が用いられる、請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項6】
前記第1コイル保持部材の前記溝を充填し、且つ前記第1コイル保持部材に保持された前記平面コイルを覆うように、磁性を有する磁性体と樹脂とを含む溶融状態の磁性体樹脂材料を前記中間体に設置する工程と、
前記磁性体樹脂材料を硬化させることにより、前記平面コイルがなす渦巻形状の径方向に延び拡がる板状のスペーサ部分と、前記磁性体樹脂材料のうちの前記溝への充填部分から形成され、前記スペーサ部分から突出する渦巻形状の壁部分とを含む第2コイル保持部材を作製する工程と、をさらに備え、
前記壁部分における前記第1コイル保持部材の前記隆起部に対応する位置に、前記スペーサ部分の側にへこむ凹部が形成される、請求項1乃至5のいずれかに記載のコイル部品の製造方法。
【請求項7】
複数のフェライト板を敷き詰めて構成される磁気シールド部材に、第2コイル保持部材を重ねる工程をさらに備え、
隣り合う前記フェライト板の間の境界と前記壁部分の前記凹部とが重なるように、前記金型における前記切欠きの位置及び複数の前記フェライト板の形状が調整される、請求項6に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項8】
渦巻形状の溝が形成されるとともに、前記溝を部分的に埋めて分断するか又は前記溝の深さを部分的に浅くする隆起部が形成される第1コイル保持部材と、
前記第1コイル保持部材における前記溝の無い部分に配置され、前記溝に沿って延びる渦巻形状を有する平面コイルと、
板状のスペーサ部分と、前記スペーサ部分から突出する渦巻形状の壁部分とを含み、前記第1コイル保持部材との間に前記平面コイルを挟み込む第2コイル保持部材と、を備え、
前記壁部分は、前記平面コイルを通過して前記溝に収容され、
前記壁部分は、前記隆起部に対応する位置に、前記スペーサ部分の側にへこむ凹部を有する、コイル部品。
【請求項9】
渦巻形状の溝が形成されるとともに、前記溝を部分的に埋めて分断するか又は前記溝の深さを浅くする隆起部が形成される第1コイル保持部材と、
前記第1コイル保持部材における前記溝の無い部分に配置され、前記溝に沿って延びる渦巻形状を有する平面コイルと、を備える、コイル部品中間体。
【請求項10】
請求項8に記載のコイル部品を備える、送電装置。
【請求項11】
請求項8に記載のコイル部品を備える、受電装置。
【請求項12】
送電装置と、受電装置とを備え、
前記送電装置及び前記受電装置のうちの少なくともいずれかが、請求項8に記載のコイル部品を備える、電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル部品の製造方法、コイル部品、コイル部品中間体、送電装置、受電装置、及び電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で電力を伝送するワイヤレス電力伝送システムが普及しつつある。
【0003】
例えば、コイルを含む共振回路に高周波の電流を流すことで、非接触で電力を伝送するシステムが知られている。
【0004】
コイルに高周波の電流が流される場合、表皮効果が生じ得る。表皮効果は、交流抵抗を増大させるため、電力伝送時の伝送効率を低下させる原因になる。これを考慮し、コイルをリッツ線で形成した場合には、表皮効果が抑制され得るため、伝送効率の低下が抑制され得る。ただし、リッツ線は、多数のエナメル線を撚り合わせて形成されるため、製造コストが高く且つ製造に手間がかかり、コイルのサイズが大きくなる程、製造の手間が大きくなる。
【0005】
一方で、渦巻形状且つ板状で、導線断面が矩形状の平面コイルを採用する技術も知られている(特許文献1参照)。このような平面コイルは、例えば板材から打ち抜かれることで形成され得る。したがって、このような平面コイルによれば、コイルのサイズによらず製造効率の向上が図れる。また、コイルを組み込む装置の薄型化及び軽量化の点でも有利になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-47614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、平面コイルを構成するターン部の間に、ターン部の間から平面コイルの軸方向に突出する磁性体を設ける構造を開示する。この構造によれば、Q値等の性能が向上し得る。一方で、上述のように平面コイルを板材から形成する場合、平面コイルは反りやすくなる。そこで、平面コイルを樹脂等の成形材料からなる板状のコイル保持部材で保持し、反りを抑制してもよい。ここで、以上に説明したような磁性体と、コイル保持部材とを併用する場合には、コイル保持部材に磁性体収容させる溝が形成されてもよい。
【0008】
上記磁性体の突出部分を収容する溝をコイル保持部材に設ける場合、溝は、渦巻形状の平面コイルに沿う渦巻形状に形成されてもよい。この場合、例えば、板状の基部と、基部から突出する渦巻形状の凸部とを有する金型を用いてコイル保持部材を形成し、凸部により溝を形成してもよい。
【0009】
しかしながら、以上のようにコイル保持部材を形成する場合、凸部が連続して渦巻形状に延びることで、成形材料の流動、特に径方向での流動が損なわれる。これに起因して、コイル保持部材の厚みがバラつくことがある。また、コイル保持部材に渦巻形状の連続的に延びる溝が形成されると、成形材料の硬化中にコイル保持部材が反り易くなる。コイル保持部材の厚みのバラつきや反りは、例えば不要な隙間を形成し得るため、完成した製品の仕上がりを損なわせる虞がある。
【0010】
本開示の課題は、以上の点に鑑みて、コイル部品の厚みのバラつき及び反りの発生を抑制できるコイル部品の製造方法、コイル部品、コイル部品中間体、送電装置、受電装置、及び電力伝送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の実施の形態は、以下[1]~[12]に関連する。
【0012】
[1] 板状の本体部分と、前記本体部分の表面から突出する渦巻形状の凸部とを有し、前記凸部の先端から凹み、前記凸部がなす渦巻形状の中心側に位置する前記凸部の内側面及びその反対側の外側面から開放する一つ又は複数の切欠きが形成される金型を準備する工程と、
前記凸部に沿うように、前記金型の前記本体部分の表面に渦巻形状の平面コイルを設置する工程と、
前記平面コイル及び前記金型を覆うように溶融状態の成形材料を設置する工程と、
前記成形材料を硬化させることにより、前記凸部に対応する渦巻形状の溝が形成されるとともに、前記溝における前記切欠きに対応する位置に、前記溝を部分的に埋めて前記溝を分断するか又は前記溝の深さを部分的に浅くする隆起部が形成される第1コイル保持部材と、前記第1コイル保持部材に一体化された前記平面コイルとからなる中間体を作製する工程と、を備える、コイル部品の製造方法。
【0013】
[2] 前記金型に複数の前記切欠きが形成され、
複数の前記切欠きには、前記凸部がなす渦巻形状の径方向又は前記径方向と平行な方向に並ぶ複数の前記切欠きからなる一つ又は複数の切欠き群が含まれる、[1]に記載のコイル部品の製造方法。
【0014】
[3] 複数の前記切欠きには、前記凸部がなす渦巻形状の中心周りを周回する周方向に一定の角度毎に配置され、それぞれが前記径方向に並ぶ複数の前記切欠き群が含まれる、[2]に記載のコイル部品の製造方法。
【0015】
[4] 前記凸部がなす渦巻形状の軸方向に見た際、前記凸部は、直線状に延びる複数の直線部を含み、隣り合う前記直線部のうちの一方に対して他方が折れ曲がるように複数の前記直線部を順次接続することで、渦巻形状を形成し、
前記切欠きは、前記直線部の両端の間に形成される、[1]乃至[3]のいずれかに記載のコイル部品の製造方法。
【0016】
[5] 前記凸部の体積と、全ての前記切欠きの体積とを合算した基準体積に対する、全ての前記切欠きの体積の割合が10%未満となる前記金型が用いられる、[1]乃至[4]のいずれかに記載のコイル部品の製造方法。
【0017】
[6] 前記第1コイル保持部材の前記溝を充填し、且つ前記第1コイル保持部材に保持された前記平面コイルを覆うように、磁性を有する磁性体と樹脂とを含む溶融状態の磁性体樹脂材料を前記中間体に設置する工程と、
前記磁性体樹脂材料を硬化させることにより、前記平面コイルがなす渦巻形状の径方向に延び拡がる板状のスペーサ部分と、前記磁性体樹脂材料のうちの前記溝への充填部分から形成され、前記スペーサ部分から突出する渦巻形状の壁部分とを含む第2コイル保持部材を作製する工程と、をさらに備え、
前記壁部分における前記第1コイル保持部材の前記隆起部に対応する位置に、前記スペーサ部分の側にへこむ凹部が形成される、[1]乃至[5]のいずれかに記載のコイル部品の製造方法。
【0018】
[7] 複数のフェライト板を敷き詰めて構成される磁気シールド部材に、第2コイル保持部材を重ねる工程をさらに備え、
隣り合う前記フェライト板の間の境界と前記壁部分の前記凹部とが重なるように、前記金型における前記切欠きの位置及び複数の前記フェライト板の形状が調整される、[6]に記載のコイル部品の製造方法。
【0019】
[8] 渦巻形状の溝が形成されるとともに、前記溝を部分的に埋めて分断するか又は前記溝の深さを部分的に浅くする隆起部が形成される第1コイル保持部材と、
前記第1コイル保持部材における前記溝の無い部分に配置され、前記溝に沿って延びる渦巻形状を有する平面コイルと、
板状のスペーサ部分と、前記スペーサ部分から突出する渦巻形状の壁部分とを含み、前記第1コイル保持部材との間に前記平面コイルを挟み込む第2コイル保持部材と、を備え、
前記壁部分は、前記平面コイルを通過して前記溝に収容され、
前記壁部分は、前記隆起部に対応する位置に、前記スペーサ部分の側にへこむ凹部を有する、コイル部品。
【0020】
[9] 渦巻形状の溝が形成されるとともに、前記溝を部分的に埋めて分断するか又は前記溝の深さを浅くする隆起部が形成される第1コイル保持部材と、
前記第1コイル保持部材における前記溝の無い部分に配置され、前記溝に沿って延びる渦巻形状を有する平面コイルと、を備える、コイル部品中間体。
【0021】
[10] [8]に記載のコイル部品を備える、送電装置。
【0022】
[11] [8]に記載のコイル部品を備える、受電装置。
【0023】
[12] 送電装置と、受電装置とを備え、
前記送電装置及び前記受電装置のうちの少なくともいずれかが、[8]に記載のコイル部品を備える、電力伝送システム。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、コイル部品の厚みのバラつき及び反りの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施の形態に係るコイル部品が適用されるワイヤレス電力伝送システムを概略的に示す図である。
図2】一実施の形態に係るコイル部品の斜視図である。
図3図2に示すコイル部品の平面図である。
図4図3のIV-IV線に対応するコイル部品の断面図である。
図5A図2に示すコイル部品を構成する第1コイル保持部材の平面図である。
図5B図2に示すコイル部品を構成する第1コイル保持部材と、第2コイル保持部材及び平面コイルの部分的な斜視図である。
図6A図2に示すコイル部品の製造方法を説明する図であり、製造に使用する金型の平面図である。
図6B図6Aに示す金型の斜視図である。
図7A図2に示すコイル部品の製造方法を説明する図であり、金型に供給される成形材料の流れを説明する図である。
図7B図6Aに示す金型に供給される成形材料の流れを説明する金型の斜視図である。
図8】第1変形例に係るコイル部品の平面図である。
図9】第2変形例に係るコイル部品の平面図である。
図10】第3変形例に係るコイル部品の平面図である。
図11】第4変形例に係るコイル部品の平面図である。
図12】第5変形例に係るコイル部品の平面図である。
図13】第6変形例に係るコイル部品の平面図である。
図14A】第7変形例に係るコイル部品の平面図である。
図14B】第7変形例に係るコイル部品におけるフェライト板の配置を示す図である。
図15】実施の形態及び複数の変形例についての性能評価結果を説明するグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら一実施の形態について説明する。
【0027】
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」などの用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば「シート」は、フィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0028】
<ワイヤレス電力伝送システム>
図1は、一実施の形態に係るコイル部品10が適用されるワイヤレス電力伝送システムSを概略的に示す。まず、一例としてコイル部品10が適用されるワイヤレス電力伝送システムS(以下、電力伝送システムSと略す。)について図1を参照しつつ説明する。
【0029】
電力伝送システムSは、送電装置1と、受電装置2とを備える。送電装置1は、コイル部品10と、高周波電流供給部1Aとを含む。送電装置1におけるコイル部品10は、送電コイルとして機能する。高周波電流供給部1Aは、送電コイルとしてのコイル部品10に高周波電流を供給する。
【0030】
受電装置2は、コイル部品10と、変換部2Aとを含む。受電装置2におけるコイル部品10は、受電コイルとして機能する。変換部2Aは、コイル部品10で生じる高周波電流を整形する。変換部2Aは、高周波電流を直流電流に変換する整流回路などを有する。変換部2Aは、例えば複数のダイオードを含む全波整流回路と、平滑化コンデンサーと、を備えて構成されてもよい。
【0031】
本実施の形態では、送電装置1及び受電装置2のそれぞれがコイル部品10を含む。ただし、送電装置1及び受電装置2のうちの一方のみにコイル部品10が用いられ、他方には異なる形式のコイル部品が用いられてもよい。
【0032】
送電装置1から受電装置2にワイヤレス(非接触)で電力を伝送する際には、送電装置1が、高周波電流供給部1Aから送電コイルとしてのコイル部品10に所定の周波数の高周波電流を供給する。この際、コイル部品10には、電磁誘導により磁界が生じる。そして、この磁界の影響で、受電装置2では、受電コイルとしてのコイル部品10に高周波電流が生じる。すなわち、受電装置2は送電装置1から磁界を受信して又は送電装置1での磁界の影響を受けて、電磁誘導により高周波電流を通流させる。変換部2Aは、この高周波電流を直流電流に変換し、変換した直流電流を例えば図示しないバッテリに供給する。
【0033】
図1に示す電力伝送システムSは、電力伝送方式として、磁界共鳴方式を採用している。ただし、本実施の形態に係るコイル部品10は、電磁誘導方式の電力伝送システムで用いられてもよい。また、電力伝送システムSは、電気自動車にワイヤレスで電力を伝送するシステムとして構成される。この場合、送電装置1は、道路、駐車場などに設置される。受電装置2は、電気自動車に設置される。
【0034】
ただし、電力伝送システムSの用途は、電気自動車への電力伝送に限られるものではない。例えば、電力伝送システムSは、ドローンなどの飛行体、ロボットへの電力伝送に用いられてもよい。また、電力伝送システムSは、海中における潜水艇や、探査ロボットへの電力伝送に用いられてもよい。また、コイル部品10の用途は、ワイヤレス電力伝送システムに限られない。例えば、コイル部品10は、トランス、DC-DCコンバータ、アンテナなどに用いられてもよい。
【0035】
<コイル部品>
図2は、本実施の形態に係るコイル部品10の斜視図である。図3は、コイル部品10の平面図である。図4は、図3のIV-IV線に対応するコイル部品10の断面図である。
【0036】
図2乃至図4を参照し、コイル部品10は、平面コイル11と、第1コイル保持部材20と、第2コイル保持部材30と、第1磁気シールド部材40と、第2磁気シールド部材50と、第1接続端子61と、第2接続端子62と、を備える。
【0037】
平面コイル11は、第1コイル保持部材20と第2コイル保持部材30とに挟み込まれる状態で保持される。図2においては、第1コイル保持部材20が、平面コイル11及び第2コイル保持部材30から分離された状態が示されている。図3においては、第1コイル保持部材20の図示が省略されている。また図2及び図3においては、第2磁気シールド部材50の図示が省略されている。以下、コイル部品10の各部を詳述する。
【0038】
(平面コイル)
図2乃至4に示すように、平面コイル11は渦巻形状に形成されている。詳しくは、平面コイル11は、任意の中心軸線Cの周りで渦巻形状に形成された導電体11Eを含んでいる。渦巻形状とは、旋回するにつれて中心から遠ざかる(あるいは旋回するにつれて中心に近づく)平面曲線の形を意味する。図示された本実施の形態において、渦巻形状は、中心軸線Cに直交する仮想平面上に位置している。
【0039】
以下、軸方向とは、中心軸線C上を延びる方向又は中心軸線Cに平行な方向を意味する。また、径方向とは、中心軸線C上の任意の点を中心として中心軸線Cと直交する平面上に描かれた円の半径方向を意味する。また、周方向とは、中心軸線Cを中心とする円に沿った方向(当該円の周方向)を意味する。
【0040】
導電体11Eは、導電材料から形成される。本実施の形態では、導電体11Eが銅から形成されるが、これに限られない。導電体11Eは、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等で形成されてもよい。本実施の形態では、平面コイル11が導電体11Eのみで構成される。したがって、平面コイル11は銅から形成されるが、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等で形成されてもよい。
【0041】
平面コイル11(導電体11E)は板状である。詳しくは、平面コイル11は、非リッツ線の平面コイルである。図4に示すように、平面コイル11(導電体11E)の渦巻形状の周回方向に直交する方向での導線断面形状は矩形状になっている。
【0042】
平面コイル11は、渦巻形状の中心軸線Cに直交する方向に配列される複数のターン部11nを含む。導電体11Eは、複数のターン部11nにより構成される。複数のターン部11nは、中心軸線Cから径方向の外方に向かって中心軸線Cから次第に離れるように接続される。これにより、複数のターン部11nは全体として渦巻形状をなす。
【0043】
ターン部11nは、基本的には線状の導体部分が環状をなさずに中心軸線Cの周りを360度周回する形状である。いわゆる平面コイルである場合には、ターン部11nの両端部は、径方向にずれる。複数のターン部11nでは、或るターン部11nの径方向の外方の端部に、他のターン部11nの径方向の内方の端部が接続する。これにより、複数のターン部11nが全体として中心軸線Cから離れるように延びていく。径方向の内方とは、当該径方向において中心軸線Cに近づく方向を意味する。また、径方向の外方とは、当該径方向において中心軸線Cから離れる方向を意味する。
【0044】
本実施の形態では、ターン部11nは多角形をなすように周回する。なお、本明細書及び本開示で言う渦巻形状とは、螺旋状に巻いた平面曲線の形を意味する。ここで言う平面曲線には、図示のような折れ線状に曲がりつつ繰り返し周回する平面パターンも含まれる。また、言い換えると、渦巻形状とは、旋回するにつれて中心から遠ざかる(あるいは旋回するにつれて中心に近づく)平面曲線の形を意味する。
【0045】
図示された例では、平面コイル11(導電体11E)は、第1~第8ターン部111~118を含む。第1~第8ターン部111~118は、径方向の内方の位置から外方に向けて、この順に並んでいる。言い換えると、第1ターン部111が径方向の最も内方に位置し、第8ターン部118が径方向の最も外方に位置している。更に言い換えると、第1ターン部111が平面コイル11(導電体11E)の最内周部を形成する。また、第8ターン部118が平面コイル11(導電体11E)の最外周部を形成する。以下において複数のターン部11nのそれぞれに共通となる事項を説明する際には、ターン部11n又はターン部111~118と称す。
【0046】
各ターン部111~118は、上記仮想平面上を延びている。第1~第8ターン部111~118は、この順に連なり、これにより平面コイル11(導電体11E)は渦巻形状を形成している。図示された例では、導電体11Eは全体として八角形状である。導電体11Eは、各ターン部111~118が概ね八角形を成すように巻き回されている。しかしながら、導電体11Eの形状は、これに限られない。導電体11Eは、全体として八角形状以外の多角形状(例えば、四角形状や六角形状、十二角形状)であってもよい。この場合、各ターン部111~118は、八角形以外の多角形(例えば、四角形や六角形、十二角形)を概ね成すように巻き回されていてよい。また、導電体11Eは、全体として円形状であってもよい。この場合、各ターン部111~118は、円形を概ね成すように巻き回されていてよい。
【0047】
各ターン部111~118の一方の端部は、当該ターン部111~118の他方の端部よりも、径方向の内方に位置している。言い換えると、各ターン部111~118の他方の端部は、当該ターン部111~118の一方の端部よりも、径方向の外方に位置している。
【0048】
図3に示すように、各ターン部111~118は、中心軸線Cの周りに配置された複数の直線部st1~st9を含む。直線部st1~st9はそれぞれ、軸方向に見た際に、直線状に延びている。中心軸線Cを中心とする円の周方向に隣り合う直線部st1~st9は、互いに接続されている。各ターン部111~118においては、隣り合う直線部のうちの一方に対して他方が折れ曲がるように複数の直線部st1~st9を順次接続することで、渦巻形状の平面コイル11が形成される。図示された例では、第1~第7ターン部111~117は、第1~第9直線部st1~st9を含む。これに対して、第8ターン部118は、第1~第8直線部st1~st8を含むが、第9直線部st9は含まない。第1~第7ターン部111~117では、第1~第9直線部st1~st9が周方向に沿ってこの順で並んでいる。第8ターン部118では、第1~第8直線部st1~st8が周方向に沿ってこの順で並んでいる。
【0049】
第1直線部st1の第2直線部st2と接続されない側の端部は、各ターン部111~118の径方向の内方の端部を形成する。第1~第7ターン部111~117では、第9直線部st9の第8直線部st8と接続されない側の端部は第1~第7ターン部111~117の径方向の外方の端部を形成する。第9直線部st9は、第1直線部st1の径方向の外方で、第1直線部st1と平行に延びている。第8ターン部118では、第8直線部st8の第7直線部st7と接続されない側の端部が、径方向の外方の端部を形成する。第1~第7ターン部111~117は、それぞれの径方向の外方の端部を、それぞれが径方向の外方で隣り合う第2~第8ターン部118の径方向の内方の端部に接続している。
【0050】
以上に説明した平面コイル11(導電体11E)は、一例として銅板やアルミ板等の金属板から渦巻形状に打ち抜かれて形成される。一方で、平面コイル11は、銅箔やアルミ箔等の金属箔を渦巻形状にエッチングすることでも形成され得る。
【0051】
平面コイル11の半径(中心軸線Cから径方向で最も離れた部分までの距離)は80mm以上でもよく、450mm以下でもよい。コイル部品10が磁界共鳴方式で電気自動車に電力を伝送する電力伝送システムSの送電コイル部品又は受電コイル部品で用いられる場合、平面コイル11の半径は、200mm以上で350mm以下でもよい。
【0052】
平面コイル11(導電体11E)の厚さは、平面コイル11の軸方向に沿って測定される。平面コイル11の厚さ(導電体11Eの厚さ)は、例えば0.1mm以上2.0mm以下でもよく、0.2mm以上1.0mm以下でもよく、0.3mm以上0.7mm以下でもよい。平面コイル11(導電体11E)の厚さは、例えば0.15mm以上0.35mm以下でもよい。磁界共鳴方式で電気自動車に電力を伝送する場合、10kHzから200kHz、特に79kHzから90kHzの高周波電流の周波数域で、1kW以上、望ましくは5kW以上の電力を伝送可能とすることが望ましい。この場合、銅で形成される平面コイル11の厚さは、0.4mm以上であることが好ましい。
【0053】
平面コイル11(導電体11E)の線幅は、特に限られない。ただし、例えば79kHzから90kHzの高周波電流の周波数域で、1kW以上、好ましくは5kW以上の電力を伝送可能とすることを考慮すると、各ターン部111~118の線幅は、2mm以上20mm以下でもよく、2mm以上16mm以下、2mm以上12mm以下、2mm以上8mm以下でもよい。なお、線幅とは、平面コイル11(導電体11E)が周回する方向に直交する断面での平面コイル11(導電体11E)の線状部分の内周面と外周面との間の距離のことを意味する。
【0054】
また、断面形状が矩形となる平面コイル11(導電体11E)のアスペクト比は、平面コイル11(導電体11E)の線幅(各ターン部11nの径方向での幅)を平面コイル11(導電体11E)の厚さで割ることにより定められる。平面コイル11(導電体11E)のアスペクト比は、2以上12以下でもよいし、3以上10以下でもよい。
【0055】
平面コイル11(導電体11E)の厚さ及び線幅の測定は、コイル部品10を軸方向に切断して平面コイル11(導電体11E)を露出させた断面において、平面コイル11(導電体11E)の各部を定規などで測定することにより行ってもよいし、断面画像の解析で行ってもよい。
【0056】
なお、中心軸線Cは、本実施の形態では次のようにして定められる。まず、最内周のターン部111の径方向の内方の端部から最内周のターン部111と相似の形状の線状の仮想ターン部を径方向の内方に渦巻形状をなすように順次描画していく。そして、直径1cm内に収まる仮想ターン部が描画できるまで描画を継続する。そして、直径1cm内に収まる仮想ターン部の径方向の内方の領域を、渦巻形状の周方向及び径方向に直交する方向に通過する線が、中心軸線Cとして定められる。
【0057】
(第1コイル保持部材)
第1コイル保持部材20は、平面コイル11と軸方向で重なり、平面コイル11を保持する部材である。本実施の形態では、第1コイル保持部材20が溶融状態の成形材料を硬化させることにより形成される。上記溶融状態の成形材料は、平面コイル11と接する状態から硬化される。これにより、第1コイル保持部材20は、平面コイル11と一体化されて、平面コイル11を保持する。第1コイル保持部材20と平面コイル11とが一体化された構造体のことを、以下では中間体10Mと呼ぶことがある。
【0058】
コイル部品10では、例えば電力を電送する場合、平面コイル11で生じる磁界を第1保持部材20に対して通過させる。したがって、第1コイル保持部材20は、磁界を妨げないようにするため及び渦電流が発生しないようにするために、非導電性(絶縁性)且つ非磁性であることが好ましい。
【0059】
非導電性(絶縁性)且つ非磁性が好ましい点を考慮し、第1コイル保持部材20の材料は、例えば絶縁性の樹脂であり、繊維強化プラスチックでもよい。より具体的には、第1コイル保持部材20の材料は、ガラス繊維強化ポリアミドでもよい。ただし、第1コイル保持部材20の材料は特に限られない。例えば、ガラス繊維が含まれなくてもよい。また、ポリアミド以外の熱可塑性樹脂又は熱硬化樹脂が用いられてもよい。なお、絶縁性とは、体積抵抗率が、1010Ω・m以上であることを意味する。非磁性とは、磁性を示さないことを意味する。
【0060】
図5Aは、第1コイル保持部材20の平面図である。図5Bは、第1コイル保持部材20の部分的な斜視図を示している。第1コイル保持部材20の平面視における形状は四角形状であり、第1コイル保持部材20は平面コイル11と軸方向で重なる際に、平面コイル11の全体を覆う。
【0061】
図4図5A及び図5Bに示すように、第1コイル保持部材20には、渦巻形状の溝21が形成されている。また、溝21には、溝21を部分的に埋めて溝21を分断するか又は溝21の深さを部分的に浅くする複数の隆起部22が形成されている。溝21は、第1コイル保持部材20における平面コイル11と重なる面からへこむように形成されている。第1コイル保持部材20における平面コイル11と重なる面のうちの溝21が形成されない部分に、平面コイル11を保持する設置領域23が形成されている。
【0062】
詳しくは後述するが、第2コイル保持部材30には平面コイル11を超えて第1コイル保持部材20側に突出する壁部分32が形成される。溝21は、この壁部分32を収容する空間を形成している。壁部分32には、先端からへこむ凹部33が形成されている。第1コイル保持部材20において溝21を埋めて溝21を分断するか又は溝21の深さを浅くする隆起部22は、壁部分32の凹部33内に入り込むように位置する。
【0063】
本実施の形態では、隆起部22が溝21を埋めて溝21を分断している。隆起部22が溝21を埋めて溝21を分断する状態は、隆起部22が溝21の一部を完全に埋めている状態を意味する。隆起部22は溝21の一部の互いに対向する側面間を接続するように形成されている。上記側面間とは、溝21の一部における渦巻形状の中心に近い位置にある側面と、これと向き合う側面との間のことを意味する。隆起部22は溝21によって低下し得る強度及び剛性を補強するリブとして機能し得る。これにより、第1コイル保持部材20が湾曲し難くなり、形状保持性能が向上する。
【0064】
本実施の形態では、図5Aに示すように径方向に並ぶ複数の隆起部22からなる複数の隆起部群22Gが第1コイル保持部材20に形成されている。詳しくは、4つの隆起部群22Gが渦巻形状の周方向に一定の角度(90度)毎に形成されている。ただし、隆起部22の数や位置は特に限られるものではない。
【0065】
上述したように第1コイル保持部材20は溶融状態の成形材料を硬化させることにより形成される。詳しくは後述するが、渦巻形状の凸部102を有する金型100(図6A図6B参照)に溶融状態の成形材料を供給して硬化させることにより、第1コイル保持部材20が形成される。金型100における凸部102には、先端からへこむ切欠き103が形成されている。溝21は凸部102によって形成され、隆起部22は切欠き103によって形成される。ここで、金型100における凸部102の切欠き103は、成形材料の良好な流動性を確保し、成形材料が均一的に金型100上に展開させることを可能とする。これにより、第1コイル保持部材20の仕上がりが良好になる。
【0066】
なお、第1コイル保持部材20における隆起部22は、成形材料の流動性の良好化のために金型100に形成される切欠き103に対応して形成されるものである。しかしながら、隆起部22は、上述したように第1コイル保持部材20において補強の機能を発揮する。そのため、隆起部22は、単なる製造過程の都合で形成されたものではなく、製造過程とは無関係に技術的な効果を発揮するものである。
【0067】
(第2コイル保持部材)
第2コイル保持部材30は、第1コイル保持部材20との間に平面コイル11を挟み込んで、平面コイル11を保持する材である。第2コイル保持部材30は、平面コイル11の軸方向で平面コイル11と重なる。
【0068】
図2乃至図4、及び図5Bに示すように、第2コイル保持部材30は、平面コイル11の径方向に延び拡がる板状のスペーサ部分31と、スペーサ部分31の平面コイル11と重なる面から突出する渦巻形状の壁部分32と、を含む。
【0069】
第2コイル保持部材30は磁性を有し、磁気の透過及び/又は漏れ磁界の抑制の機能を有する。詳しくは、第2コイル保持部材30は磁性を有し且つ絶縁性を有する。コイル部品10で生じる磁界は、平面コイル11の中心軸線Cに対して全方向に広がるように生じる。この際、第2コイル保持部材30は磁性を有することで、広がろうとする磁束線を中心軸線C側に配向できる。また、コイル部品10で生じる磁界がコイル部品10の周辺に位置する周辺部品に到達すると、周辺部品に悪影響が生じる場合がある。そのため、第2コイル保持部材30は、磁力線の周辺部品への到達を抑制するために設けられている。これにより、第2コイル保持部材30は電流の発生に寄与しない漏れ磁界を抑制できる。
【0070】
第2コイル保持部材30は、スペーサ部分31の平面コイル11と重なる面における壁部分32が無い領域で平面コイル11と接する。そして、壁部分32は、平面コイル11を超えてスペーサ部分31から離れる方向である第1コイル保持部材20側に突出する。第2コイル保持部材30では壁部分32も磁性を有する。このような壁部分32は、コイル部品10の結合係数やQ値などの性能を向上させることができる。
【0071】
図4及び図5Bを参照し、壁部分32は、第1コイル保持部材20における溝21に収容される。そして、壁部分32には、先端からスペーサ部分31側にへこむ凹部33が形成されている。壁部分32は、第1コイル保持部材20における隆起部22に対応する位置に、凹部33を有している。そして、第1コイル保持部材20、平面コイル11及び第2コイル保持部材30が一体化された際、隆起部22は壁部分32の凹部33内に入り込むように位置する。凹部33の配置パターンは、隆起部22の配置パターンと同様である。したがって、複数の凹部33には、図3に示すように径方向に並ぶ複数の凹部33からなる複数の凹部群33Gが含まれる。詳しくは、4つの凹部群33Gが渦巻形状の周方向に一定の角度(90度)毎に形成されている。ただし、凹部33の数や位置は特に限られるものではない。
【0072】
ここで、隆起部22の数又は体積が増えると、凹部33の数又は体積が増えることになり、壁部分32の体積が減少する。壁部分32の体積が減少すると、壁部分32による結合係数やQ値などの性能向上効果が低下する。したがって、隆起部22の数又は体積は過剰に大きくなることは望ましくない。また、隆起部22は特定の範囲に集中して形成されることも望ましくない。本件発明者は、鋭意研究の結果、隆起部22が無い状態の溝21の体積に対する、隆起部22の体積の割合は、10%未満となることが望ましいことを見出した。この場合、壁部分32による性能向上効果が良好に得られるとともに、第1コイル保持部材20の良好な成形性、強度、及び剛性が確保され得る。
【0073】
第2コイル保持部材30は、一例として、樹脂を含む保持材料と、磁性体で構成される複数又は無数の磁性体粒子と、を含む。磁性体粒子は、保持材料に保持される。保持材料は絶縁性であり、詳しくは非磁性且つ絶縁性である。なお、絶縁性とは、体積抵抗率が、1010Ω・m以上であることを意味する。
【0074】
第2コイル保持部材30の保持材料を形成するための樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂やポリイミド等の熱硬化性樹脂を採用可能である。また、第2コイル保持部材30を形成するための樹脂として、ナイロンやポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂も採用可能である。また、保持材料は、例えば繊維強化プラスチックを含むか、又は繊維強化プラスチックから形成されてもよい。例えば、保持材料は、ガラス繊維強化ポリアミドを含むか、又はガラス繊維強化ポリアミドから形成されてよい。
【0075】
第2コイル保持部材30の磁性体粒子は、フェライト、特に軟磁性材料のフェライト、ナノ結晶磁性体、ケイ素鋼、電磁軟鉄、及びアモルファス金属のうちのいずれか又は二種以上から形成されてもよい。
【0076】
第2コイル保持部材30の比透磁率は、2.0以上であることが好ましく、2.0以上20.0以下でもよい。第2コイル保持部材30の比透磁率は、5.0以上であることがより好ましく、5.0以上20.0以下でもよい。第2コイル保持部材30の比透磁率は特に限られないが、大き過ぎると第2コイル保持部材30の柔軟性や強度が不所望に損なわれる場合がある。したがって、第2コイル保持部材30の比透磁率は30以下でもよい。
【0077】
(第1磁気シールド部材)
第1磁気シールド部材40は、磁気の透過及び/又は漏れ磁界の抑制のために設けられている。図4に示すように、第1磁気シールド部材40は、第2コイル保持部材30における平面コイル11と重なる面の反対の面に重ねられる。第1磁気シールド部材40は、板状に形成され、平面コイル11の径方向に沿って拡がっている。第1磁気シールド部材40は、軸方向に見て、その外周縁が第2コイル保持部材30及び平面コイル11の外側に位置する大きさを有している。図示された例では、第1磁気シールド部材40は、軸方向に見て四角形状である。
【0078】
第1磁気シールド部材40は磁性体を含む。上述したように、コイル部品10で生じる磁界は、平面コイル11の中心軸線Cに対して全方向に広がるように生じる。この際、第1磁気シールド部材40は磁性を有することで、広がろうとする磁束線を中心軸線C側に配向できる。また、第1磁気シールド部材40は、磁気の周辺部品への到達を抑制する。これにより、第1磁気シールド部材40は電流の発生に寄与しない漏れ磁界を抑制できる。
【0079】
第1磁気シールド部材40は好ましくは軟磁性体を含む。より具体的には、第1磁気シールド部材40はフェライトを含む、好ましくはソフトフェライトを含む。また、第1磁気シールド部材40は、ナノ結晶磁性体を含んでもよい。
【0080】
第1磁気シールド部材40の比透磁率は特に限られないが、100以上であることが好ましく、100以上10000以下でもよい。第1磁気シールド部材40の比透磁率は、1000以上であってもよく、2000以上であってもよく、3000以上であってもよい。第1磁気シールド部材40の比透磁率は8000以下であってもよく、6000以下であってもよく、4000以下であってもよい。
【0081】
図4に示す例では、第1磁気シールド部材40は第2コイル保持部材30に接しているが、これに限られない。第1磁気シールド部材40は、第2コイル保持部材30から離れていてもよい。第1磁気シールド部材40が第2コイル保持部材30から離れるように配置される場合、第1磁気シールド部材40と第2コイル保持部材30との間の距離は特に限定されないが、例えば3mm以下である。なお、第1磁気シールド部材40と第2コイル保持部材30との間の距離が長くなるほど、コイル部品10からの熱が放熱されづらくなりコイル部品10が高温になる虞がある。このため、第1磁気シールド部材40と第2コイル保持部材30との間の距離は、1mm以下であることが好ましい。
【0082】
(第2磁気シールド部材)
第2磁気シールド部材50は、第1磁気シールド部材40における第2コイル保持部材30と重なる面の反対の面に重ねられる。第2磁気シールド部材50は、板状に形成され、平面コイル11の径方向に沿って拡がっている。第2磁気シールド部材50は、軸方向に見て、その外周縁が第2コイル保持部材30及び平面コイル11の外側、および第1磁気シールド部材40の外側に位置する大きさを有している。図示された例では、第1磁気シールド部材40は、軸方向に見て四角形状である。
【0083】
第2磁気シールド部材50は非磁性で且つ導電性を有する。これにより、第2磁気シールド部材50は、磁気の透過及び/又は漏れ磁界を抑制する。そして、コイル部品10で生じる磁気又は電磁波が他の電子部品や人体等に影響を与えることを抑制することができる。第2磁気シールド部材50を形成する材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等の金属を採用可能である。
【0084】
(接続端子)
図2及び図3に示すように、第1接続端子61は、平面コイル11の最内周部側に位置する第1ターン部111の径方向の内方の端部に接続される。第1接続端子61は、図示は省略するが、第2コイル保持部材30と第1磁気シールド部材40との間を径方向の外方に向けて通過して、第2コイル保持部材30から延び出る。第2接続端子62は、平面コイル11の最外周部側に位置する第8ターン部118の径方向の外方の端部に接続されている。第1接続端子61及び第2接続端子62は、例えば高周波電流供給部1A又は変換部2Aとの接続の際に用いられ得る。
【0085】
送電コイルとしてコイル部品10を用いる場合、第1接続端子61及び第2接続端子62が図1で示したような高周波電流供給部1A又は交流電源に接続される。高周波電流がコイル部品10に供給されると、電流を、第1接続端子61から平面コイル11に流した後、第2接続端子62から高周波電流供給部1A又は交流電源に流すことができる。また、電流を、第2接続端子62から平面コイル11に流した後、第1接続端子61から高周波電流供給部1A又は交流電源に流すことができる。これにより、平面コイル11の中心軸線に沿う磁力線を含む磁界を発生させることができる。
【0086】
一方で、受電コイルとしてコイル部品10を用いる場合、平面コイル11の中心軸線に沿う磁力線を含む磁界を受けることで、平面コイル11に高周波電流を発生させることができる。そして、この高周波電流を、第1接続端子61又は第2接続端子62から外部の装置に供給できる。
【0087】
第1接続端子61及び第2接続端子62は、言うまでもないが導電材料から形成される。本実施の形態では、第1接続端子61及び第2接続端子62が平面コイル11の導電体11Eと同じ材料である銅から形成されるが、これに限られない。第1接続端子61及び第2接続端子62は、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等で形成されてもよい。
【0088】
<コイル部品の製造方法>
次に、コイル部品10の製造方法の一例を説明する。
【0089】
図6Aは本例で使用する金型100の平面図であり、図6Bは金型100の斜視図である。コイル部品10を製造する際、まず、金型100が準備される。金型100は、板状の本体部分101と、本体部分101の表面から突出する渦巻形状の凸部102とを有する。そして、金型100には、凸部102の先端からへこむ一つ又は複数(本例では複数)の切欠き103が形成されている。切欠き103は、凸部102がなす渦巻形状の中心側に位置する凸部102の内側面102A及びその反対側の外側面102Bから開放している。
【0090】
本例では、複数の切欠き103に、径方向に並ぶ複数の切欠き103からなる一つ又は複数(本例では複数)の切欠き群103Gが含まれる。詳しくは、金型100において、4つの切欠き群103Gが周方向に一定の角度(本例では90度)毎に配置されている。
【0091】
金型100における凸部102は、第1~第8ターン溝形成部121~128を含む。第1~第8ターン溝形成部121~128は、径方向の内方の位置から外方に向けて、この順に並んでいる。各ターン溝形成部121~128は、上記仮想平面上を延びている。第1~第8ターン溝形成部121~128は、この順に連なり、これにより渦巻形状を形成している。図示された例では、凸部102は、平面コイル11に沿う形状となるため、全体として八角形状である。各ターン溝形成部121~128は、その中心軸線の周りに配置された複数の第1直線部st11~第9直線部st19を含む。直線部st11~st19はそれぞれ、軸方向に見た際に、直線状に延びている。各ターン溝形成部121~128においては、隣り合う直線部のうちの一方に対して他方が折れ曲がるように複数の直線部st11~st19を順次接続することで、渦巻形状が形成される。
【0092】
切欠き群103Gは、各ターン溝形成部121~128における第1直線部st11、第3直線部st13、第5直線部st15、及び第7直線部st17に設けられている。また、各切欠き103は、第1直線部st11、第3直線部st13、第5直線部st15、及び第7直線部st17それぞれの両端の間に形成される。言い換えると、切欠き103は折れ曲がり部分には形成されていない。
【0093】
また、金型100において、切欠き103は、凸部102の体積と全ての切欠き103の体積とを合算した基準体積に対する、上記全ての切欠き103の体積の割合が10%未満になるように形成されることが望ましい。そして、本実施の形態では、上記基準体積に対する、上記切全ての切欠き103の体積の割合が10%未満になるように切欠き103が形成されている。これにより、コイル部品10が完成した際、磁性を有する第2コイル保持部材30の壁部分32の体積が十分に確保され、壁部分32によるコイル性能向上の効果が好適に得られる。ただし、切欠き103の数や位置は特に限られない。
【0094】
以上のような金型100が準備された後、凸部102に沿うように、金型100の本体部分101の表面に渦巻形状の平面コイル11が設置される。図6A及び図6Bは、金型100に平面コイル11が設置された状態を示している。
【0095】
その後、平面コイル11及び金型100を覆うように溶融状態の成形材料が設置される。本例では、金型100の中心側に成形材料が供給され、成形材料が図7Aの矢印に示すように径方向の外方に流動する。ここで、金型100には、凸部102に先端からへこむ切欠き103が形成されている。切欠き103は、図7Bの矢印に示すように成形材料の流動を許容する。これにより、切欠き103は、成形材料の良好な流動性を確保し、成形材料が均一的に金型100上に展開させることを可能とする。
【0096】
その後、上記成形材料を硬化させることにより、成形材料からなる第1コイル保持部材20と、第1コイル保持部材20に一体化された平面コイル11とからなる中間体10Mが作製される。第1コイル保持部材20には、凸部102に対応する渦巻形状の溝21が形成されるとともに、溝21における103切欠きに対応する位置に、溝21を部分的に埋めて溝21を分断するか又は溝21の深さを部分的に浅くする隆起部22が形成される。ここで、本実施の形態では切欠き103によって成形材料が均一的に金型100上に展開されることにより、成形材料の厚みが均一になる。これにより、第1コイル保持部材20の厚みも均一に形成できる。
【0097】
中間体10Mが作製された後、中間体10Mは金型100から取り外される。そして、第1コイル保持部材20の溝21を充填し、且つ第1コイル保持部材20に保持された平面コイル11を覆うように、磁性を有する磁性体と樹脂とを含む溶融状態の磁性体樹脂材料が中間体10Mに設置される。そして、磁性体樹脂材料を硬化させることにより、第2コイル保持部材30が作製される。第2コイル保持部材30には、径方向に延び拡がる板状のスペーサ部分31と、磁性体樹脂材料のうちの溝21への充填部分から形成され、スペーサ部分31から突出する渦巻形状の壁部分32とが形成される。そして、壁部分32は、第1コイル保持部材20の隆起部22に対応する位置に、スペーサ部分31の側にへこむ凹部33を有する。
【0098】
その後、第1接続端子61及び第2接続端子62が設けられ、第1磁気シールド部材40及び第2磁気シールド部材50が第2コイル保持部材30に順に重ねられることで、コイル部品10が製造される。
【0099】
以上に説明した本実施の形態では、渦巻形状の凸部102に先端からへこむ切欠き103が形成される金型100を用いて、平面コイル11を保持する第1コイル保持部材20が作成される。切欠き103は、凸部102がなす渦巻形状の中心側に位置する凸部102の内側面102A及びその反対側の外側面102Bから開放するように形成されている。
【0100】
以上のような切欠き103は、成形材料の流動を許容する。これにより、切欠き103は、成形材料の良好な流動性を確保し、成形材料が均一的に金型100上に展開させることを可能とする。これにより、金型100上の成形材料の厚みが均一になり、第1コイル保持部材20の厚みも均一に形成できる。また成形材料を硬化することで形成される第1コイル保持部材20では、金型100の凸部102に対応する渦巻形状の溝21が形成されるとともに、溝21における切欠き103に対応する位置に、溝21を部分的に埋めて溝を分断するか又は溝21の深さを部分的に浅くする隆起部22が形成される。ここで、隆起部22は溝21によって低下し得る強度及び剛性を補強するリブとして機能し得る。これにより、第1コイル保持部材20が湾曲し難くなり、形状保持性能が向上する。したがって、本実施の形態によれば、コイル部品10の厚みのバラつき及び反りの発生を抑制できる。
【0101】
<変形例>
次に、上述の実施の形態に係るコイル部品10の複数の変形例について図8乃至図13図14A及び図14Bを参照しつつ説明する。以下に説明する変形例における上述の実施の形態と同様の構成要素には、同一の符号を付け、重複する説明は省略する。なお、図8乃至図13図14Aにおいては、第1コイル保持部材20の図示を省略している。
【0102】
図8は、第1変形例に係るコイル部品の平面図である。第1変形例では、第2コイル保持部材30の壁部分32に形成された複数の凹部33に、径方向に並ぶ複数の凹部33からなる8つの凹部群33Gが含まれる。詳しくは、8つの凹部群33Gが、渦巻形状の周方向に一定の角度(45度)毎に形成されている。各凹部群33Gは、直線部st1~st9の両端間に形成されている。8つの凹部群33Gの形成位置は、図8における8つの矢印の位置に対応する。第1変形例の製造に用いる金型は、第2コイル保持部材30と同様の形状を有する。このような金型により形成される第1コイル保持部材20における隆起部22の形成パターンは、凹部33の形成パターンを反転したものとなる。
【0103】
図9は、第2変形例に係るコイル部品の平面図である。第2変形例では、第2コイル保持部材30の壁部分32に形成された複数の凹部33に、径方向に並ぶ複数の凹部33からなる4つの凹部群33Gが含まれる。このような径方向に延びる4つの凹部群33Gは、渦巻形状の周方向に一定の角度(90度)毎に形成されている。さらに、壁部分32における径方向に並ぶ各凹部群33Gのそれぞれの両側に、各凹部群33Gと平行に並ぶ凹部群33Gが形成される。すなわち、本変形例では、12個の凹部群33Gが形成される。径方向に延びる1つの凹部群33Gと、これと平行な2つの凹部群33Gのセットは、第1直線部st1、第3直線部st3、第5直線部st5、及び第7直線部st7に形成され、各直線部の両端間に形成されている。12個の凹部群33Gの形成位置は、図9における12個の矢印の位置に対応する。第2変形例の製造に用いる金型は、第2コイル保持部材30と同様の形状を有する。このような金型により形成される第1コイル保持部材20における隆起部22の形成パターンは、凹部33の形成パターンを反転したものとなる。
【0104】
図10は、第3変形例に係るコイル部品の平面図である。第3変形例では、第2コイル保持部材30の壁部分32に形成された複数の凹部33に、径方向に並ぶ複数の凹部33からなる8つの凹部群33Gが含まれる。このような径方向に延びる8つの凹部群33Gは、渦巻形状の周方向に一定の角度(45度)毎に形成されている。さらに、壁部分32における径方向に並ぶ各凹部群33Gのそれぞれの両側に、各凹部群33Gと平行に並ぶ凹部群33Gが形成される。すなわち、本変形例では、24個の凹部群33Gが形成される。径方向に延びる1つの凹部群33Gと、これと平行な2つの凹部群33Gのセットは、各直線部st1~st8に形成され、各直線部の両端間に形成されている。24個の凹部群33Gの形成位置は、図10における24個の矢印の位置に対応する。第3変形例の製造に用いる金型は、第2コイル保持部材30と同様の形状を有する。このような金型により形成される第1コイル保持部材20における隆起部22の形成パターンは、凹部33の形成パターンを反転したものとなる。
【0105】
図11は、第4変形例に係るコイル部品の平面図である。第4変形例における第2コイル保持部材30の壁部分32に形成される複数の凹部33の形成パターンは、上述の実施の形態と同様である。すなわち、複数の凹部33には、径方向に並ぶ複数の凹部33からなる4つの凹部群33Gが含まれる。ただし、4つの凹部群33Gにおける凹部33の幅は、上述の実施の形態の凹部33の幅よりも大きい。4つの凹部群33Gの形成位置は、図11における4つの矢印の位置に対応する。第4変形例の製造に用いる金型は、第2コイル保持部材30と同様の形状を有する。このような金型により形成される第1コイル保持部材20における隆起部22の形成パターンは、凹部33の形成パターンを反転したものとなる。
【0106】
図12は、第5変形例に係るコイル部品の平面図である。第5変形例における第2コイル保持部材30の壁部分32に形成される複数の凹部33の形成パターンは、第1変形例と同様である。すなわち、複数の凹部33には、径方向に並ぶ複数の凹部33からなる8つの凹部群33Gが含まれる。ただし、8つの凹部群33Gにおける凹部33の幅は、第1変形例における凹部33の幅よりも大きい。8つの凹部群33Gの形成位置は、図12における8つの矢印の位置に対応する。第5変形例の製造に用いる金型は、第2コイル保持部材30と同様の形状を有する。このような金型により形成される第1コイル保持部材20における隆起部22の形成パターンは、凹部33の形成パターンを反転したものとなる。
【0107】
図13は、第6変形例に係るコイル部品の平面図である。第6変形例では、第1変形例と同様に、第2コイル保持部材30の壁部分32に形成された複数の凹部33に、径方向に並ぶ複数の凹部33からなる8つの凹部群33Gが含まれる。そして、8つの凹部群33Gが、渦巻形状の周方向に一定の角度(45度)毎に形成されている。ただし、8つの凹部群33Gはそれぞれ、直線部st1~st9において隣り合う直線部が接続する折れ曲がり部分に形成されている。8つの凹部群33Gの形成位置は、図8における8つの矢印の位置に対応する。第6変形例の製造に用いる金型は、第2コイル保持部材30と同様の形状を有する。このような金型により形成される第1コイル保持部材20における隆起部22の形成パターンは、凹部33の形成パターンを反転したものとなる。
【0108】
図14Aは、第7変形例に係るコイル部品の平面図である。図14Bは、第7変形例に係るコイル部品における第1磁気シールド部材40を構成するフェライト板40Pの配置を示す図である。
【0109】
第7変形例では、図14Bに示すように、第1磁気シールド部材40が複数のフェライト板40Pを敷き詰めて構成される。そして、第1磁気シールド部材40に、第2コイル保持部材30が重ねられる。そして、隣り合うフェライト板40Pの間の境界BLと、第2コイル保持部材30の壁部分32の凹部33とが重なる。このような重なり状態が形成されるように、金型における切欠きの位置及び複数のフェライト板の形状が調整されている。
【0110】
第7変形例では、12個のフェライト板40Pが敷き詰められ、隣り合うフェライト板40Pの間の境界が12個形成される。第7変形例では、12組の隣り合うフェライト板40Pの間の各境界上に重なりつつ並ぶ12個の凹部群33Gが形成される。12個の凹部群33Gの形成位置は、図14Aにおける12個の矢印の位置に対応する。第7変形例の製造に用いる金型は、第2コイル保持部材30と同様の形状を有する。このような金型により形成される第1コイル保持部材20における隆起部22の形成パターンは、凹部33の形成パターンを反転したものとなる。
【0111】
<性能評価のシミュレーション>
次に、上述の実施の形態に係るコイル部品10及び複数の変形例に係るコイル部品の性能を、シミュレーションにより評価した評価結果を説明する。ここで説明する性能評価では、各コイル部品のQ値をシミュレーションにより計算した。
【0112】
図15は、実施の形態及び複数の変形例についての性能評価結果を説明するグラフを示す。第2コイル保持部材30の壁部分32の体積、言い換えると第1コイル保持部材20の溝21の体積は、実施の形態、同じ体積となる第1変形例及び第6変形例、第7変形例、第2変形例、第3変形例、第4変形例、第5変形例の順で小さくなる。図15における横軸(溝体積比)において、100%は、溝21に隆起部22が形成されない構成(ref)を示す。実施の形態及び各変形例の溝21の体積は、溝21に隆起部22が形成されない構成(ref)よりも小さくなる。横軸(溝体積比)は、溝21に隆起部22が形成されない構成(ref)の溝21の体積に対する、実施の形態及び各変形例の溝21の体積の割合を示す。溝体積比が大きいほど、壁部分32の体積が大きいことを意味する。
【0113】
以下の表1は、上記refと、実施の形態及び各変形例の体積比と、Q値との関係を示す。
【0114】
【表1】
【0115】
図15及び表1を参照すると、溝体積比が90%以上の第1変形例及び第6変形例、第7変形例、第2変形例、第3変形例では、壁部分32の体積が大きく確保されることで、高いQ値を維持できている。金型100において、切欠き103は、凸部102の体積と全ての切欠き103の体積を合算した切欠き部分体積とを合算した基準体積に対する、上記切欠き部分体積の割合が10%未満になるように形成されることが望ましい。これは、溝体積比が90%以上になることを意味し、壁部分32の体積が、凹部33が無い場合に比較して90%以上になることを意味する。図15及び表1に示される結果は、切欠き103に関する上述の形成条件が望ましい条件であることを裏付ける。
【0116】
第1変形例と第6変形例とを比較すると、溝体積比は同じであるが、第6変形例のQ値は、第1変形例よりも低い。この結果を考慮すると、折れ曲がり部分に凹部33を形成することは望ましくないと考えられる。また、第7変形例については、他の似た条件(第2変形例、第6変形例等)に対して目立つ性能変化は見受けられない。この結果を考慮すると、凹部33とフェライト板40Pの境界との位置関係は、性能変化と無関係であると考えられる。
【0117】
以上、本開示の実施の形態を説明したが、上述の実施の形態には種々の変更を加えてもよい。このような変形例も、本開示の技術的範囲に含まれ得る。例えば、上述の実施の形態では、第1コイル保持部材20の隆起部22が、溝21を部分的に埋めて溝21を分断するが、隆起部22は溝21の深さを部分的に浅くするものでもよい。この場合、金型100の凸部102に形成される切欠き103は、底面が凸部102の起点まで至らず、凸部102の途中までへこむように形成される。
【符号の説明】
【0118】
S…電力伝送システム
1…送電装置
1A…高周波電流供給部
2…受電装置
2A…変換部
10…コイル部品
10M…中間体
11…平面コイル
11E…導電体
11n…ターン部
111…第1ターン部
112…第2ターン部
113…第3ターン部
114…第4ターン部
115…第5ターン部
116…第6ターン部
117…第7ターン部
118…第8ターン部
st1~st9…直線部
st1…第1直線部
st2…第2直線部
st3…第3直線部
st4…第4直線部
st5…第5直線部
st6…第6直線部
st7…第7直線部
st8…第8直線部
st9…第9直線部
20…第1コイル保持部材
21…溝
22…隆起部
22G…隆起部群
30…第2コイル保持部材
31…スペーサ部分
32…壁部分
33…凹部
33G…凹部群
40…第1磁気シールド部材
40P…フェライト板
50…第2磁気シールド部材
61…第1接続端子
62…第2接続端子
100…金型
101…本体部分
102…凸部
102A…内側面
102B…外側面
103…切欠き
103G…切欠き群
C…中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15