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特開2025-107099加飾シート付き表示装置及び加飾シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025107099
(43)【公開日】2025-07-17
(54)【発明の名称】加飾シート付き表示装置及び加飾シート
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20250710BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250710BHJP
   G02B 30/27 20200101ALI20250710BHJP
   G02B 30/30 20200101ALI20250710BHJP
【FI】
G09F9/00 313
B32B27/00 E
G09F9/00 361
G02B30/27
G02B30/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000888
(22)【出願日】2024-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】福田 俊治
(72)【発明者】
【氏名】山中 直人
(72)【発明者】
【氏名】西田 知則
【テーマコード(参考)】
2H199
4F100
5G435
【Fターム(参考)】
2H199BA08
2H199BA09
2H199BA34
2H199BA68
2H199BB04
2H199BB08
2H199BB51
2H199BB52
2H199BB59
4F100AR00B
4F100BA02
4F100BA41B
4F100DD01B
4F100GB41
4F100HB00A
4F100JN01B
4F100YY00B
5G435AA01
5G435CC11
5G435FF02
5G435GG06
5G435LL17
5G435LL18
(57)【要約】
【課題】モアレの発生を抑制することが可能な、加飾シート付き表示装置及び加飾シートを提供する。
【解決手段】加飾シート付き表示装置は、第1方向及び前記第1方向に非平行な第2方向に配列された複数の画素を有する表示装置と、前記表示装置に重ねて配置された加飾シートと、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裸眼で視認され得る立体画像を表示する、加飾シート付き表示装置であって、
第1方向及び前記第1方向に非平行な第2方向に配列された複数の画素を有する表示装置と、
前記表示装置に重ねて配置された加飾シートと、を備え、
前記加飾シートは、意匠を形成する複数の意匠部と、前記意匠部の非形成部である複数の透過部と、を有し、
前記透過部は、前記第1方向及び前記第2方向の少なくともいずれか一方に非平行な第3方向に配列され、かつ、前記第3方向に非平行な第4方向に線状に延びている、加飾シート付き表示装置。
【請求項2】
前記表示装置と、前記加飾シートとの間に配置されたレンチキュラーレンズ層を更に備える、請求項1に記載の加飾シート付き表示装置。
【請求項3】
前記第3方向は、前記第1方向及び前記第2方向の両方に非平行であり、
前記加飾シートは、パララックスバリアとして機能する、請求項1に記載の加飾シート付き表示装置。
【請求項4】
前記表示装置は、ローカルディミング可能である、請求項1に記載の加飾シート付き表示装置。
【請求項5】
前記透過部のピッチは、前記第1方向における前記画素のピッチ及び前記第2方向における前記画素のピッチよりも短い、請求項1に記載の加飾シート付き表示装置。
【請求項6】
前記透過部は、前記第4方向に沿って配置された複数の単位透過領域を有し、
前記単位透過領域は、前記第4方向に延びる一対の側縁を含み、
一対の前記側縁は、互いに離間する方向へ凸となるように湾曲している、請求項1に記載の加飾シート付き表示装置。
【請求項7】
加飾シートであって、
意匠を形成する複数の意匠部と、
前記意匠部の非形成部である複数の透過部と、を備え、
前記透過部は、第1配列方向に配列され、かつ、前記第1配列方向に非平行な第2配列方向に線状に延びており、
前記透過部は、前記第2配列方向に沿って配置された複数の単位透過領域を有し、
前記単位透過領域は、前記第2配列方向に延びる一対の側縁を含み、
一対の前記側縁は、互いに離間する方向へ凸となるように湾曲している、加飾シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加飾シート付き表示装置及び加飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
画像を表示する表示装置が広く用いられている。このような表示装置は、画像非表示の状態では、通常、黒色に観察される。一方で、例えば自動車や家具、住宅建材等の表面部材においては、意匠性が非常に重要視されている。現在、特にこのような分野に適用される表示装置に対し、単に表示装置に画像を表示する機能が期待されているだけでなく、周囲環境と調和する意匠性も要求されている。
【0003】
表示装置に意匠性を付与するために、例えば特許文献1に示すような加飾シートが提案されている。加飾シートは、表示装置の表示面に対面する位置に設けられる。加飾シートは、意匠を形成する意匠部を有する。表示装置の表示面に対面する位置に加飾シートが設けられると、加飾シートの表面が加飾シート付き表示装置の表面となる。加飾シートは、意匠部による意匠を表面に表示する。これにより、加飾シート付き表示装置は意匠性を付与される。加飾シート付き表示装置は、付与された意匠性により、周辺環境と調和できる。また、表示装置の画像光が加飾シートを透過できるように、加飾シートには可視光が透過できる透過部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-331132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に示すような加飾シート付き表示装置において、表示装置が表示する画像に縞状の模様が観察されることがある。本件発明者らが検討したところ、縞状の模様は、加飾シートに設けられた透過部の規則的な配列と、表示装置の画素の規則的な配列と、に起因して生じるモアレ(干渉縞)であることが知見された。このようなモアレは、表示装置に表示される画像の視認性を悪化させてしまう。したがって、モアレの発生を抑制することが望まれる。
【0006】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであって、モアレの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施の形態は、以下の[1]~[7]に関する。
【0008】
[1]
裸眼で視認され得る立体画像を表示する、加飾シート付き表示装置であって、
第1方向及び前記第1方向に非平行な第2方向に配列された複数の画素を有する表示装置と、
前記表示装置に重ねて配置された加飾シートと、を備え、
前記加飾シートは、意匠を形成する複数の意匠部と、前記意匠部の非形成部である複数の透過部と、を有し、
前記透過部は、前記第1方向及び前記第2方向の少なくともいずれか一方に非平行な第3方向に配列され、かつ、前記第3方向に非平行な第4方向に線状に延びている、加飾シート付き表示装置。
【0009】
[2]
前記表示装置と、前記加飾シートとの間に配置されたレンチキュラーレンズ層を更に備える、[1]に記載の加飾シート付き表示装置。
【0010】
[3]
前記第3方向は、前記第1方向及び前記第2方向の両方に非平行であり、
前記加飾シートは、パララックスバリアとして機能する、[1]に記載の加飾シート付き表示装置。
【0011】
[4]
前記表示装置は、ローカルディミング可能である、[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の加飾シート付き表示装置。
【0012】
[5]
前記透過部のピッチは、前記第1方向における前記画素のピッチ及び前記第2方向における前記画素のピッチよりも短い、[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の加飾シート付き表示装置。
【0013】
[6]
前記透過部は、前記第4方向に沿って配置された複数の単位透過領域を有し、
前記単位透過領域は、前記第4方向に延びる一対の側縁を含み、
一対の前記側縁は、互いに離間する方向へ凸となるように湾曲している、[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の加飾シート付き表示装置。
【0014】
[7]
加飾シートであって、
意匠を形成する複数の意匠部と、
前記意匠部の非形成部である複数の透過部と、を備え、
前記透過部は、第1配列方向に配列され、かつ、前記第1配列方向に非平行な第2配列方向に線状に延びており、
前記透過部は、前記第2配列方向に沿って配置された複数の単位透過領域を有し、
前記単位透過領域は、前記第2配列方向に延びる一対の側縁を含み、
一対の前記側縁は、互いに離間する方向へ凸となるように湾曲している、加飾シート。
【発明の効果】
【0015】
本開示の実施の形態によれば、モアレの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施の形態による加飾シート付き表示装置を概略的に示す分解斜視図である。
図2図2は、本実施の形態による表示装置の一部を拡大して示す正面図である。
図3A図3Aは、本実施の形態による加飾シート付き表示装置を示す断面図である。
図3B図3Bは、本実施の形態による加飾シート付き表示装置の他の例を示す断面図である。
図4図4は、本実施の形態による加飾シートの一部を拡大して示す正面図である。
図5図5は、本実施の形態による加飾シートの一部を更に拡大して示す正面図である。
図6図6は、本実施の形態による加飾シート付き表示装置の一部を拡大して示す正面図である。
図7図7は、本実施の形態によるレンチキュラーレンズ層の一部を拡大して示す断面図である。
図8図8は、本実施の形態によるレンチキュラーレンズ層を示す斜視図である。
図9図9は、本実施の形態による光制御層を示す斜視図である。
図10図10は、本実施の形態による光制御層の一部を拡大して示す断面図である。
図11図11は、本実施の形態による加飾シート付き表示装置を示す正面図であって、表示装置が画像を表示していない状態を示す正面図である。
図12図12は、本実施の形態による加飾シート付き表示装置を示す正面図であって、表示装置が画像を表示している状態を示す正面図である。
図13図13は、比較例としての加飾シートを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0018】
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する用語等、例えば、「平行」、「垂直」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0019】
本明細書において、「シート」、「フィルム」及び「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されるものではない。例えば「加飾シート」は、加飾フィルム又は加飾板と呼ばれる部材等と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
【0020】
本実施の形態による加飾シート付き表示装置1は、裸眼で視認され得る立体画像を表示する表示装置である。また、本実施の形態による加飾シート付き表示装置1は、平面画像を更に表示する表示装置である。
【0021】
図1に示すように、加飾シート付き表示装置1は、表示装置10と、表示装置10に重ねて配置された加飾シート50と、を備えている。また、加飾シート付き表示装置1は、表示装置10と、加飾シート50との間に配置されたレンチキュラーレンズ層60を更に備えていても良い。さらに、表示装置10は、加飾シート50とレンチキュラーレンズ層60との間に配置された光制御層70を更に備えていても良い。図1に示す例においては、表示装置10の表示面11に近い側から、レンチキュラーレンズ層60、光制御層70、加飾シート50が、この順で積層されている。なお、加飾シート付き表示装置1は、図示しない他の構成要素を備えていても良い。また、図示された例において、加飾シート付き表示装置1は、平板状に示されているが、加飾シート付き表示装置1の各構成要素が湾曲することで、加飾シート付き表示装置1は、湾曲形状であっても良い。
【0022】
加飾シート付き表示装置1は、画像の非表示状態と表示状態とをとることができる。画像の非表示状態では、加飾シート付き表示装置1は、加飾シート50によって形成される意匠を表示できる。画像の表示状態では、加飾シート付き表示装置1は、表示装置10によって表示される画像を表示できる。以下、加飾シート付き表示装置1の各構成要素について説明する。
【0023】
ここでは、まず、表示装置10について説明する。
【0024】
<表示装置>
表示装置10は、画像光を出射する装置である。この表示装置10は、画像光を出射できる表示面11を有している。表示装置10は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の任意の表示装置であっても良い。このような表示装置10の表示面11は、典型的にはガラス面となっている。図1に示すように、表示面11は、第1方向d1及び第1方向d1に非平行な第2方向d2に広がっている。図示された例において、第1方向d1と第2方向d2とは、互いに直交している。また、図2に示すように、表示装置10は、表示面11において、第1方向d1及び第2方向d2に沿って規則的に配列されている複数の画素13を有している。言い換えると、複数の画素13は、規則的に2次元配列されている。すなわち、表示装置10は、いわゆるドットマトリクスディスプレイである。
【0025】
図2に示すように、表示装置10は、互いに隣り合う画素13間に設けられたブラックマトリクス15を更に有している。ブラックマトリクス15は、第1方向d1及び第2方向d2に沿って、格子状に配置されている。図示された例においては、ブラックマトリクス15は、正方格子状に配置されている。上述した画素13は、ブラックマトリクス15によって形成された隙間に配置されている。
【0026】
画素13は、発光することによって、表示装置10が表示する画像を形成する。図示された例において、画素13は、互いに異なる色を発光する第1サブ画素13r、第2サブ画素13g及び第3サブ画素13bを含んでいる。第1サブ画素13rは、赤色に発光する画素であっても良く、第2サブ画素13gは、緑色に発光する画素であっても良く、第3サブ画素13bは青色に発光する画素であっても良い。この場合、画素13は、視認可能な任意の色、すなわちフルカラーで発光できる。このような画素13によれば、表示装置10が、フルカラーの画像を表示できる。
【0027】
図2に示すように、画素13は、第1方向d1に沿って一定の配列ピッチp1で配列されており、第2方向d2に沿って一定の配列ピッチp2で配列されている。第1サブ画素13r、第2サブ画素13g及び第3サブ画素13bも、第1方向d1に沿って一定の配列ピッチp1で配列されており、第2方向d2に沿って一定の配列ピッチp2で配列されている。図示された例においては、画素13の第1方向d1に沿った配列ピッチp1は、第2方向d2に沿った配列ピッチp2と等しくなっている。画素13の第1方向d1に沿った配列ピッチp1及び第2方向d2に沿った配列ピッチp2は、例えば、50μm以上500μm以下であっても良い。図2に示すような正面視において、第1サブ画素13r、第2サブ画素13g及び第3サブ画素13bは、それぞれ第2方向d2よりも第1方向d1に長い矩形である。一方、画素13は、矩形、特に正方形である。画素13の1辺の長さは、例えば、30μm以上500μm以下であっても良い。
【0028】
画素13は、後述する図7に示すように、画像を立体的に観察させるために、観察者の左目又は右目が位置するように想定された複数の位置に応じて、右目用画素13Rと左目用画素13Lとを含んでいる。
【0029】
なお、表示装置10は、印刷が施された透明なフィルム等に対して光を透過させることにより、画像を表示する装置であっても良く、光の一部を遮光物によって遮光することにより、明暗による画像を表示する装置であっても良い。この場合、表示装置10は、光を発する光源と、所定のパターン部と、を有していても良い。光源は、所定のパターン部を透過する光の強度を均一にするために、例えば面状に光を発する面光源装置であることが好ましい。所定のパターン部は、例えば、表示する画像に対応した印刷が施された透明なフィルムであっても良い。この場合、透明なフィルムの表面が、表示装置10の表示面11となる。また、所定のパターン部は、表示する画像に対応した形状の遮光物等であっても良い。この場合、遮光物等の非形成部が、表示面11となる。
【0030】
本実施の形態では、表示装置10の表示面11に表示される画像は、レンチキュラーレンズ層60によって、立体的に視認され得る画像となる場合がある。画像が十分な輝度で表示されている場合、観察者は、画像を立体的に認識しやすくなる。このため、表示装置10の表示面11において、画像は、十分な輝度で表示されることが好ましい。具体的には、表示装置10の表示面11における輝度は、500cd/m以上であることが好ましく、1000cd/m以上であることがより好ましい。
【0031】
このような表示装置10は、ローカルディミング可能であっても良い。すなわち、表示装置10に表示する画像に応じて、複数の光源の発光を独立して制御できるように構成されていても良い。これにより、複数の光源が所定のピッチで規則的に配列されている場合であっても、光源の発光を不規則に制御できる。このため、モアレの発生を抑制できる。また、表示装置10がローカルディミング可能であることにより、表示装置10に表示する画像のコントラストを向上させることができ、かつ、表示装置10における消費電力を低減できる。複数の光源の発光の制御は、例えば図示しない制御部からの信号によって行われても良い。
【0032】
次に、加飾シート50について説明する。
【0033】
<加飾シート>
図1に示すように、加飾シート50は、表示装置10の表示面11側に配置されている。この加飾シート50は、意匠を表示することにより、加飾シート付き表示装置1に意匠性を付与する役割を果たす。加飾シート50は、表示面11が外部から直接観察されないようにするために、少なくとも表示面11の全体を覆っている。また、加飾シート50は、レンチキュラーレンズ層60及び光制御層70が外部から直接観察されないようにするために、レンチキュラーレンズ層60及び光制御層70の全体を覆っている。このため、加飾シート50は、表示装置10の表示面11、レンチキュラーレンズ層60及び光制御層70の寸法以上の寸法を有している。図1に示す例においては、加飾シート50は、全体として表示装置10の表示面11と同一の方向に広がる平板状の部材である。加飾シート50の厚みは、例えば、20μm以上550μm以下であっても良い。
【0034】
図3A及び図3Bに示すように、加飾シート50は、意匠を形成する複数の意匠部53と、意匠部53の非形成部である複数の透過部57と、を有している。具体的には、加飾シート50は、基材部51と、基材部51上に設けられた意匠部53及び遮蔽部55と、意匠部53及び遮蔽部55の非形成部である透過部57と、を有している。なお、図示された例に限らず、例えば、加飾シート50が遮蔽部55を有していなくても良い。また、加飾シート50は、基材部51、意匠部53及び遮蔽部55を覆うトップコート層(図示せず)を更に有していても良い。
【0035】
図3Aに示す例においては、加飾シート50は、遮蔽部55が表示装置10に対面するように配置されている。図3Aに示す例においては、意匠部53は、基材部51上に直接設けられており、遮蔽部55は、意匠部53上に直接設けられている。具体的には、遮蔽部55、意匠部53及び基材部51は、表示装置10側から、この順に配置されている。しかしながら、これに限らず、図3Bに示すように、加飾シート50が、基材部51が表示装置10に対面するように配置されていても良い。図3Bに示す例においては、基材部51上に遮蔽部55が直接設けられ、遮蔽部55上に意匠部53が直接設けられている。具体的には、基材部51、遮蔽部55及び意匠部53が、表示装置10側から、この順に配置されている。図3Bにおいて、ハードコート層(トップコート層(図示せず))が、遮蔽部55及び意匠部53を覆うように形成されていても良い。
【0036】
加飾シート50の基材部51は、基材部51上に設けられた意匠部53及び遮蔽部55を適切に支持するための部材である。この基材部51は、透明なフィルム状の部材である。基材部51の材料としては、可視光を透過し、意匠部53及び遮蔽部55を適切に支持し得るものであれば、いかなる材料でも良い。基材部51を構成する材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)等が挙げられる。また、基材部51の厚みは、可視光透過性、並びに、意匠部53及び遮蔽部55を支持するための強度等を考慮すると、例えば、10μm以上500μm以下であっても良い。また、図3Aに示すように、基材部51が加飾シート50の表面を構成する場合、基材部51は、耐擦傷性を有するハードコート層であっても良い。基材部51がハードコート層である場合、基材部51の厚みは、例えば、1μm以上500μm以下であっても良い。
【0037】
なお、透明とは、測定波長を380nm以上780nm以下としたときに、各波長における透過率の平均値として特定される可視光透過率が、80%以上であることを意味する。なお、可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定する。
【0038】
意匠部53は、加飾シート50が表示する意匠を形成する部分である。意匠部53は、図形、パターン、デザイン、色彩、絵、写真、キャラクター、マーク、文字又は数字等の絵柄を、意匠として形成する。特に、意匠部53は、加飾シート付き表示装置1が設けられる周辺環境と調和できる意匠を形成しても良い。このような意匠として、木目調又は大理石調の絵柄及び幾何学模様が例示される。
【0039】
また、意匠部53は、単色の色彩をベタ印刷してなる絵柄を意匠として形成しても良い。なお、図3A及び図3Bに示す例においては、加飾シート50のシート面に直交する方向に沿った断面において、意匠部53の断面形状は、矩形となっている。しかしながら、これに限られず、意匠部53の断面形状は、台形等であっても良い。
【0040】
なお、意匠部53の厚みが十分に厚い場合、意匠部53によって形成される意匠を濃く明確にできる。ここで、意匠部53の厚みとは、意匠部53を支持する基材部51の板面の法線方向に沿った、意匠部53の長さのことである。具体的な例として、意匠部53の厚みは、1μm以上20μm以下であっても良い。
【0041】
図4に示すように、複数の意匠部53は、第3方向d3に配列されており、第4方向d4に線状、特に直線状に延びている。複数の意匠部53は、互いに離間して配置されている。第3方向d3及び第4方向d4は、第1方向d1及び第2方向d2と同一平面内の方向であり、第1方向d1及び第2方向d2に非平行な方向である(図6参照)。本実施の形態では、第3方向d3及び第4方向d4は、加飾シート50の端辺50aに対して傾斜する方向である。好ましくは、第3方向d3と第4方向d4とは、互いに直交している。また、第2方向d2と第3方向d3とは、直交していない。具体的には、第2方向d2と第3方向d3とがなす角度のうち小さい方の角度θ(図6参照)は、5°以上85°以下であっても良く、55°以上80°以下であることが好ましく、15°以上35°以下であることがより好ましい。なお、第3方向d3は、第1方向d1及び第2方向d2の少なくともいずれか一方に非平行な方向であれば良い。例えば、第3方向d3は、第1方向d1に平行な方向であり、第2方向d2に非平行な方向であっても良い。また、例えば、第3方向d3は、第1方向d1に非平行な方向であり、第2方向d2に平行な方向であっても良い。
【0042】
意匠部53は、第3方向d3に沿って配列ピッチp3で配列されている。意匠部53の配列ピッチp3は、一定である。なお、ピッチp3の詳細については、後述する。
【0043】
遮蔽部55は、表示装置10からの画像光が意匠部53に入射しないように、光を吸収する機能を有している。遮蔽部55は、表示装置10側から、意匠部53を覆っている。遮蔽部55は、意匠部53に対面する位置にのみ設けられていることが好ましい。これにより、表示装置10から出射された画像光が透過部57を透過する際に、画像光の透過が、遮蔽部55によって阻害されることを抑制できる。また、十分な厚みの遮蔽部55が意匠部53を覆っていると、意匠部53によって形成される意匠を濃く明確にできる。具体的な例として、遮蔽部55の厚みは、例えば、1μm以上20μm以下であっても良い。
【0044】
遮蔽部55は、例えば、バインダー樹脂と、バインダー樹脂中に含有された光吸収粒子とを含んでいても良い。光吸収粒子としては、カーボンブラック又はチタンブラック等の黒色顔料が例示される。
【0045】
透過部57は、加飾シート50において表示装置10からの画像光を透過させるための部分である。図3A及び図3Bに示すように、透過部57は、意匠部53及び遮蔽部55の非形成部である。表示装置10からの画像光を十分に透過させるために、加飾シート50の正面視において、透過部57が占める面積の割合は、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、25%以上であることが更に好ましい。一方、加飾シート50が表示する意匠が観察されやすくなるように、加飾シート50の正面視において、透過部57が占める面積の割合は、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましい。
【0046】
上述したように、透過部57は、意匠部53及び遮蔽部55の非形成部である。このため、図4に示すように、透過部57は、第3方向d3(第1配列方向)に配列されており、第4方向d4(第1配列方向に非平行な第2配列方向)に延びている。複数の透過部57は、互いに離間して配置されており、各透過部57の間には、意匠部53が形成されている。また、意匠部53が第3方向d3に沿って配列ピッチp3で配列されているため、透過部57も第3方向d3に沿って配列ピッチp3で配列されている。さらに、意匠部53が第4方向d4に線状(直線状)に延びているため、透過部57も第4方向d4に線状(直線状)に延びている。このように、透過部57が、第3方向d3に配列されており、第4方向d4に延びていることにより、表示装置10からの画像光を均一に透過できる。このため、画像光にムラが生じにくくなる。
【0047】
次に、透過部57について、より詳細に説明する。
【0048】
図5に示すように、透過部57は、第4方向d4(第2配列方向)に沿って配置された複数の単位透過領域59を有している。第4方向d4において互いに隣り合う単位透過領域59は、隙間を介することなく、互いに連結されている。この単位透過領域59は、レーザーによって透過部57を形成する際に、断続的に照射されたレーザーによって形成された領域である。すなわち、透過部57を形成する際、レーザーを第4方向d4に沿って走査する。このとき、所定の領域にレーザーを照射することにより、例えば、図5において仮想線(二点鎖線)で示すような円形の単位透過領域591が形成される。次に、第4方向d4に沿って、レーザーの照射位置を変化させる。これにより、単位透過領域591に重なるように、別の単位透過領域592が形成される。同様に、レーザーの照射位置を変化させることにより、単位透過領域592に重なるように、別の単位透過領域593が形成される。このようにして、レーザーを第4方向d4に沿って走査することにより、第4方向d4に沿って配置された複数の単位透過領域59を有する透過部57が形成される。
【0049】
単位透過領域59は、第4方向d4に延びる一対の側縁59aを含んでいる。この一対の側縁59aは、互いに離間する方向へ凸となるように湾曲している。上述したように、単位透過領域59は、円形の単位透過領域591~593を互いに重ね合わせることにより、形成された領域である。このため、本実施の形態では、一対の側縁59aの形状は、円弧である。
【0050】
また、この場合、単位透過領域59の幅の変化率は、10%以上95%以下であっても良く、20%以上90%以下であることが好ましい。なお、単位透過領域59の幅の変化率とは、単位透過領域59の幅が最も広い部分の幅W1と、単位透過領域59の幅が最も狭い部分の幅W2との差を、幅W1で割ることによって得られる値((W1-W2)/W1)である。幅の変化率が10%以上であることにより、後述するように、加飾シート50がトップコート層を有している場合、基材部51、意匠部53及び遮蔽部55と、トップコート層との間の密着性を向上できる。さらに、幅の変化率が95%以下であることにより、後述するように、意匠部53と透過部57との間の境界を不明瞭にできる。これにより、透過部57の存在を視認されにくくすることができる。また、幅の変化率が95%以下であることにより、透過部57が第4方向d4における規則性を呈することを抑制できる。このため、モアレ抑制効果が低減することを抑制できる。
【0051】
ここで、幅W1は、15μm以上140μm以下であっても良く、15μm以上120μm以下であることが好ましい。幅W1が15μm以上であることにより、透過部57の加工性を向上できる。また、幅W1が140μm以下であることにより、各透過部57が大きくなり過ぎることを抑制できる。このため、各透過部57が視認されることを抑制できる。この結果、透過部57による網目状の模様が観察されることを抑制できる。なお、幅W1は、上述した円形の単位透過領域591~593の直径と等しくなっている。
【0052】
図6に示すように、透過部57のピッチp3は、第1方向d1における画素13のピッチp1及び第2方向d2における画素13のピッチp2よりも短くなっていても良い。これにより、画素13と、レンズ部63と、透過部57とが不規則に配置され得る。ここで、表示装置10においては、画素13の規則性と、レンズ部63の規則性と、透過部57の規則性とに起因して、モアレが発生する場合がある。これに対して、画素13と、レンズ部63と、透過部57とが不規則に配置され得ることにより、表示装置10が、裸眼で視認され得る立体画像を表示した場合、及び、平面画像を表示した場合の両方において、表示面11にモアレが発生することを効果的に抑制できる。
【0053】
透過部57のピッチp3は、30μm以上60μm以下であっても良い。透過部57のピッチp3が30μm以上であることにより、透過部57の加工性を向上できる。また、透過部57のピッチp3が60μm以下であることにより、画素13(及びレンズ部63)と、透過部57とがより不規則に配置され得る。このため、表示装置10が、裸眼で視認され得る立体画像を表示した場合、及び、平面画像を表示した場合の両方において、表示面11にモアレが発生することをより効果的に抑制できる。また、透過部57のピッチp3が60μm以下であることにより、表示装置10によって画像が表示されている部分と画像が表示されていない部分との間の違いが視認されてしまうことを抑制できる。
【0054】
透過部57を形成する場合、例えば、基材部51上の全面に設けられた意匠部53及び遮蔽部55に対して、透過部57を形成するべき位置にレーザーを照射する。これにより、レーザーが照射された位置の意匠部53及び遮蔽部55が除去され、透過部57が形成される。
【0055】
なお、透過部57は、図3A及び図3Bに示すように、孔又は空隙であっても良いが、例えば透明な樹脂によって形成されても良い。さらに、透明な樹脂は、透過部57だけでなく、表示装置10側から意匠部53及び遮蔽部55を覆うように設けられていても良い。このような透明な樹脂は、透過部57を形成するとともに、意匠部53及び遮蔽部55を保護する透明な保護膜として機能できる。
【0056】
次に、レンチキュラーレンズ層60について説明する。
【0057】
<レンチキュラーレンズ層>
図1に示すように、レンチキュラーレンズ層60は、表示装置10と加飾シート50との間に配置されている。このレンチキュラーレンズ層60は、表示装置10の表示面11からの画像光を所望の位置に向かうように屈折させる役割を果たす。レンチキュラーレンズ層60は、表示面11からの画像光が入射するように、表示面11の全体を覆っている。したがって、レンチキュラーレンズ層60は、表示面11の寸法以上の寸法を有している。図1に示す例において、レンチキュラーレンズ層60は、全体として表示装置10の表示面11と同一の方向に広がる平板状の部材である。レンチキュラーレンズ層60の厚みは、例えば、15μm以上4000μm以下であっても良い。
【0058】
本実施の形態において、レンチキュラーレンズ層60は、表示装置10の表示面11に表示された画像を立体的に観察されるように、画像光を屈折させる。より詳しくは、両眼視差と運動視差とを利用することにより、画像を立体的に観察できるようになっている。
【0059】
図7に示すように、表示装置10の画素13が、観察者の左目又は右目が位置するように想定された複数の位置に応じて、右目用画素13Rと左目用画素13Lとに割り振られる。同一の位置に応じて割り振られた複数の画素13が、当該割り振られた位置で観察されるべき画像を形成する。一方、レンチキュラーレンズ層60は、各画素13からの画像光が、観察者の左目又は右目が位置するように想定された複数の位置のうちの当該画素13が割り振られた位置に向かうように、画像光を屈折させる。この結果、各位置において、観察者の右目及び左目には、異なる画像が観察される。これにより、観察者は、画像を立体的に認識できるようになる。また、観察方向を変化させると、観察位置に応じて画像を立体的に観察できるようになる。
【0060】
図8に示すように、レンチキュラーレンズ層60は、基材61と、基材61上に設けられた複数のレンズ部63と、を有している。基材61は、レンズ部63を支持するための部材である。基材61及びレンズ部63は、透明である。複数のレンズ部63は、第1方向d1に配列されている。また、各々のレンズ部63は、第2方向d2に延びている。
【0061】
図8に示すように、第2方向d2に直交する断面において、レンズ部63は、半楕円形状の断面を有する凸レンズである。レンズ部63は、基材61側からの光を第1方向d1に広げて出射させる。基材61とレンズ部63との間に反射界面が形成されることを避けるために、基材61の屈折率とレンズ部63の屈折率とは、同一であることが好ましい。本実施の形態では、基材61及びレンズ部63は、同一の材料からなり、一体的に形成されている。レンズ部63とレンチキュラーレンズ層60の外部との界面で光を適切に屈折できるように、レンズ部63の屈折率は、例えば1.3以上1.8以下であることが好ましい。
【0062】
基材61及びレンズ部63の材料(レンチキュラーレンズ層60の材料)としては、種々の材料が使用され得る。レンチキュラーレンズ層60の材料は、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリオレフィン、ノルボルネン系ポリマー、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミド、アクリル系ポリマー、セルロース系樹脂、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アセテート系ポリマー等であっても良い。ポリエステルとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PETとPENの混合物、PET-PENコポリマー等の共重合体等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。アセテート系ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアセタール系ポリマー等が挙げられる。
【0063】
レンズ部63の第1方向d1における配列のピッチp4(図7参照)は、100μm以上であることが好ましい。これにより、レンズ部63の第1方向d1における配列のピッチp4が、画素13に対して小さくなり過ぎてしまうことを抑制できる。このため、例えば観察者の左目が位置するように想定された位置に、観察者の左目に観察させるように想定された画素13の画像光を、容易に向かわせることができるようになる。このため、観察者が画像を適切に観察できるようになる。また、レンズ部63の第1方向d1における配列のピッチp4は、1700μm以下であることが好ましく、840μm以下であることがより好ましい。これにより、レンズ部63の第1方向d1における配列のピッチp4が大きくなり過ぎてしまうことを抑制できる。このため、表示装置10の表示面11に表示された画像が粗く観察されてしまうことを抑制できる。
【0064】
次に、光制御層70について説明する。
【0065】
<光制御層>
図1に示すように、光制御層70は、加飾シート50とレンチキュラーレンズ層60との間に配置されている。この光制御層70は、レンチキュラーレンズ層60からの画像光の進行方向を制御する役割を果たす。より詳細には、光制御層70は、レンチキュラーレンズ層60からの画像光が第1方向d1に拡がりすぎないように、画像光が観察される視野角を制限する役割を果たす。光制御層70は、レンチキュラーレンズ層60からの画像光が入射するように、レンチキュラーレンズ層60の全体を覆っていることが好ましい。したがって、光制御層70は、レンチキュラーレンズ層60の寸法以上の寸法を有している。図1に示す例においては、光制御層70は、全体として表示装置10の表示面11と同一の方向に広がる平板状の部材である。光制御層70の厚みは、例えば、120μm以上170μm以下であっても良い。
【0066】
図9に示すように、光制御層70は、基部71と、基部71上に設けられた光制御部73と、を有している。このうち、基部71は、光制御部73を適切に支持するための部材である。
【0067】
基部71は、可視光透過性を有している。基部71を構成する材料としては、種々の材料が使用されても良い。基部71を構成する材料は、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート樹脂であっても良い。基部71と光制御部73の後述する透明部77との間に反射界面が形成されることを避けるために、基部71の屈折率と透明部77の屈折率とは、同一であることが好ましい。本実施の形態では、基部71及び光制御部73の透明部77は、同一の材料からなり、一体的に形成されている。
【0068】
光制御部73は、第1方向d1に配列された遮光部75と、第1方向d1において、遮光部75と交互に配置された透明部77と、を有している。遮光部75は、第2方向d2に延びている。なお、遮光部75及び透明部77は、第1方向d1に非平行な方向に配列されていても良い。また、遮光部75は、第2方向d2に非平行な方向に延びていても良い。
【0069】
遮光部75は、光吸収性を有している。遮光部75は、例えば、バインダー樹脂と、バインダー樹脂中に含有された光吸収粒子とを含んでいても良い。光吸収粒子としては、カーボンブラック又はチタンブラック等の黒色顔料が例示される。一方、透明部77は、可視光透過性を有している。
【0070】
遮光部75及び透明部77において、要求される機能に応じて、種々の断面形状が採用されても良い。本実施の形態においては、図3A及び図3Bに示すように、遮光部75の第1方向d1に沿った幅は、加飾シート50から離間するにつれて細くなるよう変化している。ここで、「加飾シートから離間するにつれて細くなるよう変化している」とは、加飾シート50からの距離に応じて連続的に変化し続けることのみを意味している訳ではない。「加飾シートから離間するにつれて細くなるよう変化している」とは、加飾シート50から離間するにともなって幅が狭くなる部分を含み、かつ、加飾シート50から離間するにともなって幅が太くなる部分を含まないことを意味している。なお、好ましくは、光制御層70の法線方向に沿った少なくとも一部の領域において、遮光部75の幅が連続的に減少していることが好ましい。
【0071】
具体的には、図10に示す例において、遮光部75の断面形状及び透明部77の断面形状は、それぞれ、上底が下底に比べて十分に小さい台形である。遮光部75において、台形の下底は、観察者側(すなわち加飾シート50側)を向いており、台形の上底は、表示装置10側(すなわちレンチキュラーレンズ層60側)を向いている。図10に示す断面において、遮光部75の第1方向d1に沿った最大長さは、例えば、10μm以上100μm以下であっても良い。また、図10に示す断面において、透明部77の第1方向d1に沿った最大長さは、例えば、10μm以上100μm以下であっても良い。
【0072】
図10に示す断面において、遮光部75の第1方向d1に沿った最大長さに対する、遮光部75の第1方向d1に直交する方向に沿った長さの比は、2以上であることが好ましい。このような場合、画像光の進行方向を適切に制御できる。より詳細には、画像光が、遮光部75の配列方向である第1方向d1に拡がることを抑制できる。また、図10に示す断面において、遮光部75の第1方向d1に沿った最大長さに対する、第1方向d1に直交する方向に沿った長さの比は、5以下であることが好ましい。これにより、画像光が遮光部75に吸収されてしまうことを抑制できる。このため、画像が暗く観察されることを抑制できる。
【0073】
遮光部75の第1方向d1における配列のピッチp5は、50μm以上200μm以下であっても良い。ピッチp5が50μm以上であることにより、遮光部75を容易に形成できる。ピッチp5が200μm以下であることにより、第1方向d1に対して傾斜した方向に進む画像光が透明部77を透過してしまうことを抑制できる。このため、画像光の進行方向を十分に制御できる。言い換えると、画像光が第1方向d1に拡がってしまうことを抑制できる。
【0074】
遮光部75及び透明部77は、異なる屈折率の材料で形成されていても良い。これにより、遮光部75と透明部77との界面を反射面とすることができる。この場合、反射面での反射により、遮光部75と透明部77との界面に入射した光の進行方向を変化させることができる。これにより、画像光が遮光部75で吸収されることを抑制しながら、画像光の進行方向を制御できる。
【0075】
ここで、上述した加飾シート50の透過部57の第3方向d3における配列のピッチp3(図4参照)は、レンチキュラーレンズ層60のレンズ部63の第1方向d1における配列のピッチp4(図7参照)より小さくなっていることが好ましい。また、光制御層70の遮光部75の第1方向d1における配列のピッチp5(図10参照)は、レンズ部63の第1方向d1における配列のピッチp4より小さいことが好ましい。さらに、遮光部75の第1方向d1における配列のピッチp5は、透過部57の第3方向d3における配列のピッチp3より小さいことが好ましい。すなわち、透過部57のピッチp3、レンズ部63のピッチp4及び遮光部75のピッチp5では、レンズ部63のピッチp4が最も大きく、遮光部75のピッチp5が最も小さいことが好ましい。
【0076】
次に、本実施の形態の加飾シート付き表示装置1の作用の一例について説明する。
【0077】
表示装置10の表示面11に画像を表示しない状態では、図11に示すように、加飾シート50の意匠部53によって形成される意匠が表示される。すなわち、加飾シート付き表示装置1は、観察されることが意図された意匠を表示できる。表示された意匠によって、表示装置10の表示面11が外部の観察者から観察されなくなり、意匠性において加飾シート付き表示装置1を周辺環境と調和させることができる。特に、遮蔽部55が意匠部53に対面する位置にのみ設けられている場合、遮蔽部55が観察者に観察されず、遮蔽部55によって加飾シート50の意匠性が害されることを抑制できる。
【0078】
一方、表示装置10が表示面11に画像を表示した状態では、表示装置10は、裸眼で視認され得る立体画像又は平面画像を表示する。表示装置10が立体画像を表示する場合、画像光は、レンチキュラーレンズ層60のレンズ部63によって屈折されて光制御層70の透明部77を透過した後、加飾シート50の透過部57及び基材部51を透過する。これにより、図12に示すように、加飾シート付き表示装置1の正面方向に位置する観察者が、画像を観察できるようになる。とりわけ、画像光がレンチキュラーレンズ層60のレンズ部63によって屈折されることで、図7に示す画像光L51R及びL51Lのように、観察者の右目及び左目には異なる画像が観察されるようになり、観察者が、画像を立体的に認識できるようになる。とりわけ、各位置における観察者の右目及び左目には異なる画像が観察されることになるため、図7に示す画像光L52R及びL52Lのように、観察者の観察方向が変化しても、観察者が、画像を立体的に認識できる。すなわち、加飾シート付き表示装置1は、観察されることが意図された画像を表示でき、外部の観察者が、画像を観察できるようになる。
【0079】
また、本実施の形態では、意匠部53は、遮蔽部55によって表示装置10側から覆われている。したがって、遮蔽部55によって、画像光が意匠部53へ入射することが妨げられる。このため、画像光が意匠部53を透過することにより、意匠部53によって表される意匠と、画像光とが混合して観察されることを防止できる。すなわち、意匠部53で特定波長域の可視光が吸収されることを防止できる。これにより、意匠部53における可視光の吸収に起因する、画像の色再現性の劣化を効果的に防止できる。また、遮蔽部55が意匠部53に対面する領域にのみ設けられている場合、透過部57を透過する画像光が、遮蔽部55によって妨げられることを防止できる。すなわち、画像光を効率的に利用して、画像を明るく表示できる。
【0080】
ところで、上述したように、従来の加飾シート付き表示装置において、表示装置が画像を表示するとモアレが観察されることがある。モアレは、表示装置の画素の規則的な配列と、加飾シートの透過部の規則的な配列とによって生じる。具体的には、規則的に配列された画素から出射した画像光は、画素の配列による周期性を含んでいる。また、画像光は、規則的に配列された透過部を透過することで、透過部の周期性を含んで、加飾シートから出射する。すなわち、加飾シートから出射する画像光では、画素の配列による周期性と透過部の配列による周期性とを含んでいる。これら2つの周期性が互いに干渉することで、観察される画像にモアレ(干渉縞)が生じる。このようなモアレは、表示装置に表示される画像の視認性を悪化させるため、モアレの発生を抑制することが望まれる。とりわけ、立体画像及び平面画像を表示する表示装置では、平面画像を表示するときは、画素のピッチ(周期性)に起因するモアレの発生を抑制し、かつ、立体画像を表示するときは、画素及びレンチキュラーレンズ層等のピッチ(周期性)に起因するモアレの発生を抑制することが求められる。
【0081】
モアレの発生を抑制するためには、干渉を生じさせる2つの要素が規則性を呈する方向を減らすことが有効であると考えられている。本実施の形態による加飾シート付き表示装置1では、透過部57が、第1方向d1及び第2方向d2の両方に非平行な第3方向d3に配列され、かつ、第3方向d3に非平行な第4方向d4に線状に延びている。これにより、透過部57が呈する規則性が、配列方向である第3方向d3のみによって生じるようになる。これにより、第1方向d1及び第2方向に配列する画素13の規則性と、第1方向d1に配列するレンチキュラーレンズ層60のレンズ部63の規則性と、第3方向d3に配列する透過部57の規則性と、の干渉によって生じるモアレの発生を効果的に抑制できる。
【0082】
ここで、図13に示すように、透過部57が、第4方向d4に沿って配列された複数の孔によって構成されている場合、透過部57が、第3方向d3における規則性に加えて、第4方向d4における規則性を呈するようになる。この場合、干渉し得る規則性が増えるため、モアレが生じやすくなり得る。これに対して、本実施の形態では、透過部57が、第1方向d1及び第2方向d2の両方に非平行な第3方向d3に配列され、かつ、第3方向d3に非平行な第4方向d4に線状に延びている。これにより、透過部57が呈する規則性が、配列方向である第3方向d3のみによって生じるようになる。これにより、画素13の規則性と、レンズ部63の規則性と、透過部57の規則性と、の干渉によって生じるモアレの発生を効果的に抑制できる。
【0083】
また、モアレの発生を抑制するためには、干渉を生じさせる要素の配列ピッチをずらすことも有効であると考えられている。本実施の形態の加飾シート付き表示装置1では、透過部57のピッチp3が、第1方向d1における画素13のピッチp1及び第2方向d2における画素13のピッチp2よりも短くなっている。これにより、画素13と、透過部57とが不規則に配置され得る。これにより、画素13の規則性と、透過部57の規則性と、の干渉によって生じるモアレの発生を効果的に抑制できる。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態によれば、加飾シート付き表示装置1が、第1方向d1及び第1方向d1に非平行な第2方向d2に配列された複数の画素13を有する表示装置10と、表示装置10に重ねて配置された加飾シート50と、を備えている。また、加飾シート50が、意匠を形成する複数の意匠部53と、意匠部53の非形成部である複数の透過部57と、を有している。さらに、透過部57が、第1方向d1及び第2方向d2の両方に非平行な第3方向d3に配列され、かつ、第3方向d3に非平行な第4方向d4に線状に延びている。これにより、透過部57が呈する規則性が、配列方向である第3方向d3のみによって生じるようになる。このため、第1方向d1及び第2方向に配列する画素13の規則性と、第1方向d1に配列するレンチキュラーレンズ層60のレンズ部63の規則性と、第3方向d3に配列する透過部57の規則性と、の干渉によって生じるモアレの発生を効果的に抑制できる。
【0085】
また、本実施の形態によれば、加飾シート50が、意匠を形成する複数の意匠部53と、意匠部53の非形成部である複数の透過部57と、を備えている。また、透過部57が、第3方向d3(第1配列方向)に配列され、かつ、第3方向d3に非平行な第4方向d4(第2配列方向)に線状に延びている。また、透過部57が、第4方向d4に沿って配置された複数の単位透過領域59を有している。また、単位透過領域59が、第4方向d4に延びる一対の側縁59aを含んでいる。さらに、一対の側縁59aが、互いに離間する方向へ凸となるように湾曲している。これにより、透過部57が、第4方向d4に沿って配列された複数の孔によって構成されている場合と比較して、一対の側縁59a(透過部57の外縁)の長さを短くできる。この場合、透過部57を形成する際に、側縁59aに沿って発生し得る意匠部53及び遮蔽部55の残渣を低減できる。また、残渣が低減されることにより、光の散乱も低減できる。このため、鮮明性を向上でき、かつ、ヘイズを低減できる。
【0086】
また、一対の側縁59aが互いに離間する方向へ凸となるように湾曲していることにより、加飾シート50がトップコート層を有している場合、基材部51、意匠部53及び遮蔽部55と、トップコート層との間の密着性を向上できる。すなわち、一対の側縁59aが互いに離間する方向へ凸となるように湾曲していることにより、トップコート層を形成する際に、トップコート層用の塗布液が、単位透過領域59同士の間に形成された凹部に入り込むようになる。このため、基材部51等と、トップコート層との間の密着性を向上できる。
【0087】
さらに、一対の側縁59aが互いに離間する方向へ凸となるように湾曲していることにより、意匠部53と透過部57との間の境界が、不明瞭になる。これにより、透過部57の存在をさらに視認されにくくすることができる。
【0088】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。
【0089】
例えば、上述した実施の形態において、加飾シート付き表示装置1が、レンチキュラーレンズ層60を備えている例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、加飾シート50が、パララックスバリアとして機能しても良い。この場合においても、透過部57が呈する規則性が、配列方向である第3方向d3のみによって生じるようになるため、画素13の規則性と、透過部57の規則性と、の干渉によって生じるモアレの発生を効果的に抑制できる。なお、加飾シート50がパララックスバリアとして機能する場合、第3方向d3は、第1方向d1及び第2方向d2の両方に非平行な方向となる。
【0090】
また、例えば、上述した実施の形態において、加飾シート付き表示装置1が、立体画像及び平面画像を表示する表示装置である例について説明したが、これに限られない。本実施の形態による加飾シート50は、平面画像のみを表示する表示装置に適用されても良い。
【0091】
上述した加飾シート付き表示装置1及び加飾シート50は、例えば自動車又は鉄道等の車両、航空機、船舶及び宇宙船等の移動体の内装部材又は外装部材に用いられ得る。具体的な適用例として、加飾シート50を有する加飾シート付き表示装置1は、自動車のセンターコンソール又はドアトリムに用いられても良い。あるいは、加飾シート付き表示装置1及び加飾シート50は、建物の内装部材又は外装部材、電子機器、家具又は電化製品に組み込まれて用いられても良い。
【符号の説明】
【0092】
1 加飾シート付き表示装置
10 表示装置
11 表示面
13 画素
50 加飾シート
53 意匠部
57 透過部
59 単位透過領域
59a 側縁
60 レンチキュラーレンズ層
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13