(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010725
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】振動デバイス
(51)【国際特許分類】
H04R 1/24 20060101AFI20250116BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20250116BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
H04R1/24 A
H04R17/00
H04R1/00 310F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112865
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆志
【テーマコード(参考)】
5D004
5D018
【Fターム(参考)】
5D004AA02
5D004CD07
5D004DD01
5D018AB02
(57)【要約】
【課題】圧電素子と振動体との間の振動の伝達ロスを回避しつつ、波長の長い振動の出力が可能となる振動デバイスを提供する。
【解決手段】圧電素子3を含む振動子2と、固定部5を介して振動子2に重なるように固定された振動体4と、を備え、固定部5は、振動子2及び振動体4の平面視において、中央側に位置する第1の固定部5Aと、固定部5よりも外側に位置する第2の固定部5Bと、を有し、第2の固定部5Bによる振動子2及び振動体4の変形許容性は、第1の固定部5Aによる振動子2及び振動体4の変形許容性よりも大きくなっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を含む振動子と、
固定部を介して前記振動子に重なるように固定された振動体と、を備え、
前記固定部は、前記振動子及び前記振動体の平面視において、中央側に位置する第1の固定部と、前記第1の固定部よりも外側に位置する第2の固定部と、を有し、
前記第2の固定部による前記振動子及び前記振動体の変形許容性は、前記第1の固定部による前記振動子及び前記振動体の変形許容性よりも大きくなっている、振動デバイス。
【請求項2】
前記第2の固定部は、前記第1の固定部から離間している、請求項1記載の振動デバイス。
【請求項3】
前記第2の固定部は、前記第1の固定部を挟むように一対に配置されている、請求項1記載の振動デバイス。
【請求項4】
前記第2の固定部は、前記振動子の縁と重なるように配置されている、請求項1記載の振動デバイス。
【請求項5】
前記第2の固定部は、前記振動子の縁よりも外側に張り出すように配置されている、請求項1記載の振動デバイス。
【請求項6】
前記第2の固定部において、前記振動子の縁よりも外側に位置する領域の面積は、前記振動子の縁よりも内側に位置する領域の面積よりも大きくなっている、請求項5記載の振動デバイス。
【請求項7】
前記第1の固定部は、前記振動子の縁から離間して前記振動子の縁よりも内側に位置している、請求項1~6のいずれか一項記載の振動デバイス。
【請求項8】
前記第1の固定部の厚さと前記第2の固定部の厚さとは、互いに等しくなっている、請求項1~6のいずれか一項記載の振動デバイス。
【請求項9】
前記第1の固定部と前記振動子との対向領域は、前記第2の固定部と前記振動子との対向領域よりも大きくなっている、請求項1~6のいずれか一項記載の振動デバイス。
【請求項10】
前記第1の固定部は、両面テープによって構成され、
前記第2の固定部は、スポンジと、当該スポンジの両面に設けられた両面テープとによって構成されている、請求項1~6のいずれか一項記載の振動デバイス。
【請求項11】
前記振動子には、前記第1の固定部と中心位置を一致させた状態で錘部材が固定されている、請求項1~6のいずれか一項記載の振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の振動デバイスとして、例えば特許文献1に記載の透明スピーカがある。この透明スピーカは、両面に透明電極を有する圧電素子をユニモルフ型又はバイモルフ型に振動体に固定することによって構成されている。表面の透明電極のリード部は、裏面の透明電極とは電気的に絶縁された状態で、裏面に回り込んでいる。振動体には、導電性を有する透明樹脂又は透明電極材で構成された一対のリード線が配置され、表裏の透明電極のそれぞれと電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような圧電素子を用いた振動デバイスは、一般に、波長の長い振動(すなわち低音)の出力を不得手としていた。波長の長い振動の出力を高めるためには、圧電素子と振動体との結合構造を工夫することが考えられるが、圧電素子と振動体との間の振動の伝達ロスも合わせて考慮する必要がある。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、圧電素子と振動体との間の振動の伝達ロスを回避しつつ、波長の長い振動の出力が可能となる振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る振動デバイスは、圧電素子を含む振動子と、固定部を介して振動子に重なるように固定された振動体と、を備え、固定部は、振動子及び振動体の平面視において、中央側に位置する第1の固定部と、第1の固定部よりも外側に位置する第2の固定部と、を有し、第2の固定部による振動子及び振動体の変形許容性は、第1の固定部による振動子及び振動体の変形許容性よりも大きくなっている。
【0007】
この振動デバイスでは、中央側の第1の固定部の変形許容性を抑えることで、振動子で生じた振動をロスを抑えた状態で振動体に伝達できる。一方、外側の第2の固定部の変形許容性が確保されることで、振動体をより広範囲に振動させることができる。これにより、振動子が同一の周波数で振動した場合であっても、振動子の全面が変形許容性の乏しい固定部で振動体に固定されている場合と比較して、波長の長い振動が出力し易くなる。したがって、この振動デバイスでは、圧電素子と振動体との間の振動の伝達ロスを回避しつつ、波長の長い振動の出力が可能となる。
【0008】
第2の固定部は、第1の固定部から離間していてもよい。この場合、波長の短い振動が振動子から振動体に伝達することを抑制できる。したがって、低音に比重を置いた振動デバイスを構築できる。
【0009】
第2の固定部は、第1の固定部を挟むように一対に配置されていてもよい。これにより、振動子の振動によって振動体をより広範囲に振動させることができる。したがって、波長の長い振動が一層出力し易くなる。
【0010】
第2の固定部は、振動子の縁と重なるように配置されていてもよい。これにより、振動体をより広範囲に振動させることができる。したがって、波長の長い振動が一層出力し易くなる。
【0011】
第2の固定部は、振動子の縁よりも外側に張り出すように配置されていてもよい。これにより、振動子の振動によって振動体をより広範囲に振動させることができる。したがって、波長の長い振動が一層出力し易くなる。
【0012】
第2の固定部において、振動子の縁よりも外側に位置する領域の面積は、振動子の縁よりも内側に位置する領域の面積よりも大きくなっていてもよい。これにより、振動子の振動によって振動体をより広範囲に振動させることができる。したがって、波長の長い振動が一層出力し易くなる。
【0013】
第1の固定部は、振動子の縁から離間して振動子の縁よりも内側に位置していてもよい。この場合、振動子で生じた振動をロスを一層抑えた状態で振動体に伝達できる。
【0014】
第1の固定部の厚さと第2の固定部の厚さとは、互いに等しくなっていてもよい。この場合、初期の状態で振動子及び振動体が応力フリーとなり、入力に対して理想的な振動の出力が可能となる。
【0015】
第1の固定部と振動子との対向領域は、第2の固定部と振動子との対向領域よりも大きくなっていてもよい。この場合、振動子が十分な面積をもって振動体に固定されるため、振動子で生じた振動をロスを一層抑えた状態で振動体に伝達できる。
【0016】
第1の固定部は、両面テープによって構成され、第2の固定部は、スポンジと、当該スポンジの両面に設けられた両面テープとによって構成されていてもよい。これにより、簡便な構成で、第1の固定部による振動子及び振動体の変形許容性と、第2の固定部による振動子及び振動体の変形許容性との差を生じさせることができる。
【0017】
振動子には、第1の固定部と中心位置を一致させた状態で錘部材が固定されていてもよい。この場合、振動子の振動を錘部材の慣性で増幅できる。したがって、振動デバイスの出力の増大化が図られる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、圧電素子と振動体との間の振動の伝達ロスを回避しつつ、波長の長い振動の出力が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の一実施形態に係る振動デバイスを示す模式的な断面図である。
【
図2】
図1に示した振動デバイスの要部を示す模式的な平面図である。
【
図3】(a)は比較例に係る振動デバイスの振動時の様子を示す模式的な図であり、(b)は本実施形態に係る振動デバイスの振動時の様子を示す模式的な図である。
【
図4】(a)~(c)は、本開示の変形例に係る振動デバイスの要部を示す模式的な平面図である。
【
図5】振動デバイスの出力音圧の評価試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る振動デバイスの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本開示の一実施形態に係る振動デバイスを示す模式的な断面図である。また、
図2は、
図1に示した振動デバイスの要部を示す模式的な平面図である。
図2では、説明の便宜上、後述する錘部材9及びその固定部10の図示を省略している。
図1及び
図2に示す振動デバイス1は、例えばスピーカなどの音響デバイスとして構成されている。振動デバイス1は、例えばヘッドセット、或いはヘッドアップディスプレイといった外部装置に組み込まれ、当該装置におけるオーディオ出力部として機能する。
【0022】
振動デバイス1は、
図1及び
図2に示すように、圧電素子3を含む振動子2と、固定部5を介して振動子2に重なるように固定された振動体4と、を含んで構成されている。本実施形態では、振動子2は、圧電素子3と、不図示の配線部材とを有している。振動子2は、平面視において、例えば長方形状をなしている。振動子2は、ユニモルフ型及びバイモルフ型のいずれであってもよい。振動子2は、圧電素子3に加えて、樹脂或いは金属によって構成された振動板(振動体4とは別の振動板)を更に有していてもよい。
【0023】
本実施形態では、圧電素子3は、厚さ方向に扁平な直方体形状をなしている。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている形状、角部及び稜線部が丸められている形状も含まれ得る。圧電素子3は、圧電素体、内部電極、及び一対の外部電極を有している。圧電素体は、複数の圧電体層の積層体によって構成されている。各圧電体層は、圧電セラミックなどの圧電材料によって形成され、内部電極と交互に積層されている。圧電セラミック材料としては、例えばPZT[Pb(Zr、Ti)O3]、PT(PbTiO3)、PLZT[(Pb,La)(Zr、Ti)O3]、又はチタン酸バリウム(BaTiO3)などが挙げられる。
【0024】
各圧電体層は、例えば上述した圧電セラミックを含むセラミックグリーンシートの焼結体によって構成されている。実際の圧電素体では、各圧電体層は、各圧電体層の間の境界が認識できない程度に一体化されている。圧電素体内には、複数の内部電極(不図示)が配置されている。各内部電極は、導電性材料によって形成されている。導電性材料としては、例えばAg、Pd、Ag-Pd合金などが挙げられる。
【0025】
配線部材は、圧電素子3と外部装置とを電気的に接続する部材である。配線部材としては、例えばフレキシブルプリント基板(FPC)が用いられる。配線部材の一端は、圧電素子3の一対の外部電極のそれぞれに電気的に接続される。配線部材と外部電極との接続には、例えば異方導電性接着剤を用いることができる。配線部材の他端は、圧電素子から引き出され、外部装置に電気的に接続される。
【0026】
振動体4は、例えば金属、樹脂、紙などによって構成された板状或いはシート状の部材である。金属材料としては、例えばNi-Fe合金、Ni、黄銅、ステンレス鋼などが挙げられる。樹脂材料としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどが挙げられる。振動体4の平面形状は、特に限定はなく、矩形状、円形状など、種々の形状を採り得る。振動体4の面積は、振動子2の面積に比べて十分大きくなっている。振動体4は、振動子2(圧電素子3)が厚さ方向に変動することによって振動し、所定の振動周波数に基づく音を出力する。
【0027】
振動体4は、固定部5を介して振動子2に重なるように固定されている。固定部5は、
図2に示すように、振動子2及び振動体4の平面視において、中央側に位置する第1の固定部5Aと、当該第1の固定部5Aよりも外側に位置する第2の固定部5Bとによって構成されている。
【0028】
第2の固定部5Bによる振動子2及び振動体4の変形許容性は、第1の固定部5Aによる振動子2及び振動体4の変形許容性よりも大きくなっている。ここでの変形許容性とは、固定部5による振動子2と振動体4との間の拘束力と言い換えることもできる。本実施形態では、かかる変形許容性の差異を生じさせるため、第1の固定部5Aのヤング率が第2の固定部5Bのヤング率よりも大きくなっている。
【0029】
具体的な構成として、本実施形態では、第1の固定部5Aは、両面テープ6によって構成され、第2の固定部5Bは、スポンジ7などの弾性を有する部材の両面にそれぞれ両面テープ8を設けることによって構成されている。
図2の例では、第1の固定部5Aの厚さと第2の固定部5Bの厚さとは、互いに等しくなっている。第1の固定部5Aの厚さと第2の固定部5Bの厚さとは、厳密に一致している必要はなく、製造誤差などに基づく厚さの差は許容され得る。
【0030】
第2の固定部5Bでは、スポンジ7の厚さが当該スポンジ7の両面の両面テープ8の厚さの合計よりも大きくなっている。第1の固定部5Aと第2の固定部5Bとの間で厚さを揃える関係上、スポンジ7の両面の両面テープ8の厚さの合計は、第1の固定部5Aを構成する両面テープ6の厚さよりも小さくなっている。
【0031】
図2に示すように、振動子2及び振動体4の平面視において、第1の固定部5A及び第2の固定部5Bは、いずれも長方形状をなしている。ここでは、第1の固定部5Aの中心位置は、振動子2の中心位置と一致しており、当該第1の固定部5Aによって振動子2の中央部分が振動体4に対して固定されている。第1の固定部5Aは、振動子2の縁から離間して振動子2の縁よりも内側に位置している。第1の固定部5Aの長辺5aの延在方向は、振動子2の短辺2bの延在方向に沿い、第1の固定部5Aの短辺5bの延在方向は、振動子2の長辺2aの延在方向に沿っている。第1の固定部5Aの長辺5aは、振動子2の短辺2bよりも内側に位置し、第1の固定部5Aの短辺5bは、振動子2の長辺2aよりも内側に位置している。
【0032】
なお、本実施形態では、
図1に示すように、振動子2には、第1の固定部5Aと中心位置を一致させた状態で錘部材9が固定されている。錘部材9は、例えば金属或いは樹脂によって板状に形成され、固定部10を介して振動子2における振動体4と反対側に固定されている。振動子2及び振動体4の平面視において、錘部材9は、例えば第1の固定部5Aよりも一回り小さい長方形状をなしている。また、固定部10は、振動子2及び振動体4の平面視において、例えば第1の固定部5Aと同じ寸法の長方形状をなし、第1の固定部5Aと同じ領域に重なっている。
【0033】
第2の固定部5Bは、中央の第1の固定部5Aを挟むように一対に配置されている。ここでは、第2の固定部5Bは、第1の固定部5Aから離間した状態で、振動子2の短辺2bに沿ってそれぞれ配置され、当該第2の固定部5Bによって振動子2における長辺2aの延在方向の端部が振動体4に対して固定されている。第2の固定部5Bは、振動子2の縁、すなわち、短辺2bと重なるように配置され、さらに、短辺2bよりも外側に張り出すように配置されている。第1の固定部5Aと第2の固定部5Bとの間では、振動子2は、固定部5によって固定されておらず、フリーに振動可能となっている。
【0034】
第2の固定部5Bの長辺5cの延在方向は、振動子2の短辺2bの延在方向に沿い、第2の固定部5Bの短辺5dの延在方向は、振動子2の長辺2aの延在方向に沿っている。第2の固定部5Bの長辺5cの一方は、振動子2の短辺2bよりも内側に位置し、振動子2の長辺2aの延在方向において、第1の固定部5Aの長辺5aの一方と所定の間隔をもって対向している。第2の固定部5Bの長辺5cの他方は、振動子2の短辺2bよりも外側に位置している。第2の固定部5Bの短辺5dは、振動子2の短辺2bの延在方向において、振動子2の長辺2aよりも内側に位置している。
【0035】
本実施形態では、振動子2の短辺2bの延在方向における第2の固定部5Bの短辺5dの位置は、第1の固定部5Aの短辺5bの位置と揃っている。第2の固定部5Bの短辺5dは、振動子2の短辺2bの延在方向において、振動子2の長辺2aの延長線よりも内側に位置している。振動子2の4つの角部Dは、振動子2及び振動体4の平面視において第2の固定部5Bとは重なっておらず、これらの角部Dは、フリーに振動可能となっている。
【0036】
図2の例では、第1の固定部5Aと振動子2との対向領域(すなわち、振動子2及び振動体4の平面視において、第1の固定部5Aと振動子2とが重なる面積R1)は、第2の固定部5Bと振動子2との対向領域(すなわち、振動子2及び振動体4の平面視において、第2の固定部5Bと振動子2とが重なる面積R2)よりも大きくなっている。また、第2の固定部5Bにおいて、振動子2の縁よりも外側に位置する領域の面積R3は、振動子2の縁よりも内側に位置する領域の面積(すなわち、前述の面積R2)よりも大きくなっている。
【0037】
以上のような構成を有する振動デバイス1では、中央側の第1の固定部5Aの変形許容性を抑えることで、振動子2で生じた振動をロスを抑えた状態で振動体4に伝達できる。一方、外側の第2の固定部5Bの変形許容性が確保されることで、振動体4をより広範囲に振動させることができる。例えば
図3(a)に示すように、振動子102の全面を固定部105(両面テープ)によって振動体104に固定した比較例の振動デバイス101では、固定部105による振動体104への振動子102の拘束力が強くなる。このため、所定の振動周波数で振動子102が振動した場合に、振動体104が振動子102と同程度の範囲L1において大きな曲率で振動し、波長の長い振動が出力しにくくなる。
【0038】
これに対し、本実施形態の振動デバイス1では、
図3(b)に示すように、振動子2の中央部分が第1の固定部5Aで強く拘束される一方で、第1の固定部5Aに比べて変形許容性が大きい第2の固定部5Bによって、振動子2の両端部分の拘束力が中央部分の拘束力に比べて弱められている。これにより、振動子2が
図3(a)の場合と同一の周波数で振動した場合であっても、振動体104が振動子102よりも広い範囲L2において小さな曲率で振動し、波長の長い振動が出力し易くなる。したがって、この振動デバイス1では、圧電素子3と振動体4との間の振動の伝達ロスを回避しつつ、波長の長い振動の出力が可能となる。
【0039】
本実施形態では、第2の固定部5Bが第1の固定部5Aから離間している。このような構成によれば、波長の短い振動が振動子2から振動体4に伝達することを抑制できる。したがって、低音に比重を置いた振動デバイス1を構築できる。
【0040】
本実施形態では、第2の固定部5Bが第1の固定部5Aを挟むように一対に配置されている。また、第2の固定部5Bは、振動子2の縁と重なるように配置され、さらに、振動子2の縁よりも外側に張り出すように配置されている。これにより、振動子2の振動によって振動体4をより広範囲に振動させることができる。したがって、波長の長い振動が一層出力し易くなる。
【0041】
本実施形態では、第2の固定部5Bにおいて、振動子2の縁よりも外側に位置する領域の面積R3が、振動子2の縁よりも内側に位置する領域の面積R2よりも大きくなっている。このような構成により、振動体4をより広範囲に振動させることができる。したがって、波長の長い振動が一層出力し易くなる。
【0042】
本実施形態では、第1の固定部5Aが振動子2の縁から離間して振動子2の縁よりも内側に位置している。このような構成によれば、振動子2で生じた振動をロスを一層抑えた状態で振動体4に伝達できる。
【0043】
本実施形態では、第1の固定部5Aの厚さと第2の固定部5Bの厚さとが互いに等しくなっている。これにより、初期の状態で振動子2及び振動体4が応力フリーとなり、入力に対して理想的な振動の出力が可能となる。
【0044】
本実施形態では、、第1の固定部5Aと振動子2との対向領域は、第2の固定部5Bと振動子2との対向領域よりも大きくなっていてもよい。これにより、振動子2が十分な面積をもって振動体4に固定されるため、振動子2で生じた振動をロスを一層抑えた状態で振動体4に伝達できる。
【0045】
本実施形態では、第1の固定部5Aは、両面テープ6によって構成され、第2の固定部5Bは、スポンジ7と、当該スポンジ7の両面に設けられた両面テープ8,8とによって構成されている。これにより、簡便な構成で、第1の固定部5Aによる振動子2及び振動体4の変形許容性と、第2の固定部5Bによる振動子2及び振動体4の変形許容性との差を生じさせることができる。
【0046】
本実施形態では、振動子2には、第1の固定部5Aと中心位置を一致させた状態で錘部材9が固定されている。これにより、振動子2の振動を錘部材9の慣性で増幅できる。したがって、振動デバイス1の出力の増大化が図られる。
[変形例]
【0047】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、第2の固定部5Bが振動子2の短辺2bの延在方向に沿って延びているが、
図4(a)に示すように、第2の固定部5Bが振動子2の短辺2bの延在方向に複数の部分に分割されていてもよい。また、第2の固定部5Bは、必ずしも振動子2の縁よりも外側に張り出すように配置されていなくてもよく、
図4(b)に示すように、振動子2及び振動体4の平面視において、第2の固定部5Bの長辺5cの他方が振動子2の短辺2bに一致していてもよい。図示しないが、第2の固定部5Bの長辺5cの他方が振動子2の短辺2bよりも内側に位置していてもよい。
【0048】
また、第2の固定部5Bは、必ずしも第1の固定部5Aから離間していなくてもよく、
図4(c)に示すように、第1の固定部5Aの長辺5aが第2の固定部5Bの長辺5cの一方と接していてもよい。
図4(c)の態様では、第2の固定部5Bと振動子2との対向領域が第1の固定部5Aと振動子2との対向領域よりも大きくなっているが、このような態様も本開示に含まれ得る。
[振動デバイスの評価試験]
【0049】
この評価試験では、実施例及び比較例に係る振動デバイスのサンプルを作製し、それぞれのサンプルにおける出力音圧レベル(SPL: Sound Pressure Level)を測定したものである。実施例1では、
図2に示した形態と同様に、圧電素子を含む振動子を中央の第1の固定部及び第1の固定部を挟む一対の第2の固定部によって振動体に固定した。第1の固定部は、両面テープによって構成し、第2の固定部は、スポンジと、スポンジの両面に設けられた両面テープとによって構成した。実施例2では、樹脂製の振動板を有する圧電素子を振動子に用いた実施例1と同じ構成とした。比較例1では、
図3(a)に示した形態と同様に、圧電素子を含む振動子の全面を両面テープによって振動体に固定した。測定にあたっては、入力電圧を12Vppとし、マイク距離を10cmとした。
【0050】
図5は、振動デバイスの出力音圧の評価試験結果を示す図である。同図に示すように、100Hz~1000Hzの周波数帯において、実施例1,2の振動デバイスの出力音圧は、比較例の振動デバイスと比べて最大20dB程度の向上が見られた。この結果から、本開示のように、第2の固定部による振動子及び振動体の変形許容性を第1の固定部による振動子及び振動体の変形許容性よりも大きくする構成が、圧電素子と振動体との間の振動の伝達ロスを回避しつつ、波長の長い振動の出力に寄与することが確認できた。
【0051】
本開示の要旨は、以下の[1]~[11]に示すとおりである。
[1]圧電素子を含む振動子と、固定部を介して前記振動子に重なるように固定された振動体と、を備え、前記固定部は、前記振動子及び前記振動体の平面視において、中央側に位置する第1の固定部と、前記第1の固定部よりも外側に位置する第2の固定部と、を有し、前記第2の固定部による前記振動子及び前記振動体の変形許容性は、前記第1の固定部による前記振動子及び前記振動体の変形許容性よりも大きくなっている、振動デバイス。
[2]前記第2の固定部は、前記第1の固定部から離間している、[1]記載の振動デバイス。
[3]前記第2の固定部は、前記第1の固定部を挟むように一対に配置されている、[1]又は[2]記載の振動デバイス。
[4]前記第2の固定部は、前記振動子の縁と重なるように配置されている、[1]~[3]のいずれか記載の振動デバイス。
[5]前記第2の固定部は、前記振動子の縁よりも外側に張り出すように配置されている、[1]~[4]のいずれか記載の振動デバイス。
[6]前記第2の固定部において、前記振動子の縁よりも外側に位置する領域の面積は、前記振動子の縁よりも内側に位置する領域の面積よりも大きくなっている、[5]記載の振動デバイス。
[7]前記第1の固定部は、前記振動子の縁から離間して前記振動子の縁よりも内側に位置している、[1]~[6]のいずれか記載の振動デバイス。
[8]前記第1の固定部の厚さと前記第2の固定部の厚さとは、互いに等しくなっている、[1]~[7]のいずれか記載の振動デバイス。
[9]前記第1の固定部と前記振動子との対向領域は、前記第2の固定部と前記振動子との対向領域よりも大きくなっている、[1]~[8]のいずれか記載の振動デバイス。
[10]前記第1の固定部は、両面テープによって構成され、前記第2の固定部は、スポンジと、当該スポンジの両面に設けられた両面テープとによって構成されている、[1]~[9]のいずれか記載の振動デバイス。
[11]前記振動子には、前記第1の固定部と中心位置を一致させた状態で錘部材が固定されている、[1]~[10]のいずれか記載の振動デバイス。
【符号の説明】
【0052】
1…振動デバイス、2…振動子、3…圧電素子、4…振動体、5…固定部、5A…第1の固定部、5B…第2の固定部、6…両面テープ、7…スポンジ、8…両面テープ、9…錘部材。