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特開2025-1073ミストシャワー設備及びそのバリデーション方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001073
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】ミストシャワー設備及びそのバリデーション方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 16/25 20180101AFI20241225BHJP
   B05B 12/12 20060101ALI20241225BHJP
   B08B 5/02 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
B05B16/25
B05B12/12
B08B5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100435
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】595145050
【氏名又は名称】株式会社日立プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】末松 孝章
【テーマコード(参考)】
3B116
4D073
4F035
【Fターム(参考)】
3B116AA46
3B116AB53
3B116BB22
3B116BB62
3B116BB88
4D073AA10
4D073BB03
4D073CA20
4D073CB02
4D073DA03
4D073DA05
4D073DD01
4D073DD35
4F035AA01
4F035AA02
4F035BB15
4F035BB16
(57)【要約】
【課題】本発明は、湿潤状態の防護服について所定の薬塵保持率を担保することができるミストシャワー設備を提供する。
【解決手段】本発明は、ミストシャワー室1内で所定の薬塵保持率を担保するように防護服を湿潤させるミストシャワー設備E1であって、
ミストシャワー室1内に配置された吸湿性素材(ろ紙5)の吸湿量を測定する吸湿性素材測定手段(ろ紙吸湿量測定手段6)と、予め取得したミスト雰囲気における吸湿性素材吸湿量(ろ紙吸湿量)と、湿潤状態の防護服素材の薬塵保持率との関係を表す関数に基づいて、測定した前記吸湿性素材(ろ紙5)の吸湿量に対応する薬塵保持率を演算する薬塵保持率演算手段7と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミストシャワー室内で湿潤状態の防護服が所定の薬塵保持率を担保することを検証するバリデーション方法であって、
ミスト雰囲気における吸湿性素材吸湿量と、湿潤状態の防護服素材の薬塵保持率との関係を表す関数を予め取得する工程と、
ミストシャワー室内の所定の測定ポイントに吸湿性素材を設置する工程と、
前記測定ポイントにおける前記吸湿性素材の吸湿量を測定する工程と、
測定した前記吸湿性素材の吸湿量に対応する薬塵保持率を前記関数から求めてミストシャワー室内で湿潤状態の前記防護服の薬塵保持率を演算する工程と、
を有することを特徴とするバリデーション方法。
【請求項2】
ミストシャワー室内で所定の薬塵保持率を担保するように防護服を湿潤させるミストシャワー設備であって、
ミストシャワー室内に配置された吸湿性素材の吸湿量を測定する吸湿性素材吸湿量測定手段と、
予め取得したミスト雰囲気における吸湿性素材吸湿量と、湿潤状態の防護服素材の薬塵保持率との関係を表す関数に基づいて、測定した前記吸湿性素材の吸湿量に対応する薬塵保持率を演算する薬塵保持率演算手段と、
を備えることを特徴とするミストシャワー設備。
【請求項3】
前記薬塵保持率演算手段は、前記ミストシャワー室内に設定された複数箇所の前記吸湿性素材の吸湿量の測定ポイントのうち、前記ミストシャワー室内で前記吸湿性素材の吸湿量が最も少ない測定ポイントで、所定値以上の薬塵保持率が担保されるように、シャワーノズルの水供給弁とエア供給弁の開閉又は開度を制御する制御部を有することを特徴とする請求項2に記載のミストシャワー設備。
【請求項4】
前記制御部は、前記シャワーノズルの噴霧開始時に前記ミストシャワー室内の相対湿度が所定値以下の場合に、前記シャワーノズルの通常噴霧工程における噴霧量よりもこの通常噴霧工程に先立つ初期噴霧工程における噴霧量を増加させるように前記シャワーノズルの水供給弁とエア供給弁の開閉又は開度を制御することを特徴とする請求項3に記載のミストシャワー設備。
【請求項5】
前記吸湿性素材が、吸湿性の高分子化学製品、又は天然繊維であることを特徴とする請求項1に記載のバリデーション方法。
【請求項6】
前記吸湿性素材が、吸湿性の高分子化学製品、又は天然繊維であることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のミストシャワー設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミストシャワー設備及びそのバリデーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高薬理活性医薬品の製造室(クリーンルーム)、又は高薬理活性医薬品を取り扱う部屋に隣接するように設けられるミストシャワー設備が知られている(例えば、特許文献1参照)。このミストシャワー設備では、製造室等での作業員の着衣(防護服)に湿潤化処理が施される。これにより防護服に付着した薬塵が脱衣時に再飛散することが防止される。再飛散した高薬理活性医薬品の吸引や経皮吸収によって作業者に及ぼす弊害がより適切に回避される。また、製造室から高薬理活性医薬品が漏れ出ることがより適切に回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-146167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、防護服の湿潤化処理は、防護服の全体に亘って満遍なく行う必要がある。防護服に対して満遍なく湿潤化処理が行われたか否かの検証は、一般には感水紙を用いる方法が採用されている。具体的には、防護服の表面(頭、腕、胸、背中、足、脇の下等の部位)に感水紙を貼り、湿潤化処理後の感水紙が変色することによって防護服が湿潤状態にあることが確認される。
しかしながら、感水紙を用いる方法は、変色した感水紙によって、湿潤した防護服には薬塵が保持されているであろうことが定性的に確認されるに止まる。すなわち、感水紙を用いる方法では、湿潤状態の防護服に保持された薬塵の割合(薬塵保持率)を導くことはできない。感水紙を用いる方法は、湿潤状態の防護服について所定の薬塵保持率を担保するミストシャワー設備のバリデーションに応用することができない。
【0005】
本発明の課題は、湿潤状態の防護服について所定の薬塵保持率を担保することができるミストシャワー設備及びそのバリデーション方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成した本発明は、ミストシャワー室内で湿潤状態の防護服が所定の薬塵保持率を担保することを検証するバリデーション方法であって、ミスト雰囲気における吸湿性素材吸湿量と、湿潤状態の防護服素材の薬塵保持率との関係を表す関数を予め取得する工程と、ミストシャワー室内の所定の測定ポイントに吸湿性素材を設置する工程と、前記測定ポイントにおける前記吸湿性素材の吸湿量を測定する工程と、測定した前記吸湿性素材の吸湿量に対応する薬塵保持率を前記関数から求めてミストシャワー室内で湿潤状態の前記防護服の薬塵保持率を演算する工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、前記課題を達成した本発明は、ミストシャワー室内で所定の薬塵保持率を担保するように防護服を湿潤させるミストシャワー設備であって、ミストシャワー室内に配置された吸湿性素材の吸湿量を測定する吸湿性素材吸湿量測定手段と、予め取得したミスト雰囲気における吸湿性素材吸湿量と、湿潤状態の防護服素材の薬塵保持率との関係を表す関数に基づいて、測定した前記吸湿性素材の吸湿量に対応する薬塵保持率を演算する薬塵保持率演算手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、湿潤状態の防護服について所定の薬塵保持率を担保することができるミストシャワー設備及びそのバリデーション方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係るミストシャワー設備の構成説明図である。
図2】本実施形態のバリデーション方法の工程説明図である。
図3A】バリデーション方法で使用する要素試験用ミストシャワー室の概略図である。
図3B】バリデーション方法で使用するろ紙吸湿量と防護服素材の薬塵保持率との関係を示すグラフである。
図4】第1実施形態に係るミストシャワー設備におけるろ紙吸湿量とミスト噴霧時間との関係を示すグラフである。
図5】本発明の第1実施形態に係るミストシャワー設備の変形例の構成説明図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るミストシャワー設備の構成説明図である。
図7】本発明の第3実施形態に係るミストシャワー設備の構成説明図である。
図8A】本発明の第3実施形態に係るミストシャワー設備における噴霧量と経過時間(ミスト噴霧時間)との関係を示すグラフである。
図8B】本発明の第3実施形態に係るミストシャワー設備における相対湿度と経過時間(ミスト噴霧時間)との関係を示すグラフである。
図9】本発明の第3実施形態に係るミストシャワー設備の第1変形例の構成説明図である。
図10A】第1変形例に係るミストシャワー設備における塵埃計(光学系セル)の乾燥手段の構成説明図である。
図10B図10Aの乾燥手段による乾燥工程の説明図である。
図11】本発明の第3実施形態に係るミストシャワー設備の第2変形例の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明のミストシャワー設備を実施するための形態(実施形態)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明のミストシャワー設備は、防護服に付着した高薬理活性の薬塵が粉立ちして再飛散しないように防護服にウェットダウン(湿潤化処理)を行うものである。また、本実施形態のミストシャワー設備は、防護服が所定の薬塵保持率を担保するようにミストシャワー室内で防護服を湿潤させる構成となっている。
【0011】
(第1実施形態)
<ミストシャワー設備>
図1は、本発明の第1実施形態に係るミストシャワー設備E1の構成説明図である。
図1に示すように、本実施形態に係るミストシャワー設備E1は、ミストシャワー室1と、ミストシャワー室1内に複数配置されたシャワーノズル2と、シャワーノズル2に水を供給する水供給手段3と、シャワーノズル2にエアを供給するエア供給手段4と、を備えている。また、本本実施形態に係るミストシャワー設備E1は、ミストシャワー室1内に配置されたろ紙5の吸湿量を測定するろ紙吸湿量測定手段6と、測定したろ紙5の吸湿量に基づいて湿潤状態の防護服の薬塵保持率を演算する薬塵保持率演算手段7と、を備えている。
【0012】
ここで、ろ紙5は特許請求の範囲にいう「吸湿性素材」に相当する。また、ろ紙吸湿量測定手段6は特許請求の範囲にいう「吸湿性素材吸湿量測定手段」に相当する。
なお、以下では、本発明における「吸湿性素材」について、セルロース繊維を主体としたろ紙5を例にとって説明するが、「吸湿性素材」はこれに限定されるものではない。吸湿性素材としては、公知の吸湿性素材であればよく、例えば、アクリル酸誘導体ポリマ、ポリアクリロニトリル誘導体ポリマ、N-ビニルアセトアミドを主モノマとするアルコール性ポリマなどの吸水性ポリマからなるものの他、ウール、カシミア、絹、綿、麻などの天然繊維、ナイロン、キュプラ、レーヨン、アセテートなどの合成繊維などからなるものが挙げられる。また、吸湿性素材の形態としては、織物、編物、不織布等であってもよいし、所定の開放容器、包袋などに充填された粉体などの固形物、ゲル状組成物であっても構わない。
中でも、吸湿性素材は、ろ紙、吸湿性の高分子化学製品、及び天然繊維からなるものが好ましい。
【0013】
ミストシャワー室1は、図示を省略するが、高薬理活性医薬品の製造室(クリーンルーム)、又は高薬理活性医薬品を取り扱う部屋に隣接するように設けられている。なお、ミストシャワー室1が高薬理活性医薬品の製造室、又は高薬理活性医薬品を取り扱う部屋の中にブース(小区画部屋)として設置されるケースもある。
本実施形態でのミストシャワー室1は、防護服を着た立位の作業者が手を挙げた状態で転回するのに十分な直方体の内部空間を有するものを想定している。このようなミストシャワー室1には、ミストシャワー室1の内部空間を密閉可能なように、作業者の出入口が設けられている。本実施形態での作業者の出入口は、ミストシャワー室1の4つの側面のうち1つの側面に設けたものを想定しているが、これに限定されるものではない。ミストシャワー室1は、入口と出口を別々に設けた構成とすることもできる。
【0014】
本実施形態でのシャワーノズル2は、水とエアとを供給してミストを生成する二流体ノズルを想定している。このような二流体ノズルによれば、選定する二流体ノズルの流量線図によるが、水の供給圧を0.2MPa以下、エアの供給圧を0.5MPa以下とすることで、平均粒径50μm以下の微細なミストを生成することができる。
【0015】
本実施形態でのシャワーノズル2の数は、ミストシャワー室1の容積や作業者のシャワーを浴びる時間にもよるが、複数が好ましく、3個以上がより好ましい。シャワーノズル2の位置としては、ミストシャワー室1内に所定のミスト濃度の雰囲気を形成することができれば、ミストシャワー室1の床面を除く側面や天井面に配置することができる。
なお、本実施形態でのシャワーノズル2は、ミストシャワー室1の出入口(図示を省略)が設けられる側面の対向面において、上下方向に等間隔に3つ並ぶものを想定しているがこれに限定されるものではない。
【0016】
水供給手段3は、図1に示すように、シャワーノズル2に配管P1を介して接続される水タンク8と、配管P1の延在途中に設けられる開閉弁V1とを備えて構成されている。
水タンク8は、後記するエア供給手段4を構成する蓄気タンク9から供給される圧縮エアによって、貯留された水を前記した所定圧でシャワーノズル2に送り込むようになっている。開閉弁V1が開かれることによって水はシャワーノズル2に供給される。シャワーノズル2に共有する水の圧力は、図示しないレギュレータで元の圧力から減圧して供給することが好ましい。なお、本実施形態での水の供給形態は、エアの圧力により押し込む方式となっているが、これに限定されるものではなく、水を直接ポンプでレギュレータを経て開閉弁V1に供給しても構わない。
本実施形態での開閉弁V1は、ユーザが手動にて開閉操作するものを想定している。
【0017】
エア供給手段4は、図1に示すように、シャワーノズル2に配管P2を介して接続されるコンプレッサ11と、配管P2の延在途中に設けられる蓄気タンク9と、蓄気タンク9の下流側で配管P2に設けられる開閉弁V2とを備えて構成されている。
コンプレッサ11から送り出される圧縮エアは、蓄気タンク9にて所定圧で貯留される。
蓄気タンク9のエアは、開閉弁V2が開かれることによってシャワーノズル2に供給される。シャワーノズル2に供給されるエアは、図示しないフィルタ(ろ過度5μm以下)にて塵埃とドレンを除去するのが好ましい。また、エアの圧力は、図示しないレギュレータで元の圧力から減圧して供給することが望ましい。本実施形態での開閉弁V2は、ユーザが手動にて開閉操作するものを想定している。
【0018】
そして、水とエアとが供給されたシャワーノズル2は、ミストシャワー室1内に微細なミストを発生させる。ミストシャワー室1内には、所定のミスト濃度のミスト雰囲気が形成される。
【0019】
ろ紙吸湿量測定手段6は、ミストシャワー室1内に配置されたろ紙5の質量を測定するとともに、測定した質量の検出信号を出力する。
本実施形態でのろ紙吸湿量測定手段6は、ミストシャワー室1内に浮遊するミストを徐々に吸収して経時的に質量を増していくろ紙を秤量し、その質量検出信号を出力する電子天秤で構成されている。
ろ紙吸湿量測定手段6は、ミストシャワー室1のミスト雰囲気における平均的なミスト濃度となる位置を、偏りなく複数箇所選択して配置される。ろ紙吸湿量測定手段6の配置数としては、3箇所以上が好ましい。
複数のろ紙吸湿量測定手段6のそれぞれは、個別に信号線W1を介して次に説明する薬塵保持率演算手段7に質量検出信号をオンラインにて出力する。
【0020】
薬塵保持率演算手段7は、ろ紙吸湿量測定手段6が測定したろ紙5の吸湿量に基づいて湿潤状態の防護服の薬塵保持率を演算する。具体的には、薬塵保持率演算手段7は、予め取得したろ紙吸湿量と薬塵保持率との関係を参照して、ろ紙吸湿量測定手段6が測定したろ紙吸湿量に対応する薬塵保持率を演算する。
本実施形態での薬塵保持率演算手段7は、汎用のパーソナルコンピュータを想定している。薬塵保持率演算手段7は、ROM(Read Only Memory)に記憶されたプログラムを読み出してRAM(Random Access Memory)に展開し、CPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することで演算処理を行う。
本実施形態での薬塵保持率演算手段7が行う薬塵保持率の演算処理手順、及びこの演算処理に使用するろ紙吸湿量と薬塵保持率との関係を表す関数については、次に説明するミストシャワー設備E1のバリデーション方法とともに説明する。
【0021】
<バリデーション方法>
本実施形態におけるミストシャワー設備E1(図1参照)のバリデーション方法は、ミストシャワー室1(図1参照)内で湿潤状態の防護服が所定の薬塵保持率を担保することの検証に用いられる。
なお、本実施形態での防護服の薬塵保持率(%)は、作業者が製造室(クリーンルーム)から退出してミストシャワー室1に入室した際の防護服に付着した薬塵総質量(A)に対するミストシャワー室1外で脱衣後の防護服に付着している薬塵総質量(B)の質量比(100B/A)にて定義される。
【0022】
図2は、本実施形態のバリデーション方法の工程説明図である。
図2に示すように、バリデーション方法は、ミスト雰囲気におけるろ紙吸湿量と、防護服素材の薬塵保持率との関係を表す関数を予め取得する工程(ステップS101)と、ミストシャワー室内の所定の測定ポイントにろ紙を設置する工程(ステップS102)と、前記測定ポイントにおける前記ろ紙の吸湿量を測定する工程(ステップS103)と、測定した前記ろ紙の吸湿量に対応する薬塵保持率を前記関数から求めてミストシャワー室内で湿潤状態の前記防護服の薬塵保持率を推定する工程(ステップS104)と、を有している。
【0023】
バリデーション方法の工程のうち、ステップS101では、まず要素試験用ミストシャワー室が用意される。
図3Aは、要素試験用ミストシャワー室12(以下、単に「ミストシャワー室12」と称する)の概略図である。
図3Aに示すように、ミストシャワー室12には、ミストシャワー室12内にミスト雰囲気を形成する複数のシャワーノズル13と、試料台14とが配置されている。
【0024】
本実施形態でのミストシャワー室12は、天井面に設けられる一つのシャワーノズル13と、4つの内側の壁面のうち1つの壁面に、縦並びで等間隔に設けられる3つのシャワーノズル13とを有するものを想定している。だだし、シャワーノズル13は、ミストシャワー室12内にほぼ均一なミスト雰囲気を形成できれば、その数及び配置箇所について特に限定するものではない。なお、本実施形態でのシャワーノズル13は、二流体ノズルを想定している。
【0025】
試料台14は、ミストシャワー室12内で、シャワーノズル13からの直接噴霧流に暴露されない位置に配置される。好ましくは試料台14は、ミストシャワー室12のミスト雰囲気における平均的なミスト濃度となる位置に配置される。
なお、本実施形態での試料台14は、シャワーノズル13が配置される壁面に直交する横壁面の壁幅方向中央で、床面から500mm前後の高さに配置されるものを想定している。
【0026】
次いで、このステップS101においては、シャワーノズル13にて形成されたミスト雰囲気に暴露される試料台14上に、薬塵を付着させた防護服素材が載置される。この薬塵試料としては、ISPE(国際製薬技術協会、International Society for Pharmaceutical Engineering)が提唱しているSMEPAC (Standardized Measurement of Particulate Airborne Concentration)と称されるガイドラインにおいて、機器の封じ込め性能評価での代替試料(危険が伴う実薬の代替試料)の一つとして取り上げられているラクトース粉体が使用される。
ただし、防護服素材に付着させる疑似薬は、ラクトース粉体に限定されるものではなく、SMEPACの代替試料として挙げられているナプロキセンナトリウム、アセトアミノフェン、リボフラビン等を用いることができる。また、製造する高薬理活性医薬品の粉体の性状にあわせて、試験者に危険が伴わない範囲で様々な疑似薬を適宜に選択することができる。
【0027】
防護服素材としては、前記の高薬理活性医薬品の製造室(クリーンルーム)、又は高薬理活性医薬品を取り扱う部屋で作業者が使用する防護服の素材が用意される。例えば、防護服が高密度ポリエチレン繊維からなる不織布で形成されている場合には、防護服から所定面積(例えば、100mm×100mm四方)で切り出された不織布が防護服素材として使用される。
【0028】
防護服素材への疑似薬(ラクトース粉体)の付着は、防護服素材の表面に篩を通した疑似薬を満遍なく振り掛けることにより行う。その後、徒歩速度(2km/h)の成人男性に生じる振動に相当する振動を振とう機にて防護服素材に加える。これにより余分な疑似薬(ラクトース粉体)を取り掃うことで試料台14に載置する防護服素材のサンプルピースを調製することができる。
【0029】
次に、このステップS101では、ミスト雰囲気に所定時間暴露した防護服素材をミストシャワー室12から取り出して、作業者の防護服の脱衣時に生じる振動に相当する振動を振とう機にて防護服素材に加える。これにより脱衣後における防護服の薬塵保持率に相当する薬塵保持率の防護服素材を得る。
すなわち、防護服素材の薬塵保持率(%)は、成人男性の速度2km/h程度での歩行時に生じる振動に相当する振動が加えられた後に防護服素材に残存する薬塵総質量を「A1」とし、防護服の脱衣時に生じる振動に相当する振動が加えられた後の防護服素材に残存する薬塵総質量を「B1」とした際の質量百分率「100B1/A1」にて定義される。
【0030】
なお、薬塵総質量「A1」は、試料台14に載置するサンプルピースの質量から疑似薬を付着させる前の防護服素材の質量を差し引いて求めることができる。また、薬塵総質量「B1」は、防護服の脱衣時に生じる振動に相当する振動を加えた後の防護服素材から公知の全有機炭素濃度(TOC)の分析法など(例えば、JIS K 0805準拠)にて求めることができる。
【0031】
次に、このステップS101では、試料台14に市販のろ紙(例えば、JIS P 3801に規定の化学分析用ろ紙)を載置することによって、所定時間におけるろ紙吸湿量を測定する。具体的には、防護服素材をミスト雰囲気に暴露した時間と同じ時間でのろ紙吸湿量を測定する。このろ紙吸湿量は、ミストシャワー室12から取り出したろ紙の質量から試料台14に載置する前のろ紙の質量を差し引いた値をろ紙面積(m)で除した値(g/m)として求めることができる。
そして、このステップS101では、ミストシャワー室12のミスト雰囲気における防護服素材とろ紙の暴露時間を変更して防護服素材の薬塵保持率(%)とろ紙吸湿量(g/m)との関係を求める。これにより防護服素材の薬塵保持率とろ紙吸湿量(g/m)との相関関係を表す関数を取得することができる。
なお、本実施形態ではミストの吸湿量を測定するためにろ紙5を使用したが、前記のように、これに限定されるものではなく、ポリエステルやナイロン、アクリルなどの高分子化学製品の素材や綿や麻などの天然繊維を適度な大きさに調整した試料にミストを吸湿させて吸湿質量(g/m)を測定しても構わない。その際は、ステップS101(図3)で防護服素材の薬塵保持率(%)との関係を表す関数を取得する時も、吸湿量を測定する際に使う試料と同じ素材を使用する。
【0032】
図3Bは、ろ紙吸湿量(g/m)と防護服素材の薬塵保持率(%)との関係を示すグラフである。
図3Bに示すように、ミスト雰囲気でのろ紙の暴露時間に応じてミストの吸着量であるろ紙吸湿量(g/m)が増加すると、初期段階S1ではろ紙吸湿量(g/m)の増加に応じて防護服素材の薬塵保持率(%)も増加する。
すなわち、防護服素材の湿潤化処理が進んで防護服素材における薬塵量も増加していく。
【0033】
そして、さらにろ紙吸湿量(g/m)が増加すると、防護服素材の薬塵保持率(%)の好適段階S2を迎える。また、さらにろ紙吸湿量(g/m)が増加して、好適段階S2から過湿段階S3を迎えると、薬塵保持率(%)は、徐々に低下していく。このような薬塵保持率(%)の低下は、過湿状態の防護服素材からの液だれに伴って疑似薬(ラクトース粉体)が除去されたことに基づく。
なお、本実施形態のバリデーション方法においては、好適段階S2での薬塵保持率90%以上の範囲を液だれによる高薬理活性医薬品の移動を防止しつつ高い薬塵保持率(%)となるバリテーションにて担保すべき基準薬塵保持率として設定している。
【0034】
図3B中、符号ARは、好適段階S2におけるろ紙吸湿量(g/m)の範囲であり、この範囲ARには網掛けを付している。図3B中、符号LLは、範囲ARにおけるろ紙吸湿量(g/m)の下限であり、符号ULは、範囲ARにおけるろ紙吸湿量(g/m)の上限である。
そして、図3Bに示すグラフに対応するろ紙吸湿量(g/m)と薬塵保持率(%)との関係を表す関数は、図1に示す薬塵保持率演算手段7(パーソナルコンピュータ)の所定のROMに予め格納される。
【0035】
ステップS102(図2参照)においては、図1に示すように、所定のミスト濃度に維持されたミストシャワー室1内の所定の測定ポイントである3つのろ紙吸湿量測定手段6(電子天秤)にろ紙5が設置される。
ろ紙吸湿量測定手段6のそれぞれは、連続して又は断続的にろ紙5の質量検出信号を、信号線W1を介して薬塵保持率演算手段7(パーソナルコンピュータ)に出力する。
【0036】
ステップS103(図2参照)においては、薬塵保持率演算手段7(図1参照)は、ろ紙吸湿量測定手段6(図1参照)からの質量検出信号に基づいて、吸湿したろ紙5(図1参照)の質量を特定するとともに、ろ紙吸湿量(g/m)を演算する。
薬塵保持率演算手段7によるろ紙吸湿量(g/m)の演算は、複数のろ紙吸湿量測定手段6、すなわち本実施形態では3つの電子天秤のそれぞれが出力した質量検出信号ごとに行われる。
吸湿量を測定するためにろ紙ではなく、その他の吸湿性素材(高分子化学製品や天然繊維)を用いる時は、ステップS102、S103(図3)でも、同素材が用いられる。
【0037】
図4は、ミストシャワー室1(図1参照)におけるろ紙吸湿量(g/m)と、シャワーノズル2(図1参照)のミスト噴霧時間との関係を示すグラフである。
図4中、「最大値」は、各ろ紙吸湿量測定手段6(図1参照)から出力される質量検出信号に基づいて薬塵保持率演算手段7が演算したろ紙吸湿量(g/m)のうち最大のものであり、「最小値」は、最小のものである。また、「平均値」は、各ろ紙吸湿量測定手段6(図1参照)から出力される質量検出信号に基づいて薬塵保持率演算手段7が演算したろ紙吸湿量(g/m)の算術平均である。
また、図4中、符号LLで示す点線は、図3Bに示した好適段階S2におけるろ紙吸湿量(g/m)の範囲ARの下限を表し、符号ULで示す点線は、上限を表している。
【0038】
図4に示すように、ろ紙吸湿量(g/m)は、シャワーノズル2(図1参照)によるミストの噴霧時間に応じて増加していく。
本実施形態のバリデーション方法においては、図4に示すように、薬塵保持率演算手段7(図1参照)が演算したろ紙吸湿量(g/m)の「最小値」と「最大値」の両方が、好適段階S2(図3B参照)における上限UL以下であることを前提に、下限LLを超えた際に、ミストシャワー室1(図1参照)内での防護服の薬塵保持率(%)が予め設定される基準薬塵保持率(例えば、薬塵保持率90%以上)を担保していると判定する。
【0039】
また、薬塵保持率演算手段7(図1参照)は、ろ紙吸湿量(g/m)の「最小値」と「最大値」の両方が、好適段階S2(図3B参照)における下限LLを超えた噴霧時刻CTをバリデーション方法における薬塵保持率(%)の担保時刻として記憶する。
そして、薬塵保持率演算手段7(パーソナルコンピュータ)は、担保すべき薬塵保持率(%)に達した担保時刻(図4に示す噴霧時刻CT)に至った際に、その旨を図示しないモニタに表示することができ、その旨をユーザに知らせるビープ音などの警告音を発生させることもできる。
【0040】
ステップS104(図2参照)においては、薬塵保持率演算手段7(図1参照)は、予め取得しているろ紙吸湿量(g/m)と薬塵保持率(%)との関係を表す関数に基づいて、演算したろ紙吸湿量(g/m)に対応する防護服素材の薬塵保持率(%)を求める。
そして、本実施形態でのバリデーション方法は、薬塵保持率演算手段7(図1参照)が求めた防護服素材の薬塵保持率(%)が、ミストシャワー室1(図1参照)内での防護服の薬塵保持率(%)であると推定する。このバリデーション方法によれば、作業員がミストシャワー室に入室し、湿潤処理前の作業員着用の防護服に付着した薬塵の質量(g)が定量されていれば、推定した防護服の薬塵保持率(%)に基づいて、湿潤状態の防護服に保持された薬塵の質量(g)を求めることができる。
また、薬塵保持率演算手段7(パーソナルコンピュータ)は、推定した防護服の薬塵保持率(%)や防護服に保持された薬塵の推定質量(g)を図示しないモニタに表示することができる。
【0041】
次に、本実施形態のミストシャワー設備E1(図1参照)及びそのバリデーション方法の奏する効果について説明する。
本実施形態のミストシャワー設備E1及びそのバリデーション方法は、予め取得したミスト雰囲気におけるろ紙吸湿量(g/m)と、湿潤状態の防護服素材の薬塵保持率(%)との関係を表す関数に基づいて、測定したろ紙5の吸湿量(g/m)に対応する薬塵保持率(%)を演算する。
このようなミストシャワー設備E1及びそのバリデーション方法によれば、湿潤状態の防護服について所定の薬塵保持率を担保することができる。また、このようなミストシャワー設備E1及びそのバリデーション方法によれば、作業員がミストシャワー室1に入室し、湿潤処理前の作業員着用の防護服に付着した薬塵の質量(g)が定量されていれば、湿潤状態の防護服に保持された薬塵を定量することができる。
【0042】
(第1実施形態の変形例)
図5は、第1実施形態に係るミストシャワー設備E1(図1参照)の変形例E2の構成説明図である。以下では、第1実施形態に係るミストシャワー設備E1(図1参照)と同じ構成要素については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図5に示すように、ミストシャワー設備E2は、第1実施形態に係るミストシャワー設備E1(図1参照)のろ紙吸湿量測定手段6(図1参照)をミストシャワー室1の外に配置した構成となっている。このミストシャワー設備E2を使用したバリデーション方法においては、ミストシャワー室1の任意の位置に設置した試料台20の上に配置したろ紙5を、ミスト噴霧操作後にミストシャワー室1の外側に人手による操作で持ち出し、ろ紙吸湿量測定手段6で質量変化を素早く測定する。以下、測定した前記ろ紙5の吸湿量に対応する薬塵保持率を、薬塵保持率演算手段7に予め格納されたろ紙吸湿量(g/m)と薬塵保持率(%)との関係を表す関数により推定する。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るミストシャワー設備E3について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係るミストシャワー設備E3の構成説明図である。
以下では、第1実施形態に係るミストシャワー設備E1(図1参照)と同じ構成要素については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0044】
図6に示すように、本発明の第2実施形態に係るミストシャワー設備E3は、第1実施形態に係るミストシャワー設備E1(図1参照)の手動による開閉弁V1,V2に代えて、薬塵保持率演算手段7(パーソナルコンピュータ)によって開閉又は開度が制御される水用の電磁弁V3と、エア用の電磁弁V4とが配置されている。
【0045】
そして、ミストシャワー設備E3の薬塵保持率演算手段7(パーソナルコンピュータ)は、ミストシャワー室1内に設定された複数のろ紙吸湿量測定手段6(測定ポイント)のうち、ミストシャワー室1内でろ紙5の吸湿量が最も少ないろ紙吸湿量測定手段6(測定ポイント)で、所定値以上の薬塵保持率(%)が担保されるように、電磁弁V3(シャワーノズルの水供給弁)と電磁弁V4(シャワーノズルのエア供給弁)の開閉又は開度を制御する制御部Cを有している。
【0046】
このようなミストシャワー設備E3によれば、信号線W2を介した電磁弁V3,V4の薬塵保持率演算手段7(パーソナルコンピュータ)による制御によって、自動でミストシャワー設備E1のバリデーション方法を実施することができる。
【0047】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るミストシャワー設備E4について説明する。
図7は、本発明の第3実施形態に係るミストシャワー設備E4の構成説明図である。図8Aは、ミストシャワー室1(図7参照)におけるミスト噴霧量と経過時間(ミスト噴霧時間)との関係を示すグラフである。図8Bは、ミストシャワー室1(図7参照)における相対湿度と経過時間(ミスト噴霧時間)との関係を示すグラフである。
【0048】
図7に示すように、第3実施形態に係るミストシャワー設備E4は、第2実施形態に係るミストシャワー設備E3(図6参照)と異なって、ミストシャワー室1内の温度と湿度とを測定する温湿度計15を備えている。このミストシャワー設備E4の制御部Cは、温湿度計15から信号性W3を介して出力される温湿度検出信号によって、ミストシャワー室1内の相対湿度を検出するように構成されている。
以下では、第2実施形態に係るミストシャワー設備E3(図6参照)と同じ構成要素については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0049】
ミストシャワー設備E4における薬塵保持率演算手段7(制御部C)は、シャワーノズル2からのミスト噴霧開始時に、ミストシャワー室1内の相対湿度が所定値以下の場合に、シャワーノズル2の通常噴霧工程におけるミスト噴霧量よりもこの通常噴霧工程に先立つ初期噴霧工程におけるミスト噴霧量を増加させるようにシャワーノズル2の電磁弁V3,V4の開閉又は開度を制御する。
このようなミストシャワー設備E4は、相対湿度が所定値以下の場合に、図8Aに示すように、初期噴霧工程ESにおいて、通常噴霧工程NSよりも噴霧量(mL/min)が大きくなるようなミスト噴霧が行われる。
【0050】
このようなミストシャワー設備E4によれば、図8B中、破線で示すように、通常噴霧のみではミストシャワー室1内の相対湿度の立ち上がりが緩慢であるところ、初期噴霧工程ES(図8A参照)でミスト噴霧量を増加させることによって、図8B中、実線にて示すように、相対湿度の立ち上がりが急峻となる。
このようなミストシャワー設備E4によれば、ミスト噴霧開始時に、ミストシャワー室1内の相対湿度が所定値以下の場合であっても、ミストシャワー室1内を比較的早期に所定のミスト濃度に設定することができる。
【0051】
(第3実施形態の第1変形例)
図9は、第3実施形態に係るミストシャワー設備E4(図7参照)の第1変形例の構成説明図である。以下では、第3実施形態に係るミストシャワー設備E4(図7参照)と同じ構成要素については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図9に示すように、第1変形例に係るミストシャワー設備E5は、第3実施形態に係るミストシャワー設備E4(図7参照)のろ紙吸湿量測定手段6(図7参照)に代えて、予めろ紙5(図7参照)の質量変化と関連付けされたミストの定量を行う塵埃計16(パーティクルカウンタ)を備えている。
【0052】
第1変形例に係るミストシャワー設備E5は、ミストシャワー室1内のミスト量を測定する塵埃計16と、ミストシャワー室1に対する噴霧開始から塵埃計16により測定されるミスト量の積算値を演算し、演算したミスト量の積算値に基づいて防護服素材における所定の薬塵保持率(%)を演算する薬塵保持率演算手段7とを備えることを特徴とする。
具体的には、薬塵保持率演算手段7は、演算したミスト量の積算値をろ紙吸湿量(g/m)に換算することで、ミストシャワー設備E4(図7参照)における薬塵保持率演算手段7と同じ手順で薬塵保持率(%)を演算する。
このような第1変形例に係るミストシャワー設備E5によれば、ろ紙5(図7参照)を消費することなく防護服の薬塵保持率(%)を演算することができる。
【0053】
また、第1変形例に係るミストシャワー設備E5は、図9に示すように、塵埃計16の光学系セル(図示を省略)を所定のタイミングで乾燥させる乾燥手段17を有している。
図10Aは、乾燥手段17の構成説明図である。図10Bは、乾燥手段17による乾燥工程の実施のタイミングを説明するチャートである。
【0054】
図10Aに示すように、乾燥手段17は、塵埃計16のサンプリング管P3に配置された開閉弁V6と、サンプリング管P3における開閉弁V6の下流側に合流するように接続されるエア供給管P4と、エア供給管P4に配置された開閉弁V7と、エア供給管P4における開閉弁V7の上流側に配置されたHEPAフィルタ18とを備えている。
図10Bに示すように、乾燥工程は、シャワーノズル2(図9参照)によるミスト噴霧開始時T1と、ミストシャワー設備E5(図9参照)の全停止(待機)時T3との間におけるミスト噴霧停止時T2に行われる。
【0055】
具体的に説明すると、図10Bに示すミスト噴霧開始時T1には、開閉弁V7(図10A参照)が閉じられた状態で、開閉弁V6(図10A参照)が開かれる。これにより塵埃計16(図10A参照)は、サンプリング管P3(図10A参照)を介して所定のミスト濃度のエアをミストシャワー室1(図9参照)から吸引する。塵埃計16(図10A参照)は、光学系セル(図示を省略)を通過するエアのミスト濃度を測定する。
【0056】
図10Bに示すミスト噴霧停止時T2には、開閉弁V6(図10A参照)が閉じられて、開閉弁V7(図10A参照)が開かれる。これにより塵埃計16(図10A参照)は、HEPAフィルタ18を通過した乾燥エアを、エア供給管P4(図10A参照)を介して吸引する。ミスト噴霧開始時T1(図10B参照)にミストで湿潤した光学系セル(図示を省略)は、吸引した乾燥エアによって乾燥する。
そして、ミストシャワー設備E5(図9参照)の全停止(待機)時T3(図10B参照)に、図10Aに示す開閉弁V6と開閉弁V7とが閉じられて一連の塵埃計16の(図10A参照)の乾燥工程が終了する。
【0057】
このような乾燥手段17(図10A参照)を有するミストシャワー設備E5(図9参照)は、乾燥手段17(図10A参照)が無く、光学系セル(図示を省略)を自然乾燥させるミストシャワー設備E5(図9参照)と比べて、ミストシャワー設備E5の待機時間を短縮することができる。
【0058】
(第3実施形態の第2変形例)
図11は、第3実施形態に係るミストシャワー設備E4(図7参照)の第2変形例の構成説明図である。以下では、第3実施形態に係るミストシャワー設備E4(図7参照)と同じ構成要素については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図11に示すように、第2変形例に係るミストシャワー設備E6は、第3実施形態に係るミストシャワー設備E4(図7参照)のろ紙吸湿量測定手段6(図7参照)に代えて、予めろ紙5(図7参照)の質量変化と関連付けされたミストの定量を行うイオン測定器19を備えている。
【0059】
第2変形例に係るミストシャワー設備E6は、ミストシャワー室1内のミスト量を帯電微粒子量として測定するイオン測定器19と、ミストシャワー室1に対する噴霧開始からイオン測定器19により測定される帯電微粒子量の積算値を演算し、演算した帯電微粒子量の積算値に基づいて防護服素材における所定の薬塵保持率(%)を演算する薬塵保持率演算手段7とを備えることを特徴とする。
具体的には、薬塵保持率演算手段7は、演算した帯電微粒子量の積算値をろ紙吸湿量(g/m)に換算することで、ミストシャワー設備E4(図7参照)における薬塵保持率演算手段7と同じ手順で薬塵保持率(%)を演算する。
【0060】
このような第2変形例に係るミストシャワー設備E6によれば、ろ紙5(図7参照)を消費することなく防護服の薬塵保持率(%)を演算することができる。
また、このような第2変形例に係るミストシャワー設備E6によれば、第1変形例に係るミストシャワー設備E5と同様に、所定のタイミングでイオン測定器19の検出部の電極(図示を省略)を清浄エアによって乾燥させることが好ましい。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 ミストシャワー室
5 ろ紙
E1 ミストシャワー設備
E2 ミストシャワー設備
E3 ミストシャワー設備
E4 ミストシャワー設備
6 紙吸湿量測定手段(測定ポイント)
7 薬塵保持率演算手段
2 シャワーノズル
V3 電磁弁(水供給弁)
V4 電磁弁(エア供給弁)
C 制御部
ES シャワーノズルの初期噴霧工程
NS シャワーノズルの通常噴霧工程
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11