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特開2025-107551軟質ポリウレタンフォーム及びシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025107551
(43)【公開日】2025-07-18
(54)【発明の名称】軟質ポリウレタンフォーム及びシート
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20250711BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20250711BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20250711BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/42
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000923
(22)【出願日】2024-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 涼佑
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034CA03
4J034CB02
4J034CB07
4J034CC09
4J034CD05
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DC02
4J034DC43
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF22
4J034DG01
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG08
4J034DG09
4J034DG14
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB06
4J034HB08
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA32
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KC16
4J034KC17
4J034KC18
4J034KC23
4J034KC35
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD07
4J034KD08
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA01
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA06
4J034NA08
4J034QB01
4J034QB13
4J034QB14
4J034QB15
4J034QB17
4J034QB19
4J034QD03
4J034RA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】難燃性を有する軟質ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】軟質ポリウレタンフォームは、ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルと、芳香族含有ポリエステルポリオールとを含むポリオール組成物Aと、イソシアネートと、を含むポリウレタンフォーム製造用組成物から得られる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルと、芳香族含有ポリエステルポリオールとを含むポリオール組成物Aと、
イソシアネートと、
を含むポリウレタンフォーム製造用組成物から得られる軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
難燃性ポリウレタンフォームである請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の軟質ポリウレタンフォームを備えるシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軟質ポリウレタンフォーム及びシートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、特定のリン化合物を配合した、炭化性能に優れた軟質又は半硬質難燃性ポリウレタンフォームが記載されている。
【0003】
特許文献2には、難燃性を有する軟質ポリウレタンフォームの製造方法が記載されている。この製造方法は、ポリオールとして、アルデヒド縮合系樹脂微粒子またはアルデヒド縮合系樹脂微粒子と重合性不飽和基含有モノマーの重合体微粒子が分散してなる、特定の組成のポリマー分散ポリオール(I)を使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-130801号公報
【特許文献2】特開平9-59339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軟質ポリウレタンフォームに、難燃性を付与する技術が検討されている。しかし、従来の技術は、以下のような点について改善が求められている。例えば、従来用いられている含ハロゲンリン系難燃剤は、環境負荷低減のために、添加量の低減又は不使用が求められている。また、軟質ポリウレタンフォームには、難燃性能を更に向上し、種々の用途の難燃規格を満たすことも求められている。また、軟質ポリウレタンフォームには、難燃性を担保しつつ、諸物性を確保することも求められる。
本開示は、上述した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、難燃性を有する軟質ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルと、芳香族含有ポリエステルポリオールとを含むポリオール組成物Aと、
イソシアネートと、
を含むポリウレタンフォーム製造用組成物から得られる軟質ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、難燃性を有する軟質ポリウレタンフォームを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔1〕 ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルと、芳香族含有ポリエステルポリオールとを含むポリオール組成物Aと、
イソシアネートと、
を含むポリウレタンフォーム製造用組成物から得られる軟質ポリウレタンフォーム。
〔2〕 難燃性ポリウレタンフォームである〔1〕に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
〔3〕 〔1〕又は〔2〕に記載の軟質ポリウレタンフォームを備えるシート。
【0009】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。また、本明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0010】
1.軟質ポリウレタンフォーム
軟質ポリウレタンフォームは、ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルと、芳香族含有ポリエステルポリオールとを含むポリオール組成物Aと、イソシアネートと、を含むポリウレタンフォーム製造用組成物から得られる。
【0011】
「ポリオール組成物A」は、ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルと、芳香族含有ポリエステルポリオールとを含む。
ポリウレタンフォーム製造用組成物に含まれるポリオールのうちで、「ポリオール組成物A」に含まれないポリオールを「ポリオール組成物B」とも称する。「ポリオール組成物B」は、1種又は2種以上のポリオールを含む。
ポリウレタンフォーム製造用組成物に含まれるポリオール全体という場合は、「ポリオール組成物A」と「ポリオール組成物B」の合計を意味する。
【0012】
(1)ポリオール組成物A
ポリオール組成物Aの水酸基価、官能基数、重量平均分子量は、特に限定されない。
ポリオール組成物Aの水酸基価は、好ましくは100mgKOH/g以上400mgKOH/g以下であり、より好ましくは120mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であり、更に好ましくは150mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である。
ポリオール組成物Aの官能基数は、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下であり、更に好ましくは2.5以下である。ポリオール組成物Aの官能基数は、通常、1より大きく、1.5以上である。なお、ポリオール組成物Aの官能基数は、ポリオール組成物A全体に含まれる各成分の官能基数と、各成分のモル分率から算出できる。
ポリオール組成物Aの重量平均分子量は、好ましくは100以上2000以下であり、より好ましくは200以上1500以下であり、更に好ましくは400以上1000以下である。本開示において、ポリオールの重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法により測定できる。
【0013】
ポリオール組成物Aにおいて、ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルと、芳香族含有ポリエステルポリオールとの質量比は特に限定されない。ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステル:芳香族含有ポリエステルポリオールの質量比は、例えば、0.1:99.9~99.8:0.2が好ましく、5:95~90:10がより好ましく、5:95~80:20が更に好ましい。
【0014】
ポリオール組成物Aの含有量は、ポリウレタンフォーム製造用組成物に含まれるポリオール全体を100質量部とした場合に、耐燃焼性(難燃性)の観点から、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、8質量部以上であることが更に好ましい。上記のポリオール組成物Aの含有量は、軟質ポリウレタンフォームの諸物性の観点から、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることが更に好ましい。これらの観点から、上記のポリオール組成物Aの含有量は、3質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、8質量部以上15質量部以下であることが更に好ましい。
以下、ポリオール組成物Aの成分の好ましい例について説明する。
【0015】
(1.1)ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステル
上記のポリオールは、例えば、多価アルコール、多価フェノール、多価アルコール又は多価フェノールのアルキレンオキサイド(以下AOと略記)付加物、及びアミンのAO付加物及び多価アルコールとポリカルボン酸又はラクトンとから誘導されるポリエステルポリオールから選ばれる1種以上が好ましい。
不飽和カルボン酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。部分エステルとは、ポリオールの有する水酸基の一部が不飽和カルボン酸でエステル化されていることを意味する。
【0016】
ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルの製造に用いる多価アルコールは、例えば、炭素数(以下、Cと略記する)3~18の3~5価の多価アルコール、C2~18の2価アルコール、及びC5~18の6~10価の多価アルコール又はそれ以上の多価アルコールからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
C3~18(好ましくは3~12)の3~5価の多価アルコールの具体例は、アルカンポリオール及びその分子内又は分子間脱水物、例えば、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ジグリセリン;糖類及びその誘導体、例えば、α-メチルグルコシド、キシリトール、グルコース、フルクトース;等である。
C2~18(好ましくは2~12)の2価アルコールの具体例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-及び1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール並びにネオペンチルグリコール等である。
C5~18(好ましくは5~12)の6~10価又はそれ以上の多価アルコールの具体例は、6~10価のアルカンポリオール、及び多価アルカンポリオールの分子内又は分子間脱水物、例えば、ジペンタエリスリトール;糖類及びその誘導体、例えば、ソルビトール、マンニトール、ショ糖;等である。
【0017】
ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルは、1種のみでもよく、2種以上であってもよい。ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルは、ジペンタエリスリトールとアクリル酸とを反応させた化合物を少なくとも含むことが好ましい。
【0018】
ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルは活性水素含有基を少なくとも1個有し、好ましくは1~8個、さらに好ましくは1~5個、特に好ましくは1~3個、最も好ましくは1~2個有する。活性水素含有基が1~8個であるとポリウレタン樹脂の成形時の硬化性が良好である。
なお、ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルのビニル重合性官能基数及び活性水素含有基数は、反応混合物等組成が単一でない場合は、数平均の個数を用いる。
【0019】
ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルの活性水素価は、10~1300であり、圧縮硬さ等の機械物性の観点から、20~1000が好ましく、さらに好ましくは30~600、特に好ましくは40~500である。
ここで、活性水素価は、「56100/活性水素1個当たりの分子量」を意味し、活性水素を有する基が水酸基の場合、水酸基価に相当する。活性水素価の測定方法は、上記定義の値を測定できる方法であれば公知の方法でよく、特に限定されないが、水酸基価の場合、例えばJIS K1557-1に記載の方法が挙げられる。
【0020】
ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルのビニル重合性官能基濃度(mmol/g)は、耐燃焼性(難燃性)の観点から、好ましくは1.0~13.0であり、より好ましくは2.0~10.1である。
【0021】
(1.2)芳香族含有ポリエステルポリオール
芳香族含有ポリエステルポリオールは、例えば、活性水素含有化合物とポリカルボン酸(脂肪族ポリカルボン酸や芳香族ポリカルボン酸)との縮合反応で得られる活性水素含有化合物(ポリエステル化合物)が好ましい。縮合反応においては活性水素含有化合物、ポリカルボン酸共に1種類を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、芳香族含有ポリエステルポリオールが芳香環を有するためには、縮合反応に使用するポリカルボン酸及び活性水素含有化合物の少なくともいずれかにおいて、芳香環を有する化合物を使用する必要がある。
【0022】
脂肪族ポリカルボン酸とは、以下[1]、[2]を満たす化合物を意味する。
[1]1分子が有するカルボキシル基が2個以上である。
[2]カルボキシル基が芳香環に直接結合していない。
【0023】
脂肪族ポリカルボン酸には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸及びフマル酸等が挙げられる。
【0024】
芳香族ポリカルボン酸とは以下[1]~[3]を満たす化合物を意味する。
[1]1分子が有する芳香環の数が1個以上である。
[2]1分子が有するカルボキシル基の数が2個以上である。
[3]カルボキシル基が芳香環に直接結合している。
【0025】
芳香族ポリカルボン酸は、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2’-ビベンジルジカルボン酸、トリメリット酸、ヘミリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸及びナフタレン-1,4ジカルボン酸、ナフタレン-2,3,6トリカルボン酸、ジフェン酸、2,3-アントラセンジカルボン酸、2,3,6-アントラセントリカルボン酸及びピレンジカルボン酸等の炭素数8~18の芳香族ポリカルボン酸から選ばれる1種以上が好ましい。
【0026】
また、ポリカルボン酸と活性水素含有化合物との縮合反応を実施する際に、ポリカルボン酸の無水物や低級アルキルエステルを使用することもできる。
【0027】
ポリエステル化合物の製造に使用する活性水素含有化合物は、例えば、多価アルコール及び多価フェノールから選ばれる1種以上が好ましい。
多価アルコールは、例えば、C2~20の2価アルコール、C3~20の3価アルコール、及びC5~20の4~8価アルコールから選ばれる1種以上が好ましい。
C2~20の2価アルコールの具体例は、脂肪族ジオール(ジエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-及び1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール並びにネオペンチルグリコール等)及び脂環式ジオール(シクロヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノール等)である。
C3~20の3価アルコールの具体例は、脂肪族トリオール(トリエチレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパン等)である。
C5~20の4~8価の多価アルコールの具体例は、脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等並びに糖類(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体)である。
【0028】
芳香族含有ポリエステルポリオールは、1種のみでもよく、2種以上であってもよい。芳香族含有ポリエステルポリオールは、テレフタル酸及び/又はフタル酸にジエチレングリコール及び/又トリエチレングリコールを付加させた化合物を少なくとも含むことが好ましい。
【0029】
芳香族含有ポリエステルポリオールの芳香環濃度は、好ましくは1.2~16.0(mmol/g)であり、軟質ポリウレタンフォームの諸物性及び耐燃焼性(難燃性)の観点から、より好ましくは1.5~13.0(mmol/g)、更に好ましくは2.0~11.0(mmol/g)である。
【0030】
(2)ポリオール組成物B
ポリオール組成物Bに含まれるポリオールは、ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルではなく、且つ、芳香族含有ポリエステルポリオールではない限り、特に限定されない。
【0031】
ポリオール組成物Bは、軟質ポリウレタンフォームの諸物性の観点から、ポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオール、ポリマーポリオール、及びポリオキシテトラメチレングリコールからなる群より選ばれる1種以上である。ポリエーテルポリオールは、1種のみでもよく、2種以上であってもよい。
【0032】
ポリエーテルポリオールの水酸基価、官能基数、重量平均分子量は、特に限定されない。
ポリエーテルポリオールの水酸基価は、好ましくは20mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であり、より好ましくは25mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であり、更に好ましくは30mgKOH/g以上80mgKOH/g以下である。
ポリエーテルポリオールの官能基数は、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下である。ポリエーテルポリオールの官能基数は、通常、2以上である。
ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、好ましくは800以上12000以下であり、より好ましくは1000以上10000以下であり、更に好ましくは2000以上8000以下であり、特に好ましくは3000以上7500以下である。
なお、ポリオール組成物Bに2種以上のポリエーテルポリオールが含まれる場合には、少なくとも1種のポリエーテルポリオールが、上記の範囲内であるとよい。
【0033】
ポリエーテルポリオールの合計の含有量は、ポリウレタンフォーム製造用組成物に含まれるポリオール全体を100質量部とした場合に、軟質ポリウレタンフォームの諸物性の観点から、50質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましく、70質量部以上であることが更に好ましい。上記のポリエーテルポリオールの合計の含有量は、ポリオール組成物Aの量を確保して、耐燃焼性(難燃性)を向上する観点から、97質量部以下であることが好ましく、95質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることが更に好ましい。これらの観点から、上記のポリエーテルポリオールの合計の含有量は、50質量部以上97質量部以下であることが好ましく、60質量部以上95質量部以下であることがより好ましく、70質量部以上90質量部以下であることが更に好ましい。
【0034】
ポリオール組成物Bは、軟質ポリウレタンフォームの圧縮残留ひずみを小さくする観点から、重量平均分子量6000以上のポリエーテルポリオールを含むとよい。このポリエーテルポリオールの重量平均分子量の上限値は特に限定されず、通常20000以下である。
重量平均分子量6000以上のポリエーテルポリオールの含有量は、ポリウレタンフォーム製造用組成物に含まれるポリオール全体を100質量部とした場合に、圧縮残留ひずみを小さくする観点から、20質量部以上が好ましく、25質量部以上であることがより好ましく、35質量部以上であることが更に好ましい。上記の重量平均分子量6000以上のポリエーテルポリオールの含有量は、ポリオール組成物Aの量を確保しつつ、軟質ポリウレタンフォームの製造性を考慮して、80質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることが更に好ましい。これらの観点から、上記の重量平均分子量6000以上のポリエーテルポリオールの含有量は、20質量部以上80質量部以下であることが好ましく、25質量部以上70質量部以下であることがより好ましく、35質量部以上60質量部以下であることが更に好ましい。
【0035】
ポリオール組成物Bは、軟質ポリウレタンフォームの通気性を改善する観点から、ポリエーテルポリオールとしてエチレンオキサイド単位含有のポリエーテルポリオール(以下、EO含有ポリエーテルポリオールとも称する)を含むとよい。EO含有ポリエーテルポリオールのエチレンオキサイド単位の含有量は、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることが更に好ましい。上記のエチレンオキサイド単位の含有量は、100質量%以下であり、軟質ポリウレタンフォームの諸物性の観点から、90質量%以下、85質量%以下であってもよい。
【0036】
EO含有ポリエーテルポリオールの含有量は、ポリウレタンフォーム製造用組成物に含まれるポリオール全体を100質量部とした場合に、通気性改善の観点から、0.5質量部より多いことが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、2.0質量部以上であることが更に好ましい。上記のEO含有ポリエーテルポリオールの含有量は、軟質ポリウレタンフォームの諸物性の観点から、6.5質量部以下であることが好ましく、5.5質量部以下であることがより好ましく、4.5質量部以下であることが更に好ましい。これらの観点から、上記のEO含有ポリエーテルポリオールの含有量は、0.5質量部より多く、6.5質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上5.5質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以上4.5質量部以下であることが更に好ましい。
【0037】
(3)触媒
ポリウレタンフォーム製造用組成物は、触媒を含んでいてもよい。触媒は特に限定されない。各種の触媒は単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
触媒は、例えば、アミン触媒、第4級アンモニウム塩触媒から選ばれる1種以上を用いることができる。これらの触媒の具体例を示す。
N,N-ジメチルアミノヘキサノール、N,N,N’-トリメチル-N’-アミノプロピル-ビス(アミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-オクタデシルモルホリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール等の第三級アミン触媒、トリエチレンジアミンのギ酸塩および他の塩、第一および第二アミンのアミノ基のオキシアルキレン付加物、N,N’-ジアルキルピペラジン類のようなアザ環化合物、N,N,N",N"-テトラメチルジエチレントリアミンのような官能基としてアミノ基を有するアミン触媒等を採用できる。
また、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類等の第4級アンモニウム塩触媒も採用できる。
アミン触媒及び第4級アンモニウム塩触媒からなる群より選択される1種以上の触媒の合計の配合量は、特に限定されない。これらの触媒の合計の配合量は、ポリオール100質量部に対し、ポリウレタンの生成反応を十分に促進させる観点から、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上が更に好ましい。他方、軟質ポリウレタンフォームの諸物性を保持する観点、及び製造コストの観点から、3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、1.5質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、これらの触媒の合計の配合量は、ポリオール100質量部に対し、0.01質量部以上3質量部以下が好ましく、0.1質量部以上2質量部以下がより好ましく、0.3質量部以上1.5質量部以下が更に好ましい。
【0038】
触媒として、金属触媒(有機金属触媒)を用いることができる。金属触媒として、従来公知の金属触媒を特に限定なく採用できる。
金属触媒として、例えば、Sn(錫)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Zr(ジルコニウム)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)等の金属塩、有機酸金属塩等が用いることができる。より具体的には、下記の金属触媒を用いることができる。
Sn触媒:オクチル酸スズ(II)(2-エチルヘキサン酸スズ、スタナスジオクトエート)、酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、スタナスジオレエート、ネオデカン酸スズ(II)、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズジアセテート等
Pb触媒:オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛等
Bi触媒:オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ロジン酸ビスマス等
Fe触媒:鉄アセチルアセトナート等
Zr触媒:ジルコニウムアセチルアセトナート等
Ni触媒:ニッケルアセチルアセトナート、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル等
Co触媒:コバルトアセチルアセトナート、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト等
【0039】
(4)整泡剤
ポリウレタンフォーム製造用組成物は、整泡剤を含んでいてもよい。整泡剤は、特に限定されない。
整泡剤は、具体的には、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体、ポリオキシアルキレン側鎖を有するポリアルケニルシロキサン、シリコーン-グリース共重合体等のシリコーン系化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が用いられる。これらの整泡剤は単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
整泡剤の配合量は、特に限定されない。整泡剤の配合量は、ポリオール100質量部に対して0.03質量部以上5.0質量部以下が好ましい。
【0040】
(5)難燃剤
ポリウレタンフォーム製造用組成物は、難燃剤を含んでいてもよい。難燃剤は、特に限定されない。難燃剤は、例えば、リン酸エステル系難燃剤、リン酸塩含有難燃剤、有機系難燃剤、及び無機系難燃剤等から選ばれる1種以上である。リン酸エステル系難燃剤は、含ハロゲンリン酸エステル系難燃剤であってもよく、非ハロゲンリン酸エステル難燃剤であってもよい。有機系難燃剤は、例えば、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリ塩化ビニル等である。有機系難燃剤は、ポリマーポリオールに含まれる形でポリウレタンフォーム製造用組成物に配合されてもよい。
【0041】
難燃剤の配合量は、特に限定されない。ポリウレタンフォーム製造用組成物は、ポリオール組成物Aによって難燃性が十分に担保される場合には、ポリオール組成物A以外に難燃剤を含まないことが好ましい。難燃剤を含む場合にも、難燃剤の使用量低減の観点、及び製造コストの観点から、難燃剤の配合量は、ポリオール100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、難燃剤の配合量は、ポリオール100質量部に対し、0質量部以上20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。
【0042】
(6)発泡剤
ポリウレタンフォーム製造用組成物には、発泡剤が含まれていてもよい。発泡剤は、特に限定されない。発泡剤は、例えば、水、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、及び炭酸ガスから選ばれる1種以上が好適である。発泡剤が水の場合、添加量はポリウレタン発泡体において目的とする密度や良好な発泡状態が得られる範囲に決定され、通常はポリオール100質量部に対して1質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0043】
(7)イソシアネート
イソシアネートは、特に限定されない。イソシアネートは、芳香族系イソシアネート、脂環式イソシアネート、及び脂肪族系イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好適に採用される。脂肪族系イソシアネートの1種類以上と、芳香族系イソシアネートの1種類以上を併用してもよい。
また、イソシアネートは、1分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能のイソシアネート、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する3官能以上のイソシアネートのいずれであってもよく、単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。
例えば、2官能のイソシアネートは、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族系イソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート等の脂肪族系イソシアネートから選ばれる1種以上である。
また、3官能以上のイソシアネートは、例えば、1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、1,3,5-トリメチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4’-トリイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4,4’-トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン-4,6,4’-トリイソシアネート、4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4"-トリイソシアネート、ポリメリックMDI等から選ばれる1種以上である。
なお、その他に、イソシアネートは、ポリオール変性イソシアネート、カルボジイミド変性イソシアネート、イソシアヌレート変性イソシアネート、及びビュレット変性イソシアネートから選ばれる1種以上であってもよい。
【0044】
イソシアネートは、軟質ポリウレタンフォームの諸物性の観点から、少なくともポリオール変性イソシアネートを含むことが好ましく、ポリオール変性イソシアネートとトリレンジイソシアネートとを含むことがより好ましい。
ポリオール変性イソシアネートは、イソシアネートと、ポリオールを反応させて得られる化合物である。ポリオール変性イソシアネートは、芳香族系イソシアネートのポリオール変性物であることが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートのポリオール変性物であることがより好ましい。ジフェニルメタンジイソシアネートのポリオール変性物は、MDIプレポリマーとも呼ばれる。ポリオール変性イソシアネートの市販品は、例えば、製品名コロネート1050、コロネート1057(いずれも東ソー株式会社製)等である。
ポリオール変性イソシアネートの含有量は、イソシアネート全体を100質量部とした場合に、好ましくは5質量部以上40質量部以下であり、より好ましくは10質量部以上30質量部以下であり、更に好ましくは15質量部以上25質量部以下である。
【0045】
イソシアネートとポリオールの混合割合は、特に限定されない。イソシアネートインデックスは80以上120以下が好ましい。イソシアネートインデックス(INDEX)は、組成物中に含まれる活性水素基1モルに対するイソシアネート基のモル数を100倍した値であり、[(組成物中のイソシアネート当量/組成物中の活性水素の当量)×100]で計算される。
【0046】
(8)その他の添加剤
ポリウレタンフォーム製造用組成物は、適宜その他の添加剤、例えば架橋剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、脱泡剤、相溶化剤、着色剤、安定剤、抗菌剤、防カビ剤、脱臭剤、消臭剤、芳香剤、香料等を含んでいてもよい。架橋剤は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、及びトリメチロールプロパンから選ばれる1種以上が好ましい。着色剤は、例えば、顔料、染料、着色料等である。
【0047】
(9)軟質ポリウレタンフォームの物性
軟質ポリウレタンフォームの物性は、用途等に応じて適宜設定できる。
軟質ポリウレタンフォームは、以下の物性を備えることが好ましい。以下の物性は、軟質ポリウレタンフォームのコアから得られたサンプルにて測定する。
【0048】
(9.1)見かけ密度
見かけ密度(JIS K7222:2005)は、20kg/m以上80kg/m以下が好ましく、25kg/m以上65kg/m以下がより好ましく、30kg/m以上50kg/m以下が更に好ましい。
(9.2)硬さ
硬さ(JIS K6400-2:2012 6.7 D法)は、20N以上200N以下が好ましく、30N以上150N以下がより好ましく、40N以上100N以下が更に好ましい。この範囲であれば柔軟性に富み、軟質ポリウレタンフォームとして好ましい。
(9.3)反発弾性
反発弾性(JIS K6400-3:2011)は、20%以上80%以下が好ましく、25%以上70%以下がより好ましく、30%以上65%以下が更に好ましい。
【0049】
(9.4)引張強さ、伸び、引裂強さ
引張強さ(JIS K6400-5:2012 3)は、40kPa以上が好ましく、50kPa以上がより好ましく、60kPa以上が更に好ましくい。引張強さの上限値は特に限定されず、例えば、120kPa以下である。
伸び(JIS K6400-5:2012 3)は、50%以上500%以下が好ましく、80%以上200%以下がより好ましく、90%以上150%以下が更に好ましい。
引裂強さ(JIS K6400-5:2012、4号型)は、1N/cm以上が好ましく、2N/cm以上がより好ましく、3N/cm以上が更に好ましい。引裂強さの上限値は特に限定されず、例えば、10N/cm以下である。
【0050】
(9.5)通気量
軟質ポリウレタンフォームの通気量(JIS K6400-7:2012 B法)は、好ましくは40cm/cm/sec以上150cm/cm/sec以下であり、より好ましくは50cm/cm/sec以上100cm/cm/sec以下であり、更に好ましくは60cm/cm/sec以上80cm/cm/sec以下である。
【0051】
(9.6)圧縮残留ひずみ
圧縮残留ひずみ(JIS K6400-4:2004 4.5.2 A法)は、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。圧縮残留ひずみの下限値は特に限定されず、通常0%より大きい。
なお、圧縮残留ひずみは、JIS K6400-4 A法に準じて、サンプルを50%の厚みに圧縮した状態で70℃の乾燥炉に22時間放置した後、圧縮を解除して厚みを測定し、圧縮前の厚みに対する変形量(%)として算出した。
【0052】
(9.7)鉄道車輛A-A基準に基づく燃焼試験
軟質ポリウレタンフォームは、鉄道車輛A-A基準に基づく燃焼試験において、難燃性の基準に合格することが好ましい。難燃性の基準に合格する場合において、アルコール燃焼後の変形(mm)が150mm以下であることがより好ましく、100mm以下であることが更に好ましい。
なお、鉄道車輛A-A基準に基づく燃焼試験では、アルコール燃焼中の着火/着炎/煙/火勢、アルコール燃焼後の残炎/残じん/炭化(mm)/変形(mm)、アルコール燃焼時間(s)を評価する。
【0053】
(9.8)耐火試験(航空機内装向け FAR 25.853試験)
軟質ポリウレタンフォームは、航空機内装向け FAR 25.853試験に合格することが好ましい。
なお、航空機内装向け FAR 25.853試験では、垂直試験における消火時間(s)/燃焼長さ(inch)/ドロップ消火時間(s)を評価する。
【0054】
2.軟質ポリウレタンフォームの製造
軟質ポリウレタンフォームは、ポリウレタンフォーム製造用組成物を攪拌混合してポリオールとイソシアネートを反応させる公知の発泡方法によって製造することができる。発泡方法には、スラブ発泡とモールド発泡とがあり、いずれの成形方法でもよい。スラブ発泡は、混合したポリウレタンフォーム製造用組成物をベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。他方、モールド発泡は、混合したポリウレタンフォーム製造用組成物をモールド(成形型)に充填してモールド内で発泡させる方法である。
【0055】
3.軟質ポリウレタンフォームの用途、及び作用効果
軟質ポリウレタンフォームは様々な用途に使用されている。その中の一つとして鉄道車輛や航空機のシートがある。これらは、それぞれに厳しい難燃規格が定められており、難燃性に分類されるウレタンフォームを搭載する必要がある。しかし、一般的にウレタンは可燃性物質であるため、従来、様々な難燃性を付与する技術が検討されてきた。例えば、後述の参考例のように、メラミン系の難燃剤を使用することで、鉄道車輛および航空機の難燃規格を満たした軟質ポリウレタンフォームが開発されている。
現在、メラミン系の難燃剤に代替する技術が求められている。メラミン系の難燃剤に替えて、含ハロゲンリン酸エステル系難燃剤等の難燃剤を用いた場合には、厳しい難燃規格
を満たすために、難燃剤を多量に添加する必要があり、軟質ポリウレタンフォームの物性や、コストの面で課題が残った。
【0056】
ポリオール組成物Aは、従来、硬質ウレタンフォームの原料として用いられており、軟質ポリウレタンフォームに適用することが検討されていなかった組成物である。本発明者らは、鋭意検討を重ねて、ポリオール組成物Aを用いた軟質ポリウレタンフォームを開発するに至った。ポリオール組成物Aを用いた軟質ポリウレタンフォームは、例えば、他の難燃剤を使用しなくても、十分な難燃性を有し得る。さらに、ポリオール組成物Aを用いた軟質ポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォームに要求される諸物性を有し得る。
【0057】
本実施形態の軟質ポリウレタンフォームは、種々の用途に好適である。軟質ポリウレタンフォームの用途は特に限定されない。
例えば、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームは、柔軟性を有するとともに難燃性を有するから、シート(座席)に用いられる部材として好適である。また、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームは、十分な難燃性を有するから、乗物の室内用部材としても好適である。乗物の室内用部材は、特に限定されない。乗物の室内用部材は、例えば、乗物用シートに用いられる部材、乗物用内装材に用いられる部材等である。本実施形態では、鉄道車輛A-A基準に基づく燃焼試験の難燃性基準に合格するような高い難燃性を有し得るから、鉄道車輛用の部材(シート)に用いられる部材として好適である。また、本実施形態では、航空機FAR 25.853試験に合格するような高い難燃性を有し得るから、航空機用の部材(シート)に用いられる部材としても好適である。なお、本開示において、「難燃性ポリウレタンフォーム」というときには、その用途等に応じた難燃基準を満たしていればよい。難燃基準は、鉄道車輛A-A基準に基づく燃焼試験、又は航空機FAR 25.853試験に定められた基準に限られず、例えば、米国Underwriters Laboratoryの難燃規格UL94HF-1に定められた基準等であってもよい。
【0058】
さらに、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール組成物Aを用いることによって、ポリオール組成物A以外の難燃剤の使用量を低減し、または、ポリオール組成物A以外の難燃剤を用いることなく、十分な難燃性を有し得る。よって、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームは、環境負荷が少ない軟質ポリウレタンフォームとして有用である。また、本実施形態の軟質ポリウレタンフォームは、難燃剤の添加に起因した、セルの荒れ、意図しない通気性の増大等を抑制できる。
【実施例0059】
1.軟質ポリウレタンフォームの製造
表1の割合で配合した組成物を調製し、以下の手法により、参考例、実施例、及び比較例の軟質ポリウレタンフォームを製造した。参考例は、組成物にポリオール組成物Aが含まれない比較例である。なお、ポリオール1~ポリオール4は、ポリオール組成物Bに含まれるポリオールである。
まず、上部が開口している非密閉型の発泡箱内に原料混合物を注入し、発泡箱内において原料混合物を自由発泡させた。さらに、フォームを含む発泡箱を70℃に設定したオーブンに入れ、フォームの硬化を促進した。すべての参考例、実施例、及び比較例について、270mm角の段ボール製発泡箱を用いた。
【0060】
各原料の詳細は以下の通りである。
・ポリオール1:ポリエーテルポリオール、官能基数3、重量平均分子量7000、水酸基価24mgKOH/g、EP902、三井化学社製
・ポリオール2:ポリエーテルポリオール、官能基数3、重量平均分子量5000、水酸基価35mgKOH/g、F3135、Wanhua社製
・ポリオール3:ポリエーテルポリオール、官能基数2、重量平均分子量1000、水酸基価112mgKOH/g、D1000、三井化学社製
・ポリオール4:ポリエーテルポリオール(ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオール、EO含有ポリエーテルポリオール)、官能基数3、重量平均分子量3300、水酸基価52mgKOH/g、エチレンオキサイド含有率70質量%、三井化学社製
・ポリオール5:ポリマーポリオール(ポリエーテルポリオールをベースポリオールとするメラミン系ポリマーポリオール)、官能基数3、重量平均分子量5000、水酸基価25mgKOH/g、M950、旭硝子社製
・ポリオール組成物A:ノンフレポール、官能基数2、重量平均分子量600、水酸基価200mgKOH/g、三洋化成社製
なお、ノンフレポールは、ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルとして、ジペンタエリスリトールとアクリル酸とを反応させた化合物を含み、芳香族含有ポリエステルポリオールとして、テレフタル酸及び/又はフタル酸にジエチレングリコール及び/又トリエチレングリコールを付加させた化合物を含む。
・触媒1:ジエタノールアミン
・触媒2:アミン触媒、33LSI、エボニック社製
・触媒3:アミン触媒、NIAX A-1、Momentive社製
・整泡剤:ジメチルシロキサンコポリマー
・難燃剤1:含ハロゲンリン酸エステル難燃剤、TMCPP、大八化学工業社製
・難燃剤2:含ハロゲン縮合リン酸エステル難燃剤、CR504L、大八化学工業社製
・発泡剤:水
【0061】
イソシアネートは、以下のイソシアネート1とイソシアネート2を80:20(質量比)の割合で混合した混合物を用いた。混合物のNCO%は、40.31%であった。
・イソシアネート1:トリレンジイソシアネート(TDI)80質量%と、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)20質量%の混合物、トリレンジイソシアネート(TDI)は、2,4-トリレンジイソシアネート:2,6-トリレンジイソシアネート=80:20の混合物、NCO% 44.64%、コスモネートTM20、三井化学社製
・イソシアネート2:ポリオール変性MDI、NCO% 23.00%、コロネート1050、東ソー社製
【0062】
軟質ポリウレタンフォームは、具体的には次の手順により製造した。
イソシアネート以外の原料をカップ容器に計量、攪拌し、混合溶液(A液)とした。
混合溶液(A液)にイソシアネート(B液)を添加し、攪拌して、組成物とした。
【0063】
【表1】
【0064】
2.評価方法
評価用サンプルは、以下のようにして作製した。
上記にて製造した軟質ポリウレタンフォームについて、天面以外のすべての面から5cm以内のコア部分より、各物性項目の規定に準拠したサイズの評価用サンプルを切り出した。各物性項目の測定は、以下の方法で実施した。
【0065】
(1)見かけ密度(密度)
見かけ密度は、JISK7222:2005に準拠して測定した。
(2)硬さ
硬さは、JIS K6400-2:2012 6.7 D法に準拠して測定した。
(3)反発弾性
反発弾性は、JIS K6400-3:2011に準拠して測定した。
(4)引張強さ、伸び、引裂強さ
引張強さは、JIS K6400-5:2012 3に準拠して測定した。
伸びは、JIS K6400-5:2012 3に準拠して測定した。
引裂強さは、JIS K6400-5:2012に準拠して測定した。試験片は、JIS K 6400-1に準拠して打ち抜き冶具を用いて4号形切込みなしアングル形試験片とした。
(5)通気量
通気量は、JIS K6400-7:2012 B法に準拠して測定した。
(6)圧縮残留ひずみ
圧縮残留ひずみは、JIS K6400-4:2004 4.5.2 A法に準拠して、50%圧縮、70℃、22時間にて測定した。
【0066】
(7)鉄道車輛A-A基準に基づく燃焼試験
参考例、比較例、及び実施例の軟質ポリウレタンフォームから試験片を切り出した。各試験片について、鉄道車輛A-A基準に基づく燃焼試験を行った。鉄道車輛A-A基準に基づく燃焼試験では、アルコール燃焼中の着火/着炎/煙/火勢、アルコール燃焼後の残炎/残じん/炭化(mm)/変形(mm)、アルコール燃焼時間(s)を測定した。
【0067】
燃焼試験の測定結果に基づき、以下の基準で評価した。なお、燃焼試験を行わなかったサンプルは「-」と示した。
合格 :難燃性の基準を満たす
不合格:難燃性の基準を満たさない
【0068】
(8)耐火試験(航空機FAR 25.853試験)
参考例及び実施例8の軟質ポリウレタンフォームから試験片を切り出した。各試験片について、航空機内装向け FAR 25.853に規定の耐火試験を行った。耐火試験では、垂直試験における消火時間(s)/燃焼長さ(inch)/ドロップ消火時間(s)を測定した。
【0069】
耐火試験の測定結果に基づき、以下の基準で評価した。なお、耐火試験を行わなかったサンプルは「-」と示した。
合格 :規格の合格基準を満たす
不合格:規格の合格基準を満たさない
【0070】
3.結果
評価結果を、表1に併記する。
実施例1~実施例6は、以下の要件(a)を満たしている。
要件(a):ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルと、芳香族含有ポリエステルポリオールとを含むポリオール組成物Aと、イソシアネートと、を含むポリウレタンフォーム製造用組成物から得られる軟質ポリウレタンフォームである。
実施例1~実施例6は、軟質ポリウレタンフォームとして良好な物性を有していた。実施例1~実施例6、実施例4、5は、難燃性ポリウレタンフォームである。実施例1~実施例6は、物性及び難燃性が両立され、実用に適していることが示唆された。
【0071】
これに対して、比較例のポリウレタンフォーム製造用組成物は、ポリオール組成物Aを含まず、上記の要件(a)を満たしていない。比較例1の軟質ポリウレタンフォームは、難燃性の評価が不合格であった。
また、参考例のポリウレタンフォーム製造用組成物は、メラミン系の難燃剤を含むポリオール5を用いている点において、改善が望まれる。
【0072】
実施例1~実施例6のうち、ポリオール組成物Aの量が異なる実施例1、実施例2を比較する。
実施例1は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、ポリオール組成物Aを10質量部用いた例である。実施例1(N=2)は、鉄道車輛A-A基準に基づく燃焼試験の結果、局部的に貫通孔が開いた。貫通孔の寸法はそれぞれ20mm、16mmであった。
実施例2は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、ポリオール組成物Aを18.3質量部用いた例である。実施例2(N=2)は、鉄道車輛A-A基準に基づく燃焼試験の結果、局部的に貫通孔が開いた。貫通孔の寸法はそれぞれ157mm、162mmであった。
これらの結果から、ポリオール組成物Aを、例えば20質量部以下とすることで、より一層難燃性を向上できることが示唆された。その理由は定かではないが、実施例1は実施例2よりも通気量が小さいことから、ポリオール組成物Aの量の低減に伴い通気性が低減して、燃焼しにくくなった可能性がある。なお、本開示は、この推測理由に限定解釈されない。
【0073】
実施例1~実施例6のうち、難燃剤の有無の点で相違する実施例1、実施例3を比較する。
実施例1は、ポリオール組成物A以外の難燃剤を含まない例である。実施例1(N=2)は、鉄道車輛A-A基準に基づく燃焼試験の結果、局部的に貫通孔が開いた。貫通孔の寸法はそれぞれ20mm、16mmであった。
実施例3は、ポリオール組成物A以外の難燃剤として難燃剤2を含む例である。実施例3(N=2)は、鉄道車輛A-A基準に基づく燃焼試験の結果、局部的に貫通孔が開いた。貫通孔の寸法はそれぞれ149mm、150mmであった。
これらの結果から、ポリオール組成物Aを用いた場合には、その他の難燃剤を併用しない方が、より一層難燃性を向上できることが示唆された。難燃剤を併用しない方が難燃性を向上できるということは、驚くべき結果である。その理由は定かではないが、実施例1は実施例3よりも通気量が小さいことから、難燃剤を使用しないことによって通気性が低減して、燃焼しにくくなった可能性がある。なお、本開示は、この推測理由に限定解釈されない。
【0074】
実施例1~実施例6のうち、ポリオール1(重量平均分子量6000以上のポリエーテルポリオール)の量が異なる実施例1、実施例6を比較する。
実施例1は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、重量平均分子量6000以上のポリエーテルポリオールを25.3質量部用いた例である。実施例1の圧縮残留ひずみは17.7%であった。
実施例6は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、重量平均分子量6000以上のポリエーテルポリオールを50質量部用いた例である。実施例6の圧縮残留ひずみは7.1%であった。
これらの結果から、重量平均分子量6000以上のポリエーテルポリオールを、例えば30質量部以上用いることで、圧縮残留ひずみを小さくできることが示唆された。
【0075】
実施例1~実施例6のうち、ポリオール4(EO含有ポリエーテルポリオール)の量が異なる実施例1、実施例4、実施例5を比較する。
実施例1は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、EO含有ポリエーテルポリオールを1質量部用いた例である。実施例1の通気量は、71.7cm/cm/sであった。
実施例4は、EO含有ポリエーテルポリオール不使用(0質量部)の例である。実施例4の通気量は、71.8cm/cm/sであった。
実施例5は、ポリオール全体を100質量部とした場合に、EO含有ポリエーテルポリオールを3質量部用いた例である。実施例5の通気量は、73.4cm/cm/sであった。
これらの結果から、EO含有ポリエーテルポリオールを1質量部より多く用いることで、通気性を向上できることが示唆された。
【0076】
4.実施例の効果
以上の実施例は、難燃性を有する軟質ポリウレタンフォームを提供できた。具体的には、ポリオール組成物Aを用いることによって、難燃剤の添加量の低減又は不使用に寄与できることが分かった。
また、実施例1~実施例3、実施例5、実施例6は、鉄道車輛A-A基準に基づく燃焼試験の難燃性に合格した。実施例8は、耐火試験(航空機FAR 25.853試験)に合格した。
さらに、実施例は、難燃性を担保しつつ、軟質ポリウレタンフォームの諸物性を確保できた。
【0077】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、本開示の範囲で様々な変形又は変更が可能である。