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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025107623
(43)【公開日】2025-07-18
(54)【発明の名称】蓋体、蓄電デバイス、周縁部材
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/193 20210101AFI20250711BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20250711BHJP
   H01M 50/16 20210101ALI20250711BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20250711BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20250711BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20250711BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20250711BHJP
   H01M 50/164 20210101ALI20250711BHJP
   H01M 50/197 20210101ALI20250711BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20250711BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20250711BHJP
【FI】
H01M50/193
H01M50/15
H01M50/16
H01M50/105
H01M50/184 A
H01M50/186
H01M50/103
H01M50/164
H01M50/197
H01G11/80
H01G11/78
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025081753
(22)【出願日】2025-05-15
(62)【分割の表示】P 2024566016の分割
【原出願日】2024-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2023072809
(32)【優先日】2023-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】宮代 香衣
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 美帆
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 敏史
(72)【発明者】
【氏名】金澤 早陽子
(57)【要約】
【課題】外装フィルムによって電極体を好適に保持できることに貢献できる蓋体、蓄電デバイス、および、周縁部材を提供する。
【解決手段】蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体であって、蓋体は、主材料がオレフィン系共重合体である熱融着性樹脂層を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体であって、
前記蓋体は、
主材料がオレフィン系共重合体である熱融着性樹脂層を含み、
前記外装体を構成する外装フィルムと接合できる程度の厚さの蓋シール部を有する樹脂成形品である
蓋体。
【請求項2】
蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体であって、
前記蓋体は、
蓋本体と、
前記蓋本体の周縁部の少なくとも一部と接合される周縁部材と、を含み、
前記周縁部材は、
主材料がオレフィン系共重合体である熱融着性樹脂層を含み、
前記蓋本体に接合され、かつ、前記外装体を構成する外装フィルムと接合できる程度の厚さの蓋シール部を有する樹脂成形品である
蓋体。
【請求項3】
前記蓋本体と前記周縁部材との間に配置され、前記蓋本体と前記周縁部材とを接合する接着性フィルムおよび接着層の少なくとも一方を備える
請求項2に記載の蓋体。
【請求項4】
前記周縁部材は、前記蓋本体に接合される枠体である
請求項2または3に記載の蓋体。
【請求項5】
前記オレフィン系共重合体が、オレフィン系のランダム共重合体である
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓋体。
【請求項6】
前記熱融着性樹脂層は、脂肪酸アミド系滑剤が存在している
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓋体。
【請求項7】
前記脂肪酸アミド系滑剤が複数種類存在しており、
前記脂肪酸アミド系滑剤の少なくとも1種が、飽和脂肪酸アミドである、
請求項6に記載の蓋体。
【請求項8】
前記複数種類の脂肪酸アミド系滑剤が、不飽和脂肪酸アミドをさらに含む、
請求項7に記載の蓋体。
【請求項9】
前記飽和脂肪酸アミドの炭素数が18以上である、
請求項7に記載の蓋体。
【請求項10】
前記飽和脂肪酸アミドが、ベヘン酸アミドである、
請求項7に記載の蓋体。
【請求項11】
前記不飽和脂肪酸アミドが、エルカ酸アミドである、
請求項10に記載の蓋体。
【請求項12】
前記熱融着性樹脂層は、酸変性ポリオレフィン系樹脂、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、金属イオン架橋ポリエチレン、エチレンとアクリル酸誘導体、および、エチレンとメタクリル酸誘導体との共重合体系樹脂のいずれかから構成されている
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓋体。
【請求項13】
前記熱融着性樹脂層は、融点が150℃より高いプロピレン系エラストマー樹脂を含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓋体。
【請求項14】
電極体と、
前記電極体を封止する外装体と、を備え、
前記外装体は、
前記電極体を包む外装フィルムと、
前記外装フィルムと接合される蓋体と、含み、
前記蓋体は、
主材料がオレフィン系共重合体である熱融着性樹脂層を含み、
前記外装体を構成する外装フィルムと接合できる程度の厚さの蓋シール部を有する樹脂成形品である
蓄電デバイス。
【請求項15】
電極体と、
前記電極体を封止する外装体と、を備え、
前記外装体は、
前記電極体を包む外装フィルムと、
前記外装フィルムと接合される蓋体と、含み、
前記蓋体は、
蓋本体と、
前記蓋本体の周縁部の少なくとも一部と接合される周縁部材と、を含み、
前記周縁部材は、
主材料がオレフィン系共重合体である熱融着性樹脂層を含み、
前記蓋本体に接合され、かつ、前記外装体を構成する外装フィルムと接合できる程度の厚さの蓋シール部を有する樹脂成形品である
蓄電デバイス。
【請求項16】
蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体を構成する周縁部材であって、
前記蓋体は、
蓋本体と、
前記蓋本体の周縁部の少なくとも一部と接合される前記周縁部材と、を含み、
前記周縁部材は、
主材料がオレフィン系共重合体である熱融着性樹脂層を含み、
前記蓋本体に接合され、かつ、前記外装体を構成する外装フィルムと接合できる程度の厚さの蓋シール部を有する樹脂成形品である
周縁部材。
【請求項17】
前記蓋本体に接合される枠体である
請求項16に記載の周縁部材。
【請求項18】
蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体であって、
熱融着性樹脂層を含み、前記外装体を構成する外装フィルムと接合できる程度の厚さの蓋シール部を有する樹脂成形品であり、
前記熱融着性樹脂層は、下記の方法により、温度差T1と温度差T2を測定し、前記温度差T2を前記温度差T1で除して得られる値が、0.60以上である、蓋体。
(温度差T1の測定)
示差走査熱量測定により、前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定する。
(温度差T2の測定)
温度85℃の環境において、前記熱融着性樹脂層を、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、乾燥させる。示差走査熱量測定により、乾燥後の前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T2を測定する。
【請求項19】
蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体であって、
熱融着性樹脂層を含み、前記外装体を構成する外装フィルムと接合できる程度の厚さの蓋シール部を有する樹脂成形品であり、
前記蓋体は、前記外装体を構成する外装フィルムとシールされる蓋シール部を備え、
前記蓋シール部における厚み方向の断面について、電界放出形走査型電子顕微鏡を用いて取得した断面画像に海島構造が観察され、前記断面画像において、前記海島構造の島の部分の面積の割合が、0.1%以上50%以下である
蓋体。
【請求項20】
蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体を構成する周縁部材であって、
前記蓋体は、
蓋本体と、
前記蓋本体の周縁部の少なくとも一部に接合される前記周縁部材と、を含み、
前記周縁部材は、熱融着性樹脂層を含み、前記蓋本体に接合され、かつ、前記外装体を構成する外装フィルムと接合できる程度の厚さの蓋シール部を有する樹脂成形品であり、
前記熱融着性樹脂層は、下記の方法により、温度差T1と温度差T2を測定し、前記温度差T2を前記温度差T1で除して得られる値が、0.60以上である、周縁部材。
(温度差T1の測定)
示差走査熱量測定により、前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定する。
(温度差T2の測定)
温度85℃の環境において、前記熱融着性樹脂層を、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、乾燥させる。示差走査熱量測定により、乾燥後の前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T2を測定する。
【請求項21】
蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体を構成する周縁部材であって、
前記蓋体は、
蓋本体と、
前記蓋本体の周縁部の少なくとも一部に接合される前記周縁部材と、を含み、
前記周縁部材は、前記蓋本体に接合され、かつ、前記外装体を構成する外装フィルムと接合できる程度の厚さの蓋シール部を有する樹脂成形品であり、
前記外装体を構成する外装フィルムとシールされる周縁部材シール部を備え、
前記周縁部材シール部における厚み方向の断面について、電界放出形走査型電子顕微鏡を用いて取得した断面画像に海島構造が観察され、前記断面画像において、前記海島構造の島の部分の面積の割合が、0.1%以上50%以下である
周縁部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体、蓄電デバイス、および、周縁部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、蓄電デバイスの一例を開示している。この蓄電デバイスは、電極体と、電極体を封止する外装体と、を備える。外装体は、電極体を包む外装フィルムと、外装フィルムと接合される蓋体と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-123686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記蓄電デバイスでは、外装フィルムと蓋体とが十分に接合されない場合、外層フィルムと蓋体との間に隙間が形成されるおそれがある。このため、外装体によって電極体を好適に密封する点について、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、外装体によって電極体を好適に密封できる蓄電デバイス、この蓄電デバイスに用いられる蓋体、および、この蓋体を構成する周縁部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る蓋体は、蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体であって、前記蓋体は、主材料がオレフィン系共重合体である熱融着性樹脂層を含む。
【0007】
本発明の第2観点に係る蓋体は、蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体であって、前記蓋体は、蓋本体と、前記蓋本体の周縁部の少なくとも一部と接合される周縁部材と、を含み、前記周縁部材は、主材料がオレフィン系共重合体である熱融着性樹脂層を含む。
【0008】
本発明の第3観点に係る蓋体は、第2観点に係る蓋体であって、前記周縁部材は、前記蓋本体に接合される接着性フィルムである。
【0009】
本発明の第4観点に係る蓋体は、第2観点に係る蓋体であって、前記周縁部材は、前記蓋本体に接合される枠体である。
【0010】
本発明の第5観点に係る蓋体は、第1観点~第3観点のいずれか1つに係る蓋体であって、前記オレフィン系共重合体が、オレフィン系のランダム共重合体である。
【0011】
本発明の第6観点に係る蓋体は、第1観点~第5観点のいずれか1つに係る蓋体であって、前記蓋体は、前記外装体を構成する外装フィルムとシールされる蓋シール部と、前記蓋シール部から突出する突出部と、を備える。
【0012】
本発明の第7観点に係る蓋体は、第1観点~第6観点のいずれか1つに係る蓋体であって、前記熱融着性樹脂層は、脂肪酸アミド系滑剤が存在している。
【0013】
本発明の第8観点に係る蓋体は、第7観点に係る蓋体であって、前記脂肪酸アミド系滑剤が複数種類存在しており、前記脂肪酸アミド系滑剤の少なくとも1種が、飽和脂肪酸アミドである。
【0014】
本発明の第9観点に係る蓋体は、第8観点に係る蓋体であって、前記複数種類の脂肪酸アミド系滑剤が、不飽和脂肪酸アミドをさらに含む。
【0015】
本発明の第10観点に係る蓋体は、第8観点または第9観点に係る蓋体であって、前記飽和脂肪酸アミドの炭素数が18以上である。
【0016】
本発明の第11観点に係る蓋体は、第8観点~第10観点のいずれか1つに係る蓋体であって、前記飽和脂肪酸アミドが、ベヘン酸アミドである。
【0017】
本発明の第12観点に係る蓋体は、第9観点に係る蓋体であって、前記不飽和脂肪酸アミドが、エルカ酸アミドである。
【0018】
本発明の第13観点に係る蓋体は、第1観点~第4観点のいずれか1つに係る蓋体であって、前記熱融着性樹脂層は、酸変性ポリオレフィン系樹脂、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、金属イオン架橋ポリエチレン、エチレンとアクリル酸誘導体、および、エチレンとメタクリル酸誘導体との共重合体系樹脂のいずれかから構成されている。
【0019】
本発明の第14観点に係る蓋体は、第1観点~第4観点のいずれか1つに係る蓋体であって、前記熱融着性樹脂層は、融点が150℃より高いプロピレン系エラストマー樹脂を含む。
【0020】
本発明の第15観点に係る蓄電デバイスは、電極体と、前記電極体を封止する外装体と、を備え、前記外装体は、前記電極体を包む外装フィルムと、前記外装フィルムと接合される蓋体と、含み、前記蓋体は、主材料がオレフィン系共重合体である熱融着性樹脂層を含む。
【0021】
本発明の第16観点に係る蓄電デバイスは、電極体と、前記電極体を封止する外装体と、を備え、前記外装体は、前記電極体を包む外装フィルムと、前記外装フィルムと接合される蓋体と、含み、前記蓋体は、蓋本体と、前記蓋本体の周縁部の少なくとも一部と接合される周縁部材と、を含み、前記周縁部材は、主材料がオレフィン系共重合体である熱融着性樹脂層を含む。
【0022】
本発明の第17観点に係る周縁部材は、蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体を構成する周縁部材であって、前記蓋体は、蓋本体と、前記蓋本体の周縁部の少なくとも一部と接合される前記周縁部材と、を含み、前記周縁部材は、主材料がオレフィン系共重合体である熱融着性樹脂層を含む。
【0023】
本発明の第18観点に係る周縁部材は、第17観点に係る周縁部材であって、前記蓋本体に接合される接着性フィルムである。
【0024】
本発明の第19観点に係る周縁部材は、第17観点に係る周縁部材であって、前記蓋本体に接合される枠体である。
【0025】
本発明の第20観点に係る蓋体は、蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体であって、熱融着性樹脂層を含み、前記熱融着性樹脂層は、下記の方法により、温度差T1と温度差T2を測定し、前記温度差T2を前記温度差T1で除して得られる値が、0.60以上である。示差走査熱量測定により、前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定する。温度85℃の環境において、前記熱融着性樹脂層を、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、乾燥させる。示差走査熱量測定により、乾燥後の前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T2を測定する。
【0026】
本発明の第21観点に係る蓋体は、蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体であって、熱融着性樹脂層を含み、前記蓋体は、前記外装体を構成する外装フィルムとシールされる蓋シール部を備え、前記蓋シール部における厚み方向の断面について、電界放出形走査型電子顕微鏡を用いて取得した断面画像に海島構造が観察され、前記断面画像において、前記海島構造の島の部分の面積の割合が、0.1%以上50%以下である。
【0027】
本発明の第22観点に係る周縁部材は、蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体を構成する周縁部材であって、前記蓋体は、蓋本体と、前記蓋本体の周縁部の少なくとも一部に接合される前記周縁部材と、を含み、前記周縁部材は、熱融着性樹脂層を含む。前記熱融着性樹脂層は、下記の方法により、温度差T1と温度差T2を測定し、前記温度差T2を前記温度差T1で除して得られる値が、0.60以上である。示差走査熱量測定により、前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定する。温度85℃の環境において、前記熱融着性樹脂層を、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、乾燥させる。示差走査熱量測定により、乾燥後の前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T2を測定する。
【0028】
本発明の第23観点に係る周縁部材は、蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体を構成する周縁部材であって、前記蓋体は、蓋本体と、前記蓋本体の周縁部の少なくとも一部に接合される前記周縁部材と、を含み、前記周縁部材は、前記外装体を構成する外装フィルムとシールされる周縁部材シール部を備え、前記周縁部材シール部における厚み方向の断面について、電界放出形走査型電子顕微鏡を用いて取得した断面画像に海島構造が観察され、前記断面画像において、前記海島構造の島の部分の面積の割合が、0.1%以上50%以下である。
【発明の効果】
【0029】
本発明に関する蓄電デバイス、蓋体、および、周縁部材によれば、外装体によって電極体を好適に密封できることに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A】実施形態の蓄電デバイスの斜視図。
図1B図1Aの蓄電デバイスの第2封止部のシール強度の測定方法に関する図。
図2図1Aの蓄電デバイスが備える外装フィルムの層構成を示す断面図。
図3図1Aの蓄電デバイスが備える外装フィルムを広げた状態の図。
図4図1AのD4-D4線に沿う断面図。
図5図4の外装フィルムを省略した状態の蓋体の側面図。
図6図4の外装フィルムを省略した状態の蓋体の平面図。
図7図1Aの蓄電デバイスの製造工程の一例を示すフローチャート。
図8】第2変形例の蓄電デバイスが備える蓋体の断面図。
図9】第3変形例の蓄電デバイスが備える蓋体の断面図。
図10】第4変形例の蓄電デバイスが備える蓋体の断面図。
図11図10の周縁部材の層構成の一例を示す断面図。
図12】第10変形例の蓄電デバイスが備える蓋体の断面図。
図13】第10変形例の別の蓄電デバイスが備える蓋体の断面図。
図14】第10変形例のさらに別の蓄電デバイスが備える周縁部材の層構成の一例を示す断面図。
図15】第11変形例の蓄電デバイスが備える周縁部材の層構成の一例を示す断面図。
図16】第12変形例の蓄電デバイスが備える蓋体の断面図。
図17】第14変形例の蓄電デバイス10の断面図。
図18図17の蓋体およびその周辺の断面図。
図19図17のバリア性フィルムの層構成の一例を示す断面図。
図20図17のバリア性フィルムの層構成の別の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る蓄電デバイスについて説明する。なお、本明細書において、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
【0032】
[実施形態]
<1-1.蓄電デバイスの構成>
図1Aは、第1実施形態の蓄電デバイス10を模式的に示す平面図である。図1Bは、図1Aの蓄電デバイス10の第2封止部80のシール強度の測定方法に関する図である。図2は、図1Aの蓄電デバイス10が備える外装フィルム50の層構成を示す断面図である。図3は、図1Aの蓄電デバイス10が備える外装フィルム50を広げた状態の図である。図4は、図1AのD4-D4線に沿う断面図である。図5は、図1Aの蓄電デバイス10が備える蓋体60の側面図である。図6は、図5の蓋体60の平面図である。なお、図1A図4~6、図8図9において、矢印UD方向は蓄電デバイス10の厚み方向を示し、矢印LR方向は蓄電デバイス10の幅方向を示し、矢印FB方向は、蓄電デバイス10の奥行方向を示す。矢印UDLRFBの各々が示す方向は、以後の各図においても共通である。
【0033】
蓄電デバイス10は、電極体20と、電極端子30と、外装体40と、を備える。電極体20は、例えば、リチウムイオン電池、キャパシタ、全固体電池、半固体電池、擬固体電池、ポリマー電池、全樹脂電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、または、コンデンサー等の蓄電部材を構成する電極(正極および負極)ならびに、セパレータ等を含む。本実施形態では、電極体20の形状は、略直方体である。なお、「略直方体」とは、完全な直方体の他に、例えば、外面の一部の形状を修正することによって直方体とみなせるような立体を含む。電極体20の形状は、例えば、円柱または多角柱であってもよい。
【0034】
本実施形態では、蓄電デバイス10は、2つの電極端子30を備える。電極端子30は、電極体20における電力の入出力に用いられる金属端子である。電極端子30の一方の端部は、電極体20に含まれる電極(正極または負極)に電気的に接続される。電極端子30の他方の端部は、例えば、外装体40の端縁から外側に突出する。なお、電極端子30は、電極体20の電力の入出力が可能であればよく、例えば、外装体40から突出していなくてもよい。後述する蓋体60が例えば、金属によって構成される場合、蓋体60が電極端子30の機能を兼ねる場合があり、この場合、電極端子としての機能を有する蓋体60は、外装体40から突出してもよく、突出していなくてもよい。
【0035】
電極端子30を構成する金属材料は、例えば、アルミニウム、ニッケル、または、銅等である。例えば、電極体20がリチウムイオン電池である場合、正極に接続される電極端子30は、通常、アルミニウム等によって構成され、負極に接続される電極端子30は、通常、銅、ニッケル等によって構成される。なお、電極体20の最外層は、必ずしも電極である必要はなく、例えば、保護テープまたはセパレータであってもよい。
【0036】
外装体40は、電極体20を封止する。外装体40は、外装フィルム50および蓋体60を備える。外装フィルム50は、開口部40Aを有するように電極体20を包む。本実施形態では、外装フィルム50は、開口部40Aを有するように電極体20に巻き付けられる。蓋体60は、開口部40Aを閉じるように電極体20の側方に配置される。なお、開口部40Aが形成されるように筒状に構成された外装フィルム50の内部に電極体20を収容し、開口部40Aを蓋体60によって閉じてもよい。
【0037】
例えば、冷間成形を通じて外装フィルム50に電極体20を収容する収容部(窪み)を形成する方法がある。しかし、このような方法によって深い収容部を形成することは必ずしも容易ではない。冷間成形によって収納部(窪み)を深く(たとえば成形深さ15mm)形成しようとすると外装フィルム50にピンホールまたはクラックが発生し、電池性能の低下を招く可能性が高くなる。一方、外装体40は、外装フィルム50を電極体20に巻き付けることによって電極体20を封止しているため、電極体20の厚みに拘わらず容易に電極体20を封止することができる。なお、蓄電デバイス10の体積エネルギー密度を向上させるべく電極体20と外装フィルム50との間のデッドスペースを削減するためには、外装フィルム50が電極体20の外表面に接するように巻き付けられた状態が好ましい。また、全固体電池においては、電池性能を発揮させるために高い圧力を電池外面から均一に掛けることが必要とされている観点からも電極体20と外装フィルム50との間の空間を無くすことが必要とされるため、外装フィルム50が電極体20の外表面に接するように巻き付けられた状態が好ましい。
【0038】
図2に示されるように、外装フィルム50は、例えば、基材層51、バリア層52、および、熱融着性樹脂層53をこの順に有する積層体(ラミネートフィルム)である。なお、外装フィルム50には、これらの層がすべて含まれている必要はなく、例えば、バリア層52が含まれていなくてもよい。すなわち、外装フィルム50は、フレキシブル性を有し曲げやすい材料で構成されていればよく、例えば、樹脂フィルムで構成されていてもよい。なお、外装フィルム50は、ヒートシール可能であることが好ましい。外装フィルム50は、最内層および最外層が熱融着性樹脂層53であってもよい。この場合、外装フィルム50は、最外層と最内層とが接合されることによって、電極体20および蓋体60を包んでもよい。
【0039】
外装フィルム50に含まれる基材層51は、耐熱性を外装フィルム50に付与し、加工または流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制するための層である。基材層51は、例えば、延伸ポリエステル樹脂層および延伸ポリアミド樹脂層の少なくとも一層を含んで構成される。例えば、基材層51が延伸ポリエステル樹脂層および延伸ポリアミド樹脂層の少なくとも一層を含むことにより、外装フィルム50の加工時にバリア層52を保護し、外装フィルム50の破断を抑制することができる。また、外装フィルム50の引張伸びを大きくする観点から、延伸ポリエステル樹脂層は二軸延伸ポリエステル樹脂層であることが好ましく、延伸ポリアミド樹脂層は二軸延伸ポリアミド樹脂層であることが好ましい。さらに、突刺強度または衝撃強度に優れる点から、延伸ポリエステル樹脂層は二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであることがより好ましく、延伸ポリアミド樹脂層は二軸延伸ナイロン(ONy)フィルムであることがより好ましい。なお、基材層51は、延伸ポリエステル樹脂層および延伸ポリアミド樹脂層の両層を含んで構成されていてもよい。基材層51の厚さは、フィルム強度の点から、例えば5~300μmであることが好ましく、5~150μmであることがより好ましい。
【0040】
バリア層52は、少なくとも水分の浸入を抑止する層である。バリア層52は、例えば、接着層54を介して基材層51と接合される。バリア層52としては、例えば、バリア性を有する金属箔、蒸着膜、樹脂層などが挙げられる。蒸着膜としては金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜などが挙げられ、樹脂層としてはポリ塩化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)を主成分としたポリマー類やテトラフルオロエチレン(TFE)を主成分としたポリマー類やフルオロアルキル基を有するポリマー、およびフルオロアルキル単位を主成分としたポリマー類などのフッ素含有樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられる。また、バリア層52としては、これらの蒸着膜及び樹脂層の少なくとも1層を設けた樹脂フィルムなども挙げられる。バリア層52は、複数層設けてもよい。バリア層52は、金属材料により構成された層を含むことが好ましい。バリア層52を構成する金属材料としては、具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン鋼、鋼板などが挙げられ、金属箔として用いる場合は、アルミニウム合金箔、及びステンレス鋼箔の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0041】
バリア層52において、前述した金属材料により構成された層は、金属材料のリサイクル材を含んでいてもよい。金属材料のリサイクル材としては、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン鋼、又は鋼板のリサイクル材が挙げられる。これらのリサイクル材は、それぞれ、公知の方法で入手できる。アルミニウム合金のリサイクル材は、例えば、国際公開第2022/092231号に記載の製造方法によって入手できる。バリア層52は、リサイクル材のみによって構成されてもよいし、リサイクル材とバージン材との混合材料によって構成されもよい。なお、金属材料のリサイクル材とは、いわゆる市中で使用された各種製品や、製造工程から出る廃棄物などを回収・単離・精製などを行って再利用可能な状態にした金属材料をいう。また、金属材料のバージン材とは、金属の天然資源(原材料)から精錬された新品の金属材料であって、リサイクル材でないものをいう。
【0042】
アルミニウム合金箔は、外装フィルム50の成形性または追従性を向上させる観点から、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム合金などにより構成された軟質アルミニウム合金箔であることがより好ましく、より成形性または追従性を向上させる観点から、鉄を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。鉄を含むアルミニウム合金箔(100質量%)において、鉄の含有量は、0.1~9.0質量%であることが好ましく、0.5~2.0質量%であることがより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた成形性を有する外装フィルム50を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装フィルム50を得ることができる。また必要に応じて、ケイ素、マグネシウム、銅、マンガンなどが添加されていてもよい。また軟質化は焼鈍処理などで行うことができる。外装フィルム50の機械強度を向上させる観点からは、アルミニウム合金箔は、例えば加工硬化済みのアルミニウム合金などにより構成された硬質アルミニウム合金箔であることがより好ましい。
【0043】
また、ステンレス鋼箔としては、オーステナイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系のステンレス鋼箔などが挙げられる。さらに成形性に優れた外装フィルム50を提供する観点から、ステンレス鋼箔は、オーステナイト系のステンレス鋼により構成されていることが好ましい。
【0044】
ステンレス鋼箔を構成するオーステナイト系のステンレス鋼の具体例としては、SUS304、SUS301、SUS316Lなどが挙げられ、これら中でも、SUS304が特に好ましい。
【0045】
バリア層52の厚みは、金属箔の場合、少なくとも水分の浸入を抑止するバリア層としての機能を発揮すればよく、例えば5~200μm程度が挙げられる。バリア層52の厚みは、好ましくは約85μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、特に好ましくは約35μm以下である。また、バリア層52の厚みは、好ましくは約9.0μm以上、さらに好ましくは約20μm以上、より好ましくは約25μm以上である。また、バリア層52の厚みの好ましい範囲としては、9.0~85μm程度、9.0~50μm程度、9.0~40μm程度、9.0~35μm程度、20~85μm程度、20~50μm程度、20~40μm程度、20~35μm程度、25~85μm程度、25~50μm程度、25~40μm程度、25~35μm程度が挙げられる。バリア層52がアルミニウム合金箔により構成されている場合、上述した範囲が特に好ましい。また、外装フィルム50に高成形性及び高剛性を付与する観点からは、バリア層52の厚みは、好ましくは約35μm以上、より好ましくは約45μm以上、さらに好ましくは約50μm以上、さらに好ましくは約55μm以上であり、また、好ましくは約200μm以下、より好ましくは約85μm以下、さらに好ましくは約75μm以下、さらに好ましくは約70μm以下であり、好ましい範囲としては、35~200μm程度、35~85μm程度、35~75μm程度、35~70μm程度、45~200μm程度、45~85μm程度、45~75μm程度、45~70μm程度、50~200μm程度、50~85μm程度、50~75μm程度、50~70μm程度、55~200μm程度、55~85μm程度、55~75μm程度、55~70μm程度である。外装フィルム50が高成形性を備えることにより、深絞り成形が容易となり、蓄電デバイスの高容量化に寄与し得る。また、蓄電デバイスが高容量化されると、蓄電デバイスの重量が増加するが、外装フィルム50の剛性が高められることにより、蓄電デバイスの高い密封性に寄与できる。また、特に、バリア層52がステンレス鋼箔により構成されている場合、ステンレス鋼箔の厚みは、好ましくは約60μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、さらに好ましくは約30μm以下、特に好ましくは約25μm以下である。また、ステンレス鋼箔の厚みは、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上である。また、ステンレス鋼箔の厚みの好ましい範囲としては、10~60μm程度、10~50μm程度、10~40μm程度、10~30μm程度、10~25μm程度、15~60μm程度、15~50μm程度、15~40μm程度、15~30μm程度、15~25μm程度が挙げられる。
【0046】
また、バリア層52がアルミニウム箔の場合は、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも基材層51と反対側の面に耐腐食性皮膜を備えていることが好ましい。バリア層52は、耐腐食性皮膜を両面に備えていてもよい。ここで、耐腐食性皮膜とは、例えば、ベーマイト処理などの熱水変成処理、化成処理、陽極酸化処理、ニッケルやクロムなどのメッキ処理、コーティング剤を塗工する腐食防止処理をバリア層52の表面に行ない、バリア層52に耐腐食性(例えば耐酸性、耐アルカリ性など)を備えさせる薄膜をいう。耐腐食性皮膜は、具体的には、バリア層52の耐酸性を向上させる皮膜(耐酸性皮膜)、バリア層52の耐アルカリ性を向上させる皮膜(耐アルカリ性皮膜)などを意味している。耐腐食性皮膜を形成する処理としては、1種類を行なってもよいし、2種類以上を組み合わせて行なってもよい。また、1層だけではなく多層化することもできる。さらに、これらの処理のうち、熱水変成処理および陽極酸化処理は、処理剤によって金属箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れる金属化合物を形成させる処理である。なお、これらの処理は、化成処理の定義に包含される場合もある。また、バリア層52が耐腐食性皮膜を備えている場合、耐腐食性皮膜を含めてバリア層52とする。
【0047】
耐腐食性皮膜は、外装フィルム50の成形時において、バリア層52(例えば、アルミニウム合金箔)と基材層51との間のデラミネーション防止、電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、バリア層52表面の溶解、腐食、特にバリア層52がアルミニウム合金箔である場合にバリア層52表面に存在する酸化アルミニウムが溶解、腐食することを防止し、かつ、バリア層52表面の接着性(濡れ性)を向上させ、ヒートシール時の基材層51とバリア層52とのデラミネーション防止、成形時の基材層51とバリア層52とのデラミネーション防止の効果を示す。
【0048】
熱融着性樹脂層53は、例えば、接着層55を介してバリア層52と接合される。外装フィルム50に含まれる熱融着性樹脂層53は、外装フィルム50にヒートシールによる封止性を付与する層である。熱融着性樹脂層53としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂などのポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、または、これらのポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等の酸でグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。熱融着性樹脂層53の厚さは、シール性および強度の点から、例えば20~300μmであることが好ましく、40~150μmであることがより好ましい。
【0049】
外装フィルム50は、熱融着性樹脂層53よりも外側に、より好ましくは、バリア層52よりも外側に1または複数の緩衝機能を有する層(以下では、「緩衝層」という)を有していることが好ましい。緩衝層は、基材層51の外側に積層されてもよく、基材層51が緩衝層の機能を兼ね備えてもよい。外装フィルム50が複数の緩衝層を有する場合、複数の緩衝層は、隣接していてもよく、基材層51またはバリア層52等を介して積層されてもよい。
【0050】
緩衝層を構成する材料は、クッション性を有する材料から任意に選択可能である。クッション性を有する材料は、例えば、ゴム、不織布、または、発泡シートである。ゴムは、例えば、天然ゴム、フッ素ゴム、または、シリコンゴムである。ゴム硬度は、20~90程度であることが好ましい。不織布を構成する材料は、耐熱性に優れる材料であることが好ましい。緩衝層が不織布によって構成される場合、緩衝層の厚さの下限値は、好ましくは、100μm、さらに好ましくは、200μm、さらに好ましくは、1000μmである。緩衝層が不織布によって構成される場合、緩衝層の厚さの上限値は、好ましくは、5000μm、さらに好ましくは、3000μmである。緩衝層の厚さの好ましい範囲は、100μm~5000μm、100μm~3000μm、200μm~5000μm、200μm~3000μm、1000μm~5000μm、または、1000μm~3000μmである。この中でも、緩衝層の厚さの範囲は、1000μm~3000μmが最も好ましい。
【0051】
緩衝層がゴムによって構成される場合、緩衝層の厚さの下限値は、好ましくは、0.5mmである。緩衝層がゴムによって構成される場合、緩衝層の厚さの上限値は、好ましくは、10mm、さらに好ましくは、5mm、さらに好ましくは、2mmである。緩衝層がゴムによって構成される場合、緩衝層の厚さの好ましい範囲は、0.5mm~10mm、0.5mm~5mm、または、0.5mm~2mmである。
【0052】
外装フィルム50が緩衝層を有する場合、緩衝層がクッションとして機能するため、蓄電デバイス10が落下したときの衝撃、または、蓄電デバイス10の製造時のハンドリングによって、外装フィルム50が破損することが抑制される。
【0053】
蓋体60は、例えば、直方体形状であり、例えば、樹脂材料によって構成される。なお、蓋体60は、外装フィルム50を例えば冷間成形することによって形成されてもよく、金属成形品であってもよい。蓋体60が金属成形品である場合、蓋体60は、バリア層52で説明した耐腐食性皮膜を有していることが好ましい。蓋体60は、蓋本体60Aを有する。蓋本体60Aは、第1面61、第2面62、および、蓋シール部63を有する。第1面61は、電極体20と面する。第2面62は、第1面61と反対側の面である。蓋シール部63は、第1面61および第2面62と繋がり、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53とヒートシールされる。蓋シール部63は、第1シール面63A、第2シール面63B、第3シール面63C、および、第4シール面63Dを含む。第1シール面63Aは、蓋体60の上面を構成する。第1シール面63Aは、蓋体60の正面視において、第1方向(本実施形態では、LR方向)に延びる。第2シール面63Bおよび第3シール面63Cは、第1シール面63Aと繋がり、蓋体60の側面を構成する。第2シール面63Bおよび第3シール面63Cは、蓋体60の正面視において、第1方向と交差する第2方向(本実施形態では、UD方向)に延びる。本実施形態では、蓋体60の正面視において、第1方向と第2方向とは、直交する。第1方向と第2方向とは、蓋体60の正面視において、直交していなくてもよい。第4シール面63Dは、蓋体60の下面を構成する。第4シール面63Dは、蓋体60の正面視において、第1方向(本実施形態では、LR方向)に延びる。
【0054】
蓋体60が板状である場合、蓄電デバイス10が重ねて配置された場合であっても、外装体40が変形することが抑制されるように、蓋体60は、ある程度の厚さを有していることが好ましい。別の観点では、蓋体60が板状である場合、後述する第2封止部80を形成する際に、蓋体60の蓋シール部63と外装フィルム50とを好適にヒートシールできるように、蓋体60の蓋シール部63は、ある程度の厚さを有していることが好ましい。蓋体60の蓋シール部63の厚さの最小値は、例えば、1.0mmであり、3.0mmがより好ましく、4.0mmがさらに好ましい。蓋体60の蓋シール部63の厚さの最大値は、例えば、20mmであり、15mmがより好ましく、10mmがさらに好ましい。蓋体60の蓋シール部63の厚さの最大値は、20mm以上であってもよい。蓋体60の蓋シール部63の厚さの好ましい範囲は、1.0mm~20mm、1.0mm~15mm、1.0mm~10mm、3.0mm~20mm、3.0mm~15mm、3.0mm~10mm、4.0mm~20mm、4.0mm~15mm、4.0mm~10mmである。本実施形態において、蓋体60が板状と表現される場合、蓋体60がJIS(日本工業規格)の[包装用語]規格によって規定されるフィルムのみによって構成される態様は含まれない。なお、蓋体60の蓋シール部63の厚さは、蓋体60の部位によって異なっていてもよい。蓋体60の蓋シール部63の厚さが部位によって異なる場合、蓋体60の蓋シール部63の厚さは、最も厚い部分の厚さである。
【0055】
蓋シール部63は、境界64、65、66、67をさらに含む。境界64は、第1シール面63Aと第2シール面63Bとの境界である。境界65は、第1シール面63Aと第3シール面63Cとの境界である。境界66は、第4シール面63Dと第2シール面63Bとの境界である。境界67は、第4シール面63Dと第3シール面63Cとの境界である。境界64~67の形状は、角であってもよく、R加工が施されることによって丸みを帯びていてもよい。本実施形態では、境界64~67は、角である。
【0056】
蓋体60と外装フィルム50とを好適にヒートシールする観点から、蓋体60を構成する材料と、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53を構成する材料とは、主材料が同じであることが好ましい。本実施形態では、蓋体60を構成する材料、および、熱融着性樹脂層53を構成する材料は、ポリプロプロピレンが主材料である。なお、主材料とは、例えば、構成要素に含まれる材料のうち、50%以上を占める材料をいう。
【0057】
本実施形態では、蓋体60は、主材料がオレフィン系共重合体である熱融着性樹脂層60Zを含む。本実施形態では、蓋体60の全体が熱融着性樹脂層60Zによって構成される。蓋体60は、少なくとも蓋シール部63を含む部分が熱融着性樹脂層60Zによって構成されていればよい。熱融着性樹脂層60Zを構成する主材料は、オレフィン系のランダム共重合体であることが好ましい。
【0058】
熱融着性樹脂層60Zは、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン骨格を含む。熱融着性樹脂層60Zを構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能である。また、熱融着性樹脂層60Zを構成している樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。熱融着性樹脂層60Zが無水マレイン酸変性ポリオレフィンより構成された層である場合、赤外分光法にて測定すると、無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0059】
熱融着性樹脂層60Zは、ポリオレフィン骨格を含む樹脂を主成分として含んでいることが好ましく、ポリオレフィンを主成分として含んでいることがより好ましく、ポリプロピレンを主成分として含んでいることがさらに好ましい。ここで、主成分とは、熱融着性樹脂層60Zに含まれる樹脂成分のうち、含有率が、例えば35質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上の樹脂成分であることを意味する。例えば、熱融着性樹脂層60Zがポリプロピレンを主成分として含むとは、熱融着性樹脂層60Zに含まれる樹脂成分のうち、ポリプロピレンの含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であることを意味する。
【0060】
ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンが好ましい。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
また、ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンであってもよい。環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
【0062】
また、ポリオレフィンは、酸変性ポリオレフィンであってもよい。酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。酸変性されるポリオレフィンとしては、前記のポリオレフィンや、前記のポリオレフィンにアクリル酸若しくはメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、又は、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。また、酸変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸またはその無水物が挙げられる。
【0063】
酸変性ポリオレフィンは、酸変性環状ポリオレフィンであってもよい。酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、酸成分に代えて共重合することにより、または環状ポリオレフィンに対して酸成分をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、酸変性に使用される酸成分としては、前記のポリオレフィンの変性に使用される酸成分と同様である。
【0064】
好ましい酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0065】
熱融着性樹脂層60Zには、複数種類のアミド系滑剤が存在していることが好ましい。蓄電デバイス10の製造において、蓋体60が成形に供される際には、熱融着性樹脂層60Zの表面にはアミド系滑剤が存在している。これにより、熱融着性樹脂層60Z表面の滑り性が向上し、蓋体60の成形性が高められている。
【0066】
熱融着性樹脂層60Zにアミド系滑剤を存在させる方法としては、蓋体60の熱融着性樹脂層60Zの表面にアミド系滑剤をコーティングしたり、熱融着性樹脂層60Zを形成するポリオレフィン樹脂などにアミド系滑剤を配合する方法が挙げられる。なお、熱融着性樹脂層60Zを形成するポリオレフィン樹脂などにアミド系滑剤を配合する場合にも、熱融着性樹脂層60Zの表面にアミド系滑剤をブリードアウトさせることにより、熱融着性樹脂層60Zの表面にアミド系滑剤を存在させることができる。一方、蓋体60の熱融着性樹脂層60Zの表面にアミド系滑剤をコーティングする場合にも、表面から内部にアミド系滑剤の一部が移行することにより、熱融着性樹脂層60Zの内部にアミド系滑剤を存在させることができる。なお、熱融着性樹脂層60Zの表面にアミド系滑剤をブリードアウトさせる方法としては、蓋体60を30~50℃程度のやや高温下で、数時間~3日間程度熟成させて、促進的にブリードさせるのが一般的であるが、アミド系滑剤の融点に近づくにつれて、熱融着性樹脂層60Zへの飽和滑量が増大するため、添加量と熟成温度には注意が必要である。
【0067】
本実施形態においては、熱融着性樹脂層60Zに複数種類の脂肪酸アミド系滑剤が存在しており、かつ、脂肪酸アミド系滑剤の少なくとも1種が、飽和脂肪酸アミドであることが好ましい。熱融着性樹脂層60Zには、1種類の脂肪酸アミド系滑剤が存在していてもよい。
【0068】
飽和脂肪酸アミドとしては、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。飽和脂肪酸アミドとしては、特に制限されないが、成形性および蓄電デバイス10の連続生産性をより向上させる観点からは、好ましくは炭素数18以上の飽和脂肪酸アミド、より好ましくはステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、アラキジン酸アミドなどが挙げられ、特に好ましくはベヘン酸アミドが挙げられる。
【0069】
本実施形態において、飽和脂肪酸アミド以外の他のアミド系滑剤としては、特に制限されないが、例えば、上記で例示した飽和脂肪酸アミド以外の他の飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミドなどが挙げられる。他の飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N-オレイルパルチミン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族系ビスアミドの具体例としては、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-システアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。これらのアミド系滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0070】
本実施形態においては、飽和脂肪酸アミドに加えて、複数種類のアミド系滑剤が不飽和脂肪酸アミドをさらに含むことが好ましい。これにより、蓋体60が高温に晒されなかった場合における、成形性および蓄電デバイス10の連続生産性をより向上させることができる。この機序の詳細は明らかではないが、例えば次のように考えることができる。すなわち、不飽和脂肪酸アミドは、分子構造に二重結合を有しており、分子同士で会合体を形成した時にオレフィン鎖が畳まれた構造をとる。このため、不飽和脂肪酸アミドは、比較的、熱融着性樹脂層60Zの内部で動き易く、熱融着性樹脂層60Zの表面にブリードし易く、滑り性が発現し易い。一方、飽和脂肪酸アミドは、分子構造に二重結合を有しておらず、直鎖的であり分子同士で会合体を形成した時に嵩高い構造をとる為(特に、炭素数が18以上である場合)、高温保管時にも熱融着性樹脂層60Z表面にブリードしにくく、滑り性が発現しにくい。一つの推測としては、不飽和脂肪酸アミドと飽和脂肪酸アミドとが会合することで、適度なブリード性と滑り性となる会合体になっていると考えられる。また、二つ目の推測としては、先行して不飽和脂肪酸がブリードして熱融着性樹脂層60Z表面に第一層を形成し、次いでブリードした飽和脂肪酸が第二層として第一層と熱融着性樹脂層60Zの間に形成されるため、白粉の問題となる不飽和脂肪酸のそれ以上のブリードが抑制されていると考えられる。
【0071】
飽和脂肪酸アミドの炭素数については、熱融着性樹脂層60Zを形成する樹脂(ポリプロピレンなど)を溶融押出し加工する230~280℃程度の温度域での過熱重量減が、炭素数18未満では約50%以上に達し、含有量の管理の観点から18以上であることが望ましく、さらに、上記のように飽和脂肪酸が(上記推測のいずれにしても)滑剤の過度のブリードを抑制していることから、ベヘン酸アミドのように炭素数22程度であることが望ましい。成形性および蓄電デバイス10の連続生産性をより向上させる観点からは、不飽和脂肪酸アミドとしては、エルカ酸アミドが特に好ましい。不飽和脂肪酸アミドは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
別の例では、熱融着性樹脂層60Zは、酸変性ポリオレフィン系樹脂、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、金属イオン架橋ポリエチレン、エチレンとアクリル酸誘導体、および、エチレンとメタクリル酸誘導体との共重合体系樹脂のいずれかから構成されていてもよい。
【0073】
さらに別の例では、熱融着性樹脂層60Zは、融点が150℃より高いプロピレン系エラストマーを添加したポリオレフィン樹脂で構成されてもよい。融点が150℃より高いプロピレン系エラストマー樹脂を添加していないポリオレフィン樹脂と比較して、150℃近傍の環境下における熱融着性樹脂層60Zと、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53と接着強度が安定する。これは、熱融着性樹脂層60Zがポリオレフィン樹脂中に150℃より高い融点を持つプロピレン系エラストマー樹脂が均一に分散した状態で形成され、ヒートシール(例えばシール温度190℃、面圧1.0MPa、シール時間3.0秒)後においても高融点のプロピレン系エラストマー樹脂がポリオレフィン樹脂中に均一に分散した状態で保たれるからである。これにより、150℃近傍の高温環境下においても熱融着性樹脂層60Zと熱融着性樹脂層53とがシールされた部分、すなわち、後述する第2封止部80が溶融軟化することが防止される。
【0074】
熱融着性樹脂層60Zは、FB方向における押し込み荷重100μNで測定されるによる弾性率が、1300MPa以上である層を少なくとも1層備えることを特徴としている。熱融着性樹脂層60Zは、当該弾性率が1300MPa以上であることにより、熱融着性樹脂層60Zの熱融着部に微小な異物が存在した場合にも、高い絶縁性を発揮することができる。熱融着性樹脂層60Zが1300MPa以上という高い弾性率を有する層を少なくとも1層備えているため、微小な異物が存在する箇所において熱融着された場合であっても、熱融着性樹脂層60Zが薄肉になることを効果的に防止することができる。
【0075】
絶縁性をより一層高める観点から、当該弾性率としては、好ましくは1500MPa以上、より好ましくは1800MPa以上、さらに好ましくは2000MPa以上が挙げられ、また、好ましくは3000MPa以下、より好ましくは2800MPa以下、さらに好ましくは2500MPa以下が挙げられ、好ましい範囲としては、1300~3000MPa程度、1300~2800MPa程度、1300~2500MPa程度、1500~3000MPa程度、1500~2800MPa程度、1500~2500MPa程度、1800~3000MPa程度、1800~2800MPa程度、1800~2500MPa程度、2000~3000MPa程度、2000~2800MPa程度、2000~2600MPa程度が挙げられる。より具体的には、熱融着性樹脂層60Zが1300MPa以上の層である場合には、前記の弾性率が好ましい。
【0076】
インデンテーション法による熱融着性樹脂層60Zの弾性率の測定は、それぞれ、次のようにして行う。ナノインデンター(HYSITRON社製のTriboIndenter TI950)を用いて弾性率を測定する。ナノインデンターにおいて、先端がダイヤモンドチップからなる正三角錐(バーコビッチ型)の圧子(HYSITRON社製、TI-0039)を用いる。室温(25℃)において、熱融着性樹脂層60Zを切断することによって、熱融着性樹脂層60Zの断面を露出させる。次に、ナノインデンターを用い、熱融着性樹脂層60Zのうち、測定対象とする層の断面に対して、垂直方向に圧子を押し込んだ際の弾性率をそれぞれ測定する。測定条件は、荷重制御方式であり、押込み荷重は100μN一定(10秒で0から100μNまで負荷をかけ、100μNを5秒間保持し、10秒で100から0μNまで除荷する)である。
【0077】
熱融着性樹脂層60Zは、剛体振り子測定における120℃での対数減衰率ΔEが0.50以下であることが好ましい。120℃における当該対数減衰率ΔEが0.50以下であることにより、熱融着性樹脂層60Zを熱融着させた際の潰れが効果的に抑制される。
【0078】
剛体振り子測定における120℃での対数減衰率は、120℃という高温環境における樹脂の硬度を表す指標であり、対数減衰率が小さくなるほど樹脂の硬度が高いことを意味している。熱融着性樹脂層60Zを熱融着させる際の温度は高温であり、熱融着性樹脂層60Zを熱融着させて形成される熱融着部において、熱融着性樹脂層60Zが熱融着部の内側(電極体20が収容される空間側)に大きく突出することがある。熱融着性樹脂層60Zが熱融着部の内側に大きく突出すると、この突出部(いわゆるポリ溜まり)を起点として、熱融着性樹脂層60Zにクラックが生じて、絶縁性が低下しやすくなる。従って、熱融着性樹脂層60Zが熱融着部の内側に大きく突出して突出部が形成されると、クラックに起因して絶縁性が低下しやすい。このため、熱融着部の形状を制御することが重要であり、そのためには、熱融着性樹脂層60Zの高温時の硬さが重要となる。そのため、本実施形態においては、120℃という高温での対数減衰率を採用している。剛体振り子測定においては、樹脂の温度を低温から高温へ上昇させた時の振り子の減衰率を測定する。剛体振り子測定では、一般に、エッジ部を測定対象物の表面に接触させ、左右方向へ振り子運動させて、測定対象物に振動を付与する。本実施形態では、120℃という高温環境における対数減衰率が0.50以下という硬い熱融着性樹脂層60Zを蓋体60を構成する材料として用いているため、蓋体60の熱融着時の熱融着性樹脂層60Zの潰れ(薄肉化)が抑制される。熱融着性樹脂層60Zの潰れが抑制されることにより、熱融着性樹脂層60Zを熱融着させて形成される熱融着部において、熱融着性樹脂層60Zが熱融着部の内側に大きく突出することが抑制され、熱融着による蓋体60の絶縁性の低下が効果的に抑制される。
【0079】
なお、対数減衰率ΔEは、以下の式によって算出される。
ΔE=[ln(A1/A2)+ln(A2/A3)+・・・ln(An/An+1)]/n
A:振幅
n:波数
【0080】
熱融着性樹脂層60Zを熱融着させた際の熱融着性樹脂層60Zの潰れを効果的に抑制する観点から、120℃における当該対数減衰率ΔEとしては、好ましくは約0.10以上、より好ましくは約0.11以上、さらに好ましくは約0.12以上が挙げられ、また、好ましくは約0.50以下、より好ましくは約0.30以下、さらに好ましくは約0.22以下、さらに好ましくは0.16以下が挙げられる。対数減衰率ΔEの好ましい範囲としては、好ましい範囲としては、0.10~0.50程度、0.10~0.30程度、0.10~0.22程度、0.10~0.16程度、0.11~0.50程度、0.11~0.30程度、0.11~0.22程度、0.11~0.16程度、0.12~0.50程度、0.12~0.30程度、0.12~0.22程度、0.12~0.16程度が挙げられる。
【0081】
熱融着性樹脂層60Zの対数減衰率ΔEは、例えば、熱融着性樹脂層60Zを構成している樹脂のメルトマスフローレート(MFR)、分子量、融点、軟化点、分子量分布、結晶化度などにより調整可能である。
【0082】
対数減衰率ΔEの測定においては、市販の剛体振り子型物性試験器を用い、熱融着性樹脂層60Zに押し当てるエッジ部として円筒型のシリンダエッジ、初期の振幅を0.3degree、30℃から200℃の温度範囲で昇温速度3℃/分の条件で熱融着性樹脂層60Zに対して剛体振り子物性試験を行う。
【0083】
熱融着性樹脂層60Zの230℃におけるメルトマスフローレートは、1g/10min~80g/10minの範囲に含まれることが好ましく、5g/10min~60g/10minの範囲に含まれることがさらに好ましい。メルトマスフローレートは、JIS K7210-1:2014に基づいて測定される。
【0084】
後述する第2封止部80の位置ズレなどを効果的に抑制する観点から、熱融着性樹脂層60Zの融点Tm1としては、好ましくは90℃以上245℃以下、より好ましくは100℃以上220℃以下が挙げられる。また、同様の観点から、熱融着性樹脂層60Zの軟化点Ts1としては、好ましくは70℃以上180℃以下、より好ましくは80℃以上150℃以下が挙げられる。
【0085】
ここで、熱融着性樹脂層60Zの融点Tm1は、熱融着性樹脂層60Zを構成する樹脂成分の融点をJIS K6921-2(ISO1873-2.2:95)に準拠しDSC法により測定される値である。また、熱融着性樹脂層60Zが、複数の樹脂成分を含むブレンド樹脂で形成されている場合には、その融点Tm1は、それぞれの樹脂の融点を上記のようにして求め、これらを質量比で加重平均して算出することができる。
【0086】
また、熱融着性樹脂層60Zの軟化点Ts1は、熱機械的分析法(TMA:Thermo-Mechanical Analyzer)により測定される値である。また、熱融着性樹脂層60Zが、複数の樹脂成分を含むブレンド樹脂で形成されている場合には、その軟化点Ts1は、それぞれの樹脂の軟化点を上記のようにして求め、これらを質量比で加重平均して算出することができる。
【0087】
熱融着性樹脂層60Zを構成している樹脂の数平均分子量(Mn)としては、好ましくは70,000以上80,000以下が挙げられ、重量平均分子量(Mw)としては、320,000以上370,000以下が挙げられ、分散度(Mw/Mn)としては、4.5以上5.5以下が挙げられる。
【0088】
また、熱融着性樹脂層60Zを構成している樹脂の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)が、それぞれ上記の範囲内にあることにより、蓋体60により高い絶縁性とヒートシール性を付与し得る機序の詳細は、必ずしも明らかではないが、例えば、次のように考えることができる。すなわち、数平均分子量(Mn)が70,000より小さいと、低分子量成分が多い為、ヒートシール時の圧力により潰れる量が大きくなり、絶縁性が低下する。また、数平均分子量(Mn)が80,000より大きいと、低分子量成分が少なく、MFRの低下が懸念され、製膜性が損なわれる虞がある。さらに、重量平均分子量(Mw)が320,000より小さいと、全体的に高分子量体が少ない為、ヒートシール時の圧力により潰れる量が大きくなり、絶縁性が低下する。また、重量平均分子量(Mw)が370,000よりも大きいと、全体的に高分子量体が多い為、MFRの低下が懸念され、製膜性が損なわれる虞がある。さらに、熱融着性樹脂層60Zを構成している樹脂の分散度(Mw/Mn)が、上記の範囲内にあることにより、蓋体60により高い絶縁性とヒートシール性を付与し得る機序の詳細は、必ずしも明らかではないが、例えば、次のように考えることができる。すなわち、分散度(Mw/Mn)が4.5より小さい、と分子量分布が狭く、押出し時のネックインが発生するといった製膜性の低下を引き起こす虞がある。また、分散度(Mw/Mn)が5.5より大きいと、分子量分布が広くなり、低分子量成分も増加する為、ヒートシール時の圧力により潰れる量が大きくなり、絶縁性が低下する。
【0089】
本実施形態では、蓋体60には、電極端子30が挿入される貫通孔60Xが形成される。貫通孔60Xは、第1面61および第2面62を貫通する。電極体20が収納された状態で電極端子30は、蓋体60に形成される貫通孔60Xを通って外装体40の外部に突出する。蓋体60の貫通孔60Xと電極端子30との僅かな隙間は、例えば、樹脂によって埋められる。なお、蓄電デバイス10において、電極端子30が外部に突出する位置は、任意に選択可能である。例えば、電極端子30は、外装体40が有する6面のうちいずれかの面に形成された孔から外部に突出していてもよい。この場合には、外装体40と電極端子30との間の僅かな隙間が、例えば、樹脂によって埋められる。蓄電デバイス10においては、蓋体60と電極端子30とが別体として設けられているが、蓋体60と電極端子30とは一体的に形成されていてもよい。なお、電極端子30が外装体40の端縁から突出しない場合、蓋体60には、貫通孔60Xが形成されていなくてもよい。
【0090】
本実施形態では、開口部40Aを有するように電極体20の周囲に外装フィルム50が巻き付けられた状態で、外装フィルム50の互いに向き合う面(熱融着性樹脂層53)同士がヒートシールされることによって、第1封止部70が形成される。
【0091】
第1封止部70は、図3に示される外装フィルム50の第1縁50Aを含む部分と第2縁50Bを含む部分とがヒートシールされることによって形成される。第1封止部70は、外装体40の長手方向に延びる。外装体40において、第1封止部70が形成される位置は、任意に選択可能である。本実施形態では、第1封止部70の根本70Xは、外装体40の第1面41と第2面42との境界の辺43上に位置することが好ましい。第1面41は、第2面42よりも面積が大きい。第1封止部70の根本70Xは、外装体40の任意の面上に位置していてもよい。本実施形態では、第1封止部70は、平面視において、電極体20よりも外側に張り出している。第1封止部70は、例えば、外装体40の第2面42に向けて折り畳まれていてもよく、第1面41に向けて折り畳まれていてもよい。
【0092】
本実施形態では、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53と蓋体60の蓋シール部63とがヒートシールされることによって、第2封止部80が形成される。以下では、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53と蓋体60の蓋シール部63とのシール強度を、第2封止部80のシール強度と称する場合がある。なお、第2封止部80のシール強度は、蓋シール部63のうちの長辺の部分、すなわち、図1AにおけるLR(幅)方向に延びる蓋シール部63における熱融着性樹脂層53と蓋体60とのシール強度である。
【0093】
第2封止部80のシール強度は、次のように測定される。まず、外装フィルム50のうちの外装体40の第1面41を構成している部分に切れ込みを形成し、LR方向に並ぶ3つの帯状部材41X、41Y、41Z(図1Bの二点鎖線参照)を形成する。3つの帯状部材41X、41Y、41ZのLR方向における幅は、15mmである。帯状部材41X、41Y、41Zの端部は、第2封止部80において、蓋体60と接合されている。蓋体60のLR方向の長さは、45mm以上である。次に帯状部材41X、41Y、41Zのうちの蓋体60と接合されている端部と反対側の端部をUD方向における上方(第1面41Bと反対の方向)に引っ張ることによって、帯状部材41X、41Y、41Zのシール強度をそれぞれ測定する。本実施形態では、第2封止部80のシール強度は、帯状部材41X、41Y、41Zのシール強度の平均値である。蓋体60のLR方向の長さが45mm未満である場合、15mm未満である任意の幅Xmmの3つの帯状部材を形成し、蓋体60のLR方向の長さが45mm以上であると同様の方法によって3つの帯状部材のシール強度を測定する。得られたシール強度をそれぞれ任意の幅Xmmで除し、15を乗ずることによって、15mm幅における3つの帯状部材のシール強度にそれぞれ換算する。第2封止部80のシール強度は、15mm幅に換算された3つの帯状部材のシール強度の平均値である。なお、蓋体60が、長辺および短辺を含む複数のパーツに分割されている場合の第2封止部80のシール強度は、複数のパーツの蓋シール部63のうちの長辺の部分におけるシール強度である。
【0094】
外装体40によって電極体20が密封された状態を好適に維持する観点から、第2封止部80のシール強度は、好ましくは、40N/15mm以上、さらに好ましくは、50N/15mm以上、さらに好ましくは、60N/15mm以上、さらに好ましくは、70N/15mm以上、さらに好ましくは、85N/15mm以上である。第2封止部80のシール強度が40N/15mm以上である場合、蓄電デバイス10を、例えば、数年間(10年未満)使用しても、外装体40によって電極体20が密封された状態が好適に維持される。第2封止部80のシール強度が85N/15mm以上である場合、蓄電デバイス10を、例えば、10年以上使用しても、外装体40によって電極体20が密封された状態が好適に維持される。第2封止部80のシール強度は、好ましくは、300N/15mm以下である。第2封止部80のシール強度の好ましい範囲は、40N/15mm~300N/15mm、50N/15mm~300N/15mm、60N/15mm~300N/15mm、70N/15mm~300N/15mm、または、85N/15mm~300N/15mmである。
【0095】
本実施形態では、外装フィルム50と蓋体60との間に隙間が形成されにくいように、蓋体60は、蓋シール部63から突出する突出部68を有することが好ましい。突出部68は、蓋本体60Aと一体的に形成されてもよく、蓋本体60Aと別体で形成され、蓋本体60Aに接合されてもよい。本実施形態では、突出部68は、蓋本体60Aと一体的に形成される。蓋シール部63において、突出部68が形成される位置は、任意に選択可能である。外装フィルム50と蓋体60との隙間は、例えば、第1封止部70の根本70Xと蓋体60との間に形成されやすい。特に、第1封止部70の根本70Xが蓋体60の境界64~境界67に位置する場合、第1封止部70の根本70Xと蓋体60との間の樹脂埋まり性が低下しやすい。このため、突出部68は、蓋シール部63において、第1封止部70の根本70Xが位置する箇所に形成されることが好ましい。本実施形態では、第1封止部70の根本70Xは、蓋体60の境界64に位置する。このため、突出部68は、蓋シール部63において、境界64に形成されることが好ましい。本実施形態では、第1封止部70は、突出部68を挟んだ状態でシールされる。なお、突出部68は、第1シール面63A、第2シール面63B、第3シール面63C、第4シール面63D、境界65、境界66、および、境界67の少なくとも1つに形成されていてもよい。
【0096】
突出部68の形状は、任意に選択可能である。本実施形態では、突出部68の形状は、板状である。突出部68の厚さは、任意に選択可能である。本実施形態では、突出部68は、境界64から離れるにつれて厚さが薄くなる。換言すれば、突出部68は、境界64から離れるにつれて先細り形状である。突出部68の厚さは、一定であってもよく、境界64から離れるにつれて厚さが厚くなっていてもよい。
【0097】
突出部68が延びる方向は、任意に選択可能である。本実施形態では、突出部68は、第1方向(本実施形態では、LR方向)に沿って延びる。突出部68は、第2方向(本実施形態では、UD方向)に沿って延びていてもよい。
【0098】
突出部68の長さは、第1封止部70の長さ以下の範囲において、任意に選択可能である。例えば、突出部68の長さは、第1封止部70の長さと実質的に等しくてもよく、第1封止部70の長さの30%~50%の長さであってもよい。
【0099】
<1-2.蓄電デバイスの製造方法>
図7は、蓄電デバイス10の製造方法の一例を示すフローチャートである。蓄電デバイス10の製造方法は、例えば、第1工程、第2工程、第3工程、および、第4工程を含む。第1工程~第4工程は、例えば、蓄電デバイス10の製造装置によって実施される。
【0100】
ステップS11の第1工程では、製造装置は、電極体20の両端部に対して、電極端子30が取り付けられた状態の蓋体60を配置する。第1工程が完了することによって、電極端子30と電極体20の電極とが電気的に接続される。なお、第1工程においては、電極体20に電気的に接続された状態の電極端子30に対して、蓋体60を接続してもよい。
【0101】
ステップS12の第2工程は、第1工程の後に実施される。第2工程では、製造装置は、規制手段によって電極体20および蓋体60の移動を規制しつつ、外装フィルム50にテンションが作用した状態で外装フィルム50を電極体20および蓋体60に巻き付ける。規制手段は、例えば、電極体20および蓋体60が嵌め込まれる溝である。規制手段は、電極体20および蓋体60が移動しないように、電極体20および蓋体60に外力を作用させる装置であってもよい。規制手段は、外装フィルム50が引っ張られる方向と反対方向の力を電極体20および蓋体60に作用させる装置であってもよい。なお、規制手段は、外装フィルム50のしわを取り除くために、外装フィルム50が引っ張られている状態において、外装フィルム50上を走行するローラーを含んでいてもよい。
【0102】
ステップS13の第3工程は、第2工程の後に実施される。第3工程では、製造装置は、蓋体60の突出部68が外装フィルム50によって挟まれるように、外装フィルム50の第1縁50Aを含む部分の熱融着性樹脂層53と、第2縁50Bを含む部分の熱融着性樹脂層53とを、電極体20および蓋体60の移動を規制しつつ、外装フィルム50にテンションが作用した状態でヒートシールすることによって、第1封止部70を形成する。なお、第3工程は、第1封止部70を形成する工程に相当する。
【0103】
ステップS14の第4工程は、第3工程の後に実施される。製造装置は、外装フィルム50と蓋体60とをヒートシールすることによって、第2封止部80を形成する。
【0104】
<1-3.蓄電デバイスの作用および効果>
蓄電デバイス10によれば、蓋体60は、熱融着性樹脂層60Zによって構成されているため、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53と好適にヒートシールされる。このため、このため、外装体40によって電極体20を好適に密封できる。
【0105】
[2.変形例]
上記実施形態は本発明に関する蓋体、蓄電デバイス、および、周縁部材が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する蓋体、蓄電デバイス、および、周縁部材は、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の幾つかの例を示す。なお、以下の変形例は、技術的に矛盾しない限り互いに組み合わせることができる。
【0106】
<2-1.第1変形例>
上記実施形態の蓄電デバイス10において、蓋体60は、突出部68を有していなくてもよい。なお、第1変形例は、以下の第2変形例~第14変形例にも同様に適用できる。
【0107】
<2-2.第2変形例>
上記実施形態の蓄電デバイス10において、突出部68が延びる方向は、任意に変更可能である。例えば、図8に示されるように、突出部68は、蓋体60の正面視において、第1方向(実施形態では、LR方向)、および、第2方向(実施形態では、UD方向)と交差する第3方向に延びていてもよい。
【0108】
<2-3.第3変形例>
上記実施形態の蓄電デバイス10において、蓋体60の構成は、任意に変更可能である。図9に示されるように、蓋体60は、蓋本体60Aの周縁部の少なくとも一部と接合される周縁部材60Bを備えていてもよい。第3変形例では、周縁部材60Bは、蓋本体60Aの周縁部の全体を覆う枠体である。この変形例では、例えば、蓋本体60Aを構成する材料は、金属または樹脂等の任意の材料を用いることができる。周縁部材60Bを構成する材料は、熱融着性樹脂層60BZである。熱融着性樹脂層60BZに関する諸元は、熱融着性樹脂層60Zの諸元を適用できる。第3変形例では、蓋体60の蓋シール部63および突出部68は、周縁部材60Bに形成される。第3変形例において、蓋本体60Aと周縁部材60Bとは、別体で構成され、互いに接合されてもよい。第3変形例において、蓋本体60Aと周縁部材60Bとは、二色成形またはインサート成形によって一体的に形成されてもよい。
【0109】
第3変形例において、蓄電デバイス10は、蓋本体60Aと周縁部材60Bの間に両者を好適に接合させる接着性フィルムおよび接着層の少なくとも一方を備えてもよい。接着性フィルムまたは接着層は、単層でもよく、多層でもよく、少なくとも極性基を有する樹脂材料を含むことが好ましい。接着層は、ディップコート、ディスペンサー、インクジェット、噴霧、または、スクリーン印刷などで形成することができる。蓋本体60Aと周縁部材60Bとを好適に接合させる観点から、蓋本体60Aのうちの少なくとも蓋シール部63の表面は、粗面化処理が施されることが好ましい。
【0110】
第3変形例において、蓄電デバイス10が重ねて配置された場合であっても、外装体40が変形することが抑制されるように、周縁部材60Bの蓋シール部63は、ある程度の厚さを有していることが好ましい。別の観点では、第2封止部80を形成する際に、周縁部材60Bの蓋シール部63と外装フィルム50とを好適にヒートシールできるように、周縁部材60Bの蓋シール部63は、ある程度の厚さを有していることが好ましい。周縁部材60Bの蓋シール部63の厚さの最小値は、例えば、1.0mmであり、3.0mmがより好ましく、4.0mmがさらに好ましい。周縁部材60Bの蓋シール部63の厚さの最大値は、例えば、20mmであり、15mmがより好ましく、10mmがさらに好ましい。周縁部材60Bの蓋シール部63の厚さの最大値は、20mm以上であってもよい。周縁部材60Bの蓋シール部63の厚さの好ましい範囲は、1.0mm~20mm、1.0mm~15mm、1.0mm~10mm、3.0mm~20mm、3.0mm~15mm、3.0mm~10mm、4.0mm~20mm、4.0mm~15mm、4.0mm~10mmである。
【0111】
<2-4.第4変形例>
上記実施形態の蓄電デバイス10において、蓋体60の突出部68の具体的な形成方法は、任意に変更可能である。例えば、蓋本体60Aの蓋シール部63に接合される接着性フィルム等によって、突出部68を形成してもよい。この変形例では、例えば、蓋シール部63に複数の接着性フィルムを重ねるように接合して突出部68を形成してもよく、接着性フィルムを蓋シール部63にフラップ状に接合して突出部68を形成してもよい。
【0112】
<2-5.第5変形例>
上記実施形態の蓄電デバイス10は、外装フィルム50と蓋体60とを好適に接着するために、図10に示されるように、外装フィルム50と蓋本体60Aとの間に配置される周縁部材60Cを有していてもよい。第5変形例では、周縁部材60Cは、蓋本体60Aの周縁部(蓋シール部63)に接合される接着性フィルムである。第5変形例では、例えば、蓋本体60Aを構成する材料は、金属または樹脂等の任意の材料を用いることができる。第5変形例では、周縁部材60Cは、蓋本体60Aの蓋シール部63の概ね全体に接着される。なお、周縁部材60Cは、蓋体60の第1面61の少なくとも一部、および、第2面62の少なくとも一部に接着されてもよい。
【0113】
第5変形例では、例えば、周縁部材60Cが接着された状態の蓋体60が外装体40の両端の開口部40Aに取り付けられた後、第2封止部80が形成される。周縁部材60Cは、例えば、蓋体60の蓋シール部63の全面を覆うように蓋体60に巻き付けられてもよい。周縁部材60Cは、全体として、蓋体60の蓋シール部63よりも幅広に構成されることが好ましい。この場合、周縁部材60Cを蓋体60に容易に接着できる。さらには、蓋シール部63の境界64~67が周縁部材60Cによって覆われるため、蓋体60と周縁部材60Cとの接着性が高められる。
【0114】
図11は、周縁部材60Cの層構成の一例を示す断面図である。周縁部材60Cは、外装フィルム50と蓋体60とを接着できるフィルムである。周縁部材60Cは、少なくとも外装フィルム50の熱融着性樹脂層53と接合される部分に熱融着性樹脂層60CAを有していることが好ましい。図11に示される例では、周縁部材60Cは、少なくとも熱融着性樹脂層60CA、バリア層60CB、および、熱融着性樹脂層60CCをこの順に有する積層体(ラミネートフィルム)である。周縁部材60Cは、熱融着性樹脂層60CAの単層構成であってもよい。周縁部材60Cの熱融着性樹脂層60CA、60CCに関する諸元は、熱融着性樹脂層60Zに関する諸元を適用できる。バリア層60CBに関する諸元は、外装フィルム50のバリア層52に関する諸元を適用できる。周縁部材60Cは、周縁部材60Cのうちの蓋体60と接着される側の熱融着性樹脂層60CCに代えて、熱融着性樹脂層を有していてもよい。熱融着性樹脂層を構成する材料は、好ましくは、無水マレイン酸等の酸でグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。周縁部材60Cの熱融着性樹脂層60CCを構成する材料は、蓋本体60Aと接合できる材料であれば任意に選択可能である。
【0115】
周縁部材60Cは、バリア層60CBに代えて、または、加えて、耐熱基材層を有していてもよい。耐熱性基材層としては、耐熱性樹脂によって構成されるフィルムであればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリメチルペンテン(登録商標)、ポリアセタール環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の無延伸または延伸フィルムを用いることができる。なお、ポリエチレンテレフタレートは安価で強度が強く、特に好ましい。
【0116】
周縁部材60Cは、粘着性を有していることが好ましい。周縁部材60Cが粘着性を有する場合、周縁部材60Cが外装フィルム50と蓋体60との間に配置された状態で第2封止部80を形成するときに、蓋体60および外装フィルム50に対する周縁部材60Cの位置がずれにくい。周縁部材60Cの熱融着性樹脂層60CA、60CCに粘着性付与樹脂を含有させることによって、周縁部材60Cに粘着性を付与することができる。粘着性付与樹脂としては、アモルファスポリオレフィンが挙げられる。アモルファスポリオレフィンとしては、例えば、アモルファスポリプロピレン、または、アモルファスプロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。熱融着性樹脂を構成する母材に対する粘着性付与樹脂の含有量は、10~20重量%以下であることが好ましい。
【0117】
<2-6.第6変形例>
上記実施形態において、電極端子30が配置される位置は、任意に選択可能である。例えば、電極端子30は、第1封止部70から突出してもよい。
【0118】
<2-7.第7変形例>
上記実施形態において、蓄電デバイス10の外装フィルム50は、FB方向において、2つの蓋体60の少なくとも一方よりも外側に張り出していてもよい。外装フィルム50のうちの蓋体60よりも外側に張り出した部分が閉じられることによって、電極体20は封止される。外装フィルム50のうちの蓋体60よりも張り出した部分は、ゲーベルトップ型のパウチ、または、ブリック型のパウチのように折り畳まれてもよい。
【0119】
<2-8.第8変形例>
上記実施形態において、外装体40は、2つの蓋体60のうちの一方を有していなくてもよい。この変形例では、FB方向において、外装体40のうちの蓋体60が省略された部分では、外装フィルム50のうちの電極体20よりも外側に張り出した部分が閉じられることによって、電極体20は封止される。この変形例では、外装フィルム50のうちの電極体20よりも外側に張り出した部分は、ゲーベルトップ型のパウチ、または、ブリック型のパウチのように折り畳まれてもよい。
【0120】
<2-9.第9変形例>
上記実施形態において、外装体40の外郭形状は、任意に変更可能である。外装体40の外郭形状は、円柱、角柱、または、立方体であってもよい。
【0121】
<2-10.第10変形例>
上記実施形態において、蓋体60は、図4に示される熱融着性樹脂層60Zに代えて、図12に示されるように、熱融着性樹脂層160Zを含んで構成されてもよい。第3変形例において、周縁部材60Bは、図9に示される熱融着性樹脂層60BZに代えて、図13に示されるように、熱融着性樹脂層160ZBを含んで構成されてもよい。第5変形例において、周縁部材60Cは、図11に示される熱融着性樹脂層60CAに代えて、図14に示されるように、熱融着性樹脂層160CAを含んで構成されてもよい。以下では、熱融着性樹脂層160Z、熱融着性樹脂層160ZB、および、熱融着性樹脂層160CAを特に区別しない場合、単に熱融着性樹脂層と称する場合がある。
【0122】
第10変形例において、熱融着性樹脂層は、下記の方法により、温度差T1と温度差T2を測定した場合に、温度差T2を温度差T1で除して得られる値(比T2/T1)が、0.60以上であることを特徴とする。
【0123】
(温度差T1の測定)
JIS K7121:2012の規定に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により、熱融着性樹脂層について、DSC曲線を得る。得られたDSC曲線から、熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定する。なお、温度差T1の測定は、下記の温度差T2の測定とは異なり、電解液に浸漬するなどの処理を行っていない熱融着性樹脂層を測定対象としたものである。
【0124】
(温度差T2の測定)
温度85℃の環境において、熱融着性樹脂層を、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、乾燥させる。次に、JIS K7121:2012の規定に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により、乾燥後の熱融着性樹脂層について、DSC曲線を得る。得られたDSC曲線から、熱融着性樹脂層の融解ピーク温度補外融解開始温度と、補外融解終了温度との温度差T2を測定する。
【0125】
熱融着性樹脂層に使用される樹脂成分については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。すなわち、熱融着性樹脂層は、ポリオレフィン骨格を含んでいてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。熱融着性樹脂層がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0126】
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)などのポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマーなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
【0127】
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネンなどの環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエンなどの環状ジエンなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
【0128】
前記酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸などの酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのカルボン酸又はその無水物が挙げられる。
【0129】
前記酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β-不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β-不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記ポリオレフィンの変性に使用される酸成分と同様である。
【0130】
これらの樹脂成分の中でも、好ましくはポリプロピレンなどのポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン;さらに好ましくはポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0131】
熱融着性樹脂層は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱融着性樹脂層は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
【0132】
熱融着性樹脂層の中には、滑剤が含まれていてもよい。また、熱融着性樹脂層の表面に存在する滑剤は、熱融着性樹脂層を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、熱融着性樹脂層の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
【0133】
より詳細には、下記の温度差T1、T2の測定内容から理解されるとおり、当該比T2/T1が、上限値である1.0に近い程、熱融着性樹脂層が電解液に接触する前後における融解ピークの開始点(補外融解開始温度)と終了点(補外融解終了温度)の幅の変化が小さいことを意味している。すなわち、温度差T2の値は、通常、温度差T1の値以下である。融解ピークの補外融解開始温度と補外融解終了温度の幅の変化が大きくなる要因としては、熱融着性樹脂層を構成している樹脂に含まれる低分子量の樹脂が、電解液に接触することにより電解液中に溶出し、電解液に接触した後の熱融着性樹脂層の融解ピークの補外融解開始温度と補外融解終了温度の幅が、電解液に接触する前に比して、小さくなることが挙げられる。融解ピークの補外融解開始温度と補外融解終了温度の幅の変化を小さくするための方法の一つとして、熱融着性樹脂層を構成している樹脂に含まれる低分子量の樹脂の割合を調整する方法が挙げられる。
【0134】
融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度の測定にあたり、示差走査熱量分析計としては、市販品を用いることができる。また、DSC曲線としては、試験サンプルを-50℃で10分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温(1回目)し、200℃で10分間保持した後、降温速度-10℃/分で-50℃まで降温し、-50℃で10分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温(2回目)し、200℃で10分間保持し、2回目に200℃まで昇温する際のDSC曲線を用いる。また、温度差T1及び温度差T2を測定する際、それぞれのDSC曲線において、120~160℃の範囲に現れる融解ピークのうち、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークについて解析を行う。ピークが重なって2個以上存在していた場合にも、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークについてのみ解析を行う。
【0135】
また、補外融解開始温度は、融解ピーク温度の開始点を意味し、低温(65~75℃)側のベースラインを高温側に延長した直線と、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークの低温側の曲線に、勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度とする。補外融解終了温度は、融解ピーク温度の終了点を意味し、高温(170℃)側のベースラインを低温側に延長した直線と、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークの高温側の曲線に、勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度とする。
【0136】
高温環境で熱融着性樹脂層に電解液が接触し、熱融着性樹脂層に電解液が付着した状態で熱融着性樹脂層同士が熱融着された場合にも、熱融着によって、より一層高いシール強度を発揮する観点から、温度差T2を温度差T1で除して得られる値(比T2/T1)としては、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.75以上が挙げられ、好ましい範囲としては、0.70~1.0程度、0.75~1.0程度が挙げられる。また、上限は、例えば1.0である。なお、このような比T2/T1に設定するためには、例えば、熱融着性樹脂層を構成する樹脂の種類、組成、分子量などを調整する。
【0137】
<2-11.第11変形例>
第5変形例において、周縁部材60Cは、図11に示される熱融着性樹脂層60CAに代えて、図15に示されるように、熱融着性樹脂層260CAを含んで構成されてもよい。すなわち、第11変形例においては、周縁部材60Cは、内側(蓋体60側)から外側(外装フィルム50側)に向けて、少なくとも、バリア層60CBと、熱融着性樹脂層260CAとをこの順に備える積層体から構成される。なお、周縁部材60Cは、少なくとも熱融着性樹脂層260CAを備えていればよい。周縁部材60Cは、外装体40を構成する外装フィルム50とシールされる周縁部材シール部を備える。第11変形例では、周縁部材シール部における厚み方向の断面について、電界放出形走査型電子顕微鏡を用いて取得した断面画像に海島構造が観察され、断面画像において、前記海島構造の島の部分の面積の割合が、0.1%以上50%以下である。なお、熱融着性樹脂層260CAは、周縁部材シール部に相当する。断面画像において、海島構造の島の部分の面積の割合RAが、好ましくは5%以上50%以下であり、さらに好ましくは、10%以上50%以下であり、さらに好ましくは、25%以上35%以下である。
【0138】
熱融着性樹脂層260CAを構成する主材料は、割合RAが5%以上50%以下に含まれる材料であれば任意に選択可能である。熱融着性樹脂層260CAを構成する主材料は、オレフィン系共重合体であることが好ましく、オレフィン系のランダム共重合体であることがより好ましい。なお、第11変形例においては、第1シール面63Aまたは第4シール面63Dに配置された熱融着性樹脂層260CAにおいて、FB方向と直行する平面で切った断面と、LR方向と直行する平面で切った断面について、走査型電子顕微鏡を用いて観察した際に、島形状の平均的な縦横比が1に近い方をTD方向の断面とする。第2シール面63Bまたは第3シール面63Cに配置された熱融着性樹脂層260CAにおいて、FB方向と直行する平面で切った断面と、UD方向と直行する平面で切った断面について、走査型電子顕微鏡を用いて観察した際に、島形状の平均的な縦横比が1に近い方をTD方向の断面とする。
【0139】
断面画像に海島構造が観察されるとは、断面画像に海の部分(海部)と島の部分(島部)とが観察されることをいう。ポリプロピレンに対して少量のポリエチレンを添加し、溶融押出成形によって熱融着性樹脂層を形成すると、ポリプロピレンの海部に、ポリエチレンの島部が分散した海島構造が形成される。なお、当該海島構造を観察するには、後述の通り、熱融着性樹脂層の断面を四酸化ルテニウムなどで染色し、走査型電子顕微鏡を用いて断面画像を取得して観察する。なお、第11変形例に関する諸元は、図9に示される周縁部材60B(枠体)にも同様に適用できる。周縁部材60Bのうちの蓋シール部63を含む部分は、周縁部材シール部に相当する。
【0140】
<2-12.第12変形例>
上記実施形態において、蓋体60は、図4に示される熱融着性樹脂層60Zに代えて、図16に示されるように、熱融着性樹脂層260Zを含んで構成されてもよい。蓋体60は、蓋シール部63における厚み方向の断面について、電界放出形走査型電子顕微鏡を用いて取得した断面画像に海島構造が観察され、断面画像において、海島構造の島の部分の面積の割合RBが、0.1%以上50%以下であり、好ましくは、5%以上50%以下であり、さらに好ましくは、10%以上50%以下であり、さらに好ましくは、25%以上35%以下である。第12変形例においては、蓋体60のうちの少なくとも蓋シール部63を含む部分が熱融着性樹脂層260Zによって構成されていればよい。熱融着性樹脂層260Zを構成する主材料は、割合RBが0.1%以上50%以下に含まれる材料であれば、任意に選択可能である。熱融着性樹脂層260Zを構成する主材料は、オレフィン系共重合体であることが好ましく、オレフィン系のランダム共重合体であることがより好ましい。
【0141】
断面画像に海島構造が観察されるとは、断面画像に海の部分(海部)と島の部分(島部)とが観察されることをいう。ポリプロピレンに対して少量のポリエチレンを添加し、溶融押出成形によって熱融着性樹脂層を形成すると、ポリプロピレンの海部に、ポリエチレンの島部が分散した海島構造が形成される。なお、当該海島構造を観察するには、熱融着性樹脂層260Zの断面を四酸化ルテニウムなどで染色し、走査型電子顕微鏡を用いて断面画像を取得して観察する。
【0142】
<2-13.第13変形例>
第5変形例において、接着性フィルムとしての周縁部材60Cは、耐熱性および防湿性等の必要物性を有するキャストポリプロピレンによって構成されてもよい。
【0143】
<2-14.第14変形例>
図17は、第14変形例の蓄電デバイス10の断面図である。図18は、図17の蓋体60およびその周辺の断面図である。
図17および図18に示されるように、外装体40の内部に水分およびガスの少なくとも一方が侵入することを抑制する観点から、バリア性フィルム90が蓋体60に接合されていてもよい。本実施形態では、バリア性フィルム90は、外装体40の内部に水分およびガスが侵入することを抑制する。バリア性フィルム90は、蓋体60のうちの外装フィルム50と接合され得る位置に接合されていればよい。図17および図18に示される例では、バリア性フィルム90は、蓋シール部63の全体と、第2面62と、蓋体60の貫通孔60Xの内部と、を覆う。バリア性フィルム90は、境界64~67を覆っていてもよい。バリア性フィルム90が、蓋シール部63および境界64~67に加えて、第2面62、ならびに、貫通孔60Xの内部を覆うため、電極端子30と貫通孔60Xとの間から水分が外装体40の内部に侵入することが抑制される。バリア性フィルム90は、1枚のフィルムで構成されてもよく、例えば、蓋シール部63を覆っている部分と、第2面62を覆っている部分とが、別体で構成されてもよい。換言すれば、バリア性フィルム90は、複数の分割されたフィルムであってもよい。
【0144】
バリア性フィルム90のうちの蓋シール部63を覆っている部分の端部90Aの位置、および、蓋体60の貫通孔60Xの内部を覆っている部分の端部90Bの位置は、任意に選択可能である。蓄電デバイス10がリチウムイオン電池等の電解液を含む電池である場合、バリア性フィルム90の端部90A、90Bと電解液から発生したフッ化水素等のガスとが接触して、後述するバリア性フィルム90が備えるバリア層91が腐食するおそれがある。
【0145】
このため、バリア層91の腐食を抑制する観点から、端部90Aは、蓋シール部63と第1面61との境界よりも第2面62に近い箇所に位置することが好ましい。同様の観点から、端部90Bは、貫通孔60Xのうちの第1面61側の開口よりも第2面62側の開口に近い箇所に位置することが好ましい。なお、端部90Aは、蓋シール部63と第1面61との境界に位置してもよく、または、蓋体60よりも電極体20に近い位置まで延びていてもよい。端部90Bは、貫通孔60Xのうちの第1面61側の開口の近傍に位置していてもよく、または、蓋体60よりも電極体20に近い位置まで延びていてもよい。
【0146】
図19および図20は、バリア性フィルム90の層構成の一例を示す断面図である。
図19に示されるように、バリア性フィルム90は、バリア層91と、バリア層91のうちの蓋体60と接合される面と反対側の面に積層される熱融着性樹脂層92と、を含んでいてもよい。バリア層91に関する諸元は、バリア層52に関する諸元を適用できる。
【0147】
熱融着性樹脂層92は、外装フィルム50の熱融着性樹脂層53と熱融着する。熱融着性樹脂層92に関する諸元は、熱融着性樹脂層60Z、60BZ、60CA、60CC、160Z、160BZ、160CA、260CA、260Zに関する諸元を適用できる。熱融着性樹脂層92は、熱融着性樹脂層53よりも薄くてもよい。熱融着性樹脂層92の厚さは、例えば、5~20μmであってもよい。
【0148】
図20に示されるように、バリア性フィルム90は、バリア層91のうちの蓋体60と接合される面に積層される熱融着性樹脂層93を含んでいてもよい。熱融着性樹脂層93に関する諸元は、熱融着性樹脂層92に関する諸元と同様である。熱融着性樹脂層93は、熱融着性樹脂層53よりも薄くてもよい。熱融着性樹脂層93の厚さは、例えば、5~20μmであってもよい。バリア性フィルム90が熱融着性樹脂層93を含む場合、バリア性フィルム90と蓋体60とを熱融着によって好適に接合できる。バリア層91と熱融着性樹脂層93とは、接着層55によって接合されてもよい。
【0149】
第14変形例においては、バリア性フィルム90は、蓋体60のうちの第2面62の少なくとも一部のみに接合されていてもよい。この構成では、第7変形例のように、外装フィルム50のうちの蓋体60よりも外側に張り出した部分の熱融着性樹脂層53と、バリア性フィルム90の熱融着性樹脂層92とがヒートシールされることによって、電極体20は封止されてもよい。
【0150】
第14変形例は、以下の技術思想を開示する。
(A)蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体であって、
前記蓋体は、
蓋本体と、
前記蓋本体のうちの前記外装体を構成する外装フィルムと接合され得る位置に接合されるバリア性フィルムと、を含み、
前記バリア性フィルムは、主材料がオレフィン系共重合体である熱融着性樹脂層を含む
蓋体。
【0151】
(B)電極体と、
前記電極体を封止する外装体と、を備え、
前記外装体は、
前記電極体を包む外装フィルムと、
前記外装フィルムと接合される蓋体と、含み、
前記蓋体は、
蓋本体と、
前記蓋本体のうちの前記外装体を構成する外装フィルムと接合され得る位置に接合されるバリア性フィルムと、を含み、
前記バリア性フィルムは、主材料がオレフィン系共重合体である熱融着性樹脂層を含む
蓄電デバイス。
【0152】
(C)蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体を構成するバリア性フィルムであって、
前記蓋体は、
蓋本体と、
前記蓋本体のうちの前記外装体を構成する外装フィルムと接合され得る位置に接合されるバリア性フィルムと、を含み、
前記バリア性フィルムは、主材料がオレフィン系共重合体である熱融着性樹脂層を含む
バリア性フィルム。
【0153】
(D)蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体を構成するバリア性フィルムであって、
前記蓋体は、
蓋本体と、
前記蓋本体のうちの前記外装体を構成する外装フィルムと接合され得る位置に接合される前記バリア性フィルムと、を含み、
前記バリア性フィルムは、熱融着性樹脂層を含み、
前記熱融着性樹脂層は、下記の方法により、温度差T1と温度差T2を測定し、前記温度差T2を前記温度差T1で除して得られる値が、0.60以上である、バリア性フィルム。
(温度差T1の測定)
示差走査熱量測定により、前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定する。
(温度差T2の測定)
温度85℃の環境において、前記熱融着性樹脂層を、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、乾燥させる。示差走査熱量測定により、乾燥後の前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T2を測定する。
【0154】
(E)蓄電デバイスの外装体に用いられる蓋体を構成するバリア性フィルムであって、
前記蓋体は、
蓋本体と、
前記蓋本体のうちの前記外装体を構成する外装フィルムと接合され得る位置に接合される前記バリア性フィルムと、を含み、
前記バリア性フィルムは、前記外装フィルムとシールされる熱融着性樹脂層を備え、
前記熱融着性樹脂層における厚み方向の断面について、電界放出形走査型電子顕微鏡を用いて取得した断面画像に海島構造が観察され、
前記断面画像において、海島構造の島の部分の面積の割合が、0.1%以上50%以下であり、好ましくは、5%以上50%以下であり、さらに好ましくは、10%以上50%以下であり、さらに好ましくは、25%以上35%以下である。
【符号の説明】
【0155】
10 :蓄電デバイス
20 :電極体
40 :外装体
50 :外装フィルム
60 :蓋体
60B:周縁部材(枠体)
60C:周縁部材(接着性フィルム)
60Z、60BZ、60CA、60CC、160Z、160BZ、160CA、260CA、260Z:熱融着性樹脂層
60CB:バリア層
図1A
図1B
図2
図3
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図5
図6
図7
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図20