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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025107756
(43)【公開日】2025-07-22
(54)【発明の名称】MSR遺伝子発現亢進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20250714BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250714BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250714BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250714BHJP
   A61K 36/42 20060101ALI20250714BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20250714BHJP
   A61K 36/16 20060101ALI20250714BHJP
   A61K 8/9771 20170101ALI20250714BHJP
   A61K 36/73 20060101ALI20250714BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20250714BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61P43/00 111
A61P17/00
A61Q19/00
A61K36/42
A61K36/28
A61K36/16
A61K8/9771
A61K36/73
A61K36/185
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001156
(22)【出願日】2024-01-09
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 靖子
(72)【発明者】
【氏名】大島 宏
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC02
4C083EE11
4C088AB02
4C088AB12
4C088AB19
4C088AB26
4C088AC03
4C088AC04
4C088AC05
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA07
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】表皮においてタンパク質のスルホキシド化したメチオニンを還元する技術を提供することを課題とする。
【解決手段】ヘチマエキス、ヤグルマギク花エキス、イチョウ葉エキス、キイチゴ果汁、アッケシソウエキス、及びフラガリアチロエンシス果汁からなる群から選択される一種又は二種以上を、メチオニンスルホキシドレダクターゼ(MSR)遺伝子の発現を亢進させる有効成分とする。前記エキスは、表皮において、表皮ターンオーバーを促す因子であるKGFや角化細胞のケラチンのスルホキシド化したメチオニンの還元を促すことができるため、表皮ターンオーバー及び/又は肌の柔軟性の改善用の皮膚外用組成物に好適に配合しうる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘチマエキス、ヤグルマギク花エキス、イチョウ葉エキス、キイチゴ果汁、アッケシソウエキス、及びフラガリアチロエンシス果汁からなる群から選択される一種又は二種以上からなる、メチオニンスルホキシドレダクターゼ(MSR)遺伝子発現亢進剤。
【請求項2】
角化細胞におけるMSR遺伝子の発現を亢進する、請求項1に記載のMSR遺伝子発現亢進剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のMSR遺伝子発現亢進剤を含有する、表皮ターンオーバー及び/又は肌の柔軟性の改善用の皮膚外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメチオニンスルホキシドレダクターゼ(以降、MSRと記す)遺伝子発現亢進剤に関し、さらにこれを含有する表皮ターンオーバー及び/又は肌の柔軟性の改善用の皮膚外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は日常生活において紫外線、大気汚染物質、ストレス等様々な要因による酸化ストレスにさらされている。皮膚における酸化現象は、糖化、カルボニル化、ニトロ化、スルホキシド化など様々あり、これらはシミ、シワ、タルミ、くすみなど種々の肌状態の悪化につながり、好ましくない。
これらのうち、メチオニンのスルホキシド化について着目すると、皮膚において表皮のターンオーバーを促す因子の1つである表皮細胞増殖因子(KGF)のメチオニンがスルホキシド化すると、ターンオーバーが乱れ、肌の乾燥、くすみ、透明感低下、ごわつき感が生じることが知られている。また、表皮細胞においてケラチンのメチオニンがスルホキシド化すると、肌の柔軟性が低下することが知られている。
そのため、表皮細胞におけるメチオニンのスルホキシド化に対抗する手段が望まれている。
【0003】
スルホキシド化したメチオニンは、還元酵素メチオニンスルホキシドレダクターゼ(MSR)によって還元されることが知られている。しかしながら、MSRは紫外線で減少したり活性が低下したりする。
かかる背景により、MSRの発現を亢進させたりその活性を増強させたりすることが、肌状態の改善に役立つと考えられる。これまでに、リポクロマン-6を有効成分としてMSRをコードする遺伝子の発現や該タンパク質の機能性を回復させることが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-043077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、表皮においてタンパク質のスルホキシド化したメチオニンを還元する技術を提供することを課題とする。また、スルホキシド化したメチオニンの還元により肌状態を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、6種類の植物エキスがMSR遺伝子の発現を亢進させる作用を有し、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]ヘチマエキス、ヤグルマギク花エキス、イチョウ葉エキス、キイチゴ果汁、アッケシソウエキス、及びフラガリアチロエンシス果汁からなる群から選択される一種又は二種以上からなる、MSR遺伝子発現亢進剤。
[4]角化細胞におけるMSR遺伝子の発現を亢進する、[1]に記載のMSR遺伝子発現亢進剤。
[3][1]又は[2]に記載のMSR遺伝子発現亢進剤を含有する、表皮ターンオーバー及び/又は肌の柔軟性の改善用の皮膚外用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、角層細胞においてMSR遺伝子の発現を亢進させる成分が提供される。
MSRは表皮において、表皮ターンオーバーを促す因子であるKGFや角化細胞のケラチンのスルホキシド化したメチオニンの還元を促すことができるため、かかる成分を組成物に含有させることにより表皮ターンオーバー及び/又は肌の柔軟性の改善用の組成物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ヘチマエキスを添加又は非添加して24時間インキュベートしたときの表皮角化細胞におけるMSR遺伝子の発現量を表すグラフ。発現量は溶媒コントロールを1としたときの相対量である。
図2】ヤグルマギク花エキスを添加又は非添加して24時間インキュベートしたときの表皮角化細胞におけるMSR遺伝子の発現量を表すグラフ。発現量は溶媒コントロールを1としたときの相対量である。
図3】イチョウ葉エキスを添加又は非添加して48時間インキュベートしたときの表皮角化細胞におけるMSR遺伝子の発現量を表すグラフ。発現量は溶媒コントロールを1としたときの相対量である。
図4】キイチゴ果汁を添加又は非添加して48時間インキュベートしたときの表皮角化細胞におけるMSR遺伝子の発現量を表すグラフ。発現量は溶媒コントロールを1としたときの相対量である。
図5】アッケシソウエキスを添加又は非添加して48時間インキュベートしたときの表皮角化細胞におけるMSR遺伝子の発現量を表すグラフ。発現量は溶媒コントロールを1としたときの相対量である。
図6】フラガリアチロエンシス果汁を添加又は非添加して48時間インキュベートしたときの表皮角化細胞におけるMSR遺伝子の発現量を表すグラフ。発現量は溶媒コントロールを1としたときの相対量である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<1>MSR遺伝子発現亢進剤
本発明の剤は、ヘチマエキス、ヤグルマギク花エキス、イチョウ葉エキス、キイチゴ果汁、アッケシソウエキス、及びフラガリアチロエンシス果汁からなる群から選択される一種又は二種以上を有効成分として含有する。
ヘチマエキスは、ウリ科ヘチマ属ヘチマ(Luffa cylindrica/Luffa aegyptiaca)の抽出物である。
ヤグルマギク花エキスは、キク科ヤグルマギク属ヤグルマギク(Centaurea Cyanus)の花部の抽出物である。
イチョウ葉エキスは、イチョウ科イチョウ属イチョウ(Ginkgo biloba)の葉部の抽出
物である。
キイチゴ果汁は、バラ科キイチゴ属ヨーロッパキイチゴ(Rubus Idaeus)の果実及び又は果汁の抽出物である。
アッケシソウエキスは、ヒユ科アッケシソウ属アッケシソウ(Salicornia herbacea/Salicornia europaea)の抽出物である。
フラガリアチロエンシス果汁は、バラ科オランダイチゴ属チリイチゴ(Fragaria Chiloensis)の果実及び又は果汁の抽出物である。
【0011】
上記抽出物は、抽出物自体のみならず、抽出物の画分、精製した画分、抽出物又は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味するものとする。
【0012】
また、抽出物としては、通常化粧料や医薬品等の皮膚外用剤や経口摂取組成物に用いられるものであればよく、植物体から常法により抽出されたものを用いることができる。
抽出元としては、例えば、植物の全体を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花、花蕾、果実、果汁等の部位を用いて抽出操作に供される。ただし、ヤグルマギク花エキス、イチョウ葉エキス、キイチゴ果汁、及びフラガリアチロエンシス果汁については、所定の部位を用いて抽出操作に供する。
【0013】
抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される一種又は二種以上が好適に用いられる。
【0014】
具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位又はその乾燥物1質量部に対して、溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却した後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられる。
【0015】
本発明の剤におけるヘチマエキス、ヤグルマギク花エキス、イチョウ葉エキス、キイチゴ果汁、アッケシソウエキス、及びフラガリアチロエンシス果汁からなる群から選択される一種又は二種以上の植物抽出物の総含有量は、組成物全体に対して、固形物換算で0.00001~0.09質量%が好ましく、0.00005~0.03質量%がより好ましく、0.0001~0.003質量%がさらに好ましい。
含有量を上記範囲とすることで所望の効果を得やすく、また処方設計の自由度を確保できる。
なお、上記含有量は、後述する投与経路や含有させる組成物の態様に合わせて適宜調整することができる。
【0016】
ヘチマエキス、ヤグルマギク花エキス、イチョウ葉エキス、キイチゴ果汁、アッケシソウエキス、及びフラガリアチロエンシス果汁は、いずれも単独でMSR遺伝子の発現を亢進する作用を有する。すなわち、これらの抽出物はそれぞれ、MSR遺伝子発現亢進剤の有効成分である。なお、本明細書におけるMSR遺伝子にはMsrA及びMsrBが包含される。
【0017】
なお、任意の物質のMSR遺伝子発現亢進作用は、対象物質を添加した細胞におけるMSR遺伝子発現量が、添加しなかった細胞における発現量よりも大きいこと、通常110%以上、好ましくは120%以上、より好ましくは130%以上となることにより確認することができる。MSR遺伝子の発現量は、例えば、MSR遺伝子の配列に特異的に結合する配列を有するDNA断片をプライマーとして用いてPCRを行い、mRNA量を測定することにより行うことができる。また、例えば、MSR遺伝子によりコードされるタンパク質の細胞内存在量を、常法により定量的に測定して、MSR遺伝子の発現量としてもよい。
【0018】
皮膚において表皮のターンオーバーを促す因子の1つであるKGFのメチオニンがスルホキシド化すると、KGFの機能が損なわれるためにターンオーバーが乱れ、肌の乾燥、くすみ、透明感低下、ごわつき感が生じる。MSRの発現量を亢進させることにより、KGFのスルホキシド化したメチオニンを還元し、KGFを正常に修復して表皮ターンオーバーを改善することができる。
また、表皮細胞においてケラチンのメチオニンがスルホキシド化すると、肌の柔軟性が低下することが知られている。MSRの発現量を亢進させることにより、ケラチンのスル
ホキシド化したメチオニンを還元し、肌の柔軟性を改善することができる。従来、化粧料等の皮膚外用剤が肌に柔軟性を付与する場合は、表皮に水分保持能を与えたり保湿したりすることによるものであった。本発明における肌の柔軟性は、肌(表皮)のタンパク質自体の性質を変化させて得られるものである点で、従来のものとは区別される。
【0019】
本発明の剤の投与経路は、経皮、経口、経鼻、静脈注射等、特に限定されないが、経皮投与されることが好ましい。なお、ここで「投与」は「摂取」と置換されてもよい。
本発明の剤及び組成物の投与量としては、特に限定されないが、所望の効果と安全性とを考慮して、ヘチマエキス、ヤグルマギク花エキス、イチョウ葉エキス、キイチゴ果汁、アッケシソウエキス、及びフラガリアチロエンシス果汁から選択される一種又は二種以上の総量として、固形物換算で0.3~300μg/日を1回又は数回に分けて摂取されることが好ましい。また、単回摂取する他に、連続的に又は断続的に数週間~数か月の間摂取することが好ましい。
【0020】
本発明の皮膚外用組成物の態様としては、皮膚に外用で適用されるものであれば特に限定されないが、化粧料(医薬部外品を含む)、医薬品等が好ましく挙げられ、化粧料がより好ましい。
本発明の皮膚外用組成物を塗布する部位は特に限定されないが、通常は顔面、四肢、首、デコルテである。
【0021】
皮膚外用組成物の剤型としては、例えば、ローション剤型、乳液やクリーム等の乳化剤型、オイル剤型、ジェル剤型、パック、洗浄料等が挙げられ、特に限定されない。
また、皮膚外用組成物の態様としては、リーブオンタイプ、リーブオフタイプのいずれでも構わない。MSRは紫外線で減少したり活性が低下したりすることから、日焼け止め化粧料などの日中に肌に塗布される皮膚外用組成物の態様が特に好ましい。
【0022】
本発明の皮膚外用組成物の製造に際しては、化粧料、医薬部外品、医薬品などの製剤化で通常使用される成分を任意に配合することができる。
かかる任意成分としては例えば、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシルなどのエステル類、オリーブ油、牛脂、椰子油などのトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、レチノイン酸などの脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオール等の多価アルコール類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体等を任意に配合することができる。
【実施例0023】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
<参考例1>
以下の手順で、各種エキスを調製した。
ヘチマエキス:ウリ科ヘチマ属ヘチマの植物体を粉砕し、10倍量の30% 1,3-
ブチレングリコール水溶液を加えて、還流して抽出した液を、凍結乾燥により粉末化した。
ヤグルマギク花エキス:キク科ヤグルマギク属ヤグルマギクの花部を粉砕し、10倍量の45% 1,3-ブチレングリコール水溶液を加えて、還流して抽出した液を、凍結乾
燥により粉末化した。
イチョウ葉エキス:イチョウ科イチョウ属イチョウの葉部を粉砕し、10倍量の45%
1,3-ブチレングリコール水溶液を加えて、還流して抽出した液を、凍結乾燥により
粉末化した。
キイチゴ果汁:バラ科キイチゴ属ヨーロッパキイチゴの果実を圧搾し、10倍量の60% 1,3-ブチレングリコール水溶液を加えて、還流して抽出した液を、凍結乾燥により粉末化した。
アッケシソウエキス:ヒユ科アッケシソウ属アッケシソウの植物体を粉砕し、10倍量の40% 1,3-ブチレングリコール水溶液を加えて、還流して抽出した液を、凍結乾
燥により粉末化した。
フラガリアチロエンシス果汁:バラ科オランダイチゴ属チリイチゴの果実を圧搾し、10倍量の40% 1,3-ブチレングリコール水溶液を加えて、還流して抽出した液を、凍結乾燥により粉末化した。
【0025】
<試験例1>表皮角化細胞における被験エキスのMSR遺伝子発現量への影響の検討
-150℃で保管していた正常ヒト表皮角化細胞((NHEK:Normal Human Epidermal Keratinocytes、新生児、男性、Caucasian、KURABO、#06445)を起眠し、37℃・5%CO環境下で5日間培養した。NHEKを回収し、4.0×10cells/mLとなるようにNHEK用培地HUMedia-KG2(クラボウ社)を用いて希釈した。24ウェルプレートに各培地を1mL/ウェルずつ播種し(4.0×10cells/ウェル)、37℃・5%CO環境下で一晩培養した。培養後、培地を除去し、各被験エキスを所定の固形分濃度になるように添加したNHEK用培地、又は被験エキスに代えて1,3-BGを含有するNHEK用培地に交換して、さらに24時間又は48時間培養した。培養後に細胞をPBS(-)で洗浄して回収し、QIAshredder、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いてQIAcube(QIAGEN社製)にてRNAを抽出した。抽出したRNAをSuperScript VILO cDNA Synthesis Kit(Invitrigen社製)を用いてcDNA化し、SYBR(QIAGEN社製)を用い、QuantStudio 7(Applied Biosystems社製)にてRT-qPCRを行い、MSR遺伝子の各発現量を解析した。内在性コントロールとしては、β-Actin遺伝子を用いた。
被験エキスとしては、いずれも参考例1の方法で調製したものを用いた。
【0026】
図1~6に、各エキスを添加した表皮角化細胞におけるMSR遺伝子の各mRNA発現量を、溶媒対照(コントロール)の表皮角化細胞における各遺伝子のmRNA発現量を1とした場合の相対値で示した。
いずれのエキスを添加した表皮角化細胞においても、MSR遺伝子の各mRNA発現量がコントロールに対して有意に増加することが認められた。この結果から、これらのエキスはそれぞれ、MSR遺伝子発現亢進作用を有することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明により、表皮角化細胞においてMSR遺伝子の発現を亢進させる成分が提供される。また、かかる成分を組成物に含有させることにより表皮ターンオーバー及び/又は肌の柔軟性の改善用の皮膚外用組成物とすることができる。これらの発明は、美容業界における開発に貢献し、また消費者の需要に応えるものであり、産業上非常に有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6