(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025107989
(43)【公開日】2025-07-22
(54)【発明の名称】コロイダル粒子インク組成物、これを利用したコロイダル粒子パターン形成方法、コロイダル粒子パターンフィルム、及び電子素子
(51)【国際特許分類】
C09D 11/102 20140101AFI20250714BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20250714BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20250714BHJP
H10K 50/115 20230101ALI20250714BHJP
H10K 71/20 20230101ALI20250714BHJP
H10K 71/12 20230101ALI20250714BHJP
H10K 71/40 20230101ALI20250714BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20250714BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20250714BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20250714BHJP
C09D 11/50 20140101ALI20250714BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20250714BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20250714BHJP
C09K 11/02 20060101ALI20250714BHJP
C09K 11/88 20060101ALN20250714BHJP
C09K 11/56 20060101ALN20250714BHJP
C09K 11/70 20060101ALN20250714BHJP
【FI】
C09D11/102
H05B33/14 Z ZYW
H05B33/10
H10K50/115
H10K71/20
H10K71/12
H10K71/40
H10K85/10
B82Y40/00
B82Y20/00
C09D11/50
C09K11/08 G
C09K11/06 660
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H05B33/14 Z
C09D11/102 ZYW
C09K11/88
C09K11/56
C09K11/70
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025003483
(22)【出願日】2025-01-09
(31)【優先権主張番号】10-2024-0003638
(32)【優先日】2024-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2025-0002060
(32)【優先日】2025-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】517153929
【氏名又は名称】蔚山科學技術院
(71)【出願人】
【識別番号】522242111
【氏名又は名称】ソガン ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ディベロプメント ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】SOGANG UNIVERSITY RESEARCH & BUSINESS DEVELOPMENT FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】35 Baekbeom-ro,Mapo-gu,Seoul 04107(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】金 奉帥
(72)【発明者】
【氏名】咸 孝賓
(72)【発明者】
【氏名】姜 文晟
(72)【発明者】
【氏名】林 昌赫
【テーマコード(参考)】
3K107
4H001
4J039
【Fターム(参考)】
3K107AA05
3K107CC45
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3K107DD57
3K107DD60
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4H001CA01
4H001CA02
4H001CC13
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4H001XB10
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4H001XB40
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4H001XB60
4J039BA07
4J039BC44
4J039BE25
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4J039EA27
(57)【要約】
【課題】コロイダル粒子インク組成物、これを利用したコロイダル粒子パターン形成方法、コロイダル粒子パターンフィルム、及び電子素子を提供する。
【解決手段】コロイダル粒子インク組成物、これを利用したコロイダル粒子パターン形成方法、コロイダル粒子パターンフィルム、及び電子素子である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダル粒子及び低温活性化架橋剤を含む、コロイダル粒子インク組成物。
【請求項2】
前記コロイダル粒子が、半導体ナノ結晶及び前記ナノ結晶の表面に結合された有機リガンドを含む、請求項1に記載のコロイダル粒子インク組成物。
【請求項3】
前記半導体ナノ結晶が、コア及び前記コアの少なくとも一部を覆うシェルを含む、請求項2に記載のコロイダル粒子インク組成物。
【請求項4】
前記半導体ナノ結晶が、III-VI族半導体化合物;II-VI族半導体化合物;III-V族半導体化合物;III-VI族半導体化合物;I-III-VI族半導体化合物;IV-VI族半導体化合物;IV族化合物;またはそれらの任意の組み合わせ;を含む、請求項2に記載のコロイダル粒子インク組成物。
【請求項5】
前記有機リガンドが、C4-C30脂肪酸またはその誘導体を含む、請求項2に記載のコロイダル粒子インク組成物。
【請求項6】
前記低温活性化架橋剤が0℃~130℃の温度で熱的に活性化されるか、200nm~380nmの紫外線により活性化されて中間体を生成する、請求項1に記載のコロイダル粒子インク組成物。
【請求項7】
前記低温活性化架橋剤がジアゾ(diazo)基を含む化合物である、請求項1に記載のコロイダル粒子インク組成物。
【請求項8】
前記低温活性化架橋剤が下記化学式1で表される化合物である、請求項1に記載のコロイダル粒子インク組成物:
【化1】
前記化学式1において、
L
1及びL
2は、互いに独立して、単結合、または少なくとも1つのR
1で置換もしくは非置換のC
1-C
30アルキレン基であり、
m1及びm2は、互いに独立して、1、2、3、4、5または6であり、
Ar
1及びAr
2は、少なくとも1つのR
1で置換もしくは非置換のC
5-C
60炭素環基、または少なくとも1つのR
1で置換もしくは非置換のC
1-C
60ヘテロ環基であり、
n1及びn2は、互いに独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、
n1とn2との和が2以上であり、
Q
1~Q
3は、互いに独立して、単結合、O、S、C、C(R
2)、C(R
2)(R
3)、または少なくとも1つのR
1で置換もしくは非置換のC
1-C
30アルキレン基であり、
X
1及びX
2は、互いに独立して、O、S、Se、N(R
4)、C(R
4)(R
5)であり、
R
1~R
5は、互いに独立して、水素、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C
1-C
30アルキル基、C
2-C
30アルケニル基、C
2-C
30アルキニル基、C
1-C
30アルコキシ基、C
1-C
30アルキルチオ基、C
5-C
60炭素環基、C
1-C
60ヘテロ環基、または-Si(Q
11)(Q
12)(Q
13)であり、
Q
11~Q
13は、互いに独立して、水素、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C
1-C
30アルキル基、C
2-C
30アルケニル基、C
2-C
30アルキニル基、C
1-C
30アルコキシ基、またはC
1-C
30アルキルチオ基である。
【請求項9】
前記低温活性化架橋剤が下記化学式2で表される化合物である、請求項8に記載のコロイダル粒子インク組成物:
【化2】
前記化学式2において、
L
1、L
2、m1、m2、n1、n2、X
1、X
2、及びQ
1~Q
3に係わる説明は、請求項8中の説明と同様であり、
R
11~R
15及びR
21~R
25に係わる説明は、互いに独立して、請求項8中のR
1に係わる説明と同様である。
【請求項10】
前記低温活性化架橋剤が下記化合物1~7から選択された1種以上である、請求項1に記載のコロイダル粒子インク組成物:
【化3】
【化4】
【化5】
【請求項11】
請求項1ないし10のうちいずれか一項に記載のコロイダル粒子インク組成物を利用した、コロイダル粒子パターン形成方法。
【請求項12】
第1フォトレジストパターン上に、第1コロイダル粒子と第1低温活性化架橋剤とを含む第1コロイダル粒子インク組成物を塗布する段階と、
前記塗布された第1コロイダル粒子インク組成物を0℃~130℃の温度でアニーリング(annealing)する段階と、
前記第1フォトレジストパターンを除去して第1コロイダル粒子パターンを形成する段階と、を含む、請求項11に記載のコロイダル粒子パターン形成方法。
【請求項13】
前記第1コロイダル粒子パターンの厚さに対する前記第1フォトレジストパターンの厚さの比が1:1~1:0.7である、請求項12に記載のコロイダル粒子パターン形成方法。
【請求項14】
プラズマエッチングによって前記第1フォトレジストパターン及び/または第1コロイダル粒子パターンの厚さを減少させる段階をさらに含む、請求項12に記載のコロイダル粒子パターン形成方法。
【請求項15】
前記第1コロイダル粒子パターン上に第2フォトレジストパターンを形成する段階と、
前記第2フォトレジストパターン上に、第2コロイダル粒子と第2低温活性化架橋剤とを含む第2コロイダル粒子インク組成物を塗布する段階と、
前記塗布された第2コロイダル粒子インク組成物を0℃~130℃の温度でアニーリングする段階と、
前記第2フォトレジストパターンを除去して第2コロイダル粒子パターンを形成する段階と、を含み、
前記第1コロイダル粒子と前記第2コロイダル粒子とが互いに異なる色相を示す、請求項12に記載のコロイダル粒子パターン形成方法。
【請求項16】
請求項1ないし10のうちいずれか一項に記載のコロイダル粒子インク組成物を用いて形成された、コロイダル粒子パターンフィルム。
【請求項17】
前記コロイダル粒子パターンフィルムが、基材及び前記基材上に形成されたコロイダル粒子パターンを含み、
前記コロイダル粒子パターンの厚さが1nm~50nmである、請求項16に記載のコロイダル粒子パターンフィルム。
【請求項18】
請求項1ないし10のうちいずれか一項に記載のコロイダル粒子インク組成物を用いて形成されたコロイダル粒子パターンを含む、電子素子。
【請求項19】
前記電子素子は、薄膜トランジスタ(thin film transistor: TFT)、電気変色素子(electrochromic device: EC)、発光素子(light emitting diode: LED)、太陽電池(solar cell)、またはフォトダイオード(photodiode)である、請求項18に記載の電子素子。
【請求項20】
前記電子素子がコロイダル粒子発光素子であり、
前記コロイダル粒子発光素子が、第1電極、前記第1電極に対向する第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に配置された、発光層を含む中間層を含み、
前記発光層が前記コロイダル粒子パターンを含む、請求項18に記載の電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロイダル粒子インク組成物、これを利用したコロイダル粒子パターン形成方法、コロイダル粒子パターンフィルム、及び電子素子に関する。
【0002】
本研究は、三星未来技術育成事業(課題番号:SRFC-MA1901-51)及び韓国研究財団(課題番号:2021R1A2C2008332及びRS-2024-00445116)の支援を受けて行われた。
【背景技術】
【0003】
コロイダル粒子は、光電子装置における潜在的な応用によって、最近数年間広範囲に研究されている。例えば、このような材料の一例として量子ドットは、調整可能なバンドギャップ、狭い帯域幅、高い発光効率、及び溶液加工性をはじめとする興味のある物理的特性を示す。しかし、このような溶液加工ナノ物質に好適なパターニング工程を開発することは依然として課題として残っている。フォトリソグラフィは、利用可能な多様なパターニング方法のうち最も有望な技術の1つであり、産業要求事項を満たす高解像度パターンを生産することができる。
【0004】
従来のフォトリソグラフィでは、重なったフォトレジスト(photoresist)の事前パターンの特徴によって対象物質を物理的または化学的にエッチング(etching)してパターンを生成する。この過程において、ターゲット材料は、物理的特性を維持しながら過酷なエッチング条件を耐えなければならない。しかし、量子ドットのようなナノ構造の発光材料の発光特性は、広い表面積にわたって生成された欠陥により、エッチング段階において低下する可能性がある。また、従来の一般的な直接フォトパターニング(direct photopatterning)工程は、対象層の選択的な化学的変換とそれによる適切な現像段階を通じてパターンを形成する有望なリソグラフィアプローチとして活用されており、エッチング段階を含まない。しかし、直接フォトパターニングにおいて化学的変換に必要な高エネルギー照射及び/または高温熱処理は、ナノ構造発光材料、特に量子ドットの固有の発光特性に対する潜在的な損傷への懸念を起こす。また、直接フォトパターニングによって形成された量子ドットパターンは忠実度が高くないという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、高い忠実度を有するコロイダル粒子パターンを形成することができるコロイダル粒子インク組成物を提供することである。また、前記コロイダル粒子インク組成物を利用したコロイダル粒子パターン形成方法及びコロイダル粒子パターンフィルムを提供する。さらに、前記コロイダル粒子インク組成物を用いて形成されたコロイダル粒子パターンを含み、優れた特性を有する電子素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面によれば、コロイダル粒子及び低温活性化架橋剤を含む、コロイダル粒子インク組成物が提供される。
【0007】
一実施形態によれば、前記低温活性化架橋剤が0℃~130℃の温度で熱的に活性化されるか、200nm~380nmの紫外線により活性化されて中間体を生成することができる。
【0008】
一実施形態によれば、前記低温活性化架橋剤がジアゾ(diazo)基を含む化合物でもある。
【0009】
一実施形態によれば、前記低温活性化架橋剤が下記化学式1で表される化合物でもある:
【0010】
【0011】
前記化学式1において、
L1及びL2は、互いに独立して、単結合、または少なくとも1つのR1で置換もしくは非置換のC1-C30アルキレン基であり、
m1及びm2は、互いに独立して、1、2、3、4、5または6であり、
Ar1及びAr2は、少なくとも1つのR1で置換もしくは非置換のC5-C60炭素環基、または少なくとも1つのR1で置換もしくは非置換のC1-C60ヘテロ環基であり、
n1及びn2は、互いに独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、
n1とn2との和が2以上であり、
Q1~Q3は、互いに独立して、単結合、O、S、C、C(R2)、C(R2)(R3)、または少なくとも1つのR1で置換もしくは非置換のC1-C30アルキレン基であり、
X1及びX2は、互いに独立して、O、S、Se、N(R4)、C(R4)(R5)であり、
R1~R5は、互いに独立して、水素、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C1-C30アルキル基、C2-C30アルケニル基、C2-C30アルキニル基、C1-C30アルコキシ基、C1-C30アルキルチオ基、C5-C60炭素環基、C1-C60ヘテロ環基、または-Si(Q11)(Q12)(Q13)であり、
Q11~Q13は、互いに独立して、水素、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C1-C30アルキル基、C2-C30アルケニル基、C2-C30アルキニル基、C1-C30アルコキシ基、またはC1-C30アルキルチオ基である。
【0012】
他の側面によれば、前記コロイダル粒子インク組成物を利用したコロイダル粒子パターン形成方法が提供される。
【0013】
さらに他の側面によれば、前記コロイダル粒子インク組成物を用いて形成されたコロイダル粒子パターンフィルムが提供される。
【0014】
さらに他の側面によれば、前記コロイダル粒子インク組成物を用いて形成されたコロイダル粒子パターンを含む電子素子が提供される。
【発明の効果】
【0015】
前記コロイダル粒子インク組成物を用いて形成されたコロイダル粒子パターンは、忠実度(fidelity)が高く、線縁粗さ(line edge roughness)及び表面粗さ(surface roughness)が減少できる。また、前記コロイダル粒子インク組成物を用いてコロイダル粒子パターンを形成する場合にコロイダル粒子が低温活性化架橋剤によって架橋されるので、高温熱処理なしにも架橋反応が起こり、また、化学的架橋反応によって化学的耐久性及び/または溶媒に対する抵抗性に優れるので、必要に応じてインクの塗布とパターニングを反復して高品位の多重色相コロイダル粒子パターンを形成することができる。さらに、多様な次元を有するか、発光または無発光特性を有する多様なコロイダル粒子に対しても架橋とパターニングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態によるコロイダル粒子パターン形成方法を概略的に示す図面である。
【
図2】一実施形態によるコロイダル粒子パターン形成方法によって製造されたコロイダル粒子パターンを原子間力顕微鏡(AFM)で観察した写真と高さプロファイル(height profile)を示す図面である。
【
図3】一実施形態によるコロイダル粒子パターン形成方法によって製造されたコロイダル粒子パターンの線縁粗さ(line edge roughness)、線幅変化(line width variation)及び表面粗さ(surface roughness)を示す図面である。
【
図4】一実施形態によるコロイダル粒子パターン形成方法を概略的に示す図面である。
【
図5】一実施形態によるコロイダル粒子パターンを蛍光顕微鏡で観察した図面である。
【
図6】一実施形態によるコロイダル粒子パターン形成方法によって製造されたコロイダル粒子パターンをAFMで観察した写真と高さプロファイルを示す図面である。
【
図7】一実施形態によるコロイダル粒子パターン形成方法によって形成されたCuInS、InAs及びPbS量子ドットの線パターンの光学顕微鏡イメージを示す図面である。
【
図8】一実施形態による電子素子の例示を概略的に示す断面図である。
【
図9】一実施形態による電子素子の発光スペクトルを示す図面である。
【
図10】一実施形態による電子素子の電流密度(J)-電圧(V)-輝度(L)プロファイル及び外部量子効率(EQE)-Jプロファイルを示す図面である。
【
図11】一実施形態による電子素子の電流密度(J)-電圧(V)-輝度(L)プロファイル及び外部量子効率(EQE)-Jプロファイルを示す図面である。
【
図12】一実施形態による電子素子の電流密度(J)-電圧(V)-輝度(L)プロファイル及び外部量子効率(EQE)-Jプロファイルを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴または構成要素が存在することを意味するものであり、1つ以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を予め排除するものではない。
【0019】
本明細書において、層、膜などの各種構成要素が他の構成要素の「上に」あるとするとき、これは、他の構成要素の「真上に」ある場合だけでなく、その間に他の構成要素が介在された場合も含む。
【0020】
[コロイダル粒子インク組成物]
本発明の一側面によって提供されるコロイダル粒子インク組成物は、コロイダル粒子及び低温活性化架橋剤を含む。
【0021】
前記コロイダル粒子インク組成物は、前記低温活性化架橋剤を含むことで、コロイダル粒子が低温活性化架橋剤によって架橋されるので、高温(例えば、140℃を超える温度)熱処理なしにも架橋反応が起こり、これにより、溶液工程において高温によってコロイダル粒子が損傷され、発光特性や電気的特性などが低下したり、形成されたパターン薄膜のモルフォロジー(morphology)が変化または劣化(degradation)したりする現象が防止できる。また、コロイダル粒子に化学的架橋が形成され、化学的耐久性及び/または溶媒に対する抵抗性に優れるので、必要に応じてフォトパターニング(photopatterning)を反復しても以前に形成されたパターンの劣化が防止できるので、高品位の多重色相コロイダル粒子パターンを形成することができる。
【0022】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子は、点(dot)、棒(rod)、2D板状(plate)、または3D物体(object)などの形状を有することができる。
【0023】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子は量子ドットでもある。
【0024】
一実施形態によれば、前記量子ドットが、半導体ナノ結晶及び前記半導体ナノ結晶の表面に結合された有機リガンドを含む。
【0025】
前記半導体ナノ結晶は、半導体化合物の結晶を意味する。前記半導体ナノ結晶は、そのサイズによって多様な発光波長の光を放出することができる半導体または導体特性を有する任意の物質を含みうる。
【0026】
一実施形態によれば、前記半導体ナノ結晶は、III-VI族半導体化合物;II-VI族半導体化合物;III-V族半導体化合物;III-VI族半導体化合物;I-III-VI族半導体化合物;IV-VI族半導体化合物;IV族化合物;またはそれらの任意の組み合わせ;を含む。
【0027】
一実施形態によれば、前記III-VI族半導体化合物は、二元素化合物(例えば、In2S3など)、三元素化合物(例えば、AgInS、AgInS2、CuInS、CuInS2など)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0028】
一実施形態によれば、前記II-VI族半導体化合物は、二元素化合物(例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、MgSなど)、三元素化合物(例えば、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、MgZnSe、MgZnSなど)、四元素化合物(例えば、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTeなど)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0029】
一実施形態によれば、前記III-V族半導体化合物は、二元素化合物(例えば、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSbなど)、三元素化合物(例えば、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InGaP、InNP、InAlP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNPなど)、四元素化合物(例えば、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSbなど)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0030】
一実施形態によれば、前記III-V族半導体化合物は、II族元素をさらに含んでもよい。例えば、II族元素をさらに含むIII-V族半導体化合物が、InZnP、InGaZnP、InAlZnP、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0031】
一実施形態によれば、前記III-VI族半導体化合物は、二元素化合物(例えば、GaS、GaSe、Ga2Se3、GaTe、InS、InSe、In2Se3、InTeなど)、三元素化合物(例えば、InGaS3、InGaSe3など)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0032】
一実施形態によれば、前記I-III-VI族半導体化合物は、三元素化合物(例えば、AgInS、AgInS2、CuInS、CuInS2、CuGaO2、AgGaO2、AgAlO2など)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0033】
一実施形態によれば、前記IV-VI族半導体化合物は、二元素化合物(例えば、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTeなど)、三元素化合物(例えば、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTeなど)、四元素化合物(例えば、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTeなど)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0034】
一実施形態によれば、前記IV族化合物は、単一元素化合物(例えば、Si、Geなど)、二元素化合物(例えば、SiC、SiGeなど)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0035】
一実施形態によれば、前記半導体ナノ結晶は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、InP、InN、InAs、GaN、GaP、GaAs、ZnCdS、ZnSeS、ZnCdSeS、CdZnSe、InZnP、InGaP、GaPZnS、GaPZnSe、GaPZnSeS、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0036】
一実施形態によれば、前記半導体ナノ結晶の直径は、約1nm~約10nmである。
【0037】
一実施形態によれば、前記半導体ナノ結晶は、コア及び前記コアの少なくとも一部を覆うシェルを含むコア・シェル構造である。
【0038】
一実施形態によれば、前記量子ドットのシェルは、前記コアの化学的変性を防止して半導体特性を維持するための保護層の役割、及び/または量子ドットに電気泳動特性を付与するためのチャージング層(charging layer)の役割を行うことができる。
【0039】
一実施形態によれば、前記コアに含まれた物質と前記シェルに含まれた物質とは互いに異なっている。
【0040】
一実施形態によれば、前記シェルは、単層または多重層である。
【0041】
一実施形態によれば、コアとシェルとの界面は、シェルに存在する特定の元素の濃度が中心へ行くほど低くなるか高くなる濃度勾配(gradient)を有することができる。
【0042】
前記半導体ナノ結晶のシェルは、前述のIII-VI族半導体化合物、II-VI族半導体化合物、III-V族半導体化合物、III-VI族半導体化合物、I-III-VI族半導体化合物、またはIV-VI族半導体化合物;金属または非金属の酸化物;あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0043】
一実施形態によれば、前記金属または非金属の酸化物は、二元素化合物(例えば、SiO2、Al2O3、TiO2、ZnO、MnO、Mn2O3、Mn3O4、CuO、FeO、Fe2O3、Fe3O4、CoO、Co3O4、NiOなど)、三元素化合物(例えば、MgAl2O4、CoFe2O4、NiFe2O4、CoMn2O4など)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0044】
一実施形態によれば、前記半導体ナノ結晶は、湿式化学工程、有機金属化学蒸着工程、分子線エピタキシー工程などによって合成される。
【0045】
一実施形態によれば、前記半導体ナノ結晶の発光波長スペクトルの半値幅(full width of half maximum: FWHM)は、約45nm以下である。例えば、前記半導体ナノ結晶のFWHMが約40nm以下、または約30nm以下である。
【0046】
一実施形態によれば、前記半導体ナノ結晶は、ナノ粒子(例えば、球状、板状、ピラミッド状、多重枝状(multi-arm)、または立方体(cubic)など)、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノファイバなどの形態を有することができる。
【0047】
一実施形態によれば、前記量子ドットは、そのサイズによってエネルギーバンドギャップが制御され、多様な波長帯の光が得られる。
【0048】
一実施形態によれば、前記量子ドットは、赤色、緑色、及び/または青色光を放出することができる。
【0049】
一実施形態によれば、互いに異なるサイズの量子ドットを使用することで、複数の波長の光を放出する発光素子を具現することができ、多様な色の光が結合されて白色光を放出するように構成することができ、また白色光以外にも多様な波長の光を吸収する素子を具現することができる。
【0050】
一実施形態によれば、前記有機リガンドは、前記半導体ナノ結晶の表面を保護し、溶媒に対する分散性などを調節するなどの役割を行い、一般に使用される有機リガンド化合物を利用することができる。
【0051】
一実施形態によれば、前記有機リガンドが、C4-C30脂肪酸またはその誘導体を含む。
【0052】
一実施形態によれば、前記有機リガンドが、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイルアミン、n-オクチルアミン、ヘキサデシルアミン、トリオクチルアミン、オクタンチオール、ドデカンチオール、ヘキシルホスホン酸、n-オクチルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0053】
一実施形態によれば、前記低温活性化架橋剤が0℃~130℃の温度で熱的に活性化されて中間体を生成することができる。例えば、前記低温活性化架橋剤は20℃~120℃、または50℃~115℃の温度で熱的に活性化されて中間体を生成することができる。
【0054】
一実施形態によれば、前記低温活性化架橋剤は、紫外線により活性化されて中間体を生成することができる。例えば、前記低温活性化架橋剤は、200nm~380nm、300nm~380nm、約254nm、または約365nmの紫外線により活性化されて中間体を生成することができる。
【0055】
一実施形態によれば、前記低温活性化架橋剤は、後述するコロイダル粒子パターン形成方法に使用されうる。例えば、前記低温活性化架橋剤がフォトレジスト誘導間接フォトパターニング(photoresist-guided indirect photopatterning)方法に使用されうる。
【0056】
一実施形態によれば、前記低温活性化架橋剤は、直接フォトパターニング方法に使用されうる。
【0057】
一実施形態によれば、前記低温活性化架橋剤がジアゾ基を含む化合物でもある。例えば、前記ジアゾ基は、下記に例示されたようにアニーリング(annealing)によってカルベン(carbene)媒介架橋を誘導することができる。
【0058】
【0059】
一実施形態によれば、前記低温活性化架橋剤が下記化学式1で表される化合物でもある:
【0060】
【0061】
前記化学式1において、
L1及びL2は、互いに独立して、単結合、または少なくとも1つのR1で置換もしくは非置換のC1-C30アルキレン基であり、
m1及びm2は、互いに独立して、1、2、3、4、5または6であり、
Ar1及びAr2は、少なくとも1つのR1で置換もしくは非置換のC5-C60炭素環基、または少なくとも1つのR1で置換もしくは非置換のC1-C60ヘテロ環基であり、
n1及びn2は、互いに独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、
n1とn2との和が2以上であり、
Q1~Q3は、互いに独立して、単結合、O、S、C、C(R2)、C(R2)(R3)、または少なくとも1つのR1で置換もしくは非置換のC1-C30アルキレン基であり、
X1及びX2は、互いに独立して、O、S、Se、N(R4)、C(R4)(R5)であり、
R1~R5は、互いに独立して、水素、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C1-C30アルキル基、C2-C30アルケニル基、C2-C30アルキニル基、C1-C30アルコキシ基、C1-C30アルキルチオ基、C5-C60炭素環基、C1-C60ヘテロ環基、または-Si(Q11)(Q12)(Q13)であり、
Q11~Q13は、互いに独立して、水素、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、C1-C30アルキル基、C2-C30アルケニル基、C2-C30アルキニル基、C1-C30アルコキシ基、またはC1-C30アルキルチオ基である。
【0062】
一実施形態によれば、前記L1及びL2は、互いに独立して、単結合、メチレン基、またはエチレン基である。
【0063】
一実施形態によれば、前記m1及びm2は、互いに独立して、1または2である。
【0064】
一実施形態によれば、Ar1及びAr2は、互いに独立して、置換もしくは非置換のフェニル基である。
【0065】
一実施形態によれば、n1とn2との和が4~6である。
【0066】
一実施形態によれば、前記低温活性化架橋剤が下記化学式2で表される化合物でもある:
【0067】
【0068】
前記化学式2において、
L1、L2、m1、m2、n1、n2、X1、X2、及びQ1~Q3に係わる説明は、本明細書に記載されたところと同様であり、
R11~R15及びR21~R25に係わる説明は、互いに独立して、R1に係わる説明と同様である。
【0069】
一実施形態によれば、前記架橋性化合物は、下記化合物1~7から選択された1種以上である:
【0070】
【0071】
一実施形態によれば、前記低温活性化架橋剤は、前記コロイダル粒子と共有結合を形成することができる。
【0072】
例えば、前記コロイダル粒子が量子ドットであり、前記量子ドットが半導体ナノ結晶及び前記半導体ナノ結晶の表面の有機リガンドを含み、前記低温活性化架橋剤が前記有機リガンドと共有結合(例えば、炭素-炭素結合)を形成することができる。
【0073】
一実施形態によれば、前記低温活性化架橋剤は疎水性(hydrophobic)でもある。
【0074】
通常、フォトレジストは、多数のヒドロキシル基(-OH)を含有する親水性(hydrophilic)材料を含む場合が多いが、前記低温活性化架橋剤が前述のような特性を満たすことで、前記コロイダル粒子インク組成物を用いてフォトレジストパターンを形成する際に基板に対する疎水性処理(hydrophobic treatment)過程なしにも安定してパターンを形成することができ、また、疎水性処理などによって前記コロイダル粒子の光学的及び電気的特性が低下する現象が防止できるという長所がある。
【0075】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子インク組成物は、疎水性処理剤(例えば、ヘキサシロキサン)を含まない。
【0076】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子インク組成物は、粘着剤(tackifier)を含まない。
【0077】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子インク組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。
【0078】
一実施形態によれば、前記溶媒は有機溶媒でもある。例えば、前記溶媒は、1-オクタデセン(ODE)、トリオクチルアミン(TOA)、トリオクチルホスフィン(TOP)、オレイルアミン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0079】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子インク組成物は、溶液工程(solution process)に利用されうる。
【0080】
[コロイダル粒子パターン形成方法]
本発明の他の側面によれば、前記コロイダル粒子インク組成物を利用したコロイダル粒子パターン形成方法が提供される。
【0081】
前記コロイダル粒子インク組成物を利用したコロイダル粒子パターン形成方法は、コロイダル粒子が低温活性化架橋剤によって架橋されるので、高温(例えば、140℃を超える温度)熱処理なしにも架橋反応が起こり、これにより、溶液工程においてコロイダル粒子が損傷され、発光特性や電気的特性などが低下したり、形成されたパターン薄膜のモルフォロジーが変化または劣化したりする現象が防止できる。また、コロイダル粒子に化学的架橋が形成され、化学的耐久性及び/または溶媒に対する抵抗性に優れるので、必要に応じてフォトパターニングを反復しても以前に形成されたパターンの劣化が防止できるので、高品位の多重色相コロイダル粒子パターンを形成することができる。
【0082】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子パターン形成方法は、フォトレジスト誘導間接フォトパターニング方法でもある。
【0083】
例えば、前記コロイダル粒子パターン形成方法は、所定のフォトレジストパターン上に前記コロイダル粒子インク組成物を利用した薄膜を形成し、前記フォトレジストパターンを除去する方式によってコロイダル粒子パターンを形成する方法である。すなわち、前記フォトレジストパターンが形成しようとするコロイダル粒子パターンのリバースパターンとしてガイドの役割を行うことができる。
【0084】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子パターン形成方法は、第1フォトレジストパターン上に、第1コロイダル粒子と第1低温活性化架橋剤とを含む第1量子ドットインク組成物を塗布する段階と、
前記塗布された第1コロイダル粒子インク組成物を0℃~130℃の温度でアニーリングする段階と、
前記第1フォトレジストパターンを除去して第1コロイダル粒子パターンを形成する段階と、を含む。
【0085】
一実施形態によれば、前記第1コロイダル粒子インク組成物を塗布する段階は、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、キャスト法、ドロップキャスト法、ディッピング(dipping)法、LB(Langmuir-Blodgett)法、インクジェットプリンティング法、スクリーンプリンティング法、レーザプリンティング法、インプリンティング(imprinting)法、レーザ熱転写(Laser Induced Thermal Imaging: LITI)法などを利用することができる。
【0086】
一実施形態によれば、前記塗布された第1コロイダル粒子インク組成物を0℃~130℃の温度でアニーリングする段階は、1分~60分間遂行される。例えば、前記アニーリングする段階は、10分~30分間遂行される。
【0087】
一実施形態によれば、前記第1フォトレジストパターンの厚さが0.5nm~10μmである。例えば、前記第1フォトレジストパターンの厚さが1nm~1μm、5nm~100nm、または10nm~50nmである。
【0088】
一実施形態によれば、前記第1コロイダル粒子パターンの厚さが1nm~50nmである。例えば、前記第1コロイダル粒子パターンの厚さが10nm~40nm、または15nm~25nmである。
【0089】
一実施形態によれば、前記第1コロイダル粒子パターンの厚さに対する前記第1フォトレジストパターンの厚さの比が1:1~1:0.7である。
【0090】
前記第1コロイダル粒子パターンの厚さ及び前記第1フォトレジストパターンの厚さが前述の範囲を満たすことで、前記第1コロイダル粒子パターンの忠実度が向上しうる。
【0091】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子パターン形成方法が、プラズマエッチングによって前記第1フォトレジストパターン及び/または第1コロイダル粒子パターンの厚さを減少させる段階をさらに含んでもよい。
【0092】
前記プラズマエッチングにより、前記第1フォトレジストパターン及び/または前記第1コロイダル粒子パターンの厚さを調節することで、前述の厚さ比を満たすように調節し、前記第1コロイダル粒子パターンの忠実度を向上させることができる。
【0093】
一実施形態によれば、前記プラズマエッチングは、反応性イオンエッチングシステムを利用することができる。例えば、前記プラズマエッチングは、Ar/O2混合ガス(Arの場合に約10sccm~約80sccm、O2ガスの場合に約1sccm~約30sccm)と約10W~100Wの無線周波数(Radio Frequency: RF)電力を用いて行われる。
【0094】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子パターン形成方法が、プラズマエッチングによって前記第1フォトレジストパターン及び/または第1コロイダル粒子パターンの厚さを減少させる段階を含まない。例えば、前記第1フォトレジストパターンの厚さが相対的に薄い場合(例えば、前記第1フォトレジストパターンの厚さが1nm~1μm、5nm~100nm、または10nm~50nmである場合)に、前記コロイダル粒子パターン形成方法が、プラズマエッチングによって第1フォトレジストパターン及び/または第1コロイダル粒子パターンの厚さを減少させる段階を含まない。
【0095】
一実施形態によれば、前記第1フォトレジストパターンを除去して第1コロイダル粒子パターンを形成する段階は、ストリップ(strip)溶媒を用いて遂行される。例えば、前記ストリップ溶媒はアセトンである。
【0096】
一実施形態によれば、前記第1フォトレジストパターンを除去して第1コロイダル粒子パターンを形成する段階は、前記第1フォトレジストパターンに超音波処理する段階をさらに含んでもよい。
【0097】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子パターン形成方法は、前記第1コロイダル粒子パターン上に第2フォトレジストパターンを形成する段階と、
前記第2フォトレジストパターン上に、第2コロイダル粒子と第2低温活性化架橋剤とを含む第2コロイダル粒子インク組成物を塗布する段階と、
前記塗布された第2コロイダル粒子インク組成物を0℃~130℃の温度でアニーリングする段階と、
前記第2フォトレジストパターンを除去して第2コロイダル粒子パターンを形成する段階と、をさらに含んでもよい。
【0098】
一実施形態によれば、前記第1コロイダル粒子と前記第2コロイダル粒子とが互いに異なる色相を示すことができる。
【0099】
前記コロイダル粒子インク組成物を利用したコロイダル粒子パターン形成方法は、コロイダル粒子に化学的架橋が形成され、化学的耐久性及び/または溶媒に対する抵抗性に優れるので、必要に応じてパターニング(例えば、光パターニング、溶液工程パターニングなど)を反復しても以前に形成されたパターンの劣化が防止できるので、高品位の多重色相コロイダル粒子パターンを形成することができる。
【0100】
一実施形態によれば、前記第2コロイダル粒子インク組成物を塗布する段階は、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、キャスト法、ドロップキャスト法、ディッピング法、LB(Langmuir-Blodgett)法、インクジェットプリンティング法、スクリーンプリンティング法、レーザプリンティング法、インプリンティング法、レーザ熱転写(Laser Induced Thermal Imaging: LITI)法などを利用することができる。
【0101】
一実施形態によれば、前記塗布された第2コロイダル粒子インク組成物を0℃~130℃の温度でアニーリングする段階は、1分~60分間遂行される。例えば、前記アニーリングする段階は、10分~30分間遂行される。
【0102】
一実施形態によれば、前記第2フォトレジストパターンの厚さが0.5nm~50nmである。例えば、前記第2フォトレジストパターンの厚さが5nm~40nm、または10nm~25nmである。
【0103】
一実施形態によれば、前記第2コロイダル粒子パターンの厚さが1nm~50nmである。例えば、前記第2コロイダル粒子パターンの厚さが10nm~40nm、または15nm~25nmである。
【0104】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子パターン形成方法は、プラズマエッチングによって前記第2フォトレジストパターン及び/または前記第2コロイダル粒子パターンの厚さを減少させる段階をさらに含んでもよい。
【0105】
一実施形態によれば、前記第2フォトレジストパターンを除去して第2コロイダル粒子パターンを形成する段階は、ストリップ溶媒を用いて遂行される。例えば、前記ストリップ溶媒はアセトンである。
【0106】
一実施形態によれば、前記第2フォトレジストパターンを除去して第2コロイダル粒子パターンを形成する段階は、前記第2フォトレジストパターンに超音波処理する段階をさらに含んでもよい。
【0107】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子パターン形成方法は、前記第2コロイダル粒子パターン上に第3フォトレジストパターンを形成する段階と、
前記第3フォトレジストパターン上に、第3コロイダル粒子と第3低温活性化架橋剤とを含む第3コロイダル粒子インク組成物を塗布する段階と、
前記塗布された第3コロイダル粒子インク組成物を0℃~130℃の温度でアニーリングする段階と、
前記第3フォトレジストパターンを除去して第3コロイダル粒子パターンを形成する段階と、をさらに含んでもよい。
【0108】
一実施形態によれば、前記第1コロイダル粒子と前記第3コロイダル粒子とが互いに異なる色相を示すことができる。
【0109】
一実施形態によれば、前記第2コロイダル粒子と前記第3コロイダル粒子とが互いに異なる色相を示すことができる。
【0110】
一実施形態によれば、前記第3コロイダル粒子インク組成物を塗布する段階は、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、キャスト法、ドロップキャスト法、ディッピング法、LB(Langmuir-Blodgett)法、インクジェットプリンティング法、スクリーンプリンティング法、レーザプリンティング法、インプリンティング法、レーザ熱転写(Laser Induced Thermal Imaging: LITI)法などを利用することができる。
【0111】
一実施形態によれば、前記塗布された第3コロイダル粒子インク組成物を0℃~130℃の温度でアニーリングする段階は、1分~60分間遂行される。例えば、前記アニーリングする段階は、10分~30分間遂行される。
【0112】
一実施形態によれば、前記第3フォトレジストパターンの厚さが0.5nm~50nmである。例えば、前記第3フォトレジストパターンの厚さが5nm~40nm、または10nm~25nmである。
【0113】
一実施形態によれば、前記第3コロイダル粒子パターンの厚さが1nm~50nmである。例えば、前記第3コロイダル粒子パターンの厚さが10nm~40nm、または15nm~25nmである。
【0114】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子パターン形成方法は、プラズマエッチングによって前記第3フォトレジストパターンまたは前記第3コロイダル粒子パターンの厚さを減少させる段階をさらに含んでもよい。
【0115】
一実施形態によれば、前記第3フォトレジストパターンを除去して第3コロイダル粒子パターンを形成する段階は、ストリップ溶媒を用いて遂行される。例えば、前記ストリップ溶媒はアセトンである。
【0116】
一実施形態によれば、前記第3フォトレジストパターンを除去して第3コロイダル粒子パターンを形成する段階は、前記第3フォトレジストパターンに超音波処理する段階をさらに含んでもよい。
【0117】
[コロイダル粒子パターンフィルム]
本発明のさらに他の側面によれば、前記コロイダル粒子インク組成物を用いて形成されたコロイダル粒子パターンフィルムが提供される。
【0118】
前記コロイダル粒子インク組成物を用いて形成されたコロイダル粒子パターンフィルムは、コロイダル粒子が低温活性化架橋剤によって架橋されるので、高温(例えば、140℃を超える温度)熱処理なしにも架橋反応が起こり、これにより、溶液工程においてコロイダル粒子が損傷され、発光特性や電気的特性などが低下したり、形成されたパターン薄膜のモルフォロジーが変化または劣化したりする現象が防止できる。また、コロイダル粒子に化学的架橋が形成され、化学的耐久性及び/または溶媒に対する抵抗性に優れるので、必要に応じてフォトパターニングを反復して高品位の多重色相コロイダル粒子パターンを形成することができる。
【0119】
一実施形態によるコロイダル粒子パターンフィルムは、前述のコロイダル粒子パターン形成方法によって製造される。
【0120】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子パターンフィルムが、基材及び前記基材上に形成されたコロイダル粒子パターンを含む。
【0121】
一実施形態によれば、前記基材は、機械的強度、熱安定性、表面平滑性、取り扱い容易性及び防水性などを考慮して選択され、例えば、シリコンウェーハまたはガラス基板や、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックフィルム、またはそれらのプラスチックフィルムがコーティングされた有機基板が使用されうる。
【0122】
一実施形態によれば、前記基材は、単層または多層構造である。
【0123】
例えば、前記基材は、樹脂を含む単層である。他の例として、前記基材は、互いに異なる2種以上の樹脂をそれぞれ含む2以上の層を含む多層構造である。さらに他の例として、前記基材は、樹脂を含む層及び機能層を含む多層構造であり、前記機能層は、例えば、粘着層(adhesive layer)、腐食防止層、反射防止層、ハードコーティング層、またはそれらの組み合わせである。
【0124】
一実施形態によれば、前記コロイダル粒子パターンの厚さが1nm~200nmである。例えば、前記コロイダル粒子パターンの厚さが5nm~100nm、10nm~40nm、または15nm~25nmである。
【0125】
[電子素子]
本発明のさらに他の側面によれば、前記コロイダル粒子パターンを含む電子素子が提供される。
【0126】
一実施形態によれば、前記電子素子がコロイダル粒子発光素子であり、前記コロイダル粒子発光素子が、第1電極、前記第1電極に対向する第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に配置された、発光層を含む中間層を含み、前記発光層が前記コロイダル粒子パターンを含む。
【0127】
一実施形態によれば、前記電子素子は、薄膜トランジスタ(thin film transistor: TFT)、電気変色素子(electrochromic device: EC)、発光素子(light emitting diode: LED)、太陽電池(solar cell)、またはフォトダイオード(photodiode)である。
【0128】
一実施形態によれば、前記電子素子が発光素子でもある。
【0129】
図8は、本発明の一側面による発光素子の例示を概略的に示すものである。前記発光素子10は、第1電極110、中間層150、及び第2電極190を含み、中間層150は、正孔輸送領域120及び発光層130を含む。
【0130】
前記第1電極110の下部及び/または前記第2電極190の上部には、基板(図示せず)がさらに配置されてもよい。前記基板としては、機械的強度、熱安定性、透明性、表面平滑性、取り扱い容易性及び防水性に優れるガラス基板またはプラスチック基板を使用することができる。
【0131】
前記第1電極110は、例えば、基板の上部に、第1電極用物質を蒸着法またはスパッタリング法などを用いて提供することで形成される。
【0132】
前記第1電極110は透過型電極でもある。透過型電極である第1電極110を形成するために、第1電極用物質は、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、スズ酸化物(SnO2)、亜鉛酸化物(ZnO)、アルミニウムドーピングされた亜鉛酸化物(AZO)、ガリウムドーピングされた亜鉛酸化物(GZO)、アンチモンスズ酸化物(ATO)、フッ素スズ酸化物(FTO)、銀ナノ粒子、銀ナノワイヤ、カーボンナノチューブ(CNT)、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるが、これらに限定されるものではない。あるいは、半透過型電極または反射型電極である第1電極110を形成するために、第1電極用物質は、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
前記第1電極110上には、正孔輸送領域120が配置されうる。
【0134】
前記正孔輸送領域は、正孔注入層、正孔輸送層、発光補助層、電子阻止層、またはそれらの組み合わせを含む。
【0135】
前記正孔輸送層は、正孔輸送性化合物を含んでもよい。
【0136】
例えば、前記正孔輸送性化合物は、TFB(ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-(4-sec-ブチルフェニル)ジフェニルアミン)])またはPTAA(ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン])などの正孔輸送性高分子化合物である。
【0137】
【0138】
他の例として、前記正孔輸送性化合物は、π電子欠乏性含窒素環を含まない正孔輸送性低分子化合物である。前記正孔輸送性低分子化合物の例示は、カルバゾール含有化合物、アミン化合物などを含む。
【0139】
前記正孔輸送領域120上には、発光層130が配置されうる。
【0140】
前記発光層は、前述のコロイダル粒子インク組成物を用いて形成されたコロイダル粒子パターンを含む。
【0141】
前記発光層130の厚さが約100Å~約1,000Å、例えば、約200Å~約600Åである。前記発光層130の厚さが前述のような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに優れた発光特性を示すことができる。
【0142】
前記発光層130上には、電子輸送領域140が配置されうる。
【0143】
前記電子輸送領域は、バッファ層、正孔阻止層、電子調節層、電子輸送層、電子注入層、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0144】
例えば、前記電子輸送領域は、電子輸送層/電子注入層、正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層、電子調節層/電子輸送層/電子注入層、またはバッファ層/電子輸送層/電子注入層などの積層構造を有することができる。
【0145】
前記電子輸送領域は、電子輸送性化合物を含んでもよい。
【0146】
例えば、前記電子輸送性化合物は、π電子欠乏性含窒素環を少なくとも1つ含む金属非含有化合物、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Alq3、BAlq、TAZ(3-(ビフェニル-4-イル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾール)、NTAZ、またはTPBiである。
【0147】
【0148】
前記「π電子欠乏性含窒素環」は、環形成モイエティとして、少なくとも1つの*-N=*’モイエティを有するC1-C60ヘテロ環基を意味する。
【0149】
例えば、前記「π電子欠乏性含窒素環」は、i)少なくとも1つの*-N=*’モイエティを有する五員ないし七員ヘテロ単環基であるか、ii)少なくとも1つの*-N=*’モイエティを有する五員ないし七員ヘテロ単環基のうち2以上が互いに縮合されているヘテロ多環基であるか、またはiii)少なくとも1つの*-N=*’モイエティを有する五員ないし七員ヘテロ単環基のうち少なくとも1つと、少なくとも1つのC5-C60炭素環基とが互いに縮合されているヘテロ多環基である。
【0150】
前記π電子欠乏性含窒素環の例には、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、ベンゾイミダゾール、イソベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、イソベンゾオキサゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサジアゾール、トリアジン、チアジアゾール、イミダゾピリジン、イミダゾピリミジン、アザカルバゾールなどが挙げられる。
【0151】
前記電子輸送領域は、前述の電子輸送性化合物以外に、金属または金属錯体をさらに含んでもよい。例えば、前記電子輸送領域は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類金属の酸化物及びハロゲン化物(例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物など)、アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体、またはそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。例えば、前記電子輸送領域は、LiQをさらに含んでもよい。例えば、前記電子輸送領域は、モリブデン酸化物(MoOx)をさらに含んでもよい。
【0152】
【0153】
前記電子輸送領域の厚さが約100Å~約2,000Å、例えば、約150Å~約1,000Åである。前記電子輸送領域の厚さが前述のような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに満たすべき電子輸送特性が得られる。
【0154】
前記電子輸送領域140上に、第2電極190が配置される。前記第2電極190は、電子注入電極であるカソードであってもよい。
【0155】
前記第2電極190の材料としては、低い仕事関数を有する金属、合金、電気伝導性化合物、またはそれらの組み合わせを使用することができる。
【0156】
前記第2電極190は、リチウム(Li)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)、銀-マグネシウム(Ag-Mg)、ITO、及びIZOから選択された少なくとも1つを含むが、これらに限定されるものではない。前記第2電極190は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。
【0157】
前記第2電極190は、単層である単層構造、または複数の層を有する多層構造を有することができる。
【0158】
前記発光素子の各層は、それぞれ真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett)法、インクジェットプリンティング法、レーザプリンティング法、レーザ熱転写(Laser Induced Thermal Imaging: LITI)法などの多様な方法を用いて形成される。
【0159】
一実施形態によれば、前記電子素子は、フレキシブル(flexible)電子素子でもある。
【0160】
一実施形態によれば、前記電子素子は、ストレッチャブル(stretchable)電子素子でもある。
【0161】
[置換基の定義]
本明細書において、C5-C60炭素環基とは、環形成原子として炭素のみを含む炭素数5~60の単環基または多環基を意味する。前記C5-C60炭素環基は、芳香族炭素環基または非芳香族炭素環基である。前記C5-C60炭素環基は、ベンゼンのような環、フェニル基のような一価基、またはフェニレン基のような二価基である。あるいは、前記C5-C60炭素環基に連結された置換基の個数によって、前記C5-C60炭素環基は、三価基または四価基であるなど、多様な変形が可能である。
【0162】
本明細書において、C1-C60ヘテロ環基とは、前記C5-C60炭素環基と同一構造を有するが、環形成原子として、炭素(炭素数は1~60である)以外に、N、O、Si、P及びSから選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む基を意味する。
【0163】
本明細書において、C1-C30アルキル基は、炭素数1~30の直鎖状(linear)または分枝状(branched)の脂肪族炭化水素基を意味し、その具体例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ter-ブチル基、ペンチル基、iso-アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基などが含まれる。
【0164】
本明細書において、C2-C30アルケニル基は、前記C2-C30アルキル基の中間または末端に1つ以上の炭素二重結合を含む炭化水素基を意味し、その具体例には、エテニル基、プロぺニル基、ブテニル基などが含まれる。
【0165】
本明細書において、C2-C30アルキニル基は、前記C2-C30アルキル基の中間または末端に1つ以上の炭素三重結合を含む炭化水素基を意味し、その具体例には、エチニル基、プロピニル基などが含まれる。
【0166】
本明細書において、C1-C30アルコキシ基は、-OA101(ここで、A101は前記C1-C30アルキル基である)の化学式を有する一価基を意味し、その具体例には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基などが含まれる。
【0167】
本明細書において、C1-C30アルキルチオ基は、-SA101(ここで、A101は前記C1-C30アルキル基である)の化学式を有する一価基を意味し、その具体例には、メチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基などが含まれる。
【0168】
本明細書において、*及び*’は、他の定義がない限り、当該化学式において隣接する原子との結合サイトを意味する。
【0169】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されない。
【0170】
[実施例]
合成例1:化合物1~7の製造
【0171】
【0172】
(1)架橋性化合物1の製造
アルゴン雰囲気下、フェニルアセチルクロリド(1020mg、6.60mmol)とペンタエリトリトール(150mg、1.10mmol)との混合溶液を140℃で18時間撹拌した。次いで、常温に冷却した後、ジクロロメタンと蒸留水を用いて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒=エチルアセテート:ヘキサン=1:4体積比)で物質を精製し、白色固体(483mg、72%)を得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.29-7.15(m,20H),3.87(s,8H),3.51(s,8H)。
【0173】
アルゴン雰囲気下、前述の段階で得られた白色固体(400mg、0.66mmol)とp-ABSA(789mg、3.28mmol)とを無水THF(10mL)に溶かし、10分間撹拌した。溶液にDBU(670mg、4.40mmol)を徐々に滴加した後、常温で12時間撹拌した。次いで、ジクロロメタンと蒸留水を用いて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒=エチルアセテート:ヘキサン=1:5体積比)で物質を精製した。得られた物質はクロロホルムとメタノールを用いて再結晶し、架橋性化合物1をオレンジ色固体(433mg、92%)として得た。1H-NMR(400MHz、CDCl3)δ:7.43-7.34(m,16H),7.21-7.16(t,J=8.0Hz,4H),4.41(s,8H)。
【0174】
(2)架橋性化合物2の製造
アルゴン雰囲気下、フェニルアセチルクロリド(2193mg、14.18mmol)とジペンタエリトリトール(500mg、1.97mmol)との混合溶液を120℃で18時間撹拌した。常温に冷却した後、ジクロロメタンと蒸留水を用いて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒=エチルアセテート:ヘキサン=1:3体積比)で物質を精製し、粘っこい黄色液体(1506mg、80%)を得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.31-7.18(m,30H),3.87(s,12H),3.53(s,12H),2.87(s,4H)。
【0175】
アルゴン雰囲気下、前述の段階で得られた粘っこい黄色液体(1000mg、1.04mmol)とp-ABSA(1795mg、7.47mmol)とを無水アセトニトリル(20mL)に溶かし、10分間撹拌した。溶液にDBU(1580mg、10.38mmol)を徐々に滴加した後、常温で24時間撹拌した。次いで、ジクロロメタンと蒸留水を用いて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒=ジクロロメタン)で物質を精製した。得られた物質はクロロホルムとメタノールを用いて再結晶し、架橋性化合物2をオレンジ色固体(577mg、49%)として得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.39-7.33(m,24H),7.17-7.13(t,6H),4.37(s,12H)。
【0176】
(3)架橋性化合物3の製造
アルゴン雰囲気下、4-メトキシフェニルアセチルクロリド(1605mg、11.02mmol)とペンタエリトリトール(300mg、2.203mmol)との混合溶液を120℃で12時間撹拌した。常温に冷却した後、ジクロロメタンと蒸留水を用いて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒=エチルアセテート:ヘキサン=1:1体積比)で物質を精製し、白色固体(1498mg、93%)を得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.09(d,J=8Hz,8H),6.82(d,J=8Hz,8H),3.91(s,8H),3.77(s,12H),3.46(s,8H)。
【0177】
アルゴン雰囲気下、前述の段階で得られた白色固体(300mg、0.412mmol)とp-ABSA(611mg、2.470mmol)とを無水アセトニトリル(7mL)に溶かし、10分間撹拌した。溶液にDBU(376mg、2.470mmol)を徐々に滴加した後、常温で24時間撹拌した。次いで、ジクロロメタンと蒸留水を用いて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒=エチルアセテート:ジクロロメタン=1:20体積比)で物質を精製した。得られた物質はクロロホルムとメタノールを用いて再結晶し、架橋性化合物3をオレンジ色固体(433mg、92%)として得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.31(d,J=8Hz,8H),6.91(d,J=8Hz,8H),4.36(s,8H),3.80(s,12H)。
【0178】
(4)架橋性化合物4の製造
アルゴン雰囲気下、4-メトキシフェニルアセチルクロリド(1605mg、11.02mmol)とペンタエリトリトール(300mg、2.203mmol)との混合溶液を120℃で12時間撹拌した。常温に冷却した後、ジクロロメタンと蒸留水を用いて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒=エチルアセテート:ヘキサン=1:1体積比)で物質を精製し、白色固体(1498mg、93%)を得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.09(d,J=8Hz,8H),6.82(d,J=8Hz,8H),3.91(s,8H),3.77(s,12H),3.46(s,8H)。
【0179】
アルゴン雰囲気下、前述の段階で得られた白色固体(1000mg、1.372mmol)を無水ジクロロメタン(40mL)に溶かし、-78℃で1時間撹拌した。次いで、BBr3(1M in DCM、6.2mL、6.174mmol)溶液を徐々に滴加した後、0℃で7時間撹拌した。飽和NaHCO3水溶液を徐々に滴加して反応を終結した後、エチルアセテートで抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。得られた物質はヘキサンで沈殿を形成し、白色固体(551mg、60%)を得た。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:8.33(s,4H),6.98(d,J=8Hz,8H),6.67(d,J=8Hz,8H),3.94(s,8H),3.46(s,8H)。
【0180】
アルゴン雰囲気下、前述の段階で得られた白色固体(100mg、0.149mmol)、1-ブロモ-2-メチル-プロパン(611mg、2.470mmol)、及びK2CO3(144mg、1.043mmol)を無水DMF(7mL)に溶かし、110℃で24時間撹拌した。常温に冷却した後、ジクロロメタンと蒸留水を用いて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒=エチルアセテート:ヘキサン=1:3体積比)で物質を精製し、粘っこい液体状態の生成物(73mg、54%)を得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.07(d,J=8Hz,8H),6.81(d,J=8Hz,8H),3.93(s,8H),3.67(d,J=8Hz,8H),3.45(s,12H),2.09-2.02(m,4H),1.01(d,J=4Hz,24H)。
【0181】
アルゴン雰囲気下、前述の段階で得られた液体(73mg、0.081mmol)とp-ABSA(74mg、0.486mmol)とを無水アセトニトリル(5mL)に溶かし、10分間撹拌した。溶液にDBU(117mg、0.486mmol)を徐々に滴加した後、常温で24時間撹拌した。次いで、ジクロロメタンと蒸留水を用いて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒=エチルアセテート:ヘキサン=1:5体積比)で物質を精製した。得られた物質はジクロロメタンとメタノールを用いて再結晶し、架橋性化合物4をオレンジ色固体(9mg、11%)として得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.29(d,J=8Hz,8H),6.90(d,J=8Hz,8H),4.34(s,8H),3.70(d,J=4Hz,8H),2.10-2.03(m,4H),1.02(d,J=4Hz,24H)。
【0182】
(5)架橋性化合物5の製造
4-フルオロフェニルアセチルクロリド(1267mg、7.345mmol)とペンタエリトリトール(200mg、1.469mmol)との混合溶液を140℃で18時間撹拌した。常温に冷却した後、エチルアセテートと蒸留水を用いて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒=エチルアセテート:ヘキサン=1:2体積比)で物質を精製し、白色固体(806mg、81%)を得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.14(dd,J=8Hz,4Hz,8H),6.99(t,J=8Hz,8H),3.93(s,8H),3.51(s,8H)。
【0183】
アルゴン雰囲気下、前述の段階で得られた白色固体(400mg、0.588mmol)とp-ABSA(1019mg、4.114mmol)とを無水アセトニトリル(10mL)に溶かし、10分間撹拌した。次いで、DBU(626mg、2.470mmol)を徐々に滴加した後、常温で24時間撹拌した。次いで、ジクロロメタンと蒸留水を用いて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒=ジクロロメタン)で物質を精製した。得られた物質はクロロホルムとメタノールを用いて再結晶し、架橋性化合物5をオレンジ色固体(78mg、17%)として得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.38(t,J=8Hz,8H),7.08(t,J=8Hz,8H),4.38(s,8H)。
【0184】
(6)架橋性化合物6の製造
アルゴン雰囲気下、フェニルアセチルクロリド(7636mg、49.40mmol)とD-マンニトール(1000mg、5.489mmol)との混合溶液を130℃で24時間撹拌した。常温に冷却した後、ジクロロメタンと蒸留水を用いて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒=エチルアセテート:ヘキサン=1:5体積比)で物質を精製し、淡黄色液体(1177mg、24%)を得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.32-7.19(m,30H),5.46(d,J=8Hz,2H),5.11-5.07(m,2H),4.20(s,1H),4.19(s,1H),3.88(d,J=4Hz,1H),3.85(d,J=4Hz,1H),3.60(d,J=4Hz,4H),3.54(d,J=4Hz,4H),3.50(s,4H)。
【0185】
アルゴン雰囲気下、前述の段階で得られた淡黄色液体(1157mg、1.299mmol)とp-ABSA(2808mg、11.69mmol)とを無水アセトニトリル(50mL)に溶かし、10分間撹拌した。次いで、DBU(1780mg、11.69mmol)を徐々に滴加した後、常温で24時間撹拌した。次いで、ジクロロメタンと蒸留水を用いて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒=ジクロロメタン)で物質を精製した。得られた物質はクロロホルムとメタノールを用いて再結晶し、架橋性化合物6を黄色固体(279mg、21%)として得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.40-7.14(m,30H),5.81(d,J=8Hz,2H),5.49(m,2H),4.70(d,J=12Hz,2H),4.35(dd,J=12Hz,4Hz,2H)。
【0186】
(7)架橋性化合物7の製造
4-フルオロフェニルアセチルクロリド(1010mg、5.852mmol)とジペンタエリトリトール(250mg、0.836mmol)との混合溶液を120℃で18時間撹拌した。常温に冷却した後、ジクロロメタンと蒸留水を用いて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒=エチルアセテート:ヘキサン=1:2体積比)で物質を精製し、白色固体(710mg、79%)を得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.17(t,J=4Hz,4Hz,12H),6.99(t,J=4Hz,12H),3.92(s,12H),3.52(s,12H),2.94(s,4H)。
【0187】
アルゴン雰囲気下、前述の段階で得られた白色固体(400mg、0.374mmol)とp-ABSA(897mg、3.735mmol)とを無水アセトニトリル(10mL)に溶かし、10分間撹拌した。次いで、DBU(568mg、3.735mmol)を徐々に滴加した後、常温で24時間撹拌した。次いで、ジクロロメタンと蒸留水を用いて抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒=クロロホルム:ヘキサン=30:1体積比)で物質を精製した。得られた物質はクロロホルムとヘキサンを用いて再結晶し、架橋性化合物7をオレンジ色固体(160mg、35%)として得た。1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.34(t,J=4Hz,12H),7.03(t,J=8Hz,12H),4.34(s,12H),3.46(s,4H)。
【0188】
製造例1:量子ドットインク組成物の製造
(1)赤色量子ドットインク組成物の製造
オレイン酸亜鉛(0.5M、Zn(OA)2)は、20mmolのZn(OAc)2を12mlのOAと共に150℃で1時間加熱して製造した後、これをODEで希釈して総体積を40mlにした。トリオクチルホスフィンセレン(1M、TOPSe)とトリオクチルホスフィン硫黄(1M、TOPS)は、1mmolのSeまたはSを1mlのTOPと共に室温で一晩中撹拌して製造した。
【0189】
赤色発光CdSe/ZnSe/ZnS量子ドット(r=3.0nm、l=5.0nm、h=2.0nm)の場合、0.3mmolのCdO、1mmolのOA、6mlのODEを三口フラスコに入れ、不活性条件で300℃まで加熱し、透明なCd(OA)2溶液を形成した。次いで、0.5mlのTOPSe(1M)を反応フラスコに速く注入した。3分後、ODEに5mlのCd、Seストック溶液を注入してCdSeコアを成長させた。次いで、ZnSeシェルを成長させるために、20mlのZn(OA)2(0.5M)と7mlのTOPSeを連続して添加した。最後に、ZnSシェルを成長させるために、10mlのZn(OA)2(0.5M)と5mlのTOPSを添加した。合成された赤色発光CdSe/ZnSe/ZnS量子ドットを沈殿/再分散(エタノール/トルエン)方法によって5回精製した。
【0190】
トルエン(55mg/mL)に溶かした赤色発光CdSe/ZnSe/ZnS量子ドット溶液に化合物1を量子ドットに対して5重量%で添加し、赤色量子ドットインク組成物を製造した。
【0191】
(2)緑色量子ドットインク組成物の合成
緑色発光InP/ZnSeS量子ドットは、Uniam社の製品を購入した。
【0192】
トルエン(55mg/mL)に溶かした緑色発光InP/ZnSeS量子ドット溶液に化合物1を量子ドットに対して5重量%で添加し、緑色量子ドットインク組成物を製造した。
【0193】
(3)青色量子ドットインク組成物の合成
ODEにZn(OA)2(0.5M)ストック溶液をカチオン前駆体として製造した。TOPSe(2M)、トリオクチルホスフィンテルリド(0.05M、TOPTe)、及びジフェニルホスフィンセレニド(0.2M、DPPSe)をアニオン前駆体として製造した。Zn(OA)2の製造のために、50mmolのZn(Ac)2と100mmolのOAとをフラスコに入れ、130℃で6時間脱気した後、N2ガスで再充填した後、ODEで0.5M濃度に希釈した。TOPSeの製造のために、100mmolのSe粉末を50mLのTOPと160℃で5時間不活性条件で混合した。同様の方法によってTOPTeを製造した。
【0194】
4mmolのSe粉末を200℃で2mLのDPPと不活性条件で反応が完了するまで反応させた後、RTでトルエンで0.2M濃度に希釈し、DPPSeを製造した。
【0195】
ZnSeTe/ZnSe/ZnS量子ドット(r=1.8nm、l=1.8nm、h=0.6nm)は、以前に報告された方法を少し修正して合成した(1)。1.2mLのZn(OA)2(0.5M)と10mLのODEとを三口丸底フラスコに入れ、110℃で撹拌及び脱気した。水と酸素を完全に除去するために1時間脱気した後、N2ガスで再充填した。次いで、1.43mLのDPPSe(0.2M)と0.3mLのTOPTe(0.05M)との混合物を注入して230℃でZnSe0.95Te0.05コアを合成し、30分間維持した。次いで、温度を15分間300℃に上げて、ZnSe0.95Te0.05コア(r=1.8nm)が完全に成長されるようにした。コアにZnSeシェルをさらに成長させるために、300℃でZn(OA)2(0.5M)2mL/3.4mL/5mLとTOPSe(2M)0.25mL/0.425mL/0.625mLとを順次に注入した。Zn(OA)2(0.5M)10mLとDDT 0.5mLとをさらに注入し、0.6nm厚のZnSシェルを成長させた。合成された量子ドットは、沈殿/再分散(エタノール/トルエン)方法によって二回精製した。
【0196】
トルエン(55mg/mL)に溶かした青色発光ZnSeTe/ZnSe/ZnS量子ドット溶液に化合物1を量子ドットに対して20重量%で添加し、青色量子ドットインク組成物を製造した。
【0197】
実施例1:PINフォトパターニング(PIN photopatterning)を利用した量子ドットパターンフィルムの製造
一実施形態による量子ドットパターンフィルムは、
図1を参照して、下記のような方法で製造される。
【0198】
(1)フォトレジストパターン(PR pattern)の形成
基板は、アセトンとイソプロピルアルコールで充填された超音波浴でそれぞれ10分間洗浄した後、窒素ガンで乾燥した。KL5301フォトレジスト(Kemlab Incorporation社製)を多段階スピンコーティング工程(500rpmで5秒、4500rpmで40秒、2,000rpmで2秒)でSiO2基板にコーティングした後、生成されたフィルムを105℃のホットプレートで1分間ソフトベークした。ソフトベーク後、フォトレジストフィルムにマスクアライナー(MDA-400LJ、MIDASシステム)を使用してフォトマスクを通じてUV光源(365nm、9.8mW/cm2)を9秒間照射した後、115℃のホットプレートで1分間ハードベークした。ハードベークされたフォトレジストフィルムをAZ300MIF現像液(AZ Electronic Materials社製)で4秒間現像した後、脱イオン水で洗い流した。生成されたフォトレジストパターンの厚さは70nmであった。
【0199】
(2)CdSe/ZnSe/ZnS量子ドットパターンの形成
前記赤色量子ドットインク組成物(QD ink)を前記フォトレジストパターンが形成された基板上にスピンコーティング(4,000rpm、30秒)し、生成されたフィルムを110℃で20分間アニーリングして架橋反応を誘導した。次いで、前記フォトレジストパターンをアセトンで充填された超音波浴で1分間ストリップした後、窒素ガンを使用して乾燥し、70nm厚のCdSe/ZnSe/ZnS量子ドットパターン(QD pattern)を形成した。
【0200】
比較例1:直接フォトパターニング(Direct Photopatterning)を利用した量子ドットパターンフィルムの製造
トルエン(60mg/mL)に溶かした赤色発光CdSe/ZnSe/ZnS量子ドット溶液に化合物1(量子ドットに対して5重量%)を添加した混合溶液を基板にスピンコーティング(2,000rpmで60秒、25nm厚の量子ドットパターン、4,000rpmで30秒)して70nm厚を得た。生成されたフィルムをフォトマスクを通じてUV(365nm、4mW/cm2、該当する露出4.8J/cm2)で架橋した。次いで、トルエン溶媒を使用して、架橋されていない領域を選択的に除去し、赤色量子ドットパターンが形成された比較例1の量子ドットパターンフィルムを現像した。
【0201】
評価例1
前記実施例1及び比較例1それぞれで製造された量子ドットパターンフィルムを原子間力顕微鏡(AFM)で観察した写真と高さプロファイル(height profile)を
図2に示している。
【0202】
また、前記実施例1及び比較例1それぞれで5個以上の量子ドットパターンフィルムを製造し、それらの線縁粗さ(line edge roughness)、線幅変化(line width variation)及び表面粗さ(surface roughness)を測定し、その結果を
図3に示している。
図3の各グラフにおいて、縦軸の値は平均値であり、エラーバー(error bar)は標準偏差(standard deviation)を示す。
【0203】
図2及び
図3を参照して、一実施形態による量子ドットパターンフィルムは、比較例の量子ドットパターンフィルムと比べて線縁粗さ、線幅変化及び表面粗さが顕著に減少し、パターン忠実度に非常に優れることが分かる。
【0204】
実施例2:多色量子ドットパターンフィルムの製造
一実施形態による量子ドットパターンフィルムは、
図4を参照して、下記のような方法で多色量子ドットパターンフィルムにも製造される。
【0205】
(1)まず、赤色発光CdSe/ZnSe/ZnS量子ドットインク組成物を実施例1で説明された方法を通じてパターニングし、赤色量子ドットパターン(Red pattern)を形成した。
【0206】
(2)その後、赤色発光CdSe/ZnSe/ZnS量子ドットパターンがある基板に、緑色量子ドットパターンのリバースパターンであるフォトレジストパターンを形成し(PR patterning)、プラズマエッチングして厚さを小さくした(Reactive ion etching)。前記赤色発光CdSe/ZnSe/ZnS量子ドットパターンがフォトレジスト層で覆われていたので、エッチング段階の間にプラズマに直接露出されることを防止することができた。
【0207】
(3)その後、緑色発光InP/ZnSeS量子ドットインク組成物(QD ink)を用いて(1)と同様の方法によってパターニング(Green spin-coating、Annealing、及びLift-off)し、赤色及び緑色量子ドットパターン(RG pattern)を形成した。
【0208】
(4)その後、青色発光ZnSeTe/ZnSe/ZnS量子ドットインク組成物を用いて前記(2)及び(3)の過程を反復(Repeat)してパターニングし、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)量子ドットパターン(RGB pattern)を形成した。
【0209】
評価例2
前記実施例2で製造された量子ドットパターンフィルムを蛍光顕微鏡で観察し、その結果を
図5に示している。
【0210】
また、前記実施例2で製造された量子ドットフィルムをAFM(atomic force microscopy)で観察した写真と高さプロファイルを
図6に示している。
【0211】
図5及び
図6を参照して、一実施形態による量子ドットパターンフィルムは、RGB量子ドットがいずれも優れた忠実度で形成されたことが分かる。
【0212】
実施例3:赤色発光素子の作製
予めパターニングされたITO基板を、脱イオン水、アセトン、イソプロピルアルコールが含まれた超音波浴でそれぞれ10分間洗浄した後、窒素ガンを使用して乾燥した。全体のQD-LED作製は不活性条件で行われた。
【0213】
20mg/mLのZnOナノ粒子を予めパターニングされたITO基板に4000rpmで30秒間スピンコーティングした後、フィルムを80℃で30分間アニーリングした。15mg/mLの赤色発光CdSe/ZnSe/ZnS QDに5wt%の化合物1を添加した後、4000rpmで30秒間ZnOナノ粒子上にスピンコーティングし、形成されたQDフィルムを110℃で20分間アニーリングした。CBP(60nm)、MoOx(10nm)、及びAl(120nm)をそれぞれ0.4Å/s~1.0Å/s、0.1Å/s~0.2Å/s、及び1.0Å/s~2.0Å/sの蒸着速度で~10-7torrの圧力でQDフィルムに熱蒸着して赤色発光素子を作製した。
【0214】
【0215】
実施例4:緑色発光素子の作製
QDフィルム形成時、15mg/mLの赤色発光CdSe/ZnSe/ZnS QDの代わりに、15mg/mLの緑色発光InP/ZnSeS QDを使用したことを除いては、実施例3と同様の方法で緑色発光素子を作製した。
【0216】
実施例5:青色発光素子の作製
QDフィルム形成時、15mg/mLの赤色発光CdSe/ZnSe/ZnS QDの代わりに、10mg/mLの青色発光ZnSeTe/ZnSe/ZnS QDを使用したことを除いては、実施例3と同様の方法で青色発光素子を作製した。
【0217】
比較例2~4
QDフィルム形成時、化合物1を利用しないことを除いては、実施例3~5と同様の方法で赤色発光素子、緑色発光素子、及び青色発光素子をそれぞれ作製した。
【0218】
評価例3:発光素子特性評価
実施例3~5及び比較例2~4で作製された発光素子の発光スペクトル、電流密度、輝度及び外部量子効率(external quantum efficiency: EQE)をそれぞれKeithley MU 236及び輝度計PR650を利用して測定し、その結果を
図9~
図12に示している。
【0219】
図9を参照して、実施例3~5の発光素子(「Crosslinked」)の発光スペクトルが、比較例2~4の発光素子(「Pristine」)の発光スペクトルと区別が難しいほどほとんど差がないことが分かる。
【0220】
また、
図10~
図12を参照して、実施例3~5の発光素子(「Crosslinked」)の電流密度(J)-電圧(V)-輝度(L)プロファイル及び外部量子効率(EQE)-Jプロファイルが、比較例2~4の発光素子(「Pristine」)のものと非常に類似していることが分かる。
【0221】
このことから、低温活性化架橋剤の使用は、QD層の電気的及び光電子的特性を低下させず、一実施形態によるコロイダル粒子インク組成物を利用したフォトパターニング工程が非破壊的であることが分かる。
【0222】
本発明について前記実施形態を挙げて説明したが、これは例示的なものに過ぎず、本発明に属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、それらから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決まらなければならない。