(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025010799
(43)【公開日】2025-01-23
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換システム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20250116BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113015
(22)【出願日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 健太
(72)【発明者】
【氏名】菅原 孝道
(72)【発明者】
【氏名】松原 壱樹
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE03
5H730EE04
5H730EE08
5H730EE13
5H730EE59
5H730FD01
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】電圧のリップルを小さくすることができる電力変換装置を得る。
【解決手段】本開示の一実施の形態に係る電力変換装置は、第1の電力端子と、スイッチング素子を有するスイッチング回路と、スイッチング回路に接続された第1の巻線と、第2の巻線とを有するトランスと、第2の巻線に接続され、スイッチング素子を有する整流回路と、平滑回路と、第2の電力端子と、制御回路と、駆動回路とを備える。制御回路は、第1の電力端子から第2の電力端子に向かって電力を供給する前において、第1の動作および第2の動作を交互に行うことが可能であり、第1の動作において、第2の電力端子から第1の電力端子に対して第1の電力を供給し、第2の動作において、第2の電力端子から第1の電力端子に対して、第1の電力よりも小さい第2の電力を供給するように、スイッチング回路および整流回路の動作を制御可能である。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電力端子と、
前記第1の電力端子に接続され、第1の駆動信号に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有するスイッチング回路と、
前記スイッチング回路に接続された第1の巻線と、第2の巻線とを有するトランスと、
前記第2の巻線に接続され、第2の駆動信号に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有する整流回路と、
前記整流回路に接続された平滑回路と、
前記平滑回路に接続された第2の電力端子と、
前記スイッチング回路および前記整流回路の動作を制御可能な制御回路と、
前記制御回路からの指示に基づいて前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号を生成可能な駆動回路と
を備え、
前記制御回路は、
前記第1の電力端子から前記第2の電力端子に向かって電力を供給する前において、第1の動作および第2の動作を交互に行うことが可能であり、
前記第1の動作において、前記第2の電力端子から前記第1の電力端子に対して第1の電力を供給して前記第1の電力端子における電圧が上昇するように、前記スイッチング回路および前記整流回路の動作を制御可能であり、
前記第2の動作において、前記第2の電力端子から前記第1の電力端子に対して、前記第1の電力よりも小さい第2の電力を供給して前記第1の電力端子における電圧が下降するように、前記スイッチング回路および前記整流回路の動作を制御可能である
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記第1の電力端子における電圧の電圧値が第1のしきい値より小さいことを含む所定の条件を満たした場合に、前記第1の動作を開始可能であり、
前記第1の電力端子における電圧の電圧値が第2のしきい値より大きいことを含む所定の条件を満たした場合に、前記第2の動作を開始可能である
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記第1の動作において、前記第2の駆動信号のデューティ比を第1のデューティ比に設定可能であり、
前記第2の動作において、前記第2の駆動信号のデューティ比を前記第1のデューティ比より小さい第2のデューティ比に設定可能である
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記第1の動作において、前記第1の駆動信号のデューティ比を前記第1のデューティ比よりも小さい第3のデューティ比に設定可能であり、
前記第2の動作において、前記第1の駆動信号のデューティ比を前記第2のデューティ比および前記第3のデューティ比より小さい第4のデューティ比に設定可能である
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御回路は、
前記第1の動作において、前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号のスイッチング周波数を第1のスイッチング周波数に設定可能であり、
前記第2の動作において、前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号のスイッチング周波数を前記第1のスイッチング周波数よりも低い第2のスイッチング周波数に設定可能である
請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御回路は、
前記第1の動作において、前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号のスイッチング周波数を第1のスイッチング周波数に設定可能であり、
前記第2の動作において、前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号のスイッチング周波数を前記第1のスイッチング周波数よりも高い第2のスイッチング周波数に設定可能である
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御回路は、
前記第1の動作において、前記第2の駆動信号のデューティ比を第1のデューティ比に設定可能であり、
前記第2の動作において、前記第2の駆動信号のデューティ比を前記第1のデューティ比より小さい第2のデューティ比に設定可能である
請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1の電力端子における電圧に基づいて電源電圧を生成可能であり、前記第1の電力端子における電圧に応じた検出電圧を生成可能な電源回路をさらに備え、
前記制御回路は、前記検出電圧に基づいて、前記第1の動作および前記第2の動作のうちの一方を行うことが可能であり、
前記駆動回路は、
前記第1の駆動信号を生成可能であり、前記電源電圧に基づいて動作可能な第1の駆動回路と、
前記第2の駆動信号を生成可能な第2の駆動回路と
を有する
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
第1の端子および第2の端子を有する第1のバッテリと、
第1の端子および第2の端子を有するキャパシタと、
前記第1のバッテリの前記第1の端子と前記キャパシタの前記第1の端子とを結ぶ経路に設けられた第1のスイッチと、
前記第1のバッテリの前記第2の端子と前記キャパシタの前記第2の端子とを結ぶ経路に設けられた第2のスイッチと、
電力変換装置と、
第2のバッテリと
を備え、
前記電力変換装置は、
前記キャパシタの前記第1の端子に接続された第1の接続端子、および前記キャパシタの前記第2の端子に接続された第2の接続端子を有する第1の電力端子と、
前記第1の電力端子に接続され、第1の駆動信号に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有するスイッチング回路と、
前記スイッチング回路に接続された第1の巻線と、第2の巻線とを有するトランスと、
前記第2の巻線に接続され、第2の駆動信号に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有する整流回路と、
前記整流回路に接続された平滑回路と、
前記平滑回路に接続されるとともに前記第2のバッテリに接続された第2の電力端子と、
前記スイッチング回路および前記整流回路の動作を制御可能な制御回路と、
前記制御回路からの指示に基づいて前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号を生成可能な駆動回路と
を有し、
前記制御回路は、
前記第1の電力端子から前記第2の電力端子に向かって電力を供給する前において、第1の動作および第2の動作を交互に行うことが可能であり、
前記第1の動作において、前記第2の電力端子から前記第1の電力端子に対して第1の電力を供給して前記第1の電力端子における電圧が上昇するように、前記スイッチング回路および前記整流回路の動作を制御可能であり、
前記第2の動作において、前記第2の電力端子から前記第1の電力端子に対して、前記第1の電力よりも小さい第2の電力を供給して前記第1の電力端子における電圧が下降するように、前記スイッチング回路および前記整流回路の動作を制御可能である
電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を変換する電力変換装置および電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
1次側のバッテリの電力を変換して2次側のバッテリに供給する電力変換装置には、電力変換動作を行う前に、電力変換装置を介して2次側のバッテリの電力を1次側のキャパシタに供給する、いわゆるプリチャージ動作を行うものがある。例えば、特許文献1には、プリチャージを行うことによりキャパシタの電圧を昇圧させる際に、スイッチング動作を行う期間と、スイッチング動作を停止する期間とを交互に設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなプリチャージ動作を行う電力変換装置では、1次側のキャパシタの電圧を昇圧させた後に、電圧が維持される。この電圧が維持される期間では、1次側のキャパシタの電圧のリップルが小さいことが望まれる。
【0005】
電圧のリップルを小さくすることができる電力変換装置および電力変換システムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態に係る電力変換装置は、第1の電力端子と、スイッチング回路と、トランスと、整流回路と、平滑回路と、第2の電力端子と、制御回路と、駆動回路とを備えている。スイッチング回路は、第1の電力端子に接続され、第1の駆動信号に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有するものである。トランスは、スイッチング回路に接続された第1の巻線と、第2の巻線とを有するものである。整流回路は、第2の巻線に接続され、第2の駆動信号に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有するものである。平滑回路は、整流回路に接続されたものである。第2の電力端子は、平滑回路に接続されたものである。制御回路は、スイッチング回路および整流回路の動作を制御可能なものである。駆動回路は、制御回路からの指示に基づいて第1の駆動信号および第2の駆動信号を生成可能なものである。制御回路は、第1の電力端子から第2の電力端子に向かって電力を供給する前において、第1の動作および第2の動作を交互に行うことが可能であり、第1の動作において、第2の電力端子から第1の電力端子に対して第1の電力を供給して第1の電力端子における電圧が上昇するように、スイッチング回路および整流回路の動作を制御可能であり、第2の動作において、第2の電力端子から第1の電力端子に対して、第1の電力よりも小さい第2の電力を供給して第1の電力端子における電圧が低下するように、スイッチング回路および整流回路の動作を制御可能である。
【0007】
本発明の一実施の形態に係る電力変換システムは、第1のバッテリと、キャパシタと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、電力変換装置と、第2のバッテリとを備えている。第1のバッテリは、第1の端子および第2の端子を有するものである。キャパシタは、第1の端子および第2の端子を有するものである。第1のスイッチは、第1のバッテリの第1の端子とキャパシタの第1の端子とを結ぶ経路に設けられたものである。第2のスイッチは、第1のバッテリの第2の端子とキャパシタの第2の端子とを結ぶ経路に設けられたものである。電力変換装置は、第1の電力端子と、スイッチング回路と、トランスと、整流回路と、平滑回路と、第2の電力端子と、制御回路と、駆動回路とを有している。第1の電力端子は、キャパシタの第1の端子に接続された第1の接続端子、およびキャパシタの第2の端子に接続された第2の接続端子を有するものである。スイッチング回路は、第1の電力端子に接続され、第1の駆動信号に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有するものである。トランスは、スイッチング回路に接続された第1の巻線と、第2の巻線とを有するものである。整流回路は、第2の巻線に接続され、第2の駆動信号に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有するものである。平滑回路は、整流回路に接続されたものである。第2の電力端子は、平滑回路に接続されるとともに第2のバッテリに接続されたものである。制御回路は、スイッチング回路および整流回路の動作を制御可能なものである。駆動回路は、制御回路からの指示に基づいて第1の駆動信号および第2の駆動信号を生成可能なものである。制御回路は、第1の電力端子から第2の電力端子に向かって電力を供給する前において、第1の動作および第2の動作を交互に行うことが可能であり、第1の動作において、第2の電力端子から第1の電力端子に対して第1の電力を供給して第1の電力端子における電圧が上昇するように、スイッチング回路および整流回路の動作を制御可能であり、第2の動作において、第2の電力端子から第1の電力端子に対して、第1の電力よりも小さい第2の電力を供給して第1の電力端子における電圧が低下するように、スイッチング回路および整流回路の動作を制御可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施の形態に係る電力変換装置および電力変換システムによれば、キャパシタの電圧のリップルを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る電力変換システムの一構成例を表す回路図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した補助電源回路の一構成例を表すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した制御回路の一構成例を表すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図3に示したしきい値生成部の一動作例を表す説明図である。
【
図5】
図5は、
図3に示した比較部における比較動作の一特性例を表す説明図である。
【
図6】
図6は、
図3に示した比較部の一動作例を表すタイミング図である。
【
図7】
図7は、
図1に示した電力変換システムにおけるプリチャージ動作の一例を表すタイミング図である。
【
図8】
図8は、
図1に示した電力変換システムの、プリチャージ期間におけるゲート信号の一例を表すタイミング波形図である。
【
図9】
図9は、
図1に示した電力変換システムにおけるプリチャージ動作の一例を表すタイミング波形図である。
【
図10】
図10は、
図1に示した電力変換システムの、電圧維持期間におけるゲート信号の一例を表すタイミング波形図である。
【
図11】
図11は、
図1に示した電力変換システムの、電圧維持期間における一動作例を表すタイミング波形図である。
【
図12】
図12は、参考例に係る電力変換システムの、電圧維持期間における一動作例を表すタイミング波形図である。
【
図13】
図13は、変形例に係る電力変換システムにおけるプリチャージ動作の一例を表すタイミング図である。
【
図14】
図14は、他の変形例に係る電力変換システムの、電圧維持期間におけるゲート信号の一例を表すタイミング波形図である。
【
図15】
図15は、他の変形例に係る電力変換システムの、電圧維持期間におけるゲート信号の一例を表すタイミング波形図である。
【
図16】
図16は、他の変形例に係る電力変換システムの一構成例を表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
<実施の形態>
[構成例]
図1は、本発明の一実施の形態に係る電力変換装置を備えた電力変換システム1の一構成例を表すものである。電力変換システム1は、高圧バッテリBHと、スイッチSW1,SW2と、キャパシタ9と、電力変換装置10と、低圧バッテリBLとを備えている。この電力変換システム1は、高圧バッテリBHから供給された電力を変換し、変換された電力を低圧バッテリBLに供給するように構成される。
【0012】
高圧バッテリBHは、電力を蓄えるように構成される。高圧バッテリBHは、スイッチSW1,SW2を介して電力を電力変換装置10に供給するようになっている。
【0013】
スイッチSW1,SW2は、オン状態になることにより高圧バッテリBHに蓄えられた電力を電力変換装置10に供給するように構成される。スイッチSW1,SW2は、例えばリレーを用いて構成される。スイッチSW1は、オン状態になることにより、高圧バッテリBHの正端子と電力変換装置10の端子T11とを接続する。スイッチSW2は、オン状態になることにより、高圧バッテリBHの負端子と電力変換装置10の端子T12とを接続する。スイッチSW1,SW2は、図示しないシステム制御部からの指示に基づいてオンオフするようになっている。
【0014】
キャパシタ9の一端は電力変換装置10の端子T11およびスイッチSW1に接続され、他端は電力変換装置10の端子T12およびスイッチSW2に接続される。
【0015】
電力変換装置10は、高圧バッテリBHから供給された電圧を降圧することにより、電力を変換し、変換された電力を低圧バッテリBLに供給するように構成される。電力変換装置10は、端子T11,T12と、スイッチング回路12と、トランス13と、整流回路14と、平滑回路15と、電圧センサ18と、補助電源回路20と、駆動回路32,34と、制御回路40と、端子T21,T22とを有している。高圧バッテリBH、スイッチSW1,SW2、キャパシタ9、スイッチング回路12、および駆動回路32は、電力変換システム1の1次側回路を構成し、整流回路14、平滑回路15、電圧センサ18、駆動回路34、および低圧バッテリBLは、電力変換システム1の2次側回路を構成する。
【0016】
端子T11,T12は、スイッチSW1,SW2がオン状態になることにより、高圧バッテリBHから電圧が供給されるように構成される。電力変換装置10の装置内において、端子T11は電圧線L11に接続され、端子T12は基準電圧線L12に接続される。基準電圧線L12における電圧を基準とした、電圧線L11における電圧は、電圧VHである。
【0017】
スイッチング回路12は、高圧バッテリBHから供給された直流電圧を交流電圧に変換するように構成される。スイッチング回路12は、フルブリッジ型の回路であり、トランジスタS1~S4を有する。トランジスタS1~S4は、ゲート信号GA~GDに基づいてそれぞれスイッチング動作を行うスイッチング素子である。トランジスタS1~S4は、例えばN型の電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を用いて構成される。トランジスタS1~S4は、ボディダイオードD1~D4をそれぞれ有している。例えば、ボディダイオードD1のアノードはトランジスタS1のソースに接続され、カソードはトランジスタS1のドレインに接続される。ボディダイオードD2~D4についても同様である。なお、この構成に限定されるものではなく、例えばトランジスタS1~S4のそれぞれのドレイン・ソース間に、ダイオード素子を外付けしてもよい。また、この例では、N型の電界効果トランジスタを用いたが、スイッチング素子であればどのようなものを用いてもよい。
【0018】
トランジスタS1は、電圧線L11とノードN1とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることによりノードN1を電圧線L11に接続するように構成される。トランジスタS1のドレインは電圧線L11に接続され、ゲートにはゲート信号GAが供給され、ソースはノードN1に接続される。トランジスタS2は、ノードN1と基準電圧線L12とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることによりノードN1を基準電圧線L12に接続するように構成される。トランジスタS2のドレインはノードN1に接続され、ゲートにはゲート信号GBが供給され、ソースは基準電圧線L12に接続される。ノードN1は、トランジスタS1のソースとトランジスタS2のドレインとの接続点である。
【0019】
トランジスタS3は、電圧線L11とノードN2とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることによりノードN2を電圧線L11に接続するように構成される。トランジスタS3のドレインは電圧線L11に接続され、ゲートにはゲート信号GCが供給され、ソースはノードN2に接続される。トランジスタS4は、ノードN2と基準電圧線L12とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることによりノードN2を基準電圧線L12に接続するように構成される。トランジスタS4のドレインはノードN2に接続され、ゲートにはゲート信号GDが供給され、ソースは基準電圧線L12に接続される。ノードN2は、トランジスタS3のソースとトランジスタS4のドレインとの接続点である。
【0020】
トランス13は、1次側回路と2次側回路とを直流的に絶縁するとともに交流的に接続し、1次側回路から供給された交流電圧を、トランス13の変成比Nで変換し、変換された交流電圧を2次側回路に供給するように構成される。トランス13は、巻線13A,13Bを有している。巻線13Aは1次巻線であり、一端はスイッチング回路12におけるノードN1に接続され、他端はスイッチング回路12におけるノードN2に接続される。巻線13Bは2次巻線であり、一端は整流回路14におけるノードN4(後述)に接続され、他端は整流回路14におけるノードN5(後述)に接続される。
【0021】
整流回路14は、トランス13の巻線13Bから出力された交流電圧を整流するように構成される。整流回路14は、フルブリッジ型の回路であり、トランジスタS5~S8を有している。トランジスタS5~S8は、ゲート信号GE,GFに基づいてスイッチング動作を行うように構成される。トランジスタS5~S8は、スイッチング回路12のトランジスタS1~S4と同様に、例えばN型の電界効果トランジスタを用いて構成される。トランジスタS5~S8は、トランジスタS1~S4と同様に、ボディダイオードD5~D8をそれぞれ有している。
【0022】
トランジスタS5は、電圧線L21AとノードN4とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることによりノードN4を電圧線L21Aに接続するように構成される。トランジスタS5のドレインは電圧線L21Aに接続され、ゲートにはゲート信号GFが供給され、ソースはノードN4に接続される。トランジスタS6は、ノードN4と基準電圧線L22とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることによりノードN4を基準電圧線L22に接続するように構成される。トランジスタS6のドレインはノードN4に接続され、ゲートにはゲート信号GEが供給され、ソースは基準電圧線L22に接続される。ノードN4は、トランジスタS5のソースとトランジスタS6のドレインとの接続点である。
【0023】
トランジスタS7は、電圧線L21AとノードN5とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることによりノードN5を電圧線L21Aに接続するように構成される。トランジスタS7のドレインは電圧線L21Aに接続され、ゲートにはゲート信号GEが供給され、ソースはノードN5に接続される。トランジスタS8は、ノードN5と基準電圧線L22とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることによりノードN5を基準電圧線L22に接続するように構成される。トランジスタS8のドレインはノードN5に接続され、ゲートにはゲート信号GFが供給され、ソースは基準電圧線L22に接続される。ノードN5は、トランジスタS7のソースとトランジスタS8のドレインとの接続点である。
【0024】
平滑回路15は、整流回路14により整流された電圧を平滑化するように構成される。平滑回路15は、チョークインダクタ16と、キャパシタ17とを有している。チョークインダクタ16の一端は電圧線L21Aに接続され、他端は電圧線L21Bに接続される。キャパシタ17の一端は電圧線L21Bに接続され、他端は基準電圧線L22に接続される。なお、この例では、チョークインダクタ16を電圧線L21A,L21Bに設けたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば基準電圧線L22に設けてもよい。
【0025】
電圧センサ18は、電圧線L21Bにおける電圧を検出するように構成される。電圧センサ18の一端は電圧線L21Bに接続され、他端は基準電圧線L22に接続される。基準電圧線L22における電圧を基準とした、電圧線L21Bにおける電圧は、電圧VLである。電圧センサ18は、この電圧VLを検出し、この電圧VLに応じた検出電圧VL2を制御回路40に供給するようになっている。
【0026】
補助電源回路20は、電圧VH,VLに基づいて、電力変換装置10の装置内で使用される各種電源電圧を生成するとともに、電圧VHに比例した検出電圧VH2を生成するように構成される。
【0027】
図2は、補助電源回路20の一構成例を表すものである。補助電源回路20は、スイッチング素子21と、スイッチング制御回路22と、トランス23と、整流回路24と、平滑回路25と、整流回路26と、平滑回路27と、レギュレータ28と、ピークホールド回路29とを有している。
【0028】
スイッチング素子21の一端はトランス23の巻線23A(後述)に接続され、他端は端子T12に接続される。スイッチング制御回路22は、スイッチング素子21の動作を制御するように構成される。
【0029】
トランス23は、巻線23A,23B,23C,23Dを有している。巻線23A,23Bは一次巻線であり、巻線23C,23Dは2次巻線である。巻線23Aの一端は端子T11に接続され、他端はスイッチング素子21の一端に接続される。巻線23Bの両端は整流回路24に接続される。巻線23Bの一端は端子T12に接続される。巻線23Cの両端は整流回路26に接続される。巻線23Dの両端はピークホールド回路29に接続される。巻線23Cの一端および巻線23Dの一端は端子T22に接続される。
【0030】
整流回路24は、トランス23の巻線23Bから出力された交流電圧を整流するように構成される。補助電源回路20は、スイッチング素子21がスイッチング動作を行うことにより生成されたパルス電圧を、巻線23Aから巻線23Bに伝送させる。巻線23Bおよび整流回路24は、フライバック方式で電力を伝送する。平滑回路25は、整流回路24により整流された電圧を平滑化し、平滑化された直流電圧を電源電圧VPとして出力するように構成される。補助電源回路20は、
図1に示したように、この電源電圧VPを駆動回路32に供給するようになっている。
【0031】
整流回路26は、トランス23の巻線23Cから出力された交流電圧を整流するように構成される。補助電源回路20は、スイッチング素子21がスイッチング動作を行うことにより生成されたパルス電圧を、巻線23Aから巻線23Cに伝送させる。巻線23Cおよび整流回路26は、フライバック方式で電力を伝送する。平滑回路27は、整流回路26により整流された電圧を平滑化し、平滑化された直流電圧を電圧V1として出力するように構成される。
【0032】
レギュレータ28は、電圧V1および電圧VLのうちの一方に基づいて電源電圧VDDを生成するように構成される。具体的には、レギュレータ28は、電圧V1が所望の電圧よりも低い場合には、電圧VLに基づいて電源電圧VDDを生成し、電圧V1が所望の電圧である場合には、この電圧V1に基づいて電源電圧VDDを生成する。そして、補助電源回路20は、
図1に示したように、この電源電圧VDDを制御回路40に供給するようになっている。
【0033】
ピークホールド回路29は、トランス23の巻線23Dから出力された交流電圧に基づいて、ピークホールド動作を行うことにより、交流電圧のピーク値に応じた検出電圧VH2を生成するように構成される。補助電源回路20は、スイッチング素子21がスイッチング動作を行うことにより生成されたパルス電圧を、巻線23Aから巻線23Dに伝送させる。巻線23Dおよびピークホールド回路29は、フォワード方式で電力を伝送する。すなわち、ピークホールド回路29により生成された検出電圧VH2は、電圧VHに比例した電圧である。そして、補助電源回路20は、
図1に示したように、この検出電圧VH2を制御回路40に供給するようになっている。
【0034】
駆動回路32は、補助電源回路20から供給された電源電圧VPに基づいて動作し、制御回路40から供給されたゲート信号GA1~GD1に基づいて、ゲート信号GA~GDをそれぞれ生成するように構成される。
【0035】
駆動回路34は、電圧VLを電源電圧として用いて動作し、制御回路40から供給されたゲート信号GE1,GF1に基づいて、ゲート信号GE,GFをそれぞれ生成するように構成される。なお、この例では、駆動回路34は、電圧VLを電源電圧として用いて動作するようにしたが、これに限定されるものではなく、補助電源回路20が生成した電源電圧VDDに基づいて動作してもよい。
【0036】
制御回路40は、補助電源回路20から供給された検出電圧VH2、電圧センサ18から供給された検出電圧VL2、および図示しないシステム制御部から供給された制御データCTLに基づいて、スイッチング回路12および整流回路14の動作を制御することにより、電力変換装置10の動作を制御するように構成される。具体的には、制御回路40は、検出電圧VH2,VL2に基づいてゲート信号GA1~GF1を生成し、このゲート信号GA1~GF1によりPWM(Pulse Width Modulation)制御を行うことにより、電力変換装置10の動作を制御するようになっている。制御回路40は、補助電源回路20から供給された電源電圧VDDに基づいて動作する。制御回路40は、例えば、マイクロコントローラなどを用いて構成される。制御回路40は、供給された検出電圧VH2,VL2をAD(Analog to Digital)変換し、AD変換されたデジタル値に基づいて処理を行う。以下、AD変換されたデジタル値を表すものとして、検出電圧VH2,VL2を適宜用いる。
【0037】
端子T21,T22は、電力変換装置10が生成した電圧を低圧バッテリBLに供給するように構成される。電力変換装置10の装置内において、端子T21は電圧線L21Bに接続され、端子T22は基準電圧線L22に接続される。また、端子T21は、低圧バッテリBLの正端子に接続され、端子T22は低圧バッテリBLの負端子に接続される。
【0038】
低圧バッテリBLは、電力変換装置10から供給された電力を蓄えるように構成される。
【0039】
この構成により、電力変換システム1では、高圧バッテリBHから供給された電力を変換し、変換された電力を低圧バッテリBLに供給する電力変換動作を行うようになっている。
【0040】
また、この電力変換システム1では、このような電力変換動作を開始する前の期間において、キャパシタ9をチャージする、いわゆるプリチャージ動作を行う機能をも有している。このプリチャージ動作では、スイッチSW1,SW2はオフ状態であり、制御回路40がスイッチング回路12および整流回路14の動作を制御することにより、電力変換システム1は、低圧バッテリBLの電力をキャパシタ9に供給する。これにより、電力変換装置10では、電力変換動作を行うためにスイッチSW1,SW2をオン状態にしたときに高圧バッテリBHからキャパシタ9に流れる突入電流を抑えることができるようになっている。
【0041】
図3は、制御回路40の一構成例を表すものである。制御回路40は、プリチャージ制御部50と、電力変換制御部42と、ゲート信号生成部43,44とを有している。
【0042】
プリチャージ制御部50は、電圧VLに応じた検出電圧VL2に基づいて、スイッチング回路12におけるスイッチング動作のデューティ比DP1,DP2、および整流回路14におけるスイッチング動作のデューティ比DS1,DS2を生成するように構成される。また、プリチャージ制御部50は、電圧VHに応じた検出電圧VH2に基づいて、デューティ比DP1,DS1と、デューティ比DP2,DS2とのうちのどちらが使用されるべきかを示すモード信号MODEを生成する機能をも有している。プリチャージ制御部50は、デューティ比生成部51~54と、しきい値生成部55と、比較部56とを有している。プリチャージ制御部50は、検出電圧VL2に基づいて推定された電圧VL、および検出電圧VH2に基づいて推定された電圧VHに基づいて処理を行う。
【0043】
デューティ比生成部51は、プリチャージ期間P1および電圧維持期間P2において、電圧VLに応じた検出電圧VL2に基づいて、スイッチング回路12におけるデューティ比DP1を生成するように構成される。具体的には、デューティ比生成部51は、プリチャージ期間P1において、電圧VLが大きいほどデューティ比DP1が小さくなるように、デューティ比DP1を生成する。デューティ比生成部51は、プリチャージ期間P1において、デューティ比DP1が徐々に大きくなるように、デューティ比DP1を生成する。また、デューティ比生成部51は、電圧維持期間P2において、電圧VLが大きいほどデューティ比DP1が小さくなるように、デューティ比DP1を生成するようになっている。
【0044】
デューティ比生成部52は、電圧維持期間P2において、電圧VLに応じた検出電圧VL2、および制御データCTLに含まれる、電圧VHの目標電圧指令値VHtargetに基づいて、スイッチング回路12におけるデューティ比DP2を生成するように構成される。デューティ比DP2は、電圧維持期間P2におけるデューティ比DP1よりも小さい。デューティ比生成部52は、電圧維持期間P2において、電圧VLが大きいほどデューティ比DP2が小さくなるように、デューティ比DP2を生成する。また、デューティ比生成部52は、電圧維持期間P2において、目標電圧指令値VHtargetが大きいほどデューティ比DP2が大きくなるように、デューティ比DP2を生成する。また、デューティ比生成部52は、プリチャージ期間P1では、デューティ比DP2を0(ゼロ)に維持するようになっている。
【0045】
デューティ比生成部53は、プリチャージ期間P1および電圧維持期間P2において、電圧VLに応じた検出電圧VL2に基づいて、整流回路14におけるデューティ比DS1を生成するように構成される。デューティ比DS1は、プリチャージ期間P1および電圧維持期間P2において、デューティ比DP1よりも大きい。デューティ比生成部53は、プリチャージ期間P1において、電圧VLが大きいほどデューティ比DS1が小さくなるように、デューティ比DS1を生成する。デューティ比生成部53は、プリチャージ期間P1において、デューティ比DS1が徐々に大きくなるように、デューティ比DS1を生成する。また、デューティ比生成部53は、電圧維持期間P2において、電圧VLが大きいほどデューティ比DS1が小さくなるように、デューティ比DS1を生成するようになっている。
【0046】
デューティ比生成部54は、電圧維持期間P2において、電圧VLに応じた検出電圧VL2、および制御データCTLに含まれる、電圧VHの目標電圧指令値VHtargetに基づいて、整流回路14におけるデューティ比DS2を生成するように構成される。デューティ比DS2は、電圧維持期間P2におけるデューティ比DS1よりも小さく、電圧維持期間P2におけるデューティ比DP2より大きい。デューティ比生成部54は、電圧維持期間P2において、電圧VLが大きいほどデューティ比DS2が小さくなるように、デューティ比DS2を生成する。また、デューティ比生成部54は、電圧維持期間P2において、目標電圧指令値VHtargetが大きいほどデューティ比DS2が大きくなるように、デューティ比DS2を生成する。また、デューティ比生成部54は、プリチャージ期間P1では、デューティ比DS2を0(ゼロ)に維持するようになっている。
【0047】
しきい値生成部55は、プリチャージ期間P1および電圧維持期間P2において、制御データCTLに含まれる、電圧VHの目標電圧指令値VHtargetに基づいて、しきい値THtop,THbotを生成するように構成される。しきい値THtopは、電圧VHの上側のしきい値であり、しきい値THbotは、電圧VHの下側のしきい値である。
【0048】
図4は、しきい値THtop,THbotの一例を表すものである。この例では、しきい値生成部55は、プリチャージ期間P1が開始するタイミングt1以降において、時間の経過に応じてしきい値THtopを一次関数的に増加させ、タイミングt3以降において、しきい値THtopの変化を停止させる。このタイミングt3以降のしきい値THtopの値は、目標電圧指令値VHtargetである。なお、この例では、しきい値THtopの値は、タイミングt3以降において、目標電圧指令値VHtargetと同じ値にしたが、これに限定されるものではなく、例えば、目標電圧指令値VHtargetに値ΔVを加算した値(VHtarget+ΔV)であってもよい。ここで、ΔVは、目標電圧指令値VHtargetに応じた任意の値である。また、しきい値生成部55は、タイミングt1より後のタイミングt2以降において、時間の経過に応じてしきい値THbotを一次関数的に増加させ、タイミングt3より後のタイミングt4以降において、しきい値THbotの変化を停止させる。
【0049】
後述するように、制御回路40は、プリチャージ期間P1および電圧維持期間P2において、電圧VHがしきい値THbotおよびしきい値THtopの間の電圧範囲内の電圧になるように、電力変換装置10の動作を制御する。プリチャージ期間P1では、電圧VHが、目標電圧指令値VHtargetに向かって上昇し、この例ではタイミングt5において、電圧VHが目標電圧指令値VHtargetに到達する。そして、電圧維持期間P2では、電圧VHが目標電圧指令値VHtarget付近に維持される。そして、電圧維持期間P2の後に、スイッチSW1,SW2がオン状態になることにより、高圧バッテリBHがキャパシタ9に接続される。これにより、電力変換動作を行う期間(電力変換期間)が開始するようになっている。
【0050】
比較部56(
図3)は、プリチャージ期間P1および電圧維持期間P2において、電圧VHに応じた検出電圧VH2に基づいて、電圧VHと、しきい値THtop,THbotとを比較することにより、モード信号MODEを生成するように構成される。
【0051】
図5は、比較部56における比較動作の一特性例を表すものである。比較部56における比較特性は、しきい値THtopおよびしきい値THbotの差をヒステリシス量HYSとするヒステリシス特性を示す。
【0052】
電圧VHがしきい値THbotよりも低い場合には、比較部56はモード信号MODEを高レベルにする。そして、電圧VHが徐々に高くなり、電圧VHがしきい値THtopに到達したことを含む所定の条件を満たすと、比較部56はモード信号MODEを高レベルから低レベルに変化させる。この例では、電圧VHが5回連続してしきい値THtopを上回った場合に、比較部56はモード信号MODEを高レベルから低レベルに変化させる。
【0053】
一方、電圧VHがしきい値THtopより高い場合には、比較部56はモード信号MODEを低レベルにする。そして、電圧VHが徐々に低くなり、電圧VHがしきい値THbotに到達したことを含む所定の条件を満たすと、比較部56はモード信号MODEを低レベルから高レベルに変化させる。この例では、電圧VHが5回連続してしきい値THbotを下回った場合に、比較部56はモード信号MODEを低レベルから高レベルに変化させる。
【0054】
図6は、比較部56の一動作例を表すものである。例えば、タイミングt11において、モード信号MODEは低レベルから高レベルに変化する。後述するように、モード信号MODEが高レベルになると、制御回路40は、デューティ比DP1,DS1に基づいてゲート信号GA1~GF1を生成する。電力変換装置10は、ゲート信号GA1~GF1に応じたゲート信号GA~GFに基づいてスイッチング動作を行い、低圧バッテリBLの電力をキャパシタ9に供給する。これにより、電圧VHは上昇する。そして、電圧VHがしきい値THtopに到達し、電圧VHが5回連続してしきい値THtopを上回ったタイミングt12において、比較部56は、モード信号MODEを高レベルから低レベルに変化させる。モード信号MODEが低レベルになると、制御回路40は、デューティ比DP2,DS2に基づいてゲート信号GA1~GF1を生成する。電力変換装置10は、ゲート信号GA1~GF1に応じたゲート信号GA~GFに基づいてスイッチング動作を行う。これにより、電圧VHが低下する。そして、電圧VHがしきい値THbotに到達し、電圧VHが5回連続してしきい値THbotを下回ったタイミングt13において、比較部56は、モード信号MODEを低レベルから高レベルに変化させる。これ以降の動作も同様である。
【0055】
比較部56は、このようにして、プリチャージ期間P1および電圧維持期間P2において、検出電圧VH2に基づいて、電圧VHと、しきい値THtop,THbotとを比較することにより、モード信号MODEを生成するようになっている。
【0056】
電力変換制御部42(
図3)は、電力変換期間において、検出電圧VH2,VL2、および図示しないシステム制御部から供給された制御データCTLに基づいて、スイッチング回路12におけるスイッチング動作のデューティ比DP3、および整流回路14におけるスイッチング動作のデューティ比DS3を生成するように構成される。
【0057】
ゲート信号生成部43は、プリチャージ制御部50により生成されたデューティ比DP1,DP2、電力変換制御部42により生成されたデューティ比DP3、およびプリチャージ制御部50により生成されたモード信号MODEに基づいて、ゲート信号GA1~GD1を生成するように構成される。具体的には、ゲート信号生成部43は、プリチャージ期間P1および電圧維持期間P2では、モード信号MODEが高レベルである場合に、デューティ比DP1に基づいてゲート信号GC1,GD1を生成するとともに、ゲート信号GA1,GB1を低レベルに維持する。ゲート信号生成部43は、モード信号MODEが低レベルである場合に、デューティ比DP2に基づいてゲート信号GC1,GD1を生成するとともに、ゲート信号GA1,GB1を低レベルに維持する。また、ゲート信号生成部43は、電力変換期間では、デューティ比DP3に基づいてゲート信号GA1~GD1を生成するようになっている。
【0058】
ゲート信号生成部44は、プリチャージ制御部50により生成されたデューティ比DS1,DS2、電力変換制御部42により生成されたデューティ比DS3、およびプリチャージ制御部50により生成されたモード信号MODEに基づいて、ゲート信号GE1,GF1を生成するように構成される。具体的には、ゲート信号生成部44は、プリチャージ期間P1および電圧維持期間P2では、モード信号MODEが高レベルである場合に、デューティ比DS1に基づいてゲート信号GE1,GF1を生成し、モード信号MODEが低レベルである場合に、デューティ比DS2に基づいてゲート信号GE1,GF1を生成する。また、ゲート信号生成部44は、電力変換期間では、デューティ比DS3に基づいてゲート信号GE1,GF1を生成するようになっている。
【0059】
ここで、端子T11,T12は、本開示の一実施の形態における「第1の電力端子」の一具体例に対応する。端子T11は、本開示の一実施の形態における「第1の接続端子」の一具体例に対応する。端子T12は、本開示の一実施の形態における「第2の接続端子」の一具体例に対応する。スイッチング回路12は、本開示の一実施の形態における「スイッチング回路」の一具体例に対応する。ゲート信号GA~GDは、本開示の一実施の形態における「第1の駆動信号」の一具体例に対応する。トランス13は、本開示の一実施の形態における「トランス」の一具体例に対応する。巻線13Aは、本開示の一実施の形態における「第1の巻線」の一具体例に対応する。巻線13Bは、本開示の一実施の形態における「第2の巻線」の一具体例に対応する。整流回路14は、本開示の一実施の形態における「整流回路」の一具体例に対応する。ゲート信号GE~GFは、本開示の一実施の形態における「第2の駆動信号」の一具体例に対応する。平滑回路15は、本開示の一実施の形態における「平滑回路」の一具体例に対応する。駆動回路32,34は、本開示の一実施の形態における「駆動回路」の一具体例に対応する。駆動回路32は、本開示の一実施の形態における「第1の駆動回路」の一具体例に対応する。駆動回路34は、本開示の一実施の形態における「第2の駆動回路」の一具体例に対応する。制御回路40は、本開示の一実施の形態における「制御回路」の一具体例に対応する。しきい値THbotは、本開示の一実施の形態における「第1のしきい値」の一具体例に対応する。しきい値THtopは、本開示の一実施の形態における「第2のしきい値」の一具体例に対応する。デューティ比DS1は、本開示の一実施の形態における「第1のデューティ比」の一具体例に対応する。デューティ比DS2は、本開示の一実施の形態における「第2のデューティ比」の一具体例に対応する。デューティ比DP1は、本開示の一実施の形態における「第3のデューティ比」の一具体例に対応する。デューティ比DP2は、本開示の一実施の形態における「第4のデューティ比」の一具体例に対応する。補助電源回路20は、本開示の一実施の形態における「電源回路」の一具体例に対応する。電源電圧VPは、本開示の一実施の形態における「電源電圧」の一具体例に対応する。検出電圧VH2は、本開示の一実施の形態における「検出電圧」の一具体例に対応する。高圧バッテリBHは、本開示の一実施の形態における「第1のバッテリ」の一具体例に対応する。キャパシタ9は、本開示の一実施の形態における「キャパシタ」の一具体例に対応する。スイッチSW1は、本開示の一実施の形態における「第1のスイッチ」の一具体例に対応する。スイッチSW2は、本開示の一実施の形態における「第2のスイッチ」の一具体例に対応する。低圧バッテリBLは、本開示の一実施の形態における「第2のバッテリ」の一具体例に対応する。
【0060】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の電力変換システム1の動作および作用について説明する。
【0061】
(全体動作概要)
まず、
図1を参照して、電力変換システム1の全体動作概要を説明する。電力変換システム1が始動する際、スイッチSW1,SW2はオフ状態である。まず、プリチャージ期間P1および電圧維持期間P2において、制御回路40は、電圧VHに応じた検出電圧VH2、電圧VLに応じた検出電圧VL2、および制御データCTLに基づいてゲート信号GC1~GF1を生成するとともにゲート信号GA1,GB1を低レベルに維持する。電力変換装置10は、ゲート信号GA1~GF1に応じたゲート信号GA~GFに基づいてスイッチング動作を行い、低圧バッテリBLの電力をキャパシタ9に供給する。その結果、キャパシタ9がチャージされ、電圧VHは上昇し、目標電圧指令値VHtargetが示す電圧付近に維持される。そして、電力変換期間において、スイッチSW1,SW2がオン状態になり、制御回路40は、検出電圧VH2,VL2に基づいてゲート信号GA1~GF1を生成する。電力変換装置10は、ゲート信号GA1~GF1に応じたゲート信号GA~GFに基づいてスイッチング動作を行い、高圧バッテリBHから供給された電力を変換し、変換された電力を低圧バッテリBLに供給する。
【0062】
(詳細動作)
図7は、電力変換システム1におけるプリチャージ動作の一例を表すものであり、(A)はモード信号MODEの波形を示し、(B)はデューティ比DP1,DS1を示し、(C)はデューティ比DP2,DS2を示し、(D)は電圧VHの波形およびしきい値THtop,THbotを示す。
【0063】
この例では、タイミングt21においてプリチャージ期間P1が開始する。プリチャージ制御部50は、このプリチャージ期間P1においてデューティ比DP1,DS1が徐々に増加するようにデューティ比DP1,DS1を生成する(
図7(B))。この例では、プリチャージ制御部50は、例えば、デューティ比DS1が0.5以下になるように、そしてデューティ比DP1がデューティ比DS1以下になるように、デューティ比DP1,DS1を生成する。また、プリチャージ制御部50は、デューティ比DP2,DS2を0(ゼロ)に維持する(
図7(C))。
【0064】
また、プリチャージ制御部50のしきい値生成部55は、プリチャージ期間P1においてしきい値THtop,THbotが徐々に増加するようにしきい値THtop,THbotを生成する(
図7(D))。比較部56は、検出電圧VH2に基づいて、電圧VHと、しきい値THtop,THbotとを比較することにより、モード信号MODEを生成する(
図7(A))。ゲート信号生成部43は、デューティ比DP1,DP2およびこのモード信号MODEに基づいてゲート信号GA1~GD1を生成する。ゲート信号生成部44は、デューティ比DS1,DS2およびこのモード信号MODEに基づいてゲート信号GE1~GF1を生成する。
【0065】
図8は、プリチャージ期間P1におけるゲート信号GA1~GF1の一例を表すものであり、(A)はモード信号MODEの波形を示し、(B)~(G)はゲート信号GA1~GF1の波形をそれぞれ示す。
【0066】
モード信号MODEが高レベルである場合には、ゲート信号生成部43は、デューティ比DP1に基づいてパルスを含むゲート信号GC1,GD1を生成し、ゲート信号GA1,GB1を低レベルに維持する。また、ゲート信号生成部44は、デューティ比DS1に基づいてパルスを含むゲート信号GE1,GF1を生成する。
【0067】
モード信号MODEが低レベルである場合には、ゲート信号生成部43は、デューティ比DP2に基づいてゲート信号GA1~GD1を低レベルに維持する。すなわち、
図7に示したように、デューティ比DP2は0(ゼロ)であるので、モード信号MODEが低レベルである場合に、ゲート信号GC1,GD1は低レベルに維持される(
図8(D),(E))。ゲート信号生成部44は、デューティ比DS2に基づいてゲート信号GE1,GF1を低レベルに維持する。すなわち、
図7に示したように、デューティ比DS2は0(ゼロ)であるので、モード信号MODEが低レベルである場合に、ゲート信号GE1,GF1は低レベルに維持される(
図8(F),(G))。
【0068】
図7に示したように、タイミングt21において、電力変換システム1はプリチャージ動作を開始する。このタイミングt21において、比較部56は、モード信号MODEを低レベルから高レベルに変化させる(
図7(A))。ゲート信号生成部43は、デューティ比DP1(
図7(B))に基づいて、パルスを含むゲート信号GC1,GD1を生成し、ゲート信号生成部44は、デューティ比DS1(
図7(B))に基づいてパルスを含むゲート信号GE1,GF1を生成する。電力変換装置10は、ゲート信号GA1~GF1に応じたゲート信号GA~GFに基づいてスイッチング動作を行い、低圧バッテリBLの電力をキャパシタ9に供給する。これにより、電圧VHは上昇する(
図7(D))。
【0069】
電圧VHがしきい値THtopに到達し、タイミングt22において、電圧VHが5回連続してしきい値THtopを上回ると(
図7(D))、比較部56は、モード信号MODEを高レベルから低レベルに変化させる(
図7(A))。ゲート信号生成部43は、デューティ比DP2(
図7(C))に基づいてゲート信号GC1,GD1を低レベルに維持し、ゲート信号生成部44は、デューティ比DS2(
図7(C))に基づいてゲート信号GE1,GF1を低レベルに維持する。これにより、電力変換装置10はスイッチング動作を停止し、電圧VHは低下する(
図7(D))。
【0070】
電圧VHがしきい値THbotに到達し、タイミングt23において、電圧VHが5回連続してしきい値THbotを下回ると(
図7(D))、比較部56は、モード信号MODEを低レベルから高レベルに変化させる(
図7(A))。ゲート信号生成部43は、デューティ比DP1(
図7(B))に基づいてパルスを含むゲート信号GC1,GD1を生成し、ゲート信号生成部44は、デューティ比DS1(
図7(B))に基づいてパルスを含むゲート信号GE1,GF1を生成する。電力変換装置10は、ゲート信号GA1~GF1に応じたゲート信号GA~GFに基づいてスイッチング動作を行い、低圧バッテリBLの電力をキャパシタ9に供給する。これにより、電圧VHは上昇する(
図7(D))。
【0071】
電圧VHがしきい値THtopに到達し、タイミングt24において、電圧VHが5回連続してしきい値THtopを上回ると(
図7(D))、比較部56は、モード信号MODEを高レベルから低レベルに変化させる(
図7(A))。
【0072】
電力変換システム1はこのタイミングt22~t24の動作を繰り返す。ゲート信号生成部43,44は、モード信号MODEが高レベルである期間において、パルスを含むゲート信号GC1~GF1を生成し、モード信号MODEが低レベルである期間において低レベルであるゲート信号GC1~GF1を生成する。このように、電力変換システム1は、プリチャージ期間P1において間欠的にスイッチング動作を行う。その結果、電圧VHは、しきい値THbotおよびしきい値THtopの間の電圧範囲付近において上昇および下降を繰り返すように制御される。しきい値THtop,THbotは、
図7(D)に示したように、プリチャージ期間P1において、時間の経過に応じて徐々に増加するようにそれぞれ設定されるので、電圧VHは、しきい値THtop,THbotに導かれ上昇する。
【0073】
図9は、プリチャージ期間P1のうちの、モード信号MODEが高レベルである期間における、プリチャージ動作のシミュレーション波形例を表すものであり、(A)はゲート信号GE1,GF1の波形を示し、(B)はゲート信号GC1,GD1の波形を示し、(C)はキャパシタ9に流れ込む電流(チャージ電流ICHG)の波形を示し、(D)はトランス13の励磁電流IMの波形を示し、(E)はチョークインダクタ16において電圧線L21Bから電圧線L21Aに流れる電流(インダクタ電流IL)の波形を示し、(F)はトランス13の巻線13Bにおける、ノードN5を基準としたノードN4における電圧(トランス電圧VTR2)の波形を示し、(G)は電圧VHの波形を示す。
図9において、Tは、スイッチング動作の周期を示す。
【0074】
プリチャージ動作では、制御回路40は、デューティ比DP1に基づいてゲート信号GC1,GD1を生成し、デューティ比DS1に基づいてゲート信号GE1,GF1を生成する。デューティ比DP1は、周期T(タイミングt41~t43の時間長)を“1”とした場合におけるゲート信号GC1,GD1のそれぞれのパルス幅を示し、デューティ比DS1は、周期Tを“1”とした場合におけるゲート信号GE1,GF1のそれぞれのパルス幅を示す。制御回路40は、
図9(A),(B)に示したように、タイミングt41において、ゲート信号GC1,GF1を低レベルから高レベルに変化させる。そして、制御回路40は、このタイミングt41からデューティ比DP1に対応する時間(デューティ比DP1×周期T)が経過したタイミングでゲート信号GC1を高レベルから低レベルに変化させ、このタイミングt41からデューティ比DS1に対応する時間(デューティ比DS1×周期T)が経過したタイミングでゲート信号GF1を高レベルから低レベルに変化させる。次に、制御回路40は、タイミングt42において、ゲート信号GD1,GE1を低レベルから高レベルに変化させる。そして、制御回路40は、このタイミングt42からデューティ比DP1に対応する時間(デューティ比DP1×周期T)が経過したタイミングでゲート信号GD1を高レベルから低レベルに変化させ、このタイミングt42からデューティ比DS1に対応する時間(デューティ比DS1×周期T)が経過したタイミングでゲート信号GE1を高レベルから低レベルに変化させる。制御回路40は、図示していないが、ゲート信号GA1,GB1を低レベルに維持する。これにより、
図9(C)に示したようなチャージ電流ICHGがキャパシタ9に流れ込み、電圧VHが徐々に上昇する(
図9(G))。
【0075】
図7の例では、しきい値生成部55は、タイミングt25以降において、しきい値THtopを、目標電圧指令値VHtargetが示す値に設定するとともに、しきい値THbotを目標電圧指令値VHtargetに応じた値に設定する(
図7(D))。そして、タイミングt26において、電圧VHは、目標電圧指令値VHtargetであるしきい値THtopを5回連続して上回る(
図7(D))。これにより、プリチャージ期間P1が終了し、電圧維持期間P2が開始する。
【0076】
電圧維持期間P2では、プリチャージ制御部50は、デューティ比DP1,DS1,DP2,DS2を、電圧VLに応じた値にそれぞれ設定する(
図7(B),(C))。この例では、プリチャージ制御部50は、デューティ比DP1を、タイミングt26の直前の値よりもやや低い値に設定するとともに、デューティ比DS1を、タイミングt26の直前の値よりもやや低い値に設定する。また、プリチャージ制御部50は、デューティ比DP2を、デューティ比DP1よりも小さい値に設定するとともに、デューティ比DS2を、デューティ比DS1よりも小さい値に設定する。
【0077】
図10は、電圧維持期間P2におけるゲート信号GA1~GF1の一例を表すものであり、(A)はモード信号MODEの波形を示し、(B)~(G)はゲート信号GA1~GF1の波形をそれぞれ示す。
【0078】
モード信号MODEが高レベルである場合には、ゲート信号生成部43は、デューティ比DP1に基づいてパルスを含むゲート信号GC1,GD1を生成し、ゲート信号GA1,GB1を低レベルに維持する。また、ゲート信号生成部44は、デューティ比DS1に基づいてパルスを含むゲート信号GE1,GF1を生成する。
【0079】
モード信号MODEが低レベルである場合には、ゲート信号生成部43は、デューティ比DP2に基づいてパルスを含むゲート信号GC1,GD1を生成し、ゲート信号GA1,GB1を低レベルに維持する。
図7に示したように、デューティ比DP2はデューティ比DP1よりも低いので、ゲート信号生成部43は、モード信号MODEが低レベルである場合におけるゲート信号GC1,GD1のパルス幅を、モード信号MODEが高レベルである場合におけるゲート信号GC1,GD1のパルス幅よりも狭くする(
図10(D),(E))。ゲート信号生成部44は、デューティ比DS2に基づいてパルスを含むゲート信号GE1,GF1を生成する。
図7に示したように、デューティ比DS2はデューティ比DS1よりも低いので、ゲート信号生成部44は、モード信号MODEが低レベルである場合におけるゲート信号GE1,GF1のパルス幅を、モード信号MODEが高レベルである場合におけるゲート信号GE1,GF1のパルス幅よりも狭くする(
図10(F),(G))。
【0080】
図7に示したように、タイミングt26において電圧VHがしきい値THtopを5回連続して上回ると(
図7(D))、比較部56は、モード信号MODEを高レベルから低レベルに変化させる(
図7(A))。ゲート信号生成部43は、デューティ比DP2(
図7(C))に基づいてパルスを含むゲート信号GC1,GD1を生成し、ゲート信号生成部44は、デューティ比DS2(
図7(C))に基づいてパルスを含むゲート信号GE1,GF1を生成する。電力変換装置10は、このゲート信号GA1~GF1に応じたゲート信号GA~GFに基づいてスイッチング動作を行う。デューティ比DP2,DS2は低く、2次側回路から1次側回路への伝送電力が小さいため、電圧VHは低下する(
図7(D))。すなわち、このタイミングt26~t27の期間では、2次側回路から1次側回路への伝送電力は、端子T11,T12から電力供給を受けて動作する回路(スイッチング回路12および補助電源回路20)の消費電力よりも小さい。よって、電圧VHは低下する。
【0081】
電圧VHがしきい値THbotに到達し、タイミングt27において、電圧VHが5回連続してしきい値THbotを下回ると(
図7(D))、比較部56は、モード信号MODEを低レベルから高レベルに変化させる(
図7(A))。ゲート信号生成部43は、デューティ比DP1(
図7(B))に基づいてパルスを含むゲート信号GC1,GD1を生成し、ゲート信号生成部44は、デューティ比DS1(
図7(B))に基づいてパルスを含むゲート信号GE1,GF1を生成する。電力変換装置10は、このゲート信号GA1~GF1に応じたゲート信号GA~GFに基づいてスイッチング動作を行い、低圧バッテリBLの電力をキャパシタ9に供給し、電圧VHが上昇する(
図7(D))。すなわち、このタイミングt27~t28の期間では、2次側回路から1次側回路への伝送電力は、端子T11,T12から電力供給を受けて動作する回路の消費電力よりも大きい。よって、電圧VHは上昇する。
【0082】
電圧VHがしきい値THtopに到達し、タイミングt28において、電圧VHが5回連続してしきい値THtopを上回ると(
図7(D))、比較部56は、モード信号MODEを高レベルから低レベルに変化させる(
図7(A))。
【0083】
電力変換システム1は、このタイミングt26~t28の動作を繰り返す。制御回路40は、モード信号MODEが高レベルである期間においてパルス幅が広いパルスを含むゲート信号GC1~GF1を生成する。これにより、2次側回路から1次側回路への伝送電力が、端子T11,T12から電力供給を受けて動作する回路の消費電力より大きくなるので、電圧VHは上昇する。そして、制御回路40は、モード信号MODEが低レベルである期間においてパルス幅が狭いパルスを含むゲート信号GC1~GF1を生成する。これにより、2次側回路から1次側回路への伝送電力が、端子T11,T12から電力供給を受けて動作する回路の消費電力より小さくなるので、電圧VHは低下する。その結果、電圧VHは、しきい値THbotおよびしきい値THtopの間の電圧範囲付近において、上昇および下降を繰り返すように制御される。しきい値THtop,THbotは、電圧維持期間P2において、目標電圧指令値VHtargetに応じた値に設定されるので、電圧VHは、目標電圧指令値VHtargetが示す電圧付近に維持される。
【0084】
次に、この電圧維持期間P2における動作について、より詳細に説明する。
【0085】
図11は、電圧維持期間P2における電力変換システム1の一動作例を表すものであり、(A)は電圧VHの波形を示し、(B)は検出電圧VH2に基づいて推定された電圧VH(推定電圧VHe)の波形を示し、(C)はモード信号MODEの波形を示し、(D)はスイッチング回路12のデューティ比DP、および整流回路14のデューティ比DSを示す。
図11(A),(B)には、説明の便宜上、しきい値THtop,THbotをも描いている。デューティ比DPは、モード信号MODEが高レベルである場合におけるデューティ比DP1と、モード信号MODEが低レベルである場合におけるデューティ比DP2とを含む。デューティ比DSは、モード信号MODEが高レベルである場合におけるデューティ比DS1と、モード信号MODEが低レベルである場合におけるデューティ比DS2とを含む。
【0086】
この例では、タイミングt51以前において、モード信号MODEは高レベルであり、電圧VHは上昇している(
図11(A),(C))。補助電源回路20は、この電圧VHに基づいて検出電圧VH2を生成するので、推定電圧VHeの波形は、電圧VHの波形よりも、この補助電源回路20の遅延時間(時間td)の分だけ遅れている(
図11(A),(B))。例えば、タイミングt51において電圧VHがしきい値THtopを上回ると、そのタイミングt51から時間tdだけ遅れたタイミングt52において、推定電圧VHeがしきい値THtopを上回る。
【0087】
例えば、タイミングt53において、推定電圧VHeが5回連続してしきい値THtopを上回ると(
図11(B))、制御回路40は、このタイミングt53において、モード信号MODEを高レベルから低レベルに変化させる(
図11(C))。これに応じて、制御回路40は、デューティ比DPをデューティ比DP1から、このデューティ比DP1よりも低いデューティ比DP2に変化させ、デューティ比DSをデューティ比DS1から、このデューティ比DS1よりも低いデューティ比DS2に変化させる。デューティ比DP,DSがともに低くなり、2次側回路から1次側回路への伝送電力が小さくなるので、このタイミングt53において、電圧VHは低下し始める(
図11(A))。そして、そのタイミングt53から時間tdだけ遅れたタイミングt54において、推定電圧VHeが低下し始める。そして、電圧VHおよび推定電圧VHeは、徐々に低下していく。
【0088】
その後、タイミングt55において、推定電圧VHeが5回連続してしきい値THbotを下回ると(
図11(B))、制御回路40は、このタイミングt55において、モード信号MODEを低レベルから高レベルに変化させる(
図11(C))。これに応じて、制御回路40は、デューティ比DPをデューティ比DP2からデューティ比DP1に変化させ、デューティ比DSをデューティ比DS2からデューティ比DS1に変化させる。デューティ比DP,DSがともに高くなり、2次側回路から1次側回路への伝送電力が大きくなるので、このタイミングt55において、電圧VHは上昇し始める(
図11(A))。そして、そのタイミングt55から時間tdだけ遅れたタイミングt56において、推定電圧VHeが上昇し始める。
【0089】
このように、電力変換システム1では、電圧維持期間P2において、
図10に示したように、モード信号MODEを低レベルにした場合でもスイッチング回路12および整流回路14がスイッチング動作を継続して行うようにした。これにより、電力変換システム1では、以下に参考例と比較して説明するように、電圧VHのリップルを小さくすることができる。
【0090】
(参考例)
次に、参考例に係る電力変換システムについて説明する。本参考例は、電圧維持期間P2におけるスイッチング動作が、本実施の形態の場合と異なるものである。すなわち、本実施の形態では、
図10に示したように、モード信号MODEが低レベルである期間において、スイッチング回路12および整流回路14がスイッチング動作を継続して行うが、本参考例では、モード信号MODEが低レベルである期間において、プリチャージ期間P1の場合(
図8)と同様に、スイッチング回路12および整流回路14がスイッチング動作を停止する。
【0091】
図12は、本参考例に係る電力変換システムの一動作例を表すものであり、(A)は電圧VHの波形を示し、(B)は検出電圧VH2に基づいて推定された電圧VH(推定電圧VHe)の波形を示し、(C)はモード信号MODEの波形を示し、(D)はスイッチング回路12のデューティ比DP、および整流回路14のデューティ比DSを示す。この
図12は、本実施の形態に係る
図11に対応している。
【0092】
この例では、タイミングt61以前において、モード信号MODEは高レベルであり、電圧VHは上昇している(
図12(A),(C))。補助電源回路20は、この電圧VHに基づいて検出電圧VH2を生成するので、推定電圧VHeの波形は、電圧VHの波形よりも、この補助電源回路20の遅延時間(時間td)の分だけ遅れている(
図12(A),(B))。例えば、タイミングt61において電圧VHがしきい値THtopを上回ると、そのタイミングt61から時間tdだけ遅れたタイミングt52において、推定電圧VHeがしきい値THtopを上回る。
【0093】
例えば、タイミングt63において、推定電圧VHeが5回連続してしきい値THtopを上回ると(
図12(B))、制御回路40は、このタイミングt63において、モード信号MODEを高レベルから低レベルに変化させる(
図12(C))。これに応じて、制御回路40は、デューティ比DPをデューティ比DP1から0(ゼロ)に変化させ、デューティ比DSをデューティ比DS1から0(ゼロ)に変化させる。これにより、スイッチング回路12および整流回路14がスイッチング動作を停止するので、2次側回路から1次側回路への電力伝送が停止され、このタイミングt63において、電圧VHは低下し始める(
図12(A))。電圧VHが低下する際の勾配は、本実施の形態の場合(
図11)よりも大きい。すなわち、この参考例では、2次側回路から1次側回路への電力伝送が停止しているので、電圧VHは、本実施の形態の場合(
図11)に比べて急速に低下する。そして、そのタイミングt63から時間tdだけ遅れたタイミングt64において、推定電圧VHeが低下し始める。
【0094】
その後、タイミングt65において、推定電圧VHeが5回連続してしきい値THbotを下回ると(
図12(B))、制御回路40は、このタイミングt65において、モード信号MODEを低レベルから高レベルに変化させる(
図12(C))。これに応じて、制御回路40は、デューティ比DPを0(ゼロ)からデューティ比DP1に変化させ、デューティ比DSを0(ゼロ)からデューティ比DS1に変化させる。これにより、スイッチング回路12および整流回路14がスイッチング動作を開始し、このタイミングt65において、電圧VHは上昇し始める(
図12(A))。
【0095】
このように、タイミングt65において、スイッチング回路12は、スイッチング動作を開始する。駆動回路32は、このスイッチング回路12を駆動する。補助電源回路20は、この駆動回路32に電源電圧VPを供給する。よって、タイミングt65において、スイッチング回路12がスイッチング動作を開始すると、このタイミングt65において補助電源回路20の負荷が重くなる。これにより、このタイミングt65において、例えば、電源電圧VP,VDDが過渡的に低下し、検出電圧VH2が過渡的に低下する。このように検出電圧VH2が過渡的に低下することにより、推定電圧VHeもまた過渡的に低下する(
図12(B))。そして、この例では、タイミングt66において、推定電圧VEeは上昇し始める。
【0096】
このように、参考例に係る電力変換システムでは、モード信号MODEが低レベルである期間において、スイッチング回路12および整流回路14がスイッチング動作を停止する。よって、電圧VHが低下する際の勾配が大きい。よって、例えば、電圧VHがしきい値THbotを下回る際の電圧幅ΔV1が大きいので(
図12(A))、電圧VHのリップルが、しきい値THtop,THbotにより想定されたリップルよりも大きくなってしまう。また、タイミングt65において、推定電圧VHeが過渡的に低下するので、推定電圧VHeが上昇すべき、しきい値THtopまでの電圧幅ΔV2が大きくなる(
図12(B))。この場合には、モード信号MODEが高レベルである時間が長くなるので、電圧VHの変動幅が大きくなる。その結果、電圧VHのリップルが、しきい値THtop,THbotにより想定されたリップルよりも大きくなってしまう。
【0097】
一方、本実施の形態に係る電力変換システム1では、
図10に示したように、モード信号MODEが低レベルである期間、およびモード信号MODEが高レベルである期間において、スイッチング回路12および整流回路14がスイッチング動作を継続して行う。制御回路40は、モード信号MODEを低レベルである期間において、デューティ比DPをデューティ比DP1よりも低いデューティ比DP2に設定し、デューティ比DSをデューティ比DS1よりも低いデューティ比DS2に設定する。これにより、電力変換システム1は、2次側回路から1次側回路への電力伝送を停止しないので、電圧VHが低下する際の勾配を小さくすることができる。これにより、電力変換システム1では、例えば、電圧VHがしきい値THbotを下回る際の電圧幅ΔV1(
図11(A))を小さくすることができ、電圧VHのリップルを小さくすることができる。
【0098】
また、電力変換システム1では、モード信号MODEが低レベルである期間、およびモード信号MODEが高レベルである期間において、スイッチング回路12および整流回路14がスイッチング動作を継続して行う。その際、スイッチング周波数は変化しないので、補助電源回路20の負荷は変化しない。よって、例えば参考例の場合のように、推定電圧VHeが過渡的に低下しない。これにより、電力変換システム1では、電圧VHの変動幅を抑えることができるので、電圧VHのリップルを小さくすることができる。
【0099】
このように、電力変換システム1では、第1の電力端子(端子T11,T12)と、第1の電力端子(端子T11,T12)に接続され、第1の駆動信号(ゲート信号GA~GD)に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有するスイッチング回路12と、スイッチング回路12に接続された第1の巻線(巻線13A)と、第2の巻線(巻線13B)とを有するトランス13と、第2の巻線(巻線13B)に接続され、第2の駆動信号(ゲート信号GE,GF)に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有する整流回路14と、整流回路14に接続された平滑回路15と、平滑回路15に接続された第2の電力端子(端子T21,T22)と、スイッチング回路12および整流回路14の動作を制御可能な制御回路40と、制御回路40からの指示に基づいて第1の駆動信号および第2の駆動信号を生成可能な駆動回路32,34とを備えるようにした。制御回路40は、第1の電力端子(端子T11,T12)から第2の電力端子(端子T21,T22)に向かって電力を供給する前において、第1の動作および第2の動作を交互に行うことが可能であり、第1の動作において、第2の電力端子(端子T21,T22)から第1の電力端子(端子T11,T12)に対して第1の電力を供給して第1の電力端子(端子T11,T12)における電圧VHが上昇するように、スイッチング回路12および整流回路14の動作を制御可能であり、第2の動作において、第2の電力端子(端子T21,T22)から第1の電力端子(端子T11,T12)に対して第1の電力よりも小さい第2の電力を供給して第1の電力端子(端子T11,T12)における電圧VHが下降するように、スイッチング回路12および整流回路14の動作を制御可能なようにした。このように、電力変換システム1では、例えば、モード信号MODEが高レベルである期間において、端子T21,T22から端子T11,T12に対して、第1の電力を供給し、モード信号MODEが低レベルである期間において、端子T21,T22から端子T11,T12に対して、第1の電力よりも小さい第2の電力を供給することができる。これにより、電力変換システム1では、電圧維持期間P2において、電圧VHのリップルを小さくすることができる。
【0100】
また、電力変換システム1では、制御回路40は、第1の電力端子(端子T11,T12)における電圧VHの電圧値が第1のしきい値(しきい値THbot)より小さいことを含む所定の条件を満たした場合に、第1の動作を開始可能であり、第1の電力端子(端子T11,T12)における電圧VHの電圧値が第2のしきい値(しきい値THtop)より大きいことを含む所定の条件を満たした場合に、第2の動作を開始可能なようにした。具体的には、制御回路40は、電圧VHが5回連続してしきい値THbotを下回った場合に、第1の動作を開始し、電圧VHが5回連続してしきい値THtop上回った場合に、第2の動作を開始するようにした。これにより、電圧VHは、しきい値THbotおよびしきい値THtopの間の電圧範囲付近において上昇および下降を繰り返すように制御される。これにより、電力変換システム1では、電圧VHが維持されるとともに、電圧VHのリップルを小さくすることができる。
【0101】
また、電力変換システム1では、制御回路40は、第1の動作において、第2の駆動信号(ゲート信号GE,GF)のデューティ比DSを第1のデューティ比(デューティ比DS1)に設定可能であり、第2の動作において、第2の駆動信号(ゲート信号GE,GF)のデューティ比DSを第1のデューティ比(デューティ比DS1)より小さい第2のデューティ比(デューティ比DS2)に設定可能なようにした。また、制御回路40は、第1の動作において、第1の駆動信号(ゲート信号GC,GD)のデューティ比DPを第1のデューティ比(デューティ比DS1)よりも小さい第3のデューティ比(デューティ比DP1)に設定可能であり、第2の動作において、第1の駆動信号(ゲート信号GC,GD)のデューティ比を第2のデューティ比(デューティ比DS2)および第3のデューティ比(デューティ比DP1)より小さい第4のデューティ比(デューティ比DP2)に設定可能なようにした。これにより、電力変換システム1では、第1の動作において、第2の電力端子(端子T21,T22)から第1の電力端子(端子T11,T12)に対して、第1の電力を供給し、第2の動作において、第2の電力端子(端子T21,T22)から第1の電力端子(端子T11,T12)に対して、第1の電力よりも小さい第2の電力を供給することができる。その結果、電力変換システム1では、電圧維持期間P2において、電圧VHのリップルを小さくすることができる。
【0102】
[効果]
以上のように本実施の形態では、第1の電力端子と、第1の電力端子に接続され、第1の駆動信号に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有するスイッチング回路と、スイッチング回路に接続された第1の巻線と、第2の巻線とを有するトランスと、第2の巻線に接続され、第2の駆動信号に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有する整流回路と、整流回路に接続された平滑回路と、平滑回路に接続された第2の電力端子と、スイッチング回路および整流回路の動作を制御可能な制御回路と、制御回路からの指示に基づいて第1の駆動信号および第2の駆動信号を生成可能な駆動回路とを備えるようにした。制御回路は、第1の電力端子から第2の電力端子に向かって電力を供給する前において、第1の動作および第2の動作を交互に行うことが可能であり、第1の動作において、第2の電力端子から第1の電力端子に対して第1の電力を供給して第1の電力端子における電圧が上昇するように、スイッチング回路および整流回路の動作を制御可能であり、第2の動作において、第2の電力端子から第1の電力端子に対して第1の電力よりも小さい第2の電力を供給して第1の電力端子における電圧が下降するように、スイッチング回路および整流回路の動作を制御可能なようにしたので、第1の電力端子における電圧のリップルを小さくすることができる。
【0103】
本実施の形態では、制御回路は、第1の電力端子における電圧の電圧値が第1のしきい値より小さいことを含む所定の条件を満たした場合に、第1の動作を開始可能であり、第1の電力端における電圧の電圧値が第2のしきい値より大きいことを含む所定の条件を満たした場合に、第2の動作を開始可能なようにしたので、第1の電力端子における電圧が維持されるとともに、この電圧のリップルを小さくすることができる。
【0104】
本実施の形態では、制御回路は、第1の動作において、第2の駆動信号のデューティ比を第1のデューティ比に設定可能であり、第2の動作において、第2の駆動信号のデューティ比を第1のデューティ比より小さい第2のデューティ比に設定可能なようにした。また、制御回路は、第1の動作において、第1の駆動信号のデューティ比を第1のデューティ比よりも小さい第3のデューティ比に設定可能であり、第2の動作において、第1の駆動信号のデューティ比を第2のデューティ比および第3のデューティ比より小さい第4のデューティ比に設定可能なようにしたので、第1の電力端子における電圧のリップルを小さくすることができる。
【0105】
[変形例1]
上記実施の形態では、
図7に示したように、プリチャージ期間P1および電圧維持期間P2において、デューティ比DP1,DP2に基づいてスイッチング回路12がスイッチング動作を行うようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、
図13に示すように、プリチャージ期間P1および電圧維持期間P2において、デューティ比DP1,DP2を0(ゼロ)に維持し、スイッチング回路12がスイッチング動作を行わないようにしてもよい。例えば、高圧バッテリBHの電圧が、低圧バッテリBLとトランス13の変成比により得られる電圧よりも高くない場合には、プリチャージ期間P1および電圧維持期間P2において、このようにスイッチング回路12がスイッチング動作を行わないようにすることができる。
【0106】
[変形例2]
上記実施の形態では、電圧維持期間P2において、
図10に示したように、モード信号MODEが低レベルである期間におけるゲート信号GC1~GF1のスイッチング周波数と、モード信号MODEが高レベルである期間におけるゲート信号GC1~GF1のスイッチング周波数とを互いに等しくしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、モード信号MODEが低レベルである期間におけるゲート信号GC1~GF1のスイッチング周波数を、モード信号MODEが高レベルである期間におけるゲート信号GC1~GF1のスイッチング周波数よりも低くしてもよい。
【0107】
図14は、本変形例に係るゲート信号GA1~GF1の一例を表すものであり、(A)はモード信号MODEの波形を示し、(B)~(G)はゲート信号GA1~GF1の波形をそれぞれ示す。この
図14は、上記実施の形態に係る
図10に対応する。
【0108】
この例では、モード信号MODEが低レベルである期間におけるゲート信号GC1~GF1のスイッチング周波数を、モード信号MODEが高レベルである期間におけるゲート信号GC1~GF1のスイッチング周波数よりも低くする。この例では、ゲート信号GC1~GF1におけるパルス幅はほぼ一定である。よって、モード信号MODEが低レベルである場合におけるデューティ比DP,DSは、モード信号MODEが高レベルである場合におけるデューティ比DP,DSよりも低い。この場合には、スイッチング回路12のトランジスタS1~S4および整流回路14のトランジスタS5~S8がオン状態になる頻度が低くなるので、2次側回路から1次側回路への伝送電力を小さくすることができる。これにより、本変形例に係る電力変換システムでは、電圧VHが低下する際の勾配を小さくすることができるので、電圧VHのリップルを小さくすることができる。
【0109】
[変形例3]
上記実施の形態では、電圧維持期間P2において、
図10,11に示したように、モード信号MODEが低レベルである期間におけるデューティ比DP,DSを、モード信号MODEが高レベルである期間におけるデューティ比DP,DSよりも低くしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、モード信号MODEが低レベルである期間におけるスイッチング周波数を、モード信号MODEが高レベルである期間におけるスイッチング周波数よりも高くしてもよい。以下に、本変形例について詳細に説明する。
【0110】
図15は、本変形例に係るゲート信号GA1~GF1の一例を表すものであり、(A)はモード信号MODEの波形を示し、(B)~(G)はゲート信号GA1~GF1の波形をそれぞれ示す。この
図15は、上記実施の形態に係る
図10に対応する。
【0111】
この例では、モード信号MODEが低レベルである場合には、本変形例に係る制御回路40は、ゲート信号GC1~GF1のスイッチング周波数を、モード信号MODEが低レベルである場合におけるスイッチング周波数よりも高くする。モード信号MODEが低レベルである場合におけるデューティ比DP,DSは、モード信号MODEが高レベルである場合におけるデューティ比DP,DSと同じでもよいし、異なっていてもよい。このように、モード信号MODEが低レベルである期間において、スイッチング周波数よりも高くすることにより、2次側回路から1次側回路への伝送電力を小さくすることができる。これにより、本変形例に係る電力変換システムでは、電圧VHが低下する際の勾配を小さくすることができるので、電圧VHのリップルを小さくすることができる。
【0112】
[変形例4]
上記実施の形態では、
図1に示したように、フルブリッジ型の回路を用いて整流回路14を構成したが、これに限定されるものではなく、様々な回路を適用することができる。例えば、いわゆるセンタータップ型の電力変換システムであってもよい。以下に、本変形例について詳細に説明する。
【0113】
図16は、本変形例に係る電力変換システム2の一例を表すものである。電力変換システム2は、電力変換装置60を備えている。電力変換装置60は、トランス63と、整流回路64と、制御回路70とを有している。
【0114】
トランス63は、巻線63A,63B,63Cを有している。巻線63Aは1次巻線であり、一端はスイッチング回路12におけるノードN1に接続され、他端はスイッチング回路12におけるノードN2に接続される。巻線63Bは2次巻線であり、一端は整流回路64におけるノードN6に接続され、他端は巻線63Cの一端および電圧線L21Aに接続される。巻線63Cは2次巻線であり、一端は巻線63Bの他端および電圧線L21Aに接続され、他端は整流回路64におけるノードN7に接続される。
【0115】
整流回路64は、トランジスタS9,S10を有している。トランジスタS9,S10は、例えばN型の電界効果トランジスタを用いて構成される。トランジスタS9,S10は、ボディダイオードD9、D10をそれぞれ有している。トランジスタS9は、ノードN6と基準電圧線L22とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることによりノードN6を基準電圧線L22に接続するように構成される。トランジスタS9のドレインはノードN6に接続され、ゲートにはゲート信号GFが供給され、ソースは基準電圧線L22に接続される。トランジスタS10は、ノードN7と基準電圧線L22とを結ぶ経路に設けられ、オン状態になることによりノードN7を基準電圧線L22に接続するように構成される。トランジスタS10のドレインはノードN7に接続され、ゲートにはゲート信号GEが供給され、ソースは基準電圧線L22に接続される。
【0116】
制御回路70は、補助電源回路20から供給された検出電圧VH2、電圧センサ18から供給された検出電圧VL2、および図示しないシステム制御部から供給された制御データCTLに基づいて、スイッチング回路12および整流回路14の動作を制御することにより、電力変換装置60の動作を制御するように構成される。具体的には、制御回路70は、検出電圧VH2,VL2に基づいてゲート信号GA1~GF1を生成し、このゲート信号GA1~GF1によりPWM制御を行うことにより、電力変換装置60の動作を制御するようになっている。
【0117】
同様に、上記実施の形態では、
図1に示したように、フルブリッジ型の回路を用いてスイッチング回路12を構成したが、これに限定されるものではなく、様々な回路を適用することができる。
【0118】
[その他の変形例]
また、これらの変形例のうちの2以上を組み合わせてもよい。
【0119】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0120】
例えば、上記実施の形態では、電力変換動作において、降圧動作を行うようにしたが、これに限定されるものではなく、昇圧動作を行うようにしてもよい。
【0121】
本明細書中に記載された効果はあくまで例示であり、本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本開示に関して、他の効果が得られてもよい。
【0122】
さらに、本開示は、以下の態様を取り得る。
【0123】
(1)
第1の電力端子と、
前記第1の電力端子に接続され、第1の駆動信号に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有するスイッチング回路と、
前記スイッチング回路に接続された第1の巻線と、第2の巻線とを有するトランスと、
前記第2の巻線に接続され、第2の駆動信号に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有する整流回路と、
前記整流回路に接続された平滑回路と、
前記平滑回路に接続された第2の電力端子と、
前記スイッチング回路および前記整流回路の動作を制御可能な制御回路と、
前記制御回路からの指示に基づいて前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号を生成可能な駆動回路と
を備え、
前記制御回路は、
前記第1の電力端子から前記第2の電力端子に向かって電力を供給する前において、第1の動作および第2の動作を交互に行うことが可能であり、
前記第1の動作において、前記第2の電力端子から前記第1の電力端子に対して第1の電力を供給して前記第1の電力端子における電圧が上昇するように、前記スイッチング回路および前記整流回路の動作を制御可能であり、
前記第2の動作において、前記第2の電力端子から前記第1の電力端子に対して、前記第1の電力よりも小さい第2の電力を供給して前記第1の電力端子における電圧が下降するように、前記スイッチング回路および前記整流回路の動作を制御可能である
電力変換装置。
(2)
前記制御回路は、
前記第1の電力端子における電圧の電圧値が第1のしきい値より小さいことを含む所定の条件を満たした場合に、前記第1の動作を開始可能であり、
前記第1の電力端子における電圧の電圧値が第2のしきい値より大きいことを含む所定の条件を満たした場合に、前記第2の動作を開始可能である
前記(1)に記載の電力変換装置。
(3)
前記制御回路は、
前記第1の動作において、前記第2の駆動信号のデューティ比を第1のデューティ比に設定可能であり、
前記第2の動作において、前記第2の駆動信号のデューティ比を前記第1のデューティ比より小さい第2のデューティ比に設定可能である
前記(1)または(2)に記載の電力変換装置。
(4)
前記制御回路は、
前記第1の動作において、前記第1の駆動信号のデューティ比を前記第1のデューティ比よりも小さい第3のデューティ比に設定可能であり、
前記第2の動作において、前記第1の駆動信号のデューティ比を前記第2のデューティ比および前記第3のデューティ比より小さい第4のデューティ比に設定可能である
前記(3)に記載の電力変換装置。
(5)
前記制御回路は、
前記第1の動作において、前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号のスイッチング周波数を第1のスイッチング周波数に設定可能であり、
前記第2の動作において、前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号のスイッチング周波数を前記第1のスイッチング周波数よりも低い第2のスイッチング周波数に設定可能である
前記(4)に記載の電力変換装置。
(6)
前記制御回路は、
前記第1の動作において、前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号のスイッチング周波数を第1のスイッチング周波数に設定可能であり、
前記第2の動作において、前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号のスイッチング周波数を前記第1のスイッチング周波数よりも高い第2のスイッチング周波数に設定可能である
前記(1)または(2)に記載の電力変換装置。
(7)
前記制御回路は、
前記第1の動作において、前記第2の駆動信号のデューティ比を第1のデューティ比に設定可能であり、
前記第2の動作において、前記第2の駆動信号のデューティ比を前記第1のデューティ比より小さい第2のデューティ比に設定可能である
前記(6)に記載の電力変換装置。
(8)
前記第1の電力端子における電圧に基づいて電源電圧を生成可能であり、前記第1の電力端子における電圧に応じた検出電圧を生成可能な電源回路をさらに備え、
前記制御回路は、前記検出電圧に基づいて、前記第1の動作および前記第2の動作のうちの一方を行うことが可能であり、
前記駆動回路は、
前記第1の駆動信号を生成可能であり、前記電源電圧に基づいて動作可能な第1の駆動回路と、
前記第2の駆動信号を生成可能な第2の駆動回路と
を有する
前記(1)から(7)のいずれかに記載の電力変換装置。
(9)
第1の端子および第2の端子を有する第1のバッテリと、
第1の端子および第2の端子を有するキャパシタと、
前記第1のバッテリの前記第1の端子と前記キャパシタの前記第1の端子とを結ぶ経路に設けられた第1のスイッチと、
前記第1のバッテリの前記第2の端子と前記キャパシタの前記第2の端子とを結ぶ経路に設けられた第2のスイッチと、
電力変換装置と、
第2のバッテリと
を備え、
前記電力変換装置は、
前記キャパシタの前記第1の端子に接続された第1の接続端子、および前記キャパシタの前記第2の端子に接続された第2の接続端子を有する第1の電力端子と、
前記第1の電力端子に接続され、第1の駆動信号に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有するスイッチング回路と、
前記スイッチング回路に接続された第1の巻線と、第2の巻線とを有するトランスと、
前記第2の巻線に接続され、第2の駆動信号に基づいてスイッチング動作を行うことが可能なスイッチング素子を有する整流回路と、
前記整流回路に接続された平滑回路と、
前記平滑回路に接続されるとともに前記第2のバッテリに接続された第2の電力端子と、
前記スイッチング回路および前記整流回路の動作を制御可能な制御回路と、
前記制御回路からの指示に基づいて前記第1の駆動信号および前記第2の駆動信号を生成可能な駆動回路と
を有し、
前記制御回路は、
前記第1の電力端子から前記第2の電力端子に向かって電力を供給する前において、第1の動作および第2の動作を交互に行うことが可能であり、
前記第1の動作において、前記第2の電力端子から前記第1の電力端子に対して第1の電力を供給して前記第1の電力端子における電圧が上昇するように、前記スイッチング回路および前記整流回路の動作を制御可能であり、
前記第2の動作において、前記第2の電力端子から前記第1の電力端子に対して、前記第1の電力よりも小さい第2の電力を供給して前記第1の電力端子における電圧が下降するように、前記スイッチング回路および前記整流回路の動作を制御可能である
電力変換システム。
【符号の説明】
【0124】
1,2…電力変換システム、9…キャパシタ、10,60…電力変換装置、12…スイッチング回路、13,63…トランス、13A,13B,63A~63C…巻線、14,64…整流回路、15…平滑回路、16…チョークインダクタ、17…キャパシタ、18…電圧センサ、20…補助電源回路、21…スイッチング素子、22…スイッチング制御回路、23…トランス、23A~23D…巻線、24…整流回路、25…平滑回路、26…整流回路、27…平滑回路、28…レギュレータ、29…ピークホールド回路、32,34…駆動回路、40,70…制御回路、42…電力変換制御部、43,44…ゲート信号生成部、50…プリチャージ制御部、51~54…デューティ比生成部、55…しきい値生成部、56…比較部、BH…高圧バッテリ、BL…低圧バッテリ、CTL…制御データ、DP,DP1~DP3,DS,DS1~DS3…デューティ比、D1~D10…ボディダイオード、GA~GF,GA1~GF1…ゲート信号、HYS…ヒステリシス量、L11,L21A,L21B…電圧線、L12,L22…基準電圧線、MODE…モード信号、N1,N2,N4~N7…ノード、P1…プリチャージ期間、P2…電圧維持期間、SW1,SW2…スイッチ、S1~S10…トランジスタ、THtop,THbot…しきい値、T11,T12,T21,T22…端子、VDD,VP…電源電圧、VH,VL…電圧、VHe…推定電圧、VH2,VL2…検出電圧、VHtarget…目標電圧指令値。