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  • 特開-防音材および防音材の製造方法 図1
  • 特開-防音材および防音材の製造方法 図2
  • 特開-防音材および防音材の製造方法 図3
  • 特開-防音材および防音材の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025108057
(43)【公開日】2025-07-23
(54)【発明の名称】防音材および防音材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20250715BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20250715BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20250715BHJP
【FI】
G10K11/168
B32B5/24 101
G10K11/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001693
(22)【出願日】2024-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 光児
【テーマコード(参考)】
4F100
5D061
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK07B
4F100AK42C
4F100AK51A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DG01B
4F100DG01C
4F100DJ00A
4F100DJ03A
4F100EJ42
4F100EJ82
4F100JA04B
4F100JA04C
4F100JB13A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JH01
4F100YY00B
4F100YY00C
5D061AA07
5D061AA09
5D061AA22
5D061AA26
5D061BB21
5D061BB24
5D061DD11
(57)【要約】
【課題】多孔質層と繊維層を積層させた新規の防音材および防音材の製造方法を提供する。
【解決手段】防音材は、多孔質層と、前記多孔質層に積層され、第1材料を含む第1層と、前記第1層に積層され、繊維状の第2材料を含む第2層と、を備え、前記第1材料の融点は、前記第2材料の融点より低く、前記多孔質層の内部に、前記第1材料が溶融固化した含浸部を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質層と、
前記多孔質層に積層され、第1材料を含む第1層と、
前記第1層に積層され、繊維状の第2材料を含む第2層と、
を備え、
前記第1材料の融点は、前記第2材料の融点より低く、
前記多孔質層の内部に、前記第1材料が溶融固化した含浸部を有する、
防音材。
【請求項2】
前記第1層は、繊維状の前記第1材料を含む、
請求項1に記載の防音材。
【請求項3】
繊維状の前記第1材料と繊維状の前記第2材料とは、互いに絡み合って層状をなしている、
請求項2に記載の防音材。
【請求項4】
前記多孔質層は、連続気泡構造を有する熱硬化性樹脂材料を含み、
前記第1材料と前記第2材料は、熱可塑性樹脂材料である、
請求項1に記載の防音材。
【請求項5】
多孔質層を用意する工程と、
繊維状の第1材料を含む第1層と、前記第1材料よりも融点が高い第2材料であって前記第1層に積層された繊維状の前記第2材料を含む第2層とを含む繊維材を用意する工程と、
前記第1層が前記多孔質層側となるように前記繊維材を前記多孔質層上に配置する工程と、
前記繊維材を、前記第1材料の融点よりも高く且つ前記第2材料の融点よりも低い温度で加熱し、溶融した前記第1材料を前記多孔質層の内部に含浸させる工程と、
を備える、
防音材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防音材および防音材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、多孔質層と多孔質層上に積層された繊維層とを含む防音材を開示している。この防音材では、多孔質層の原料が繊維層の一部に含浸することで、繊維層が多孔質層と繊維層とを一体に成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-088930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような防音材では、繊維層が多孔質層から分離可能な態様で、繊維層が多孔質体に接着されることが好ましい。
【0005】
本開示の課題は、新規の防音材および防音材の製造方法を提供することである。
【0006】
本開示の一態様に係る防音材は、多孔質層と、前記多孔質層に積層され、第1材料を含む第1層と、前記第1層に積層され、繊維状の第2材料を含む第2層と、を備え、前記第1材料の融点は、前記第2材料の融点より低く、前記多孔質層の内部に、前記第1材料が溶融固化した含浸部を有する。
【0007】
さらに本開示の他の態様に係る防音材の製造方法は、多孔質層を用意する工程と、繊維状の第1材料を含む第1層と、前記第1材料よりも融点が高い第2材料であって前記第1層に積層された繊維状の前記第2材料を含む第2層とを含む繊維材を用意する工程と、前記第1層が前記多孔質層側となるように前記繊維材を前記多孔質層上に配置する工程と、前記繊維材を、前記第1材料の融点よりも高く且つ前記第2材料の融点よりも低い温度で加熱して前記第1材料を溶融し、溶融した前記第1材料を前記多孔質層の内部に含浸させる工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、新規の防音材および防音材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】防音材の断面図。
図2】防音材の製造方法を示す説明図。
図3】防音材の製造方法を示す説明図。
図4】他の実施形態の防音材の断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、図1を用いて、本開示の一実施形態による防音材1について説明する。
【0011】
防音材1は、例えば、車両に取り付けられて、騒音源から生じた騒音が車室に伝達されることを防止する。
【0012】
図1は、防音材1を示す断面図である。図1に示すように、防音材1は、多孔質層2と、第1材料41を含む第1層4と、第2材料61を含む第2層6と、を備える。
【0013】
多孔質層2は、セル22(気泡)が連続的につながった連続気泡構造21を有する熱硬化性樹脂材料を含む。熱硬化性樹脂材料は、例えば、密度が(JIS K7222:2005)20kg/m以上100kg/m以下、厚みが10mm以上50mm以下のポリウレタンフォーム(PU;polyurethane)である。
【0014】
多孔質層2は、第1面23と、第1面23の反対側の第2面25と、を含む。第1面23および第2面25では、多孔質層2の連続気泡構造21のセル22が外部に向けて開口する。
【0015】
第1層4は、多孔質層2の第1面23に積層される。第1層4の厚みは、例えば、0.1mm以上1mm以下である。
【0016】
第1層4は、第1材料41を含む。第1材料41は、繊維状の熱可塑性樹脂材料であってもよい。第1材料41は、例えば、繊維径が2d以上4d以下、目付が5g/m以上100g/m以下、繊維状のポリプロピレン(PP;polypropylene)で形成された繊維集合体である。第1材料41の融点T1は、例えば150℃以上170℃以下である。
【0017】
第1層4は、第1材料41が溶融固化した第1領域4aと、溶融固化した状態の第1材料41と繊維状の第1材料41が混在する第2領域4bと、第1材料41が繊維状の第3領域4cと、を含む。第1領域4a、第2領域4bおよび第3領域4cは、厚み方向(図1の矢印Z方向)に沿って、多孔質層2側から第1領域4a、第2領域4b、第3領域4cの順で分布する。
【0018】
第1領域4aにおいて、第1層4は、溶融固化した第1材料41の一部が多孔質層2のセル内部に入り込む含浸部42を有する。含浸部42は、多孔質層2のセル22内部に食い込み、いわゆるアンカー効果を生じる。これにより、第1層4は、含浸部42を介して多孔質層2に機械的結合により接合される。
【0019】
第2層6は、第1層4に積層される。第2層6は、厚みが0.1mm以上1mm以下のシート状である。
【0020】
第2層6は、第2材料61を含む。第2材料61は、繊維状の熱可塑性樹脂材料である。第2材料61は、例えば、繊維径が2d以上4d以下、目付が10g/m以上100g/m以下ポリエチレンテレフタラート(PET;polyethylene terephthalate)である。第2材料61の融点T2は、第1材料41の融点T1より高く、例えば240℃以上260℃以下である。
【0021】
第2層6と第1層4の境界付近では、繊維状の第2材料61と第3領域4cにおける繊維状の第1材料41とが互いに絡み合って層状をなしている。絡み合った繊維同士は、厚み方向(図1の矢印Z方向)に引き剥がされる力に対して摩擦力を生じる。これにより、第2層6が第1層4に固定されている。
【0022】
第2層6は、繊維状の第2材料61を含む。第1層4は、第2領域4bおよび第3領域4cにおいて、繊維状の第1材料41を含む。これらの繊維シートは、騒音源からの騒音を部分的に吸収して残りを通す。図1には示していないが、多孔質層2の第1面23には、含浸部42が食い込まずに残ったセル22が多数存在しており、これらのセル22が属する連続気泡構造21は、第2層6および第1層4を通過した騒音を吸収する。防音材1は、このようにして騒音源からの騒音を吸収する。
【0023】
防音材1は、多孔質層2の第2面25側に積層された第1層4および第2層6を、さらに備えてもよい。
【0024】
上述の通り、本実施形態では、第1層4は、含浸部42を介して多孔質層2に、接着剤による接合ではなく、機械的結合により接合される。本明細書で「接着剤による接合」とは、異なる物質が分子間共有結合などの化学的結合を伴って接着することを意味する。接着剤による接合とは異なり、含浸部42による接合は、多孔質層2および第1層4の破断応力を超えない程度の接合強度になりやすい。例えば、使用済の防音材1がリサイクルされる際には、含浸部42がセル22から引き抜かれることによって第1層4および第2層6が多孔質層2からきれいに(破断することなく)剥がされることが好ましい。本実施形態では、第1層4および第2層6は多孔質層2から剥がされやすく、リサイクルに適した防音材1を提供できる。
【0025】
また、本実施形態では、第1層4は、繊維状の第1材料41を含み、第2層6は、繊維状の第2材料61を含む。このため、第2層6と第1層4は、騒音源からの騒音を部分的に吸収して残りを多孔質層2へと通過させることができる。多孔質層2の連続気泡構造21は、第1層4を通過した騒音を吸収する。これにより、防音材1全体として、騒音源からの騒音を吸収することができる。
【0026】
また、本実施形態では、第2層6と第1層4の境界付近は、繊維状の第2材料61および第1材料41が互いに絡まり合っている。このため、第2層6と第1層4の間の接合強度は、第1層4と多孔質層2との間の接合強度よりも高くなりやすい。例えば、リサイクルの際に、防音材1は、第1層4と多孔質層2の間で引き裂かれやすい。この結果、防音材1から熱硬化性樹脂を含む多孔質層2と、熱可塑性樹脂を含む第1層4および第2層6とを分離することができる。
【0027】
次に、図2および図3を用いて、防音材1の製造方法について説明する。製造方法は、多孔質層2を用意する工程S1と、繊維材8を用意する工程S2と、繊維材8を多孔質層2上に配置する工程S3と、繊維材8を加熱して、溶融した第1材料41を多孔質層2のセル22内部に含浸させる工程S4と、を備える、
【0028】
はじめに、図2(a)に示すように、工程S1では、多孔質層2を用意する。
【0029】
次に、図2(b)および(c)に示すように、工程S2では、第1層4と第2層6を積層した繊維材8を用意する。繊維材8は、繊維状の第1材料41を含む第1層4と、繊維状の第2材料61を含む第2層6と、を含む。
【0030】
図2(b)に示すように、繊維材8は、第1層4に第2層6を重ねた状態で、例えば、積層方向(図2(b)の黒矢印を参照)に沿ってニードルパンチ10を繰り返し移動させて、繊維状の第1材料41と繊維状の第2材料61とを互いに絡み合わせる。これにより、図2(c)に示すように、第1材料41および第2材料61を繊維状に保ったまま、第1層4と第2層6を一体とした繊維材8を得ることができる。
【0031】
さらに、図3に示すように、工程S3では、多孔質層2上に繊維材8を重ねて金型12の内部に配する。繊維材8は、第1層4を多孔質層2側となるように配置される。
【0032】
次に、工程S4では、金型12内に多孔質層2および繊維材8を配置した状態で、金型12を加熱し押圧する(図3の矢印Pを参照)、いわゆる熱間プレスを行う。本実施形態では、金型12は、例えば、180℃以上200℃以下の温度で、30秒以上60秒以下の間、加熱される。
【0033】
工程S4では、繊維材8の内部温度が加熱温度T3に達するまで加熱される。加熱温度T3は、第1材料41の融点T1より高く、且つ、第2材料61の融点T2より低い温度である。加熱温度T3は、例えば、170℃以上190℃以下である。この結果、第1材料41が溶融して多孔質層2のセル22内に流動する。セル22内の第1材料41は固化して、図1に示すように含浸部42となる。
【0034】
以上により、製造方法は、多孔質層2、第1層4および第2層6を備える防音材1を得ることができる。
【0035】
なお、本実施形態の製造方法では、工程S3で金型12の内部に多孔質層2および繊維材8を配置して、工程S4において金型12ごと繊維材8および多孔質層2を加熱する熱間プレスを用いたが、本開示はこれに限定されない。
【0036】
すなわち、防音材1の製造方法では、予め加熱し第1材料41を溶融させた繊維材8を、多孔質層2上に配置して、溶融した第1材料41を多孔質層2に含浸させてもよい。
【0037】
本開示の防音材1は、多孔質層2と、多孔質層2に積層され、第1材料41を含む第1層4と、第1層4に積層され、繊維状の第2材料61を含む第2層6と、を備える。第1材料41の融点T1は、第2材料61の融点T2より低く、多孔質層2の内部に、第1材料41が溶融固化した含浸部42を有する。
【0038】
また、防音材1の第1層4は、繊維状の第1材料41を含む。
【0039】
さらに、繊維状の第1材料41と繊維状の第2材料61は、互いに絡み合って層状をなしている。
【0040】
また、多孔質層2は、連続気泡構造21を有する熱硬化性樹脂材料を含み、第1材料41と第2材料61は、熱可塑性樹脂材料である。
【0041】
本開示の防音材1の製造方法は、多孔質層2を用意する工程S1と、繊維状の第1材料41を含む第1層4と、第1材料41よりも融点T2が高い第2材料61であって第1層4に積層された繊維状の第2材料61を含む第2層6とを含む繊維材8を用意する工程S2と、第1層4が多孔質層2側となるように繊維材8を多孔質層2上に配置する工程S3と、繊維材8を、第1材料41の融点T1よりも高く且つ第2材料61の融点T2よりも低い加熱温度T3で加熱して第1材料41を溶融し、溶融した第1材料41を多孔質層2の内部に含浸させる工程S4と、を備える。
【0042】
以上の通り、本開示によれば、多孔質層と繊維層を積層させた新規の防音材および防音材の製造方法を提供することができる。
【0043】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0044】
本実施形態では、繊維状の第1材料41としてポリエチレンを含む第1層4と繊維状の第2材料61としてポリエチレンテレフタレートを含む第2層6を例に説明したが、本開示はこれに限定されない。
【0045】
第1層4に含まれる第1材料41と第2層6に含まれる第2材料61は、第1材料41の融点T1が第2材料61の融点T2より低い繊維状の熱可塑性樹脂材料の組み合わせであればよい。例えば、第1層4は、繊維状の第1材料41としてポリエチレン(PE;polyethylene)を、第2層6は、繊維状の第2材料61としてポリプロピレンを含んでもよい。
【0046】
本実施形態では、第1層4は、部分的に繊維状であり部分的に溶融固化しているが、本開示はこれに限られない。例えば、第1層4は、全体的に溶融固化することにより繊維状を維持していなくてもよい。
【0047】
本実施形態では、第1層4と第2層6が、これらの厚み方向(図1の矢印Z方向)から見て、多孔質層2の外縁からはみ出さないように積層されている例を説明したが、第1層4および第2層6は、多孔質層2の外縁からはみ出していてもよい。例えば、多孔質層2の第1面23および第2面25に第1層4と第2層6が積層されており、且つ各面に積層された第1層4と第2層6が多孔質層2の外縁からはみ出していてもよい。
【0048】
この場合、各面に積層された第1層4のうち、多孔質層2の外縁からはみ出した部分では、溶融した第1材料41により第1層4同士が接合していてもよい。第1層4同士の接合強度は、第1層4と多孔質層2との間の接合強度よりも高くなりやすい。このため、含浸部42のアンカー効果により接合されている第1層4と多孔質層2が、意図せず分離することを抑制することができる。
【0049】
本実施形態では、第1層4と第2層6が、多孔質層2の両面(第1面23および第2面25)に積層されている例を説明したが、図4に示すように、多孔質層2の片面(図4では第1面23)に積層されていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1:防音材 2:多孔質層 21:連続気泡構造
4:第1層 41:第1材料 42:含浸部
6:第2層 61:第2材料 T1:融点 T2:融点
S1:工程 S2:工程 S3:工程 S4:工程
図1
図2
図3
図4