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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025108138
(43)【公開日】2025-07-23
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20250715BHJP
【FI】
A61B5/11 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001849
(22)【出願日】2024-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】南百▲瀬▼ 勇
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB35
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】装置のサイズやコストを抑えることができる情報処理システムを提供する。
【解決手段】情報処理システム100は、磁界を発生させる磁界発生装置であるアンテナ2と、互いに直交する三軸上にそれぞれ配置され、磁界を検出する三つのコイル13a,13b,13cと、三つのコイル13a,13b,13cの各々により検出された磁界の値に基づいて磁界強度を算出する算出部と、算出部により算出された磁界強度に対する三つのコイル13a,13b,13cの各々により検出された磁界の値の比率に基づいて、三つのコイル13a,13b,13cを有する対象物であるタグ1の姿勢情報を生成する生成部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界を発生させる磁界発生装置と、
互いに直交する三軸上にそれぞれ配置され、前記磁界を検出する三つのコイルと、
前記三つのコイルの各々により検出された磁界の値に基づいて磁界強度を算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記磁界強度に対する前記三つのコイルの各々により検出された磁界の値の比率に基づいて、前記三つのコイルを有する対象物の姿勢情報を生成する生成部と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記生成部は、前記算出部により算出された前記磁界強度に対する前記三つのコイルの各々により検出された磁界の値の比率を用いて、前記三軸の各々の軸磁界成分と前記対象物とがなす角度である前記対象物の傾き角度を算出し、前記対象物の姿勢情報を生成する、
請求項1記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記生成部は、前記算出部により算出された前記磁界強度に対する前記三つのコイルの各々により検出された磁界の値の比率を用いて、前記三軸の各々の軸磁界成分に対する前記対象物の傾きを表す単位ベクトルを算出し、前記対象物の姿勢情報を生成する、
請求項1記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記磁界発生装置を少なくとも三つ備える、
請求項1記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記磁界発生装置の各々は、磁界を発生させる周期パターンに基づいて、順に、連続的に磁界を発生させる、
請求項4記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記磁界発生装置は、LF(Low Frequency)の電磁波を発生させるコイルを有するアンテナである、
請求項1記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記対象物は、前記三つのコイルを有するタグである、
請求項1記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記タグは、作業動作を行う対象に取り付けられる、
請求項7記載の情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の姿勢情報を生成する情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、工場の生産ラインなどにおいて作業者が作業する領域を推定する制御システムが開示されている。この制御システムは、作業者の各部位の加速度データを検出する加速度センサと、作業者の各部位の角速度データを検出する角速度センサと、を備えている。そして、経時的に取得される加速度データ及び角速度データを用いて、作業者の部位ごとの位置情報及び姿勢情報を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-144489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の制御システムでは、位置情報及び姿勢情報を算出するために、加速度センサと角速度センサの2つのセンサを備える必要がある。したがって、装置のサイズやコストが嵩む要因になる。
【0005】
このような事情に鑑み、本発明は、装置のサイズやコストを抑えることができる情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理システムは、磁界を発生させる磁界発生装置と、互いに直交する三軸上にそれぞれ配置され、磁界を検出する三つのコイルと、三つのコイルの各々により検出された磁界の値に基づいて磁界強度を算出する算出部と、算出部により算出された磁界強度に対する三つのコイルの各々により検出された磁界の値の比率に基づいて、三つのコイルを有する対象物の姿勢情報を生成する生成部と、を備える。
【0007】
この態様によれば、磁界発生装置から生ずる磁界を、互いに直交する三軸上に配置された三つのコイルで検出し、それら三つの検出値に基づいて算出される磁界強度を用いて対象物の位置情報を得ることができるとともに、磁界強度に対する三つの検出値の比率を用いることで、三つのコイルを有する対象物の姿勢情報を得ることができる。
【0008】
上述した態様において、生成部は、算出部により算出された磁界強度に対する三つのコイルの各々により検出された磁界の値の比率を用いて、三軸の各々の軸磁界成分と対象物とがなす角度である対象物の傾き角度を算出し、対象物の姿勢情報を生成してもよい。
【0009】
この態様によれば、三つの検出値に基づく磁界強度に対する三つの検出値の比率を用いて算出される三軸の各々の軸磁界成分に対する対象物の傾き角度を、三つのコイルを有する対象物の姿勢情報に含めることが可能となる。
【0010】
上述した態様において、生成部は、算出部により算出された磁界強度に対する三つのコイルの各々により検出された磁界の値の比率を用いて、三軸の各々の軸磁界成分に対する対象物の傾きを表す単位ベクトルを算出し、対象物の姿勢情報を生成してもよい。
【0011】
この態様によれば、三つの検出値に基づく磁界強度に対する三つの検出値の比率を用いて算出される三軸の各々の軸磁界成分に対する対象物の傾きを表す単位ベクトルを、三つのコイルを有する対象物の姿勢情報に含めることが可能となる。
【0012】
上述した態様において、磁界発生装置を少なくとも三つ備えることにしてもよい。
【0013】
この態様によれば、少なくとも三つの磁界発生装置に対応する三点以上の位置を用いて対象物の位置や姿勢を算出することが可能となる。
【0014】
上述した態様において、磁界発生装置の各々は、磁界を発生させる周期パターンに基づいて、順に、連続的に磁界を発生させてもよい。
【0015】
この態様によれば、少なくとも三つの磁界発生装置から順に、連続的に発生される磁界に基づいて、対象物の位置や姿勢を算出することが可能となる。
【0016】
上述した態様において、磁界発生装置は、LF(Low Frequency)の電磁波を発生させるコイルを有するアンテナであってもよい。
【0017】
この態様によれば、例えば、UWB(Ultra Wide Band)などと比べ、測距の精度や測定座標の精度を高めることが可能となる。
【0018】
上述した態様において、対象物は、三つのコイルを有するタグであってもよい。
【0019】
この態様によれば、三つのコイルを有するタグの位置情報及び姿勢情報を取得することが可能となる。
【0020】
上述した態様において、タグは、作業動作を行う対象に取り付けられてもよい。
【0021】
この態様によれば、タグの位置情報及び姿勢情報に基づいて、タグを取り付けた対象の動作を推定することや診断すること、予測することなどが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、装置のサイズやコストを抑えることができる情報処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る情報処理システムの構成を例示する模式図である。
図2図1に示すタグの機能的な構成を例示するブロック図である。
図3】X軸及びY軸方向におけるタグの傾き角度を説明するための模式図である。
図4】X軸及びY軸方向におけるタグの傾き角度を説明するための模式図である。
図5】X軸及びY軸方向におけるタグの傾き角度を説明するための模式図である。
図6】X軸及びY軸方向におけるタグの傾き角度を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。ただし、図面は模式的なものであり、具体的な寸法などは以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0025】
図1を参照して、実施形態に係る情報処理システムの構成について説明する。図1に示す情報処理システム100は、例えば、タグ1と、アンテナ2と、端末装置3と、を備える。
【0026】
情報処理システム100の各構成要素を説明する前に、本発明が適用される場面の一例について説明する。実施形態に係る情報処理システム100は、例えば、所定の工程を作業する作業者の手や腕、帽子などにタグ1を取り付け、アンテナ2のコイル23から発生する磁界をタグ1の三つのコイル13a、13b、13cで検出し、検出した値に基づいてタグ1の位置及び姿勢を算出する。
【0027】
これにより、タグ1の動きに合わせて時系列にタグ1の位置及び姿勢に関するデータを収集することができる。そして、タグ1の位置及び姿勢に関するデータを端末装置3で解析することで、作業動作や作業の安定性などを推定することや、診断すること、予測することなどが可能となる。
【0028】
ここで、タグ1を取り付けるのは、作業者に限定されない。例えば、作業者が作業を行う際に用いる部品や治工具などにタグ1を取り付けてもよい。つまり、作業動作を行う対象にタグ1を取り付けることが好ましい。
【0029】
このような場面を実現する情報処理システム100の各構成要素について、以下に説明する。
【0030】
アンテナ2は、磁界発生装置であり、例えば、MPU(Micro Processing Unit)やCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ21と、無線通信や有線通信を可能にする通信部22と、磁界を発生させるコイル23と、を備える。コイル23は、例えば、LF(Low Frequency)の電磁波を発生させることが好ましく、アンテナ2は、コイル23を用いてLF帯の磁界通信を行うことが好ましい。
【0031】
アンテナ2は、少なくとも三つ備えることが好ましい。タグ1と少なくとも三つのアンテナ2との磁界通信を利用して、タグ1の位置や姿勢を算出することができる。この場合、一つのプロセッサ21に対して、三つのコイル23を接続するなどして構成してもよい。
【0032】
プロセッサ21は、磁界を発生させる周期パターンに基づいて、それぞれのコイル23に対し、順に、連続的に電流が流れるように制御する。これにより、それぞれのコイル23からシーケンシャルに繰り返し磁界を発生させることが可能となる。周期パターンや電流値は、通信部22を介して端末装置3などから受信し、メモリに記憶させておくことが好ましい。
【0033】
端末装置3は、例えば、パーソナルコンピュータであり、CPUやMPUなどのプロセッサ31と、無線通信や有線通信を可能にする通信部32と、記憶部33と、入力部34と、表示部35と、を備える。
【0034】
プロセッサ31は、記憶部33に記憶されているプログラムを実行することで、端末装置3の各種機能を実現する。記憶部33は、例えば、ディスクドライブ又は半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。記憶部33は、端末装置3の各種機能を実現するためのプログラム及びそのプログラムで使用される各種のデータなどを記憶する。
【0035】
入力部34は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス、マイク、カメラなどである。表示部35は、例えば、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイなどである。
【0036】
タグ1は、電子タグであり、例えば、MPUやCPUなどのプロセッサ11と、無線通信を可能にする通信部12と、三つのコイル13a、13b、13cと、を備える。三つのコイル13a、13b、13cは、互いに直交する三軸上にそれぞれ配置される。ここで、本実施形態では、例示的に、コイル13aの長手方向をX軸方向とし、コイル13bの長手方向をY軸方向とし、コイル13cの長手方向をZ軸方向とする。
【0037】
図2に示すように、タグ1のプロセッサ11は、例えば、算出部111と、生成部112として機能する。算出部111及び生成部112の機能の一部又は全部は、端末装置3のプロセッサ31により実現されてもよい。
【0038】
算出部111は、三つのコイル13a、13b、13cの各々により検出される磁界の値に基づいて、磁界強度であるRSSI(Received Signal Strength Indicator)を算出する。
【0039】
ここで、X軸方向を示すコイル13aにより検出される磁界の値を、磁界強度RSSIのX軸成分としてRSSI_xと表し、Y軸方向を示すコイル13bにより検出される磁界の値を、磁界強度RSSIのY軸成分としてRSSI_yと表し、Z軸方向を示すコイル13cにより検出される磁界の値を、磁界強度RSSIのZ軸成分としてRSSI_zと表すことにする。この場合、磁界強度RSSIは、例えば、以下の(1)式のように、三つの成分を合成して算出することができる。
【0040】
【数1】
【0041】
(1)式で算出した磁界強度RSSIに基づいて、アンテナ2とタグ1との距離を算出することができる。具体的に、磁界強度RSSIは、距離の三乗で減衰するという特性を用いて、アンテナ2とタグ1との距離を算出する。
【0042】
設置座標が既知のアンテナ2を三つ設け、それぞれのアンテナ2とタグ1との距離を算出することで、タグ1の座標を算出することができる。具体的に、各アンテナ2の設置座標をそれぞれ円の中心とし、各アンテナ2とタグ1との距離を半径とする三つの円の交点を、タグ1の座標として算出する。これにより、タグ1の位置情報を得ることができる。
【0043】
生成部112は、算出部111により算出された磁界強度RSSIに対する三つのコイル13a、13b、13cの各々により検出された磁界の値RSSI_x、RSSI_y、RSSI_zの比率に基づいて、三つのコイル13a、13b、13cを有するタグ1の姿勢情報を生成する。
【0044】
具体的に、生成部112は、算出部111により算出された磁界強度RSSI、及び三つのコイル13a、13b、13cの各々により検出された磁界の値RSSI_x、RSSI_y、RSSI_zを用いて、三軸の各々の軸磁界成分とタグ1とがなす角度であるタグ1の傾き角度を算出し、タグ1の姿勢情報を生成する。
【0045】
ここで、X軸方向に対するタグ1の傾き角度をangle_xと表し、Y軸方向に対するタグ1の傾き角度をangle_yと表し、Z軸方向に対するタグ1の傾き角度をangle_zと表すことにする。この場合、各傾き角度angle_x、angle_y、angle_zは、それぞれ以下の(2)式、(3)式、(4)式により算出できる。
【0046】
angle_x=cos-1(RSSI_x/RSSI) … (2)
angle_y=cos-1(RSSI_y/RSSI) … (3)
angle_z=cos-1(RSSI_z/RSSI) … (4)
【0047】
(2)式の(RSSI_x/RSSI)、(3)式の(RSSI_y/RSSI)、(4)式の(RSSI_z/RSSI)は、それぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に対するタグ1の傾きを表す単位ベクトルの各軸要素となる。この単位ベクトル(RSSI_x/RSSI,RSSI_y/RSSI,RSSI_z/RSSI)を、タグ1の姿勢情報としてもよい。
【0048】
(2)式、(3)式、(4)式で算出したタグ1の傾き角度angle_x、angle_y、angle_zを、アンテナ2ごとに算出し、算出したそれらの傾き角度を、タグ1の姿勢情報とする。タグ1の傾き角度angle_x、angle_y、angle_zは、タグ1がアンテナ2に向いてるときの角度を基準(0度)にし、その基準からどの程度傾いているかを表す角度となる。
【0049】
このタグ1の傾き角度angle_x、angle_y、angle_zは、タグ1がアンテナ2を向いている状態を基準にした座標系(以下、「ワールド座標系」ともいう。)の角度となる。
【0050】
これに対し、アンテナの設置座標を表している座標系(以下、「グローバル座標系」ともいう。)の角度によってタグ1の傾きを表すこともできる。グローバル座標系の角度は、ワールド座標系の角度を、アフィン変換することで算出できる。換言すると、ワールド座標系の角度を、アフィン変換用の行列を用いて変換することで、グローバル座標系の角度を算出することができる。このグローバル座標系の角度を、タグ1の姿勢情報としてもよい。
【0051】
図3乃至図6を参照して、タグ1の傾き角度について、具体的に説明する。説明の便宜のために、図3乃至図6では、X軸及びY軸方向の傾き角度について説明する。その他のY軸及びZ軸方向並びにZ軸及びX軸方向についてもX軸及びY軸方向と同様に説明できるため、それらの説明は省略する。
【0052】
図3乃至図6では、三つのアンテナ2a、2b、2cがX軸上に並べて設置され、それぞれの設置座標が既知であるとする。例示的に、三つのアンテナ2a、2b、2cを作業者が作業する作業台の上に配置し、タグ1を作業者の手に取り付けることができる。
【0053】
図3は、タグ1の向き(姿勢)Dが、X軸に垂直かつY軸に平行な方向であることを前提にした模式図である。この場合のタグ1の向きDを、グローバル座標系での0度の向きとする。
【0054】
ここで、コイル13a、13b、13cは、向きを特定できないため、コイルが検出した磁界に基づいて算出される角度は、正であるのか負であるのかを判別することはできない。したがって、コイルが検出した磁界に基づいて算出されるワールド座標系の角度は、絶対値として算出されることになる。
【0055】
図3では、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度が30度と算出され、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度が30度と算出され、アンテナ2cに対するタグ1の傾き角度が60度と算出される。つまり、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度と、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度とが、ともに30度として算出される。
【0056】
ここで、アンテナ2a、2b、2cの設置座標は既知であり、X軸方向の並びも既知であるため、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度は、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度よりも小さくなるはずである。したがって、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度は30度ではなく、-30度であると判定できる。
【0057】
この場合、X軸及びY軸方向において、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度は-30度であり、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度は30度であり、アンテナ2cに対するタグ1の傾き角度は60度であるという情報が、タグ1の姿勢情報に含められることになる。他のY軸及びZ軸方向並びにZ軸及びX軸方向についてもX軸及びY軸方向と同様に、各アンテナ2a、2b、2cに対する傾き角度を算出することができる。
【0058】
図4は、タグ1の向きDが、図3の向きから時計回りに30度回転した方向であることを前提にした模式図である。この場合のタグ1の向きDを、グローバル座標系での30度の向きとする。
【0059】
図4では、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度が60度と算出され、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度が0度と算出され、アンテナ2cに対するタグ1の傾き角度が30度と算出される。つまり、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度が、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度よりも大きな値として算出される。
【0060】
ここで、アンテナ2a、2b、2cの設置座標は既知であり、X軸方向の並びも既知であるため、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度は、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度よりも小さくなるはずである。したがって、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度は60度ではなく、-60度であると判定できる。
【0061】
この場合、X軸及びY軸方向において、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度は-60度であり、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度は0度であり、アンテナ2cに対するタグ1の傾き角度は30度であるという情報が、タグ1の姿勢情報に含められることになる。他のY軸及びZ軸方向並びにZ軸及びX軸方向についてもX軸及びY軸方向と同様に、各アンテナ2a、2b、2cに対する傾き角度を算出することができる。
【0062】
図5は、タグ1の向きDが、図3の向きから時計回りに60度回転した方向であることを前提にした模式図である。この場合のタグ1の向きDを、グローバル座標系での60度の向きとする。
【0063】
図5では、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度が90度と算出され、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度が30度と算出され、アンテナ2cに対するタグ1の傾き角度が0度と算出される。つまり、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度が、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度よりも大きな値として算出され、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度が、アンテナ2cに対するタグ1の傾き角度よりも大きな値として算出される。
【0064】
ここで、アンテナ2a、2b、2cの設置座標は既知であり、X軸方向の並びも既知であるため、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度は、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度よりも小さくなり、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度は、アンテナ2cに対するタグ1の傾き角度よりも小さくなるはずである。したがって、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度は90度ではなく、-90度であると判定でき、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度は30度ではなく、-30度であると判定できる。
【0065】
この場合、X軸及びY軸方向において、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度は-90度であり、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度は-30度であり、アンテナ2cに対するタグ1の傾き角度は0度であるという情報が、タグ1の姿勢情報に含められることになる。他のY軸及びZ軸方向並びにZ軸及びX軸方向についてもX軸及びY軸方向と同様に、各アンテナ2a、2b、2cに対する傾き角度を算出することができる。
【0066】
図6は、タグ1の向きDが、図3の向きから時計回りに210度回転した方向であることを前提にした模式図である。この場合のタグ1の向きDを、グローバル座標系での210度の向きとする。
【0067】
図6では、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度が60度と算出され、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度が0度と算出され、アンテナ2cに対するタグ1の傾き角度が30度と算出される。つまり、上述した図4の状態と同じ傾き角度が算出されている。これは、コイル13a、13b、13cが向きを特定できず、コイルが検出した磁界に基づいて算出される角度の正負を判別できないためである。
【0068】
このように、タグ1の向きDが、各アンテナ2a、2b、2cに正対する向きから反転することがある場合には、例えば、Y軸の正方向でタグ1のY座標よりも大きな座標位置にもう一つアンテナ2dを追加することが好ましい。このようにアンテナ2dを追加することで、タグ1のY軸方向の向きを判定できるようになる。
【0069】
これにより、例えば、タグ1を取り付けた作業者が、アンテナ2a、2b、2cを配置した作業台に向かって作業をしているのか、作業台に背を向けて作業をしているのか、を判別できるようになる。
【0070】
図6では、アンテナ2dを追加することで、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度が120度であり、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度が180度であり、アンテナ2cに対するタグ1の傾き角度が210度であると判定できる。
【0071】
この場合、X軸及びY軸方向において、アンテナ2aに対するタグ1の傾き角度は120度であり、アンテナ2bに対するタグ1の傾き角度は180度であり、アンテナ2cに対するタグ1の傾き角度は210度であるという情報が、タグ1の姿勢情報に含められることになる。他のY軸及びZ軸方向並びにZ軸及びX軸方向についてもX軸及びY軸方向と同様に、各アンテナ2a、2b、2cに対する傾き角度を算出することができる。
【0072】
ここで、例えば、AIを利用して動作を分析するような場合には、動作の推移が把握できればよいため、コイルが検出した磁界に基づいて算出される角度が正であるのか負であるのかについては必須の情報とはならない。つまり、角度が正であるのか負であるのかの情報を省くことができる。したがって、このような場合には、三つのアンテナ2a、2b、2cを配置することで足りるため、もう一つのアンテナ2dを追加する必要はない。
【0073】
上述したように、実施形態に係る含む情報処理システム100によれば、三つのアンテナ2a、2b、2cから生ずる磁界を、互いに直交する三軸上に配置された三つのコイル13a、13b、13cで検出し、それら三つの検出値RSSI_x、RSSI_y、RSSI_zに基づいて算出される磁界強度RSSIを用いてタグ1の位置情報を得ることができるとともに、磁界強度RSSIに対する三つの検出値RSSI_x、RSSI_y、RSSI_zの比率を用いることで、三つのコイル13a、13b、13cを有するタグ1の姿勢情報を得ることができる。
【0074】
したがって、例えば、タグ1を作業者の手に取り付けた場合に、手の動きと同時に手の向き(姿勢)も同時に取得できるようになる。これにより、手がふらつきながら動いたことや、手首を垂直又は水平にして腕を伸ばしたことなどの情報も取得できるようなる。このような情報に基づいて、ベテラン作業者の動作と新人作業者の動作との違いを提示することも可能となる。
【0075】
これにより、実施形態に係る情報処理システム100によれば、位置情報及び姿勢情報を算出するための加速度センサ及び角速度センサを省くことができるため、装置のサイズやコストを抑えることができる。
【0076】
以上説明した実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。また、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈すべきでない。
【0077】
[付記]
本実施形態における態様は、以下のような開示を含む。
【0078】
(付記1)
磁界を発生させる磁界発生装置(2)と、
互いに直交する三軸上にそれぞれ配置され、前記磁界を検出する三つのコイル(13a,13b,13c)と、
前記三つのコイル(13a,13b,13c)の各々により検出された磁界の値に基づいて磁界強度を算出する算出部(111)と、
前記算出部(111)により算出された前記磁界強度に対する前記三つのコイル(13a,13b,13c)の各々により検出された磁界の値の比率に基づいて、前記三つのコイル(13a,13b,13c)を有する対象物(1)の姿勢情報を生成する生成部(112)と、
を備える情報処理システム(100)。
【0079】
(付記2)
前記生成部(112)は、前記算出部(111)により算出された前記磁界強度に対する前記三つのコイル(13a,13b,13c)の各々により検出された磁界の値の比率を用いて、前記三軸の各々の軸磁界成分と前記対象物とがなす角度である前記対象物(1)の傾き角度を算出し、前記対象物(1)の姿勢情報を生成する、
付記1記載の情報処理システム(100)。
【0080】
(付記3)
前記生成部(112)は、前記算出部(111)により算出された前記磁界強度に対する前記三つのコイル(13a,13b,13c)の各々により検出された磁界の値の比率を用いて、前記三軸の各々の軸磁界成分に対する前記対象物(1)の傾きを表す単位ベクトルを算出し、前記対象物(1)の姿勢情報を生成する、
付記1又は2記載の情報処理システム(100)。
【0081】
(付記4)
前記磁界発生装置(2)を少なくとも三つ備える、
付記1から3のいずれかに記載の情報処理システム(100)。
【0082】
(付記5)
前記磁界発生装置(2)の各々は、磁界を発生させる周期パターンに基づいて、順に、連続的に磁界を発生させる、
付記4記載の情報処理システム(100)。
【0083】
(付記6)
前記磁界発生装置(2)は、LF(Low Frequency)の電磁波を発生させるコイルを有するアンテナ(2)である、
付記1から5のいずれかに記載の情報処理システム(100)。
【0084】
(付記7)
前記対象物(1)は、前記三つのコイル(13a,13b,13c)を有するタグ(1)である、
付記1から6のいずれかに記載の情報処理システム(100)。
【0085】
(付記8)
前記タグ(1)は、作業動作を行う対象に取り付けられる、
付記7記載の情報処理システム(100)。
【符号の説明】
【0086】
1…タグ(対象物)、2a,2b,2c,2d…アンテナ(磁界発生装置)、3…端末装置、11…プロセッサ、12…通信部、13a,13b,13c…コイル、21…プロセッサ、22…通信部、23…コイル、31…プロセッサ、32…通信部、33…記憶部、34…入力部、35…表示部、100…情報処理システム、111…算出部、112…生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6